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1952-04-03 第13回国会 衆議院 厚生委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月三日(木曜日)     午後三時三十二分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 金子與重郎君    理事 岡  良一君       逢澤  寛君    稻田 直道君       小平 久雄君    高橋  等君       田中  元君    玉置 信一君       寺島隆太郎君    松永 佛骨君       松井 豊吉君    若林 義孝君       柳原 三郎君    堤 ツルヨ君       苅田アサノ君    青野 武一君       寺崎  覺君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         厚生政務次官  松野 頼三君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君         引揚援護庁次長 田辺 繁雄君  委員外出席者         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君         專  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 四月三日  委員新井京太君、小玉治行君、長尾達生君、星  島二郎君及び堀川恭平君辞任につき、その補欠  として小平久雄君、玉置信一君、若林義孝君、  稻田直道君及び逢澤寛君が議長の指名で委員に  選任された。     ――――――――――――― 四月二日  母子福祉法制定請願福井勇紹介)(第一  八四四号)  国立登別病院存置への請願小平忠紹介)(  第一八四五号)  あんま、はり、きゆう及び柔道整復師免許制  度存続等請願鈴木仙八君紹介)(第一八四  六号)  同(世耕弘一紹介)(第一八四七号)  同(金子與重郎紹介)(第一九〇〇号)  国立鳥取病院存置請願足鹿覺紹介)(第  一八六八号)  国立山形病院存置請願外一件(松浦東介君外  一名紹介)(第一八六九号)  戰傷病者戦没者遺族等援護法案適用範囲拡大  に関する請願金子與重郎君外一名紹介)(第  一八七〇号)  狂犬病予防法の一部改正反対に関する請願(田  中啓一君紹介)(第一八七二号)  復員船東豫丸沈没による死亡軍人遺族援護に  関する請願關谷勝利紹介)(第一九〇一  号)  理容師美容師法存続等に関する請願高橋等君  外二名紹介)(第一九二八号)  元軍属の援護対策確立に関する請願前田榮之  助君紹介)(第一九三〇号) の審査を本委員会に付託された。 同日  厚生省薬務局存置に関する陳情書外一件  (第一一三  四号)  同(第一一  三五号)  国民健康保險に対する国庫補助金の増額に関す  る陳情書(  第一一三六号)  附添婦制度改悪反対に関する陳情書  (第一二三七号)  遺族補償に関する陳情書  (第一一三八号)  戰没船員遺族援護に関する陳情書  (第一一四〇  号)  戰争による未亡人会援助に関する陳情書  (第一一四一号)  更生資金予算復活に関する陳情書  (第一一四二号)  簡易水道施設国庫補助に関する陳情書  (第一一七一号)  四国横断道路早期完成と忽那七島を国立公園  に編入に関する陳情書  (第一一七二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  戰傷病者戦没者遺族等援護法案内閣提出第六  六号)     ―――――――――――――
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  戰傷病者戦没者遺族等援護法案議題とし審査を進めます。
  3. 金子與重郎

    金子委員 議事進行について――きようは午前十時の開会のはずでありましたけれども、自由党といたしましても、また野党連合といたしましても、原案に対する修正の問題が出まして、晝ごろになりまして自由党の方の修正案オーケーが参りまして、本日その修正によつて会議が進められると思いますが、野党連合修正案オーケーがまだ参つておりません。一応どういう点がいけないかということに対して今交渉中でございますので、もしでき得るならば、この問題をはつきりさせまして、しかる後にこの審査に入ることが望ましいんじやないか、こういうふうに思いますので――応私から委員長にお願いいたしまして皆さんにお諮り願いたいと思います。
  4. 大石武一

    大石委員長 速記をとめて。     〔速記中止
  5. 大石武一

    大石委員長 速記を始めて。  ただいま金子委員より、審議をしばらく待とうという動議がございましたが、これを採決に付したいと思います。金子君の動議に御賛成諸君起立を願います。     〔賛成者起立
  6. 大石武一

    大石委員長 起立少数。よつて金子君の動議は否決されました。  本日、高橋等君より、自由党を代表して本案に対する修正案が提出されました。これは印刷物として諸君のお手元に配付してある通りでございます。これより本修正案についての趣旨弁明を求めます。高橋等君。
  7. 高橋等

