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1952-02-14 第13回国会 衆議院 経済安定委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十四日(木曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 志田 義信君 理事 有田 喜一君       岩川 與助君    圖司 安正君       奈良 治二君    福井  勇君       福田 喜東君    細田 榮藏君       苫米地英俊君    笹山茂太郎君       土井 直作君    林  百郎君  出席政府委員         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         経済安定政務次         官       福田 篤泰君         経済安定事務官         (総裁官房長) 平井富三郎君         経済安定事務官         (貿易局長)  板垣  修君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         参  考  人         (興国人絹パル         プ株式会社社         長)      金井 滋直君         参  考  人         (千代田銀行頭         取)     千金良宗三郎君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      二見貴知雄君         専  門  員 円地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 二月十四日  委員横田甚太郎君辞任につき、その補欠として  林百郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  貿易計画に関する件  資金計画外貨予算並びに金融政策に関する件     —————————————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  それでは貿易計画に関する件について、その調査を進めます。まず政府当局よりその説明を聴取いたしたいと存じます。板垣政府委員
  3. 板垣修

    板垣政府委員 お手元に御配付いたしました資料に基きまして、貿易関係説明をいたします。  まず第一表をごらん願いますと、ここに「年度別国際収支実績及び見透表」というのがございます。二十五年度実績及び二十六年度見通し、それから来年度見通しをここに並べてございます。この表を見まして、まずわかりますことは、第一に、二十五年度と二十六年度を比較してみますと、国際収支規模が飛躍的に増大しておるということでございます。合計の欄をごらん願いますと、二十五年度におきましては受取りにおいて十三億ドル支拂いにおいて十億ドルという規模でありましたのが、二十六年度になりますと二十四億ドルと十八億ドルということになりまして、ほとんど倍に近い大きな規模なつておるのであります。これは言うまでもなく朝鮮動乱影響でありまして、まず二十六年度受取面から見ますと、特需及び貿易外というものが非常に大きくなつております。すなわち二十六年度におきましては、特需が四億ドル、二十五年度は半年分しかございませんので一億八千八百万ドル、それから貿易外を見ましても、総計で一億ドルちよつと、それに対しまして六億四千六百万ドルと、非常に大きく貿易外收入があるのであります。それからもう一つ目立ちますことは、ドル輸出の方を見てみますと、二十五年度では三億七千百万ドル、それから二十六年度では一億九千七百万ドルと少し減つておることであります。ところがポンド地域オープンアカウント地域におきましては、輸出が非常にふえておるわけであります。  それから支拂いの面を見てみますと、輸入が非常に大きくなつております。二十五年度には総額で九億六千二百万ドル輸入に対しまして、二十六年度は十六億ドルという輸入なつております。それからその次の二十六年度と二十七年度を比較してみますと、もちろん二十七年度は完全な見通し数字でございますが、これではあまり伸びが期待できないということが出ておるわけであります。この原因といたしましては、第一には、輸出が二十六年度よりそう大きくは伸びないだろう、海外の有効需要などの関係もありまして、そう大きくは伸びないということが考えられることが一つであります。それから特需も、大体ここでは従来通りある見通しでありますが、しかしこれはまず減少傾向であるというように見るのが安全であります。本年の四億ドルに対しまして、三億三千万ドルだけを見込んでおります。それから貿易外につきましても、本年度はいろいろな原因で異常な数字を示したのでありますが、来年度はやはり減るということになります。この貿易外数字が多少減るということ、その大きな原因といたしましては、対日援助が二十七年度からは完全になくなるということが一つ原因であります。二十六年度は、昨年の六月限りで対日援助は打切られたのでありますが、半年分はございました。来年度はこれが全然なくなるわけでございます。もう一つ特別預金が今年の一月から廃止になりまして、この方の日本におります外人SPS関係——外人用商品を扱つておりますSPS関係が、米国あたりの取寄せ外貨の送金がなくなるわけであります。従いましてこの分の收入が減るということになりまして、貿易外も減るのであります。  それから輸入におきましても、二十七年度におきましては、総額で二十一億ドル輸入を見ておりまして、本年度よりはもちろん伸びますけれども、そう大きな伸びはない。電力とか石炭、そういう方面の制約がございますので、大体この程度輸入を確保すれば、来年度生産を続けるのに十分ではないかというふうに考えるわけであります。従いまして二十六年度、二十七年度は、二十五年度、二十六年度に参りましたほど大きくは伸びないというふうに見通しておるのであります。  それから一番最後の欄に書いてありますバランスの関係——国際収支適合関係を見ますと、二十五年度におきましては総額におきまして二億九千二百万ドル受取超過——プラスなつております。しかしこれをしさいに見ますと、対日援助輸入額というのが一番下に書いてありますが、対日援助輸入額が二億九千二百万ドルありますが、これ以外に一応日本で立てかえて、あとから対日援助分としてアメリカからもどしてもらう分があるわけでありますが、それは貿易外の中に入つております。それがどれくらいあるかと申しますと、二十五年度において六千九百万ドルくらいあります。従いましてこの一億九千二百万ドルと六千九百万ドルを足しました三億六千百万ドルというものが、二十五年度の対日援助総額になります。従いましてもしこれを全然自力でまかなうという勘定にいたしますと、二十五年度は全体としてやはりマイナスといえるわけであります。それから二十六年度を見ますと、対日援助分が、下に一億二千四百万ドルとありますが、ガリオア立てかえ分の返却が一億二千四百万ドル、同じ金額でございます。従つてこの合計二億四千八百万ドルが二十六年度の対日援助額の推定でございます。二十六年度はこれを差引きましても、全体としてプラスということがいえるのでありまして、二十六年度において初めて自力国際収支適合達成したということがいえると思うのであります。しかしながら二十七年度になりますと、対日援助が全然なくなりますので、全体としましては一番下の欄にありますように、九千七百万ドルの受取り超過見込みでございますけれども、これを通貨別に見ますと、ドルではどうしても八千四百万ドルばかりのマイナスになるのではないかというふうにいえるのでありまして、この傾向は今後も多少とも続くのではないか。従つて全体としては国際収支適合しますけれどもドルの方はやはり不足がちの傾向をたどるのではないかというふうに想像されるのであります。それから次の第二表に移りまして、第二表に「年度別商品群別輸出実績及び見透表」というのがございます。ここで御注意願いたいのは、今の国際収支実績及び見透表の方は、何といいますか、現金ベースでやつておるわけであります。しかしながらこの貿易計画の方の二十五年度実績の方は、貨物到着ベースなつておりますので、二十五年度実績合計九億六千三百万と、国際収支の方の実績の方との数字が合いません。これは国際収支の方は現金ベース勘定しておりますし、それから輸出輸入の方の実績貨物到着の方で行つておりますので、数字ちよつと合わないのであります。この商品群別を見ますると、ごらんになればわかりますが、やはり輸出大宗は、繊維類金属及び同製品、それから機械類、この三つが大体輸出大宗を占めておりまして、これは実績におきましても、二十六年度、二十七年度見通しにおきましても、この大勢はかわつていないのであります。繊維類を見ますると、二十五年度四億六千五百万ドル輸出なつておりまして、全体の比率は四八%、それが二十六年度見通しにおきまして六億二千五百万ドル、これは比率は四五%、少し二十五年度より落ちましたけれども、やはり大きな数字を占めております。それから二十七年度は六億四千六百万ドル、これは四〇%という比率になります。それから金属及び同製品は、二十五年度実績におきまして一億八千八百万ドル、この比率は一九%になります。二十六年度におきましては三億二百万ドル、二二%、少し増加しております。それから二十七年度見通しにおきましては三億一千二百万ドル、二〇%、それから次の機械類でありますが、二十五年度はあまり大きな金額ではありませんが八千二百万ドル、八%を占めております。三十六年度見通しにおきましては一億二千五百万ドル、九%、二十七年度見通しにおきましては一億四千万ドル、一五%、こういう数字を占めております。この三つが大体大きな品目でありまして、この傾向は今後もかわらないと思うのであります。総額におきまして二十六年度見通し十三億九千万ドル、約十四億ドル輸出見込みであります。大体二十六年度の当初計画が十三億四千四百万ドルでありますから、それをちよつと上まわる程度輸出実績を確保し得るのではないかというふうに想定しておるのであります。来年度は少しふえまして十六億ドルばかりの輸出達成できはせぬかというふうに私ども想定しております。それから二十七年度の下から二番目に一千八百万ドル輸出物資邦船積取り分というのがございます。これは二十五年度、二十六年度もあるわけでありますが、これは一般の貨物統計の中に溶け込んでおりましてわけられませんので、二十五年度と六年度には書いてありませんが、二十七年度は、計画といたしまして千八百万ドルぐらいが、いわゆる邦船積取り金額になるのではないかというふうに想定いたしまして、参考のために数字があげてあるわけでございます。この数字は大体輸出貨物の三〇%くらいを邦船で積み取るという想定でございます。これは商品群別統計でございますが、今度はそのうちの主要商品別品目が一枚めくりまして第六表にございます。これを先に御説明申し上げますと、ここに大体大きな品目を掲げたのでありますが、綿糸以下十数品目にわかれておるわけであります。これを見ますと、まず第一に気がつきますことは、二十五年度と二十六年度を比較してみますと、人絹類セメント鉄鋼など特殊のものを除きますと、数量的にはあまりふえていないのであります。しかし金額では非常に増加しておる。これはやはり国際物価関係でありまして、二十五年度から二十六年度にかけまして、朝鮮動乱影響を受けまして、非常に輸出価格が上りましたために、数量ではそうふえていない、あるいは減つておるものもあるのでありますが、受取り金額としては非常にふえたということがわかるのであります。それから二十六年度と二十七年度を見てみますると、数量はほぼ同じくらいか、あるいは増加しておるのでありますが、国際価格が二十六年度に比べましてずつと下落の傾向にありますので、そのために金額としてはそうふえない、少し減つておるものもあるという状況なつておるのであります。二十六年度見通しを見ますると、当初の計画と比較いたしまして、計画よりもずつと上まわつて輸出ができるものは、綿糸人絹糸及びスフ糸人絹織物及びスフ織物セメント鉄鋼アルミ、こういうものが、計画よりもずつと上まわつた数字なつております。しかしながら一方計画よりもずつと下まわつたものもありまして、綿布であるとか生糸絹織物類は、予定の計画通り達成ちよつとできない状況にあると考えられるのであります。それから二十七年度輸出見通しでありまするが、大体私どもといたしましては、繊維製品類現状程度生糸絹織物は少し伸ばしたいと考えておりますが、その他の繊維製品は、大体現状程度ではないかという想定のもとに見積りを出しておるのであります。綿布ごらんになりますと、二十六年度が十億九千万ヤールであります。それに対しまして二十七年度は十二億ヤール、大体この辺が限度ではないかというふうに考えております。生糸は二十六年度当初計画より大分下つたのでありますが、二十六年度に七万俵ばかり達成するのではないかという見通しであります。これに対しまして二十七年度は十万七千俵という想定をいたしております。これ以上生糸を出していというふうに考えておるのでありますが、この辺が限度ではないかというふうに想定されるのであります。これに対しまして、鉄鋼あるいはアルミ機械、こういうものにつきましては、われわれは二十七年度においては、二十六年度よりずつと上まわつた数字を出したいというふうに期待をしておるのであります。それから元にもどりまして第三表、ここに年度別地域別通貨別輸出実績及び見通しの表がございます。これをごらん願いますと、まず第一に、ドル地域でありますが、ドル地域においては、総輸出数量金額はかわつていないということがはつきりわかるのでありまして、二十五年度実績が三億一千三百万ドル、三十六年度見通しは、それに対して下まわつておりまして、二億九千七百万ドル、これに対して二十七年度見通しは、三億六千四百万ドル想定いたしておりますが、これだけの数額を達するには、よほどドルドライブにつきましていろいろな施策を講じなきやならぬというふうに考えます。日米経済協力関係ども多少見込んで、三億六千四百万ドルという数字を出しておりますが、今までのところ、私どもとしては、これが精一ぱい数字じやないかというふうに考えられるのであります。これに反しまして、ポンド地域オープンアカウント地域の方は、非常な勢いで輸出がふえる傾向にあると思うのであります。ポンド地域は、二十五年度実績が三億三百万ドル、二十六年度見通しは、ほとんど倍の六億六千二百万ドルという額に達する形勢にあります。二十七年度におきましても現状のままで置けば、やはり七億三十万ドルくらいポンド輸出伸びるんじやないかというふうに考えるのであります。オープンアカウント地域においても、ポンド地域ほどではありませんけれども漸次増加傾向にありまして、二十五年度実績が二億四千六百万ドル、これに対しまして二十六年度見通しは、四億三千二百万ドル、二十七年度見通しは、五億一千七百万ドル程度まで行くというふうに考えておるわけであります。ここに今後の貿易政策のいろいろな問題が出て参るわけであります。一面にはドル輸出増進のため、ドルドライブ施策をとらなければならぬということが出て参ります。一方ポンドにつきましては、ポンド貨の累積の問題に関連いたしまして、どうするかという問題があるのでありますが、現在のところ、輸出の直接調整というふうな、国内産業に大きな影響のあるような政策はとらない、そうしてポンド地域からの輸入を促進するという方向に施策の重点がとられておるわけでございます。  それからその次の第四表でございますが、これは輸入の方でございます。年度別商品群別輸入実績及び見通しでございますが、この表の中には、国際収支の表と違いますのは、対日援助分が入つたものも入つておりますので、国際収支の表の輸入計画よりずつと上の数字なつております。対日援助分を加えた数字なつておるわけであります。輸入の方の大宗は、御承知のごとく食糧関係繊維関係、この二つ輸入大宗でございまして、食糧関係を見ますると二十五年度実績が三億五千五百万でございまして、全体の二八%でございます。二十六年度は五億二千六百万とふえておりまして、二九%。二十七年度は五億八千二百万、三八%の想定をいたしております。繊維類、これは主として綿花羊毛でありますが、二十五年度実績におきまして五億五千五百万、全体の四四%という大きな数字を占めておるのであります。従いまして二十五年度実績におきまして、この食糧関係繊維関係と合せまして七二%という、ほとんど輸入大半を占めておることがわかるのであります。二十六年度見通しにおきましても、繊維類食糧関係、合せまして六六%、二十七年度におきましては六一%ということになつておりまして、わが国の輸入貿易関係上、この二つが大体大半を占めておるということがわかるわけであります。二十七年度輸入計画はここにありますように、総額で二十一億ドルということになつておりますが、この算定の基礎は大体来年度電力石炭という、基礎動力資材の方の制約も考えまして、現在安本で推定しておりまする来年度鉱工業生産指数は、改訂の一四〇という数字を推定いたしておりまするが、大体この一四〇のベース達成し得るに必要な原材料輸入計画ということで、この二十一億ドル計画を立てておるのであります。  今度は輸入の方の主要商品別の表が第七表にございます。これはおもな点につきましては、昨日も外貨予算関係で御説明申し上げましたが、二十六年の輸入計画は大体達成しておるのでありまして、まず最初の米、小麦、大麦、この主食関係を見ますると、二十六年度合計の欄に、三百五十二万トンという数字が出ております。これは三百二十万トンの計画に対しまして上まわる数字で、食糧輸入は非常に順調でございます。三十七年度にはこの三つを合せまして三百五十一万トンの計画を今立てておるわけでございます。砂糖につきましても、二十六年度五十一万トンばかりの輸入がございまして、計画よりは少し下まわりましたが、需給下には全然心配ない数字であります。来年度砂糖につきまして六十万トンばかりの計画をいたしております。大豆につきましては、三十三万トンばかり入りましたので、大体計画通りつております。これは昨年の一—三の予算でうんと入り過ぎたのであります。その後買付は進んでないのでありますが、年間需給量といたしましては、むしろ過剰ぎみの状態となつておるのであります。来年度は三十五万トンの輸入計画を立てておるのであります。生ゴムは五万五千トン、これに対しまして二十七年度計画が五万七千トン。綿花が百六十二万俵の到着見込みでございます。これに対しまして来年度は百八十三万俵の計画を立てたのであります。羊毛が一億ポンド、これに対しまして来年度は七千二百万ポンドという計画を立てております。それから燐鉱石百二十万トン、これに対しまして二十七年度は百十四万トン。カリ二十八万トン、これに対しまして来年度十万トン。塩は百八十六万トン、これは先ほども申しましたように、非常に記録的な入荷であります。これに対しまして来年度は百七十万トン。鉄鉱石が三百七十万トンの本年度見込みに対しまして、来年度は五百四十七万トン。これは本年度日米経済協力に伴う鉄鋼需要増加ということを見込みまして、来年は相当大きな計画を立てたのであります。石炭が二百十八万トン、これに対しまして来年度が二百九十万トン。石油が五百二十万キロ、これに対しまして来年度が四百二十万キロ、この数字が来年度落ちまするのは、この石油の本年度及び二十五年度実績石油製品を含んでおるのであります。ところが二十七年度計画は原油だけであります。従つて石油製品も入れますればもつと大きな数字になるわけであります。それからパルプは九万二千トンに対しまして、来年度計画は五万トンということになつて行くわけでございます。  第五表にもどりまして地域別輸入関係の表があります。これは先ほど申しました輸出との関連で見るべき数字でございます。先ほど申しましたようにドル地域輸入超過ということになつております。ドル地域に対して輸出は不振でありますが、ドル地域からの輸入は非常に大きいというわけであります。二十五年度実績が七億ドルに対しまして、二十六年度は十億ドル、二十七年度も大体同じく十億ドルという程度輸入がある。これに対しましてポンド地域の方は輸出が非常に伸びておるにかかわらず、輸入は不振であるというわけであります。二十五年度実績は三億一千万、二十六年度は四億二千万、二十七年度は六億五千六百万という数字を見込んでおります。オープンアカウント地域輸出に比較いたしますと輸入不振でありまして、二十六年度見通しは二億九千万、二十七年度は三億八千万。しかもこのポンド地域オープンアカウント地域からの来年の輸入見通し六億五千万、三億八千万という見通しは、最大限の輸入可能見込みじやないかと考えておるのであります。  それから次の第八表に、御参考までに二十五年、二十六年の月別輸出入実績表を掲げてございます。輸入の中には先ほど申しましたように商業勘定米国援助の分がありまして、商業勘定というのは日本の力で入れておるわけでありまして、米国援助の分とわけてあります。米国援助輸入が二十六年度においてもまだ相当あるということがこれによつてわかります。しかしながらこれは昨年の六月まで打切られたのでありまして、七月以後入つておるのは、米国予算といたしましては前年度分の予算分がその後入つておるというわけであります。  それからその次の第九表は、特需契約高及び支拂い高の表でございますが、月別に出しております。しかしながら特需司令部から二週間ごとに発表になつておりますので、正確に七月、八月という月分のものでありません。少しずれがあるのでありますが、大体のところを見て月別にわけて出した数字でございます。これによりますと現在までの総額におきまして、物資と役務と合せまして五億四千百万ドルという收入なつておるのであります。これを年間で見ますと、まず事変後の一箇年を見てみますと、すなわち昭和二十五年七月から二十六年六月まで、この合計が三億二千八百万ドルなつております。それから二十六年の暦年の一箇年を見ますと、三億五千九百万で、少しふえておりますが、大体、年間三億から三億五、六千万円程度特需収入が現在のところあるということが言えるのであります。この特需統計の以外に、これに載つていなものがあるわけであります。それは昨年度終戰処理費で立てかえまして、あとから特需扱いとしまして現金が入つて来ておるものであります。それは昨年の会計年度におきまして約三千万ドルございます。従いましてそれを加えますと、事変後一箇年の特需収入は、やはり三億五千八百万ということになりまして、この二十六年の暦年から見ましても、三億五、六千万、事変後一箇年で三億六千万の特需収入があるというふうに考えられるのであります。ただこれは契約高でありまして、支拂いの方は時期的に遅れておりますので、次の欄でごらんになりますように数字は少し下まわつておりますが、年間現金べースといたしますれば、大体それくらいの数字と見てさしつかえないじやないかと思います。ただ特需の内容でありますが、これには実はいろいろなものが入つておるのでありまして、純粋の朝鮮関係特需以外に、ECA資金によつて東南アジア諸国の開発のために買いつけたようなものも入つておりますし、それから駐屯軍ドル洗い労務費を除いた物品費を拂つたようなものも、この特需契約高には入つておるわけであります。従いまして特需といいましても、非常に範囲は広い。最近いわれておりまするが、いわゆる新特需というようなものも、やはりこの中に入つておるようであります。非常に特需というものの範囲は広いわけでございます。今後この特需の収入がどうなるかという点が、来年度以降の国際収支見通しにつきまして、私どもいろいろ苦心しておるわけでありまするが、いつにかかつて朝鮮の休職交渉、あるいはさらに大きくは国際政治情勢などに左右されるわけでありまして、何とも私どもとしては想定しにくいのであります。かりに休戰交渉ができましても、おそらく私どもの想像では、当分の間国連軍は朝鮮におるんじやないか、そう想定いたしますと、そう大きくは変化はないというふうに私ども見通しております。あるいは直接戰闘用資材に出ておりまする実績を見てみますると、四千万ドルばかり事変後一箇年で出ておりまするが、こういうものはなくなるかもしれません。またそれに関連しまして、海上の運送費であるとか、あるいは荷役の費用とか、こういうようなものもなくなるかもしれません。しかし大体においてそう大きな変化はないのじやないかというふうに想定しております。しかしもし完全に朝鮮の休戰協定が政治問題までも解決いたしまして、国連軍が全部撤退しますということになりますれば、おそらくこの特需というものは相当減少する。一応形式的には全部なくなるということは考えられるわけでありますが、しかしその際にはかわりまして、朝鮮の復興建設のための特需的なものが、おそらく相当日本に発注して来るということも考えられます。それからさらに今後はECA、これが発展しまして、今はMSAになつておりまするが、これが出しまする韓国ないし東南アジアに対する援助資金、軍事経済援助、こういうふうなものからの日本への発注というものも相当期待できまするので、多少減りましても、特需的な収入はやはり今後相当続くのじやないかというふうに想定しておるのでございます。それから次にわが国の現行通商協定一覧表というのがございます。実はこの通商協定の交渉ないしその運営というような点につきましては、外務省及び通産省の方で実質的には当つておりますので、私どもとしてあまり詳しく御説明する地位にはないのでありまするが、大体のことを申し上げますると、現在まで各国と通商協定を結んでおる数は二十四ございます。そうしてそのうちでスターリング・キヤツシユになつておりまするのが三つ、それからドル建のオープン・アカウントになつておりますのが十二、それからドル・キャッシュの協定になつておりますものが九つ、全体で二十四ございます。これの有効期間は講和條約発効までということになつておりますので、そろそろ講和條約発効後問題につきまして交渉を開始中でございまして、できますれば、この際そういうものの内容まで改訂を加えまして、交渉しようという心組みでおりまするが、間に合わない場合にはただ一応現行協定の期間だけを延長する。そうして講和條約発効後、ゆつくり各国と協定について交渉をいたしまして、所要の通商協定を結ぶということになつて、今各国といろいろ交渉準備中でございます。しかし詳細につきましては、今申し上げましたように、通産省あたりから御説明するのが適当だと存じますから、私からの説明は省略させていただきたいと存じます。一応これをもつて説明といたします。
  4. 前田正男

