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1952-06-13 第13回国会 衆議院 外務委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十三日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 足立 篤郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 佐々木盛雄君 理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       飛嶋  繁君    中山 マサ君       守島 伍郎君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (條約局長)  下田 武三君         外務事務官         (入国管理庁審         判調査部長)  鈴木 政勝君         一等海上保安監         (海上保安庁海         事検査部長)  松平 直一君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  北太平洋公海漁業に関する国際条約及び北太  平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書の  締結について承認を求めるの件(條約第一四  号)  千九百四十八年の海上における人命の安全のた  めの国際條約の受諾について承認を求めるの件  (條約第一五号)  インドとの平和条約締結について承認を求め  るの件(條約第一六号)     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  インドとの平和條約の締結について承認を求めるの件、北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件、及び千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約の受諾について承認を求めるの件を一括議題といたします。  各件に関する質疑を許します。菊池義郎君。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 この目印條約第三條でございます。「公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業保存及び発展規定する協定締結するために、インドが希望するときは、インドと交渉を開始することに同意する。」というのでありますが、この公海に関する両国間の協定というものが一体どういう効果があるか。海洋自由の原則によつて、海洋というものは万国がかつてに利用することができるものであります。この領海外公海に関して両国協定を結ぶということ、そのことがすでに不合理ではないかと思うのでありますが、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはサンフランシスコ條約の第九條をそのままとつたのであります。従つてこの問題についてはサンフランシスコ平和條約の御審議を願つた際にすべて申し上げてあるのでありますが、念のため申し上げますれば、たとえば普通の場合は御説の通りでありますが、魚がだんだんとり盡されて年々減つて来るというような事態もあるわけです。そういう場合には満限とよく申しますが、もう一ぱいとつておる、これ以上とれば減るという場合、そういう場合には満限に至る程度にしかとらない。それ以上とつてだんだん減らしてしまいになくしてしまうということはすべきでない。あるいはそういう場合に魚族を繁殖させる措置を講ずる、たとえば卵を孵化さして流して、それで一定の間大きくなるまではほつておいて、それからとるというような、漁業の、長きにわたつて一定の、最高度漁獲高を上げ得るような、いろいろの措置をとる必要がある場合があるのであります。日米加三国の漁業條約も、その趣旨でつくつておるのでありますが、その趣旨もそういう特殊の場合を考えましてサンフランシスコ條約で第九條にこの規定を設けておるのであります。そこで今度の條約には、第九條と全然同じ文句で、ここに同様の規定を設けた、こういうわけであります。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 それはわかりますが、この二国間の協定は、第三国を拘束する力があるかどうか、これが疑問でございます。この点についてどういうふうにお考えですか。第三国を拘束することができなければ、何の効果もないわけである。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 一般的に見れば、そういう議論ができると思いますが、海と申しましても、たとえば日本漁業でも、世界中どこへでも行つて魚をとつているわけではないのであります。これはやはり自分の漁船が持つ基地といいますか、たとえば燃料補給をする所、あるいは魚をとつてつてつてある所に保存をしておく、そしてまたそれを本国に持つて帰るということがうまくできないと、遠くの方まで行つて油を使い、人を使い、長い間海にいて、少ししか魚がとれないで帰つて来るということでは、採算が合わないわけでありますから、漁業の範囲というものはおのずからきまつておるのであります。日本漁船もずいぶん活躍しておりますが、世界中どこへでも行つておるというわけではない。従つてある海において魚をとつておる国というのは、二国なり三国なり、あるいは四国の場合もありましようが、大体そこへ世界中の国が来て魚をとつておるわけではありませんからして、関係しておる国数箇国との間に話合いがつけば、魚族保護等ができるのが実際の状況であります。従つてインドとだけではうまく行かないという場合もありましようけれども、インド洋の一部などは、インド話合いをすればそれで目的は達せられる場合もあり得るのであります。またそうでない場合には、その関係諸国話合いをするのでありますが、これはインドとの條約でありますから、ただインドが希望すればと書いてありますが、同時に濠州が希望すれば、インドと濠州と日本の三国で話合いをするということも当然あり得るわけであります。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 それから日印條約第十條の「締約国間の一般的の又は特別の取極に従つて今後決定される方法による仲裁」というのは、具体的に言いますと、たとえばどういうことを言つておるのでしようか。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだこういうものを具体的にどうするかということはきめておりません。しかしこの條項をきめましたのは、たとえば條約において、司法裁判所へ訴えるとかなんとかいうことにするよりも——そういうふうにお互いが話し合えばそこへ持つて行つてもいいでありましようけれども、とにかく二国間できめようじやないか、つまりこの條約の精神というのは、非常に友好的に、お互いに信頼してこの條約を円満に持つて行くということになつておりますので、お互いで話し合つて決定すればできる問題であるというわけであります。もつとも実際上の措置としては、たとえば仲裁によるというようなことでも、両国話合いがつけば、たとえば日本の方で選ぶ人が一人、インド側で選ぶ人が一人、それから日本インドで中立的な人を一人選んで三人できめてもらうというようなやり方もあると思いますが、普通こういうような方式が、国際的には通念のようになつております。要するにこの規定は、普通ならば話合いでも紛争などは解決してしまう、が万一話合いでできない場合には、そういうような何か公平な方式紛争を処理しよう、こういう念のための規定であります。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 それから最初インドは、サンフランシスコ会議が開かれましたときにおいて、小笠原、沖縄の信託統治に反対し、台湾の帰属が不明だということでこれに不満を抱き、また千島、樺太はソ連帰属すべきものであるが、この帰属が不明になつておるというようなわけでこれに不満を抱いて、この会議に出席しなかつたのでありますが、今回この條約がスムーズに締結されましたのは、これらの前のインド考え方がかわつたわけでありますか。またはその信條にかわりはないのでありながら、この條約が結ばれたのでありますか。こういう点について政府の御判断を漏らしていただきたいと思うのであります。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 インド政府考えは当時と私はかわりないと思います。それで御承知のように、日本に対して真の独立を認むべしという趣旨意見であつたと思うのでありますが、その趣旨でこの條約はできておる。従つてまつたく互惠平等立場にあるというわけであります。むずかしい、たとえば日本領土問題等は、インドインド考え方がありますけれども、しかしインド考え方平和條約における條項と違う場合に、インド日本だけがそういう條約を結んでも、領土問題等は解決しないわけであります。その問題はインドの主張のように解決されることをインドは望みながらも、その問題は別個にしまして当面必要な日本独立を認め、日本との間に平等の関係で平和に入るに必要な條約をつくる、こういう趣旨でこの條約はできておるのでありまして、当初からのインド考え方は依然としてその通りであると私は了解しております。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 インドはこれまで非常に反米、親ソの態度を示して来まして、たとえば防衛協定に対しても反対し、アメリカの軍隊が日本に駐留することにも反対しておるのであります。そういうところを見ますと、インドは一面において親ソ的であり、また一面において親日的であるという、いかにも態度が矛盾しておるように思われますが、そういう点について、外務省あたりはどういう見解を持つておられますか。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はインド反米でもないし、また親ソでもないと思つております。そうかといつてインド考え方は、別に特に親米であり反ソであるという意味でもないのであります点、要するにどこの国とも同じように友好関係に立とうという方針で、あとう限りやつておるようであります。しかしながら日本がどういう態度をとるかということは、これは日本日本自体できめる問題であつてインド政府はそれに関與する気持はない、日本がいかなる方針をとろうとも、日本との間にもやはり互恵平等の関係において平和関係に入ろう、こういうつもりでやつておられることと考えております。
  13. 仲内憲治