    高橋(等)委員 私は自由党を代表いたしまして戦傷病者戦没者遺族等援護法案に対しまして修正意見を申し述べたいと思います。  その修正のおもなる点をまず申し上げますと、政府提案理由説明にもありますように、本法は、国家補償精神に基いて援護を行うものとするということであります。戰争行為を強制せられまして、そうして犠牲を受けました人々に対しましては、国家補償をなす責任があるのであります。従いまして、本法目的、すなわち第一條に、国家補償精神に基き援護をなすことを目的とすると「国家補償精神に基き」ということを加えまして本案目的はつきりとさせたいと考えます。これが第一の修正点であります。  次に、遺族一時金につきましては、政府といろいろと質疑をかわしております内容の中に、弔慰のためという意味が非常に多分に含まれておる、こういう説明を承つておるのでありますが、われわれはこの遺族一時金は、弔慰金と解釈をいたしたいのであります。従いましてその遺族一時金の規定をいたしております三十四條の規定に、遺族一時金を支給するということに対しまして「弔慰のため、遺族一時金を支給する。」こういう目的を加えたいと考えます。さらに、遺族一時金について、第三十五條にいろいろな制限ができおります。ことに、その支給範囲は、租父母までとなつておりますが、これを兄弟姉妹にまで拡張すること、また戦没者によつて生計を維持し、またはその者と生計をともにしていたものという、こういう條件を削除いたします。また子、孫につきましては年齢制限を撤廃をいたします。及び夫は不具廃疾等の夫に一時金を支給することになつておりますが、こうした條件を削除いたします。そうして遺族年金を受取る人の範囲を拡張いたすために、三十五條をただいま申し上げました点において修正をいたしたいと存じます。  次に、四十三條の遺族年金につきましては、これは全額を一時に支拂うこと、従つて拂い規定でなしに、これを前拂いできるというようにいたします。しかし、これは昭和二十七年度に限つて規定であります。また年度の途中で権利を獲得した人には、月割計算を行いますが、そうでない場合には、これは権利を喪失せる者には、支拂いました年金を返還さす義務を二十七年度に限つて免除する、こういうようにそれぞれ附則を改めたいと考えます。  次に、十四條、十五條につきまして、障害年金遺族年金については、三年以上の懲役に処せられた場合、在職期間内における職務に関する犯罪によつて禁錮以上の刑に処せられた者等につきましては、受給権消滅をいたすことになつております。しかし、これは消滅でなしに、その刑が済みますまでの間はこれを停止するということが適当であるので、そのようにこの変更をいたしたいと存じます。なお遺族一時金につきましては、戰没者戦没後本年四月一日までの間に、三年以上の懲役等に処せられました場合におきましては、一時金を受取る権利消滅をいたすことになつておりまするが、これは四月一日現在で、刑の執行せられておりません場合、それまでに刑が済んでおるような人には、これを消滅させないで一時金を支拂うということに修正をいたしたいのであります。  次に、二十七條規定で、障害年金受給者が、その障害年金を受ける事由によらずに死亡いたしました場合におきまして遺族年金限度を二万四千円といたしております。しかしこの二万四千円は六項症を限度といたしておるのでありますが、実際に障害年金は一項症から六項症まであるのであります。従つて、その生前に障害年金を受けていた額の範囲内を限度といたすことが適当であろうと考えましてそのように修正をいたしたいと存じます。  さらに、遺族一時金の受取人につきましては、お手元に表が差上げてありますが、第三十六條の関係であります。常時戦死者葬祭をなすものと推定せられる者を優先せしむる、それとともに、その他の者につきましても順位を繰下げまして、兄弟姉妹までの範囲においては支給を受け得ない者がないように措置をいたしたのであります。従つてここで、たとえば配偶者の中で遺族婚姻をした者、あるいは遺族養子となつた者、あるいは夫の氏のまま婚姻をした者等につきましては、これは普通の婚姻をしない、あるいはまた養子縁組をしないで戦死者同氏のままでおります配偶者と同じ順位にいたしましてこれらの者に一時金を支給する道を開いたのであります。子、父母祖父母あるいは兄弟姉妹につきましても、同氏のまま婚姻せる遺族養子となつた者等についても同じであります。ただ、ここで條文的に申し上げますと、同氏のままで婚姻をせる者という場合におきまして死亡した者と親族関係にあることを條件といたしております。従いまして、子供がもし氏が同じでありましても、親の氏を名乗つておらない場合は、これは同氏のままとは見なさないわけであります。他の同じ、たとえば山田でありましても、親からの氏の山田名乗つている場合と、他家に参りまして山田名乗つている場合とは、そこに條文的にはつきりとした区別をつけてあるのでありまして死亡した者と親族関係にあることを條件といたしております。その点を一言づけ加えておきます。なお兄弟姉妹につきましても、配偶者婚姻をせる者、また子供及び孫については、母親とともに実家に入籍せる者も、順位をそれぞれ普通の子あるいは普通の兄弟と同じような順位にいたし、広く戦死者葬祭をなすものと推定せられる者を優先せしむることにいたしたのであります。なおその他、たとえばそれ以外の配偶者、子、孫、父母祖父母兄弟姉妹につきましては、それぞれ配偶者、子、父母、孫、祖父母兄弟姉妹順位によりまして、これらの者の次順位として一時金を支給いたすことといたしまして、兄弟姉妹までの範囲内においては支給を受け得ない者がないように措置をいたしたのでありまして、これは弔慰金性格から考えますと、当然の修正と申さねばならないのであります。  次に、この遺族一時金は公債でありまして、その利子は大隊後拂いが原則でありますが、六年もの長い間、何らの給與なしに過しました遺族の立場を考慮いたしまして、二十七年度におきましては、公債利子の前拂いをいたすということにいたしたのでありましてその規定附則の九項に挿入をいたしました。  その他、三條及び七條に簡単な字句の修正をいたしておるような次第でございます。  なお修正案の個々の條文につきまして、ただいまからこれを朗読いたします。     戰傷病者戦没者遺族等援護法案に対する修正案   戰傷病者戦没者遺族等援護法案の一部を次のように修正する。   第一條中「又は死亡に関し、」の下に「国家補償精神に基き、」を加える。   第三條第一項第一号中「期間」の下に「(もと陸軍見習士官又はもと海軍候補生若しくは見習慰官身分を有していた期間を含む。)」を加える。   第七條第一項中「(もと陸軍見習士官又はもと海軍候補生若しくは見習尉官については、これらの者がその身分を有していた期間。この節中以下同じ。)」を削り、「この法律施行の際(左の各号の一に規定する者については、当該各号に掲げる日)」を「昭和二十七年四月一日(左の各号の一に規定する者については、当該各号に掲げる日)において」に、同項第一号及び第二号並びに同條第二項中「この法律施行後」を「昭和二十七年四月一日以後」に改める。   第十一條第三号中「この法律施行前に」を「昭和二十七年三月三十一日以前に」に改め、「から第四号までの一」を削る。   第十四條第一項中第二号及び第三号を削り、第四号を第二号とし、第五号を第三号とし、同條第二項中「前項第五号」を「前項第三号」に改める。   第十五條第一項中「三年以下の懲役又は禁この刑」を「禁こ以上の刑」に改める。   第十七條第一項及び第二十一條第一項中「視力障害聴力障害、」を「視覚障害聽覚障害言語機能障害」に改める。   第二十五條中「この法律施行の際(死亡した者の死亡の日が、この法律施行後であるときは、その死亡の日)」を「昭和二十七年四月一日(死亡した者の死亡の日が、昭和二十七年四月二日以後であるときは、その死亡の日)において」に改める。   