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1952-07-29 第13回国会 衆議院 経済安定委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月二十九日(火曜日)     午後二時十一分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 志田 義信君 理事 多田  勇君    理事 永井 英修君 理事 有田 喜一君       岩川 與助君   小野瀬忠兵衞君       圖司 安正君    奈良 治二君       福井  勇君    福田 喜東君       細田 榮藏君    村上 清治君  出席国務大臣         国 務 大 臣 周東 英雄君  委員外出席者         專  門  員 円地與四松君         專  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 七月二十九日  委員有田二郎君及び受田新吉君辞任につき、そ  の補欠として淺香忠雄君及び土井直作君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  経済基本政策に関する件     —————————————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  それではまず経済基本政策に関する件についてその調査を進めます。これに対する質疑があればこれを許します。志田義信君。
  3. 志田義信

    志田委員 私は、昭和二十七年度の年次経済白書として、経済安定本部が出されました日本経済講和を迎えて後の回復の過程について、主管大臣たる周東安本長官に二、三お尋ね申し上げてみたいと思うのであります。  御承知通り終戦直後の日本経済は、いろいろな麻痺状態がございましたが、今日におきましては、国民努力によりまして相当回復を見たことは御同慶にたえないと思つております。しかし今後の独立後の日本経済というものを、今後いかなる方策のもとに進めて行くかということは、占領治下におけるより以上の重大な問題が、ただもに国民生活影響を與えるものであると思われますので、その点からの御質問を申し上げたいと思います。  今までの白書内容を拝見いたしました中に、このたびの白書につきましては、われわれは安本当局の詳細な御検討あるいは統計資料取扱方その他につきましては、われわれにも御努力のほどがよくわかるのでございまするが、独立後における日本経済水準を、一体どの程度に置いて行かれるつもりであるか、それをまずお伺いしたいと思います。
  4. 周東英雄

    周東国務大臣 お尋ねでありますが、御質問の中にもありましたように、独立後の日本経済進展復興ということについては、私どもも見込みは立てておりましたが、なかなか今日においては容易ならぬ因子を含んでいると思います。ことに最近における世界的な景気後退状況、このことはいつまで続くか、これは確言できませんが、必ずしもいつまでも続くものとは思いません。しかし現在の状況においては世界的な経済後退といいますか、そういつた状況にあります。こういう状況のところで講和が成立しましたが、その影響を受けまして、最近における貿易伸び方というものは非常に悪いのであります。こういうふうな状況考えつつ、将来の生活水準の目標をどこにおいてやるかというお尋ねでありますが、それは私は一言にして申し上げますれば、一足飛びに戰前水準にもどるというようなことはとうてい望むべくもないのであつて、やはり昨年度から国会等で申し上げておりますように、新しい事態に即しつつ、しかも国民生活水準は現在よりも落さないで、徐々に年々二パーセントぐらいずつでも増加させつつ進みたい、こういう方針でおることは今日でもかわりはありません。しからばその方策いかんということが次に出て来る問題かと思いますが、これはやはり、一つには国内における資源開発ということによつて国内における需要の増加をはかり、かつ工業資源供給を自前でなし得る範囲は、どこまでも資源開発をして行く。第二は、やはり貿易振興によるほかはない。これは常に申し上げておりますように、国民生活必需品を充足する上から申しましても、また日米協力等の線から申しましても、必要なる商品輸出をいたしますについても、その原材料の多くはこれを外国に仰いでおります。まずこれを輸入し、加工しつつ輸出を伸ばす、こういうことにならなければならぬのでございます。この面においてはもちろん努力をする施策を立てるということは、一つもかわつておりません。第三にはこれらの国内資源開発並びに外からの原材料供給を仰ぎつつ、これを製品化する上においての努力資源開発という面について具体策を立てる必要があります。第四は、これらの問題を通じて考えたときに、あくまでも貿易関係における構想は、商業採算基礎を置いて構想されるものでありますから、それに耐え得る力を養うということが必要であります。この点においては積極的にコスト引下げ考えられなければならぬ。一面においては合理化によるコスト引下げ設備の改善もありますが、手取り早い点としては、金融面におきまして使い得る金を、低利でできるだけ出すということを考える必要がある。今日生産コスト相当広義な部分を占めておるものは金利関係にある。この点について将来考慮をして行く必要があります。こういうことは施策の第一に考えなければならぬのでありますが、しかし全体を通じてこれらを実行いたします上について、経済財政基礎はやはりあくまでも健全財政の線をとつて行くことが必要だと思います。終戰後今日まで非常な物価騰貴インフレの時代を切り抜けてともかくも安定への道を今日確保しておるわけであります。独立後いろいろむずかしい問題がありましても、あらゆる産業経済の推進をいたす上において、またその結果国民生活の安定をさせる上において、外国貿易をいたすについて、コンマーシャル・べースにおいて競争にたえ得るためにも、やはりインフレになることは好ましくない。財政基礎を健全にしつつ、一方において消費を縮小する、こういうことが必要であろうと思います。直接お尋ねに当つておるかどうかわかりませんが、御質問お答えいたします。
  5. 志田義信

    志田委員 昭和二十七年度の年次報告によつても明らかなように、戰前水準に達したもの、あるいはこれを越えておるものとして人口生産投資関係、これだけのものが戰前水準を越えておる、こういうことが言われておりますが、他の指標はまだ戰前水準を下まわつておる。たとえば農業生産の点から申しますと、米の生産がいささか低下しておるということもいわれておるのであります。農業生産は今日の状態では限界に来ておるということを言つておりますが、その限界に来ておるという考え方、この限界をどうやつてさらに上昇させようとするお考えなのか、それをお尋ね申し上げておきたいと思います。
  6. 周東英雄