  14. 北澤直吉

    北澤委員 今度の日印條約の第二條におきまして、インド英連邦諸国及び隣接国に対しまして特惠的な待遇を與え得るというふうに規定してあるわけでありまするこれはサンフランシスコ條約以上に日本インド利益を與えるものではないか、そうなるとしますと、サンフランシスコ條約の第二十六條によつて、たとえばフランスフランスインドシナとの間、オランダオランダインドネシアとの間、こういう関係におきましてそういう特惠関係を要求した場合に、これを與えなければならぬようになりはせぬかという点につきまして、昨日私は政府委員にお尋ねしたのであります。政府委員の方からは、これはインドだけの問題であつてよその国にはそういうことは均霑させないという一応の答弁があつたのでありますが、この機会にひとつ大臣からはつきりした答弁を伺いまして、これに対する誤解のないようにいたしたいと思います。
  15. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この点は今度の條約でも、一つの双方で苦心をした問題であります。いろいろ今北澤君のおつしやつたような、ほかの国にどういう影響を與えるかというような点で研究もいたしたのであります。平和條約の第十二條の(d)項によりますと、「この條の適用上、差別的措置であつてそれを適用する当事国通商條約に通常規定されている例外に基くもの」云々、これらは「ほしいままな又は不合理な方法で適用されない限り、それぞれ内国民待遇又は最惠国待遇許與を害するものと認めてはならない。」こういう規定があるのであります。そこでこのコモンウエルス国々とか、あるいはインド隣接国等に対する特惠または利益というものが、通常の通商條約に規定されておる例外となるかならないか、またこういう問題が不合理もしくはほしいままな方法で適用されるかされないか、こういう点から研究いたしましたところが、インドとエジプトの協定あるいはインドとオースト、アの協定あるいはスペイン、スエーデン等との協定にも、インドはほぼ同様の規定を加えておりまして、過去の長い間の関係から存在しております特惠を、コモンウエルスのカントリースもしくは隣接国に與えておる限りにおいては、これを留保しておるのであります。従いましてわれわれは通商條約に通常規定されておる例外というふうにこれを考えましてそれならばサンフランシスコ條約と何らかわりがないと、考えまして、これを入れることを承認したのであります。  またこれに関連しまして——少し先の方になるかもしれませんが、交換公文の中で今度は将来の問題についていつておるのでありますが、これにつきましても、将来何か英連邦諸国とか隣接国特惠を與えたような場合に、その結果、ほかのそれ以外の国にも特惠を與えなければならぬという結果になれば、日本もこれに均霑する、こういう特に留保をしておるのであります。  要するに事実上の関係から行きますと、たとえばインドはいわゆるガツト協定に入つておる。そこでガツト協定に入つております関係上、ガツトで認められた特殊の特惠は列国がインドに対して認めておる。もしそれ以外の特惠インド隣接国等に與える場合には、ガツト諸国は自然これに均霑するわけであります。そういう場合には日本も自然に均霑するということになりますので、これはいずれの方から見ましても、通商條約に通常規定されておる例外以上のものはこれに含まない、こういうわれわれの了解のもとに、ここにこういう規定が入つておるのであります。
  16. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの大臣の御答弁ではつきりいたしました。  次にお尋ねしたい点は、インドの場合には特にこういうふうな例外的な措置を認めるといたしましても、大臣承知通り日本は従来いわゆるオタワ協定による英連邦諸国特惠制度に反対して来た。たとえばイギリスと濠州あるいはイギリスとニュージーランド、イギリスとカナダ、こういうような英帝国特惠制度には日本は反対して来たわけでありますが、今回インドの場合はこれを認めるといたしましても、インド以外の英連邦諸国間の特惠につきましては、日本はできるだけ阻止するという態度をもつて今後とも進まなければ将来日本の貿易に非常に大きな影響があると思うのですが、その点についての大臣御所感はいかがでありますか。
  17. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 オタワ協定などでつくりました特惠は非常に意味が違いまして、日本としては当然これには反対すべきものだと考えております。かりに将来この種のものができましても、日本としては賛成するわけに行かないと思つております。が、最近の状況は、コモンウエルス国々の間のいろいろなとりきめも、こういう非常に排他的なものとは考えておりません。またインド自体もそういう種類のものをやりたいと考えておるのではないと思いますが、今お話のように特殊のよその国をみんな排除するようなやり方がもしありとすれば、政府としてはかかるものにできるだけ反対いたします。今の事勢ではそういうこともなかなかコモンウエルス国々の間では実行はできにくいのではないかと思います。たとえばアメリカとのいろいろの経済協力関係から申しましても、なかなかイギリス側でそういうことをやることはむずかしいのではないかと思つております。従つてそういう問題が将来起るようには私あまり考えておりませんけれども、もしそういうことがありとすれば、むろんできるだけ阻止する方向をとるべきだと考えております。
  18. 北澤直吉

    北澤委員 今回の目印條約におきまして、日本と、東南アジア精神的指導者立場にあるインドとの間に正常な国交関係が開始されたのでありまして、今後はこれがもとになりまして、ビルマあるいはインドネシアというような東南アジア諸国側とも遠からずこういう條約ができるものと思うのであります。日本東南アジア諸国との間の友好関係が樹立せられますと、その次に起る問題は、日本東南アジア諸国との間の経済提携の問題、あるいは文化提携の問題であろうと思うのであります。日本におきましても近来東南アジア経済開発協力するということが大分宣伝せられておりまして、政府方面奇いろいろ研究のようですが、どうも従来から見ておりますと、政府の大きな宣伝にもかかわらず、東南アジア開発に対する日本協力の仕方がちつとも進んでおらない。これにはいろいろの事情があると思うのですが、日本協力がわれわれの予想した通りに進んでおらない原因はどういうところにあるのか、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今お話がありましたから関連して申し上げますが、まずこの條約は日本の国内におきましても新聞論調その他においてたいへんよく考えられておりますが、同様にインドにおきましてもこれが非常によく受取られておるようであります。ネール首相もこの條約が一体日本国会承認されるであろうかどうかということについて、非常に関心を持つておられるようでありましてインドにおける論調もたいへんよろしいと聞いております。従いまして、われわれとしては、本條約はぜひ国会の御承認を得たいと同時に、またこれが両国間に非常に歓迎され、喜ばれているという事実は、やはり他の国々との條約にたいへんいい影響を及ぼすだろうと考えております。そこで今申された点でありますが、文化的の交流経済的のいろいろの協力関係、これもわれわれとしてはできるだけやりたいと考えておりまして、双方にかなり重点を置いておるわけであります。ところが文化的の交流にいたしましても、ややもすれば疑惑を起して、つまり日本文化侵略というようなふうにとられる場合もないわけではないのではないか。ソ連でも最近、インド等文化使節を派遣しまして、いろいろソ連の映画その他の文化の普及に努めたようであります。これはあまりインド側一般民衆から歓迎されたようでもないようでありますが、いずれにいたしましても、ソ連側でそういう努力をいたしておる。これもやはりソ連文化インド影響を與えるというふうにとられがちなようであります。日本の方でも同じことでありまして、文化交流をいたしたいことはいたしたいのでありますが、うつかりしますと、何かそこに下心があるように見られる場合もあります。文化においてすらそうでありますから、経済提携ということ、これをわれわれが非常に善意に考えて、できるだけ援助をしたいと思いましても、受取る方の側では、政府としてはかりにわかつてつても、一般民衆になりますと、また日本が何かやつて来たというふうにとられないこともないのであります。そういうけはいのある国々も、決して絶無とは言えない状況であります。いろいろ計画はあつても、現実ということになると、なかなかむずかしい点が実際起るのであります。われわれとしましては、従つていかなる場合においても、経済的な侵略というような言葉は悪いですが、経済的に他国を圧倒するとか、あるいは経済的の利権を他国において大いに求めるというような印象を與えないように努めておるわけであります。従つて先方がぜひ必要である、ぜひやりたいということがありますれば、できるだけこれに協力するということはむろんいたしますが、あまりそういう点を強調して誤解を招かないようにいたしておるような次第でありまして、従つてわれわれが思うように事がなかなか運ばないというのも、これは私はやむを得ないと思つております。早くできるだけのことをやりたいと思いますが、あまり無理にいたしますと、今のような印象を強めるだけでありまして、かえつてその国の民衆の反感を買う場合もあり得ると考えまして、むしろ慎重にやつておるような次第であります。
  20. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの大臣考え方にわれわれも全然賛成であります。ところが新聞などの報道ぶりを見ますと、たとえばアジア開発具体案とか、東南アジア開発とか、こうい「うふうに、いかにも日本本位東南アジア開発日本のほしい原料を東南アジア開発から持つて来るというような、どうも日本本位開発計画日本が押しつけるような報道があるのであります。こういうことが、今大臣の述べられました意味疑惑戰争前のいわゆる大東亜共栄圏、ああいうような思想に関連して、どうも日本日本本位東南アジア開発をやるのではないかというような心配を與えておるわけであります。ただいま大臣がお答えになりましたように、日本東南アジアの自主的の開発計画協力する、どこまでも東南アジア本位で行くというような感じを、いろいろな報道方面にも流すようにしなければならぬ、こう思うのであります。イギリスではいわゆるコロンボ計画というものをつくりまして、自主的に東南アジア開発計画を立てておるわけであります。でき得れば日本アメリカもこれに参加して、この東南アジアの自発的の計画を助けて行く、そうして東南アジアの民生の向上と民族産業発展日本は援助する。どこまでも東南アジア本位にやつて行く、こういうふうな形で行かないと、やはりまた日本戰争前の大東亜共栄圏でやるというような誤解を與えるようになると思うのでありまして、これについては政府も、今後とも御留意を願いたいのであります。  そこで伺いたいのは、東南アジアを主体としたコロンボ計画についてであります。英国のエコノミスト等によりますと、これに日本が参加することを非常に強調しておりますが、日本がこの計画に参加する見通しはどういうふうになつておりますか、この点を伺つておきたいと思います。
  21. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お話の点は十分了承いたしました。われわれも謙虚な気持で、東南アジア開発については、その国の利益のためにという意味で、できるだけ努力したい。また新聞その他雑誌等につきましても、そういう意味であることをできるだけ徹底して、理解してもらうように努めたいと考えております。  コロンボ計画につきましては、この計画も私は非常にけつこうないい計画だと思いますが、今おつしやつたような理由もありましようし、その他いろいろなことから、今までのところ、これに参加するというところまで行つておらぬわけであります。見通しは、やはり今後の日本態度関係諸国がどの程度に理解するかということにも、関係があるとおもいますが、われわれもなるべくこういう計画には参加するように努力して、手助けをできるだけいたしたい、こう考えますので、今後ともできるだけこういうものに参加して、援助するような方向に持つて行きたいということだけは申し上げ得るのでありますが、見通し等については、ちよつとここで申し上げるほどにまだなつておりません。
  22. 北澤直吉

