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1952-02-29 第13回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十九日(金曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 大泉 寛三君 理事 福田 喜東君    理事 小松 勇次君 理事 佐竹 新市君       川本 末治君    志田 義信君       篠田 弘作君    野村專太郎君       椎熊 三郎君    藤田 義光君       井上 良二君    竹村奈良一君       山口 武秀君    浦口 鉄男君  委員外出席者         証     人         (新潟地方検察         庁次席検事)  原  長栄君         証     人         (警視庁防犯部         長)      渡辺健次郎君         証     人         (新宿カフェー         協同組合理事         長)      野本与喜雄君     ————————————— 本日の会議に付した事件  女子及び年少者人身売買に関する件  委員会報告書に関する件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。  女子及び年少者人身売買に関する件について調査を進めます。ただちに原長栄君より証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになつておる証人原長栄君ですね。
  3. 原長栄

    原証人 そうです。
  4. 内藤隆

    内藤委員長 これより女子及び年少者人身売買に関する件について証言求むることになりまするが、本委員会人身売買に関する件につきまして、調査を行うゆえんのものは、最近女子及び年少者人身売買事件全国的に激増の傾向にあり、これが取締り並びに保護救済機関運用に関する総合的観察は、わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要することと思いますためでありますので、証人の方でも率直なる証言により本委員会調査に協力されんことを期待いたす次第であります。  それではただいまより証言を求むることにいたしますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書を朗読してください。     〔証人原長栄君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ何事も  かくさず、又何事もつげ加えないこ  とを誓います。
  5. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりまするが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなさるようお願いしておきます。なお、こちらから質問しておるときはそのままでよろしゆうございますが、お答えの際は起立してお答えを願います。  証人原長栄君は、現在新潟地方検察庁次席検事でありますな。
  7. 原長栄

    原証人 さようでございます。
  8. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの簡単な現在までの略歴をちよつと……。
  9. 原長栄

    原証人 昭和五年に早稲田大学法学部を卒業いたしました。昭和六年行政科試験昭和七年に司法科試験を受けまして、昭和七年まで司法省の行刑局の方の仕事をいたしておりました。昭和十一年に司法官試補になりまして、爾来検事として在職いたしております。
  10. 内藤隆

    内藤委員長 検察当局から見た人身売買というものは、どういうものかひとつお述べを願いたい。
  11. 原長栄

    原証人 お答えいたします。私らの職域におきまして人身売買と申しまするのは、本来の意味におきましては刑法第二百二十六条第二項の、国外に移送する目的をもつて人身を売買したる者は、二年以上の懲役に処すという規定がございますが、その犯罪が本来の意味における人身売買でございます。また国際犯罪といたしましての人身売買も、やはり国外において醜業婦あるいは奴隷として働かしむる目的のもとに人身を売買するというのが、本来の意味人身売買という事件になるのでございます。しかしながら現在世間一般で通用しております人身売買は、ずいぶん広い意味に用いられておるように思います。それで結局は不法な人身拘束を伴うところの労務を提供させることによつて、これに対して財物を給付するという契約をすること並びにそのあつせんをすることが、一番広い意味人身売買ということに相なると思います。しかしながら私が取扱つております事件範囲といたしましては、最も狭い意味におきまして、婦女子娼家あるいは花柳界温泉街というような場所へ周旋屋の手を経て売買するということが、ごく狭い意味人身売買とかように考えております。
  12. 内藤隆

    内藤委員長 その点につきましては、いずれまたお伺いしたいと思いますが、あなたは現在新潟地方検察庁次席検事として、直接に取扱つておられるその人身売買事件の実態というようなものを少しお話願いたい。
  13. 原長栄

    原証人 ただいま申し上げました狭い意味における人身売買事件というものは、近来におきまして非常に激増いたしております。統計上からは新潟地方検察庁におきます受理事件といたしましても、昭和二十三年が十九件、昭和二十四年が十五件、昭和二十五年が十九件、昭和二十六年に至りまして百十件受理しておりますが、御承知通り統一的な法律がございませんので、犯罪の種類といたしましては、いろいろな法律にまたがつて発生しております。たとえば児童福祉法違反とか、職業安定法違反とか、昭和二十二年勅令号違反性病予防法違反とかいうような、各特別法個々違反として事件が起きて来るし、それらを全部ひつくるめまして、ただいま申し上げました百十件になるわけでございます。
  14. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとお伺いしますが、一躍十倍に近い数になつたのはどういう原因なんです。
  15. 原長栄

    原証人 これはやはり世論が反映したことが大きな原因だと思うのでありますが、なお私のことを申し上げて恐縮でございますが、前任地以来いわゆる人身売買事件について相当の関心を持つておりました関係上、県下一齊の検挙取締りというようなことを指令いたしまして、事件もふえておりますし、また警察より送致されます事件の約五割に近いものが起訴されておるような状況でありまして、またほとんど大部分が公判請求によるところの体刑の処分というような関係上、警察署におきましても、大いに関心を持ちまして事件を検挙するように相なつた結果と考えております。
  16. 内藤隆

    内藤委員長 どうですか、これはまだまだあるような気がしませんか。
  17. 原長栄

    原証人 それは社会の現状をごらんいただきますとわかります通り、今日の現実の姿は昔の遊郭が復活したばかりでなく、娼家が続々と増加しておる。その他いろいろな名義をもつて売淫業者がふえておりますので、これを徹底的に検挙するということになれば、全部というてもよいくらい法律違反しておるわけでありまするから、幾らでもふえる余地があるのでございます。
  18. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの方の新潟では、やはり周旋業というか、仲介業というか、そういうものはございますか。
  19. 原長栄

    原証人 相当大きな全国なつながりを持つております周旋屋新潟各地に散在しておりますので、そういう事柄も新潟事件の非常に多い原因をなしておるのであります。
  20. 内藤隆

    内藤委員長 新潟のある郡のごときは、結婚前にさようなことをすることを道徳的に何とも考えていないというようなことを聞いたことがありますが、伝統的にそんな悪習慣があるのではないのですか。
  21. 原長栄

    原証人 御承知通りでありまして、新潟県は経済的要因として非常に大地主がある一方、貧農が多いのでありまして、そういうような関係から、農家は必要な人手を残したほかはことごとく他へかせぎに出すというようなことが昔から行われておりますので、男子の方は季節労働者として他府県に働き行つておりまするし、女子のごときは有名な紡績女工といたしまして、京、大阪方面まで働きに出ております。昨年の上半期、一月から六月までの間における新潟県下の女工就職件数は約一万件に近いというのでありまして、こうしたことから女子が家庭を離れることによつて売淫婦の方に落ちて行くというような傾向が非常に強いのでありますが、また新潟県の社会的原因としての、封建制の残存とでも申しますか、非常に封建性が強いというようなことから、親は自分子供を養育するというよりも、むしろ子供に依存して生活して行くことを当然と考えております。それで財産のないものは、結局女の子働きによつて生活を維持する。女の子もまたそうした稼業につくということはほとんど恥としていないというような事実が、われわれの取調べの間におきましても顕著に現われておるのであります。たとえば、ちよつと例を申し上げてよろしゆうございますか。
  22. 内藤隆

    内藤委員長 どうぞ。
  23. 原長栄

    原証人 取調べの間におきまして、こういう話があつたのでございます。まだ売笑婦に落ちない前の女性が、農家に農業の仕事に住込みで奉公しておつた。ところがそこの主人のむすこに手込めにされようとした。それで驚いて逃げ帰つたところが、その母親がたいへん怒りまして、がまんしろと言うて追い帰したという事実がありましたので、検事がその母親を呼びまして、それは非常に不心得ではないかということをさとしましたところが、その母親は憤然として、私らは娘を奉公に出す以上は、その主人が手をかけるということは当然覚悟しておるのだ、それを驚いて逃げて帰るというようなことでははなはだ困るということを、むしろ検事の方に抗議をするというような事実もあつたのであります。なお約五十名の売笑帰になりました者を取調べました際に、そのうちのどのくらいが、自分の娘が売笑帰となつたことについてはずかしい思いをしておるか、あるいは娘の不幸をとめようとしたかどうかということを調査いたしましたところが、五十名のうちわずか二、三名の者しかそういうものはなかつたという事実があるのであります。従つて女の子は、どこそこの娘はどこへかせぎに行つて何万円送つたというようなことを聞けば、自分もそれに習わなければたいへんな親不孝だというように考えまして、きそつて前借をして身を落すという傾向が非常に顕著であつたと考えております。
  24. 内藤隆

    内藤委員長 新潟県内特飲業者というようなものはやはりあるわけですね。
  25. 原長栄

    原証人 はあ。
  26. 内藤隆

    内藤委員長 それから紡績女工を入れるというような業者もおるわけですね。
  27. 原長栄

    原証人 はあ。
  28. 内藤隆

    内藤委員長 その特飲業者実情はどうです。
  29. 原長栄

    原証人 公娼廃止覚書が発せられましてから、公娼は一応なくなつたのでありますが、どうした行政上の指導でありますか、昔の遊郭地帯である特殊喫茶、あるいは特殊カフエー特殊飲食店というような名称のもとにほとんど同じ業態をそのまま残しておるのであります。これは新潟県に限りません。全国同一だろうと思いますが、その件数等につきましては、はつきりした数字をつかんでおりませんが、とにかくそういうような名称のもとに依然として遊郭的存在が残つておるという実情でございます。
  30. 内藤隆

    内藤委員長 そういう特飲業者のところに前借をして行つておるというような一種の被害者ですね、そういうことについて何か顕著なることはありませんか。
  31. 原長栄

    原証人 私どもの調べました範囲におきまして、昔の公娼時代のように目に見える人身拘束というようなことは一応なくなつております。売笑婦歴史は、わが国におきましてもきわめて古い歴史があるのでありますが、昭和二十一年一月二十一日における公娼廃止に関する覚書が出まして、憲法の第十八条でありましたか、何人も奴隷的拘束を受けないということが宣言されましてからは、人身拘束を伴うところの売笑婦というものはすべて壊滅いたしました。一応日本の売娼史は御破算になつたのであります。それで近来非常に増加しておる売笑婦は結局その後の社会史的な意義を有するところの産物であると考えておりますが、非常に巧妙な方法をもちまして昔のような人身拘束を伴うところの労務を提供させておるという実情でありまして、これを具体的に申し上げてよろしゆうございますか。
  32. 内藤隆

    内藤委員長 どうぞ。
  33. 原長栄

    原証人 具体的に申し上げますと、まず女と雇い主とは収益の割合は五分、五分であります。それは日雇い名義として五分を雇い主がとるのであります。あとの五分は結局女の食事代衣装料化粧料、それから医療費あるいは前借支払い等に充てられるわけでありまして、女はまず午後の四時ごろから店張りをいたします。そうして街頭を通る客を引くのであります。その間において早く客がつけばそれまででありますが、客がなければ午前三時ごろまでは客を引かなければならない。料金の方はシヨート・タイムと申しまして四百円から五百円、遊び客の一時間というのがございますが、これが大体千円でございます。それからとまり客は千五百円という値段でありまして、それも女の腕次第で値段の方はいかようにもなる、大体一箇月の収入は多い者は十五万円、少い者では日に二、三千円というのが大体相場であります。しかもこれは新宿の例でございますが、現に私ども公判係属中の小島清造に関する職業安定法違反事件がございます。それは新宿の二丁目におきまして、特殊カフエーを九軒経営しておる一番大きな業者でございますが、女を八十名かかえております。その成績の奨励策といたしまして、一等から十等までのかせぎ高の多い者に賞金を出す、これは十日目計算になりますが、一等は七、八万円、それから十等が大体五万円というようなところで、一等には千五百円の賞金、十等が二百円の賞金というような方法奨励策をとつておる。非常にかせぐ女は、衣装をつくつたほかに、一年間に五十万円の現金を残した者もあるということであります。しかしながら大体は着物を残した程度でありまして、月々の親に対する仕送りをして、その他には現金は残らないというのが大半の実情のように聞いております。  その他、外出その他については自由ということになつておりまするが、やはり買物等に出る際には、各店にママと呼ぶ中年の婦人がおりまして……。
  34. 内藤隆

    内藤委員長 昔のやり手ばばあみたいなものですな。
  35. 原長栄

    原証人 ええ。今はハイカラになりましてママさんと申します。そのママさんが本人について行つてデパート等から衣装を買つてやるというようなことで、やはりある程度の自由の拘束ということも絶無ではないという実情でございます。
  36. 内藤隆

    内藤委員長 今あなたのおつしやつたことは、あなたが直接取扱つておられるわけですね。
  37. 原長栄

    原証人 私は今第一線の指揮官格でありまして、直接被疑者に当つておりますのは、他の刑事でございますが、すべて私のもとに報告があり、また記録も読んでおりますので、大体間違いないと思います。
  38. 内藤隆

    内藤委員長 どうです、新潟から最近東京へそういうふうなものがたくさんまわり込んで来るのですが、今東京都との関係はその一軒だけですか。
  39. 原長栄

    原証人 東京都との関係は、ただいま一軒だけでございますが、これがすこぶる注目された事件になつておるのであります。と申しますのは、いわゆる東京赤線区域、これは旧遊廓十七箇所を赤線区域と称しまして、取締りをしないことになつておるそうであります。直接警視庁等から聞いたのではありませんが、被告人側の方ではさように主張しておりまして、赤線区域に手を入れたのは新潟地検が初めてだというのですが、そんなべらぼうな話はないだろうということで、現在公訴中であります。今までも他の地検におきまして周旋業者を越訴した例は相当ございますが、いわゆる特殊喫茶とか特殊カフエーというような業態で容認と申しますか、黙認されている業者を、直接起訴したということは、あまり例がないのじやないかと思つております。それと、起訴の事実が女を公衆衛生上有害な業務につかせる目的をもつて雇い入れたという職業安定法六十三条二号の犯罪として起訴しておりますが、これは一番強力な取締り規定でありますので、法定刑懲役一年以上十年以下、罰金刑もございますが、懲役であれば一年以上十年以下、いわゆる重罪事件に該当する取締り法規であります。そしてこれが有罪となりますれば、東京はもちろん、全国の同様の業者は致命的な打撃を受けるという関係になりますので、赤線区域における売淫婦公衆衛生上有害じやないのだということを極力主張いたしまして、いろいろ証人を立てて争つておるような次第でございます。
  40. 内藤隆

    内藤委員長 赤線区域というのは、東京都内に十七箇所ありますか。
  41. 原長栄

    原証人 と聞いておりますが……。
  42. 内藤隆

    内藤委員長 今まで治外法権みたいにしておつたところへ、新潟地検が初めて割込んで行つた、こういうわけなんですね。
  43. 原長栄

    原証人 それは、私の方から割込んだということにはなるのでございますが、犯罪発覚端緒といたしましては、十一名の新潟県の女が、悪周旋屋に連れられまして、その小島清造のところに売られたわけであります。ところがそのうちの数名が一団となつて逃げ帰つたのです。それと、その前から売られて行つた女の親の方から捜索願が出ておつたというような関係で、逃げ帰つた女を調べましたところが、同様な運命のもとに働いている新潟の女が相当おるのだということがわかりましたので、昨年の五月二十九日に小島清造を逮捕いたしまして、六月十四日まで身柄を拘束して取調べたのであります。そういうような端緒から、結局新宿業者に手を入れたという結果になつたのであります。
  44. 内藤隆

    内藤委員長 人身売買事件に関する関係官庁取扱い実情を少し聞きたいのですが、まず警察取扱い状況はどうですか。
  45. 原長栄

    原証人 何と申しましても、東京都がそういう赤線区域というものを温存しております関係がありまして、これは地方の末端にもやはりお手本として示されているわけになりますから、警察当局といたしましても、集娼に対する取締りということはなるべくしない、ただいわゆるパンパンを取締りの対象にしておるという実情であります。
  46. 内藤隆

    内藤委員長 職業安定所なんかはどうです。
  47. 原長栄

    原証人 職業安定所の方は、職業安定法を活用いたしますると、相当強力な取締りができるのでありますが、売淫婦がはたして法律上の労働者と言えるかどうかというようなことその他で——よその官庁でございますから、内情はわかりませんが、あまり売笑婦事件について安定所の方から告発されるというようなことは、これまでございません。
  48. 内藤隆

    内藤委員長 それから労働基準監督署というのがありますな、こういう方面はどうです。
  49. 原長栄

    原証人 これも労働基準法がございますので、深夜業の禁止とか、いろいろな取締り法規がございまするが、この方も同様労働基準法売笑婦に適用したという例をほとんど聞いておりません。ちよつと地検立場を申し上げます。もちろん告発がなくてもわれわれの方で検挙することは可能でございますが、こういう特殊の行政面でありまして、やはり労働行政労働行政当局取締りをまつて処理するという建前になつておりますし、また水産行政であるなら水産庁の方からの告発にまつというような関係になりますので、地検自体としてもこれまで独自の方法労働基準法違反として検挙したようなこともございません。
  50. 内藤隆

    内藤委員長 そこであなた方直接に現行人身売買関係法規を適用するのですが、その場合に特にこの点が不備だというようなことにお気づきになつた点がありますか。
  51. 原長栄

    原証人 ちよつと今小島清造事件について触れたのでありますが……。
  52. 内藤隆

    内藤委員長 一つずつ申して行けば、たとえば児童福祉法関係からはどうです。
  53. 原長栄

    原証人 個々のそうした取締り法規は、児童全般取締り法規としてはけつこうだと思います。また職業安定法にいたしましても、これというて不備な点はないのでありますが、ただ人身売買というようなものに適用するということが、どうもやはりそれを目的とした法規でありませんものですから、いろいろ解釈上疑義が出たり、あるいはそういう特別法が散在しておる関係上、どうしても取締りに熱意が欠けるというような関係になります。
  54. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとたとえば労働基準法あるいは職業安定法等人身売買というようなことが直接の目的じやないものだから、不備なところもあるけれども、大体ねらいどころが違つておるからわからない、こういうわけですね。
  55. 原長栄

    原証人 そうです。
  56. 内藤隆

    内藤委員長 それでそういう人身売買に関する法規不備その他を直接にお考えになつて、どういう点について改正すればいいかというような何か御意見でもありましたら……。
  57. 原長栄

    原証人 ちよつと横道にそれるかもじれませんが、重要な問題だと思いますので、特にこの委員会で御検討願いたいと思う点を申し上げます。たとえばただいま申し上げました職業安定法第六十三条二号の「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、」という規定がございますが、これが一番有力な取締り法規であるのです。いわゆる赤線区域公衆衛生上有害な業務でないということを極力争つておるのですが、それの証人といたしまして被告人側から申請されたのが東京都の衛生局予防課長与謝野光氏でございます。この方が昨年の十月二十七日ごろ新潟地方裁判所へ出まして、重要な証言をされたのであります。それは簡単に申し上げますると、赤線区域売笑婦は一週間に一回の検診をしておるのだ、それと客をとつた場合にその前後に洗滌するのだ、これで性病を感染させる危険はないのだ、安全圏にあるのだ、従つて衛生上有害な業務でないのだということを証言されたのであります。こうなりますると、われわれ取締り立場から非常に重大な影響がございます。また売笑婦の絶滅というようなことはもちろん政治問題でございますが、結局性道徳の破壊、それから性病の蔓延を防止するということが二つの大きなねらいだと思うのであります。それが安全圏にあるんだ、危険じやないんだということに、取締り責任者から宣言されることになりますると、性病が恐ろしくて寄りつかなかつた者も、何だ、安全なのかというようなことで、むしろ奨励するようなことにもなりましようし、また事件自体にも非常に影響する、場合によつては無罪になるというような関係がありますので、私の方からも法務府当局に、はたして検診一週間に一回と洗滌性病予防が完璧であるかどうかという問いを出しましたところが、しからず、検診は何回やつたつて危険は危険だという回答に接しましたので、私の方から反対証人といたしまして、性病学最高権威者である東大の市川篤二教授証人に申請いたしまして、昨年の十一月二十九日に新宿簡易裁判所に裁判官、検事弁護人が出張いたしまして、市川教授証言を徴したのであります。ところが一週間一回の検診洗滌性病が予防できると思うことはナンセンスだ、結論はナンセンスだという証言を得たのであります。東京都の衛生局予防課長という重要な地位におられる方であり、また赤線区域性病予防の直接の指導者監督者である方がそういう認識を持つておられることでは、結局東京都における赤線区域に対する認識というものがはなはだ疑わしいのではないか、これが全国の例になるということではまことに困つたことだ、かように考えるのであります。もちろん予防課長も悪意を持つてあるいは故意にそういう証言をされたとは思いませんが、しかしながら医学博士の学位を持ち、またアメリカの予防衛生の大学も卒業され、マスター・オブ・パブリツク・ヘルスという学位まで持つておられる方が、そういう認識のもとに予防行政をとつておられるということであれば、これはゆゆしき問題じやないか、かように考えます。もちろん個人的な恩讐は毛頭ございませんが、これは東京都のみならず全国的な大きな問題じやないか、かように考えますので、その点につきましては、当委員会におきまして徹底した御糾明をお願いしたい、こう思います。
  58. 内藤隆