    周東国務大臣 農業生産についてすでに限界に来ているではないかというお尋ねでありますが、おそらくそれは既耕地等についての生産というものから見ると、あるいは限界効用説をとるまでもなく、一つ投下資本に対する生産の割合というものが限界に来ておるという見方かもしれませんが、今日農業生産の拡大をはかることにおいては、土地の積極的な改良、また一毛作地二毛作転換、あるいは土地改良も広い意味において中に入ると思いますが、用排水設備の完成ということ等によりまして、既耕地の中にもなおまだ生産力を高め得る余地相当に残されておると思います。従つてその線に沿うて御承知の二十七年度の予算におきましても、農業増産の一面として、土地改良等に対する施策としては従来百五億円程度であつたと思いますが、それを二十七年度は二百億前後にまで増加しているのは、その点が一つのねらいであると思います。なお新しく土地造成という意味合いにおいて干拓開墾ということも一部含まれておることは当然であります。なおその上に私どもは、農業生産増強は、普通農事であるところの米麦生産ということだけを意味しておらないと思います。お示しの戰後における農業生産回復状態は、たしか今年の三月で一〇二%になつてつたと思いますが、その中で畜産関係から見るとずつと低いはずであります。まだ八〇%になつたか、ならぬかと思いますが、普通農事の方はもつと一〇〇をずつと上つておる。養蚕はまだ三割近くくらいしか回復していないはずであります。これを全部計算して一〇三という農業生産回復指数が出て来ると思います。従つて農業生産の面では、食糧の面から見ましても畜産増強ということが大きく取入れられることによつて、これが農業生産を高め得る、こういう余地は存していると思います。
  7. 志田義信

    志田委員 限界に来ている農業生産を高めるために、そうした土地改良あるいは土地造成をやる、畜産関係をやるというお話でありましたが、これは御承知通りいずれも資金の伴うものである。しかるに昭和二十六年度、二十七年度の土地改良あるいは積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法等に見ましても、必ずしもわれわれは既耕地を耕作してさらに生産を増大させるがごとき、十分な資金的な裏づけがなかつたと思いますが、それに対しては二十七年度の予算において補正的な予算考えておられるかどうか、その点をひとつ伺いたい。
  8. 周東英雄

    周東国務大臣 お話でありますけれども、二十六年度に比して二十七年度は、かなり財政的には予算が増されておると思います。お話のようにまだ十分満足すべきものと考えませんが、先ほど申しましたように農業増産ということのために、従来百四、五億であつたものが大体百億増加して二百四、五億になる。さらに別に従来農林漁業資金として資金運用部資金から百二十億くらい出ておりましたのが、二十七年度は二百億出すことになつております。こういうふうなことをあわせ考えて行くことによつて十分満足とは言えないまでも、相当ふやしたつもりであります。しかしなお積雪寒冷地帶とか、あるいは特殊地帶農業というものについて法案が通つておるので、これらについての補正予算的措置はどうか、こういう問題でありますが、ただいまこれは財源等関係もありましようし、一応できるだけ御趣旨に沿つて行きたいとは思いますけれども、今日のところ、ただちに補正をして増加するとか、せぬとかいうことを申し上げる段階にまだ達しておらぬことを遺憾といたします。
  9. 志田義信

    志田委員 なるほど昭和二十六年度よりは二十七年度の農業予算全般に見ましても、あるいはその中の土地改良その他に見ましても、非常に増額されておることはわれわれもよく存じておるのであります。しかし日本が今日までの間に、外米依存によつて国民食糧を補強しておる状態大臣もよく知られる通りであります。これを完全にするということはなかなか困難でありましようが、少くとも日本食糧において自立の態勢をとるということを考えますれば、土地改良を徹底的にやらなければならぬ。それを徹底的にやらなければならぬためには、開墾干拓を入れまして三千億の金を必要とする。そうして二千二百九十九万石くらいの増産考えて起るのだということが、農林省その他からいろいろと五年計画あるいは十年計画として出されております。それを十分の一に割つて、その予算化が盡されておるかどうかということになりますれば、その点は、今の増額されたという予算をもつてしても、なかなか計画通りにはできないということも一応は考えてみなければならぬ。従つてそうした場合に、人口はどしどしふえて行くのでありまして、先ほども申し上げましたように日本でただいまのところ、戰前を越ゆるものは人口生産投資状態であるということであるのにかかわらず、農業生産一つ限界に来ておる。その限界をいかにして越えて行く方法考えられるか。その点がわれわれ政治に志すものとしては考えなければならぬ点であろうかと思う。しかしわれわれの希望する昭和二十七年度における補正の問題も、そう長い期間を待つことができないのでありまして、それぞれこれに必要な法律も出ておる。たとえば国土総合開発における法律も一部修正されて両院を通過いたしておるのでありますが、これに対する調査費要求をわれわれがいたしておる中におきましても、政府及び地方を合せまして一億を要求いたしております。これに対し大蔵大臣党部における話合いにおきましては、できるだけこの希望をかなえるためには、政府としても十分考えなければならないが、とりあえず災害復旧等にまわしておる予備費の中からでも出すことを考えなければならぬ、こういうことを言つておるのでありますけれども、この問題はかなり重大な問題でありますし、所管大臣である周東大臣にぜひひとつお考えを聞いておかなければならぬ。この補正予算の中において、国土総合開発における調査費要求補正される気構えにあるか。また大臣はどういう立場で、所管大臣として大蔵大臣その他に御交渉なさつておられるか、その点をひとつ伺いたい。
  10. 周東英雄

