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金森国会図書館長 図書館運営の全体につきまして、半年ごとに御
報告をすることに
なつておりますか、ただいま御
報告を申し上げまするのは、過去半年分、つ
まり二十六年の十月から二十七年の三月までの大体の御
報告を申し上げるのであります。
お
手元に
報告の
要綱というものと、これに基きましてのいろいろな
計数表が出してありまして、たいへんこまかいことにわた
つておりますが、しかしこの時期の大体の趨勢は、
図書館が次第に順当に伸びて行きつつあるという一言に帰着すると存じます。従来この
図書館につきましていろいろの世間の
うわさ等もございまして、大きくこれを伝えたり、小さくこれを伝えるということがございますが、
図書館の働きは、こつこつと足場を固めて進んで行くような道順にありまして、過去半年の道行きを見て行きますと、大体その線で、あ
まりはげしい変動はない、しかし少しもゆるむという傾きもないというわけであります。こまかいことを一々申し上げるのも恐縮でありますので、その
経過報告要綱の中を
ごらんくださいますと、大体の数字がここにあげられております。
人事等につきましても大した
変化はございません。昨年からことしにかけまして、
行政整理によ
つてきわめて少数、全体の二十分の一くらいの
職員の減少という
段階になりまして、その響きがこの三月末までに少しく出ておるくらいであります。
国会へ
奉仕する問題が、「三、
国会への
奉仕」というところにございまするが、その大
部分は
調査立法考査局の問題でございまして、
考査件数が八百二十三件ございます。その詳細は
資料の「1」のととろに出ております。それからまたそこで出版いたしました
調査資料は、やはり
資料「2」にあげられておりますが、二十九件にわた
つております。そのほか、
国会の建物の中にありまする分館で
書物を
ごらんくださる人が四千三百、貨出し
図書数が五千八百、こう出ておりますが、これはある計算で出て参
つただけのことでありまして、実際は、これらの
閲覧室は自由に閲覧し得るものでありますから、全体の
計数にはなりません。それから特に申し上げるのは、三の「4」に書いてあるものでありまして、
憲政資料——明治の憲法及びこれにまきついておりますいろいろな政治の
資料を
根気よく集めておりましたが、それがこのときにおきまして買い入れましたのが五千二百八十五点、これは現在のところは、
井上馨さんのうちにあ
つたもの、
陸奥宗光さんのうちにあ
つたもの、宍戸さんのうちにあ
つたもの、そういうような面について新しく
購入いたしました。もつと根本になります
伊藤博文さんのうちにあ
つたというようなものは、すでに大体
購入済みに
なつておるのであります。それからなお、
購入はいたしませんけれ
ども、お預かりをしていろいろな情勢をながめておるというのが、その次に「受寄」と書いてあります七百四十八点であります。これらの
憲政資料というものは、もとより
一つしかないというようなものでございまして、
根気よく集めて行きましたために、大よその必要なるものがここに集積したような感じがしております。
それからしばらく先へ飛びまして「
行政・
司法各
部門への
奉仕」
国会図書館が
行政、
司法各
部門、つ
まり最高裁判所とか、大蔵省とか、通産省とかいうような各
部局に対していかなる
奉仕をするかということの
計数をここに示したのでありますが、これは相当動いております。
閲覧図書数が十四万二千というようなことに
なつており、
考査の
件数——考査というのは、御
承知のように、何か
事柄を明らかにしてその解説を求めるというのでありますが、それが一万四千件見当に
なつておるのであります。これはこの
図書館ができます当時から、
支部図書館というものはどんな発展をするであろうかということに、多少の懸念を持
つて注意もしておりましたが、この数年の間にだんだんと発達して参りまして、
アメリカの
図書館使節などの方でも、この点は割合に好意を持
つて批評をしているようでありました。
アメリカではそういうことはできなか
つた、
支部図書館というような
制度がうまく行かなか
つたが、
日本ではこれがよくできるように
なつた。ごう言
つてくれております。
それから次の五の、
外国から来ている
書物を見せるというような点であります。五の「1」のA、B、C、
三つございますが、初めにありますロツクヲエラーの
