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1952-02-13 第13回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第3号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十七年二月十三日(水曜日) 午後一時二十七分
開議
出席委員
委員長
小澤佐重喜
君
理事
井手 光治君
理事
川本 末治君
理事
中川
俊思君
理事
並木
芳雄君
理事
前田
種男
君 石原 登君 鍛冶 良作君 島田 末信君
中野
武雄
君
野村專太郎
君 多田 勇君
河野
金昇
君 床次 徳二君 鈴木 義男君
立花
敏男君
出席政府委員
全国選挙管理委
員会委員長
牧野
良三
君
総理府事務官
(
全国選挙管理
委員会事務局
長)
吉岡
惠一君
—————————————
二月五日
委員水田三喜男
君
辞任
につき、その
補欠
として
中野武雄
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月十二日
委員岡村利右衞門
君
辞任
につき、その
補欠
とし て
亘四郎
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した事件
公職選挙法改正
に関する件
—————————————
小澤佐重喜
1
○
小澤委員長
それではこれから
会議
を開きます。
公職選挙法改正
に関する件を議題にいたします。本日は
全国選挙管理委員会
の
委員長牧野良三
さんから、
選挙法改正
に関する
意見
を承ることにいたします。
牧野
さんはさきに
内閣
に設けられました
選挙制度調査会
の
会長
として、
内閣総理大臣
の
諮問
に応じて
国会議員
の
選挙
及び
地方公共団体
における
選挙
に関する
制度
について
調査
、審議の任に当てられ、その結果に基き
衆議院議員選挙制度改正要綱
をとりまとめられ、それを
参考資料
として
皆さん
のお
手元
に配付いたしてあります。つきましては、ただいまから同君より
選挙法改正
に関する御
意見
を承るごとにいたします。
牧野
さん。
牧野良三
2
○
牧野政府委員
お言葉に従いまして、お
手元
に差上げておりまする
要綱作成
の
経過
について申し上げたいと存じます。 ただいま
委員長
から御紹介のありましたように、昨年の五月、
総理大臣
のもとに
諮問機関
として
選挙制度調査会
が設けられ、できるだけ少数の
委員
で、かつ日を限
つて
すみやかに
成案
を得るようにということになりまして、五月の二十二日に第一回の
委員会
を開きまして、以来百日余りで
成案
を得まして、八月の二十二日、
総理大臣
が
講和條
約調印のために渡米する二日前に
答申書
を
内閣総理大臣
に提
出し
、その後
総理府
ではこの
答申書
に基いて一応これを
條文化
して御
参考
に資する努力をいたして参りました。
調査会
が
調査
の
方針
として定めました第一のものは、新
憲法
の実施によ
つて選挙法
には特別の
注意
を拂わなければならない、まず
天皇主権
の
選挙法
から、
国民主権
の
選挙法
に切りかえるということをいたさなければならないのではないか、それには
公職選挙法
の一部を
改正
するということよりも、むしろ
根本
から改めた新
選挙法
を
答申
するということが必要であろうということに一決いたしたわけでございます。よ
つて
新たに新
衆議院議員選挙法
の
要綱作成
の任に当りまして、それができれば、
参議院議員選挙
並びにその他の
選挙
はすべてこの
衆議院議員選挙法
を
中心
にそれぞれ
立法
することが適当であろうということにな
つて
、その
方針
のもとに
要綱
を
決定
することに相
なつ
たのでございます。この点
調査会
がかような見解からまず
衆議院議員選挙法
を
作成
しようということに
なつ
たことを御
了承
を請います。 いまさらここで申し上げるまでもなく、
天皇主権
のもとにおきましては、
選挙権
は官から
国民
に付與されたるもの、お上から
国民
に授か
つた
ものという
観念
が
根本
の
精神
をなして来ております。
従つて選挙権
は神聖なもの、その
取締り
はよろしく厳格でなければならないといわれて来ておりました。これがいわゆる
官僚思想
と結びつきまして、
選挙法
に一貫した特別の
観念
をつくり上げて来ておると思うのであります。ところが新
憲法
