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1952-06-06 第13回国会 衆議院 外務委員会水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月六日(金曜日)     午前十時十七分開議  出席委員   外務委員会    委員長 仲内 憲治君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君    植原悦二郎君       大村 清一君    近藤 鶴代君       飛嶋  繁君    中山 マサ君       守島 伍郎君    林  百郎君       黒田 寿男君   水産委員会    委員長 川村善八郎君    理事 田口長治郎君 理事 永田  節君    理事 林  好次君 理事 佐竹 新市君       石原 圓吉君    久野 忠治君       鈴木 善幸君    冨永格五郎君       二階堂 進君    松田 鐵藏君   出席政府委員         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         水産庁長官   鹽見友之助君  委員外出席者         外務委員会專門         員       佐藤 敏人君         外務委員会專門         員       村瀬 忠夫君         水産委員会專門         員       杉浦 保吉君         水産委員会專門         員       徳久 三種君     ————————————— 本日の会議に付した事件  北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太  平洋公海漁業に関する国際條附属議定書の  締結について承認を求めるの件(條約第一四  号)     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 これより外務委員会水産委員会連合審査会開会いたします。慣例によりまして私が委員長を勤めますから、さよう御了承願います。  北太平洋公海漁業に閲する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。
  3. 仲内憲治

    仲内委員長 本件に関する質疑を許します。石原圓吉君。
  4. 石原圓吉

    石原(圓)委員 私は、北太平洋公海漁業に関する国際條約の内容のいかんは、沿岸漁業との相剋摩擦を起すおそれがありますので、わが国水産業生命線であり、全国漁民の運命を制する国家重大條約であるのみならず、平和回復後、独立国家新日本としての最初の国際條約でありますので、私は終戰以来わが国水産業界を代表する者の一人として日夜心胆を砕いて参つたのであります。  この国際漁業條約の準備工作として、衆議院水産委員会は、ダレス特派大使に対して、再度、日本漁業界の総意に基き、公海漁業道徳の高揚を期する水産資源保護法制定の用意のあることを伝え、対日講和会議に際しては、国会水産議員連盟理事長として、吉田首席全権に対して、日米加間の漁業交渉に関する日本漁民の切々たる衷情を訴えまして、首席全権としての善処を要望するなど、私は公人としてもまた私人としても、最善努力を盡して参つたつもりであります。  しかるところ、ただいま本委員会に提出されて承認を求められる本條約について、私は遺憾ながら不満の意を表明しなければならぬことを、すこぶる悲しむものであります。私は数項にわたつて政府に対して質問をいたし、あわせて要望いたしたいと思います。  まず政府に伺いたいのは、政府は何ゆえ占領治下日本として條約の折衝を開始したのか。何ゆえに非独立国家日本として日米加国漁業会議を急遽開催して仮調印をしたのか。当時私どもはしばしば政府に対して、少くとも漁業に関する国際交渉限つては、平和回復独立国家日本として折衝すべしと申し入れておいたのであります。あるいは政府としては日米加国漁業会議開会の当日、昭和二十六年十一月五日連合国最高司令官代理外交部シーボルド氏から日本政府に対し、この條約締結に対しては日本政府カナダ並び合衆国政府同等主権を有する基礎において行うことを確認するという覚書を交付ざれたと言われるかもしれませんけれども、これは一片の外交的辞令にすぎません。しかも根本農林大臣は本会議開会に際し、日本政府は今般自己の発意に基き三国漁業会議を開催し、公正なる協定基礎を樹立したい希望のもとに、主催国としてアメリカ及びカナダ両国政府に対し参加方招請しましたところ、両国ともわが方の処置に賛同され、欣然出席を受諾され云々とあいさつしておられる。さすれば政府は私ども進言を無睨され、みずから進んで占領治下において三国漁業会議を主催して開会させたのであります。政府はいかなる都合があつて、このような最も不利なる條件のもとに、本條約の仮調印をされたのか、まずこの点を御質問申し上げます。
  5. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま石原委員の御援用になりましたように、当時連合軍司令部よりいたしまして、カナダ及び米国政府同等主権を有する立場並びに基礎において交渉を行うということを、確認されておるのであります。それで非常に急いだといいますか、一刻も早く国際漁場に出て、日本漁業をかつて状態にもどしたい、また今後も幾多漁業問題において関係するところもあるのでありますから、一刻も早く国際漁業に復帰したい、こういうことで取急いだような次第でございます。しこうして御案内のごとく正式な調印講和條発効後において先般行われたのであります。そのとき別段本質的に論議すべきものがなかつた、単なる字句の数点の修正で終つたのでありますが、正式調印発効後に行つておるのであります。大体ただいま申し上げましたような趣旨からこれを取急いだ、こういうわけであります。
  6. 石原圓吉