    前田委員長 これにて本件に関する説明は終りました。引続き質疑があれば、これを許します。
  5. 志田義信

    ○志田委員 御説明をいただきましたが、その三、四の点についてお尋ねを申し上げたいと思います。一体日米経済協力を相当に織り込んだ貿易計画、ことに二十七年度においてはこれを織り込んでおるというのでありまするが、日米経済協力資金は、大体どういうふうにしてまかなうのでありますか。たとえば輸出によつて入手した資金であるのか、それともクレジットでやるつもりであるか、これもひとつきようは大臣お見えになりませんので、安本政務次官が御出席のようでありますから、お尋む申し上げたいと思います。
  6. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 本年度及び来年度国際収支実績及び見通しにおきまして、いわゆる日米経済協力一つの相手になりまする特需收入というものが、相当大きなウエートを占めておるわけであります。この特需の製造をしまする資金につきまして、一般の金融操作によつて従来も行つて参つたわけであります。このために特にクレジットということもさしあたり考えておりません。ただ日米経済協力が今後進んで参りまして、日本の工場の整備を行うというような段階になりますれば、それに関連してのクレジットという問題は起つて来ると思いまするが、ただいまの特需の調達状況におきましては、一般の金融操作によつてこれを行つております。
  7. 志田義信

    ○志田委員 日本の工場整備を行うという意味におきまして、今までの遊休施設工場その他買収工場に対する調査団も来朝しておるようであります。そこでお話の工場整備を行う段階に至りますと、いろいろと設備資金及びこれに関連する運転資金、こういうものが必要になつて来ることは論ずるまでもないのでありまするが、そのクレジットは一体どのくらい考えておられるか、その点を伺いたい。
  8. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 クレジットは結局今後アメリカから要請し、またこちらとしてもそれに応じ得る物資の種類及びその数量によつてきまつて来るわけであります。あらかじめこれに対してこの程度のクレジットは必要であるということを、個々の業種別に当ることはむずかしい問題ではないかと考えておるわけであります。もちろん日本側といたしましても、今後の経済規模の拡大という点から、開発銀行その他の運用に当りましても、それらの点を十分考慮に入れて運営をして参る予定であります。従いまして今後の日米経済協力の進展の度合いに伴いまして、従つてまた工場整備の規模等によりまして、金額等が具体化して来るのであります。あらかじめこの産業にこういうふうにというようには、なかなか算定しにくい点を御了承を願いたいと思うのであります。一般的に申し上げまして、現在の日本の遊休施設をフルに稼働いたしますためには、どうしても電力が根幹になるわけであります。電力及びその他今後の日米経済協力の進展に伴い、相当大規模の整備を要するものにつきましての資金というものについては問題になるのではないか、かように考えております。
  9. 志田義信

    ○志田委員 それではクレジットは遊休設備の稼働量いかんによるというお答えでありますが、ひとつお尋ね申し上げたいのは、遊休設備活用の構想について、何かお考えになつておられるだろうと思うので、その構想をひとつこの機会にお述べ願いたい。
  10. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 電気の開発計画に関連いたしまして、日本の現在の遊休施設と申しますか、あるいは未稼働施設と申し上げた方がいいかと思いますが、それにある程度の補修整備というものを行いました場合におきまする生産の予想といたしましては、九—十一年に対しましておおむね二〇〇%程度生産指数に達するのではないか。現在が一四〇程度であります。約三割から三割五分程度の上昇ができるのではないかという予想をいたしております。
  11. 志田義信

    ○志田委員 遊休設備を活用して、そうして原料を輸入する資金にする、そういう場合には、資金を原料品化することになるかと思うのでありまするが、これは輸出によらないで入手した、たとえばこういう遊休設備その他のクレジットに重点を置かなくとも、逆に日本としては今現在持つておるこういう遊休設備その他を資本と見て、これを輸出して原料品の生産を開発するというようなことについては、政府はどういうふうな考えを持つておられるか。最近鉄鉱石の問題なんかも出ておりますが、それについて……。
  12. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 東南アジア等の開発にあたりまして、日本の遊休未稼働設備を移設いたす、こういう方向ももちろん考えられるわけでございますが、御承知のように設備の移設につきましては、これは一旦解体いたしまして、また現地において建設する、こういうことになりますので、多くの場合においては新しく施設をつくる場合が多いのではなかろうか、かように考えております。今までの鉄鉱石の開発に当りましても、こちらから輸出銀行等の金融によりまして、大体新しい施設を向うにつくる、こういう例が多いようであります。
  13. 志田義信

    ○志田委員 経済自立計画は、申し上げるまでもなくまだ途上にあるのでありまするが、かような際に、相当巨額の輸入をまかなうほどの輸出がほんとうに可能であると思つて計画を立てておられるかどうか。先ほどの御説明によりましても、今年は貿易の伸びというものは昨年に比べまして非常に少いという説明もあるのでありますが、その点につきましてはいかがでありましよう。
  14. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 全体的に申しましての輸出伸びは、昨年度に対しまして非常に飛躍的な増加を示しておるわけであります。ただドル圏に対しまする通常の貿易額が、昨年度に比して大した伸びがなかつたということでございまして、これは先ほど貿易局長から御説明申し上げましたように、ドル圏からの輸入というものが、大体十一億ないし十二億ドルに達しました。それに対しまする通常の輸出が三億ドルから三億五千万ドル程度でございます。その穴をその他の收入によつて埋めておるわけであります。全体としての輸出というものは、国際収支から見ました、いわゆる通常の輸出以外の外貨収入のもとになりますものを、広く輸出と考えますならば、大体二十七年度において見込んだ程度のものは可能であろう、こういうふうに考えております。
  15. 志田義信

    ○志田委員 輸出計画でいろいろ数字をあげておられまして、拝見いたしましたが、何をどこに輸出するという考えを持つておられるか、あるいは原料はどうして入手するという考えを持つておるのか、それについての御説明ちよつとなかつたように思うのでありますが、従来の状態で推し進めていいのかどうか、二十六年度の状態でいいのかどうか。
  16. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 三十七年度貿易計画の設定にあたりましては、品種別、地域別と申しますか、市場別に、大体現在の趨勢から推しましての可能性を元にしておるわけでございまして、それから推算いたしましたものであります。詳しくは貿易局長から御説明申し上げた方がよろしいかと思います。こちらの希望的な数字でなく、現実の貿易の動きというものを基礎にいたしまして、設定したものであります。
  17. 志田義信

    ○志田委員 そういう場合に、新聞にもいろいろ問題になつておるのですが、国際的にいろいろ稀少物資が出て来ておる。そういう稀少物資に対して、司令部より法的な措置を考慮しているようなことが、十二日の読売新聞等にも大きく報道されておるのでありますが、一体不急な輸入を抑制するということをほんとうに考えておるのでありましようか、その点をひとつ。
  18. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 稀少物資の制限につきましては、政府の考え方といたしまして、アメリカその他の地区から、あるいはアメリカの輸出許可、あるいは国際割当会議の結果割当てられます物資輸入につきましては、それぞれ各国における消費規正の結果出ました輸出余力から、日本に対して配分されるわけであります。従いまして、そういう稀少物資輸入につきましては、これが適正な用途に使用されるように、国内的な措置をとつて参る必要があろうかと考えておる次第であります。従来からニッケル、コバルトその他の稀少物資につきましては、あるいは使用制限、あるいは配給の割当、あるいは為替の許可にあたりましての審査、あるいは貴金属会計からの直接の政府の配給というような、いろいろな形で規正をいたしておるのであります。ただ現在の状況におきましては、その規正の仕方につきまして、日本の基準というものは、各国に比してまだ甘いのじやないか、こういう関係から、司令部からの覚書が出たわけであります。日本側といたしましての方針といたしましては、今申し上げたような点において、考え方としては一致しておるわけです。ただ実施の場合におきまして、私どもといたしましては、日本の産業の実情なり、あるいはその物資を使用しております企業の実情なりを十分考慮いたしまして、効果のある方法をとつて参りたい。一つ物資につきまして、それがアメリカなり、イギリスなりと同じ統制方式をとる必要もないのではなかろうか。日本の実情に即した使用の制限方式をとつて参りたい、かような方針で、今司令部との打合せを続行中であります。さような状況でございます。
  19. 志田義信

    ○志田委員 今打合せ中だというので、政府はこれに対してやはり法的な措置の考えているのじやないかということが、新聞に出ておりますが、たとえばそういう稀少物資のほかに、今までのそういう統制的な方法によつた品目のほかに、パルプ、紙、苛性ソーダ、水銀、鉄、アルミ、ゴム、こういうようなものの消費規正まで考えていると、新聞では報道している。これは事実ですかどうですか。こういうものももし規正するとすれば、国民の需要を削減するということにならないかどうか、削減する場合にはどういうふうにするか、これをひとつ……。
  20. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 そこにあげられました品目は、司令部におきまして、世界的に不足している物資、あるいは特定の地域において不足している物資の例をあげれば、今のような品目であるというこでございます。従いまして紙なり人絹なりにつきまして、今ただちに使用の制限を行うということは考えておりませんし、その辺は個別に物資の事情を説明いたしますれば了解が得られるのではないかというふうに、私ども確信しておる次第であります。それはその物資について統制をすべしという趣旨でなくて、例にあげたものでございます。
  21. 志田義信

    ○志田委員 例をあげられればこういう例もあるのだということで、これは例ですから、そういう物資が一番先にやり玉に上ることは考えられるのであります。そういう場合に、先ほどちよつとお答えを願えなかつたかと思うのでありますが、そういうものの輸入を抑制することによつて、あるいは消費規正を国内でやることによりまして、国民の需要を削減するのでありますから、生活水準の低下を招くのではないかと思いますけれども、その点についてはいかがですか。
  22. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 たとえばお話の紙なり人絹なりについて、消費規正を行う意思は持つておりません。ただ一般的に申しまして、紙等につきましても、これをなるべく消費を節約して参るということは必要かと存じますが、これを法的に消費の統制をいたすというようなことは考えておりません。大体世界的に不足しておる物資、稀少物資というものは、原料的なものが大部分でございます。直接消費物資に関しまして繊維でありますとか、衣料でありますとか、紙でありますとか、そういうようなものにつきまして、消費規正をすることは全然考えておりません。
  23. 志田義信