のもとでは、
選挙権
は本来
国民自身
のものであ
つて
、
国民固有
の基本的な権利であるということが
根本
の
思想
とな
つて
おります。
従つて官
から
特別扱い
をしたり、またされたりするということであ
つて
はならない。そこに私
ども
は
新旧立法
の
基本的観念
に相違があるということに着眼しなければならないと思う。次に第二には、これまでの
選挙権
は、
国民
が
国家
のために行使するものとされて来た。
従つて
ここにもまた特別な取扱いをする根拠があるもののようにされて参
つて
来た。しかるに今日の
選挙権
は、
国民
が
国家
のために行使するのでなくて、
自分自身
のために行うものである。そしてそのために、そこに
国民主権
というものの
本質
的な
意義
があるとされて来ておるのであります。第三には、これまで
選挙権
は今申すように上から授か
つた
もの、それを
国家
のために行使するものとせられて来た当然の結果として、その行使にあたりましては、
官憲
の厳重な
監督
と
取締り
とが当然視されて、
選挙
はすべての
監督
と
取締り
の
規定
が
中心
とな
つて
来ておる、このことはわれわれの深く
注意
しなければならない点だ。しかるに今日の
観念
では、
国民
が
自分
の
選挙権
を
自分
のために使うというのであるから、外部から
監督
だの
取締り
だのという干渉がましいことをすべきでなく、かえ
つて
選挙関係
のそれぞれの役員を初め
関係者一同
は、有権者に対してはもちろんのこと、
候補者
や
運動員
に対して常に親切を旨とし、かつサービスに努めて、
選挙権
が常に愉快に、まことに気安く行われるということに心を置かなければならない。以上が
天皇主権時代
の
選挙法
と
国民主権時代
の
選挙伝
と基本的な
観念
を異にしまする点でありまして、ここに十分なる
注意
をして
要綱
の
決定
をしなければならないということから取進めた次第でございます。そこででき
上つた
新
選挙法要綱
には、お
手元
へ
出し
ておりますように大体
五つ
の
基本的特色
があります。第一は、
選挙
に関する
各種
の
基本観念
を明らかにした点であります。ただいま申し上げたように、
日本
における
選挙
というものは
官憲
の
監督
、
取締り
が
中心
で、その
指揮
、
命令
、あるいは
国家
のためぜひこれは行使しなければならない、
投票
しなければならないというような、強要されるような
観念
がいつも裏に
漂つて
今日に至
つた
ために、
選挙
というものはその
指揮
、
命令
と強要とを
内容
としているような
感じ
を受ける。そこでまず新しい
選挙法
は、第一章に
総則
として、
一條
から
五條
に
至つて
この
基本観念
を明らかにする。すなわち第
一條
には、
選挙
とはいかなるものであるべきかとい
つて
その
意義
を明らかにし。第二條には、
選挙権
とはいかなるものであるべきか。第三條には、
候補者
はいかなるものであるべきか。第四條には、
選挙運動
はいかなるものであるべきかということを明らかにし、しかして第
五條
には、
選挙管理委員会
はどういうことをするものであるかということを明らかにして、以上
選挙法
の
根本
をなしまする
五つ
のものに関する
基本観念
を
規定
し、すべての
規定
はこの
基本観念
からずつと流れ出る。
選挙法
の万般の
規定
はこの
五つ
の
基本観念
からこう流れ出る。この
基本観念
にたがうものが
違反
を構成する。
従つて
流れてきて
各種
の
規定
にな
つて
、こう受けて立
つて
罰則制裁規定
を設けまして、
首尾一貫
、簡潔明瞭な体制をつくり上げるということが必要である。従来
選挙
の
関係者
の中で、こういうことをすれば
違反
になりますか、ああいうことをしてもさしつかえありませんかという問合せが非常に多い。それはあまりに
常識
とはかけ離れた
選挙法
のやかましい
規定
があるという結果でありますから、もう何人にもなしてはならないこと、なしてもさしつかえないということが、
自分
で
常識
的に
判断
のできることを旨として
選挙法
というものをつくり上げなければならぬ。そんな
国民通常
の生活並びに
常識
をも
つて
は
判断
のできないような
規定
をしてはならぬということを
中心
に進めたわけであります。 次に第二の点は、
選挙手続
の改善でございます。
根本
は金のかからない
選挙
のためにどういうことをすべきか、これについて
考え
られたことが、
選挙
の
期間
を短縮しよう、短かい