    周東国務大臣 補正予算の問題については、ただいまもお答えを申しましたように、できるだけ御希望に沿うよう努力するつもりでありますが、これは全般的に財政のゆとりがどこまであるかという問題にもよることでありまして、必ず組みますということを、今日すぐ御返事いたすことのできないことを遺憾といたします、こういうお答えを申し上げておるのであります。御趣旨の点はよく了承いたしておりますので、できるだけ御希望に沿うよう努力いたしたいと思つております。
  11. 志田義信

    志田委員 この白書を見ておつてわれわれ感ずることは、いよいよ日本経済独立後の新経済政策によつて行わなければならぬということであります。すなわち特需朝鮮ブーム等調整期に入つておると思われます。先ほど大臣景気回復は世界的な景気後退状態であるから云々ということを言われておりますが、景気回復は容易であると思つておられるか、たやすくない、困難であるというふうにお考えになつておられますか、その点をひとつお尋ね申し上げます。
  12. 周東英雄

    周東国務大臣 なかなかむずかしいお尋ねですが、私が世界的な後退状況にあると申しましたのは、これはやはりアメリカにおける軍備拡張計画が、一九五三年までの計画でやつてつたのを、一九五七年に延ばしたことだとか、あるいは今日までにおけるアメリカ生産に基く貯蔵も相当多くなつて来たということ、またそれらと関連して東南アジアの一角に出たように、多少輸入制限システムというものが、いろいろな意味においても波及しておるというようなことから、今日一時景気後退になつております。一面にはこの景気がいつまで続くかということについて、神様でないからなかなか見通しはむずかしいですが、このまま放つておくこともできますまいし、ある人は輸出貿易というものはあきらめてしまつて、小さく国の中で閉じこもつてしまえばよいというようなことまで言う人がありますが、アメリカという国の考え方政策の立て方によつて世界影響されておりまして、やはり民主自由国家群に対するある程度のてこ入れがなされなければ困るという声も出て来るのではないか。従つてそういうふうな状態がいつまで続くかということについては、私どもはそういつまでも続くことはなかろうと考えております。しかし他人のふんどしだけで自分らの努力を忘れてはなりませんので、これらの景気回復対策といたしまして、私は今日朝鮮特需等がたとい一時的に減りましても、これはどうしても休戰ということにしてもらわなければならぬので、平和回復ということになれば、その方面から出る特需関係は減つて参りましよう。しかしまた別にアメリカ等が注文をいたしておりますいわゆる新特需なるものも相当ありますから、むしろそういう面についてしつかりした受入れ態勢をつくつて発注等に対しては試験的にこれを受けつつ、クレーム——受取り拒否がなされないように、能力なりあるいは工場設備なりのしつかりしたところにこれを受注さして、そうしてしつかりしたものを出させつつ、朝鮮等で減つたものの補いをつけつつ時をかせぐ、その間に輸出が多少減退いたしましても、今日持つておる外貨相当ある。これを使いつつその時をかせぐということが一つ行き方である。その間に処して貿易関係が今日正常化して来ておると私は思う。朝鮮事変等をきつかけといたしましてできた世界的な軍拡競争という、多少たなぼた式な問題から、品物が高かろうが悪かろうが売れるというような異常なときにあつて得た金で時をかせぎつつ、しかも今日は適正な貿易になり、よい品物を安く売らなければならぬというような世界的競争場に立つて行くという、正常な貿易の形に返つて来るでありましよう。そのときに対処するために、今日思い切つて合理化の線を行うと同時に、私が先ほど申しましたように、手取り早いところは金利政策等によつてできるだけ安い金が使えるようにして、コストを下げることも一つ方法だ、こうして次に来るべき景気回復時に処して、日本貿易商業採算に立つて競争ができるように今からやつて行かなければならぬと私は思つております。今日の景気回復の問題について、特別な輸出商品生産に対しては、金融的にある程度外貨を貸し付けるというようなことも一つ方法として今考えられております。外貨の貸付をすることにつきましても、今金利が四分ぐらいであります。これを二分なり一分に下げて、そうして輸入を奨励する、輸入をさせるということができれば、これが再び商品化されて輸出に向うことになりますし、その間にポンドの問題についても、日英協定の問題もありますが、たまつておるボンドを使いつつ、しかも輸出を引上げることもできるのではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  13. 志田義信

    志田委員 この戰争で非常に国土は荒廃いたしましたし、企業の償却の不足もありましたし、あるいは重工業方面では設備老朽化旧式化、そういう点も非常にあつたのでありますが、一体今後独立後の日本経済を推進して行く上における投資計画の面におきまして、規制の必要があると思つておられるかどうか、その点を伺いたい。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 投資に関して規制の必要があるかどうかというお尋ねでありますが、これは法律をもつて資金規制法というようなものをつくつたりして規制をするとかいうようなことは、今考えておりません。しかし今後における産業復興を目ざして施策する場合、特殊な輸出産業というようなものについて、ぜひともこれを進めて参るという場合に、その産業に事実上優先的に資金をまわすというようなことは私はあり得るのじやないかと思います。
  15. 志田義信

    志田委員 たとえばオーバーローン解消が、貿易に連なる金融の面で非常に大きな問題になるのでありますが、それに対しては外貨をもつてこれに引当てて、日銀にこれをやらせるというようなお考えがあるやに新聞その他に出ておりますが、その点についてはいかがですか。
  16. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまのお話私聞いておりませんが、しかしオーバーローン解消方法として、肩がわりをするというような行き方ではいけないのであつて、根本においては、やはり事実上産業復興させることによつて、いわゆる資金自己資本の蓄積、あるいは預金増加というようなことから出て来ないと、單に一時的に肩がわりをしたというようなことで、オーバーローンの克服ができたと考えるのは私は少し問題だと思います。ただいまお話の問題についてどういうふうに進んでおるか私存じておりません。しかし今まで主張していたところを想像してみても、そういうことがたな上げになるならばまた別でありますが、肩がわりだけをしてオーバーローンを克服するというような行き方はちよつと無理じやないかというふうに考えております。
  17. 志田義信

