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1952-06-02 第13回国会 衆議院 厚生委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月二日(月曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 金子與重郎君       新井 京太君    高橋  等君       堀川 恭平君    松永 佛骨君       松谷天光光君    堤 ツルヨ君       苅田アサノ君    福田 昌子君       寺崎  覺君  委員外出席者         参  考  人         (日本赤十字本         社理事)    松井 義重君         参  考  人         (元日本赤十字         本社外事顧問) 蜷川  新君         参  考  人         (元日本赤十字         本部職員組合         長)      瀬尾 正吉君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君         專  門  員 山本 正世君     ————————————— 五月三十一日  委員岡良一君辞任につき、その補欠として三宅  正一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 六月二日  医師国家試験予備試験受験資格特例に関す  る法律等の一部を改正する法律案丸山直友君  外一名提出衆法第六三号) 五月三十一日  栄養改善法制定に関する請願星島二郎君紹  介)(第三二七一号)  同(多田勇君外一名紹介)(第三三二二号)  同(松尾トシ子君外一名紹介)(第三三二三  号)  同(山口シヅエ君外一名紹介)(第三三二四  号)  同(戸叶里子君外一名紹介)(第三三二五号)  同(岡良一君外一名紹介)(第三三二六号)  母子福祉法制定請願越智茂紹介)(第三  三〇六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  医師国家試験予備試験受験資格特例に関す  る法律等の一部を改正する法律案丸山直友君  外一名提出衆法第六三号)  日本赤十字社に関する件     —————————————
  2. 青柳一郎

    青柳委員長代理 これより会議を開きます。  都合によりまして委員長が不在でございますので、私が委員長の職を勤めます。  本日は日本赤十字社に関する件について、元日本赤十字本社外事部顧問蜷川新君、元日本赤十字本部職員組合長、元全日赤職員組合組合長瀬尾正吉君及び日本赤十字本社理事松井義重君の三君に参考人として御出席を願つております。  本件につきましては、御存じのように、現在当委員会におきまして日本赤十字社法立案をやつておるのでございますが、その間におきまして、従前日本赤十字社に関しまして各種の問題が起つた。この問題につきましてはつきりさせておくことが、この立案に必要であるという観点から、三君に参考人として御足労を願つておる次第でございます。  それでは元日本赤十字本社外事部顧問蜷川新君より、ただいま申し上げましだような点につきまして、御意見をお聞きしたいと存じます。
  3. 蜷川新

    蜷川参考人 私蜷川であります。問題は赤十字社のことでございますから、きわめて中立的、公平に、少しも感情的でないことを申し上げなければならないと思います。その意味で私も申し上げます。  ただいま私の見ておりますところでは、日本赤十字社幹部が、定款に反することをやつており、従つて国際法違反していることをやつておられると、かたく信じます。それにつきまして、私は専門家ですから、自分としてはむろん間違いなしと信じておるところを申し上げます。日本赤十字社定款第四條には、ジユネーヴ條約の原則を掲げてございますが、同時に一九一九年にできました赤十字社連盟、すなわちリーグ・オブ・レッド・クロス・ソサイエテイーズというもの、その原則を尊重することが、特に定款に述べてあります。これが国際法上の見地から最も大切なところであります。それに違反しておるという点を私はこれから順次申し上げてみます。  赤十字社連盟というものにつきましては、私自身がそれに初めから関係者であり、その提案者でありまして十分責任も持つております。私以外に、現在ヨーロッパにいた者はないものですから、従つて日本赤十字社幹部もまつたく知らぬ、役人も知らない、国民一般も知らないし、学者も知らないのです。決して私は自己のために何も言うのでないことは、あらかじめ冒頭に申し上げましたような次第です。そして赤十字社連盟原則と申しますのは、一々読み上げるにも及ぶまいと思いますが、りつぱな定款ができておるのです。その要点につきまして特に申し上げると、赤十字社連盟は、政府政治、種族、宗教から超越したるものとすということになつております。すなわち純中立でありまして政府関係がなしに、政治にも関係なしに、人種にも関係なし、宗教にも関係なし、こういうことでできております。この原則を守らなくては、日本赤十字社というものは何をやつておるのだかわからないことになる。  そこで、まず第一に、私ども日本人の面前に浮んでおる大きな問題は、朝鮮事変——これは国際的事変であります。さつき申しましたように、りつぱな災害であります。これに関して、日本赤十字社も手を下された。それはけつこうであります。しかしながら、両軍相闘つておるところに——その両軍は、一方は御承知のごとく共産軍であります。しかしながら、共産軍世界から認められないのじや断じてない。世界の九億の人間はむろん認めておる。決して不法なものじやない。ただ日本だけ、アメリカだけ、これをばかにきらつておるのですが、これは理由のないはずである。いわんや赤十字としては、その朝鮮の動乱に南北軍があるときには、両方に向つて救援をなす、これはけつこうであります。ところが、日本赤十字社は南だけやつておる。これは御承知でございましようラジオでうるさいほど宣伝しておられた。他方に向つては、何にもしておられない。救援を申し込んで断られたという事実もないのです。南の一方のみに日本人の生血を与える。これで何で中立になりましようか、へんぱもへんば、ひどいへんぱです。アメリカはこれを望みます。それはアメリカのかつてです。政府はこれをやらせます。それは政府政治ですから、おかつてです。赤十字社至つては、断じてそういうことは許せない、中立でなくてはならない。これは私やかましく島津君に意見を申してやつたのですけれども、取入れないのです。私としては、親切の限りを盡したつもりです。私はこういう問題について、特に研究者であるところから、こういうことについて、特に長く意見を書いてあげたのですけれども、けつてしまつた。責任は彼にあります。これが一つ。  次には、外国から帰つて来ない例の捕虜抑留者の問題であります。俘虜に関する救血というものは、赤十字でもやるのです。救血とは、その人の精神的、身体的に慰めを与えるだけのことです。日本赤十字定款にも、第九條に書いてあります。しかしながら、俘虜何十万——たとい一人にせよ、俘虜送還ということは政治問題である。国の問題である、外交問題です。赤十字関係すべきものでは断じてない。ひとり赤十字国際委員会、すなわちフランス語にいうコミテ・アンテルナシヨナル・ドウ・ラ・クロア・ルージユ、これは一九一九年以来、特に俘虜の問題について権限を有しております。世界が認めております。けれども国際赤十字社連盟は、これには関係ない。各国の赤十字も、かかる政治問題には関係すべきものではないのです。さきに申し上げました定款第四條、赤十字社連盟原則に従うというのは、そのことであります。しかるに、日本赤十字社はそれを骨折つておるのです。遠くモナコまで社長は出かけております。きよう新聞を見ると、またここでそういうことを伊藤社長がやると書いてあります。ほんとううそか知りませんが、しかしながら捕虜というものは、国そのものの問題であつて、これは国際法上きまつておりますし、ジユネーヴ條約にもありますけれども、へーグ條約に特に明記してありまして、捕虜そのものは軍の仕事でもない、国そのもの仕事なんであります。送還するのは重大事業である。これをやるのですからして、赤十字は越権です。定款違反です、国際法違反です。これについても、ちよつとつけ加えて申し上げますが、俘虜送還ということは、ジュネーヴ條約にありますし、俘虜條約というものも別にありますが、平和が回復したときに返すということになつておる。今度のポツダム宣言におきましても、返すということは断じて書いてないのです。ただ時期が来たならば、生産上の業務につかすことを許すとはある。ですから、日本がこれをやたらに要求したつて、私ども専門家には、それは不法の要求であります。しかし、こういうことを言うと、皆の評判が悪くなりますから、政治家は言えないでしよう。たとい言おうと思つても、そう言うだけの法律上の根拠を知らないようです。ですから、赤十字のごときは、国際法が許さない。ポツダム宣言が許さない。それに口を出すなんて、そんなことはよけいなことです。よけいのみならず、害を及ぼす。定款違反です。  次に、原則として必要なことは、健康の増進疾病予防及び苦痛の軽減という、この三つである。健康の増進ということを、今日の赤十字社はあまりやつていない、ほとんどやつていないといつていい。病院というものはあります。全国に二百もありますけれども、それは病院治療です。健康増進ではなくて、治療である。本来病院を建てたる趣意は、平時治療目的ではないのです。あれはアンリ・デユナンが始めましたときから、一朝事あるときに、看護婦をつくること、材料を準備すること、そのためにふだんからやらせてある準備行為にすぎない。戦争の準備行為です。ただ、日本赤十字は、今日は非常にふやしておりますけれども、初めは一つしかない。列国つて赤十字病院というものはそうつくつておりません。ことにフランスイタリアその他は——アメリカは相当ありますけれども——今どういうことを健康の増進及び疾病予防について重んじているかというと、一九一九年に私どもがこの連盟をつくつた際に、列国へと強く唱えたことは、少年赤十字というものをつくりまして、少年の頭に平和をさとらしめる。少年をしていかに健康を増進するか、いかにして疾病予防するかを十分に覚えしめる、これが少年赤十字をつくるゆえんである。しかるに、この少年赤十字日本につくることについて、最初私が全国をまわりましたが、初めは非常に熱心でありました、平山社長時代には——近来はまつたくやつてはしない。これはアメリカのやつが品を出したということを聞いております。しかし、アメリカはよけいな世話です、そんなことを言う権利は彼にない。アドヴアイザーですから、アドヴアイズしたつて、こつちは聞く必要はない。何も学者でも何でもない。赤十字というものは純中立でありまして、戰場においても、何人もそれをすることを許さない。日本が降参したつて、それは軍隊の降参であつて赤十字に彼らが口を出す権利は断じてない。マッカーサーはよく知つてるはずでしよう、軍人ですから。それで、アドヴアイザーを入れておりますけれども、そいつらは少年赤十字を今中止するというようなことを言つたということを聞いております。そんなことを聞くのは間違つておる。それじや赤十字人間じやない。少年赤十字を怠つているということは、これは確かに赤十字目的に反し、さきに申し上げました定款第四條に反してをる。  その次には、博物館です。わが赤十字社において、御承知と存じますけれども、小さいながら博物館ができております。これは平山さんが主としてつくりましたが、むろん私ども関係しております。何ゆえ博物館というものをつくつたか。それは広く人民をして、健康の増進疾病予防に関して知識を与えしめるために、どうして人間は暮して行くか、何を食うべきか、いかにして努むべきか、そういうことを実際に教えるために、博物館をつくつたのです。同時に、あそこに図書館もできておりまして、図書によつてみんなの頭を養おうというのが目的であります。学校の生徒なんかも、そのためにあそこへ行かせるようにしてある。この博物館は、今の社長、副社長はどうしておるか。その一部をいい加減に取扱つて、そこに外国会社を入れています。赤十字をして商売をやらせています。そこに何らかの関係があるでしよう。それは秘密だから、ちよつとわからぬです。しかし想像できます。とにかく赤十字社の構え内に外国会社を入れて商売をさせておる。そんなことは許すべきことではないでしよう。断じて定款に書いてないです。あろうはずがない。これをやつています。  その次は、去る五月一日のメーデーです。メーデーは、国に反逆するためじやない。知れ切つたことです。列国どこにもある。私ども古くから十分見ております。たまたまここに衝突が起つた。朝から晩までけんかしていた。私どもラジオ知つたのです。そんなら赤十字社も知つていなくてはならぬ。内乱に近いような大騒ぎ、何十万の人間が集まつておる。巡査とそれと闘つておる。血を流しておる。死んだ者がある。こういう事件には、赤十字は救助しなければならぬはずです。救助とは、ただ天災とか地変とかいうだけのものじやない。もしそれだけに限られるなら、赤十字は、なぜ北鮮において手を出していますか。同じことです。こういうものがあつたときに、生命をなげうつても人類を救うのが、赤十字任務です。しかるに、何もやつていませんよ。そのあとからも何もやつていません。それで、なんで赤十字任務が済みましようか、定款違反です。これほどの違反がある。  まだ小さいことを申せばありますけれども、まずそれだけ大きなことが目の前にあるときに、それを私は親切丁寧に、昔から知つていますから、島津君に注意してあげるのですけれども、決して取上げない。そうして何も定款違反なんかないといつたような、傲慢な手紙を私によこす。それだからこんなことになつてしまう。私は何らの悪意もない。彼が惡い責任は彼にある。そんなものを社長に置いて、人民から金をしぼる。一年に五億も六億もとつておる。断じていかぬことです。千三百万余の社員がある。これはみなばかを見ています。社員千三百万に一家五人をかければ六千五百万人、一国をなしております英国よりも、イタリアよりも、フランスよりも多い人口です。こんな大きな社団、このものは、臨時総会を開く方法がないがために、黙つておるよりしようがない。彼らは、若干のお取巻きの理事評議員をこしらえて、それで何でも議決して行くのです。不都合きわまる。それではいけません。これは何ら個人の憎怨から申すのではありません。これでは社会の福祉に反します、公共の秩序に反します。私はその点で申し上げるのです。  その以外に最もいけないことが一つありますけれども、これは国際法じやなくして、ただ單に定款の上から言うことですが、一つだけ申し上げて終ります。それは、今の伊藤さんは、自分任期が一昨年六月にりつぱに切れているのです。それを選挙をやらせれば、当時なかなか職員批判多うございまして、おそらく先生は落ちたでしよう。それですから、それをごまかすために引延ばしているのです。これは権限なくして地位にいるのです。詐欺です。そういうことをやつておられる。それを島津は平気で見ている。共犯です。この行いは二年たつても三年たつても、時効にかかるべきものではないのです。これはどこまでも追究さるべきものです。それも実にばかばかしい詭弁を彼は弄している。選挙決定ということは違うと言うのです。それは定款にそういう二つの字が書いてある。けれども民主主義政治になつたのですし、民法による社団でありますから、総会において選挙するのはさまつた話で、何も詭弁はさみようもなし、定款解釈二つようはずはないのです。総会において決定するとは選挙することです。選挙することは、きめることだ。みなの声において、みなの投票において、それでよろしいということを決定するのが選挙。その選挙という文字決定とい文字は違うから、おれは決定で出て来ているのだ、従つておれの任期はまだ切れていないというのは、当時彼の言うことで、それがまたついこの間自治体関係新聞によつて、やはり麗々と出ていました。そんな詭弁を弄して、自分利益をはかる、すなわち人を欺いて自己利益をはかるということは、刊法の二百四十六條に該当する詐欺行為です。これは法律学者として、私は少しも間違いない解釈だと思います。  その以外に、ちよちよこありますけれども、これは私自身は見ていないのでして、これは職員組合長をしていた瀬尾君がよく知つている。瀬尾君は正直な人ですから、私も尊敬しておるのですが、その問題については、瀬尾君がお述べになるかと存じます。私の申し上げるのは、ただいまのよう国際法上の見地から論ずることと、刊法上から論ずること、この二つだけでございます。  これでごめんをこうむります。
  4. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは次に瀬尾参考人の御陳述を願います。
  5. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 私、瀬尾でございます。  ただいま蜷川先生がお述べになりましたように、定款を無視しまして、日本赤十字社昭和二十二年の一月から定款を改正しまして、民主を唱えながら、赤十字の美名に隠れて、今の理事者であるところの島津社長伊藤社長は、自分私利私欲を追つているのであります。口に民主を唱えて専制を行い、多額の金を募金して、その金を宴会、娯楽、あるいは私利私欲のために使つているのであります。これは、私が昭和二十年の八月から二十六年の九月まで日本赤十字社本部職員として、現実にこの目で見、この耳で聞いて来た実際のことであります。そうしてこのことをわれわれとしては看過できないのであります。それで当時私は、赤十字社職員組合長、並びに全日赤職員組合の副組合長をやつておりましたので、その事実を組合機関紙によりまして全国職員にお知らせしたのであります。ところが、全国職員はどうですか。これに対しまして、赤十字社ほんとうのことを知られてしまうと、われわれは募金することができない。募金が入らなければ、われわれは食つて行けないのだ。本部組合事務局で、こういう新聞を出されちや困る。こういうような声が、全国から投書によつて私のところへ来たのであります。それで、職員の方の自覚を促すとともに、私はさらに日本赤十字社理事評議員の方に、この事実を再三にわたり文書をつくつて配付したのであります。ところが六十五人の評議員、十二人の理事、監事の中で、私にこれに対して返事をくれたのは、たつた一人の評議員しかありません。その書類は、私は持つております。それは一応は理事会評議会で、この問題は問題になつたのでありますが、本社社長、副社長は、両回ともこの評議員理事を欺彌しまして、そうしてあくまでこの不法を通そうとしているのであります。  その社長、副社長不法というものは、どういうものであるかといいますれば、先ほど蜷川先生が申し上げましたように、まず伊藤社長は、自分任期が切れたのにもかかわらず、これを強行したのであります。どうして強行したかというと、当時の評議員の中には、中村評議員と、ここにおいでになります松井評議員、この二人が評議会の双璧として、そうして日本赤十字社ほんとう事務をやるために、タイアツプしてやつて来たのであります。ところが、不幸にして中村評議員は、昭和二十四年の五月一日かと思いますが、なくなりました。それで自分の頭の上のおもしがなくなつたために、こういう横暴をきわめているのであります。定款にも、はつきりと副社長は二名と書いてあります。ところが一名しか置きません。自分が一人でやつております。そして副社長仕事が煩雑で忙しいというために、また規定を改正しまして、常任理事というものを置くことにしました。それほど副社長責任が重く忙しいなれば、なぜ副社長を二名置かないのでしようか。どうして常任理事を置くのでしようか。いわゆる常任理事は、自分の情実でもつて腹心を持つて来てすえて、そして彼は独裁をやつて来ているのであります。これが現実赤十字社の状況であります。私は何も感情にとらわれたりして、人を批判するものではありません。そうして職員時代よりずつと、昭和二十二年以来、日本赤十字社民主化のために、あらゆる方法をもつてつて来たのでありますが、遂に実現できなかつたのであります。  それで先ほども申し上げましたように、職員の方、または評議員理事、それに話しても取上げられない。やむを得ない、これは日本赤十字社総会において、ほんとう赤十字の内容をお話しまして、社員の皆様に聞いていただいて、日赤民主化をはかりたい。こう考えまして、昨年の九月二十六日の総会出席したのであります。ところがどうでしよう日本赤十字社においては——これは赤十字でやつたかどうかわかりませんけれども愛宕署の警察を動員しまして、私を検束する。何たる不法でありましよう。こういう手を打つて、そうして昨年の総会は、自分らに有利にやつてしまつたのであります。そのために、私は昨年の総会で議決されたことは無効であるという問題で、裁判所に民事の訴えを起したのであります。これがたまたま各新聞紙上に伝えられたので、いろいろと問題を起しているわけであります。かくしてこの総会においての発言は封じられ、あるいはいろいろな問題で警察官を使つて弾圧して来るので、どうにもできない。幸い新聞で取上げていただき、また本日この委員会で述べさしていただく。これは私はほんとうに感謝しております。それでありますから、ほんとうに私はここで、ただ私が意見を述べるだけでなく、本社理事者を連れて来て、ここで対決したいと思います。はつきりと対決をして、ここで白黒をつけたい。そうして赤十字の行き方というものについて、皆さん批判をしていただきたい、こう思うのであります。それがここで対決できないというのは、残念でありますけれども、これはやむを得ないと思います。  それでは、赤十字はどういうことをしているか、その具体的な例を申し上げますと、赤十字は、御承知ように、本年度は五億四千万円募金をする目標で進んでいるのでありまして、昨年は四億五千万円ばかりできています。その前は約三億八千万円であります。それで、その募金の使途は、昭和二十三年度は八件費が四六%であります。それから本社への送納金が二〇%、募金費が一五%、そのほかが赤十字事業費であります。それから二十四年度におきましては、人件費が五三%、本社への送納金が一六%、募金費が一五%、その残額が赤十字費用であります。しからば、実際にあと残つた費用赤十字事業を推進しているのでありましようか。その金の中から宴会、会食あるいは麻雀、こういうところに使つているのであります。これは私はちやんと記録を持つていますので、一切うそは申し上げません。ほんとう皆さんの方にも募金書類をお上げできたら納得行くと思いますが、ここの資料にもありますが、みなここに一々書いてあるのは、何が何十万円、何が何十万円とありまして、人件費一つもありませんでしよう。これがごまかしの予算なのであります。カムフラージした予算であります。これが赤十字であります。そういうふうにして、それでもあきたらないで、赤十字社においては、コーヒーの問題、あるいは砂糖の問題、また監督官庁であります厚生省役人を篭絡しまして、幸い伊藤社長厚生次官の出でありますので、そうしてやつておるのであります。その事実も、何月何日に何万円、厚生省のだれに送つたということは、みんな私書いて持つております。あるいは伊東温泉東光園に年に三回も招待しております。これも収支伝票赤十字主計課でやつております。こういうようにして、募金されたものは、全部本社首脳部幹部がみな私腹を肥やしておる。また厚生省とも、そういうことをやつておる。最もひどかつたのは、昭和二十五年九月十三日でありますが、午前二時に、厚生省役人が八人自動車で本社の宿直室へ来まして、宿直者をたたき起して、酒、ビールを持ち込んで麻雀をやつておる。この麻雀の費用は私は全部とつてあります。昭和二十四年四月から七月まで、六万円麻雀の費用を出しております。  こういうよう赤十字を、われわれとしては看過することはできない。ぜひ皆さんにおいて、ほんとう赤十字の内情を知つていただきまして、赤十字民主化をはかつていただきたい。そうして真に国民の赤十字として、われわれがほんとうに安心して募金を出し、その募金されたものが、またわれわれに還元されまして、苦痛の軽減、健康の増進に役立たせるよう赤十字にしたいと思います。  なお具体的ないろいろこまかいことがありますが、あまり長くなると思いますから、このくらいで私は陳述を終りたいと思います。
  6. 青柳一郎