期間
で徹底を期する。第二は、
投票
は従来のように
自署主義
をとらないで、あらかじめ
候補者
の名前を印刷してある
投票用紙
を使用する。いわゆる
記号式
の
投票
に改めよう。第三には、
不在者投票
というものは、いろいろな面の
便宜
をはかるために親切に行わんとするその結果として、かえ
つて
大きい
弊害
を来しておる。
従つて
これには大所高所から、何人も正しいと見る思い切
つた
方針
を定めようというのがおもなる点でございます。 第三は、政党の
公認制度
というものを
法律
上の
制度
として、これを
りつぱに
、公に、
法律
的に認めて行くことにし
ようじ
やないか、そして
公認候補者
というものに対しては十分な権威を持たせる、これがその一であります。二は
選挙運動
に関することでありますが、これはずいぶんいろいろの
資料
が出まして、
各党各派
より寄せられました
意見
を
中心
に
委員会
は熱心に検討いたしました。その結果
皆さん
の御希望、
輿論
の望むところに
従つて
いろいろと
規定
はこしらえてみましたけれ
ども
、大体
演説会中心
に、
演説会
一本を
原則
とするように進めたらどうかというつもりで
要綱
を
決定
しようということで、心を使いました。 次には
選挙
の
費用
でありますが、
法定金額
というものをむやみに少くして、守ることができないことを
原則
のようにきめてはいかぬ。これも広く
輿論
を聞いて適当な
金額
に定めると同時に、
審査委員会
の
制度
を置きまして、これを嚴重に守らせるような
方針
を
決定
しようということにいたしたのでございます。 次に
制裁
及び
罰則
の
規定
でございます。これについて、
委員会
にはよろしく
厳罰
に付すべしという
厳罰論
と、極度に処罰するのはやめ
ようじ
やないかという
罰則緩和論
とが相当闘わせられましたその結果これまでの
選挙法
は、ただ
違反
を憎むの結果、むやみと重くさえすれば
目的
を達するように
考え
、非常に偏狭の
弊害
がある。こういうことはやめなければいかぬ。これは
学問的見地
と、実際上の
立場
と両方から見て、十分な
規律
、統制を法の上に明らかにしたいということから、まず
自然犯
的なものと
法定犯
的なものとをはつきり区別する。
自然犯
、すなわちいずれの国でも何人でもこれを
犯罪
だという刑法的な
犯罪
と、みずから
選挙
の
目的
で定められた
便宜
上の
規定
、それに触れたというものとの間には截然たる区別をするということを
りつぱに
組織立たせることができました。そこで
法定犯
、すなわち
規律違反
の
方面
に対しましては
行政罰
として軽い過料の
制裁
を認める。それから
自然犯
的なものには、すなわち
選挙
の自由公正を刑法犯的な行為をも
つて
妨げるもの、その中には
選挙
の
本質
を害するものと
選挙
の
秩序
を乱すものとの二つに学問的にも実際的にも区別することができる。そこで買収とか
不正投票
とかいうように、
選挙
の
本質
を害するものには
懲役刑
を科することはやむを得ないが、
秩序
を乱したもの、公務員の
運動
であるとか、
教育者
の職にある人がなしてならないことをした、そういうような場合には、同じ体刑を科する場合ありとするも、これは禁錮にとどめるがよかろう。そしてともに罰金を科することを認める。かようにいたし、第三には、いやしくも
選挙法違反
をや
つた
者に対しては
選挙権
、被
選挙権
を停止させると同時に、実情に即するように、特殊の
違反そのもの
に対しては連坐の
制度
をきわめて広く、明瞭に認めるということに相なりました。 しかして
最後
に第五として、これらの
目的
を達する上からして、
選挙
区制
はどうしたらいいかということに至りまして、小
選挙
区制
を採用せられることが最も好ましいということに議決されました。これは中
選挙
区、大
選挙
区、小
選挙
区、おのおのその
利害得失
を
議論
した結果
決定
したというよりも、以上の
方針
を実現するがためには小
選挙
区制
のほかないということで、小
選挙
区制
というものを可とすることに
なつ
た次第であります。しかして
委員会
はただ小
選挙
区制
を可とすると
答申
いたしましたが、その
内容等
に至りましてはむろん
国会
の手にかかるべきもので、採否と同時に、採用する場合には、いかなる
区制
をいかに取扱うかということはすべて
国会
のなさるべきことで、
調査会
の手にかけるべき限りでないということに相なりました。 以上
根本