    北澤委員 私どもぜひともこの計画日本が参加するようにしてもらいたい、こう思うのであります。と申しますのは、御承知のように、アジアの問題で最も大きな問題は、イギリスアメリカとの間に意見食い違いがある。欧州問題については大体英米、いわゆる民主陣営の間に歩調が合つておると思いますが、あるいは中国の問題、こういうような問題につきまして、どうも英米の間に、あるいは日本も入つて、その間に食い違いがある。たとえて申しますれば、イギリスインド等は中共を承認しておる。アメリカ、濠州等は国民政府承認しておる。こういう食い違い英米の間にある。これはアジア問題の大きな悲劇であると思うのでありますが、英米間の対アジア政策食い違いを何とか早く是正して、そうして英米その他民主陣営アジア問題について歩調を一にするということが、今後私は大事なことだと思うのであります。私はそのためには、こういうような東南アジア開発コロンボ計画というものは、日本も入つて東南アジア経済開発を三国協力してやるということから、このアジア問題に関する英米間、あるいは日本との間の歩調を一にするような方向に持つて行くことが、今後の最も大きな問題ではないかと思うのであります。この点について、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  23. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もまつたく同感でありますが、ただここでお断りしなければなりませんことは、だからして大いに日本もそれに入つてやるのだというようなことを私が言いますと、これがすぐ、今北澤君がおつしやつたように、日本は何か東南アジアに対して大いにがんばるというような印象を與えがちでありますから、できるだけこれは控え目にいたして、向うが自主的にできるようなお手伝いをしたいと考えております。
  24. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点だけ伺います。先ほど大臣から、インド日本との文化交流の問題についてお話があつたのでありますが、日米間の文化交流ということは、非常に今唱えられておりますが、どうもわれわれ見るところでは、日米文化交流よりも、むしろ日印文化交流の方がやりやすい。と申しますのは、御承知のように、日本インドも仏教文明のもとにおいて、文化の基盤を同じくしているわけであります。従いまして、こういう仏教方面、あるいはそういうものを通じて、日印間の文化提携あるいは文化交流というものは、私は日米間の文化交流よりもやりやすいのではないかというふうに、実は考えているわけであります。最近の新聞報道を見ますと、一橋大学の都留教授が何かインドの大学に行かれるとか、あるいはまた日本インドの美術工芸の展覧会を開くというように、ぼつぼつこういう方面の企ても行われておるようでありますが私はこういう文化の面におきまして、日印間の提携というものを——先ほど大臣がおつしやつたように、いろいろ疑いを受けては困るのでありますが、なるべくそういう疑惑を一掃しながら、この日印間の文化提携という方面にも、ひとつ積極的に政府のいろいろな施策を要望したいと思うのであります。私はこういう点から申しますと、これは一つの私案でありますが、御承知のように、終戰前インドのチヤンドラ・ボース政府に対しまして、日本はこれを承認しておつたのでありますが、ボース氏は戰争直後、台北飛行場で不幸の死を遂げたのであります。このチヤンドラ・ボース氏に対してはインド人も非常に尊敬している。日本人も非常に尊敬している。こういうチヤンドラ・ボース氏のような、両国民の精神的つながりの鎖になつているものもあるのでありますから、こういう人々のあるいは慰霊祭を行うとか、あるいは記念碑をつくるとか、こういう方面から、私はインド日本との間の文化提携と申しますか、そういう面に積極的に乗り出す道があるのではないか、こう思うのでありますが、こういう点について大臣からお考えを伺いまして、私の質問を終ります。
  25. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お話の点は私も非常にけつこうな案だとも思いますが、形式的にはやはりチヤンドラ・ボース氏のインド政府に対する立場というか、関係と申しますのは、その関係者が北澤君も御承知のように、無罪にはなりましたにしろ、とにかく裁判に付せられたような関係もありますので、こういう点について政府がどれだけ力を入れるかということは、これは慎重に考えるべき問題だと思います。しかし一般の民間の人々がこういう点に力を入れられるということは、これは何にも害もないし、積極的にいろいろな点で有利なことが多いと考えております。が、私はそういう意味もむろん含まれましようけれども、インドの首相ネール氏も非常に文化に関心の深い人であります。これは單に文化と申しますよりも、文学のみならず、サイエンス方面、あるいは歴史とか、社会学とか、いろいろな方面の、非常に一般に広い意味文化に特に関心の深い人でありますので、こういう方面について相互に学者の交換をやるとか、あるいは学生の交換をやるとか、あるいは相互に書籍の出版をやるとか、あるいは講演をやるとか、いろいろな方法お互い文化交流によつて両国民間の理解を深めるということは可能であろうと思うのであります。できるだけその方面には今後手を盡したいと考えておるような次第であります。
  26. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  27. 戸叶里子

    戸叶委員 日印條約がある程度日本側に有利になるように締結を見たことは認められますが、問題は、きようから、きようまた御質問がありましたように、第二條の(b)だと思います。その問題につきましてはすでに質問されましたから、私は省略いたしますが、ただこういうふうなインドコモンウエルス・カントリーとの間、あるいはインドの接壌国であるパキスタン、ネパール、ビルマというような国に特惠が與えられたということに対しまして、アメリカ側などからは何らかの不満が表わされたことがあるかどうかを伺いたいと思います。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その点は、アメリカ側等から意見の表示は全然ないのであります。私はそれが当然だと思つております。というのは、先ほど御説明したように、これは世界の主要なる国々がすでに認めておるようなものを、われわれもここに認めたものであります。それ以上のものはないのでありますから、これに対して意見等を、アメリカなりその他の国々から表示する理由もないし、事実何もそういうことは言つてつておりません。
  29. 戸叶里子

    戸叶委員 インドがそういう特惠を認めていることは、前々かちの歴史にもよることでありますが、もう一つはガツトに入つているからでもあるというような御答弁でございました。このガツトに入つておらない国を、参考までに伺わせていただきたい。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ガツトに入つております国は三十四箇国——これは私今勘定してもらつたのですから、正確でないかもしれませんが、三十四箇国となつておるようであります。従つて平和條約は日本を加えまして四十九箇国で調印しておりますが、その他にサンフランシスコに参らなかつたたくさんの国があります。たとえば中立国で日本と戰争しておらなかつたような国、あるいはイタリアとかタイとかいうような、特殊の関係に立つておりまして、呼ばれない国もあつたわけです。ですから世界の国が幾つあるかというと、大体七十七とか、乱暴な勘定の仕方で言つておりますが、その中で大体三十四箇国がガツトに入つている、こういうわけであります。
  31. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどの北澤委員からの御質問によりましてもわかりましたが、ご東南アジア地域とのいろいろの貿易、あるいは開発なども、謙虚な気持をもつて日本がするといたしましても、これからの貿易の振興は、東南アジア地域と日本との間で当然なされて行かなければならないと思います。そうした場合に、もしも日本ガツトに入つておらないで、イギリスガツトに入つていることになりますと、日本にとりましては非常に不利になりはしないかということを私は心配するのでございますが、その点はどうであるかを聞きたいと思います。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは條約の最後についております交換公文をごらん願いますと、おわかりのように、英連邦諸国及び隣接国に将来何らかの特惠または利益を與えることによつてインド政府がこれら以外の国に同様の特惠または利益を與えることを要するような場合には、その利益もしくは特惠日本にも與える、こう書いてあります。つまりこれは一つの例でありますが、ガツト加入国の例をとつてみますと、ガツト加入国の一つであるインドが、今までガツトド認められていないような特惠を、隣のパキスタンに與えた場合には、ガツト関係国はこれをただ例外として認めるか、あるいは例外として認めない場合には、ガツトの加入国はみなその利益に均霑することになり、ガツトの加入国でない国は利益に均霑しないわけであります。そこでごこに、そういう場合にも利益に均霑する、つまりインド政府英連邦諸国あるいは隣接国以外の国に同じような利益をやる場合には、日本もこれに均霑する、特にこういうふうな留保をつけてありますので、その点については日本は特に「不利益になることはないと考えております。
  33. 戸叶里子

