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1952-06-12 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十二日(木曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 田渕 光一君    理事 福田 喜東君 理事 小松 勇次君    理事 佐竹 新市君       天野 公義君    川本 末治君       黒澤富次郎君    志田 義信君       篠田 弘作君    野村專太郎君       山口 武秀君    久保田鶴松君       浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (法務特別審         査局次長)   吉橋 敏雄君     ————————————— 本日の会議に付した事件  学生警察官との紛争事件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  この際御報告申し上げます。日本専売公社より、お手元に配付してある通り日本専売公社業務運営についての報告が委員長手元に参つておりまするが、長文でありますので、朗読にかえて会議録に掲載したいと存じますが、御了承を願います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)     —————————————
  3. 内藤隆

    内藤委員長 前会に引続き学生警察官との紛争事件について調査を進めます。  ただいまお見えになつておらるるお方は、吉橋敏雄君ですね。
  4. 吉橋敏雄

    吉橋証人 そうです。
  5. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り証人として証言を求めることに決定いたしましたので、さよう御了承を願います。  これより学生警察官との紛争事件について証言を求めることになりますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣言または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読してくだりさい。     〔証人吉橋敏雄朗読〕    宣誓書  良心に從つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います
  6. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  7. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なおこちらから証言を求めるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  吉橋敏雄君は、現在法務府の特審局調査部長をしておいでのようでありまするが、現職におつきになるまでの経歴を簡單にお述べください。
  8. 吉橋敏雄

    吉橋証人 昭和八年東京大学法学部を卒業いたしまして、同年司法省に入り、司法官試補を命ぜられ、昭和十年検事に任官し、爾来、広島、岡山、京都、横浜の各地方検察庁検事を歴任しまして、昭和十七年以来東京地方検察庁検事として同庁に勤務いたしておりましたが、昭和二十三年二月法務府に特別審査局が設置されまするや、同局の総務課長調査課長に任ぜられました。その後、特別審査局の機構の改変がありまして、昭和二十五年八月特別審査局次長調査部長に任ぜられて今日に及んでおります。
  9. 内藤隆

    内藤委員長 最近各大学学校内に共産主義運動が非常に台頭して来ておるようでありますが、特審局としてお調べなつ実情をお述べ願いたいと思います。
  10. 吉橋敏雄

    吉橋証人 まず日本共産党細胞団体等規正令に基く届出状況を申し上げまして、次いでその活動状況について申し上げます。  各種政治的団体は、御承知のごとく団体等規正令によつて届出をいたしておりまして、日本共産党のいわゆる学校細胞も、この線に沿つて届出をいたしております。全国各大学に結成されております日本共産党細胞は、本年五月三十一日現在におきまして七十三團体構成員総数五百二十一名ということになつております。なおこの届出の面におきまして、最も多かつた時期は、昭和二十四年五月三十日でありまして、当時は学校細胞数が百二十八あつたのであります。その後解散届その他によりまして、今日現在では先ほど申し上げましたごとく、七十三細胞ということになつております。しかしながら届出細胞解散後におきましても、各種ビラあるいはパンフレツト等によりまして、学校細胞の名前をそのまま継承して使つておるものが相当あるのであります。現在この届出面から言いますと、秘密学校細胞というものは、相当数あるということを言わなければならないのであります。たとえば東大細胞は、二十四年の十月十五日に結成届を出しましたのが、二十五年の五月二十五日に解散届を出しております。あるいはまた東大教養学部細胞は、二十五年三月一日に結成届を出して、同年七月三日には解散届を出しております。そのほか早大細胞法制大学細胞等も、同様に解散届を二十五年あるいは二十六年に出しておりますが、今日現在におきまして、これらの細胞名義パンフレツトあるいはビラ等がなお現在残つて配布されておる現状から、実質的に見ますと、学校細胞数かなり数が多いということが言えるのであります。  次はこの細胞活動状況でありますが、これらの細胞は、学内あるいは学外にあつてビラの散布、パンフレツト配布といつたことによりまして、一般学生に対してこれを扇動すると同時に、学外においては地域細胞その他のいわゆる左翼団体と共同して、活発なる活動を行つておるのであります。最近一部に見られる活動は、とみに暴力的破壊活動化しておるということは明らかでありまして、過般のメーデー行事後におけるところの騒擾事件にも、都学連を初め各大学学生の一部が加わつて検察庁に今日検挙されておる者もおるような事例があるのでありまして、細胞活動が一面において非常に尖鋭化しておるということは言い得られるのであります。  さらに細胞具体的活動について一、二申し上げますと、昨年十一月十二日、京都大学に発生しました例の京大事件におきましては、京大細胞名義で、「天皇来学から文化祭を守れ」あるいは「天皇理由とする文化祭禁止反対」あるいは「天皇を迎える国際青年デー十一・七デモに結集しよう」といつたようなものが、京大細胞名義で頒布された事実がありまして、当時御料車を取囲んで若干の衝突事件があつたことは御承知通りであります。次に東大細胞におきましては、今年二月二十日のいわゆる東大事件——富士署員警察手帳を奪われた事件でありますが、その直後に、東大細胞名義で「学園を官憲の泥靴から守れ」と題するビラ配布されておりますし、また東大細胞機関紙であります「人民の大学」というのに、「闘いは重大な段階に立ち至つた」これは二月二十六日の号外でありますが、そういうふうにこの事件に関する記事を掲載宣伝しておるのであります。さらに四月二十日の例の第二東大事件におきましても、東大細胞名義の「解放日報」と題しますビラに「血のメーデー全学ゼネストで闘え」五月六日付のものが出ております。さらにまた五月二十九日付の日本共産党東大細胞機関紙解放」ナンバー四にも同様な「愛国者の霊に反フアツシヨ八千の誓い、実力で防衛した解放行動隊」「五月祭の成果をもつて民族独立愛国ゼネスト労働者とともに闘え」といつたような機関紙が頒布されておるのであります。さらに早大においても、また東北大学におきましても、それぞれ学校細胞名義各種の「再軍備反対」とかあるいは「五・三〇学生大会実力でかちとろう」というような各種文書冬大学に頒布されまして、政治的活動相当活発に行われておるというのが実情であります。
  11. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの証人の御説明によつても想像し得るのですが、それらの学生細胞というものは、日本共産党革命遂行の尖兵として利用されておるというふうにわれわれは聞き取るのですが、そういう方面から何かおなたのお調べなつたいわゆる尖鋭化しておるという具体的な事実を御説明願いたい。
  12. 吉橋敏雄

    吉橋証人 この点につきましては、ある左翼分子非合法組織の中でつくられたと同じ文書が最近ありましたので、これによつて十分に御検討願いたいと思うのであります。
  13. 内藤隆

    内藤委員長 資料としてお持ちになつておりますね。
  14. 吉橋敏雄

    吉橋証人 はい。ちよつとその内容を読みます。「Vノート五月十二日支店」というのに、労働者関係のことが第一項目で出ておりまして、第二の項目にはつきりと「学生」という見出しのもとに相当長く出ております。この点の要旨を朗読いたしますと、「反植鬪争以来相次ぐ学生鬪いは、反フアツシズムの闘いとしてその規模と性格が一変し、中国革命の歴史的五・四運動に比すべき重大な役割を果しつつ、学生運動は明らかに革命鬪争の重要な一環としてその自主的な役割を果すべき重大な時期である。」「四・一八、四・二八、五・一、さらに五・八早稲田における闘い民族解放統一戰線を拡大発展させる観点から正しく評価し、プロレタリア英雄主義を鼓舞し、その自覚を高めるための徹底した大衆討議をどんどん巻き起し、具体的な行動の目標を与えて組織することが重要である。」一部を省略しまして「学生鬪い教職員を初め労働者市民との鬪いを結合させること、敵の掠奪政策から一切の破壊が起る以上、これとの提携は可能である。」すなわち教職員労働者市民との結合のことであります。「可能である。躊躇することなく教職員経済要求との共鬪を進めるために取組むこと。」さらに途中を省略しまして「抵抗自衛鬪争を強化し、行動中核体組織化を大胆に進めよ。反フアツシヨ行動委員会はクラス全体がなり得る條件がある。最近の学生鬪争は敵のフアツシズ術の攻撃と真正面からぶつかり、勇敢に強圧と鬪つている。この大衆行動の中から中核がぐんぐん組織されている。「C大刷新会」Cというのは中大の自治会刷新会のことと推察されます。「C大刷新会学館の徴反懇」徴反懇は徴兵反対懇談会学館ははつきりわかりません。「学館の徴反懇等の目ざましい成長を示している。愛国青年の結集を大胆に訴え、大衆抵抗自衛鬪いを、大衆権利擁護をする大衆鬪争と結合させることに成功するならば鬪いは飛躍するでおろう。」次は端折りまして「各営業所」これは細胞のことであります。「各営業所とも綱領を持ち政策を進めるために全力を傾けているが、今こそ大衆鬪争の中で綱領大衆のものとする絶好の機会である。全学生大衆鬪争に参加させる方向に向つて意識的に前進させるために全力を上げ、その指導能力を高めよ、全学連行動隊的悪弊を打破し、営業所を基礎に鬪いを強化すること。」といつた文書が出ております。これによつて学生運動をいかに見ておるかということがある程度わかると思います。
  15. 内藤隆

    内藤委員長 学生細胞はそれでほぼ想像つきまするが、大学教授あるいは助教授講師等の中にもいわゆる正式に共産党に入党しておるものがおるかどうか。各大学の中にどういう数であるか、資料等がございましたら御説明を願いたい。
  16. 吉橋敏雄

    吉橋証人 団体等規正令によりまして届出いたしておられる学校教職員であります。現在講師二名、教授助教授六名であります。なおこれまでに脱党され、あるいは学校から退職されたというような方の前の経歴から見ますると、それが二十名という数になつておりますが、現在の現職の方は今申しました八名です。
  17. 内藤隆

    内藤委員長 それはどこの大学ですか。
  18. 吉橋敏雄

    吉橋証人 北海道学芸大学講師が二人であります。それから群馬大学教授東京工業大学助教授が三省であります。京都大学化学研究所助教授が一人、久留米医大教授が一名、以上であります。
  19. 内藤隆

    内藤委員長 さような二十五年には百二十八団体のいわゆる届出団体等規正令によつてつたのが、現在では七十三団体になつておる、数がさように減じておるのは、党員が少くなつたのか、あるいはまた非合法運動をするためにことさらに解散をして、地下にもぐつておるような形をとつたのか、どうお思いになりますか。
  20. 吉橋敏雄

    吉橋証人 お尋ねのむしろ後者意味が深いと思います。
  21. 内藤隆

    内藤委員長 それで大学あるいは学生等にさような細胞があつて党員等はますます増加の傾向にあると私も考えておるんだが、さような教授なり学生日本共産党への加入を認めておる結果、学園自治をゆがめ、あるいはまた暴力革命遂行拠点となしておるように思われるんですが、その点はいかがですか。
  22. 吉橋敏雄

    吉橋証人 日本共産党は現在合法政党でありまするので、教授助教授講師あるいは学生がその政治団体に加入することは法的にはさしつかえないのであります。しかしながら学校教育法に定める各種学校は、御承知のごとく学問教育の場でありまして、政治的鬪争舞台であつてはならないのであります。従つて学校は当然政治的中立性を確保し得るように学園秩序を維持しなければならないのでありまして、さような秩序を乱すような学校内の政治活動というものは許さるべきでないということは明瞭なことであります。従つて一部極左的尖鋭分子らが、学園自治の名に隠れて学園革命遂行の一舞台としようとしているということの疑いは、先ほど申し述べましてVノート内容からもある程度推論されるところでありますので、その点について各般の十分な対策をとることが必要ではないかと存じます。
  23. 内藤隆

    内藤委員長 ただいま証人のおつしやつた日本共産党合法政党であることにおいては間違いない。しかしながらその合法の名に隠れて暴力革命などをやつているという現実の姿を見るときに、そこに学内をさような暴力革命拠点にするということは、まことに将来恐怖すべき一つの事態が発生して来ると私は考える、あなたもそう考えるか。
  24. 吉橋敏雄