    石原(圓)委員 表面の御説明はそれでよろしいのでありますが、この会議が始まるまでにアメリカカナダより日本に対して、この條約を早くしたいという要望がひんぴんとあつたということは、社会公知の事実であります。しかるにかかわらず、いよいよ交渉を開始するにあたりましては、ただいま申すように農林大臣欣然としてこれを迎えた、こういうような巷間伝えるところの一般的な公表されておる事実と、農林大臣あいさつとが矛盾をしておるのであります。この矛盾は非常に明朗を欠きまして、そうして日本全国漁民惑いを起しておるのであります。ゆえにこの点をはつきりしなければ、その次にやがて来るところの台湾中共朝鮮その他の各国との漁業協約も、ただいま停頓しております情勢から、一体どういうことになるのか。またただいま申されたように、契約はまだ先に延ばされたこと、これは国会承認を得なければならぬから当然のことでありますが、それまでにすでにさけ、ます、かに工船出漁というものが迫つて、そうして日本としては少くもこの農林大臣あいさつの点からいえば、一日も早く公海漁場日本漁民漁業を営みたいというところに重点を置かなければならぬと察したわけでありますが、それをわずかに独航船が五十隻にとどまつて、大きな期待を持つたかに工船出漁を見合した、こういう実情にあることは、ますます日本漁民惑いを払拭することはできないのであります。ゆえにこの際このいきさつはつきりとして、そうして今最も漁業のすべての点から困つておるところの全日本漁民に光明を与えなければならぬと考えますので、しいてこの質問を重ねていたす次第であります。
  7. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体趣旨は先ほど申し上げたところでございますが、欣然として日本が何いたしましたということは、日本主催国立場にもありますし、また先ほど申し上げましたように、総司令部よりいたしまして、まつたく独立同等立場においてやるということを確認されたもとに交渉が開始されることになつたのでありまして、そういう意味からいたしまして欣然と受諾したということでございます。それからかに工船あるいは鮭鱒出漁問題等につきましては、これはたしか水産委員会等でも何回か論議されまして、水産当局から偉ろく算があつたと思うのでありますが、将来の大局的立場から考えまして、この漁業條発効前に、たとい可能の範囲とはいえ、どんどん出て参りますことは、いかがかというような配慮のもとに、ああいう措置といいますか、状態出漁を始めたのでございまして、これも大局的見地に立つてのことでございまして、何も卑屈であるとか遠慮した立場で臨んでおるわけではないのでございます。
  8. 石原圓吉

    石原(圓)委員 これ以上極端に論議をしますことは、私ども議会人としての立場から、また今後に及ぼす国際漁業影響というようなものは人一倍に憂慮するのでございまして、その点に影響の起ることをおそれまして、ある程度以上は次の機会に譲りたいと思います。ただ私の繰返し申し上げますことは、どうしてガラス張りの明朗な方法外交交渉をしないのか、この点であります。さきにも申し上げます通りに、アメリカカナダから急いでこの協約をしたいと言つておることは公知の事実であります。しかるにかかわらず、日本が主体となつて、そうしてその結果がうまく行つておるならば、日本国民及び主として漁民は安心するのであります。けれどもそれがそう行つていないから、従つて朝鮮中共の停頓しておる問題が連想的に、ここに不安のもとになるのでありまして、このことは今後に非常な影響があるのでありますが、すべて最近においては一層ガラス張りどころでなく、曇りがかかつて来た感を与えるのであります。で、今後明朗に、ほんとうのガラス張り外交をもつて、この各国との漁業協約を成立さすべきである、こう私はかたく信ずるのでありますが、今後もやはり不明朗におやりなさるのか、今後は明朗におやりなさるのか、もう一度この点を伺つておきます。
  9. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この漁業條約が別に不明朗な態勢のもとに行われたというふうには、われわれは考えていないのでございまして、御質問になりました朝鮮の事例などは、まつたく先方の要求が国際法国際慣例を無規した要望を出しておりますから、この進展を見ないのでございまして、何も漁業條約がそれにたたつておるということは全然ございません。それからアメリカカナダから早くしてほしいという要望があつたことは事実でございますが、但しその当時日本といたしましても、一刻も早く国際漁場に出たい、そういう観点から、その要望に応じてみたいという興味も日本に当然あつたのでございまして、決して不明朗なもとに行われたとは考えておりません。今後ももちろんすべての條約の締結その他が明朗といいますか、明らかな立場でやらなければならぬことは、言われるまでもないことでございます。
  10. 石原圓吉