となりましたものにつきまして概要を申し上げまして、御
参考
に供します。
小澤佐重喜
3
○
小澤委員長
この際何か御質疑がございますれば御発言を願います。
立花敏男
4
○
立花委員
最初
の
経過報告
についてお聞きしたいのですが、
総理
の
諮問機関
として
調査会
は去年の五月にできて、
答申
は八月にお
出し
に
なつ
たようでございますが、今この
委員会
に御提出にな
つて
いる
衆議院議員選挙法案自体
は
答申
とどういう
関係
があるのでございましようか。またこれが
全国選挙管理委員会
の
事務局
の
法案
として出て参
つて
おるわけでありますが、
全国選挙管理委員会
は、こういうものをどういう
考え
でお
出し
に
なつ
たか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
吉岡惠一
5
○
吉岡政府委員
私から
お答え
申し上げますが、
答申
を
基礎
にして私
ども
の
手元
で
参考
につく
つて
みた案でございます。
立花敏男
6
○
立花委員
参考
と申しますと非常に広いのでございますが、
諮問機関
として正式にこういう
法案
を御
決定
に
なつ
たのか、単なる
資料
的な
意味
での
法案
なのか、こういうものを
政府
の
決定案
として
法案
としておつくりにな
つて
おるのか、その辺が非常に不明確なんですが、この案をお
出し
に
なつ
た以上は、これをどこまでも
政府
として正式に推進なさるお
考え
なのか、その点を承りたい。 それから御
承知
でございましようが、この
選挙法改正特別委員会
としては
申合せ
がございまして、お
出し
にな
つて
いるような問題、この小
選挙
区制
とか、そういうものは今度は扱わないという
決定
をしておるのでございますが、そういうことを御
承知
の上でこういう
法案
を
政府
として
決定
されて、どこまでも推進しようというお
考え
なのか、その点が非常にあいまいなので、明確にしておいていただきたいと思います。
吉岡惠一
7
○
吉岡政府委員
これはもちろん
調査会
としての案ではございませんで、
事務局
の案でございます。
政府
がどう扱うかということは、まだわれわれはつきり伺
つて
いないので、
事務局
だけの案で、各
方面
へ発表しまして、各
方面
の
意見
も聞きたいというつもりもあるわけであります。
立花敏男
8
○
立花委員
それは、
選挙管理委員会
の
事務局
はそういう
お答え
でわかるかと思うのですが、この
総理
の
諮問機関
としての
調査会
、
牧野
さんが
会長
だということですが、
牧野
さんがこの
法案
を御
説明
になると、どうもやはり
政府
としての
決定
的な
法案
だというように理解できるのです。特に
選挙制度
に関する
調査会
として設置された。
当局
の
責任者
が
法案
を御
説明
になりますれば、これはそう理解せざるを得ないと思うのですが、その点はやはり
政府
として、この案を正式に
法案
として
決定
に
なつ
たのかどうか。その点
牧野
さんからひとつ御答弁願いたい。
牧野良三
9
○
牧野政府委員
その点を明瞭に
お答え
いたします。
選挙制度調査会
が
要綱
を
決定
して、
内閣総理大臣
に
答申
をいたしました。
内閣
は、
事務当局
がこの
答申
に基いてかりに
條文化
をいたしました。そうしてこれを
国会
の諸君並びに
社会一般
の
参考
に資して、広く
輿論
の
批判
を求めんとしたもののようでございます。
要綱
のみをも
つて
しては、
専門家
以外の人にはのみ込めない。それでかりに
條文化
をするとするならばどういうことになるかということで、
苦心
をして形を整えて、もしも
要綱
をそのまま御採用になるとすれば、かような
法律
の形になりますということにして、何人にも
批判
をしやすいようにいたしたのがこれ
一つ
。 第二は、むしろ
衆議院
の
委員会
の御
参考
になるようにと、非常に急いだので、そこで早く
出し
たのでありますが、その後
衆議院
でも
りつぱな改正案
を御
作成
になりました。これを比較して
調査
研究する場合にも御
便宜
でなかろうか、
従つて委員会
へこれを提
出し
て
参考
にしていただくことの方がいい、こういう
考え
からお
手元
へ
出し
たわけでございます。どうぞ御
了承
を請います。
立花敏男
10
○
立花委員
私
ども
は、この
委員会
でつくりました小
委員会
の案もすでにできまして、先ほど
理事会
で、これは二十日にやるということに