    吉橋証人 そうです。
  25. 内藤隆

    内藤委員長 そこで特審局学校等について、いろいろ調査をしておられると思いまするが、その調査活動せられる場合にはどういう限界がありますか、どの点までは調査できるという何か限界でもおありになりますか。
  26. 吉橋敏雄

    吉橋証人 現在特審局といたしまして、まず学校に限定しますると、調査活動法的権限と申しますのは、御承知団体等規正令第十條に基いてであります。  なお講和発効前までは、いわゆるマ書簡に基くアカハタ並びにその同類紙及び後継紙に関するところの各種非合法出版物停刊措置に伴い、それに付随する調査活動が許されておつた、しかしながら学校に対しましては、特に学問の自由という点と、学園の権威というものについては十分に尊重しなければならないことは当然でありまして、特審局といなしましても、今申しました団体等規正令に基いて学内細胞の実態の調査ということが、法的権限に基いてなし得られますが、その遂行にあたりましては、十分に今申しました点を尊重いたしまして、事情の許す限り学校当局と連絡協力いたしております。なお調査技術上におきまして、特に過敏な学生に対していたずらにこれを刺戟することのないように、十分考慮をしつつ調査を行つておるのであります。
  27. 内藤隆

    内藤委員長 ほぼ調査活動限界点というものが想像できますが、実際問題として特審局は最近愛知大学について調査をやつたことがありますか。
  28. 吉橋敏雄

    吉橋証人 愛知大学に関して特審局調査をいたしたことがありますので、その経緯について概略申し述べます。  愛知大学におきましては、昭和二十四年十月十二日ころに、愛大細胞というものが結成されまして、同月の十四日付で団体等規正令に基く結成届出が出されたのであります。同細胞は、爾来日本共産党東地区委員会などと行動をともにいたしまして、平和運動、あるいはレツド・パージ反対、あるいは破防法反対、あるいは学内補導部鬪争、あるいは警察官に対する鬪争等を行いまして、これについて機関紙ビラ等の頒布による活動を行つて来ておりましたが、昨年秋ごろから右届出細胞実体届出の事実と相違する疑いが濃厚になつたのであります。また一面、一昨年一月ころから愛大細胞機関紙として発行されておりました「愛大戰線が」、一昨年の十二月十二日付で先ほど申しました指令に基いて停刊措置がとられたのであります。にかかわらず、一週間を出ずして、同年の十二月十八日には「抵抗」と題する秘密機関誌が再び発刊されて、爾来学内にこの種出版物相当頒布されておるという疑いがありましたので、右細胞実体調査並びに秘密出版物調査の必要がありましたので、特別審査局東海支店においてこれが調査に当つたのであります。  過般社会タイムスに出ていました事例についてでありますが、この後藤俊と申しますのは特審局法務事務官で、東海支局に勤務いたしております。昭和二十五年の十月に事務官として就任し、爾来諸団体調査事務を担当いたしておりましたが、昨年の十一月の初旬、名古屋の特審局東海支局長から、先ほど申しました愛大細胞実体並びに秘密出版物内容配布状況といつたものに対する調査方を命ぜられて調査を開始いたしたのであります。この調査にあたりましては、先ほどこの調査の基準で申し上げたごとく、特審局といたしましては、常時末端の事務官に至るまで、調査の方法あるいは心得といつたものについては、本局あるいは支局においに、それぞれ責任者がいろいろ注意を与え、教育をいたしておるのであります。この後藤事務官は、さような点から申しまして、愛大の校内に立ち入ることによつて学生に不必要に刺戟を与えることはまずいというところから、すなわち直接調査にては刺激を与えることをおもんばかりまして、たまたまかねて家庭関係においてじつこんな間柄であつた愛知大学学生某に対して、これらに関する資料提供方依頼いたしたのであります。  その後藤事務官学生との関係について申し上げますが、最初は昨年十一月の初旬に、後藤事務官右学生郷里である岐阜県下で初めて会いまして、その後昨年の十二月下旬までの間に、同学生の実家において三回ほど面接をいたしております。同人から、愛大内配布されている右申しました出版物等を、先ほどの必要からこれの提供方を求めて、相手学生はこれに対して快諾をしまして、その後同人から愛知大学細胞ビラその他の文書の送付を受けたことがあります。その後本年に入りまして一度尋ねたのでありますが、相手学生郷里に帰つていなかつたために、資料提供方依頼状を本年の二月上旬に右学生に発送したことは事実であります。右依頼状内容は、過般社会タイムスの五月二十二日付の記事として写真で掲載してあるものと大体同様のものと思われます。右調査依頼につきまして、あらかじめ金銭的な約束があつた云々ということでありすが、さような事実は全然ありません。ただ先ほど申しましたように、家庭関係——父親同志が非常にじつこんであり、また事務官のいとこがこの学生商業学校が同級生であるといつたように、非常に家庭的なじつこん関係から、知合い関係の好意的な任意に基く依頼であつたのでありまして、ただ二回目でしたか、その際に、若干の電車賃といつた意味で、また好意的な謝礼という意味、ひかり十箇と千円を渡したという事実はあります。しかしながら相手は受取らなかつたので、その場に置いて来たということが一回あるきりであります。さような意味から見まして、いわゆる愛大内学生スパイ使つたというような事実は全然ないので、そのいきさつはただいま申し上げた通りであります。
  29. 内藤隆

    内藤委員長  ただいまの証言は、愛知大学学長木間喜一君を先日証人として調べましたが、その際学長がここで述べられたことと相当に開きがあるようです。学長は、自分の学校学生スパイに使うがごときは学校を撹乱するものだ、学生同志の信頼もなくなれば、またまことに教育上迷惑千万であるとたいへん憤慨しておられたのですが、さような点につきまして、証人はどうお思いになりますか。
  30. 吉橋敏雄

    吉橋証人 われわれがやつておりまする常時の調査活動並びに情報活動におきましては、あらゆる対象がいわゆる民間協力者として対象になります。学生は絶対に対象にしてはいけないという指示はしていませんので、好意的にあるいは家庭的に結ばれるというようなものも、これはわれわれの調査事務調査活動における協力者というような意味において、提携協力をお願いする場合もあり得るのであります。本件の場合、この後藤事務官というのは、まだ非常に若い、まじめな男でして、十分に世間なれないという点と、家庭関係ということで、非常に気を許したと申しますか、十分なる了解のもとに協力してもらえないか、パンフレツト程度を出してもらえないかというようなことで、快諾を受けたので、相手方を十分に信用して、まさかかようなことが起るというようなことは毛頭考えずに、またこれをスパイに使うような、そういう大それた考えでやつたものでは決してないのであります。
  31. 内藤隆

    内藤委員長 それでは相手学生がかような事実を学校当局に訴えて出たのは、その心境等は当人から聞く以外方注がないと思いますが、これはなぜかような行動をとつたのでしようか。
  32. 吉橋敏雄

    吉橋証人 この学生が途中から気持を転移したその意図につきましては、もちろん本人にその後この事務官も会つておりませんし、われわれも合つておりませんので、十分に確定的な結論は出ませんが、愛大事件がいろいろとりざたをされ、問題になつたので、若い、気の弱いところから、また現在学校教職員学生等が一体となつて治安方面と対立の状態にあるというようなところから、かような事実もあつたという、この過程を話したのではないかというように推測するのであります。
  33. 内藤隆

    内藤委員長 あなたは特審局調査部長でありますから、あなたにかようなことを求めるのはどうかと思いますが、当委員会終つてお帰りになりましたらひとつお伝えを願いたいことがあるのであります。先日——本日の新聞にもありましたが、新聞等を見ますると、特審局調査のために相当経費をお使いになつておるようですが、これはその捜査上あるいは機密を要する点もあるだろうと想像しますので、捜査上支障のない範囲内において、その経費の使い方の実情を書面で当委員会に御提出を願いたい。
  34. 吉橋敏雄

    吉橋証人 ただいまの御要求につきましては上司にただちに連絡いたします。
  35. 内藤隆

    内藤委員長 質問の通告がありますから順次これを許します。志田義信君。
  36. 志田義信

    志田委員 証人にお尋ね申し上げますが、学園の中におきまして合法政党に隠れて、これを暴力的な革命のたてにするということに対しましては、あなたの方では先ほど憲法二十三條に保障されておる学問の自由のほかに、教育基本法に基いて禁止されておるから、これは違反行為として内偵するというお話があつたように承りましたが、教育基本法のどの条項でそれをおやりになつておるのか、それをひとつ伺いたい。
  37. 吉橋敏雄

    吉橋証人 ただいまの御質問の趣旨が明確を欠くのですが、教育基本法上における調査限界という意味ですか。
  38. 志田義信

    志田委員 教育基本法に基いて、何か禁止されておる條項があるというふうに承つたのですか、そうじやないのですか。先ほどあなたはそうおつしやつたのではないでしようか。そうした学生あるいは教授助教授が、学園自治に藉口してのそういう行動は、教育基本法にももとるものがあるというようなお話のように承りましたが、そうじやありませんか。
  39. 吉橋敏雄

    吉橋証人 教育基本法第八條には「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」という條文があります。
  40. 志田義信

    志田委員 そうするとこれは教育基本法の八條の適用だというのですね。
  41. 吉橋敏雄

    吉橋証人 そうです。
  42. 志田義信

    志田委員 それからこの愛大事件につきまして、学校当局証言台における証言は、特審局学校対象として調査した場合に、今までの実例に照すと、学校当局は何ら連絡ないしは協力を受けたことはないという証言をしておりますが、あなたの方では学内において調査活動を行う場合に、これらの事実について一々学校当局と連絡し、あるいは協力を懇請したような事実は今までなかつたのでしようか。それともしていけないという理由があつてしなかつたのでしようか、その点をひとつ……。
  43. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほど申し上げました「愛大戰線」の停刊措置をとる際には、学校と事前に連絡をとつた思います。特に学校と連絡をとつてならないという理由はありません。
  44. 志田義信

    志田委員 この「愛大戰線」の停刊措置については事前連絡がとられた、学校当局と連絡してはならないということはないというお話でありましたが、今度の愛大事件は、あなたの方が学校内の調査を極秘裡に行つておるということが、学校側、学生側の知るところとなつて、これに対する問題から学生が非常にいらいらしておる、そういうときにたまたま警察官学内に入つて来たのでああいう事件なつた、こういうように学長は一昨日われわれの尋問に対して答えておるのでありますが、その点につきまして、あなたの方では「愛大戰線」の停刊措置だけでなく、そういう重大な調査活動をする場合において、学校当局、少くとも学長等と連絡、あるいは協力をお願いしてやつてはぐあいが悪いことがあるのでしようか。その点をひとつお伺いしたい。
  45. 吉橋敏雄

    吉橋証人 特段に、お尋ねのように学校当局と連絡をとつて悪いという理由はないのであります。  なおただいまお尋ねのありました、本間学長が、特審のスパイが前から非常に多く入つておるということで、学校内部が動揺しておつたという問題でありますが、さような点はまつたくデマと申しますか、事実ないことによつたものであります。先ほども申し上げましたように、この後藤事務官は昨年の十二月末に、しかも相手方の学生の自宅で会つたのが最後でありましてその以前もその以後におきましても、学校内部に入つたという事実は全然ないのであります。
  46. 志田義信

    志田委員 あなたの方では、それをスパイ使つたか使わないかということは、これは別の問題といたしまして、とにかく学生にあなたの方の調査官が、調査の必要があつていろいろなことを依頼した、こういうことはあるだろうと思います。そういう場合に、そういう学生依頼するよりも、学校当局と直接に話合いした方が、総合的に話もわかれば、これに対する学校側の予防的な警告にもなるという点から考えまして、私はそうせらるべきじやないかと思いますが、その点はなぜできなかつたか。何かそういうことをやれば機密が教授会その他に漏れる、漏れるとそれがただちに学内のフラクシヨンに通報されるというような懸念があつてそういうことをしなかつたか、する必要がないと思つてやられたのか、その点をひとつお尋ねいたしたいと思います。
  47. 吉橋敏雄

