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金森国会図書館長 ただいま
書類をおまわしいたしまして、これから御
説明申し上げようといたしまするのは、
昭和二十七年度の
国立国会図書館の
予定経費の
要求であります。今回の
予算の
要求の
内容は非常に簡単であります。と申しますのは、
図書館側といたしましては、いろいろ念頭に
予想しておることはございますけれ
ども、
経済の
実情から申しまして、事ことごとく
希望するところに一致しないような
情勢もあり、つまり言いかえますると、
図書館にとりましては、そんなに幸福な
経済状態ではないと察せられまするので、そこで
中心点をきわめて少くいたしました
予定経費の
要求書ができ
上つたのであります。
あとで
数字については御
説明を申し上げますけれ
ども、大体、中の
要点になりまするものは
三つくらいであります。
一つは、物価の変化に応じまして
職員の
給与、そのほか
物品等につきましての
金額がかさまりまするので、それに応じて増額するものであります。いわば中身の
仕事がふえるのではなく、
ただ形の上において
経費がふえて行く部面であります。
いま
一つの実質的な面は、日曜
開館をするという点であります。これは私
どもの
図書館が大
よそ四年前に開設せられましたときに、たくさんの
書物を集めて人の
利用に供するについて、日曜をやらないということは無理である。夜やることはいろいろの
事情で困難にしても、日曜だけは
開館してよかろうということをかねがね
願望をしておりまして、毎年その
希望を
財務当局にも述べておりましたけれ
ども、今まで思うようになりませんでした。今回初めてこれの
予算の
計画ができ上
つて来まして、
純粋の
予算としては、結局その日曜
開館に割当てるような
意味での
アルバイト職員を設けるという
経費が、七十五万円だけ計上せられました。
もとより
アルバイトで日曜
開館ができるわけはございませんので、従来
ほんとうに
職員とな
つております者とほどよく組み合せまして、
出勤日等の調節はや
つて行くのでありますが、
予算の面では
アルバイト費約七十五万円計上せられるということによ
つて解決したのであります。
次の問題は、私
どものこの三、四年の
計画によりますと、どうしても
図書館は
ほんとうの
建物がなければ何事もできないのでありまして、
書物を数多く集めてその
利用を増しますために、非常に不便で不適当な
建物の中で
仕事をしておりましては、何とも能率を上げる道がございませんし、のみならず
経費もかさみ、またそればかりでもなく
仕事が増加し、材料がふえるに応じまして、ほとんど行き詰まるという姿であります。案外私
どもの
図書館が
内容において迅速に
進歩をいたしましたために
——進歩という
言葉は手前みそのようで遠慮しなければならぬとは思いますけれ
ども、しかし年々
相当の蔵書をふやして行こうという
計画、また多くの
調査をなす陣容を固めて行くというような
計画が、
相当急速度に
発達をいたしまして、今日の施設の
もとではいよいよ身動きのできないような状況にな
つておげます。
従つてどうしても新しき
建物を持ちたい、間に合せではなくて、初めから合理的な
図書館を経営するような
建物を持ちたいということが
願望でありまして、これに対しましてのいろいろの
計画図面、そのほか多少は空想的ではありますけれ
ども、
内容を
考えておりました。
敷地等につきましても、いろいろ内輪では
予想をしておりましたけれ
ども、なかなか
事情が好転して来ませんでした。今年に至りまして、ともかくも
敷地を買収する
経費を
予算の中に織り込もうということになりまして、
金額といたしましては二千万円
程度のものではありますが、ここで
図書館の
敷地が
予算の上に考慮せられますれば、漸次それが発展をして、
ほんとうの
図書館ができるのではなかろうかという喜びをこの
予算の中に持
つております。
この
三つの点が重要なる点でありますが、
数字に
従つて御
説明を申し上げますと、おまわししてあります
書類の右の上のところにぼんやり
数字が出ておりますように、
昭和二十七年度の
国立国会図書館の
予定経費の
要求は、二億九千百二十六万二千円でありまして、前年度に比べますと、七千六百八十二万八千円増加とな
つております。まず三割
見当の増額にな
つておるわけであります。これをもう少し精密に申し上げますと、その
内訳のところになりまするが、私
どもの方の
予算は、
国立国会図書館の
中央館の
予算と、
上野の
支部図書館の
予算と、
二つに区別して考うることにしております。そこで
国立国会図書館の
中央館の面におきましては一億七千百五万、それから
上野の
図書館につきましては三千七百九十五万六千円という額が計上されております。それから両方を共通いたしまして、
国立国会図書館全般の
