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1952-03-19 第13回国会 衆議院 厚生委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十九日(水曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 金子與重郎君    理事 岡  良一君       高橋  等君    寺島隆太郎君       堀川 恭平君    松井 豊吉君       松谷天光光君    柳原 三郎君       堤 ツルヨ君    苅田アサノ君       寺崎  覺君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君         厚 生 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (保險局長)  久下 勝次君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君         引揚援護庁次長 田邊 繁雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局国庫課         長)      吉田 信邦君         文部事務官         (大臣官房宗務         課長)     篠原 義雄君         厚生事務官         (保險局船員保         險課長)    中村 隆則君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 三月十八日  新井京太君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十八日  兒童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第八二号)(予) 同日  国立療養所における給食費増額請願降旗徳  弥君紹介)(第一五二八号)  国立療養所地方移管反対に関する請願降旗  徳弥紹介)(第一五二九号)  健康保險療養給付期間延長に関する請願降旗  徳弥紹介)(第一五三〇号)  国立療養所富士病院の医療に関する請願(勝間  田清一紹介)(第一五三一号)  公衆衛生機構改革に関する請願田嶋好文君  紹介)(第一五六三号)  母子福祉法制定請願石川金次郎紹介)(  第一五六五号)  同(高塩三郎紹介)(第一六〇六号)  同(鈴木明良紹介)(第一六〇七号)  同(多田勇紹介)(第一六〇八号)  同(門脇勝太郎紹介)(第一六二五号)  上士幌村居辺無水地帶上水道敷設請願(伊  藤郷一君紹介)(第一五七九号)  広島、長崎両市における原爆犠牲者遺族援護  に関する請願坪内八郎君他六名紹介)(第一  六〇三号)  国民健康保險事業費国庫補助増額請願滿尾  君亮君紹介)(第一六〇四号)  あんま、はり、きゆう及び柔道整復師免許制  度存続等請願佐々木盛雄紹介)(第一六  〇五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  戰傷病者戰没者遺族等援護法案内閣提出第六  六号)  船員保險法の一部を改正する法律案内閣提出  第八〇号)     ―――――――――――――
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  戰傷病者戦没者遺族等援護法案を議題とし、前会に引続き通告順によつて質疑を許可いたします。青柳一郎君。
  3. 青柳一郎

    青柳委員 私は厚生大臣に対して、遺族一時金について、まず承りたいと思います。昨日も、この点につきましては、質疑応答を重ねたのでありますが、まだ納得すべき御答弁に接しておらないのであります。それは何かと申しますと、普通に、恩給制度その他給與に関する制度におきまして、一時金と称するものは、その限度において打切つて、ほかに年金などを支給することがないのを普通としておるのであります。本法案に基くいわゆる一時金は、これと趣旨を異にいたし、二十七年度中においても、さらに将来も、年金または恩給による扶助料等を、支給すべき遺族に対して支給せられるものでありますから、普通に恩給等にいわゆる打切りの一時金とは、異なる性格を持つておるものと思うのでございますが、御所見いかがでありますか。
  4. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この遺族一時金は、実は恩給とは別でございますので、その点は御了承いただきたいのでありますが、この法律年金と一時金と二つを設けましたのは、御承知のように、年金につきましては、未亡人、それから十八歳未満の遺児の方と六十歳以上の父母祖父母の方に年金として差上げる、そのほかに一時金として五万円を今申しました配偶者あるいは未成年お子さん、あるいは父母祖父母あるいはお孫さんというふうなのに一時金こして公債を差上げる、二重なかつこうになつておるわけであります。従つて、この一時金の五万円は、毎年差上るのではなくして、一回限りだということであつて年金にかわる一時金という意味ではございません。
  5. 青柳一郎

    青柳委員 この一時金が恩給制度によるものでないということも存じておりますし、また今回限りのものであるということもよく存じております。さらにお尋ねいたしたいのでありますが、結局もつとかみ砕いて申しますと、一時金がもうすでに前に出たんだ、それをもらつた人は、その後においてはすでに年金をもらい得る資格を喪失したのだというふうになつては相ならぬという顧慮から、御質問をしておるのでございます。そういう意味を持つのが、一時金の大体の性格であります。ひとり恩給法のみならず、他の給與制度におきまして、一時金と言うと、もうそれで打切つてしまつて、その後においては、一時金をやつたんだから、年金はやらないということになりがちなのであります。そういう意味のものではないということの確認を得たいから、質問いたしたのでございます。どうぞ御答弁を願います。
  6. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今申しましたように、これはたとえば未亡人の例をとつてみますと、未亡人の方には、年金が本法律によつて毎年出るわけであります。その方も一時金の五万円はもらわれるわけであります。そうすると、未亡人がこの五万円をもらわれたら、翌年から年金はなくなるか。そうはなつていないから、御了承願えると思います。ただしかし、この一時金をもらつた者が将来恩給の方でどういう関係になるかという問題は、別個の問題になりますから、それは恩給法特例審議会等で慎重に御審議になつて、いろいろな案が出るだろうと思います。私どもはそれがどうなるこうなるということは、全然ここでは考えないで、この法律だけの建前で出ておることを、御了承いただきたいと思います。
  7. 青柳一郎

    青柳委員 大体はつきりして来たのでありますが、なおこの問題につきましては相当掘り下ぐべき問題もありますので、他日に聞きたいと思います。要は、結局この一時金は、恩給ではないということは、はつきりしております。従いまして、将来恩給が出たときに、恩給法上においてすでに一時金を出したのであるから、もう金が出ないということには相ならぬ、こう思うのであります。ことに、ただいま大臣から、この一時金は年金と併給されるべきものであるというのが、この法案趣旨であるというお話でありましたので、その点はこの程度にいたしまして、なお掘り下げて他日において聞きいた、こう存じます。  次に承りたいのは、遺族一時金の性格についてであります。この一時金は、死亡した者一人について五万円を国債をもつて支給せられることが、本法案の三十七條に規定されておるのであります。たとえば、ここに兄弟二人があつて、その兄弟いずれも戦争行つて戦死をした、現在その戦死した者には妻は残つておらない、子供もないという際には、父母にこの五万円が二柱分行くということに相なるのであります。一人の遺族に対して、一時に五万円の公債二枚以上を支給せられることがあり得るものであると思うのであります。これらの点から考察いたしまして、明治の初めから戰争に際して死んだ者に対して與えられた死亡賜金のごときものと思われるのでありますが、その点につきまして、大臣所見を承りたいのであります。すなわち英霊一柱に対して国家はこの際五万円の国債をささげて、遺族に対し、つつしんで敬弔の意を表する性格を持つておるものと思うのでありますが、御所見いかがでありますか。
  8. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは、実は沿革を一応申し上げなければならないかと思います。これは御承知のところだとは思いますけれども、念のために申し上げます。実は予算措置の際は、最初未亡人と遺兒の方だけに年金として、父母祖父母には公債で一時金で打切るということで出たわけであります。その後いろいろな方面の御意見を聞いて、そうすることよりも、年金を、妻、遺兒の額を多少減らしてでも、お年寄りの父母祖父母に対しても出すようにしたならばどうか、予算範囲でまかなえることならばということで、本法におきまして、未亡人については一万円、そのほか遺兒の十八才以下については五千円、同時に六十才以上の父母祖父母にも年金とすることといたしまして、そのかわり父母祖父母に一時金として五万円出るものをその遺族範囲につき一柱五万円、従つて御指摘になりましたように、お二人のお子さんをなくされた親がおいでになれば、その一往五万円でありますから、二人で十万円公債が行くというふうになつたわけであります。その性質につきましては、弔慰意味ももちろんございますが、本法で取上げておるものは、要はその遺族に対する援護というところから年金と一時金とが出る、こういうことに建前がなつております。
  9. 青柳一郎

    青柳委員 大臣提案理由説明の中に、国家補償観念に立脚してこの際援護を行う。こうあるのであります。「国家補償観念に立脚して」という言葉が、私ども非常に心あたたまる思いがするわけであります。そういう意味から申しまして、この一時金は、ただいまの御答弁によりますと、弔意を表する意味も含むというお言葉もあつたのでありますが、性格としては、やはり弔意を表するものである、さすれば死亡賜金的な考え方によつて出されるものとこう考えるのであります。私の考えが大臣の御答弁と違つておりますかどうか、御答弁をいただきたい。
  10. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この一時金は、先ほど申しましたように、予算的処置としては、いわゆる遺族に対する援護ということで、年金と一時金との二つがあつた、それは未亡人、遺兒だけが年金で、交母和交母が一時金ということにしないで、年金両方にやるかわりに、一時金も両方にとこういうことになつておる建前であります。その一時金の公債については、もちろん弔慰意味も含まれておりますが、弔慰だけということでなしに、法律建前遺族に対する援護が、年金のものと一時金のものがあるというふうに御了承を願いたい、こう思つております。
  11. 青柳一郎

    青柳委員 現在の生活の苦しさを打開する際、政府から恩惠的な金をいただいて自立しようという考え方は、遺族心情に全然合わない考え方であるのでございます。あくまでも遺族といたしましては、あの犠牲に対して国家補償を望むというのが、真の心情であると思うのであります。これは、大臣もよく御存じの点であると思うのであります。そういう意味からいたしまして、私ども気持からいたしますならば、英霊一柱に対して五万円をもつて、つつしんでこの際国家より弔意を表してもらうということが、大臣の言われる国家補償観念に立脚する点であり、また遺族心情ぴつたりそぐう点なのであります。そういう意味からわれわれといたしましては、これをかの死亡賜金弔慰金のごとき性格を持つべきものである、こう解釈しておるのでありますが、大臣はそれに対して反対であるかどうか承りたいと思います。
  12. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私が提案のときに申し上げましたように、このたびのこの援護は、もちろん国家として国家に命をささげられた方の遺族に対し、義務としてやるべきでありまして、これはただ国家が恩惠的に差延べるべきだとは考えておりません。もちろ国家補償建前から、援護として出るわけでありまして、これを本格的に申しますと、それが恩給とかいうような制度で初めから出るべきだろうとも思うのでありますけれども、しかし、これは現在停止されておりますし、また根本の問題はもつと深く検討した上でやるべきであつて、そう軽々に取扱うわけにも参りません。しかも遺族に対する援護はほつておくわけには参りませんから、援護として出ているので、考え方としては、もちろん国家義務としてやるべきものであることは当然でございます。
  13. 青柳一郎

    青柳委員 国家義務として弔意を表する意味も含んで、英霊一柱に対して五万円の公債を出す、さすればこの法案にあることとは異なりますが、父なきあと家を守つておる子供、その子供に対して五万円の公債が與えられる際には、その子供未成年である場合に限るということは、われわれとして理解できないのであります。また英霊を守る人は――もうすでに戰争後六年半にも相なります。従いまして、恩給法に言われる遺族は、すでにほとんどおらずして、ただ兄弟姉妹英霊をまつつてするという現実の事実を多数見出し得ると思うのであります。これに対しましても、この恩典に浴させたいと存ずるのであります。この点につきましては、なお御当局の御考慮を願い、われわれも考えて行きたいと存じます。しいてこの際大臣に御質問いたさないことといたします。  続いて、厚生大臣に対しまして御質問いたしたい点は、生活保護法本法との関係でございます。遺族に與えられる年金は、未亡人に対して年に一万円、その他の遺族に対して五千円だけであります。その他に五万円の公債利子年に三千円あるのみであります。この程度のものでは、なお生活保護を受けざるを得ざる遺族相当数に上るものと思われます。さらにはまた、この法律によりまして年金はもらつたけれども、そのために生活保護費がもらえなくなつた、または非常に減額せられたというのでは、厚産大臣の言われる援護の精神に立脚するということと、ほど遠いことに相なると思うのであります。大蔵省当局におきましては、本法案につきまして、公債の元金以外のものにつきましては非課税の措置をとつておられます。――これにはなお問題があると思うのでありますが、こういうあたたかい措置をとつておられるのであります。厚生大臣提案理由の御説明にはなかつたのでありますが、これらの年金及び公債利子などを、生活保護法の收入所得に算入せざるよう相当考慮を拂う必要があると思うのでありますが、御所見を承りたいと思うのでございます。これを傷痍軍人の場合にとつてみましても、同様でありまして、障害年金支給を受けた者が、生活保護法による要保護者として扶助を受けている場合の扶助額の決定について、もし障害年金をそのまま収入所得として生活保護法において取扱われるときは、せつかく年金支給意味がないのでございます。ことに重度の傷痍者は、附添人を要する、また労働をしなくとも、戦傷者は日常の生活において疲労がひどく、回復するには相当のカロリーを必要といたします。またさらに戰傷者につきましては、各種被服の費用が多分にいるのでございます。ズボンであるとか、シャツであるとか、そういうものが損する度合いが多いのであります。西ドイツにおきましては、戰傷者に対して被服手当給與せられているということを聞くのであります。まことにゆえあると思うのであります。新しく本制度が発足するにあたりまして、生活保護制度運用についても、十分なる考慮が拂わるべきものであると信ずるのでありますが、御所見いかがでありますか。
  14. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ごもつともな御質問でございまして、今回の遺族援護は、年金にいたしましても一時金にいたしましても、実は予算制度を受けまして、十分ではございません。従つて、今回遺族の方で生活にお困りになつて、おそらく生活保護法の通用を受けられる方も相当おありだと思います。その際に、わずかな援護費が全然差引かれるということになりましたのでは、結局同じだという方もおありかと思つて、実はその点私非常にお気の毒だと思つております。しかしながら、今回の援護が全然生活保護法と別個に支給される、生活保護生活保護法支給を受け、またそれ以外に援護法が全然プラスになるということでは、生活保護法建前から申しまして、やはりいかがかと存ずるわけであります。従いまして、問題は、これは運用の点において相当考慮を拂うということで行きたい、かように存じておるわけであります。お話のように、遺族ばかりではありません、傷痍軍人の方にとりましても、相当の重傷の方は、一生働くこともできない、家族もつききりという方もおありになりまして、それらが年に六万六千円では、とうてい生活ができるわけはございませんですから、生活保護法適用の面において相当考慮を拂つて行きたい、私はかように存じておるわけであります。
  15. 青柳一郎

