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1952-03-20 第13回国会 衆議院 厚生委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十日(木曜日)     午前十一時三十九分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 金子與重郎君    理事 岡  良一君       新井 京太君    高橋  等君       田中  元君    寺島隆太郎君       松永 佛骨君    松井 豊吉君       柳原 三郎君    松谷天光光君       堤 ツルヨ君    苅田アサノ君       寺崎  覺君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         厚生事務官         (保險局長)  久下 勝次君  委員外出席者         厚生事務官         (保險局船員保         險課長)    中村 隆則君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 三月十九日  未帰還者及び留守家族国家補償に関する陳情書  (第九一九号)  戰争犠牲者に対する国家補償に関する陳情書  (第九  二〇号)  遺族補償に関する陳情書外一件  (  第九二一号)  戰傷病者戰没者遺家族等援護法案改正陳情  書(第九二二号)  新潟県民医療保障に関する陳情書  (第九二三号)  厚生省薬務局存置に関する陳情書  (第九二四号)  同外二件  (第九二五号)  同外二件  (第九二六号)  戰没船員遺族援護に関する陳情書  (第九四五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公述人選定に関する件  戰傷病者戰没者遺族等援護法案内閣提出第六  六号)  船員保險法の一部を改正する法律案内閣提出  第八〇号)     ―――――――――――――
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  船員保険法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。金子與重郎君。
  3. 金子與重郎

    金子委員 最初に一、二点数字の問題につきまして御質問申し上げます。この船員保險でございますが、御承知のように、船員保險は、海上に働いておられる船員保險を一本にいたしまして、いわゆる保険体制として一本法律として完成した形になつておるのでありますが、現在この船員保險制度の恩沢に浴しておりますところの総人員は幾らありますか。
  4. 中村隆則

    中村説明員 船員保險普通保險失業保險に員数をわけて考えておるのでございますが、これは二十六年十一月現在の数字でございますが、普通保險におきまして十四万一千名でございます。それから失業保險適用におきまして九万六千名でございます。九万六千名の数字は十四万一千名の中に含まれております。
  5. 金子與重郎

    金子委員 これは大体法による船の大きさに準拠したものの範囲だと思いますが、そのほかに、広義におきますところの船員ということになりますと、二十トン以下の、ことに漁船あるいはその他の海上民間業に勤務しておる船員があると思いますがそういうもののトータルは一体幾らになつておりますか、お調べがありますか。
  6. 中村隆則

    中村説明員 船員保險適用は、船員法適用を受けるものと範囲を同じくいたしております。従つて船員法が二十トン以下の船には適用がございませんので、現在私の保險で扱つておりません関係上、数字ちよつとここでつかみにくいのでございます。
  7. 金子與重郎

    金子委員 そういうふうな考え方でありますから、法律の審議に非常にいろいろな問題が出て参るのであります。あの方も同じ船員として船に乗つて、そうして国家の生産なり、あるいはその他の仕事に当る。従つてトン数が少いから危険率がないとか、あるいは勤労の価値が違うとかいうものでありません。そのときに、ただたま法律わくをきめますので、あなたの方が、わくの中はわかつておるが、ほかのことは知らぬというようなことでは、国民全体に向つて政治という観点から行きますと、これは意味をなさなくなつて参ります。従つてこのことがおわかりにならなければ——これはもちろん農林省関係になるから、おれの係じやないということになりますが、私もこの問題に対して今数字を研究中でありますからして、あなたの方もただセクシヨンの中で物を考えないで、船員というものを取扱うならば、もつと全体の問題に対して——省が違おうが日本人なんですから、日本国の中なんだから、調べて、これは後日でよろしゆうございますからお知らせ願いたいと思います。  それでは、この法律は、船員に関する失業保険の問題は、特殊性を認めておるようでありますが、その他の問題につきまして、陸上保險均衡がとれないから、それを均衡をとつて行くというような点だけが改正の要点だと思いますが、そう承知してよろしいのですか。
  8. 久下勝次

    久下政府委員 失業保險につきまして、陸上保險と、たとば最高日額等が違つております。これを合せるようにいたしたのでございますが、そのほか適用除外の点につきましても、精神におきましては、大体陸上と同じようにいたしております。その他の標準報酬改正につきましては、むしろ一般健康保険とは違いまして、最低額最高額をそれぞれ一般健康保険よりも高いものにいたしてございます。この方は今の仰せとは違いまして、海上特殊性によりまして、船員給與実態に即するように改めた次第でございます。
  9. 金子與重郎

    金子委員 それでは事務的な質問はそれだけにいたしまして、大臣にお考えをお聞きしたいのでありますが、ただいま説明員が私の質問に答えようとしても、畑が違うから答えられないというように、同じ保險局長がやつておりながらも、国民の各階層保険というものが、役所一つセクシヨンによつて動いている。それからもう一つは、その役所を中心にしての国民層というもの政治的な力、あるいは政治的な認識のいかんというものが、いつも大きく働きまして、今度の船員保險法改正も、陸上保險と合わないから、それを合せて行く。また一方、政治力の強いものが出て、それに合わないものは改めて行くというようなことで、今日まで何回か改正されまして、たしか一昨年も改正したと思いますが、給與が足らなくなり、たとえば俸給の基準のとり方が低いということになりますと、法律改正して、基準の高いところに合せて行く、その足らず前は結局国費で持たなければならぬということが、いつも組織的な国民層には行われておるのであります。現在でも、私の調べたところによますと、共済の失業保險や何かの問題を除きましても、昭和二十七年度の予算を見て、公務員国費が一人当り五万二千百数十円になつておる。船員に対しては一人当り使う国費が二千三百八十余円になつておる。そうして一般国民は、国民健康保險というたつた一つの残されたいわゆる疾病の問題、養老の問題、失業業務上の災害、この四つに給付内容をわけましたときに、その中の疾病の問題だけしか国民健康保險給付の対象になつておらない。しかも加入しておる人だけを集めての数字を見ても、一人当り百二円にしかなつておらない。こういうふうな不均衡がますます増大して参るわけなんであります。そういうことについて、この前に私が大臣にお尋ねしましたときには、制度が違うのだからしかたがない、商売が違うのだからしかたがないということに近い御答弁であつたのでありますが、この法律改正されるにあたりましても、なおそういう考え方でこの法律改正されるのかどうかということに対して、御所信を伺いたいと思います。
  10. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは前に予算委員会のときにも金子さんの御質問がありまして、私申し上げましたが、実はこういう社会保險制度につきましては、沿革ももちろんございまするが、起りというものがそれぞれございます。健康保險は、最初業務上は全部事業主負担すべきものである、それひら私病は労働者自分負担するということでありましたのを、それを合せまして健康保險という制度が発達して来て、そのかわり負担事業主労働者双方負担して行くということで発達して来ておるわけであります。加員保險につきましても、同じようなことであります。国民健康保險の方ほ、地域的に住民がお互いに保險によりて相互扶助をして行こうというとこつから、発達して来ている。これを根本的に全部一体化して一本で行くということも、一つ考えでございますけれども、それは非常に大きな変革、考え方を根本的に改めるということになるのでありまして、目下のところは、私といたしましては、やはりそれぞれり保險の特性に基いて行くという以外六ないのではないか。ただその際に、保險の間に非常なアンバランスがあることはよくないことでありますから、健康保險の分も、船員保險の分も、それから陸上失業保險の分も、海上大業保險の分も、それぞれ同じ考え方で進んでおります。国民健康保險の方は、つまり雇用主と雇用される者といら関係とは、全然別の形でできて、一つ社会保險ではございますけれども、根本の考え方が違つておりますので、これを一つにというふうには、私はまだちよつと考えが及びません。
  11. 金子與重郎

    金子委員 私の今申し上げたのは、一つにするかどうかということに対して、あなたの意見を求めているのではありません。歴史的な発展過程が違うことも、私、重々承知しております。しかしながら、あなたは、政府の雇つている人間政府が出すのだ、工場主の雇つている工員に対しては、半分は工場主負担するのだ。けれども一般国民はそういうことがないから、やむを得ないのだとおつしやるけれども、それならば、それはそれとして、国費がこういうふうに相違があるのはどういうわけか、雇い主が出すのでなく、国の予算からこの事業に対して支出している金額というものが、非常な相違があるのじやないか。この問題が相違があることが正しいと思いますか、ないことが正しいと思いますか。
  12. 吉武恵市