    内藤委員長 これは簡易裁判所においても証人として宣誓して証言をしたのですか。
  59. 原長栄

    原証人 あくまでも新潟地方裁判所証人として、ただ場所を簡易裁判所の建物を借りまして、そこへ出張したわけであります。
  60. 内藤隆

    内藤委員長 それは重大な問題ですね。いずれまたこちらの方で証人として喚問する場合があるかもしれません。他に御質問のある方は……。
  61. 椎熊三郎

    椎熊委員 証人にお伺いしたいのですが、東京都内に十数箇所にわたつて赤線区域というものがある。これは全国の一つの型になつておる。モデル地区のようなものである。新憲法によつて旧来の貸座敷営業というものは禁止されたと心得ておりますが、その際警察当局業者との間に何らかの約束でもあつて、進駐軍がおる間はああいう昔のような営業は許さないのだから、形をかえた特殊飲食店のようなものにして、実態は昔のような貸座敷営業をやつても黙認するとか、なんか手を入れないというような業者警察との間に約束でもあつてこういうものができたのでしようか、どうでしようか。
  62. 原長栄

    原証人 お答えいたします。公娼が廃止されまして旧貸座敷業者が路頭に迷うことになつたのでありますが、そこへまた進駐軍が多数入つて来た。結局慰安婦を出さなければならぬということになつて、また昔の業者をかり集めまして、そうしてこれを慰安婦として提供するということで当局としても相当援助を与えている関係がございます。それと、人身拘束を伴う業態でなければさしつかえないじやないか、だから、ただ部屋を貸すんだ、あとは女の自由意思で客をとるんだ、自分の方は部屋代だけもらうんだ、売淫は御本人のかつてだという都合のいい解釈をいたしまして、これでは違法じやないのではないかということで、特殊という字をかぶせまして、喫茶店あるいはカフエーというような名のもとにできた。警視庁あるいは元の内務省警保局あたりの通牒の変遷をいろいろたどつて参りますと、非常におもしろい事実があるのでございますが、いろいろな政治的な問題もございましようし、また社会の救済施設もないということで、やはりある程度はやむを得ない措置であつたとは思うのでございます。  それと、売笑を直接取締る国家の法規が現在日本にはございません。これは世界の珍現象でございまして、おそらく日本だけだろうと思います。今までは御承知通り警察犯処罰令がございました。あれによつて国家で認めた公娼以外の私娼は全部取締り得たのであります。それが二十一年に公娼が廃止になつてみんな私娼になつたということで、結局はすべての私娼が警察犯処罰令で取締り得る状態に一時はなつたのでありますが、警察犯処罰令が昭和二十三年五月二日に廃止になりまして、これにかわる軽犯罪法にその規定が落ちておるのであります。というのは、独立の売春等処罰法というような特別立法が予想されておりましたので、軽犯罪法に乗り移らなかつたのでありますが、第二国会に売春等処罰法が提案されまして、握りつぶしと申しますか、会期が切れまして流れた後は、同様の法案も姿を見せないということで、二十三年五月二日以来空白になつております。現在は、先ほど来申し上げましたような、本来それを取締る目的でない法律を、いろいろな方法で技術的に操作いたしまして取締りをしておる実情で、現在は売笑そのものは違法じやないことになつております。放任されておる形になつております。
  63. 椎熊三郎

    椎熊委員 たいへん重大な御発言を聞きまして非常に参考になりました。あなたのただいまのお話によりますと、赤線区域の存置されておる理由には二つあると私はあなたの言葉から解釈する。それは公娼廃止のために一時的であろうがそれらの業務をやつてつた者が、生活上非常な困難を来すであろうから、とりあえず社会政策的と申しますか、これを救済する意味において一時黙過してあるというのが一つ。もう一つは進駐軍が入つて来ていろんな方面にそういう要求があるとするならば社会の秩序が乱れるから、一旦解放してやつた公娼であるが、再びそれを集めて、そういうところでそれを処理してやろうという、占領されておる日本の不幸なる運命から来た実態がそういうものとなつて現われた、こういう二つの理由だと解釈する。しかもなおその後それが漸次広範囲に発展して来た過程においては、直接にその行動を取締る法規がない、こう解釈してもいいですか——そこで重ねて伺いたいのは、赤線区域内に出入する男子は、日本人が多いのか進駐軍の兵隊等が多いのか、その比率はどうなつておりますか。
  64. 原長栄

    原証人 私もあまりその方は存じませんのですが、進駐軍は御承知のように高級パンパンを利用しておりますので、赤線区域の方はほとんど日本人が利用しておるものと必得ております。
  65. 椎熊三郎

    椎熊委員 そこで、パンパンの方は警視庁の取締りの対象になつておるということを聞きましたが、赤線区域は大部分が日本人が利用しておる。ならば赤線区域の存置の理由のうちの、進駐軍が進駐して来たための慰安婦としての存在という意味はそこでなくなつておる。しかも公娼が廃止されて一時生活にも困るであろうという温情的な感覚も、先ほど来の御証言によりますと、一箇月に十数万円もかせぎ高を上げる者があつたり、親元に送金できるような状態があつたりすると、これはほんとうに生活に困つて食うに困るから、ちよつとの間許してやるという目的もそこで消滅しておると思う。進駐軍に対する関係においては、ほとんど利用者がないということ、困窮者を助けてやるという事情においては、あまりに現実とは違つた場面が展開しておる。しかもこういうことが、東京の十数箇所の赤線区域がモデルとなつて、だんだん全国に普及しておるという状態は、日本の社会制度の上からいつても、秩序の上からいつても、道義の上からいつても、驚くべきことだと思うのです。そこにあなたたち新潟県の検察官が東京へやつて来て、今までやつてくれておるのですが、それが区域内に侵入したというがごとき状態で、むしろ警視庁としては、よけいなことをしてくれている、ことに東京都の防疫官か何かしりませんが、医学博士なにがしの証言のごときは、あなたは故意ではないと申されましたが、私は大いに故意があると思う。そういうものを許しておくことによつて東京都が得る税額の上にも影響がありましようし、許しておる以上は保護してやろうと思つておるかもしれない。それだけの医学的知識がある人が、防疫上何らの支障がないということは常識上言われないことで、これは故意に言つておるとしか思われません。従つて委員会としてはこれらの事実については厳密にさらに研究するの要を私は認めるのであります。あなたは新潟から東京都のまん中まで来て、それだけの周囲の状況にもかかわらず勇敢にやつてくださつておることに対して、警視庁あるいは東京都等より受ける有形無形の迫害と申しましようか圧迫と申しましようか、妨害と申しましようか、そういうものを何ら感じられなかつたでしようか。
  66. 原長栄

    原証人 お答えいたします。ただいまの御質問にちよつと関連いたしますので、税金の問題も御参考に申し上げておきたいのでございますが、小島清造氏は一年間の税額が千六百万円であります。その内訳は所得税が八百八十万円、遊興飲食税が二百五、六十万円、事業税が二百五、六十万円、区民税が二百万円、その他の諸税が五、六十万円というように自供しておりますが、納税の面におきましては非常な功労者と思います。しかしながらこの収益は結局人肉から上るところの収益でありまして、大いにこの点について批判をさるべきものと考えるのであります。これだけの莫大な利潤を得ておるところの業体は、廃止当時のような場合と事情は大いに異なるものと考えます。それと先ほど申し落しましたが、結局街娼がふえることを防止するために、集娼は温存しなければならないという強い傾向がございます。なるほど人間の生理上、性のはけ口をどうしても妻以外に求める必要があるということになりますれば、そういう結果になると思うのでございますが、しかしながら昔から一夫多婦、あるいは一夫多妻というものが、その時代の必然的なものであつたと考えられておつたのが、今日におきましては、一夫一婦が当然の制度として確立されておるのでございますから、この地上から売笑婦を絶滅することができないのだという前提のもとに、ああした集娼を温存しておくというような考え方では、とうてい大をなすことができないのじやないかと考えます。そこで講和発効後においては、国際条約の義務といたしまして、売春の取締法はつくらなければならぬのでございますが、ただ適用されない法をつくるというだけでは、百害あつて一利がないのでありまして、どうしてもこの際に政治家の皆さんの熱意ある政治力のもとに、売笑婦は日本から消滅させる。これは世界各国売笑史上いまだかつてそういうことが成功した例はない、と言つて反対者は強く主張いたしますが、そこが今日における一番重要な段階じやないかと考えますので、われわれは法の執行者でございますが、この際断固たる措置をおとり願いたい、かように考えます。もちろん私がこうした発言をすることによつて、どういう迫害を受けますことか、それは自分としては常に覚悟しておることでありまして、特に検事としては非常に危険な職務を扱つております。一歩誤れば身体があぶない、かように覚悟しておりますので、特にそういう危険感を持つておるということを強く意識しておりますが、潜在的にはどういう場合にも処するという覚悟だけは持つております。
  67. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたの言われたこと、それから考え方につきましては、私も敬意を表するのでありますが、先ほどの証言中に、現在の法規をもつてしては売淫を取締れないのだ、このように言われたのでありますが、昭和二十二年一月十五日に出ておりますところの勅令第九号の第二条には「婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした者は、これを一年以下の徴役又は五千円以下の罰金に処する。」このように書かれております。このことは、法規のどのようなくぐり抜けの解釈というよりも、現在の日本の憲法の人権尊重という立場からの観点に立つたときに、これがかなり広く適用され、現在における赤線区域というものに対しても適用され、処罰し得るのではないか、このように考えるのですが、いかかですか。
  68. 原長栄

    原証人 お答えいたします。たいへんけつこうな御着眼だつたと思うのでありますが、私言い落しましたので、お答えいたしますが、現在売淫そのものを直接に取締る法規としては、ただいまお話のございました昭和二十二年勅令第九号であります。しかしこれは売淫自体を取締ることはできないのでありまして、婦女をして暴行、脅迫によらないで困惑せしめて売淫をさせた者、つまり業者、それから婦女と売淫を内容とする契約を結んだ者、つまり雇い主が直接売淫婦に、お前なれ、そしてそれに対して自分の方から幾ら支払うというような契約をすること自体を取締つておる法規でありまして、売淫自体は直接法に触れない。しかもこの勅令はすこぶるくぐり抜けができるのでございます。施行当時は、なるほどこの規定売笑婦を呼んで聞きますと、私の方は五分々々の契約でございますというような供述を得られましたが、結局それによつて雇い主が処罰されますと、帰つてから女がひどい目にあうというようなことで、それ以来もういくら調べましても、私は別に責められて売淫したのじやない、自分が自発的に売淫したのだと言えば、困惑せしめたということにはなりませんし、また売淫を内容とする契約ということは、私は何もここに雇われておるのではない、部屋を月々五千円なり一万円で借りておるにすぎないのだ、あとは任意にお客をとつているのだ、こういう弁解をするのであります。それでただこの勅令にまつこうから違反するのは、ただいまの赤線区域、これは明らかに売淫を内容とする契約を結んでいることを業者も認めておるのであります。直接この法規取締り得ることなのでありますが、先ほど来申上げました通り赤線区域取締り外だというようなことになりますと、結局違法なものをそのまま見逃しておる。そこに取締り官憲の腐敗の根元が出て来る。結局法で取締り得るのだが、取締らないのだ、あるいはおれの手加減一つでできるのだというような制度になつておりますと、結局ボスの暗躍があり、それによつて腐敗するということになりますので、その点からもこの際統一的な立法をひとつお願いしたいと思います。
  69. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたの意見はわかりました。赤線区域に対しては言われたような御意見であるということが明瞭になつたことは、たいへん仕合せだと思います。  次に一つお聞きしたいことは、あなたが先ほどの事件をお調べになつて明らかになつた一つの問題でありましたが、新宿赤線区域内等に働いておる婦女子は、十五万円くらいのかせぎをしておる者もある。しかしたいていの者はそういうふうな金が残つている状態にはなつていないで、月々全部実家の方に送つて、あとは衣装が残るくらいであるというようなことを言われておりましたが、その月々の送金の額というのは平均どのくらいになつておりますか。
  70. 原長栄

    原証人 お答えいたします。これはもう女のかせぎ高によりまして一定いたしておりませんので、月二万の者もあれば五万の者もある。あるいは千円、二千円しか送れない者もあるというようなことで、統計は持つておりませんが、大体そんな程度のものではないかと思つております。
  71. 山口武秀

    ○山口(武)委員 では最後にお聞きしておきたいのですが、勅令第九号は、当初においてはこれをもつて取締りをかなりよくなさつてつたというような話でありまして、その後において赤線区域の発生というものは、進駐軍に対する慰安婦の提供というような問題が生じたというようなことから発生したという話でありまするが、日本がポツダム宣言を受諾しまして降伏をいたしましても、アメリカ軍に対して日本の婦女子に売淫を提供させるこのようなばかばかしい屈辱的なしかも非人間的な約束をしたことはなかつたはずです。これは当然断わらなければならぬ、日本は断わらなければならないはずなんです。明治時代の娼婦の例を見ても、昔の娼婦ですらアメリカに袖はぬらさずというような歌をよんで、民族的な気概を示されていた。それにもかかわらずこのようなことが日本において終戦後売娼再興の端緒となつておるということはきわめて遺憾なんですが、法規上その当時におきましてやはりやむを得なかつたのですか、この点御存じないですか。
  72. 原長栄

    原証人 お答えいたしますが、私は東京におりませんので東京の例は直接存じません。しかし地方におきましてはそういうポツダム宣言というような、そういう明らかな根拠によつて出せとか、出さないというような問題でなくて、向うが実力をもつて警察署長等に要求するという実情でございまして、当時の官憲としてはまことにやむを得ないのじやなかつたか、かように考えております。
  73. 山口武秀

    ○山口(武)委員 これは委員長にも要望しておきたいと思うのですが、今の発言かなり重要だと思います。ポツダム宣言のそういう占領に関する法律にもよらないで、実力をもつて女子の提供を進駐軍に命令される。このようなことにつきましては、当委員会におきましても、今後も行政協定がつくられて進駐軍が日本におります以上、どこまでもがんになつて来る。しかも今後におきまして、当委員会においていかに淫売の取締りという問題について法規の完備をやつても、ここに抜け穴があつてはだめなんだ。しかもこの場合は、民族的屈辱というような問題が起つて来る。こういうような問題がありますので、この問題についても当委員会は十分考慮せられ、これに対する対策を考えていただくということを要望して、私の質問を終ります。
  74. 大泉寛三

    ○大泉委員 証人の職責上から証人の発言せられたことは、私どもの審議の上にきわめて重要な御意見であり、また問題を解決する上にきわめて有効なことであろうと思いますので、二、三点お伺いしたいと思います。  この問題は社会問題としてまつたく大きな問題であつて、またきわめて処理困難な問題であります。こういう立場から、私はどうすればいいのかという結論はまだわからぬ。現在起つておる問題は、子弟を奉公に出すというよりも、やはり受入れられる方が、その内容によつて問題が起つて来る場合が多い。そこで内容的に区分してみますと、どうも新潟県の方は婦女子の方が多いようでありまするが、婦女子にしても、やはり大別すると、結局は問題が起るのは、人間の情欲を売買するのだという問題が一番多いようです。これは女の子。そのほかにやはりそうでなく、ほんとうの労働の売買、あるいは小さな男の子であつたならば、将来これを職能技術者として養成するために、技術、技能を養成するために、みずから進んで出す場合、あるいは生活の困苦から、いわゆる家計の、経済上の方から出す場合、つまりこういうように出す方は、いろいろその立場立場によつて目的があるのでありますが、受入れ態勢の方でいろいろ問題が違つて来る。出す方よりも受入れる方が問題を起すというのであるから、これは地方的にはいろいろ山形県あるいは新潟県あたりは非常に出す方としての問題の地方でありますけれども、受入れる方は東京その他を中心として起つておる。これに対して証人は、法律としてはとにかく、あらゆる立場においてこれを国民全体に取締り、あるいはこれを施行するのでありますけれども、何とか地方的に特別な取扱いをされる、地方自治体の条例等によつて、これを緩和する方法はないか、これを一つ。  それから現在の国民道徳の立場から、労働法規その他戦後にしかれたところの法規がはたして適当であるかどうか、こういう二点をお伺いいたします。
  75. 原長栄

    原証人 第一の問題でございますが、国の法令はただいままで申し上げた通りでありますが、新潟県といたしましては、特に売淫等取締条例というものを制定いたしまして、現在はその条例があるのであります。これは現在は東京等にもございます。宮城県、新潟県、別府市、おそらくこれだけだろうと思いますが、直接売淫を取締るところの条例を制定いたしております。新潟県は非常に女が多い。また昔から申しますが、新潟の女は従順である、それからはだがきれいだとか美人が多いとかいうようなことで、娼婦としての素質を非常に備えておる。いわゆる業者が言います言葉では上玉だ、新潟の女は上玉だということで各地から周旋屋が入り込みまして買い出しに来るということでありまして、事案が非常に多い原因をなすのでありますが、そうした他府県からの入り込んで来る周旋業者新潟県独自の立場で取締るような法令というものは現在ございません。  第二点ですが、先ほど来申し上げました通り、行われない法があるということは、遵法精神という問題から考えましても、まことに困つた問題だと思います。またほとんど現在は売笑公認国といつてもいいだろうと思います。ちまたに氾濫しておりまする街娼、進駐軍と手を携える高級パンパンから、青天井の下を職場にする下級パンパン、それから旧遊郭、あるいはおかず屋とか、いろいろな名義をもつて、小さな掘立小屋のような飲食店が雨後のたけのこのごとく続出しておりますが、これことごとく売笑窟であります。そういうものが目抜きの場所至るところに存在するということは、国民道徳上から言うても、非常に嘆かわしい問題じやないかと考えます。
  76. 大泉寛三

    ○大泉委員 私のお尋ねせんとするところは、これはいわゆる地域的な一つの現象で、地域的に非常に違うのであます。九州の方やあるいは関西の方ではあまりなく、特に東北地方、北陸地方に多いのだが、地方的な条件例等によつて、いわゆる奉公に出す側を取締るというか善導するというか、そういう解決の方法はないかということです。問題を起すのは受入れた方から起すのであつて、これは国民全体として、とにかく法律によつて取締るのであるけれども、出す方はどうも地域的に違う。であるからその地方の条例、県の条例等によつてでも何らか救済する方法はないか。お話によると、どうもこうした一般から屈辱と思われることを、親たちあるいは当事者等があまり恥とも思わぬようでありますが、貧苦の中から子供を育てるということは、まつたく育てる方の立場から言わせると、あるいは子供を大きくするのは貯蓄でもするような考えでいるかもしれない。だから成人したならば、それは親の役に立たしめるのだというような考えから、外に出すときには何ら道徳上の問題は考えずに、経済上の問題からばかりそれを考える、こういうのであります。そこで何らか県の条例等によつて、これを親子もろともに救済するような手段をとらなければ、出してからは、もうすでに国法によつていろいろな取締りがある、あるいはそれの救済法もありますけれども、出す方では、遠くの府県にあつて、どうすることもできない。であるからこれは新潟県あるいは山形県、青森県等において問題が多いのであるから、出す方でいわゆる親子もろともにこれを救済する手段とか解決する道はないか、こういうのであります。
  77. 原長栄

