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田中証人 今回の不祥
事件は、私
どもといたしましてもまことに遺憾にたえないと存じております。当時の
警視庁の情勢判断といたしましては、一応
学生隊が先頭に立
つた、これが大体
全学連、
都学連の一隊四千人くらいであります。これに続きまして日雇い
労働者並びに地区細胞がこれに加担しておるようでありました。それから中部班に加わりました
朝鮮人の一隊が大体二千人くらいではないかと考えております。かような者がおそらく
皇居前
広場に入るであろう、従
つてもちろんこれをできる限り阻止しようという考えでおりました。
さらにこういうことも考えておりました。五つの
方面に
デモ隊が分散して行進いたしておりまして、
予備隊もこの五つの
方面に分散して
相当多数の者を派遣配置いたしておりましたので、手のあき次第ただちに
皇居前
広場の方へこれを招集いたしまして、そうしてここにおいて
態勢を整えて、もし不法に入
つた者については極力これを押して、一刻も早く
皇居前
広場から
解散させてしまうというような
計画を立ててお
つたのであります。
ただ暴徒があまりにも急速に
皇居前
広場の方へ参りましたので、時間のずれによりまして、
警備力において若干手薄であ
つたということはまことに遺憾だ
つたと思いますが、もちろん
警視庁としましては、これらの暴徒を鎮圧するに多数の警察官は必要なかろうと思
つております。六千名の暴徒を約三百数十名の警察官によ
つてこれを押し返しております。従
つて私
どもは十分なる装備を持ち、いろいろな
計画のずれさえなか
つたならば、もつとうまく取締りができたのではないかと考えて、今でも非常に残念に考えておるのであります。
現在
警視庁としては、装備においてもまだ十分ではございません。いろいろの点から考えまして、一層装備の改善には万全を期さなければならぬと思
つております。従
つてあの当時自分の力を過信したというようなことは絶対にございません。
警備力はいかにこれを十分にいたされましても、決して過ぎたることはないのでありまして、当時自分の力にあまりたより過ぎたためにああな
つたということはないのであります。
いま
一つは、
メーデー主催者に対する過信でありますが、この点については私
どもも
メーデー主催者に対しまして、はなはだ失礼な言葉であるかも存じませんが、少し過信りた点があるのであります。本年は当初から
メーデー主催者と
警視庁の間が非常にスムーズに進行いたしました一毎年いろいろトラブルがあるのでありますが、本年は主催者側も
警視庁の立場を十分に理解せられ、またわれわれも独立第一回の
メーデーであるから、できるだけ意義ある
メーデーを
実行させたいという考えで、協調的な態度で出ましたので、少くとも両者間の交渉は円満に進んだと考えております。円満に進んだがために、そのことがあとに
なつて考えてみますと、あるいは過信であ
つたということになるかも存じませんが、ただ
実行委員会としてはいろいろの点について
相当努力はしたようであります。たとえば先ほどの凶器のことにつきましても、それぞれ示達はしたようであります。したようでありますが、さてその命令がどの程度まで
実行されたかという
実行力、
指導力というものが、
メーデー主催者側に少か
つたじやないか、このような点が今回の不祥事の起きた原因でもあります。私
どもとしても当初から、
学生隊や
朝鮮人は
メーデーに参加させない方がよいのではないかということを強く主張してお
つたのであります。
メーデー主催者側におきましてももちろんそうであるということで、最初から同調してお
つたのであります。ところが途中からそれがいろいろな事情からして参加せざるを得ないような
状態にな
つたということも、不祥
事件の発生の
一つの大きな原因であろうと私は考えております。