    青柳委員長代理 それでは、次に松井参考人の御陳述をお願いいたします。
  7. 松井義重

    松井参考人 私は赤十字理事松井でございます。蜷川先生なり瀬尾さんのおつしやること——元来蜷川先生は、赤十字というものについて、国際的に非常に明るい方でおありになり、また日本赤十字というものを愛され、また瀬尾君も、赤十字という点については、眞劍な純情な人で、すべてやつておられるので、私はその間の氣持はよくわかります。     〔青柳委員長代理退席、委員長着席〕 つきましては、蜷川先生は、特に伊藤社長が就任する前の原泰一氏、赤木朝治氏時代に、非常にこれではいけないということで、これをもう少し浄化するために、やめさせたらどうかというようなことを、職員組合あたりにお話になつて、それが原因になりましたかどうか知りませんが、去られた。そのあと伊藤謹二氏が入つてみえたというようなことになつているようなわけです。それから、今のお話を伺つておると、われわれの立場といたしまして、非常によくない立場でやつておるというようなお話でございますが、理事会は毎月一回必ず開きまして、われわれとしまして、その赤十字の盲点について研究もし、各支部の全面的なものが寄つて参りますので、そういう点について、忌憚なく職員並びに責任者に進言をしてやつて来ております。今伺いますと、私も聞かないようなこともお話になつておりましたようですが、こういう事柄が、一般国民、また皆様の上に、誤解であるか事実であるかということにつきまして、もし事実であれば、これはもうたちどころに処理しなければならぬ。また誤解であるとすれば、これを誤解ないようはつきりして、そうして、国際的に日本赤十字としてりつぱな行き方をしなければならぬと、私は理事として考えております。
  8. 大石武一