    原証人 ごもつともな御質問と思います。新潟県において、そうした特別の救済方法を講じていただいたら、まことにけつこうだと思います。ただ新潟県は昔から申しておりますように、越後では男の子と杉の木は育たないというようなことまで言われるくらいに女子の出生を喜ぶ。貧農あるいは漁封におきましては、女の子は、育てて、あとは今度そういう娼婦というようなものに身を落すということを当然のごとく考えておる。これは結局新潟県における教育の力で是正しなければならぬ問題だと思います。
  78. 大泉寛三

    ○大泉委員 あとのお尋ねですが、先ほども申上げたように、戦後急速に占領下において制定されたすべての労働法規が、現在の日本の国民道徳の水準では適当であるかどうか、この考えをあなたからお聞きしてみたいと思います。
  79. 原長栄

    原証人 非常に困難な問題でありまして、労働関係立法が適当であるかどうかということにつきましては、専門外でありますので、答弁をお許し願いたいと思います。
  80. 大泉寛三

    ○大泉委員 これはやはり労働ばかりでなく、児童福祉法その他についてでありまするが、ともかく現在の問題を起しておる違反者が、何らそれに恥じるところなく、当然の昔からの習慣であり、あるいはしきたりであるというようなことで、平然としておるというような状態では困るので、やはり法律というものは国民の納得しないものをただ制定しただけではならぬ。それで最も問題の多い新潟地方の民情からいつて、はたして現在の法規が民情に適合しておるかどうかということを私はお尋ねするので、別にむずかしい質問ではないと思います。私どもは、どうも戦後制定された諸法規が相当無理な点が多々あると思うのであります。そこで簡単に、適合しているかどうか、民情に合うか合わないかということをお答え願います。
  81. 原長栄

    原証人 率直な私の感じといたしまして申し上げるのでありますが、それは新憲法自体、現在の国民の民度と申しますか、それと相当かけ離れているという感じを受けております。従つて新憲法に基くところの各種の民主立法は、相当に国民が啓蒙されなければ、これにマツチして行けないということを痛感しております。
  82. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 証人に根本的な問題から逐次小さい問題までお尋ねしたいと思います。証人が本問題について非常にお骨折りをいただいておるということに対して、われわれは満腔の敬意を表するのでございますが、まず第一点として、自由意思で売淫をする売笑婦を直接取締る規定がないということは、まことに御説ごもつともでございまして、今日におきましては、業者と申しますか、その業態に関するものは、勅令第九号その他各種の法規がございますが、まず基本的に憲法に関する問題といたしまして、なるほど証人が先ほどおつしやいましたように、今日におきましては憲法の規定というものは、日本の国民の進歩の状況と申しますか、民度にマツチしないという点もあるかもしれませんが、これは純法律的な問題といたしまして、基本的人権の規定があり、個人の尊重の規定もあれば、勤労の規定奴隷的拘束に関するいろいろの規定もあるわけでございます。証人職務を御執行なさる場合に、自由意思で売淫をなす場合においてはこれを取締る規定がないとおつしやいましたが、証人がいろいろ職務の執行上こういう事件をお調べになつて、こういう職業に従事する婦女というものが、当初におきまして真に自由意思、つまり蛮行それ自身、人間の獣欲を充足するためにのみ、男との性交を目的とすることが直接の動機でこの道に入るという者がございますでしようか、その点お尋ねいたします。
  83. 原長栄

    原証人 私の方で県下一齊検挙の際に、あわせて各売淫婦よりいろいろな点を調査した例がございます。それの結果によりますと、自分がすきで売笑婦になつたというような事例はほとんど見当りません。やはり自分の家が困つておるのだからしかたがないという単純な考えで、それほど悪いことという感じも持たないで身を落している。大体調べた対象者は処女からただちに売笑婦になつたという者はございません。
  84. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると証人がお調べの結果からいたしますると、ほんとうに男がすきで性交だけの目的で売笑をやるということはまずないといつてよろしゆうございますか。
  85. 原長栄

    原証人 私の調査範囲ではございません。
  86. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そういたしますと、証人はこの点をお認めいただけましようか、つまり売笑、売淫ということをやるにつきまして、社会的な拘束とかあるいは経済上の理由からいやいやながらこの道に入つて行く、自分の自由意思に反してこういう売淫に従事するということは確認できるわけでございましようか。
  87. 原長栄

    原証人 それが非常にデリケートな問題になりますので、彼女らとしてはさほど拘束されて売笑婦になつたという感じを持つておりません。やはりある程度自由意思でなつたのだ、こういうことです。
  88. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうするとやはりその背後にあるものは、社会的な経済的な拘束と申しまするか理由に基きましてこの道に落ちるんだけれども、その直接の犯罪の——犯罪ではありませんけれども、動機というものは自由意思だ、こういうことになるのですか。
  89. 原長栄

    原証人 彼女らとしては自由意思と考えておりますが、社会的あるいは経済的な要因の結果、目に見えない力によつてそうせざるを得なくなつているという事実を彼女らは認識し得ないのであります。そういう意味であります。
  90. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そういたしますと、その動機と申しまするか、背後におきましては、社会的環境とか経済的環境に自由意思を拘束するものがあるということは、彼女らもお調べになりました証人もこれを認めておられるわけでございますか。
  91. 原長栄

    原証人 お答えいたします。教えてやればわかります。
  92. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうしますと、憲法に基いて今申し上げましたように基本的人権の規定あり、個人尊重の規定あり、直接には第二十七条等の規定におきまして、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。」ということがございますが、このいわゆる勤労の権利、義務、これが憲法学者の解釈によりますと、これは自由権だというふうな解釈が大多数を制しておるようにわれわれ承知いたしております。こういうふうに憲法上基本的人権の諸規定があるわけですが、これがたとい日本国民の民度よりいたしまして、進み過ぎておるということであつても、国家の基本法として現存しておる以上、これに対する憲法上の救済、こういうものをお考えになつたことはございませんでしようか。刑法に規定がない、その他各単行法におきまして、自由意思に基く売笑婦に対する直接の取締り規定がないといたしましても、憲法上の救済というものは、これは今日憲法裁判所も存在しておる以上、何らかの措置が講ぜられないことはないと存じますが、この点に関する証人の御見解を承りたい。
  93. 原長栄

    原証人 お答えいたします。その点につきましては政治家の職責ではないかと思います。それは心ある国民といたしましては、現状のままでは亡国への道じやないかということを心から憂えております。それでわれわれ国民といたしましても、すみやかに強力なる政治力をもつてこうした悲劇を一日も早く救済していただきたいと念願しております。
  94. 内藤隆

    内藤委員長 まだあと二人証人がおりますので、なるべく簡潔に進めていただきたい。
  95. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私の証人にお尋ねいたしておりますのは、つまり立法とかその他行政的処置をもちましてこの救済に当るというのではなくて、憲法上の手続あるいは刑訴に基く手続に従いまして、今日においてもこの法規範囲内においてあなた方が措置を講ずる道がなきにしもあらずと存じますが、その点に関する証人の御見解を承つておるのです。つまりこういう自由意思形成に対する証拠能力、証拠価値についていろいろ御判断ができるじやないかと思います。従いましてこれに基いて訴訟上の手続も講ぜられるのではないかと思いますがいかがでございましよう。問題は解釈上の問題でございますが……。
  96. 原長栄

    原証人 直接憲法に基いてわれわれの職域において何とかならないか、こういうことになるわけでございますか。
  97. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そういうことであります。
  98. 原長栄

    原証人 御承知通り検事犯罪の検挙処罰でございまして、憲法を直接に施行するとかいうようなことにつきましては、考えたことはございません。
  99. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 意見具申とかいろいろ手続等についてお考えになつたことはございませんか。
  100. 原長栄

    原証人 考えておりません。
  101. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それから今度小さいことをお伺いいたします。年齢の点でございますが、これはあなた方お調べになられますときに、婦女の年齢の確認の義務があるかないかということはどうでございましようか。
  102. 原長栄

    原証人 それは業者がですか。
  103. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうです。
  104. 原長栄

    原証人 もちろん確認の義務として法的な根拠はございませんが、児童福祉法等におきましては年齢を知らなかつたことについて過失があるという場合は故意と同様に扱うという規定でございます。実際問題として、自分女の子がみずから二十歳と言うたので二十歳だと思つたという弁解をいたしますが、しかしながらそれは単なる弁解でありまして、いろいろの状況証拠によつて業者が雇い入れる際に女が十八歳未満であつたということについて認識があつたことを立証できると思います。
  105. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 未成年者の場合、たとえばブローカーが役所にいろいろな虚偽の申請をいたしまして、転出証明とかいろいろなものをもらいに行くと、役所では簡単にこれを書いてやつてしまう。こういう場合におきまして、単なる過失として業者なりブローカーなりその他の連中は取扱われておりますが、そういう場合に単なる過失でやつてしまうということにつきまして、第一に法律に欠陥がある、事実はこれは故意であるという点が指摘されるであろうと私たちは存じますが、この点についてさつきあなたは、取締り法規といたしまして、直接売淫取締の規定のないことは法律の欠陥として認めるけれども、その他につきましては、法規としては施行せぬ法規はあるかもしれぬが、法律としての欠陥はあまりないように思うとおつしやつたように私は承知しておりますが、この点に関する取扱い上の御意見はございませんでしようか。
  106. 原長栄

    原証人 先ほど申し上げました、不備、欠陥についてさほどのものはないというのは、結局この法本来の目的従つて運用する場合のことでございますが、その本来の目的以外である人身売買取締りに用いる場合には、確かに法の不備、欠陥はございます。
  107. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 その欠陥の一番多いのはどういう点でございますか。
  108. 原長栄

    原証人 こまかいことになりますが、児童福祉法で申し上げますると、たとえば児童に対して淫行させることに対して罰則がありますが、淫行させることということは、現在は未成年であるが、将来成年に達したならば淫行をさせる、そういう業態につかせるというような約束のもとに、現に十八歳未満の児童を雇い入れた場合、はたして現行法律の淫行させることという罰則によつて処理し得るやいなやというようなことも一つございます。それからまた労働基準法にいたしましても、いろいろ年齢の点が罰則の問題になりますが、年齢を確認しなければならぬというようなことについての根拠法規がない。従いましてわれわれの方では、年齢を知つてその行為に出たことが故意の内容になりますので、これをいろいろな証拠によつて立証しなければならぬということになるわけです。
  109. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そういう欠陥があるということはよくわかりましたが、第二に、東京都衛生局与謝野課長の証言は、私は非常に重要な証言だろうと思います。直接公衆衛生の衝にあたる人がこういう証言をする。しかもこれは公衆衛生上有害であることがほとんど百パーセント認められている公知の事実について、有害にあらずという証言をするということの証言の価値、証言それ自体の問題について、いろいろ御意見を承りたいと思いますが、第一に法律的にいかなる観点からこの証言を求められたのでございますか、その点について当時の状況を御報告願いたいと思います。
  110. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと申し上げますが、その点はさいぜん椎熊委員の質問にもありました通り、相当重要性を持つておりまするから、理事会を開いて、予防課長を一ぺん喚問しなければならぬと思いますので、その際にやりたいと思います。
  111. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 ではこの東京都の衛生局の与謝野課長の問題は、この事件に関連して別個の扱いをするということであつたら、私はこれで打切ります。
  112. 浦口鉄男

    ○浦口委員 簡単に二、三お尋ねしておきます。新宿赤線区域の存在を理由づける一つの理由として、東京都の衛生局の予防課長与謝野氏が公衆道徳上有害でないということを証言しまして、それに対して反証もありますし、先ほどから証人の御意見も私ごもつともだと思つておりますが、その問題は今福田委員からのお話によつて切離して調べることになりましたので、それ以上お尋ねしませんが、私ただそれにからみまして一つお聞きしておきたいことは、こうした問題の一番対象になりますのは職業安定法の六十三条だと思うのであります。その中では「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で」云々となつております。その公衆衛生上の問題については今問題が保留されたわけですが、「公衆道徳上有害な業務」というのは非常に主観的な規定なんですが、検察当局として証人は、検事立場からこれを適用する場合に、どういうふうにお考えになつておりますか、これをひとつお伺いしておきたいと思います。
  113. 原長栄

    原証人 ただいまの「公衆道徳上有害な業務」の解釈につきまして、どういう場合がそれに該当するか、われわれ非常に苦しんだのであります。それで立法当局である労働省に問い合せた結果、公衆道徳上有害な業務というのは淫売婦のごときものであるという回答を得たのでありますが、おそらく現在その場合に該当するものとしては淫売婦以外にちよつと考えあたらぬのであります。それで先ほど来の赤線区域の問題が公衆道徳上有害な方に該当するのじやないかということもわれわれは考えるのでありますが、やはり争う立場になりまするとそうは申しません。結局ああいう特殊地域において業態婦を置くということは、男性の性のはけ口をそこに見出さなければならないのであるから、社会の必要悪であつて、国家あるいは当局がこれを容認しておる限りは、公衆道徳上有害だとは言えないのじやないか。従つて赤線区域を特に地域を指定して、学校その他のあまりないような場所に置いてあるのだから、公衆道徳上有害ではない。従つて衛生上有害な方がはずれますと全面的にくずれて来る。われわれの方は、この事件はいずれにいたしましても、最高裁判所まで参りまして判例に残る事案だと思つておりますので、いろいろ関心を持つております。
  114. 浦口鉄男

    ○浦口委員 たいへん重要な証言をいただきました。こうした問題の本来の全面的解決のために、これは今後大いに役立つことだと思いますので、われわれも参考にいたしたいと思つております。  そこで簡単に第二点をお尋ねするわけでありますが、こうした問題は結局需要供給の関係と申しますか、新潟県などのこうした女を出す土地の方から申しますと、全体的に経済の水準を上げて行くとか、あるいはそうした問題に対する県民の性教育の向上とか、あるいはいろいろな面からの知識を高めて行くとか、知性を高めて行くということにあると思うのでありますが、しかしさしあたりはやはり受入れ態勢の問題なんだと私は思うわけでございます。そこでこれは先ほどのお話もありましたように、終戦前は公娼がありましたし、またその他は私娼窟というものもあつたように承知をいたしております。終戦後そういう種類と申しますか、種別が全然撤廃されましたが、先ほどの証人のお話にもあつたように、飲み屋とかそういう遊び場全体がそういう要素を持つておるということもある程度わかるわけであります。そこでやはり東京都の赤線区域とからんで参りますが、先ほど、従来公娼仕事をやつていた人の生活救済の問題ということが出ておりましたが、従来そうした仕事をやつていた人と、現在のこの赤線区域——その他も含みますが——におけるこうした業者との比率、これはたいへん大づかみのことになると思いますが、一体どういう割合になつているか。従来の業者の上に新しくこういう業者がどのくらいふえているとお考えになつているか、その点ひとつお尋ねいたします。
  115. 原長栄

    原証人 その点につきましては調査いたしておりませんのでお答えしかねるのでございますが、終戦後公娼廃止の当初におきましては、従来の娼妓が女給名義のもとに、貸座敷に、カフエーに——あるいは旅館名義の場合もありましたが——下宿するという形でそのまま残つておりまして、それがだんだん年代を経て年をとつて参りましたので、結局先ほど申し上げましたママさんにかわつて行つて、新たに各地から代用が出て来たというような形態になつていると思います。業者の方はやはり従来の貸座敷業者がそのまま残つているのじやないかと想像しておりますが、最初は転業を慫慂いたしまして、何パーセノトかの人たちは転業しております。しかし大部分は、建物等もございまするので、そのまま旅館とかカフエーの名義で従来の業態を継承しているのではないかと考えております。
  116. 浦口鉄男

    ○浦口委員 赤線区域が温存されている理由とそれができた経過については先ほど大体承つたのでありますが、これは非常に複雑な問題があるようにわれわれとしても考えております。これは東京都あるいは警視庁の側に尋ねるべきことかと思いますが、検察当局として、この赤線区域がどうした経過でいつごろ具体的に設定されたかということをもしお知りであれば伺つておきたいと思います。
  117. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと浦口さんに申し上げますが、午後から警視庁の防犯部長を呼んでおりますから、その方に質問された方がそのことはかえつてはつきりするのではないかと思いますが……。
  118. 浦口鉄男

    ○浦口委員 両方とも証言に違いがあるかもしれないと思いますから、もしわかれば今伺いたい思います。
  119. 原長栄

    原証人 正確なことはわかりません。
  120. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、原証人に対する尋問はこれにて終了いたします。証人には長時間御苦労さんでした。  午後は一時半より再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  121. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  引続き渡辺証人より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになつておられる証人渡辺健次郎君ですね。
  122. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 そうです。
  123. 内藤隆

    内藤委員長 これより女子及び年少者人身売買に関する件につきまして証言求むることになりまするが、本委員会人身売買に関する件につきまして調査を行うゆえんのものは、最近女子及び年少者人身売買事件全国的に激増の傾向にあり、これが取締り並びに保護、救済機関運用に対する総合的観察わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要することと思いましたためでありますので、証人におかれても率直なる証言によりまして、本委員会調査に御協力されんことを期待する次第であります。  これより証言を求むることにいたしますが、証言を求める前に証人に二言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた考及び証人の後見人または証への後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものなるときは、その旨申出を願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人渡辺健次郎君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述ベ何事も  かくさず、又何事もつけ加えないこ  とを誓います。
  124. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  125. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  証人渡辺健次郎君は現在警視庁防犯部長でありますね。
  126. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 そうであります。
  127. 内藤隆

    内藤委員長 防犯部長の現職になるまでの略歴を述べてください。
  128. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 大正九年に巡査を拝命いたしまして、それ以来巡査部長、警部補、警部、警視と昇進いたしまして、昭和二十二年の二月に徳島県の警察部長になり、さらに国警の管区本部の刑事部長をやりまして、二十三年の三月七日に現在の防犯部長を任命せられまして今日に至つております。
  129. 内藤隆

    内藤委員長 警察当局として見た人身売買とは一体どういうことでしようか。
  130. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 よく人身売買ということを言われるのでありますが、人身売買という言葉は非常に漠然としておりまして、その意味なりあるいは範囲を明確に表現することは非常に困難のように思うのであります。いわゆる人身売買と申しますのは、昔から俗に身売りでありますとかあるいは年期奉公ということをよく言われておりますが、それらに類する種類のものが人身売買じやないか、かように考えておりますが、しいてこれを定義づけますれば、主として児童の福祉を害するような労務または不当に自由を拘束するような労務、これを児童に提供させまして、その代償として金銭その他の財物を給するというようなことを内容とする契約またはこれのあつせん行為ということができると思います。そこで児童の福祉を害するような労務と申しますれば、いろいろある思いますが、主として年少者を酒席にはべらすとかあるいは売淫行為をせしめるとかいうようなことじやないかと思います。さらにまた不当に自由を拘束するというような労務と申しますれば、これもいろいろあろうかと思いますが、昔のいわゆる年期奉公的なもの、前借によつて相当長期間労務を提供することを契約する、それが結局いろいろ自由を拘束するといつたような結果になろうかと思います。おおむねさように考えております。
  131. 内藤隆

