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1952-02-19 第13回国会 衆議院 経済安定委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十九日(火曜日)     午後二時三十一分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 志田 義信君 理事 有田 喜一君       岩川 與助君   小野瀬忠兵衞君       圖司 安正君    奈良 治二君       福田 喜東君    渕  通義君       細田 榮藏君    河野 金昇君       笹山茂太郎君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 周東 英雄君 出席政府委員         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         通商産業政務次         官       本間 俊一君         経済安定事務官         (財政金融局         長)      阪田 泰二君         経済安定事務官         (貿易局長)  板垣  修君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 円地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ――――――――――――― 二月十八日  砂糖並びに水飴の価格調整に関する陳情書  (第四八二号)  独占禁止法改正に関する陳情書  (第五六五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  資金計画外貨予算並びに金融政策に関する件  貿易計画に関する件  外資導入に関する件     ―――――――――――――
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  それでは資金計画外貨予算並びに金融政策に関する件、貿易計画に関する件及び外資導入に関する件の各件を一括し、その調査を進めます。  それでは質疑を許すのでありますが、この際委員長より経済安定本部長官ポンド対策の新処置についてその説明を求めます。経済安定本部長官
  3. 周東英雄

    周東国務大臣 ポンド過剰対策につきましてかねがね考えておつたことは、でき得る限りドル圏に対する輸出を増加し、ポンド圏からの輸入をふやすことをもつてまず第一義として考え輸出等に関しましては積極的に制限をするというような措置に出ることは、かえつて輸出産業等に従事しておるものに対する影響もあります。ポンド地域への輸出制限して、それだけのものがすぐにドル圏へ出るということになればよろしいですけれども、そこらに多少いろいろな問題がありますので、まずこの点については従来は見送る方法をとつておりました。しかし最近における情勢は、ポンド地域におけるポンド安影響を受けて、同地域における価格の高いということもありまして、特にその方面への輸出が多くなる傾向にありますので、新しい立場によつては、従来通りポンド圏からの輸入の増加について力を入れると同時に、一部のものについては、将来輸出についても制限をなさなければならぬような状態にあると考えましたので、そういう方向へ入ろうか、かように考えておる次第であります。こまかい点につきましては木内外為委員長からお話をしていただきます。
  4. 木内信胤

    木内政府委員 今度とりました措置は、ただいま御説明のありました通り、従来考えておりました輸入をもつと拡大しようというだけでは忍びないことが判明していたので、いささか輸出抑制に似たことをやつたわけであります。その手段は三つありまして、一つ輸出者が、輸出マイナスと申しますが、注文を受けてその製造にかかる、あるいは集荷にかかる、その期間為替銀行から金融を受けます。その限度を、今まで輸出奨励の見地から、インフレにさしつかえない限りなるべく多くというのが考え方でありましたが、ポンド輸出ドル輸出とは、そこに少し差をつけねばならぬだろうというのが第一点であります。これは新聞にも報告してありますが、それをどの程度つけるかということは、私の事務ではない、主として日本銀行事務でありますが、しかるべく状況を見定めつつ、ある程度の差をつけるのもやむを得ない、これが第一点であります。  第二点は、従来輸出契約をいたしますときは、それに必要な信用状というものの期限は六箇月、やりようによつてはもつと長いものも可能であつたのでありますが、そうなりますと今から非常に遠い六箇月、八箇月というような先の輸出契約をしまして、今その製造過程にはまだない、いわんや製品はとうていできていないようなものまで輸出予約をしてしまう、すなわちそれに対して輸出信用状を獲得する、ずつと先のことをやるようになります。そうしますと今後情勢を見定めて進みたいと思つておるのに、今から何箇月も先のことを決定されてしまつては、既往にさかのぼつて措置をとるわけに参りませんから、輸出上非常にぐあいが悪い。現在はどうも実際に仕事で必要と考えられるより以上のものも、ずいぶん予約されておるのではないかと考えます。輸出信用状期限というものを大体三箇月に切りまして、それ以上のものは特別な事情があると認められたものに限つて許すのであつて信用状原則として三箇月であります。あまり確実ならざる輸出の商談を、必要以上に先まできめてしまうということをとめて、輸出の増大があまりに極端に行かないようにいささか制限したわけであります。それになぞらえまして、輸出の場合の為替予約というものは、信用状期限以上にはしないで、業者の方は不便はないわけでありますから、そういうふうにいたしました、それが第二点であります。  第三点は、これは少し違つたことでありますが、またあながちポンド対策ばかりではないのでありますが、従来為替予約というものは先物です、ずつと遠い何箇月先というものを予約しておりますが、現在の為替取引相場も、三箇月先に実行する相場も同じであります。これを直先一本と申しますか、フラットというのが術語でありますが、直先フラット相場でやつておりましたが、これはどちらかと申しますと、ポンド問題を離れてもいささかゆるきに過ぎるのでありまして、先のことを約束するのですから、約束する相手である為替管理委員会というものは、多少の保証料的なものをとつてよいわけであります。これはかねがね考ていたことなのですが、いろいろ込み入つた事情がありまして、実行いたしませんでした。今度この際いい機会だからこれを実行しようというので、ドルポンドとも売買とも、言いかえれば輸出輸入ともに、先物年利にしまして一分につくように、業者に不利になる。すなわちその先物予約をいたします当時者なるものから、保証料的なものを徴収するわけでありますから、ポンドドルとも売買年に一分の計算でとることにいたしました。これは今度のポンド対策とは全然離れたことであります。それはいいことであるからやろうと決心したについて、ポンド輸出先物だけは、年に一分の基礎を年に二分の基礎にいささか高くしたわけであります。年利にいたしまして一分の差でありますから大した差ではありませんが、しかし気は心と申しますか、差がついたということは、何か一つ方向を示す措置として大きくとられる方も多いと思いますが、とにかくポンドドル先物相場が、輸出の場合に差があり得るのだということを一本出しまして——実態的にはあまりお困りにならぬと思いますが、しかし思想としてはこれはうつかりできないのであります。あまり甘いポンド輸出ばかり考えていてはいけない、警鐘を打つ、そういう点に注意をいたす意味ありと考えまして、輸出限りポンドの方を業者に不利、すなわち保証料的なものを高くとることにいたしました。この三点が今度のいわゆるポンド対策であります。これに随伴してなお三、三のことがありますが、これは同じ意味を通すためにやつた措置ということになりますから、この席ではあまり詳しく御説明を要しないことかと思います。一応これで御説明を終ります。
  5. 前田正男

    前田委員長 それでは質疑を許します。志田義信君。
  6. 志田義信

    志田委員 私が大臣ちよつとお尋ね申し上げたいのは、昨日の予算委員会におきまして、日本外貨予算編成上の一月から三月の基礎についてお尋ね申し上げたのでありますが、そのときに、新ポンド対策がかような輸出影響を與えるということは聞くことができなかつたのであります。これは質問の時間も制限されておりましたし、加えて直接大臣からお話を承ることはできなかつたのであります。ところが国会において聞き得なかつたような事態でありながら、しかも今朝の新聞にはもう新ポンド対策実施されるということが出ております。この問題につきましては、もちろん與党であるわが党の政調会におきましても、従来たび重なる会合をして参つてつたのでありますが、このポンド対策処置につきましては、われわれといえどもまだどの程度対策実施するかということについて、十分な検討ができないまま進行の過程にあつたのであります。ところが今日新聞で拝見し、ただいま長官並びに外為委員長からの国会での御報告によりますと、相当思い切つたポンド対策の新措置であると思われるのでありますけれども、この新措置によつて、今日でも国内商社経営内容が非常に悪くなつており、こういうような国際貿易規模を拡大しなければならぬときに縮小されるような状態をもたらすということにつきまして、何か対策がおありになりますかどうか、その点をひとつお伺い申し上げたいと思います。
  7. 周東英雄

    周東国務大臣 ごもつともな御質問であります。従来輸出に対してある程度制約を加えるという行き方をとらなんだゆえんは、できるだけ日本輸出伸張ということを考えて、輸出制限をやらなかつたのであります。輸出制限をしてもポンド地域においてある程度制約をする。それだけの数量がただちにドル地域に出るということであればよろしいが、どうしてもその点の見通しがつかぬ。いたずらに貿易規模を縮小する結果になることをおつそれて今日まで来たのでありますが、しかし今日となりましては、一面におきましてポンド貨がたまるばかりである。今日の貿易立場からいたしまして、先ほど申しましたように、どうしてもポンド地域へは出したがるのであります。それはドルポンドとの関係においての、ポンド弱勢ということから来るドル地域における価格高と申しますか、そういう面から見ます立場からも、輸出の方はどうしてもしやすくしたがる。ところがそれに関しまして、それだけのポンドに対して輸出の方がこれに伴わなかつたのでありますので、われわれといたしましては、国内における物資の需給の立場から見ましても、これは大きな立場から、多少今日手心を加える必要がありとしてやつたわけであります。今いろいろ党の方にも関係があるがというお話でありますが、私ども非常に苦しい立場にありましたが、事柄は非常にデリケートであります。今木内君から説明したような内容でありますが、これが一日、二月先に漏れるというようなことがありますれば、やはりそれだけ不当に利得する人がありますので、私どもは涙をふるつて緊急の措置をし、緊急に発表したわけでありますから、この点は御了承願いたいと思います。しからば輸出に関してどういう対策があるかということでありますが、総体的に考えまして、日米経済協力等の線を通じて、こちらに特殊な注文のあるものに対しては、日本の設備を活用し得る範囲において、原材料等の獲得、資金援助等を得て、そういう方面への今後の輸出はもちろん考えて参らなければなりませんし、またポンド地域に対しましても、東南アジア地区開発等と関連して必要なものを入れて、それに関連して輸出をして行く、こういう相互関係に立つように順次導いて行きたいと考えております。
  8. 志田義信

    志田委員 日本輸出貿易界に非常に大きな影響を與えるような新措置でありますので、そういう措置をとられます場合においては、党といえども十分検討し、また政府は党と緊密な連絡をとらなければ、業界に與える影響は言うまでもないことでありまするし、国民に與える影響もまた大きいのであります。この点今回の措置は寝耳に水であつたという感を深くするのであります。今後党と政府との連絡について、われわれも留意しなければならぬ点があろうと思いますが、この新ポンド対策実施は、非常に問題になる点が考えられるのであります。最近世界各国貿易取引は、信用状況を非常に回復しております。しかるに新ポンド対策考えなければならぬのは、信用状が開設されて来なければ、為替予約が認められないという点にあるのでございます。そういう点で最近世界各国貿易取引とは逆な方向に行つているのではないかという気がいたしますが、この点はいかがでございましようか。
  9. 木内信胤

