○黒田
委員 そういう御議論でありますから、要するにこの條約の
効果の及ぶ
地域は、国府
政府が現実に
支配しておる
地域以外の
地域ではない。
従つて戰争終結ということも、この條約の
効力の及ぶ
範囲以外であるところの
中国本土については、まだ
効果を発揮していない、こういうように私どもは解釈せざるを得ない。こう考えることが私どもの解釈である。だからこの條約は事実上は、
中国本土との條約なんかになり得べきものではない。実際に私どもが
中国と
戰争状態を終結しようとするならば、
中国本土に
効果が及ぶような条約を結ばなければならぬ。そうでなければ、
中国本土と態争
状態を終結する條約とは言えません。だからこそ私は、この條約はナンセンスだという議論をしたのであります。それは別問題として、とにかく今明らかになりましたように、戰争終結という、この條約でうた
つてありますところのその
状態の
効果が発生するのは、
中国本土についてではない。こういうことを
はつきりしておけば、私はそれでよろしいと思う。一体
中国との
戰争状態の終結は、どの
地域に
効果が生ずるかというと、それは現実に
支配しておりますところの
台湾、
澎湖島において発生するというように考えなければならぬ。しかしこれは私はま
つたくナンセンスだと思う。
台湾及び
澎湖島の住民と
日本は戰争したのではありません。だから戰争終結の條項が、
台湾及び
澎湖島において発生するということを
意味するとなれば、ま
つたくこれはナンセンスだ。戰争しなか
つた住民と、私どもは戰争終結の
効果について話し合う必要はない。だから私は、とにかくこの條約は、何べんも申し上げますけれども、私の頭ではどうしてもこれはナンセンスだ。ま
つたくこの條約をや
つた政府の真意は、私どもには理解できないのであります。そこでこれに反対をしたのであります。しかし大体私の申し上げたところはおわかりくださ
つたと思います。
なおついでに
ちよつとお尋ねしておきますが、一体
政府は
中華民国とはどういう国と考えておるかということにつきまして、ただいま倭島
局長から一応の御
説明がありましたが、私はこの点についてもう少し
質問してみたいと思います。一体国家であるためには、
領土がなければなりません。それから人民がなければなりません。それと同時にその人民によりまして自律的に、かつ永続的に、存続する
状態として組織せられておりますところの統治組織がなければならないと思います。ところが一体
中華民国というものは、この條件を備えておるかどうか。私は
日本人としては常識をも
つて物事を考えながら、外国に対処して行かなければならぬと思います。
中華民国政府が
中華民国が
存在しておると言うから、
日本も
存在しておると思う。そういうことでまじめな外交なんか私は行われるものではないと思う。
中華民国というものは何か。なるほど
中国本土及びその島嶼をもつで
中華民国の
領土とすると、蒋介石
政府は言
つておるようであります。けれどもこれは事実上
支配を今は失
つておる
地域である。将来あるいはその
支配を回復するかわかりません。けれどもまた先ほど申しましたように、全然回復し得ないかもわからない。現在の
国際情勢から申しますれば、むしろ回復の見込みはないと私どもは考えなければならぬ。そこで
中華民国が
中国本土及びその
付属島嶼を
領土としておるといいましても、それはま
つたく
観念上のものにすぎない。現実に
領土であると称することは非常識だ。
日本の外交当局は、こういう架空の
観念のもとに
中国と條約を
締結し、国交を結ぼうとしておる。私どもにはどうしても合点が行かない。しかし
観念的なものにいたしましても、
領土はかりにそういう
観念上のものとしてあるとして、それでは一体人民はどうか。
中国本土に生活しております人民は、現在、
日本の
政府が好むと好まないにかかわらず、中華人民共和国を支持しております。その国家の人民と
なつておるのであります。彼らは決して
中華民国というものを支持しておりません。一体
中華民国の人民はどこにおるか、私どもにはわからないのであります。国家であるためには、人民がなければならぬ。
中国本土の人民は
中華民国の人民であるというふうには、私ども健全な常識をも
つては解釈することはできない。そうすれば、
中華民国には
観念上の
領土はあるかもわかりませんが、一体人民というものはないではないか。
中華民国政府が、中華人民共和国を支持しておる人々を
自国の人民だと言
つてみても、そうであるためには、それが
中華民国政府を支持していなければならないのでありますけれども、実際は支持していないのでありますから、私は
中華民国には人民はないと思う。それでは一体何があるかというと、
中華民国政府の代表者と称する蒋介石
政府というものがあるにすぎない。私は
中華民国というものは、こういうものだと思います。決して私どもの健全な常識をも
つてしては、国家の体をなしておるような国では、
中華民国というものはないと思う。
日本の
国民はこう考えて対
中国外交政策を打立てなければ、すべてのことがゆがんでしまうと思うのであります。こんなことをやらしておるのはだれか。アメリカが国際的に横車を押して、
承認すべき
中国本土の
政権を認めないで、
台湾を軍事的に利用しようとする、そのアメリカの世界政策が、今はからに
なつてしま
つておるところの
中華民国というものを、それを
存在の條件を備えた国家だというように国際上思わせて、自分もそういう態度をとり、国際連合でもそういう処置をと
つている。けれども実はそれだけにすぎない。アメリカのやることは、国際慣例に反し、国際上の普通の行き方に反しておると私どもは思う。それを
日本がまねると申しますか、そういうように解釈させられて、事を運ぼうとするから、こういう矛盾した條約の
締結になると思う。ひ
とつ倭島
局長から
中華民国とは何ぞやということを、もう少し聞かしていただきたい。これはあまり議論しても何でありますから、これ以上に議論はいたしません。一応
政府の御
意見を聞かしていただきたいと思います。