○山田説明員 私調達庁の労務次長であります。呉地区の英濠軍に使われておるところの人々のストライキ
状態、それから解決の状況、これに臨んだ
政府の態度、こういう御
質問でございますが、実は
平和條約発効までは終戰処理費によりまして、英濠軍が必要とする労務者を
日本政府機関がこれを雇い入れて
向うに提供しておつた、その雇い主は特別調達庁であつたということであり、実は
平和條約発効後におきましては、調達庁はこれに対しまして労務は提供いたしておりません。
従つて所管ではございませんが、占領終結まで、ビーコフの必要とするところの労務者を提供し、管理しておつたという
関係で、呉地区のビーコフの直用に
なつた労務者諸君のその後の待遇その他につきましては、常に関心を拂
つておりますので、所管ではございませんが、そういう
立場から御説明いたします。
ただいま御指摘のように、呉地区に今およそ九千ほどの
日本人従業員が英濠軍に直用で雇われております。なおストライキをやりましたのは、この呉地区の労務者以外に、山口県の岩国におりますところの、これまたビーコフに使われておるところの直用労務者約千人ほどが、一斎に三十日の午前零時を期しまして、四十八時間ストに入
つたのであります。
そこで何ゆえにストライキに突入したかといういきさつを、広島県庁の連絡、あるいは
関係の労働組合からの連絡を基礎といたしまして申し上げますと、
関係の労働組合はビーコフの必要とする労務者につきましても、
アメリカ駐留軍が使
つておりますところの
日本人労務者と同様に、間接雇用にしてくれという要望を持
つておるのであります。しかしながらそれに必要な協約といいますか、協定が英濠軍とわが方とにおるわけではありません。
従つて平和條約発効後におきましては、ビーコフは一切直用でや
つておるわけであります。
そこで直用に
なつた後の待遇と、占領終結前に
日本政府が提供しておつたときの待遇とを比べますと、基本的な給與については変更はございませんが、
日本政府機関が提供しておつたころに支給しておつた扶養手当といいますか、家族手当、これはビーコフ直用に
なつた後においては、支給をしないということが大きな違いであります。そのほかに占領終結前には、
日本政府機関といたしましては、勤続に応じて退職手当を支給しておりましたが、ビーコフ直用に
なつた後におきましては、この退職手当は支給もない。その理由としましては、失業保険を適用する。これによ
つて失業した際、その後の保障をする、ゆえに退職手当は支給しない、かような取扱いに
なつたわけであります。もう一度申し上げますと、扶養手当を支給しなく
なつたということ、退職手当を支給しなく
なつたこと、この二点が大きな違いであります。
労務者各位は、これに大きな不満を持ちつつ、占領終結後今日まで仕事をしておつたわけであります。そこで
関係の労働組合といたしましては、数次にわたりまして英濠軍の労務担当の将校あるいは司令官に、待遇の改善方を要望してお
つたのであります。それが六月の下旬のごろまでの状況でありますが、六月の二十四日ごろに、司令官といいますか、
向うの代表者から待遇改善要求事項に対しましての回答があることにな
つてお
つたのでありますが、本国の方からの承認がまだないというようなことでも
つて延び延びにな
つておつた。そういうような状況にありましたところ、回答が遅れるような場合においては、労働組合といたしましては、また労務者側といたしまとても、ストライキに入るかもわからぬというような通告をいたしておつたようであります。そこで具体的にストに入りました。
スト前に要求しておりました事項を申し上げますと、まずビーコフ直用の労務者についても、労働三法を適用しろということが第一点。それから従前
日本政府が使用の際に支給しておつた扶養手当とか年末手当、それから夏期手当といいますか、公務員に今回出ました臨時手当、そういうようなものを支給しろ。それから従前使われておつた者を完全雇用せよということ、それから退職手当の制度を復活しろということ。それから将来
米国関係の労務者の給與につきましてベース・アツプが行われた場合におきましては、同時同率をも
つてベース・アップを行えということ。それから英濠軍は、すみやかに
関係の労働組合と労働協約を結べ。大体この六点であつたと記憶しております。ところが先刻申し上げました
通り、
向うとの話がうまく進まぬというので、三十日の午前零時を期して四十八時間ストに、呉地区の労務者と岩国地区の労務者が入つたわけであります。