    ○大石委員長 この問題に関しまして、委員より発言を求められております。これを許可いたします。高橋等君。
  9. 高橋等

    ○高橋(等)委員 私は瀬尾参考人に、お伺いをいたしたいのであります。本日配付の書類の中に、瀬尾正吉さんから島津赤十字社社長あてに、陳謝書というものが出て曲るものが入つております。これは昭和二十六年十月二十日付であります。内容は読まなくてもわかつていると思いますが、参考人の方に聞いていただくために朗読いたしますと、    陳謝書  客年九月休職以来地労委に提訴致し、あるいは文書の配布等により紛糾して今日に至りましたが今般松井理事の斡旋により円満解決の運びとなりました。  ついては共の間私の誤解あるいは感情問題等により本社に対して御迷惑を御掛け致しました事は誠に遺憾に存じます。  依て茲に陳謝書を提出して御詫び申上げます。   昭和二十六年十月二十日          右 瀬尾 正吉   日本赤十字社社長 島津忠承殿  それからもう一つ——これはあて名がわからないのですが、これはどこへ出されたかということを伺つてみたいと思います。  謹啓 秋冷の候愈々御健祥の程御喜び申します。陳者私儀客年九月以来再度に亘り日本赤十字の事に関して文書を配布致しましたが当該文書は私の誤解あるいは感情問題に基くものであつたことが、此の度反省されましたので取消し致します。  右取消しの挨拶を申します。             敬具   昭和二十六年十一月一日            瀬尾 正吉  そこで、瀬尾参考人にお伺いいたしたいのですが、あとで朗読いたしました書類というか手紙のようなものですが、これはどこへお出しになつたのでしようか、それをまず伺つておきたいと思います。
  10. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 それは全国評議員理事、監事であります。
  11. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そうすると、十一月一日付の書簡は、赤十字関係幹部の方にお出しになつたと拝承してよろしゆうございますか。
  12. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 はい。
  13. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そこでこの陳謝書及びこの手紙をお出しになつたというのは、事実お出しになつたものと確認いたしますが、この陳謝書も、あなたがこういうことをなさつたということを確認されますか、どうですか。
  14. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 確認します。
  15. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そこでお伺いをいたしたいのですが、この文書の配付等により粉砕して今日に至るというのはいかなる文書をお配りになりましたか、その文書の内容等を詳細に承りたいと思います。
  16. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 その問題につきましてはだだ一片の陳謝書だけでは納得行きませんので、その点を申し上げて、それから内容を申し上げたいと思います。  私は昭和二十五年の参議院選挙の際に、選挙運動をいたしました。そのために就業規則によりまして、昭和二十五年の九月七日に無給休職を仰せつかつたのであります。それで私としましては、この問題は、私が組合運動をやつおつたために就業規則を適用したのであるから、公平に就業規則というものを全職員に適用されたい、こう申入れまして、事実を申し上げたのであります。それは当時の日本赤十字社の報道課長古田博之氏が、新聞紙の横流し、あるいは架空な原稿料をつくつて着服した、その問題を本社側に申し入れまして、こういうことをしたにもかかわらず、私にだけ就業規則を適用するというのは、あまりに不公平じやないかというわけで、本社に申入れをしたのであります。本社では、主計課長の小林陽治氏がそれを調査しましたところ、間違いない、こういう話で、古田君も退職させるから、君もこの休職に納得してもらいたい、こういう話でありました。それで古田君が退職になるべきものを、いつまでたつても退職をしないので、私はやむを得ず地労委に提訴したのであります。それで地労委でいろいろやりまして、地労委のあつせんによりまして、それで地労委の方では、いつまでやつてもらちが明かないから、君も毎日の生活に困るだろうから、この話を円満に解決したらどうかというので、地労委が中に入つて提訴した問題を取下げ、辞表を提出して円満に退職する、こういうふうな話でありましたので、私は地労委に一切を委任しました。ところが本社は、その提訴したのを取下げさせてしまつて、そして円満なる退職はやらないのであります。こういうような卑屈なことをやつておるのであります。そして昨年の九月に、ここにおいでになります松井さんといろいろ話をいたしましたところ、松井さんは、何もここでは言うな、君も困つておるのじやないか、その通りであります。私は二箇年間一銭の収入もありませんと言うと、私の目の前に退職金をぶら下げておきまして、どうだ、君も一札書きなさい、書いたならば退職金をやるよと言われる。私は退職金も何もいりません、辞職もしません、あぐまで鬪いますと言つたのです。それで地労委の審査係長の大野主事を連れて本社と対決したのであります。ところが本社では、その問題についてまつたく後藤常任理事と塚原政繁主幹は、顔も上らなかつたのであります。これは大野主事を証人に出してもはつきりします。そしてその退職金を目の前にぶら下げてこれを書け、書けば退職金を出してやろう、書かぬか書くかと言うのです。そこでここにおいでになる松井理事さんも、何も言わずに、一切はあとはつきりするから、ここで書いて退職金だけもらつたらどうかと、こう言われたので、私は書いたのであつて不法にもその間に松井さんを入れて、私を退職金でつつたのがこの問題であります。  なお配付した問題について申し上げます。この配付した問題は、伊藤社長不法な留任、それから社宅購入の不法、それから本社の物資の買入れの不法、会計規則の違反本社社長、副社長の脱税問題、それから後藤総務部長の居残りの問題、コーヒーの問題、砂糖の問題、情実人事の問題、機構改革の規定違反の問題、こういう問題を十四項目あげて出してあります。以上であります。
  17. 高橋等

    ○高橋(等)委員 松井さんにお伺いいたしたいのでありますが、ただいま参考人瀬尾さんのおつしやいましたことは相違ありませんかどうですか。
  18. 松井義重

    松井参考人 それではお答え申し上げますが、ちようど瀬尾君が、今話しをされましたように、組合長をやり、瀬尾君の立場からいえば、社内の粛清というふうに考えてやつておられるのですが、たまたま選挙がありまして、選挙違反というような線にひつかかられた。これはやはり社則といたしまして休職ということになり、そして選挙が六月四日で、起訴されましたのが八月三十一日、休職になられたのが九月八日、ちようど一年間しますとこれは全部退職となる。そこで都労委提訴とかいろいろ問題ありまして、そういうようにごてごてすること全くない。一ぺん私が会つてよく話をしようといつて瀬尾君に、赤十字をよくやつて行く上については、急激にやる面もあれば、よく修理を毒してやる面もあるという話をいたしまして、瀬尾君もよくわかつたということで、それならばぼくが連れて行つてあげるからというので、総務部長、副社長社長のところに行つて、よく瀬尾君が話をいたしました結果その文書が出たと思いますが、その文書は赤十字社の部内で書いたものを瀬尾君に署名させましたのか、瀬尾君自体が自発的にそれをお書きになりましたのか、お尋ね願えればけつこうだと思います。
  19. 高橋等

    ○高橋(等)委員 瀬尾参考人に二点にわつてお伺いいたしますが、この陳謝書は、あなたがこの文章もお書きになつたのかどうか。それとも書いてあつたものに判をつかれたのかどうか。  もう一つ、陳謝書が十月二十日に出ておりまして、役員あての手紙は十一月一日に出ております。この役員あての手紙はやはりあなたの筆になつたものであるかどうか。また陳謝書だけでなしに、役員あてのこうした手紙を出されたこの間のいきさつについても、あわせて承りたいと思います。
  20. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 お答えいたします。この問題は、最初私は單なる誤解その他に基くものであるというふうに書いて出しました。ところが本社では、それではいけない、どうしても取消せ、そう書かなければ、あなたに退職金を上げられない。それから本社だけでやつたところが、それではいけない、今赤十字がこれを君にやられてしまつたならば、赤十字は今後立つて行けないから、各委員の方にぜひ出してほしい、それで十一月一日になると切手の値段も上るから、君たいへんだろう、なるべく早く今月中にやりなさいというふうに言われて、向うでその文句は指示されました。間違いありません。
  21. 高橋等

    ○高橋(等)委員 もう一点伺いますが、陳謝書の文句も、書いたものをやられたのですか。書いたものへあなたが判をつかれたのか、それとも自分で書かれたのかどうか。それから、ただいま指示されたというようなことをおつしやつていますが、指示とは、どの程度の指示をされたか、はつきりおつしやつていただきたい。
  22. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 一番最初、私が書いて出しました。そうしたら、それに対して、本社で筆を入れてよこしました。そのことについて、私は地労委の委員を連れて行きまして、陳謝状は書かないとはつきり断りました。それは地労委の審査係長の大野主事を呼んでいただけばわかります。そうしておつたけれども、先ほど松井さんのお話もありましたように、いつまでも長引いておりまして、私も二年間一銭の収入もありませんので、私は妻きました。それは私の書いたものであり、私が判を押したものに間違いありません。
  23. 高橋等

    ○高橋(等)委員 この手紙に書いてある当該文書云々——ただいま文書の話の内容を聞いてみますと、大体本日問題になつておるようなことが文書になつておるように、私は聞くのであります。その文書について、私の誤解あるいは感情問題に基くことであつたということが書かれてあります。これはどういう意味なのですか。一応どういう点が誤解であり、どういう点が感情問題であるかをお伺いしたい。
  24. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 それは、私の意思にないことを私が書いたにすぎません。事実であります。ただ私は、先ほどから申し上げておるように、あなたたちも御承知かもしれませんが、退職金を一銭もやらないで、目の前にぶら下げておいて、書け書けと言われれば、だれども貧すれば鈍するで、これは書かざるを得ません。そのために私は書いたので、それは私の意思でありません。そのことを申し上げます。
  25. 高橋等

    ○高橋(等)委員 退職金をつるしたとおつしやるのは、天井からでもつるしておつたのですか、どうしたのですか。そのつるしたという状況を知りたいものです。
  26. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 先ほども申し上げましたように、本社の退職金規程から行きますと、退職後二箇月以内に支払わなければならなくなつております。それを本社では一銭も支払わないのです。それを支払わないので、私は労働省にも行きました。あるいは三田の監督署にも行きました。そしてあらゆる方面から手を打ちました。それで三田の千葉という監督官が本社の北原さんを呼び出して、すぐにやれ、こういうふうに言われましたので、私も行きました。ところが、どうしても一札書かなかつたならばやれない、いくら三田の監督署で何と言おうと、君が書かなければやれない、こういう事情であります。それで私は、心ならずも書いたのであります。以上であります。
  27. 高橋等

    ○高橋(等)委員 最後に一点。そうすると、参考人の方では退職金がもらいたい余りに、心にもないことをごうやつて書いた、こういう御陳述のように思うのです。すべてこうした重大な行動を起され、大きな組織に迷惑がかかるような問題を取扱われる責任者の立場として、見れば元日本赤十字本部職員組合長、元全日赤職員組合組合長の地位にあられた方であります。まあ退職金がいるからこれを書いたと言われるのですが、もしこれが事実そうであるとすれば、そうお信じになるとすれば、もう少し毅然たる態度であるべきじやないかと私は思うのです。本日ここで参考人の御証言をなさつておりますが、その信憑力につきましても、従来そういうような態度でお臨みになつておられる性格から行きますと、何かあぶなつかしいような気持が実はいたす。なお私は発言を留保いたしまして、次の方に譲りたいと思います。
  28. 大石武一

    ○大石委員長 松谷天光光君。
  29. 松谷天光光

    ○松谷委員 瀬尾参考人にお尋ねしたいと思います。先ほど初めに御説明いただきました中に、本社愛宕署を動かして検束その他というお話がございましたが、ただいままた高橋委員の御質問に対する松井参考人の御答弁の中に、選挙違反その他の問題が出て参りましたが、その愛宕署の検束は、選挙違反による場合の検束であつたのでございましようか、それとも選挙問題とはまつたく別に、先ほどの御説明のように、本社愛宕署によつて検束したというような問題であつたのでございましようか。
  30. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 この検束の問題は、九月二十六日朝の十時ごろ、本社総会があるということを朝日新聞の公告を見て知つて、向うへ行きました。そうしますと、愛宕署員がおりまして、総会に入る入場証のバツジがあるそうで、それがないから君らは入れられないというわけで、六人か七人で取巻きました。それで私は、きよう赤十字社社員総会である、私は怪しい者ではない。赤十字社の特別社員であるといつて、特別社員証を提示しました。それでもバッジがないために入れられないという話でありましたので、それではバツジをもらつてようというので受付べ行きました。ところが受付では、どうぞお持ちなさい、といつてよこしましたので、そのバツジを持ちまして中へ入りました。中へ入りましたところが、本社の係の人が来まして、何かきよう発言がありますが、こういう話でありました。それで私は、発言ありますと申し上げましたところが、何とかしてきようは発言をやめてもらいたい。どういう理由ですかとお聞きしましたら、理由も何も言わないで発言をやめてもらいたい、こういう話でありました。ところが、そういう話をしているうちに、その人は向うに——向うといつて本社側の社長、副社長の方面に参りまして、常務理事、副社長と何か耳打ちをしていたようであります。そうしてまた今度は上の係の人、係長——当時この総会の係長がやつて来まして、それで別室に私を呼んだのであります。そうして、今お聞きすると、君は発言があるそうだが、きようは発言をやめてもらいたい。それですから、理由はと言うと、理由は何も言わないで、やめてもらいたい。そういう話を二人でしておつたところに、愛宕署の警察官が三名で入つて来まして、何も言わせずに、私の両の手をとりまして、そうして一人はうしろからからだをかかえたのであります。それでありましたので、どうしてあなたたちはそういうことをするのか、私は政治問題、思想問題を論じるのじやない社員として社員総会出席して発言するのである、こう言いましたら、いや君が発言するならどうしても検束する。検束するというのなら、それでは逮捕状を示してもらいたい。そこまでやつだのでありますが、まだそこにおつた鹿田一郎という、私を別室に呼び込んだ当日の係長の人が、まあそう荒立てないでもいいじやないかというようなことを言いましたけれども、どうしても警察官は、何も言わずに、しやにむに私のからだをドアの外にかかえ出したのであります。ぼくはふりほどいたのでありますが、そこまでやつたのであります。そうして、君が発言するなら、どうしてもこのまま連れて行く、こう言うのであります。それで私も、としても発言させないのか、発言させないなら、おつてもおらなくても同じだ、こういうわけになりまして、私は発言をやめたのであります。それで総会にそのまま残つておりましたところが、愛宕署のおまわりが今度は二人ふえまして、五人で私のまわりを取巻いておりまして、絶対に発言させないのであります。それですから、この選挙とは一切関係ありません。以上が総会の当日の実情でありました。
  31. 松谷天光光