    石原(圓)委員 ただいま朝鮮漁業権の点につきまして御説明がありましたが、私はこの点に対して最も不安と不満を持つものであります。日本漁民といたしましては、太平洋よりは朝鮮、支那との漁業関係が重大であります。また大きさの問題としても、比較にならないとわれわけ考えておるのであります。この問題に対して政府が全力を注いで、一刻も早く妥当な協定をすべきであるということは、しばしばあなた方に進言を、公私の席において申し上げておるわけであります。この点は水産庁長官を初め、西村局長石原次官もよく御承知であろうと思う。ことに朝鮮漁場日本がすべてを開発してやつたのであつて日本漁業者朝鮮漁業者とは、全然背馳するような感情的なものは持つていないのであります。よつて私は、日本漁業者朝鮮漁業者とが国民外交をやつて、そうして大いにこの問題の促進をはかり、融和を期すべしという点は、しばしば申し上げておる通りであります。またそのことが必ず効果が上つて朝鮮漁民日本漁民代表者の間において十分協議をする、いわゆる国民外交をやるということが最も妥当であり、必要であり、緊急であると私は考えておるのであります。しかるにそれらのことは何ら実現を見ないのみならず、どういう形式で、どういう交渉をしておるのか、またその結末がどリなつたのか。しかも国会水産常任安員会に対しても、公人としても個人こしてもただの一言も、それに対する[容の報告とか説明とかいうものがないということは、まつたくけしからぬこ私は考えておるのであります。これ」対してどういう考え、どういう方針乞持つておられるか、この際はつりこお尋ねをいたしておきます。
  11. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 朝鮮との関係につきましては、わが国としても、一刻も早く妥結を見ることを望んでおるここはもちろんでございますが、しかし脚鮮については、御承知のように朝鮮との基本修好関係の問題であるとか、ての他請求権であるとか、国籍の問題しあるとか、いろいろ問題がわかれておるのでございまして、ただいま請求権の問題で妥結を見ざる点があつて、」の漁業問題だけ引離して條約を結ぶこいうことは困難であろうと思うのでのります。ことに漁業の問題については、先ほども申し上げましたように、元方が国際法国際慣例を無視したような要望を出しておりますので、日本こいたしましては、断固そういう要望に応じられないという立場をとつておるのであります。そういう関係で、朝鮮との交渉が延びておるわけでございまして、これはお説のごとく、気持といたしましては、一刻も早く妥結を見たいと思つておりますことは、言うまでもないところでございます。
  12. 石原圓吉

    石原(圓)委員 くどいようでありまりけれども、私の政治的立場は、四十幾年間ただ水産のことのみに終始一貫いたしておるのでありまして、そのために相当の経験を持ち、自信もあります。また朝鮮等においては自身その実地に臨んだ経験もあるのでありまして、一日も早く日本朝鮮台湾等の円満なる漁業協定をすることが、日本漁民の助かることであり、またそれは可能のことである。であるから最善努力をしていただきたいということを数回申し上げておるのでありまして、その点の御努力片鱗もうかがわれないということは、まつたく遺憾にたえないのであります。何ゆえにこの漁業上の国民外交をやつて、そうしてまず当業者と当業者との円満をはかつて両国政府もそれに聴従せなければならぬというところまで必ず私は到達し得ると思うのであります。そういうことをやつていけないということは、私は外務省水産庁が引きずられて、そうして外務省にあつては、世界全国協約をしなければならぬから、一方に片寄り、一方によくというわけには行かぬが、それに水産庁がのうのうと引きずられておるような形になつては、これは日本漁民の死活問題であります。そこを私は申すのでありまして、いくら叫んでもその片鱗も現われないので、やむを得ず私は野党のようなことも言わなければならぬ。これは私は日本漁業を通じて、日本水産を、日本漁民の将来を、また現実を憂慮するために申し上げるのでありまして、ただ聞き捨てにしておくというような考え方を持つてもらつてはまことに困るのであります。何らかここに打開の道を急速にはかるということの言明が得たいのであります。あらためて重ねてその点をお伺いいたします。
  13. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は、わが国といたしましても、一日も早く朝鮮との国交を始めたいことはもちろんでございます。ただいま、先ほど申しましたように、主として請求権その他の問題で先方と対立した形になつておるのでありますが、やがてまた交渉が再開されるときが来ると思つております。それからいろいろのお話でございますが、條約の交渉にあたりましては、やはり日本だけの立場意見というわけにも行かないのでございまして、相手方といろいろ会議のもとに発表の方法であるとか、あるいは協議方法その他は会議のもとに行つて行かねばならぬことは申し上げるまでもないところであります。それでただいままでのような形になつておるわけでございます。石原委員の御意見はたびたびの機会十分関係者が一同よく承つておりますので、今後ともできるだけ御趣旨に沿い得るように努力をいたしたいと思います。
  14. 石原圓吉