    青柳委員 大臣から生活保護法適用に関して、相当考慮を拂うという言質を得られたのであります。この相当考慮につきましては、本法案が衆議院を通過するまでの間に、はつきりとした具体的なことをお示しくださることを切にお願いいたします。  次に、戰傷病者及び遺族雇用問題についてであります。諸外国におきましては、戰傷病者雇用について、法制化が行われておつて、わが国においても、最近同様のことが論議せられ、調査研究がなされました。しかるに、大臣労働大臣として、この法制化反対しておるのでありますが、これについての御方針を承りたい。  さらに、遺族についても同様の問題が多々あるのであります。未亡人の擁する子供は、終戦後六年間、すでに大きくなつて、小学校に入る時代が来ておるのでありまして、未亡人は割合に働きやすくなつて来たのでありますが、なお職場を探すのに苦労しております。この際未亡人を中心とせる婦人に対して、職場を與える方途いかんという問題が第二であります。  さらに遺兒につきましては、片親であるというゆえをもつて、信用のないためか、雇用を拒否せられた例を多数聞くのであります。戰傷病者及び遺族に與えられる補償援護は、この制度によるも、まだ至つて貧弱であります。これらの人々の自立自営のための雇用促進に関する厚生大臣の御方針を承りたいのであります。
  16. 吉武恵市

    吉武国務大臣 傷痍者雇用について、法律でもつてやるという意見もございましたが、法律で割当てて強制雇用させるということも、一つの方法ではございます。しかしながら、けがをされた方を法律で強制して雇わせるということは、将来勤められての気持の上においていかがかという感じがいたします。よその国はいざ知らず、日本の国のことでありますから、国のためにからだをささげられた方に対して、国民として話合いの上で雇用して行くということができぬことはないのではないか。現に私ども労働省の方でも安定所を通じまして、相当のお世話もしておりまするし、また他方の公共団体等におかれましても、やはり公共団体で、その村のけがされた方は村に勤めさせるということで、やつておられるところも相当あるわけであります。これは、何人以上の工場には何人について何人というふうな扱い方で行くことは、かえつて私は気まずいことになるのではないかと思いまして、この点は私は日本人同士を信頼いたしまして、政府の努力によつて行きたい、かように存じます。しかし国民が、国の犠牲者だからただ雇うんだぞというばかりでは、なかなか長く続きにくいと思います。従つて、腕に覚えがある、腕に職を持つということは、非常な強みであります。かりに足をけがされましても、腕に覚えがありますれば、それでりつぱに職業を持つて立つことができるのでありまして、現に私も病院等で指導されているところを伺つてみましたが、相当の技術に達している方がございます。従つて、今度の予算措置で――従来もやつておりますが、それ以外になお二箇所の授産場と申しますか、技能養成所と申しますか、それをつくりまして、その方々にそぐう職業をお教えして行くことをやりたいと思つて、わずかではございまするけれども、二箇所分の予算を計上しているわけであります。
  17. 青柳一郎

    青柳委員 ただいま戰傷病者雇用につきまして、大臣の御所見伺つたのでありますが、私どもといたしましても非常に同感でございます。ただこの法案が出発するに際して、新しく各方面に、ただいま大臣が申された点を強力に押し進める手段を講じていただきたいと思うのですが、そういうことをする御意思があるかどうかということが一つでございます。  さらに先ほど申しました未亡人並びに遺兒の雇用の問題であります。これらはその家が片親であるということのために、雇用につきまして非常に残酷な目にあつておる事例を聞くのであります。これにつきましても、いい方途を講じていただきたいのですが、どういう方途があるか、お答えを願いたいと思います。
  18. 吉武恵市

    吉武国務大臣 実は、今までもやつておりまするが、この法律の施行と同時に、一つの大きい国民運動というと、名前は少し大げさでありましようが、遺族戦争犠牲者に対する日本国民援護という点を強く打出しまして今お話いたしましたように傷痍軍人方々雇用の問題、それからちよつと私落しましたが、遺族未亡人あるいは遺児等につきましても、政府の手でもやりまするし、また政府以外の各種団体等の御協力を得て、強力に押し進めて行きたいつもりでおります。
  19. 青柳一郎

    青柳委員 厚生大臣に対しては、まだ御質問がたくさん残つておりますが、この際私は大蔵省当局に対しまして、国債につきまして、簡単に質問いたしたいと思います。まずこの国債換金措置については、生活困難な者に対しては、その実情に応じて、相当の金額の換金が行われるようにいたしたいのでありますが、これについての御所見、御方針を聞きたいというのが一つであります。  さらに、本法案の第四十六條には、担保を禁止しておりまするが、この国債担保として生業資金の貸出しの方途を講じてもらいたい。農業に関する証券、あるいは漁業に関する証券につきましては、担保とする道が講じてあるのではないかと思うのですが、その方途を講じてもらいたい。  さらに第三には、この国債は、遺族に対して国家として敬弔の意を表する意味も含んでおりますのですから、その形式等についても十分考慮を拂つてもらいたいと思うのですが、これら三点について、御所見、御方針を承りたいと存じます。
  20. 吉田信邦

    吉田説明員 ただいまの国債買上げ措置の問題でございますが、これは実に困難な問題でございます。と申しますのは、現在は、御承知のように産業資金の面におきましても、また消費資金の面におきましても、非常に詰まつております。従つて公債換金すると申しましても、なかなか困難な場合が多うございます。それで市場ではややもすると相手の弱身につけ込みまして、これを買いたたくという傾向がございます。ことに消費資金と申しますか、金が詰まつた者がかけつける場合には、市場金利は非常に高くて、月に何分というやみの金利が横行しておるような状態であります。従つてそういう金を扱つておる連中に公債を持ち込むような場合には、非常に買いたたかれることになります。それで、私どもといたしましては、なるべくこれは市場にお売りにならないようにしていただきたいと思います。  これに対して、政府で買い上げたらどうかということでございますが、これを買い上げるといたしまして、どういう形で買い上げるかということになりますと、非常にむずかしゆうございます。生活の困難というような問題につきましても、その程度段階等考え方によりますし、非常にきめがたい点もございます。従つて、むしろそういうふうに買い上げて行くという形をとるよりも、これを年々少しずつお返しして行くという形の方が望ましいじやないか。たとえて言えば、交付公債を、交付した方のうちの一割の方の分を政府が買い上げて行くという形をとるよりも、一割ずつ年々お返しして行くという行き方の方が、結局は公平に行くのじやなかろうか。さもないと、おれも金がほしいんだというその御意見は、おそらくこの公債をもらう方の大部分が、ある意味からいえば現金がほしい、これは今の日本国民のだれしも、そう余裕のある人はございませんから、おそらく大部分の人は、現金をほしいというお気持になるだろうと思います。しかし、現在のところ、この全額を現金でお渡しするということは、財政上許さない。それゆえに、また公債という形になつたという点から申しまして、今後の財政問題、いろいろ問題があろうとは思いますが、せめて一割程度くらいはそういうものを買い上げて行くという形をとりたい。しかし、一割ずつを買い上げるということは、実行上からいつて、これを公平に行うことはでき得ない。そういう立場に立ちますと、むしろそれよりも、各公債を毎年、たとえば十年の公債を一年に一割ずつ償還して行くというような形にする方が合理的ではないかというような考え方から、この公債につきまして、一応一年間はすえ置きますが、二年目から年賦償還をいたして参りまして、そうして十年間に年賦で償還をして行く。そういうふうにいたしますと、一応の計算でございますが、たとえば六分の利子でございますが、これでもし半年ずつ利子を拂うときに少しずつ年賦償還的にお返しして行くことにしますと、利子は大体半年で千五百円でございますが、このほかに最初の年は元金を二千五百三十五円半年でお返しする、従つて大体二年目から十年目まで九年間平均して年賦でお返しするとすると、利子を合せまして、半年三千六百三十五円、一年で計算いたしますと、七千二百七十円余りをお返しすることができる。その場合、最初の年は、一年でいえば利子が三千円で、元金をお返しするのが四千二百七十円というようなふうにいたしまして、利子と元本とを合せて毎年均等な額をもらえるようにお返しすることが、一番合理的ではないか。(「毎年の金額は幾らですか」と呼ぶ者あり)一年間で申しますと、毎年七千二百七十円ぐらい、これが、初めのうちは利子の部分が多くて、元本の方が少うございますが、だんだん元本が出て行きますと、たとえば九年目になりますと、利子をお返しする分はごくわずかで、一番最後の年の半年を考えますと、利子が百五円で、元本が三千五百二十九円――これは半年分でございますが、そういうふうになつております。そういふうなお返しの仕方をするのが一番適当ではないか。  しかしこの場合に、さらに非常に生活の御困難な方は、子供もだんだん大きくなればいいけれども、まだ子供も小さいというような方もずい分おありだろうと思います。そういう方にはこの十年をもつと早くお返しするようにしたらどうか。そういたしますと、一年すえ置きまして、二年目からこの年賦金が入るわけでございますが、その場合には、これは五箇年の年賦償還でございますが、一年に一万一千七百二十二円という計算になります。これは元本と利子がいわば早く帰つて来るわけでございます。これは最初の半年をとつていえば、千五百円の利子に対して四千三百六十一円の元金を返す。それがだんだん最後に参りますと、半年で利子が百七十円で、元本が五千六百九十円をお返しする、そういうような計算で返還されて行くわけです。大体そういつたような構想で年々お返しして行くということが、遺家族の方が一時の生活を糊塗するというのではなくて、長く更生するために生き続けられるという意味において、一時に公債をお売りになつて、それを荒波の中でもまれてとられるよりも、むしろこういう形で長くお使いになれるようにした方がいいのじやないかというふうに考えておる次第でございます。  従いまして、担保貸付の問題もござ伴いますが、これまた担保として貸し付けるといいましても、なかなか困難な場合が多いかと存じます。現在といたしましては、ある程度生業資金というような面について、あるいは府県の生業資金、あるいは国民金融公庫の生業資金という場合に、この公債が活用される道は開く必要があるとは存じますが、これの譲渡を自由にいたしておきますと、とかくいろいろなものにひつかかりやすい。ことに遺家族の方は、未亡人や若い子供たちが多いわけでございますから、そういう危険もあるというような意味で、むしろ讓渡を禁止して、そうして政府なりあるいは地方団体なりが、特別な措置をするというような場合には、譲渡もできるし、担保にとることもできるというような制度へ持つて行つたらどうかと考えておるわけでございます。  なお最後に、公債の形式、弔慰金の性質を表わすために、どういう形式をとつたらいいかということにつきましては、実は私どもの内部でも、まだ最終決定をいたしておりませんが、大体公債でございますので、従来と同じ公債という形で差上げることになります。ただ、これらの性質から申しましても、あまりきらびやかな、いわゆる豪華版の公債を発行することは、かえつて遺族のお気持に合致しない面もあるのじやないかというような点から、あまり形の大きい公債にしないで、まあいわばじみな形で公債を作成いたしまして、お渡しするようにいたしたいというふうに考えるのでございます。
  21. 岡良一

    ○岡(良)委員 関連してお尋ねをしたいと思います。国民金融公庫が、年金証書なりあるいは公債担保としての貸付は、現在の法規上至難であるということを承知しておりますが、先般の予算委員会において――これは吉武厚生大臣も御同席の席上で、本年度三十億の政府出資を国民金融公庫がする、そのうちの何パーセントかは、これを遺族生業資金に充てる措置をとりたいということを、大蔵大臣は言明しておられました。それでは何パーセント充てていただけるのであるかということを重ねてお尋ね申し上げましたところが、これは国民金融公庫の方とよく打合せした上で、適当なパーセンテージを、その方に優先的に振り向けるようにしたいという御答弁でありました。この問題は、今国庫課長の御答弁によりましても、なかなか一万円有余ないし七千円程度ということでは、やはり遺族の子弟の進学なり、あるいは禍福に基く生活資金の維持というものが、特に必要となつて来る場合も十分考えられます。特に遺族を自活せしめる上から、生業資金の面は、各府県とも相当理解ある努力はしておるようでありますが、明日、明後日も引続きこの委員会はありますから、ひとつ厚生大臣といたされましては、大蔵大臣とよくお打合せの上で、今度の三十億の政府出資の何パーセントが遺族生業資金として振り向けられるかということについての明確な答えを、ぜひともいただきたいと思いますので、この機会に関連してお願いを申し上げておきます。
  22. 青柳一郎