    ○志田委員 たいへんけつこうでございます。法的に消費規正はやらない、国民の自制にまつて節約を期待するのだ、こういうお含みのようでありますから、私はその御答弁に対しては、まことに同感であります。  ところで原料は今世界的の買付競争が行われておる。世界軍拡のあらしに乗つて、原料の世界的な買付競争が激化しておる。先行きの値上りと、同時に不足が予想されるのでありますが、そういう場合に原料を特に日本に割愛するということに対して、経済自立計画に必要とする原料、東南アジア開発のために必要とする原料に対しては、アメリカなり何なりに対しまして、十分な打合せができておつて、これをなさる考えであるかどうか、それをひとつお尋ね申し上げたいと思います。
  24. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 今後の世界情勢の進展に伴いまして、現在問題になつておる物資以外のものにつきましても、いろいろな問題が起り得るという可能性はあると思うのであります。さしあたり現状におきましては、いわゆる稀少物資と称されておる物資については、あるいはアメリカの輸出制限、あるいは国際割当会議の割当というものを通じて、入手いたしておるのであります。その他の物資につきまして、ただいまのところ入手について特別の措置を講じて参るという必要性は起つておりません。大体その計画見込みましたものにつきましては、現在の推移から見て、十分入手し得ると考えている次第であります。なお世界的に不足しておる原料物資につきましては、あるいは東南アジア地区におきまする開発に協力し、それらからの入手量を増大して参る、こういう点につきましても、十分今後施策を研究して参りたい、かように考えております。
  25. 志田義信

    ○志田委員 先ほどの御説明によりましても、電力その他の基本的な産業が、現在の状態を多少上まわるにしましても、ことに電力事情等で生産が予期通り達成できるかどうかという心配が、やはり安本にもあるというふうに今伺つたのでありますが、そういう場合に輸出や、あるいは内需の調整、あるいは消費節約というようなものをやるようなお考えがあるのかどうか、これもひとつお尋ね申し上げておきたい。
  26. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 電力の割当につきましては、現在各産業あるいは一般の消費に、大体どの程度電力が使用されるであろうかという計画を立てましてさらにそれを産業別に配分をいたしておるわけであります。電力につきましては、一つの統制を実施いたしておるのであります。今後の生産の事情によりまして、特に経済協力その他の推進によりましては、その電力の割当を通じまして、できるだけ輸出量を確保し、その見返りとしての原料を確保すべく努力をいたしますのは当然であります。ただその際に全体の経済バランスとの均衡も十分考慮いたして参りたい、かように考えておる次第であります。たとえば肥料等につきまして、東南アジア地区からの要請は、年間百万トンを越えておる状況であります。それに対します輸出量はそれに遠く及ばない数量であります。しかし肥料に多くの電気を使うということが、各産業に非常な打撃を與えることになりますので、全体のバランスを考慮し、現状程度輸出ということで、計画を立てておる次第であります。電力の需給の調整につきましては、輸出の増進と、それに伴う輸入原料の確保という点も、十分重点を置いて考えますが、同時に全体とのバランスということも考えて参りたい、かように考えております。
  27. 志田義信

    ○志田委員 二十七年度に、二十六年の一四〇の鉱工業生産指数が、未稼動施設を動かすと二〇〇くらいになるというのは、二十七年度に二〇〇になるという意味ですか、それとも二十八年、二十九年とかかつて二〇〇になるという意味ですか。同時に、一体こういうふうな電力がそう期待することがあまりできないという場合におきましては、価格の面におきましても、相当変化が来ると思うのでありますが、価格政策において、物価はどういう影響を受けると考えられるか、それをひとつお尋ねしておきます。
  28. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 ただいま二〇〇と申し上げましたのは、能力として二〇〇程度に達し得る力があるということを申し上げたわけであります。二十七年一度における生産は二十六年度に比し、約一〇%程度の上昇ではないか、かように考えております。従いまして電力の開発に伴つて生産増加して行く、かように考えておる次第であります。従いまして物価の関係においても、非常な無理な生産を行い、経済生産を無視した生産を行つて、コストを上げて参るということは、避けて参りたい、かように考えております。
  29. 志田義信

    ○志田委員 先ほど御説明がありました、朝鮮動乱特需あるいは新特需ドル収入がなくなつた場合に、いろいろ考えなければならぬが、朝鮮の復興等があり、あるいは駐留軍のいろいろな購入物資というものがあるから、あまり少くならぬのじやないかというようなお話でありますが、少くとも朝鮮動乱が終つて平和になるということになりますと、日本経済の構造の上に、好むと好まざるとにかかわらず相当の変化があるように、実は財界方面ではとつているのでありまして、すでにその対策を検討しているのであります。安本におきましてももちろんそういう見通し作業をやつていると思いますが、そういう見通し作業をやつているかどうか。もしやつているとすれば、特需の減少はどのくらいになるか、さつき五割というふうなお考えを漏らしておりましたが、二十七年度における当初見込とどういうふうな関係になるか、それをひとつお尋ねいたします。
  30. 板垣修

    板垣政府委員 今後の情勢を推定してどうかという問題につきましては、一応二十七年度におきましては先ほど申し上げましたように、まだ朝鮮の休戰協定も成立しておりません。たとい成立いたしましても、二十七年度全体といたしましては、そう大きな変化はないという想定で、三億三千万ドルという見込みを立てたのであります。ただしそれ以後の問題につきましては、まつたくわれわれといたしましては想像の域外でございますが、かりに朝鮮の休戰協定が完全に成立して、国連軍が全部あそこから撤退した場合はどうなるかという問題でございます。これに対しましては、今までいつておつた特需というものはなくなつて、それにかわるものが相当期待し得るのじやないか、あるいはとらぬたぬきの皮算用かもしれませんが、相当期待し得る根拠といたしまして、第一に朝鮮の復興特需関係、これは御承知のように朝鮮の戰争が終りますと、国連の朝鮮再建局というものが、あそこの民生救済復興事業をやることになつておりまして、これの予算が昨年度におきまして一億五千万ドルなつております。従いまして、これより下まわる予算はおそらくないだろう。最低でも二億五千万ドル予算でもつてやる。あるいはそれより上になるかもしれない。従つてこの中で相当額——これはまつたく想像でありますが、あるいは一億五千万ドルぐらいは、地区的関係から行きましても、日本特需として落ちるのじやないかというふうに想像できますし、それから元のECA資金による東南アジアの開拓というものも、昨年の実績におきましては千五百万ドル程度でございます。来年度におきましては、日本機械などの価格の引下げとか、そういうふうな方面の努力を拂いますれば、相当額期待し得るのじやないか、最低限に見ましても五千万ドルくらいは期待し得るのじやないかと考えております。そのほか軍事援助などの分も、今後はアメリカの総合安全保障計画が進みますれば、相当日本として期待してもいい根拠があるのじやないかというふうに考えます。この点はちよつと金額としては想像できません。それ以外に日米経済協力というものが進展いたしますと、結局総額において二億五千から三億程度は、やはり来年度におきましても期待していいのじやないかという想定を一応いたしております。しかしこれもほんとうに私どもの腹づもり程度でありまして、一に国際情勢の動きと今後の日米経済協力の折衝いかんにかかつておるわけであります。
  31. 前田正男

    前田委員長 それでは本日の質疑はこの程度にとどめ、この際参考人招致に関する件についてお諮りいたします。ただいま調査を行つております貿易計画に関する件につきまして、江商株式会社常務取締役の高見重義君、日立製作所理事の原口武夫君、第一物産株式会社常務取締役の水上達三君及び日本輸出銀行専務理事の山際正道君、以上四名の方々をそれぞれ参考人としてその出席を求め、参考意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決しました。なお参考人招致に関する手続等につきましては、委員長に御一任を願います。それでは午後一時まで暫時休憩いたします。午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時五十三分開議
  33. 前田正男

    前田委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。資金計画外貨予算並びに金融政策に関する件についてその調査を進めます。この際参考人の各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず御出席をいただき、厚く御礼を申し上げます。ただいま本委員会が行つております国政に関する調査事件のうち、資金計画外貨予算並びに金融政策に関する件につきまして、その調査の愼重を期するため、それぞれの部門の立場から御意見を拝聴いたし、本調査の参考にいたしたいと存じておりますので、参考人各位には、それぞれの立場から十分御意見を御開陳くださいますよう、お願い申し上げる次第であります。それでは参考人より参考意見を聴取いたすのでありますが、各参考人に対する質疑は、まず参考人より参考意見を聴取いたしました後、その都度これをお許しすることといたしたいと存じますが、あらかじめ御了承をお願いいたしたいと存じます。なお各参考人の発言順位につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。それではまず外国為替管理委員長木内信胤君からお願いいたします。木内政府委員
  34. 木内信胤

    ○木内政府委員 私、今日は参考人として自由な意見を申し述べろという話を承つて来たのでありますが、最初に委員長にお伺いしたいのでありますが、私は政府委員でありますので、政府委員参考人として発言はできないことになつているということを、大分前にやはりこういうことがありまして、承つたように思うのであります。確かそうだろうと思いますが、いかがですか。
  35. 前田正男

    前田委員長 お答えいたします。立場は政府委員なつておられるそうでありますが、自分の立場として御意見を述べられることは、さしつかえないそうでございますから、ひとつ自分の立場で参考意見を述べていただきたいと思います。
  36. 木内信胤

    ○木内政府委員 私は政府委員でありますので、もし政府委員参考人として述べてはいけないものといたしますと、私としても法を犯すことになりますから、私は政府委員としてここに申し上げておくことにしていただきまして、但し心持は参考人であるかのごとく申し上げたいと思います。実は資金計画外貨予算並びに金融政策に関する件という題目は伺いましたが、それに関しまして、実はどういう点について意見を申し述べるのか、意見を承つておりません。私は十分に申し上げるつもりではおりますが、政府の役人であるという身分を離れるわけに参りません。どの点を特に説明せよということを承りませんと、民間人が政府のなすことを自由に批評する立場のようなつもりではちよつと申せないと思いますので、最初に若干御質問の要旨を承つてから申し上げたいと思います。
  37. 前田正男

    前田委員長 木内さんに申し上げます。実は外貨予算につきましては、経済安定本部の方からすでに大体において説明を受けております。貿易計画につきましても本日説明を受けたのであります。そこでこの外国貿易、ことに外貨予算、それに伴ういろいろな金融問題、こういつた問題につきましていろいろと御意見がおありでしたら、政府委員の立場もおありでありますが、参考になるようなことを承りたいと思います。こういうのが私たちの願いであります。
  38. 木内信胤