    吉武国務大臣 その点よくわかりました。一本にするというわけじやなくて、国の負担の問題を取上げられておりますが、その点になりますと、健康保險につきましても、それから今の船員保險にいたしましても、負担は大体労使双方負担するという建前で、事務費だけを国が負担している。しかも大きい健康保險組合等になりますと、それは双方がやつて政府管掌の分を政府事務費負担している。国民健康保險の方も、事務費国庫が全額負担している。ただ国民健康保險経済は、お話はございませんけれども、おそらく金子さんのお気持では、現在の国民健康保險経済というものが、雇用主負担というものがなくて非常に苦しいという点、これは私も了承しております。庶民階級だけでやつている保險でありますから、非常に苦しい点もございますけれども健康保險やその他の船員保險は、国が負担をして援助しているということでなくて、事務費は国が負担する。これは健康保險についても同様であります。
  13. 金子與重郎

    金子委員 局長は、今そこで何かおつしやつていたようですが、局長にお聞きいたします。はつきりその数字を出したことがありますか。その階層別の一人当り国費がどういうふうに使われているかということについて、局長はどういうふうに考えられますか。大臣答弁では、同じだというように答弁しておられますけれども……。
  14. 久下勝次

    久下政府委員 大臣から申し上げました通り国費負担につきましては、各保險とも全額事務費負担をすることになつております。ただこれを具体的に被保險者一人当りの経費に換算をして参りますと、数字が違つております。この点は御指摘通りでございまして、事務費ちよつと取上げましても、実は健康保險については、政府管掌健康保險事務を取扱つております国及び地方庁の現在の職員の人件費が主でございます。それを国から全部負担する建前にしておりまして、これを被保險者一人当りで割りまして、同額一般健康保險組合に出すというような計算の仕方をいたしているわけでございます。国民健康保險の方につきましては、各国民健康保險をやつております保險者から実績をとりまして、これに基きまして財務当局予算折衡をして、一定事務費金額がきまつて来るわけでございますが、その辺でやり方が違つておりますので、被保険者一人当りに割当てて参りますと、金額が違つて来るのでございます。その他の点につきましては、たとえば年金保險船員保險長期給付国庫負担につきましては、率は同じでございまして、これは結局は各保險の被保険者標準報酬の差異によりまして、国庫負担の額が違つて来るわけでございます。そういうふうに御了承を願います。
  15. 金子與重郎

    金子委員 私はそんな法律に準拠したやり方の問題をお聞きしているのじやない。要するに、同じ国民として、国家各種社会保險制度がある。そのときに、職業が違い、立場が違うために、その制度から来る、あるいは雇い主が出すとか、だれが出すとかいう特別の條件を除いても、同じ国民に対して国家社会保險というものをいろいろな形においてやつているが、その場合に国民の受ける方の立場に対して、国家の支出を差別待遇することが正しいか、現在は差別待遇なつているかいないか、なるのがあたりまえであるのか、ならないことが望ましいのか、その点をひとつ具体的に御答弁願いたい。
  16. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは先ほど申しましたように、こういう社会保險的なものでございますから、事務費は国が持とう、こうやつておるのであります。その事務費が、各種保險について、御指摘通り差があるかもしれません。事務費が全部同じ事務費であれば、私は同額であるべきだと思います。事務内容が違えば、その事務の費用によつて——それは非常にぜいたくな事務費を認めるということであれば、これはいかぬと思いますが、しかしどうしてもこれだけの事務費がかかるということになれば、それを国が負担した場合に、一人当りに割つてみると、一人当り負担額に差があるということはやむを得ない。一人当りに補助するのではないのであります。
  17. 金子與重郎

    金子委員 よくわかりました。それでは大臣は、今の制度はどうにもならぬ。そこで、事務組織が違うから、不均衡ができて、事務費のかかるような組織については、国費がよけいいつてもしかたがない、受ける方の立場から——社会保険制度に対する国費の受け方がどんなに不均衡であつてもやむを得ないということと了承してよろしゆうございますか。
  18. 吉武恵市

    吉武国務大臣 さようでございます。
  19. 金子與重郎

    金子委員 それでは厚生大臣は、今全体的な社会保障が大きく取上げられている現段階においても、今の職業階層において、ただ名目的に性質が違う、だから、これは現在のことをそのまま容認して行くよりほかないと承知してよろしゆうございますか。
  20. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今のところしかたがないと思つております。
  21. 大石武一

  22. 苅田アサノ

    苅田委員 今回船員保 保險法の一部を改正することになりまして、従来標準報酬最低が三千五百円であつたものを四千円にお上げになることになつたわけですが、この四千円以下の給料をもらつて乗船している人達、船員というものは、私はこの船員保險法適用されるものが相当小さい船まで及んでいると思いまして、相当数あるのじやないかと思いますが、大体四千円以下の給料をもらつている人で、この保險適用を受ける人がどの程度あるかということをまずお聞きしたい。
  23. 久下勝次

    久下政府委員 私からお答え申し上げます。現在船員保險法によりますと、標準報酬最低額が二千円ということになつておるのでありますが、実態調査をいたしました昨年九月三十日現在の状況によりますと、二千円から三千円までのものがなくて、三千五百円というものが最低、それが実績でございます。それが今度は法律上四千円にするということでございます。それで数字を申し上げますると、昨年九月三十日現在の調査によりますと、三千五百円に該当いたしますものが、漁船部門におきまして八千七百八十八名、その他の船舶につきまして七千八百八名、合計一万六千五百九十六名と相なつております。
  24. 苅田アサノ

    苅田委員 そうしますと、これは四千円に引上げるということは、少し最低基準が低過ぎるのじやないでしようか。今お話なつたように、一万何千人という人は、自分のとつていない給料のところまで標準を持つて行つて、やはり支拂いをしなければならなくなつて来るということになると思うのですが……。
  25. 久下勝次

    久下政府委員 その実情に基きまして最低をどこに押えるかということは、実は非常に前々から昨年ごろから問題になつておつたのであります。船員側主張としては、御承知通り船員保險法に基きました災害補償関係から申しますと、なるべく高いものを希望するというのが、船員側主張でございました。そういう点からと、一つには、また保險料負担——指摘の点はその点だろうと思いますが、保險料負担の点からいいますれば、実態に即した低いものでいいはずだという、相反した議論があるわけです。いろいろと折衝いたしました結果、実はこの辺のところで押えるのが、現在の実情から申すと適当である。これはこの数字は先ほど申し上げました通り、昨年の九月三十日の調査でございます。その後の状況によりましても、ごく最近の社会保險審議会船員部会におきましても、いろいろと論議をいたしました結果、四千円程度に押えるのが実態に即することであるという、労使双方の一致した意見でございました。そういう点から、私どもはこれを原案としたのであります。
  26. 苅田アサノ

    苅田委員 このたびの改正では、最高三万六千円と押えておいでになるのですが、三万六千円以上をもらつておる高級船員というものも相当いると思うのでありますが、この数字はどれくらいになりますでしようか。
  27. 久下勝次

    久下政府委員 三万六千円にいたしますと、これに該当いたします者が、やはり先ほどのときの調査によりますと——これは漁船はございませんで、大型船舶だけでありますが、千五百九十八名、三万六千円を越えます者は、全体の約二%ぐらい……。
  28. 苅田アサノ

    苅田委員 全体というのは、船員全体ですか。
  29. 久下勝次

    久下政府委員 船員全体であります。
  30. 苅田アサノ

    苅田委員 大体船員全体の二%といたしましても、こういうきわめて高級な給料をとつておる船員方たちに対しまして、標準報酬を上げるということは、さほど苦痛でもないと思うのでありますけれども、現在の四千円、三千五百円というような給料は、これはもう普通の労働者——公務員でありますれば、標準給料よりもずつと低い人たちなんですし、こういう中から、自分の実際持つている以上のところに標準を置いて、そうして保險料をかけるということは、やはり非常にこれは問題があると思うのです。どうもこういう改正に対しましては、私どもといたしまして少しうなずけない点が出て来ると思うのです。  次にやはりこれは結局今当局考えおいでになるのは、保險経済をなるべく健全にして——今でも健康保險とか国民健康保險では、赤字で困つておいでになるので、船員保險もなるべくそういうことのないようにという見地から、今度こういう処置をおとりになつたと思うのでありますけれども、私どもはやはりこの改正を、ただいま申しましたような理由で、そのまま率直に賛成できないと思うのです。  それから失業保險をもらう人たちの規定でありますけれども、これは私きよう少し遅れて参りまして、金子委員が御質問なつたことと重複するかもしれませんけれども、この船員保險法では、失業保險給付を受けるのに、いろいろな制限がしてあると思うのです。たとえば、季節労働者に対してはその権利を許さないとか、あるいは一年間のうちに六箇月も働いた者でなければだめであるとかいうような、こういういろいろな制限があるのですけどども、これはやはり現在たとい季節的な乗船をする人でありましても、特に農村あたりから小さい船に乗り込む人たちは、農村の現在の潜在している失業というふうなものを考えますれば、陸では陸の仕事があるのだから、船に乗つているだけという考えは、やはり失業保險というものに対しましては、私どもとして、どうもこれは現状にそぐわないと思うのです。こういう点に対しまして、やはりもつと失業保險制限條件を緩和しなければならぬということに対しまして、御当局はどういう御意見を持つておいでになりますか、承りたい。
  31. 久下勝次

