○
田口委員 私は
まき網の
調整問題につきまして
水産庁長官に御
意見を伺
つておきたい点がございます。
水産庁で昨年の十月一日に提出されました
まき網漁業調整要綱を
関係地区の
業者が見まして、びつくりして
業者の大会を開いてあの案を検討したのでございまするが、長崎県の
業者は決議をいたしまして、
国会にも、あるいは
役所にも
陳情書を出したと思
つております。決議の要旨は、昭和二十六年十月一日付
水産庁の提出された
まき網漁業調整要綱中西
日本海区の設定には絶対反対を表明するものである、長崎県は県独自の立場において相互
調整する、こういうような決議でございます。先日
陳情団が参りましてこの決議のよ
つて来るとことろをいろいろ聞いてみますと、結局長崎県は
漁業を除いてほかに産業がない、どうしても魚で長崎県民全体が飯を食
つて行かなければならない。しかるにこの魚の
内容を検討してみると、長崎県ではいわしだ。数字的に申し上げますと、総漁獲高の六〇%をいわしが占めている。いわし
漁業が各漁村津津浦々にありまして、この
漁業によ
つて漁獲をし、とれたものを加工して生活をしている。これはひとり水産
業者ばかりでなしに、長崎県にはほかに何も産業がないために、長崎県の銀行にいたしましても中小企業にいたしましても、すべてのものがいわし
漁業の盛衰によ
つて景気、不景気を
決定している、こういうような実情である。われわれの
考えから申しますると、県にはおのおの立地
條件があ
つて、魚で食わなければならぬ県があるし、あるいは米をつく
つて生活をする県もある、あるいは山に植林をしてそれによ
つて県が立
つている。こういうように県にはおのおの立地
條件があ
つて生命を保持する資源がある
程度限定されている。これは神から與えられたものである。
従つて生活のために絶対に必要であるところの資源だけは、県自体の立場において守らなければならぬ。もし長崎県の魚をほかの
漁民がとるとすれば、それだけの生活資源をほかの県から持
つて来なければならぬ、こういうような観点におきまして、長崎県といたしましては、いわしだけは何としても保持しなければならぬ、こういうようなことを言
つておるのであります。何ゆえにいわしとさばとの
関係があるか、こういうことを聞いてみますと、いわしとさばは同一漁場で群をなして遊泳している、それを一緒にとるのだ。しかるにさば網は網目が大きいためにさばだけがかか
つて、いわしは全部中から逃げてしま
つて、一度網から逃げたものは、今度はいわし
網漁業者が火をたきましてもその火にどうしてもつかない。こういうような問題が一つ。それからもう一つは、長崎県といたしましては、大衆漁場が長崎県のいわし
漁業の中心地帶で、この漁場を荒廃させますと長崎県のいわし
漁業というものは成り立たない実情にあるのでありまするが、この狭い漁場で、昨年の状態から言いますといわし
網漁業が百統以上——百統といいますと所属
漁船が約五百隻になるのでありますが、さば網が七十統、二百八十そう、この五百そうと二百八十そうが狭い漁場で入り乱れて操業するということになると、網の乗切りだとか、あるいは船の衝突だとかいうようなものが実におびただしく起る。南松の津田という男が一人で調停した問題だけでも十三件調停をしておる。こういうような実情でありまして魚が火につかないという問題と、漁場が実に乱雑にな
つて事実においてもう操業ができないというような実情であるから、どうしても大衆の漁場というものは長崎県知事の権限においてわれわれは守らなけ参ればならない、こういうような主張をし、こういうような基礎のもとにこの決議案を
決定をしたそうでございます。しかしながら私らは
国会議員の立場におきまして、必ずしも長崎県の
漁業者の
意思通りに動くわけには行きません。今の態勢から申しまして、私はこの
許可権を
農林大臣に移す、いわゆる海区制というものも実はやむを得ないと思うのでありまするが、ただこの西
日本海区において一番がんになりますものは、結局山口県のさばの
まき網の問題であります。この山口県のさばの
まき網は、従来朝鮮におり、朝鮮から帰
つた連中が下関を根拠として
漁業を開始した。
従つて朝鮮に行けない面におきましては、結局どこかの漁場に行かなければならぬ。山口県の沖合いにもさばはたくさんあるのでありますが、山口県
当局は
沿岸漁業者の
関係からいたしまして、あの海で夜、火をたいてさばをとるということを許していない。そういたしますと、結局