    ○木内政府委員 そういたしますと、外貨予算説明をする責任官庁は安本でありますが、安本の方から御説明があつたものという前提のもとに、政府として今どういう態度をとりつつあるか、その裏に一体どういうことが考えられているのか、あるいは今後向うべき方向はどうであるかという点を主眼にいたしまして、多少感じておりますことを申し上げたいと思います。外貨予算制度を実行いたしましてからすでにまる二年になり、大分なれて参りました。予算というものを組む組み方、それに必要ないろいろな計数の準備、先がどうなるであろうかという予想等は、かなり慣熟して参りましたから、安心な気持が出て来たのであります。かつこれは喜んでいいかと思いますが、私はこの間外国をまわりましたとき、欧州においても、イギリスにおいても、アメリカにおいても、日本の為替管理の運営は非常によろしい、非常にはつきりしているし、私どもが先は大体こうなるであろう——昨年例の有名なる巨大輸入によつて一応外貨は減つて参りましたが、その減つて来る前において、これから減らす予定だぞ、しかしその減る程度はこのくらい、このくらい減つたらそれからまたふえるようになるであろうというようなことを外国の銀行——それらの銀行はわれわれに対する信用を與えておる相手であります。授信者であるところの彼らには、ある程度説明することがいいことでありますので、ある程度説明して来たのですが、そういうことは非常に多とされました。また大体われわれの予言した通りになりました。それらの面からかなり信用を博しておることになつておる。従つて外貨予算の運営というものは、大体において満足すべき状態にあるということを言つていいと思います。その満足すべき状態になつて来たについて、今後それではさらにそれをいいものにする道は何かということを考え得る状態になりました。ことに今のは主として運営面で申したが、運営の基礎になる現実の外貨の保有というものは、御承知の通りかなりたくさんになりました。その面からも何らかの転換を試みてもいい時代になつたと思います。そこでその転換の方向にはいろいろありますが、その第一は、今までの外貨予算を組みますのに考えておりました第一原則と申しますか、第一箇條として考えておりましたことがドルの節約であります。とにかくドルというものを節約しなければならない。最初のころに例のローガンという人が参りまして、私どもに指導を與えてくれた時代がありました。ドルは一文もないということがいまだに耳に残つている。一ドルもないという言葉を言われたことがある。それほど極端に考えておりませんでしたけれどもドルの節約を非常に重い題目に考えておりました。たしかにそれが効果を現わしている。のみならず朝鮮事変の発展という私ども日本国の外貨面においては非常に運のいい、都合のいい事態が起りました。ドルは思つたよりもふえました。そこで今後考うべきことは、ドルは一文もないと思えということをかえまして、ドル節約ということを第一信條にしていたのをかえまして、今のドルを最も有効に使うものは何だろうというように考えをかえてしかるべきと思います。それは但し、今ドルがあるのは現在ドルがあるのであつて、将来の見込み、二年、三年の先を申しますと、今の朝鮮事変特需というものがなくなつた場合を考えますと、ポンドの余る関係ドルの足りない関係というのが、日本基礎的な置かれている位置であります。これはなかなか抜け切らない。従つて今あるドルを使うならば、そのドルを使うことによつて、将来現在の幸運な状態が解消した場合に陷るであろうところのドル不足を、そのときにドル不足に陷らないために打つべき手があるならば、その手に向つて現在比較的潤沢であるドルを注入せよ、こういうことになる。これは今までの外貨予算の組み方の非常に大きな変更になるわけです。今までは何でもかんでもドルを節約しよう、ドルをためろということであつたのですが、今後はたまつたドルを多少——減らさないまでも、もうたまらないことになつてもいいから、場合によつては多少減らしても、数年先に予想されるドル不足に備えて、有効適切に使えということにかえていい患う。そうなるといろいろなことが出て来るのであります。たとえば機械輸入をして合理化をする、あるいは何か技術を買うといつたようなこと。今までは大体クレジットでももらわなければ、いわゆる外資の導入でもなければそういうものに手がつけられないというのが常識のようになつておりましたが、そこを少しかえまして、必ずしもクレジットを得られなくても、そういうものを現金を拂つて買つたらいいではないかということなります。  第二点は、南米諸国なんかによくあるのですが、機械類とかあるいは電車であるとか、そういつたようなものをクレジットで輸出してくれないかというのがある。今度はこちらから、クレジットを與える方です。積み出すとすぐに代金を回収せずに、三年、四年待つてやるという行き方です。これは外貨事情から申せば、まさにそういうものが日本外貨事情に適当な輸出の方向である。現在はドルがありまして、三年先がないということが考えられるのですから、三年先に代金が入つて来ることは非常にけつこうであります。のみならずそういうことによつて新しい市場が開拓されるならば、これもけつこうでありますから、そういうことも考える。確かにこれは今までなれないことです。ことに日本は講和発効近くにありますが、まだほんとうの外交関係が許されておりませんから、はたして債務者から真に取立てができるかどうかという点において、日本は強制力を欠いておりますから安心が行かない。その点さえ安心が行くならば、外貨事情として見るならば、そういうのは歓迎である、こういうことになります。  第三には、近ごろよく世間でも喧伝されておりますが、外国にある何か鉱山なら鉱山を開発する。逆にこちらからクレジットを與える。しかしその結果として数年後には、ある一定の期間後には、安い鉱石が買えるというようなこと。これも将来に向つて外貨節約になりますから、今多少の外貨を使うことはさしつかえなし。すなわちそういうことも幸いにして考え得る事態になつたというようなことがおもなる変化であります。  さらにもう一つつけ加えて申した方がいいと思いますのは、そういう事情になつたについては、従来は何でもかんでもドル節約でありますから、ポンド地域オープンアカウント地域等から買い得るならば、そちらから買つてドル地域から買うのはよそう。ほかのドルならざる地域、ポンドであるとかオープンアカウント地域に向つて物を買う。輸入先をむりにそちらへ押し込む。ドル外貨予算を組まなければ、自然業者は予算のある方から輸入しなければなりませんから、そういうふうに操作することは比較的容易であつたのでありますが、これはどうか。必ずしもいいとは言えない。これは別途ポンド対策と関係いたします。ポンド過剰が今憂えられておりますから、それを極端にやるなら、極端でなくても、それをやる程度ポンドの過剰は拡大されますから、手放しにやることはいいとは申せません。しかしドルの事情から言えばそういうことが考えられるという状況になりました。これも非常に大きな変化であります。  さらにもう少し深く申しますと、将来のドル市場は一体いかにして、ドル輸出はいかにして確保されるかというと、これは單に個々の商品をながめていただけでは、個々の商品の販路なり、売り先なり、あるいは銀行のコネクシヨンなり、あるいはその商品の価格なりを考えていただけでは解決できない部面がある。と申しますのは、一般にドル輸出というものは日本における物価全体のレベルに関係がある。日本の物価、物価と申しますよりも輸出品の生産コストと言つた方がいいですが、輸出品の生産コストというものが、全般的にドル輸出ができるように、ドル輸出しても買い手がつくように、品質に比して低廉でなければならないというように発展しなければならない。大きく申しますと、日本輸出品の生産コストをいかにして下げるかということに関係します。先ほど申しました例は、直接に関係しますが、安い原料を直接に買つたから生産コストが下るということのほかに、一般に日本の物価が下つて、一般に生産コストが下るということが大事である。今後はそこで日本生産コストを高めないような輸入政策外貨予算の組み方ということに集約して来るわけであります。今まで申しましたところも、みなそこに固まつて来るわけですが、言にして言えばそこに落着いて来る。そういうことが外貨予算を組む上の主たる関心事になつて来る。これは従来から申しますと、かなり大きな変化であります。このことは実は今までありました安本当局等からの御説明には、あるいは十分に出ておらないかもしれません。多少そういう意図をすでに織り込んではおりますが、まだ十分に織り込んでいない。実は今後そうならなければならない。そういう考え方の変化が今起りつつあるという事実を、御参考までに申し上げました。現にやつておりますことには、まだその意図は十分に出ておらないかもしれません。事実出て来ておりませんですね。外貨予算の第一点、外貨事情は比較的、ことにドル事情がいいということから、そういう変化が来るということを御参考までに申し上げます。  第二点はポンドでありますが、ポンド過剰ということが起りましたのは、言うまでもなくドル・クローズをいたしました新協定耳来であります。新協定をつくりましたころは、その憂えありということはたれしも知つておりました。知つていたればこそ、あの協定の交渉に三箇月余もかかつたということになつたのでありますが、しかし正直なところ、今日すでに現われましたほど、早くかつ強烈に現われて来るとは当初思わなかつた。これは私ども関係者全部、日本国民みなそうだと思いますが、見込み違いであります。いろいろな事情によつて、これは非常に強烈に早く現われたのであつて、これは何とかしなければならないのでありますが、さてこの対策というものは非常に広汎なことに関係いたしますので、まだ政府部内においてはつきりした意思の決定はないものと私は了解しております。為替管理委員会の委員長という職務は、身分保障が伴つておる職分でありまして、つまり政治に関與してはならないし、政治的決定というものには深入りしてはならない位置にあります。あくまで一種の技術家として勧告をする、何かものを見定めてアイデアを出すということが、私どもの職分でありまして、これをいよいよ実行するかしないかは、政治の衝に当つておられる大臣方の御責任であります。私はそれに対して一種の意見をしておるにすぎない身分であります。従つてどのような御決定になりつつあるかも必ずしも知つておりませんが、まだ十分なる決定には達していないと思います。従つてこの問題に対してあまりここで申し上げる自由もありませんし、申し上げるべきでないと思いますから差控えさせていただきたいと思います。ただ一言申し上げてもいいことは、この問題は非常に大きな問題であつて、必ずしもポンドがたまつたからといつて、見様によつてはそう驚かなくてもいいのかもしれません。もし伝えられるところのポンドの切下げなるものがなく、かつ真偽のほどは存じませんが、最近伝えられますように、アメリカとの協調のもとに、ポンドもなるべく早い機会にドルヘの転換性を回復するということを、英国政府は終局の目的として立てておるのは事実であります。それがアメリカとの協力のもとに、存外早く来るのだという見方もあります。もしそうだとすれば、その問題はそのときまで安心して待つていればいいので、何でもないことであります。ところがそういう見込みというものは、必ずしも正確にはたれしも言えないことでありますし、容易に結論を出せない。單にこれは国内面だけを見て、その面からだけ対策を決するものではなくて、これがポンドの先行き、英米の間にどういうことになつているであろうということにも、関心を向けながら考えらるべきだと思います。従いましてなかなかこれはきまらないのでありますが、但しこの間私ども委員会の意見といたしまして、英国向きに鉄鋼輸出しようというような大きな商談がありましたのに対しまして、それは適当ではないのではないかということを勧告をいたしました。これは新聞にも報道されておりますし、別に隠すべきことではない。事実でありますから率直に申し上げますが、私どもはあのような商談を、單に見送つているべきものではない。すでにポンド過剰という事実は、予想に反してかくのごとく顕著にすみやかに現われた以上、ああいう商談を見送つておるべきものではないということを感じましたので、勧告を提出いたした次第であります。従いましてその勧告に現われた趣旨というものは、大体において為替管理委員会の意見だというふうに御了解願つていいかと思います。第二点のポンドについてはそのくらいにいたします。  そういたしますと、あと何がありますか、外貨予算の組み方でありますが、一般にいたしますと、最初に申しました通り、予算を組むという技術、これは複雑な計算をいたしますし、見込みをしなくちやなりませんから、若干技術が慣熟する必要があります。技術が慣熟して来たことは最初に申し上げた通りでありますが、すでに慣熟して来た以上、かつ外貨の現実の状態が手持が潤沢である以上、従来のごとく三箇月刻みで、何となく長いものの見込みは立たぬという状態は解消すべきでありまして、今後できるだけ長い契約、たとえば鉄鋼生産の方ならば鉄鋼というもの、鉱石の取得というものを、一年でも、二年でも、三年でもないしそれより長くても、もしそれが商売として合理的であり、有利であるならば、外貨予算の面からそれがさえぎられて、お先まつ暗であつて、そういう契約ができないというようなことは解消して行くべきである。そうなると、長期契約がおできになりますから従つてさつき申します通り、コストの切下げにも必然的になると思いますが、そういうようなことをこれからして行ける状態になりましたので、すみやかにいたしたいと思います。同様に、たとえば綿花なら綿花買付け、年間百何十万俵は買つてもいいということの腹づもりはしていながら、外貨予算に出す方は小刻みにしか出せないというようなことも、年間それだけ買うのがいいと考え、外貨のある以上は、年間のものをいつでも御自由に契約していただいてもいいというようにすることが、綿花関係から見て、もしそれがコスト切下げになるならば、商売をやりよくすることになるならば、そういうこともいたすべきであります。そうして簡略に申せば外貨予算の長期化ということでありますが、そういうような道に進んで行くということであります。但しそれらのことを申し上げます際に、もう一つ再確認しておいていただきたいことは、外貨予算というものは、予算という字が使つてありますが、それだけの外貨を使うことを適当と考えたのではないのです。真にその外貨を使つて物を買うか買わないかは、各業者のおきめになることで、われわれが申しますのは、それだけの外貨を使つても手元はさしつかえないという意思表示であります。昨年の厖大なる輸入のときに、あれは予算に組んだではないかだから政府は買えというのだろう、買うのが国策だと思つたから自分たちは輸入したのだ。ところが後で聞いてみれば国策ではなかつたのだ。国策に準じて厖大輸入したのに対して、一向政府は世話を見てくれないという御不平があつたようでありますが、当時からたびたび説明したことでありますが、それは外貨予算の趣旨ではないのでありまして、外貨予算というものは、それだけ使つてもよろしい、使う限度はここまで行けますということであつて、現実にお使いになるかどうかは、現在の自由経済、フリー・コンペティシヨン、自由経済競争の態勢において進めて行こうというのが経済の大原則でありますから、買う、買わぬはそれは商売ということであつて、政府が予算を組んだからといつて、それだけ買つてほしいというのではありません。その意味において、その点をもう一度再確認していただきたいのですが、そういうような考え方において、今も言つたように、相当多額なものを持つているが、しかしこれは多額なものをぜひ買うのがいいのだというのではない。買うのがいいか悪いかは、むしろそれを買う方の円の金融の問題でありまして、これは金融関係から眺めて行く、こう思います。  大体外貨予算関係しまして、今特に頭にありますこと、今後そういう方向に外貨予算というものの運営がかわつて行くのがいいのだというふうに、為替管理委員会では考えているというものを拾つてみますと、大体そのくらいであります。落ちておるかもしれませんが、あとはひとつ御質問にお答えすることによつて申し述べさせていただきたいと思う次第であります。
  39. 前田正男

    前田委員長 この際木内政府委員に対する質疑があればこれを許します。
  40. 志田義信

    ○志田委員 木内さんから今いろいろお話を承りましたが、木内さんのきようのお資格が、参考人であつて政府委員であるというようなお資格でありますから、外貨の理論だけで御質問しなくてもいいのではないかと思います。その点はひとつ政府委員に対する質問のようなことになろうかと思うのでありますけれども、御了承願いたいと思います。いろいろお話を承りまして、日本の為替管理の運営というものは、非常に外国方面からは高く評価されておる、こういうお話でありましたが、一体外貨予算の今年の編成上、ドル資金については、会後どんな逆調が予想されておりましようか。
  41. 木内信胤

    ○木内政府委員 ドル資金には、ただいま申しました通り、今潤沢であります。大体今後も、従来のようなドル節約第一主義で参りますれば、ドルもふえて行くかもしれません。しかしながら、その点はすでにかなりの修正を考えておりますから、従来のように、昨年のようにふえるということはもちろん考えておりませんが、しかし今申しましたような編成方針に変更を持来すといたしましても、大体今のような相当早いピッチでふえるということはとまるであろうが、そう減りはしないという程度で持つて行けるかと思います。ことに現在外国銀行は、主としてアメリカでありますが、イギリスも同じでありますが、主としてアメリカの銀行は貿易の金融ならば金融をつけてもいい。いわゆる外銀ユーザンスであります。ところが今ドル潤沢でいらないから、せつかくの申出だが断るという状態まで来ているのでありまして、私ども最初の間は、ドルは足りないと思うから、大いに貸してくれということを念願して、そのように話して来たところが、向うが、貸すと言い出したら、こつちがいらぬということになつてむしろ間の悪いようなことになつておるのですが、そういうものも使えると思います。そういうものを使いますれば、ドルに関する限り、ある程度の入超に持つてつても、クレジットがきけば、外貨の手持、現金の手持というものは減らないで、多少ふえつつも、なおドルに関しては支拂い超過という状態も可能でありますし、そういう比較的恵まれた状態にありますので、割合に自由なる操作ができます。
  42. 志田義信

    ○志田委員 その点はわかりましたが、どうでしよう、非ドル地域からの輸入を今後促進しなければならぬと思うのでありますけれども、それには何かこういうきめ手があるということがございませんでしようか。
  43. 木内信胤

    ○木内政府委員 非ドル地域からの輸入を拡大するに越したことはないのでありますが、最初に申しました通り、従来はドル節約第一主義でありますから、なるべく非ドル地域から輸入せよということであつたわけであります。ところが今はそうでなくて、むしろ日本生産コストを全面的に切り下げたいというようなことが主眼になつて参りますと、必ずしも非ドル地域から輸入しないでもいいのであります。ですから、ドルの面から見れば、非ドル地域から輸入しないでもいい。ところが非ドル地域から輸入しないと、非ドル地域への輸出というものはそれだけ振わない。オープン・アカウントもそうでありますが、ポンドは少しふえ過ぎると思つておる状態であります。要するにそういう関係がありますので、ドル市場からのみでなく、非ドル地域からの輸入はどの程度がいいかということは論じられませんが、従来は非ドル地域からの輸入が奨励された、その点はむしろ逆になつて来ている。ドルでも非ドル地域でも、一番安い所から買つて来て、それで日本経済全体の能率をあげればいい。食糧でもそうでありますが、高い所から買えば、それだけ財政の余裕が減る。もし安い所から買えるならば、財政に余裕が出て来るというようなことになりますので、これもコトスの切り下げの一つになるわけであります。従いまして、非ドル地域からの輸入ということは少し見方がかわつて来たわけであります。
  44. 志田義信

    ○志田委員 この一月から三月の外貨予算の編成を見ておりますると、やつぱり基礎はスターリング地域からの買付にあるのであります。その見込がもし下まわるというようなことになりますと、今年の、少くとも二十六年度末の三月には、この輸入原料の需給バランスに何か重大な変化を来すのではないかと思うのでありまするが、そういう影響についてはいかがでございましよう。
  45. 木内信胤

    ○木内政府委員 予算は先ほど申しました通り、それだけ使つてもいいという数字でありまして、それだけは輸入するという数字ではないのであります。従いまして私どもは受身でありますから、予算を組んだとて買えなければそれまで。ところで一—三月の予算は、御指摘のように、ポンド地域からの輸入を多く組んでおります。それはつまり一—三月の予算を組みました昨年においては、ただいま申しましたような認識がきわめて稀薄であつて、まだ浸透していないのであります。従いまして、実は日本側政府がきめました予算を、司令部において五千万ドルからドルをカットして、非ドル地域に振りかえたという事実すらあるのでありまして、今私が申しました新しいイデオロギーには、はなはだ沿わない状態になつております。従いまして、事実はスターリング地域からの輸入は、予算を相当下まわる可能性は十分にあります。またスターリング地域からなぜ輸入ができないかというと、概してスターリング地域からの物資が割高でありまして、これはドル輸入をとめてしまえば、割高でもやむを得ずドル輸入するということも考えられますが、ドル輸入をとめる理由もなければ、しいて割高な物資輸入する必要がないという原理が出て来るのです。私の今申し上げましたことは、今後そう持つて行きたいということでまだそうなつているとは申し上げません。最初にお断りした通りであります。もし御指摘のような、せつかくポンド予算を組んだが、実績はそれを下まわつて、原料市場に不足が出て来るということならば、急いでドル予算を追加するということが、なすべき手であります。これは理の当然でありまして、少くとも外為委員会においては、そうすべきだという意思を推進するつもりでおります。
  46. 志田義信

    ○志田委員 もう一つ。もしこの市場の転換ということが、たとえばドル市場からスターリング市場への転換ということが、何かの事情によりましてうまく行かない。コストの問題もあるし、いろいろ会うと思いますが、うまく行かないというような場合に、それが直接生産面に圧縮して来るというような心配を持たないでもいいかどうか、もしそういうことがあるとすれば、これに対する対策も考えなければいかぬと思いますが、その点はいかがですか。
  47. 木内信胤

    ○木内政府委員 今申しましたことによつて、もし市場に原料不足を来すというようなことがあるなら、早急に手を打たなければならないのでありますが、現在のところ、ドル予算というものもあまり活発には使われておりませんし、ポンド予算はあるが、ポンド地域からは高くて買えないからドルにしてくれないかという御要求も、さまではございません。ですから、昨年初めの過大輸入の結果であるかどうかは的確には申せませんが、原料の貧困という事態はまだそう目立つてはいない。しかし将来にあるかもしれないので、これは注意して見ているべきことであります。その理由が、ドル予算がなくてポンド予算だけしかない、ないしはオープン・アカウントの予算しかないということならば、ドル予算を追加すべし、こういう結論になります。
  48. 志田義信

    ○志田委員 あなたは最近どこかの会合で、私は残念ながらその会合には出れなかつたのですが、東南アジア開発に対する構想をお話になつておるそうでありまするが、これは日本の外為としての今後の行き方と非常に関係があるように私は想像するのであります。その点につきましての構想をひとつここで聞く機会を得ればありがたいと思います。
  49. 木内信胤

    ○木内政府委員 御指摘のような話は、私はあまりしなかつたと思いますが、先ほどもすでに触れました通り、外貨事情、これはドルに限りません、ポンドもそうでありますが、今は割合に資金がございますから、何か投資めいたこと、フィリピンの山を開くとか、ビンタン島でどうするとかいうことがあつたら、これにポンドなりドルを多少つぎ込むことも考え得るような事態になつて来たということは、すでに申した通りでありまして、その点は触れたことがございますが、その他には私はあまり触れたことはないと思います。しいて申せば、アメリカでいろいろなことを視察しました感想をいろいろお話したことがございますが、その中で、日米経済協力というものは、三つの輪がある、一番小さいものは、例の世界的稀少物資の割当を受ける。従つてこちらはその使用に関して統制しなくてはならぬ。使用を監視しなくてはならない。むしろ監視するという約束のもとに、稀少物資の割当を受ける。これが一番小さい輪であります。その次の輸は、アメリカからの注文を受けることである。これは長期注文でなければ日本は応じられないから、なるべく長期の注文をして、長期の見通しが立つようにしてもらいたいということを、先方の要路の方に申し上げて参りました。それはいかにももつともだというお答えを得て参りましたが、それが第二の輪であります。第三の輪というものは、東南アジアの開発という、アメリカの世界政策の一環に日本も乗ることだ。これは筋としては、たしかに来る筋なのです。たしかにその方向にアメリカ及び世界は動いている。従つて日本人はそこに希望を持つて大いに働くべし、勉強すベしと思われるということを申しました。しかし私はそれについては、むしろこの問題は、そう来なければならない筋なのだが、なかなかそう行かない。早い話が、日本の経済事情というものに対して第一の知識であるところのドツジ氏が、あのような声明をして去られた。あの声明というものは、私案は旅行中に読んだのですが、私自身もよくわからない。この方は何をもつてこういうことを言われるのであろうか、そういう感じを受けた声明であります。旅行中であつて、よくわかりませんでしたが、察するに、日本の経済社会というものは、まつたくあの通りだと受取る方はきわめて少かつたと思う。そこに非常な認識の開きがあります。日本のためにあれだけのことをなさり、日本のことをあれだけよく知つておられる方が、最後におつしやつたことに対して、日本側がそういう反応を示すということは、ものの見方に非常な開きがある。この開きというものを解消して行かないことには、東南アジアの開発に向つて協力するというようなことが、はかばかしく行くはずはない。この点は主として私どもの仕事かもしれませんが、よき理解を先方の要人たちに與える。あるいはまた日本の財界としては、アメリカ人の見方はこういうのだ、それと比べてみて、われわれ日本の財界人が考えていることがずいぶんはずれているのじやないかと思うことがずいぶんあるのであります。そういう点を反省して、相互にものの見方、考え方がぴつたり合わなければ、大きな仕事は一緒にはできません。むしろ第三の輪に関しては、現状は理解の不足によつて悲観的であるということを申したことがあります。それ以外に、私あまり触れたことはありません。
  50. 志田義信