    石原(圓)委員 尋ねる者も石原でありまして、お答えになる方も石原であります。あるいは昔は一つの家から出たのかもわからぬ。非常にこれは懇親的な立場で行かなければならぬと思うのでありますが、しかるにかようなことを申し上げるのは、いかに私がこの漁業の問題で、立場上その感情を強めておるかということをお察し願いたい。願わくは西村さんや、水産庁長官も、お答えなり、御説明を願いたいと思うのでございます。しかし依然として外交交渉というようなことのみにたよつておられるということには、どうしても私は納得できないのであります。何らかの適当な方法両国の、これは主として朝鮮漁業に関することを申すのでありますが、できるだけ国民外交漁民漁民との懇談というような機会をつくり、そうして話を進めることが一番早道だと考えるのであります。なお重ねてこの点を要望をいたしておきます。  この総体質問はただいま申し上げるように、外交的な日本全体としての利害を考えなければならぬ関係上、あとは保留をいたしまして、他日総体的な質問をさらに繰返すことを御了承願つておきまして、この内容の一、二をお尋ねしたいと思います。  国会要望として、公海漁業條締結原則としては、第一、海洋水産資源世界人類が公正に享受すべきものであつて公海における船舶の航行、漁業操業は絶対に自由平等であること。第二、水産資源保護の必要上漁業抑止する場合は、双務的に平等の立場であるべきこと。公海に一線を画して沿海国の一方的利益を擁護してはならないこと。第三は、公海漁業実績、すなわち実質的漁業開拓歴史を認めること。これは沿海国と非沿海国とを問わない。すなわちたとい沿海国であつて漁業実績のない国は公海漁業権利を認めないこと。この三原則基本として、日本はいずれの国とも漁業條約を締結すべしということは、国会の強い要望であつたのであります。  しかるところこの條約においては、日本国漁業を自発的に抑止する海域を指定している。特に日本国として最も関係の深いベーリング海区のさけ漁業について、「アラスカの西海岸のプリンス・オヴ・ウェールズ岬から西へ西経百六十八度五十八分二十二秒五九に至り、次いで真南へ北緯六十五度十五分零秒の点に至り、次いで北緯五十一度・東経百六十七度を通過する大圏コース沿つてその大圏コース西経百七十五度の子午線と交さする点に至り、次いで南へこの子午線上の暫定的の線に沿つてアトカ島の領水の限界に至る線の東のベーリング海」においては、日本国さけ漁業を自発的に抑止するに同意することになつております。しかも暫定的と申す言葉があるのでありますけれども、その有効期間は十箇年であつて、決して暫定的とは言われないのであります。以上の線を定めたことについて御説明を求めます。
  15. 土屋隼