    木内政府委員 御指摘の点は、私ども今度の行き方は必ずしも逆でないと思うのであります。元来為替先物予約を許すということは、日本は非常に自由な国でありまして、日本ほど自由に市場先物予約を許している国はないのであります。早い話が、今度英国は為替先物予約に、英蘭銀行が売りをし買いをするということをやめて自由にしてしまいました。従つて銀行はいわゆる出合いがなければ、反対取引がなければ応じないこともあり得るわけである。先物予約ということは自由でないのが普通であります。日本はそれが非常に自由であつた。自由である方がよいには違いありませんが、輸出というものは信用状が来て初めてほんとうになるのでありまして、まだ信用状も来ないのに、ポンドが先に下るだろうというようなことを考え輸出予約だけしておくというのは非常に不健全なことであります。ことに万々一——私はないことを信じ、ないことを希望しますが、万々一ポンドの切下げでもあるならば、そういう取引もないのに予約だけしておいたという人は、非常な巨利を博する。こういう風潮は一日も早く根絶してきれいにしておかなければ、今後の行動にも妨げになりましようし、またそういう点をねらうということは不健全なことであります。商売としてもそれを許さなければならぬことはないのでありまして、そこで商売はつきりきまつたとき、すなわち信用状接受のときということに切つたわけであります。
  10. 志田義信

    志田委員 欧米をまわつて来られた木内外為委員長は、事あるごとに欧米の例を引かれて、ただいまも先物予約英蘭銀行等出合いがなければ応じないというようなことを申しておりますが、それでは私も一つ例をあげてみたと思うのであります。南米あたりの諸国では、最近あまり信用状を使用したがらない。そうしてかなりの資金を必要とする。信用状の開設は外国貿易業者が好まない。開設するとしても物資到着まぎわになる。こういうことが非常にあるのでありますが、そういうことに対する御認識はいかがでありましようか。
  11. 木内信胤

    木内政府委員 そういうことがあることは承知しております。そこでひとつおわび申し上げなければならぬのですが、新聞発表並びに私の出しました事例は、純然たるミステイクであります。ドルに対しても同じことを実行したことになつております。これは間違いでありまして、ポンドに対してだけそれをやる。実はきよう審議いたしまして、それを直す規則を出すことにいたします。ですから、御案じの南米は、ドル取引をオープン・アカウントあるいはストレートのドル・キヤツシユで取引をしておりますから、影響はないと思います。
  12. 志田義信

    志田委員 それを承りまして、その点はよくわかりました。  ところでいかがでありましようか。最近ポンド実勢日本におきましても非常に弱まつて、相当にたまつておる。そこで、いつ切り上げられるかわからぬような状態ではかなわないということで、輸出契約ども——ことに新ポンド対策実施で、それが重加されて来るような状態になつて、軽視されるような問題が起きた場合におきましては、これをどういうふうにお取扱いになさるのでありましようか。
  13. 木内信胤

    木内政府委員 こちらが為替を切り下げる、つまりポンド実勢——よく世間で申しますことは、実勢は一割五分安いんだ、二ドル八十セント・べースになつておるのですが、二ドル四十セント・ベースだということを方々で申します。大体そういうことかと思いますが、それに対して、ポンドの実価が国際的に見て二ドル四十セントしかないのに、こちらが二ドル八十セントを基準としたポンド相場を立てている。二ドル四十セントを最低相場としましてポンド相場を立てると、今約千円というのが八百五十円ほどになるわけでありますが、そういうふうにすれば、ポンド問題は理論的に見て解決することでありましよう。しかしながら、これは日英支拂い協定に抵触する行為であります。日英支拂い協定は、日本はそういうことをしないことを約束してあります。こちらがかつてにそれをすることはできないのであります。しかし理論的にいつて、それが一つの解決の方法だということは言えると思います。
  14. 志田義信

    志田委員 輸出契約が成立したときに、為替予約をお認めになるのですか。
  15. 木内信胤

    木内政府委員 従来は輸出契約ができたら、すぐ為替予約はできたのです。今度は輸出契約を、真に輸出契約ができたことをはつきりさせる意味において、信用状到着前に予約する場合は、特別にその必要を認めた場合例外的に認めまして、原則信用状到着ということに限つたわけであります。つまり、輸出取引ができたらその日に為替予約はできるのでありますが、それはほんとう契約が固まつたとき、すなわち信用状入手のとき、こういうふうにしたわけであります。
  16. 志田義信

    志田委員 例外的には認めるというお話ちよつと今ございましたが、為替予約が認められる例外というのは、たとえばどういうような品物になりますか。
  17. 木内信胤

    木内政府委員 品物をあげて例外ということは、私思いつきませんが、何らか商慣習契約は確かにした、確かに決定的な契約はしたが、信用状の発行は、それからしばらくたつてからというのが今までのしきたりであつて、それを急激にかえて契約ができる、すぐに信用状を要求するといつても、無理な場合が若干あるだろうと思います。商品別に私はつきり申せませんが、あることだろうと思いまして、例外を認めるという余地を残したのであります。はつきりどういう場合ということは頭にございません。
  18. 志田義信

    志田委員 やはり為替予約を認めることがいいのでありますが、もし、それが認められなくなつた場合にも、鉄鋼機械、それから一部の繊維製品だけでもこれを認めてやらなければ非常に困るのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  19. 木内信胤

    木内政府委員 そういう真に認めなければあまりにも無理であるという事情が判明したならば、認めて行くつもりであります。
  20. 福田喜東

    福田(喜)委員 関連して、一つ二つお尋ねいたします。ポンドの勢力が弱まつておるのだし、ポンド市場対策として新ポンド対策実施されたのはよくわかりますが、大きくいつたならば貿易圏の縮小——せつかく開拓した輸出地域を失うのではないかということが考えられるのですが、その点についてまずお伺いいたします。
  21. 周東英雄

    周東国務大臣 その点は国際的な他の国々のポンド圏への輸出関係も、よほど考えてみなければならないと思います。ただいま日本ポンド圏への輸出が非常に伸びて来たということは、一つにはその辺におけるポンド実勢が弱まつた結果から来たということもありますが、一画においては米英その他の、その地方に対する輸出が少し弱まつておるということにあつて日本がかわりをされておるというかつこうにある。従つて今ここに多少のポンド対策をとりましたところで、急速に日本輸出市場が縮小するとも思われない。しかし、先ほども申しましたように何としても将来の日本産業基礎をなすべき輸出市場確保ということについて、ポンド圏である東南アジア地区は大事なところであります。一面今のように出るばかりで入ることが少いというかつこうを是正いたしまして、将来とも東南アジア開発に協力しつつ、その地方からの資源の輸入——現実品物をとり得るような方法を講じつつ、それに対する輸出を認めて行くことも考えられましようし、これらの市場確保についても考慮を拂いつつ、暫定的の措置として、今一つ措置とつたというふうに御承知置き願いたいと思います。
  22. 福田喜東

    福田(喜)委員 予約期間が三箇月になりますことからいたしまして、ポンド地域向け綿製品につきましては、これはその大部分が六箇月くらいの先物取引であつたと思いますが、綿製品の受ける影響はどういうふうにお考えでしようか。それから機械類とか鉄鋼類につきましては、どういう影響があるか。ことに物資別に見まして、三箇月で問題のないものと、三箇月ではちよつと足りないものとがあるのですが、こういうものに対する対策はどうお考えになつておるか。もしそれが三箇月という予約期間で足りないというなら、物資別についていろいろ措置を講ぜられるお考えでございますかどうか、この点について御意見を承りたいと思います。
  23. 木内信胤

    木内政府委員 綿糸、綿布、鉄鋼その他品目をあげて対策いかんという御質問であります。周東さんからも御説明がありましたように、私は一割五分という数字をあげて、そのくらいポンド実勢は弱いということを申しましたが、そういうことに便乗しての輸出は、日本としては非常に甘い、楽な輸出でありまして、そういう輸出を続けて行くということは、すなわち辛い輸出だ、また日本が真になさなければならないドル圏への輸出というものをはばむ行為なのであります。ですからポンド圏への従来の輸出というものが多少——多少か相当強くかは存じませんが、これは程度の問題で、ある程度困難を感ずるということは承知の上でやつた措置であります。従つて個々物資にはそれぞれ困難があるだろう、それはよく存じておりますが、困難があるからといつてすぐにその困難をしのぐような措置を随伴して行く、ことに為替面においてそれをゆるめる気はないのでありまして、困難はこれは大局から見てやむを得ぬと考えとつ措置であります。
  24. 福田喜東

    福田(喜)委員 そういうことでありまするならば、これは私一番重要なる問題は、先物為替相場の変更によりまして、貿易商社のこうむるところの影響が一番大きいものだろうと思います。すなわち円の手取りが少くなりまして、割引価格の引下げによつて金融が非常に逼迫する。つまり最近の情報によりますと、紡績会社貿易商社との間におきましては、手形の期間がほとんど一月ぐらいに短縮された、かつまた現金取引が非常に多いわけでありまして、それによりまして、さらに貿易商社と申しまするか、繊維を中心とする商社金融難というものは、今日経済界において非常な問題となつておる。そういうときにこの措置によりまして貿易商社倒産というものが非常な問題となつて来て、ダブつて商社経理状況を圧迫しまして、経済界のしわがよつて来るということは考えられまするが、この点についての対策はどういうふうにお考えになつておりましようか。
  25. 木内信胤

    木内政府委員 ただいまの御質問は、主として全体の影響という点が御結論であります。これは私が申し上げる筋でありませんが、最初指摘されました、先物相場の開きがついたから非常に困るとおつしやいました点は、最初に御説明申しました通りポンドについてドルと開かしたといえども、その差は年利にしてわずかに一分であります。今までなかつたときから見れば二分でありますが、ですからこれはそうひどい大きなものではないと御承知願つた方がいいかと思います。
  26. 福田喜東

    福田(喜)委員 第二点の国内商社に対する考えをひとつ
  27. 周東英雄

    周東国務大臣 商社に対する問題につきましては、この措置から生ずる急激な変化が及ぶその結果、あなたの御指摘のような倒産が出るとかいうようなことがありますれば、それに対して十分金融的措置はつけて参るつもりであります。しかし今もお話がありますように、大体自分の立場のみ考えて、ポンド地域における価格の高いということからして、少し出し過ぎているということもあると思う。そこに健全なる形に一面において持つて来るという立場に対しては、商社の方も協力していただかなければならぬと思いますので、両々相まつて、急激な変化に対しては、必要があれば適当な金融的措置もとつて、そういうことの起らぬようにいたしたいと思つております。
  28. 福田喜東

    福田(喜)委員 これは長官も、現在紡績会社貿易商社の間におきまして、現金取引が流行する、手形の期限が非常に短縮されたということは、これは御認識なさるところであろうと思いますが、繰返して申し上げますと先物為替相場の変更によつて貿易商社の円の手取りが非常に少くなり、さらでだに金融が逼迫しているときに、割引価格の引下げによつて金融が一層ダブつて繊維を中心とする商社においかぶさつて来る。従つてこの問題がなくても商社の救済策というものが論議されているときに、この問題は二つ重なつて圧迫して来ると思います。この点について考えているというが、具体策は何かお持ちでございますかということをお聞きしたわけであります。
  29. 周東英雄