    青柳委員 国庫課長の御答弁の中に、生活困難な者に対しましては、五箇年で償還するというお話があつたと思います。どの程度生活困難な者から、そういう措置をする考えでおられますかについて承りたいことと、少しくこまかくなりますが、大体この国債はできるだけ早く拂う必要があると思うのであります。ことに靖国神社の大祭なども考えられまして、できるだけ早目に拂う、いつごろそういう債券が交付せられるかという点。さらにただいまのお話の中に、半年ずつの計算が出ておつたのでありますが、半年ずつ拂う意志であるのかどうかということ。それから生活困難者に対しましては、二十七年度はすえ置きであるということは、やはり残酷なように思えるのであります。でき得れば二十七年度から元利ともに拂う措置をしていただきたいと思うのでありますが、それらの点について承りたいと思います。
  23. 吉田信邦

    吉田説明員 これの支拂いを半年ずつということは、まだ別に確定いたしたわけではございませんので、一応の計算をそういうことでやつたのであります。  それから、最初の点は利拂いの時期でございますが、利拂いというものは、いつも時期が経過したときに利子を拂うと申しますか、公債の性質といたしまして、半年分の利子は、発行してから半年たつて利子を拂うというのが原則で、あるいは一年の場合には、一年たつたところで拂うのが原則でございます。今回の公債につきましては、四月一日に発行するということにいたしますと、もし半年拂いであれば、九月と三月に利拂い期が来るということになるわけでございます。ただ今回の公債の性質から、何らかの措置がとれないか、もう少し早く拂うことができないかというような問題もありますので、その方法はないかということで、目下研究中でございますが、従来の慣例からいうと、利子の性質からいたしまして、期間が来ないとなかなか拂わぬというような形にもなつておりますが、そこらもさらに事務的な研究をいたしたいと思つております。それからさらに公債交付の時期につきましても、これはできるだけ早くいたさなければなりません。今すでに紙の方の注文を発したりなんかしておりますが、これは一つにはいろいろ申請なんかの手続があつて、そうして名簿なり何なりがちやんとできるということで、できるだけ早く交付するようにいたしたいと思つております。ただ、こういつたことにあまりに拙速をいたしますと、従来の農地証券等の例からいつでも、間違つた人に渡してしまつたり、何かそういう手違いが非常に多うございますので、手続を簡単にすると、ある程度は早く行くが、間違いが多くて、一度渡したものを取返したりなんかすることが起りがちなのでございます。そういつたことのないように可及的に早くしたいということで、これも厚生省の方と御相談をして、なるべく早く手続等も、そういつた方法で間違いの起らぬ範囲において、できるだけ早くという方法を今研究しておるような状態であります。
  24. 高橋等

    ○高橋(等)委員 ちよつと簡単に関連質問をいたします。ただいまの公債の元本、利子の支拂いですが、これは一年すえ置きということで、今年はやらない、今年の四月一日にさかのぼつた日付でお出しになることになりますが、今年は出さないで来年からといわれるのですが、私はこれは今年から拂うということがほんとうであり、そうしなければならぬと考えます。但し予算措置を見ますと、金利は上つておりますが、公債の元本の支拂い関係のものは予算に含まれておらない。これは初めからすえ置きということを考えられておつたのだろうと思いますが、利子だけは予算に上つておるのです。そこにいろいろな含みも考えられるのでありますが、それにしましても、少くとも生活困窮者ないし特別の事情のある人には、これはどうしても一年待てということは意味がない。生活困窮者には五年に切り上げて拂うということ自体、早く拂つてやる必要があるから拂うのですから、その点、今後予算措置上の問題も残るでしようが、これはぜひ考えねばいかぬ。その点は一応どういうお考えか承つておきます。  もう一つ、この公債の交付について、あるいは年金の支拂いもですが、これはできるだけ早くせなければいかぬことは、政府も御同感のようであります。ところが、ただいまのお話を聞いておると、いかにも名簿の完成を待つてやらないと、非常に不完全な支拂いになつて困るというお話、これはもつともです。権利義務関係をはつきりしたものにしてやらなければならぬ。ところが、問題はそこにあるのではないと私は思うのです。あなたの方で、今紙を選ばれているそうでありますが、印刷するだけに五箇月かかるということを私は承つておる。そこに隘路があるのです。厚生省の方の調査は、もちろんその権利が確定することが非常にはつきりした人は、相当たくさん短期間にきめることができる。あとは不確定のものが残ります。これは相当日にちがかかる。ですから、印刷を急いで、たとい百七十六万のところを百八十万刷つて、紙が少々むだになることよりも、時間が早くなることが必要である。この点は、今の御答弁を聞いていると、いかにも厚生省の調査が済まなければできぬというふうに聞えますが、そうではないと私は考えます。その点は特に御注意を喚起いたし、今どういう準備を進められておるか、すでに公債の案文等もできておるのかどうか、こういう点をちよつと伺わせていただければ非常にけつこうだと思います。なお案文を、できますならばわれわれにお示しください。これは非常に大切な――何でもないことのようでありますが、非常に大切なことでありますので、一言申し上げておきます。
  25. 吉田信邦

    吉田説明員 その点につきましては、私どもも重々考えておりますが、印刷の期間も通常五箇月くらいでございますが、これを何とかして三箇月ぐらいに短縮したいということで、目下印刷庁と相談をいたしております。ただこの公債は、無記名公債でありますと非常に簡単ですが、記名公債になりますと記名をいたさなければならないので、これがかなりの手数を要しはしまいか。今までこれだけのものの記名を――株や何かにいたしましても、これだけの記名のものを出したことがございませんので、実はその点で、これも非常に頭を悩ましておるところでございますが、御期待に沿うようにでぎるだけの努力をいたしたいと存じております。  なお、この公債をどういう内容にするか、いわば国債発行の規則のようなものでございますが、これもできるだけ早くきめたいと思いまして、急いでおるようなわけでございますが、何分今まで、法律がきまりますまでにもいろいろな紆余曲折がございまして、案もしばしばかわるというようなことでございましたので、私どもの方でも、具体的なところへ進むのに、いささか追いかけられておつたというような形で、その点は今後において取返しをつけたいと思つております。  それからなお、本年度に買上げ措置をとるべきではないかという御意見につきましては、これはでき得ればその方がいいし、また私どもとしても、そうできれば一番いいんじやないかということは、まつたく御同感でございます。ただ問題は、その財源なり予算なりというところにございまして、そういう点から、私どもとしましても、一年すえ置きという形をとらざるを得なかつたということは、まつたく苦しい気持でございます。何とぞその気持を御了察願いたいと思います。
  26. 高橋等

    ○高橋(等)委員 先ほど伺いました少くとも生活困窮者に対しましては、すえ置きでなしに、今年から拂うような考慮をするのが当然である。しかも予算面には、元本は組んでおりませんが、ある程度の金も利息として組んであります。これは今ただちに御答弁をいただくことは非常に困難と思いますが、厚生大臣から深甚な考慮を拂うというような答弁をいただければ非常にけつこうだと思うのですがいかがでしよう。
  27. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは実は予算的な措置をおそらく伴うと思いますので、相談はしてみます。相当困難な事情のように存じますけれども、この点はまた十分ひとつ相談をいたしたいと思います。
  28. 堤ツルヨ

    ○堤委員 議事進行――ただいま皆さんの御質問を聞いておりますと、どうも逐條審議の場合に私たちが質問をしたいことに、お触れになつておるようでございます。大体理事会の申合せでは、総括質問を終つた後に逐條審議ということになつておるのでございますから、私たちもそのつもりを持つておるのでございますが、議事進行を少し逸脱しておるように思いますから、もとにもどしていただきたい。
  29. 青柳一郎

    青柳委員 それでは引続きまして、厚生大臣に対しまして、本法案に関する総括的な質問をいたしたいと存じます。私は遺族戰傷者に対して、物質的な処遇を行うほかに、公の精神的処遇こそ必要であると存ずるものございます。この意味におきまして、合同慰霊祭への補助が行われるということは、非常にけつこうなことでありますが、このほかに、国家は記章の制定を新たに考えてはどうかと思うのであります。現在の遺族記章並びに傷痍軍人記章は、遺族記章につきましては、六年間の痛苦の思い出が残るのであります。傷痍軍人記章につきましては、その名称の上に、さらに意匠の上に再検討が必要であると思うのでありまするが、大臣の御所見を承りたい。
  30. 吉武恵市

    吉武国務大臣 記章の点は、私も望ましいことだと思うのでありますが、実はこれはやはり予算を伴うものでございまするので、今ただちにということはむずかしいのじやないかと、こう思つておりまするが、採来とくと考慮いたして行きたいと思います。
  31. 青柳一郎

    青柳委員 厚生大臣は大体御賛成のようであります。従いまして、すみやかな機会に実現をはかつていただきたいと思います。  次に御質問いたしたい点は、戦争後六年半の間には、遺族の家庭事情にはいろいろな変化がありました。従つて年金などの受給者の確認までには、家庭を中心とした紛争問題が多々起ることを予想せられるのでありまして、年金などの支給の的確を期するために、相談指導を行うことがきわめて必要であると思うのであります。また遺族戰傷者はもちろん、動員せられた学徒、徴用工、あるいは外地引揚者、原爆被害者などの戦争犠牲者遺族に対しまして、必要な関係諸法令及び各公共団体において行う諸施策の周知徹底等、遺族年金などの受給者の自立更生についての指導のための相談事業を行うことが、緊切の要務であると信ずるのであります。従来から、各公共団体あるいは民間においても、この種の生活指導を行つておつたところもありまするが、遺族問題が最近取上げられてから、これらの遺族の相談が非常に激増して、現在のこれらの機関においては応じ切れない現状であると、承知いたしておるのであります。そこで、都道府県または郡、市、町村に補助して、遺族援護の相談所を設くる意思ありやなしやにつきまして、大臣の御所見を承りたいと存じます。
  32. 吉武恵市

    吉武国務大臣 この法律を施行いたしますると、受給者間において、いろいろな問題が起るだろうと思つております。できるだけそれを避け、るために、詳しく書いた解説書のようなものを、私はさつそく出して、各町村ごとに、ひとつ趣旨の徹底をはかりたいと思つております。それについて、お話になりましたような相談所のようなものができることは、一番望ましいことと思いますが、今これを国が予算でやるということは、ただちにはできがたいのでありますけれども、しかしこの遺家族の問題は、各町村におかれましても、相当関心を深く持つておられまするし、今日の新聞で見ましても、東京都では、さつそく別個に取上げられておるような事情でございますから、私の方で誤りのないような指導を町村にいたしますれば、おそらく町村の方でも、この問題については、そういう相談係のようなものを設けられて、当られるのではないだろうか、私はかように存じております。
  33. 青柳一郎

    青柳委員 各必要な法令あるいは諸施策の周知徹底のほかに、遺族の自立更生のための指導、さらに遺族の家庭紛争処理のための事業、これらの事業は非常に重要なものと思うのであります。私もその事業に、現在この厚生省の責任者である田邊君と一緒に当つた経験を持つているのであります。これは大きい国家的事業でございます。従いまして、私の考えから申しますならば、国家的事業という観点から、国家はある程度の助成をしてやるべきである、こう私は存じておるのであります。大臣はこれらの相談、指導の事業につきまして、その必要性を認められたのでありますので、近い機会におきましては、なおこの問題につきましても、御検討願つて、できるだけ実現に努力されんことを切にお願いするのであります。  次にお尋ねいたしたい点は、これは当然なことでありますが、戰争の被害には、人的被害と物的被害があると存ずるのであります。しかして生命、身体は最も尊重さるべきであるという観点から、国家はまず人的被害を取上げて、これが補償援護に努むべきであると信じます。しかして戦争による人的被害の中でも、国家としては、まず戦争中、国家権力によつて強制的に召集、徴用した人に対して、損害補償を行うべきであると存じます。その中でも軍人は、その好むと好まざるとにかかわらず、国家の権力によつて死地に突入せしめれたものであり、従つてこの際、軍人に関する死亡及び傷痍に対しましての補償を、その中でも特に優先して行うべきであると私は思うのであります。これは断じて軍国主義を謳歌するものでもなく、遺族戰傷者等、一個の国民であると思う点より発する、人間として、国民としての考え方であります。今回おそきに失するとはいえ、乏しき国家の財力をさいて、遺族戰傷者に対して、国家補償の観点に立脚する援護が行われんとすることは、国家としては当然のこととはいえ、この六年半を回顧して、まことに御同慶にたえないのであります。しかしながら、私はこのほかに、国家権力によつて動員せられた学徒、国家権力によつて徴用せられた一般国民及び船員のあることを忘れ得ぬと同時に、職なく路頭に迷う、今は一国民たる老齢元軍人のあることが、この際脳裡より離れ得ないのでございます。政府は、本法案より残されたこれらの人々に対する補償援護について、いかなる考えを持つておられるか、その御所見を承りたいのでございます。
  34. 吉武恵市

    吉武国務大臣 多くの戦争犠牲者がおられるのでありまして、まことに私どももお気の毒だと思うのでありますが、さしあたり今御指摘になりました元の軍人、軍属につきましては、国家恩給という制度があつたのがとめられておつたわけであります。従つて、この問題を放置するわけに参りませんので、独立第一歩といたしまして、さしあたり援護ということでこれを取上げたわけであります。御指摘になりました船員徴用につきましては、わずかではありまするけれども、当時一時金が出た上に、現在船員保險及び厚生年金で、それぞれ多少の年金が出ているわけであります。従つて、この旧軍人につきましては、全然停止されているということから、まずこれを取上げたようなわけであります。その点御了承いただきたいと思います。
  35. 青柳一郎