    戸叶委員 インドの場合にはそういうことが言えますけれども、もしも東南アジアのほかの国でガツトに入つていた場合に、日本が入つておらなかつた場合はどうなるのでしようか。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ほかの国と言われますと、もうすでに平和條約に調印して、これを批准してある国は、この平和條約で行きますから、この問題は出て来ないわけであります。平和條約でなく、インドのように新しい條約を日本との間に結ぶ、たとえばビルマがこういう條約を結ぶというときに、ビルマが今度は隣接国に対して、インドと同じように特惠をやる権利を主張するというような場合もあるかと思います。そういう場合にはやはりこの交換文書のような特殊の留保を日本でつけまして、このインドの例にならいましてその相手国、ビルマならビルマが、その隣の国に利益を與えることによつて、たとえば遠くのアルゼンチンとかアメリカであるとかいうような国に利益を與える場合には、日本もこれに均霑する。もしも世界中の国が特殊の隣の国にだけ利益を與えることを認めておるならば、日本もこれを認めよう、こういう趣旨協定を、この例によつてつくりたいと考えておりますが、まだそれは問題になつておりませんけれども、日本政府方針としてはそういうつもりでおります。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 日本ガツト加入を希望するのでしようか。それからもう一点は、ガツト加入の見通しガツト加入は許されるかどうか、そういう点を承つておきたいと思います。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本ガツト加入を希望しておるのであります。できるだけ早くこれに加入したいと考えております。いろいろ理由はありましようが、必ずしも日本の加入に賛成の国ばかりでないものでありますから、今まではまだ目的を達しておらないのであります。今後できるだけ各国の理解を深めて、早く加入したいと考えております。
  37. 戸叶里子

    戸叶委員 今回の日印條約によつてサンフランシスコ條約にまだ批准をしていないフイリツピンとかインドネシアなどに対しては今度の條約はいい影響を與えて、そしてそういう国の批准を早めるというようなことがあり得るというお考えでしようか。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは判断が非常にむずかしゆうございましてそれらの今おつしやつたような国々は、外国の歩調を見ながら批准をするかしないかをきめるという立場でなくして、国内のいろいろの政治情勢から批准がむずかしいような事情でありますから、国内の政活情勢がかわるか、あるいは何かほかの特別の理由があつて、早く批准をしようといえばできましようけれども、インドの例だけでは、すぐにこれが直接の影響を及ぼすかどうかわからないのであります。但しアジアにおける中国を除いた一番の大きな国であり、ことに今はネール首相のもとにおきまして、非常に高い文化を持ち、高い理想を持つて進んでおるインドは、各国から非常に尊敬おれておりますから、そのインドがこういう條約を日本と結んだということは、各国の国民にもこれは非常にいい方に考え方をかえる役には立つと思います。また日本とサンフランシスコの條約に調印せず、また日本と直接二国間の條約を結んでおらない国に対しては、これが非常にいい先例になるだろうと思つております。
  39. 戸叶里子

    戸叶委員 インドサンフランシスコ條約に調印しなかつたということの理由は、新聞等に発表されましたし、そしてまた昨日から他の委員が言及されておりました。外務大臣は提案理由を御説明になりましたときに、インドはいろいろな理由によつてサンフランシスコ條約に調印しなかつたという御説明だけだつたと思いますが、外務大臣はどうしてインドサンフランシスコ條約に調印されなかつたかというふうにお考えなつたかを、承らしていただきたいと思います。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろに伝わつておりますが、要するにインド考え方は、サンフランシスコ條約、まだ日本に対して不平等のところがある。もつと完全な平等の形の條約にいたすべきであろう。また領土の問題についても、その住民の意思を十分反映したような領土協定をつくるべきであろうというような趣旨の、日本独立をもつと強く尊重するような考え方で行くべきであるというのが、私は根本的な考え方であつたと思うのであります。その趣旨で今度はこういう條約をつくつたということになろうかと思つております。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは大体新聞にありましたのと同じであると了承いたしましたが、そうすると、こういう問題には今度の條約交渉においては全然触れなかつたと了承していいわけですか。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 さようでありまして、むろん触れないということは、あるいは言い間違いになるかもしれません。というのは、こういう問題はもう除外しようという話があつたから、お互いにそういうことで了承したわけであります。ですから、一応触れたことは触れましたけれども、こういう問題は入れないという話合い程度に触れたわけであります。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 インドとの通商航海條約が何か難点があるというふうに新聞に発表されておりましたが、そういう点につきましてお話していただけましたら願いたいと思います。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 インドとの通商航海條約は実はまだ話合いをしておりません。いろいろの貿易の協定とか、支拂いの協定等はいたしておりますけれども、通商航海條約というふうに銘を打つての交渉はまだいたしておらないのでありまして、これも私はこの條約ができますれば、そうむずかしくなく将来できるじやないかと思いますけれども、元来この通商航海條約等は、これがほんとの両国間の実質的な内容を規律するものでありますから、普通でもわれわれ時間がかかるのでありまして、すぐにやつてすぐにできるという問題でもないのであります。このイントの條約などは全文十一箇條で、ずいぶふん簡單なものであると思いますけれども、これでも昨年の末から話が始まりまして、ようやく先日まとまつたくりいでありますので、通商航海條約には自然かなりの時日がかかると思います。しかしそれは普通に使われる以上の時日を要するとも私は考えておらないのであります。
  45. 戸叶里子

    戸叶委員 インドとの條約が批准されますと、すぐ問題になつて来るのは大使の問題だと思いますけれども、もうすでに外務大臣は大使をおきめになつていらつしやるかどうか。またその大使は、財界からお選びになるのか、あるいは外交官の中からお選びになるかを伺つておきます。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはこの條約が批准されるとされないとにかかわらず、四月二十八日に戰争状態終了の宣言をインドがいたして、同時に外交関係を倒立したのであります。ただちに新しくインドの大使が任命されまして、御信任状をすでに捧呈いたしているわけでありますから、われわれの方も早く大使をきめて出す必要があるのであります。これにつきましては、インドは、先ほどから私が申しているように、いろいろな意味で東亜におきましては非常に重要な国でありますから、貿易はむろんのことでありますが、産業あるいは文化、各種の点において重要でありますので、特にすぐれた人を任命したい、こう考えて、もう前からいろいろ考えておるのであります。これはここで申し上げました通り、どこの出身の人でなければならぬということはないのであります。外交官出身でもよろしいし、あるいは学者でもよかろうし、実業家でもよかろう。けれども、人間として十分すぐれた人が必要である、こう考えていろいろ人選をいたしております。そういう特にりつぱな人をと思つておりますので、時間がかかつておりますが、これもそうおそからざるうちに任命できるような運びにするつもりでおります。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 なるべく早く御決定を希望いたします。  このあと千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約について一、二点伺いたいと思います。この條約に日本は一九二九年に入つていたと了承しておりますが、これに対して、これに入つておりましてどういうことをして来たかを伺いたいと思います。
  48. 松平直一

    ○松平政府委員 これは條約にございます通り人命の安全を確保するための船舶の設備、構造、それから船舶が危険に瀕しました場合、乗つておる者が安全に脱出できるような設備、それから危険を通報することができる無線電信の設備、そういうようなものを規定してございます。これは一九二九年に現行の條約が結ばれておるのでありますが、これに日本は加盟しまして、この條約に規定してあるそういう点を確実に実行して来ております。これが四八年に改訂されましたが、その條約は本年の十一月十九日から効力を発生いたすわけであります。この国会の御承認を得ますれば、それに加盟をいたす準備をいたしております。
  49. 戸叶里子

    戸叶委員 それに加盟いたしまして、船主の負担が出て来ると思いますが、そういうことはないかどうか伺いたい。そうしてもし負担するといたしましたならば、どの程度に負担しなければならないか。
  50. 松平直一