    志田委員 それでは肩がわりでなくとも、銀行立て直しということは、独立する日本経済根幹となる問題でありますから、その立て直しにはどういうような対策を持つておられるか、それをお尋ねいたします。
  18. 周東英雄

    周東国務大臣 現在まだ政府でこうやつておるのだというようなことを申し上げるような案はきまつておりません。
  19. 志田義信

    志田委員 たとえば運輸大臣あるいは国有鉄道総裁方面からわれわれのところにもいろいろ話があつたのでありますが、新線を敷設するにあたりまして、独立採算制だけではやつて行けないのだ、どうしてもこれは建設公債をやらせてもらわないことにはできない、そうでなければ公共事業費の中から一部の金を出してもらわなければできない、さもなければ鉄道運賃を大幅に上げてもらわなければ新線計画は実施することはできない、こういうことを言つておるのでありますが、この独立後の日本経済根幹をなす鉄道その他建設公債の発行については、周東国務大臣はいかがお考えになつておりますか、ひとつお漏らしを願いたいと思います。
  20. 周東英雄

    周東国務大臣 お尋ねの点はまことにごもつともであります。理論的に言えば、鉄道などについて建設公債的なものを出して行くことによつて事業を進める、鉄道の新設、改良をやつたらどうかということはうなずけるのであります。何も全部が財政支出だけによることもないと思うのであります。ただしかし、この際一律に建設公債というようなものを出せばいいのではないかということの裏に、その公債一般市場において消化されて行くものであればこれは歓迎すべきことであります。日本もかつて栄えておつたときは国民の富も十分ありましたので、相当民間政府公債を発行しておつたのであります。こういう形でありますとだれも異議がないのでありまして、大蔵大臣もこの点は賛成しているのでありますが、今日実は建設公債と申しても、一般民間における購買力といいますか、応募能力はなかなか弱いのであります。やはりこれが資金運用部資金とかいうようなところへ行きがちでありますので、りくつはなかなかいいのですけれども、何とか政策として市場一般公募ができるような形になつたときに考えて行つたらいいのではないかと思つております。一面そういうふうにいたしませんで、ただ日銀引受けを通じて出るというようなことでは、やはりインフレ的傾向であります。これは一般市場に金がだぶついているのを吸い上げるということになりますと一挙両得になるわけであります。こういう点をわれわれはいろいろと考えているのであります。しかし考え方としては、いつの日にかできるだけ早く一部は建設公債的なものを出して、少しでも民間の金をそこに吸い上げて行く、そしてできるだけ早く鉄道を復旧新設するというような方向に持つて行くのがいいのではないかと、理論的には考えている次第であります。
  21. 志田義信

    志田委員 経済正常化のためには、やはりオーバーローン解消しなくてはいかぬということは、財界におきましてもまたわれわれの方においても痛切に感ずるところでありますが、先般山形に来られました石橋湛山氏は、商工会議所の演説におきまして、金融面の根本的な政策は、二千億程度公債を発行してオーバーローン解消に向つてつて行けばやれるということを言つているのでありますが、大体二千億程度公債を発行してやつて行けばいいという石橋湛山氏の考え方につきまして、大臣はどうお考えですか。
  22. 周東英雄

    周東国務大臣 石橋さんはどういうお考えお話になりましたか、私内容新聞を通じてのお話だけでありますが、その点も私が前にお答えしたことで盡きると思うのです。石橋さんの言う二千億の公債を出して、各銀行におけるオーバーローン解消肩がわりするという考え方一つ考え方でありますが、その二千億は一体どこから応募されるのであろうか。民間の方にいろいろ隱れている金が二千億ある、これを吸收して持つて来るということは非常にいいと思いますが、おそらく二千億という厖大な金は、石橋さんはどういう計画か知りませんが、やはり日本銀行等で引受けさせなければならない。そうすると日本銀行は、兌換券でも発行して応募するというふうにしなければ、預金関係が非常にたくさんたまつておらない限り、なかなか困難ではないかと思います。政府立場としてその御意見がいいとか悪いとかいうことは私は申しませんが、もう少しむずかしい問題ではなかろうかと思います。
  23. 志田義信

    志田委員 一部に伝えられているところによりますと、政府筋では十億ドルの外貨をこれに充てて、オーバーローン解消に資したらよろしいという考えがあるやに聞いております。それから建設公債は出させない。出させない理由としては、ドツジ・ラインの修正になるから出させないが、産業公債ならば出させてもいいということが伝えられております。一体建設公債産業公債とわけて、前者はドツジ・ラインの修正になり、後者はドツジ・ラインの修正にならないというような大蔵当局の見解が漏れておるのでありまするけれども大臣はそれに対してはいかがお考えになりまするか。
  24. 周東英雄

    周東国務大臣 私はそういうものを区別して考えたことはございませんので、産業公債建設公債との差異いかんと言われてもその御答弁はいたしかねます。産業公債建設公債をどういう意味で言われたか、想像して答弁してはまずいが、建設公債というと、どつちかと言えば資金の投下が長くなるし、産業公債は回転率が早いし、また生産性を非常に多く持つておるというようなことから、それがいい、悪いが出ておるのじやないかと想像します。いずれにいたしましても、公債政策というものは、民間から公募できるような立場になれば、私は大いにやるがいいと思う。しかし今日の時代においては、先ほどちよつと申しましたように、千億という厖大な金になりますと、どうしたつて兌換券を増発して、日本銀行のマーケツト・オペレーシヨンというようなことで、その逆になります。そういう行き方に、今の日本経済と比べてまだあぶなかしい点があるのじやないか。それで私はよほど慎重を要する、かように考えております。
  25. 志田義信