    土屋政府委員 公海自由の原則公海使用の自由を含むものであることは、これはもちろんのことであると思うのであります。この点においてこの條約は、條約案前文の第二項に、「主権国として、国際法及び国際慣習原則に基く公海漁業資源を開発する各自の権利に照して」という言葉で表わしておるのが、実は今御質問のございました公海自由の原則を確認したものとわれわれは認めまして、これを自由と認めたいきさつがあるのであります。そういう関係から見まして、この條約の公海自由の原則を、表面的ではありますが、はつきり認めておると私は言えると思うのであります。ただこの公海の自由と申しますのは、近年の国際慣習から見まして、必ずしも各国が常に他国に制限されることなく、自分の権利をただ権利として主張ができるという情勢ではないように考えられるわけであります。公海の自由を確保するためには、この公海の自由の使用というものが、各国にとつて利益があるように、人類の福祉に役立つようにというのが、主たる目的でなければならないはずであるわけであります。そこでもし各国がこの漁獲というものを自由に無制限にいたしますと、漁業資源保存に、あるいは漁業資源の枯渇を来すというようなおそれがある場合におきましては、関係国がお互いに協定いたしまして各国自由意思において協定した範囲内において制限を設けるということは、決して公海自由の原則にもとるものではないというふうな考えをもちましてその観点に立つてこの條約は一応の論議を進めて来たわけであります。ただいま、各国が自由平等の立場に立つべしという御説でございました。その点は私どもも全面的にそのように承知しております。従つてこの條約には、たとい一国が実績がない、あるいはその他の関係で自発的に抑止するという義務を負うにいたしましても、反面実績のある国はきめられた制限内において、保存措置内においてその漁獲を現在以上に進められないという義務を負うわけでありまして決して一方的に、片務的に、ある一つ締約国権利を持つ、義務を持つということにはならないと思うのであります。従つてこの点におきましては、形は一国は漁獲に従事し、一国は漁獲を自制しなければならないということになりますが、これもいろいろの基礎の上から、そういう義務を負うことが決して片務的でない、自由平等であるという原則を乱していないと思うのであります。また実績につきまして、沿岸国と非沿岸国を区別すべきでないというお話ももつともなお話で、これもこの條約の中では、会議中はいろいろ問題があつたのでありますが、結果といたしましては、沿岸国であるがゆえに、あるいは非沿岸国であるがゆえに、不当な利益もしくは不利益をこうむるという規定にはなつていないはずであります。ただ第四條の第二項でございますが、この際一項で原則を設けまして、原則に立ちまして例外を設けました節、カナダアメリカ沿岸につきましては、操業歴史的な交錯魚種交錯その他の点から見まして、特殊な例を設けたように見えますが、これもよくお読みをいただきますと、カナダもしくはアメリカ、ただ一国が実績があつたかゆえに、ほかの国、すなわちカナダ実績があるけれどもアメリカ実績がない。従つてアメリカだけに自発的抑止を勧告するとか、あるいは逆の場合におきまして、アメリカ実績があるが、カナダ実績がないから、カナダには自発的な抑止をしてもらおうということが、実際上操業歴史的交錯魚種交錯その他の点からできないのであります。そこでこの二つの国に対しましては、この沿岸のみにつきましては、特殊な事情を認めて、アメリカもしくはカナダおのおの一国だけの自主的な制限はしないでよろしいという規定を設けたことが、一応例外になるわけでございますが、この点は日本が自発的な抑止を受けるのではなく、アメリカカナダもどつちか一国だけが受けることがないという特殊な規定を設けたので、これも根本的に見ますと、自由平等の原則、あるいは沿岸国である、あるいは非沿岸国であるがゆえに、特殊な不利益をこうむるという原則は、ここに確立してはいないと思うのであります。またこの協定を十年間という期間に限つたことについては異議があるというお話であります。この点は私も交渉をするにつきまして、何年にするかという問題につきましては、ずいぶん論議を重ねたのでありますが、北太平洋に棲息する魚種で、将来もしくは現在におきまして漁業制限の対象となるような魚種につきましては、大体短かい期間ではその調査もしくは実際の結果というものはわからない。これはかなり長い期間を置いて実績を調べないとわからない。従つてこの條約は短かい期間にして、そうしてこの條約が適当であるか、不適当でちるかということを断定するということは、はなはだ当を得ないという結論を得ましたので、大体十年を限つて三箇国間におきまして、この協定下漁業を進めてみる、その結果、もしこの條約に不都合の点があれば、これを修正する、もし條約自身が不必要だという結論に達するとすれば、この條約は当然に廃棄されるという意味から、大体十年を常識的に考えてみて標準として三箇国の漁業操作を行つてみようという結果になつたのであります。
  16. 石原圓吉