    ○松平政府委員 もちろん新しい設備もきめられましたし、また従来の設備が非常に厳重になつた点もございますので、多少船主の負担はふえると思います。ちよつと大ざつぱな見当でございますが、六千トン程度の貨物船で、この條約にあります設備を厳格に実施いたしますと、約一千万円かかるはずでございます。それから一万トン程度の旅客船でございますと、この場合は約三千万円ほどかかると思います。ところが六千トン程度の貨物船で、現在日本で持つておりまして外航に出ている船は、ほとんどこの條約に適合するような設備はすでに持つておりますので、今申し上げた数字ほどは、実際にはかからないと思います。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣に対する質問を皆さんお待ちのようでございますので、この日米加漁業條約に関する質問をあとにまわしまして、私の質疑を終ります。
  52. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 漁業協定の問題について岡崎外務大臣に質問したいのですが、アメリカ、カナダとの漁業協定によつて日本漁業が相当の打撃を受けるということは想像にかたくないのであります。一方北洋漁業の方あるいは東支那海の方の漁業の問題、こういうことも必然的に問題になつて来ますので、その方の問題について私ども聞いてみたいと思います。  講和後の北洋漁業に関して、海上保安庁の方の通達によりますと、拿捕の事故を防止するために、ソ連の領海十二海里の線を守つてもらいたい、これに立ち入らぬようにした方がよろしいというように、海上保安庁の通達は述べられておる。ところが北海道新聞の六月三日付の報道によりますと、海上保安庁当局の談話として、五月二十八、九日海上保安庁の区長会議でこの問題が検討された結果、外務省方面の横やりで、ソ連領海十二海里は認めがたいと決定した、但しソ連とは休職関係にあるのだから、漁民も十分警戒せよ、と述べておる。これでは一体漁民はどの線まで出漁してよいのかわからないのでありまして、漁民は安定した漁業を求めておるのでありますが、このようなあいまいな指示のもとでは、北洋漁業に出漁しておる漁民は、いずれの指示に従つていいかということに苦しんでおるのであります。しかも日ソの間においては、外交関係についてまだいろいろ問題が残されておる点があるのであかまして、一方的に政府の方が十二海里を認めないということになると、これは日本ソ連との間の降伏関係の否認にもなるし、一方的な見解を押しつけることにもなり、それが漁民にしわ寄せされて、拿捕問題が起きて来るのであります。     〔委員長退席、佐々木(盛)委員長   代理着席)こういう問題は、常識を欠く外務省の見解の当然負うべき責任問題になると思うのでありますが、一体北洋漁業に関して、外務省としてはどういう見解をとつておるのか、ソ連領海の十二海里ということは守らなくていいのかどうか。(「あたりまえだ」と呼ぶ者あり)あたりまえだという声がありますが、どういうわけであたりまえなのか、それをはつきり示してもらいたい。御承知通り漁業協定によると、百七十五度の方は六百海里もある。カナダ、アメリカの方は六百海里も向うに入れないことになつている。ソ連の方はわずか十二海里、それを守らなくていいというのがあたりまえだという声が出ておるが、そういう根拠はどこにあるか聞かせてもらいたい。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 領海が三海里であるというのは国際間の常識でありまして、それに対して違う主張をしておる国はソ連を初め他に二、三ありますけれども、ほかの国はどこもこれを承認しておらないのであります。国際的の通念からいえば三海里というのが常識であります。従つてわれわれはそういう十二海里というようなもの、あるいは六海里にしましても、認めるわけには行かないのであります。今御指摘になりましたカナダやアメリカにつきましても、領海は三海里ということは認めておるのであります。またその西経百七十五度というのも、船が行つてはいかぬというのじやなく、船は自由にどこへでも行かれる、ただ一定の満限に達した魚種のみについては、その水域では抑止処置をとる、こういうことであつて、船がそこへ入れないということでは全然ないのであります。従つてわれわれの方では、十二海里という主張は認められないのであります。ただソ連の軍艦等がむやみに日本漁船を拿捕するというようなことが起りますと、漁夫も困りますから、この点は十分注意しなければならぬ。しかしこれは相手方がむちやな措置をとるのでありますから、このむちやな措置を容認するわけには行かないという建前はとつております。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 岡崎外務大臣は妙なことを言う。船は行つてもいいが、魚をとつてはいかぬということはどういうことなのでしようか。あなた方の配付したこの地図によりますと、「さけ、ます」とあつて、この六百海里の水域については、日本のカナダは漁獲を自発的に抑止する、この漁獲を自発的に抑止するということは、そこへ漁船が入つてはいかぬということじやないでしようか。漁船が入るということは、自発的に抑止するということの違反になるのじやないでしようか。(「ほかの魚をとるのさ」と呼ぶ者あり)ほかの魚をとるにしても、ここではさけとますしかとれないのですから、ほかの魚をとるという言い訳はつかないと思う。アメリカ、カナダの方には六百海里も讓つておいて、ソ連の方は十二海里も認めないというところに、私が懲罰になつてまで、あなたに苦言を呈さなければならない理由があるのです。向米一辺倒という外交政策がここにはつきり出ておると思う。そこであなたが言うように、ソ連の方では十二海里を主張しても、日本の方は認めない。それで漁民にはどういうことなのでしようか。行つていいのですか、悪いのですか。行くとすれば、どういう注意をして行くのですか。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 注意は、つまり相手方が無法なのでありますから、無法なことをされないように注意するのでありまして、行く権利は当然あるのであります。行く権利は当然あるのでありますが、当然あつたところで、つかまつて、向うへ連れて行かれたのでは損でありますから、つかまらないように注意するということであります。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとどうなんですか、行つてつかまれば損をするから行くなというのですか。行つてもいいけれども、つかまらないように行けというのですか。つかまらないように行けということは、これは実力漁業をやれというのですか。それとも暮夜ひそかに目をかすめて行けというのですか。どつちですか。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 つかまらなければいいのであります。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると結局——漁業をやれということですね。そういうことになる。そのような         ————— を教唆するような外務大臣は、これは国際的に当然責任を負うべきものです。いずれ国際的に責任を問われることになる。  それから次に日華條約についての漁業協定の問題でありますが、日本は中華民国と漁業協定の交渉をするときめておるけれども、実は東支那海の水域についての漁業協定は、これはどうしても中華人民共和国とこの協定をしなければならないことになる。中華人民共和国が認めない東支那海の出漁あるいは漁獲ということはあり得ない。今ひんぴんとして東支那海に漁船の拿捕が行われているのでありますが、この問題については、岡崎外務大臣としては一体どういう処置をするつもりであるか。どんどん拿捕が行われておる。両方の話合いがないために漁民はどこへ行つていいのかわからない。まつたく去就に迷つておる状態であります。一体東支那海の漁船の問題について、あるいは漁業の問題については、政府はどういう方針を持つておるか。また漁民に対してどういう方針を伝えたいと思うのか。その点だけはつきりしていただきたい。     〔佐々木(盛)委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府公海における漁業の自由を原則として主張しておるのでありますから、満限に達した魚についてはこれは抑止措置を講じますけれども、それ以外においては公海においては自由に漁業ができる、こういう建前をとつております。しかしながらこれにつきましても、やはり同じように中共側で不法に日本漁船を拿捕するというようなことがあると困りますので、やはり十分なる注意をして漁獲をやる。こういうことであります。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると何らの交渉も結ばなくて、漁民に去就を迷わせておきながら、そうしてただ━━━━━━━━━━漁業だけを奨励さしておいて、そして拿捕が起きた場合には、一切政府は何らの処置をしないということになる。これは明らかに日本政府の責任じやないでしようか。そういう拿捕船が起きたり、いろいろな問題があるからこそ、日本はすみやかに外交関係を結んで、漁民が安心して行けるような措置を講ずべきであります。たとえば領海の問題についても、日本の国と中華人民共和国の側との意見が相違する場合には、お互い話合いをする必要はないでしようか。何も国際法で領海問題は三海里なら三海里、これ以上変更してはならぬということはないわけですから、国際的な義務を行わなければならぬということはないはずです。両方の話合いでどうにでもなる。中華人民共和国側でこれを当分の間は自分の領海として守るといつてもやむを得ない。そういう場合に、こちら側が何の話合いもしないで出かけて行つて、拿捕になつたら拿捕した方が悪いのだといつて開き直つても、あなたは開き直るかもしれないが、拿捕された漁民はどうする。この問題についてあなたは中華人民共和国とすみやかに交渉を持つて、この東支那海の漁船の問題についても、当然話合いをしなければならないと思いますが、この義務を果す意思があるのかどうか。アメリカの方は與党の諸君に攻撃されるような、こんな大きな屈辱外交をしておきながら、ソ連と中共には━━━━━出漁でも、実力出漁でもいいからやれというようなこういう無責任なことをあなた言えますか。東支那海の漁業の問題については、あなたはもつと誠意をもつて話し合う意思があるのかないのか。もう一度この問題についてあなたの意見を求ます。
  62. 植原悦二郎

    ○植原委員 議事進行について……。林君はよくわかつておるのだと思います。いくらソ連と中国と交渉をしたくてもできないことはわかつておる。それでこれは宣伝だから、やはりお答えにならない方が私はよいと思います。林君の言う————でも何でもないので、林君のこんな無理な質問を私は委員会において聞いたこともありません。御承知通り、歯舞、色丹はもう日本領土であることは世界中認めておる。それを実力で向うがやつておる。それと同じことで、向うで十二海里主張することが無理であることは林君もわかつておる……。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 アメリカの方は六百海里である。だからあなたは腰抜け外交だというのです。ソ連は十二海里だ。これがなぜ無理なんですか。
  64. 植原悦二郎

    ○植原委員 今の西経百七十五度の問題はこれは協定の附属書で、この境がよいか悪いかは別問題である。ソ連でかつてに十二海里主張して、無理なことを言つておるのであるから、こういうことにお答えになつて時間をつぶす必要はないと思います。これは林君だつて道理によればよくわかつておる。よくわかつておるにかかわらず、やはり宣伝的にやつておるのであるから、これは答えないことがよい。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 そんなことは、発言の不当な禁止です。
  66. 仲内憲治