寄贈図書というのは、大体五千数百冊がロックフェラーから寄贈せられております。これは続いて年々寄贈されるものでありまして、本年になりましても、若干の
寄贈図書が得られるのでありまして、次第に増加して行くものだと思います。Bのところの
図書館学資料、こういうのは、
日本では
図書館というもの
自身についての
研究資料が少いのでありまして、たとえば、
外国の
書物の
文献、
書物そのものを
説明する
文献であるとか、
図書館の建築とか、
図書館の
設備とかいうような、
図書館自身に関する
資料が従来潤沢でありません。それをなるべく
外国から広く集めて行くというようなもの、それが八百五十冊ばかりございますし、それから
アメリカ工業使節団の
寄贈図書と申しますのは、昨年
アメリカの
工業使節団が
日本を観察に来ましたときに、彼らが
アメリカの
出版書肆から依頼を受けまして、相当
工業に関する
書物を持
つて来たわけであります。その
工業に関する
書物をいかにすべきかという御
相談に乗りまして、私の方からも意見を述べまして、少くとも持
つて来た
書物の一番広い
集まり——同じものを何冊も持
つて来ておりますから、そのうちの一番多数のかた
まりを
国会図書館に寄贈する。それからそのほかの小さいかた
まりは、
日本中の有数な
図書館五箇所ばかりにわけるということで、私
どもの方で骨を折りましてこの
寄贈図書の
処置をしたわけであります。このA、B、Cの
三つというものは、
一般の人に貸付をし、また団体に対しましては貸出しをもするという態度をと
つております。その現状がここに書いてあるのであります。
閲覧状況等につきましては、これは中の
設備が限りがありますので、
いくら人を集めて読んでもらおうと思いましても、あき間のある以上にはいかんともいたしかたがないのでありますが、現在その
半期分の
閲覧者総数が、
中央館が七万七千ということに
なつておりますし、上野の方は、
設備も大きいのでありますから、大体その倍に当ります十四万八千ということに
なつております。合計いたしまして二十万以上の人が利用しておるというような状況でございます。あと、静嘉堂文庫や東洋文庫、大倉山分室というものは、これは特殊の
図書館でありますから、さまでの
希望は持てません。
その次にいろいろな記載もございますが、なお次の款に行きまして、総合目録とかいうこともや
つており、各種のことをや
つて、間口はすこぶる広くなりましたけれ
ども、一応順当に動いておるような気がいたします。
ところで、これを機会といたしまして、少しく皆様方のお教えを得たいというような意味もございまするし、意見を申し上げたいという問題がございます。従来私
どもの方の
図書館はいくらか受身でありまして、本ができて来る、それを集めて
一般の方の閲覧に供するということでありましたが、近ごろになりまして
——これは私
どもの方の努力も今まで不十分であ
つたかもしれないと思いまするが
——PBリポートというものがございます。このPBリポートというのは、
アメリカの商務省の出版
委員会でこしらえておるものでありまするが、本質は今回の世界大戦の終りごろに、ドイツその他の国国を占領しておりました連合国が、いち早く
アメリカやイギリスの技術調査団
——技術を専門に扱うところの調査団に上りまして、各種の技術を入手したのであります。ドイツの技術もそれらの調査団の手に入
つた、
日本の技術もイタリアの技術もその調査団に入
つたわけであります。一品に申しますれば、ある会社でも
つて非常に念の入
つた研究というもの、これは多年の努力と多額の経費をかけたものでありまして、いわば門外不出とでもいうべきものでありました。そういうふうなものを一括してこの技術調査団が手に入れたのでありまして、実はそれを整理した目録のような
報告書があるのであります。その点数が大体十五万点あるのでありまして、この中には
日本の分も少しく入
つておりまするけれ
ども、大
部分はドイツの技術的なる
研究のように聞いております。これを集計すると十五万ということになります。この十五万点の中には、おそらく非常に貴重な技術上の
研究が入
つておると思います。実際のところは
はつきりわかりませんけれ
ども、ある国、たとえばイギリス、フランスというような国がこれらの
文献を利用をして、商業、
工業という面に非常に役に立てておるということがございまするが、私
どもの
国会図書館に対しましても、これらの十五万点の技術的の