    周東国務大臣 この点につきましては、十分に必要な場合において金融的措置をつけつつ対処して行きたい、かように考えております。
  30. 志田義信

    志田委員 経済安定本部長官にお伺い申し上げます。朝鮮動乱の特需、新特需のドル収入がなくなりました場合に、日本の経済の構造というものは、好むと好まざるにかかわらず、相当に変化すると思うのでありますが、安本ではそういう日本経済の今後の構造の見通し作業について、今何かやつていることがあるかどうか、その点をお尋ねいたしたい。
  31. 周東英雄

    周東国務大臣 朝鮮特需に関するものがなくなつた場合において、日本産業構造にどういう変化が起り、それにどういう対処を考えておるかというお尋ねであります。もちろん朝鮮における紛争の休職が実現し、平和が早くなることを私どもは望みまするし、おそらくそうなるだろうと思います。従つてそうなつたあかつきに、従来のような形における特需関係は、これはおそらく御指摘のように、今までのような形よりも減るかと思いますが、しかし一面朝鮮に関する関係においては、やはり戰争によつて荒されたあとの復興ということに関して、相当日本はその必要な物資の供給をなすべき立場に置かれると思いますので、ある程度やはり別の形における朝鮮といいますか、韓国といいますかへの輸出関係が起つて参ると思います。しかしそれはそれといたしまして、将来われわれの行くべき道としては、やはり今後における日米経済協力、アメリカあるいはその他の自由主義国家と協力し、アメリカの国防生産に協力しつつ、必要なものの生産をし、これを輸出するということにありましようし、もう一面におきましては、東南アジア地区その他の開発に伴いつつ、その地方における民需等の必要物資輸出という面に、今後の産業行動を向けて参らなければならぬと思います。従いましてその間におきましては、軽工業、紡績等の産業はもちろんのことでありますが、同時に機械工業、化学工業の部面の振興と申しますか、その方面に対する施策は、おのずから必要になつて参るとかように考えております。
  32. 志田義信

    志田委員 今長官は、日米経済協力で大いに日本の経済を復興させるんだというお話がございましたが、朝鮮事変が終つて、朝鮮が復興資材その他を日本に求めるかあるいは日本に求めないかは、ちよつとそう簡單に予測できない問題が一つあるのであります。現に日本国内にいる朝鮮人の国籍の問題等が今問題になつておりますが、朝鮮が現実において二つにわかれていると、いうことから、韓国政府に籍を持つか、あるいは北の政権に籍を持つかということが、いろいろ問題になつているようなときであります。いずれにいたしましても、いろいろと日米経済協力を推進して行く建前におきまして、昨日も御質問申し上げました通り、民需を圧迫しないでやるのだということを、長官は責任を持つて御言明になつておられますが、はたして民需の圧迫をやらないで行くことができるかどうか、さらに消費水準を低下させないでやることができるかどうか、そういう点についてもいろいろお考えがあろうかと思います。その点をひとつお尋ねいたしたい。
  33. 周東英雄

    周東国務大臣 ごもつともなお尋ねでありますが、私どもは講和後における日本の経済を進めて行く上において、常に国民生活の水準を現在より下げずに、徐々にでも向上せしめて行くということを一つの方針としてとつて進めて参るつもりであります。またそのことは日米協力等のいわゆる話合いのときにも、常にその点は関係当局に話をしておる点であります。この点は十分の認識を持つて考えておることだと私ども考えております。従つてわれわれが日米の協力をいたし、あるいはその他の国々に対して、生産の上に立つての協力をする場合に、何を手段として行くかということについては、これは志田さんも御承知のように、日本における未稼働の工場と労働力ということであります。これを活用するについて、協力するときに必要な生産要求があつた場合に、その工場を動かすだけのプラスした原材料の確保ということを確実にやつて行くことによつて外へ向けるということが一つ考えられるのであります。注文される商品等についてはいろいろな商品がありましようが、ともかくそういうことを建前としておりますので、現に今日までやつて来ておる生産の中をさいて持つて行くという考え方よりも、むしろ未稼働工場、余剰労力を活用して、それにプラスして原材料を持つて来てもらつて、それを生産して商品化して、これを送り出すという建前で持つて行くことによつて、一は日本の自由主義国家への協力の責務を果し、間接的には日本の経済の復興に資する、それによつて徐々にでも日本の国民生活の水準を上げて行くという形も考えておるわけであります。しかしその点は何も手放しで楽観しておるのではありませんので、要はその未稼働の設備を稼働せしめ得るに足るべき原材料の供給と、それから同時に、これに必要なる動力の確保ということができるか、できぬかということが、今後の日本経済にとつての大きな問題であります。政府はその点に向つて今日施策を集中しておることは御承知通りだと思います。
  34. 志田義信

    志田委員 長官の御説明はよくわかるのでありますけれども、未稼働の設備を活用するという構想でやる、従つて民需生産を圧迫しない建前で行ける、こういうようなお話でありました。しかしそれにしてはやはり鉄鋼であるとか、アルミであるとか、あるいは硫黄でありますとか、ないしは肥料というようなものの増産をもちろん考えなければならないのであります。一体未稼働施設、あるいは遊休施設の活用の中心が、原料を輸入しなければできない状態にあるのでありますが、原料を輸入する資金に問題があろうかと思うのであります。そういう資金をどういうふうにして原料化したならばいいのか、それをお考えがあつたらひとつお漏らしを願いたいと思います。
  35. 周東英雄

    周東国務大臣 お話日本の未稼働工場を動かすことについての原材料獲得に関する資金はどうするかということであります。これはもとより何としても国内資源の開発等による輸出という面から得る資金——外資の獲得もありましようが、私は今日の日本経済界においては、まず自己資金の蓄積ということをなすことが一番大きな点だろうと思う。すべての資金が常に政府資金によつてまかなわれて来た今日までの形はやむを得ないといたしましても、今後においては何とかして企業自体における資金の蓄積、民間資本の蓄積ということがひとつ大きく考えられて行かなければなりません。この資金によつて、今お話のようなことに対処しつつ、なお足らざる場合において、初めて外資等の援助を仰ぐということになつて来る段階だと思います。幸いにしてこの最近二、三箇年間の状況を見てみますと、企業内部における自己資本の蓄積はかなりふえて参りました。この点は国民所得等に現われた法人所得なんかは、表の上からいうと、去年あたりは少し減つて来ておりますが、実は企業内部に蓄積された形で、別に残つておるということも大きな証明になると思います。これは資産の再評価、あるいは今度新たに認められた特別償却等による資本の蓄積の方法、こういうことが大きな結果を招来したと思います。しかしまた自己資本と借入れ資本との表を最近比較してみましても、自己資本の方が非常に増加を示しておる。株式あるいは社債というような面のふえておる点もこの点を意味しておると思いますが、政府がもつと民間の資本蓄積をなし得るような施策を考える必要があると私は思います。資本蓄積の一つ方法とも言えますが、今度無記名貯金を認めたり、あるいは償却年限をさらに短縮して、これに課税しないというような方法をとるという行き方もその現われだと思います。まずみずからの力で資本を蓄積するということが第一でなければならぬ。その上に、たとえば電源開発等について、あるいはその他の設備の修築、改善等に関して、必要なる外資を頼むというようなことによつて切抜けて行けると私は考えております。
  36. 志田義信

    志田委員 自力更生を説かれますが、そういうことはよく昔私たちも知つておるのでありますが、戰争で四兆以上の被害を受けており、しかも民族資本を失つておる日本人でありますから、今日米経済協力を直接に行おうとする場合に、未稼働のそれらの生産設備をフルに運転させるというためには、そうした遊休設備活用のために必要な原料輸入の金ばかりでなくして、設備資金つてこれは十分考えてやらなければならない、運転資金考えてやらなければならない、こういうことになる。しかも日本の生産設備は、現在のところ二分の一あるいは三分の一が休止中であるということが、安本の調査によつても明らかになつております。こういう二分の一ないし三分の一の休んでいる生産設備を持つていることが、製品のコスト高になつおり、利潤をそれだけ低下さしている、こういうことになつているのでありますが、資本の蓄積とまつて日本のこうした遊休設備を活用するということになれば、長きにわたつてはそういうことも言えるでありましようが、今すぐの急場の間には合わないということになるのであります。そうした急場に役立たせるための方法として何か考えてやらなければならないと思いますが、いかがでございましようか。
  37. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいま申しましたように、日米経済協力というような形において、特殊なものの注文等の要求がありますれば、それに関して必要な設備の修築改善とか、あるいは原材料の獲得ということにおいて、必要な場合には外資等の要求もできると私は思う。しかしそれをやるについて私の言うのは、常に国内における自己資本の蓄積をやるという態勢をとつた上で、足らざるを求めるというかつこうに行かなければ、何もかも、何か仕事をすればすぐにそれに必要な外資を仰ぐというような形をとつたんでは、今のわが国のような貧乏国に対して、そう簡單に外資というものは入るものではありません。今まで気楽に考えておつたのが間違いであつた。私の言うのは、あなたもおつしやるように、まずうちの資本がたまつてからやるというのでは長くかかりはせぬかということはその通りでありますけれども、われわれはいやしくもそとに援助を仰ぐからには、みずからの態勢を整えなければいかぬ。それは大であろうが、小であろうが、ともかくもみずからの資本を蓄積して、それをもつてやるという建前をとりつつ、不足の場合にこれを要求するというかつこうに持つて行きたいと私ども考えております。
  38. 志田義信

    志田委員 安定本部長官お話は、精神論として私は大いに傾聴するのでありますが、実質の問題としまして、もし今そういう資金が蓄積されておらないという場合には、ひとつこれらの遊休設備を活用する考え方を新しい角度から考え直して、これをむしろ資本として、それ自身を輸出して、原料品のあるところで生産を開発するような方法によつて、合理的な條件でまた原料品の流入を確保するということも一つ方法ではないかと思います。それにつきましてはいかにお考えになつておりますか。また事実やつておることがありましたならば、実例をひとつお漏らし願いたいと思うのであります。
  39. 周東英雄

    周東国務大臣 お話はごもつともであります。具体的にはまだ遊休の設備を輸出したということは今までございませんが、しかし御指摘のような事柄については、たとえば過日来日されたインドネシアの賠償使節等のお話によりましても、賠償問題とは別に、将来インドネシアの開発、あるいはインドネシヤの国内における産業の発展のために、日本の空いているといいますか、未稼働の工場の設備等を移してもらえぬか、こういうような話もあります。しかしこれはその際に、われわれはあくまで将来こういう諸国と経済的に協力する上において、具体的な問題について具体的に相談をいたしたいということを言つておりまするが、なるだけ御指摘のように、もし未稼働の工場で、日本の内地に置いておく必要のないものについて、活用できるものは外へ出して行く、そうして活用するということはけつこうだと思います。
  40. 志田義信