    久下政府委員 失業保險給付制限につきましたは、お話通りいろいろな制限が加えられておるのでございますが、この制限内容は、実は海上船員のみの特殊的な取扱いではないのでございまして、大体私ども考え方では、陸上失業保險と同じ場合の考え方でやるつもりでおります。従いまして、結論的に申しますと、船員だけの関係につきまして緩和するということも、失業保險性質から申しまして、いかがであろうか。失業保險全体の問題としてお話のような点を考えることは、一つの行き方であろうとは思いますけれども、緩和の仕方によりましては、また保險料その他に影響する点もございますので、さような点につきましては、今後検討してみたいと思つております。
  32. 大石武一

    大石委員長 他に本案に対する御質疑はございませんか。——他質疑もないようですから、本案に対する質疑は終了したものと認めることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 大石武一

    大石委員長 御異議もないようですから、本案に対する質疑は終了したものと認めます。  次に、本案の討論に入ります。通告順によりまして金子與重郎君。
  34. 金子與重郎

    金子委員 この法律案は、ほかの被用者保險と比べまして不均衡があるから、これを是正するということが主なる問題であります。それにつけ加えた若干の改正でございますので、この法律案そのものについては賛成するのであります。ただ、私はこの際、希望條件をつけたいことは、ただいま大臣のお考えを聞きますと、今日日本にありますところの各種社会保險の発達の歴史が違う、動機が違う、また国民層が違う、であるがゆえに、いろいろの形においてなされておる、今の段階においては、根本的にのみならず、これをどうしようというふうな考え方をお持ちになつておらぬということでありますので、私の付しますところの條件は、おそらく今の内閣においてはお取上げになれないような立場であることを承知の上で條件をつけることは、矛盾のようでありますけれども、これは私の信念でありまするがゆえに、一応申し上げたいと思います。  まず第一に、現在におきまして被用者立場にありますものの、同じ船員保險でありましても、一定トン数以下の船に乗つておる人たちはその恩典には浴さない。同じ労働者でありながら、雇用関係にない者はその恩典に浴さない。また国家自体が、社会保障という大きな形における根本的な社会保障制度は、国家予算関係上できないといいながら、一般国民に対しますところの、地方自治の貧弱な農村には、市町村費自体を補給いたしまして、そうして保險をやるということになると、それは市町村自体社会保障の一線を打つて出ておるということになる。貧弱な農山漁村に対しても、ある保險な要請しなければならない。国は全体的な予算がないから、全面的に物を考え段階でない。しかも、各階層国民の受ける立場から言うならば、非常な不均衡がある。この問題は、いかに大臣お一人がそういうふうにお考みになつておりましても、ほかの方方、国民全般が妥当だとは思われない。今までは、なるほどいろいろ発展過程におきましての相違はある。それは私も承知いたしておりますが「今日この敗戦国人間生活をする上に必ずついて参りますところの疾病や、失業や、あるいは養老の問題、業務上の災害、こういうふうなことにつきましては、できるだけ国民機会均等の形における社会保障制度なり、あるいは社会保險の形における保障制度に近い制度を革新的に考えなければならない段階に入つていると私は信じております。でありまするがゆえに、一つの理想を掲げましても、その目標に達するために、もちろん国費関係もございまして、一気にやることもできないでしようが、いろいろな社会情勢、その他の国民階層の利害関係というものを考慮いたして、逐次にこれを機会均等の社会保障なり、社会保險的社会保障制度を確立するということが必要だと信じております。こうした役所セクシヨンや、あるいは国民階層政治的な力というものにまかせることは、政治じやない。声を大きく出さない国民層の声を政治に取上げて、いかにして国民総協力で、同じように骨折つて、同じように楽しんで、そうしてこの国を立ち上らせるかということが、私は現段階日本国民の、また政治のとるべきことだ、こう考えております。従つて、本法案は技術的な問題として小さな問題でありますから、法案そのものには私は反対いたしまんが、この社会保險の問題を今後調整するというような機会が出ましたときには、ひとり船員保險のみならず、ほかの保險においても、常に受ける立場国民階層において、一歩でも機会均等の形において社会保障制度の確立を一日も早くするということに心がけていただきたい、こういうことを要望して賛成いたします。
  35. 大石武一

    大石委員長 岡良一君。
  36. 岡良一

    ○岡(良)委員 ただいま御提出の船員保險法の一部を改正する法律案については、現在の現実の情勢とにらみ合せての事務当局の御苦心を了として賛成をいたしますが、この機会に二、三の希望を強く付したいと思うのであります。  この提案理由の説明にもうたわれておりますように、船員保險制度の合理化並びに船員保險財政の健全化をはからんとするものであると言われておりますが、今日までわれわれこの委員会が、しばしばかかる理由のもとに保險法改正に当つてつております。ところが、その場合、合理化がただちに健全化であるかどうかという点において、大きな矛盾を感ずることがしばしばあつたことも、また事実なんであります。今日、たとえば船員保險法の場合におきましても、制度の合理化というものは、被保險者の生活の実体に即応するという、とが、あくまでも基本的な原則であつて、財政の健全化をはかるがための合理化というものは、保險制度そのもののあり方から見ては、きわめて矛盾したものであるといわざるを得ないのであります。たとえば、現行の船員保險制度におきましても、今度の改正によつて標準報酬が引上げられます。一応他の保險制度ともにらみせて、われわれはこれを了とするのでありますが、しかし日本船員の待遇というものは、他の外国の船員の待遇に比して特に著しく低いことは、御存じの通りであります。従いまして、海員組合もその給與水準の引上げについては、しばしば相当強い要求を出して、あるいは船主なり、あるいは国に対しても、その要求を持ちかけているのであります。ところで、どうやら多少のベース・アップができた。そこで標準報酬を引上げる。そして失業保險にいたしましても、あるいは疾病保險にいたしましても、陸上労務者に比べれば、いささか高い保險料率をもつて保險料を徴收するということになれば、会員諸君、船員諸君の要求するぺース・アップには到達しない、低いぺース・アツプのままで、しかも保險料率はそのままにすえ置かれて、より多い保險料を支拂うということは、この改正船員の生活の実質的な低下になろうとする危険もはらんでおることは当然であります。あるいは失業手当を與える場合におきましても、やはり陸上並とは申されますが、しかし船員、特に小型船舶乗組員の実情にかんがみまするときに、季節的な労働とはいいながら、やはりその季節的な海上労働から解放されたその翌日から、はたして彼に仕事が待ち構えているかどうかという、現実の海上労務者の海上労務から解放された後における生活の実際に即して、失業手当を支給するというような建前に持つて行くということの方が、社会保險のあり方としては正しいのではないかと思います。  そういうような点から考えまして、われわれは社会保障制度の確立という立場において、今度の改正はともかくといたしまして、今後厚生当局といたされましても、そうした大きな観点から、現に世界的趨勢にある福祉国家建前という方向に向つて、現行保險制度に対しましては十分なる留意を希望いたしたいと思います。特に船員保險法は、次の二点においてきわめて重要な意義をわが国の社会保障制度において持つております。その第一点は、他の保險制度と違いまして、船員保險法におきましては、厚生年金保險疾病保險失業保險も統一され、総合された姿において運営されておるということは、将来に予想される社会保障制度への一つのテスト・ケースを示すものであつて、これに対しては十分に政府としても、文字通りその運営の建全のために層一層の御努力が願いたいのでありまするし、特にまたわが国が独立日本となりまして、経済的な自立の裏づけがなければなりますまいが、そのためには、何と申しましても貿易の振興にまつておるのでありまして、かかる現状から考えましても、今後における船員の使命というものは国家的にも重要なものを期待されるのでありまするから、これらの船員が、こうした総合的な社会保險制度のもとにおいて、十分安心をしてかつ喜んでその業務に服し、貿易国策の第一線に働き得るがごとき保険法の確立という方向に向つて、今後とも政府当局の一段の御努力を希望いたしまして、私の賛成意見といたす次第であります。
  37. 大石武一