研究は目録のような形でずいぶん入
つておりまして、今までに大体十二万点くらい印刷して
報告が出ておる。なおこのほかに三万点くらい残
つておる。合計いたしますと十五万点あるのであります。この十五万点の調査の実態、ただ
報告でなくて、技術的に調査団のつかんだところ、基本的な技術上の調査書類というものは、非常に有益なものを含んでおるらしいのであります。ある会社がこれを利用すると、ただちにそこの事業が競争会社よりも目立
つて発達して来る。そのために、どうしてあんなに技術が発達したかと思
つていると、人の知らないうちに実はそこではそのPBリポートを利用してお
つたというようなこともいわれております。
ところでこの十五万点の
調査資料というものは、
日本にも今一
部分ずつは入
つております。それは
関係会社が非常な金をかけて手にしておるということでございます。こういうときに、一体これを
国会図書館等のごときものが問題外にしておいていいであろうかということが、私
どもの悩みの種でございます。もしできまするならば、この
調査資料十五万点を、
日本で写真あるいはマイクロ・フイルムにとりまして、そうして
日本の官公署及び
一般人が自由にこれを利用し得るということにいたしますると、それによ
つて日本の技術的な面において非常な進歩がある。ある人のごときは、五十年の技術の進歩ができるであろう、こういう意見を漏らしております。これにつきましては、学術
会議の方から非常な熱望がありまして、何とかして
日本の
国会図書館でこれをと
つてくれないかと、正式にその旨の通告が来ております。また正式というまでは行きませんけれ
ども、通産省その他の技術面あるいは大学その他の
研究者の面からも、何とかしてそれを集めて公平なる利用のできるようにしてもらえないか、こんなことに
なつております。その中身は、何しろ十五万点もありますから、私
どもには正確にわかりませんが、化学について三十種、機械について十四種、金属冶金について十種というふうに、ずつとわけられた数字が一
部分から発見せられております。どんなことをや
つておるかといえば、たとえばロケット揮に関する
研究とか、有機合成技術の世界最高峰といわれるレツペ合成術というようなものがあり、あるいはIG社のテイビオン製法というものがあり、メッサー・シユミツト社のガス・タービン、あるいはユンカース社のデイーゼル
機関というものがあり、相当粒よりの
研究が入
つておるということであります。これは金額から申しますと、そんなに多くの金額がいるわけではございません。大体すぐ読める
程度の写真でとりますと合衆国の商務省の出版
委員会がすでに写真で公に出しておりますものが十二万くらいあるわけであります。だから一部三十ページといたしますと、合計して五百万のページになり、目方で三十トン、金額は、これも
はつきりわかりませんが、二億五千万円くらいのものじやなかろうかといわれております。もしこれをこまかくしてマイクロ・フィルムに写しますと、五分の一くらいの金額の五千万円で間に合うのではなかろうかというふうにも
考えられます。これがまたいろいろ複雑に出ておりまして、すでに
書物の形で出版せられておるものも若干はあるように承
つております。その簡単な目録類はすでにこの
図書館に持
つておるのでありまして、その
研究題目だけ集めておりまする索引は、現在第一巻から第九巻、第十一巻から第十六巻、ちよつと飛んでおりますけれ
ども、これが三宅坂分館に備えつけられておりまして、かなり手広に利用せられておるようであります。しかし目録ばかりではほんとうの役には立ちません。こういうふうのものをどうしていいか、実は各方面からの御
希望もあり、大蔵省の方に何とか予算上のくめん
はつかないであろうかという内
相談をしておりますけれ
ども、まだそれ品は何の目鼻もつきません。こういうことは
日本の学問、経済の上に画期的な影響を持つものであり、これをゆるめておりますと、
外国とは違
つて、非常にあとずさりをするという懸念もありますし、ことに技術等のことでありますから、しばらくゆるめますと、鼻をあかされるということもないとも言えませんので、極力努力をしております。これは別に御
承認を得るということではなく、実情を述べまして、皆様方からしかるべき御意見等も伺いまして、もしもそれがわれわれに好都合であるならば、それを背景として、また大蔵省の方に強く主張をして行きたいという気持を持
つております。
大体の御
報告はこれをも
つて終りたいと存じます。