    吉橋証人 お尋ねの点でありますが、東京におきまして東大その他の学校内部における調査等につきましては、ただいま御指摘の通り、本局におきましては学校当局と協力して、ビラの貸与を受けるというような方法をとつております。愛大の件でありますが、これは全国各地に各種学校大学がありますので、これについて一々この問題については学校当局と連絡せよとか、この問題については独自にやれとかいう指示は、本局から末端へは流しておりません。各支局長の責任におましてその情勢判断と申しますか、その事情によつていろいろな調査方法がとられるのでありてす。学校当局が非常に信頼できないからという理由で、この方法がとられたかどうかという点につきましては、現在のところ報告を受けておりませんので、十分にお答えできません。
  48. 志田義信

    志田委員 これはかなり学校側が正当であるか、あるいは警察側が正当であるかということに対する原因をなすものであると思います。あなたは取調べのケースの一つとして、学校側にやる方がいい場合には学校側にやる、あるいは学生に聞いた方がいい場合は学生に聞くというようなお話でありますが、この点はなぜ学校側と連絡協力な受けないでやつたのかということを調べる必要があると思います。学校側では特審局スパイ教育上因るという言葉を使つております。あるいは特審局学校と協力連絡をしようとすれば、日共のスパイにこれが漏れるという考えがあるのではないかという点は明確にする必要があると思いますが、いかがでしよう。
  49. 吉橋敏雄

    吉橋証人  その点につきましてはただいまお答え申しましたように、まだ十分なる報告を受けておりませんので、追つて調査いたします。
  50. 志田義信

    志田委員 その点は私はきわめて重要視しなければならないと思いますので、調査の上お知らせ願いたいと思います。  それからもう一つ、昨日本間学長は、愛大フラクシヨン活動その他については、自分は何も知らない、またいわれるごとき暴力革命などの端を発するような方向に行つていることは知らない、第一愛知県下は組織労働者というものがきわめて少い、自由労働者がいる程度にすぎないから、従つて暴動が起きるとか、暴力革命に向うとかいうことは考えられないということを言つておりますが、組織労働者がいれば暴力革命が起きて、自由労働者であるから暴力革命が起きないというような見解は、はたしてあなたの方としてはできるものかどうか。われわれは最近の状況によりますると、必ずしも組織労働者革命の先頭に立つておるとは思われない。むしろ自由労働者のいわゆる職安デモその他が暴力行動に移る場合が実例としては多々あるのでありますが、その点に対する証人の御見解はいかがでございましよう。
  51. 吉橋敏雄

    吉橋証人 ただいまお尋ねの、組織労働者がその重要な部分にならなければ、武力革命が成就できないかどうかという問題でありますが、私個人の見解といたしましては、組織労働者がなければ武力革命が成就できないということはないと考えております。
  52. 志田義信

    志田委員 学校教育法の第六十九條によりますと、特定人を対象とする場合においては、公開議座を設けることができるという一條がございます。これは証人も御承知通りだと思いますが、この公開議座を設けることができるということは、学会であるとか研究会であるとかいうものを含むものであるかどうか、その点はいかがでございますか。
  53. 吉橋敏雄

    吉橋証人 ただいま御指摘の條文の有限的な解釈につきましては、十分研究しておりませんので、ちよつとお答えしかねると思います。
  54. 志田義信

    志田委員 教授とか学生政治活動に対して限界があるとすれば、どういう点で限界があるというふうにあなたの方ではお考えになつておりますか。教授助教授講師あるいは学生が公開議座を設けて学会をつくるとか研究会を行う場合、それがどこまで行くと政治活動になるのか、どこまでは合法範囲だ、どの点が限界であるということを考えなければ、ちよつとあなたの方では何によつて学内調査する必要があるのか、その根拠がなくなると思うのですが、その限界はどこにおいておられますか、ひとつお知らせ願いたいと思います。
  55. 吉橋敏雄

    吉橋証人 学問の自由は御承知のように、研究あるいは表現の自由というものが内容に含まれておると思います。ただいまお尋ねの特審局調査限界でありますが、現在のところは先ほども申しましたような、細胞実体調査ということに限定されております。特審局のやつております点は、団体等規正令に基く調査活動というところに限定されておるのであります。
  56. 志田義信

    志田委員 そうすれば細胞実体調査の中にはたとえばその細胞内において、公開議座、学会、研究会等の集まりを利用して、集会、集団行進あるいは集団の示威運動に関する打合せ等を行つたという場合には、調査対象になりますかどうか、お尋ねいたします。
  57. 吉橋敏雄

    吉橋証人 いわゆる次官通牒には、学校構内における集会、集団行進、集団示威運動等の取締りについては、当該学校長が措置することを建前とするというふうにありまして、要請があつた場合に警察がこれに協力することになつております。     〔委員長退席、大泉委員長代理着席〕
  58. 志田義信

    志田委員 それではあなたの方の団体等規正令の第十條による学校内における調査活動というのは。どこまでを限界として細胞実体調査をなさるのですか。その実体というのは何をさして実体というのですか。細胞というのは先ほどもあなたが申しておられるように、合法政党共産党細胞活動をいうと言つておる。合法政党であれば、その存在することに対しては何ら違法でも何でもないでしよう。これに対する実体調査をする必要は、何によつて起きて来るかということです。
  59. 吉橋敏雄

    吉橋証人 虚偽の届出に対しては罰則規定がありますので、この届出実体にマツチしておるかどうかという点の調査であります。
  60. 志田義信

    志田委員 それでは団体等規正今の十條による細胞実体調査というのは、虚偽の届出であるかどうかを調べるだけにとどまつておりますか。
  61. 吉橋敏雄

    吉橋証人 それと、先ほど申し上げました講和発効まで有効であつたマ書簡に基くアカハタ並びにその同類紙及び後継紙に対する調査であります。これは現在はありません。
  62. 志田義信

    志田委員 それでは先ほど家庭関係で、学生の後藤というものと実家において面接した事務官のあることは明らかになつておりますが、そういう家庭関係を通じてその学生にそういう細胞の実態調査依頼する場合に、虚偽の届出であるかないか、アカハタが出ているか出ていないか、後継紙があるかないかということは、そういう学生を使うことの方が、学校管理者である大学学校長を使うことよりも秘密が守られて、しかも有効であるというお考えでやつておられるのかどうか、そのことが一つと、その他何か依頼事項内容がありますれば、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
  63. 吉橋敏雄

    吉橋証人 その調査方法の問題になるわけですが、これは各具体的な場所、具体的な事例によつて、その特異な状況と申しますか、いろいろな点から考えて、その当該上司が命ずるのでありましてこの点もまだ十分なる報告は受けておりませんので、先ほどの点とあわせて十分に研究してみます。
  64. 志田義信

    志田委員 それから知合いを通じていろいろ御苦労を願つたから、電車賃として光十箇と千円とをやつたというのですが、この金は、そのお願いした事務官の私のお金でしようか。それともこういう金は、国の予算から出ておるあなたの方の特審局のお金でしようか。
  65. 吉橋敏雄

    吉橋証人 いわゆる調査費であります。
  66. 志田義信

    志田委員 調査費として光十箇と千円をやつたつということになれば、これは調査を委託した形になると思いますか。
  67. 吉橋敏雄

    吉橋証人 そうであります。
  68. 志田義信

    志田委員 委託をする場合におきましては、上司の許可を得るとか、あるいは委託先を明示して、その金の支払いを受けるとかいう方法をとつていると思いますが、これは書類として残つておるのでしようか。
  69. 吉橋敏雄

    吉橋証人 いわゆる調査費には、あるテーマについて研究あるいは分析を依頼するといつたような純然たる調査委託費的なものと、それから報償費というものが予算上出ております。これは今言つた調査費の中の報償費に当る面でありまして、いわゆる車馬賃とか、電話をかける費用とかいつたような実費弁償の意味で出したおるので、事後に上司への報告もありますし、事前にあることを予想して若干の金額を当該調査官に渡す場合もあるわけであります。
  70. 志田義信

    志田委員 そうすると、実費弁償で報償費を出したということなんですが、これはひとり愛大だけの問題でなく、必要に応じては全国的にあなたの方ではそういうことをなさつているだろうと思うのですが、よその学校でやはりこういう事例がございませんでしたか。
  71. 吉橋敏雄

    吉橋証人 現在までのところ、ほかの地におきまして学生に対してかような依頼をしたというような事例は、愛大事件以外はありません。
  72. 志田義信

    志田委員 そうすると、愛大だけが特にこういう関係になつたのは、家庭関係だとそうした調査内容が非常にとりやすいという考えでやつたものと思われるのですが、それと特にその学生にだけ頼んで、学校側との間にそういう連絡をしなかつたというところが私は疑問に思うのです。もう一つ、あなたの方ではなぜその学生一人だけを特定に使わなければならなかつたか。個人関係があるということを言つておりますが、あなたの特審局関係者は何人いるか知りませんけれども、さらに探せば個人関係はたくさん出ると思いますけれども、どうしてそういう個人関係のただ一人だけを、しかもも全国で愛大だけの個人関係を使わなければならなかつたか。何かそこに学校当局に打明けられない何ものかがあるのだという気がするのですが、その点はいかがですか。     〔大泉委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば学校当局教授の構成について、あなたとしては、きわめて内容を知らせたくないような構成がなされておる。あるいは学校教授の中の半数は革新勢力に好意を持つ教授であるとかり、あるのはその半数はそうでないとか、こういうようなところから、調査は非常にしたいけれども、それが漏れるのだ。日共のスパイ活動の中にこちら側の情報が漏れるというおそれがあつて、特にこういう家庭関係を使つたのか、それとも偶然家庭関係使つたものであるか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  73. 吉橋敏雄

    吉橋証人 お答えいたします。この件につきましては、もう一つの理由があります。昨年の十月の十日に一愛大生という名前で特審局長あてに投書があつたのであります。ほかにパンフレツトが大分入つておりましたが、内容を読みますと、愛大学生自治会は同封のごとき決議をしました。学生の三〇%は愛大の赤の闘士です。助教授もほとんど赤く、また今はカムフラージユしていますが、小岩井洋法経学部長もかつては赤い正式党員として上海の花形であつた。補導部長の森谷氏も京城大のときはシンパであつた。かかる愛大で真の民主時代の教育に行われるはずがない。どうか愛大の前途のためにも、決然として善後策を講じてください。十月三日、一愛大生、という投書があつたのであります。これに愛知大学学生大会の名前及び自治会の二枚のパンフレツトが入つておりました。これに基きまして、本局から東海支局長の方へもこの投書があつたということの通報は来ております。しかしこれに基いて調査を始めたというわけではありません。先ほど申しましたように、内部の秘密機関紙の問題、それから細胞の実態調査という問題をかねて調査しておりましたが、さらにかような投書もありましたので、あわせて調査したということになつております。
  74. 志田義信

    志田委員 特審局調査というものはやはり国家権力の行使であると私は思つております。国家の権力を背景として調査するのでありますが、こういう調査をする場合にあたりまして、国家権力が何か暗い影を持つているような卑屈な執行力をもつて行うようなことが、学校当局及び学生に映るようなことがあれば、たとい赤でない学生もこれを不満に思うことは十分あり得ると思うのであります。学長の本間さんは昨日の証人台における証言として学生は社会正義に基いて、社会正義に対して奮然として立つという気持で今回の問題は起きたのであるということを言つておりますが、私は一部の学生はとにかくといたしまして、他の学生の中におきましては、あるいはそうした社会正義上許されないというような考えが、たといそれが誤つてつても、影響を與えるということはなきにしもあらずだと思います。従いまして、今一愛大生からの投書によつて学生の三〇%、あるいは助教授教授、補導部長等におきましても左翼の思想によつて律せられている者があるという投書があつた場合におきましても、学長との間にあなたの方では連絡する、協力を願うというようなことが今まで一度もなかつたということは、その学校に何かあなたの方としては明朗ならざるものを感じて、国家権力の行使にあたつても、その学校を国家の権力によつて適宜処置させるという立場にある学校長を使えなかつたという事実があつたのではないか。その点もう少し詳しくお話願いたい。
  75. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほどもちよつと愛大に対する特審局員の調査の経緯について申し述べました通り愛知大学におきまして、細胞が二十四年の十月に結成以来、相当活発なる活動を、いわゆる東三地区委員会等と共同して行つてつたという事実があるのであります。まだこれは、はつきりした確証はもちろんないのでありますが、現在の愛知大学教授助教授講師の中で、日本共産党員として届出のある方がありますし、かつて届出で、現在は脱党届は出しておられますが、届出のある教授助教授講師もあるのであります。さような点も東海支局長が、愛大内容についての調査活動について考慮した点ではなかろうかというふうに考えるのであります。
  76. 志田義信