    仲内委員長 林君に申し上げますが、議案に直接関係のある点に限定して進行してください。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 植原さんは、中国とソ連とは交渉を持つ腹がない、と自分の方できめておる。しかしながらわれわれの考え方としては、中国とソ連とは何とか友好関係を結びたい、そうしてその道もあるから、全然自由党、共産党とは立場は違うれども、われわれとしては日本と中国とソ連とは友好関係を結びたい。その道を開いたらどうかというのはあたりまえではありませんか。それを植原さんは、アメリカは、六百海里、これは協定だからしようがない、中国、ソ連とは交渉を持つ腹がないから聞くことは不必要だということは、これは言い過ぎだと思います。現に宮腰、高良、帆足さんらが行つて、とにかく努力しておるじやありませんか。だから私は植原委員の今の御発言は私の質疑権を妨害するものである。先輩であり、民主主義者であるに似合わず、私の質疑を妨害するものでありますから、私はこれを聞かないで議事進行をいたします。
  68. 植原悦二郎

    ○植原委員 議事進行は委員長においてよろしくおとりはからい願つてしかるべきだと思います。
  69. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、簡潔に質問を続行してください。
  70. 林百郎

    ○林(百)委員 これは日ソ関係についても重要な関係があるわけであります。この漁業の問題を通じて、先ほど植原さんの言われたように、植原さんの見解ではソ連、中国は日本と交渉を持つ腹がないということを言われておりますけれども、現に代表部問題につおります。たたけよ、しからば開かれん。だから共産党が正しいのです。新しいコミュニズムのバイブルによると、努力をすべきだ。努力をすればとにかく反応があるのだから……。その点について私は聞きたいと思うのでありますが、代表部の問題について向う側からせつかく回答も来たし、交渉の糸口が開かれそうになつて来たのでありますが、ここで今後さらにこのソ連との折衝を続けて行く、何らかの形で折衝を続けて行く意思があるかどうか。直接交渉をする意思があるかどうかということを、私はあなたに聞いてみたいと思うのです。これはもしどんな細い一本のひもでも、日本とソ同盟、中国とのひもが結ばれるということは、われわれにとつて非常に好ましいことであつて、実に衷心から望んでいることであるから、外務大臣に私は聞くのであります。ソ連代表部の問題について、ソ連側から回答が来たのでありますが、これに対して、日本政府はどういう措置を今後とられて行くのか。まずこの問題から聞いてみたいと思うのです。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 前から林君からいろいろ御質問がありましたが、植原先輩の御意見もありますので、私は東支那海もしくはその他の海においては、日本の漁夫が————しておるのではないということだけ明らかにしてその他は省略いたします。またソ連代表部の問題は、昨日新聞に発表いたしました通り日本政府の見解は依然としてかわらないのでありまして、遺憾ながらソ連代表部の意見には承服すべき理由を発見できないのであります。それでもう別に論争をこれ以上する必要もないと考えております。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、論争する必要がないということは、この問題については今後ソ連代表部と全然交渉をしないということなのですか。そうすると、日ソの関係は一体どういう形で今後接触を保つのであるか、あるいは第三国を通じてでもやるのか、あるいは向う側から何らかの問題が提起されるまでは、日本政府側としては現状のままにしておくのか。あるいは、もう少し詳しく申しますと、岡崎国務大臣は常に捕虜の問題、拿捕船の問題、漁業の問題、貿易の問題等具体的な問題がある、こういう個々の問題が解決しない限り、正常な外交関係が再開されないということを言われておりますが、この拿捕船の問題、あるいはあなたの言ういわゆる捕虜問題——われわれとしては捕虜の問題については政府と見解を異にしておりますが、こういう問題、先ほどの漁業の沿海の問題、貿易の問題等については、今後何ら日ソの間ではもう交渉を持たないのか、あるいは第三国を通じてでもやる意思があるのか、向う側から何らかの意思表示があるまでは何らこちらから措置をしないのか、その辺をお聞きしておきたいと思います。
  73. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 抑留者の問題は、今後ともあらゆる方法でその帰還を促進したいと考えておりまして、先方から何も言わなくても、たとえば国際連合の特別委員会もありましようし、万国赤十字もありましようし、その他世界の輿論を動員するという方法もありましようし、いろいろの方法で帰還を促進させたいと考えております。貿易等の問題は、これは基本條約ができるのが先決問題だと思つておりますが、基本條約ができる前には、抑留者の問題もありますし、あるいは中ソ同盟條約の問題もあります。漁夫の問題、漁船の問題も少しではありますがあるのでありまして、こういう問題が解決しなければ、私は基本條約等について問題を考慮するというのは困難だろうと考えております。
  74. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、あと、ひとつ簡單に打切つてください。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 ある新聞の夕刊によりますと、場合によつては強制的な措置をとることも必要ではないか、安保條約の第一條に基く駐留軍の発動を求めるというようなことも考えられるではないか、あるいは国連に提訴するというようなことも考えられるではないかというような、ソ連の一貫した平和的な日本との友好関係を結びたいという意思を蹂躙するようなアメリカ側の意向が、ワシントン特電として新聞に出ておるのでありますが、このような強制的な立ちのき措置というようなことを——これはもちろんワシントンの特電で、日本政府の見解とは出ておりません。こういうようなことを日本政府としてはよもや考えてはいないと思うが、こういうようなことについて、政府考えているのかいないのか、あるいは当分現状のままとして、その後の推移を見るというのか。もしここで安保條約を発動するというようなことになりますと、これはゆゆしい外交上の重大な紛争問題を惹起することになる。われわれ国民としても看過することができない問題だと思いますが、これはもちろん外国側の報道でありますから、あらためて日本政府側の責任ある見解をただしておきたいと思います。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本政府としては十分に各種の問題を考慮しまして、今後、事態に即応したような適当の措置をとるつもりでおります。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 適当な措置という中には、この強制的な立ちのき——安保條約の第一條の発動をまつてもこれをするというようなことが含まれているのかいないのか。その点は国民にとつては非常に重要な関心事でありますから、もう少しはつきりその点を答弁を求めたいと思います。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今申した通り、いろいろの状況研究し、ただいま考慮中でありますから、どういうことをするということは、ここでまだ申し上げる時期に達しておりません。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題はそれでとめておきます。  それから漁業の問題でもう一点政府に聞いておきたいことは、四月二十三日、リツジウエイが、千葉の新聞で、九十九里浜の演習地が漁民の障害となるならば、演習計画を再検討すると述べております。ところが最近、合同委員会では、全国二十箇所の演習海域を決定したといわれておるのであります。演習海域は大体どこに決定したのか。その決定に対しては、地方漁民の意見を考慮したのか。この点は、太平洋方面のさけ、ますの漁業も非常に問題になつて来る、また北洋漁業、東支那海の漁業も国際的な関係紛争の問題もあるということになりますと、日本の沿海漁業というものがやはり重要な要素になつておる。ところがこの日本の沿海漁業が、米軍の演習地域として接收になるということになりますと、これは日本の漁民に與える影響が非常に重大だと思います。合同委員会の発表は全国二十箇所の演習海域だといわれておるのでありますが、大体その漁区の接收状況について政府の見解をただしたいと思うのであります。ちなみに九十九里浜の漁民は、大体正午から六時まで、射撃のために漁撈が不能の状態になつております。その損害の補償は、過去二年間で、九千七百万円の支出になつておりますが、これは一人当り、いい人で四千円、低い人はわずか三百円というような状態があるのであります。特に九十九里浜の中の一番被害の多い片貝の漁民は、二百八十三戸が生活保護を受けておるのであります。その生活保護を受けておる漁民の数は、すでに全町戸数の一二%に及んでおるのであります。漁民としては演習地の即時廃止というようなことを真劍に考えておるのでありますが、この日本の漁区の接收については、大体どういう状況になつておるのか、ひとつ合同委員会の最高の責任を持つておられる外務大臣から答弁を求めたいと思うのであります。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは本日の議題とはちよつと違うように思いますが、アメリカ側でも日本経済にできるだけ影響を及ぼさないように考えております。日本の方では、アメリカの駐留軍は日本の安全を守るために来ておるのでありますから、安全を守る場合に能率が下らないように、できるだけ十分なる演習をして、その規律と機能を発揮できるようにいたしたいという考えから、双方で相談をしておるのであります。これには農林省の代表も加わりまして、漁民の方の立場を十分考慮してやつております補償の問題につきましても、今後は実際に損害のあつた額に対して、十分なる補償をするという方針で進んでおります。まだこの漁区の問題は決定に至つておりません。大体の話合いは今進みつつありますが、いずれ決定を見た場合には、御必要とあらばいつでも報告をいたします。なおこれは接收ではないのでありまして、接收とか收用とかいう問題ではなく、話合いによつて双方の満足が行くように、また漁民にも困らないようにいたして、演習地を定める、こういうことになつております。
  81. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、もう時間が一ぱいですから、ひとつ……。