  38. 苅田アサノ

    苅田委員 共産党といたしましてこの法案に賛成できない理由は、先ほどの私の質問に徴しましても明らかでございまして、このたびの改正は、逆に船員の生活の圧迫になる、特に下級船員に対しましてはその感が深いということと、当然実情に即して検討しなければならない失業保險の問題に対しまして、まつたくこれが考えられてないという点をもちまして、私どもはこれに反対いたしたいと思います。
  39. 大石武一

    大石委員長 以上で討論は終局いたしました。  これより船員保險法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  40. 大石武一

    大石委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたされました。  なお、議長に提出する報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、そのように決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 大石武一

    大石委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  午前中の審議はこの程度にとどめ、休憩に入ります。午後は一時より理事会を開きまして、その後に援護法案の審議を続行いたしたいと存じます。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後三時四十七分開議
  42. 大石武一

    大石委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。  戰傷病者戦没者遺族等援護法案を議題といたします。  まず本案審査のため、来る二十五、二十六両日の公聴会の公述人選定の件についてお諮りいたします。本件に関しましては、現在すでに委員長のもとに百通余りの申出書が届いており、先ほどの理事会で皆さんと協議いたしたのでありますが、公述人となるための申出の締切りは、実のところ明二十一日になつておりますが、先ほど申し上げました通り、現在までに相当数の申出が参つておりますので、一応本日公述人の選定をしておき、後にまたどうしても公述人に選定したい方等がございましたら、追つて協議決定いたしたいと存じますから、以上御了承を願います。  それではお諮りいたしますが、青木秀夫君、佐伯藤之助君、開口勳君、中川廉君、陰山壽君、高木三郎君、村島喜代君、任都栗司君、藤村釜藏君、大井秀雄君、鈴木富太郎君、佐藤信君、藤田美榮君、森田忠平君、浦田博君、武田清子君、末高信君、以上の諸君を本案審査のための公聴会の公述人に選定するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 大石武一

    大石委員長 御異議もないようでございますから、以上の諸君を公述人として公聴会に出席していただくべく、所要の手続をとりますから、御了承を願います。  次に本案についての質疑を、前会に引続いて通告順に許可いたします。堤ツルヨ君。
  44. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは順を追うて大臣に御質問を申し上げます。今まで御質問になりました青柳委員の御質問に対しまして、もう一つ、私たちは納得が参りませんので、重ねてはつきりと御答弁を承りたいのでございます。大臣の御答弁では、恩給法復活の問題に関しましては、恩給法特例審議会を設けて妥当な意見を出し、しかる後に考えたい。従つて現在出されておりますところの戰傷病者戦没者遺族等援護法案に対するこの処置は、私の今までの質問に対しましても、二十七年度限りのものであるか、あるいは二十八年度以降もそのまま存続をして行くものであるか、そこのところはまだはつきりしていないということを言われておるのであります。しかも青柳委員が重ねてたびたび御質問になりましたように、公債で支拂われます一時金の五万円というものは、恩給法の復活後これをすりかえた場合には、何らこだわらない性質のものであるということを、実は言つておいでなつたと思うのでございますが、これを臨時的な本年限りのものとしてお考えなつておるか、あるいは二十八年度からは今までお答えになりましたように、恩給法特例審議会の結果を待つてすりかえるものとお考えなつておるのか、そこのところをもう一度、はつきりしないようでございますから、御答弁を承りたいと思います。
  45. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この援護法は、御承知のように、元恩給があれば、遺族に対しましても、傷痍軍人に対しましても、恩給でそれぞれの扶助が行われているわけであります。ところが、それが停止されておる。そこでわれわれはこれを放置することができないから、恩給の問題を待たないで、ここに援護として乗り出したわけであります。それで恩給はどうなるかということになりますが、この恩給は一応一年延期になりまして、その間に審議会をつくつて、審議会の意見を聞いた上でと、こういうわけであります。そこでかりに来年度から恩給というものがどういう形になつて出るか、これは審議会の意見をまたないと、私はわからないと思うのですが、そういうふうになれば、これが二重に出るということはないでしようから、そこに切りかえられる。しかし、それは将来の問題ですから、審議会の意見が来年からやるつもりでやつたのが、来年できないかもしれない。従つてこの法律は今年限りということも言えない。そうかといつて、これを毎年続けるかと言われますと、そのつもりでこれを出しているわけではなくて、恩給というものは審議会にかけて検討するというつもりです。将来のことでありますから、将来はつきり見通しがつき、確定するまでは、この法律は一応続くという建前で出ざるを得ぬじやないか、かように考えておるわけであります。  それから、第二にお尋ねの公債の問題でございますが、これが恩給に関係があるかないか、こう言われるのですが、これは審議会でどういうふうに取上げられるか、その審議会の答申をまつて政府が処置することでありますから、初めから五万円出したものは、恩給にこれで影響させるのだというつもりで、もちろん出しておるわけでもありませんが、影響があるかないということは、将来審議会で検討される問題であり、将来の問題であります。一応ここに出ておりますのは、援護として一時金と年金というものを考慮して出しておる、かように申し上げておるわけであります。
  46. 堤ツルヨ

    ○堤委員 大臣のこの法案をお出しになりました気持は、よくわかるのでありますが、いろいろな角度から検討いたしまして、これは臨時措置的なものであるということをお認めになるのに、大臣は御異議ございませんか。
  47. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は新しい制度ができるまでは、臨時とは言えないのではないかと存じます。およそ将来にいろいろな問題が出て来るでありましよう。しかしそのときに、今年改廃になるか、一年後に改廃になるか、一年半になつて改廃になるかわかりませんが、とにかく将来の問題がはつきりしない限りは、臨時というわけに行かないのではないか、この考えておるわけであります。
  48. 堤ツルヨ

    ○堤委員 この間の大臣の提案理由の御説明の最後に、これがため必要な法的措置として恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案、これを今国会に提案したいと考えておりますということを、はつきりここでおつしやつておいでになる。それが都合によつて一年延びるか、あるいはさらに二十九年度になるか自信がない。今御答弁になりました大臣のお言葉と、この提案理由の中に書いてある言葉との間には、大きな違いがあるのでございますが、この点、大臣どちらがほんとうでございますか。
  49. 吉武恵市

    吉武国務大臣 国会に出すというのは、恩給法を出すという趣旨ではございません。これは内閣の方から出る法律でございますが、さしあたり来年の三月末日まで恩給の停止を続けるという法律が出るということでありまして、恩給法が出るというのではございませんので、誤解のないように願いたいと思います。
  50. 堤ツルヨ

    ○堤委員 大臣は、次の法案が出るまでは、これは臨時措置的なものと見られないというふうに、ただいま御答弁になつたのでございます。われわれ遺族の要求もございまして、今までまじめに検討して参りました結果から申しますれば、大臣自身も、はなはだ不満きわまるもので、まことに申訳ないということを、たびたびおつしやつているのでございますが、この法律建前でなしに、内容から見ましたときに、遺族としましては、あくまでも臨時措置的なものであつてもつと完全な予算において、もつと完全な法律を来年度からは——たとえば今年の補正予算の中にでも組んでするということをうたわなければ、われわれ委員としても納得が行かないのでありまして、戦傷病者戦没者遺族等援護法案とうたつてございますけれども、これ等に対する臨時措置法案とうたうべきがほんとうではないかと思います。この点、法の建前からではなしに、内容の問題、財的な裏づけの見地から、臨時措置的なものとお認めになるお見込みはございませんでしようか。
  51. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お話のように、私は今度の予算的措置は、決して十分なものとは考えませんで、はなはだ遺憾だと思います。しかしその内容は、財政に関係のあることでありますから、財政の充実をまつて内容の充実をはからなければならぬと、私は思うのであります。しかし、それはどの法律にも共通した問題はあることでありまして、たとえば社会保障制度にいたしましても、現在の社会保障制度で十分かというと、不十分な面もあろうかと私は思います。それは逐次財政の許す範囲において、改善されて行くべきものである。それでは、今ある社会保障のいろいろな法律も、みんな臨時法かというと、これは臨時法とは言えないので、充実することは当然でありますけれども、一応制度としてはあるわけであります。従つて、今度の援護法というものも、内容の充実をはかるべきことは、私は十分考えなければならぬと思いますが、それだからといつて、これが臨時だというわけには参らない、かように考えます。
  52. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは大臣は、この法案は昭和二十七年度のみに適用するということを、もしこの委員会の意向として私たちが主張いたしましたときに、これをお受入れになるつもりがありますがどうか。
  53. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは議会で御審議願うことでありますが、私の意見をお尋ねになれば、私としては、今年限りの法律というとは好ましくないのではないか、かように存じます。と申しますのは、受ける方から申しますと、将来よくなるという期待は持たれるが、少くとも不満であつても、この制度が今年限りで終つてしまうという不安よりは、この制度は、よくても悪くてもこれは続く。よりよいものが将来出て改善されるということは、国民は期待するのでありましようけれども、この程度のものでも、今年限りで終つてしまうということは、私は必ずしもいい感じを與えるかどうかという点に、疑問を持つものであります。
  54. 堤ツルヨ