    志田委員 そうすると東海支局長は、やはり学校内の調査活動を行う場合においては、教授助教授や補導部長等に、事前の活動が漏れるようなことがあつては、やはり調査活動において万全を期することができない。従つてこれはやはり家庭関係で知り合いになつ学生を使うことの方が、よく秘密も守られ、なお結果的にもいい、こういう考えで知合い関係を利用いたしてやつた、こういうふうに考えてよろしようございますか。
  77. 吉橋敏雄

    吉橋証人 私としては、さように推察いたします。
  78. 志田義信

    志田委員 そこで、これは他の証人にも聞かなければならぬと思うのでありますが、学生——学生ばかりにはとどまりませんが、教授及び助教授、補導部長等のいわゆる知識階級に属するような人々——共産党に入党して、そうして愛大フラクシヨンを支持、育成している人たちにはこういうことは言われませんけれども、知識階級に属する教授学生が、警察がああいう事態を起すことによつて警察を敵と思うようなことになるということは、国家のためにとらないのでありますが、その点について、何か十分御警戒をなさつて、この調査を進めるために学生を使つたのであるか、その点をひとつお尋ね申し上げます。
  79. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほどから繰返して申し上げますように、いわゆる家庭関係の非常にじつこんな間柄だというので、軽い気持でこの学生依頼したというのが事実でございます。
  80. 志田義信

    志田委員 私はその点をはつきりした方が、特審局のためにも国民の理解を深めるためにも必要ではないかと思う。共産党その他の方々はややもすると特審局を特高の再現だということを言つておるのであります。しかし国家の安全を保障し、その進展を国民一人として希望しないものはないのでありまするから、国家が不安に陥るような状態がかもされておることを、団体等規正令の十條によつて調べになつておる場合におきましては、できるならば、これは主管学校長に連絡をとつてなすべきであつて、たとい家庭関係があろうと、知合い関係があろうと、一学生を使つてやるということは、どうもあと味の悪い結果を残すのではないか。しかしそれも国家のためとならばやむを得ないのであつて、もし学生に漏らしたことが教授会に漏れ、教授会に漏れたことが助教授あるいは補導部長、あるいは三〇%は共産党に好意を持つておる者であるという学生に漏れたということになれば、東海支局長も、自分のこの学校に対する調査活動というものに対して十分考えなければならぬ。そこでやむなくその学生を、個人関係を利用して使つた、こういうならば話はわかるのでありますけれども、ただ漠然と、学生関係調査をさせるために、そのうちの一人の学生使つたということになりますと、一般大衆である学生を、ややもすると警察を敵にする側に向わしめる危険が非常にある。むしろ私は、一般大衆共産党の軍事行動の一環から分離して行く方向に特審局が行かなければならぬにかかわらず、そのやり方がまずいために、むしろこれを共産党の軍事行動の一環の中に巻き込ませて行くという危険が非常にあるのではないかと思うのでありますが、これは警察のためとか、あるいは特審局のためにとらざるばかりでなく、国家のためにとらざるところであると思います。が、その点に対する証人の考えを最後に承つておきたいと思います。
  81. 吉橋敏雄

    吉橋証人 だたいまの御発言ごもつともでありまして、先ほども申し上げましたごとく、特に学校問題、学生運動に関する調査と申します点については、慎重の上にも慎重を期するのが基本ラインであります。しかもその調査の方法といたしましても第一には、学校当局と事情の許す限り緊密に連絡をとつて、互いに協力し合つて行くのを建前といたしております。それと同時に、今御指摘になつたような、調査技術上におきまして、特に過敏な純真な学生をいたずらに刺激することのないようにという点に、十分に考慮してやらなければならないことは当然でありまして、結論的に申しまして、愛大の件についての特審の調査方法と申しますか、技術という点については、十分に再考すべき点があるという点は、われわれとしても十分に考えております。
  82. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほど学生運動についての説明があつたわけでありますが、その際共産党細胞関係につきまして申し述べられたが、この点は言われたことはわかります。この学生運動の中に、ほかの政党の方でもあるのか。この点どんなものでしよう。
  83. 吉橋敏雄

    吉橋証人 ほかの政党で、学内で支部を設けておるというのは、届出面においてはないようでございます。
  84. 山口武秀

    ○山口(武)委員 他の政党がなくて日本共産党だけ存在するというのは、学生運動の中においてどういう意味を持つことです。
  85. 吉橋敏雄

    吉橋証人 御質問の趣旨がよくわかりませんが。
  86. 山口武秀

    ○山口(武)委員 学生運動の中で、共産党届出だけはある。他の政党については学校内でつくられていない、特に共産党だけがあつてほかの政党がない、これは何を意味しておるのか、どのようなことで説明されるのか、こういうことを私はお尋ねした。
  87. 吉橋敏雄

    吉橋証人 非常にむずかしい大きな問題のように思われるのですが、学生というものは、御承知のように非常に純真であると同時に、一面英雄主義的な面があり、また正義観が非常に強い、また一面われわれの学生時もそうでしたが、力のあるものに対して反抗しようという——これがいい悪いは別といたしまして、反権力的な意識もあるのであります。さような点から、今の幾多の社会事象から見て、学生の一部が共産党細胞というものを結集される一つの原因になつているんじやないかというふうに、私の見解としては考えております。
  88. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、学生の純真、英雄主義、正義観、それから権力に対する反抗、こういうものが基礎になつて共産党細胞がつくられるということ、これは全体的の議論としてはどうか知らぬが、一面的にはそう言える。そうすると、自由党とか、改進党とか、社会党というものは、学生にとつてはとるにたらざる、魅力のないものだ、このようなことになつておるわけですか。
  89. 吉橋敏雄

    吉橋証人 その点は、私にはわかりません。
  90. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほどの証言を聞きましても、この学生運動の中には一つの基本的な流れがある、それは再軍備反対、徴兵も反対する、それから特に最近におきましては破防法反対、こういうようなことがスローガンに掲げられまして、それを中心として学生運動が行われているわけでありまするが、そういたしますると、この学生運動が起つたというのは、單に共産党活動したとかしないとかという問題ばかりでなくて、現在の社会的な事情というもの、政治的な事情というもの、こうしたものを反映したものが、ここに学生運動として現われて来たものである、このようには考えられないですか。
  91. 吉橋敏雄

    吉橋証人 学生も、もちろん社会の各事象に対する反応を示すというこいは、これは当然なことでありますが、現在行われておりますような学生各種運動形態は、いわゆる現在の各種の国法からいつてみて、これが一部の極左的な分子に踊らされて、扇動されて、本来の清純なる学生運動の域を脱しておる部面がたくさんあるのじやないか、それが各種の最近の学生の集団的な暴力事犯、破壊活動として現われておるのじやないかというふうにわれわれは考えておるのであります。
  92. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたの証言は、私は学生全般に対する侮辱ではないかと思うのです。学生というものが、一部の学生に踊らされて正常ならざる道にかり立てられるほど考えが足りないものなんでしようか、あるいはあさはかなものでしようか。
  93. 吉橋敏雄

    吉橋証人 今のお答えはあるいは言葉が足りなかつたかもしれませんが、全学生が踊らされておるという意味では決してありません。現在破壊活動に参画し、あおられてこれに踊つておる学生というものは、国内における全学生の数から行けばごく一部の者ではないかというふうにわれわれは見ておるのであります。
  94. 山口武秀

    ○山口(武)委員 学生の数と言いましても、小学生もいるのです。この場合問題になつているのは大体専門学校以上だと思う。そういう場合に、これまであげられて来た学生運動のいろいろなものを見ましても、そう一部の学生として片づけられる性質のものではないと思う、しかも学生運動の中心のスローガンになつておりますところの再軍備反対、徴兵拒否、破防法反対ということに対して、あなたの言われる一部分の学生がそういうことをやつておるとしまするならば、大部分の学生が再軍備をしろ、破防法をつくれ、こういうような動きを示したか、私はまだこれを知らない。あなたの証言は私は納得できない。もら少し説明してください。
  95. 吉橋敏雄

    吉橋証人 講和條約反対とかあるいは破防法反対というようなことは、これは一つの意思の表現ですから、別にこれが悪いというわけはないわけであります。これによつて事実破壊活動で行くというその学生運動が看過できないという意味であります。
  96. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私は学生運動全般を言つたのです。どういう思潮で学生運動が流れておるかという、この点を聞いておるのです。
  97. 吉橋敏雄

    吉橋証人 今お答えした通りであります。
  98. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それは答えではない。何が答えなんだ。そんなこまかい問題は……。あなたの態度がこまかい態度だというのです。この問題は終えてもいいのです。  その次に聞きますが、愛知大学でいわゆる学生スパイ使つたという問題——あなたはこれはスパイとして使つたのではないこういう説明をされましたが、いずれにしてもこの事件、この問題について、あなたがこれを知つたのはいつなんですか。
  99. 吉橋敏雄

    吉橋証人 これが問題になつたのは、社会タイムスに出たので私は知りました。
  100. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほどの証言によりますると、あなたは後藤という特審の東海支局の人ですか、この人とその学生が縁者の関係であつたので、家庭的にじつこんの関係があつたので、たまたまこれを使つたのだ、このようなことを言つておりまするが、これは前もつておなたも御承知つたのでしようか。
  101. 吉橋敏雄

    吉橋証人 全国の末端各地に至るまでの調査官の活動について、私は一々承知しておりません。
  102. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほどあなたは、この学生使つた問題がいわゆるスパイとして使つたのでないというような説明のつ一つとして、家庭の関係のじつこんということを持ち出したのです。ところが私にはその説明というものが、あなたの言つておる限りにおいては納得できなかつたのです。さらになお納得できないことがあるのです。あなたはこの問題について、社会タイムス記事が出てからこれを知つた、このように申しました。それからこの調査活動について、本部にいるのだから知るわけはない、これはいいのです。ところがこの事件社会タイムスに載りまして、ちようどそのころに社会タイムスの記者が特審のあなたのところに行きまして、鞍谷調査第三課次席から談話をとつておる。あなたと同じことを言つております。ほぼ同じことを言つております。こう書いてあります。「たとえば親戚関係学生から何となく情報を聞いた。それとは別に三千円ぐらいの小遣を与えたというようなこともありうるわけだし……」こういうことを言つておる。私は先ほどこれを読んで、あなたの証言を聞きまして、つじつまを合わせるのにこのようなことを言つたのではないかと、こういうふうに思う。もう少し納得ができるような説明はできないでしようか。
  103. 吉橋敏雄

    吉橋証人 この後藤事務官相手方の学生との経緯につきましては、先ほどいろいろな面からお答え申し述べた通りでおります。別に今御指摘の鞍谷事務官の言うたのとつじつまを合わせるとか、本人から私がどういうことを言つたということも報告を受けておりません。さようなことは毛頭ありません。先ほど申し上げましたような趣旨で、この後藤事務官愛大学生との関係ということにつきましては、この社会タイムスに載りましたので、本局といたしましてはただちに東海皮局長にこの趣旨を打電し、当人に上京を命じました。それで後藤事務官に対して私が直接喚問して得たのが先ほど申しましたような結論になるわけであります。
  104. 山口武秀