    青柳委員 いかにも学徒、徴用工等に対しまして一時的な金が渡されたことを承知しておるのでございますが、あの大戦争のさ中において、実はこれらの人々に対して、軍人と同じような恩給制度をつくるべきであつたのをつくり得なかつた、それだけのひまもなし、余裕もなしということを、私は今考えざるを得ないのであります。これらの人々は、ほとんど軍人と同じように、身を挺して国家の要請に応じた人であります。国家の権力によつて強制的に引上げられた人であるのであります。この点も十分御考察の上に、将来の施策について十分なる御考慮を拂つていただきたいと思うのであります。  私はなお文部当局に対しまして、神社並びに育英の問題について質問をいたしたいと存ずるのでございますが、厚生大臣に対しましては、大臣がたびたび申されますように、国家補償観念に立脚して援護するという言葉を、非常にあたたかい気持をもつて、感謝の念をもつて聞いたのであります。このお言葉の中に今後を期待いたしまして、厚生大臣に対する質問を終ります。
  36. 大石武一

    大石委員長 午前中の審議はこのくらいにして、暫時休憩に入ります。午後一時半再開の予定であります。     午後零時十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十五分開議
  37. 亘四郎

    ○亘委員長代理 都合により委員長が不在でございますので、私が委員長の職を勤めます。  休憩前に引続き会議を再開いたします。  まず船員保險法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。丸山直友君。
  38. 丸山直友

    ○丸山委員 船員保險法の一部を改正する法律案提案理由説明を拝見いたしまして、二、三の質問をしたいと考えております。  大体、この第一の理由にありまする標準報酬を引上げるということは、現在の報酬の実情から考えまして、しかるべきことと考えるのでありますが、これによつて保険料も自然に上つて来る。もちろん、給付も上つて参ることは自然のりくつでございますが、その点は被保險者にとつての負担能力、あるいその他の点について、何らかの支障を生ずるようなことがあるかないか。あるいは、かえつてよくなる面が多いのであるかどうかという点に関するお見通しを、まず承りたいと思います。
  39. 久下勝次

    ○久下政府委員 標準報酬を上げますることは、ただいまお話がございましたように、被保険者の負担も増加するわけでございますが、これを上げることにいたしました理由は、すでに御承知の通り、現在の船員給與の実態から申しまして、この程度にいたしますことが適当であるということが根本の点でございますが、それは、同時にまた、船員保險の給付の中に災害補償関係がございます。これは一般の災害補償関係から申しましても、実際の給與に合う給付をいたしますことが必要であると考えまして、そういう意味合いがおもな意味でございます。もちろん、これと同時に、保險経済の健全化も考えまして、その意味におきましては被保険者の負担も若干の増加を見るわけでございますが、この案を御提案申し上げるに先だちまして、私どもといたしましては、社会保險審議会の船員保險部会におきまして、労使双方の関係者にお集まりを願つて、慎重に検討をいたしました結果、双方の同意のもとに、この案ができ上りましたような次第でございまして、多少の負担増加はありましても、給付の方面の増加と相まちまして、具体的に問題になるようなことはないと思つておる次第であります。
  40. 丸山直友

    ○丸山委員 第二の点についてちよつとお伺いしたいと思います。これは「季節的」というのは、まあ臨時という意味でございましようが、臨時に雇用される者を、失業保険の適用から除外するという御趣旨であります。ただその実態といたしましては、私どもには一応了解がつくのでございますが、提案理由説明の中にあります字句から考えて、あなたの方で、失業保險の本体をどういうふうにお考えになつておるかということに対して、私多少の疑義を持つております。それは、一般の海上労務者と異なり、離職いたしましても、実態上失業の状態にあるとは考えられませんので除外する、こういうことであります。これは陸上の失業保険でも同様でございますが、離職した結果失業保險が給付される。ところが、その離職した後、実態上失業の状態にあるかないかということを考えるとか考えないという予測のもとに、失業保險料を拂うとか拂わぬとかを決定する性質のものでは当然ないのであります。こういうことを考えた上で、この失業保險を適用するかしないかということを決定することになると、陸上における失業保險法の本体がくずれてしまうと考える。と申しますのは、現在失業保險を陸上の勤労者に適用しておる場合に、離職いたしましても、その人間がまつたく困窮生活に陷つたような状態にあるときのみに失業保險金を拂うのではなくて、それが職業安定所その他の機関を通して就職したという事実があつた場合に、初めて失業保險金の一部が削られたり、あるいは全額がやられるということが来るのであります。もし自由業であつて、それが実際上失業の状態にない場合、何らかの職業についている場合には、陸上の失業保險金は拂わないかというと、これは現在拂つている。そういう意味でこれは適用しないのだということになると、これは失業保險制度の本体を考える上において、また陸上の方の失業保險との均衡の上において、ちよつとおかしいと思いますが、これに対してどういうふうにお考えになるか。
  41. 久下勝次

    ○久下政府委員 お答え申し上げます。提案理由説明言葉が、あるいはお尋ねのように、誤解を生ずるような表現になつておりましたことは、申訳ないのでありますが、考え方といたしましては、陸上の失業保険の制度と、実際的には何ら区別をして取扱う考えはないのでございます。具体的に申し上げますと、現在の船員保險法関係の改正をするようになりました具体的な理由を御参考に申し上げますと、南氷洋の母船式漁業に従事しておりまする作業員は、御承知の通り大体六箇月程度の期間を限つて雇用されまして、帰つて参りますと解雇になつても、その者は、実際問題としてそのあとの半年はりつぱな生業がありまして、生計には困らないような者があるのであります。そういう者が、現在の法律の規定で参りますると、船舶所有者から被保險者の四分の三以上の同意を得て申請があつた場合にのみ除外されるということになつておりますので、実際問題としては、いわゆる保險の方から申しますと、逆選択というような極端な事例が現れて参りまするので、かような改正をいたそうというのでございます。従いまして、御引例になりましたような、たまたま失業上に若干の收入があるというような者を、この規定改正によつて、被保險者から除外するという意思は、毛頭ないのであります。抽象的な言い方で申し上げますると、大体失業いたしました後、失業保險の給付をいたさなければ生計に困るであろうというような者と、大体一般的に見まして、生計に困らないであろうというような、ごく一般的な観点から、事柄を判定して参りたい。従いまして、この点は、陸上の場合と異ならないというふうに御了承願いたいと思います。
  42. 丸山直友

    ○丸山委員 実は実態という言葉が悪いかと思うのであります。実態上なんですから、離職後、自由業に従事するような者は、実態としては失業ではない。しかし、陸上においては、そういう者が收入のあつた場合に、ただちに失業保険金の支拂いを打切るとかあるいは減額するかというと、これは実際には行われておらぬ。そうすると、こういう実態上失業状態にあるとは考えられないという想像で、失業保險を適用しないという理由には、私はならぬと思うのです。私は原則論を申し上げている。実際の運用においてはそういうことがあるかもしれませんが、原則論というこういう言葉をお使いになると、そういう考え方になつて来る。これは失業保險の本体から考えて、おかしいと思う。これは、運用の上においてさしつかえなければこれでいいし、この字句がちよつと変だという御発言があれば、それでけつこうでありますが、今度は実際問題として、失業保険を適用になる者とならない者との間に、保險料において千分の二十の差があるわけです。千分の二十の差は大体妥当の差であるかどうか。今まで失業保險と適用せられておつた場合に千分の二十だけよけい拂つておつた。今度千分の二十だけ少く拂うのだ。その減額部分と、それから支拂いが今度打切られるその部分との均衡、つまり保險料と失業保險の拂われる均衡というものはどんなふうになつているか。それから、この改正によつて、大体どのくらいの数が実際において失業保險の数から除外せられるかということがおわかりになりましたら、伺いたい。
  43. 久下勝次

    ○久下政府委員 実は、これはむしろお尋ねのあとの方からお答えした方が早いかと思いますが、私ども考え方といたしましては、従来の実際の取扱いの関係から比較いたしますと、この改正によりまして、本来失業保險を受けられます者が、この規定によつて除外される数は、正確な数字はつかめないのでありますけれども、非常に少いのでございます。同時にこれは附則をごらんいただきますとおわかりになりますように、昭和二十八年三月三十一日まではこのまま、もしもこれが除外される者であつても、適用されるというような経過規定を設けておりますので、実際上の影響はほとんどないものと思つているのであります。従つて、前段の御質問の保險給付と保險料との関係というものも、そういう意味合いにおいて、ほとんど差がないものというような見方をしております。
  44. 丸山直友

    ○丸山委員 大体了承いたしました。     〔亘委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 岡良一

    ○岡(良)委員 船員保險法は、申し上げるまでもなく、健康保険あるいは厚生年金あるいは失業保險などを含めた保險制度の総合的なテストケースとして、われわれも非常に注目を拂ているのであります。そこで、お尋ね申し上げる前提としてお伺いしたいことは、船員保險財政の健全化の問題であります。現在の船員保険の財政につきまして、まずどういう形になつているかという点を、計数的にお伺いしたい。
  46. 中村隆則

    ○中村説明員 大体におきまして歳入と考えておりますのが、約二十六億円でございまして、歳出に相当するものが約二十億円に考えております。船員保險におきましては、疾病保險部門におきまして、非常な財政の危機を来しておつたのでございますが、本年度におきまして、昭和二十六年度の実績におきましては、昨年大型船員の給與の大幅な引上げが行われましたために、標準報酬の増加を来し、それによつて保險料の収入増を来しましたので、二十六年度の保險料収入におきましては、約三千五百万円程度の赤字ではございますが、これを二十七年度に現在の見通しでは、送ることになるのでありますけれども、大体において疾病保險部門におけるところの赤字に漸次解消して行くと思います。なお年金部門におきまして、赤字が過去数年間において生じたのでございますが、保險料率におきまして、千分の十六を今までの食い込みの償還に充てるためにとつておりますので、年金部門におけるところの赤字も漸次解消する過程をたどつております。
  47. 岡良一

    ○岡(良)委員 船員保險でわれわれの念願をする第一項として、失業、疾病あるいは養老等の保險制度が、一元的な形で総合的に運営されることが、社会保障制度の実現という方向に向つての大きな進歩的な形態であると、われわれは考えているわけであります。そこで、この際吉武労働大臣にお尋ねをするのですが、この失業保險制度も、やはり疾病保險あるいは更生年金保険等々と、総合的な形で国の保險行政の一元的運用をやるという方向へ持つて行くためには、現行の船員保險制度は、きわめて大きな示唆を持つておると思うのでありますが、今日までの船員保險実績に徴されまして、そういう方向に保險行政の一元化をはかろうというお気持はないかどうかということをお尋ねします。
  48. 吉武恵市

    吉武国務大臣 船員保險が一元的に行われておるという点は、非常にいい点ではございますが、これは、御承知のように、雇用主でありまする船主と、船員とが、いずれの保險におきましても同じでございますので、結局一元的に行う方がいいということで、こうなつておるわけであります。今の一般の労務者の方になりますと、失業保險、健康保險、厚生年金、それぞれ必ずしも同じというわけにも参りませんし、それから失業保險につきましては、まだ実施いたしまして日が浅くて、ほんとうに確立した状況ではございません。実は、始めるときに非常に心配をいたしまして、イギリスでも、失業保險をやりまして、一時たいへん困つた例もございまするので、どうであろうかという懸念をいたしたのでありますが、今のところは順調に進み、本国会でも、保險料をとり過ぎているというので、また下げたような状況であります。これも失業者が多くなつたり、また少くなつたりして、非常に変動の多いものでありますので、これが安定して参りますると、それぞれの保險を統合するという時期も来るかと思いますけれども今早急にこれを一本でやるということにつきましては、私はまだ勇気がございません。
  49. 岡良一

    ○岡(良)委員 しかし大体一般健康保險について見ても、保險者が政府であるか組合であるかというようなかつこうで、また事業主及び労務者が半分ずつ負担しておるとかいろいろの点で、失業保險にしてもそうだと思いますが、大体横すべりのような形のものであるように私たちは考えられるので、なるべくならば保險行政の一元化、総合化という観点から、そういう時期が早く来ることを期待しておるわけであります。  なお保險局長にお尋ねをしたいのですが、実は最近底びきの漁船の造船が非常に制限されておるのであります。これは漁類の繁殖という観点から、やむを得ない措置とは思いますが、その結果として、いわば国の法律措置なり、あるいは農林省の命令のようなもので、強制的にだんだんと底びきの労務に服しておる諸君が、失業をしいられておるのであります。こういう場合、船員保險関係の失業手当というものは、どういうふうに取扱われておるのでありますか。何か底びき関係の数字がありませんでしようか。
  50. 久下勝次

    ○久下政府委員 ただいま数字を手元に持つて来ておりませんので、後ほど少しまとまりましたならば、とりまとめてお届け申し上げたいと存じますが、機船底びき網漁業につきましては、船員保險法の第三十三條の三の、今度改正になります規定によりましても、当然失業保險が適用されることになつております。その点は問題はないと思います。
  51. 岡良一