第二十七條第二項中「総額が二万四千円」を「総額死亡した者が死亡の当時受けるべき障害年金の額」に、「二万四千円を、」を「死亡した者が死亡の当時受けるべき障害年金の額に相当する額を、」に改める。   第二十八條見出し中「遺族年金受給権者」を「遺族半金を受ける権利を有する者が」に改める。   第二十九條第二号中「死亡後」を「死亡の日以後」に、「この法律施行前」を「昭和二十七年三月三十一日以前」に、「第三十一條第二号から第四号まで又は第六号から第八号まで」を「第三十」條第二号、第三号又は第五号から第七号まで」に改める。   第三十條第一項中「この法律施行後」を「昭和二十七年四月一日以後」に改める。   第三十一條見出し中「遺族年金受給権」を「遺族年金を受ける権利」に改め、同條中第二号を削り、第三号を第二号とし、以下順次一号ずつ繰り上げる。   第三十四條第一項中「遺族には、」の下に「弔慰のため、」を加える。   第三十五條第一項を次のように改める。    遺族一時金を受けるべき遺族範囲は、死亡した者の死亡の当時における配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で、死亡した者の死亡の当時日本の国籍を有していたものとする。   第三十六條を次のように改める。(遺族順位)  第三十六條 遺族一時金を受けるべき遺族順位は、左に掲げる順序とする。但し、同順位父母については、養父母を先にし、実父母を後にし、同順位祖父母については、養父母父母を先にし、実父母父母を後にし、父母養父母を先にし、実父母を後にする。  一 配偶者(第七号に掲げる者を除く。)  二 子(第八号に掲げる者を除く。)  三 父母(第九号に揚げる者を除く。)  四 孫(第十号に掲げる者を除く。)  五 祖父母(第十一号に掲げる者を除く。)  六 兄弟姉妹(第十二号に掲げる者を除く。)  七 死亡した者の死亡の日以後、昭和二十七年三月三十一日以前に、遺族(前條第一項に規定する者をいう。この條中以下同じ。)以外の者と婚姻し(死亡した者と同じ氏を称していた配偶者が、その氏を改めない場合を除く。)、又は遺族以外の者の養子なつ配偶者  八 昭和二十七年四月一日(死亡した者の死亡の日が昭和二十七年四月二日以後であるときは、その死亡の日。この條中以下同じ。)において、死亡した者の氏と同じ氏を称していない子(遺族婚姻し、又は遺族養子となつた子及び婚姻前の氏に復した配偶者の氏を称する子を除く。)又は死亡した者の氏と同じ氏を称していても、その同じ氏を称するに至つた事由が、死亡した者と親族関係にあること以外の事由に基くものである子(遺族婚姻し、又は遺族養子となつた子及び婚姻前の氏に復した配偶者の氏を称する子を除く。)  九 昭和二十七年四月一日において、死亡した者の氏と同じ氏を称していない父母遺族婚姻した父母を除く。)又は死亡した者の氏と同じ氏を称していても、その同じ氏を称するに至つた事由が、死亡した者と親族関係にあること以外の事由に基くものである父母遺族婚姻した父母を除く。)  十 昭和二十七年四月一日において、死亡した者の氏と同じ氏を称していない孫(遺族婚姻し、又は遺族養子なつた孫及び婚姻前の氏に復した子の氏を称する孫を除く。)又は死亡した者の氏と同じ氏を称していても、その同じ氏を称するに至つた事由が、死亡した者と親族関係にあること以外の事由に基くものである孫(遺族婚姻し、又は遺族養子なつた孫及び婚姻前の氏に復した子の氏を称する孫を除く。)  十一 昭和二十七年四月一日において死亡した者の氏と同じ氏を称していない祖父母遺族婚姻した祖父母を除く。)又は死亡した者の氏と同じ氏を称していても、その同じ氏を称するに至つた事由が、死亡した者と親族関係にあること以外の事由に基くものである祖父母遺族婚姻した祖父母を除く。)  十二 昭和二十七年四月一日において、死亡した者の氏と同じ氏を称していない兄弟姉妹遺族婚姻し、又は遺族養子なつ兄弟姉妹を除く。)又は死亡した者の氏と同じ氏を称していても、その同じ氏を称するに至つた事由が、死亡した者と親族関係にあること以外の事由に基くものである兄弟姉妹遺族婚姻し、又は遺族養子なつ兄弟姉妹を除く。)   第三十八條第二号中「死亡の日以後、」の下に「昭和二十七年三月三十一日以前に、」を加え、「第三十一條第二号から第四号まで又は第六号から第八号までの一」を「第三十一條第二号又は第三号」に改め、同條第三号中「禁こ以上の刑に処せられ、」の下に「昭和二十七年四月一日(死亡した者の死亡の日が昭和二十七年四月二日以後であるときは、その死亡の日)において、」を加える。   第四十四條第一項中「不具廃疾の状態」の下に「その他必要な事項」を加える。   第四十九條の見出しを「(年金及び国債元利金支拂)」に改め、同條第二項の次に次の一項を加える。  3 第三十七條規定する国債元利金支拂に関する事務は、郵政大臣が取り扱うことができる。   附則第一項を次のように改める。   この法律は、公布の日から施行し、昭和二十七年四月一日から適用する。   附則第三項中「この法律施行の際」を「昭和二十七年四月一日において」に、「この法律施行後」を「昭和二十七年四月二日以後」に改める。   附則第四項中「この法律施行前」を「昭和二十七年三月三十一日以前」に改める。   附則第九項を第十三項とし、以下順次四項ずつ繰り下げ、附則第八項の次に次の四項を加える。  9 第三十七條第二項の規定により発行する国債昭和二十七年四月一日から昭和二十八年三月三十一日までの利子については、前拂をすることができる。  10 遺族年金を受ける権利を有する者につき、昭和二十七年四月一日から昭和二十八年二月二十八日までの間において当該年金を受ける権利消滅する事由が生じた場合においては、第三十條第一項の規定にかかわらず、当該年金支給の終期は、昭和二十八年三月とする。  11 遺族年金は、昭和二十七年度分に限り、第四十三條の規定にかかわらず、政令で定める期月に、政令で定めるところにより、遺族年金支給を始める月分から昭和二十八年三月分まで(遺族年金支給を停止する事由当該年金支拂う日前に生じたときは、当該事由の生じた日の属する月分までとする。)をまとめて支給することができる。  12 前項規定により遺族年金支給した後に遺族年金支給を停止する事由又は第二十七條第二項の規定により各遺族支給すべき遺族年金の額に変更を生ずべき事由が生じた場合における返還すべき金額の返還その他に関し必要な事項は、厚生省令で定める。   附則の末尾に第十七項として次の一項を加える。  17 郵便振替貯金法昭和二十三年法律第六十号)の一部を次のように改正する。   第六十四條及び第六十五條を衣のように改める。  第六十四條 (国債買上代金及び元利金支拂郵便局において、省令の定あるところにより、加入者のため、国債を買い上げ、又は国債元利金支拂つたときは、口座所管庁において、その買上代金又は、元利金支拂に要した金額当該加入者口座貯金から拂い出す。  第六十五條 (取扱料金)前條の規定による拂出に関する郵便振替貯金に関する料金は、左の金額範囲内において、郵政大臣が定める。   一 国債を買上げた場合 国債額面金額の千分の二乃至千分の十に相当する金額   二 国債元利金支拂つた場合 支拂金額の千分の四十に相当する金額 以上であります。どうぞ何とぞ皆様方の御賛成をお願いいたしたいのであります。  なおこの修正動議に御賛成を賜わりました後におきまして、私はさらに戦傷病者遺族等国家補償制度を早急に確立する必要を認めますので、附帯決議案を提出いたしたいと考えますので、さよう御了承おきを願いたいと思います。
  8. 大石武一