    内藤委員長 最近これは全国的な傾向だろうと思いますが、東京都内でも非常にあると私考えるのであります。そこで特殊飲食店及び売淫を伴う風俗営業者が激増しておると聞いておりまするが、その趨勢はどうです。
  132. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 お答え申しますが、すでに特飲街あるいは特殊飲食店と申しますか、現在の法令におきましては特殊飲食店、いわゆる特飲というものは存在いたさないのであります。正式に申しますると、風俗営業取締法に基きまして、現在東京方面においていわゆる特飲街といわれている特飲でございますが、これは社交喫茶、要するに俗にいうカフエー、こういう営業の許可を受けてやつておるのであります。そこで終戦当時おおむね十一、二箇所でございましたが、そういういわゆる特飲街といわれる地域が存在いたしておりました。現在十三箇所ございまするが、終戦当時におきましてもいわゆる純粋の貸座敷業者、この数が五百三十七軒ありました。いわゆる公娼制度のあつた当時の公娼と申しますか、娼妓、この数が約一千五百名あつたかと思うのであります。そのほかいわゆる特飲街という特殊な淫売の伴うおそれのある業者の集団的な地域、それらの貸座敷業者を含めまして現在十三箇所になつております。終戦後漸次ふえて参りまして本年一月末現在におきましては集計、三多摩を除きまして業者が一千八十二軒、従業婦が三千六百五十四名、こういう数字になつております。これも移動がはげしいものでございますので、数字には多少移動がございまして食い違いがあろうかと思います。現在のところそういう状態でありまして、終戦後一時激増して参りまして年年多少ふえて参つたのでありますが、最近におきましては不況その他の関係で比較的この種の業者業態があまり景気がよくない、従いまして店舗の売買でありますとか、あるいは継承というようなものが相当ふえて参りました。現在のところでは激増の傾向というよりは頭打ちという状態になつておると思います。そうしてこれ以上ふえないのではないか、こういう私ども見通しを持つております。これは余分なことになるかもしれませんが、警察といたしましてもこれ以上ふやさない、ふやしたくないという気持を持つております。
  133. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの警視庁の管内では激増の傾向はない、こういう……。
  134. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 現在のところはほとんど頭打ちの状態という見込みでございます。
  135. 内藤隆

    内藤委員長 赤線区域というものがあるということですが、そういうものがありますか。
  136. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 よく赤線区域ということがいわれますが、現在の風俗営業取締法の建前から申しますると、またその他のいろいろな法律関係を研究いたしましても、いわゆる赤線という制度は現在のところはもうなくなつております。慣例的にそういう地域が存在いたしておりますので、これが俗に赤線区域といわれております。なお法的に多少説明申しますれば、いわゆる赤線区域というはつきりしたものはないのでございますが、現在の風俗営業取締法並びにその法律に基きまして出ております東京都の条例、風俗営業取締法施行条例、それにこういう規定がございます。東京都の条例の第十一条に「料亭営業を営もうとするものはその営業の場所について公安委員会の指示に従わなければならない。」これが第一項でございます。第二項に「料亭以外の営業についても善良な風俗を保持する土において必要があると認めるときには前項の規定を適用することができる。」こういう規定がございまして、必要に基いて公安委員会が営業の場所を制限指定することがこの根拠としてできることになつておりますが、現在公安委員会の告示その他ではつきりといわゆる赤線区域的の場所の指定は目下のところいたしておりません。
  137. 内藤隆

    内藤委員長 どうですか、通称大体赤線区域といわれているものはどれほどありますか。
  138. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 先ほど申しましたように現在十三箇所、それからこれは赤線区域と申しますかどうかしれませんが、例の待合、現在は風俗営業法で取締ることにして料亭という名称になつておりますが、その料亭の営業の許可を受ける地域は、従来のような二業地、三業地と規定されておつたのでありますが、事実上従来の区域以外では許可いたしておりません。それが今はつきりした数字は記憶いたしておりませんが、それは赤線区域とは別で多少類似はありますが、四十箇所くらいある。これは要するに料亭、昔の待合、そういうものができる区域です。これはいわゆる赤線区域とは多少違いますけれども、そういう意味合いのものがそれくらいある。
  139. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの証言中にちよつと触れられていたが、風俗営業の許可権というものは公安委員会にあるのですか。
  140. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 そうです。
  141. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとこれ以上ふやさない方針だとさいぜん証言されましたが、それは公安委員会でさような方針に決定しているのですか。
  142. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 それは具体的にいつ幾日に公安委員会で協議しまして、そういう方針を決定したというわけではございません。大体そういう委員会の委員の方々の気持でもありましようし、私ども事務当局におきましても、そういう考え方のもとに仕事をいたしておるという意味であります。
  143. 内藤隆

    内藤委員長 それから最近特に悪質と思われた特飲店の従業婦またはその仲介人を取締つてつた事件について一、二実例を述べてください。
  144. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 記録がありますからそれを朗読いたします。要点でありますが、少年、女です、六十一名を特飲街に売り飛ばし、たらいまわしにして前借を踏みたおし少年を食いものにしたもぐり周旋業者の検挙、被疑者東京都足立区千住一〇三の二四、いわゆるもぐり周旋業者の田中為三郎、被害者は静岡県熱海市柳同時九三三三、いわゆる特殊飲食店輝川エイコ方従業婦海老原みさを、これは仮名でひとつお許しを願いたいと思います。昭和七年四月十九日生れ(外延べ六十名)その他仮名でございますが、犯罪の概要は、被疑者は青少年のころより妓夫——いわゆる牛太郎、妓夫紹介屋、従業員等の経歴を有し、終戦後は婦女子の戦後のもぐり周旋業をしていたものであるが、昭和二十五年かねて博徒仲間で知り合いの住所不定井垣米蔵、当五十年から茨城県多賀郡高萩町料理屋小梅こと、柵谷喜一方従業婦海老原みさを当十八年——これはもちろん仮名でありますが、これの住みかえ方を依頼されたのを奇貨として、海老原少年を連れ出し、東京上野駅前の旅館に宿泊し、東京都台東区浅草吉原町一の五、いわゆる喫茶店ひろたこと矢部博太郎方ほか二箇所に数日間住み込ませ、海老原少年の知らぬ間に前借名義で合計六万一千円騙取し、踏みたおした上静岡県熱海市柳同時特飲輝川エイコ方に住み込ませ、前記同様四万二千円の前借をなし、うち一万五千円を福島県下に住む海老原少年の母とよに娘の身受金と称してあたかも自己の金のごとく装つて支払い、妾としてめんどうを見る形として、まつたく自己の意のままにふるまうだけでなく、海老原少年はわずか六箇月で十万三千円の債務を負うかあるいは前借詐欺の共犯となるかの悲惨な境遇に追い詰められた。大体そういうことになります。長くなりますからこの程度で……。
  145. 内藤隆

    内藤委員長 よろしゆうございます。大体わかります。  そういう業者が従業婦を募集する際に、通常どういう方法をとつてますか、単に仲介業者を通じてですか、何か別な方法をやつておる場合がありますか。
  146. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 御案内の通りこういう風俗関係の営業でありますので、職安関係の紹介を依頼するわけには参りません。従いましてそこで婦女子を雇い入れるためにはいろいろの方法を講ずるわけでありますが、たとえば店頭広告でありますとか、あるいは縁故募集——まあ縁故募集にもいろいろありまして、友人に頼むとか、あるいはそこに勤めておる従業婦等から縁故で引寄せるとか、そういうようにいろいろ縁故募集の形式があります。その他いろいろの方法で雇い入れておりますが、中には今申しましたようにもぐり周旋業者等に依頼して募集するというような事例も、今申しましたように事実あるわけであります。その点は検挙でもしまして追究して調査をいたしますれば明瞭になりますが、全般的に何割ぐらいがいわゆる周旋業者の手を経ておるかとか、あるいはどういう方法でやつているかということはちよつと明瞭になりませんけれども、そういういろいろの手段で募集をやつておりますが、実際問題としてはなかなか公然と募集ができない関係にありますので、いろいろいわゆるあの手この手を使つて募集しておるんじやないか、かように考えております。
  147. 内藤隆

    内藤委員長 職業安定所労働基準監督署業者に黙認を与え、あるいはまたこれと結託して従業婦募集の新聞広告その他を行わしめておるというような事実を二、三聞くのですが、そんなことはありませんか。
  148. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 だれからか私はつきり記憶はしていないのでありますが、そういう事実があるかのようなことを聞きまして、これはほかの役所の問題でありますけれども、青少年の婦女子の保護の建前から、そういうことがあつては困るというのでいろいろ調査をいたしておりますが、現在までのところはつきりしたそういう事実を認めておりません。
  149. 内藤隆

    内藤委員長 事実は認めぬけれども、そういうことを二、三耳にしておりますか。
  150. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 いや一度聞いたことがあるのですが、いろいろ調査してみましてもそういう事実がはつきり出て来ません。
  151. 内藤隆

    内藤委員長 それから業者と従業婦及び仲介人等の間には実際上どういう契約やあるいは金銭の授受の方法をやつておりますか。
  152. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 これも検挙等を通じての問題でありますが、契約と申しましてもいわゆるはつきりした文書による契約というのは一件も見当つておりません。また実際一つの証拠書類になりますから、おそらくかりにいろいろの契約をいたしましても、そういうような文書による契約書類を残すようなことは、実際にはやつていないんじやないか、かように思うのであります。従つて正式な文書による契約はほとんどない、こう申しましても間違いなかろうと思います。実際問題としては主として口頭契約ということになりますか、家で働いてもらう、そうしていろいろ部屋代であるとかあるいは食事代であるとか、その他の経費のために、自分の方ではあなたがいろいろ働いた収入の五割とかあるいは四割とかあるいは六割とかをもらつて、あとはあなたが自分の経費に充てる、収入にするというような形のものでありまして、文書による契約もありませんし、結局ルーズな口頭による契約によつて事実上働くということをお互いに承認してやつておるというような形じやないかと思いますが、この点どうもはつきりしておりません。
  153. 内藤隆

    内藤委員長 その金銭の受渡し、そういうことは直接に業者と従業婦とやつておるか、また仲介人が立つてつておるか、伺いたい。
  154. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 雇入れの場合の金銭の授受の問題でありますが、これも直接本人に渡す場合もありましようし、あるいはまた仲介者を通じて渡す場合もいろいろあろうと思います。前借ということをよくいわれておりますが、昔の芸妓、娼妓ははつきり年期をきめて前借をしたものであります。ところが最近におきましては婦女子におきましても、自由主義と申しますか、そういう面の考え方も昔よりは相当進歩いたしております。かりに口頭で契約してまとまつた前借をやりましても、はたしてそこに居ついておるかどうかということは非常に危険なわけであります。従つて前借の額におきましても、われわれの聞いておるところ、あるいはこれまで調査した範囲では大体二万円程度——これは多少多い少いがあろうと思いますが、二万円程度です。これは衣装代と申しますか、仕度料と申しますか、そういう意味で渡すわけであります。またよほど家庭が困窮しておつて、親のために多少金がいるというのには、三万とか四万とかいうまとまつた金を出しておる実例はごく例外的にあるわけであります。これもおそらく全面的に行われてない、むしろ前借して逃げられてしまつたのでは話になりませんので、前借関係なんかはそういうふうになつておると思います。それから女が自由意思によつて売春をやるわけでありますが、これは従業婦が直接客と話し合つていわゆるチツプと申しますが、代金と申しますか、それは婦女が直接とるのが一般的なようであります。例外的にはそこの女中頭と申しますか、そういう者が受取つておる場合もあろうと思いますが、大体は自由意思によつて契約して代金は本人が受取る、その金は自分が保管する場合もあるでありましようし、あるいは預けて食費等をいろいろ清算をする場合に、あとで三日置きとか五日置きに計算する場合もあるでありましようが、大体そんなふうにやつております。
  155. 内藤隆

    内藤委員長 さいぜんも証言になりましたが、従業婦が逃亡することに対して業者は一体どういう対策をやつておりますか。
  156. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 逃亡防止に対する具体策でありますが、これも先ほども申しましたように、昔と違いまして監視人を常に置いておくとか、あるいは外出するときには常に主人が同伴して出るとか、はなはだしく自由を拘束して外出も映画見物もいたさせないということは現在の実情としてはあまりないようであります。それは相当自由にやつております。その防止対策の具体的なものと申しますと、これは何ともちよつと見当がつきかねるのでありますが、常に注意して監視するとか、あるいは間接に逃亡しないようにやつておるとか、あるいはまた特に本人の逃亡を防ぐためについて行くというような形でなしに、映画にでも行くといえば一緒に行こうかとかいうような形、あるいは友人間において、自分の店にまじめに働いて特に信用のある、いわゆる女中頭的な従業婦等に注意さしておるとか、場合によつては外出するときには一緒に先輩がついて行くというような程度でありまして、おそらく昔やつたような監視人を置いておくとか、そういうようなことは今まで検挙取調べ等を通じてはあまり発見されておりません。大体そんなことじやないかと思います。
  157. 内藤隆

    内藤委員長 ママとか称する者がついて、そして自由を拘束するようなことは起きないのですな。
  158. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 それは映画見物に一緒に行くとか、そういうようなことはあろうかと思いますが、特に監視するために常にだれかをつけて牽制しておるとかいうようなところまでは行つていないと思います。
  159. 内藤隆

    内藤委員長 用心棒的な者も現在はあまり見当らぬわけですね。
  160. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 そうです。
  161. 内藤隆

    内藤委員長 それから逃亡を防ぐために貯金通帳なんかをかかえ主というか、業者が預かつておるとかいうようなことはありませんか。
  162. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 そういうことも間接的な逃亡防止の有力な手段だろうと思います。たとえば貯金通帳ばかりでなしに、例の食糧の通帳、ああいうものを預かつて、どこかに本人が逃げたとか、あるいはくらがえしたとかいうような場合に、本人以外に利用されておる、そういうことは多少行われるんじやないかと思いますが、そういうようなことも全面的に行われておるというような明確な調べは今まで入つておりませんが、そういうことはしかし想像ができると思います。ここでは想像じや申し上げられませんから……。
  163. 内藤隆

    内藤委員長 そうですね、衣服とか家具とかを押えておく……。それからどうです。ヒロポンを打つてつてヒロポン中毒患者にしておいて、いつもヒロポンを与えるからということでひつぱつておくというようなことはありませんか。
  164. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 そういうようなこともあるいは想像できないことでもないのでありますが、私が部下から、いろいろ取調べその他の経過報告を聞いた範囲では、そういう事実は今まで耳にしておりませんし、どうも記憶がないのであります。しかし最近そういう逃亡防止の手段として、ああいう社会ばかりでなしに一般に覚醒剤の使用が相当はやつておりますので、覚醒剤を使用しておる者もあるだろうと思いますが、業者が意識的に逃亡防止の手段としてそういう薬品を与えてやらしておるかどうかということは明瞭でございません。
  165. 内藤隆

    内藤委員長 それから従業婦の年齢の関係ですが、区役所等の吏員と結託して年齢を偽つておるというような事実を二、三耳にしておるのですが、そういうのはあなたの耳に入つておりませんか。
  166. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 吏員等が故意に業者その他と結託して戸籍上の修正をする、したとかいうようなことは今までございません。
  167. 内藤隆

    内藤委員長 そういう事実はなかつた
  168. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 ありません。それに類似した別な問題はございますが、ただ吏員が買収その他の方法によつて故意にやつたという事実はありません。
  169. 内藤隆

    内藤委員長 当委員会の事務局では相当にただいまお尋ねした点についての調べがあるのですが、それはいずれまた申しましよう。それから管内において事件端緒を発見した場合、たとえば新潟、秋田等に行つて問合せや、現地出張等を比較的やつていないために、送致に至らざる事件が多いと聞いておりますが、そんなことはありませんか。
  170. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 現在いろいろ警察制度がかわつておりまして、自治体にも小自治体がありますので、警察によつては予算の関係でそういう不自由を感じておるところもあるかもしれませんが、警視庁に関する限りは、悪質な違反事実が発見されまして、被疑者を逮捕に行くとか、あるいは捜査に行くとか、必要な場合にはどんどん出張もさしておりますし、また必要な場合は地方に照会等をして回答を求めたり、軽いものについては地方に移牒して調査させておるというようなことになつておりまして、警視庁に関する限りは特にそういう不便は感じておりません。おそらく自治体警察には小さいのがたくさんありますから、中には予算の関係で困るところもあるんじやないかと思いますが、これははつきりいたしておりません。
  171. 内藤隆

    内藤委員長 行政犯に対しては、一般の刑法犯に比べて警察官の捜査上の熱意が欠けておるように聞きますが、その点どうですか。
  172. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 戦争前までの警察は、どちらかと申しますと、世間からいわゆる警察国家と非常に強い言葉でいろいろ批評を受けておりますが、相当広範囲に、いわゆる本来の警察仕事以外のことにまでタツチいたした傾向は確かにあつたわけであります。終戦後は、警察は本来の姿に返るべきだ、どこまでも犯罪の予防なり、検挙なり、人民の生命財産の保護なり、そういうようなことに専従すべきであつて、あまりその他の方面に幅広くタツチすべきでないという、根本的な民主主義的な警察の確立、そういう思想、またそういう考え方で警察法も改正されましたし、現在そういう形で行つておりますので、仕事範囲が狭まつたこと、あるいは重要な犯罪の予防検挙等に重点を置いて努力いたしておりますような関係で、あるいは行政犯には警察は非常に熱意を欠いておるんじやないかというようなことを言われるおそれもあろうかと思いますが、しかし一面におきまして、行政犯におきましてもいろいろ特殊官庁がございまして、たとえば労働基準法に基きましては労働基準監督署において警察と同じような捜査権を持つておりますので、第一義的にはそういう主管庁の存在を尊重しまして、あまり警察は出しやばらない。しかしながらそういう方面から要請があるとか、あるいは悪質なものが発見されまする場合には、当然これは捜査権を持つて実際にはやつておりますが、まあ熱意を欠くというおそれがあるかないかという問題は、今私が申しましたようなことが、熱意が欠けておるように見えるのではないかと思います。それからもう一つは、それぞれの主管官庁の存在を尊重して、第一義的にはその主管官庁の発動に待つというような考え方を持つておりますので、警察もたくさんありますから一概に言えませんが、そういうようなことが言われる大きな原因じやないかと思います。
  173. 内藤隆

    内藤委員長 人身売買関係ある他機関との協力状態を少しお伺いしたいのですが、まず国警との協力状況はどうですか。
  174. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 他の警察関係は存じませんが、警視庁に関する限りは、国警本部にもじかに属しておりますし、また管区本部も同じ建物にありますし、東京都の国警も同じ建物にあり、従来の人的つながりも持ち、知り合いばかりでありますし、この売春関係あるいは人身売買関係ばかりでなしに、すべて警察につきましては国警と自治警との連絡は相当緊密に行われておると考えております。その他検察庁につきましても遺憾なくやつております。その他青少年の保護育成というような少年警察というような面におきましては、家庭裁判所あるいは厚生省、その他関係機関、東京方面とも相当われわれとしては緊密な連絡をとり、最近は青少年の保護育成の問題につきましては、御存じの通り地方青少年問題協議会ができまして、東京都にもその協議会ができておりますが、そういう機関を通じて、従来より以上に最近は緊密に連絡が保てているんじやないか、今後もそういう方向に向つて努力して行きたい、かように考えております。
  175. 内藤隆

    内藤委員長 そういう被害者に対する保護機関として現在あるのはどういうものですか。
  176. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 犯罪少年ということになりますれば、家裁を通じましてそれぞれ少年院とかあるいはその他の保護監察所でありますとか、あるいはその他それぞれ保護収容する施設にこれを収容いたしておりますが、普通の不良行為者とか、あるいは保護を要する者は、主として児童相談所——これは東京関係ですが、ここへ収容するというように連絡関係が非常に深いわけであります。
  177. 山口武秀

    ○山口(武)委員 証人のただいまの証言を聞いておりますと、特飲街というのは契約においてもあまり問題がない。それから従業婦の問題についても決して問題はない。そして毎日の職業の中における問題についても問題がない。特飲街はきわめて民主的で自由な生活を営んでおる。このような印象を受けまして、午前中の新潟県の次席検事の意見とはきわめて対蹠的な印象を受けたのであります。それからなお現実に起つておる事態、つまり人身売買事件というような実情があるときに、証人証言というものは私としてはきわめて納得できがたく受取つた。そこでお尋ねをいたしたいと思うのでありまするが、先ほどの証言によりますと、社交喫茶ということで営業の許可がされている、警視庁はこれで許可しているというわけでありますが、一体社交喫茶というのはどういう内容を持ち、それを警視庁でどういう認定をして許可しておるものなのか。この社交喫茶の内容というものをまずお聞きいたしたい。
  178. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 今も申しましたように、社交喫茶は従来いうところのカフエーであるということを申し上げましたが、カフエーにもいろいろ規模がございまして、銀座とか新宿方面で、非常にたくさんな婦女を雇い入れまして、ほとんどキヤバレー類似にやるような相当規模の大きいものもあります。あるいはまた西洋料理店風な、女給が二、三人おる小規模のものもありますが、この社交喫茶と申しますと、日本料理、お座敷料理専門というのと区別いたしまして、最小限五坪以上の洋式のコンクリートで建てた広場とでも申しましようか、そういう設備を有しておるものに対しまして、社交喫茶として許可を与えておるわけであります。
  179. 山口武秀