    ○松谷委員 そのときに総会においでになつたのは、お一人でいらつしやつたのでございますか、あるいは何人かでおいでになつたのでございましようか。
  32. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 二人でおいでになりました。(笑声)二人で行つて、出まして——一人は大原正緒といいまして、これも赤十字社員であります。
  33. 松谷天光光

    ○松谷委員 その同道なさいました大原さんでございますか、その方はやはり現社員でいらつしやいますか。
  34. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 そうであります。
  35. 松谷天光光

    ○松谷委員 その当日は、発言をなさらなかつたように伺つたのでございますが、そういたしますと、先ほど愛宕署に検束その他のお話がございましたが、検束ということはなかつたと了承してよろしゆうございますか。
  36. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 検束はされませんでした。ただ暴行脅迫だけは受けました。
  37. 松谷天光光

    ○松谷委員 先ほど選挙運動のお話があつたのでございますが、瀬尾さんから、選挙違反の問題についてはお話がなかつたようでございます。この点、たいへんこまかい点かもわかりませんが、選挙違反当時のことを、ちよつと伺つておきたいと思います。
  38. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 選挙違反の問題は、当時六月四日に参議院選挙が施行されますので、そのときに自由党の公認候補として立候補しました谷本利千代氏の選挙活動を依頼されまして、その運動をいたしました。その選挙の買収というような被容疑にとらわれまして、起訴されたのであります。その額はここに起訴状もはつきり持つて来ておりますが、五万五千円いただきまして、そのうちの一万円を岡山の知人に送り、二万円を静岡の知人に送りまして、あとの二万五千円を私が使つて、大阪、静岡、福島、宮城、岩手、この出張旅費に充当したのであります。それでありますから、私はあくまでも無罪を信じておりましたが、つい起訴されてしまつた、これが事実であります。
  39. 松谷天光光

    ○松谷委員 そういたしますと、その選挙違反については、もうはつきりと判決が済んだのでございますか。
  40. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 去る五月八日に公判が開廷されまして、先般の講和大赦令によりまして、免訴ということの判決を受けまして、現在されいになつております。
  41. 松谷天光光

    ○松谷委員 先ほどの高橋委員の御質問のときに、私まだその御答弁の中で、どうも納得できなかつたのでございますが、この陳謝書というのは、最初瀬尾さんがお書きになつて、それを本社に出したところが、それに筆る入れられた。そこで瀬尾さんが、もうそれでは陳謝書は書かないというふうに言われておつたが、やはり退職金その他の問題があつて、遂に自分は書いた。ここに私どもに示されておりますこの陳謝書は、瀬尾さん御自身が筆をとつてお書きになつたと解釈してよろしゆうございますか。これは重なりますが、向うから出された文書に判を押されたのではなくして、この「誤解あるいは感情問題」というこの辞句も、御自身でお書きになつたというふうに解釈してよろしゆう。ございましようか。
  42. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 その通りであります。
  43. 松谷天光光

    ○松谷委員 全国理事評議員にお出しになられた文書の中に、先ほども局橋委員が取上げておられました当該文書とございます。この文書、この十四項目でございますか、それを先ほど御説明があつたと思うのでございますが、あとで簡單な項目だけでけつこうでございますから、文書にしてちようだいしたいと思いますが、これは委員長できますでございましようか。
  44. 大石武一

    ○大石委員長 それはあとから出していただきます。——松谷さん、よろしゆうございますか。
  45. 松谷天光光

    ○松谷委員 はあ、一応あれいたしまして、あとでまた……。
  46. 大石武一

    ○大石委員長 堤君。
  47. 堤ツルヨ

    ○堤委員 瀬尾参考人にお尋ねいたしますが、あなたは先ほど、蜷川参考人から御説明がありました通り、赤十字定款というものは、やはり超党派的であり超宗教的であり超種族的であり、いろいろな方面から中立であらねばならぬということが原則になつておるわけでございますが、あなたが日赤職員でありながら、参議院議員の自由党の選挙の応援をなさつたということは、あなた自身正しいことであると考えておられるか、または正しくないと考えておいでになりますか、その辺のあなたの御見解をちよつと承つておきたい。あなたのせられたことに対して……。
  48. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 私は正しかつたと思つております。それは赤十字職員としてやつたのでなくて、瀬尾個人としてやつたのであります。それで、この問題につきましては、本社日本赤十字社社長は、日本赤十字社社長として、はつきりと公文書をもつて、参議院議員の推薦状まで出しておられるのであります。それでおりますので、私は間違つておらないと思います。谷本氏は赤十字のために非常に盡力してくれた方でありますので、この人を応援したなれば、赤十字社としてプラスになる、こう思いまして、私個人としてやつたのであります。そういう考えでおります。
  49. 堤ツルヨ

    ○堤委員 あなたの正しかつたという御認識に対して、御批判ちよつとここで避けます。  それでは、蜷川参考人にお尋ねいたしますが、日赤島津社長が、そうした公人として、選挙に対して推薦状をお出しになつておる。それから社の組合長であつた瀬尾さんが、選挙運動に全国をまたにかけて東奔西走されたということに対しては、一つ日赤に対する批判が生れて来ると思うのでありますが、これに関連いたしまして、全国の都道府県に参りますと、支部長は、全国の知事がやつておる。これも嚴密に言いますと、非常に民間団体としては、逸脱して、おると思うのであります。従つて、これもまた選挙と関連することになつて参りますが、この辺に関して、あなたはどういうお考えを持つておいでなりますか、ひとつ承りたい。
  50. 蜷川新

    蜷川参考人 私は赤十字社定款一ついて、幾多の欠点あることを、かねてから指摘しておりますから、それを一々ここで申し上げる必要はなかろうと思いますが、ただいまおつしやる通り、従来の赤十字は特別法人でありました。そうして皇室に関係あり、宮内省に関係あり、陸海軍に関係あり、特別の官庁みたいなものであつた。そういうふうに日本はこしらえておりまして、全国の知事をみな支部長にしておりました。私はいけないと信じてはおります。けれども、新たに定款をつくるときに、その問題は、赤十字定款そのものには、支部長に知事がなるというふうには書いてない、ですから、論議に上らなかつたのです。いけないと今でも思つております。どういう点が悪いとおつしやれば、惡い点は幾らでも述べることはできる。四つも五つもある。それが混乱を生ぜしめるゆえんである。ことに今度の法案、あなた方のお手元にまわつている法案、これははなはだけしからぬ。別問題ですけれども、述べろとおつしやるならば、いつでも述べます。
  51. 堤ツルヨ

    ○堤委員 今私の手元にある原案ですね、この問題に関しましては、これについてはまだ白紙ですから、そこのところはひとつ……。  そこで、瀬尾さんにもう一度お尋ねしておきたいのでありますが、これは日赤の参考書類としていただいておりますが、非常に問題点とされておりますところの第五十九回通常総会無効に関すること、それから副社長不法留任に関すること、砂糖横流しに関すること、それから新聞用紙横流しに関すること、関係官庁に対する饗応贈賄に関すること、募金材料の不正購入に関すること、コーヒーの収益金処分に関すること、それから国連軍に対する供血協力に関すること、博物館貸付に関すること、家庭看護法の普及対象が上層階級に限られておるということに関すること、それから巡回診療の実施に関すること、奉仕団と町会との関係に関すること、それから副社長用社宅に関すること、第六十回通常総会に関すること、それから昭和二十五年度の募金の使途に関すること、これらはあなたが日赤民主化を片方で唱えられて、具体的な問題をついておいでになるのであろうと思うのでありますが、私が今申し上げました諸問題に関しましては、あなたはこれを認めるものであつて、やはり退職金ほしさにこういう陳謝状とか、また幹部だとか、それから評議員理事、監事等に、十一月一日にこういう書類をお出しになり、前言をお取消しになつたけれども、この議会の委員会では、それは退職金との関係があつて言つたことであつて、決してあなた方が指摘しておられる事実に間違いはないというお考えを持つておいでになるということ、そういうふうに了承してよろしゆうございますか。
  52. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 そう了承してよろしゆうございます。
  53. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは、あなたにもう一つ聞いておきたいのであります。あなたの二年近い無一文の生活のお苦しさは推察いたしますが、その收入がなくて生活に困つておるから、だれでも貧すれば鈍する、従つてぼくがこれを書いたのも無理はなかろうという御陳述でありましたが、男子として、少くともこうした行為について、あなたはどういう反省をしておられるか。これは少くとも国会にあなたが参考人としてお出ましになつたのでありますから、この委員会であなたがおつしやることは、私たちは信用しなければならない。しかし、ああ言われればあの道をとる、こう言われればこの道をとるというところの便乗主義、これをなさろうという性格がおありになるとするならば、あなたがただいま日赤幹部を糾弾しておいでになりますこの問題に対しても、そのときによつて、どういう色合いであなたが御判断して御答弁になるかわからないという考えを、私たちは持たなければならない。従つて、高橋委員も御指摘になりましたが、あなたに対して私は少しふしぎに思うのでありますが、男ともあろうものが、退職金ほしさにこれを書いたということに対して、これをどうお考えになりますか。
  54. 大石武一

    ○大石委員長 瀬尾君にちよつと申し上げておきますが、この委員会は、決してあなた方を糾弾しようとか、糾明しようとかいう委員会ではございませんから、答弁したくなければ御答弁しなくてもけつこうです。
  55. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 お答えをいたします。その御批判はもつともだと思います。しかし私は、便乗主義とか、そういうものではありません。その証拠に、私ははつきりと、これは法廷鬪争をやろうと思いまして、民事まで訴えてあります。なおこれはほしい、ほしい、そればかりではありません。ここにおります松井理事、この人がぜひやつてくれよ、ここは何でもやりなさいよということで、やはりその人の顔も立てなければならないじやないですか。それで私もそちらの顔も立て、そうすることが、自分も助かるのですから、一石二鳥。それはずるいかもしれませんが、そういうわけで、松井さんからその点の事情はお聞きになつていただけばよくわかると思います。とにかく本社は、地労委に提訴したやつを取下げさせて、提訴を取下げたならばやると言つてつて、つかまるところがなくしてしまつたじやないですか。そういうわけで、私は御批判の点はもつともだと思いますが、法廷まで持ち出してやるわけでありますから、單なる便乗とか、そのとき限りではございません。
  56. 堤ツルヨ

    ○堤委員 今委員長からお言葉がありました通り、日赤の内部のいろいろな紛争に関しましては、私たちが一々これを取上げて黒白を明らかにする委員会ではありません。ただ、あなたの御認識を承つているのですから、誤解のないようにしていただきたいと思います。  そこで松井理事にお伺いしたいのですが、私たちはきよう参考人に来ていただきます前に、案は伊藤社長当人をお呼びしたわけでございます。理路整然と、私は官僚生活二十年、愚直と言われたことはあるけれども、いやしくも身に疑いを受けたことはない、それをもつて誇りとする。従つて参考書類も出し、データも出していろいろ指摘されておる十四項に対しては、数字的にも正しいことを申し上げるということまで、はつきりおつしやつておる。それから、今ここにお呼びいたしました蜷川先生並びに元の委員長、この二人の方も、おそらくこの委員会うそを言つておいでにはならないと思います。従つて、私たちが両方の意見を聞きますれば、まつこうから黒と白にわかれるのでありますが、理事といたしまして、これに対しましてどういう蹄考えを持つておいでになりますか。  それから参考のために申し上げておきますが、私たちは伊藤社長の次に、赤い羽根の中央共同募金委員会事務局長の青木先生に来ていただきまして、同様赤い羽根、白い羽根の募金の間におもしろからぬいきさつがあつたように、またこの募金問題に対しましては愼重でなければならないというので、この赤い羽根の方からも参考人として承りまして、やはり日赤の性格、組織、運営のあり方に対しましては、その方々からも意見を承りました。私たちから申せば、現在社会福祉事業をやつておいでになります日赤に対しては、相当の批判があつたように思うのでありますから、それをつけ加えておきます。
  57. 松井義重