    ○堤委員 私の申し上げておりますのは、当然今年限りこれを捨ててしまつて、来年はなくなつてしまうという不安を與える意味のものではなくて、この法律案最低の今年限りにして、さらによいものを来年は充実するという意味の私の意見でございますから、そこの点はひとつ誤解のないように願いたいと思います。  それから、ここで青柳委員が御質問になりましたことに対して、この法案の性質は、大体援護であるということをお答えになつております。弔意を含んだ援護——もちろん言葉の中には、国家の義務としてやるべきものだがという言葉もございましたが、あくまでもこれは援護であるというふうに大臣はお答えになつておるのでございますが、この法律性質というものは、国家公務によるところの死亡、傷害者、犠牲者というものに対しまして、私の考えますところでは、援護というところの精神であつてはならないというふうに考えるのでございます。御存じのように、国家公務によるところの人たちに対する災害法的な性質のものである。それからさらに恩給法によつて保障しておりましたあの保障的なものである。でありますから、この「ほしよう」に二つあります。補う償うの補償と社会保障制度の保障、この二つの建前に立つて国家公務に殉じた人たちに、私は補償をなさなければならないと思います。大臣は、援護ということを御主張なつておるのでございますが、この点もう一度はつきり大臣の御答弁を承りたいと存じます。
  55. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は最初に申し上げましたように、援護という言葉を使つておりまするが、これはやはり国家の義務としてやるべきものである。従つて国家補償的な観念の上に立つての援護であるということを説明しているのであります。そこで国家補償という言葉になりますが、昔の恩給法は扶助という言葉を使つておる。この扶助という言葉は、やはり国家補償から来た扶助ではないかと私は思います。それで扶助という言葉を使つたら補償でないというふうには私は理解していないのであります。従つて援護という言葉を使いましても、それはやはりどこから来るかといえば、ただ困つているから救つてやろうという観念でないことはもちろんであります。国家の義務として国家にささげられた犠牲者に対して、国家が補償的な考えをもつて援護をすることは、私はさしつかえないのではないかと思います。それで今まで世間に使われました過去七年間の状況を見ましても、世間では遺家族を何とかして援護すべきではないかということから、遺家族援護という言葉は、ずいぶん私は使われて来たのではないかと思います。それでこの援護ということが、国家補償的な観念から出ないということになれば、お説のような議論が出るかもしれませんけれども、これは当然国家がこの犠牲者に義務としてやるべきものであるという観念におきましては、私はかわりない、こう思つております。
  56. 堤ツルヨ

    ○堤委員 もちろん春闘援護という言葉は使われておりましたけれども、私たちがこの法律案を審議するにあたつて、私はあくまでも援護という言葉は、国会議員自体が葬り去るべき言葉であると考えております。援護とは、極端に申しますれば、慈善、憐憫の延長に誤解されやすい言葉でありまして、大臣はこの戰傷病者戰没者遺族等援護法案ということで、この法案に援護という言葉をお入れになつておるのでありますが、私は補償法案に訂正されるべきではないか、かように考えるわけでありますが、その意思はさらにございませんか。
  57. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は援護という言葉で出る方がいいのじやないかと思つております。というのは、内容的に補償といえば、補償に起るものでなければ——ただ名前だけ補償と言つても、実際の内容は大して充実していないものだということよりも、私は率直に、気持は遺家族に対して国家国民として援護するという言葉の方がいいのではないか、かように私は感じております。
  58. 堤ツルヨ

    ○堤委員 これ以上は意見にわたりまして、対立いたしますから、私の足りない点はまた岡委員からさらに掘り下げていただこうと思いますが、そこでこの遺家族援護の法律適用される対象の問題でございます。昭和十六年十二月八日から昭和二十年九月二日、いわゆる太平洋戦争の期間に限られているのでございますが、御存じの通り日華事変の当初から戦死した人たち、また遺家族、戰傷者等を検討してみますと、相当の数を加えるのでございまして、これが対象になつておらないのですが、これに対しまして、大臣の御説明を承りたいと思います。
  59. 吉武恵市

    吉武国務大臣 実は年金の方は、もちろんずつと前から出すことにしております。十六年の十二月八日以後ではございませんで、年金はそれ以前の遺族に全部出ております。ただ一時金の方の公債の分は、御承知のように日華事変までは、大体完全に一時金のようなものが出ておつたように存ずるわけであります。十六年十二月八日以後の太平洋戰争の最初のころは出ておりましたが、中途から出なくなつている。そこでどこから区切るかということになりますといろいろ問題がありますので、まあ、一度出なかつたところの十二月八日からの太平洋戦争に限つたらどうかということで、太平洋戰争に限つておるわけであります。それ以前までは一時金的なものは大体出たように私の方は存じているのです。
  60. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは太平洋戰争以前の一時金に対する細部にわたつた報告について、事務官から答弁をしていただきたいと思いますが、さらにもう一点詳細にお伺いいたしたいのは、実は沖縄に遺族が三十万あるのでございます。それから奄美大島に戦死者が一万二千で、これは遺家族六万人と言われておるのですが、この人たちに対しては、大臣はどういうお気持を待つておいでになるか、御答弁を願いたいと思います。
  61. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御承知のように、まだ現在沖縄及び奄美大島は、日本の内地の法律適用が、ございませんので、やむを得ないを得ないのではないか、かように存じております。
  62. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ただいまの大臣の御答弁が、やむを得ないのではないかということでは、この遺家族、戰死者に対するところの法案をお出しになる大臣としては、あまりにも無責任な御答弁ではないかと思います。私は、大臣が何から努力をなさつてつたのではないかと思うのでございますが、そういうこともないのでございますか。行政的な支配下になるから、初めからすつかり捨てて、今まで忘れておいでになつたのではないかと考えられますが、いかがでしようか。
  63. 吉武恵市

    吉武国務大臣 そうではございませんので、実は適用をしたいと思いますが、遺憾ながら日本法律日本範囲内だけにしか今適用がございませんので——ようやく先般十島村だけは解除になりまして、今十島村にはいろいろな国内法が適用されているという状況でございますので、やむを得ないと思つております。
  64. 堤ツルヨ

    ○堤委員 私は政府が待つておられるところの外交権によつて、これに対して当然政府として責任を待つて考えにならなければならない問題ではないかと思いますし、さらに余地があろうと思いますから、御研究を願いたいという希望を申し添えておきたいと存じます。  それから次に、もう一つはつきりいたしませんので承りたいのは、非常に重要な問題でございますが、生活保護法と本法との関連でございます。大臣は青柳委員の質問に対しまして、運用の点で考慮を拂うというところの抽象的な御答弁なつておるのであります。しかし、これは実際当面して参りますと、はたして大臣がおつしやるように、運用の点で考慮を拂うということが地方において行われておるかどうか、現在までの生活保護法の運用を考えてみますときに、非常に前途暗澹たるものがあるのでございます。抽象的なお言葉でなしに、生活保護法と本法との関連について、かくかくしかじかにおいて末端までかくのごとき補償の手が延べられるということを、抽象的でなしに、もう少し大臣に御答弁を承たいと思います。
  65. 吉武恵市

    吉武国務大臣 御承知でございましようが、生活保護法の建前から申しますると、厳格にいえば、差引かざるを得ないのであります。いくら遺族であるからといつて、遺族だから差引かない、遺族でない者は差引くというふうなことは、参これは建前から来られると、実はできない相談でありますが、実際の常識として、遺族の方々は国家にささげられた犠牲者の遺族であり、しかも内容としては十分なものではないのだから、それに多少の手心を加えるべきではないかということは、私はおそらく国民の気持としては許されることではないか。従つて、私は運用の面で考慮を拂つて行きたい、かように存じておるわけであります。だから、真正面から言われますと、生活保護法の建前からは、どうしても差引かなければならぬという議論になるかもしれませんが、そこを皆様方の御了承を得られるものと考えまして、運用の面で手かげんをしよう、かように存じおるわけであります。その趣旨の徹底につきましては、これはそうえてかつてなような、地域によつて違うようなことはできませんから、大体標準を定めまして、趣旨の徹底をはかるべきことは、私は当然だと考えておるわけであります。
  66. 堤ツルヨ