    ○志田委員 さつき木内委員長ポンドドルに転換する方策をとるようなお話がありましたが、日本の今後のあり方というものは、外債の償還であるとか、国際通貨基金の出資等で、相当ドルの支出は増大するであろう。そういう場合に、ドル不足である、ポンド過剰である、そういうびつこの行き方がだんだん激化し乗る。あなたはこのたび外国を見てまわられて、特に英国その他を見ておられるだろうと思いますので、英国その他西ヨーロッパあたりのドル・ドライヴが、最近非常に急調であるというふうにも聞いておるのでありますが、国際収支のバランスが、はたして二十六年のような均衡をとつて行けるかどうか、その点をひとつお話願いたい。
  51. 木内信胤

    ○木内政府委員 ポンドのコンヴアーテイビリテイを回復しなければならぬということが、英国内でも相当強い輿論になりつつあるということが事実ならば、それがそのように行くならば、日本が持つております今のポンド過剰の憂え、それが非常に困ることであるということが解消してしまう。そのことも頭に入れてポンド対策を練るべしということを申し上げたのであります。それがはたしてありそうなこととか、あるいはとてもだめなこととかいう見込みについて言うことは、差控えさせていただきたいのです。先ほどポンドの転換性に触れましたのは、その意味でありますから、ちよつと御質問を伺つておりまして、私の言う意味が通つていなかつたのではないかと思いますので、あらためて申し上げます。  さてそのようなことであつて、諸外国はダラー・ドライブを一生懸命やつている。競争国が一生懸命やりますと、競争に負ければ、ドル輸出がそれだけ減るわけであります。なおかつポンドがそのように解決してくれればけつこうなのですが、解決しないならば、ポンド地域に出超になれば、それだけ輸出力が減殺されますから、ドル輸出が困難になるというわけで、国際収支必ずしも楽観を許さない。全体で見れば、なかなか潤沢なバランスを持つているが、ポンドを別にし、オープンを別にして、ドルだけ見たら、はたしてよいのか。御承知のように、今後ドル拂いを予期される面もありますが、それらのことを計算に入れて、先ほど申しました通り、短期の借財もできることでありますから、将来それがドルの収入を確保する道であるならば、ドルを今使うことにやぶさかであつてはならぬと考える。そのために多少ドルマイナスになる。受拂いで見れば拂いが超過になる。しかし借財がきくのでありますから、持つている現金は多少とも増加になるといつた程度のバランス、国際收支のつじつまを合せることは困難ではなかろう。そういう認識に立つて。この際いい使い道があるならば、ドルを使うことを考えてもいいということを最初申したのであります。但しそういう道があればであつて先のことを考えれば、むだに使うドルは一ドルもない。その点十分なる戒心をもつてしなければいけないと思います。近ごろ市場に、例のスペシャル・シヨツプをやめた関係で、ドル物資があふれております。どこへ行つてもアメリカ物資が手に入る。しかもそんなに高くないということがありまして、はなはだ為替管理当局は気がゆるんでいるがごとくお見えになるかもしれません。特に申し上げておきますが、私はドルを使つてもいいということを申し上げるについて、ドルはただ豊かであるとお思いになるといけませんから申し上げますが、むだに使つていい、ぜいたくに使つていいドルは、一文もない。御承知の通り、各国のダラー・ドライヴ等によつてドル輸出競争が激しくなつている。さればこそ、コストの切下げに対してもつと真剣にならなければならぬ。今まではどこへでも輸出が出ればいいと、全体的に見ておりましたが、特に今後はドル圏だけを考える必要があると思います。
  52. 志田義信

    ○志田委員 あなたのお話を聞いておりますと、輸出品の生産コストを引下げるということは非常に困難だ、むしろ生産コストは上つて行くのじやないかと思いますけれども、コストを下げるという対策がございましようか。
  53. 木内信胤

    ○木内政府委員 私申し上げましたことに、生産コストが上る要素は一つもないと思います。こういうようなことが下るゆえんになるだろうということを申し上げた。下るにしてもわずかだ、ききが悪いというならわかりますが、私の言うようにしますことは、無理に高い地域から高い原料品を買わなくても、ドルで買う方が安く買えるのでありますから、安く買つたら生産コストが下るはずです。もつともクレジット輸出なんかあまりしますと、それは輸出奨励ではありますが、物価を上げる行為であります。しかしこれは輸出でありまして、輸出して上るのはしかたありません。そう考えれば、私の申したことは別に生産コストを上げるとは思いません。
  54. 志田義信

    ○志田委員 手は打たなければならぬと言つておられますが、原料が不足して来れば、原料の獲得の競争は今世界的に行われている現状である。日本は原料を買つて加工をやり、加工したものを輸出するわけでしよう。そこで日本輸出品の生産のコストを引下げるということになると、あとは労働賃金でも引下げる以外に方法はないということになります。それではちよつと私たちは納得しがたいものがあるのですが、その点いかがですか。
  55. 木内信胤

    ○木内政府委員 日本は原料を買つて輸出するのですが、その原料をなるべく安い市場から買うことを考え得るような——今は高くてもしかたがない、ポンド地域から買え、非ドル地域から買えということが原則であつた。ドル地域の方が安ければ、ドルを使つてつてもよろしいと言つておるのです、それ以外のことを何も意味しません。その範囲で確かにコストを引下げることです。今何か原料がなくなつたということですが、今世界的に原料は安いのだ、早く買わなければ、先になつて高くなるということになりますならば、早く買わなければ悪い。しかも、もし真に原料が不足しているなら、ドルの追加予算をしてもよいとまで私は申し上げている。できるだけ安い原料を取得さして差上げたい、こう思つております。但し外貨予算に組んだドルは、ぜひ使つてもらいたいというのではない。それを円資金その他からお使いにならない状態であつてみすみすチャンスを逸するような状態があるなら、これは円資金の問題として、別途論じなければならない、そういう趣旨であります。
  56. 前田正男

    前田委員長 ほかに質疑はございませんか。——それでは委員長から一つお尋ねしたいと思いますが、今後の輸入増大につきまして日本円の融資あつせんをしたらどうかというような意見が、政務筋その他いろいろの方面において考えられておるようですが、これに対しまして、外国為替管理委員会として意見がまとまつておられるのか、もし意見がまとまつておらなければ、木内さん自身としてどういうふうな御意見を持つておられるか、簡單にお伺いしたい。
  57. 木内信胤

    ○木内政府委員 それはポンド対策の一環として、融資あつせんをしてでもポンド輸入をしようという関係において言われたことと思いますが、賛成であります。賛成でありますが、それは詳しく申しますと、こういうのです。  第一は、さればといつて今るる申し述べましたことによつて日本生産コスト全体が非常な関心を持たなければならぬことでありますから、融資あつせんまでしてポンド地域から、もしそれが高いにもかかわらず、融資あつせんその他によつて輸入しようというならば、私どもは高いものを無理に買うというところに異議があります。しかし別に高くはないのだ、値段に文句はないんだが、円資金がなくて買えないのだということであつたら、融資あつせんでもして、ぜひ輸入していただきたいと思います。ですからその値段の関係がさしつかえないのなら大いに賛成、これは私だけではございません。為替管理委員会の意見です。
  58. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 ちよつと木内さんにお伺いしたいのですが、私もドル地域に対する輸出、これはどうしても日本としてやらなければならぬと考えておるのですが、ただ一点気にかかつておるところは、朝鮮動乱の結果を見ましても、アメリカの物価の値上りというものは、わずか一割余りにすぎない。日本はもうたいへんな、五割、六割、あるいはそれ以上の値上りをやつておるわけです。ポンド地域日本といたしましても、物価事情からいつて割合やりやすいところでありますから、自然にほうつておいても輸出は行くので、そこで物価の関係をどうするか、なるほど向うから安い原料が入つて来ると、それだけは安くなりますが、他の物価の値上りのためにいわゆる加工費がかかる。そこで為替の三百六十円というものをくぎづけにしておいて、はたしてそれで行けるかどうか、私はそこまで及ぶ問題になりはせぬかということを気にするのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  59. 木内信胤

    ○木内政府委員 これは非常に複雑な問題で、簡明にお答えできるかどうか疑問でありますが、アメリカの物価は一割ぐらいしか、上らないのに対して、日本の物価は非常に上つたということは事実でありますけれども、その後かなり下つたことも事実であるし、もう一つふしぎなことは、それにもかかわらず、特需が相当大きな部分でありとはいえ、とにかく輸出はかくのごとく伸張しているのです。ドル輸出も決して縮んではおりません、伸びつつあります、ポンド輸出はどではないまでも、伸びている。物価事情は、向うが一割、こつちが六割上つた。下つたにしても、その半分も下つていない、また何割か下げねばならぬというほどのことはない。しかしながらアメリカから注文というものは、どうも注文してやりたい、日本にオーダーを向けたいが、値段でどうしても折合わない。しいて注文をお受けになつた方が、えらい労働條件をしぼるといつたような條件が生じがちであるといつたことも耳にいたしますので、決して日本の物価がこのままでいいとは申しません。申しませんが、向うが一割、こつちが六割というところから、日本の物価が非常に下らなければならぬということはないと思います。  もう一点は、非常にむずかしいのですが、ポンドです。ポンド輸出というものは、ポンド地域の物価が概して高いのであつて、さればこそ、先ほどらたびたび申すような、しいてポンドから高いものを買うという必要はないとか、あるとかいう議論になるわけでありますが、一般に高い、それをいいことにいたしましてポンド地域にどんどん輸出をして参りますと、こつちの物価は、物が出ますから、高くなるのは当然であつてポンド地域が物価高であるなら、その物価高に引かれますね。引かれてその結果、長く引かれているとすると、おつしやる通り三百六十円に影響するということになり得るという憂いがあるのであります。しかしこれは貿易というものが、物価を全般的には左右いたしませんから、何もりくつがそうであつたからといつて、近くこうなるということにはなりませんが、その傾向は確かにある。ここに一つポンド問題としての見るべき観点があるわけであります。その観点からも、いわゆるポンド過剰問題、すなわちポンド輸出が多いという事実をながめて行く必要がある、こうなります。それらのことを勘案した上において、日本の三百六十円は無理だと考えるのは——それらのことはあるにかかわらず、無理だと結論してしまうのは、非常に早いのである。現に日本輸出なり外貨の手取りというものは、昨年度は驚くほどふえまして、一昨年がドルにいたしまして十億をわずかに越したのですが、昨年は二十三億にもなりました。すなわち倍以上になつた。あれほど大きな輸出力を総合的に見て発揮している。日本の物価は上つたといつて非難されるにもかかわらず、それほどの輸出力を発揮した。日本はインフレだといつて非難されますが、それだけの輸出をやつておる。今のは総量でありますが、入超出超というこのバランスでも、最近発表になりました通り、暦年でいつて三億何千万ドル、ということは一千億円以上の手取りの増加を来しておりますし、会計年度でいえば、もつと大きな数字になるのですが、そういう状況を示しておる、それにもかかわらず、インフレだといいながら、そういうことになつたということも頭において考えますと、三百六十円を動かさなければならぬと結論するのは非常に早計であります。しかし何となくそこに気がかりなものがあるということも事実であります。さればこそ、先ほどからも、一般的に輸出コストを引下げるようにしなければならぬということが急務であるということを申しておるわけですが、一方三百六十円をいじるということは、これまた非常に害のあることでありますから、多少気がかりの点ありとしても、それがよくなるように努力すべきであつて、三百六十円をいじるという方に頭を向けることは、非常にいけないということは、政府の一致した見解だと思います。
  60. 有田喜一

    ○有田(喜)委員 この問題を続けて行くと、いろいろと時間がかかりますので、これ以上は言いませんが、私も今三百六十円をすぐいじれとは申しません。もちろんそのほかの方法によつてドル地域輸出を振興できればこれに越したことはない。なるほど木内さんも、最近の日本輸出が、ドルへ相当伸びておるというお話でありますが、しかしこれは私は今日の国際情勢の非常な特殊事情によると思うのであります。日本の将来の経済の自立を考えますと、もちもん国際情勢、最近の軍需拡大、その線はもちろん討論することは差控えますが、はたしてほんとうに他の方法でそこまで触れなくても行けるか、日本の合理化が真に行けるかどうか、またそれに進まなくちやならないが、何だか道が遠いような感じがする。そこに私の懸念がある。しかしこれは木内さんは政府委員の立場もありますので、この席では御答弁しにくい点もあるかと思いますので、これ以上の質問は打切りますけれども、また他日御懇談でもして、よくお話を承りたいと思います。
  61. 木内信胤

    ○木内政府委員 今の点私も懸念は十分深くしておればこそ、今の過剰というものは、割合に過剰なドルを使つて将来ドル輸出が可能なような生産能率の高い国になれ、その努力は一日もゆるがせにしてはならない、できるだけ早くしなければならぬと思つております。おそらくまつたく御同感ではないかと思います。
  62. 前田正男

    前田委員長 ほかに質疑がなければ、次に日本銀行副総裁の二見貴知雄君にお願いいたします。二見参考人。
  63. 二見貴知雄

    ○二見参考人 私は御参考までに最近の金融措置に関連いたしまして、二、三お話を先に申し上げようと思うのです。朝鮮事変が勃発いたしましてからあと日本の景気というものは、一時活況を呈しましたけれども、昨年の春の世界的な景気の中だるみの状態が発生いたしましてからあとは、景気がやや停滞に転じたわけであります。その後若干の景況の起伏というものはありますけれども、きようまで大体のところで、その中だるみの状態をずつと続けておる。一方、事変後現われたインフレ再発の心配といいますか、その傾向も中だるみの状態が続いておるので、今のところでは、ほぼ納まつておるというわけであります。その間に経済界の金詰まりというものは、若干これは増大して来ておるのであります。特に過大な思惑をする、あるいは放漫な経営を行つておつたという一部の企業では、商社に若干倒産なども散見して来ておるのであります。しかしそれは業種によりましては、さほどの金詰まりをいたしていないのがあるし、また金詰まりの問題から、かえつて離れておるというものもありまして、いわゆる金詰まりの程度に差異があるというのが、最近のいわゆる金詰まり問題の特色のあるところであります。従つて近ごろは、一ころのように思惑の点は影をひそめまして、正常な経済活動に努力をするという傾向が、経済界一般に強くなつて来ているということは、特に目につくところであります。しかし、こういうふうないわゆる景気停滞といいますか、中だるみ状態の底流に、やはりインフレ的なものが依然ひそんでおるということは見のがすことができない。それは先行き世界の軍拡傾向の持続によつて景気の活発化が期待されておるほかに、日本自体といたしましても、いわゆる講和関係の諸費が近く支拂われ始めるということになるのでありまして、そういう点にも見られますし、さらに先ほど来木内委員長からもお話がありましたが、国際収支の面、それの推移を見ましても、そこにインフレ再発の要因がないということは言い切れないのであります。たとえば今もお話がありました通りに、昨年中の国際収支状況を見ますと、これは貿易だけでなく、国際収支全体でありますが、御承知の通り国際収支の受入れが二十二億ドル支拂いは十九億ドルでありまして、差引三億ドル余りの日本としては受入れ超過ということになつておりますけれども、その内容にはポンド圏、オープン地域への出超に対しまして、ドル地域からは入超になつておる。そういうアンバランスがあるのであります。しかもそのドル地域からの相当多額の入超を何で埋めているかといいますと、特需その他のいわゆる連合軍支拂い、これを中心とする貿易外收入でカバ一をされておるのでありまして、そのことは日本国際収支の将来を見る上において、注意しなければならぬ点だと思う。すなわち今後真の経済自立をして行く上に、自立化のなかなか容易ならぬ骨折りが必要だということを示すものと思うのであります。しかしながら、そういうことはありましても、さつきお話のごとく、現在のところでは国際収支は巨額の受入れ超過なつておるのでありまして、それは国内金融の上からいうと、国内ではそれだけの円資金が散布されておるということになるのであります。景況の中だるみ持続の底に、やはりインフレ問題の懸念というものがひそんでおると申し上げるのは、その意味であります。それから最近の日本の経済での大きな問題は、やはり生産の停滞状態、停滞傾向であろうと思う。それは事変後急に増加をいたしました生産が、昨年の七月には鉱工業生産の指数で一四一ぐらいのところまで来ておるのでありますが、それを峠として下向きになつて来ておる。十二月には季節的の関係でやや回復しておりますけれども、しかし従来事変後に見ましたような急激な増加ということは、あまり期待ができないようであります。これは申すまでもなく、動力が当面ある限度に来たことを意味しておるのであります。この点の生産隘路が打開されない限り、日 本の経済と物資面において、やはり動力方面からの圧迫を受ける。国際収支の改善にも自然響いて、なかなか骨が折れるごとと思うのであります。しかも事変後急激にふえました企業の利潤というものの相当部分が設備の拡張に注がれて、設備が広がりましたが、これに応ずる動力の増加というものとの間に不均衡を来して、設備はやや固定化しておるものができて来て、これはその企業にとりましても、また国家全体から見ましても、かなり不経済な状態を来したということは否定できないと思うのであります。金融情勢から申しますと、朝鮮事変後の企業の利潤が、今申しましたように、かなり設備の拡張の部分に向けられたい。そのために運転資金の方は引続き金融機関から貸し出されておる。運転資金のみならず設備資金も、やはり金融機関から若干の貸増しが行われたのであります。そこでそういうふうな状態のところへ景気の中だるみが来たのでありますから、企業として打撃を受けざるを得ないということは、これはやむを得ない情勢だと思うのであります。それに対しまして、金融機関は日本経済界全体に大きなシヨツクを来さないように、金融機関自身の本来の使命から申しまして、警戒的の態度はとつてはおりますが、しかし経済界に大きな波瀾のないような融通を続けて来ておるということは十分に言えると思います。しかしそれにいたしましても、最近の金融機関の貸出しと預金との比率、世間のいわゆるオーバー・ローンという状態は、かなり極限に近いところまで来ておる。全国の銀行を見ますと、最近のところでは、預金の貸出しに対する比率は、貸出し方が多いわけでありまして、一〇八%くらいになつておる。従いましてそれ以上の貸出しの増加ということは、インフレーシヨンを再発する危険をもたらす。ここに注意をしなければならぬと思うのであります。従つて金融政策の面におきましては、金融の資金融通上、質的にまた量的に、自主的の規制を強くして行く。現にそれが実行されて来ておるのでありますが、今後もこの方向はやはり進められて行く必要がありますとともに、軍に金融上の施策だけですべての経済の運行が行くわけではありませんから、やはり全般的に総合的施策というものが、実行されて行かねばならないと感じておる次第でございます。それから通貨の状況について申しますと、昨年は一年間に八百四十億くらいの通貨が増加しております。これは日本銀行券の増加でありますが、昨年末には日本銀行券が大体五千億を少し越えたところの発行高でありましたが、ことしに入りましてから順調にこれは収縮しておるのであります。ただいま四千三、四百億のところになつております。これは去年の今ころに比べますと、ちようど五百億円くらいの脹膨であります。しかしそれらは大部分は経済の発展に伴つて、いわゆる経済の規模と申しますか、経済活動が増大したということに見合うものであると言えるのでありますけれども、通貨の増加傾向については、やはり金融当局といたしましては、常に十分注意を怠ることができませんので、いわゆる潜在的インフレーシヨンというものの進みますことのないように、この点十分注意を拂つておる次第であります。
  64. 前田正男