    大石委員長 ただいまより原案並びに修正案一括議題として討論に付します。討論通告順にこれを許します。金子與重郎君。
  9. 金子與重郎

    金子委員 私はここに上程されております戰傷病者戦没者遺族等援護法案に対して、反対するものであります。  提案された政府提出原案に反対するとともに、自由党修正案に対しても、これは末梢的な部分修正にとどまるのでありまして本法律目的を達成するためには、相当不満な点が多いのでありますので、この点についても反対いたすものであります。もちろん本法律目的そのものに反対するものではないのでありまして、その内容が、わが改進党が年来主張しているものとはなはだしく相違しておる、どうしても納得できない、こういう点にあるのであります。  次に、そのうち重要な諸点を申し述べますと、第一に、本法律性格の問題であります。戦争に参加いたしまして傷病者となり、あるいはまた戦死した人々は、自己の意思いかんを問わず、国の至上命令として動員されたものでありまして、従つて、国が当然その補償、すなわち償いをなすべきだ、こういう考え方を持つておるのであります。そこで本法律の表題は、戦傷病者戰没者遺族等補償臨時措置法というふうな形に改むべきだと思うのであります。また今国会において議決された軍人恩給特例法も、昭和二十八年四月までの期限であるとすれば、当然一箇年の臨時措置法でありまして、それまでに恩給法特例審議会等において、拔本的な法律を立法いたしまして、そうして補償対策を確立しなければならない、こういうことを考えておるわけであります。ただいま高橋委員が御説明になりましたように、この問題を後に附帯決議としておきめになるということであるならば、何ゆえにこれを法律として今修正できないかということに、私は大きな疑問を持つものであります。この点は、遺家族厚生連盟や、また去る厚生委員会におきまする公聽会公述人の大多数の意見も、そういうことを主張しておるのであります。  次は、年金支給金額でございます。戰傷病者障害年金政府案によりますと、特別項症年六万六千円、第一項症五万四千円、以下六千円下りで六項症までとし、二万四千円でとどまることになつておるのでありますが、これをかりに戰争当時伍長であつた者を、現行一般恩給法規定を適用した場合には、その受給者は、年額にいたしまして普通恩給増加恩給扶養加給かりに二人といたしましても、特項症の場合には九万二千五百余円、一項症の場合には七万三千六百余円となるのでありまして、その間に非常な開きがあり、恩給規定の七割強にしか当つておらないのであります。  また遺家族年金について見ますると、現行恩給法では、かりに月給一万円の公務員が公務で死亡いたしたと仮定いたしましたときに、その遺家族が受けますところの扶養手当は六万六千円及び子供一人当り四千八百円という金額支給されるのに対しまして本法によりますところの戦死者遺家族は妻一万円、老父母とも五千円、こういうふうにこれまた比較にならない少額になるのでございます。  次に本法案は、船員、学徒、徴用工等の戰争犠牲者を、援護の対象から除外している点であります。船員の場合、当時直接軍から給與を受けておつた者のみを取上げておるのでありますが、御承知の通り、戦争当時は、直接軍から給與を受けておるといなとを問わず、同じ立場に立つて戦闘に参加いたしたのでございます。政府説明によりますと、厚生年金あるいは船員保険というようなものによつて支給されているというのでありますが、これは問題が筋違いでありまして、この金は国家補償という今回出す金とは性格が違うのであります。次に学徒、工員というものも、総動員法によりましてこれまた国家のために殉じた者でありますので、当然この中へ入れなければならぬ、こう信ずるものであります。  それから、次は生活保護法を適用されている傷病者遺家族の問題でございます。この問題について、法律としては何ら触れておらないのでありますが、政府はこの問題は、出先の機関において運用上よろしきを得るという説明にとどまつているのでありましてそれでは私どもは納得が行かないのであります。たとえば、東京都におけるところの戦争未亡人が、子供二人、親二人、計五人の家族を持つたといたしますと、生活保護法による支給金額は六千六百九十余円を支給されているのでありますが、この場合それが戦争遺家族として今度の原案によつて国家から年金支給された場合に、月額二千五百円に当つているのであります。そうだとすれば、生活の最低線を保持しようとする気の毒な遺家族に対しては、今度の法律による恩典というものは、経済的には何ら意味がないという結論になるのであります。なお場合によつては、そのために失格もしなくちやならぬということにもなるのであります。政府説明しておりますところの遺家族援護に要する経費の説明におきましても、生活保護費が四億三千七百余万円節約できるということを、はつきり言うておるのであります。こういうことではなりませんので、われわれは前から、今度の補償は、この生活保護法とのかみ合いができることも憂慮いたしまして、生活保護法によるところの最低生活を保持する金額は、どうしても年金として支給しなければ、こういう問題が起るということは、かねがねこの委員会においても主張しておつたのでございます。  以上は、問題になる点のきわめてあらましの三、四の点を述べたのでありますが、厚生委員会といたしましては、戦争犠牲者援護補償の問題を取上げまして昨年第十国会以来一年有余にわたりまして厚生委員会において小委員会を置いて、会議を重ねること三十数回、與党野党を問わず、まつたく一致いたしまして、熱心にこの問題を研究いたしたのであります。その結果、厚生委員会の決議として政府に申入れたのであります。私がただいま述べておりますところの諸点は、当時その決議の中にも含まれておつたのであります。従つて、與党の諸君も、この問題は当時は重々賛成しておられた問題でございます。しかるに政府は、厚生委員会の決議した案に比較的近かつたものを主張しておつた前厚生大臣案を、橋本個人案だというようなことで葬つてしまい、なおその上に橋本厚生大臣の首をすげかえて、兼任大臣であるところの現大臣を充てまして、そして総額二百三十七億円と、公債一人当り五万円、こういう金額を予算に計上して、強引に予算を通過させたのでございます。  政府本法案の審議にあたりまして、各委員が質問に当りますと、常に御趣旨の点はよく了解しておる、しかし遺憾ながら予算がないからやむを得ぬ、こういうふうなことを答弁しておるのでありますが、一体法律案がどういうものであるかということを、全然国会に提案しないでおいて、そして予算の頭金だけをきめておいて、あとで金がないということは、私はどうしてもりくつが通らぬと思うのであります。のみならずこういうふうなやり方は、国会における法案の審議を無視するものであると私は思うのであります。本件は、一箇年前から委員会が取上げて、この金額も相当の金額を要しますし、しかも法律内容はいろいろの法律のかみ合いがあります複雑なものでありまするがゆえに、一層こういうふうな法律に対しては、まず法律というものを先に出さなければならない。また委員会において一年も前からそういう問題が熱心に研究されておることを、政府は十分知つておるのであります。にもかかわらず、予算を通してから法律を出して来ておる。こういうことでは、私どもはこのあり方に対しては、どうしても納得が行かないのであります。  最後に、私は一言申し上げますが、私どもは、野党なるがゆえに、できない相談を持つて行つて反対するというふうな考え方は、毛頭持つておりません。国の財政にもおのずからある限度があることは、よう承知しておるのであります。しかしながら、戰争犠牲者は、まつたく国家のために赤紙一枚で動員されたものでありまして国家存立のために一命をささげたのであります。これらの戰沒者二百万のうち、はたして軍国主義者として行動した者が一体何人あるか、ただ純真な気持で、国家のために盡すのだという一念で、犠牲になつた人たちなのであります。一方、戰争中に軍の指導者たちと、また軍閥とともに、この戰争に国民をかり立てたという大きな役目を果しておるのは、役人であります。官僚であります。その官僚たちは、追放解除者も恩給や扶助料、障害年金というものをただちに受けておる。職業として割がいいから、悪いからといつて選択したのでもない、赤紙で動員されて、そして国家のためと思つて働いて、手を失つたり、あるいは足を切つて、松葉づえにすがつて、あるいはその遺族が生活に困窮しておる。こういう者に対して国家補償が少いということは、私はどうしても合点が行かないのであります。  私は皆様方に、静かにあの戰いたけなわでありました七、八年前に思いをめぐらしていただきたい。いなかといわず、町といわず、全国の津々浦々で、毎日のように村人、子供、婦人会の日の丸の旗の波と万歳の声に送られまして、そしてひたすらにお国のために命をささげて出征された若人を、戰争に負けたからといつて、国家に銭がないのだからしかたがないのだ、―銭がないならば、国家はあらゆる人たちに対する補償を打切るならば、これは別です。しかしながら、一方の公務員は既得権だ、この人たちは戰争に負けたのだからしかたがないのだ、というようなことであつてはならない、こう私は信ずるのであります。政治の要諦は、国民の信頼でありまして、国民の信頼は、信義を守るということであります。敗戰国として国費に限りありとしても、少くとも、同じようにいろいろな立場にある人たちが、機会均等に国家の恩典に浴するということでなければならない。そうすることによつて、私はたといその金額は少くても、納得してくださることだと思うのであります。そういう観点から見ましても、この法律案というものがあまりに矛盾が多過ぎる。  従つて以上申し上げたような趣旨をもちまして、野党連合といたしましても、修正案を出すことに賛成しまして、そうして手続をいたしましたところが、遺憾ながら現段階においていけない、ノーという返事であります。しかしながら、私どもは、今は占領されておりますのでやむを得ませんが、数旬にしてほんとうにわれわれの考え方によつて、この法律というものが審議できる時期が参るのであります。従つて私は本法案に対して、また修正案に対して、反対であると同時に、本法案を、独立後において新しく独自の立場において、正しく立法することを希望して、反対意見を終ります。
  10. 大石武一