    ○岡(良)委員 これにはトン数の制限があるようでありますが、その上まわるトン数の規格に合う底びき漁船に従事している労務者が全部入つているかどうかという点につきまして、実は地方的には入つていない人たちが大分あるようにわれわれは思いますので、こういう点については、今後ひとつ御指導を厳にしていただきたいと思うのであります。  それから、もう一つお伺いしたいのは、特に日本海沿岸に多い例の大謀網であります。大謀網漁業は、一網について百名前後の労務者をかかえておりまして、その漁業従事期間は六箇月ぐらいであります。しかし、これは海上労務者でもあり、漁夫でもあり、船員でもあるという、実に複雑な形態を持つているので、何ら保險制度の恩恵には浴していないのでありますが、こういう諸君がどの程度にあるか御調査になつたことがありますか。また、こういう者に対しても、何らかの船員並の保險的な恩恵を與えてやる必要があるのではないかというようなことも考えておるのでありますが、それについて、何か御方針がありましたならば承りたいと思います。
  52. 中村隆則

    ○中村説明員 ただいま御質問のございました底びき網の乗組員のことでございますが、三十トン以上でございましたならば、船員保險が適用になりますから、失業いたした場合におきましても、失業保險の適用を受けるということになつております。大謀網の場合でございますとこれが三十トン以上であるか以下であるかによつて、船員保險の適用が違つて来るわけでありますので、三十トン以上でございましたならば、船員保險が適用になり、三十トン以下の船で従事している方でございますと、船員保險の適用はないということになるわけでございます。
  53. 岡良一

    ○岡(良)委員 私が申し上げたいのは、これは一つの母船式とはいいながら、ほんの七、八トンぐらいの船で五、六ぱいの和船を曳船している労務者であります。従つて船員保險の適用は、トン数制限からすれば受けられない。そういう労務者が、日本海沿岸にも相当ある。これが沖仲仕というような形における一般労務者としても適用を受けていないし、日雇い労務者としての保險法の適用も受けていない。限界線のすれすれのところでいかなる保險法の適用も受けていない。こういう者が今後何らかの保險金をいただいて、そうして失業保險なり健康保險なりの恩典に浴するように、健康保險の問題は大事だと思いますから、特にひとつ御配慮を願いたい。  なお、もう一つこの際お伺いしたいのは、実は日本海沿岸では、最近非常に浮流機雷がやつて参るのであります。まだ今のところ、それによる実害はありませんが、今のような調子でどんどん流れ込ん参りますと、相当の被害が起り得るのであります。そういう場合に――これはトン数制限で、三十トン以上ということになつておりますが、小さい底びきなり、小さいさんちやく網なりが、やはり被害を受けると思うのです。こういう場合の乗組員に対する何らかの保險的措置というものはないものでしようか。この点も、御研究の成果がありましたならば、ひとつ腹蔵のないところをお聞かせ願いたい。
  54. 中村隆則

    ○中村説明員 三十トン以下の問題は、先ほども説明申し上げましたように、現在の船員保險法ではできないのでございますが、三十トン以上のものでございますと、労災法の方の適用が考えられるのではないか、このように考えております。
  55. 岡良一

    ○岡(良)委員 最後に、これは大臣にお伺いしたいのですが、今申しましたように、相当浮流機雷がやつて参りまして、最近その頻度が多うございますので、海上の労務者、従業員は、実に戦々きようきようたるありさまであります。拿捕されたところの漁船と乗組員に対しても、今度政府の方で補償措置を講ぜられるようでありますし、まだ実害はありませんけれども、この浮流機雷による損失と申しましようか、船体の破損あるいは滅却、またこれに伴う人員の生命の喪失、こういうようなものについて、政府としては当然何らかの補償措置を講じなければならぬのではないかと思いますが、この機会に大臣の御見解をただしておきたいと思います。
  56. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これは国家補償するというのは、むずかしいのじやないかと思うのです。ただ、従業員でそれによつて災害をこうむつた者については、先ほど課長から申しましたように、業務中であれば、事業主に責任があるわけでありますから、船員については、労災なりあるいは船員保險において、それぞれ業務上の補償というものがあり得る、かように存じております。
  57. 岡良一

    ○岡(良)委員 しかし問題は拿捕された漁船の場合は、これはやはり、ある規定の線を逸脱したということで、彼が意識しておつたかいなかにかかわらず、とにかく一応拿捕される理由があつた場合が多いと思う。ところが浮遊機雷というものは、これはまつたく遠慮会釈なくその規定線外の日本海沿岸の領海までも入つて来る。たまたまそれに触れまして船が沈み、人命も損傷を受ける、こういうような事態が起つた場合には、拿捕された漁船についても政府補償するならば、いわんや日本の領海内あるいは日本の領海近く浮遊し、これに触れることによつて船が沈み、人命が損傷したということについて、国として何らか補償措置を講ぜられることは、むしろ国の責任ではないか、こう思うのですが、なおひとつ厚生大臣の御意見を伺つておきます。
  58. 吉武恵市

    吉武国務大臣 国家の行為に基く損失であれば、これは当然国家補償すべきでしようけれども国家の行為に基かないものに国家補償するということは、むずかしいのではないか、かように存じております。     ―――――――――――――
  59. 大石武一

    大石委員長 船員保險法の一部を改正する法律案審議は明日に延期いたしまして、次に戰傷病者、戦没者、遺族援護法案を議題とし、引続き質疑を通告順によつて行います。青柳一郎君。
  60. 青柳一郎

    青柳委員 私は文部大臣に対して御質問いたしたいと思います。大臣すでに御存知のように、昭和二十年の十二月十五日に、いわゆる神道指令なるものが発出せられたのであります。この内容は、すでに御存じだと思いますが、信教の自由を護持し、さらに政教の分離をはつきりとさせ、さらにはいわゆる神道、神社神道より軍国主義的、超国家主義的色彩を除去せんとして発出せられた命令であるのでございます。称して、国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督並びに弘布の廃止に関する覚書と申すものでございます。この指令は、講和が効力を発したあかつきには、当然効力を失うものであると存ずるのでございますが、その効力を失つた後におきましても、この神道指令の内容はなお残つて日本国家として効力を存続して行くべきものと存ずるのでございまするが、御所見を承りたいと思います。
  61. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 その通りでございます。
  62. 青柳一郎

    青柳委員 この神道指令の内容を見ますると、その第一項におきまして、日本国家、県並びに地方の行政機関は、神道の支援を禁止し、即時これが停止を命ずる、こういうことをうたつております。さらには、公共の財源よりする一切の財政的支援及び神道並びに神社神道との一切の公の結合を禁止し、即時これが停止を命ずとあるのであります。公の機関と神道との関係を切断しておるのでございます。さらに、大臣御存じのように、憲法二十條によりますと、いかなる宗教団体も国から特権を受けてはならないという規定もございまするし、さらに憲法八十九條によりますると、財政的支援を與えてはならないという條文もあるのでございます。これ等の考え方、これらの規定と、今回政府において行おうとしております戦死した軍人の慰霊式典に対する補助との関係は、どういうふうに考えたらいいのかという点でありまして、この点につきまして御教示を得たいと存ずるのでございます。
  63. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 慰霊祭といつても、その内容にいろいろ差別がありはしないかと私は思います。だから、その内容を明らかにしないと、一概に慰霊祭という概念だけでは、片づかないのではないか。しかし、詳しいことは宗務課長から申し上げます。
  64. 篠原義雄

    ○篠原説明員 ただいまの御質問でございますが、神道指令並びに憲法の條項によりまして、信教の自由並びに政教の分離は、その本来の形において確保されておるのであります。今後ともその方向に進むことは当然でございます。従つて、憲法の二十條に規定しておりますところの宗教活動という解釈のいかんによりまして、ただいまの慰霊祭の問題等に関連して、解釈上いろいろな疑義が生じて来るかと思いますが、これにつきましたは、われわれの方は、厚生省並びに関係方面とも、事務的にいろいろ研究をしおります。そうして慰霊祭を執行いたしますについても、その方法あるいは主催のやり方、それから実施の面における、たとえば宗教団体とどういう結びつきを持つかという実際の問題、こういう問題につきまして、いわゆる慰霊という言葉の内容、この問題はわれわれといたしましても、十分研究して行かなければならぬというので、今申しますように、各官庁と会議して、万遺憾ないようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  65. 青柳一郎

    青柳委員 ただいま御答弁の協議は、済まされたものであるかどうか。済まされたものであるならば、その済んだところをお示し願いたいのでございます。
  66. 篠原義雄

    ○篠原説明員 目下具体的に協議中でございます。
  67. 青柳一郎

    青柳委員 この法案が衆議院を通過するまでに、はつきりとおきめのほどを願いたいと思います。  次に御質問いたしたい点は、私の取上げております神道指令にも、こういう規定が第二項にあるのであります。本指令の目的は宗教を国家より分離し、宗教を政治目的に悪用することを防止し、一切の宗教の信奉者及び信者を完全に同一な法的基礎の上に立たしめ、もつて正確に同一の機会と保護を受けしめんとするものである、こうあります。さらに、同じ項目の第五項に当ると思いますが、そのうちの二に、神社神道は国家より分離され、その軍国主義的及び超国家主義的要素を剥脱されたる後、その信奉者の要望あらば一宗教として認めらるべく、事実において個々の日本人の哲理または宗教たる限り、他の一切の宗教と同様の保護を與うべし、こうあります。さらに最近戰没者の公債につきまして、相当緩和せられた指令を、文部次官と厚生省の引揚援護庁次長の名前をもつて各府県に出しておるのでございますが、この前書にも、「民主主義諸制度の確立による国内情勢の推移及び多数遺族心情にかんがみ」こういう文句もあるのでございます。すでに国家神道は、軍国主義の色彩、超国家主義の色彩から離脱したいものと、私には思えるのであります。この客観的情勢の変化に基いて、すでにまつたく国家から分離され、その軍国主義的及び超国家主義的要素を離脱したこの神社神道は、すでに他の宗教と平等同一のものと認められてさしつかえないと思われるのでございまするが、いかがでありましようか。  またこの意味よりいたしまして、現在各学校の兒童が、社会科に必要な視察のために、神社仏閣に団体的に視察に行くことを許されておるのでございますが、ひとり靖国神社並びに護国神社に関しまして、これが禁止せられておるのでございます。靖国神社、護国神社に対して、ひとり遺族心情ばかりでなく、一般国民心情から申して、その当時の戦争は間違つておつたであろうとも、戦いで死んだ人は、そんなことはりません、国家のために死んだのでございます。そういう意味から申しましても、かかる措覆を靖国神社、護国神社に対しても、他の神社仏閣に対して許されると同様に、許さるべきであると存ずるのでございますが、大臣の御所見を承りたいと存じます。
  68. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 初めの神道に関するお考えは、その通りと存じます。  第二の点は、お説の通りです。私もそう思いますけれども、しかし、まだいろいろな点について研究をする点が残つておりますので、御趣旨は、私はその通りと思うのですけれども、今ただちにそれをほかのと同じように扱うということを、ここに明言するまでに至つてないということを、御了承願います。
  69. 青柳一郎

    青柳委員 前段をお認めいただきまして、まことにありがたいことと思います。同一の宗教して認められるのであります。同一の宗教であるならば、他の神社仏間と同様に、兒童生徒をして視察せしめてけつこうであろうと私は思うのです。大臣の御心配の点は、その点は平和條約が効力を発した場合には拂拭せられるものと存ずるのでございまするが、御所見いかがでございまするか。
  70. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 これはちよつと事務的な関係がありますから――御趣旨は、私は全然同感なんですけれども、事務的なことがありますから、事務当局から……。
  71. 青柳一郎

    青柳委員 大臣御同感の意を表せられました。従いまして、近き日に解決するものと存じます。  もう一つ、承りたい点がございます。育英資金に関する問題でございます。大臣御存じのように、遺児の育英は、遺族にとりまして一番の関心事であるのでございます。このために、未亡人を初め肉親の者、さらに遺兒自身も、ほんとうに骨身を削つて、実に涙ぐましい努力と苦労をしておるのでございます。従前から育英会を通じまして遺兒も育英されて来たのでありますが、この恩典に浴せんとして浴し得る者がなお少い。さらに遺児なるがゆえに、自分の家の仕事の手伝いも多分にしなければならない者もありまして、このために学業の成績が芳ばしくなく、そのためにこの恩典に浴し得ざる者が多数あるのでございます。この問題の解決に、われわれは一生懸命に努力しておつたのでありますが、来年度におきましては、一般育英予算のほかに、遺兒のために六千八百余万円の予算が、特別に計上せられるに至りました。まことにうれしいことであります。私は現在審議しております法案によりまして、遺族に與えられる年金の僅少なる点からいいましても、まだまだこの金額では満足をいたさないのでございますが、新たに創設されんとする遺兒育英制度の実施はどうされるか、その御方針を承りたいのであります。従前の方針通り、遺兒に対して行われる育英の予算は一般の育英予算で行わるべきものではなく、何らか新しい方針がこの際打立てられるべきであると存ずるからであります。
  72. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 遺家族の子弟に奨学資金を出すということは、私は非常に賛成でございまして、なくなられた方に対しても、その子弟を学校に無事にやるということぐらい慰めばないのではないか。非常に賛成なことでございます。御承知かと思いますが、ちよつと申してみますと、これまでは高等学校の生徒は総数の三%、大学は二〇%、教育養成学校は六〇%、それだけに貸與されておつた。これは普通のものなのです。これまでも、そういう遺家族の子弟に対しては、育英会では特利な扱いをして来ておるけれども、それをさらに今度強化いたしまして、ずつと新しく優遇の方法を講じまして、高等学校は片方は三%であるのに対して、片方は一五%、大学の普通のものは二〇%であるのに五〇%、教育養成は片方が六〇%でありますのに対しまして、遺家族子弟は八〇%、そういうようにして総計七千五百名というものに奨学資金を出すという特利のはからいをいたしておつて、そのために育英資金に対してただいまおつしやつたように、特利にほかに六千八百万円を出す、こういうことになつておるのでございます。
  73. 青柳一郎