    前田委員長 この際二見参考人に対する質疑があればこれを許します。——それでは委員長からひとつ御質問申したいと思います。いわゆる年末及び三月に対します経済恐慌と一般に世間でいわれております問題に対しまして、日銀が信用供與をせられまして、商社の問題あるいは製造家の問題等に対しまして、いろいろと融資あつせんをされたというふうにわれわれは聞いておるのですが、しかしさらにたとえば繊維業とか、その他いろいろな方面において、もう少しく金融問題について、この危機打開について考慮してもらいたいというような意見が、われわれのところにたくさん来るのでありますが、これに対しまして、日銀とされて何かお考えがあると思います。その点について御意見がありましたら伺いたいと思います。
  65. 二見貴知雄

    ○二見参考人 世間でよくいわれます二、三月の危機、二月も実は中ばとなりましたが、二、三月の危機というのは非常に声が大きいのであります。ただいま当初申し上げました通り、昨年の春いろいろな物価がやや下りぎみになり、ことに繊維のごときは大きく下りました。また輸出の約定ができかかつておりましたものが、先方からキャンセルをされるということがありました。それからいわゆる昨年の一—三月の思惑輸入が非常に多かつたということもございます。世上申しますいわゆる新三品の輸入が多く、それらの商社の数が、戰前に比べまして非常にふえており、かつその規模が小さい。また自己資本に比べまして取引高が、われわれのちよつと常識を逸するような大きな金額であるというふうなことがありまして、それがだんだんに影響して、先ほども申しましたように、商社の一部にはかなり苦しい状態になつておるものもあるのであります。しかし経済界全般を見ますと、それは、ごく一部のことでありまして、またそういう状態にある商社は、それぞれ今申し上げたような理由があるので、もしそこにその整備と申しますかを必要とするほんとうの事情がございますならば、これは一般的の救済ということではなく、それぞれの商社の責任において、あらゆる手段を講じまして、また債権者とも話合いをいたしまして整備案をつくつて行く、その場合に債権を持つておる金融機関といたしまして、経済界全般のために、どうしてもその商社に資金の融通を必要とする。しかもいわゆる資金じりにおいて日本銀行も援助をしなければならぬというようなものがあれば、日本銀行としても考えることでありますし、またそういう事態の発生いたしますよりも前に、これが普通の場合でありますが、銀行間で話合いをいたしまして、その商社のために資金を融通し合う、そうしてそれを助ける、そのかわり商社自体も整備案のためには自分の全能力を盡す、つまり全財産も出すということで行かなければならないのであります。そういうときには日本銀行といたしまして融資あつせんをかねがねしておりますので、その機能を続けて活用して行きたい、そういう態度でやつております。
  66. 前田正男

    前田委員長 さらにそれにからんだことでありますが、中小企業の方が相当二、三月危機というものを受ける可能性が多いのではないか、こういうようなことから、政府におきましても中小企業関係の特殊銀行に預けておりましたところの政府の預託金の引揚げを延期するとか、いろいろの方法を講じておるようでありますが、できたならばこの機会に、もう少しく中小企業向けの資金を増大する方法がないだろうかということを研究いたしたのでありますが、なかなかいい方法ないので、できれば日銀の別わく融資をふやすことができないだろうかというような意見を述べておる方もあるわけであります。日銀の政策委員会においては、別わく融資を延ばすことをあまり好まないというように聞いておるのでありますが、何らかこの機会に、中小企業向けの金融を幾らか二、三月の危機にふやす方法があるかどうか、こう  いつたことについて日銀として何かお考えになつたことがあるかどうか、御意見がありましたらお聞かせ願いたい。
  67. 二見貴知雄

    ○二見参考人 中小企業はいわば社会の窓でありまして、非常に範囲も広く、また事業全体に影響するところも大きい問題でありますので、常々にこの問題には非常に注意をしております。今お話がございました通り、大きな企業のしわが中小企業の方にも寄つてつているものがあつて、中小企業が苦しい立場にある、そういう事実もところどころであることと思うのであります。私の方の別わく融資のお尋ねがございましたからそれをお答え申し上げますと、本来は中小企業はやはり商工組合中央金庫とか、あるいは国民金融公庫あるいはもつと広く申しますと、銀行は中小企業については非常に大きな取引を開いておるのであります。つまりよく申します財産基礎、コマーシャルベースに乗りますものは、まずまず取上げられて融通の対象になつておると言つて言い過ぎでないと思う。ただ中小企業は基礎が薄弱でありまして、また融資を受ける態勢が十分にできていないものがかなりあります。具体的の問題になりますと、いわゆるコマーシャル・ベースに乗りかねるものがかなりある。そういたしますと金融機関としてやはりそれぞれの責任の範囲がありますから、それを飛び越えてむやみにやることはできない。しかし拾えるものはむろんその将来を考えて、できるだけそれに対して融資をして行く、こういう状態だと思う。それで日本銀行が実行しております別わくと申しますのは、興業銀行、勧業銀行、商工組合中央金庫、その他一、二の金融機関に対しまして日本銀行としては許されている低利の資金を供給いたしまして、そうしてまたそれらの金融機関も自己資金をそれに加えて、これを中小企業方面への融通にまわすわけなのであります。本来発券銀行である日本銀行といたしましては、あのわくを実行しておりますことは、どちらかというと例外であります。ただ社会の実勢、また今の日本経済の現況に見まして、初めはわずかの金額でありましたのを、だんだんに増加はし棄ておりますけれども、あれを需要に応じてどんどんふやすということは、なかなか考えにくいと思うのであります。しかしそれはいろいろ実勢を見た上で結論の出ることでありますから、ちよつとここでどうということは申し上げかねます。
  68. 前田正男

    前田委員長 その点につきましてはひとつ日銀の政策委員会においても、この二、三月の危機が中小企業にしわが寄るというように一般にいわれておりますので、御研究願いたいと思います。  もう一つ中小企業問題といたしまして、実はある雑誌に小林一三氏が、できれば小銀行をたくさんつくる方がいいではないか。それは中小企業の金融の打開に一番いいのだというようなことを盛んに述べられていることを拝見したことがあるのであります。こういうことに対して現政府も地方銀行の一県一行でなしに数をふやすことについては努力しておるようでありますが、小林氏の御意見によれば、もつと小さいものをたくさんつくつたらいいじやないかということでありまして、最近銀行法の修正等も考えられまして、これができれば資本金を五千万円くらいのものに下げた小銀行をつくつたらどうかと、こういうような意見もわれわれは聞くのであります。こういう点に対して日本銀行の方で、何らかのそういう金融機関の小銀行をつくるということについて、御意見がありましたら御説明願いたい。
  69. 二見貴知雄

    ○二見参考人 これは特にただいまどうと取上げて考えているという問題ではございませんので、私一個の考えだけ御参考に申し上げるのでありますが、銀行をどういうふうにつくつて行くか、既存銀行以上に銀行をさらにつくつて行くかということは、むしろ政府の銀行政策の問題になろうと思うのですが、その前提となりますことは、やはりつくり得る経済規模があるかということだと思うのであります。ただ銀行をつくるということもなかなか簡單なことではないのでありまして、かりに小さな資本金といたしましても、銀行は信用機関として設立するのでありますから、そう簡單に資本金が集まるわけでもありますまい。また集めましてもそれから先預金の吸収ということが順調に行くのでありませんと、すぐに貸出しの資金に行き詰まつてしまうのであります。従いましてそういう銀行をつくり得る経済基盤というものが、それぞれの土地なり業界なりにあるかということが前提になり、またそれがつくられました上で、将来にかけてその銀行が預金者にも迷惑をかけず、また優良な融資をすることができて、堅実な内容を持つた金融機関として発展して行けるか。いわゆる公的の機関として発達して行けるかということが前提になると思うのでございます。従いましていわゆる小銀行というようなお考えは、簡單には取上げにくいと思うのでありますが、その具体的な問題だと思います。
  70. 笹山茂太郎

    ○笹山委員 私は簡單に御質問いたします。通貨の各産業別、たとえば商とか農山漁村に対する分布状況は、去年とことしとどういつた変化をたどつておりますか。もしお手元に、資料がございましたらお知らせ願いたい。
  71. 二見貴知雄

    ○二見参考人 私の方に貯蓄推進部というのがございまして、できるだけの資料によつてそういう数字を出すことに努めておりますが、これはなかなかむずかしい仕事でございます。一時農村方面に多かつた通貨、つまり現金の所在がだんだん都市に集まつて来た、あるいは都市のうちで商業部門に集まつて来たというような資料が、ある期間出ているのはありますが、残念ながら今日そういう資料を持つて参りませんでした。何でしたら別の機会にお手元にお届けいたします。
  72. 笹山茂太郎

    ○笹山委員 次に通貨制度の問題についてお伺いしたいと思いますが、今、日銀券という不換紙幣が発行されております。独立後の通貨制度に対しましては、今後いろいろ議論があると思いますが、この不換紙幣の制度をやめて、菅の金本位の制度にかえるというような説もあるのでございますが、今の日本の経済力の現状から考えて、そういうような方向に進み得るものであるかどうか、そういつた点について御感想があれば承りたいと思います。  なおまた終戰当時にありました金は、連合国に接収されたかもしれませんが、この処理は今後一体どういうふうに扱うべきか、その点について御意見がありましたら承りたいと思います。
  73. 二見貴知雄

    ○二見参考人 通貨の将来をどうするか、いわゆる不換紙幣とおつしやいますのは、多分兌換制度が停止されておる、こういうことだと考えるのでありますが、そういう意味の兌換制度は世界的にほとんど停止されておるわけであります。アメリカで金を買うことはできましても、イギリスあたりにしてもみなそういうふうになつておりますので、これは大きな目標といたしまして、通貨を金に結びつけるということは異論のないところでございましようけれども、今昔の金本位制度を論ずるのは時期が早過ぎて、まだ考えておりません。  それから金塊は、今お話の通り連合軍との関係がございまして、講和條約成立後の問題だと思うのであります。その程度で御了承願いたいと思います。
  74. 福田喜東

    福田(喜)委員 副総裁に教えていただきたい点が二、三点ございます。そして御意見を承りたいと思います。今中小企業の融資の問題が出ましたけれども日本の中小企業の金融形態は、戰前、戰後を通じて問屋金融と下請というのが特色だと思います。ところが副総裁のお話によりますと、日本銀行は発券銀行である。従つて別わく融資というものは、本来の職責外のことである。かつまた中小企業に対する金融というものは、中小企業それ自身基礎がきわめて薄弱であつて、別わく融資を伸ばすということは本来の目的を逸脱するので、われわれとしてははなはだ困る。しかるに中小企業それ自身からいいますと、別わく融資を伸ばしていただかなければ、基礎の薄弱なものがますます薄弱なるので、こういうものにてこ入れをしていただいて、初めて中小企業の苦況が切り抜けられるというのが現況であります。たとえて申しますと、鶏が先か卵が先か、こういうような議論になつて来ますが、日銀がそういうような御意向であるならば、今日の中小企業をいかにして救済して行くか。商工中金の実際の窓口の扱い方を見ておりますと、ほんとうに救済の必要である——商工中金の使命は、ほんとうから言うならば、私は幾分社会政策的な目的がそこに加味されなければいけないと思うので、別わく融資による中小企業救済、私に言わしめるとあえてそういうことが言えますが、副総裁がそういうふうにお考えであると、中小企業は永遠に救えないような気がいたしますが、その点についてわれわれはどういうふうに対処したらよいか。現実におきまして、商工中金は組合金融でございますから組合金融でやつておりますが、窓口を通じて貸し出されているのを見ますと、中小企業の中におきましても、組合の中におきましても、平たく言うならばボス諸君、組合長とか幹部の者が、わずかに恩典を受けているにすぎない。これが実態であります。従いまして、大多数の者は一体どうやつているかと申しますと、そこに行けない者は国民金融公庫の方に行つている。私は大分県ですが、大分県のいなかにおいては、商工中金に行くべきものがほとんど国民金融公庫によつて救済されているが、これは本則ではないと思いますので、そういう点についての御意見を承りたいと思います。
  75. 二見貴知雄

    ○二見参考人 私ただいま申しましたのは、日本銀行が発券銀行といたしまして、中小企業の別わくをただ増加しているということは本筋ではない、こういうことを申し上げた次第でありまして、中小企業金融を重視しなければならないことはお話の通りであります。ただそれにはやはり商工組合中央金庫、それから国民金融公庫、あるいは先ほど申し上げましたように銀行、なかんずく地方銀行、それから信用保証協会、これが最近法制化されるようでありますが、そういう制度の活用がやはり本筋だと思うのであります。日本銀行といたしましても、さつき申し上げましたように重要性をよく存じておりますので、そのときに応じまして、だんだんふやして集おりますが、初めは六、七億ぐらいから始まりましたのが、ただいま別わく融資は大体四十億くらいのところまで伸びて来ておるわけであります。基礎が薄弱ということは、中小企業自体そう急に強くはなれないと思いますけれども、しかし業者自体の金融を受けられる受入れ態勢、たとえば組合の内部を強化するとか、できていないものは組合をつくるとか、そういう面も必要だろうと思う。私の今申し上げたのはそういう意味であります。
  76. 福田喜東

    福田(喜)委員 よくわかりました。つまりコンマーシャル・ベーシスに乗らなければ、金融というものは行われがたい、しかるに中小企業それ自身は比較的基礎が薄弱であつて、その救済方法としては協同組合による強化、こういうことでございますが、実際組合をつくつても、商工中金なり市中銀行なりはあまり相手にしてくれないようですが、この点はどうなんです。
  77. 二見貴知雄

    ○二見参考人 個々のことでございまして一々例証することもできませんが、コンマーシャル・ベーシスに乗りますことは、企業自体が健全無比だ、こういう意味ではないので、やはり金融業者といたしましては、ことに地方ではそういう点がはつきりすると思うのですが、この企業はこれから先どういうふうにすれば伸びて行く、またその経営者が苦しみながらも、一生懸命にその仕事をやつて行く人ならば、信用ができてこの仕事が果せるのだ、こういうことをよくしんしやくいたしまして、金融業者としてはおそらく貸出しをして行くのだろうと思います。また金融業者の心構えといたしましては、金融機関という意味におきましての金貸しだということではなくて、そういうふうに実態をつかみ、人的にもまた物的には大した担保力がございませんでしようけれども、しかし仕事の先を見通しまして親切にめんどうを見て行く、私は金融人がその方向に進んで行くことを実は望むのでございます。
  78. 福田喜東