    ○山口(武)委員 五坪以上の何とかやらを持つておるものを社交喫茶として許可をしているのだということでありますが、私は、こういう社交喫茶というようなものは、業者がその業務の内容としてどういうことを行つているのか、これをどのように警視庁が認定し  ているのか、これをお尋ねしたのです。この社交喫茶におきまして、まさか売淫が行われておるという事実を警視庁が知らないわけではないと私は思う。いかがですか。
  180. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 先ほどは、社交喫茶はどういうものに対して許可しておるかというお尋ねでありましたので、一応風俗営業取締法に基く形式論を申し上げました。今日問題になつておりますいわゆる特飲街は、伝統的に現在地域は十三箇所でありますが、数も相当ございます。これらの業者の実体は全部が全部ではありませんが、いわゆる売春と申しますか、売春行為をせしめるという実体が相当濃厚であるということは、私どもも認めます。
  181. 山口武秀

    ○山口(武)委員 濃厚であるというようなことではなくて、売淫というものがその営業の実体であるのだというような認識は持つておらないのですか。
  182. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 私の言葉の表現が、あるいはなるたけ円滑にものを言いたいので、そういう言葉を使つたかもしれませんが、実質は今申されたように、主として特飲街の業態が売春行為を事実上させている場所であるということを認めます。
  183. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そういたしますと、社交喫茶の営業許可という名目のもとに警視庁では売春の業務を許している、このようなことになるわけですか。
  184. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 社交喫茶という仮名に隠れて売淫をせしめるのが実体の業者を公然と警視庁は認めるという意味では決してないのでありますが、事実上そういう行為が行われております。これは伝統的な問題でありまして、終戦前においてもそうでありますし、終戦後においてもそういうことは実際問題として行われておる。しかしながらこれを警察の力のみをもつていたしまして根本的にたたく、撲滅するということは、いかに警察の力をもつていたしましても事実上非常に困難な問題であります。そこでわれわれといたしましては、漸進的にいい方向に導いて行こう、たとえばカフエーとして許可いたしますのも、全然許可しないでただ事実上淫売窟を認めているということでは、これをよくする方向としては非常に困るのでありまして、どこまでも風俗営業取締法に基く実体を備えたカフエー化せしめよう。そこで形式的にもそういう設備を持つたものを許可する。一瞬法の空白時代がありまして、終戦後その時代においてだんだんふえたのでありますが、設備の不完全なものに対しましては、それを注意いたしまして、あるいは能力の範囲内において設備を改善せしめるとか、形式の設備の上におきましてもカフエーの実体を備えさせ、できるだけ今現実に行われているような嘆かわしい姿をなくして行こう。しかし実際問題としてこれを根本的に撲滅するということは、警察の力のみをもつていたしましては非常に困難でありますから、悪質なものに重点を置いてこれを検挙し、取締り、漸次いい方向に向けて行こう、こういう建前でやつておるのでありまして、こういう業者がどんどんふえないことをわれわれは希望し、またそれを黙認して、そういうことを意識して放任しておくということでは決してないのであります。
  185. 山口武秀

    ○山口(武)委員 いかにあなたの説明を聞きましても、事実問題として警視庁は売淫行為を許可している、これ以上の意味はあなたの今長々と言われた言葉の中からも出て来ないと思う。それはその点でよろしいのですが、この売淫行為を取締るのに警視庁の力をもつてしては困難であると言われておりましたが、どこに困難があるのかをお聞きしたい。それからもう一つは、ただいまの証言で、この売淫行為の業者をどんどんいい方向へ向けていると言われますが、いい方向というのはどういうことなんですか。そのいい方向へ向けておられる警視庁の努力というものは現在どのような成果を上げているのか、この点をお伺いします。
  186. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 いい方向という言葉でありますが、これは漸次カフエー本来の営業に移行せしめるという意味におけるいい方向へ向けて行きたいという意味であります。
  187. 山口武秀

    ○山口(武)委員 どんな成果が上りますか。
  188. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 成果は従来よりは最近は相当よくなつて来たと思います。たとえば、これは検挙した事例はあとで申述べてもいいと思いますが、周旋業者等によつて十八歳未満の婦女を雇い入れて売淫をせしめておつた者に対しましては、昨年度におきましても、一齊取締りの際等におきましては、相当多数これを検挙いたしました。そういう点を十分是正せしめるように検挙の面と指導の面において努力いたしておりますので、最近は従来より相当よくなりつつあるのではないか、またよくすべくわれわれはそういう方向に努力しておるということを申し上げておきます。
  189. 山口武秀

    ○山口(武)委員 困難の問題についてはお答えがない。それからただいまいい方向ということを言われました。また少年の使用云々ということを言われましたが、あなたの一番初めに言われた意味での売淫行為をなくするということは、やつていないじやないですか。少年を使うのはいいとか悪いとか言うが、売淫ならやつてさしつかえないのだ、ただ売淫をやる場合に年少者を酷使するのが悪いとか何とかいう末梢的なことで、売淫というものを是認している。これを前提としての取締りじやないか。これがよい方向と言えるのですか。
  190. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 少女を酷使したのだけを取締つて、売淫の問題を全然放任しておくという意味で私さように答えたのではなかつたのであります。たとえばといつた意味でありまして、いわゆるその十八歳未満の少女をもぐり周旋業者等を通じて雇い入れて売淫行為をさせておつたという不都合な行為がありましたので、徹底的にそれを検挙してやつたという事例を申し上げたのであります。結局売淫を中心として、それからいわゆる人身売買的な不法行為、それを取締つているのであります。
  191. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それではそのへんについてもあとの関係者から聞くことにしましよう。  なお聞いておきたいのは、赤線区域ということを言つておられましたが、赤線区域という言葉の意味はどういうものであるか。これはちよつと不可解だ。それから赤線区域の内容というものを御説明願いたい。
  192. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 冒頭にも申し上げましたように、現在は法的には赤線区域というものは存在していません。昔公娼制度が認められた当時、貸座敷営業取締りに基いての場所というものが一つの指定された区域として認められていた。あるいは二業地とか、現に待合等の存在する地域に対して、それがあまり存在しては政策上、事実上おもしろくないという意味で一定の地域を指定して、そういう地域内においてのみ許可しておつたというような従来の慣例と申しますか、それを俗に赤線区域と申すのでありまして、先ほども申しますように、現在では赤線区域というものは存在いたしておりません。
  193. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それはそれで言われた通りにとつてもよろしゆうございますが、ただ赤線区域内における売淫行為というものはきわめて公然たるものなんです。そうしてその売淫のための契約というような問題についても、たといそれが文書でなくても、現実に行われている実態というものから、その契約というのも当然推論し得る。そういう場合に、この赤線区域内における売淫行為というものは、勅令九号、それから衛生設備云々というような取締り関係における法規からも当然取締りの対象になつて来ないのか。これは一体どういうふうに警視庁で見ておられるのか。それから現実にどのような措置がとられているのか。この点をお伺いしましよう。
  194. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 衛生設備云々ということを今御質問になつたのでありますが、衛生設備の問題はあまり関係がないのじやないかと私思うのであります。いわゆる赤線区域内で売淫を公然と認めている、その結果勅令号違反にもなるじやないか、またあるいは契約の問題等も実質的には行われているという御質問なのであります。私も冒頭申しましたように、いわゆる文書にしてはつきりした契約というものは今まで取調べ範囲においてはないが、実際問題として口頭その他の方法で、いわゆるその業者の中で従業員として認めて、そうして売春行為をやるというような実質的な契約と申しますか、そういうものは実際問題として相互に口頭においてあるいは黙認の形においてなされているのじやないかということをわれわれは考えており、また実際売春行為をやらしてわれわれが検挙した事例もあるのでありますから、当然おつしやる通りだと思います。従つて淫売をやるということの契約をすること自体いわゆる勅令九号の違反になろうかと思います。従いまして先ほど申しましたように一挙にこれを撲滅するということは非常に困難であるから、漸次悪質なものに重点を置いてこれを取締り、いい方向に向けて行こうという方針でわれわれはやつていると申しましたが、そういう趣旨でやつております。勅令九号違友に該当するもの、あるいは職安法違反その他いろいろこれは非常に複雑な法規関係がありますが、それぞれ悪質なものに対しましては先ほど事例も一応読み上げて申しましたけれども、そういうものに対しましては悪質なものから重点的に取締つているのであります。いわゆる世間で認められている売春行為を公然とやつているものを、こちらが全然放任してどうなつてもよろしいという考え方でわれわれは取締つていないことを申し上げておきます。
  195. 山口武秀

    ○山口(武)委員 ただいまの証言は私はきわめて重大な証言であつたと思う。一挙に赤線区域内の取締をやるということは困難がある、私はこの困難という言葉にどういうような意味があるのかわかりません。しかしただいまの証言によりますと、ともかく一挙に赤線区域というものを取締ることは不可能だから漸次取締つて行く。漸次取締るということになりますと、東京都管内、警視庁管内におきましては赤線区域というもの、売淫業者というものがきわめて近い将来に完全に消滅する、こういうふうに考えられます。警視庁自体がそのような決意を持つておられるというように受取れるのでありますが、そのように解釈してよろしいかどうか、念のためにお聞きしたい。
  196. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 漸次という言葉の解釈でありますが、少しずつという意味では決してないのでありまして、悪質なものに重点を置いて取締りを強化する、こういう意味に御解釈を願いたい。私の言葉が足りなければ言葉をあらためてお答えを申し上げたいと思います。それから警視庁の取締り方針で赤線区域内において今後近い将来において売淫行為というものがなくなる見通しを持つているかどうか、またあるいはそういう熱意と決意をもつてつているかという御質問でありますが、私どもは悪質なものに重点を置いて、そうして漸次いい方向に向けて行く、なかなか短期間のうちにはこれを撲滅することは不可能であるということを申しておりますが、撲滅ということは実際問題として戦前の事情から申しまして、いくら取締りましてもいわゆる牛の上のはえを追うような関係でありまして、ただ警察取締りだけでは、かりに悪質なものに重点を置いて一罰百戒的な警告的な取締りをいたしましても、これが短かい期間に絶滅を期するということは実際的に私は取締りのみをもつてしては不可能ではないかと考えております。
  197. 山口武秀

    ○山口(武)委員 絶滅することは不可能だというように今言われましたが、絶滅させる考えはありませんと言つたらいいでしよう。今の証言とあなたの先ほどの証言は明瞭に食い違つている。私は食い違い自体をここで何しようとは思わない。警視庁の考え方というものが明確になつたらそれはそれでよろしい。  その次にお聞きしたいのは、警視庁の管内におきまして米軍進駐以来アメリカ軍から慰安婦の提供を要求されたことがあつたかなかつたか。この事実をあなたは知つているか。この点をお聞きしたい。
  198. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 私はそういう事実を存じておりません。
  199. 山口武秀

    ○山口(武)委員 これはきわめて遺憾な言葉であります。なぜかと言えば、警視庁の防犯部長ともあろう者がそのことを心得ていない、これ自体が実に重大な問題だと思う。たとえば南朝鮮においてアメリカ軍が進駐したときに、アメリカ軍に春をひさいだ女に対しては南朝鮮人全部が石を持つてこれに投げつけた、民族的屈辱だと言つてこれを糾弾した。朝鮮におきましてもこのように朝鮮の民族自体がこの問題な重大な関心を持つていたのです。先ほどの新潟県の次席検事のお話によりましても、このような事実があつたということを明瞭に証言している。そういう問題があるにもかかわらず、警視庁の防犯部長がそのような事実を知りませんということはきわめて奇怪至極である。しかしながら奇怪至極なことをあなたにここでとがめだてようとするのではないのです。そのような実情であつたということが明瞭になつたから、それはそれでよろしいのです。  それで最後に一つお聞きしたいのは、労働基準法の三十二条の違反でありまして、これは労働時間の問題、これについて単に特飲街においてのみならず、一般の料理店というようなところにおいて、この労働基準法の第三十二条というものが実行されているのかどうか。一般の料理屋というものが朝十時から夜の十二時まで、あるいは一時、二時までという労働を強要されておる。このような実情にあると聞くのでありまするが、警視庁はこういうことに対して調査をしているのか、取締りをどうしているのか、この点を最後にお聞きしたい。
  200. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 お答えします。これは私はそういう事実はないとは申しません。われわれもたまには飲みに行くこともありますから、多少そういう事実は認めております。ただ先ほども申しましたように、第一義的には労働省関係、あるいは労働基準署、そういう方面取締り指導という面に重点を置いて、その立場を尊重して、そこまで私どもが深入りしてやるところまで今やつておりません。そういう事実は相当あろうかと思います。
  201. 井上良二

    ○井上(良)委員 この際証人に一点だけ伺つておきたいのは、問題は特飲街の営業の主体ですね。今証人証言されましたところによると、売淫を中心にした営業が主体である。しかしこの営業自体は勅令第九号に違反するということを事実認められておるのですが、将来これを善導して、そういう営業主体から、いわゆる風俗営業たる社交喫茶の方に順次善導して行きたい、こういう御証言をされた。そこでその善導の具体的な方法としては、単に悪質なやつだけを取締るだけに善導の何を置かれておつて、現に法律違反し、社会風紀を乱しておることを事実認めておりながらどうすることもできぬ。私たちの力じやどうにもならぬ、こういう御証言のようでございますが、しかし問題は、ここへ婦女子を雇い入れて来ました場合に、この婦女子が何を目的にして一体雇われて来たか。それがあなたがおつしやる通り単なる普通のカフエーや料理屋の給仕女として来たのか、売淫を目的にして、それを承知の上で来ておるのかということはおよそわかることだ。従つてもしこれら風俗営業が、新しく人を雇い入れました場合、必ず届けをさせることにして、もしこういうことであるなら法律にひつかかるぞ、そうなつた場合それはこの店に置くことはならぬ、そこまであなたの方が積極的に善導いたしますなら、いわゆる古いやつはしようがないとしても、新しい者が入つて行かなければ次第々々にそれはさびれて行つてしまうことになつちまう。だから新しく雇い入れる者について、そういう具体的な届出の方式をとらすか、またそういう事実がかりに発生した場合は、びしびしと取締めて行くという行き方があろうと思いますが、そういうことは実際不可能でございますか、この点どうですか。
  202. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 人身売買防止の対策の一つのように思われますが、いわゆる雇い人を入れた場合に、従業婦を入れた場合に、届出をせしめるという問題でございますが、そういうことにいたしますれば、どの方面からどういう女が雇われて来たか、あるいはだまされて来ておりはせぬかというような事情も、届出のあつた都度調査いたしておりますれば相当明瞭になりまするし、防止対策にもおそらくなろうかと思います。但し現在のところ規定の上で、この届出義務を負わしていないのでございます。そういう関係で、事実指導行為として任意に、いわゆる強制的な意味でなしに、指導意味警察に連絡をとらすというようなことも、必ずしも不可能じやないかと思うのでありますが、現在のところでは条例にそういう規定がまだ存在しておりません。今後の対策としまして、その点につきましてはひとつ研究してみたいと思います。これは単にそういう届出等の問題ばかりではなしに、今後売春を防ぐとか、人身売買を防ぐとかいう大きな角度から、現在のところでは——余分な証言でありますが、宿屋あるいは普通の客席に公然と婦女のはべるような料理店とかいうものと警察とは何ら関係ないことになつておりまして、それは府県知事——東京都知事なら東京都知事に届出ればそれが自由にでき、その数が現在非常に多い。宿屋などにおきましても、特飲街のことを盛んに問題にしておりますが、悪質な旅館等におきましては、相当婦女を宿屋に入れて密淫売をやつておるところもちよちよいありますし、そういうものも一般的に予防して風俗警察の徹底を期するという建前から行きますと、そういう届出制度なんかは一つの法律措置として非常にけつこうなことじやないかと思いますが、これは大きな問題でありまして、今後の防止対策として研究すべき問題だと思います。  それから警察の力のみをもつてしてはできぬ、だからほつておるという意味ではないのでありまして、これを撲滅することがはたして実際問題として社会実情に即するかどうか、こういう問題になりますと、私警察官としましてそういう政治的な問題は発言することははなはだ失礼でありますが、これは相当な大きな問題であろう。私どもとしましては、限られた警察官で、売春とか人身売買ばかりでなしに、相当な治安捜査、一般の悪質犯とか、その他の予防というものに努めておりますので、それのみに警察官を集中するというわけにも参りません。少数の警察官で取締りをやつておるわけでありますが、いくら取締つても不可能だという意味よりも、はたしてこれをなくすることが現実の社会として適当であるかどうかということになりますと、相当大きな政治的な問題でありますので、そこまで私証言できませんが、できるだけ悪質な者から重点的にまず具体的に取締りを強化して行くという方針をとつております。
  203. 井上良二

    ○井上(良)委員 今非常に大事な私見を述べておられましたが、その考え方が非常に誤りであろうと思う。いわゆる売春を一定の地域に集めて営業させておるということは、これは封建的な残渣でありまして、これがいわゆる人権を侵害しておる大きな土台になつておるわけです。だからこんなものは、集団的に、またそういう特別な業態を認めること自身が、民主国家の大きな恥辱なんです。そのことをお考え願わなければなりませんね。だからその営業自体というもの——本人かすき好んですきな男と一緒にどうしようということまでわれわれは干渉すべきものじやないので、そういう特別な区域を認めて特別な営業をやらしておるということが、少くとも民主国家として新しく独立しようとするときに、これは国の恥辱なんで、それをあなた方が頭に入れてかかつてもらわぬと、こんなものをもしなくした場合、どだい世の中が物騒になつてえらいことになるだろうというような、あなた防犯部長ですからいろいろお考えになろうが、そういう考え方自身がこれらをますます跋唐さす大きな一つの要素になつて行きますから、たまに注射するくらいの検挙をやつたくらいでは何にもなりません。やはりこれを漸次なくして行くという方向に持つて行かなければ、これは日本としては世界的恥辱ですから、ぜひそういう方向に漸次幅を狭めて行つて、なくしてしまうというやり方に持つて行つてもらいたい、こう私どもは思います。
  204. 浦口鉄男

    ○浦口委員 二点ほどお尋ねいたします。先ほどのお答えの中にあつたのですが、言葉じりをとらえるわけではありませんが、この特飲街の問題は、人身売買の問題の非常に大きなものとして取上げられておるわけでありますが、その適用法律のうちで一番重要性を持つておるのが職業安定法中の「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で」云々、この問題にかかつて来るわけでありますが、先ほどの防犯部長のお話では、公衆衛生上の問題は大した問題じやない、こういう御答弁があつたのでありますが、これは一体どういう意味でおつしやつたのですか。これは公衆衛生上心配ないと言われるのか、あるいはそれより重要な問題があるのだから、それは大したことじやない、こう言われるのか、それをちよつとお聞きしておきたいと思います。
  205. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 先ほどの質問の趣旨をちよつと勘違いしまして、何か衛生上の設備云々のように感じたものですから、実はああいうお答えをしたわけであります。もちろん御趣旨の通りでありまして、公衆衛生上あるいは風俗上こういうものは非常に大切な問題であるということは考えております。
  206. 浦口鉄男

    ○浦口委員 これは先ほどの新潟県の次席検事証言にあつたのですが、東京都の衛生局予防課長与謝野光という人は、昨年の十月、この衛生問題については、全然そういう心配がないということを言われて、その後それに対する東大の市川教授の反証があつて、これが今度の新潟地検が取上げた問題の法律上の決定に非常に重要な影響を持つているのでありますが、この與謝野課長の証言に対して、防犯部長はどういう御意見を持つておりますか。
  207. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 この売春問題は、公衆衛生上非常に重大なる関連を持つております。私の方で特飲街ばかりでなしに、その他の方面における売春取締りも相当厳重に励行しております、その結果、これは東京都の責任において行われるのでありますが、いわゆる性病があるかないかの検診の場合、私ははつきり今数字を記憶しておりませんが、検挙された売春婦の検黴の結果、ほぼ二〇%内外性病を持つておる。そういう意味から申しましても、売春行為ということと公衆衛生ということは、非常に重大な関係を持つております。決して等閑にすべき問題じやない、かように考えております。
  208. 内藤隆