  82. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一問問いたいのでありますが、御承知通りインドサンフランシスコ條約に参加しなかつたのは、信託統治制度が、日本の主権を完全に回復させるものでないということ、米軍の駐留が占領軍のそのままの駐屯になるので、占領制度を継続させることになるのだ、領土問題の帰属を不明にしておくことは、極東における将来の紛争の禍根を残すごとだということで、サンフランシスコ條約には参加しなかつたとわれわれは記憶しておるのであります。これは岡崎外務大臣の先ほどの答弁をお聞きしますと、インド側日本のより完全な独立を希望するというようなことを言われておるのであります。そうするとやはり、もしインド側がそういうことを要望するならば、この條約に明らかに、領土問題についての見解と、それからポツダム宣言に基く日本の非武装あるいは民主主義化の課題がどう果されたかという見解が、当然盛らるべきだと思うのであります。そうして日本の完全なる独立が、サンフランシスコ條約よりはもつと明確に、インド側の人民の意思を標榜してここに表現されなければならないと思うのでありますが、その点があいまい模糊としておりまして、條約の中心はほとんど通商航海條約あるいは経済的な取引の條件の問題にすぎないと思うのであります。岡崎外務大臣が言われました、インド側日本の完全な独立を希望するというような意思があるならば、これがどうして條約に盛られないか。結局ネール政権としては、サンフンシスコ條約に基いて、英米側からいう日本独立したというような見解に従つて、この條約を結ばれているのだ。サンフランシスコ條約には参加しなかつたけれども、結局はサンフランシスコ條約の効力を認めたという基盤に立つて、この條約が結ばれたのではないかというようにわれわれには考えられるのでありますが、その点は交渉の経過においていかなる見解がインド側から表明され、また日本側からいかなる見解が表明されたのか、念のために聞いておきたいと思うのであります。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 インド側サンフランシスコ條約に参加しておりませんから、サンフランシスコ條約との関係については、これは別に何にもないわけであります。そこでインド日本が完全なる独立国であるという見解のもとにこの條約をつくりまして、今林君はただ通商関係等があるのみだと言われますが、第一條には最も基本的な考えが出ております。それは両国の国民相互の間に、強固なかつ永久の平和及び友好関係を存在させる、こういう基本的な考えが出ておりまして、そうして第二條以下には、すべてまつたく互惠平等立場でもつて條約を結んでおりますので、インド側考え方はここに明らかになつておると思います。
  84. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  85. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は大臣に、日本国とインドとの間の平和條約に関して御質問申し上げたいと思いますが、この條約の個々の條文につきましては、すでに今までに他の委員諸君から、問題とすべき点は質問されておりますので省略いたします。それで私がお尋ねしてみたいと思いますことは、この條約の根本的な性質についてであります。これにつきましても、今まで多少他の委員諸君が触れられておりますけれども、なお少しつつ込んで質問してみたいと思います。  インドサンフランシスコ條約の内容に反対でありましたために、サンフランシスコ会議には参加しなかつた。そして今回新たに別個の條約を日本と結んだのであります。それでありますから、この條約がサンフランシスコ條約とは形式上別個の條約であるということだけは明らかでありますが、私は單にそれだけでなく、性質も全然異にしている條約ではないかと思うのであります。この点についてお聞きいたしたいと思いますことと、これに関連いたしまして、サンフランシスコ條約第二十六條とこの條約との関係はどうかという問題にも触れてみたいと思います。これは私には非常にむずかしい問題のように思えるのであります。また政府もどの程度はつきりお答えくださるかわかりませんけれども、一応私の考え方を申し述べさしていただきたいと思います。  インドがサンフランシスコ講和会議の招請を受けながら出席を拒絶いたしました理由は、これは申すまでもありません。インドは対日平和條約の基本目標といたしまして、先ほども大臣が仰せられましたように、第一には、この條約の條項は、日本に対して平等の地位を與えるものでなければならぬ。それから第二には、講和條約の條項は率直解放的であつて一切の国、ことに極東における安定的な平和の維持に関心を持つ諸国が早晩これに加入し得られるようなものでなければならぬ。こういうような根本目標を持つておりまして、サンフランシスコ條約は、この要件を満足させるものでなければならないのに、実際にはそうでないということを指摘いたしまして、その反対論点といたしまして、御承知のように三つの点をあげております。第一は、琉球諸島及び小笠原諸島をアメリカ信託統治領としたことに反対である。第二は、この條約で占領軍から駐屯軍への切りかえを約束するようなことをきめることには反対である。第三には、台湾、千島列島及び南樺太の帰属を、條約上明示していないということに反対である。こういう三つの点をあげたのであります。この三つの反対理由は、單に條約の表面に現われました理由であるにすぎないので、その背後にはこの反対理由の基礎となつておりますインドの外交政策があり、インドの外交政策がサンフランシスコ條約に現われました合衆国の外交政策と一致しないものがある。これがインドサンフランシスコ会議へ参加しなかつたことの基礎的な原因となつたのであろうと考えます。私はインドのネールの外交政策をあらためてここで申し上げる必要もないと思いますけれども、ごく簡単に説明すれば、ネール外交の基調は、第一には、米ソ両国の協調を基礎とした国際安全機構たる国連を中心とする世界平和の維持、第二には、帝国主義支配に付随する政治、社会、経済機構の排除、民族主義の支持、これらの排除のあとに生れた、新しいアジア諸国家の育成発展及び相互の協力ということであろうと考えます。このことからインドはいずれのパワー・ブロツクにも属しない、いずれのパワーブロツクとも防衛條約を結ぶごとを拒否しております。何となれば、もしこのような條約を結べば、他のパワー・ブロツクと敵対関係に入るからである。インドはこういう対立的立場に立たないで、米ソ相互の理解のもとに世界平和を維持しようという、一見非常に困難に思えるような道を、なおかつ、あくまで熱心に追求しております。このネールの考え方に立つて、合衆国の考え方、すなわちアメリカ合衆国の世界政策への日本の引込みという政策が、サンフランシスコ條約に露骨に現われておると見て、インド日本をこのような立場に追い込むことに反対するという立場から参加しなかつたのであると私は見ておるのであります。なおそのほかに、サンフランシスコ條約は、インドが多大の関心を持つております中国問題につきましても、インド方針と異なる方針を予定しておると見ておつたようであります。すなわちアメリカは蒋介石政権を中国の代表政府として、これとの講和條約を日本に結ばせるということを予定しておる、こういうふうに見ておつたようであります。ところがインドは新中国政権を承認しておるのでありまして、ここに根本的な外交方針上の差が現われておる。インドはこういうふうに見ております。また、国連と中国との関係におきましても、アメリカがいまだに蒋介石政権に国連の議席を持たせることを固執しておるに対して、インドは四億五千万人の人口を持つ新中国が国連から除外されておつては、この世界機構は完全に世界を代表しておるということはできないのだ、こういう見方に立ちまして、中華人民共和国の国連加盟を支持しておる、こういう根本的な差がある。このインドの外交政策と、サンフランシスコ講和條約の上に現われたアメリカの外交政策とが異なるので、インドは参加しなかつた、こう見なければならないと思います。そうしてこのインドの外交政策は、その後今日までの間に変化したと見られる何らの証明もないと私は思いますから、今回サンフラシスコ條約への参加を避けて、別に日本国との間の平和條約を結びましたのは、やはり依然として私はただいま申しましたようなインド外交政策の精神のもとにおいてこれをなしたのである、こう解釈する以外に、私はこの條約の根本的性質の解釈のしようはないと思います。そうでなければインドサンフランシスコ平和條約に参加しなかつた意味がないからであります。そこで私はこの意味におきまして、今回締結せられました日本インドとの新條約の性質は、サンフランシスコ講和條約の性質とは根本的にその性質を異にしておるものである、私はこう解釈するよりほかに、ネール外交の精神のもとにおいて日本と條約を結びましたこの條約の性質の解釈の仕方がないと考えるもの皆あります。しかしこの問題は、おそらく両国ともここまではつきりつつ込んでのお話合いはなかつたと思います。しかし私どもが一応この條約に対する態度を決定いたしますにつきましては、この点を明らかにしておきたいのであります。まずこれだけを最初に質問いたしまして、その次に第二十六條との関係を少しばかり御質問申し上げたいと思います。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 インドの外交政策についていろいろな御意見でありますが、インドはそれはいろいろ自分の考えも持つておりましよう。しかしながらインドはやはりその建前からいいまして、自分の考えに同調しなければどこの国とも交際しない、こういう考えはむろん持つておりません。つまり自分の意見他国にまで無理に押しつけるというのでは、その根本的なインドの外交基調といわれるものと事実上矛盾してしまうのであります。従つてインドインドとしての考え方を持つておる、日本はまた日本としての考え方があるであろう。そこでその日本考え方までかえさせるつもりでやつておるのではないのであります。従つてインドインド考えを持ち、日本日本考えを持ち、そうしてその中でよその国との関係において調整しなければできないようなインドの主張は、インド日本だけでは解決できないのでありますから、これに触れずして、インド考え方の基調であり、同時に日本考え方の基調である互惠平等という精神で必要な範囲の條約を結んだ。従つてこれはサンフランシスコ條約と根本的にかわつたというふうにも言われないのであります。ただインド側考え方はどうか知りませんけれども、條約に現われたものは、サンフランシスコ條約を欣然として受諾した日本政府考え方と、インド政府考え方の合致した点がこの條約になつた、こうお考え願いたいと思います。
  87. 黒田寿男