    大石委員長 丸山直友君。
  11. 丸山直友

    ○丸山委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題なつております戰傷病者戰沒者遺族援護法案及び自由党を代表して高橋委員より提出せられております修正案に対し、賛成討論をいたしたいと思います。  さきにポツダム勅令の第六〇八号によりまして、当然受給権のあつた軍人等の恩給並びに扶助料が停止せられて、過去の戰争により国に殉じた者に対し、何ら国が報いることを得なかつたことは、まことに遺憾のきわみでありますが、先般平和條約が締結せられ、近くその発効を見、わが国も独立国家として自立すべきときに際し、本法案の提案を見ましたことは、終戰後六年余待望しておつた遺家族傷病者等の熱心なる望みにこたえる意味からも、また国家が当然の責務を盡す意味から考えましても、喜びにたえないところであります。この意味において賛意を表する次第でありますが、しかし、その法案の内容を詳細に検討いたしますと、不満足な幾多の諸点を指摘し得るのであります。これにつきましては、政府提案理由説明にあたりまして、十全のものとは考えておらないと言明しておる通りであります。また恩給法を復活するに至るまでの暫定的立法の意義を多分に包蔵すると見られる点から見ましても、十分な満足すべきものではないということは明らかなのであります。  その二、三を述べますならば、まず第一に、国家補償援護精神が混淆して明確を欠いておるという点であります。第二は、恩給法の復活を見越し、それとの調整を考え過ぎた結果でないかと思われるような若干の欠点があるのであります。第三は、適用範囲の諸問題であります。すなわち船員、徴用者、動員学徒等に適用せられないこと、あるいは未亡人の戰後の窮乏状態または家庭内の事情のためやむを得ざるものと考えられるような事態に対する除外規定がある、または一時金が弔慰金の意味を多分に有するのにもかかわらず、受給者範囲または年齢制限等があつて、これをしぼつておる点等々であります。  また他の法律との調整の問題といたしましては、生活保護法において本法の受給金額を收入と見ることの、実際上起り得べき受給者の困難をいかにすべきかということに対しては、政府はこれが対策を講ずるという答弁はありましたけれども、この法文の面においては、これが明確にされておらないという点であります。また年金金額等、なお不十分な点があります。これらの幾多の不満足が存することは、過般来の連日の委員会における審議の状況から顧みましても、またただいまの金子委員討論より見ましても、うなずける点があるのであります。しかしながら、一方わが国の現段階における財政経済の状態から考えますと、この程度にとどめざるを得なかつた政府の立場も、一応はこれを承認し得るものでありますので、その大要に対して同意を表明すべきものと考えておる次第であります。  また修正案につきましては、以上述べた不満足な点の修正でありまするが、この修正をもつてしましても、なお十分なるものとはいたしがたいのであります。けれども、その修正案内容を見ますると、国家補償的な意義のあることを明らかにした点と、受給者範囲を拡大しておる点、及び二十七年度の年金受給時期と方法の変更、犯罪者の受給権内容変更等を含むものでありまして、これらは最も現実に即したものと考えられますので、きわめて適切妥当なる修正として賛意を表する次第であります。  なお、以上申し述べましたほかに、将来の問題として考えられることは、今回はいろいろな意味におきまして修正を加え得なかつた点、すなわち生活保護法との調整に関し、将来遺憾なきように処理をなすべきこと、障害年金、ことにその障害の重大なる者に対して、さらに一層の金額の増額を望ましいこと、受給対象者の範囲を拡大すべきこと、さらに法律内容、育英資金の増額を行い、戰沒者の熱烈なる希望であつたと考えられる育英制度の普及徹底をはかるべきことを政府に要望いたします。  そのほか事務的な方面といたしましても、受給者の複雑なる家庭的紛擾等が予想せられますので、これの処理と支給事務の簡素化と迅速及び慰霊祭につきましても、十分に遺家族精神的な慰めの徹底せられる方法をもつて施行されたいということをつけ加えておきます。  さらにまた、政府はすみやかに恩給法特例審議会を開き、徹底せる恒久的万全の措置を講ぜらるべきであるという強い要望を付しまして本修正案及び修正部分を除く政府原案に対して賛成の意を表する次第であります。
  12. 大石武一

    大石委員長 岡良一君。
  13. 岡良一

    ○岡(良)委員 私は日本社会党の立場から、政府はこの提出されました戰傷病者戦没者遺族等援護法案は、潔く撤回をしていただいて、平和條約が発効後すみやかに今国会中に遺族並びにわれわれが納得し得る遺族あるいは戰傷病者に関する保障制度を実現していただきたい、こう考えておるのであります。  戦争に負けた国、あるいは戦争に勝つた国も、戦争が済んだあとで、まず何よりも急いでやらなければならないことは、その戰争に従事をして、その従事をしておつた公務に基く事故によつてあるいは死亡し、あるいは肢体が不自由になつた、こういう犠牲者に対してできるだけ手厚く報いるということは、これは国の重要な責任であり、義務であろうと考えます。でありますから、すでにイタリアにおきましても、西ドイツにおきましても、一昨年十月、実に至れり盡せりの戰争犠牲者に対する扶助の制度が確立をされ、一九五一年における西ドイツの予算の中では、総予算の二〇・四%というものが、この戦争犠牲者の処遇のために国が投入いたしておるのであります。わが国も同断であります。かつては明治憲法のもとにおいて、神聖にして侵すべからざる君主に対する忠誠と義勇奉公、しかし戦後民主憲法となり、主権在民の原則が確立されましたならば、われわれは当然この日本の民主主義への歴史的な大転換の礎となつたところの多くの兵のその忠誠に報い、その遺族に報いるために、できるだけの努力をいたすことは、当然の国の義務であろうと思うのでありますが、残念ながらこの提出されましたる法案は、われられの希望し、また遺族の期待するところと、あまりにも径庭があるのであります。本委員会が発足以来、この問題に非常に重大な関心を拂いまして、その間自由党の同僚議員を初め、みんながそろつてこの問題の解決のためにいろいろ努力をして参つたことについては、われわれもすべての同僚の委員諸君と同時に、また厚生省事務当局の御苦心のほどに対しても、満腔の敬意を表するにやぶさかではありませんが、しかしこの法案に盛られておる内容をつぶさに点検いたしまするときに、遺憾ながらわれわれは冒頭に申し上げましたような態度に立たざるを得ないのであります。なおその点についての具体的な点を二、三申し述べてみたいと存じます。  これは金子委員も御指摘になつたことでありますが、この二百三十一億という予算は、本年の二月二十七日に議決されました。しかも法律案は、本年三月十二日に提出されておるのであります。これが他の法案であるならば、たとい財政法上疑義があるといたしましても、技術的にこれを認めることにもやぶさかではありませんが、しかしながら、この法案が、予算が議決されてそのあとで出て来たということになりますと、法案の内容が、あるいは年金といい、一時金といい、すべてが予算の問題となつて来るのでありまして、いわば洗面器の中に入れられた金魚のように、少し動けばわれわれはすぐこの予算の壁に突き当らなければならぬ、こういうような形でわれわれがこの重要な問題ととつ組まねばならないということは、まつたくわれわれの大きな悲劇であつたと思うのであります。その結果といたしまして、今日法案に盛られましたような、きわめてその内容において支離滅裂なものが露呈されて参つておるのであります。  たとえば、給付する対象にいたしましても、われわれは、これを軍人、準軍人については、昭和十二年七月七日を起算点にいたすべきであるということを主張いたしたいのであります。なぜならば、その当時、昭和十六年十二月八日までの戰没者は、十九万と想定されておりますが、一体彼らに対して、いかなる一時金が與えられておるか。それは公債にいたしまして、五箇年間のすえ置き、三十箇年年賦、そうして一般兵における公債の額面はわずかに千三百円であります。これでは同じ支那事変に携わつて、家族を捨て生業を離れ、しかも一命を戦場の露とされた兵らに対する処遇と、この法案によつて昭和十六年十二月八日の軍人、準軍人に対する一時金の支給とには、あまりにも大きな径庭があることは、もはやるる申し上げるまでもないのであります。  あるいはまた、対象の範囲にいたしましてもそうであります。たとえば、われわれは徴用工や、また船員や動員学徒を含むべきであるということを主張いたしておるのでありますが、ところがそれがむなしくわれわれの要求は拒否されておるのであります。しかしながら、それにいたしましても、たとえば内地に勤務し、軍の管理工場に勤務いたしましてそうしてとうとうその勤務上の、業務上の事故によつて死亡いたしましたものは、約五千名ばかりが計上されております。ところが、この諸君は、やはり国家総動員法に基く国民徴用令によつて、白紙一枚で公務に従事したものであつて、決して赤紙による軍人と、その公務、その身分関係においては異ならないと思います。しかも、この諸君が、厚生年金によつて支給されておる年金は、わずかに五千五百円であります。ところが、この法案によつて、ある部分戦地に勤務しておるところのもので、この法案の対象となり得る適格者に対しては、きわめて厚く報いられる。こういうような点は、徴用の線についても申し上げることができるのでありまして、こういう点で、われわれは戦争犠牲者に対して、処遇を厚くせんとするならば―厚い悔いよりも、まず何よりも、公平の原則というものが、これが最も重大であろうと思いまするが、この法案の対象についてみましても、この重大な公平の原則というものを、法案自体がこれをふみにじつておることを指摘せざるを得ないのであります。  あるいは教育の保障にいたしましても、われわれは、この法案の中に、いろいろな遺族処遇の給付の中には、当然教育に関する保障を明文化すべきものと信じております。子供たちの進学の道を開いてやるということは、遺族たちにとつても母親にとつても、最も大きな光明であり、希望であります。ところが、この遺児の進学の道は、まだ門が非常に狭いことは、本年度わずかに六千七百万円の予算が計上され、それによつて育英資金の教育を受けるものは、わずかに七千六百人、政府御当局が御調査の全遺児一万五千人の大学、高等学校の半ばを越えるというような数字でありまして、こういう点におきましても、この問題がまことに重大な問題である限りにおいては、やはり法案の中に明確にこれをうたうべきが至当であろうと考えます。  あるいは障害年金のごときにいたしましても、われわれは、別に異を好んで九万円を特項症に與えろと言うのではありません。御存じのごとく、昨年十月の東京都におけるCPSからこれを判断いたします場合、どうしても常時介護者を必要とするところのこの特項症については、どうしても月当り七千余円というものが必要なのであります。従いまして、われわれは、今日の物価水準において、彼らが十分に生活し得るところのこの七千余円というものから計算いたしまして、どうしても九万円というものが、必要であるという観点に立つて、われわれは障害年金は特項、一項、二項症においても、引上げを要求しておつたわけであります。これは、遺族年金についても同断でありまして現在の遺族年金は、その点においては、政府におかれましても、あまりはつきりとした算定の基準をうかがうことができませんでした。今日いわゆる恩給法の特例に関しましては、恩給法特例制度審議会が、来年三月三十一日までに何らかの成案を得、またそれを制度化し、予算化するという意図も見られまするが、この問題と本法案との関連性は非常に重大であります。従いまして、われわれはそうした恩給法特例制度審議会が、終戦後停止され、あるいは制限されておるところの恩給なり、増加恩給なり、あるいは扶助料等について、これを何らかの形において復活をいたしまするというこの事態と本法案というものとは、密接な関係を持つておるのでありまして、総合的な観点から、この法案の審議に当らねばならないと思うのであります。  そういう観点から申しますると、たとえば戦争中兵長から伍長に任官をいたしましたその伍長の当時の営外居住におけるところの給與は、一箇月五十円である。これをベース・アツプいたしまして、これがたまたま戦争によつてその一命を失い、その遺族に対する扶助料というものが、旧恩給法によれば、大体三千四、五百円という線が出て来るのであります。従いまして、われわれが妻二万円、あるいは子また親一万円という数字は、大体遺族の標準世帶構成を、未亡人と子と、あるいは年老いた親という形においてながめまするときに、妻に二万円を、また父なり子供に一万円を供與することによつて月平均三千三、四百円の所得を保障し得るという観点から、われわれはやはり厳密に適当なる納得のし得る基準のもとに、年金を供與すべきであるということを主張いたしたいのであります。  こういうような点につきましては、あげればきりのないことではありますが、とにもかくにもこういうふうな観点から本法案をながめまするときに、残念なことではありますが、われわれは今日まで三年の間この問題と取組んで来た一部同僚の皆さんと反対の立場に立つことは、まことに遺憾ではありますが、以上われわれはどうしてもこの法案をもつてしては、全国遺族にまみゆることができないのでありまして、政府がすみやかに平和條約の発効後、真に遺族とわれわれが納得し得る立法ないし予算的措置を講ぜられることを期待いたし、またこのために本法案を撤回さるべきことを要求いたしまして、本法案に対する反対の討論といす次第であります。
  14. 大石武一