    ○堤委員 この生活保護法との関連の問題は、私たち小委員会において、各委員が審議いたしましたときにも、法律ができても大してありがたくないという結果に終る人たちが、相当出るのではないかというので、私たちが非常に憂慮した問題の一つでございます。そこで、大臣がそういうふうに考慮を拂うという答弁をなさいましても、末端においては、なかなか行き届いた処置ができないということは明々白々でございますから、生活保護法自体の改正を、本法と関連してしなければならない必要が起つたときには、あるいはしてもよいというような考え政府ではお持ちになつているかどうか。
  67. 吉武恵市

    吉武国務大臣 生活保護法の建前から申しますと、そういういう処置は、表向きには無理でないだろうか、できないのではないだろうかと私は存じております。従つてあまり表向きにやかましくおつしやらないでいただいて、ひとつ考慮を拂わせるような御処置が願いたい、かように存じております。
  68. 苅田アサノ

    苅田委員 今、堤委員がお聞きになりました生活保護法との関係で、大臣はこれは予算委員会以来、しばしば運用の面で考えるとか、実情に即してやると、お答えになつおりますけれども、どの程度、どういうふうな実情に即してやられるかということの例として、ひとつお聞きしたいのですが、大臣も御承知のように、この四月一日からは、生活保護法が改正されまして、五人世帶では七千円までの基準がとれることになつておるわけです。これは何も恩恵でも補償でもなんでもなくて、法律の明文にはつきりうたわれてあるように、日本人としての権利として、七千円までの最低生活の保障ができることになつておるのであります。ところが、今回の援護法によりますと、援護という名目によつて、御承知のように、両眼を失明したとか両手がないとか、両足がないとかいうような、寝ていなければならない病人に対して、月に五千五百円の年金しか出ておらないのであります。日本人であれば、そういう病人ならば、扶養家族があれば当然七千円はもらえる。現に私は、そういう人が七千円もらつておるかもしれないと思うのです。ところが、今度の援護法では、少くとも国家が補償するというのが精神だとおつしやるのですが、これで五千五百円なんです。こういう場合に、それでは実情に即して五百円だけまけてあげようとか、千円だけまけてあげようというのでは、私はこれでは何にもならないと思うのです。ですから、大臣は、日本人として当然保障される生活保護法の適用が七千円であれば、少くともこういう人に対しては、その上に五千五百円は当然加算されると思うのですか、こういう場合いかがお考えでございましようか、それをひとつ伺いたいと思います。
  69. 吉武恵市

    吉武国務大臣 例をおとりになりましたが、たとえば七千円もらう人が今度の特項症で五千五百円もらう、これを全然考慮しないということになれば、七千円から五千五百円を差引かれますから、手元には千五百円しか残らないということになる。そうすると、もらつてももらわないでも同じだということになる。それではお気の毒だから、私は先ほど申しましたように、相当の考慮を拂いたい、こう言つているのです。考慮を拂うのだつたら全額考慮を拂つたらどうか、そうすると七千円に五千五百円というものは全然二本建で両方とももらえる。そういう建前にしますと、これは生活保護法の建前から、必ずしもそう納得ができるか、どうか。この援護法の方で——生活保護法というのは、実際生活に困るというその限度において出すという建前なつておる法律なのです。その建前なつている法律に、その收入というものを全然差引かないで、別途にまた出るのだということは、生活保護法の建前からいえば、私は無理じやないかと思います。そこで、こういう問題は、あまりりくつにこだわらないで、常識で考慮をして行くということが、国民の大体納得されるところではなかろうか。どれくらい考慮したらいいかということは、これは私はその相手方の実情によると思うのであります。たとえば、特項症の方と、それからそうでない指を多少けがをされたというものも同じ率で考慮するということは、これはかえつて国民の常識ではない。特項症の方には十分の考慮を拂い、そうでないものは、それほど考慮を拂わなくてもいいということが常識じやないか、私はかように存じているわけであります。
  70. 苅田アサノ

    苅田委員 それと同じことを二月五日の予算委員会答弁以来、厚生大臣は答えておいでになるのです。それで、問題が少しも解決されないから、私はお聞きしているのであつて、それでは、もうすぐこの法律は四月の一日から実施されるのですが、どういう具体的なやり方でもつてやるかというようなことを、一切実施される部面にまかせますれば、これはもう至るところで問題が起つて、十分その本人がやつて行けるというようなことは、とうてい保障できないと思うのです。ですから、少くとも生活を十分やつて行けるという保障は、必ずこれで與えられるというようなこと、たとえばどういう場合にはどういうふうな考慮をやるというような、何かもう少し具体的な條項がなければ、納得行かないと思う。本来から言えば、私は少くとも傷痍軍人に対する援護の年金というものは、七千円という現在の生活保護法は、健全な人でもとうていちやんとした生活ができない基準なのですから、これを標準にして行くというようなお考えが、大体間違つていると思うのです。今、私は関連質問でお聞きしているので、私はこの問題は、自分の本番ではもつとお聞きしたいと思いますが、今はそういう意見だけ申し上げておきます。
  71. 堤ツルヨ

    ○堤委員 昨日から大臣の御答弁を聞いておりますと、たとえば障害者の問題に関しましても、特別優先的に雇用するという法案に対して、大臣が反対をされておるという青柳委員の質問、それから、ただいまの生活保護法の抽象的な御答弁に対するところの私の質問に対しましては、非常に人間的な行き方をして、まわりが同情すれば、そんなに何も法律をまつこうから振りかざさなくとも、常識の問題で片づけられるのだということを大臣はおつしやいます。もちろん、私たちもそうありたいし、国民の輿論もそうありたい。そうでなければならないのは、当然のことでありますけれども、現実の生活保護法の運用の現況を見ます場合に、実際にはそう行つておらないのでございます。従つて私は、政府から積極的な手が打たれなければならないと考えるので、かような質問をしておるのであります。大臣は、そこのところを人間的に、法をまつこうから振りかざさなくとも、障害者は社会の中でカバーせられる生活保護法との関連において起る問題も、法の運用の点で考慮を拂うという、通り一ぺんの委員会での抽象的な御答弁で、運用の万全を期せられるとお考えなつておるようでありますが、実際はそうは行かないのであります。この点は、全国をおまわりになつてもおわかりになつておるでしようが、ボーダー・ラインに泣いておる人や、生活保護法の運用がいかに悪平等になつておるか、実際具体的な例があるのであります。こういう点から考えまして、私はこの十分でない援護法、遺家族傷痍軍人に対する法律に対しましては、何か横から十分な手が積極的に打たれなければならないと考えますので、かような質問をするわけであります。生活保護法と本法との関連については、大臣のただいままでの御答弁のようなお考えでは、われわれの望む遺家族への援護は、十分とはいえないということをここで一言つけ加えて、御参考にしていただきたいと思います。  そこで、もう一つお尋ねしたいのは、遺兒の育英の問題であります。これは文部大臣並びに文部関係の方に、青柳委員からも御質問がありましたが、遺家族の援護の問題を考えるとき、その大半七〇%は、残された遺児の問題であると私は思う。その残された遺児の問題のうち、ことに大切なのは遺児の育英であります。国家公務によつて父を失つてしまつたものであるならば、少くとも義務教育、その才能に応じて高等教育、専門の大学教育などに進まんとする者は、当然国家の全額負担においてなされなければならないということが、この法律の中にうたわるべきだということを、私は長年主張して参りました。これは委員会におきましても、皆さんそういうお考えであつたと思うのでありますが、残念ながら六千八百万何がしの金で、大学においてはこう、高等学校においてはこう、小中学校においてはこうということを昨日大臣はパーセンテージで御説明になりましたけれども、これは決して遺族援護の目的を果す方策ではないと考えますので、遺兒の育英に関して、この法案が成立するまでに、大臣は文部大臣並びに大蔵当局といかなる交渉をなされたか、この点についてひとつ納得の行く御説明を願いたいと思います。
  72. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この問題はすでに予算化されまして、来年度においては六千八百万円でございましたかの育英費が組まれておるわけであります。これが少いというお説は、私も少いと思いますが、今日の財政の上におきましては、やむを得なかつた数字だと考えておる次第であります。
  73. 堤ツルヨ

    ○堤委員 文部大臣並びに政府立場からおつしやいますれば、さようなことになると思うのでありますが、私は少くとも義務教育ぐらいは、全額国庫負担を、この法律案の中にうたうべき精神で盛られなければならないものではないかということを主張するものでございますが、大臣にはそうした点の意思は最初からなかつたと解釈してよろしゆうございますか。
  74. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは育英費ばかりではございません。少いということは、たびたび申し上げておりますように、全体について決して十分な満足の行くものとは考えておりません。
  75. 堤ツルヨ