    志田委員 東南アジアに対する開発、投資についてでありまするが、そのうちの対インドの投資計画というものがいろいろ伝わつております。たとえばモローの経団連における講演であるとか、あるいは木内外為委員長もどこかの会合でそういう話をしているように聞くのでありますが、そういう場合に、特に私は御希望を申し上げたいのは、今日問題になつております過剰ポンド、この日本の過剰ポンドをそうした東南アジア地域へ資本として出す、その他は現物出資として今の遊休設備等を持つて行くというようなやり方、こういう組み合せたやり方を考えておられるか、あるいは現にやつておられるのかどうか。その点をひとつお尋ねいたします。
  41. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまのところ、手元にある過剰のポンドを、出資とか投資とかいう形においてやるという考えはございません。
  42. 志田義信

    志田委員 従来ドル地域から来ておりましたもので鉄鉱石の輸入がございました。この鉄鉱石の韓人がポンド地域に振りかえられて、ドル地域からの入超は一割程度是正されるというようにも開いておるのでありますが、こういう東南アジア開発計画に対しましては、今のような過剰ポンドを使用したり、加えて遊休設備の現物出資をするというようなことが非常によい方法ではないか。国内に問題を持つて来なくとも、直接ポンド地域においてそういうことが可能なのでありますから、できないことはないと思いますが、そういうことを、今まではともかくとして、将来お考えになるお考えはないかどうか。それは特に長官と、木内外為委員長にもひとつ御発言を願いたいと思います。
  43. 周東英雄

    周東国務大臣 これは将来、東南アジア地区開発に関して、アメリカ方面からの資金あるいは技術というものを出してもらうということはもちろんでありますが、当然日本としても資金に余力があれば資金、あるいは技術、機械、プラント輸出、あるいはそういう工場の未稼働設備の移転ということは、研究の対象になる問題として考えてよいことだと思います。
  44. 木内信胤

    木内政府委員 非常によい御着眼であつて、それを私ども知らないわけではないのであります。但し私誤解されると困りますのは、ポンドが余つたからといつて使つてしまえ、こういう意味で投資ということを考えるのは非常に危険なことであります。その投資がよい投資であり、ほんとうに長い将来にわたつて確実によいことであると考えられるならば、そこでポンドがあるから使おう、こうなれば話はよいのでありますが、何か余つて始末に困つているものを投入してしまうのだというふうに世間にとられますので、若干否定的に見えるような発言をしたことがあるかと思いますが、いいものであるなら非常にけつこうであります。またそれができて来るときに、なお過剰ポンドをかかえておるときならば、それを投入することは非常にいいと思うのであります。研究する価値は大いにあると思います。
  45. 志田義信

    志田委員 これは今研究する価値があるというお話なのでありますが、もう外国の新聞などを見ますと、相当に向うでは期待しており、日本側に要望、しておるように拝見するのであります。研究どころでなく、実地に移す段階ではないかと思うのであります。今外為委員長の御発言がありましたので、別に食い下つて申し上げるわけではありませんが、それは具体的に進めなければならぬものではないか。これは私の発案でも何でもないのであります。外地新聞がそういうことをちやんと報道しておる。たとえば日本鉄鋼会社と——これはその新聞にはたしか三社と書いてあつたと思うのでありますが、三社とタタノ財閥との提携が、たしか計画されておつたように思います。そういうような計画があるといたしますれば、ぜひこれは伺つてみなければなりませんし、それによりますと資本総額は四百七十億円、現地で使用されるものは五千三百万ドルというのでありますから、円に計算いたしまして百八十七億でございますか、こういうようなものにやれるならば私は非常によいと思います。これは検討するどころか、大いに政府はこれに乗つてやられる必要があろうと思いますが、こういうことは外国新聞だけの報道でございましようか。火のないところには煙は立たないのでございますが、これは何か火のないところに起きた煙でありましようか、それを伺いたい。
  46. 周東英雄

    周東国務大臣 ごもつともな御質問でありますが、お話は多分インドのゴアの問題であろうかと思います。こういう問題については、今木内君もお話になりましたように、ポンドが余つておるからという意味でなく、将来東南アジア開発のために必要な場合において、日本からもある場合によつて資金なり、技術なり、プラント輸出なり、工場移転というようなことは考えてよろしいと私は思うのであります。その点は木内君も同感なのであります。ことに今のはポンドを出したらよいということでなく、私の聞いておるところでは、ゴア開発関係についての三社の関係は、むしろ金よりも車両とか鉄道とかが必要なのであります。物を持つて行かなければなかなか困る。ポンドだけ貸してもこれはなかなかうまく行かぬのではないかと思うのであります。必要なる資材、機械資金というものを合せて、必要な場合においては日本に余力があれば当然協力して行く。こういう考えを持つております。
  47. 志田義信

    志田委員 もう一問だけ大臣にお伺いいたします。これは日本新聞でありますが、日本新聞によりますと、米資の導入と自立経済という総司令部に提出した政府案の全文というものが載つておる。七億ドルを要請して、これによつて総生産三割増を見込んでおる、こういうのでありますが、こういう事実がございますか。
  48. 周東英雄

    周東国務大臣 新聞を例にとられては困ります。新聞のことなど私どもは責任ありません。これはそこまでそういう話はありません。
  49. 志田義信

    志田委員 それでは新聞を離れまして、先ほど国内開発で電源開発が暗示されておつたと思います。国内資源の開発でもつて、いろいろ日本の民需生産を圧迫しない方法でやるのだという話でありましたが、そのうちの電源開発に、政府借款が相当有望であるということを伝え聞くのでありますけれども、いかがでございましようか。もしございますれば、おさしつかえにならない限りお話願いたいのであります。
  50. 周東英雄

    周東国務大臣 そういう面につきましては、なるほど努力しておることは事実であります。おそらく何かの形が出るのではないかと思つておりますが、まだ今のところ何も出ておりません。
  51. 志田義信

    志田委員 御努力の結果、大体日本の二十七年度に行おうとする電源開発の費用のどのくらいまでは見込みとして考えられるのでございましようか。
  52. 周東英雄

    周東国務大臣 まだ努力をいたしておるという程度でありまして、今日どのくらいということはまだわかりませんので申し上げかねます。
  53. 前田正男

    前田委員長 有田喜一君。
  54. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 私は最近の経済問題の重大と思われる二、三の点につきまして、周東国務大臣に若干の御質問を試みたいと思います。第一には、今日日本の経済の危機と申しまするか、あるいは世間ではいわゆる三月危機なんということがいわれておりますが、はたして危機かどうかは別といたしまして、ともかく御承知通り、一昨年の朝鮮動乱以来の特需の好況に関連しまして、一にも二にも原材料の輸入促進ということが叫ばれて来ておる。そうして輸入の促進をはかつたのでありますが、御承知通り、その間の手続とか、あるいは割当などがたいへん遅れまして、ちようど昨年の春世界物価の一番高いときに大量輸入をやつた。ところが間もなく物価が下落してしまつて、いわゆる原料高の製品安を生じた。輸入原料が高い。それだけでもたいへんな痛手であるのに、そこへ持つて来ていわゆるキャンセルなるものが起つて来て、実に困つた現状になつたのであります。そこでいわゆるユーザンスの手形の期限が来て、その時期に金が一挙に出るということになり、物は値下り、ストックはふえるばかり、金融逼迫の現状が生じたのであります。加うるに国内取引、いわゆる思惑取引が行われて、仲間同士の書合い手形というものが流行して、金融に一時の便を與えたが、それが下落によつていわゆる手形の混乱を来した、こういうような事情が重なり合つて、今日御承知通り商社が非常に困つてしまつておる。ところが一方金融機関はいわゆるオーバー・ローンで、これ以上融資は困難だ。ところが金融を停止してしまうと、倒産社が続出する。今日すでに相当の倒産社も出て来ておりますが、これ以上取立てをやるとわが国の経済は大混乱を来す。非常に今日困つた状態であります。これは確かに今日の日本経済の大きな痛手であると思います。これに対する過去の業者の思惑だとかあるいは政府の手続が遅れておる、そういう責任問題は第二といたしまして、とにかくこういう非常に困つた事態が起つていることは事実なのであります。これを何とか打開して行かなくてはならぬのでありますが、これに対して政府はいかなる対策をもつて臨んでおられるか、まずそれを安本長官にお聞きいたしたい。
  55. 周東英雄

    周東国務大臣 日本の経済の底の浅いということからいたしまして、去年の春から中ごろ、暮にかけていろいろ悲喜こもごも至るような状態つたことは御指摘通りだと思います。しかしそのことは別といたしまして、今日産業界が資金的に詰まつており、価格の原料高、商品安ということで、非常に困つておるという実情もよくわかります。政府におきましては、これらに対しまして、堅実な面に対しましては、これが倒産とか破産とかいうようなことが起らぬように、金融的な処置は今後とも考えて行くということに大体きまつております。ことに最近における中小企業の関係等の実例をあげますと、これらに対する商工中央金庫等に関する預託金の引上げ等も中止して、これに対する金融の行き詰まりにならぬようにする。また大きな商社等に対しては、具体的な商社ごとに必要な場合に相談をして、日本銀行等から処置をさせて打開する方法考え処置して行きたい、かように考えております。これは今日の対策でありますが、私どもはこの際に、とにかくこういう場合でありますから、商社の側においてもよほど考えていただくことに協力を求めたいと思う。今御指摘の去年の春から冬にかげての問題でありますが、とにかく日本の経済の幅が狭いから、常にちよつと輸出が減ると値が下る。ちよつと輸入が減ると値が上るというようなときであるから、よほど輸出輸入について考えてもらわなければならぬときであります。一昨年の六月ごろでありましたか、とにかく今までの輸入形式はあまり制限されておつた。どこの国から、何をどれだけというようなことで輸入を限られておつた。ことにその場合に輸入外貨として許されたものが、常に四半期ごとにおける輸出によつて受取る金額の範囲内しか許されなかつたというところに、日本の必要物資の獲得に、時期的に遅れがあつたということであつた。そういう点を打開するために、私どもは自動承認制とか、あるいはいろいろな先物契約を認めるというようなところに持つて来たのであります。この点はほんとうは成功したのです。成功した結果、あまりきき過ぎて、一万トンくらいの輸入をさせようと思つていると、三万トンくらい先物契約してしまうという事柄があつた。こういう点は、過去の一つの失敗を今後に繰返させないで、ほんとう輸入商社輸出商社にも国に協力してもらう、また自分の立場だけでなくて、将来に向つて日本全体のために輸出輸入に気をつけてもらうようにして行かないと、どんどん利益になるものは思惑で買い込んで、そうして下ると政府は救済せぬかと言われてもこれは困る。どうせ貧乏な国ですから、政府にも決して責任がないとは言えません。政府もできるだけの金融的措置その他を講じますが、政府におんぶしているものと考えないで、やはり商社それ自体が輸出入に関して常に先を考えつつ協力してもらいたい。これがつかぬ限りは、とても日本金融措置だけでは救えない、こう思います。
  56. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 安本長官のお考えごもつともと思いますが、そこでまた承りたいのは、先ほど堅実なる商社に対しては、金融措置も続けるという言葉がありましたが、堅実と申しましてもいろいろ程度があると思います。小さいものに対しては今、中金とかその他があると思いますが、大よそどの程度を救うといいますか、三分の一程度とか、大体の見通しでけつこうです。
  57. 周東英雄