    松井参考人 お答えを申し上げます。先ほど申し上げましたが、理事会は、全国的な書類が寄つて参り、また出席理事が非常によく検討いたしましてすべてやつておりますので、瀬尾君のああいう問題が出ましたときに、私自体が非常につつ込んで事務当局に追究もいたしました。それから伊藤社長の住宅問題は、あれは次官時代からの官舎売つたそうで、これは早く出なければいかない、そうして各支部病院にも病院長社宅があつたりいたしましたので、あれが百二、三十万円かと心得ておりますが、それと合せて、副社長だけではいかぬというので、職員寮、職員の住宅も何するように買い求めたはずでございます。それから今蜷川先生なり瀬尾君がるるあげましたが、もし事実とするならば、これはゆゆしい問題であり、検察及び警察当局が默つておいでにならず、手を入れられておるはずだと思いますから、瀬尾君があの、パンフレツトを全国評議員に出し、われわれの手元にも参りましたとき——これは全国的に評議員の手元に行つておるはずでありますが、相当時日が経過いたしておりますが、官憲当局が、いまだそれを見ても手をお入れになつておらないことをごらんくださいましても、お察しができると思います。  それから共同募金赤十字の面が出ましたが、赤十字の面は、何を申しましても絶対に福祉関係ができ得ないのではなく、やはり一部分を関係して、といいますか、本事業をやるについては一割とかいうような面があることがやはり仕事が都合よく参ります。たとえば看護婦の養成にしてみても、これは教育の面でありますけれども、やはり学院制度でやる、つまり教育の専門の面だけでやるということよりも、やはり病院において三年の期間を通じて看護婦を養成して行くというような面がございまので、われわれの方の立場といたしましては、共同募金さんの方がいろいろお考えがおありになりましても、そのお問いに対しましては、事実をありのままお答えをいたしますけれども、やはり先ほど蜷川先生もおつしやいました博愛、奉仕、教育の面からいつて、他のことはあまり言わない方がいいと思つて差控えておりましたような次第であります。
  58. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それで私は、理事でおいでになるあなたにちよつとお願いをしておきたいのでありますが、私昨日も地方へ参りましたが、今年五億四千万円募金なさいます目標額は、いなかの零細な農山村におきましても、やはり役場が協力をいたしまして、戸ごと三十円くらいの割当になつておる。人をして言わしむれば、これは税金にひとしいものであるというような感じを持つておる者もあるのでございます。街頭にげたをすり減らして募金に奉仕される末端の零細な人たちの協力は、非常に貴重なものであります。高邁な赤十字の理想と照し合せて、ほんとうに美しい行為てございますが、日赤幹部自体に、いやしくもこういう風評を立てられるような方がおありになる、しかもその組織性格または運営に対して、第三者の批判が相当にあるというに至りましては、私たちは、やはり大衆を代表いたします選良といたしまして、はつきりと特別法人にあらためてするならば、そのする機会に、この盲点を十分つきまして、そうして高邁な理想に沿い、民主的な運営をされる、しかも社員を尊重し、社費を建前とした日赤本来の姿に立ち返つてもらいたいということは、おそらく皆さん同様に考えておられるのでありまして、理事といたしましては、非常にたいへんな責任を持つていらつしやると思いますので、幹部理事といたしましては、とやかく言われております幹部の方々と十分御協議になりまして、今後こういう風評の立つことのないように、気をつけていただきたいということを、最後に希望申し上げておきます。
  59. 大石武一

    ○大石委員長 苅田アサノ君。
  60. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私はまず蜷川参考人にお聞きしたいのですが、蜷川参考人は、冒頭のお話の中で、現在の日本赤十字社は、国際的な赤十字社定款違反しておる。その証拠には、非常に日本政府の意向で動かされて、そういう政府とか政治とかにかかわらないという定款違反しておるとおつしやつたのでありますが、私はこの点をお聞きしたいのであります。今の日本赤十字社は、非常に国の委託事業をたくさん扱つておりまして、見方によりますと、政府一つの出先機関に近いような活動をしておるのでありますが、これはそもそもの日赤のやり方としては、たいへん方向が違つたやり方であるのかどうかということです。たとえば、朝鮮救援にいたしましても、南鮮だけをいたしまして、北鮮を全然別個にしておる、こういう点を先ほど御指摘になつたのでありますが、そうすれば、国の委託事業でやつていることと別個な事業を両立してやるのか、それとも国の委託事業をやるということはいけないのか、そういう点を、もう少し具体的にお話願えればたいへん参考になると思うのです。
  61. 蜷川新

    蜷川参考人 さきに申し上げましたように、日本赤十字社には、国際赤十字委員赤十字社連盟二つあるので混同するのです。従来あつたのが国際赤十字委員、新しくできたのが赤十字社連盟二つあるのです。要するに本山が二つある。一は戰時事業をやつておる、つまり戰時救難です。それをはなはだおこがましいですが、私が主唱して施療事業をやるようになつてできたのが赤十字社連盟で、一九一九年五月五日に初めてできたのです。この規則にノン・ガヴアメンタリーということをやかましくいつて、一切政治関係することはならぬ、そういう趣意でできたのですが、やはり時を経て来ますと、占領中に、マツカーサーは、赤十字救援事業、例の水難なんかに使つて、水難救助法のようなものの中に赤十字を入れてしまつちやつた。それで、今おつしやるような問題が出て来る。出て来るのですけれども定款そのものは純粋の民法法人になつてしまつたのです。過去には勅令でできておる。列国とも、実は勅令みたような特別法です。それを日本は、戦争はやめて、一切兵を置かない、全部軍隊を廃するとい、うことで戰時法はなくなつたから、そこであたりまえの民法上の私法人になつちやつた。それで押し通す必要があるのです。けれども、おつしやることに少し混同があるのは、定款によるべきか、マッカーサーが占領中にやつたことによるべきかということにひつかかるのです。私は今定款違反ということを唱えておるのですから、主として定款を基礎としてお話をしておる。——これでいけませんか。
  62. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私は国際赤十字運動の権威者としての先生に、純粋な立場から、ひとつ今の赤十字運動の批判を伺いたいと思つておるのであつて、別に私は、赤十字運動はこうなきやならないという見解に立つて話しておるのではないのでありますから、その点は自由に御答弁をお願いしたいと思います。  それからもう一つ、現在の赤十字病院は、健康の増進とか苦痛の減退とかいう本来の事業から逸脱しているとおつしやるのでございますが、私はその今の赤十字の内容と、先生の理想としておいでになる形とが、どういう点ではつきり違うかということを、もう一つ具体的にお示し願いたいと思うのです。
  63. 蜷川新

    蜷川参考人 従来のは、今申し上げました通りに、赤十字なるものは、戰時に働くためにできたものです。これはジユネーヴのアンリ・デユナンの発案です。それを第一次大戦争以後ひつくり返して——ひつくり返してと言うといけませんが、それはそれでそのまま存在しているのですが、平時としてやろうというのがまた一つできた。そこに問題があるのです。今の日本赤十字は、軍に関係は絶対にない、憲法がそうなりましたから。それで定款従つて改正されまして、純平和時だけなんです。今病院でやつておりますあれは、一方から見ますれば、平時事業でありますが、けれども、さつき申し上げましたように、本来何ゆえに赤十字病院をつくり、看護婦をたくわえるかといえば、これは戦時に救護をやるための準備なんで、これで多年来たものであります。だから、今のはそれをただ受継いでおります。過去には赤十字病院というものは少かつた。ところが今はすべての救護班はみな病院にしてしまつた。だから二百幾つもできた。だから、今のは病院営業者みたいなものであります。これは健康の増進といえば、言えますけれども、これは従来からあるのでありまして、医学上からも、これは事業でして予防衛生じやない。事業であつて健康増進疾病予防という方には本来はまらないのです。そこにそういうごちやごちやしたものがありますから、ラジオで人がしやべるのでも、朝日新聞が書くのでも、赤十字の本質というものをちつともとらえていない。知らないのです、やつらは。これは事実なんです。これは無理もないのです。私ども専門家だから、一生懸命やつていますが、知らない方は、赤十字、あれは病院だろう、あれは華族、貴族のものだろうという一般の頭がまだあります。これをひつくり返して民主主義にしようというのが、ほんとう赤十字の理論です。
  64. 苅田アサノ

    ○苅田委員 病院のことに関しまして、もう一つお尋ねしたいのです。日本は今先生もおつしやいましたように、平和憲法なので、戰争の準備をするということは、憲法違反のわけなんです。そういたしますと、赤十字事業が、今の憲法下において、そうした本来の戦戰準備の事業活動をするということは、私はそういうふうなことはしてはいけないことだというふうに先生も曲考えになるだろうと思いますのですが、その点いかがですか。  それから、きよう私五十九回の通常総会における社長演説なんかを見ますと、二十五年から始まりました朝鮮事変に対しまして、日赤看護婦の派遣の要求があつたので、本社はこれに全面的に協力し、九州地方の各支部から第一次五十四人、第二次二十五人、第三次十七人を交替派遣し、現在六十三人が国連軍病院に勤務いたしております、と書いてございますが、こういうことも、先生のお考えからすれば、どういうふうな御判断になつておりますか、この点もひとつお伺いしたいと思います。
  65. 蜷川新

    蜷川参考人 それにつきましては、定款改正のとき、すなわち二十一年の暮に、私も当時まだ関係者でして、定款改正に参加していたのです。それで俘虜の救恤なんということは省いてしまつて、全然平和事業なんです。ところが私の方は多数で負けちやつたのです。あの定款には、そういうこともありまして、これはいけないのです。今おつしやつたことはまた別ですが、ほかから要求があつたなら何でも出すというのでは、しようがない。平和事業とは一体何だ。だれでも救つてくれと言つたら、すぐ出す、それじやだめなんです。戰争しているのですから…。すなわち国際的の大事変なんです。だから、どつちに加勢するかについて、十分研究しなければいけない。これを研究しないで、今おつしやつた演説のように、向うから要求したから出した、それじや赤十字というものは何も心棒がない。そんなものには、社員は大不賛成、それは社長違反行為、こうまあ見るべきでしよう
  66. 大石武一

    ○大石委員長 残余の質疑は午後にいたします。
  67. 大石武一

    ○大石委員長 次に日程を追加して、先刻当委員会に付託されました医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。まず提案者より趣旨の説明をお聞きいたしたいと存じます。提案者丸山直友君。   医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律等の一部を改正する法律案    医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律等の一部を改正する法律第一條医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律昭和二十四年法律第二百七十二号)の一部を次のように改正する。    本則中但書を削る。  第二條 歯科医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律昭和二十五年法律第二百四十六号)の一部を次のように改正する。    本則中但書を創る。     附 則  この法律は、公布の日から施行する。
  68. 丸山直友

    丸山委員 ただいま議題となりました医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。  医師または歯科医師になるためには、国家試験に合格しなければならないことは申すまでもないことでありますが、従前大陸等に満州方面向けの医師の養成を目的とした学校を卒業した者、正規の日本の医学校または歯科医学校を出てはいないが、朝鮮、中華民国、蒙疆、マライ、シンガポール等の現地において免許を受けて医業を営んでいて、終戰により引揚げた者のためには、国民医療法施行令特例の試験による救済等が講ぜられたのでもりますが、この試験を受けて二度とも合格しなかつた者、または朝鮮及び満州国におきまして、医師または歯科医師試験の第一部の試験に合格した者に対しましては、それぞれ医師国家試験予備試験、または歯科医師国家試験予備試験に合格し、さらに所定の実地修練を行つた上で、国家試験を受けて医師または歯医科師になる道が開かれているのであります。  しかしながら現在、医師国家試験予備試験及び歯科医師国家試験予備試験の受験回数はいずれも二回に限られており、この試験に二度とも合格しなかつた者は、永久に試験を受けることができなくなるのであります。しかも、これらの者の多くは引揚者であつて、経済的にも同情すべき立場にあり、年齢的にも転業を困槫とする者も少くないので、医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律及び歯科医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律による国家試験予備試験の実施期間中は、その受験回数の制限を撤廃して、将来に希望を持たせるということが適宜であると存じまして、提案した次第であります。何とぞ愼重審議の上、すみやかに、御可決あらんことを、お願い申し上げます。
  69. 大石武一

    ○大石委員長 本案について、御質疑はありませんか。
  70. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ちよつとお尋ねしておきたいのですが、外地から帰つて来られて試験を受けられる方で、二回試験を受けてみて受からぬようなお医者さん並びに歯医者さん、これは危険きわまるお医者さんであり、歯医者さんと言えるのであつて、二回で受からぬような人は、もう医者としては、その資格を持たないというような判断をすることは、早計でございますか。
  71. 丸山直友