    ○堤委員 十分でないにも、程度があるのでございまして、遺児に対する政府人たちの思いやりがない、誠意がないという一語に盡きると、私は思うのであります。予算全体を見渡しますれば、衆議院でも論議になりましたが、非常にいかがかと思うところの予算が、非常に盛りだくさんに組まれておりながら、社会的な問題としてつくられるこの法律案の中に、遺児育英について、義務教育費全額国庫負担政府の責任もうたわなかつたということは、私は厚生大臣として大きな責任があるのではないか、かように思うわけでございます。この点は、大臣は残念なだけで、義務教育をこの中にうたうべきであるという信條をお持ちにならなかつたように、私は今までのお態度で拝見するのでございま参すが、この点、あらためて遺児の育英に対して、六千八百万でなしに、さらに推進されることができ得るならば、補正予算においてでも何とかなさるような御意向があるか、またその交捗をなさりつつあるか、その点を伺つておきたい。
  76. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今年の予算においては、やむを得ないと思つております。将来の問題につきましては、もちろん努力するつもりでおります。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤委員 遺児の育英の問題に関しましては、また後ほど文部当局おいでになりましたとき、逐條審議の際にでも織り込んで、さらに御質問をしたいと思いますので、この程度で私の質問はとどめておきますが、さらにもう一つお聞きしたいのは、公債の問題でございます。この公債に関しまして、一昨日の青柳委員の質問に対しまして、大蔵当局から御説明があつたわけでございます。これは、大臣もそうだとおつしやるかもしれませんが、政府は、この公債がなるべく市場に出ないように考えて、そうして十年還付を計画しておる、しかも特別なケースに対しては、五年還付という手も考えておるという御答弁があつたのでございます。これは私たちから考えますれば、非常に困つておる遺族が、この国債を手にいたしまして、一番考えることは、何とかして現金にならぬかという問題でございます。そこで十年還付、しかもこれくらいな利子でする政府考えが、のんびりしておると申し上げたいのでございます。私はいわゆる国民金融公庫、また生業資金などと結び合せまして、もう少し遺家族が、害のないように生かし得るような方法を、もつとわくを広げて考えてもらいたいと思うのであります。この点、大臣はこれら出されました結果以外に、さらに一体どういう手をお考えなつておるか、その点をひとつお伺いいたしたい。
  78. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは一昨日大蔵当局から説明したと思いますが、一時に金が出ないので、やむを得ず公債にしたしであります。その公債も、それまですえ置くというわけに行きませんから、十年間の償還で毎年々々やつて行く。しかし、それではお困りの方があろうというので、短期償還の方法を講じて、ほんとうにお困りになつておる一部の方には五年の間に償還する、これを金にかえたいという気持は、みんな同じだろうと思いますけれども、一時に金を出すというわけには行かない。しかし、これを何らか生業資金にする方法はないかということは、大蔵大臣も、国民金融公庫ですか何かの中で何らかの方法ができれば、研究をしたいということは言つてはおります。これは今具体的に目鼻はついておりませんけれども、八百八十三億円ですから、これが一ぺんに金になつて出て来るということになりますと、これはまたいろいろな方面から弊害が出て来る、かように思います。
  79. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ただいまの私の言葉が悪かつたので、大臣に誤解を招いたようでございますが、厚生省としてはどういう努力をなさつたかということであります。
  80. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私も同じ考えを待つております。
  81. 大石武一

    大石委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  82. 大石武一

    大石委員長 速記を始めてください。
  83. 堤ツルヨ

    ○堤委員 恩給局長にお尋ねいたしたいのでございますが、恩給法の復活を非常に急がれているというこの官房副長官の御返事でございました。その恩給法が復活される場合に、非常に不安になつている問題は、あの五万円の一時金が、今度復活するところの恩給法の中で、どういうふうに取扱われるか。これが非常に問題になつておりまして、青柳委員も重ねて御質問になつたのでございますが、今大臣のお言葉によりますと、恩給法特例審議会で妥当な意見を出して、しかる後でなければ、この五万円は実はどうなるともわからないということを、大臣はおつしやつておられます。ところが一昨日の御答弁では、大臣は青柳委員に対して、一時金は、恩給法復活の場合に、今のところで何らこだわらないところのものであると言つておいでになる。ですから、きようの御答弁とはちよつと違うわけであります。きようは大臣は御自信がなくなつたわけです。そこで、恩給法特例審議会がどういう結果を出されるかということが非常に遺家族援護法案の今後の運営に影響するところが多い。従つて恩給法特例審議会の構成メンバーというものが、私は非常に大切になつて来ると思いますが、ただいまお考えなつている恩給法特例審議会のメンバーの構成の基本的な考えを、ひとつ承りたいと思います。
  84. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 恩給法特例審議会の委員その他の職員につきましては、法律によりまして、政令で定めることになつているのでございます。ところで、政令でどういうふうに委員を定めるかということについてのお尋ねかと思いますが、今のところは、委員の数といたしまして大体十名ないし十五名ぐらいを予定いたしております。しかして、その委員は、官民の有識経験者の方々に委員をお願いするように考えているのでございますが、今申し上げました委員の人数の半数以上は、少くとも民間の方から簡抜して委員にお願いしたいと考えているのでございます。
  85. 堤ツルヨ

    ○堤委員 そこで局長一つお願いしておきたいのは、今まで審議会というものがたくさんつくられますけれども、これはただあつてないにひとしい。私らに言わせますれば、名ばかりの審議会が非常に多い。しかも、実質的な活躍をしている審議会というものは非常に少い。いたずらにたくさんの審議会がこしらえられて、国民のこれに対する認識は、このごろでは政府に審議会がつくられますと、またできたか、またできたかといつた式で、ばかにし切つているような審議会が非常に多いのです。遺家族援護法案は、ただいまも私大臣質問いたしましたが、非常に不満足。昭和二十七年度の臨時的なものとして、来年度はさらに予算をふやして充実したものをつくるという意味において、私たちはこれは臨時措置的なものであるということを主張したいと思つておりますが、それに対して、来年度から生殺與奪の権を持つにふさわしいところの恩給法特例審議会の審議をなさる構成メンバー、またその結果というものは非常に大切なものだと思いますから、その点は十分メンバーをお考えになり、そのお出しになる結果というものは、慎重審議を重ねて、この国会とも十分な連絡をとつていただきたいということを、希望として付しておきたいと思います。  それからもう一つ、これは推測でございますから、非常にお答えにくいと思いますけれども局長に御質問いたします。今度出ます一時金の公債五万円というものは、恩給法特例審議会の結果にまたなければならないと言つてお逃げになるかもしれませんけれども局長のお考えでは、目下のところこの五万円というものは、恩給法が復活いたしましたときに何らこだわらないものとして取扱うお考えおいでになりますか、あるいは都合によつてはその場合に生きるものとして取扱われるだろうかというところの、局長自身の考え方ちよつと承りたい。
  86. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案の提案理由の説明の際に申したことでもありますし、また一昨日菅野政府委員からも御説明申し上げたのでありますが、この恩給法の特例につきまして、今度やむを得ない善後措置を講じましたいきさつにつきましては、もう御了承を得ていることと存ずるのであります。その際に申し上げたことでありますが、やむを得なく軍人、軍属の恩給の復活につきまして、まことにお気の毒なような措置をするごとになつたのでありますが、一方におきまして軍人、軍属及びその遺家族の方々をこのまま放任することはできないから、つなぎとして、政府としては援護的な措置を別にやることになつている、こういうふうな説明をいたしたのであります。私はこのつなぎとしての意味にしか考えておりません。しかして、今お話のありました援護法案の中の一時金でございますが、それにつきましてどういう性格のものであり、どんなものであるかということにつきましては、これは政府委員の方々からもいろいろ御説明申し上げてあると思いますが、なおこの審議会における審議の経過というものを十分に参考にして、この恩給法特例審議会における庶務の職員としての役割を果して行きたいと思つております。
  87. 岡良一