    石原(圓)委員 ただいまの御説明の中に納得の行くものもありますが、納得できないものも相当あります。これは理論の点も相違があります。なお研究を要して主張をする点もありますが、ただここに西経百七十五度線をごの條文に入れなければならぬということは、どういう点から起つたのであるか。條約の中には、すべての問題は合同委員会で決するという條項があるのでありまして、それによつてこの問題をきめればよかつたものである。それにかかわらず、この百七十五度線等を條約文に差入れたのは、どういういきさつであるのか。日本の要求であつたのか、米加両国の要求であつたのか、そういう点がわれわれを非常に惑わすのでありまして、最近この百七十五度の東は保護を拒否するというようなことをカナダが申し出ておるというようなうわさもあるのでありましてそういうことになれば、初めからこの條約が非常に不安であるといわなければならぬのであります。それらの点も明快に御説明を願つておきます。
  17. 土屋隼

    土屋政府委員 この暫定線を設けましたのは、実際上今お話がございましたように、暫定線でなく、確定線を設けることに、日本側も、その他の関係諸国も意向を持つていたのでありますが、ただアメリカカナダ側の調査の資料として提出したものと、日本側の調査の資料の提出したものとの間に意見の食い違いがございまして、長い折衝を重ねましたが、その点につきましては、遺憾ながら両者の資料が食い違つた結果、そこにどうしても確定的な線を設けるということの妥結を見なかつたわけであります。そこで両者の主張を大体において合せまして暫定的にこの百七十五度線を設けることによつてさしあたりは両方の主張も一応妥協に達したのでありますが、ただ良心的に各部面につきまして審議を重ねて来ましたのに、おつしやる通り、さけ、ますの百七十五度線につきましてのみ、暫定線を設けざるを得なかつたわけでありますから、今後この條約が発効いたしまして、国際委員会が創立されることになりますと、この委員会で実際上の調査をして決定をしたいと思つております。また三国間で現に資料においての食い違いがありますので、今後できる国際委員会におきましても、三国を代表する委員の間に必ず確定線ができるという確証がないわけであります。そこでその際はどうするかという点から、さらに関係のない第三国の専門家に頼んで実際上の調査をして、その調査の結果につきまして、委員会はさらに審議を重ねてこれを確定線にしよう、こういうことになつたわけでありまして、日本側の主張が、さらに百七十五度線の東に、アメリカに近く回遊すると主張したのにかかわらず、アメリカはさらにこの百七十五度線よりは西のアジア地域に深く入つた方面についても、アメリカ産のますが棲息するという大体の調査を突きつけて、その結果が遺憾ながらこうした暫定線になつたわけであります。ただこの点はおそらく行く行く科学者の厳正なる調査のもとに、アジア系のさけと北米系のさけとの間の区別ができるのではないか。そうすれば、その区別によつてその線は当然に是正せらるべき問題で、その際両者の満足する一つの線がきまるのではないかと考えております。
  18. 石原圓吉

    石原(圓)委員 ただいまの御説明に対しては納得ができにくいのであります。ことにこの條項のうち最も不満とする点は、元来アジア系のさけとアメリカ系のさけとは、ともに成長期中ベーリング海で混淆して成長する。ことに、産卵のためにその母川に回帰するのでありますが、北アメリカの諸河で産卵され発育するさけの分布は、大陸たな及びその付近の海域に限られておるというのが常識であります。こういう点から申しましても、この線を定めるということは重大な問題である。なおこの三国の国際漁業條約における、公海におけるわが国に対する漁業抑止線の設定は、その後における関係国との漁業国際交渉に多大の支障を起しました。すなわち李承晩が理不盡な線を一方的に宣言しておるというようなのも、この点が私は原因しておるのであると断ずるものであります。従つてこの線の設定は、非常な日本不利益であると信ずるのであります。政府は国際情勢の見通しを誤つて、行政措置の上においても果敢を欠いた結果が、こういうことになつたのではなかろうかと私は信ずるのであります。そういう点には遺憾なくやられたのか、誤りがなかつたと信じておられるのか、その点を伺つておきます。
  19. 鹽見友之助

    ○鹽見政府委員 この暫定線が日韓協定の場合の障害になつているのではないかというふうな意味のお尋ねと存じますが、日韓協定においては、御存じの通りに、李承晩ラインというよろな大陸だなを純領海的に見ておるような主張を持つて参つたわけでありまして、その場合、日米加三国漁業條約の場合におけるさけ、ますが、やはりそれぞれ陸の方において保存措置をとつておる、それの海の方へ出て行つて回遊する範囲というふうなものを推定する場合と、大陸だなの関係とはこれは違う原因から考えておるわけであつて、日韓交渉において別に障害になつたというふうには思つておりません。また本條約案の建前自体が、保存措置をとつておるというふうなものについて協定を結ぶという建前からして、日韓交渉の場合の日本側の主張もそういう立場をとつたわけであつて、それについてこの暫定線というふうなものが障害となつたというふうには感じておらないわけでございます。
  20. 石原圓吉