    内藤委員長 証人に申します。ただいま浦口委員のおつしやつたのは、東京都の予防課長が、人身売買の問題について裁判所に決して害はないという証言をしたのです。そういう問題について聞かれたのです。そういう証言があつたという事実を知つておりますか。
  209. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 証人に出られたということを、私は存じておりません。
  210. 浦口鉄男

    ○浦口委員 それでは、その問題はお知りにならぬとすればしかたがございません。今の御答弁で防犯部長の事実に対する御意見は、それで承つておきます。  そこで赤線区域を決定するについては、東京都の公安条例により公安委員会が許可をした。現在は新しい事業を始める場合は公安委員会の認可がいる。こういうことをさつきお聞きしたのですが、この東京都の公安条例によつて赤線区域をきめたというのはいつごろであるか、そのときの公安委員会の委員の名前がもしわかればその名前と、大体そのときどういうことで、ここがそういうふうに指定されたか、そのところをちよつと……。
  211. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 私のお答えの仕方があるいは徹底しなくて誤解を受けたかわかりませんが、風俗営業取締法同施行条例でありますが、その十一条に公安委員会が風俗保持を必要と認められるときはその営業場所についてこれを指定、制限することができるという規定がございますが、まだ現在のところ正式にこの委員会においてそれを決定いたしまして、そうしてこの地域でなければ営業できるとかできないとかいう指定をやつた事実はないのでございます。この規定が存在するということを実は御指摘申し上げました。従来昔からありました二業地でありますとかあるいは遊郭地帯でありますとか、事実上そういう地帯が残つておりまして、現在でもいろいろ遊郭以外の玉ノ井とか亀戸とか従来存在しておつた地域が現在でも十三箇所残つております。事実上そういう残つておる地域を俗に赤線といわれておるということを実は申し上げたのでありまして、指定はいたしておりません。
  212. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そうするとたいへんわれわれふに落ちないのですが、どんどん新しい地域が事実上できるのでありますが、それはどういう方針でやつておられますか。
  213. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 散在的に料理屋とか飲食店が、いわゆる赤線区域内にふえるとか、あるいは廃業するとかいう問題があろうかと思いますが、ああいう特殊な地域を特に新しく指定してその拡大と申しますか、発案をわれわれが黙認しているという事実はないのであります。昨年でありましたか、例の池上の盛り場の問題等が出まして、東京都と私の方で緊密な連絡のもとに、実際法規の問題としては、むずかしい関係があるのでありますが、事実上ああいう地域を、集団的なものは新しく認めないという方針で実はやつておりますので、そういう計画もときどき耳にいたしますけれども、事実上私どもは、現在以上にああいう集団的なものを拡大させない、あるいは新しくつくらせないという方針で、あらゆる努力をいたしております。
  214. 浦口鉄男

    ○浦口委員 現在事実上認められているこの十三箇所の赤線区域の中で、新しくやろうというのはこれを認める、こういうふうに解釈していいのですか。
  215. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 区域内でありましても、その業態が明らかにそういうことを実態とする業者だという場合には、許可をしない。今申しましたように、できるだけカフエー営業の実態を備えるような形の条件の整つたものに対しましては、将来いろいろの弊害が起らないように十分注意するとか、あるいはいろいろの実情調査しまして、許可をする場合がありますが、区域内ならばどんどんそういうものを尊して認めて行くという方針ではございません。むしろ区域内にありましても、先ほど申しましたように、漸次いわゆるいい方向に向けるように努力いたしております。
  216. 大泉寛三

    ○大泉委員 これはサンデー毎日にも報道されているのですが、こちらの方で調べたのでも、警視庁の少年一課で昨年の八月、未成年者に売春行為を強要した業者取締り行つたが、そのときに、足立区本木町一ノ一二二、ブローカー小室仙之助、五十五歳、台東区新吉原揚屋町一八、芙蓉こと近藤福松、五十九歳、外一名を児童福祉法職業安定法違反の疑いで検挙した。そして取調べた結果、次のことが判明した。すなわち彼らは、二十五年十月から近藤方で働かせていた某女が、十六歳では職業安定法に触れるので、相談した上、結婚のためだと偽つて東京家庭裁判所家事審判部に、錯誤による戸籍訂正許可申請を出し、十八歳として許可をとつていたというのであります。これに関して、なお多くの同様なる事例があると考えられるが、これはどうお考えになりますか。  またもう一つは、家庭裁判所は戸籍訂正をどんな根拠で許可したか不明であるが、このような簡単な取扱いで許可したということに問題があると思いますが、あなたのお考えはどうですか。
  217. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 今御質問になりました事実は、確かに私も記憶いたしております。十八歳に満たないのを十八歳という申請をして、そして判決を得て、区役所の方へ行つて戸籍を訂正した。最初に御質問になりましたことと関連するのですが、区役所の吏員が故意に結託してそういうようなことをした、そういう事件はないが、類似した事件があるということを申しましたが、今申されたものがそれなのでありまして、その事実は確かにありました。それからそれに類似した事実が相当ほかにも行われているのじやないか、それに対する見解いかんという御質問でありますが、この事実は確かに一つ私の方で発見したのでありますが、他にそういう事実が存在しておるかどうかということになると、想像になりますので、具体的に発見したことはございませんので、何とも申し上げられません。  それから家庭裁判所の方でそういう判決をしたという問題につきましては、私の立場からあまりこれに対して批判はいたしたくないのでありますが、何か証人等を呼んでこれを調べられたというようなことも耳にいたしておりまして、ほんとうに具体的にあらゆる証人を呼んで確かめられたかどうかということは存じませんけれども、こういう問題につきましては相当慎重に調査して、その上で決定すべきものじやないか、かように考えております。
  218. 大泉寛三

    ○大泉委員 私はこれだけで終りますが、証人は防犯部長という一つの要職にあられるのでありますから、私はこの際ひとつ防犯部長という一つの重要な立場にあるあなたに対して希望しておきます。いわゆる犯罪行為は結局生活の破綻から発生して来る。私はたまたま上野駅前の社交喫茶店に食事に入つたことがあります。恐ろしくどうも高いので驚いた。こんなことでは、少年が知らずにここに入つたならば、まつたく目の玉が抜けるような料金をとられる。そして悪いことをするような結果に導かれるのだ、こういうふうなことを私は考えたのであります。そこであらゆる犯罪はああいうところから醸成されるのだと私は思う。たまたまあなたとここでお会いした機会に申しておくのですか、ああいうところに出入りすることが、必ずその次に来るものは、どうしてもいわゆる犯罪というものがそこに生まれて来る。これは人身売買とは直接関係はありませんけれども、どうかああしたほんとうに生活を破るがごとき営業に出入りする者に対しては、やはり特段の注意を払つて、防犯の実を全うするようにお願いしておきたいと思います。
  219. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 一点だけ証人にお尋ねしておきたいと思います。現在参議院でも問題になつておりまする、いわゆる特飲街の集団地域でありますが、これは全国的にもいろいろそういうような特飲街の集団地域に対して、これが学校付近にできるとか、その他非常に風俗を乱すというような点で、付近の人々が、婦人連合会の人なんかは反対しておる。実は私どものところにもありますが、今証人からお聞きしますと、特飲街の集団地域は既存のものは別として、今後許可を申請して来る集団地域は、これを認めないというような御証言でありました。これは防犯部長としての個人的なお考えであるか、それとも何か東京都、警視庁、あるいは厚生省、労働省等の関係者の協議の結果で、全国的にそういう方針をとろうという意向があるということでありますか、その点お伺いいたします。
  220. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 集団地域をさらに新たに認めないという方針につきましては、警視総監におきましてもそういうような考え方を持つております。私どもももちろん個人としてそう考えておりますし、公安委員会としても委員の方々の考え方もそうであります。それから先般池土の例の特飲街の問題が起りましたときにも、それを契機といたしまして、東京方面とも十二分の連絡をとりまして、こういうものは認めたくないという方針をとつておりますが、ただ全国的に云々の問題になりますと、これは私の方としては、別に申合せとか、あるいは協議をしたということはございません。常に警視庁でやつておりますいろいろな仕事についらの連絡とか、そういうことはやつておりますが、そういう申合せとかそういうことはございません。
  221. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私一点伺つておきたいのですが、警視庁の管轄下に、いわゆるアメリカ軍を相手にしておる通常パンパンといいますか、こういう人たちが一体何人くらいある見込みですか。
  222. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 はつきりした数字はなかなかつかみかねるのでありますが、昨年あたりよりは大分減つて参りまして、私らの見込みとしましては、三千人内外くらいじやないかという見当をつけております。はつきりした数字はなかなかつかめませんので、大体そういうような見当でございます。
  223. 竹村奈良一

    ○竹村委員 こういう人たちに対しては、一体どういうような方法で取締るか——というとおかしいのですが、どういう形でやつておられるか。もう全然放任されておりますか。
  224. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 決して放任しているのではありません。これは特飲街においてもそうでありますが、街頭にいわゆるパンパンと申しますか、売春婦が出て客引きする、売春行為をやつておる。これは先ほどお話が出ましたが、確かに民主国家としてはずかしいことで、風教維持の点から申しましてもよろしくない。従いまして相当強力に取締つております。売春行為の事実がありますれば、それは現行犯で押えまして、すぐ検察方面に手続をしております。しかし考え方としては、こういう売春婦が生れた来たということは、結局日本が戦争に負けた結果であつて、直接的な動機はいろいろありますけれども、結局戦争犠牲者と申しますか、気の毒な立場にある方も多いので、決して過酷な取締りをするという考えはもちろん持つておりません。しかし風教維持の面からいたしまして、相当取締りを励行いたしております。それは私ども直接の仕事ではありませんので、取締つた者を最後までめんどうを見て、これを善導するということまでは参りませんけれども取締りを通じて反省せしめるというような点、あるいはその他との関係をとつて、できるだけ今後の処置を講じてもらうように常に連絡はいたしております。
  225. 内藤隆

    内藤委員長 竹村君に申し上げますが、もう一人証人を呼んでありますので……。
  226. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一点だけ聞いておきたいのです。たとえばそういう形でやつておられるが、われわれの聞いておるところでは、その間に子供を生んだ人たちが、いわゆるあいのこと言われておるのですが、大体相当な数に上つておる。しかも子供をかかえて困窮しておる人があるのですが、こういう問題について相談を受けられたか。あるいはその結果において、食えないことからいろいろなことが行われるというような問題について、どういうふうな処置をされておりますか。
  227. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 そういう不幸の子と申しますか、そういう子供が相当生れているといううわさは私ども聞いておりますが、具体的にその子供の処置について相談を受けたことは今のところ私記憶を持つておりません。直接警察関係でそういう人たちを保護するというわけにも参りません、ただ厚生方面でいろいろやられたことと思いますが、そんなような状況でありまして、直接具体的にそういう人たちの救済についてわれわれとしては別にいたしておりません。
  228. 浦口鉄男

    ○浦口委員 一点だけお尋ねしておきます。売春そのものについては、勅令第九号で処罰できることになるのですが、今のお話で現行犯ということでありますと、たいへんむずかしい問題と思うのです。現実にどういう方法でおやりになつているか。たとえば道路取締令その他によつて、客を引いているというふうなもの、あるいは現にいわゆる現行犯ということになるのですが、特飲街などは、いろいろ言葉のあやはありますが、結局公然たる売淫行為をやつておると認めていいのです。それは現行犯ならば撲滅できるという先ほどのお言葉もあつたのですが、その点について、取締り当局としては現実の問題としてどういうふうにこれを取扱つておりますか。
  229. 渡辺健次郎

    ○渡辺証人 街頭その他における客引きは、警視庁が東京都の売春条例で取締ることになつておりますが、これは表面的に行われております。また最近はほとんどそういう例はないと申しますか、少くなつたと申しますか、一時は街頭における、屋外における行為もたまにはあつた。そういうものは問題はありません。ただ屋内における現行犯となりますと、捜査上の問題になりまして、非常にこれはむずかしい。私は直接やつたことはないのですが、それぞれ取締りの専門の私服員等がいろいろの方法でくふうを凝らしてやつておると思います。これは実際問題として相当りつばな設備のある、音もしないようなホテルなんかでは、実際の現行犯を現実に発見することはちよつと困難であります。その辺については、聞き込みであるとか、投書であるとか、あるいは女と二人で入つたとか、その宿屋が常習的にそういう事例があつたとか、そういうあらゆる角度から現行犯を認定する場合もありましようし、場合によつては、常習的にそういうような場所がありますれば、それは条例をもつて取締るとか、あらゆる手段を講じて、合法的に無理をしないように、行き過ぎないようにいたしております。
  230. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、渡辺証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでした。     —————————————
  231. 内藤隆

    内藤委員長 引続き野本証人より証言を求めることといたします。  ただいまお見えになつておられる証人は野本与喜雄君ですね。
  232. 野本与喜雄

    ○野本証人 はい、
  233. 内藤隆

    内藤委員長 これより女子及び年少者人身売買に関する件について証言を求めることになりますが、本委員会人身売買に関する件につきまして調査を行うゆえんのものは、最近女子及び年少者人身売買事件全国的に激増の傾向にありまして、これが取締り並びに保護救済機関運用に対する総合的観察は、わが国民主化の促進並びに民生対策上緊急を要するものと思つたからであります。証人においても、率直なる証言によりまして本委員会調査に御協力されんことを期待する次第であります。  それではただいまより証言を求めることにいたしますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた考及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人野本与喜雄君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ何事も  かくさず、又何事もつけ加えないこ  とを誓います。
  234. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  235. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は起立をして答えてください。  証人野本与喜雄さんはお幾つになりますか。
  236. 野本与喜雄

    ○野本証人 当年五十九才でございます。
  237. 内藤隆

    内藤委員長 現在証人新宿カフエー協同組合理事長の職にありまするが、この理事長につくまでのあなたの経歴を簡単に話してください。
  238. 野本与喜雄

    ○野本証人 満二十二才まで故郷石川県におりました。大正六年から東京へ出て参りまして、昭和九年から当時の貸座敷営業を始めました。昭和二十一年一月十二日公娼廃止と同時に現在のカフェーを営んでおる次第でございます。以上でございます。
  239. 内藤隆

    内藤委員長 石川県の人ですな。
  240. 野本与喜雄

    ○野本証人 はあ。
  241. 内藤隆

    内藤委員長 証人が目下新宿協同組合理事長としておいでになるこの関係の特飲店というものはどれほどありますか。
  242. 野本与喜雄

    ○野本証人 現在新宿二丁目五十番地から五十三番地にかけまして七十四軒ございます。私はその理事長を勤めております。
  243. 内藤隆

    内藤委員長 その七十四軒の新宿カフエー協同組合というものなのですね。
  244. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  245. 内藤隆

    内藤委員長 従業員の数はどのくらいありますか。
  246. 野本与喜雄

    ○野本証人 従業員の数は正確にはつかめません。現在は本人の自由意思によつて出たり入つたりいたしますから、大よそ五、六十名のプランクはありますが、およそ四百五十名と計算していただきます。
  247. 内藤隆

    内藤委員長 自由な営業だから自由に出入りをしておるから、確実な数はつかめない、こういうのですな。
  248. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  249. 内藤隆

    内藤委員長 大体推定四百五十名とこういうわけですな。
  250. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  251. 内藤隆

    内藤委員長 この四百五十名に及ぶ多数の従業婦を募集するに、どういう方法でやられますか。
  252. 野本与喜雄

    ○野本証人 相当いろいろあると思いますが、大体において現在許されておりますところの店頭募集及びここに働いている女子による縁故募集と申しますが、知つた同士が話し合つて来る、そういうような方法をとつております。
  253. 内藤隆

    内藤委員長 紹介人か周旋人がいませんか。
  254. 野本与喜雄

    ○野本証人 中には来て間違つた事実も二、三あるようでございますが、最近はほとんど参らないような状態でございます。
  255. 内藤隆

    内藤委員長 その従業婦を採用する際、転出証明書やあるいは配給通帳の持参を条件とするようなことはないですか。
  256. 野本与喜雄

    ○野本証人 大体はそれを見ることを条件としておりますが、今日までそれを持つて来た者はまれでありまして、大部分は持つて来ていないような状態でございます。
  257. 内藤隆

    内藤委員長 大部分は持つて来てない。
  258. 野本与喜雄

    ○野本証人 はあ。
  259. 内藤隆

    内藤委員長 その従業婦の年齢は、どういう方法で確認されます。
  260. 野本与喜雄

    ○野本証人 これに対して、私も非常に頭を悩ましておる状態でございます。まずもつて本人の意思を承ります。それから本人の住所、氏名及び生年月日を承ります。それで大体におきまして私らの経験上から見まして、これならば満二十歳以上は間違いないというような場合には、あまり深くそれを取上げませんが、それがどうも満十八歳未満じやないか、あるいはどうもその線ニ近いというようなときには、いろいろな方法をもつて本人から聞きます。のみならずまた本人の体格及び動作、これまでの経歴を聞いた上で、これならばよかろうというときに、まずもつて本人はここにおれるかおれないかということを本人に確かめまして、現在ではすぐさま本人の申立ての場所に向つて労働基準法第二十何条かと思いましたが、参考書を持つ工参りませんでしたが、そういう書類を本人の申しました本籍地及び寄留地の役場なりあるいは区役所なりに早速照会状を出すことに現在はいたしております。
  261. 内藤隆

    内藤委員長 四百五十人からの者皆照会状を出しておりますか。
  262. 野本与喜雄

    ○野本証人 現在四百五十人近おりますが、これは昭和二十三年あそこに復活して以来から現在までたまつておるものでございまして、最近においてはそんなに一ぺんに四百人という例はございませんで……。
  263. 内藤隆

    内藤委員長 十人か二十人ずつ……。
  264. 野本与喜雄

    ○野本証人 そうでございます。それで照会状は各自の家において出しておりますから……。
  265. 内藤隆

    内藤委員長 組合としてはやつていないのですね。
  266. 野本与喜雄

    ○野本証人 組合としてやるように指導督励しておりますけれども、やることは各自の家にやらしております。
  267. 内藤隆

    内藤委員長 その照会状の返事が来るまでの間どうしておきますか、この従業婦を……。
  268. 野本与喜雄

    ○野本証人 疑わしい者は本人は希望してもそのままに待期の姿勢に置くことに現在はやつております。
  269. 内藤隆

    内藤委員長 待期の姿勢……。
  270. 野本与喜雄

    ○野本証人 待期の姿勢と申しますのは、現在は照会状が来なかつたならば、疑わしい者はそのままに待たしております。
  271. 内藤隆

    内藤委員長 どこに待たしてある。その雇い主の家に待たしてあるのですか。
  272. 野本与喜雄

    ○野本証人 それは本人の自由にさせております。
  273. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとその返事が来たことはどうして本人にわかります。本人が自由である以上は……。
  274. 野本与喜雄

    ○野本証人 本人が出て行けばまたそれまでの話でございますからそれきりでございます。
  275. 内藤隆

    内藤委員長 雇主と従業婦との収入の配分はどういうことになつております。
  276. 野本与喜雄

    ○野本証人 現在は本人の申し出る率の折半をいただいております。
  277. 内藤隆

    内藤委員長 本人の申し出る率の折半というのはどういう意味ですか。もつと具体的に言えば……。
  278. 野本与喜雄

    ○野本証人 具体的に申し述べますれば、本人は金を持つて参ります。それを預けますから、その金の百分の五十以下をいただいておる状態でございます。
  279. 内藤隆

    内藤委員長 本人が自分の自由意思で商売をして、そうして持つて来た金の百分の五十を雇い主が……。
  280. 野本与喜雄

    ○野本証人 雇い主に渡しております。
  281. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、簡単に言えば半分々々ということだね。
  282. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  283. 内藤隆

    内藤委員長 いずれこの点に対しては、各委員からも御質疑が出て来るだろうと思う。  それから自由にさしてあると、さつきからあなたは自由々々とおつしやるから、おそらく自由であれば相当逃亡者もあると思うが、どうですか。
  284. 野本与喜雄