    丸山委員 お答えいたします。堤先生の御意見、でもつともと存じますが、堤先生は、この試験に合格さえすれば、ただちに医師の免許証がもらえるという誤解のもとにお考えになつた言葉だと思います。これは予備試験でございまして、その試験を通過した者は、さらに一年間インターンをやりまして、日本の大学を出た者と同列の国家試験を受けて、それに及第して初めて免許証が与えられる。しかるに、これはサムス准将の言葉だと思いますが、予備試験に二回も落第するような考は、もう試験を受けさせるほどの値打はないという御意向であつたようであります。しかし、この試験左通遇いたしますれば、この法律の有効期間は五箇年間でございますので、国家試験に五箇年の間に持つて行かれるように、その回数にかかわらず、予備試験を受けることぐらいは許してやつてもよいのではなかろうか、こういう趣旨であります。
  72. 大石武一

    ○大石委員長 他に御質疑はありませんか。  他に御質疑もないようでありますから、お諮りいたします。本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 大石武一

    ○大石委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  次の本案の討論に入りますが、本案の討論につきましては別に通告もございませんので、これを省略し、ただちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 大石武一

    ○大石委員長 御異議ないようでありますから、本案の討論を省略し、これより本案の採決に入ります、  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  75. 大石武一

    ○大石委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお本案に関する委員会の報告書につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 大石武一

    ○大石委員長 御異議なしと認め、そのように決します。これにて休憩いたします。午後は一時二十分より再開いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  77. 大石武一

    ○大石委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。  参考人に対する質疑を、順次許可いたします。苅田アサノ君。
  78. 苅田アサノ

    ○苅田委員 蜷川参考人に引続いてお伺いしたいのですが、参考人は、冒頭の公述の際に、メーデーに対して日本赤十字社が救護活動をしなかつたことは、やはり赤十字社の精神に違反している、あるいは定款違反しているというお話でありました。私はその説を拝聽しておるものでありますが、一応お聞きしたいのです。政府は、今回のメーデーの、警官に対して衝突をいたしました相手方を、暴徒だ、こういうような表現をしておるのであります。私はこの暴徒だということに対しましては、異議があるのでありますが、これはしばらくおきまして、もしも暴徒だという判定をいたしましたならば、そこに血を流して倒れておりましても、救護しないのが日赤の精神でありましようか。それとも、そういうことにかかわらず、やはり救護活動をするのが、日赤の精神でありましようか。この点も、たいへんくどくなるかもしれませんが、あわせてお伺いしたいと思います。
  79. 蜷川新

    蜷川参考人 暴徒ということにつきまして、御異議があるのはごもつともでありまして、私も大いに賛成でございますが、これはあとといたしまして、もしもここに内乱が生ずれば、政府としては、相手を暴徒と言うでありましよう。しかしながら、内乱にも、赤十字は必ず救護を出さなければならぬものです。内乱ならうつちやつておけという赤十字は断じてない。国際間の紛争でも同じことでして、共産主義だから助けないなんて、そんなへりくつはないです。どんな主義でもかまわない、人類がもとでして、人類を救うのですから。ですから、朝から晩までけんかしておるときに、ぼんやり見ているというのは、ほとんど人類の何ものたるかを知らぬ思想です。これを暴徒と言うに至つては、新聞も悪いのです。何ゆえに暴徒か。乱暴する者がみな暴徒なら、片方でこん棒を振うのも暴徒でしよう。私はそういう間違つた形容詞はいかぬと思うのです。これをもつて私の回答といたします。
  80. 苅田アサノ

    ○苅田委員 さらに蜷川参考人にお尋ねしたいのでありますが、きよう瀬尾職員組合組合長が、日赤の不正事件につきまして、いろいろ御陳述になつたのであります。また先日の委員会では、当の日赤社長伊藤氏が、この瀬尾氏の陳述は真実性がまつたくないものだといつて、ことごとく反対しておいでになるのでありますが、創立当時から日赤に御関係をお持ちになり、つい最近まで渉外部の顧問をしておいでになりました蜷川氏が、この間の事情につきまして、もし御存じでありましたならば、簡単でけつこうですが、御意見をお漏らし願えれば幸いだと思うのです。
  81. 蜷川新

    蜷川参考人 お答えいたします。私はむろん何もうそをつく必要はないのでありまして、伊藤さんのいろいろ言われている不法行為については、直接存じません、現場にいないのですから。職員組合はよく知つている。しばしば報告されましたけれども、一方だけで言つたものは、信用できません。信用しません。しかし、法律の問題となれば、私の頭で判断する。それは何だといいますと、伊藤さんが、自分選挙ではないのだ、ただ決定されたのだ、であるから、定款にはまらないので、自分の留任は適法だと言つている。今でも言つてるそうです。しかしながら、そんなことは断じて許されない。何となれば、定款改正以後の第一回の総会で、すなわち昭和二十二年一月にこの総会において赤十字社から総会次第書というものを私どもに配つています。今でも私は保存している、一般の人はなくしたかもしれませんが。何と書いてあるかというと、社長、副社長選挙とりつばに書いてある。それを時が経たからといつて伊藤氏は抹消したり、かえたりする権利は断じて持ちません。社長でもそうです。その当時の社長島津です。けれども島津はいい加減に片づけることはできません。そんなことをすれば、公文書の偽造になります。ですから、伊藤君がいくら言つたつて、私の持つてる材料によつて、たちまち消えてしまう。島津君は次の候補者を立てることに苦心しているということを聞いている。ちやんと持つている。ですから、あれは補欠です。補欠であり、選挙である。たといいかなる文句にせよ、それは法理上きまつているのです、社団法人ですから。それを逃げるためにごまかしているのですけれども、許されない、それはだめです。証拠があります。いわんや、法の上から、定款解釈の上から間違いないのです。それをもつて自白と正しいということは断じて許しません。裁判所でも、一審でも二審でも、そんな間抜けな判事はいないと私は信じます。法理ですよ。これだけお答えしておきます。  もう一つつていることは、赤十字というものは、金を非常に節約して来たものです。何となれば、人民の、浄財を集めて仕事をするから。ですから、すべて名誉職です。私ども多年いましたけれども、何ももらつていはしません。石黒さんは、あの人は賢明な人ですが、私に向つて蜷川さん、赤十字へ来たらば、うどん以上食つては行かれないとよぐ言いました。そのくらいです。その名誉職に、労働問題の盛んになつた今日ですから、昭和二十一年の定款改正のときに、向うでもつて社長、副社長に限り少し報酬を与えることということが出て来ましたから、まあ感心しませんけれども遂に賛成したのです。しかし、それは非常な例外です。ほかの人は、無給でなければいけないのです。しかも薄給でいいわけです。それをやつておるその人が、社宅を百何十万円で買つておる。そんなことは定款に反するのみならず、赤十字社として許すべきものじやない。それをごまかすために職員の社宅をつくつた。職員は有給で、片方は無給です。その無給の者が社宅を百何十万円出してつくらせるということは、許すべきことじやないのです。これは解釈の相違じやないのです。多年の赤十字の歴史から見て、確かです。これは、実に儉約して来たのです。日本ばかりじやない、どこだつて赤十字というものは無給になつておる。そういう次第ですから、その二点については、一昨年から私は耳に入れられて承認しております。その以外のことは、どうも片方の話で、対立させてみなければわからない。ですから、自分は承認するというわけには行きません。その点だけお答えしておきます。
  82. 苅田アサノ

    ○苅田委員 次に日本赤十字社理事松井参考人にお聞きしたいのですが、私もちようどあなたにお聞きしたいと思つていました問題を、今蜷川参考人がお話になつたわけですが、百三十万円で副社長の社宅をこさえたということでありますが、これは当然本社会計の中から出ておると思うのであります。これには、もちろん赤十字の事業をするのに必要なために集めた募金等の金が入つているかもしれませんし、そういう百三十万円もの金を使つて社長の社宅をつくるのだというようなことは、これはどこで決定されて、そういうようなことがどんどん進められているのか。そういういろいろな事業計画、多額な金を使う決定がどこでなされるかということを、ひとつお聞きしたいのと、それから、社宅のつくられました当時、私が仄聞しておるところによりますと、日赤本社は非常に財政上困つてつて、たとえば、本社の倉庫あたりが非常に雨漏りや何かいたしまして、当然修繕しなければならない。しかも、十何万という金でそれが直るところも、財政上の都合でできないような状態にあつたときに、百三十万円の社宅ができたというような話も聞いているのですが、そういう金のまわし方というものは、日赤理事として、どういうふうにお考えになつておるかということもあわせてお聞きしたい。
  83. 松井義重

    松井参考人 今の社宅問題ですが、午前中にも申し上げましたように、伊藤社長は、副社長になつて参りまして、厚生省の官舎に住んでおつたらしいのです。そこでどう言いますか、やはり赤貧的な立場でやつておられたということで、たくわえもなし自宅もないというので——しかし、それは募金やそういうような面からは、全然出ておりません。それは理事会の方へ出て来ましたのは、コーヒーを売却しましたお金のうちからそれをするということで、理事会の承認も経て、職員寮と副社長の社宅を買い、そうして二千円だと思つておりますが、家賃を二千円ずつ支払つておるように存じております。
  84. 苅田アサノ

    ○苅田委員 そうしますと、理事会としては、そういうふうにお金をおまわしになりますことは、赤十字の運営としてはあたりまえのことで、そういうふうにまわすことは、決して問題にならないというお考えをお持ちになつておりますかどうか、それが一つ。  あわせて私が先ほどお伺いいたしますときにも、当時赤十字は、あり余つた金を使つているのではなく、本社の倉庫なんかも、火急に手入れしなければならないものができなくて、あとまわしにして、まずそういう社宅をつくることに金を使われたということを聞いておりますのですが、そういうことはなくして、赤十字としては非常に資力も潤沢にあつて、そういう問題ができたのかどうかということをお伺いしたわけなんです。
  85. 松井義重

    松井参考人 それはおつしやいますまでもなく、募金によつてすべてやつております。ですから、あれは厚生省の官舎だということで、そういうこともしばしば理事会で問題になりましたので、募金というような面からは、全然これはタツチしてはいけないというので、今お話のあります金の運営といいますか、すべてそういうような面は、事務当局の方で、総務理事の方でよく練つても参りますし、われわれの方でも、是非曲直を判断いたしまして、これならばさしつかえないということで、理事会の決議で、すべて処理してやつておるような次第であります。
  86. 苅田アサノ

    ○苅田委員 どうも私のお尋ねしたことが、十分に答えていただけないのですが、それではこうお尋ねしてみましよう。今度新しい定款でもつて新しい社長が選ばれることになるのですが、もしこの社長がまた厚生省からでもお迎えするようになりまして、家がない方であれば、また社長の社宅というようなことも、当然あなた方の方ではお建てになつてもさしつかえない——つまり私が申しましたのは、そういうふうに赤十字の金を、今蜷川さんもおつしやいましたように、有給の職員でなくて、名誉職である社長や副社長の社宅を建てるようなことに使うということが、普通なお金の使い方であるのかということをお聞きしたわけです。
  87. 大石武一

    ○大石委員長 松井さんに申し上げますが、瀬尾君にも申したと同じように、この委員会は査問委員会ではございませんので、御答弁なさらなくても一向御自由でございますから、どうぞ……。
  88. 松井義重

    松井参考人 これは常識の問題でありまして、今の社長なり副社長が社宅がない、それで困つている。しかし金の出どころがない、一方は返さなければならぬ。さしあたり——これは見方によりますと、一個の財産ということになつて参りますわけで、浪費したという面におとりくださると、非常に遺憾に思います。そうして家賃もとつて、それがやはり本社の収益といいますか、その面を半面役立てておるような点もございますので、その場合と環境によつて赤十字の金自体をそういうものに出すのはいいか悪いか、こうおつしやられると、これは常識問題で考えて行かなければならぬ。そこで募金とかすべての点からこれを判定いたしまして、これは募金という面からでしたら、われわれは絶対に、出しません。けれども、コーヒーというような特殊のあてがわれた面からでありますし、そこでゆつたりして参りましたから、その点から出したということであります。これは理事会で相当練られた問題でございます。ですから、一応お尋ねになるのはごもつともだと思いますけれども、そういう程度でお答え申します。
  89. 苅田アサノ