決定
いたしております。これは去年から大体でき上
つて
おりましたので、おそらく
皆さん御存じ
だろうと思うのですが、そういう
国会
の
空気
、これは
申合せ
にな
つて
お
つた
わけでありますが、そういう
空気
を、
御存じ
の上で、こういうものを單に
参考資料
としてだけではなしに、はつきりした
法案
の形で、しかも
管理委員会
がお
出し
になるということは、何か非常に奇異な
感じ
を持つのですが、きようは單なる
参考程度
でございましようか、今後やはりこれを正式に
政府
の方から
法案
として
国会
にお
出し
になるような御意思があるのかどうか。
委員会
としてはこれを單に
参考
としてだけ見ておけばいいのかどうか、その点
政府
の決意をひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
牧野良三
11
○
牧野政府委員
お答え
いたします。ただいまの
最後
の御
質問
に対しては、
内閣総理大臣
が適当な機会に御答弁をいたします。私よりはただ
経過
を述べました。しかしてつけ加えて
一つ
御
参考
に申し上げたい。
衆議院
内に設けられましたる
委員会
は、
現行公職選挙法
をいかに
改正
すべきかということを
目的
にしてお進めに
なつ
たと承
つて
おります。
選挙制度調査会
は、
日本
の
選挙制度
はいかにあるべきであるか、
占領下
においてなされた
法律
を、
根本
的に立ち直
つて
、
ほんとう
に
日本
のためにはどういう
選挙法
であるべきかとあらためて
根本
から見直すべきだということから、全体に向
つて手
を染めたわけであります。
従つて衆議院
が
目的
とされるところと
選挙制度調査会
が
目的
とするところとの間には、截然明瞭な区別あるものと御理解願います。
従つて公職選挙法
一部の
改正
に対しましては、
選挙制度調査会
の案は非常にお役に立ちはせぬか、かように
考え
て
出し
たのでありまして、その間に別な
考え
や、しいてこの
反対
をも
つて
対抗せんというような
心持
は
一つ
もございません。もうま
つた
く
国民主権
に
なつ
たのに、依然として
天皇主権
のときのような
選挙法
であ
つて
はならぬと同時に、
ポツダム宣言
に基く
ポ政令
のもとにおいてなされた
立法
をもう一ぺん見直してみたらどうかという、きわめて自由な
立場
に立
つて
つくり上げたものだということで、御理解を賜わりたいと存じます。
立花敏男
12
○
立花委員
内容
を一点だけ、ひとつそれと関連いたしまして聞いておきたいと思いますが、問題の一番大きいのは、
内容
では小
選挙
区制
の問題だろうと思います。今
委員長
が申されましたその
天皇主権
から
国民主権
への
選挙法
の
改正
だ、これと小
選挙
区制
と具体的にどういうふうに
関係
があるのか、現在
公職選挙法
における
選挙
区の問題が、どういう点でこの
国民主権
と衝突するのか、その点をひとつ具体的に御
説明
願いたいと思います。
牧野良三
13
○
牧野政府委員
お答え
をいたします。どうかあまり、
欠陥
はありましようが、
欠陥
をつつつかないで、
ほんとう
の私らの
心持
、
趣旨
とするところを了としていただきたい。それはただいま述べた一、二、三、四、これらのことを有力適切に実行して、
日本
の
国会制度
の
基礎
を確立するためには、小
選挙
区の方がいい、いや小
選挙
のほかはあるまいという
結論
に
なつ
た。これだけでございます。
議論
も何もなか
つた
。ただ事実を申しますと、総会の席上では
議論
がありました。
反対論
がありました。小
委員会
の各
委員会
では、どうも小
選挙
区を実行するということのほかにこの
目的
は達せられないという
結論
に達しただけでございます。さように御
承知
願いたいと思います。
河野金昇
14
○
河野
(金)
委員
議事進行
について……。今私たちは、これは
参考
として聞いておるだけであ
つて
、
委員長
はかわりましたけれ
ども
、前の
委員会
としては
申合せ
があるはずであります。だから
牧野
さんの御
説明
に
なつ
たことに対して
質問
があるなら別だけれ
ども
、ここで小
選挙
区がどうのこうのと論議すべき段階ではないと思います。もし論議するなら、
委員会
の
申合せ
も
委員長
もかわ
つた
ということであるから、あるいは
方針
がかわ
つて
いるなら、これはもう一ぺん相談して、その上でもう少し具体的に入
つて
