○吉武国務大臣 ただいま金子さんのお尋ねでございますが、お話のように今後の
厚生行政の重要な点につきましては、まつたく同感でございまして、この点につきましては、いろいろ他の事業もございましようが、私としてはか
つて来るのでありますので、やはり出力の
関係とにらみ合せて行きませんと、ただ
社会保障と申しますか、その点だけを考えますと、やはり財政面に非常な欠陥を生じまして、ほんとうに一時的には
社会保障の面が保障されたこのごとく見えましても、究極において困
つて来るということにもなると思うのであります。この点は、他の国にもややその例がないわけでもございませんので、私としては、その財政の点をも考慮しながら、充実をはか
つて行きたい、かように思
つております。しかし、先ほど御指摘になりましたように、すべての農業
政策にしましても、あるいは中小企業の対策にしましてもすべて財政との関連の深い問題ではごいますが、その点から見れば、この
社会保障の点は、他よりはもつと重点を置いて考えて行くべきだ、かように考えております。事実過去において私党において
関係しておりました点から見ましても、昨年の
予算につきましても、相当
社会保障の面には重点を置いたつもりでございます。増額の割合は、一般
予算の増額よりは、相当高度の増額をや
つて来たつもりでおるわけであります。
それから次に社会保険の点でございますが、これもお話のように、今日ばらばらに
なつております。これはできるだけ統合をして、一貫性を持たせて行きたいと思
つておりますが、ただ
社会保障全体の問題にしましても、社会保險の問題だけにいたしましても、私としては形を早く整えるという行き方よりも、まず中身を充実して行きたい。これを先決に私は考えております。中身が充実されるにつれて、形も漸次改めて行きたい。形を先に整えますと、とかくそこに無理が行きまして、内容に欠陷を生ずるおそれもございますから、私としては、たとえば
社会保障法というものをつく
つて、そうして、見たところは非常に総合的にりつぱに見える、しかし中身は大したことはないということは、かえ
つて国民を欺くゆえんであ
つて、それよりももつと内容を、
一つ一つ重要なものから充実して行
つて、その結果が総合的なものに整
つて行くというふうに、私自身は考えておるわけであります。社会保険の内容につきましては、御承知のように健保と国保がございまして、私は健康保険の方は、実を申しますと、事業主というものと、雇用される労働者とが双方掛金をかけて、
一つは労働者に対する福利施設としてであり、
一つは労働者の自分自身の
病気のときの保障という点から成り立
つておるのでありますから、私はこの点は現在も大体うまく行われておるし、将来もあまり心配しておりません。一時赤字もございましたが、賃金の上
つて行きますにつれまして、標準報酬というものも上
つて参りまするから、従
つてそれが収入増となりまして、今のところ大体とんとんぐらいの経営で行けるのではないかと私は思
つております。しかしこれも国がただほう
つておいていいというわけのものではございませんので、来年度
予算におきましては、事務費は全額国庫で持
つて行こう、それでまず今日のところはやれるのではないか。もう
一つの
国民健康保険の方は、同じ保険制度ではございまするけれ
ども、健康保険とは多少性質が違
つておりまして、雇用する事業主というものの
立場がない。ある村、ある町、そういうところの地域における住民が、相互扶助と申しますか、お互いに掛金をかけて助け合うという行き方をと
つておりますので、健康保険のように事業主が半分
負担をしてや
つて行くという
立場がない。従
つていわゆる庶民階級の方の多数の寄合いでありますから、それはお互いが保険金をかけて行けばいいじやないかというだけでは済まされないのではないか、これが今日
国民健康保険制度が困り、また赤字に悩んでおるゆえんであろうと思います。従
つて、この点は国家の財政が許しますならば、医療費の一部も国が持
つて行くという行き方に進まざるを得ないと私は思います。しかし、今日ただちにこれを受持つだけの余力がございませんので、さしあたり来年度といたしましては、まず再建整備をいたします。ちようど昨年農協が赤字に悩んでおりました際に、
政府が三十億ほどの金を出しまして、三年
計画で再建整備をする、赤字の整理をして建て直すという行き方にならいまして、
国民健康保険につきましても、約四億五百万円
程度の長期貸付をいたしまして、そうしてそれでも
つて赤字の整理をして行く、なお非常に努力をされて再建をされる組合につきましては、別途やはり四億あまりの奨励金を出しまして、そうして助長をして行く。このことが実質的には
国民健康保險に対する国家の一部
負担ということにもなるわけであります。そういうことにおいて、まず
国民健康保険を建て直して行くことからかか
つて行きたい、かように思
つているわけであります。
病院についてのお尋ねでございまするが、これは過日もお話いたしましたように、今日国が持
つております国立
病院が約九十九ございます。だんだんと国がこういう施設もや
つて行くことは、私は決して悪いことではないと思いまするが、現在持
つております九十九の
病院というものは、実は御承知のように今まで軍が持
つておりましたものを、ただそのまま引受けたというだけの、非常に暫定的なものから出ておるわけでありまして、これだけの多くの
病院を国が全部手厚くめんどうが見れるかというと、なかなか私はそうは行かないと思うのであります。それよりも、これを府県あるいはその他公的な機関が引取りまして、自分のところでこれを手厚くめんどうを見て行くということが、かえ
つてそこの住民、市民等から見るならば、いいのじやないだろうかと私は思
つているわけであります。そうすることは、一方国の事務の簡素化にもなりますし、かたがた今回の国立
病院の移管という問題を思い立つたわけでありますが、しかし、これも先日申しましたように、そうかと言
つて、これを無理やりに押しつけて、
行政整理のように、整理して、しつぱなしにしてしまうというふうな考えは、毛頭持
つておりません。やはり付近の住民の方に迷惑にならないようにという点で、話合いの上で進める考えを持
つております。
なお
社会保障制度としてはいろいろ仕事がたくさんございます。そのうちどういうところから考えて行くかということでありますが、これはそう簡單にどの仕事だけに重点を置いてどの仕事は軽く見ていいというものではございません。けさも、私、盲人の会にも臨んでみましたが、盲人の方に接して見れば、やはり盲人の方もほ
つておけない。また実際働く能力のない困られる
家族は、これまた最低生活は保障をしなければならないのでありまして、今日非常に苦しい財政の中でありますから、その中で許せるだけ必要なものからや
つて行かなければならぬのでありますが、私が感じまする
一つの点は、資力のない人が
結核にかかられますと、私は非常に家庭が悲惨に思のであります。というのは、普通の
病気は、一週間か二週間たちますと、それでも
つてなおりますから、その間働けないために食い込みになりましても、また働いて回復するということができるのであります。一たび
結核にかかられた方が
家族にありますと
——特に働く中心の方がこれにかかられますと、長引くために、非常に悲惨な状態に押し込められるように、私は見ておるわけであります。従
つて政府といたしましては、この
結核の対策につきましては、相当重きを置いて行かなければならぬのではないか、かように存じております。
なおこの
生活保護にかか
つて来られる
方々の問題でありますが、私は今御指摘になりましたように、何とい
つてもこの小さい島に八千四百万からの
人口を擁し、そして年々百二十万から増して来るという状態でありまするので、これらの生活に困られる方を一々国家の財政で
生活保護でや
つて行くという建前は、これはほんとうの姿ではない。やはりほんとうの姿は、
日本の経済規模を拡大し、そして働ける者はできるだけ職業を與えて、自分の力で生活ができる体制を整えて行くことが本旨であ
つて、そうしても働く能力がなく、働けないで収入のないという人がどうしても出て来られます。その者に対しては、これはどうしても国家の力で最低生活は保障して行く、かように考えておるわけであります。