○平井
証人 わかりやすいように簡単に地理的な関係を申しますと、
可部町というのは
広島市から大体十六キロの地点にある町であります。古市町というのは
可部に行く途中でありまして、
広島市から大体十キロ
程度のところにある。祇園町は
安佐地区警察署のある町でありますが、これが大体八キロの地点、これは大体
広島市から一直線に並んでおります。それから
安芸地区署管内の
海田市並びに船越の関係を申しますと、船越町というのは
広島市から大体六キロの地点にある町であります。
海田市というのは船越町からわずか一キロも離れておらない
程度のほとんど隣接の町であります。
そこでまず
可部の
税務署の
襲撃事件から申しますと、当日三月一日午前九時ごろ、古市町の
朝鮮人の
中心地である部落に、
朝鮮人が大体百八十名くらい集合いたしまして、
朝鮮語で演説をして気勢をあげております。十時ごろから
プラカード六十本くらいを手に手に持
つて古市町の役場に
デモ行進をしております。役場で何をしたかと申しますと、別に不法行為を働いておりません。
朝鮮人子弟のみの小学校分校を設置してくれ、
朝鮮人の専任教師を雇
つてもらいたい、教育費の負担をしてくれ、こういう三点を
中心に
要求をいたしまして、十一時三十分ころ引揚げております。ところがその後約六十名くらいが三々伍々、この古市町から
可部町へ来る——距離が五キロくらいあると思いますが、バスまたは電車等によりまして
可部町に行きまして、
可部税務署に押しかけた。そこで
署長がおらなか
つたものでありますから、署員に対して密造配の取締りの不当をなじり、一応合法的な談判——陳情と申しましてもはげしい陳情であります。談判をやりまして、そこまではよか
つたのでありますが、帰りぎわに百五十CC
程度の
びんに入
つた催涙液、これは後ほど鑑識で分析してみますと臭素クロームとアセトンの混合液だそうでありますが、これを帰りぎわに
事務室の机の上に投げつけて、さつと引揚げてしま
つたのであります。この液は後ほど
税務署員が
医師の診断によ
つて見てもらいますと、急性眼瞼結膜炎、急性刺激性咽頭炎を起させる液体だそうであります。そこへ私服
警察官が二、三名、警戒と署に対する連絡の意味で派遣されてお
つたそうでありますが、帰りぎわに
びんをいきなりぱつと投げてそのままさつと引揚けたので、警戒員が本署へ連絡して本署から
警察官が来たときには、すでにもう引揚げて逮捕できなか
つた、こういうのが実情であります。
次にこの
可部税務署を
襲撃した一隊と思われる者が、今度
可部からただいま申しました四キロないし五キロばかり離れておるところの古市町に現われまして、古市町から今度はさらに約一・五キロほど離れた祇園町、ここは
警察署の所在地でありますが、祇園町の役場に行きましたけれ
ども、
町長がおらなか
つたために事なく引揚げております。
次にこの一隊が、さらに午後一時半ごろ
安佐地区警察署へ押し寄せております。これは
密造酒取締りの不当について
署長に談判するというので、署の前へ集ま
つたそうでありますが、
署長の方で解散を命じたので、これは何らなすところなく解散をいたしましたけれ
ども、それから先約百三十名の者が、徒歩で
広島市に向
つて出発をしております。これは午後二時五十分ごろ解散したという報告でありますので、およそ距離が八キロ、約二里少々の距離でありますが、徒歩でぞろぞろと
広島市に向
つたのであります。しかもこの半分以上は女子並びに
子供の一隊であります。それで
警察の方でも、いわゆる型にはま
つた集団
デモ行進というふうには見ずに、いささか軽く見た節があ
つたのではなかろうかと思
つております。この旨は同時に
電話で
広島市警の方には通報はいたしてあります。
次に
安芸地区署管内の
状況を申しますと、やはり午前十一時半ころ、
安芸地区署の
朝鮮人部落の
中心地である船越町、この民線の
地区事務所に
朝鮮人約六十名が集まりまして演説を行い、気勢をあげまして、正午前ころ
プラカードを四十本くらい立てまして、
海田市
税務署に参
つております。この
海田市
税務署というのは、この部落から徒歩で約二十分くらいのところであります。
海田市
税務署に参りましてこれは
税務署長がおりまして、これに対して
密造酒取締りを緩和せよ、われわれの
生活を破壊するなというような
要求をしたのでありますが、午後一時半ころにな
つて、
税務署の方で退去
要求をいたしました。それまでは合法的な談判に終始したのでありますが、
署長が退去
要求をいたしますと、この六十名ばかりの
朝鮮人が
引上げぎわに、
玄関のところと応接間のところに二本同様の催涙液入りの
びんを投げつけてぱつと退散したのであります。当時
警察の方でも不法行為を予期してお
つたのでありますが、彼らの
行動は、いわゆる合法と非合法のすれすれのところを巧みに行くという戦法と思われますが、談判に終始すると見せかけておいて、帰りぎわにさつとこういう
びんを投げつけて行くという、実にすばやい巧みな
行動に対して、実は
警察の方で逮捕するのが間に合わなか
つたように聞いております。それでこの
税務署を出た一隊は、午後一旦部落に帰
つたような様子でありますが、それが再び午後四時ごろ、部落から三、四十名
程度の者が出て参りまして、
広島市
方面に向
つたのであります。ところが
広島市
方面に向うと思われたその一隊のうち約三十名
程度が、いきなりぱつとこの同町にある
民団の
安芸支部の
事務所に押し入りまして、そこにやはり催涙液の入
つたびんを室内に投げ入れ、窓ガラス等を破壊し、
民団支部長を殴打
暴行を加えて
引上げたのであります。
警察の方でも、
支部長の宅に対して
襲撃があるかもしれないというので、かねて警戒はいたしておりましたが、これまた現場で逮捕するに至らず、わずかに道を迷
つたとおぼしき一名を逮捕したのみで、その当日は逮捕しておりません。これは翌日逮捕しておりますが、当日は逮捕しておりません。この人間が、約二、三十名だと思いますが、これが徒歩で
広島市に向いまして、後ほど申し上げたいと思いますが、
可部から参
つたこの三十名
程度の
婦女子を交えた一隊と
広島市において合流しまして、市内を
デモ行進した、こういうわけであります。