行くようにしたらいいと思う。だからまずわれわれは、われわれとして
方針
通り行くかどうかをきめたらどうかと思うのです。何だかむだなことをや
つて
いるような気がいたしますから、
委員長
に一応御忠告を申し上げます。
小澤佐重喜
15
○
小澤委員長
河野
君の
趣旨
は大体私と同じ
考え
でありまして、従来の
方針
を変更する
考え
はございません。ただ
牧野
さんの
説明
はあくまでも
参考
として聞いておるのでありまして、
従つて
質問
される
皆さん
の方でも、そのつもりでどうかひとつ、
河野
さんのような
趣旨
で
質問
を願いたいと思います。
立花敏男
16
○
立花委員
小
選挙
区の問題についての御
説明
は、やはり非常に漠然としておりましてわからないのでありますが、
最初
の
五つ
の
原則
と申しますか、
五つ
の
総則
からすなおに
結論
をして、小
選挙
区制
が出て来るとおつしやるのですが、それだけではちつとも
説明
になりません。たとえば第三條で
候補者
たる要件がきめられておりますが「
候補者
は、
国民
の
代表者
として、高い識見を備え、
公共
のために盡す熱意を有する者でなければならない。」こういう
原則
から、小
選挙
区制
が出て来る。こういうのが
五つ
あるわけでありますが、その
五つ
の中の
一つ
、こういうものからも小
選挙
区制
が出て来るというようにおつしやるように聞えるのですが、どういう
意味
でこの三條から小
選挙
区制
がいいということが出て来るのか、こういう点が非常に不明確なので、御
説明
が納得が行かないのですが、この点をひとつ……。
牧野良三
17
○
牧野政府委員
ただいま第
一條
ないし第
五條
について御疑問がおありなさるようですが、それは別といたしまして、これが第一項。次の第二項には、金のかからない
選挙
をやろう。それにはなるべく
選挙
の
期間
を短縮し
ようじ
やないか。それにはもし大
選挙
区であり中
選挙
区であれば、三、四十日はどんな
最小限度
でも要する。小
選挙
区制
なら十五日くらいでよくないか。それから
不在投票
の問題な
ども
、きわめて簡單に処理ができるのではないか。また第三に申しました
演説会
の
開催等
に関して
便宜
を供するというようなことも、小
選挙
区ならば非常に容易にできるのではないか。そうして
立合い演説
その他のことも、まことに簡易にできはせぬか。それから大切な
選挙費用
の制限を実施するのに、中
選挙
区以上ではなかなかむずかしいし、金もかかる。だから小
選挙
区ならばこういうことの監視もきわめて容易じやないか。こういうふうに
なつ
たのでありまして、だから第
一條
から第
五條
にのみ拘泥したわけではありません。御
参考
になろうからと御
説明
申し上げたわけであります。
並木芳雄
18
○
並木委員
私もただいま
河野委員
から言われたように、さつきの
理事会
で、大体何の必要があ
つて
この際
牧野
さんに来てもら
つて
意見
の開陳をしてもらうかということを申し上げたのであります。
参考
までに聞こうということですから、
参考
までに聞きたいと思
つて
聞いてお
つた
わけでございます。しかし今お聞きしている間に、どうしても聞きのがせない御
報告
がありましたので、その点について
質問
をしておきたいと思います。それはあたかも今までの
公職選挙法
が、
天皇主権
のもとにおける
精神
に基いてつくられておるやの感を與える。
選挙制度調査会
で
答申
した
要綱
に基いてつくられた
選挙法
が
天皇主権
のもとにおいてつくられた
選挙法
であるというふうな、少くとも私は誤解を與えるのではないか、そういうふうに聞いたのです。そこでお伺いしたいのですけれ
ども
、私
ども
が
苦心
さんたんしてつく
つた
現在の
公職選挙法
というものは、どういう点において
天皇主権
のもとにおける流れをくんでおるように
牧野
さんはお
感じ
にな
つて
おるか、それを御
説明
願いたいと思います。
牧野良三
19
○
牧野政府委員
お答え
を申します。
公職選挙法
全体の立案の
基礎
に
調査会
は非常な
疑い
を持
つた
のであります。
調査会
の抱いた
疑い
が正しいかいなか、これは別でございますが、
調査会
としては、従来の
選挙法
を統一して、形を整えたというような
感じ
がきわめて深い。であるから、ここはひとつ新たに
国民主権
ということの
中心
に立
つて
考え
てみようということに
なつ
たわけであります。でありますから、その点に関して一々指摘し、ここが旧
思想
だ、ここが新
思想