    周東国務大臣 これはなかなかむずかしいお話で、どの程度だということは、私は今申し上げかねますが、それは有田さんの御心配の点以上に政府考えていると思います。一つの大きな商社をつぶしてはならぬということは、何も大きなものだけを救うということではなくて、今日一つ商社に破綻が起れば、その商社取引している相手方あるいは子会社に影響するところ非常に大きいと思います。この点は大蔵大臣も非常によく考えておるのでありまして、そういうことも含めつつ、大事な日本経済が破綻しないように金融的措置考えて行く、こういうことであります。
  58. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 私は日本経済に対する影響を心配するのでありまして、商社の個々の問題に対しては決してとやかく申さない。私の心配しておる以上で、そんなに心配せぬでもいいというお話で非常に心強うは思いますが、政府のおつしやること必ずしも当らないのでありまして、この問題は相当影響が大でありますので、十分の措置をやつていただきたい。と同時に、何と申しましても一時的に金融措置でつながるとしましても、これは日本経済の大きながんになつている、緊急措置としては金融の問題ですが、長い将来のいわゆる恒久対策としては、どういう措置を講ずるのか、見通しをお聞きしたい。
  59. 周東英雄

    周東国務大臣 お話通り金融的の対策は緊急の目先の対策でありまして、要はこういうことの起らぬように、恒久的な対策考える必要があるという御意見は私、まつたく同感であります。それに対しましては、やはり日本の将来に対する産業構造なり、あるいは産業の推進の仕方について、全体的に見て、どの産業に対してどの程度まで生産的な目標を定めて行くかということが一つの目的であり、それに対しましては製鉄工業は、石炭工業は、セメント工業は、あるいは紡績はという一つの目標を立てておるわけであります。そうしてこれらの間にはさまつて考えられることが、いわゆる日米の経済協力による商品の生産要求であります。その間におきまして、私どもも、先ほどから申しましたように、日本の経済に余力のある範囲内において協力する義務があると思います。その際におきまして、ただ一時的な関係に成り立つということになりますと、これがその商社のみならず、日本の経済抑制は大きいのでありますから、そういう場合においては、常にある程度期間的な原料供給なり、期間的な商品の輸出関係契約ということも望ましいというふうに考えております。同時に将来の問題としては、あくまでも輸出ということが一つ日本産業の大きな柱になる。これをやるためには——現在はあるいは国際的な軍拡競争に伴つて、多少悪くても、高くても買うということでありましようが、将来においては、あくまでも経済の基盤を堅実にするために、合理化された設備、機械によつてコストの引下げ等が考えられる必要がある。これはぜひ早くやらなければならぬ。今度政府が合理化法案を提出しておるのも、その一つの現われでありまして、できるだけ企業内部において、早く設備機械の合理化をさせて行つてコストの引下げをする。そうして良質なものをつくるというふうな方向に持つて行きたい。同時にそれらに対する今後のコスト引下げ等のため、原材料の供給は、今はやむを得ず遠くから来ておりますが、できるだけ近間から得る。また近間から得るために東南ア開発ということが問題になると思います。このことは、一つはその方面からする民族国家の開発、福祉増進ということもありますが、同時にその辺から来る原材料の獲得によつて日本産業に対し比較的安いよい材料を近間から得るとともに、それを再生産してその市場を獲保するという問題について考慮をして行かねばならぬ、かように考えております。要するに、御指摘日本の将来の産業の行き方について、私どもはある程度の大きな各産業ごとの目安を定めつつ、それに対して以上二、三の例で申し上げたように、必要な措置をとつて行くことによつて、恒久的な産業の、基盤をつちかいたいと思つております。
  60. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 今の場合で、たとえば繊維に例をとります。やはり商況の改善ということがやらなくてはならぬ問題の一つだと思う。そこでまず商況の改善をやるについては、操短というこが考えられる手段でなかろうかと考えるのでありますが、こういうことに対して政府はどう考えておられますか。これは通産省関係かもしれませんが……。
  61. 本間俊一

    ○本間政府委員 御答弁申し上げます。御指摘のように、国内の生産をある程度抑制いたしまして、国内の市価の維持、輸出価格の適切な維持というようなところに持つて参らなければならぬのは、御指摘通りでございます。そこでポンド為替予約の問題等に関連もいたしまして、どの程度に生産を抑制することが、国際価格及び国内価格の維持のために一番いいかという点を、ただいま検討いたしておりますので、遠からず決定をいたしたい。こういうふうに考えております。
  62. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 次に貿易の問題について若干お聞きしたい。先ほど来ポンド過剰対策について相当論議が重ねられておりますが、ポンド過剰対策として、ある程度輸出制限、同時にポンド関係輸入促進をはかる、これは一時的措置としてはやむを得ないかとも考えるのですが、しかし何と申しましても、輸出制限ということは、輸出産業に甚大なる影響があつて、いわゆる縮小生産を来すおそれがある。しかも一方輸入促進といいましても、ポンドの通貨価値の関係からいたしまして、なかなか簡單に行けるものでない。どうも今回の措置というものは、本格的の行き方でないと考えております。先ほども志田君から御指摘のありましたように、貿易政策はやはりあくまで輸出入の拡大が本質である。もちろんポンド過剰ということは困るが、しかし政府はこういう措置をやる前に、なぜもつとイギリスを初め関係諸国に対して相互貿易の拡大をやり、あるいは過剰ポンドの有効利用をはかる措置を、もつと積極的にやらぬのか。今後も大いにこれを研究するとか、余つたら投資するというわけじやないが、しかし探せば、積極的に努力すれば、有効利用の方途が講ぜられたと考える。その点、私は非常に遺憾に思う。今からでもおそくはないかもしれぬが、しかし今回の措置は、一時的のほんとうのやむを得ない措置であつて、このままいつまでもほつておくわけに行かない。すみやかに真のポンド過剰対策を講じなければならぬ。政府はもう少し具体的に、今後こういうことをやるつもりである、今からぼつぼつ研究しますなんてそんななまぬるいことではなく、もう少しはつきりした方針を承りたい。
  63. 周東英雄

    周東国務大臣 お話の点は先ほど志田君の御質問に対してもお答えしたのでありますが、これはあくまで臨時的の措置であります。積極的に輸出市場の開拓、輸出振興をはかるということが貿易政策の基本であることは、御指摘通りであります。そこで先ほどもお答えしたように、何としても東南アジア開発等によつて、その地区からのわが国の必要とする資源の輸入をふやすということが一つの行き方であり、それに関連して日本の商品をその方に送つて行く、こういうことになればポンド関係が調節されるわけでありましよう。さらに化学肥料等の問題につきましても、先ほど御指摘があつたと思いますが、どうしても日本としては、日本内地の農民に対する要求からいたしましても、肥料の生産設備等については拡張しなければなりませんが、同時に朝鮮、台湾その他東南アジア地区に、日本がかつて出しておつた、これに対してやはり要求されることは事実であります。これらが経済的な協力のなし得る一つの大きな点であります。肥料等の増産によつて、その増産部分を内地の農民に影響のない範囲において出して行つて、そうしてその地区における食糧等の増産をして行き、これをその地区から入れるということによつてドル圏からの食糧輸入ポンド圏に置きかえるということも、一つ考え方として考えられておることであります。いろいろお話通りポンド圏からの輸入の増加についての施策はやつております。同時に日米経済協力等の線を通じてドル圏への輸出をふやすというような面、これによつてドルポンドの調整をなすということについて措置をとろうといたしております。さしあたつて時間的に多少のずれが起りますので、今のやむを得ざる措置をしたことと御承知を願つておきたいと思います。
  64. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 今回のような消極的な措置はすみやかに改善され、大いに雄大なる積極的の貿易対策を講ぜられんことを強く要望しておきます。  次に先ほどお話がありましたように、ドル地域への輸出の促進です。何と申しましてもドル地域への輸出の促進をはからなければならぬことは当然ですが、そこで私一つ気になることは、物価の面からいつて、はたしてドル地域への輸出促進がうまく行くかどうか。御承知通り朝鮮動乱の影響を受けて、アメリカは一時は物価の騰貴を見ましたけれども、ただちに物価事情が安定しまして、今日では大体一割二分くらいの騰貴程度で安定しております。ところが日本は動乱前に比べまして、すでに六割以上上つておる。しかも朝鮮景気によるところの利益は、たいがい設備の拡充に使われてしまつて、しかもその設備の増加は同時に借金の上塗りをやつておる。ほんとうの資本蓄積ができずして借金ばかり残つている。こういう状態になつてつて、朝鮮動乱の影響による利益は、日本経済としては真に蓄積を守つていない現状であります。そこでその一点を比較しましても、日本の物価事情からドル地域への輸出は相当困難である。これに対して安本当局はいかに考えておられるか、いかなる方策を持つておられるか、それをお聞きいたします。
  65. 周東英雄

    周東国務大臣 お話通りドル圏への輸出関係において、日本価格関係が将来障害をなすのではないかという御意見は私も同感であります。従つてこれらについては、将来に向つてでき得る限り日本の生産設備の合理化によるコストの引下げということは、どうしてもやらなければならぬ一つの問題であり、また原材料等をできるだけ安く、近くから入れるということが一つの目安であろうと思います。しかしそれにしてもそれを極度にやりました後において、物によつては初めから日本の生産の立地條件の悪い立場から、少しぐらい高くなるということもある。こういうことによりまして、必要なものについてはそれを承知の上で買つてもらいたいというくらいの行動を私どもしなければならぬと思います。ことに鉄鉱石等について今いろいろあげられておる話がありますが、なるほどアメリカにおける生産からすればよほど日本は高い。しかし今日のところベルギーあたりからアメリカに出る価格から見ると、大体向うも買つてくれる状態になつておるということで今は進んでおります。これがいつまでも続くとは考えられない。何とかして今の製鉄三社に対しても、その設備の合理化について、聞くところによるとエトナー・USスチールというのですか、何かそういう工場の診断をする会社があるそうですが、それが徹底的に調べて非合理な点を直して、そうして能率化するという運動が始まつております。ぜひともそれは実行してもらつてできるだけコストの引下げをやるということが一つの行き方であります。その他の措置としては、やはりある程度国内の不要なものに需要がふえることによつて価格の高くなるという面は、これはある程度物によつては防がなければならないと思います。そういう面から不要不急のものに対しての使用の制限を、物によつてやらなければならぬということも起るのであります。いずれにいたしましても価格問題は、御指摘のように今後における輸出関係において一番問題になる点でありまして、政府もその点についてはいろいろと苦心をし、対策を練つておるのであります。
  66. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 価格の問題として設備の合理化をはかる、非常にけつこうなことですが、はたして設備の合理化が真に進むかどうか。これはどうしてもやらなくてはならぬことだが、今日の現状ではなかなか進みにくい。この前の朝鮮動乱のあの好景気におきましても、合理化がさつぱりお留守になつておる。それはもうかつてつて安閑と、しておるから合理化が進まない。そこで今のように野放しと言つてはお怒りになるかもしれませんが、こういうような手放しではやはり真剣に進まない。しかしこれは好むと好まざるとにかかわらず、政府はしつかりと会社の強力なる監督もやつて行く、そうして一つの目標も立てて行く、やはり真剣にやらないならば、自由経済もけつこうはけつこうだが、ほつておいてはなかなか言葉だけの合理化なんかは進められない。何としても日本輸出品の生産コストが、ドル市場にも対抗し得るような措置を講じなければならぬと思いますが、安本長官はそれらにつきまして今までのような行き方でいいか、せつかく安本も計画経済というものを立てられたが、あれを立てられたのは、結局絵に描いたぼたもちにすぎなくて、実際手をよう引ずつて来なかつた。こういうふうに私は考えるのでありますが、この点について安本長官は自由党とか何とか、党というような問題を離れて、日本の経済の建直しのために、真剣にこうすればいいというお考えはないか、それをお漏らし願いたい。
  67. 周東英雄