    青柳委員 ただいま私の御質問の中に申しましたが、遺兒は父親がないために家事の手伝いをする場合も多いし、またお母さんと一緒に他の仕事をやつて家の家計を助けているということがたくさんあるのでございます。それがために学業を怠つて、勉強すればよくできて育英の恩典に浴し得る者が勉強ができないために、この恩典に浴し得ない実情にあるのでございます。この問題につきまして、二十五年度におきましては、たしか新しく文部当局におきまして、勉強すればできるという者については、育英の恩典に浴せしむるということに、相なつたと思うのでございますが、二十六年度の実情を見ますと、それが実地に行われておらぬのでございます。この点はぜひまた復元して、勉強すれば必ずいい成績をとれるという者につきましては、残らずこの恩典に浴せしめるようにいたしたいのでございます。その点につきまして、大臣の御所見を承りたいと思います。
  74. 天野貞祐

    ○天野国務大臣 私はただいま申したことでもつて、決して満足いたしておるものではございませんので、お説の通り、なおこれは広げて行かなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  75. 大石武一

    大石委員長 次の発言通告者は堤ツルヨ君でありますが、ただいま厚生大臣は不在でございますので、帰られるまで寺島隆太郎君に質疑を許します。
  76. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 私がお伺いいたしたいのは、大体青柳委員から御質問が出ておりますので、ダブる点は省きますが、大臣がいないのでありますから、事務当局に念のために伺つておきたいのであります。今回出されました法律案は、戰傷病者戰没者遺族等援護法案という、すこぶる長つたらしい法律案でございますか、この法案に盛られておる精神と申しますのは、いわゆる勅令六八号というものが講和発効と同時に失効してしまう、それで遺族恩給などというものも自然に復活するという建前になつて行く。ところが、遺族恩給が復活して来るということに対しては、これが財政的な支出にどうにも耐えられない点が第一の理由。第二のネックは、去年一億円からの予算をとつて遺族の調査を全国的に集計いたしましたが、人間の能力にはやはり限りがありますので、均霑してやることができない、平均してと申しますが、漏れなく遺族援護を行うことができないという、右二点の理由でもつて、本法律案は暫定的立法であり、臨時的立法である。将来一箇年間の期間を置くという恩給法特例審議会の成案を得たあかつきにおいては、いわゆる一般の恩給法案に移行すべきものであるかどうか、お伺いしたいと思います。
  77. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 恩給制度につきましては、御承知の通り、勅令六八号によりまして、軍人の恩給は今停止されておるわけであります。これが講和発効と同時に元へ返る。これにつきまして、いろいろな調整をしなければならないために、一年間の研究の期間を置きたいということに相なつております。なお、戦没者遺族援護法案におきましては、恩給制度と直接の関係のない部面も含んでおるわけであります。従いまして、形といたしましては、一年間の暫定という形はとつておらないという意味をこの法案に書いたのであります。  なお恩給法制度が、一年間の研究の後復活いたしまして、新しい体系のもとに恩給扶助料の制度ができましたならば、その方に含まれます分につきましては、当然この法案からは落ちるといいますか、向うに移行することに相なろうかと思つております。
  78. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 ちよつと私の質問の仕方が、何もかもまとめて木村さんに対してゆつくりお聞きすればよろしいでしようが、それをしなかつたために――もとより私が申し上げましたのは、この法律案の中に含まれるものは、いわゆる恩給と称するような面もございましようし、何というか、社会政策に利用せられる面もございましようし、さらにまた、将来においては飛躍する面もあつて、たとえば母と子の問題を時の内閣が考究するなり、社会環境がそういう事態を生むなりいたしまして、母子保護法というようなものに発展せられる等のこともございましようが、結局これは一年間の臨時立法である、こういよううにわれわれ考えてよろしいかどうかということであります。
  79. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 この法律が臨時になりますかどうか。大体現在までの情勢から申しますと、恩給法は、一年間で大部分新しい態勢をつくつてやるという考えのもとに、恩給法特例の一年間の延長をやつておるわけであります。従いまして、それができましたならば、それに関します分につきまして、つまりこの法案の大部分のものにつきましては、当然向うに移行するだろうというふうに考えます。なお、その他の部分につきましても、これとの均衡、あるいは、その他の面との均衡とあわせまして、その期間に新しい対策が立ち、これに対する財政的な処置ができましたならば、そのときには当然新しい態勢にかわるであろうと考えておりますが、一応この法案そのものは、恒久的な形をとつているのでございます。
  80. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 この法律案を読んでみますと、援護でやるのだ。同時に、厚生省のガリ版で刷つた大臣のこの法案に関する提案理由には、補償の精神においてやるのだ、こういうことを言つております。補償という左の流れと、援護という右の流れを行きつ、もどりつして、この法案が今日まで非常に話題になり、また天下の視聴を集めたのであろうと考える。その間また木村さんの苦悶も、その幅の間に生じたであろうと思うのであります。この法案全体を私がながめまして、月額千円というこの数字は、おそらく未復員者給與法というような法律から、ヒントを得てのものじやないかと思います。おそらく木村さんもそうだつたと思いますが、やはり大臣援護庁長官という関係において、中にお立ちになつて、大蔵省に臨んだときの案は――厚生省の方ではどうしても資料をお出しになりませんので、われわれの方からおとりになるよりしかたがない。私のとつた資料もそう違つていないと思うのですが――これは全体について申すことは、穏当を欠きますので言いませんが、大体年金と申しますか、遺族側の唱えるところの補償のラインは四千円であつた、大蔵省のラインは結局千円である。その中間の二千円というところに、いわゆるバルブ・ラインを、引揚援護庁としては場引かれたように、われわれは想像し、また解釈もいたしたいのでございます。一体この二千円という数字が、今日千円という数字に削られてしまつて、結局二百何億という金額で押えられてしまつておる。この金額を考えますと、私は支那の古い書物の言葉を思い起すのであります。宋の狙公というものがさるを飼つておつたのであります。その際にさるどもが待遇処遇の改憲について訴えて来た。この訴えはどういう訴えであつたかというと、朝三つさるにくりの実を與えており、夕方四つ與えておるという方法は、朝腹がひもじうてたまらぬ、と言つた。しかるところ、狙公は、ただちにひざを打つていわく、さればこれは朝四つ、夕方三つ與えよう。そうすると、さるどもは喜んで引揚げたといいますが、結局のところ一千円という問題も、総額二百何億というわくの中でやりくりせらるべき問題でありまして、具体的に言えば、それ以上に上げも下げもならないというふうに、私どもはこの問題を解釈いたしておるのであります。将来日本の機構のもとにおきましては、大臣の御奮闘もさることでありますが、援護庁の田邊局長あるいは木村長官等の絶え間ない熱意というものが背景になければ、結局本法は朝三暮四に終つて遺族問題というものも、から騒ぎになるのじやないかということを考えるのであります。私がいまだ衆議院議員にならざる以前、木村長官はたしか厚生省の薬務局中の一課長であつたように聞いております。その際厚生省に木村なる硬骨漢がいると聞いた。いかなる硬骨漢かというと、時の厚生大臣、たしか衆議院議長をしておられて、厚生大臣なつた方でありますが、その人がある良薬を知つて、それに製薬認可を與えよという大臣命令を発したところ、がんとして応ぜられざる一課長、これがすなわち木村長官であつた。大臣がそんなやつはやめさせてしまえと言つたところ、私はいつやめてもよろしゆうございます、と、昂然の気慨をもつて、答えられたというその木村長官に、この際承りたいのでありますが、厚生省案がいたずらに空転いたして、結局政府原案の形にまとまりまするまでの経緯のあらましだけでも御説明願えれば、まことに仕合せだと思うのであります。
  81. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 私は一月の中ごろに援護庁の長官になりまして、それからこの仕事にタッチしたのでございます。従いまして、その前のいきさつにつきましては、正確なる詳しいことは存じません。ただ、最後の方針がきまりまして、これでもつて法案をつくれという御命令を受けまして、その御命令に従いまして、法律の案文を作成いたしたわけでございます。従いまして、そのいきさつ等につきましては、うわさとして聞いておる程度のことで、結局皆様方が御承知程度以上には出ないのであります。従いまして、どういう状況であつたかということにつきまして、ここでお答えいたしますのは、私は必ずしも適当ではなかろうというふうに考えます。われわれといたしましては、この遺族援護法案の内容となつておりまする金額が、きわめて不満足なものであるということは、十分認めておるわけであります。これにつきましては、御承知の通りに恩給扶助料等との均衡を考えなければならぬ。従いまして、正しくはそこまで持つて行くべきだというふうに私は考えますけれども、現在の国家財政の立場から、そこまでは行けない、従つてこれでもつて案を立てろというお話で、この案を立てた次第であります。そのほかのいきさつ等につきまして、閣議の内容等のことにつきましては、全然われわれはわかつておりません。これは大臣以外の人は、閣議の内容は知らないことになつております。われわれもいろいろな案をつくつて各種の案について練つたことはあるようであります。しかし、その案が閣議に付せられまして、それがどういうように扱われたかということを事務当局として申し上げるのは、いささか不謹慎であろうというふうにも考えますので、大体現在の法案でもつて満足ではないということだけを申し上げまして、ごかんべん願いたいと思います。
  82. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 大臣がいないのに、援護庁の長官だけつかまえて、どうのこうの言うことは、援護庁の長官も、官僚の身分として、これ以上の答弁は穏当でないと言われることは、私も重々承知しておりますが、現在盛られている金額はきわめて少いのだ、それ以外にたゆまざる努力をするのだということで、今後、大臣はしよつちうかわつても、官僚諸君はじつと牙城を守つてつていただきたいと思うのであります。あとの問題は援護庁長官から御答弁を願いますのには、関連性があまりに多過ぎますので……。
  83. 大石武一

    大石委員長 ではまたあとでお願いします。岡良一君。
  84. 岡良一

    ○岡(良)委員 きわめて事務的なことでお尋したいと思います。先般の臨時国会で、遺族等に関する調査費一億円をわれわれは協賛いたしておりますが、その調査の結果については、まだ具体的な資料はいただいておりません。多分その一端かと思いますが、二、三枚の謄写版刷りで父母、子、妻の数字をいただいた以外には、私はいただいておらないのです。それに関連してお尋ねをしたいのですが、生活保護法適用を受けている遺族世帶は、現在何万何千世帶ありますか。
  85. 田邊繁雄

    ○田邊(繁)政府委員 お答えいたします。昨年の調査によりますと、十九万三千人の戦没者につきまして調査をいたしました結果、妻、未成年子供、六十歳以上の父母祖父母、それに六十歳以下の父母祖父母、そういう遺族世帶が十七万六千であつたのでありますが、そのうちで生活保護法適用を受けております者が、八千三百五十四ということになつております。これは大体において戰没者の十分の一をとつて調査いたしましたものでございますので、今言いました数字を大体十倍しました数字、すなわち生活保護法適用のある世帯につきましては、八千三百五十四の十倍、約八万三千世帯というのが生活保護適用を受けている世帶と推定されます。
  86. 岡良一

    ○岡(良)委員 ちよつと聞き漏らしたのですが、十九万三千世帯を対象として、抽出的に実態調査された結果として、その世帶構成は、妻のほかに子供と親と各何人ですか。
  87. 田邊繁雄

    ○田邊(繁)政府委員 いずれその調査の結果を詳細にお手元にお配りしたいと思つておりますが、妻とそれから十八歳未満の子供でございます。それから六十歳以上及び六十歳未満の父母、それから祖父母、それから十八歳未満の孫でございます。これの属しておる世帶数が十七万六千戸でございます。
  88. 岡良一

    ○岡(良)委員 そうすると、その世帶は生活保護法適用を受けている世帶の基準として、その世帶たるものが、生活保護法による生活扶助費の支給を受けている世帯は、大体において八万三千世帶と推定し得る。その世帯構成は妻並びに十八歳未満の子が一人か孫が一人、そして六十歳以上の父母あるいは祖父母の一人がおる。要するに世帯構成としては員数として三名程度ということですか。
  89. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 これは今申しましたような該当の人がおる世帶でございますから、三名とか四名とか、多いところになると、もつとたくさんおる世帶もございますし、数が少い世帶も入つております。そういう人を含んでおる世帶ということでございます。
  90. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは大体八万三千世帯といたしまして、これが生活保護法適用を受けるという推定のもとに適用世帯の、あるいは被保護世帯の世帶構成は、これはまあ一律一体のことは――それぞれ千差万別ではありましようが、大体においてどういう世帶構成をしておりますか。
  91. 田邊繁雄