    ○岡(良)委員 二十五日と二十六日の公聴会に、ぜひとも参考として承つておきたいので、この機会に局長から資料を御提出願いたいと思うのです。第一は、勅令第六八号によつて提示されている軍人ないし準軍人の恩給あるいは扶助料、その他の諸公の給與についてでありますが、その総額は即時復活をするとするならば、大体どれだけの額であるかということ。それから、これらの恩給権者と思しますか、受給権者は、軍人について将官級は何名であるか、佐官級は何名であるか、また尉官級は何名であるか、その他一般兵、特に特務曹長は何名であるか、その総員における。パーセンテージはどれだけであるか。がつまた将官、佐官、尉官、特務曹長及び一般兵において、その受くべき恩給の額は、これを文官並にベース・アツプして、現在支給されておる文官の恩給ないし扶助料に換算した場合においては、それぞれいかほどであるかという点。この点を、たいへんごめんどうなことをお願いいたしますが、ひとつぜひとも資料として御提出願いたいと思います。  それからなお、この機会に承つておきたいのでありますが、一昨日の青柳委員の質問に対しましての菅野官房副長官の御答弁では、恩給に関する特例は、審議会を設けて、一箇年間その実施は延期しつつ、その間この審議会を通じて慎重に審議をして、何とか復元的措置をいたしたいということを申しておられましたことは、あなたも御同席でありますから、御記憶のことと思います。ところが、きよう、あるいはまたこの法律案の提出に際し、提案理由の説明として吉武厚生大臣の言われ、ておるところによれば、提案理由の説明書にも書いてあるように、国家補償の観念に立脚して援護を実施するとうたつておる。そこで私ども局長に教えていただきたいのですが、恩給法というものは、どちらかと言えば、その対象を国家公務員とする、しかし今日一般民間産業労働者等にも使われておるような養老手当、あるいはまたその死亡に基く遺族への手当というふうな、いわば社会保障的な性格を持つたものじやないかと思います。ところが、吉武厚生大臣の提案理由の説明によると、国家補償と言われます。そういたしますと、国家公務員災害補償法における補償という観念になつて来る。そこで社会保障的な観念と国家補償的な観念、この観念というものは、これは、もちろん切り離して論議するということは、概念の遊戯になるのでありまして、こもごも相併合され、また統一されなければならないものであり、またそういう心組みで実施されなければならないと思います。現在の恩給法というものは、やはり厚生年金保險法か、あるいはそれに伴い、また一般健康保險に伴つて実施されておるところの遺族に対するいろいろな補償とか、労働者災害補償保險法に基くところの遺族補償なり、あるいはその事故に基く身体障害者への補償、こういうものを含めたもので、社会保障的な性格を持つておるのじやないかというふうに私は考えておるのでありますが、そういう私の考えについて、局長の方から御是正をいただければけつこうだと思いますので、その辺のところをお教えを願いたいと思います。
  88. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 私、お教えするような資格もありませんが、私の意見を申させていただきます。その前に、統計のことにつきましての御希望でございます。統計の資料につきましては、私はでき得るだけ御希望に沿うような資料を差上げたいと思うのでございますが、実は今御要求のありました資料は、非常に確信を持つてお手元に差上げるのには、私は躊躇せざるを得ないような状態なのでございます。と申しますのは、今もあれこれと調査をしておるわけでございますし、なおこの四月からも、私、各府県に依頼をいたしまして、私は私としての立場から、なお正確を期したところの統計の資料を求めんとしつつあるような実情でございます。そこで今お話になりましたような将官何人、佐官何人、尉官何人、特務曹長何人というような正確な資料を差上げることができないことを、私今非常に申訳ないと思うのでございます。もちろん、大まかな大体何人ぐらいということは、申し上げられるのでございますが、非常にやかましく統計と仰せられると、困るのでございます。ひとつその点を御了承願いまして、なおあとでよくお打合せをいたしまして出ささせていただくことにしたいと思います。  それから、今の恩給法の性格というか、理念の問題についての私の意見を求められたわけでございますが、今のお言葉にありました社会保障的な性格というお言葉につきましては、どういうふうにそれを解してよいか、それをまず私は疑問に思つております。巷間社会保障とか社会保障的とか、いろいろな言葉を耳にするのでありますが、そのたびに、私が社会保障というものについて、はつきりしたものをつかんでおればよいが、いろいろな人によつていろいろなことが言われておりまして、ある場合においては、私の考えているようなことと同じような意味で言われている場合もあるのでありますが、そうでない場合もあります。しかし、それはそれとして、一応現在の恩給制度が制定されました時から今日まで、政府責任者においてどういうふうに説明して来ているかというようなことを簡単に申し上げまして、御参考に供しておきたいと思います。  恩給の考え方は、法理的と申しますか、申し上げますれば、国家公務員が公務に従事したために、その在職中に受けた経済的な獲得能力というか、稼働能力というか、その減耗に対する補償として出されているものと私たちは考えております。従つて、たとえば国家公務員が右の腕なら右の腕をなくしたときにおきましては、これは右腕がなくなつたために、急激に経済的な獲得能力が減耗するのであります。それを補償するのには、そこに傷病恩給というものが考えられている。これは急激に経済的な獲得能力の減耗を来した場合でございます。それから、長年在職しておりまして、国家に使い古されてしまつたというような場合におきましては、経済的な獲得能力が長期間に徐々に減耗して行つてしまつた、こういうふうに一応理論的には考えるのでありまして、長年在職によつて退職する場合におきましても、また傷病者が急激に経済的獲得能力が減耗した場合におきましても、一貫した一つ考え方に基いて補償的な制度として恩給制度を立てておるものと考えております。
  89. 岡良一

    ○岡(良)委員 そうしますと、問題は、国家公務員の身分にある者が、経済能力の減耗と仰せられますが、ある意味においては、これはただちに生活能力の減耗にも結びつくわけです。生活能力の減耗に基く事故によつて生活能力が減耗した場合においても、長い年月の在職をもつてしても、そういうことは起り得る。それはいわば老年という事態が起つた場合であります。あるいは疾病とか、あるいは公務に基く傷害によつて急激に起つた場合、いわゆる生活能力が極度に、徐々に、とにかく実質的に低下した場合に、国家公務員の身分にあるがために、国としては、義務としてこれらに対してその低下した能力を補填する意味における支持を與え、恩給とか年金とか扶助料とかを與える、こういうことなんですね。そうすればわれわれのいう社会保障の概念と、あまりかわらないと思います。そういう程度でありがとうございました。
  90. 大石武一

    大石委員長 松谷君。
  91. 松谷天光光

    ○松谷委員 他に問題も出て参りましたから、次に一緒にいたします。
  92. 苅田アサノ

    苅田委員 恩給ということである以上、ただいま局長も申されたのですが、これは、そういう在職期間中の給料というようなものが当然加算されて新しく出ると思います。一応階級別の範囲は、どの程度に狭められるか知りませんが、今交付されているものより、一応下まわつたものになると考えられますが、そういう構想でおいでになるわけですか。
  93. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今のお尋ねは、今度軍人、軍属の恩給を復元する場合においては、今苅田委員の構想のもとに私が処置をして行くかどうかというような御質問だと思うのでございますが、私はそういうような自分の私見は入れません。恩給制度について、従来からこの制度はどういうふうになつておつたかというようなこと、あるいはまた現在どういうふうな意味で運営されておるのかということ、文官について、あるいはまた軍人遺族扶助料が廃止せられてから今日までの状況はどうなつているかというようなことは、おそらく審議会の委員の方から尋ねられるだろうと思いますが、そういうときには、私は自分意見を虚心坦懐に申し上げて、実情を説明いたしますけれども、しかしその申し上げたことが、どういうふうに審議会に取上げられて行くかということは、別だと思つております。私の私見をもつて審議会を自由にひつぱりまわす、そういう考えは、今のところ全然もつておりません。
  94. 苅田アサノ

    苅田委員 そういつた場合に、在職中の賃金の相違というふうなものを全然考慮しないということで、新しくできる法が恩給という名にふさわしいかどうか。これは局長の職責においでになる方の御意見ですが、それをお聞きしたいと思います。
  95. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 私は理論的な問題といたしましては、恩給というものは補償という性格のものである以上は、どういうふうに補償するかということが、問題になるだろうと思います。そうしてそれは先ほど申し上げましたところの経済的な獲得能力の減耗といいましても、人によつて違うのはあたりまえだと思います。理論的にはいろいろ違うのがあたりまえでありますが、その違つたものをはかるものさしを、今度はどんなものを持つて来てはかるということに、技術的にはなつて来ると思います。そうしますと、俸給とか在職年数とかいうものが、一つの結論とか、私は理論としてはこう考えておるのでございます。しかしながら、今度は実際の面において、限られた制約下において、この理論を実際にどういうふうにして行くかということは、また別の問題になつて来ると思うのです。だからそういうような場合には、過渡的な制約におけるやむを後ない措置として案が考えらるべきものだ、私はこう思つております。
  96. 大石武一

    大石委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十三分散会