○植原
委員 関連して……。今の
漁業の問題について、私は先日来いろいろの御
意見を承
つてお
つてどうもふに落ちなかつたが、きようのいろいろの
質問で、私は根本の問題がわかりました。それで
政府と
水産委員の間にかなりのかけ隔てがあることに気づいたのであり
ます。この場合に、私は
日本の国のために一言申し述べでおきたいし、なお
政府に対して一言述べておきたいと思い
ますが、根本の問題は、
公海の
漁業について平等であり、魚族を保存しなければならないということは、
漁業関係の
委員の方は、
外務省の方よりは、また占領治下において三国の
漁業協定をなすつた方よりは、もつと自分自身のことだから痛感されておると思う。この点において一点の疑問もない。魚族を保存し、平等の
立場において
漁業をしなければならないという点は、
漁業者自体がよく了解しておる。ここに一点の疑問もない。ただ問題は、こういうことを
政府当局は認識しておられぬのじやないか。
日本はこの小さな島に八千三、四百万の人間をかかえておるので、食糧の点から、
漁業は
日本国民にとつでは死活の問題である。
日本の国民に対して食糧の問題を一番よりよく努力によ
つて供給するところは海よりほかにないのであり
ます。
アメリカや
カナダは、これは
一つの営業の問題である、生活の問題ではないのである。
日本の国民は、これは命の問題であるということを、どうも
政府当局がよく認識しておらぬのじやないか、それによ
つて今の西経百七十五度線の状態を、簡単に
承認するというようなことになるのじやなかろうか。
日本の国情からして
漁業によらなければ
日本の国民は生きて行けない。移民をシヤツト・アウトされ、そうして一方において
日本のまぐろのカン詰は、私は
アメリカにおる間にかなり太
平洋沿岸の人に説きました。一体加州のサンジエーゴの、あの地方のまぐろ
漁業というものは、二十五年前
日本の
農林省の近藤技師が教えて、紀州からわざわざ魚取りが行
つてとらせたので、それはただ一局部の問題である。ところが
日本の場合には生糸の次に、一番まぐろのカン詰の収入があるくらいな状態である。その問題をほんとうに
アメリカの国民に説けば、これは何でもない問題である。ただ加州一州のノーランドあたりが選挙運動のためにや
つておるだけで、同じ太
平洋沿岸でも、オレゴンのウイラメツト・リヴアーにおける
漁業者は、一方においで
さけのカン詰をつく
つておるがへぞれよりも
日本からまぐろを持
つて来てカン詰にすることの方が有利であ
つて、太
平洋の
沿岸でも、利益の相反するところは賛成と反対が出ておる。あの大きな国においてすらその状態であるからこれは
日本の国情を徹底的に御理解にな
つていただきたい。また
アメリカは今日の
日本と、どうしでもアジアの問題を解決するために共同の歩調をとらなければならない。将来
日本をして世界を再建する有力な一国にするのには、どうしても持ちつ持たれつにしなければならない。この点をほんとうに
外務当局が
説明すれば、こんな問題を解決するのは私は朝飯前だと思
つている。
漁業に従事している者なら、やむにやまれないから運動にも行くけれ
ども、この運動に行つた
つて、ほとんど在外事務所はろくに助けもしておらない、その実況を私は見ておる。ほんとうに
日本はどうしても
アメリカと相提携して、今日行かなければなりません。これは
アメリカのためでもあり、
日本のためでもある。これ以外に、太
平洋においてアジアの問題を解決する道がないことははつきりしておる。それに、
日本が今ようやく立ち上ろうとするときに、
アメリカの国家の収入からいえば何でもない問題、ただ
アメリカの太
平洋沿岸、加州の一部におけるところの利益のために、まぐろの関税問題を出しておるのだから、この事情をよく
説明すれば何でもないのである。見るに見かねて、アチソンは飛び出したのである。この点を私は
日本の
当局がほんとうに理解していただきたい。
日本は
漁業によ
つて日本の食糧問題を解決することが一番大切であり、他に迷惑を及ぼさないことである。その点を力説しないで、ただ形式的に出て来たものを取扱うからしてそれだから百七十五度の線をとりきめられるようなことになる。またあのとりきめにおいて、
カナダと
アメリカは平等の
権利を持ち、
日本では五箇年間自制しろなんということを押しつけられたということはよほどまずい。
外交上
日本の国情を徹底的に
説明して
日本の
漁業は八千四百万国民の死活の問題であるということをほんとうに
説明したらば、私は何でもない問題だと思う。そこに手抜かりがあ
つて、ただ形式的に
一つのことが出て来たから、それをまとめさえすればいいという
態度、これは今までの
外交のやり方はみなそうです。できて来たことを、つじつまを合せてまとめて行けばいい、国民がどう言おうと、議会において、いいからかんのことを
説明して、それで通ればいいという
態度、ここに一番の問題があることを、どうか
政府当局において認識していただきたい。私は
政府を非難するのでも何でもないけれ
ども、もう少し
日本自体の国情をほんとに見て、日米の
関係がどうあるかということをほんとうに理解したらば、まぐろの関税を
アメリカの議会において食いとめるくらいのことは、朝飯前の仕事だと私は思
つておる。日米両国の
関係はどうしても切
つても切れない。これによらなければ、朝鮮の問題舌がたがたしておつた
つて、
日本を除いては、ほんとうに極東の問題、十億のアジア民族の問題を白人が解決することはできない。また
日本もこれと提携しなければ、世界に立つことはできない。この点を徹底的に認識していただきたい。
外交は技術じやないので、ただそこに出て来た文書をまとめてそうして一時を糊塗すればよろしいという
考えが私は今日の問題だと思
つておる。この問題をどうかひとつ徹底的に御理解を願いたい。
外交はただ文書の上で両方の
意見をまとめるだけじやない。生きるか死ぬかという問題を解決する問題です。全農林
大臣の言われるように、かに工船をとめたことは、
外務省も手伝
つて、しかたなしにきめたのだろうけれ
ども、この取引だ
つて私はずいぶんまずい取引だと思う。一方の関税の問題のために、かに工船を出さないで、遠慮するなどということは、腰抜け
外交の行き方だと思う。(拍手)こんなばかげた
外交をして、そうして戦争に負けた
日本の国を立てて行こうなどということは、とんでもないことだと思う。私は非難する意味じやないが、どうか
日本の国情を徹底的に認識してほんとうに政治とは
日本の国民を生かすか殺すかの問題であるということを御理解して文書の上で、あるいは話合いでまとめたら、それで
外交が済んだというようなことのないようにしていただかなければならぬ。追い詰めれば、かに工船の出漁を見合せてまぐろの関税の問題と取引するなどという
外交は、これは不手ぎわきわまる
外交だと思う。私は先日来
漁業の問題に対して、聞いてお
つて、わからないことがたくさんあつたが、今日ははつきりいたしました。
アメリカや
カナダで
漁業を
考えるのと
日本で
漁業を
考えるのと徹底的に違
つて、こちらは死ぬか生きるか、向うは
一つのインダストリーの問題で、大した問題じやない。こつちは死ぬか生きるかの問題であるということを念頭に置いて、
漁業問題の解決をしていただきたい。これは私の希望として申し上げておき
ます。