    福田(喜)委員 それからもう一つ、方面が違いますが、昨年の暮あたりは株価が非常に高かつた。それが、年を越したとたん、一—三月に中小企業の危機が来る。株価が暴落するということが言われましたが、依然として株価がこういう現状なつております。一体こういうふうな株式界の現勢というものについて、副総裁はどういうふうにお考えになるでしようか。その原因とか見通しについて御意見を伺いたいと思います。
  79. 二見貴知雄

    ○二見参考人 その方は私もあまり専門でございませんので、はたして合つているかどうかわかりませんが、株価というものが従来ほかの物価に比べまして割安であつたということは確かに言えると思うのです。今でもやはり採算という点を考えて株を買いに出て来ている人がかなり多いと思うのです。それからもう一つは、潜在しておる通貨がまだかなり残つている。そしてそれが繊維界も好しくないし、どこかへ投資ということで出て来たのが最近の投資信託で、百三十億くらいの投資信託というものがすでにできておりますが、あれが非常に株の値段をよくいたしました。しかもその上り方が堅実に上つておると思うのです。そこで大体投資信託で株の値段が上つて来て、しかもなおまた採算の余地から買えるというような心理がありまして、大衆が株式市場に出動して来ているのが大分多い。それが原因でないかと思つて見ております。
  80. 福田喜東

    福田(喜)委員 つまり隠れておつた通貨が株式に向けられた。こういう隠れておつた通貨はどこにあつたのでしよう。
  81. 二見貴知雄

    ○二見参考人 つまり投資信託によつて出て来た通貨というものもかなりあると思うのですが、どうもたんす預金がどこにあるかということはむずかしいのでございまして、そこまでは私も何とも言えません。
  82. 福田喜東

    福田(喜)委員 第三国人ということは考えられないのですか。
  83. 二見貴知雄

    ○二見参考人 そういうことはあまり聞いておりません。
  84. 福田喜東

    福田(喜)委員 つまり大衆のたんす預金というお見通しですか。
  85. 二見貴知雄

    ○二見参考人 たんす預金あるいは銀行預金の中で、採算上株の方へまわつて来たのもあると思うのです。
  86. 福田喜東

    福田(喜)委員 外国人が大分やつておりますね、株に対して……。五億二千円万から出ておりますが、ああいうものも大分影響があるのですか。
  87. 二見貴知雄

    ○二見参考人 それはちよつと……。
  88. 前田正男

    前田委員長 他に御質疑がなければ、次に興国人絹パルプ社長の金井滋直君にお願いいたします。なお金井参考人は日産協の企業金融委員長でもあられます。
  89. 金井滋直

    ○金井参考人 今日ここに参考人として私の意見を述べさしていただく機会を得ましたことを非常に光栄に存ずるわけであります。だんだんお話が進められまして、木内さん、また日銀副総裁の詳細な御説明で、大分私の申し上げることが減つて来たように思います。しかし産業界の見方もまた多少違つた点もあるかと思いますので、私の用意して参りました意見をそのまま申し上げたいと思います。私が主として申し上げたいことは、二十七年度の総合資金需給見込みに関連してでありますが、詳細な資料に接しておりませんので具体的な意見を述べることはできないのでありますが、公表されました総括的数字に基きまして、私の率直な感じを申し述べてみたいと思うのであります。  まず金融機関の資金収支見通しについて申し上げますと、公表されました資金需給見込みによりますれば、政府資金の対民間収支は、一般会計の約七百億に上る引上げ超過が、外為とか、食管とか、見返り資金とか、資金運用部等の、各特別会計の支拂い超過でカバーされまして、結局政府としては二十億の支拂に超過となります。他方金融機関の資金収支のしりを見ますと、預金の純増も五千四百七十億に上つております。政府の投資並びに融資金融債等による收入も合せて、七千五十五億の收入に対しまして、貸出しは六千三百四十八億、これに有価証券保有増を加えまして、支出は七千二百二十五億となります。結局百七十億の支出超過となります。政府預金の対民間収支じり二十億の支拂い超を加えて、年度中の日銀の通貨増は百九十億と見られております。この数字の中で特に注目を引く点は、金融機関の預金増が二十六年度に比べまして約三百億増加するという見方でございます。貸出しの増がこれに対して約一千億減ると見られているのが注目される数字であります。二十七年度には無記名定期の復活、その他資本蓄積対策が推進されますので、預金の増加が相当程度期待されますことは明らかであると思いますが、貸出しの増が一千億逆に減る場合に、はたしてこれだけの預金増を期待し得るか疑問であります。これは結論から申してちよつとわかりにくい点があつたと思いますが、今日私ども仕事をしておるものとして、こういうふうな金詰まりになつて参りますと、企業家の預金の大部分というものは、貸出しと見合つておる現在の状況でありますから、預金増をこのように大幅には期待できないのではないか。ことに二十六年中は二十五年に比べまして、工業生産は約三割、物価も三割以上高騰しておりますことは、先ほどから木内さんその他からお話があつた通りでありますが、もちろんこれは朝鮮事変をきつかけとした緊急特別な事情によりまする、日本経済に対する一つの天の恵みとも申すべきものであります。これが二十七年度におきましては、物価は国際コマーシャル・ベースという点で押えられまする関係上、大体横ばいではないかというふうに私は考えております。生産はいろいろな点から考えまして、一割ないし二割はふえると見られますけれども、預金増の見込みは、そう見ましても少し過大ではないかというふうに私は考えております。貸出しの面においても設備資金需要の減退、これはもう紡績のごときは、設備をつくり過ぎたような関係がありますので、もうほとんど設備のための長期資金需要というものは、その面においては減退しております。それから融資に対するいろいろな規則があります。これらの理由によりまして、貸出し増が二十六年度ほどには上らぬことは想像されますが、はたして千億円もこれが減少するかどうか、この辺に私は問題があると思うのであります。従つて金融機関の収支じりは、公表数字よりもはるかに不足が大きくなると見るのが実情に即しているのではないかと思うのであります。  それから先ほども問題になりました二、三月金融危機の問題でありますが、これに関連いたしまして、この際特に問題となりますのは、二、三月金融危機が現在どうなつておるのか、これに対して対策がどう進められておるのかということであろうと思います。この問題につきましては、先ほどからお話がありましたように、昨年初めの輸入促進政策の結果といたしまして、原材料の輸入が非常に、思惑が加わりましてかさみました。巨題の引取資金を要するようになつておりました。これが銀行より貸し出されておることは当然でありまして、その後の市況の不活発等によりまして、原材料の滞貨処分がつきませんで、また輸出の不円滑もあつて輸出製品の滞貨も生じ、その金繰りが年度末の揚超期と一緒になりまして、事業金融の異常な金詰りを招来したものであります。これが打開策としましては、メーカー、商社、金融機関の間で、ケース・バイ・ケースに種々努力されておることは、先ほどからお話のあつたところでありまするが、この解決がつかずに、商社その他に相当数の倒産を起し、このまま放置するにおきましては、事業界に意外な問題を惹起するおそれがあるという事態に私は立至つておるというふうに判断されるのであります。これについては、私ども所属の日産協におきましては、臨時特別委員会を設けまして、いろいろ数日票相談いたしておるのでありまするが、そう大して名案もあるわけではありません。結局規約條文のたな上げを行うとか、あるいは手形期限を臨時に延長するとか、それぞれの事情に即した、臨時的な対策を講ずる以外に、この打開策はないと思われるのであります。これらの損害は、なかなかこの数字をはつきり押さえることは困難でありますが、大ざつぱに見まして大体三百億ないし四百億の穴があいておる。これ全体を臨時に融資をするということは必要じやないかもしれませんけれども、その半分くらいは何とかしなければならぬのではないかというふうに考えられます。こういう問題が二十七年度におそらくまたがつて来ると思う。二、三月危機を解消するそのしりが、二十七年度の経済界及び金融とか通貨数量というようなものにも、大きく影響すると思うのであります。しかもこれが当分の間固定貸出しとなるのでありまするから、その点の考え方につきましても、よほどよく政府、日銀とも御相談申し上げて、対策を講じなければならぬと思うのであります。下手まごついて、ここに一つの目立つたパニツクを起しますと、講和後の日本の経済が非常に大きな立遅れを来すのではないかということを心配しておるものであります。先ほど中小企業に対しての御質問がありましたが、これらは個々の問題は非常に深刻な問題であるように私の方には承知されておるのでありますけれども、これに対して臨時に融資をしなければならぬという金額は、そう大したものではないではないか。融資と同時に、中小企業のあり方について、日本経済界は再検討を要するのではないかという議論もあるのであります。  さらにこれに関連しまして、この際強調しなければなりませんことは、商業資本の充実、商社の健全化という問題であります。固定資本対策についてはいろいろの施策があります。メーカーの自己資金も着々充実しつつありますが、商業資本の充実が立ち遅れておることは大きな問題であります。御承知のことと思うのでありますが、三井物産が解体される前の資本金は、一億だと承知しております。この一億は今の円と比較しますと、その当時の円は一ドル一円でありましたから、百八十倍になるわけでありますが、百八十倍の資本、すなわち百八十億の資本金をもつて、そうしてあれだけの専門家を海外に派遣して仕事をしておつたような三井物産を期待することはむろん困難でありますが、今度生き残つた大きな商社の資本をつかまえましても、おそらく三億以上のものはないのではなかろうかと思うのであります。先ほど日銀総裁からの御指摘がありましたように、非常に小さい資本で驚くべき厖大な数量に上る取引をやつておるのが現状であります。この問題を私どもは大きく取上げて、日本が貿易で立つて行かなければならぬ現実に対しまして、真剣な解決策を講じなければならぬというふうに考えておるわけであります。  外為の円資金の問題については、先ほど木内さんは円資金の問題にはあまりお触れにならなかつたようでありますが、私は同資金の問題について考えてみたいと思うのであります。外為に対するインベントリー・ファイナンスは二十六年度の八百億が、二十七年度には三百五十億に削減されました。これは二十七年度国際収支見通し、ユーザンス制度の改正の影響等を織り込んで削減されたものでありましようし、また外為の資金というものは、大きく見るならば、一つの運転資金でありますので、日銀からもう少し借りてもいいのではないかというような意味から、日銀からの借入れの限度が多少鉱大されておるようにも承知しておるのでありますが、相当の国際収支の受取勘定が引続き予想せられておる二十七年度において、外為円資金の不足に悩んでおる貿易金融が、ますます不円滑になるおそれが濃厚であるというふうに考えるのでありまして、この点につきまして、井上準之助さんの「論叢」の第一巻に、第一次世界戰争のあとで、皆様御承知のように非常に大きなインフレが起つた、その告白が載つております。それを見ますと、当時は兌換制度がございましたから、外貨なり外国の公債が手に入ると、ただちに日本に持つて来てそれは円となり、市場に出ました。兌換制度があつたがために外貨を獲得すること自体が、すでにインフレの原因なつたということを言つております。今の日本の通貨制度は御承知のように管理通貨でありますから、井上準之助さんのような困難な立場に置かれておらない。先ほど木内さんから話がありましたように、外貨が非常に豊富であつても、それに見返る円はできるだけしぼるという手があるわけであります。そういうことが予想されますので、外為のインヴエントリー・ファイナンスを減少せしめるということ自体が、円資金の不足ということを関連して、私ども産業人としては好ましいことではないというふうに考えるのであります。  それから民間資金の政府吸上策について申し上げたいと思います。二十七年度において、政府は資本蓄積対策として、郵便貯金の利子及び預金限度の引上げ、国民貯蓄組合の非課税限度の引上げ等の処置をとると大蔵大臣は言明しておるようであります。また簡易生命保険の限度引上げも行われるように伝えられております。政府が資本蓄積の対策に努力することはもとより好ましいことでありますが、民間から吸い上げられて国庫に入つた蓄積は、今までの結果から見ますと、とかく国庫にそのまま滞留されるものが多くありまして、資金の効率を十分に発揮し得ないうらみがあつたように思います。従つてこのような資金は、むしろ民間金融機関に吸上げをされてこれを活用する方が、金融を円滑化するゆえんであると思うのであります。政府機関が民間と競合して資金の蓄積をはかり、これを国庫に死蔵するというような結果に陷らないように、十分にお考えを願いたいと思うのであります。投資銀行の創設の問題が最近大蔵大臣の御発言以来新聞紙上その他をにぎわしております。私どもが長い間長期金融のことについて呼び続けて来たことが、今回大臣から議会においてはつきりそれはもつともだと言われましたことは、私どもとしては非常に喜ばしく存ずるのでありますが、これによつて政府が、開銀とか興銀とか、あるいは勧業銀行とかいうような長期金融機関がすでにあるものをそのままにしておいて、新しいものをつくるということがはたして適当であるかどうか、これらの既設の長期金融機関でさえも資金の不足に悩まされておるのであります。すなわち長期資金の資源を拡大することに、当面の努力を注ぐことが最も緊要でありましてまた毒にわれわれの必要に応ずる道であると思うのでありますが、金融機関それ自体の整備という問題は、この逼迫した当面の問題を解決したあとでもおそくはないのではなかろうかと思いますし、また今後つくるべき国家的規模における投資銀行というものは、講和後におきまして国連復帰の後、いわゆるブレトン・ウツズ基金とか、あるいはまた世界復興開発銀行との提携を進めて行くような、世界的規模のものを考案される方が賢明ではないかと思うのであります。当面の問題としてはむしろ既設のものに十分活を入れる手を打つていただきたいと私は考えております。  以上、大分時間をかけましたから、まとめて申し上げることはこの程度にとどめまして、あとは皆さんの御質問に応じてお答え申し上げます。
  90. 前田正男

    前田委員長 この際金井参考人に対する質疑があればこれを許します。志田君。
  91. 志田義信

    ○志田委員  一つ金井さんからお教え願いたいと思います。今インヴエントリー・ファイナンスの問題が出ましたが、対日見返り資金がなくなりましてから後の産業投資の財源につきまして、金井さんの方はどういうようにお考えになりますか。たとえばインフレによらない、あるいは租税によらないということにすれば、個人の貯蓄や、企業の社内留保というようなことを原則としておる産業資金だけにとどまるということになります。しかし日本の資本がきわめて欠乏しておる現段階におきましては、個人や企業の蓄積のみで日本の経済の復興ができるとは考えられないのでありまして、そういう場合に、資金の需要がまかない切れないということが出て来るおそれが非常にある。そういう場合に、業界にある皆様方としては、どういう手を打つたらいいと考えておりますか、それを承りたい。
  92. 金井滋直

    ○金井参考人 これはあとで千金良さんからも仰せられると思いますが、これは実に大きな問題であります。私どもから申しますと、農工商の産業人が一生懸命働いて貯蓄をする。それがどういうふうに流れて行くかと申しますと、先ほど来申し上げましたように、政府に吸い上げられたものはなかなか返つて来な、復金に返したものもなかなか返つて来ないという事情にありましてこの資金源をなるべく民間銀行に振り向けてもらうような施策が望ましいということは、かねがね主張して参つたのであります。最近その一つの方法として無記名預金の制度が実施されたのであります。それが一体どういうふうに預金増に現われて来るかということは、非常に興味のある問題だと思います。先ほど株式の好況の原因が何によつて出たかという御質問がありまして、これに対して日銀の副総裁は、たんす預金とはつきりおつしやいませんでしたが、隠れたる預金が出て来た傾向があるということをおつしやつたようであります。私もまだ隠れた金が相当あるのではないかと考える一人であります。無記名預金でどのくらい銀行の預金がふえるかということは、われわれはよく一つのかけをするような気持で話をしておるのでありますが、ある人は千億くらいふえるだろうと申しております。しかし千億ふえるかもしれないが、そのかわり記名預金の方が減るということも考えられます。そういう事態から判断しまして、千億ふえるという楽観的な考え方は私どもはできないが、何がしか、それも相当金額プラスになるというふうに考えます。これによつてオーバー・ローンの一部が多少でも減つて行くのではないかという一つの構想があります。それから先ほど外為委員長の木内さんからの話もありましたように、外貨どんどん余る傾向にあります。この傾向は今まではポンドだけで余つておりましたが、このごろはドルで余つている。ドルで余つているその原因を調べてみますと、サービスの收入が非常に多い。おそらくこれから日米間に、政治、経済、軍事各方面の協力態勢がしかれますと、貿易外ドルの収入というものは相当私はふえるのではないかと思う。これをもしドルをもらつたけれども、円資金不足のために換金できないのだというのであれば、産業資金というものは非常に苦しいのでありましようけれども、井上さんがやつたような一つの度胸でもつて、もし日本銀行がやつていただけるならば、この面からも相当の資金が出て来るのではないかと思いますし、この金たるや、先ほど木内さんもやがてはなくなる金だけれども、すぐなくなる金でないということを申しております。そのやがてはどのくらいの年月かわかりませんが、私どもはこの世界の緊張情勢の続く限り、サービスによるドル収入は非常にふえるというふうに考えておりますから、この面からも産業資金は出し得るのではないかというように考えております。
  93. 志田義信