    ○山口(武)委員 学生スパイに使う場合に手がかりをつけなければならない。どの学生を使うか、学生が数百人あるいは数千人いる、この学生の中からスパイを一人使おうとする、こういう場合やはり一番近しいところの学生に目をつける。一番調査が行き届いて、その人の考え方あるいはスパイとして使えるか使えないかというような可能性の問題、こういうことを調べる点からも、あるいは話合いの機会を見つける点からも、家庭関係でじつこんだというならば、まずそこを当つてみようじやないか、こういうことになるのは、私はスパイを使う場合の常套手段の一つではないかと思う。こう言いますと、先ほど家庭のじつこん関係ということで、この学生スパイ使つたんでないというような、あるいはスパイ使つたという事実を特審でもいやがつておられるようですが、少くともその事情を緩和するような理由にはなつていないと思うが、それはいかがです。
  105. 吉橋敏雄

    吉橋証人 スパイと申されますが、われわれの方としましては、先ほど申しましたような事情で、いわゆる調査の一つの協力者という意味で、どこかで使われておるようないわゆるスパイのような意味でこの学生使つたものでは毛頭ありません。またこれが家庭関係というようなことで、こちらの事務官も、先ほど申しましたように、調査技術上、方法上はもちろん拙劣なところがあつたわけですが、若い事務官でまだ十分にこの調査技術の訓練が足りないというような点からいつて相手を信用し過ぎたというような点もあるかもしれませんが、これはどこまでも任意な協力を求めたというところが、本件の事務官学生との間柄であるというふうに、われわれは事態の調査の結果を結論づけております。
  106. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは大分スパイという言葉をきらわれておるようですが、考えるまでもないスパイです。(「スパイじやないじやないか」と呼ぶ者あり)お前らにわかるかい。黙つている。なぜかというならば、この依頼状を見ても内容は明白だと思う。印刷物を入手してください。しかもその中に発行者がだれであるか、発行の場所がどこであるか、配布者はだれであるか、配布の場所はどこであるか、その日時はどうであるが、発行の枚数はどうであるか、しかもこういうことになりますと、これは明らかに検察官の調査と同じです。單に任意に便宜をはかつたばかりの問題じやないです。明らかにこれは犯罪調査のときの調査と同じです。こういうふうに項目を掲げて依頼状を出しているじやないですか。こういうような調査をしながらもなおこれをスパイ活動でないというのですか。スパイ活動というものは、一つの団体内にあつて、自分がそれを調査するものという立場を相手に感ずかせないで、あるいは相手の信頼の中に依拠して、この信頼を裏切つて、その内部の情報を提供するものをスパイというのです。しかもその依頼状によりますと、学生運動の模様を逐次お知らせ願いたいと思いますと書いてある。逐次願いたい、かなり計画的な調査活動をする依頼状が出ている。これをもつてなおこれをスパイ活動でないと言い得るのですか。あなたの言うスパイ活動というのは一体何なんですか。
  107. 吉橋敏雄

    吉橋証人 その点につきましては、学生事務官との最初のいきさつでもうすでに申し述べた通りでありまして、相手がこれを快諾し、また相手学校の中で入手できると言つたものについて積極的に協力するというような意図であつたので、それを求めたのであります。別にこれをおる固定のと申しますか、専属の、ここへ潜入させてどうこうするというようなものでなくて、学生として学内で本人が任意に入手できたもの等について、できる範囲内において協力を求めるという意味で、現象に現われた言葉は細大漏らさず、発行所がどうだとか、印刷所がどうだとかいうことになつておりますが、依頼の一つの内容がそういうふうになつておるというので、本人のできる範囲内のことを協力を求めたいというので、またこちらといたしましては、調査としては先ほど申し上げましたように、秘密出版物が出ておるということになれば、これに対する停刊措置ということも当然考えなければならないというところから、その一つの方法として当該学生依頼したものでありまして、また事務官が直接に中に入るということはかえつて学生を刺激するのじやないかというような点もいろいろ考え合せた結果、さような方法をとつたということになるのであります。
  108. 山口武秀

    ○山口(武)委員 世間では、今あなたの言つたような活動内容スパイ活動という、特審局では特別な解釈を持つておるのかもしれませんが、なるべく世間並の常識に合せてください。  なおお尋ねいたします、これは本日の新聞でありますが、九州大学の法文経済学部地下室にある男が入つた、この人が学生から身分を尋ねられたところ、毎夕新聞の記者だと言い、次に西日本新聞の記者だと言つていたが、それがうそだということがわかつて逃げ出そうとした、この人が学生によつてつかまりまして、学生部補導課に同行させられた、ところがその人は東京の特審局員であるというように答えたようでありますが、この事件につきましてあなたは新聞でも談話を発表されておるようですが、該当者があるでしようか。
  109. 吉橋敏雄

    吉橋証人 この問題につきましては、ただちに本局並びに関東支局は東京にありますから、調べましたところが、九州方面に出張しておる者は一人もない、ただ一名が出張しておりましたが、きのうの十二時ごろに福岡から帰つております、従つて福岡を出たのが一昨日であるというのが一人ありますが、それ以外に本局方面から福岡に行つておる者は一人もない、ただちに昨夜九州の支局長に私から照会電報を出しましたところが、昨日これと行き違いに九州の支局長から電報が参つております。これによりますと、全然この支局員でもないし、支局の連絡者でもないということを確認したという電報であります。電文といたしましては「十一日牛後一時自称特審局員田中ツトム(二十八)は九州大学校内徘徊中を学生に発見され、校内に拘置中であるが、当支局員にあらず、また連絡者でないことを確認した。なお本人は身分についで一切語らないが、現在調査中」さような事実であります。
  110. 山口武秀

    ○山口(武)委員 特審の支局員でもない、連絡者でもないというような電報があなたのところにあつたといたしますならば、それはそれとして考えるとしますと、それ以外に特に依頼されてそのような調査におもむいた者であるかないか。この点はいかがでしよう。
  111. 吉橋敏雄

    吉橋証人 この電文の連絡者というのは、今山口委員が御指摘になりましたような、いわゆる民間協力者と申しますか、この連絡者のことを言うわけであります。従つて特審の局員及びその関係者にはないということを確認したということであります。  なおこれまでも特審局員を詐称した事例は全国的に幾多あります。ある機関の、あるいはある警察機関の者が、あることで特審局員だということを詐称した事件もありますし、また治安機関に関係のない者が特審局員であるということを言つて、ひどいのになりますと無銭飲食等をやつているような事例もあります。少くともこの九州の大学のケースにつきましては、特審局員はもちろんのこと、その関係者では絶対にないということを申し上げたい。
  112. 山口武秀

    ○山口(武)委員 最後にお聞きいたしたいのですが、特審といたしましては今後学生を使つていわゆる学生間の運動スパイをさせるとかこのようなことはなさることがあるでしようか。そういうような方針はとらないことになるでしようか。
  113. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほど学生関係調査の基本的態度については両三度申し上げた通りでありまして、学問の自由あるいは学園の権威というものは十分に尊重して、しかも必要な調査も事情の許す限り学校当局と連絡し協力するのを第一の方針にしております。さらに調査技術上におきましても、学生を刺戟するようなことが、万々ないような方策を、今後はさらに一層強く各調査員にも示達して、また御指摘のように学生を使うということは、学生に過分な刺戟を与えると考えられることでありますので、学生を使うというようなことは極力避ける、これを禁ずるということを調査技術上の面からいつても十分に調査員に示達しようと思つております。
  114. 山口武秀

    ○山口(武)委員 極力避ける、禁ずるということを言われたのですが、どちらだかわからないのです。  もう一つ。学生を刺激するという調査の技術の問題からあなたは問題にしているわけだが、昨日愛大学長はこう言つた学校というものは一つの家庭である、従つて学校側当局が学生側の思想傾向を特審から聞かれた場合、あるいは教授間の動向を聞かれた場合これに答えるわけには行きません、これは一つの家庭として当然のことであります、このような考え方に立つて言われた。あなたの言われた意味とは違うのですが、あなたはやはり單なる技術の問題として言われたかということが一つ。
  115. 吉橋敏雄

    吉橋証人 今の御発問の点でありますが、学校は一つの家庭であるから、家庭内の子弟に起きたところの犯罪行為と申しますか、また犯罪行為まで行かなくても、ある法に違反する行為があつても、これは治安機関に協力しないという意味ですか。
  116. 山口武秀

    ○山口(武)委員 いえ調査活動、私が今聞いたのはスパイ活動です。
  117. 吉橋敏雄

    吉橋証人 学校はもちろんそういうような態度じやないと思いますが、われわれの先ほど申しましたように、現在の政令に基く調査活動の一つの面として、細胞活動の実態と届出がいかに相違するかというような点についてこれも学校当局とできるだけ事情の許す限り連絡をとりたい、学校の協力を求めたいというのが根本であります。学校当局がさような調査にどうしても協力できないということになれば、これは別途の調査方法を、当然われわれとしては法の運営の上から考えなければならぬということになります。
  118. 山口武秀

    ○山口(武)委員 学生をなるべく使うのを避けるというのか、禁止するのか。
  119. 吉橋敏雄

    吉橋証人 学生は使いません。
  120. 浦口鉄男

    ○浦口委員 お尋ねしますが、日共の愛大細胞は現在も届け出て存在していると思います。が、何人ぐらい届け出ておりますか。
  121. 吉橋敏雄

    吉橋証人 愛大細胞届出当時は構成員は主幹者を含めて七名になつております。それが今春ほとんど卒業しているようであります。従つて現在は七名とは違つた数の構成メンバーが現実にいわゆる無届け細胞員としてあるようであります。
  122. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それは団体等規正令に違反しておりませんか。
  123. 吉橋敏雄

    吉橋証人 規正令の法条から申しますと、構成員が変更された場合には必ず二十日以内に届出を要する、これを届出しない場合にはその団体の主幹者に対する罰則規定があります。従つて形式的と申しますか、法的にはとの違反になつているわけであります。
  124. 浦口鉄男

    ○浦口委員 本間学長は、せいぜい二十名くらいだ、そのほかの者は冷静でビラが張られたり、ちらしがまかれてもそんなものは問題にしていないと言つておられますが、特審の調べ思いますが、大体二百五十名くらい尖鋭分子、全部尖鋭分子ではないのですが、とにかく相当の者が二百五十名くらいあるように調査もできていると聞いておりますが、この点いかがでしよう。
  125. 吉橋敏雄

    吉橋証人 確認というところまでは参りませんが、幾多の調査によつて一応届け出た党員は先ほど申しましたように大部分卒業しておりませんが、現在秘密細胞を組織している構成員はまず二十名前後ではないか。さらにそれに附随しての、はつきりと党員ではないが、尖鋭的な急進的な活動をしている者は二百名前後はあるのじやないかというようりに一応推論しております。もちろんこれははつきりした証拠はありません。
  126. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それは数ばかりで判断はできない、こう思うのです。それでこの委員会愛大事件を特に取上げたことは、ほかの大学のケースと違いまして、外部団体と密接な一連の組織指令によつて動きつつあり、今も動いておる、こういうことで特に取上げられたと思うのです。本間学長は、細胞の数から申しますと、二十名くらいしかいないし、これがたまたまいなかにあるから愛大は赤いなんと言われるが、東京のまん中にでもあればそんなものは問題にもならぬ、桃色でもない、こう言つておりますが、特審は愛大全体のそうした動きに対してどういうふうにこれをごらんになりますか。
  127. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほども触れたと思いますが、愛大細胞秘密細胞ではありますが実際のメンバーとしては秘密的なものでありますが、これは日本共産党の東三地区委員会相当緊密な共同行動に出て、しかもあの地区では活発な運動を展開しているというふうに結論的に見ております。たとえばこの愛大事件の直後にも、愛大事件の真相はこうだと、愛知大学自治擁護統一委員会といつた名義であるいは愛知大学新聞の中等にも、非常に一方的な内容をもつて愛大事件を宣伝しておる文書も出ておりますし、また名古屋大学校内においても同じくこの問題を大きく取上げておりまして、愛大の反フアツシヨ鬪争を支持せよというようなことで、五月十五日付の「夜明け」という秘密機関紙にも、内容が非常に詳しく出ております。従つて愛大のみならず、あの周辺の各大学のうちの一部極左分子らの活動というものは、決して看過できないものであるというふうにわれわれは見ておるのであります。
  128. 浦口鉄男