    周東国務大臣 何か強権力を加えて統制でもしたら合理化もできるかのようなお話がありましたが、私は政府が強制をしても、これは必ずよい効果を上げるものとは思わないのでありまして、やはり朝鮮動乱自体において、今もあなたの言われたように、非常にたなぼた式な利益があつたのに、うかうかと企業家が考えることなく漠然と設備の拡張等をやつて、これが今日コスト高の原因にもなり、償却にも困つているという状態になつている。おちついて来た場合、貿易関係においては不利な立場に立つということについては、身にしみてよくわかつていると私は思う。従つてこれに関しては、政府としては先ほど申したように、合理化法案等の内容のごとく、何でもかんでも税金で取立てるのではなくて、設備の合理化をするために、償却を早くする者に対しては免税するのだというような積極的な導き方によつて、自発的に設備の改善に向つて進むと私は思う。この点につきしては、多少有田さんと——別に立場上どうこうということではなくて、考え方としても私は意見を異にするのであります。どうしても日本の国民、日本の企業家が、日本立場に目ざめて自分から考えるというのでなければ、国家が全部合理化するために——国営ならよいのですが、そういう立場にない限りは、そういう強権力を用いてもだめだと思う。彼らの創意くふうをそういう方面に導くような立場に、一つの法制なりを持つて行くことによつて、ある程度目的を達するのではなかろうか、かように私は考えております。
  68. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 私は決して干渉経済をやれというようなことを申すのではない。政府みずから干渉せよというのではない。しかしながら一つの目標と計画というものを立てて、むだのないようにやつていただきたい。せつかくの動乱景気という一つの恵まれた状態のもとにあるにもかかわらず、日本経済全体からいえば、これがむだになつたような今日、そういうあやまちを繰返さないように一つの目標と計画とを持つた行き方をしていただきたい。このことを要求するのでありますから、誤解のないように願います。  それからさつき日米経済協力の問題が出ましたが、最近アメリカから鉄百何十万トンかの引合いがあつたというような話を聞きますが、これは事実であるかどうかを伺います。
  69. 周東英雄

    周東国務大臣 アメリカから鉄を百五十万トン云々といううわさが出ておりますが、これはまだ何にもそういう話はございません。
  70. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 先ほど未稼動工場の利用と、日本の労力の活用によつてつて行くのだというようなお話でありましたが、これは非常によいことだと思う。ただそこで問題になるのは、遊休設備の活用の範囲です。ちようど日米経済協力で、アメリカの要請されるものが日本の遊休設備の範囲内ならばけつこうだが、それがもつと多く要求される場合がある。もう一つ価格の点です。経済協力といつてもコマーシャル・ベースに乗ればよいが、日本の陳腐な遊休設備では、非常に機械技術も遅れてしまつていると思いますから、はたしてその二点からうまく行くかどうか。ことに価格の問題については相当私は懸念にたえないのでありますが、それに対して安本長官はどういうお考えを持つておりますか。
  71. 周東英雄

    周東国務大臣 それは御意見のように、未稼働の設備が全部すぐに役に立つというわけでもありますまいが、たとえば工作機械とか、ボール・ベアリングというようなものの設備の未稼働分については相当余力があります。こういう面については、あるいは要求によりましてはこれに応じてやることもできる。その際においての価格の問題でありますが、私どもの言つておるのは、先ほど言つたように、国際経済に参加して競争のできるような価格に、将来は合理化をして持つて行くということはもちろん考えておるけれども、時間的のズレのある時代においては、やはり現在の設備の上に立つて、それに必要なコストに、適当な利潤なり利益を加えた価格で買つてもらわなければならぬということであつて、そういうような意味合いで話合いを進めようと思つております。その間に処しながら時間をかせいで、できるだけコストの引上げに対して、設備の改善というようなことをにらみ合せてやつて行く必要があろうと思つております。
  72. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 ちようど日本が今日タンカーの注文を受けて、造船所は最近相当活況を帯びて来た。こういうような造船能力が余つているときにタンカーの注文を受けたが、それが比較的随意だとなつているから非常にぐあいがよい。しかも価格日本の船の方が高いが、船は割合早く建造できる。こういうような状況になつて来ると非常にやりやすい。けれども、ややもするとそれはアルミを何万トンよこせとか、日本の能力その他を無視した、より以上のものが来るかもしれぬ。そういうときに、日本政府は相当これに、日本の経済の実情というものをにらみながらの、対抗と言つてはおかしいが、その折衝を上手にやらなければいかぬ。今までの跡を見ますると、ややもすると一つの威力というか、に押されて、日本経済の実情に合わないようなことを言われることが間々あるように見受けるのであります。そういう点をどうぞ御注意願つて日本の経済が真に伸びて行くように、それがほんとうの互いの協力なんだから、よほどしつかりやつていただきたいと考える。  それからもう一点伺いたいことは、先般の国民政府の承認の問題で、いわゆる中共との貿易関係が非常に困難な実情になつて来た。これは何と申しましても、日本の経済のあり方について大影響がある。もちろん戰前のように、貿易だけにあれだけの力があるとは私は考えないが、しかし政府がしばしば言つておられることは、あまりにも過小評価しておるように考えられる。何といいましても、日本の地理的の関係から申しても、中国市場というものは、日本にとつては重大な関係を持つておる。それを相当犠牲にしながらああいうことをやつたのだが、これは政治的な事情から言えばやむを得ぬことかもしれない。今回アメリカでは相互保障援助ができることになつておるが、あれをやられるについて政府は、ギブ・アンド・テークであるから、いろいろやられる手あると思う。それの実をとらないようでは、まずい外交の折衝ではないかと思う。あるいは政府はこの席上で言いにくいことがあるかもしれないが、事情が許せば、そういう点はこういうことになつているという、方向だけでもお示しを願いたい。
  73. 周東英雄

    周東国務大臣 お話の相互安全保障條約ですか、それと引きかえに何とかうまいことをするように交渉せよというお話でありますが、私どもは、そういう相互安全保障條約という問題は……。
  74. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 安全保障ではない、保障援助です。
  75. 周東英雄

    周東国務大臣 私は今の国民政府との関係は別にいたしまして、日本の経済復興のために、アメリカその他の自由国家との経済協力ということを進める上においては、常に日本産業の復興と国民生活水準の徐々にでも向上するような方向に行くように、経済協力の線の相談を進めて行く。これがまた私どもの義務であると思います。あくまで日本の未稼働設備、いわゆる余剰の能力というものを活用して行くについて、アメリカの国防生産を助けるということは、やるにいたしましても常に結果的には日本関係がよくなるように話を進めておるわけであります。従つて今御指摘のような、特に交換條件的に国民政府との関係をどうこうするということをしなくても、それとは離れて、アメリカとの関係においての経済協力をする線において、主張すべきものは主張し、また要求すべきことは要求して行く考えでおります。御指摘の中共との貿易という関係でありますが、これは中共という字がいつもじやまになるのですが、私どもでも中国民衆との関係において、この間に経済的な取引が復活することはけつこうな話で、ぜひ将来はそうならなければならぬと思うのであります。これは日本だけが困つておるのではなく、開らん炭のごとき強粘結炭は製鉄用炭以外には使われないので、この非常に高価なものを燃料に使つては損です。これは日本が使わなければつぶれてしまうのではないかと思うくらい問題があると思う。そういう点は一例であります。民衆と民衆との間には何らの恩怨はないのです。ですから提携が早くできることが望ましい。しかしただいまのところは、あなたも御承知のように、日本から品物を出したところで違つた方へ行つてしまつては困るのでありまして、政治的な理由からこれがとめられておるというだけであります。そのかわりを今ほかに求めて行くという事情はよく御承知だと思います。私どもは、あくまでも国民政府関係において、いろいろな交換條件をアメリカに持ち出すというようなことはいたしたくないのであります。それではなくして、日本とアメリカの立場において自主的に協力する場合に、いろいろの主張もし要求もすることは、当然政府としてなさなければならぬことであると考えております。
  76. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 この問題についてはもつと論じ合いたいのですが、それはまたあらためて論ずるとしてこの程度にしておきます。ともかく政府は、支那との貿易についてあまり過小評価して言われておるが、今安本長官みずからも言われておるように、何と申しましても支那との貿易は大事であり、ことに四億何千万支那国民との相互提携ということは非常に大事でありますから、大いに御検討願いたいと思う。  最後に、一言お伺いしたい。政府は日米経済協力の推進を通じて、日本経済の自立をはかることに努力をされておる。そのために外資導入の具体化に努力をされておるのでありますが、先ほど志田君に対する御答弁では、非常に曖昧模糊としてつかみどころがない。政府並びに與党は、電源開発に対する法案を出されるようになつておるが、開発法案の内容から見ても、現在の政府の財政負担能力から見ても、電源開発資金は十分でない。どうしても外資に仰がなければならぬといつておる。そこで電源開発はただちに着手すべき緊急の課題だと思うが、かんじんの外資導入の問題の見通しがつかなくては、この法案というものが、所期通りの効果を生ずるかどうか疑問だと思う。外資導入に関する政府の見通し及び今までの交渉経過を明らかにしていただきたい。
  77. 周東英雄

    周東国務大臣 今政府並びに與党考えておりまする電源開発資金計画について、初年度につきましては、外資の関係がなくとも着手できるような資金計画を立てております。しかし将来に向つてだんだん大きくなりますから、それに外資の援助があれば、なお一層促進することであろう、これはあなたの御意見と同様であります。それにつきまして、政府はいろいろ努力していることは努力しております。ただ今その結果がどのくらいということを申し上げる段階でないことを御了承願いたいと思います。
  78. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 努力しているというだけでは私は承服できない。いやしくも政府はこういう案を考えられて、外資がなくてもやると言われますが、今回の特殊の電源開発工事に対し、本年度にわずか百十億くらいの資金を投じては、ほんのちよつと調査に着手した程度のものであつて、それではほんとうに今日急を迫るところの電源開発情勢には沿わない。どうしてもやるというならば、もつともつと莫大な資金を投じて、真剣になつてやらなければならぬと思う。政府、自由党みずから外資導入の必要性を呼ばれて、今回の特殊会社でやるのにも、アメリカ政府の外資から入れなくちやならぬ、ついてはこういう機構が必要だと言われておるにもかかわらず、外資導入について努力はしておるけれども、まだ見通しもつかなければ、交渉の経過も話できぬというのでは、われわれはこれに対してどういうように協力していいのかわけがわからぬ。もう少しほんとうの話を聞かしていただきたいと思います。
  79. 周東英雄