    ○野本証人 ございます。
  285. 内藤隆

    内藤委員長 それに対する組合としての対策はどうですか。
  286. 野本与喜雄

    ○野本証人 私の組合では、組合としてそれに何ら対策を講じておりません。
  287. 内藤隆

    内藤委員長 たとえば前借を倒して逃げる者に対しては、そのままあなたの方は泣寝入りですか。
  288. 野本与喜雄

    ○野本証人 業者がある程度せんさくしておるようでございますが、こういうことがあるからひとつ組合で頼むということを業者から依頼されたときには、組合の方で行きますが、現在ではまだそういうことはございません。本人自身においてやつておるようでございます。
  289. 内藤隆

    内藤委員長 逃亡された雇い主から組合に対してそういう届出があつて、助力を請うて来た場合には組合が出るというのですか。
  290. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  291. 内藤隆

    内藤委員長 そうして組合としてどういう手段を講ずるのですか。
  292. 野本与喜雄

    ○野本証人 組合としては、私の組合ではまだそういう経験はございません。もしあれば本人がどこにいるかということぐらいは確めて、一応は本人の希望ぐらいは聞いてみる考えでおります。またいなくなる子につきましては、本人が悪い意味で出るのか、またそのかかえ主が悪いのか、どこに欠陥があるのかということを一応は聞いてみる考えを持つております。また本人に善処するようある程度の話はしたいと考えてはおりますが、私はまだこの問題にぶつかつたことはありません。
  293. 内藤隆

    内藤委員長 善処というのは、要するに商売するように勧告するということですな。
  294. 野本与喜雄

    ○野本証人 あながちそればかりではございません。たとえば個人的に探し出しておる人の話を聞きますと、いなくなつた子供の中には、あるいは背後に何かやくざのようなものがくつついていて、そういうものの関係でいなくなつた子もあるようでございます。それからまた本人が、いやになつた子供もあるように承つております。それでいやになつた者はやむを得ない問題だと私は考えておりますが、やくざがいるとか、あるいは俗に言えばチンピラがくつついているとかいうようなために惑わされていなくなつた者に対しては、いい方法指導して応ずればよし、応じなければこれもしかたがないものだと考えております。
  295. 内藤隆

    内藤委員長 今証人は簡単にありかを探す、発見するというように言われるが、なかなか逃亡した者がそう簡単につかまるものではないと私は思う。何かこの業者間において、あなたの組合と他の組合と、そういう連絡でもあるのですか。
  296. 野本与喜雄

    ○野本証人 そういう連絡をして、それで連合会のときに、そういう悪いことを防ごうじやないかという話もありましたが、いまだもつてそれに対する完全な連絡はございません。そういうときに話のあつたことはございます。
  297. 内藤隆

    内藤委員長 逃亡防止の相談をしたことはあるけれども、具体化していないというわけですね。
  298. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  299. 内藤隆

    内藤委員長 それからその従業婦が病気になつた際には、どういう対策を講じておられますか。
  300. 野本与喜雄

    ○野本証人 組合としては、それに対する具体的施策はございません。もちろん病院はございますから、病院において治療することは当然でございますが、お尋ねなさるのは、それに対する経済面とか、あらゆるそういう方面のお尋ねでございましようか。
  301. 内藤隆

    内藤委員長 そうです。
  302. 野本与喜雄

    ○野本証人 一応主人が連れて行きまして、医者とよく相談をしまして、それでその病気によつていろいろ善処しているようでございます。この病気——ただこれを全部ここで言い尽すことはできませんが、たとえばよほどたちの悪い病気、俗にいう呼吸器とかそういうような場合には、おそらく新宿業者は、かりにその子供が着物を借りていたとかなんとか言つていても、そういうものは全部そのままにして、それで最善の治療をしてやると思います。
  303. 内藤隆

    内藤委員長 なかなか血も涙もある業者が多いのですな。そして着ている着物は、結核なんかの場合には、そのまま裸にすることはないですね。
  304. 野本与喜雄

    ○野本証人 子供に持たせてやります。
  305. 内藤隆

    内藤委員長 金銭的にはどうですか
  306. 野本与喜雄

    ○野本証人 金銭的には、できるだけのことはしてやつておりまして、中には相当損害をこうむつている者もたくさんあるようでございます。
  307. 内藤隆

    内藤委員長 前借などのある場合はどうしますか。
  308. 野本与喜雄

    ○野本証人 そういうものは全部棒引きでございます。
  309. 内藤隆

    内藤委員長 なかなか温情至れり尽せりのように聞えますな。
  310. 野本与喜雄

    ○野本証人 はあ。
  311. 内藤隆

    内藤委員長 それから職業安定所及び労働基準監督署より、実際上どのような監督を受けておりますか。
  312. 野本与喜雄

    ○野本証人 一昨年あたり二、三いろいろな指導方針をいただきましたですが、その後あまりこの問題に対して話は承つておりません。
  313. 内藤隆

    内藤委員長 そういう監督なんかは、もう受けておらぬわけですな。
  314. 野本与喜雄

    ○野本証人 あまり見えな’。一昨年あたりですか、二、三そういうことがございました。私からも二、三回飯田橋の職業安定所へ伺つたこともございます。
  315. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると一昨年、二十五年ですね、二、三回あつたが、六年になるともう……。
  316. 野本与喜雄

    ○野本証人 六年の春ごろもちよつとあつたかとも考えられますが、確かな記憶はございませんです。
  317. 内藤隆

    内藤委員長 監督というのは、どういうことをやりましたか。
  318. 野本与喜雄

    ○野本証人 労働基準局からでございますか。
  319. 内藤隆

    内藤委員長 ええ、職業安定所でも、どつちでもいいのだが。
  320. 野本与喜雄

    ○野本証人 そのときのお話では、どういうふうなぐあいに時間をやつておるとか、あるいは何か金を貸してそれで労働の強制をしていないかとか、そういうふうなことを聞かれたり、またそれに対する指導の言葉をいただいたように思つております。
  321. 内藤隆

    内藤委員長 別に書類的にそういうものを提出せいなどということはないのですな。
  322. 野本与喜雄

    ○野本証人 現在はいたしておりません。
  323. 内藤隆

    内藤委員長 ただ口頭で言うだけですな。
  324. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  325. 内藤隆

    内藤委員長 それであなたの方は、何かそれに対する証拠書類といつたようなものを出されましたか。たとえば時間通りつているとか、あるいは金銭の貸借はないというような、何か具体的に示したのですか。それもただ口頭で、チヤランポランで返事をしたのですか。
  326. 野本与喜雄

    ○野本証人 昨年の春であつたと思いますが、時間のことや何かを書いて出したようにただいま記憶がございます。もちろん前借云々のことは当時やりませんでしたし、かりにやつても、間違えば本人が泣寝入りの処置をしておりますから、書かなかつたように記憶しております。
  327. 内藤隆

    内藤委員長 証人は、小島清造という人を御存じですか。
  328. 野本与喜雄

    ○野本証人 よく存じております。
  329. 内藤隆

    内藤委員長 同業者関係でよく知つておるのですか。
  330. 野本与喜雄

    ○野本証人 はい。
  331. 内藤隆

    内藤委員長 この人か目下事件を起しておりまして、証人は検察庁に証人として尋問を受けたことがあるようですね。
  332. 野本与喜雄

    ○野本証人 ございまじた。
  333. 内藤隆

    内藤委員長 そのときのいきさつと、検察庁における証言の内容をちよつと話してください。
  334. 野本与喜雄

    ○野本証人 大体において、組合長としてどういう指導方針をとつているかということが眼目でございましたが、それと女子に対する衛生設備、及び業者に対する衛生施設、なお小島氏の性格とか、そういうようなことをおもに聞かれたと思いますが、こまかいことは全部記憶がないのでございます。
  335. 内藤隆

    内藤委員長 記憶がはつきりしないというわけですね。呼ばれたのはいつですか。
  336. 野本与喜雄

    ○野本証人 私がみずから新潟県の検察庁へ伺いましたことが一ぺんございます。それはたしか昨年の八、九月だと考えております。そのときに係の高平検事さんにお目にかかつて、三時間ばかりいろいろ業態のあり方及び行き方を申し上げたと思つております。そのときは検事さんは筆記をされませんでしたが、昨年のたしか十月か十一月と思いますが、東京の法廷で証言に立ちました。かように記憶しております。
  337. 内藤隆

    内藤委員長 二回あるのですね。
  338. 野本与喜雄

    ○野本証人 はい。一回は呼ばれたのではありません。進んで行つたのです。
  339. 内藤隆

    内藤委員長 どういう意味で進んで行つたのですか。
  340. 野本与喜雄

    ○野本証人 業態の事実に何か誤解を招いておるようなことがあつたり、また検事さんの方においても、その情勢について、もし間違つた、何かお考えを持つておられては困ると思いまして、私から進んで申し上げに行つた次第でございます。
  341. 内藤隆

    内藤委員長 業態を説明して、検事が間違つたことをせぬように行つたわけですね。
  342. 野本与喜雄

    ○野本証人 認識をしていただきに参つたのであります。
  343. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質疑はありませんか。
  344. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 それでは証人にお尋ねしますが、さつき委員長に対する証言の配分の問題でございますが、その配分の問題について、百分の五十ということをあなたは証言されましたが、その百分の五十というのは、業者別によつて違うのか。またあなたの方の新宿カフエー協同組合において、何かそういうような規定がつくつてあるのかどうか
  345. 野本与喜雄

    ○野本証人 よそのことは私は知りませんが、新宿におきましては、昭和二十一年一月十二日の公娼廃止のときに、保安部長依命としてお達しがございまして、これまでの貸座敷のものは慰安所となり、そこに働らいている娼妓は接待婦として働くことを黙認する。しかしてその取前は、今申し上げました百分の五十以上を子供にやり、業主は百分の五十以下とするというような達しがございまして、そのままに継続しておるような状態でございます。
  346. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 その百分の五十というのは、いわゆる遊郭制度が廃止されて、女子人身売買禁止がなつてから後に、今度は慰安婦として認めるので、その慰安婦の収入の中から、百分の五十というものは、警視庁の保安部長が認めたのですか。
  347. 野本与喜雄

    ○野本証人 はい。
  348. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 それはいつごろのことですか。
  349. 野本与喜雄

    ○野本証人 昭和二十一年の一月二十一日にそういう達しがございまして、それにならつておるような状態でございます。
  350. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 その百分の五十をあなたの方が女の方からとられますね。そのとられる百分の五十は、どういうものとどういうものの費用がいるか、そういうものを明細にお示し願いたい。
  351. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと証人つてください。その保安部長は何という名前ですか。
  352. 野本与喜雄

    ○野本証人 ちよつと名前は失念しておりますが……。
  353. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 今言いましたね。その百分の五十のあなたの方でとられる内容を、何がゆえにとるのであるか。
  354. 野本与喜雄

    ○野本証人 それは当時の建設費及び什器の損料及び衛生費、それから税金、こういうようなものを全部それにあてがつて意味でございます。
  355. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 そうすると、女の人の食費なんかはどういうふうになつておりますか。
  356. 野本与喜雄

    ○野本証人 食費は、移動証明のある人は、それによつて食べさせることになつておりますが、実際のところは、さいぜん申し上げました通り、移動証明というものはほとんど持つて来た人はないのでございまして、移動証明のない方には、当時非常に米も高うございましたし、どれだけかの食費を別にいただいていたようでございます。
  357. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 そうすると、さつき申された百分の五十は、建築費であるとか、あるいはその他の設備費であるとかで、かりに部屋を借りるとしますと、部屋代はどういうようになりますか。
  358. 野本与喜雄

    ○野本証人 みなその中に含まれております。
  359. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 その百分の五十の中に含まれておる……。
  360. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。
  361. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 食費だけは別ですか。
  362. 野本与喜雄

    ○野本証人 本人にいろいろ望みの食べ物がありますので……。それも一様ではございませんでした。中には女同士が俗に言うヤマさんというものがありますから、それに頼んで、自分の好きなものを食べている者もあるようでございます。
  363. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 あなたの方の新宿カフエー協同組合は、いわゆる売淫を目的としているということではないのであります。これは御承知通りであります。ところが、私が聞いておきたいことは、昭和二十一年に警視庁の方から、いわゆる慰安婦として認めるということは、どういう意味にあなたは解釈されておりますか。
  364. 野本与喜雄

    ○野本証人 私の方では、当時警視庁から、もちろん売淫はよろしいと承つてはおりませんが、それは当時、たとい何かの品物が出ましても、その後において女性と来ている客とが、どういう雰囲気内におきまして、——もちろんここに働く女性は、みな大部分は戦災及び戦争による未亡人とか、その他の困窮者でございますから、男性とどういう約束でありますか、私はまだはつきり聞いたことはございませんが、いずれにしても喜捨を受けておりますから、その金の百分の五十以下をいただいておるような次第でございまして、それが今申し上げましたものに該当しておるような次第でございます。
  365. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 証人昭和九年から、いわゆる前の遊郭の営業をやつておられて、終戦後になつてから今のカフエー業をやられた、こういうことで、われわれはあなたの方で決し売淫をやつていないという考えは持つておらぬ、これは常識ですから……。それにあまりとらわれるというと、何かそこをしつぽをつかまれやしないかというような考え方でなしに、要するにあなたのところでは、婦人の人を雇い入れられるときには、必ずしも単なる接客婦ということではなしに、要するに客との合意というけれども、あすこは公然の秘密である、こういうように常識的に考えられるということは間違いないですね。
  366. 野本与喜雄

    ○野本証人 ちよつと意味がとりにくうございましたが、まことに恐れ入りますが……。
  367. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 カフエーと言うておられるが、実際は女を雇い入れられるときに、俗に言うカフエーのいわゆる接客婦というようなことでなしに、やはり長い慣例からして、その女を雇い入れられる瞬間に、この女の人々が売淫をやるということは認めておいでになるかどうかということです。
  368. 野本与喜雄

    ○野本証人 今委員さんの常識という言葉をいただいて心強く思つておりますが、あるいはその考えがないとは申し上げられません。
  369. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたの話を聞いていると、私はあなたは何の商売をやつておるのか一向にわからない。あなたのところのカフエーというのは、どういう仕事をなすつておるのですか。どういう内容の商売をなすつておるのですか。
  370. 野本与喜雄

    ○野本証人 今のお尋ねにお答えすると、やはりカフエー業だと申し上げるよりほかございません。
  371. 山口武秀

    ○山口(武)委員 カフエー工業務というものの内容を示してください。
  372. 野本与喜雄

    ○野本証人 内容と申されますというと、営業の形態でございましようか。
  373. 山口武秀

    ○山口(武)委員 実際の商売。
  374. 野本与喜雄

    ○野本証人 たとえばビール、サイダー及びフルーツ、そういうようなものを売つて商売をしております。但しそこに働いている女性と、そこにおいでになつた男性の方とのいろいろの話もあるようでございますが、そういうことはあり得るということをひとつ選良のあなたにも御賢察を願いたいと存じます。
  375. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私の判断にまかせてよろしいというならば、このカフエーというのはこれは売淫行為をしておるのが業務の内容である、これをもつて生計を立てている、これが商売なんだ、これは選良の判断にまかすというならば、だれしもこのような判断をする、それでよろしいのかどうか。
  376. 野本与喜雄

    ○野本証人 それは御賢察を願いたいと申し上げたのであります。
  377. 山口武秀

    ○山口(武)委員 収入を五〇%ずつわけておると言われましたが、この収入というものは何なのです。
  378. 野本与喜雄

    ○野本証人 それは婦女がみずから提供して来たところの金銭でございます。
  379. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この場合あなたの言うことを一応受取るならば、二つの収入がある。ビールを売つて、あるいはその他の飲食物を販売しての収入、それからその次に言われた、あなたの賢察を願うという売淫行為から生ずる収入、こういう二つの収入がある。どちらの半分なんですか。これを聞きたい。
  380. 野本与喜雄

    ○野本証人 ビールは女の方から提供される性質のものではございませんです。私の方で売つて、その代価は規定によつていただいておるものであります。
  381. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうすると、あなたの言葉の通り、残る収入というのは、あなたの言う婦女子が自由意思で行う売淫行為から来る収入しかないわけです。そうすると、売淫行為から来る収入を半分にわけて、これを分配しているということになりますと、あなた自身、これは婦女子の自由意思という問題よりも、そういうことが営業であり、そこから収入が出て来るのであり、そのために部屋を提供するのであり、あなたが業務行つておるのである、このようなことになるのじやないですか。
  382. 野本与喜雄

    ○野本証人 ただいまのお言葉でございますが、私ども今のお言葉のように仰せられるまでもなく、全面的に彼女らにそういう問題を抜きにして、全部をお酒とか、あるいはビールとか、そういうものにしたいということに対しては、鋭意努力しているということを、ひとつ御賢察願いたいと存じます。
  383. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたの気持を聞いているのじやない。実情を聞いておるのだ。
  384. 野本与喜雄

    ○野本証人 それはさいぜん申し上げました通り、彼女らに部屋を与えてもおります。また衛生設備、なお寝具その他のものも与えてありますから、その代償としていただいておることを、さいぜん申し上げたのであります。
  385. 山口武秀

    ○山口(武)委員 より問題がはつきりしたと私は思う。何のために衛生設備を置く。何のために寝具を与える。これは初めから売淫行為をやらせて、その利益を折半し、それであなたたちが営業を立てる、このようになつていることをあなた自身の口からさらに明瞭にしたではないか。
  386. 野本与喜雄

    ○野本証人 接客婦に対しては、伝染病その他の衛生設備を必要としていることは、御存じの通りだと思います。
  387. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうすると今言われた衛生設備というのは、これは一般のチフスとかコレラとかいう伝染病に対する設備なのかどうか、これをお伺いしたい。
  388. 野本与喜雄

    ○野本証人 それは私の方が要求してではございません。本人どもがみずから進んで自由意思でやつている衛生設備を言つている次第でございます。
  389. 山口武秀

    ○山口(武)委員 もう少しはつきりしたい。今あなたの言われたことがわからない。あなたの先ほど来言つている衛生設備というものは、ペストやコレラに対する衛生設備というものであるかどうか。
  390. 野本与喜雄

    ○野本証人 これも包含はしておりました。
  391. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そのほかの衛生設備というのは何ですか。
  392. 野本与喜雄

    ○野本証人 その他の衛生設備と申し上げますれば、大体そういうところで働いている子供に対する伝染病やその他のおそれのないことを申し上げたのでございます。
  393. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その伝染病というのは性病ですか。
  394. 野本与喜雄

    ○野本証人 あるいは若い女でありますからして、それはないとも保証はできません。
  395. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あるいはというようなことを言われましたけれども、あまりしらばつくれた答弁はしてもらいたくないのです。それならばあとでこれは警視庁から調べてもらつてもよろしい。資料を出してもらつてもよろしいのですが、あなたのところのカフエーというものの中にどのような衛生設備があるか、これを調べてその統計を出せば明瞭になる。  それからさらに、先ほど言われましたが、一体ふとんというようなものは何のためにあるのですか。
  396. 野本与喜雄

    ○野本証人 それはそこに本人が勤務しておりますから……。
  397. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それだけですか、目的は。
  398. 野本与喜雄

    ○野本証人 さいぜん申し上げました通り、本人が自由意思によつてそれだけでないこともあると存じております。
  399. 内藤隆

    内藤委員長 証人に申すが、そんな言葉先で言つても、それはかえつて委員諸君のあなたに対する心証を害するよ。そうじやない、ここは別にあなたを罪人にするわけで調べているのではない。率直に、どこに一体人身売買等がかような結果になつて来るかという欠陥を、大局の上からわれわれは判断しようとするために、あなたを証人として呼んである。むしろそういう人道に反したようなことに対して協力する意味において、もつとまじめに答えねばいかぬ。
  400. 野本与喜雄

    ○野本証人 ありがとうございます。実はそういうふうに申し上げたいと思いますけれども、何だか質問の意味がとりにくうございまして、以上お答え申し上げた次第でございます。今後そのように申し上げます。
  401. 山口武秀