  15. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私は日本共産党を代表しまして、ただいま議題なつております戦傷病者戰没者遺族援護法案に対しまして、自由党修正案をも含めまして、反対の意見を表するものであります。  その詳細な討論は、本会議場に譲りますが、簡単に反対の理由を申しますと、第一は、予算の点であります。金額、対象の範囲を正確に調査いたしまして当時の実情、今日の現状に応じて、真に国家補償の見地から、金額なり対象なりをきめて立てられました予算でなくて、財政の都合から、言いかえますなれば、再軍備や強圧費をまず大づかみにとつた残りかすからこれを割出したものでありまして、まつたく不合理きわまるものであるからであります。しかも、予算編成にあたつては、関係法案を提出せず、内容不分明のまま数によつて無理やりに押し通し、後に至つての批判も修正も、すべてこのわく内でしばつてしまうなど、国会の権能をもまつたく無視したやり方であります。  次に金額があまりにも少額に過ぎるということであります。七年間さんざん待たせたあげく、妻で月八百三十三円、子や父、母、祖父母、孫等で月四百十六円とは、あまりにも関係者を愚弄しておるわけであります。障害年金の場合も同様であります。特に七項症以下を打切つたことは、非人道というべきであります。関係者の要求は、最低の数字としてこれを実施しなければならない、これを支持するものであります。  次に、対象の範囲を、政府が直接給料を支給しておつた軍人軍属に限定しましたことは、この法案が再軍備の地固めである。政府の意図をむき出しにしたものであり、私どもは断じて同意できないのであります。少くともこの法案は、外地引揚者をも含む一般の戰争犠牲者に及ぶべきであり、少くとも船員、徴用工、動員学徒、女子挺身隊、また原爆によつて不可抗力に一家の支柱を失つた人々にまでも、範囲を拡大すべきであります。また一時金の受給権は、すべて昭和十二年七月七日以降をもつてすることは当然といわねばなりません。  次に、生活保護法の併給についてであります。これにつきましては、同僚諸君がすでに論及されたことでございますので、重複を避けまして、ここではつまびらかにいたしませんが、当然これは生活保護法と併給すべきものであると、われわれは主張いたす次第であります。  次に、年齢による制限とか、結婚による制限とか、または戸籍法等によつて受給権制限するとか、あるいは医療を更生医療の範囲に限定するとか等に対しまして、私どもは反対するものであります。また当然年金は、命をささげられた個人すべてに出すべきものでありまして高い方を選んでこれをとれというような商売人的根性には、まつたく反対するものであります。  次に、遺児の育英につきまして、当然これは国の責任におきまして、少くとも義務教育の国家負担は政府においてやらねばならないものと考えます。  次に、一時金の公債支給の問題であります。七年間まつたく空白状態に置かれました遺族が、年賦償還金や利子だけで、まつたくどうにもならない実情は明白でありまして、こういう遺族の状態を知つておりますブローカーが、今日すでに公債の売却の予約をとつておると言われておるのでありますが、私たちは役に立たない紙ではなくて即刻受領することのできる現金を渡すこと、少くとも公債を即時現金化する道を開くべきだということを主張するものであります。  その他この法案が不備であり、支離滅裂であり、不合理きわまるものであるという点に関しましては、質疑の期間を通じまして私の述べましたところであり、詳しくは省略いたしますが、こういうものをそのまま実施しますれば、関係者の間にかえつて大きな紛糾を呼び起し、ぬぐうことのできない禍根を残すことは必至であります。自由党修正は、何らこの点を根本的に修正するものではありません。野党によつて作成されました修正案に対しまして、わが党としてはなお多くの不満を持つものでありますけれども、少くともこれくらいは即刻修正すべきであるという意味で、一応これを支持するものであります。  要するに、本法案は、政府が国民を欺き、デマ宣伝と秘密外交と国会無視、憲法蹂躪をあえてしまして結んだところの講和條約や行政協定によつて押しつぶされましたところの遺族援護法の残骸でありまして、私どもは、こういうものを通すことを、日本人として侮辱に思うものであります。日本共産党は、再軍備費と民主勢力を弾圧する費用を削りましてほんとうの国家補償に立脚したところの対策を即時作成すべきだということを主張いたしまして、本原案並びに修正案に反対の意見を表明するものであります。
  16. 大石武一