    周東国務大臣 お話の点はごもつともだと思いますが、私の申し上げるのは、初年度二十七年に、外資がなくて着手できぬような法案を出してはならぬ、かりになくても着手できるように、初年度に百十億をこの会社に與えるということで進んでおります。しかしそれ以上にあればなおさら進むことでありますから、これに対しては非常に努力しておることだけ申し上げます。しかし今お話のなんぼでどうなるということは今申し上げる段階でありません。もう少したつてはつきりしたときには、もちろんこちらから申し上げますし、その法案が出て来る時分には、何とかはつきりするのじやないかと思います。
  80. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 百十億を投ずるからそれで何とか着手できるとおつしやるけれども、先ほど来言いますように、電源開発ほんとうに真劍にやろうと思えば、百十億くらいの金を投じたくらいではたいしたことはできない。御承知通り一つの地点だつてそれくらいの金が一ぺんに飛んでしまう。そこでどうしても外資導入をしなくちや、緊急電源開発は非常に困難だと思います。法案が出るまでには何とか見通しがつくという話だが、それではその効力の結果の見通しは明るいか暗いか伺いたい。
  81. 周東英雄

    周東国務大臣 これは努力をいたしておるのですから、私は見込みがあると思います。それからこれはよけいなことかもしれませんけれども、電源開発に百十億くらいの金だけでは足らぬということはわかります。しかし来年度出す政府資金は、電源開発に対して六百十億です。民間関係千百二十億ですから、その一つの会社に対する初年度着手分としては、かりに外資が入らなくても着手できるに十分な準備をしておる。しかしそれ以上に努力したいということを申し上げておきます。私の考えではそれに対してはおそらく明るい見通しである、こういうことであります。
  82. 前田正男

    前田委員長 次に林百郎君。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 安本から国民所得推計というのが出ておりますが、これについて安本長官にお聞きしたい。まず勤労所得が二千二百億円増收になつておりますが、こういう数字の出るのはどういう根拠ですか
  84. 周東英雄

    周東国務大臣 政府委員から御説明いたさせます。
  85. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 勤労所得の数字につきましては、二十六年度に比べまして、二兆三百十億という数字が二兆二千五百億ということになつておりまして、約二千二百億円、一割程度の増加になつておるわけであります。これにつきましてはこの前御説明申し上げたわけでありますが、大体年間の雇用の水準がどの程度であるかという点、それから賃金の水準がどういうふうであるか。これを大体今年の趨勢と、来年の産業活動の状況と見合せて、大体その両者を兼ね合せて、明年の勤労所得の総額を推計いたしました。その結果がこのような増加になつておるわけであります。
  86. 林百郎

    ○林(百)委員 外為委員会についてですが、この外為委員会が講和の批准後どういう構想をもつて臨むのか。依然としてそのまま存続されるのかどうか。この外為委員会があり、外国為替特別会計が、政府の特別会計としてある。従つて特別会計がある限りは、外貨の操作に対しては一般財政からのインヴエントリー・ファイナンスをしなければならぬという問題があるのです。もしこれを従来のような民間の、要するに正金銀行のような為替銀行をつくつて、民間の自然の操作にまかせておいたならば、財政出資によつて、外貨の変動を補わなければならないという問題はなくなるのではないか。あなたを前にして変な質問をするようですが、外為委員会というのは、大体占領下において、向うの方が外貨を掌握するためにあつた制度であつて、講和批准後はもうなくなつてもよいのではないかと思いますが、その辺はどうですか。
  87. 木内信胤

    木内政府委員 お答えいたします。外為委員会はとかくそういうふうに見られがちで弱つておりますが、講和後にも存続させると申しますか、講和によつて日本が自立するしないに関係なしに、こういう制度がよいものとしてつくられたと私は了解しております。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと講和後外為委員会の機能はどういう機能を果すのですか。また民間の為替銀行は全然置かれないわけですか。
  89. 木内信胤

    木内政府委員 現在でも民間の為替銀行はやつておるのであります。ただ現在はその大部分の資金はほとんど集中しております。その他の機能もありますが、その集中の機構として外為委員会があるわけであります。あるいは数年先になりますれば、政府の手に集中しなくてよくなるかもしれませんが、集中すること、少くとも大部分のものを集中することは依然としてやるべき——やる方が都合のよいことであろうと思つております。これは民間の為替銀行がなくてもよいというのではありません。あるいは御質問と少し違うかもしれませんが……。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 民間の為替銀行はそれぞれの機能の一部をなすということですが、そういう、為替を特に営業の主要内容としたがつての正金銀行のようなものを置いて、民間の操作にまかせておく——外貨の受取りが多くて、円資金が不足したちインヴエントリーで一般会計から埋めなければならないという政府の制度、——輸出で振興すればかえつて資金が不足して、われわれは財政的な負担を負わなければならないということは、どう考えてもおかしいと思うのです。それについてあなたのお考えがあるならば、お聞きしておきたい。
  91. 木内信胤

    木内政府委員 インヴエントリーがもし悪いということであるならば、それは外為の存在とは別に関係ないので、輸出が振興したために財政の負担がふえるから困るということでしたら、現在のままでも一般会計からの繰入れをやめて、日銀からの借入れにすればよいのであります。仕組みがインヴェントリー・ファイナンスを必要としているのではない、インヴエントリー・ファイナンスという、昔知らなかつた制度でありますが、ああいうことはよいことであるから実行されているので、もし悪いならば外為の機構とは別途に、これをやめて日銀からの借入れによつてまかなうことは可能であります。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 だからそういうあなたの方で握つている外貨を、民間の専門の為替銀行に握らせるということについては、どうしてあなたはいかぬと言われるのですか。
  93. 木内信胤

    木内政府委員 それも一つの行き方でございますから、あえていかぬというわけではありませんが、民間の為替銀行をつくつてそれに握らせるならば、その為替銀行が外貨を握るための資金がいる。もしこの資金を日銀から出すのならば同じことになるのであります。ですからこの問題とお尋ねの問題とは直接に関係はない。外為は存続すべきかすベからざるか、もしくはもとの正金銀行のようなものがあるべきか、あるべからざるか、その観点以外の観点の方がむしろ大事であつて、その観点はどちらでもさばけることであります。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 二つの問題がたしか問題になつていると思います。外貨の問題を外為委員会が握るか、あるいは民間の銀行がこれを握るかという問題と、それから受取り勘定が多くて円資金が不足した場合に、財政的な支出でやるかどうか、二つの問題があると思いますが、これはあなたの言うように形式論理的に別々には考えられない。外為委員会があり、そのために政府に特別会計があり、この特別会計と外為委員会が結びついて外貨の操作をしている限り、やはりインヴエントリーの問題は出て来ると思う。  そこで、それではあなたに別々に伺いますが、第一には機構の問題です。どうしても外為が外貨を集中的に握つておらなければならぬ。これを正金あるいはそのほかの為替銀行で民間にやらすことはどうしていけないのか、その点が一つ。  それからそうした為替銀行が日銀と結びついてやるとしても、これはインフレとか何とか要因が出て来ても、直接われわれの財政的な出資によつてしりぬぐいをするという形は私はなくなると思う。そういう場合に、しからば輸出が振興するために、われわれが財政的な負担をかえつて負わなければならぬということの解決の対策はどういうふうにお考えになつておるか。問題を二つにわけてあなたにお聞きしたいと思います。
  95. 木内信胤

    木内政府委員 最初の、政府が集中して持つているのがよいか、民間にそのまま持たせるがよいか、この点は集中が必要であると考えられました。その方が日本の国際信用力を増進する上により強力であると考えられたからであります。日本の国際信用の基礎は、主として外貨予算を適正に運用することにあるので、この点かなり国際信用の増したということを現実に知りまして喜んでおります。外貨予算を組んでやつて行く上に、大部分のものは政府の手に集中している方がもちろんやりよいのでありまして、それを民間の銀行が持つているままで、あたかもそれを政府のものであるかのごとく運用することも考えられないことではない。しかし一応全部集中という形でスタートしたことは、民間銀行の円資金の不足ということもありまして、それらの関係をみな合せて考えますと、きわめて適当なことである。全額集中を絶対に永久にやるというわけではありませんが、徐々に民間銀行の円資金も潤沢になるということとにらみ合せて進めて行くべきものである、この制度が制度としてはやはりよかつた制度である。そう急に改正することはない。長い将来は存じませんが、急いで解消することはまずいと思つております。というのが、何ゆえに国家の手に集中するかという第一点のお答えであります。第二点は、インヴェントリー・ファイナンスというものは、先ほどもちよつと触れましたように、国家が外貨をためて行くのであります。たまるに従つて、それが今申しました通り、国家の信用の基礎になるわけですから、これを一般会計の負担でもつてためて行くということは、たしかに一つのいい行き方であつて、従来インフレ抑制の手段としてそれが考えられて参りましたが、そうすることがいいから、いいのであつて、これは何も外為会計があるからするのではなくて、むしろ外為会計がなくなつたら、そのいいことをしなくなると考えられるべき筋合であるわけです。しかしながら輸出が急に増強するために、財政負担がふえるとおつしやいますが、輸出が増強して、外貨がふえたものを全部インヴエントリー・ファイナンスでいただいておるのじやないのです。輸出のふえるもののうちで、国家が一般財政資金から出した方がいいと思われる部分が、インヴエントリー・ファイナンスとして私どもに供給されておる。私どもに供給された円資金はほかにもたくさんあります。借入れもずいぶんありますし、来年度はそれが千億円にも上るわけであります。それらとの見合いにおいて、適当な、必要なものとしてインヴエントリーとして與えられる、こう私は了解しております。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題は、木内外為委員長に、外為委員会は悪いものだと言わせようとするのが無理だと思いますから、私はそれ以上は質問をいたしません。  そうすると、もう少しお聞きしたいのでありますが、この外貨の管理権は、従来はやはり司令部の方が相当に強い発言権を持つて外貨予算を組むについては、いろいろ司令部からサゼスチヨンやアドヴアイスがあつたと思います。その後私たちも新聞でも気をつけて見ておるのですが、司令部の方に外貨に関する管理権まであつたのじやないか。一応所有権は政府にあるという形であつたが、その実質的な管理権は司令部の方が握つたのではないかと思うのでありますが、これがその後どういう情勢になつておるか。それから今後の外貨予算については、完全に自主的に組めるようになるのかどうか、その辺を遠慮のないところをひとつ……。共産党だといつて、警戒する必要はありませんから……。
  97. 木内信胤