そこでその後の状況は、これまた広島県から連絡を受けたところでありますが、ストに入
つてから間もなく
話合いがかなり進みまして、さしあたり要求事項のうち、扶養手当の支給は復活するということ、それから夏期手当は、米軍
関係の労務者に支給された程度のものは支給するという二点がきまりまして、それから退職手当等の問題につきましては、なお研究して答えるというようなことになりまして、争議それ自体は、十七時間程度でも
つて終つたというように聞いております。
そこでこれに臨みました
政府の態度と申しましても、私は先刻申し上げました
通り、占領終結まで、これらの労働者の大部分を雇い入れ、管理をしておつたという
関係上、現在でもこれらの人々の扱いというものに関心を持
つておるということから、事柄を知
つておるという
立場に立ちまして御説明を申し上げたのであります。従いまして、これに臨んだ
政府の態度というようなことは、私から申し上ぐべきことでないと
考えますので、この程度で御了承願いたいと思います。
それから
アメリカ関係の駐留軍の必要とする労務者の雇用形態の問題についての御
質問でございますが、これは今までといいますか、占領後ずつと終戦処理費をも
つて、
アメリカ軍のみならず、他の連合国軍の必要とする
日本人労務者の提供も、
日本政府が無
條件降伏したことに伴う義務として
向うに差出しておつたわけであります。そういう
関係にありましたが、昨年七月以降は、
米国側が必要とする労務者につきましては、
アメリカ政府が経費を一切負担するということに相なりました。その形式は、
アメリカ政府を代表しましたところの対日調達本部の司令官と、
日本政府をこの面で代表しますところの調達庁
長官が、労務基本契約と申しておりますがこれを結びまして、七月以降は
アメリカ側からドルの償還を受
けつつ、
日本政府が労務者を雇い入れる雇用上の責任者となりまして、
向うに提供しておつた。こういういわば間接雇用の形式をと
つております。行政協定のでき上る前に、今までのような間接雇用を続けるか、あるいは直接雇用にするかどうかというような問題も若干あ
つたのでありますが、その労務基本契約を使
つてただいまも間接雇用の形式をも
つて、
アメリカ軍が必要とする労務者につきましては、
日本政府が雇い入れて
向うに提供するという、いわば間接雇用の形式をと
つております。しこうして給與の決定という問題でございますが、雇用主が調達庁
長官と相な
つておりますので、法律上は当然雇用主たる調達庁
長官が、勤務
條件その他給與等の基準は定めることに相な
つております。これは今
国会で御
審議をいただきまして、去る六月十日に公布になりました、
日本国との
平和條約の効力の発生及び
日本国と
アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定の実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律によりまして、調達庁
長官が明らかに駐留軍労務者の給與その他の勤務
條件は定めることに相な
つております。ただ一言つけ加えて申し上げておきたいのは、法律上かように相な
つておりますが、労務の提供、労務者に支拂うところの給與、それからこれの管理に必要な経費は、一切
アメリカ側から償還を受けるという建前に相な
つております。従いまして、調達庁
長官が給與等を定める場合におきましては、やはり経費を実際に負担しますところの
アメリカ側と事前によく連絡いたしまして、最後的な決定をするという手続は必要かと存じております。それから、講和條約発効に伴いまして、身分切りかえに
なつたところの労務者の退職手当はどう
なつたかという問題でありますが、これまた、ただいま申し上げました公務員法等の一部を改正する法律によりまして占領下に連合国
要員として勤めました期間に応るところの退職手当は、現金では支給いたしませんが、将来の退職事由に煩わされることなく、軍命解雇と
なつた場合と同率の、言いかえれば最高の退職手当を支給する。なおかつ退職手当の利子と将来の退職事由に煩わされないという二点を保証するほか、駐留軍労務者にな
つてからこの退職手当をもらうまでの期間、すなわち退職手当をもらう時期といいますのは、駐留軍労務者を最後的にやめる場合でありますが、その期間までは年五分の割合をも
つて計算したさらに特別の手当をつけるという措置を講じたわけでありま