    大石委員長 青野武一君。
  17. 青野武一

    ○青野委員 私は日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、ただいま議題となりました戰傷病者戦没者遺族等援護法案に対しまして、基本的な考え方について大きな相違点のあることと、法律條文内容について、つまびらかに検討いたしました結果、私どもは提出されたる法律案より、もつとりつぱな国家の義務としての最高の補償のなされた援護法にするために、政府原案にも、自由党修正案にも、賛成することはできません。従つて私は日本社会党の党内に組織せられております戦争犠牲者対策委員会が慎重協議を重ね、党の機関を通じて正式に決定をいたしております私どもの法律案の要綱を大略主張いたしまして、それによつて反対の態度を表明したい。もちろん具体的に申し上げますと、非常な時間をとりますので……(「討論関係ないよ」と呼ぶ者あり)―反対するなら、どういう案を持つておるかという質問があるでしよう。     〔発言する者多し〕
  18. 大石武一

    大石委員長 静粛に願います。
  19. 青野武一

    ○青野委員 従つて、私は、まず第一に、われわれといたしましては、基本的観念が非常に大きな隔たりがあるということについて申し上げたい。それは各野党の委員からも言われましたように、予算が非常に少いということ、戰争犠牲者諸君の要望に、ほとんど沿うておらないような予算金額であるという点について、私どもは大きな不満を持つ。條文内容を見て参りますると、大体国家義務を忘れて、恩恵的な内容が非常に多く盛り込まれておるということであります。政府はこの法律案を出すにあたつて、いま少し援護に対して真剣さと熱意を持つてもらいたかつたのであります。私は法律案文としてやりますと長くなりますので、省略して簡単に戰傷病者戰没者遺族等に対する国家補償法の案としてその要綱を申し上げたいと思います。  第一が補償の対象であります。軍人、準軍人、軍属、未復員者、あるいは未復員者に準ずるものを含む、但し国家権力並びに軍命令によつて徴用された者、学徒勤労報国隊員、国民勤労報国隊員、あるいは船員。但し開拓義勇軍等は十分今年度において調査をいたしました者を明年度から追加するということである。補償の対象の第二は、公務に起因する死亡及び戰傷者に限るものとする。  二、補償の方法といたしましては、年金―そのうちの未亡人の年金でございますが、未亡人並びに未復員者の妻に交付するもので、基本年金と均衡加金の二種類に決定しております。その内訳といたしまして、(イ)が基本年金で、一律に月額三千円を交付する。(ロ)が均衡加金として、五十才以上、無能力者に対して月額一千円を交付する。次に、親年金でありますが、遺族並びに未復員者、戰傷病者特項症から二項症まででございますが、その親に交付するもので、基本年金は月額三千円と五千円の二種類に私どもは決定しております。片親の場合は三千円、両親の場合は五千円交付する。また祖父母の場合は父母に準ずる。但し、祖父母父母の両方の場合は、一方のみに交付する。戰傷病者年金につきましては、戰傷病の程度を七段階に区分しておることは、この原案の通りでありますが、最高月額一万円、最低月額二千円、平均六千円を交付するということに私どもは決定しております。遺児年金につきましては、遺児並びに未復員者、戰傷病者特項症から二項症まででありますが、その子に交付するもので、基本年金と教育加金の二種類にしております。基本年金は、十八才まで一律に月額一千円を交付する。但し孤児の場合は、基本年金を二十五才まで一律に月額三千円を交付する。教育加金は、義務教育在学中の者には、これを全額交付する。高等学校在学中の者には月額一千円を交付する。大学在学中の者には同じく月額三千円を交付する。次に、一時金としましては、遺族弔慰金として、一柱につき十万円の公債、年利六分を交付する。戰傷病者に対しては、傷病の程度に応じて七段階に区分し、最高八万円、最低二万円、平均五万円を交付する。従来日華事変から太平洋戦争に入りますまでで支給済みのものに対しては、調査の上適当な調整をする。遺族の一時金の交付順位は、配偶者、子、父、母、孫、祖父、祖母、兄弟姉妹とする。  医療並びに補装具の給付は、戰傷病者に対して無期限に医療あるいは療養を與える。この点は、原案にあります国立の保養所と同じようなものをつくるということも入つているのであります。  特にこの原案にございません福祉対策といたしましては、就職に関しては、未亡人、遺児、戰傷病者並びにその実族及び未復員者の実族の就職補導施設の充実と、強制雇用法の制定を私どもは決定しております。母子金庫法の制定、住宅対策を特別に立てる。税金の関係は、本法律による交付金は一切免税とする。この点は原案及び修正案とは大きな隔たりがあります。  三、実施並びに交付機関は、本法律施行にあたつては、中央並びに地方公共団体に民主的な審議会を設けること。交付は郵政機関によるを原則とする。  最後に、慰霊祭、追弔祭等の開催。地方公共団体等において慰霊祭、追弔祭を催す場合の経費は、国庫がある程度の補助をする。中央において開催する場合は全額国費をもつてする。(「討論をやれ」と呼ぶ者あり)―討論はこれからやるのだ。自由党修正案政府の出した原案に反対するならば、社会党はどういう案を持つているかと……(「だれも尋ねないよ」と呼び、その他発言する者あり)
  20. 大石武一