    木内政府委員 従来とても司令部からいわゆるサゼスチヨンを大体とつて来たわけであります。  それから従来私の責任よりも、むしろ安本の方が外貨予算の組み方の責任者でありますから、安本の方々のお答えの方が正式のお答えでありますが、  ついでにお答えをいたします。何も強い干渉を受けたことはなく、いつも相談の上でやつたのが実情であります。現在においてはほとんどまかせ切りで、若干のサゼスチヨンは一—三の予算についてありましたが、四—六の予算にはおそらくそれもないのであろうと考えます。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは次に周東大臣にお聞きしてみたいのです。これは別に意地の悪い質問じやないのです。今の外貨予算にからんで、本年度の輸入で、ドル地域からの輸入が一億ドルぐらい昨年度よりふえておるわけです。これを内容でもつて見ますと、貴金属、鉱産物、それから化学製品、油脂類というものが非常にふえておるようですが、一億ドルものドル地域輸入増加というものはどこからどういうものを入れるおつもりでありますか。
  99. 板垣修

    ○板垣政府委員 油脂数が多少ふえておりますのは、石油が大きいからであります。そのこまかいことは現在調べは作業中でありまして、正確なところまでまだ申し上げられませんが、大体を申し上げますと、石油類、鉄鉱石、粘結炭、そういうものが相当ふえて参つております。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 これで一億ドルになりますか。
  101. 板垣修

    ○板垣政府委員 それが全部ではございませんで、まだこまかいものが軒並に少しずつ上つておりますが、いずれ後刻お知らせいたします。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 鉄鉱石、粘結炭のドル地域というのは、アメリカ本国ですか。
  103. 板垣修

    ○板垣政府委員 そうです。鉄鉱石、粘結炭はアメリカ本国が一番大きいのです。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 去年と本年はどのくらいですか。
  105. 周東英雄

    周東国務大臣 その数字はこしらえてあげます。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 今の外為委員会の問題ですが、これはあなたの所管かどうか存じませんが、国務大臣としてお聞きします。こういう制度はずつと存続させるおつもりですか。近い将来においてはこの外貨の管理権は、民間の銀行あるいは特殊銀行へ移管させるお考えですか。
  107. 周東英雄

    周東国務大臣 外為委員会は特殊な使命を帯びて、今日まで相当の効果を上げておるのであります。講和後もこれをどういう形で残すか、残さぬかということについては、今関係当局の間で研究中であります。行政機構の改革と関連して決定される問題でありまして、今どつちともきめておりません。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 どういうことを考えておるかということを聞きたいんです。その答えがないと、質問した意味をなさぬのですが、共産党にはなるべく答えないようにという御方針かもしれませんから、これ以上申しません。  それから国民所得の問題ですが、これは大臣としてはあるいは少しこまかい問題かもわかりませんが、国民としては切実な問題ですから、お聞きしたいと思います。二十六年度の平均賃金一万一千四百九十五円が一万二千六百四十一円に上るわけでありますが、公務員の平均賃金は九千幾らで、まだ一万円になつておらないのでございますが、公務員の賃金を上げることは考えられておりますか。この賃金計算の中では、一般賃金と公務員のとは非常に離れております。
  109. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ここに書いてある一万二千六百四十一円という数字につきましては、全産業の一月当りの平均量を一つの指標としてここに掲げたわけでございます。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 全産業が一万二千六百四十一円、公務員は一万円平均にならない。正確に言うと、九千幾らだと思いますが、全産業と公務員とは非常に離れて来るのでございますが、やはり公務員に対しても賃金ベースを上げるというようなことが、この数字から考えられるかどうか。
  111. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 この勤労所得の増加の数字の内訳につきましては、先ほどごく簡單に、全体としてこういうやり方で計算されるということを申し上げたわけでありますが、内訳といたしましては、それぞれの業態に応じて、それぞれの企業水準等を考えて、それをかけ合せたもので所得を出したわけでございます。それで公務員につきましては、大体予算に計上されたところに従つて、明年度の見通しも立てておるわけであります。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこの一万二千六百四十一円の中には二つの問題があると思います。もしこれが平均賃金だとすると、公務員その他のこれよりずつと低い平均賃金のものに対しては、当然政府は考慮しなければならない問題である。これが一つ。実際はこんなに平均賃金は高くないので、むしろ公務員が九千円前後のベースのものであるにかかわらず一万二千六百四十一円というような平均賃金を出すとすれば、それに基く源泉課税や所得税の方へ税金の面でしわ寄せされて来ると思うわけです。ですからもしこの平均賃金がこんなにいい賃金だということになつて、実質は平均賃金一万二千六百四十一円というものにはとうてい及ばないことになれば、これで計算した勤労所得に対する課税は、勤労所得者に対しては非常な重圧になつて来るというように言わざるを得ませんし、またこれが非常に正確な平均賃金だとすれば、これ以下の公務員その他のものに対しては、当然考慮しなければならないというように私は考えるわけです。その点についてどうですか。
  113. 周東英雄

    周東国務大臣 先ほど答弁をいたしましたのは、勤労所得は中を業態別にわけている。だから公務員関係については、その所得は予算に現われた賃金関係にかけて出してあるし、それから工場労働者については、その中にわけてあるかもしれませんが、平均賃金にかけてそれが寄せ合つて出してあるのであります。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 少くとも公務員なんかに比べるとあまりよ過ぎるし、またわれわれ常識的に考えて、平均一万二千六百四十一円が、全産業の労働者の平均賃金だということになればよ過ぎるから、実際これ以下の人があるのに、一万二千六百四十一円平均と数えられるとすれば、源泉課税が非常に重圧になつて来る。また実際あなた方の計算のように一万二千六百四十一円とすれば、少くともこれよりもずつと低い公務員その他のものについては、賃金を上げてやる対策を講じてやらなければならないという意味で、平均一万二千六百四十一円と、昨年度より千円高の平均賃金は相当問題になる数字であると思いますが、これに対してどういうふうにお考えになつているかということを伺つているのです。
  115. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 これは先ほど申し上げた通りでございますが、一万二千六百四十一円というのは全産業の平均でありますが、中について見ますれば、公務員ばかりでなくて産業別によりまして、いろいろ人員の構成も違いますから、平均が高くなるものも低くなるものもあるわけです。全体は一万二千六百四十一円でありますが、今具体的に問題になつておりますゴムの関係を申しますと、二十七年度では平均が一万一千五百六十八円になるというふうに見込んでいるわけであります。いわゆる公務員の給與ベースと称せられておりますものは、基本的な給與だけの合計でありますが、その他のいろいろな超過勤務手当とか、特殊勤務手当とかいうような手当、あるいは年末の手当等が出るわけです。そういうものを全部こめたものがここに言う給與の数字になるわけでありますが、普通に言われているベースの数字とは、総体の数字をあげるわけですから、やや多い数字が実際上予算に基いて計算すると出て来るわけであります。なお国民所得によつて源泉所得の課税をして行くとかいうようなことは全然ないわけであります。もちろん源泉所得税は税法に基いてとつて行くわけでありますから、御心配のようなことはないと思います。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 大蔵大臣は国民所得を割にして何割の税金、何割の防衛負担金というものを出しますから、国民所得は重要なものでありまして、あなたの考えのようにいいかげんなものではないと思います。  その次に問題になるのは利子所得でこれで見ますと家賃、地代の値上げ率を予想して推計したということでありますが、家賃、地代はどのように値上げをする予定ですか。これは三百億くらいふえております。
  117. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 この個人賃貸利子所得の増加率が二割五分ということで、他の所得に比較して多いわけでありますが、内訳といたしましては、家賃、地代の値上げ率の問題につきましては、個々の内訳の数字でごらんになりますとわかるように、ほとんど値上りを見ていないわけであります。ただ家賃等につきましては、家屋の増加等に基きまして、そういうような関係で増加する分を見てあります。ここで大きな増加になつているのは利子所得の増加でありますが、これは個人の預貯金等の利子収入が増加いたしますに伴つてふえて来る、この分を見積つたのであります。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 しかしあなたの方の説明には、家賃地代の値上げ率を予想してと書いてありますが、これは全然ないのですか。
  119. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 説明の数字がやや適切を欠いておるかとも思いますが、二十五年度と二十六年度におきましては、いろいろ公定家賃関係制限の撤廃、その他あらゆる影響がありまして、実際におきましても全体におきましてやや値上げが行われましたので、その要素を見込みましたわけでありますが、二十六年度と二十七年度の間におきましては、値上げの関係による増加というものはほとんど見込んでいないわけであります。
  120. 林百郎

    ○林(百)委員 農業所得が五百億ふえておるのはどういうわけなのです。五百億というと二十六年度と二十七年度と比べまして大体六%になつております。しかし米価は大体三%しか二十七年度は二十六年度より上つていない。これも何か特別な所得を見込んだのですか。
  121. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 農業所得につきましては、大体ここに掲げてあります計算方法は、二十五年度におきまする農業所得が過去の実績によりましてはつきりして参りましたので、それを基礎にして、それに対して農業の生産額、並びに農業物価というものをかけあわせて出て来たわけであります。お話の米価以外に、やみ物価の要素も一応織り込んでございます。それから主食以外の副食物の自然増率等も計算してこういう数字が出ております。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 やみというものは捕捉できないのがやみですが、大体どのくらいやみでもうけておるというつかみ方をしたのですか。
  123. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 農家の主食の関係につきましての供出、あるいは自家消費されたもの、その他にやみというものをある程度みる必要があるわけでありますが、これにつきましては、もちろんやみというものでありますから、正確な数字を統計的にとらえるということはできないわけでありますが、二十五年度につきまして、ある程度いろいろの間接的な資料を用いまして推計したのがありまして、大体一割強程度のものを総体の中でやみと見込んでおるわけであります。大体現在ではその状況はつきりいたしませんので、その割合を用いて推計しておるわけであります。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 農家にはやみまで計算して所得に入れておる。金融業は昨年と今年と全然動きがかわりない、五十億、これはどういうわけですか。銀行は昨年よりもうけがないというわけですか。非常にあまい見方だと思いますが……。
  125. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ここに金融業として掲げてありますのは、個人業種、所得の内訳として掲げてあるわけでありまして、すなわち個人の金貸しというようなものがここに入つて来るわけであります。銀行の所得は下から三行目にございます法人所得、この中に含まれて入つておるわけでありまして、当然その収益の状況によつてここに含まれて計上されてあるわけであります。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとことにやみ金融の個人になればなるほど、その率はますます高くなると思うのです。ところがそういうものは全然やみも何もなくて正確に去年通りで、百姓だけがやみだということでは、いかにも国民所得の計算の仕方がへんぱで、勤労者だとか農民には不当な所得を計算し、金融業者あるいはそのほかの業者には非常に甘い見方、こういうふうに非常に階級的な見方をしておると言わざるを得ないと思うのであります。これについては安本長官にいずれまた機会を改めて聞きたいと思いますが、今日は委員長が大分急いでおられるようですから、私はこれで打切ります。
  127. 前田正男

    前田委員長 次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十二分散会