営繕工事につきましての必要なる
経費八千二百二十五万円という
計算になりまして、そこで合計をして二億九千百二十六万二千円にな
つたのであります。その
内容につきましては、
予算の編成の上から非常にこまかく入り乱れておりまして、しいて御
説明をしてもわかりにくいのでありまするから省略をいたしまするが、その
要点は今申しましたように、この日曜
開館に必要な
経費約七十五万円が
アルバイト賃金として計上せられました点が大きな問題であります。大体
外国の
図書館を一わたり観察いたしましても、
図書館くらいものの
利用価値を大切にしなければならないところはほかに類がないと思いますが、何百万かの
書物を集めていながら、休日ばかり多くて、
国民が
利用することが困難だというような
図書館は、
図書館としては落第であろうと
考えております。残念ながら私
どもの
中央図書館は、一年のうち日曜日約五十日ばかりというものは、
国民から縁が切れておりまして、非常に気にしておりました。たとえば
外国のある
図書館では、一年中毎日開く。クリスマスの日だけは休みにする。こういうふうでありたいと思
つておりますが、いろいろな都合でそこまでは行きかねましようけれ
ども、できるだけ
一般の
要求に沿いたい、これがこの点の願いであります。
次に、物件といいますか、
一般事業の
経費につきましては、いろいろ
経費縮小をするという
考え方の
もとに、多少割引をされております。大体五%を減す。九五%の金を標準にする。こういう傾向にな
つておりますけれ
ども、
図書の
購入費だけは例外といたしまして、従前よりも二割くらい増加せられております。
もとより
図書の値段も高ま
つておるものもありまするけれ
ども、とにかく主要な
図書館文化財の
予算が増加されたことは、
原理として非常に喜ばしいことと
考えております。
次に
営繕工事に必要なる
経費というところにおきまして、先ほど申し上げましたように、
国立国会図書館庁舎敷地買収費二千万円というものが計上せられております。
腹案といたしまして、ただいま
国会の横にありますところの旧
ドイツ大使館の跡に、
国会図書館の建築を進めようという
腹案を持
つておりますが、
敷地が何しろ狭いのでありまして、現在の
大使館の跡だけに
建物をつくることは非常に困難であります。だから、まわりの
敷地を一応買い込んでおくことが必要でありまして、いろいろな民間の
建物がそこにできる勢いもあり、ことに
コンクリートづくりのこわれないものもできそうな気配もありますので、ともかくも
最小限度の
敷地だけは手に入れておかなければならぬということから起りましたのが、この二千万円の
予算であります。これだけでは
もとより理想的ではございませんけれ
ども、一歩この
方向に進みましたことは、前途に
希望が生じたというわけになるのであります。
なおこれに関連をして、
予算の中に
書庫の
経費が計上せられております。
三宅坂分室に二百坪の
書庫をこしらえる、
上野の
図書館に三百坪の
書庫をこしらえるという
経費が計上せられております。
三宅坂の
書庫につきましては、私
どもの
計画をしておりまする主たる
図書館が比較的早くでき上るという前提をとりますならば、わざわざ分離した
書庫をつくる必要はないと思いますけれ
ども、大体見通しをいたしまして、四囲の
情勢を
考えましても、そんなに手早く合理的なものができるとは思われませんので、暫定的に
不燃質の
書庫をつくらなければならぬというはめにな
つております。案外これは
経費がかさむものでありまして、大体十万ないし十五万冊の
書物の入る
書庫を昨年完成をいたしましたけれ
ども、本館の
建物で約千五百万円くらいかかりました。つまり十五万冊入れるものとすれば、一冊の格納のために百円の
経費がいる。こういうふうな
計算になりまして、今後やり方はよほどくふうしなければならぬと思いまするが、何しろ
図書館の大切な
書物が処置に困
つて虐待されておるということではや
つて行けませんので、分離した
書庫をつくるつもりでおります。そういうものをつく
つても、
あとで何にもならないではないかという懸念も、私
どもは当初から
考えの中に入れておりました。しかし
不燃質の
図書館ができますれば、たとい主たる
図書館ができましても、それ自身わかれて
独立の
価値があるものと存じます。大体新しい
考え方の
図書館は使いやすくしなければなりませんので、そんなに一かたまりにものを固めなくても、ある
程度は分散することが可能であろうと思います。
不燃質の
図書館をいくらか距離を離してつくりましても、それはそういう
専門の
図書館として、全体の一部ではありまするけれ
ども、そこには特別なもの、ある特殊なものを置くというふうにくふうをして行けば、将来に支障を起すことはない、そんな
考えを持
つて進んでおります。一応御
説明申し上げましたが、何とぞよろしく御審査をお願いいたしたいと思います。