だなどというわけには参りませんが、全体の構成がさようにな
つて
いない。ことにはなはだしきものは
罰則
規定
において
感じ
たわけでございます。この程度で御
了承
願いたいと思います。
並木芳雄
20
○
並木委員
これは
牧野
さんの人物をも
つて
、それで全国を押しまくられた日には、
国会議員
の
立場
というものは非常に私は悪くなるのではないかと思います。つまり今の
国会議員
がぼやぼやしているから、こんな
天皇主権
に基くように統一した形式による
選挙法
をつく
つた
のだ。現議員がつく
つた
のだ。だからわれわれがしつかりしなければだめなんだというふうに、私は
国民
に印象づけるのじやないかと思うのです。そういうお
考え
があることを今知
つて
、初めて先般来、あたかもわれわれがこちらで
公職選挙法
を審議しておる際にも、片方から小
選挙
区を断行するのだとか、これこれのやり方をやるのだというふうに、
命令
の意図に出るような報道が行われた。その理由を今発見したわけです。この点は私ははなはだ遺憾であると思う。今のお話の統一した形式ということはどういうことなんでしようか。
公職選挙法
をつくるときに、私
ども
はばらばらにな
つて
おる
選挙法
というものでは不便だから、
便宜
上一本にまとめて、そうしてその中で共通する点は最大公約数として
総則
にうた
つて
、あとは各項目で、市町村の村
会議
員の
選挙
は市町村の村
会議
員の
選挙
で、その都度第何條なら何條と項にわか
つて
詳しく
規定
しているわけです。そういうものをとらえて、これが天皇の主権から現われたというふうに論ぜられたのでは、これは現にわれわれは
国民主権
、民主主義に基いて審議しておるのでございますから、
国民
の受ける印象というものは、はなはだ奇異に感ずるのではないかと思う。特に現議員と追放解除者との間にややもすればみぞができることを私
ども
は遺憾に思
つて
おる際、そういうことを吹聽されたのでは私
ども
の
立場
はなくなると思うのですけれ
ども
、もう少し納得の行くように
説明
していただきたいと思います。
牧野良三
21
○
牧野政府委員
お答え
をいたします。さように御解釈くだす
つて
は、
調査会
の心に沿いません。
調査会
は、すべて
法律
の
改正
というものはさように特別な心あ
つて
するものであ
つて
はならぬ、虚心坦懐、きわめて打解けた
心持
で、過去の
法律
の及ばないところ、至らないところ、誤れるところがあればこれを指摘して直したいというのがあなた方、私
ども
の志でございます。
従つて
そんなやかましいお
考え
でなく、新しい時代に処して、新しい
法律
をこしらえて行きたい、どれだけでもベターな方へ進みたいという心のほかには何もありません。だからそんなふうにおとりくださいませんで、
調査会
は
自分
らがベターを盡して、ベターな
法律
をつくるために全力を注いだのだということに御理解くだす
つて
、どうぞ御寛容をこいます。
並木芳雄
22
○
並木委員
その気持はよくわかるのです。わかりますけれ
ども
、ただ
ほんとう
に
公職選挙法
が
天皇主権
のもとの流れをくんでいるんだと言われたのでは、私
ども
はその点では引下れない、こういうわけです。ですから統一された形式についてそれをお
感じ
に
なつ
たとしても、
罰則
だ
つて
、何もいいじやないですか、
国民
から
選挙
された
国会議員
が堂々とここで審議をして可決したものであ
つて
、どう
天皇主権
の流れが
罰則
につなが
つて
いるか、その
議論
は飛躍されているのではないかと思う。先輩である
牧野
さんにこういうことを申し上げるのは、私としては快しとするものではないのですけれ
ども
、
天皇主権
のもとにおいてつくられたということですが、これはとんでもない誤解を與える、こういうわけなんです。ですから統一された形式、これもわれわれの発意に基いて行われたもので、
天皇主権
に拘束されてや
つた
ものではないのです。どうかもしそうでないとしたらば、はつきりここで
自分
の誤解であ
つた
ということを明言していただかないと、私
ども
の
立場
はなくなります。
牧野良三
23
○
牧野政府委員
すこぶる不本意なお言葉をいただきまして、私としては残念であります。
法律
を
改正
するということに
国会
はもつと虚心坦懐であるべきだと思います。きわめて虚心坦懐な大きな
心持
ちで、過去におれが努力したの、われわれはこういう
考え
であ
つた
のということに拘泥しないで、いいものはいいようにし
ようじ