    志田委員 政府経済政策を検討して、大体産業公債は五百億程度にした方がいいだろう、そしてその利子はとらぬ方がいいだろう、こういうことを言つておりまして、その利子によつておのずから資本の蓄積になるという考え方のようですが、その点につきましては、安本長官としていかがお考えになつておりますか。
  26. 周東英雄

    周東国務大臣 新政策というお話ですが、まだ政府の新政策というものはまとまつておりませんし、考究中であります。あるいは私が寡聞にして聞き落しているのじやないかと思つて今聞いてみましたが、産業公債は五百億がよい、無利子がいいという話はまだ出ていないようであります。御了承願います。
  27. 志田義信

    志田委員 大臣の知らないというものを、私が早耳のようなことを言つても申訳ないのでありまして、その点はそれでよろしゆうございます。  もう一つ、重大な問題があるのです。財政資金の放出を大いに緩和しよう、そして中どころの所得者に対しましてはこれで減税を実施しようということが伝えられておりまするが、その点はいかがでありましようか。
  28. 周東英雄

    周東国務大臣 資金の放出は別でありますが、一般的になお減税というものに対して政府施策を加えて来年度も考えて行きたいということは、御承知通り考えております。
  29. 志田義信

    志田委員 最後に、いわゆる新経済政策というものは、政府及びもちろん與党としても早急に検討してつくらなければならぬ問題でありますが、政府の新経済政策、伝えられるところによる政策には、輸出振興の前途については何も具体的にうたわれてないやに、これも漏れ承るのであります。一体、特需が他の産業界にどういう影響を與えるものであるかというような見通しを立てて、たとえば貿易市場の喪失に対する手当あるいはこれに対するポンド手当、そういうような問題等につきましては、輸出振興の前途に対して非常に大きな問題が残されるのでありますが、新政策に盛る、盛らぬは別といたしまして、事実において日本経済復興せしめる過程におきましては重大な問題であろうと思いますが、この点はいかがでしようか。
  30. 周東英雄

    周東国務大臣 新政策の問題はまだきまつておらないということは先ほど申し上げた通りであります。しかし日本経済復興という立場からして、やらねばならぬ仕事として、先ほど申し上げた五つの中に、輸出振興に関する施策考えているということを申し上げたのであります。これは政府といたしましても絶対にゆるがせにしておらないということを申し上げておきます。党の政策といたしましても、この点についてはいろいろな意味から十分発しております。それからいろいろな点が、欲が出過ぎてなかなかできにくいようなことまでも議論になつております。目下輸出振興に対しては具体的に案を練つておりますから、御了承願いたいと思います。
  31. 前田正男

    前田委員長 次は有田喜一君。
  32. 有田喜一

    有田(喜)委員 日本経済自立達成のために貿易振興の必要なことは、今周東長官のおつしやつた通り私も同感でありますが、問題はいかにして貿易を振興するかという具体方策にかかつている。先ほど来企業の合理化をやる、あるいは金利を低下する、あるいは安くてよい品物をつくると言われるが、りくつはその通りであります。しからばいかにして合理化をやり、いかにして安くてよい品物をつくるかということが私は大事な問題だと思いますが、それらに対する具体的方策をどうしてやるかという安本長官の御意見を伺つておきたいと思います。
  33. 周東英雄

    周東国務大臣 具体的のものを一つ一つ申し上げる段階になつていませんが、輸出に関しては、通産省においてそれぞれ具体策を立てつつあります。もう少し日を重ねれば具体的の御説明ができると思います。
  34. 有田喜一

    有田(喜)委員 どうも方程式ばかり承つてつてもわれわれは承服できないのであります。そういうことは大学の学生が学校の講義を聞いておればよい。政治はそういうものではなくて、やはり政府が新経済政策として貿易振興を唱える以上は、いかなる処置を講じ、いかなる方途でやるかという方針なり、そういうものがなければならないと私は思います。具体的に問題はないとおつしやつてもわれわれは承服ができない。一つ方策というものがあるに違いない。どういう品物がどうだこうだという、こまかいものを聞こうというのではないが、合理化方策なら合理化方策としてかくかくのことを考えているということの片鱗はお示し願わなければならぬと思います。
  35. 周東英雄

    周東国務大臣 貿易に関しての振興策として、たとえば東南アジア地域を対象としている問題としては、日本の財貨放出による労働開発の推進とか、あるいは東南アジア地域の開発につきましても、目下共同事業としての開発計画は進んでおります。しかし何に何がと言わなければ具体的にならないと思つて差控えて言つたのでありますが、今日貿易基礎となるべき問題としては、やはり東南アジア地域の購買力増加ということが必要だと思います。そういたしますことについては、東南アジア地域における国内の工業化問題も助けて行かなければならぬ。そのことは日本が工業化させることによつて、資本投下によつて諸国に工業が起れば、それによつてこの地方に購買力増加があり、従つて日本商品輸出増加されるということにもなる。これは一つ具体策であります。同時にまた原材料物資獲得のためにも、東南アジア地域の労働開発もよいし、あるいは施設投下による開発によつて、近い所から必要な原材料を持つて来る。これには銅、鉄、石炭、すずというような問題、あるいは漁業というような面について、着々そういうような話が進みつつあります。そういう形からいたしまして、原材料を入れることによつてこれを商品化して売り出すということも一つ方策だろうと思います。しかしながらそれらを安くする場合においての根本の問題としてコストの上から見ての競争貿易正常化された場合における行き方としては、あくまでもコスト引下げをしなければならぬという問題から、合理化の問題を申し上げたのであります。その合理化の問題については、もとより日本の企業それ自体における資本の蓄積によつてやるということでありますが、それをやりやすくするために、資本蓄積に必要なる税金の問題を解決するということも一つ方策であります。またコスト引下げの問題、金利引下げについて具体的でないとおつしやいましたが、コスト引下げについて、機械設備の近代化、合理化ということは、これは別に抽象的な問題でも何でもなくして、具体的に進んでおる問題であります。一つ一つの企業については進んでおる。しかしこれについては、実はかなり期間がかかります。それと並行して今日一番大きな問題は、資金供給である。これが使いやすいように金利引下げをなさねばならぬということが問題になつて来る。これは具体的の問題です。電源開発にしても、特殊機械の関係を例にとつてみても、一割近くの金を借りておつてはなかなか動きにくい。何とかして安い金利に置きかえられぬか、これを置きかえたいというのが、われわれの考えであります。いろいろありますが、そのくらいにしておきます。
  36. 有田喜一