    ○苅田委員 ただいま参考人がおつしやいましたコーヒーの問題ですが、このコーヒーは、何でも海外の方から赤十字の事業に使つてくれるようにといつて渡されたコーヒーであつて、このコーヒーの問題にからみ、何か不正の事件があつたというふうに聞いておるのでありますが、どういうふうな径路でそのコーヒーは——このコーヒーもやはり私が今申しましたように、赤十字事業に使つてくれるようにというので渡された物資であるよう承知しでおりますが、この点は違いございませんか。
  90. 松井義重

    松井参考人 コーヒーにつきましては、共同募金と売上げの面につきまして、利益をわけましで、そうしてそれを共同募金なら共同募金赤十字赤十字の方で使つております。お手元に差上げてあります中に、詳しく書いてあると思いますから、ごらんくださいまして御承知を願いたいと思います。
  91. 苅田アサノ

    ○苅田委員 それでは大体赤十字理事のお方の財政的な問題に対するお考え方というのがわかりましたから、この問題はあとでまた委員会で問題にいたすことにいたしまして、次に瀬尾副組会長にお聞きしたいのですが、ただいま私が松井理事との間に話しました問題につきまして、もし御感想がありましたら、なるべく簡単にここでお話を願いたいと思います。
  92. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 ただいまの社宅の問題でありますが、あの社宅を購入しましたのは昭和二十五年の五月であります。それで、そのときに、先ほど委員の方からお話がありましたように、日本赤十字社の救護の医療材料その他の消耗品の入つている倉庫二棟、また本社の正面玄関の上つたところ、これが雨漏りしておりました。倉庫の方はひどい雨漏りだつたような現状でありました。それでこれを何とかしなくてはならぬというので、関係者の営繕課長の方から見積りをとりまして、申請を出したところが、その見積額が十九万円でありました。それは二十五年の三月であります。ところが本社においては、今金がないから、何とかそこをがまんできないかというようなわけで、全然その修理はやりませんでした。そうしておりまして、次にすぐに社宅を百三十万円で買う、こういう話がありましたので、われわれは、それはもつてのほかだというわけで、それで組合も大会を開きまして、それに反対をしたのであります。ところが、本社においては、本社の塚原人事課長が私のところへ五回ほど来まして、何とかしてこの反対を撤回してくれ、こういう話でありましたので、私は自分でやつたのではない、職員組合大会の方で決定したのであるからというわけで、断りました。それで最後には、この家を買つてやらないと、伊藤社長やめるかもしれない。そうなつたときに、社としてはプラスかマイナスか、そこまで考えて、何とかこれを承認してもらいたい。こういうふうにして、塚原人事課長は泣きついて来ました。そういうような事情がありまして、十九万円の金を出して、本社の倉庫、本館を直すことができないでおるにもかかわらず、百三十万円を出して家を買つたという実情であります。  そうして、これは余談になりますが、その家を買つて喜んで引越したわけです。先ほど松井理事さんの方からもお話がありました通り、それで一家みな、その同士の人を集めて引越して行つたところが、そのうちは驚くなかれあの大正末期の世の中を震骸させた鈴弁殺しで有名なそのうちを買つてしまつたわけです。そのために関係者の方では、警視庁あるいはその他へ行つて、確かにそのうちかどうかということを確かめたところが間違いなかつた。それで、われわれ職員の間では、それごらんなさい、天罰てきめんではないかと申したわけです。副社長みずからがその部屋に寝て体験した。女、子供がやられたのじやない、三晩泊つて毎晩それをやられて寝ていられない。私まで体験したのである。これが自動車の運転手の告白でありますが、なお近所で聞いたところが、あのうちは鈴弁殺しのうちだよ——これは落し話じやありません、実際の話であります。こういうわけで、赤十字の金を使つたために、そういう天罰があつたということは争えない事実であります。それが当時の実情であります。
  93. 苅田アサノ

    ○苅田委員 それからもう一つ瀬尾さんにお聞きしたいのですが、私はこの前の委員会で、昨年の九月の社員総会で、瀬尾さんが入場を拒まれて愛宕署員に検束されたということが出ましたときに、そここおられました伊藤社長、後藤眞三男——これは総務局長ですが以下四人ほど日赤幹部がおいでになりましたのですが、そういうことを知らないというような御答弁で、なお確かめたのでありますが、だれも知らないといつておいでになるのであります。あなたは検束されて連れて行かれはしなかつたけれども、最初は三人の警官に手とり足とりで追い出されかけて、とにかく黙つているということで残つたけれども、五人もの警官がつき添つておつたということは、相当総会の場所をごたごたさせておつたに違いないと思うのですが、そういうことについては、日赤本社幹部としては全然御存じないような状況のもとに行われたのでございましようか。あなたの御判断で、それは本社責任のある幹部の人が確かに知つていなければならなかつたはずの事実があれば、それをひとつお話願いたいと思うのですが……。
  94. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 最初この問題は、先ほどもお話しましたように、私がそういう妨害を受けまして、ようやく入れましたところが、その事件当日の総会の会場の副係長、それは日本赤十字社の参事で監査室の係長でありました。その人が来まして、先ほどお話申しました通り、発言がある、やめてもらいたい理由というようなことを押問答しまして、どうしても私がやめないので、本社側の後藤常務理事が副社長と耳打ちして——私はここから向うの壁ぐらいの距離で見ておりました。そうしましたら、その次の上の人ですが、監査室の主幹であります鹿田一郎という人がやつて来ました。これは当日の会場係長でありますが、その人が来ましてやはり森田さんと同様なことを言つて、それでその人が、——愛宕署の警察の人は広瀬という警部補以下三名であります。その人たちに名前を聞きましたら、私は広瀬警部補だ、こういう話でありました。それですから、本社の当日の整理係は知つているわけであります。また社長、副社長がそれを知らないということは、司会者として怠慢である。私はそのために、今民事で争つているわけであります。
  95. 苅田アサノ

    ○苅田委員 前回の委員会に御出席になつておつた後藤常務理事が、そういう態度をおとりになつたということが、もしはつきりいたしますれば、私はやはり委員会でお話になつたことは、事実に相違する話がされたというふうに考えるのですが、これはなおはつきりいたしまして、その責任——少くともこれは委員会ではほんとうの話をしていただかなければ、私どもは何のために参考人をお呼びしているかわからないのですから、あとで問題になろうと思います。  それから、もう一つ松井理事にお聞きしたいのですが、ただいま瀬尾さんの話では、社宅を買つてあげないと伊藤社長がやめられる、伊藤社長にやめられると、本社の事業がプラスかマイナスかというような大きな関係を持つているというのでありますが、なぜ伊藤社長一人を引きとめなければならないのか。百三十万円もの社宅を建てても、伊藤社長に留任していただかなければならないような理由が、当時の日本赤十字社にあつたのかどうか。私は、当時の日本赤十字社といたしましては、百三十万円の支出は、相当大きな支出であると思うのです。この点は、瀬尾さんの話が間違つておれば、間違つておるとおつしやつてよろしい。そうでなければ、それほどまでにしても厚生省から迎えた伊藤社長は重要な人物であつたかという、その理由をお話し願いたいと思います。
  96. 松井義重

    松井参考人 今瀬尾君からそういう話を聞いて、塚原君やみながそういう話をしたというようなことは、初耳なんです。われわれの方としては厚生次官の官舎を明けなければならぬ。早く返さなければならぬ。また各病院にも院長社宅があるし、伊藤社長は非常に清貧な人で、たくわえもなしというような面を聞き、というて、この金を赤十字募金の方方ら持つて行くようなことは、とてもできないというので、時期を待つておりましたら、先ほど申しましたコーヒーの問題がありましたので、そこでそれではひとつ何しようということで、理事会できめたようなわけであります。
  97. 苅田アサノ

    ○苅田委員 もう一つ松井理事にお聞きしたいのは、瀬尾さんのきようの陳述でも、日赤厚生省とは非常に深い関係があつて、始終厚生省役人たちが日赤に来て、飲んだり食つたり、麻雀をしている。特に一昨年の九月十三日でしたか、夜半の二時ごろにやつて来て、八名でたたき起して、食堂からいろいろな飲みものをとらせてビールを飲んで、そうして麻雀のかけ代だけでも、ある期間をお限りになつようですが、二十四万円も日赤本社が負担しているというような、重大な発言があつたわけなんですが、こういう事実を、理事としてお認めになるでしようか、どうでしようか。
  98. 松井義重

    松井参考人 これを聞きますのは、今初耳でありまして、これは瀬尾君が私の性格をよく知つております。こういう問題を聞いて、私は黙つておりません。帰りましたら、さつそく調査いたします。
  99. 大石武一

    ○大石委員長 青柳一郎君。
  100. 青柳一郎

    青柳委員 赤十字社の非違をいたずらに摘発して、これを審査し、あるいはこれを検討するというようなことは、われわれの委員会では、取上ぐべき問題ではないと私に思うのであります。従いまして、私は本日は参考人の方々が御陳述になりました内容のうち、赤十字社のあり方についての問題をめぐりまして、三、四簡單に御質問をいたしたいと存じます。  まず第一に、私が取上げなければならない問題と考えますことは、現在の朝鮮事変におきまして、先ほど蜷川先生の御陳述に、国連軍であると共産軍であるとを問わず、いずれの軍に対しても救恤を行うべきであるというお話でありました。いかにも私どももさようには考えるのでございますが、まず第一番目に松井参考人に承りたいのは、現在国連軍に対して、日本赤十字はいかなる救恤を行つておられます。か、その点につきまして承りたいと存じます。
  101. 松井義重

    松井参考人 救恤と申しますと…。
  102. 青柳一郎

    青柳委員 救恤という言葉が悪いかどうかは、私はわからぬのでございますが、先ほど蜷川先生の御陳述の中には、救援という言葉を使われたのであります。たとえば国連軍の将兵について、その傷病の手当をするとか、あるいは血液の問題、いろいろあると思うのでございますが、どの程度のことを打つておられるかを伺いたいのであります。
  103. 松井義重

    松井参考人 これは本社及び全国の合支部に、昨年も国連軍を慰問するというようなぐあいで、お金を集めまして、そうして傷病兵の慰問に対してあらゆる面から、たとえば病院慰問であるとか、あるいは病人をある一定のところに招待をして慰安をするとかいうような建前で、そういうことを全国各文部を通じていたしております。
  104. 青柳一郎

    青柳委員 ただいまは慰問だけについてお話がありましたが、慰問だけでございましようか。
  105. 松井義重

    松井参考人 その他いろいろやつておりますので、その点につきましては、文書をもちましてお答えしてはいかがかと思います。
  106. 青柳一郎

    青柳委員 けつこうでございます。日本赤十字社で国際連合軍に対して行りておると同様なことを、北鮮軍すなわち共産軍に対して行うべきであるかこうかということにつきましても、御意見を承らせていただきたいのと、実像にそういう努力をしても、それは現実に行い得ないのであるかどうかというような点につきましても、承りたいこ存じます。
  107. 松井義重

    松井参考人 実はあの勃発当時、赤十字はすべてをやらなければならぬ、南の方はもちろん、北の方もあらゆる手を養してやらなければならぬということは、われわれの理事会でも決議いんしております。決議文にはつきり出しおります。
  108. 青柳一郎

    青柳委員 私も南北両軍を問わず、赤十字の本来の事業を一律平等に行うべきであると存ずるのでございますが、私客観的に国際的の情勢を観察するのに、共産軍に対してその手を伸ばそうとしても、伸ばし得ない事情にあるのではないか、こう思うのでありますが、その点についての実情を承知いたしたいのであります。
  109. 松井義重

    松井参考人 お説ごもつともであります。南の方へはずいぶん参りました。北の方についてどうしたらいいか赤十字本来の使命としてはほうつておくわけには行かぬ。では中共や満洲に行くか、中共、満洲はぐあいが惡い、こういうことで、理事会でしばしば慰問ということについて、等閑に付してはいないので、赤十字本来の使命としてやらなければならぬということで、論議されておる。その方法、手段については考究しました。しかし、万策を養して行つて届かないということならば、われわれの方では、氣持だけでも赤十字はやつているということが表現できるのじやないか。これも理事会のたびに話題になり、議事録にも載つておる。そうして理事会の議事録はちやんとございますから、もしその部分が御必要であるならば、提供してもいいと思います。
  110. 青柳一郎

    青柳委員 どうも松井参考人は、私の申し上げることを慰問だけに限つて、お答え願つておるのでございますが、慰問だけでなくて、血液の提供にいたしましても、傷病者の看護にいたしましても、ただいま松井参考人は、慰問という言葉で表現せられましたが、全部それを含むものと解釈してよろしいのでございましようか。
  111. 松井義重

