○
吉武国務大臣 それはむずかしい問題で、簡單に十分や二十分でというわけのものではなくて、相当深く研究しなければならぬと思います。それは机の上のプランは幾らでも立ちます。机の上で人口が何ぼで、それには
病院が何ぼいる、ベッドが何ぼいるということを書くことでしたら、すぐきようにと言われても困りますけれ
ども、立てようとしたら、そう私はむずかしくないと思う。しかしそう簡単に机の上でプランを立てて、それで満足すべきものではない。私は根本的には、
地方地方にはやはり
一つの総合的な
病院を持
つて、医療についての総合指導をやるところがあ
つてほしい、かように思います。ただ都会地だけに偏在するというようなことでなく、
地方心々に相当
中心になるべき
総合病院があ
つて、むずかしい病気はそこへ行けば、そこで相談に乗
つてもらえるとかなんとか、そういうものがあ
つてほしいと思います。それから国が全部の医療の
機関を持つということには、私は賛成いたしません。それは、そういう国もありますが、それではそれがほんとうに行き届く
行政であるかと言うと、私はそうは思わない。やはり医療の
関係は、国も
中心的な指導のところを持つでありましようが、各
府県の自治体は各
府県の自治体で、
一般県民の総合的な
病院というようなものをお持ちになる方が私はいいと思う。県もお持ちになる。それじやその県内の医療というものは知事が全部県立でも
つて引受けて行つたらどうかという
意見もあるでありましようが、私はこれもあまり賛成しない。それはやはりその末端の部落々々には
国民健康保険という組織があ
つて、そうしてそれによ
つて医療をや
つて行くでありましようし、それを各町村町村で
病院を持つと言つた
つて、簡單にできませんから、
地方の各町村が一緒にな
つて病院を持
つて行くということも必要であろうし、また現にそういう
方向で進んでおります。
それから開業医というものも、物の
考え方によると、医療というものは営業でやるべきものではないのだ、これは全部
国立あるいは公立の公共的なものでなければいかぬ、一応こういうりくつは言えましようが、決してそうじやない。やはり開業医のものは開業医にやらせて、初めて私は能率も上ると思う。ですから、そんな点は一片の理論やイデオロギーでものを
考えて行くことは、私は誤りを犯しやすいと思う。ですから、その点は全体を常識的に
考えて行く。私はほ
つておくつもりはございません。
それから
結核の問題にいたしましても、そうであります。現に
国立の
療養所もつくると同時に、県立の
療養所もつくり、各
府県の組合立の
療養所もつく
つて、それが双方相ま
つて行
つて、初めてだんだんとこの医療網というものが私は発達すると思う。机の上で人口が何ぼについて何ぼという
計画は立ちますけれ
ども、これはそう簡単に財政が行くわけではありませんから、だんだんと国力の充実にま
つて、
医療制度というものも普及して行くわけであります。
それから、よく
社会保障制度と結びつけてお
考えになる方がありますが、
社会保障の制度は国がもちろん
生活保護法等において責任を持
つてや
つて行きます。しかし
社会保障の制度は、すべて
国立の
病院、
国立の
施設でやらなければならないとお
考えになるところに、私はまた誤りがありはしないかと思う。それはその
費用の負担という点においては、国はもちろんその責任を持たなければなりません。しかしそれによ
つて療養を受ける場合、療養
機関は
国立のものに入ることがよければ
国立のところに入るし、
府県立のものに入るのがよければ
府県立に入るし、また開業医のものだ
つてずいぶん入
つております。それを全部イデオロギーで、
社会保障は国がやるからこういうものは、国が直接やらなければいかぬ、全部
国立でや
つて行くなんということを
考えますると、往々にして間違いを起しやすいのであります。こまかい
計画になりますれば、これはそう簡単には行かぬでありましよう。緻密に見なければならないと思いますけれ
ども、大体私の基本的な
考え方はそういうつもりであります。