    有田(喜)委員 東南アジア開発の問題は、大分前からの問題だが、これは過剰ポンドの利用方策ともあわせて相当進められておるとは思う。これはイギリス方面との外交的な問題もあると思うが、そういうような問題は円満に進んでおるのでしようか。別に政府に向つてどうのこうのというわけではないが、これは問題が長くなつてつて、なかなか具体化しないように私は見受ける。その辺外交問題もいろいろあると思うが、円滑に進んでおるのかどうか。
  37. 周東英雄

    周東国務大臣 有田さんのお話は、国からの投資をばかりお考えのようですが、私が申し上げておるのは、十幾つの仕事について民間の共同事業というものが進んでおる。これはむしろこの方が望ましいことである。政府が乘り出して行くということになりますと、昔のような、日本がそこへ乘り出して行つて何か支配をするという考え方をとられがちです。私はあくまでも民間考え方を伸ばし、民間相互の共同企業体ができることを望んでおります。これはすでに話のまとまつておるのが十二、三ある。話し中のものがそれに近い数字にある。これは企業ごとに進んでおります。そのほか国としての問題は、インドネシアとかその他のものもありますが、特殊な企業について、日本から自分の国に工場を持つて来てくれという話はありますが、これは少し漠然としております。具体的の計画を持つて来られたときには相談しようということにしております。これは国内工業化問題であります。どうしても日本に乘り出してくれという希望があれば助けて行きたい。われわれの方からあまりこういうことをやれ、ああいうことをやれということは行き過ぎたことであり、いろいろ疑惑を持たれる。それぞれの諸国から申出があれば、その企業についてどういうふうに助けて行くかということを検討して行きたいと考えております。
  38. 有田喜一

    有田(喜)委員 こちらから押しつけるわけにはもちろん行かないのですが、向うからそういう具体的な要請が、口先だけでなく、実際の内交渉でもあるのか、そういうことを今運びつつあるのかお伺いしたいと思います。
  39. 周東英雄

    周東国務大臣 今内部的にそういう申出がありますが、まだ申し上げる段階に達しておりません。
  40. 有田喜一

    有田(喜)委員 もう一つ伺いたいのですが、貿易振興に関連して、海運というものはきわめて大事だと思う。ところが御承知通り最近の国際海運市況は非常によろしくない。日本はまだ海運は復興していない。最近新造船ができておると言いながら、まだ二百万トンに達しないきわめて貧弱な状態です。といつて今の運賃事情から言えば、新造船は船主の意欲がありましても、金融その他の面から言つて相当困難な事情もあるので、これらに対して政府は何らかの方策を持つておるはずであろうし、また持たなければならぬと考えるわけですが、安本長官としてはかような海運振興方策に対して、いかなる所見を持つておられるかお伺いしておきたい。
  41. 周東英雄

    周東国務大臣 輸出振興のために、自国船の増強ということについての御意見は、私どもも同感であります。従つて政府においても二十七年度は貨物船だけで十八万トン計画で、それに対する資金の割当は百五十五億ですが、まだこれを使い盡しておらないのです。従つてできるだけ造船に関する資金の割当もふやしたいということについては、私ども同感であります。しかし今申し上げた通り、使い切つておりませんし、ときあたかも海運界の船賃の方がだんだん下つて来るような状態で、船主の方がなかなかやりにくい状態でありますが、これもいつまで続くか、貿易の振興状態とにらみ合して来ることでありますから、こういう不景気なつたからといつて、船の新造を手控えるということはいけないので、こういうときにやつておいて、隆盛の場合に使えるということになるわけですから、御説の通りに私ども進めたいと思います。
  42. 有田喜一

    有田(喜)委員 わが国が年にわずか十八万トン程度の新造計画では、なかなか追つつかない。少くとも日本の船腹量は、戦争前だつて六百万トン以上あつたのだから、今の二百万トン足らずのような海運の状況で、一年に二十万トンやそこらつくつてつてはいけない。政府は本年度は少くとも三十万トンつくるという計画であつたが、先ほど来言いますように、海運界の市況が最近非常に悪い。普通に放任しておいては、船腹の増強はなかなか困難だと思う。世界どの国を見ましても、海運に対しては相当の助成をやる、あるいは長期低金利方策を講じ、いろいろな施策を施して海運の振興をはかつておる。ことに日本のような、四面環海の国柄といたしましては、当然海運の振興をはかつて貿易の振興を期さなくちやならぬと思うのですが、今の海運状態は、このままでは伸びる力が弱いと思う。ここに政府はしつかりした施策を施さなければならぬ。安本長官は、日本産業経済を総合的ににらんでいらつしやいますので、もう少し具体的なお考えがあるかと思つて承るのでありますが、もしなければ大いにやつていただきたいし、あればもう少し具体的な考えを披瀝していただきたいと思います。
  43. 周東英雄