    ○山口(武)委員 では最後に一つだけお尋ね申し上げますが、先ほど同業者小島清造事件について検察庁に呼ばれて証言した、それのみならず、あなたが自発的に検察庁に出向いて説明もした、その目的とするところは、検察庁から業態について誤つた考え方を持たれては困ると思つたので行かれた、このように言われたのですが、誤つた考え方を持たれるというのは、どのように誤つた考え方を持たれるというおつもりで行かれたのでありますか。
  402. 野本与喜雄

    ○野本証人 現在の業者は、さいぜんから申し上げました通り、その人身売買ということを一番恐れているのです。なるべくそれに引つかからないように、端的に申しますれば、それに引つかからないようにやつておるのでございます。それがときにはある誘惑をもつて——と申し上げますれば言葉がきれいになりますが、露骨に申し上げれば、非常に有利な条件でどうだとか何とかいうことで話を持つて来られるときには、人間の弱さで引つかかることもある。のみならず小島の場合は、最初世間に伝わつている話と小島の実際になした事実とが相当食い違つているように承りました。そのために私は、こういう事実でありますということだけを申し上げ、そして悪いところは、これはやむを得ません。犯したものは犯したものとして、今後に私としても改正の余地もございます。それやこれやで参つたような次第でございます。
  403. 内藤隆

    内藤委員長 志田君。
  404. 志田義信

    ○志田委員 証人にお尋ねしますが、先ほど移動証明書をとつておるという話がありましたが、本人が自由意思によつて逃亡した場合に、その移動証明書は親元に返すなり何なり処置しておりますか。それとも手元に置いてあるのですか。
  405. 野本与喜雄

    ○野本証人 移動証明を持つて来ることはほとんどないのでございます。
  406. 志田義信

    ○志田委員 そうすると移動証明書はとらずに、あなたの方ではそれに対してやみ米を買つてつておるわけですか。
  407. 野本与喜雄

    ○野本証人 これも言葉を飾つて申し上げるとおしかりを受けますので、はつきり申し上げます。さようなんでございます。
  408. 志田義信

    ○志田委員 移動証明書を持つて来た者は新宿あたりではございませんか。中には持つて来る者もありますか。
  409. 野本与喜雄

    ○野本証人 ほとんどないように承つております。最近はそれでも幾分かあるかもしれませんが、昭和二十二年、三年、四年、五年まではほとんどございません。
  410. 志田義信

    ○志田委員 最近はございませんか。
  411. 野本与喜雄

    ○野本証人 最近は、たまにはあるように承つております。
  412. 志田義信

    ○志田委員 逃亡してしまうと、移動証明書を返さないというようなことが……。
  413. 野本与喜雄

    ○野本証人 いや、そんなことは新宿ではございません。
  414. 志田義信

    ○志田委員 それから雇用契約を結ぶ場合に、つまりあなたの方はカフエ1業と言つておりますが、カフエー業の雇用契約を結ぶ場合に、それは文書でやるのですか、口頭でやるのですか。
  415. 野本与喜雄

    ○野本証人 これは決して言葉を飾つて申し上げるのではございませんが、雇用契約なんかということはいたしません。
  416. 志田義信

    ○志田委員 そうすると口約束だけでやるのですか。
  417. 野本与喜雄

    ○野本証人 さようでございます。ざつくばらんに申し上げますと、子供が来れば、さいぜん申し上げました通り住所、氏名、年齢を聞きまして、それでこの業態は表はこういう業態でありますが、こういうこともやるが承知かと聞きます。これは言葉を飾らないで申し上げます。それでもいいか、それでは今晩君勤まるか勤まらぬか見ておれ、こういうことになります。それでよろしゆうございますと言つて、見ております。
  418. 志田義信

    ○志田委員 あなたはさつき税金を払わしておるという話でありましたが、税金というのは営業税でございますか。
  419. 野本与喜雄

    ○野本証人 税金は所得税、事業税、遊興飲食税及び都民税、何でも、新宿では特別区民税も払つておりますが、相当高額の税金を払つておるような次第でございます。
  420. 志田義信

    ○志田委員 遊興飲食税をそういう婦女子に支払わせるということは……。
  421. 野本与喜雄

    ○野本証人 いや、それは誤解で、婦女子には払わしておりません。
  422. 志田義信

    ○志田委員 婦女子には税金を払わしておりませんか。
  423. 野本与喜雄

    ○野本証人 女には遊興飲食税を払わしておりません。
  424. 志田義信

    ○志田委員 先ほど税金を払わしておると言つたのは、寝具貸与、食事代のほかに——衣装の方はその人の好みによるので別だが、税金を払わしておると言われましたが……。
  425. 野本与喜雄

    ○野本証人 業者が百分の五十をいただいたもののうちから払つておると申し上げたので、私の言い方が悪かつたら御訂正願います。
  426. 志田義信

    ○志田委員 あなたの方はカフエー業をやつておられるというが、実際においては売淫行為をやらしておることを認めておるようでありますが、これは自由意思でやつておるようなことを先ほどから言つておるけれども、実際はどうですか。女が客を断るということはできますか。
  427. 野本与喜雄

    ○野本証人 それはほんとうに自由意思なのでございまして、あなた方からそういうことがあるかと御質問されることを、私はむしろ情なく考える次第でございまして……。
  428. 志田義信

    ○志田委員 それではお尋ねしますが、そういうふうにして毎日々々断つてつたら、女には収入がないという二とも考えなければならぬですね。そういう収入のない場合に、なおあなたの方はその女を雇つて置いても、何も意味をなさぬことになる。そういう場合も考えなければならぬと思いますが、折半することもできない。そういうことはどうですか。
  429. 野本与喜雄

    ○野本証人 理論上そういうことは生れて参りますが、もちろんそこへ来る女自体が、それを目的に来て、またなさねばならない事情のもとに来ておる女でありますから、毎晩々々どれもこれもということは、おそらく実際においてないことでございます。
  430. 志田義信

    ○志田委員 そうすると、先ほど証人がおつしやつておるような言葉による雇用契約によつて、売淫をするということを前もつて当事者間に了解がついて来ておるものと考えていいのですか。
  431. 野本与喜雄

    ○野本証人 実は今申し上げました通り、ここは、カフエーであるが、今晩一晩見なさい、こういうことなんだ、それでいいか、お前さんの友達がここに寝るから、友達のすることを見ていて、それでよかつたらやりなさい。こういうような方法でやつております。
  432. 志田義信

    ○志田委員 いやだと言つたら……。
  433. 野本与喜雄

    ○野本証人 いやだと言えば、それで帰してしまいます。その点はほんとうに自由にさせてございます。
  434. 志田義信

    ○志田委員 そこであなたにお尋ねしたいのですが、あなた方は明らかに婦女に売淫をさせておる、これはお認めになりますか。
  435. 野本与喜雄

    ○野本証人 そういうことがあり得ることをよく知つております。
  436. 志田義信

    ○志田委員 これは重大なことなのでお尋ねするのですが、婦女に売淫をさせておる、そうしてその半分は自分が収入として受取つておる、こういうことはお認めになりますか。
  437. 野本与喜雄

    ○野本証人 まことに委員さんのお言葉でございますが、させておる乏いう言葉に対して、ちよつと私お答えしにくいのでございますが、本人がなしておるということだけはあるのだと思います。
  438. 志田義信

    ○志田委員 それはどうでもいい、本人がなしておつてもよろしゆうございますが、あなたはそれを共謀してやつておりますね。売淫を共謀してやらしておる、これはどうですか——。それでは言葉をかえてお尋ねしますが、女がコーヒーを飲みに来たお客からすりを働いたり、女だからよそへ出て強盗は働かないだろうけれども、窃盗してとつて来た金も半分とりますか。
  439. 野本与喜雄

    ○野本証人 いただけません。しかしお断りしておきます。ちよつとお尋ねの意味が私とりにくいのでありますが、本人がこれだけの金をととにかく出しますから……。すりだとか窃盗とかいうことになると言葉が極端になります。強盗してとつて来ましたからあげますといつてもいただけません。
  440. 志田義信

    ○志田委員 さつきからざつくばらんに言いますと言いながら、歯に衣を着せて労働というのはおかしい。
  441. 内藤隆

    内藤委員長 労働ではなく強盗です。
  442. 志田義信

    ○志田委員 強盗——そういうことでとつて来た金も半分もらいますかと聞いている。
  443. 野本与喜雄

    ○野本証人 本人がわかつておればいただけませんですね。
  444. 志田義信

    ○志田委員 そうするとあなたのもらう金は、その女が自発的にしろ自由意思にしろ、売淫をして得た代金の半分をもらうのでしよう、これは認めますか。
  445. 野本与喜雄

    ○野本証人 そこでさつきからあなたのおしかりを受けておるのでございますが、またあとでのお言葉が恐ろしくて……。
  446. 志田義信

    ○志田委員 恐ろしいじやない、実際問題として事実を言つてくださいよ。
  447. 内藤隆

    内藤委員長 あなたを罪人にしようというのじやないのだから、そう恐怖心からいろいろ考えて答えちやいかぬ。決してここは警察や検察庁じやない。
  448. 野本与喜雄

    ○野本証人 お答え申し上げます。さようでございます。
  449. 志田義信

    ○志田委員 それではつきりしたわけですが、もう一つお尋ね申し上げます。婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する指令が昭和二十一年一月十二日に出ておる。そうするとあなたは婦女に売淫させる行為に協力したということは認めなければならぬと私は先ほどから聞いておるのですが、認めておるわけですか、そうするとあなたみずから法を犯してやつているというわけですか、それともちつとも法を犯してやつているんじやないという考えですか。
  450. 野本与喜雄

    ○野本証人 申し上げます。私の観念といたしましては、さいぜん申し上げました俗にいう貸座敷になつている場所であれば、そういう問題に対してはある程度黙認していただいておるような観念であります。
  451. 志田義信

    ○志田委員 どつから黙認をいただいておるのですか、政府からですか。
  452. 野本与喜雄

    ○野本証人 実はそのあとの言葉がこわいのではつきり申し上げられないのです。ざつくばらんに申し上げろとおつしやつたからさつきから申し上げたのですが、そこまでつつ込まれると言葉に訂正をいたします。
  453. 志田義信

    ○志田委員 何を訂正……。黙認を受けているというのは、あなたはどこからか黙認を受けていると思つているのですか、こつそり悪いことと思いながら自分の生活のために業を営んでおる、こういう考え方と二つありますね。
  454. 野本与喜雄

    ○野本証人 あとの考え方であります。
  455. 志田義信

    ○志田委員 こつそり悪いと思いながらやつておるということですか。
  456. 野本与喜雄

    ○野本証人 そういうことです。
  457. 志田義信

    ○志田委員 もしそうだとすれば、あなたの言う女の自由意思でやつておるということは全部くつがえされることになります。
  458. 野本与喜雄

    ○野本証人 こつそりという意味がとりにくいのですか、こつそりというのは当局に対するこつそりですか。
  459. 志田義信

    ○志田委員 当局じやなく、あなたの心境を聞いておる。あなたは当局の黙認のもとに自分の生業をしておると考えておるか、あるいは自分のやつておることは悪いけれども、生活のためにやみでもやらなければならぬ、生活のためには強盗をやる人も人殺しをやる人も━━━━━━━ある。そうゆう関係からいろいろ社会不安が出ておるのです。     〔離席する者あり、議場騒然〕
  460. 内藤隆

    内藤委員長 山口君……山口君、暴力を振うのですか、委員同士の直接の談判はいかぬ。取消していい問題は委員長が申します。山口君、自席へ着いてください。委員同士の応答は困ります。一々委員長の許可を得てやつてください。志田君、質問を続けてください。
  461. 志田義信

    ○志田委員 それであなたはほんとうに自由意思でそういうことをやらしておるということを言つておりながら、事実においては不正なことをやつておるのだと思つておるのですか、それとも法律で保護されて生業としてやつておるのかということをお尋ね申し上げたのです。
  462. 野本与喜雄

    ○野本証人 私らは以前に貸座敷をしていた者でありますから、廃止されてから生きる道がありません。それで何とかして生きるためにという心配のために、昭和二十一年一月十二日の依命のお達しでございますが、それで生きる道を見出したような気がいたしましたので、それによつて女子とともに生きておるようなものでございまして、婦女子に対する自由ということは毛頭間違いございません。以上のような次第でございます。
  463. 志田義信

    ○志田委員 そうすると結論として、あなたは生活上必ずしも正しかざることをやつておるということは認めておられるようなんですが、そういう正しからざることをやつておりながら、たまたま法の適用を免れておるというだけにすぎないのであります。あなたはやはり自分で国の法の適用を受ければ十分処罰に値すると思つておられるかどうか、それだけ最後にお尋ねしておきます。
  464. 野本与喜雄

    ○野本証人 私らは今お尋ねのごとく、厳密にやれば法の適用を受けるということを存じておりました。しかし今申し上げました通り、保安部長依命に従つて、せめて今日われわれの義務としましても、敗戦日本の建設のためには性病の蔓延、これだけにはできるだけ御協力申し上げたいということを念願しております。しかして現在の日本の社会の情勢が……。
  465. 内藤隆

    内藤委員長 あなたは志田委員から聞いた点からそれてあなたの心境をとうとうと述べておられる。しかも花柳病の蔓延なんかという点に触れておられる。そういう点は何も要求していない。そうでしよう。だから質問の要旨をよく考えて簡単に答えなさい。接客業者のあなたからそういう説明を国会は聞く必要を感じない。
  466. 野本与喜雄

    ○野本証人 わかりました。
  467. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの志田君の発言中、不穏当な点がありますれば後刻速記録を取調べの上、委員長において適当に処置することにいたしたいと存じます。  次に発言を求めておられるのは浦口委員でありまするが、本会議も始まつたようで、大体証人証言の内容等はすべてわかつているのですから、どうか簡単に要点だけ述べてください。
  468. 浦口鉄男

    ○浦口委員 委員長のお言葉もありますので、簡単に二つだけお聞きしておきます。先ほど委員長からもお話がありましたようにわれわれがここにお尋ねすることは、決してあなたを犯罪人扱いするとか、あるいはあなただけを追究すると、こういうことではないので、その点間違いのないように願いたい。
  469. 野本与喜雄

    ○野本証人 ありがとうございました。
  470. 浦口鉄男

    ○浦口委員 先ほどの折半の問題でございますが、その対象になるお金がどういう性質のお金かということは、もう大体私たちはわかりました。先ほどあなたのお話では、接客婦をやる人は戦災者その他でずいぶん困つている人で、飲食をしたあと客から喜捨を受けるものがある。その喜捨を折半するのだ、こういうお話だ。これはわれわれから言えば結局売淫、非常に言葉が悪いのですが、肉体を提供したサービス料だと考えられるが、その点この折半の基礎になるものはそういうふうに考えていいかと思うのですが、その点いかがです。
  471. 野本与喜雄

    ○野本証人 御明察の通りでございます。
  472. 浦口鉄男

    ○浦口委員 ところがその百分の五十の内容になりますが、雇い主といわれるあなたの方でおとりになる内容は、たとえば部屋料、建設費とか什器の損料とか衛生費とかこういうことになりますと、これは大体具体的に部屋料が幾ら、ふとんの貸料が幾らと、こうきまつていると思うのですが、そうするとその従業婦のかせぎ高にもいろいろ差異がある。それを頭からいかなる従業婦からも百分の五十を天引するというとり方はどうですか。それはどういうふうにお考えですか。
  473. 野本与喜雄

    ○野本証人 その問題につきまして一言しやべらせていただきます。今委員さんのお言葉が最も適切なお言葉のように存じております。たとえばそこに働いている子供の能力に甲乙がございましても、その多いものも少いものも百分の五十ということは、多いものについては損じやないかというように伺いましたが、仰せの通りでございまして、これについて大いに業者としてもどうすることが妥当であるかというようなことにつきまして二、三回婦女子の組合の幹部とも相談したことがあるのでございます。それでも婦女子の幹部の人は、それでは働けない子に対しては非常に御迷惑をかけますからいいじやありませんかというような話になりまして、こういうようなことになつたのであります。これが事実でございます。確かに御説明のようであります。
  474. 浦口鉄男

    ○浦口委員 そうなると働きが悪くて引合わないものは解雇する、こういうことがあるのですか。
  475. 野本与喜雄

    ○野本証人 私の方で行けということはありません。
  476. 浦口鉄男

    ○浦口委員 みな非常に働きがいいということですか。
  477. 野本与喜雄

    ○野本証人 働きが悪いから行けとか、おれというようなことは一度も言つたことはありません。
  478. 浦口鉄男

    ○浦口委員 最後にひとつ警察官の取締りの態度をお聞きしたいと思いますが、具体的にどういうふうな取締り警察官がやつておりますか。たとえば月に何回くらいどういう方法でまわつて来て、どういうことをやつているか、それをお聞きしたい。
  479. 野本与喜雄

    ○野本証人 私の方の、昔の貸座敷のあとに営んでおる私の組合の方に対しては、パトロールが十分か十五分間置きくらいに絶えずまわつているようでございまして、それで婦女子が街頭に出て客をキヤツチしたときには、すぐに風俗違反として検挙されております。相当数に上つております。また夜中の臨検に警察官が踏み込むことはございません。
  480. 浦口鉄男

    ○浦口委員 屋内の取締りというか……。
  481. 野本与喜雄

    ○野本証人 食品衛生法によつての清潔だとか、そういうことをやられておりますが、現在は屋内で、俗に言う部屋でございますね。そこは取締りをやつておりません。
  482. 野村專太郎

    ○野村委員 証人に簡単に一二点伺いまするが、現在娼家業態としての売春を禁じております、こういう点からお考えになりまして、都道府県条例の遊興飲食税に該当するいわゆる飲食の行為もありますが、飲食でないそのものだけのものもあると思います。そういう点から非常に矛盾が出て来るだろう。そこでそういつたような遊興飲食に対してどの程度の課税をいたしておる実態ですか。そのことをちよつとお伺いいたしたい。
  483. 野本与喜雄

    ○野本証人 遊興飲食税につきましてはしばしば係のものと折衝いたしおりますが、ビールとかフルーツとかのものの飲食税だけでなくて、婦女子がいただいた百分の五十のうちの意味も加味されて払つておるような次第でございます。
  484. 野村專太郎

    ○野村委員 そうしますると大体今そこに就業しておる婦女子の頭数、こういうものによつてこの遊興飲食税がかけられておりますか。その事実は都道府県税の担当吏員は承知しているわけですか。一方においては条例によつて売春の業態を禁じながら、一方においてはその行為を認めるというか、これに府県で課税している。そういうところに非常に矛盾が起きて来る、かように考えている。その点からいろいろ錯覚が起きるであろう、かように考えている。
  485. 野本与喜雄

    ○野本証人 仰せの通りでございまして、私らの方でも飲食品だけの遊興税を払うとしたが、都道府県はその全部の十供の数、部屋の数ということに大体目標を置いてあるように聞いておりました。各係からそれによつて課税されております。
  486. 野村專太郎

    ○野村委員 そうしますると徴税する方の側も業者の方もいわゆる社会の現実というものを含んでこれがやられている、こういうことになるわけですか。
  487. 野本与喜雄

    ○野本証人 遊興飲食税ばかりでなく、所得税、そのほかの税金をやはりそういうことを加味してとられておるというか、部屋数、子供数、そういうものを加味されて現在は納税させていただいておるような次第でございます。
  488. 内藤隆

    内藤委員長 証人に今野村委員の言うたのは、そういうことじやないのだ。税金を出す方もとる方も社会通念というか何というか、なれ合いでよく実情を知つてつてつているじやないか、こういうことなのです。
  489. 野本与喜雄

    ○野本証人 仰せの通りであります。
  490. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ野本証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には御苦労さまでした。     —————————————
  491. 内藤隆

    内藤委員長 この際お諮りいたします。二月中の調査経過の報告書につきましては、委員長においてただいまお手元に配付いたしました通り簡単なる調査報告書を作成したのでありまするが、これを委員会調査報告書として議長に提出することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  492. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なしと認めます。さようにとりはからいます。なお字句の整理等につきましては委員長に御一任を願います。次会は三月三日午前十時より開会いたします。なお理事会は都合によりまして延期いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十一分散会