    ○浦口委員 過日の愛大暴行事件の容疑者で逮捕されました二階堂憲之介というのは、細胞として届けられておりますか。
  129. 吉橋敏雄

    吉橋証人 二階堂は出ておりません。
  130. 浦口鉄男

    ○浦口委員 八日名古屋地検が金丸講師外六名の家宅捜査をやつた、その原因になる入物がこの二階堂憲之介でありますが、これの持つていた書類、秘密文書が非常に問題になつた。いわゆる中核自衛隊の内容について詳しくその中で書かれておりまして、その中には金丸講師らの名前があつたということが、この検察庁の家宅捜索の大きな根拠になつている。こういうふうにわれわれは思うのでありますが、本間学長はその文書自体を見られたように私は記憶しております。おそらくその文書内容から言い、文体から言い、これはナンセンスだ、つくられたのだ、にせものだというふうな御証言もあつたのでありますが、この情報は地検だけがつかんでいる情報か、特審はこれに対してどういうふうに日ごろから考えておられるか、いわゆる中核自衛隊という組織に対してどういうふうに情報をつかんでいるか、それを承りたい。
  131. 吉橋敏雄

    吉橋証人 過般の当委員会におきまして、本間学長、安井検事正の喚問の際に、安井検事正から紹介されました例の文書でありますが、これにつきましては、御承知通り二階堂の逮捕の際、二階堂憲之介がポケツト内に所持しておつたものでありますし、その他のいろいろな文書とこれを照合いたしてみまして、われわれといたしましては、これは当人あるいは当人の関係者が、この愛大事件に対する報告書として書いたものに間違いなかろうというふうに思つております。この内容から判断しましてもかように考えておるのであります。
  132. 浦口鉄男

    ○浦口委員 特審がそういうふうに言われるのはけつこうでありますが、逮捕の際にポケツトに入つていたというふうにわれわれは聞いておりますが、そういう重要な文書を不用意に持つておるということは、われわれとしても一抹の疑問があるのです。この点もう一度十分に御調査を願いたいと思います。  それから、秘密党員を届けていないということは、団体等規正令に違反するとわれわれは思つておりますが、違反するというだけで、特審としては、それに対してどうしたらよいかというお考えはお持ちになつておりませんか。
  133. 吉橋敏雄

    吉橋証人 従来も、全国的に見まして、細胞無届や、あるいはこの変更届を出さないというものは相当あります。これは共産党に限らず、ほかの政治団体におきましても、善意で非常に遅れるとか、あるいはそのままにしておくというような事例もありました。従つて、さような事実があつたからただちに法を適用して摘発あるいは告発をするというような手統はとつておりません。よく事情を調査した上で、特に悪質な者に対しては告発の措置をとつておるのであります。従来の事例といたしましても、共産党細胞地区委員会等六団体ほどを、この政令違反で、無届団体、無届細胞ということで検察庁へ告発して、その一部が有罪になつ事例もあります。
  134. 浦口鉄男

    ○浦口委員 次に、委員長の本日の質問に対して、Vノート内容が述べられたのですが、過般のメーデー事件についてのこの委員会においても、やはりVノート内容が報告されたのですが、一体こういうものはどこから出ておると特審は考えておるか。
  135. 吉橋敏雄

    吉橋証人 御承知のように、現在一部共産主義者によつて非合法組織が設定されております。これはいわゆるビユーロー・システムと申しまして、中央にビユーローがあり、六地方に六地方ビユーローがあり、各都道府県に都道府県ビユーローがあつて、たとえば東京都といたしますと、東京ビユーローの下に六地区にわかれてそれぞれまたビユーローがあるようであります。われわれは幾つかの文書によつてかような結論を出しておるのでありまして、本日読み上げましたのは、東京都内においてのある地区ビユーローから出ております。しかもこのVノートというものについては、Vノート五月十五日支店というのにかような解説がありまして、VノートはVの決定であり、拘束力を持つものであるから、各S、Gは討議して具体化すること——すなわち、このSは細胞でありまして、Gはグループであります。従つてこのVノートというものは相当高度な一つの通達と申しますか、指令的な性格を持つておるものであります。非合法組織の内部において出されておるのであるというふうに理解しております。
  136. 浦口鉄男

    ○浦口委員 非合法組織の内部から出ておるということが問題だと思います。それと関連しまして、徳田球一氏以下八幹部がつかまらない、行方がわからないということを私はたいへん遺憾に思うわけであります。伝え聞くところによると、そういう地下の大幹部から基本的な指令が出ているというふうなことも言われておりますが、特審はそういう点について何か具体的な情報をつかんでおられるか。
  137. 吉橋敏雄

    吉橋証人 各種の指令等につきましては、御承知の五全協——昨年の十月に行われましたいわゆる五全協において決定された新綱領、あるいは軍事方針ということに関連した幾多の文書に出ておりますが、その文書の中に、今後は非合法の統一された單一中央指導部によつて一切の命令や方針は決定されるものである、下部はこれに従わなければならない、というような言葉が、あの報告書や関連文書の中に出ております。さような意味から申しまして、一つの單一非合法最高指導部といつたものがあるのではないかというふうにわれわれとしては推察しておるのであります。
  138. 浦口鉄男

    ○浦口委員 これはこの委員会で吉川特審局長がいつもたいへん追究されるのですが、徳田球一氏以下の幹部の行方については、調査部長としてどの程度調査ができておりますか。
  139. 吉橋敏雄

    吉橋証人 すでに約二年になりますが、徳田球一氏初め日共の大幹部を依然としてキヤツチできないという点は、治安当局としてはまことに申訳ない次第であります。その後も関係機関、特審、国家警察あるいは自治体警察、一層緊密に連携を保ちましてこの捜査を継続いたしておるのでありますが、全然これに関する情報はないというわけでは決してありません。また本日の新聞に出ておりますように、幾多の情報があります、が、最近は相当確度の高い情報、八幹部に関連した情報もキャツチしておりますが、いまだこれが的確なところへは行つていない。しかもこの現在のものではなくして、接着した過去のものというようなものが多いような段階で、その点はまことに遺憾な次第て、調査あるいは捜査の面において一層の努力をしておるわけですが、結論的に申しまして、とにかく努力の結果ある程度は進んでおる。これは全部傍観しておるというようなものでは決してありません。
  140. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それでは次に、これはあさつてここへ証人においでになるはずの矢内原東大学長並びに天野文部大臣にもお尋ねしたいのですが、ちよつと食い違つた点がありますので、特審の見解をただしておきたいと思います。それは教育基本法第八條のことであります。それは第一項において「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」こういうことがあります。第二項において「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」これに対するところの解釈であります。文部当局は、学校が特定の政治教育の、あるいは特定の宗教教育の場であつてはいけない、こういうふうなことを言つて非常にぼやけておる。私文部委員でもありまして、いつも問題になるのでありますが、学校というものはただ建物とグランドだけではないと思います。そこに教授学生があつて教育が行われる。「学校は」という学校というものの内容を特審はどういうふうに考えておられるか。
  141. 吉橋敏雄

    吉橋証人 お尋ねの点まことにごもつともでありまして、この「学校」というものの意味は、ある程度学校の施設あるいは教職員、さらに学生も含めたものというふうに解しなければ、この法の目的が達せられないのじやないかというふうに私どもとしては一応考えてはおりますが、現在のところ、この所管官庁である文部省の有権的な行政解釈といたしましては、学校には学生は入らぬというような見解をいまだに——本日も問い合せてみましたところが、さような回答でありましたので、その点のお答えをいたします。
  142. 浦口鉄男

    ○浦口委員 文部省はそういう解釈なんですか、特審局はどういう解釈ですか。
  143. 吉橋敏雄

    吉橋証人 今申し上げましたように、この法の所管官庁が文部省でやつておりまして、法の解釈はもちろん法制意見局にも連絡をとるわけですが、現在のところ文部省の解釈が行政的な有権解釈になつておりますので、われわれとしても異論はありますが、この解釈に従わざるを得ない。
  144. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そういたしますと、やはり実際の調査対象としての学校というものを特審局が見た場合に、やはり教授学生を含む、こういうふうに事実はなつて来るのですか。含まざるを得ない、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  145. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほどもるる申し上げましたように、現在の特審の調査活動というものは、非常に限定されておるのでありまして、団体等規正令の面からの調査活動に限定されておる、従つてこの教育基本法第八條の「政治的活動をしてはならない」ということに対する、これの有無、内容調査はいたしておりません。
  146. 浦口鉄男

    ○浦口委員 その点はまたあとで問いただします。それから一つ私は大事に考えるのですが、先ほど委員長質問の第四番目に、大学教授助教授講師学生等に日共への加入を認めている結果は学園自治をゆがめ、革命遂行拠点たらしめているのではないか、こういう御質問があつたのですが、それに対して吉橋証人の答弁をもう一度確認しておきたいと思います。
  147. 吉橋敏雄

    吉橋証人 現在日本共産党合法政党であります。従つて教授助教授講師あるいは学生共産党に入党、加入するということはさしつかえないことであることは間違いないところであります。しかしながら学校または学園の自由、あるいは学園自治学問の自由というような点から見まして、広い意味学校というものは学問教育の場でありますので、政治的鬪争舞台になつては断じていけないというふうに考えておりますので、さような意味から学校というものは政治的中立性をどこまでも維持して、学園秩序を維持しなければならない。従つてそれについて秩序を乱すような学校内の政治活動というものは許すべきじやない。これはこの次官通牒にもさような趣旨が出ておるように記憶いたします、二十三年十月八日付の文部次官から大学、高等専門学校長あての「学生の政治運動について」というのに、七項目にわけて、その点が列記されております。さような趣旨ではなかろうか、われわれもさように考えております。
  148. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それは吉橋証人の立場では答えにくいと思うのですが、どうも私は委員長質問に対してそれははつきりしてないと思うのです。委員長ははつきり言つておられる。日共への加入を認めている結果は、学園自治をゆがめ、革命遂行拠点たらしめているのではないかというのですから、これは拠点たらしめているか拠点たらしめていないか、はつきり伺いたい。
  149. 吉橋敏雄

    吉橋証人 従つて一部先鋭分子が学園自治学問の自由ということに名をかりて、革命遂行の一部隊としようとしておるのじやないかというようなことは、先ほどVノート内容をお読みしたことから推論できるのではないか。従つてこれは阻止しなければならないのじやないかというふうにお答えしたわけであります。
  150. 浦口鉄男

    ○浦口委員 なぜ私がそれを念を押すかといいますと、こういうことになるのです。日共への加入を認めている結果だけで、これが革命拠点だとかないとかいうことになりますと、憲法に違反して来るわけで、これは日共だけの問題じやない。ですから私は吉橋証人がそういうふうに答弁されることは先ほどもおつしやつたが、言葉をかえればほかの政党に加盟している細胞団体もない、またあつてもそうした実力行為あるいは暴力行為、また学園を乱すような政治鬪争的なものは、ほかの政党に属すものにおいてはないだろう、こういう見解だろうと思うのであります。そして日共に限つてはそうしたおそれがあり、そうした事実があり得る、こういう見解に立たなければ、この点が私は非常に問題だと思うのです。この点はどうですか。
  151. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほど申し上げましたように、日本共産党に入党しておる日本共産党員が学内にあるということだけで、これがただちに革命拠点になつておるということは言い得ないのじやないか、そのうちのと申しますか、ごく一部の先鋭分子が、さらにこの学園自治ということに籍口して、これを利用して革命遂行の一部隊にしようとしておるのじやないかということは、先ほど読みましたVノートでもおわかりになるんじやないか、そういうふうに見るわけであります。従つてさような点においては危険性がある、これは阻止しなければならないのじやないかというふうに考えている次第であります。
  152. 浦口鉄男