    石原(圓)委員 百七十五度線というような、合同委員会できめればいいことを、本條約に挿入したから、それが世界の注視するところとなつて、自由漁業公海の自由という原則に対する一つの傷をそこに残したという意味に私は解釈をするものであります。それが影響して諸外国に、自分の国のみ有利な線を引かんならぬという観念を与えたことは、争われない事実であると思うのであります。この点はこの程度にして、後日にまわします。  とにかく外交の折衝においては、東洋式と申すか、日本的と申すか、よけいな遠慮をして、ますます先方からなめられておることは事実であります。なかんずく北洋のかに工船を本年は中止する、さけ漁業操業区域を米加の希望以上に縮小する、わが漁民を退嬰萎縮せしめておるのは事実であります。政府はその理由として、まぐろ関税の問題があるから、米国を刺戟してはならぬというような言辞を使つておるのでありますが、そもそも條約と物との交換的な非常な卑劣な考え方を外交官が持つということはたいへんなことであります。そのこと、そのことにおいて解決すべきであつて、これがいけないからこれを犠牲にするというような考え方では、日本の将来の外交というものはますます危機に瀕すると私は思うのであります。こういう点から考えまして、われわれが期待しておつたところのまぐろの税も、聞くところによれば、米国の上院歳入委員会は、これにポンド当り三セントの関税をかける法案を可決した、こういうようなことが公表されておるのでありまして、まことにこれらのいきさつを考えまして、将来を憂慮するものであり、本案を愼重審議せねばならぬと考えておるものであります。私は時間の関係上、総体的質問の一部を残して、一応これでもつて私の質問を中止いたします。
  21. 永田節

    ○永田委員 本日政府側から御提案になりましたところの、この北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求める案件、この問題はすこぶる重大であつて、われわれ水産委員会においても、過去数箇月間政府側にこの説明を促しておるのでありますが、前長官時代より今日まで、一度もさようなわれわれの質問に対して、御説明がなかつたことをまことに遺憾とするものでありまして、さようなことが、すなわち今日の段階において、かような紛糾をかもすということになつて来る原因になつたのであります。そこでにわかに、かような重要な問題を、この外務、水産の連合審査会に御提案になつて、ただちに結論を見出すということは、まことに困難であり、われわれとしてもすこぶる迷惑千万であります。責任のある態度をわれわれはとれないのであります。先ほど来、石原委員からなる政府の無能なところを暴露されたのでありますが、現在政府に対してわれわれが遺憾に思うのは、外に向つてはすこぶる軟弱であり、内に向つてはまことに横暴である。(「その通り」)かようなことは、政府において愼重に事を決するという準備に欠けておるものであることを指摘したいのであります。まぐろ関税の問題でも、関税を一方的に引上げ、それが諸外国に蔓延してその徴候が現われた。そうすると日本としてもやはりそれをほうつておくわけには行かない。やはり関税政策をとらなければならない。そうすると、関税政策に陷つて、世界はやがてこの米国の暴挙によつて救いがたい不況を来すということは明らかである。さようなことについて政府は何ら打つ手を知らない。また先ほど石原政務次官から、かに工船の問題は水産委員会において了解が済んでいるというふうな御意向でございましたが、われわれの委員会において外務省が御発表になつたときは、事後の承諾を求めたので、事前に何ら了解がなかつた。その委員会の速記をごらんくださればわかるのですが、われわれは猛烈に反対したのであります。しかし事ここに至つて外交上やむを得ないから、まげて認めてもらいたいということであつた。いわばわれわれの力によつて吉田政府を支持してあげた、かような結果になつて来ておる。そこでこの問題はすこぶる重要な問題であるから、今日は一応これで打切つて、われわれ水産常任委員会においてもごの議案を委員会にかけまして、独自の立場において検討してみたいと思います。従つて今日はこの程度で連合審査会の審議は打切られんことを希望いたします。
  22. 仲内憲治

    仲内委員長 本日の連合審査会はこれにて散会いたします。次会は来る十一日水曜午前十時より開会することにいたします。     午前十一時十二分散会