漁業のできるような、いわゆる火をたいてできるところの長崎県にこれらの船がや
つて来る。こういうような実情で、あの海区におけるさば、あじの
まき網というものは、実は山口県の
まき網によ
つていろいろな問題が起きております。海区制を設定することもけつこうだ。しかし問題は山口県の
まき網の問題であるから、近く日韓の
漁業協定の話を進められ、この話がいかように
決定するかもわかりませんけれ
ども、山口県の
まき網は朝鮮の海において仕事をして来てお
つた連中ばかりであるという点から
考えましてこの
漁業協定が締結されますと、西
日本海区のさば、あじの
まき網の
事情が一変すると
考えるのであります。
従つて海区を設定されるとしましても、この日韓
漁業協定が締結されるのを待
つてひ
とつお
考えになることがしかるべきではないか、こういうことをまず第一に
考えるのであります。日韓
漁業協定が締結されまして、そうしてこの海区制をその後において設定するという問題につきまして、私が根本的に
考えておりますことは、今のような
事情からいたしまして、この海区ではさば、あじの
まき網だけでこの問題を解決することができない。結局いわしとさばとあじと、この三種類のものを一緒にして頭の中に入れた
調整要綱でなければ、実際には
漁業の
調整というものはできない、こういうことを
考えておる点が第一点であります。それから海区を設定する場合におきましては、各府県の
條件を均一にししなければならない。いろいろな問題があると思いますけれ
ども、そのうちの最も重要なる問題は、火をたいて
漁業をする。これは水産
当局も御承知と思いまするが、
日本の北の漁場におきましては、海の透明度の
関係あるいは上層と中層と下層の水温の相違——北の方に行きますと、下層、中層には非常に冷たい水が来ておる。
従つてあじ、さばは表面の所にいるというような
関係からいたしまして、晝張りだけで魚がとれるのでございますけれ
ども、南の方に行きますと、上層も中層も下層も水温が大体において同じである。かかる場合におきましては、最も安全な下層の方に魚がいる。この下層の魚を網で巻くためには、どうしても上の方に浮かさなければならぬ。浮かすためには火をたかなければならない。こういうような実情にあるのでありまして、南の方の
漁業者は海の環境から申しましても、また今までの
漁業技術の発達の上から申しましても、どうしても火をたかなければならない。各県の状態を均一にして海区を設定する、言いかえますと火をどこででもたいて、そうして魚のいる所にはどこにでも行ける、こういうような地ならしをまず第一にしなければならない、こういうことを私は
考えるのであります。
また
水産庁の案によりますと、鳥取県、兵庫県の境に一本の線を引きまして、長崎県から石川県までの間を二海区にお
考えにな
つておる。この海区の問題は、私は北太平洋の場合におきまして、もし金華山沖に一本の線を引くというようなことになりますと、いわゆる
漁業の
調整上かえ
つて非常な支障を来すものと
考えるのであります。すなわち北太平洋と、今
水産庁がお
考えにな
つておりますところの中部、西部の海区というものは、距離においても大体において同じと
考えるのであります。また網の数から申しますと、むしろ中部、西部の方が多い。こういうような
関係から申しまして、この海区設定、
漁業調整という点からして中間の線を引くべきものではない。言いかえますと、大海区制を設定しなければならない、こういうふうに
考えておる次第でございます。私がただいま申し上げましたのは、結局この海区につきましては、あじ、さばだけの
漁業では
考えられない。いわし
漁業も同時に
調整をしなければならない。この問題と、そして各県が同じ状態において同じ操業ができるようにという意味におきまして、同じ
條件で海区を設定しなければいかな。そうして中間線というものは、これは海区設定の趣旨に反する。こういうようにこの三点を非常に重大視しておるのでございまするが、今から
省令を御研究になるというような
お話でございますから、この三点につきましては十分に御研究になりまして、その上で
省令を御制定になるようにしていただきたいのであります。さらにその前には日韓
漁業協定の問題がありますから、この協定が締結をされ、その上でこの問題をよく静かに
考えてみる。いろいろ越佐海峡の問題もありますし、非常に重大な問題でございますから、この点だけは十分
当局としてお
考えにな
つて、そうして立案されるように特に希望しておく次第でございます。