    ○志田委員 今年はいろいろな意味で、講和発効後におきまする日本の経済界は、日本とアメリカとの経済協力、東南アジアの開発、もちろんこれは朝鮮の特需の問題もあるでありましようが、いずれにしましても日米経済協力の問題は非常に大きいと思います。その受入れ態勢について、何か財界で政府から要望を受けておつたり、あるいはそれぞれの部門で態勢を整えるような機関をおつくりになつておるでしようか。日産協のあなたの方はいかがでしようか。
  94. 金井滋直

    ○金井参考人 この問題は最初経団連の理事会で話が出ました。講和とともに政治問題でなしに経済上の協力も推進すべきじやないかというふうに考えまして、もうすでに御承知の方もあるかと思いますが、日米経済懇談会というものを組織いたしました。私その副委員長を承つておるのでありますが、ところがその後実際に経済協力が進んで参りまして、今日ではその懇話会の中で委員会が第一から第五委員会までできております。事柄が機密を要するものが多少あります。これは公開するような委員会でも、ございませんし、またその委員会の記録も発表はいたしておりません。そういうものをつくりまして政府、GHQ方面とも十分の連絡をとりまして、財界としては大きな推進力を出したい。この機会に私から御報告を申し上げます。
  95. 志田義信

    ○志田委員 つまり懇談会をつくられて、スクラムを組んで大量な注文を受ける。親工場になるなり、また下請工場になるのもございましようけれども、そういうような連絡をする。そしてそれぞれの施設をフルに使うというようなことも企図して、日米経済懇談会というような今お話のようなものができておるとしますと、この結果事業者団体法に抵触しやしないかという危惧を持ちますけれども、そういう点についての御検討はございませんでしようか。
  96. 金井滋直

    ○金井参考人 それは日米経済協力の概念についての意見の交換会でありまして、具体的に何々会社と何々会社と提携するという問題は論議されておりません。世界経済の見通しとか、国際コマーシャル・ベースというものはどんなものか。そのときどき変化いたしますから、そういうふうな情報交換であり、別に具体的に各業種が手を握つて事業者団体法に触れるというようなことは毛頭考えておりません。またその点も十分注意されて運用されておるようであります。
  97. 志田義信

    ○志田委員 リツジウエイ声明によりますと、諸法令の再検討が講和発効後においてなされる。三百四、五十の法令が再検討されることになつて、国会におきましてもいろいろやつおるのでありますけれども、皆さんの方といたしまして、事業者団体法あるいは独禁法改正に対しまするお考えは、日米経済協力の建前におきましても相当考えなければならぬものが出て来るのではないか。独禁法、事業者団体法の中で、一部改正を要望しなければならぬものがあるのじやないかと思いますが、その点はいかがでございましよう。そういうことをこの日米経済懇談会で御検討になつたことはございませんでしようか。
  98. 金井滋直

    ○金井参考人 その点は別に民間経済団体では委員会をつくつておりまして、すでに二、三の具体案を御当局にも具申してあるはずであります。もし御必要がありましたらその写しを差上げてもよろしゆうございます。
  99. 志田義信

    ○志田委員 その必要はやはりあるわけでございますね。
  100. 金井滋直

    ○金井参考人 はい。
  101. 志田義信

    ○志田委員 それからもう一つ最後にお尋ね申し上げたいのですが、日本のこれからの経済を担当して行かれる皆様といたしましては、いろいろ外資の面におきまして期待を持つているだろうと思われるのであります。電源開発その他におきましても重要なる問題であります。そういう場合に、それが政府投資という形がいいか、それからブレトン・ウツズ協定に参加することによる国際開発銀行あたりから借りるのがいいか、あるいはアメリカの輸出入銀行あたりから借りるのがいいか、それとも單純にアメリカの民間のインヴエントリー・ファイナンスにやつたらいいか、こういう四つの段階を考えた場合に、皆さんとしては日本の経済を復興する自立経済を達成するためには、こんなものがいいのだという何かお考えがあるかどうか、それをひとつ。
  102. 金井滋直

    ○金井参考人 これはなかなか複雑な問題でありまして、現在すでに相当大きな規模の企業家としては、その企業だけでそれこそ秘密にアメリカ資本と提携して、技術及び外資を導入している向きがあります。私はできるならこれが一番いいだろうと思う。一番話がよく徹底して、将来何か問題が起きた場合でも、これは簡單に解決がつくと思います。ところが日米経済協力態勢の要求の度合いが非常に高まつて参りますと、それだけでは済まされぬと思う。やはりある一つの力をもつてドルならドルを持つて来るというふうなことが考えられると思うのであります。それは抽象論であつて、具体的にまだ民間経済人は取上げておらないと思う。ただ一つ御承知のように電力債の問題、電力開発資金の問題、これらも今一社か数社かという問題がありますことは御承知だろうと思います。こういうことは結局政府の補償なども必要とするかもしれませんが、やはり電力会社自体で、向うの資本家なりあるいは電力業者と提携して、技術資本と並行して考えられる方が適当ではないかというふうに私は考えるのであります。要するに業者第一主義に考えて進むべき時期であるというふうに考えております。
  103. 福田喜東

    福田(喜)委員 先ほど金井社長さんが商業資本ということを言われましたが、三井物産の話、あれは大体株式資本というふうに解釈していいですか。
  104. 金井滋直

    ○金井参考人 今申し上げたのはもちろん資本金だけが一億、ところが三井物産の実際の価値力というものは、御承知の通り取引の三分の二は外国への取引、中国からアメリカ、アメリカからヨーロツパ、あるいはアメリカから南米ということで、私どももニューヨークに行つたときに三井物産のニューヨーク支店の規模の大きさに驚いた。決して彼らは日本と外国とだけを考えておつたのではない。そういうふうな大きな商社を再び期待することはできません。日本対諸外国ということになるだろうと思います。それにしても先ほども申し上げたように非常に資本金が小さ過ぎる、これを再編成しなければ、日本の貿易は十分に伸びないというふうに考えられるわけです。
  105. 福田喜東

    福田(喜)委員 いやに中小企業にこだわるようですが、別にそういう意味ではありません。中小企業に関しては、金井社長さんはどういうお考えでありましようか。また経団連の中で、中小企業のあり方について再検討をなさつておられるという御発言をなさいましたが具体的にどう持つて行くかということについて意見がまとまりつつあるということですか、現在の経済界で考えている中小企業のあり方について、またあなたの考えておられるところをお聞かせ願います。
  106. 金井滋直

    ○金井参考人 それはみな中小企業と一緒に行こうという考えは、大企業も持つておると思います。しかしこれをどういうふうに持つて行くかということが大きな問題だと思います。私も実はその実行者の一人であります。たしか去年の三月だつたと思いますが、名古屋の中部経済で、中小企業と大企業とがいつまでも競争的な形になつておるが、融和できないものかという質問を受けた。私の方は今蒲郡で織物をつくつておりますが、私どもの工場の規模は、中小企業そのままの規模であります。それを模範工場にして、そこでサンプルをつくつて、これを海外に出している。数量の注文を受けると、蒲郡の他の工場に出すわけです。
  107. 福田喜東

    福田(喜)委員 そうすると、一種の下請でございますね。
  108. 金井滋直

    ○金井参考人 そうです。最近化学繊維が進んで来ておるように思いますが、化学繊維関係においては仕事の一貫性が非常に必要です。ですから、化学繊維の事業に関係する中小企業というものは、私はまだ相当伸びる余地があると思います。
  109. 福田喜東

    福田(喜)委員 しかし化学繊維事業の一貫性も、たとえば織布の段階と中小企業の紡績の段階は、切れるのじやないですか。
  110. 金井滋直

    ○金井参考人 切れません。そういうふうにお考えになつておるところに間違があります。一貫性というものは私の方で考えますと、木材からパルプ、パルプをある一つの工場に流して、すぐレーヨンにするというように、上から見た一貫性があればよいと思いましたが、このごろはそうじやない。化学繊維というもののほんとうの値打ちは、下から来る。化学繊維をどういうふうに加工したら、ほんとうに羊毛にかわり、綿にかわり、麻にかわり得るかという加工面から来ているのです。
  111. 福田喜東

    福田(喜)委員 それからサービスによるドル收入は非常に期待できるというのですが、おもにどういう方面でございますか。
  112. 金井滋直

    ○金井参考人 これはあまりはつきり申し上げない方がよいと思うのですが、大蔵省で発表になつ予算にも去年より相当見積つておるように思います。五億五千万ドルくらいがサービスによるドル収入になつていると思います。
  113. 福田喜東

    福田(喜)委員 内容はおわかりになりませんか。およその見当でけつこうです。
  114. 金井滋直

    ○金井参考人 見当はつきますが、ここでは申し上げかねます。
  115. 前田正男

    前田委員長 金井さんに一つお尋ねしたいのですが、先ほど金融問題にからんで、商社とか事業界の再編成ということが考えられているというお話でありましたが、それは金融による整理統合を考えておられるのか、あるいは産業界自身、貿易というものはもつと大きな資本にしなければならないとか、あるいは中小企業というものを、もう少し健全な専門メーカーにしなければいけないとか、そういう点に対して産業界は、自主的に事業の再編成をやつて行こうと考えておられるのか、その点はどういうふうに考えておられますか。
  116. 金井滋直

    ○金井参考人 この問題は銀行が中心になるというふうにちよつと言われがちでありますが、実は一番よくわかつているのは銀行である。主たる取引銀行が一番よくわかつておる。しかしケース・バイ・ケースで行きますと、秘密を要するものがたくさんある。ですからその相談には、必ず主たる取引銀行の方にお立会い願う。しかし私ども日本の経済の相当の部分が輸出に依存している限りにおいては、また国内の流通を円滑ならしむるためには、商社の育成以外に手はないということはメーカーも十分に考えている。昨日の紡績大会社の会合におきましても、その線は十分に出ているように思います。ある場合には、かなりの犠牲を拂つてでも商社を育成して行こうという気分は、メーカー側においてむしろ非常に熱心ではないかというふうに私は考えております。
  117. 前田正男

    前田委員長 次に千代田銀行頭取の千金良宗三郎君にお願いいたします。なお千金良参考人は経団連の金融部会長であられます。
  118. 千金良宗三郎

    ○千金良参考人 ただいま木内外為委員長、二見日本銀行副総裁、金井興国人絹社長さんの各位より、十分にいろいろな点が取上げられました。私たちの考えておりましたことも大体同様でありまして、重ねてお話するほどのこともありませんから、できるだけ簡單に申し上げます。  まず第一に、資金計画に対する件でありますが、これにつきましても前の金井氏のお話と同じような考え方を持つております。資金計画のうちにあります一般金融機関による融資は、昨年から見ますると約一千億減少しておりますけれども現状としてやはりそれだけの資金を一般金融機関から出すことは、相当なオーバー・ローンというようなことも起るのではないかと考えられるのであります。本年度日本銀行からの信用供與が百八十億円で、非常に少く見積られております。しかしこのくらいで済むかどうかということは、よほど一般の資本蓄積の状況とあわせて見なければならない。要するにそれだけよけいに銀行券の増発も見込まれるのではないか、本年度の二月二日までのところでは、銀行券の増発は六百七十八億となつている。これが二十七年度の新計画の上に継承される、今のような通貨信用が行われた場合それと同額ではありませんが、それに相当するような通貨の増発が起るのではないか。しかしもちろんそれだけ経済活動が盛んになつたために通貨もふえるというのならば、必ずしもこれで悲観すべき問題ではないと思います。ただ今問題となつておりますのは、一般銀行のオーバー・ローンということは、どうしても通貨信用にまつほかはないわけであります。  資金計画につきましてはそのくらいにしておきまして、次に外貨予算についてでありますが、これも大体もう皆さんから論議し盡くされておりますので、ただ今これについて金井参考人からちよつとお話があつたようでございますが、要するに外貨のわくがきまつておる。一方において金融が振わない。従つてできるだけ輸入対策を講ずべきである。それには今のところでは自動承認制にしろとか、いろいろなことが言われておりますが、これもやはり内地の物価をなるべく引下げるために、輸入の促進ということはいいことでありますが、しかしいかに金がたまつておりましても、その金で何でもかんでも輸入していいというものではないのでありまして、やはりむだなものを買つてはだめなんであります。結局先ほど木内さんの言われたように、外国でできるだけ有利に買えるもの、これをドルにしろ、ポンドにしろ輸入するということが一番好ましいわけでありまして、従つて自動承認制といいましても、やはり無條件の自動承認制ではなく、従来行われておりましたような主要物資の自動承認制ということが望ましいと思います。貿易の状況を見ましても、暦年で行きまして二十五年度は、たしか国際収支としては三億三千五百万ドルですか、受超になつておりますが、しかし貿易じりは依然として入超であります。必ずしも貿易じりの改善ではなかつたのであつて、先ほどお話のあつたような特需並びに特需に対するサービス、そういうようなものも勘定に入つておるわけであります。貿易じりの正常なる改善ということも、もう一層心がけなければならない。それまでは金がたまつておるからといつて、むやみに輸入ということは差控えなければならないのではないかと思います。  それから一般金融政策の問題でありますが、これについても大分お話がありました。従つて私は今一々のことを申し上げませんが、基本的な考え方として申し上げたいことは、財政の規模が非常に小さいときは、——これは財政と金融と申しましても、金融の方で大体財政の面もまかなえるのでありまして、最近の八千五百億円というような非常に大きな予算が組まれるようになりますと、よほど財政と金融との連絡を密接にいたしませんと、どつちかにしわが寄つてしまう。どつちにしわが寄りましても、結局経済界としては不健全なものになるのでありますから、この密接な関係はどうしても失つてはいけないのでありますが、密接と申しましても、一般に均衡予算をとるということになると、その均衡予算が單に年度の均衡予算であるばかりでなく、もつとこまかい時期的にも均衡予算でありたい。できることならそうしたい。たとえば徴税期と同時に、政府の支拂期が来るというふうに行けば非常にいいのではないか。これは徴税技術の上からいつても、必ずしも行われるとは言えない。従つてちよつと先ほどお話にありましたように、一般財政の面におきましても、納税というようなものがありましたならば、それは一時民間の金融機関に滞留させるといいますか、そこに預けて置く、そうすれば必ずしも非常に大きな金融の逼迫を来すことはないということが考えられるのであります。ことに超均衡予算というようなことになりますると、どうしてもよほど一般金融面のしわを緩和するようにいたしませんと、経済界は非常な不便をここに感じます。また今度の予算にもありますような、たとえば講和関係の費用というような、支出の時期が必ずしもわかつていないようなものがかりにありといたしますると、これを緩和するために、一方に何らかの手段をつくつておきたい。たとえば資金運用部というようなものがあるとすれば、その面で一方の滞留金の緩和をはかるために、支出をするということができたならば、財政と金融との関係が非常によく保たれると思われるのでございます。  皆さんいろいろお話がありましたから、私の申し上げることはこのくらいにしておきまして、何か御質問でもありましたらお答えいたします。
  119. 前田正男

    前田委員長 この際千金良参考人に対する質疑があれば、これを許します——それでは委員長からお聞きいたしたいと思いますが、オーバー・ローンの中に相当こげつきといわれるものがあるのではないかというように一般に想像されているのでありますが、そういつた点については実情はどんな程度でございましようか。
  120. 千金良宗三郎

    ○千金良参考人 これは大蔵省あたりでごく最近もありましたが、われわれの方の検査をやる。その中に不良貸しとか、回収のあやしい債権というようなものが出て来ております。これはオーバーローンと言えばオーバー・ローンですけれども、ローンの中に行けない部分ですが、これは確かにあることはあるのです。しかしこれは全部の銀行については大蔵省はむろんわかつておりますが、私の方ではわかつておりません。われわれの確信から言ますと、非常に少いものであります。
  121. 前田正男

    前田委員長 もう一点お聞きいたしたいと思いますが、中小企業信用保険というのは法律できめられておりまして、市中銀行及び商工中金その他みな適用されるようになつているのでありますが、どうも商工中金がおもに適用されておつて、一般の市中銀行においては、信用保険をあまり適用することを好まない傾向があるということを聞いているのであります。そういうことに対しまして御意見を伺いたいと思います。
  122. 千金良宗三郎

    ○千金良参考人 われわれの立場から申しますと、多少費用がかかりましても、やはり元金を失いたくないのでありまして、特に融資のコストがかかるというので信用保険をつけないということはほとんどないと思いますが、中小企業の中でもいいのがありますから、保険の必要のないものはなるべくかけないで、融資を受ける人たちの費用を安くしたい、またわれわれとしても、よけいな手数をかけたくないということはあります。
  123. 前田正男

    前田委員長 ほかに御質疑はありませんか——別に御質疑もないようでありますから、本日はこの程度にとどめ、次会は明十五日午後一時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十分散会