○岡崎国務大臣 私も
中山委員のお考えのようにこれらの人々のことはできるだけ問題にしない方がいいと考えておるのでありますが、しかしなかなか大きな宣伝をいたしておられますかり、そういう意味からいうと、政府の考え方をここで申し上げた方が、あるいは適切かと思うのであります。そこで私もある
程度これらの人々の言
つておることと伝えられる新聞の資料等も見ましたし、また高良氏のごときは外務省へ来たこともあるのであります。いろいろこまかに見てみますと、この三人の人々はどういう目的であるかはわかりません。あるいは選挙が近いからというなことかもしれませんが、とにかく全部が宣伝である、私は根拠のない宣伝である、こう申してさしつかえないと思います。
従つてこれについてあまりいろいろ言うことは、かえ
つてその宣伝の目的を援助するような結果になるのでありますから、思わしくないと思
つておるのであります。しかし今御指摘のように、政府が非常に詳しい調査をいたし、各種の資料を集めて調べた結果があるのみならず、
在外同胞
帰還促進全国協議会というような
関係団体が非常な苦心をしまして、手紙を集めたり、あるいは帰
つて来た人にその知る限りのまわりの人々の消息を確かめたりいたして、その結果を集計しました、それこそりつぱな資料に基くものを何ら考慮することなく、そうしてソ連の人の言うことならば、その地位がどういうところであるか、その責任がどういう人であるかは一向おかまいなく、ただソ連の人が言
つたということで、そつちの方は完全にうのみをして、これを
日本で言
つて歩くというようなま
つたく見識のないやり方で発言をいたしておるのでありますから、とうてい私はこういうものを信ずるわけに行かないのであります。また現に今
お話のように、
日本においてさえ死人が千人に十二、三人という死亡率があるのは当然でありますから、いくらソ連の医術が進歩したからとい
つて、一人も死なないというわけはないのであります。現にソ連人はたくさんな死亡率があるのであります。そんなこつけいなことをだれも信ずるわけに行かないのであります。お墓があ
つたということでありますから、やはり死んだ人はあるのでありましようが、これについても、そのお墓が一体何のお墓であるか、お墓の中をかきまわして見たわけでもありますまいし、名簿がそれについてはあるとい
つたつて、その名簿を見たこともないわけでありますから、お墓があるということ自体が、それが
日本人のお墓であるかどうか、これも実はわからないのであります。ただ
先方の人が、これは
日本人の墓であると言われたから、これは
日本人のお墓であると信じて帰
つて来ただけのことと思われます。もしソ連政府にちやんとした名簿があるならば、これは当然
日本にこれを送ることが、国際法からいいましても、国際的の通念からいいましても、当然のことでありまして、ソ連政府がそれを持
つておりながら、
日本にこれを届けない、知らせないということは、これは非常な間違
つた行為であることは申すまでもないのであります。この点についても、私
どもは
日本におります遺家族の人々の心情を思
つて義憤にたえないのであります。よくそういうことをのめのめと言えるものだ、こう考えております。またこれらの人々が中共へ行きまして座談会をや
つた、こう言
つておられますけれ
ども、その座談会なるものは今
お話のように完全に統制されたつくりものであるとしか私
どもは考えられないのであります。これは何も中共に限
つたことではありません。共産国家のいずれにおいても行われておることであります。現にわれわれはいろいろの方面からいろいろの手紙を見せてもら
つておりますが、それは中共におる人々、
日本の人々が何とかして帰りたいという切々たる真情を訴えて来ておるのでありまして、
日本に帰りたくないとか、ときどき
日本に帰
つたり、中共に行
つたりすればいいのだというようなことは、私はこれはうそにきま
つておると思います。それはおそらく良心があれば、これらの三人の人
——高良氏なり、十分中共で実地に見てわかるはずだと思います。もしわからないとすれば、それはほんとうの共産主義の人々ばかりを集めた座談会であ
つたに違いないと思います。が、いずれにしましても、この
日本に届いて来る手紙の事情から見まして、中共へ実地に行
つた人がそういうことがわからないで帰
つて来たとすれば、これはもうむしろこつけいだと思うくらいでありますが、その
程度の認識しか持たないとすれば、ソ連の中をどこを歩いたのか知りませんけれ
ども、ソ連においても同じような認識しか持てないものである、こう断ぜざるを得ないのであります。要するにこれはま
つたく根拠のない宣伝をいたして、そうして留守家族その他
国民を侮辱するものであると私は強く考えておるのでありまして、こういうものを取上げる
気持は全然ありません。また
日本の
国民、特に留守家族の人々が、こういう人たちの言うことに迷わされないようにぜひお願いしたいと思いますので、こういう機会にこれらの人々の宣伝のお手伝いをするようになると好ましくないのでありますけれ
ども、特に発言をいたしてその点を明らかにしたいと考えておるのであります。