やありませんか。悪ければよそうじやありませんか。そこでどうか
調査会
はいいものだと思
つて
や
つた
のですから、それはそれを御
批判
くださ
つて
、御
参考
にしてください。これ以上申しますと
議論
になりますが、私は
ほんとう
に現行の
罰則
には非常な遺憾を持つのです。学問的体系がないのです。
日本
の
選挙法
に学問的体系をつけるということは非常に大事なことです。
違反
すればすぐ牢の中へぶち込む、こういう
考え
が
根本
的に誤
つて
おる。これは
選挙
をやらない人、候補に立
つた
ことのない人、
選挙運動
をや
つた
ことがない人が、ただ憎むのあまり
厳罰
にしようという
思想
の流れから来ている。その
思想
の裏には何があるのか、古い
思想
がある。その古い
思想
とは何であるときわめて行けば、これを学問的に
説明
すると、
天皇主権時代
という言葉になると思います。でありますから、言葉に拘泥しないで、どうかもつと気やすい
心持
で、お互いに
法律
の
改正
その他にお心を入れていただきたい。どうぞさように御
了承
願いたいと思います。
並木芳雄
24
○
並木委員
先輩の
牧野
さんとこれ以上私は論争しようとは思いません。お言葉はお言葉として承
つて
、私
ども
もよくその点は研究してみたいと思います。 そこでもう
一つ
お尋ねしておきますが、それは、それほどの自信を持
つて
全国選挙管理委員会
の
事務局
の方でこういう
法案
をおつくりに
なつ
たわけです。ひな型としてつくられたわけですが、それならば
選挙制度調査会
の
答申
案をやはりあくまでも貫くべきであると思うのです。この熱意がなければ、
選挙制度調査会
の方々としても職務の全斑を盡されたとは思われません。ただどういうものかと聞かれたから、それに対して
諮問
をしたというだけでは、御本人も物足らないでしようし、またそれをつくらした方の側でも満足の行かないものがあると思うのです。そこで先般来伝えられるように、いろいろ画期的な案を盛られておる
選挙法
の
改正
、これをあくまでも実現するように努力する
考え
があるのかどうか、これを当面の
責任者
である吉田
総理大臣
にも申入れをしているかどうか。そういう点は
選挙制度調査会
の
会長
であり、また全国選管長である
牧野
さんは御
承知
だろうと思いますが、
お答え
を願いたいと思います。
牧野良三
25
○
牧野政府委員
明瞭に御答弁申し上げます。
内閣総理大臣
をしてそのことは答弁させます。どうも私は
政府
委員
ですから答弁できぬのです。私が今度大臣になるか何かでここへ出ますと、責任を持
つて
答弁するのですが、これは
答申
案です。
総理
に
答申
したのです。だから
総理
をして答弁させます。それで私と
総理
との間には意思の疏通はありますけれ
ども
、私の答弁する限りではないから、この点はかんべんしてください。
並木芳雄
26
○
並木委員
それではひとつ私がちまたに聞いた声をお伝えします。それは、あたかも
牧野
さんが
選挙法
をつく
つて
しまうのだというような印象を持
つて
いるのです。だから一言
牧野
さんが、今度の
選挙
は小
選挙
区になるだろうと言うと、いつからなるのだ、どこの区はどつちにつくのかという
質問
が出るのですから、もし今のように、吉田
総理
をして答弁させますと言
つて
逃げを打たなければならないのであるならば、今後
牧野
さんとして発言し行動をされる場合に、やはりその分に応じてや
つて
いただかないと世人をして誤らしめるものがあると思います。これは私のお願いでもありますし、
牧野
さんのお
感じ
も伺
つて
おけばなおけつこうであります。
牧野良三
27
○
牧野政府委員
申し上げます。
国会
に出ましては、
総理大臣
以外には御
質問
に対して答弁する権限はございません。ちまたに出れば
牧野
良三
も一人の政治家であります。どうぞ自由な発言をお許しを願います。
小澤佐重喜
28
○
小澤委員長
他に御質疑はございませんか。
立花敏男
29
○
立花委員
私
ども
委員会
として、小
選挙
区の問題並びに一般の
選挙
の
調査
にこの間イギリスに行かれた方があるのですが、その
報告
を
委員会
としてお聞きに
なつ
たのかどうか、何かその
結論
を得ませんと、せつかく国費を使
つて
向うに行かれて、
報告
もないし
資料
もいただけない……。 〔「
資料
は配付してある」と呼ぶ者あり〕
小澤佐重喜
30
○
小澤委員長
それでは他に御発議がなければ、本日はこれで散会いたします。 午後二時十九分散会