    ○浦口委員 大体それ以上あなたの立場としては言えないだろうと思つてそれで了承します。  次にこれは私もまだよく調べておりませんので、詳しい質問はできませんが、昨日の新聞で見ますと、「赤い高校生に異例の通告、軍事委の密命で動く」というような見出しで、板橋の岩之坂上派出所襲撃事件についての記事が出ております。事実としてはこれを新聞承知したにすぎないのですが、全国的に見ますと、高等学校の生徒、いわゆる細胞というか、もちろんこれは届け出たものではありませんが、そういう動きが強いということを、われわれ文部委員の立場から見ているわけですが、特審はそういう高等学校の生徒の政治活動、とりわけ日本共産党の色が非常に濃いと思いますが、そういう面についてどの程度の現段階において情報を持つておるか、それを承つておきたいと思います。
  153. 吉橋敏雄

    吉橋証人 高等学校でも一、二、規正令に基いて細胞届出をいたしておるものがあると記憶いたしますが、全国的に見まして、学生の集団事犯、労働者との共鬪による事犯、京都その他に起きておる事犯にも、高等学校程度の学生も介入しておる事実は最近各地に出ております。その全国的な計数はとつておりませんが、最近の事実としては、東京の中央メーデー後の騒擾事件におきましても、高校生が加わつておる。これは一東京のみならず、ほかの地区においてもさような事実が現われて来ておることは事実であります。従つてそれに対する措置も、学校当局としては十分に考慮されなければならんじやないかと考えております。
  154. 浦口鉄男

    ○浦口委員 私の質問を終ります。
  155. 大泉寛三

    ○大泉委員 証人の方では学校当局を信用されなかつたから、ああした調査手段を選んだのであろうと思うのでありますが、私どもは常識上スパイ活動などというものは、自分の行為に敵対行動をするような謀議が行われれおる、あるいはその行動に移りやすいという、その秘密を探る者に対してスパイというようなことを考える。そこでこのスパイという言葉は、これは確証から得られた言葉なんだが、スパイという言葉の起きるところに、やはり自分たちは秘密謀議の団体の中にあつたということを私どもは想像する。そこで学校——いわゆる学校というと学長初め教授学生というようなものですが、それをあなたの方では信用していなかつたか、あるいはある程度は信用したけれども、やはり調査活動上まずい、こう考えられたか、先ほど志田委員から大分聞かれましたけれども、一応承つておきます。
  156. 吉橋敏雄

    吉橋証人 愛大ケースにつきまして学生協力者に求めたという点につきましては、先ほども申しましたような二つの必要から調査に移つて、しかも関係はさような関係があつたという点と、最後にもう一点申し上げました投書があります。その投書によつて調査を発動したものでは決してありませんが、かような投書が途中においてありましたので、それによつて東海の支局長においては、学校当局と直接連繋をとるのは、いろいろ機密保持その他の面において遺憾な点がありはしまいかというところから、学校当局へ連絡をとらなかつたのじやないかというふうに私は推論しておるのであります。
  157. 大泉寛三

    ○大泉委員 あなたの方で学校を信用しておるか信用してないかということを私は聞くのです。とにかく私ども聞いておると、どうも学校も疑わしい、そんな疑わしいものに相談したからといつてむだだ。いわゆる学校自体がスパイという言葉を使つているのだから、スパイされるような行動があつたに違いないと断定する。あなたの方でスパイと呼ばれるような学校を信頼しているか信頼してないかということを伺いたい。
  158. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほどまでいろいろと御答弁申し上げておる通り、名古屋の支局長といたしましては、現地の諸般の愛大細胞活動状況、また従来のあの周辺の動きといつたようなその学校の内部の事情、先ほど申しましたように、かつて届出党員であつて、引続き現在も党員である教授助教授講師もあるような現状でありますから、さような点からいつて愛大につきましては学校当局に連絡をとるということは調査上遺憾な点がありはしまいかというところから、学校と連繋をとらなかつたのじやないかというふうに考えております。
  159. 大泉寛三

    ○大泉委員 どうも学校というと、学生もひつくるめて全体のことになるから、少数分子のために全体が迷惑をこうむる。こういうところからやはり秘密調査があなたの方で行われた、いわゆる全体に迷惑をかけたくないという一つの良心から発動された、私どもはこう見ております。そこで少数の指導的分子が普通の者に迷惑をかける、あるいは第三者にもえらい迷惑をかけるということは、もう大東亜戰争においてもよくわかる、たといわれわれが善良な者であつても、あるいは戰争がきらいな者であつても、やはり死んでおる。こういうように少数分子のために全体が迷惑をこうむるということは、この間のメーデーもそうなんです。そういうようにさせまい、全体に迷惑をかけさせたくないという立場からは、やはりあくまでもあなたの方は事後における一つの批判は別として、やはり責務上私は勇敢でなければならないと思う。そこでこういう団体等規正令によつて制約されるということは、自他ともに迷惑をこうむるのだから、これに対するあなたの改善意見はありませんか。もしあつたら承つておきたい。
  160. 吉橋敏雄

    吉橋証人 講和発効と同時に各種の占領法規は消滅いたし、また各種の治安法規も大部分が消滅あるいは近く消滅する段階にあります。従つて現段階においては、いわゆる治安取締りの法的根拠になるべき治安立法というものがなければならないというふうに、現在の各種の事象からわれわれは固く信じておりまして、衆議院において御審議を願い、目下参議院の法務委員会において愼重御審議を願つておりまする破壊活動防止法案といつたものも、現在の事態に処す必要欠くべからざる治安立法の一つではなかろうかとわれわれは考えておりますので、これの一日も早く成立することを期待いたしております。
  161. 大泉寛三

    ○大泉委員 私の聞かんとするところは、団体等規正令に対して何か改善の御意見があるかないかというのが一つ、それからあなたの職務上から見て、暴力革命を目的とする団体合法政党と認めておくということは適当であるかどうかということを、参考のために伺つておきます。
  162. 吉橋敏雄

    吉橋証人 団体等規正令は、これはかつての占領軍の覚え書に基いて出ておりまするポツダム政令でありますので、講和発効後六箇月たちますと、これの効力を失います。もちろんこれを肩がわりしたわけでは絶対にありませんが、独立国家としての必要性から、別個の、治安立法として破壊活動防止法を現在御審議いただいておるわけであります。  それから日本共産党の非合法化の可否の問題でありますが、これは各委員会においても、また本会議におきましても、法務総裁からしばしば発言されておりますように、非合法化するかどうかという問題つについて、現在もなお引続き研究中でありまして、まだ結論は出ておりません。だからまだ結論を申し上げる段階でないというのが現在の状態であります。
  163. 内藤隆

    内藤委員長 福田君。
  164. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 今まで各委員が徴に入り細を盡しまして御質問されましたが、私は四、五の点につきまして大局から見まして証人の御意見を承りつたい。  最近における学生運動につきまして、学問の自由と大学自治に対する問題が非常に脅威を受けておる。学問の自由と大学自治というものが脅かされておるように伝えられておりますが、学生運動をずらりと見たときに、第三者、世間人として見たときに、はたして学問の自由と大学自治が、この学生運動で問題になり得るだろうかということを非常に疑問に感じますが、この点について証人の御見解を承りたいと思います。
  165. 吉橋敏雄

    吉橋証人 学問の自由あるいは学園自治という問題につきましては、これまでにも文部大臣あるいは東大総長、早大総長、あるいは各界のその道の権威者がいろいろ述べられておりますので、私は專門外でありますので、これに対するはつきりしたことは申上げかねるのでありますが、現在行われておりますいわゆる学生運動というものの一部には、学園自治というものに藉口しで、いわゆる清純な学生運動と言いかねるものがいろいろあるのではないかというように考えております。
  166. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 ただいまの答弁でははなはだあいまいでございますが、証人のお気持だけはわかつたような次第でございます。過去におきまして、われわれの学生時代において京大事件というものがあつた。あるいはさかのぼりまして森戸事件というものがございました。当時におきましても、学問の自由、大学自治ということが盛んに言われたのでございますが、当時におきましては大学自治といい、学問の自由というものも、まつたく文字通り学問の自由、大学自治でございまして、その自治、自由を守るがための防禦手段であつた。しかるに今日におきましては、それはまつたく様相をかえまして、今日は学問の自由も大学自治も、これは暴力行為擁護のための手段としてしか使われていない。眞の学問の自由、大学自治というのは藉口手段である。ただそれに名をかりておるということだけであつて、破壊行為、暴力行為の道具にしか使われないという点を顧みますならば、私はこれはまことに嘆かわしい状況ではないかと思うのであります。大学の自由の問題があらためて世間の関心を引くようになりましたのは、昭和二十六年の十二月十二日の京都大学のいわゆる天皇事件であつたように思います。それから今年に入りましてから二月二十日の第一東大事件、四月二十日の第二東大事件がありました。東大構内の家宅捜索事件、それから閉鎖を命ぜられた全学連委員室のこじあけ事件、あるいは北海道大学事件教育大学事件、あるいはまた京都大学事件、東大教養学部の事件、最後にこの愛知大学事件、ごく最近では早稲田大学事件なんかも起きておりますが、こういうのを顧みますと、私は一つも大学自治学問の自由ということも脅かされておるような気はないのでございますが、一体証人はこういうことが問題となつておるようにお考えなんでしようか。
  167. 吉橋敏雄

    吉橋証人 政治鬪争が学園に持込まれるということは、これは絶対に否定さるべきことであり、また学問の自由でも、学園自治でもないと思います。今御発言の通り、全国的に各種学生が介入し、あるいは加盟された幾多の集団暴力事犯が起きておるのでありますが、これは学問の自由、学園自治というものとは無関係のものであるというふうに見ております。
  168. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 さつき私が言いましたように、これは暴力行為を擁護するがためのただ手段にすぎない。暴力的な革命、確壊行為をするための美名の手段として使つておるにすぎないのであつて、その実体が何ら危機にさらされてないというのが、私の信ずる見解でございますが、それにつきまして特にお伺いしたいのは、学生運動が最近急激に矯激化いたしまして、まつたく破壊的様相を帯びて来たのは、全学連が日共の手中に帰した結果であろうと思いますが、この点の御見解はいかがでありますか。
  169. 吉橋敏雄

    吉橋証人 全学連についてでありますが、御承知のように全学連昭和二十三年の九月結成されて、その後二十四年になつていわゆる規正令に基いて届出をいたしておるところの政治的団体であります。この全学連の指導勢力というものは、従来はいわよる日本共産党の国際派といわれておつた武井君らによつて指導されておつた、ところがこれが本年の三月初めになつて退陣されて、新たに日本共産党の主流派に属しておるといわれておる玉井君が委員になりまして、その後特に全般的な全学連運動というものが、労学提携という線を大きく打出して、広汎な運動が行われて来るようになつたということは間違いないと思います。
  170. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 労学提携の問題でございますが、この点につきまして、先ほどあなたが引用されましたところの、昭和三十三年十月八日の「学生の政治運動について」という文部次官通達でございますが、この第六項に、「学生労働者とは社会的地位及び責任を異にするものである。学生運動が労働運動に範をとり、又これに協同することは適当でない。」第三項におきまして、「学生が個々に結社に加入する自由は禁止すべきものではない」これは当然だろうと思いますが、「学校政治的中立性教育の自主性を守る為には特定の政党の支部又はこれに類する学外団体の支部を学校内に持つことは極力回避さるべきである。」こういう通達でございます。これは私は大学自治学問の自由のために当然だろうと思いますが、一体この文部次官の通達というのは少しも守られていない。これに対する措置というものを、治安当局も学校当局も、まつたくなきにひとしきがごとき状況で放置しておる。こういうことについて証人は一体いかなる見解をとられておるのか、これに対する今後の方針等を詳細に承りたいと思います。
  171. 吉橋敏雄

    吉橋証人 次官通牒には、ただいま御指摘の通り、本来の労働団体学生団体というものは違うという点で、さような動きは極力回避すべきであるというような通牒が出ておることは事実であります。しかも御指摘のように、その次官通牒の線が十分に実行されていないということも、これまた事実だろうと思つております。これに対しましては、まず第一に学校当局におきまして、学校学長初め学校教職員が、教育という面から見て、学生に対し、この点の正常かつ健全なる学生運動を行うように、十分なる教育を徹底されることが、最も第一義的に肝要ではないかと考えるのであります。治安当局といたしましては、これに基いて、いわゆる各種の法規に違反する行為に出た者に対しては、学生といえども容赦なく、その現われた事態に対してはこれを取締つて行くというのが現在の方針であります。
  172. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 はなはだ抽象的で因りますけれども、一体この十月八日の通牒につきまして、大学当局並びに学生が、この通牒に違反したる措置を平生やつておる。一体通牒違反の行為に対しては、どういう措置をお講じになつておられるのか。
  173. 吉橋敏雄