    周東国務大臣 根本的にあなたの詮には賛成なのです。これは初め三十万トンの計画を持つておりましたが、資金のやりくりの上から言うて、さしあたり十八万トンについて百五十五億出しておるわけですが、現在の景気状況から、なかなかこれもまだ完全に使い盡しておらぬ状況であります。しかしそれを使つてしまつてなお必要だという場合には、私はできるだけ努力したいと考えております。政府もその考えであります。  なお造船事業に対するいろいろな面から、たとえば造船用鉄板というものについて、もう少し助成して、安く供給しなければならぬというような説もあります。これは従来いろいろな立場において、補給金制度というものはよろしくない、弊害もありますので、そういう昔の型をとらずに、一体特殊な基本的な産業について、何か補給金を出すと同じような効果が上る方法がないかというような事柄も研究はしております。いずれにしても、海運政策、造船というような問題について、政府は何らか適当な処置をとる必要があると考えて、考究はいたしております。
  44. 有田喜一

    有田(喜)委員 安本長官も、貿易振興のためには、金利の低下ということが必要だということを言われた。これはその通りであります。ことにわが海運は長期低利資金が必要であつて金融の安定ということが、海運を安定せしめるもとだと私は思う。この点は安本長官の意見も同様だと思うのだが、要は、これを具体化してもらうことだ。ことに日本貿易振興のためには、海運をよほどしつかりつちかつて行かないと、貿易はほんとうに起らない。従つて日本経済は、自立できない。長期の低利金融については、相当腰を入れてやつていただきたいと思う。なお日本の船価の点でもう一つつておる問題は、鉄鋼の問題であります。これは御承知のように、鉄鉱石が近くから来べきものが今来れないような状態なので、鉄鋼自体が相当高いものになつておる。これが日本の造船が他の諸外国に比して比較的割高になつておる一つの大きな理由であります。これらについて、これは貿易とも相関連する問題でありますが、相当政府としては、あるいは二重価格制に行くとか、そうでなければ他の方策も私はあるに違いないと思います。何かひとつ真剣に考えていただきたい。そうして艦も安いものにし、日本は船員が優秀であるし、賃金もそうたくさんとつておるわけではない。もちろん昔のようなチープ・レーバーでソーシヤル・ダンピングをやるというようなことは、今度の船員法で直つておりますけれども日本の海運の外国との競争という上において困るのは、鉄鋼の関係で船価が高いこと、それから金利が高いこと、私はこれが大きな原因だと思う。これらについて、如才もないでしようが、ひとつしつかりとした政府具体策を立てられて、ことに安本長官はこれらのことについて、よほどの力を注いでいただきたいと思うのであります。これについてもし御意見があれば承りたいのだが、賛成であつたならば、それだけ伺つておきたいと思います。
  45. 周東英雄

    周東国務大臣 金利の問題については、私は先ほど申し上げましたように、今後打つべき手は、全般的でなくして、特殊な産業については特殊な立場から安い金を出すということがよろしい、かように考えております。これは政府の中でも考えておるわけですが、これは私は資金源と関係するものだと思うのです。今までは、預金の形に現われるか、あるいは企業内部における資本蓄積か、いずれにしても資本蓄積がなかつた。それで需要ばかり多くて供給が追いつかなかつたから、勢い金利は高からざるを得なかつた。こういう点は見逃してはならないと思うのです。だからここでひとつ金利を下げて、豊富な資金を出して——預金増加と企業内部における資本蓄積が私は前提であると思います。幸いにして最近の預金増加、ことに貯金の増加は非常なものでありますので、私はいろいろ大蔵大臣とも話をしておりますが、これは戰前には日本独立しておつていろいろなことをやれたときには、預金部会計においても、ある産業には安くして、その補いとして短期でもうかる産業には少し高く貸して、全体の預金部会計をまかなつてつたことを覚えておりますが、占領時代は、一つ資金について金利をわけることを許されなかつたのでなかなかできなかつたのと、もう一つ資金そのものがたまつていなかつたのでそういうこともむずかしかつたのですが、今後においては、ぜひともそういう方向に向つて一歩なり二歩なり踏み出すべきだという立場をとつております。  それから鉄鋼の問題についてのお話はもつともでありますが、この点については、先ほどちよつと造船用鉄板について申し上げたように、なかなかやり方がむずかしいのですが、十分そういう面も含んで今考究をいたしておるということだけ申し上げておきます。
  46. 有田喜一

    有田(喜)委員 なお、くどいようでありますが、一般産業に対して低金利で行くということはけつこうだが、海運というような仕事、ことに日本経済自立のために貿易振興ということを考えたときには、重点的に考えなければならぬと私は思う。ことに国際競争影響を深刻に受ける企業でありまして、日本はこの際海運が伸びて行かないということになれば、日本経済はいつまで経つても自立できぬので、ひとつ重点的に考えていただきたい。世界のどの国だつて、海運に対する保護政策は講じておる。日本だけが終戰後占領政策影響を受けて何らの保護政策をとつてない。私は決して保護を受けることがよいとは言わないけれども日本の海運が伸びて行かないことになれば、政府としてはこれに重点を置いて、伸び得るような方策を講じ、要すれば保護政策も講じて行かなければならないと思いますが、安本長官の特別の御配慮を願いたいと思います。  なお安本長官は、動力資源開発という点に非常に重点をおかれた説明があつた。これは私も同感です。先ほど来志田君の御質問があるように、日本国土開発は非常に必要だという一方の要請があるが、なかなか要請通り行かない。これはやはり日本の今の財政政策がドツジ・ラインをまだ堅持しておるところに根本の無理があるのじやなかろうか。もちろん財政は堅実がよいことはきまつておるが、今のようにあまり行き過ぎた超均衡財政は私は必要でないと思う。やはり相当建設公債とか生産公債とか、国債を相当にやつて国土開発をやる、そして日本の乏しい資源をできるだけ自給態勢に持つて行く、いろいろなことがたくさんあると思います。安本長官としてはひとつ全般を見渡された総合計画が必要だと思うので、その点も特別の御配慮を願いたい。
  47. 周東英雄