    ○田邊(繁)政府委員 昨年の調査の際には、生活保護法適用を受けておる世帶だけについて、その具体的な構成を調査いたしませんでしたので、今詳しい資料を持つておりませんが、大体において未亡人世帶というものが生活保護法ないしは生活困窮の率が高うございます。それから父母につきましては、六十才以上の世帶が、六十才未満の世帶よりも困窮の率の高いことは、これは現実でございます。同じ父母の世帶でございましても、戦死者以外に成年の男子がある世帶と、一人のむすこだけをなくした、あるいは戦死者以外に成年男子がいない、つまりあとは女、姉妹だけだ、あるいは十八才未満の男の子だけである、あるいは全然子供がいない、こういう両親の家庭は、特に六十才以上の世帶につきましては、生活保護法適用をされておる率、ないしは困窮しておる率が高いという状態にあります。
  92. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは大体においてそういうふうに困窮の率の高いと推定され得る世帯について、これは計算をしていただかなければわからないでしようか。たとえばエンゲル係数を六〇ということでCPS対比率七五%ぐらいで、一箇年の生活費は東京都のCPSについて推定でどれくらいかかりますか。
  93. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 ただいまの数字は、今のところ調査がございませんのでわかりませんでございます。
  94. 岡良一

    ○岡(良)委員 それでは木村さんは社会局長としておられたので、その間の御記憶でも十分御意見がおありのことと思いますが、今度四月から実施される新しい生活扶助費の基準七千円ということに上げられましたが、これでもつてエンゲル係数は一体どの程度であるか、あるいはCPSとの関連で、比率はどういう数字が出て来ますか。私ども聞いておるところでは、CPSとの関連では五〇%ぐらいじやないかというふうに聞いておりますが、その点の消息を承りたい。
  95. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 ただいま御質問の数字につきましては、正確なるものを、ただいま私持つておりません。社会局の方に照会いたしまして、その数字を差上げるようにいたしたい、かように考えております。なお社会局といたしましては、一応予算の単価になつておりますものよりも、予算範囲内におきましてなるべく高い基準をつくりたいというふうに考えておるように聞いております。
  96. 岡良一

    ○岡(良)委員 それではぜひそのデータと、そうしてエンゲル係数のもつと低いと申しましようか、文化度の高い生活を保障するに足る、大体において妻一人、子と二人、十八才未満の子二人、あるいは六十才以上の父なり母と子一人、こういう世帶における東京都におけるCPSの関係において、エンゲル係数は六〇を上まわらない程度生活保障をして行く上には、現在の物価において一箇月どのくらいかかるかという資料をぜひお願いしたいと思います。  それから、なおこの機会に、いずれまた他の委員からもお尋ねがありましようが、先ほど青柳委員からのお尋ねにも関連いたしまして、この際特に社会局長としての率直なる腹蔵のない御見解を承りたいのですが――これは、要するに生活保護法との関連性の問題なんですが、現在の援護法というものがいよいよ実施されるというときになりますると、これは先ほどの大蔵省の国庫課長の答えを聞きましても、五箇年年賦でも一万円そこそこでる。そこで十八才未満の子あるいは六十才以上の父母が五千円であるから、かりに世帶構成が五人といたしまして、妻が一万円、親が五千円、子が五千円ということになりますと、二万円。そこで五箇年年賦償還で一方二千円ということになりますと、大体月平均というものは二千五、六百円にしかならないという数字に一応なります。そういうことでは、生活保障ということになると、とてもこれはおぼつかないことになます。そこで三人の世帶が、かりに四月から七千円の生活扶助――これは五人、世帯ですから、五分の三を受けますと、大体どうなりましようか。四千二百円ぐらいの生活費をもらえるという計数が出て来ます。そうすると、遺族扶助料としては大体二千五百円程度、一方では生活扶助四千円であるが、そこで二千五百円の収入があるといつて差引かれるということになると、生活扶助の方でこれまではまるまる四千二百円もらつておつたものが、大体千七百円しかもらえないという数字になります。この取扱いですね。これは大臣の方の言明を聞くと、やはり当座は生活保護法で補完をして行きたい。これではとても満足に行かないから、特にそれほどに困る方については補完をして行きたい。生活保護法はやはり補完作用を営むものとして考えておられるようですが、この補完の仕方ですね。これは社会局長、また現在の援護庁長官として双方の運営に当つておられるので、腹蔵のないところを――運営についても、それを加えると申されるのでありますが、その運営の手心とは具体的にどういう手心を加えられるか。この点をはつきりとしておいてもらわないと、なかなかわれわれこの法案に対して、おいそれとのめないかつこうになりますので、この点を特に局長の立場から、長官の立場から、腹蔵のないところで、ひとつ速記をめてもけつこうなんですが、運営の妙というやつを、はつきり納得の行くところを聞かせてもらいたい。
  97. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 たいへんむずかしい御質問でございまして、引揚援護庁長官としての希望もございますし、元の社会局長としての社会局らしい考え方もございますし――ただいまここで公の席上で引揚援護庁長官として申し上げますれば、われわれといたしましては、できるだけこれによりまして遺族生活内容がゆたかになるような結果を希望いたしておるのであります。ただそのほかの技術的な問題等につきましては、社会局におきまして社会局のお考えがあることと思いますので、われわれといたしましては、そういう希望を持つておるということだけでもつてこかんべん願いたいと思います。
  98. 岡良一

    ○岡(良)委員 そこをやはり同じ省内におられるので、いろいろお打合せしておられるのではないかと思うのです。何ら打合せもなくてこれが出されておるわけでもないと思うし、関係の局長さん方が参加して、いろいろ連絡的に討議しておられるので、何かそこを、こういう話も出ておつたという腹蔵のないところを、行政の執行に当る立場から――取扱い上の具体的な何か便法というものが話題に出ておると思うのですが、そこをわれわれの参考にお聞かせ願いたいと思います。
  99. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 この問題につきましては、御承知の通りに、生活保護法というものは、社会保障制度の一環としての一つの大きな理想を掲げておるわけでございます。御承知の通りに、生活保護法というものの内容が、逐次改善されつつあるとは申しながら、社会保障制度の一環といたしまして、きわめてまだ貧弱な段階であるという現状にも制約されなければならぬ部面があるわけでございます。またここで考えております、生活水準というものにつきましての科学的な検討といううものも、逐次加えつつありますけれども、まだ十分な段階に達していないという状況もあるわけでございます。従いまして、それらの各種の段階を考え合せまして、そうして社会保障制度の一環としての生活保護制度というものをくずすことのないようにしなければならぬというのは、当然のことじやないかと思うのであります。従いまして、われわれといたしましては、これをくずさない限度におきまして、どうしたらいいかということを、技術的に考えてもらうということではないかと思うのであります。従いまして、われわれといたしましては、その線に沿いまして、社会局当局において善処せられることを要望いたしておるのであります。大臣の御趣旨もございまするし、それらの御趣旨に従いまして、目下社会局におきまして考えておる。これに対して、私たちの希望は申しておりますけれども、まだ決定した最後の段階には至つておりませんし、またこれにつきましては、それがきまりました上でもつて社会局長から御答弁があることと思つております。
  100. 岡良一

    ○岡(良)委員 もちろん、木村さんのおつしやることはよくわかりますが、生活保護法というようなけちな名前をつけないで、ナシヨナル・アシスタント・アクトくらいで、そういう大きな機構ならば、その中にはとんど吸収されるでありましよう。しかし、日本の現在の状況では、あなたの御指摘の通り、そう行つておらない。そこで生活保護法の現在の扶助料の額にいたしましても、その基準はエンゲル係数が七三。これでは文化的な生活どころか、結局豚小屋の生活でしかない。これは、要するに、生活保護適用を受ける遺家族の場合と、一般家庭と、例を引いて言えば、おやじさんがメチールで死んで、あとに取残された未亡人の場合と、一方は国の強制的な命令によつて、生業を捨て戦場にかり出されて、そうして命を投げ出した家庭とが、同様に処遇されるということは――これは生活保護法というよりは、生活保護法を一歩進めるという観点から、そういう実際のケース・ワークに対しては、やはり実質的な生活補償を與えるという方向に持つて行くということが、生活保護法を発展させるゆえんでないかと思うのです。生活保護法は、社会保障制度の一環である。であるから、この法規というものは動かせないのであるというんじやなくて、これはきわめて不十分なものである。しかし、これは現在いろいろな日本の事情から、要するにメチールで死んだおやじさんのあとに残された遺族も、あるいは戰死者の遺族も同等なもとして、現われて来た貧窮という事態だけをとらえて、これに対する生活保障を與えるという制度であるが、その與え方も非常に不完全である。ところが、今度の場合にはそうではない。先ほど申しましたようなかつこうで、大きな犠牲のもとに遺族として生活の困窮にさらされておる。せめてここだけでも、現行の生活保護法の不十分なものを、不十分でなく、完全なものにして生活の保障を與えて行くというふうに持つて行くことが、あなた方の立場から生活保護法というものを前進させるものではないかと思うのです。そういう考え方にしていただけないか、そういう考え方から何か具体的なお考えがないかということをお伺いしているのです。もう一ぺん聞かせてもらいたい。
  101. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 御説まことにごもつともに存ずるわけであります。われわれといたしましては、援護庁の長官といたしまして、そういうような考え方でもつて話はいたしておるのであります。これにつきまして、私の方から、どうなつておる、どういう考えで進んでおるということを申し上げるのは――私の方といたしまして、向うにはいろいろ要求はしておりますが、その要求を申し上げるわけには行かないのでありまして、やはり厚生省といたしましては、その担当の部面でもつてお答えするのが、適当であろうと思うのであります。
  102. 岡良一

    ○岡(良)委員 もう一点だけ――かりに、今私どものごく頭の中での思いつきのような計算ですが、一応線は出ていると思うのです。遺族世帶が三人で、未亡人一人、十八才未満の子供が一人、六十才以上のお母さんが一人おつたとしましよう。これが現在何らの収入がない。従つてまるく生活扶助を受けているといたしますれば、現在ならば六千二、三百円のところですか、そうすると五分の三でどうなりましようか、大体四千円ほど受けている。これが四月になれば七千円以上になるから、四千五百円ほど受ける。しかし四千五百円では文化的生活は営めない、これは非常に足りない。特に貧窮の原因が、先ほど申しましたような公の事情にある。従つて、当然国の心がけとして補償するという建前において、実質的にはその生活をカバーして行くという、生活の保障という手を具体的に打出して行くということからしますと、私どもの考えで行けば、四月から改訂される生活扶助額が、一般普通の貧窮家庭において、全額の生活扶助を三人世帶でもらつた場合に、東京都で四千五百円である。しかしこれはCPSとの対比で大体五〇%だと思う。エンゲル係数が六八とかおつしやいましたが、実際問題としてはもつと高いんじやないかと思います。だからこれを六〇ぐらいまで引下げて来ますと、どうしても少くとも六千七、八百円はいると私は思うのです。そうすると、四千五百円もらつて、しかも今度遺族扶助料で、あるいは公債の利息や元金の返済金やら、何やかやで三千円ほどある。そうすれば、四千五百円プラス三千円とすれば七千五百円、大体六千七百円か八百円いるところに、七千五百円ぐらいの支給があるならば――生活保護法生活扶助支給する場合においては、そういうものは、税金の対象としないように、問題としないで遺族家庭にはやるのだ、こういう取扱いが勇断をもつて木村長官はできないものですか。これは遺族も非常にそういうことを期待しておられるように聞いているのですが、まるまるやつてそういうものは控除しないということになりませんか。
  103. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 これにつきましては、御意見として承つておきます。私もその御意見につきましては、十分尊重いたしますよう努力いたしたいと存じます。内部の考えにつきまして申し上げるのは、公の席では差控たいと思います。
  104. 大石武一

  105. 松谷天光光

    ○松谷委員 事務的な点で伺いたいのです。先ほど岡委員から出ておりました遺族の数の点でございますが、そちらから御提出いただいた資料によつて十分拝見した上で、詳細に質問させていただきたいと思いますが、これはほんの一部分、東京都の麻布、今は港区に含まれておりますが、その麻布だけの一つの例から見た問題でございますが、従来二万三千五百であつたものが、今度の再調査で七百三十七に減少しております。これはほんの一つの地域に現われた傾向でございますが、こういう状態が全国にわたつて今度の御調査を集計なさつた際に出ておるかどうかということを伺いたいと思います。つまり、過去の援護庁においていろいろ調べられておつたその数、あるいは今まで大体想定しておられたその数と、今度の再調査によつて得られたその数との間に、どういう開きがあるかということを伺いたいと思います。
  106. 田邊繁雄

    ○田邊(繁)政府委員 お答いたします。麻布区で調査した数字が三千百名であつた、それが再調査の結果七百三十七名に減つたというお話でございますが、その調査の時期及びその基礎資料を拝見いたしませんと、はつきりしたお答えはできないと思いますが、先ほど申し上げました調査は、昨年実施したものでございまして、それは当時都道府県で持つておりまする戦没者の資料の中から、一割だけをとつて十九万三千というものについて調べたわけであります。従いまして、当時十九万三千として把握しておりました数というものは、当時において戦没者として認められておる数でありますので、その数を基礎としてさらに再調査を進めておるわけでありますので、今日におきましては――いずれお目にかけますが、数字はその当時の戦没者よりもふえております。戦没者の数は、太平洋戦争におきましても、当時の数よりふえておるような状況になつております。
  107. 松谷天光光