    吉橋証人 これはどこまでも文部次官の通牒でありまして、これに違反した場合に、法的な刑罰法規の適用があるというものでないことは御承知通りであります。従つて次官通牒に違反した行為に対して、これを行政的にいかにするかということは、学校当局において、何らかの基準があるのじやないかと私は考えております。
  174. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 今の御答弁によりますと、通牒に対しては、刑罰的な措置というものは何もない。ただ学校にこの通牒違反の措置はまかしておる。しかして学校当局の態度、今証人が申し述べられた通りである。そうすると、その実態は、この通牒はあつてもなきがごときであつて、蹂躪されて弊履のごとく捨てられて顧みられていないということである。こういうものは何の効果もないのだ、こういうことになりますが、さよう了承してよろしゆうございますか。
  175. 吉橋敏雄

    吉橋証人 これにつきましては、文部当局及び学校当局並びに治安当局において、さらに十二分に検討をしなければならないというふうに思つておりますが、現在のところは、通牒というものの性質からいいますと、先ほど申し上げましたような効果しかないということになると思います。
  176. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 効果の点は十分証人の御説明がなくても承知しておるつもりでございますが、文部次官通牒と申しますと、例の学内パトロールとか、そつちの方の通牒ばかりやかましく言われて、こつちの方はさらに顧みられていない。私はこれこそ大学自治学問の自由ということを規定した通牒だろうと思いますが、これを顧みずして、大学自治学問の自由もないと思いますが、これはどういうものでございましようか。
  177. 吉橋敏雄

    吉橋証人 私の私見といたしましても、御意見ごもつともと思います。学生の政治運動について、この文部次官通牒が的確に遂行されて行くならば、現在の学生運動の中の一部に見られるような一揆行為、破壊的な活動も、ある程度防止できるのではないかと考えております。
  178. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私は学生もまた学生運動と政治運動限界を自覚してもらいたいということを希望するのでございますが、今度の学生事件というものは、私は学園自治という問題から取扱うのは、まつたく的はずれで、実は世界情勢を反映する共産勢力の暴力革命だと見なければならぬと思うわけでございます。それが学園の内部で行われる場合におきましては、大学自治というスローガンが利用されておるだけであつて大学自治を守るのは目的でないのであります。だから共産革命の前衛をもつて任ずる一部の学生は、学外にあつても同様の暴力活動をやつておるのでございまして、現に自由と人権を脅威するという理由で、破壊活動防止法案に反対を叫んでおりますが、そういう口の下で平気で放火をやり、殺人暴行などの暴力的破壊行為を行い、直接に人権と自由とを蹂躪しておるのであります。平和を守れとか、再軍備に反対せよという口の下で、国内の武装、内乱、軍事方針というものを説いておる。これは一体どういうことでございますか。そもそも学問、思想、集会、結社などということは、これは一連の、自由を抹殺するところの共産勢力が、学問の自由だ、学園自治だなどと、スローガンにして、学園秩序を破壊しておると私は解釈しております。おそらく証人も同様の見解ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  179. 吉橋敏雄

    吉橋証人 一部共産主義者らによつで軍事方針というものが打出されておることは御承知通りで、私もその点については十分承知しておるのであります。またこれを一つの基盤として学園対象になつておるというふうに推測されると見られる点は、先ほど私が申し述べましたVノート内容から、ある程度それが推定できるのではないかというふうに考えられるのであります。
  180. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 学校の内部で、たとえば、憲法三十五條の違反が行われたり、いろいろな暴力行為が行われるということにつきまして、市中で行われるのと違つて、まつたく別箇の扱いを受けておるのは、一体これは学問の自由のためですか。大学自治というものがあるわけなのですか、非常に手ぬるいような感じを私たちは受けますが、一体どういうわけでございましようか。
  181. 吉橋敏雄

    吉橋証人 学問の自由あるいは学園自治という点につきましては、いろいろ言われております点で了解いたしておりますが、特に学内において行われておる点について、これに対する治安当局の取締りが緩慢であるとか、非常になまぬるいということはないのじやないかというふうにわれわれは考えております。
  182. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 最後に一つお伺いしますが、東大には近ごろ新人会と称する中正な団体活動が始まつておるように伺つておりますが、これは昔の新人会の流れをくみますものでございますか。全学連との関係はどういうものでございましようか。
  183. 吉橋敏雄

    吉橋証人 名前は新人会ですが、いわゆる民同系と申しますか、昔の新人会とはゆかりのないものというふうにわれわれは聞いておるのであります。
  184. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほどの証言に、日本共産党の非合法化問題について現在調査中である。このように言われましたので、これについて関連質問をいたしたい。この場合調査中と申しまするが、この調査中というのは何を調査されているか。日本共産党を非合法化すべきものであるかどうかということについて調査されておるのですか。それとも調査の事実の問題、八幹部もなかなかつかまらない、非合法化をやればよけいやつかいだというので、その方法を解決するために、その方法を調査するのか。いずれなのですか。
  185. 吉橋敏雄

    吉橋証人 先ほど申し上げました非合法化すべきやいなやについては研究し、また調査をしておるということは、これまで国会あるいは各委員会において法務総裁から常に申し述べておる通りでおります。その意味調査と申しまするのは、国際的にも見、また国内的にも見、内外の各観点から見て、日本共産党というものを非合法化すべきかどうかという政策論的な面、または非合法化した場合にいかなることになるか。現在のように合法にしておいた場合と非合法にした場合に、利害の点はいかんというような点について調査をしております。いわゆる比較法学と申しますか、あるいは国際的の外国の事例等とも見合せて、各国においては共産党活動というもの、あるいは共産党というものを非合法にしているか、あるいは一応合法にして、いろいろな面においてこれを規制、あるいはコントロールしておるかというような、各国それぞれ事情が異なつておりますので、そういうような各国の事情も研究調査し、また国内的にも政策の面その他からも、これが研究調査を続けておるという意味であります。
  186. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そういたしますと、国際的な関係その他の諸関係、そういうものがこの場合の非合法化するかどうかということの基準になるものであつて、日本憲法ではないのですね。
  187. 吉橋敏雄

    吉橋証人 現在しからば日本共産党を何によつて合法とするかということですが解散するということが一つ考えられるわけです、解散するには、今まだ、ある期間、十月までですか、団体等規正令が活用されておる。従つて団体等規正令によれば、ある団体解散ということは規正令の面からできるということがごく形式的には考えられるわけでありますが、これを除いては、現在の憲法のもとにおいては、いわゆる思想の自由というような観点から考えて、」日本共産党といういわゆる政治団体を非合法にすることが、法的にも、憲法の問題としても、どうかというような問題も、あわせて研究調査をしておるということになるわけであります。
  188. 山口武秀

    ○山口(武)委員 ちよつとわからないのです。今言われましたのも、憲法の点から見てもどうかというので、あなたの言われている場合、憲法が少くともあなたが事を律する基準になつていない印象を受けた。それで私が今具体的に申しまするのは、国際的な関係、その他の諸関係、これは国際的な関係だということになりますと、これはアメリカの政策かどうかということが、日本の場合には一番重要な問題になるが、それからその他にどういうふうにコントロールするかという問題になつて参りますと、これは日本国内における共産党と、これに対抗する自由党、それに結んでおる官僚の勢力、そういうものにおける力関係が事を決する。こういう立場からあなたは物を言つておられる。そうすると、あなたの受取られておりますところの憲法に対する考え方というものは、どういうふうなものだろうか。これが基準になつていないものだろうか。こういう疑問を起す。
  189. 吉橋敏雄

    吉橋証人 思想の自由あるいは結社の自由というような点の憲法の保障というような点からも考えるべき問題があるので、従つて先ほど申しましたように、もちろん内外の状況や、国際的なほかの国の事例も考え、また日本憲法も十分に研究した上で判断すべきものであると思うが、目下それの結論は出ていない。研究並びに調査をしておるというのは、法的な面、日本憲法の面からも当然これは研究調査を進めなければならぬことであるし、それをやつておるわけであります。従つていずれにしてもまだ結論には達してないのであります。
  190. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは繰返して日本憲法の面からもと言われましたが、日本憲法がさしみのつまになつておるのです。この考え方は、私は日本の支配階級の基本的な考え方じやないかと思う。たまたまあなたの口から言われたが、それが基本的な考え方になつているのじやないか。こういう点を考えませんか。この点だけ明瞭にして質問を終ります。
  191. 吉橋敏雄

    吉橋証人 憲法の問題はこれはもう当然の問題でありますので、だから当然山口委員もその点は御理解になつておられると思うので、憲法の問題はこれはもう日本人である以上は当然考えるべき問題でありますのでこの問題は触れなかつたのであります。
  192. 内藤隆

    内藤委員長 大泉寛三君。
  193. 大泉寛三

    ○大泉委員 どうも今日の情勢下においては、証人に対する国民の期待は非常に大きいから、私はあなたの自信のほどをちよつと伺つておきたいと思う。暴力というものに対しては、それが行われた後においては、法律や法規が適用されるかもしれないが、事前においてはまつたくどうすることもできない。火事の前にポンプで水をかけるわけに行かないのと同じである。しかし暴力を未然に防遏するということがあなた方の任務であり、またその対策を立てることがあなた方の責任です。そこで最後に、現在の特審局の機構組織ではどうも物足りないとか、あるいはこういう生き方ではどうもわれわれの手には負えない、国会で何らか考えてもらいたいというようなことを率直に述べていただきたい。
  194. 吉橋敏雄

    吉橋証人 ただいまの御発言に対しまして、われわれの立場から、またひいては各警察、検察庁も含めた治安機構の面から見て、国会へ御要望をしたい事項は幾多ありますが、これは一応国家予算という面にも掣肘されますので、われわれの厖大な要望はもちろんいれられないと思うのであります。特審局の例をとりますと、すぐ特審がどうしたと言われておりますが、現実に特審局員として従事しておる者は、全国で七百名にすぎないのであります。しかも所管しておる事務は非常に広範囲にわたり、調査面において、また情報収集面において、第一線の調査官は苦しい立場をも顧みず、最近においては非常に確信を持つて、国家に奉ずるという信念のもとに活動しておりますので、われわれは非常に喜んでおる次第であります。それでいろいろな要望もありますが、まず最も御要望申し上げたい点は、この調査官の待遇問題であります。現在特審局調査官は、一般公務員の待遇がちよつと是正された程度でありまして、一般警察官よりかはるかに低い。これがいわゆるまる腰で、しかも非常にむずかしい、また一部から見られると非常にいやな仕事に従事しておる。また第一線の調査官の家庭などへいろいろ脅迫文が来たり、あるいはいろいろなものが投げ込まれる。そのために、こんな安月給で特審局におるよりか、外へかわつた方がいいんじやないかというようなことを、今までしんぼうし切つた妻子から言われておるような者が、各地方にも出ておるような状態であります。にかかわらず、各調査官は最近において大部分非常に国家に奉ずる信念に燃えて活動をしつつあります。さらにもちろん教養の面その他においては、十分な民主的な見解や思想を持つための研修もあわせて現在行つておりますので、まず待遇の問題で少くとも最小限度の待遇を与えて、後顧の憂いなく、この職務遂行ができるように、ひとつ国会におきまして格段の御配慮を得たいと思う次第であります。
  195. 内藤隆

    内藤委員長 証人に申しますが、ただいまの証言はまことに適切なあなた方の声であろうと思います。しかしもちろん国家財政の上から、できればそうするのだが、できない場合もありますから御了承願いたい。特審局においては、さらに專心的に日本再建のためにわれわれは闘うという心構えを打出すように、指導されることをひとつお願いいたします。  他に御発言がなければ、吉橋証人に対する質問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでした。  次会は明後十四日午後一時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十六分散会