    周東国務大臣 お話の点は、先ほどもお答えいたしましたが、やはり均衡財政をとるという言い方が非常に強く響いているという点はあると思います。しかし私は今日まで日本政府が苦労して、ともかくも物価というか、経済がある程度安定の時期に一歩入つていると思うのです。ここで、独立したから急にドツジ・ラインを解放して、どんどん金を出したらよくなるというふうに、私の見るところではならない。もちろん必要な産業開発のために資金を出すということは必要ですが、ただともすると、今まで締めておつたから、うんとこの際出せということになれば、あるいは産業は興るかもしれぬが、その反対に物価が上るということになつてもこれはいかない。そこのところの兼ね合いがはなはだむずかしいと思うのです。しかし私は独立した今日新しい負担がいろいろ増加するときに、それを乘り切るために、思い切つて産業復興をさせることが必要でありまして、それに処してどういうふうに合理的に金を出すかということについては十分に考えて行きたいと思いますが、ただ今まで高過ぎたから、どんどん金を出したらいいのだという気持は、私はとらぬので、その点は、大蔵大臣はどういうように考えておるか知りませんが、私は同じだろうと思う。ここまで堅実に来たものをここでくずさないで、ぐつと上へ上げて行くというようないろいろ資金財政計画を適用させて行くことは私は考えておるところだと思います。
  48. 有田喜一

    有田(喜)委員 私も決して日本インフレが起つてもいいから、どんどんやれと言うのじやない。あまり行き過ぎたかたちというものは適当に是正すべきである。これは主観的の意見の相違になるかもしれませんが、私は今の形というものがまだ行き過ぎだと思う。やはり国土開発を大いにやつて、そうして国内的には有効需要を喚起して、もつと国民希望を持ち、明るく行けるような積極政策が私はこの際必要であろうと思う。  なお小さい問題であるかもしれないが、最近この国会において電力復元法というものが自由党の議員の一部から出されておるのだが、これは従来安本方面からいろいろ電力政策を聞いておる自分としては、この復元法というものは今までの安本の行き方から行けば、相当矛盾したようなもののように受取れる。安本長官はこの電力復元についてどういうふうに考えておるか。所見があるならば、この際承りたいと思います。
  49. 周東英雄

    周東国務大臣 これもあまり開き直つて議論する問題でないと思います。電力というものはずいぶん無理をして、自家用あるいは県営等のものが取上げられたことは私は御承知であると思います。これを元に返してくれというのだから、主張自体が間違つているものとも患えない。しかし私の利益と言いますか、事柄は公の利益で調整されなければならない。今日における電力の事情から申しまして、一挙にこれが復元されて、日本産業経済が電力供給の上に立つて行けるかどうかということは十分考えて行かなければならぬ点であります。また一面復元問題がやかましく言われますが、究極するところ、場所によつて違うと思いますが、企業自体の持つていた自家用発電というものが一番やかましい問題だと思います。公共自治体等は、電力が高くなつて経営に困るということが出て来る。だから通つても一律に何もかも返されるものでないと思いますが、しかしこれは考えなければならぬ問題だと私は考えております。しかし会期迫つた今日どうするのか、通すのか、通さぬのかという点は、有田さんがお聞きにならぬでも、あしたでもうおしまいであります。十分委員会で研究する問題だと思います。
  50. 有田喜一

    有田(喜)委員 この問題についてはもちろん通産委員会でそういうことをきむべきだが、何と言つても、経済安定本部というものが日本経済を総合的にやる元締めである。それで動力資源開発というものはきわめて大事である。これは安本長官も今言われた通りである。ところが今の復元法というものを見ると、いかにも重複設備というものがまた出て来る。  それから私は、電源の開発と並んで電力政策で大事なことは、料金問題であると思う。安本長官も農村の問題については相当御理解が深いと私も思うが、何もすき好んで都市の市営事業と、郡部の会社を押しつけたのではない。公共事業の性格を持つている電力に対しましては、都市、農村を通じて、均一料金にしたいというのも大きな眼目である。ところがそれを元通りに復元するというと、これは説明するまでもなく、これが大阪市営とか神戸市営であれば、電柱一本に対して何百という電燈がぶら下つている。集金に行つても何千、何万と集められる。従つてコストが安くなる。そうすると都市は、電燈料金その他動力料金が非常に安くなる。負担能力の比較的少い農村では、高い電燈料金なり動力料金を拂わざるを得ない。一般物資ならともかくとして、こういう生活の必需品産業基礎である電気料金に、そういう弱い農村が高いものを拂わざるを得ないということは、これまた農村の振興のために非常に遺憾な点が出て来ると思う。そういうことをあわせて考えると、こういうような考え方につきましては、安本がしよつちう言われることと相矛盾するものではないかと私は考えて、それに対する所見を聞きたいと思う。別にこの問題についての可否は所をあらためてお聞きいたしますが、所見の一端だけ伺えばいい、そういうつもりであります。
  51. 周東英雄

    周東国務大臣 それは先ほど冒頭に申し上げた通りであります。
  52. 前田正男

    前田委員長 他に御質疑はありませんか——なければ、本日はこの程度にとどめて、次会は公報をもつてお知らせすることといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十七分散会