    大石委員長 静粛に願います。―なお討論者も討論の趣旨の弁明を望みます。
  21. 青野武一

    ○青野委員 なお本法律によつて、重複給與額と年金との差額等については、未復員者給與法を適宜改廃する。この場合は給與額の高い方をとる。  以上申し述べましたのが、わが社会党第二十三控室の、戰傷病者戦没者遺族等に対する国家補償法案の要綱でございます。  これが実施の費用といたしましては、大体において一千百八十四億円でございまして、その内訳の概要を申し上げますと、調査費に二億円、未亡人年金に三百億円、親年金が五百四億円、戰傷病者年金が三十二億円、遺児年金二百四億円、一時金百四十二億円となるのであります。この財源は、しばしば各委員会、本会議等で問題になりました予備費二十億円、行政上の節約率を五分として約四十億円、合計六十億円を充当することができるのでございますが、一応この額を別途にいたしましても、防衛分担金の六百五十億円、安全保障費の五百六十億円、警察予備隊費の五百四十億円、海上保安費、の八十六億円、これを合計すると一千八百三十六億円になるのでありまして、本法律案の予算二百二十二億円に対して、不足額が九百五十二億円になるのでありますが、ただいま申し述べました、準軍事費とも見るべき一千八百三十六億円からこの足りない分を充当しても、なおかつ八百八十四億円、残る計算になるのであります。  私どもは、本会議を通じ、党をあげてこの軍事費と見られるような予算を無理に一千八百億円からとることによつて、戦争犠牲者の援護に十分の手がまわらない。国内的事情でなく、国外の勢力に押されてこういう予算を組むということは、裏返しにすれば、仮想敵国を求め、日本の婦人から再び子供を奪い、青年に銃を持たせて、次の戦争の準備をするためにこういう莫大な予算をとり、それに議会における大きな勢力は、国民の輿論、戰争犠牲者の希望を無視して、易々としてどこかの命令に服従してこういう予算を組んでいる。警察予備隊にいたしましても、どこの世界に、警察予備隊がバズーカ砲を持ち、追撃砲を持ち、軽戦車を持つているか。そういうような費用を使うことによつて―大橋国務大臣の答弁を聞いておりますと、二十七年度に警察予備隊員一人について一年間八十万円から九十万円いると言つておる。そんなべらぼうな不必要な予算を組むことによつて援護の費用というものは極度に削減せられる。従つて、こういうような予算をある程度削減すれば、今私が社会党の案として、社会党が考えておる案の費用をとりましても、まだ八百八十幾億の金が残る。誠意があればそういうような予算の組みかえもできるのでございまするが、今の政府はそれをしようとしない。絶対多数の與党の自由党も、二百三十一、二億の予算のわくの中で無理に拡げようとするところの修正案でございますから、私どもは賛成することはできません。従つて賛成することができないから、私どもの案を、とやかく皆さんは言つておりますが、一応速記録を通じてこれを発表いたしまして、やがてそれを修正案なり、この原案と比較検討せられれば、次々に修正をせざるを得ない時期が私は追つて来ると思う。こういう一方的な単なる恩恵的な、申訳的な法律案を出しましても、戦争犠牲者の諸君は腹の底から納得はいたしません。ほんとうに祖国を守つた、国民生活を守つた戰争犠牲者のために、国家の義務として補償の手を差延べて、援護法をつくろうといたしますならば、まだまだ私どもはもつと大きな予算の出て来ることを確信しておるのであります。従つて社会党といたしましては、この法律案に対しまして自由党の先ほど御発表になりました修正案に対しましても、反対の意思を表明いたします。  最後に、私どもがまだ調査中であり、いろいろな事情で発表しておりませんけれども、われわれもまた議員として政党員として努力をいたしますが、政府もまたこれらの諸点について献身的な努力をしてもらいたいという四項目の希望的な意見を付して、私の討論を終りたいと思います。  その第一は、先ほど申し上げましたうちに、未復員者がおります。来復員給與法と重複したり、給與の差額ができましたときには、これは適当に法律の改廃をすることを、私どもは用意しておりますが、未復員者給與法と特別未帰還者給與法は、昨年外務省の発表によりますと、十一万六千名おるといわれておりまするうちに、わずかに四万人だけが給與の対象になつておる。実際にまだこの二つの給與法以外に、国家の何ら恩恵に浴さない六万六千名という人が放任せられておるということは、全国の未帰還者の留守家族の諸君が代表者を東京に送つたときに、幾多の資料に基いて、そういうことが書かれておる。これらの六万六千名が、終戦後六年半の間、国家から何らの補償も恩恵も受けておらないことに対して政府はまじめにこれを調査して、これらに対して何らかの処置を講じてもらいたい。  第二は、戦災者の補償であります。B二九が日本を爆撃するようになつて米英国の財産に損害を與えたといつて、こちらから向う三箇年、年に百億円の賠償金を拂うようにするならば、戦争になつて御承知のように飛行機から爆撃をせられたり、焼夷弾によつて不慮の死傷をした者を、厳密な調査によつてこれらの諸君に対しましても、適当なる国家的な補償がなされなければならぬ。ましていわんや広島においては四十万の人口で原子爆弾のために一挙にして二十四万七千人の諸君死亡した。その死亡した中に、広島の師団の諸君で全滅したものは、これによつて適当な方法が講ぜられるかわかりませんが、広島市民の中で、広島師団におらない諸君が二十四万七千名の中に入つておる……。
  22. 大石武一

    大石委員長 青野君、まことに恐縮でありますが、簡単に結論を願います。
  23. 青野武一

    ○青野委員 そこで、長崎もその通りであります。こういうものは戦争犠牲者であるから、これを援護法の中に入れないという法はございません。  なお、外地の引揚者に対しても、いろいろな手を通じて持つている預金を全部巻き上げていまだにそれをもどさない。政府の出先機関がそういうことをしている点についても、預かつた金は当然もどすべきである。これらについての政府の努力。  最後に、大きい上級の軍人は、どんどん今の政府の手によつて戦犯が解除せられ、追放が解除せられているが、巣鴨の拘置所には、上官の命令によつて前線でいろいろな活動をせられましたところの下級の官吏の諸君を含めて七千名からの人が巣鴨の拘置所におる。これらに対しては、特に政府が先頭に立つて無罪あるいは釈放の恩典に浴するような運動をすることも、これはやはり援護の重要なる一つである。こういうことを考えまするので、私は一、二、三、四と特に反対の意見を申し上げますると同時に、四つの要望事項を申し上げまして、政府原案自由党修正案ともに反対であるということを、ここに党を代表して意思を表明して、私の討論を終る次第であります。
  24. 大石武一

    大石委員長 寺崎覺君。
  25. 寺崎覺

    ○寺崎委員 私は農民協同党を代表して、本案に反対をいたします。以下簡単にその理由を申し上げます。  終戦以来すでに七年、一日千秋の思いで本法律の出現を念じて来たわれわれは、国民もひとしくこの法案が上程されたのを喜んでおるものと思つておりますが、この法案の内容を見てみますると、改進党、社会党から指摘されましたように、まことに不満足きわまるものでございます。そうしてそのお茶を濁したような法案を持つて来て援護法案のその精神が達成できるか、日本の国民が満足できるかということを考えますときに、私は、これは一応撤回していただいて日本が独立国として発足する日も、あと旬日に迫つている、その独立後において、真に英霊を慰め、戰傷病者及び遺族に対して援護の手を差延べる法律を作成していただきたい。こういう理由から反対するものであります。
  26. 大石武一

    大石委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。まず高橋等君提出の修正案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  27. 大石武一

    大石委員長 起立多数。よつて提案のごとく決しました。  次に、ただいま議決いたしました修正案部分を除いた原案について採決いたします。これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  28. 大石武一

    大石委員長 起立多数。よつて本案修正議決いたしました。  本案修正議決の結果、整理を要するものがあるときは、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 大石武一

    大石委員長 御異議がなければそのように決します。  この際高橋等君より附帯決議を付する動議が提出されておりますから、本動議趣旨弁明を求めます。
  30. 高橋等

    高橋(等)委員 私は戰傷病者戦没者遺族等援護法案に関しまして附帶決議を付する動議を提出いたします。まず決議案を朗読いたします。     戰傷病者戦没者遺族援護法附帶決議案   戰傷病者戦没者遺族等の援護法案は暫定的措置である。よつて政府は速かに恩給法特例制度審議会を開き戦没者遺族、戦傷病者等に対する国家補償的制度を急速に確立すべきである。  本法案を見ますると、非常に暫定的な措置が多いのでありましてこの点は政府も認めておるところであります。独立第一年の措置としては、まことにやむを得ないと考えるのでありますが、文官の恩給等と比較いたしまして思い半ばに過ぎるものがあります。よつて、政府はすみやかに恩給法特例制度審議会を開きまして、戦没者遺族戰傷病者等に対しまする国家補償を、一般文官と権衡のとれるようにすることを急速にやつていただきたい。これが本決議案の提案理由であります。
  31. 大石武一

    大石委員長 本案について討論の通告があります。岡良一君。
  32. 岡良一

    ○岡(良)委員 われわれは、この附帯決議案に対しまして野党各派一致いたしまして、反対の意思を明確に表示いたしたいと思います。その理由は、要するに、われわれが暫定的措置であるという決議をするよりも、法律案が提出されたときに、立法の府としてこれを明文化することがわれわれの任務であつてかくのごとき決議案を添えることは、一種のゼスチユアにすぎないという点が多分にあります。いわゆる国家補償的制度を急速に確立すべきである―こういう制度を立法化することもまたわれわれ国会議員の任務であるのでありまして、こういう決議案をもつて政府に要求するのではなく、與党の諸君も、本法案に満足の意思を表明せられぬ以上、われわれ立法の府にある者の責任において、明らかに予算的措置を講じ、立法の措置を講ずるというのがわれわれの義務であり、また国民、遺族に対する責任であるという観点において、かくのごとき附帯決議案に対しては、われわれは納得することができないことを申し上げたいと思います。
  33. 大石武一

    大石委員長 ただいまの動議について採決いたします。賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  34. 大石武一

    大石委員長 起立多数。よつて動議の通り附帶決議を付することに決定いたしました。  次に、本法律案の委員会報告書につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  これにて散会いたします。     午後五時二分散会