    松井参考人 精神上よりも、また物質上よりも、あらゆる面において、赤十字としては手の及ぶ限りやつてつておるはずでございます。
  112. 青柳一郎

    青柳委員 次に、これは共産党の苅田君は触れなかつた問題ですが、未復員者の帰還促進に関する問題でございます。先ほど蜷川参考人は、捕虜救恤という言葉を使われました。捕虜救恤をやるのは日本赤十字の本来の任務だ。しかし捕虜の送還を促進する仕事赤十字がやるのは、それは政治的な問題であつて赤十字本来の任務を逸脱する不法行為である、こう言われたと私は思うのであります。私はこの点につきまして、まず松井参考人はどういうお考えを持つておられるかにつきまして、承らせていただきたいと思います。
  113. 松井義重

    松井参考人 これは実際問題におきまして、戦争に出ております赤十字看護婦で、まだ帰つていないのは、数は約三百何ぼと思いましたが、的確な数字はわかりません。これすらわれわれといたしましては、完全に帰つて来てもらうということがまず第一。ひいて、やはりそういう面につきまして、昨年でしたか、社長がジユネーヴの会合に行きまして、あらゆる連絡をとつて帰還し、また向うに抑留されておられる人の手紙の取次ぎというようなものも、これは赤十字の当然なすべきことだということで、あらゆる面でやつておるはずでございます。
  114. 青柳一郎

    青柳委員 社長が、日本赤十字社看護婦のうち、まだ中共あるいはソ連に抑留せられておる気の毒な人々の帰還を促進するという働きを行うことは事の当然であると私は存じます。先ほど蜷川先生の言われた問題は、その他の中共、ソ連に抑留せられておる日本人の帰還促進を行つたことがけしからぬ、こう言うのであります。この点について御意見を承らせていただきたい。
  115. 松井義重

    松井参考人 赤十字は博愛、奉仕、協力という建前で、当然手を伸ばすべきものは、一個の自我の立場でなくて、あらゆる面に手を伸ばしてやるべきが当然でないかと考えます。
  116. 青柳一郎

    青柳委員 私は、それでは次の問題に移ります。先に蜷川参考人にお尋ねいたします。先ほどこういうお言葉があつたのであります。看護婦の養成、あるいは病院をもつて看護婦の養成をする、あるいは必要な材料を準備するのは戦争の準備行為である、こう言われました。共産党の苅田君はこれをとらえて、それは憲法違反である、こう言われておるのであります。先生は、そういう準備行為を行うことが、日本赤十字仕事を非常に逸脱して、しかも戦争の準備であるという点から、憲法の第九條に違反すると思われますか。
  117. 蜷川新

    蜷川参考人 お答えいたします。アンリ・デユナンが一八六三年に赤十字を提唱しました時分に、ジユネーヴへ帰つていろいろ言つた中に、お互いに将来ヨーロツパにおいては、また戦争があり得ると思う。そのときにソルフエリーノの戰いのような悲惨事が起つてはいかぬ、だから、ふだんから何か衛生員の養成をしようじやないかというのが彼の打出しであります。そのことか今日までずつと博わつて来たのです。ですから、本来の目的は、病院を置いて看護婦を養成して物品を整備するということは、戦時のときの準備であるということは明白であります。それが日本の憲法が改正されましたから、日本赤十字は全然戰争に関係はない。その点については改正時分に相当に私の意見を述べたものです、俘慮に関してもやらなくちやいけないとまで一時は言つたくらいです。とにかく、ただいまは惰勢で病院ができております。その病院でやつておるのは、必ずしも戦争の準備だと私は断言することはできぬと思います。それは病院経営で、病院はやりそこなつてはいけないのでして、収支決算が償わなくちやいけないのです。看護婦も置かなければならず、薬品も置かなければならぬ。それは病院そのものの経営であつて、戦争の準備ではないと言うことができる。だから、それだけのことで憲法違反となる理由はありません。
  118. 青柳一郎

    青柳委員 今のお答えによりまして、結論的にお尋ねいたします。日本赤十字社は、将来あるかもしれない戰争の際に、その戦争で倒れた傷病兵などを戦地において治療するというようなことは、いけないという御意見でございましようか。
  119. 蜷川新

    蜷川参考人 それは国際的に国内的に、災害があれば救つてやる。これも一種の苦痛の軽減でありまして、これはむろんやらなければいけない、やつちやいけないなどと言つては、私は赤十字原則を知らない人間になつてしまう。まさか私はそんなことはできないと思います。
  120. 青柳一郎

    青柳委員 そうなりますと、結局日本赤十字社病院を持ち、看護婦を養成し、また必要な資材を整えるということは、平時において事態に即応し得る態勢も整えるし、戰争の際には国のいかんを問わず、その戰傷者に対してあたたかい手を伸ばすべきである、こういう仕事を現在も準備し用意することは適当である、こういうお考えであると存じますが、よろしゆうございますか。
  121. 蜷川新

    蜷川参考人 それはよろしいのです。けれども一つ答えたいのは、戰争をするとは私は思つていない。どこで戦争をするのですか、私の方から逆襲しなければならない。
  122. 青柳一郎

    青柳委員 私は日本が再び戦争すると申したのではありません。どこの国で戦争がありましても、日本赤十字社は行き得る態勢を整うべきである、こう述べたかつたのであります。そういたしますと、先生の御所見によりますと、看護婦の養成、病院の設置、あるいは必要なる資材を整えておくことは、憲法違反でなしということははつきりするのでございますね、よろしゆうございますか。
  123. 蜷川新

    蜷川参考人 はい、よろしゆうございます。
  124. 青柳一郎

    青柳委員 次に、メーデーにおきまして、メーデーが騒擾事件であつたということになつております。このメーデーにつきまして、日本赤十字社が発動をしなかつた点を、蜷川先生は鋭くつかれたのであります。発動すべきであつたのに、発動しなかつたとなりますれば、これは赤十字社責任であると存ずるのであります。松井参考人の御意見を承らせていただきたいと思います。
  125. 松井義重

    松井参考人 これは五月一日は私はこちらにおりませんでして、午前中も述べられましたが、こういうことを赤十字が知つておつたならば等閑に付してはいないだろうと申しますのは、数日前の理事会でも、災害とかいろいろなことが生じたときに——これは二時間に一回ぐらいの割合で災害が生じて来て、おるということでございますので、これは赤十字が知つておつたならば、決して等閑に付してはいないということを申し上げます。もし等閑に付しているようなことがありますれば、これは赤十字社の立場として、当然処置をとらなければならぬ。
  126. 青柳一郎

    青柳委員 そういたしますと、この事件が発生しましたことは、その当時の赤十字社は知らず、また何らの通知、要求もなかつた、こういうふうにとつてよろしゆうございますか。
  127. 松井義重

    松井参考人 私はこの件については、冬部門から詳しく聞いておりません。ですけれども、もしあるいはこれで出ているかもわかりませんので、それは局部々々の病院の近くでやりましても、どこでやりましても、こういうような面について関知しておりましたら、等閑に付していないということをはつきり重ねて申し上げます。
  128. 青柳一郎

    青柳委員 最後に瀬尾参考人に承りたいのであります。瀬尾参考人は、先ほど募金のことにつきましてお触れになりまして、二十三年におきましては、募金した金のうち、赤十字本社に納められた金は、その金のうちのたつた二〇%にすぎなかつた。二十四年におきましては、たつた一六%にすぎなかつたと言われたのであります。これらの点につきましては、いずれ機会を見て調査の資料をお出しになるということに相なつておりますが、何とぞ調査を出されます際には、その調査の根拠をはつきりと明示していただきたいと思いますが、いかがでございましよう
  129. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 その点は、はつきり明示して提出したいと思います。
  130. 大石武一

    ○大石委員長 金子与重郎君。
  131. 金子與重郎

    ○金子委員 先ほど来各委員から、いろいろ参考人に対して質問があつたのでありますが、私は本委員会が、本日参考人に御苦労願いまして、赤十字の各般の、主として過去の問題につきまして陳述していただくという、その目的といたしましては、今ここに日本赤十字社法というものを制定すべきかいなか、どういうふうにすべきかというような段階に入りまして、今後の新しい法人をつくる、その参考としての御意見、そういう意味から私は聞いておると思います。そこで、私は今までの陳述の諸点は、各委員からお伺いがありましたから、その点には触れませんが、各参考人から、この問題はお答え願いたいのであります。皆様方は、過去労組の立場で働かれた人、あるいは顧問の立場、あるいは現職の立場、こういうちようど三つの立場から参考人がおいでになるのであります。そこで、今後日本赤十字社というものは、その性格として、どういうふうな形の法人として将来進むことが一番いいか。これを註釈いたしますと、たとえば、社会福祉事業を主体にやるならば、今は社会福祉法人という一つ法律がある。その上に赤十字独特の事業があるとするならば、現在は社団法人ですが、それをどういうふうな特殊法人の方向に持つて行つたらいいかという、概念でよろしゆうございますが、まず第一にそれを各参考人の方からお聞きしたい。  それから第二には、ただいまるる陳述がありました中の、問題点をお聞きいたしますと、役員の人格の問題にも非常に、影響を持つようでありますし、あるいは経理の運び方にも問題があるようでありますし、あるいは組織の面にも問題があると思うのであります。そういうような問題をひつくるめて、今後赤十字社という法人を新たに国家が制定するならば、どういう点とどういう点にどうしても考慮を払わなければならないかということについて、今ここでお気きになつている範囲で、簡單でよろしゆうございますが、要点だけを箇條的にお述べ願いたいと思います。そして私どもが今後この法律審議、あるいは制定する上にあたつての参考にさせていただきたいと思います。こういうことを、まず松井さんから順次御意見を伺いたいと思います。
  132. 大石武一

    ○大石委員長 ごく簡單に要点だけお述べ願います。松井君。
  133. 松井義重

    松井参考人 申し上げれば非常に長くなりますが、今お尋ねの点は、ちようど法案提出の理由の説明書と、それから赤十字法案として出ておりますから、それをごらんくださいましたら、非常にけつこうだと思います。
  134. 蜷川新

    蜷川参考人 私の意見は、憲法がこのままである間は、今の定款でたくさんだと思います。定款は戦争はないというところからかえて来たのです。今になつて特別法人にする何の理由もないのです。今ちよつと読んでみますと、役員を任命式にしようというだけの話です。それはいけません、専制主義にもどるのです。そんなことは、今はよけいなことでして、いよいよ日本が軍備をやつて、憲法を改正するそのときになつた場合に伴つて赤十字の改正は必要でしよう。しかし今はその必要は絶対にない。中に欠点のあることは、申し上げれば長くなりますから、御要求があれば申し上げてもいいですが、それはよろしゆうございますか、いかがですか。
  135. 金子與重郎

    ○金子委員 そう長いことはいりませんが、現行法の欠点の一番大きなものに対して、二、三お述べ願いたいと思います。
  136. 蜷川新

    蜷川参考人 それでは申し上げます。赤十字社の一番の欠点は、臨時給会を開くことができないという点です。それは千三百万人という多数の社員があるにかかわらすその十分の一を集めて来なければ、臨時総会の要求ができないのです。だからこれはできつこないのです。ですから、どうしても、万分の一くらいにかえる必要があります。これはデモクラシーにするための最も要点であります。かえる時分に、私はむろん異議を言つたのですが、つぶされてしまつたのです。もう一つは、評議員理事とかいうものの数が多い。しかもその評議員の多数は、議長が選定するのでして、御用議員です。これは旧憲法の勅選議員のまねなんです。これじやとうていだめなんです。議長、副議長はかつてなことができる。ですから、初めからこれも不賛成でしたが、やはり通してしまつた。この二点が最も欠点です。そのくらいでよろしいですか。
  137. 瀬尾正吉

    瀬尾参考人 現在の日本赤十字社定款で、たくさんだと思います。ただこれを運営する人にあると思いますから、この人の問題をはつきりと、この定款従つて民主的にやつていただきたい。それで先ほども申し述べましたように、字句の問題ですが、社長、副社長総会において決定するというよう文字を使つてありますが、これをはつきり選挙というように改正していただいて、それで民主的に運営して行つたならば、現在の赤十字でたくさんだと思います。
  138. 大石武一

    ○大石委員長 それでは委員長から参考人にお願いがございます。松井参考人に対しては、麻雀事件の真相を御報告願いたいと思います。それから瀬尾参考人に対しては、松谷議員より要求がありました十四箇條の問題、それから募金の費途に関する書類での御報告を願いたいと思います。  参考人にはまことに御苦労様でした。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十九分散会