○慶松
政府委員 この新薬が新聞紙等に出ましたのは、二月の末でごく一部の新聞紙に出たのでありますが、それがさらに各日刊紙等に麗々しく報道されましたのは、三月の七日、八日ごろであ
つたと存じます。そこで、私
どもといたしましては、この点を相当重要視いたしまして三月の十一日に、厚生省として新聞発表をいたしたのであります、その
意味は、この新薬につきましては、いまだ何ら学問的な発表がないのであ
つて、ただ單に新聞のスクープによるものである。
従つてこのものに対しての過信、あるいはその入手に狂奔されることについては、どうか愼重であ
つてほしいというような
意味の新聞発表をいたしたのでございます。と同時に、これを厚生省としていかに取扱うかということにつきまして、関係
局長間において、次官を中心といたしまして協議いたしました結果、三月二十七日に、このものに対しましての第一回の協議会をや
つたのであります。すなわち、この品質に関しまして造詣の深い薬学者、あるいは結核に対しまする細菌学的基礎的な単音及び結核の臨床の大家、これらの人々に参集を求めまして、そうしてこの薬の化学的な
基準あるいはこの薬を細菌学的にいかに取上げるか、あるいは毒性をいかにして見るか、さらにこれを臨床的に実験いたしますには、いかなる
方法をも
つて行うかということ等を検討いたしたのであります。すでに、その以前におきまして、厚生省国立衛生試験所におきまして、この薬の大体の
基準をつく
つたのでございます。と申しますわけは、この薬は、すでに御承知の通り、相当昔つくられたものでありまして、そのものの化学的な性質というものは、過去の文献その他によ
つてわか
つておるものでありまするし、またその製法から申しましても、大体二つの製法しかありません。一つの
方法、すなわち簡単に申しますと—多少学問的になりますが、石炭タールの分溜してありますところのピリヂンというものを原料といたしますときは比較的純粋なものがとれるということが字間的にわか
つておりますので、その原料の点につきましても、検討の結果、大体の
基準をつく
つて、これたその機会に学者たちの検討にまかせたのであります。その際に、このものの毒性試験あるいは細菌学的な試験、あるいは臨床試験をいかなる
方法でやるかということは、厚生省にすでに設置されておりますところの結核療法研究協議会なるものにこれをまかせるということにな
つたのでございます。なお、化学的ないしは薬学的な点につきましては、それらの学者の協力を別途求めるということにいたしたのであります。次いで四月四日に大阪におきまして開かれました結核学会を機会といたしまして、その際に、ただいま申しました結核療法研究協議会が開催されまして、そこで、いかなる病院においてこの実験を行うか、あるいはいかなる
方法によ
つて毒性試験あるいは細菌単的な試験を行うか、さらにいかなる人々にこれを担当してもらうかということ等が検討されまして、それが新聞に発表された次第でございます。さらに一方この製造に関しましては、いまだ厚生省に対しましてこの結核の新薬の製造に関して出願しておりますのは一社しかございませんが、しかしながら、すでに十数社がこの計画を立てておる。また事実、試験的にその製造をや
つておるのでございます。そこで、一方私
どもといたしましては、これらの製造会社に対しまして、一つの警告を発したのでございます。それが私の記憶では四月の十日過ぎだ
つたと
思つておりますが、それは、この結核に対する効果について、まだ十分にわか
つていない、
従つて、その点についても十分愼重なる態度をも
つてその製造を企画しなければならないということ、かつその原料に関しましては、先ほど申しました原料は、国産のたとえば製鉄会社等で産出されます原料で十分間に合うがゆえに、この原料の買いあさりによ
つてその価格をつり上げることを、極度に警戒すべきであるということ、あるいはさらに、このものは外国においてもつくられておるがゆえに、将来外国においてこのものが認められた際には、輸入ということも
考えられる、
従つて、その生産についても十分考慮すべきであるということ、また一方、もしもこの薬が結核に十分使い得るということが
はつきりしたといたしましても、その需要量というものは、全体から見まして大体私
どもの
考えでは六千キロないし七千キロぐらいであると
思つております。そこで非常にたくさんの会社がこれをつくるということは、結局
費用の点においてもむだになるということ等の警告を発したのであります。なお一方、試験のために薬をつくりますことは、これはひとり結核の薬のみならず、いろいろな薬につきまして、試験のために研究の結果できました薬を試験的につくることは、各製薬会社で、これは世界的に申しまして、
行つておる次第でございますが、しかし、それはいまだ薬として認められる以前のものであります。そこでこれをどう取扱うかということにつきましては、すでに私
どもの方で検討いたしまして、通牒が出してあるのであります。それは結核新薬に限らず、一般的に出してあるのでございますが、それには、試験的に薬を製造いたしまして、そうしてその試験例を求めるために
医者あるいは病院等にそれを送る際には、記録を
はつきりしておいて、そうしてまた、われわれの方からその記録の提出を求められた際には、十分
はつきりしておくことと、それから原則といたしまして、金をとることはいけないというようなことが通牒してあるのでございますが、重ねてその涌牒の喚起を求めまして、ことにこの新薬に関しましては、先ほど申しました結核療法研究協議会において選ばれた機関において、これの試験が行われるようにということを申しまして、かつ、それらにおいて行われますところのものに関しましては、あらかじめ国立衛生試験所におきまして検査をいたしましてそうしてその国立衛生試験所の検査結果をつけた品をも
つて研究してもらう。すなわちその検査結果には、いかなる不純物が入
つておるか、またいかなる
程度の純度であるかということ等が、化学的に
はつきりしたものをも
つて試験をしてもらうということにな
つておるのでございます。なおこの薬の輸入に関しましても、すでに輸入の申請がございます。と申しますわけは、これはお聞き及びかと存じますが、最近日本においてわかりましたのは、アメリカにおいて研究され、アメリカにおいて発表されたかのごとく言われておりますが、一面すでに欧州におきましては、これが三隻則からも研究されておるということも、欧州からの通信でわか
つておるのであります。従いまして、ヨーロツパのスイスあるいはイギリス等の製薬会社においては、すでにこれをつくりまして日本への輸入を試みておるものがございます。なおアメリカの製薬会社におきましても、試験品をつくりまして、日本に見本品等を輸入せんと試みておるものもございますから、従いましてそれらのものにつきましても、これを十分—もちろんこれを輸入しますには、たとい見本品でも、厚生省の承認を求めなければなりませんので、承認いたすといたしましても、その配付先については、嚴重なる私
どもの監督下ないしは目の届くようなふうにいたすべく、連絡いたしておるのでございます。しかし、一面ただいま岡委員から御指摘がございましたように、すでにこういうものが出ますと、どうしてもやみにおいてこれを入手せんとする人々ないしは当然人情といたしまして、結核に悩むような人々は、わらをもつかみたい気持で、やみでも何でもいいから手に入れたいというようなことも、当然起
つて来るのであります。すでに一部におきましては、その現象が出ておらないとは言い切れない点がございます。それに関しましては、私
どもは、少くとも国産メーカーに関しましては、ことに私
どもの方にわか
つておりまする限りのメーカーにつきましては、その配付に関して、十分厚生省に連絡するように、厳重に申しております。また輸入品に関しましては、ただいま申しましたような措置をとりつつある次第でございます。
以上、大体今日までの経緯と、私
どもが
考えております点を申し上げたのでございますが、なおこのものの効果その他に関しましては、むしろ
山口局長がお答えすることが正しいか存じます。