    ○松谷委員 その点はなお資料をいただいてから、十分に質問させていただきたいと思います。なお二十六年度において一億円を予算にとられて再調査をなさいました。その調査費の残額は、この遺族に関する問題に使うということになられて、何か各地方にそれが渡されたというふうに伺つたのですが、もう少し詳しく遺族のいかなる関係の方に、それが具体的に使われるようになつたかということを、伺つておきたいと思います。
  108. 田邊繁雄

    ○田邊(繁)政府委員 一億円の調査費の使い方、それからその地方によつて実施しました諸調査の内容及びその結果につきましては、文書によつて皆様方にいずれまたお目にかけたいと思いますが、主として都道府県、それから都道府県の世話課、それから若干市町村の方にも補助いたしました。
  109. 松谷天光光

    ○松谷委員 そういたしますと、その調査費の余りましたものが、特に遺族の相談の方面に使われたというようなことは、別に全体的にはございませんのでしようか。
  110. 田邊繁雄

    ○田邊(繁)政府委員 これはあくまでも調査費でございまして、実際的な相談というような事業には、使用いたしておりません。
  111. 松谷天光光

    ○松谷委員 そういたしますと、各地方に流される場合に、項目はどこまでも調査費で他の実際の運用の内容については、その地方々々の責任ある使い方ということにまかせておられるのでしようか。
  112. 田邊繁雄

    ○田邊(繁)政府委員 調査費を地方に流す場合には、それぞれ方に要領を示しまして、そういつた目的にこれを使うようにということで指示しております。従いまして、それによつて遺族の相談という方面に使うようには、指示いたしておらないのであります。
  113. 松谷天光光

    ○松谷委員 先ほど岡委員がさんざん意見をお出しになつておられたので、私は意見は省きますが、この生活保護法の問題についての交渉というものは、先ほどの岡委員の御意見の通りの交渉を、当然援護庁の立場として強くやつておられるというふうに解釈してよろしいのでしようか。
  114. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 生活保護法をどう扱うかということは、これは社会局独自で考えなければならぬ立場でございまして、私があまり強く申すということは、実は社会局に対する圧力になります。従いまして、私といたしましては、事務的に交渉はいたしておりますが、しかし圧力は加わらぬように考えなければならぬと思います。
  115. 松谷天光光

    ○松谷委員 その点なんでございます。たいへん重複して恐縮でございま正すが、圧力をかけてはいかぬという御説明をいただいたのですけれども――これはもちろん閣内の問題でございますし、当時の政府性格によることは当然でございますが、少くともこういう援護法を單独法として出さなければならなくなつた今日の状態から見てあるいは当然そこまで事が運ばれて来たのですから、それを御担当になる特別庁とされて、圧力という言葉はいかぬかと思いますが、少くとも責任長官なり責任庁とされて、むしろ圧力以上のものをかけていただきたい。それでなければとても動くものではないと思うのですが、そういう点はいかがでございましようか。もちろん、生活保護法は社会局の問題だと思います。しかし、厚生省社会局の扱う生活保護法の中に、やはりこういう性格援護法というものがある、そうしてこういう希望を持つとすれば、少くともそこに強い意見を出していただかなければ、とても社会局だけで動くものではない。むしろ援護庁がどうしても聞かないというあと押しがあることによつて、社会局の意見が実施されて行くのではないかと思います。その点は、かつて社会局長でおられた現長官が十二分に御承知のことと思います。御承知だけに、あるいは長官とされて、あちらの局長の立場をお考えになつて、強い圧力はかけられないというお気持はよくわかりますが、しかし、少くとも私どもの希望するところは、圧力以上の強固な一つ援護庁としての態度を堅持していただきたいと思うのでございます。
  116. 青柳一郎

    青柳委員 木村長官に御質問したい。合同慰霊祭の補助ですが、いかなる合同慰霊祭に補助するのか、その合同慰霊祭の主催者はだれであるかということにつきましてお話を承りたい。
  117. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 正確にきまつて上の方の御決裁はまだ得ておらないのでありますから、これは結論であるということでなしにお聞き願いたいと思います。私ども気持といたしましては、遺族方々気持をくみとりまして、できる際り都道府県知事または市町村長等の公共団体でもつて、この慰霊祭をやつていただきまして、これに対する補助をいたすようにいたすのが、一番いいのではないかと考えております。どういうふうな形をもつてやるか、そうしてこれについてどういうことをしなければならぬか、いろいろな問題がございますが、これらにつきましては、十分検討いたしておるわけであります。われわれの方針といたしましては、なるべくそういたしたい、また予算もそういう趣旨予算になつているように承つております。
  118. 青柳一郎

    青柳委員 そうなると、神道指令に関連しておる通牒の中に、相当多数内容をかえなければならない問題が出て来ると思うのでありますが、その点につきましての御覚悟があるかということについて、承つておきたい。
  119. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 この問題につきましては、司令部からの指令は、一応講和の発効後には全部効力を失うと考えております。ただ、憲法によります一つの精神がございますので、憲法には従わなければならぬ。従つて憲法の範囲内におきまして、どういうふうにしたら一番国民感情に合うかということにつきまして、考究いたしました上、適当な措置をいたしたいと考えております。
  120. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 援護庁長官に、関連して質問いたしたいのです。今まで方々で慰霊祭をやつておるのに、私たちも参加をいたしておるのでありますが、ある慰霊祭は仏式において行つており、ある慰霊祭は神式によつてつておる。神社神道あり、また宗派神道あり、仏教十三宗、五十六派あるのであります。またそのほかキリスト教も儒教もあるのでありますが、今度の霊慰祭には、一体どういうものを祭司にするような指導方針でありますか、これをお答え願いたいと思います。
  121. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 御承知の通り、憲法によります制限がございます。一宗一派に偏するような行事はできないと思います。従いまして、憲法の規定に違反しないで、しかも遺族並びに国民の感情に合うやり方でやらなければならぬのでありまして、このやり方等につきましては目下検討中であります。
  122. 青柳一郎

    青柳委員 府県を主催者とするということになりますと、もちろん府県の費用で行うということになりまして、それに対して国の補助が行われる。府県がそういうことに費用を出すということは、憲法上の疑義があるのではないか――私の意見は別として、そう思うのでございます。その点につきまして、私の疑問を解いていただきたいと思います。
  123. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 これは宗教活動という言葉の解釈になるのじやないかと思うのでございます。現在宗教活動というものの解釈につきまして、その方の担当のところで協議をいたしておりますが、どうしても憲法に違反するということに相なれば、当然国からの補助は全然できないということに相なります。これにつきまして、われわれといたしましては、国からの補助ができる建前でおりますので、なるべくそういうふうな形に相なるようにいたしたい。もちろん、これは憲法の解釈でありますから、憲法の解釈を曲げることはできません。憲法の許します範囲におきまして措置を考えたい、かように考えております。
  124. 青柳一郎

    青柳委員 慰霊祭の問題は、精神的な遺族に対する措置として、非常に大事な問題だと思つておるのです。これをやつて、あとからいろいろな解釈上の問題でも起つては相ならぬと思いますから、そこは慎重に考えられる必要があると思うと同時に、遅くてはならぬのであります。遺族心情にこたえる上からいつても、期待に沿うゆえんからいつても、できるだけ早く方針を立てていただくように重ねて希望を申し上げておきます。
  125. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 厚生省といたしましては、国内の関係方面と協議いたしまして、一応大体の成案を得まして、あるやり方をもつてしますと憲法違反にはならないという大体の考え方をもつて、今文部省の方にその書面を出しております。文部省でそれでよろしいということになりますれば、それでできるだろうと私は考えております。
  126. 柳原三郎

    ○柳原委員 慰霊祭の問題で、ちよつと聞いたり、希望と申し上げたいのですが、各市町村でやる慰霊祭の日にちは、地方自治団体がかつてに選定して行くとすると、大体行ける建前の構想なんでしようが、そうするとあなたの方は非常にめんどうである。私としては、日本中全部、ある特定の日をきめて、思い出の日というか記念日というか、この日は日本国民全体が遺族のために哀悼の念をささげる、こういうふうに持つてつていただくと、すべての面にいいではないかということを考えているのですが、そういうことは考えておられぬのですか。
  127. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 やり方等につきましては、そういういろいろな御意見もあろうかと存じます。事務当局でもつて、一律にどうこうということが、はたしてよいかどうかという点も、問題になります。遺族方々のお気持もございましようし、国民全体がどういいう気持かということも考えなければならないと思いますので、国民大多数のお気持でもつてどちらがよろしいかということは、お考えになつてしかるべきではないかと考えております。われわれといたしましては、強烈してどうこうするというような形は、適当でないと思いますとともに、各方面のいろいろな御喬を伺いまして最後の決定をしたいと考えております。
  128. 柳原三郎

    ○柳原委員 そういうふうにしてもらいたいと希望を申し上げておきます。
  129. 堤ツルヨ

    ○堤委員 私は緊急動議を提出いたします。と申しますのは、実はこの委員会では、かねて橋本厚生大臣が辞任になられましたときに、大蔵省案と一戦を交えられたということが巷間伝えられております。それで辞任までした厚生大臣が持つておつた厚生省案なるものを、われわれ要求いたしましたが、今日に至るも、それがまだつまびらかでない。従つて、これは元厚生大臣の橋本龍伍先生がお出ましにならないと、納得する案をお示し願うことはできないと思う。従つて証人喚問といたしまして、この委員会に橋本元厚生大臣の出席方を委員長から要求していただくように、緊急動議として提出いたしますので、ただいま即刻委員諸公にお諮りを願いたい。
  130. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私は、ただいま堤委員からお出しになりました緊急動議に対しまして、賛意を表するものであります。元来、厚生委員会は、一昨年来三十数回にわたりまして、このたびの戰傷者、遺家族援護法案につきましては、協議をしておるはずであります。これを基礎にいたしまして橋本厚生大臣が閣議において相談をされたに違いないと思うのであります。われわれといたしましては、この委員会の責任として、われわれの案がどの程度政府に受入れられたか、またこの案に対しまして、現在の政府案がどういう関係に立つのか。しかも、橋本厚生大臣はこれに対しまして、これでは国としての義務が済まない、政権になれて政策の審議に真剣味を欠いておるという強硬な声明書まで発せられまして辞任になつておるのでありますから、私どもといたしましても、現在の政府案に対して、われわれの委員会の案がどういうふうな形で厚生省案に入れられ、またそれが橋本さんによつて支持され、橋本さんのああいう事件になつたということは、当然私どもの責任でもありますから、ぜひ橋本前厚生大臣をこの場にお呼びいただきまして発言をお聞きしたい、かように考えておりますので、この動議に賛成いたします。
  131. 松谷天光光

    ○松谷委員 ただいま堤委員から出されました緊急動議に対して、私も賛成の意を表します。私ども承知のように小委員会をつくりまして、ただいま苅田委員が言われた通りに、日夜検討を続けて参りました。その当時の担当大臣が橋本元厚生大臣であられまして、私どもの意向の一端も、十分にくみとつておられたのではなかろうか。少くとも、いろいろの約束も、委員会においてなされておつたのでございますが、それがとにかくああした一つの問題をもつて突如として大蔵案になつて来た。しかも世間では、今日私どもが扱つております案件が、かつてどもが小委員会において検討を続けて参りましたそのものであるというふうに解釈されておるのではないかと思います。こういう点について、やはり実態というものを私どもがはつきりと知り、そうしてなぜごうなつて来たかというその経過をも、十分にはつきりさせる必要があると思います。こういう重大な問題を決定いたしますにあたつて、少くとも参考人として前大臣の出席を求めてその意見を聞くということは、非常に重大な必要なことだと思いますので、ぜひ委員長において、そのおとりはからいを願いたいと思います。
  132. 大石武一

    大石委員長 ほかに御発言はありませんか。
  133. 亘四郎

    ○亘委員 ただいま当委員会として相当考慮を要する問題が、緊急動議として提案なつたのであります。従つて、私どもの立場といたしまして、当然あらかじめ話合いをしなければならない問題ではなかろうかと思うので、この際しばらく休憩を宣せられて、さらに検討させていただく必要があると思いますから、さようおとりはからいを願います。
  134. 大石武一

    大石委員長 ほかに御発言はありませんか。――それでは暫時休憩いたします。     午後三時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後四時十五分開議
  135. 大石武一

    大石委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。  先ほど堤ツルヨ君より動議の提出がございましたが、この取扱いに関しては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 大石武一

    大石委員長 ではそのようにとりはからいます。
  137. 松谷天光光

    ○松谷委員 委員長におまかせするに異議ございませんが、先ほど申しましたように、前大臣として委員会で議決された案に、橋本大臣があずかつておられたわけでございますから、そういう点について、前大臣として一応出席されるのが、常識から考えた大臣の行動だろうと私は思うのです。もしも大臣が出席されないという場合には、できればその理由を委員長が伺つていただきたい。そしてそれを委員会で発表、報告していただきたいと思います。
  138. 大石武一

    大石委員長 明日は午前十一時より開く予定であります。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十六分散会