    ○黒田委員 時間の関係がありますから、次の問題に入ります。そこでただいまの私の質問と関連することでありますが、この條約とサンフランシスコ條約第二十六條との関係はどういうものであるかということをお尋ねしてみたいと思います。サンフランスコ條約の第二十六條によりますれば、日本は、連合国宣言に署名し、もしくは加盟しており、かつ日本国に対して戦争状態にある国で、サンフランシスコ條約の署名国でないものと——インドソ連も、中国もこういう国であると思いますが、署名国でないものと、この條約に定めるところと同一のまたは実質的に同一の條件で二国間の平和條約を締結する用意があると書いてあります。それは一般にはその義務があるというように解釈されておるようであります。そうしますと日本といたしましては、インドを含むこれらの国との平和條約は、この第二十六條に定められております期限内におきましては、サンフランシスコ條約と同一のもしくは実質的に同一の條件を持つておる二国間の平和條約以外には結ぶことができないのであるか。もしこれ以外の條約が結べないとすれば、私は日本インドとの條約は、要するに第二十六條の條約でなければならぬということになると思います。しかしそう解釈しましては、私どもの考えからは、インド外交の精神を無視することになる、サンフランシスコ会議に参加しなかつたインド立場を無視蹂躙することになると思います。そこでわが方といたしましては、インドの名誉のためにも、この條約がサンフラシンスコ條約の趣旨と同一のまたは同一のものでないとしても、実質上同一の條件を持つた條約である、こういうように解釈することはできないのではないか、こう私には考えられるのであります。そう解釈することはできないとして、しかも一つの新しい條約ができたとすれば、先ほど申しましたように、サンフランシスコ條約とは性質を異にする新しい型の條約であると考えなければならぬ。そうであるか。そうであるとすれば、この第二十六條以外の條約ということになりまして、第二十六條とその点どうなるかという問題が起るように私には考えられるのであります。そこで第二十六條の條約であると解釈しても矛盾が感ぜられるし、第二十六條の條約ではないというても矛盾が生ずるように私には思えます。これは先ほど私が申しましたように、非常にむずかしい問題だと私自身には考えられるのであります。私の考え方が十分でないのかもわかりません。けれども私にはこういう根本的な矛盾が感じられます。今回の日印平和條約は、第二十六條に該当する條約と解釈するのでありましようか、どとでありましようか。繰返していえば、私が先ほど申しましたように、そうであるとすると、インド外交の精神、またインドサンフランシスコ條約に参加しなかつたという事実との間に、どうも矛盾起るように感ぜられるのであります。ちよつと政府の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この第二十六條の解釈は、平和條約の承認を求めた当時にも、また中華民国政府との條約の御説明のときにも、繰返して申しておるのでありまして、これは主眼は末尾のところにあるのであります。要するにほかの国と條約を結んだ場合に、この平和條約で日本が與えた以上の利益他国に與えた場合には、この平和條約の締約国にも同様の利益を與えなければならぬのである。従つてその利益を與えたくないならば、実質的に同一の條件でなければならないことになるわけであります。しかし日本が相手国に対して與える利益が、この平和條約以上のものでないことを期待し、またその利益が以上のものであれば、締約国にも均霑させるといふ趣旨でありまして、日本の方がより有利な條約を結ぶことには何ら制限をいたしておらないのであります。われわれはこのインドとの平和條約が、サンブランシスコ平和條約において締約国に與えた以上の利益インド側に與えているとは思いませんが、同時にこのサンフランシスコ條約よりも以上の利益を、日本インドとの條約において享有いたしておると思います。しかしこれは第二十六條の規定とは何ら矛盾しないのであつて日本はいかなる條約を結ぼうとも、相手国にサンフランシスコ條約以上の利益を與えなければいいのであり、また與えた場合にはよその国にこれを均霑せしめればいいのであるといろだけであつて、それ以外の問題については、この第二十六條は何ら日本の行動を制限しておるものではないのであります。
  89. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいま岡崎外務大臣がお答えになりましたそのことは、私にはよくわかるのであります。そしてこの條文の重点が、二国間の條約に関するものでありその内容について、但書におきまして問題点を挺起しているのだということは、私にはよくわかるのであります。ただ私が問題点としてお尋ねしましたのは、二国間の條約の内容という点についてというよりも、二国間の條約は、第二十六條によるとサンフランシスコ平和條約と同一ないし同性質の條約でなければならぬという意味か。先ほど申しましたように、サンフランシスコ平和條約にはアメリカの外交方針が露骨に現われておるが、そういうサンフランシスコ條約と同性質のものでなければならぬという意味か。それともそれ以外の性質の條約を結べるというのであるか。ただいまの岡崎外務大臣の船答えの中で、終りの方にちよつとその問題に触れたところがあつたように思います。日本は、要するにサンフランシスコ平和條約と同一ないし実質的に同一と思えるような條約以外のものを——それ以外というのは、性質上それ以外のものであるという意味であります。單に條件がよりよいとかより悪いとかいうような問題ではありません。根本的に異質的という意味でありますが、そのような條約を結び得る自由があるかどうか。日本締結する條約である限りはどうしてもサンフランシスコ條約の線に沿うたものでなければならない。ただその條約の内容について第二十六條但書に該当するようなことがあり得るにすぎない、こういうのでありますか、その点をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  90. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは繰返して述べておりますように、第二十六條は途中で切れるのではなくして、條文全部が第二十六條であります。従つて但書から以下が別問題とすれば、條約の同一または実質的に同一というので、黒田君のように精神的にも同じものでなければならぬ、こういう議論にもなるかもしれませんが、ここに但書がついておりまして、これは日本の提供する利益の問題を言つているのであるから、それ以外の点においては日本は自由である、私はこう考えます。従つてこれと違う條約であつても、よけいな利益を與えた場合にはこの條項によつて規定されますけれども、それ以外のものは関係ない、こう思つております。
  91. 黒田寿男

    ○黒田委員 最後に……。そうしますと、具体的内容において第二十六條の但書に触れることになれば、もとよりこの第二十六條の適用を受けるのであるけれども、條約そのもののよつて立つ根本的性格というようなものにつきましては、決してサンフランシスコ條約に拘束されるものではない。こういうように解釈をしてよろしいのでありますか。そうであれば、私どもはこの日本インドとの條約の性格について新しい解釈ができると思うのであります。またそういう新しい解釈のできる條約であるといたしますならば、私どもはこの條約に対する賛否について、また十分に考えてみなければならぬ、こう考えまして実はこういうような質問をしてみたのであります。大体わかつたように思いますので、私はきようはこの問題につきましては質問はこれだけにしておきます。
  92. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君、大臣は退席しますけれども、先ほどの残りを……。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 私は北太平洋公海漁業に関する條約に関しまして二、三点伺いたいと思います。この條約は水産委、員会におきましてもいろいろ問題をかもし出しておりますけれども、その問題は別といたしまして、私がぜひ知つておきたいと思いますことは、この條約が保存漁業立場に立つ條約であることは一応了解いたしますけれども、この條約を締結した当事者の自画自讃であつては困ると思いますので、次の点を伺つてみたいと思います。  條約の前文の中に「漁業資源の最大の持続的生産性」すなわち資源満限と書いてあります。これは水産学者などが抽象的には言うことができるのでありましようけれども、日本の国で、本條約で述べているさけ、ます、にしんあるいはハリバツトなどについて、資源満限状態についてかつて調査したりあるいは計算したりした資料があるかどうかを伺いいたいと思います。その理由は、單にアメリカやカナダの学者やあるいは業者の意見従つてこの言葉を使用したとすれば、結局この條約は平等な立場とも、あるいは公海自由の原則に沿つたとも言うことができないと思うのであります。そういう点につきまして、一体今日まで日本においてどの程度研究調査をし、その結果がどういうふうに現われているかということを承りたいと思います。
  94. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 日本は、直接米国、カナダの水域にわたりまして特別の調査をしたということはないのでありますが、日本からも従来その辺の研究にも行つておりますし、いろいろの資料も持つております。ことに今回の日米加三国漁業條約の締結の交渉にあたりましては、専門委員会等も設けられまして、日本側からも役所並びに学者あるいは実際家等も出まして、十分科学的検討を加えました結果、今回あげられておりますような特定魚種については大体資源満限であり、また保存措置等も従来十分考慮されておるものであるという認定をいたしまして、今回の條約が締結されたように考えておるのであります。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 日本がもしこの調査をしたことがなくて、専門委員会などで研究したことになりますと、日本に現われて来た調査は、結局米国、カナダに匹敵するものでなくなるような結果になり、そうした場合に発言の機会が米国、カナダ側にあつて、どうしても日本側ははつきりした発言ができないということになりはしないかということを私は心配するものですが、その点についてどうであるかを伺いたいと思います。
  96. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 鮭鱒につきましては、日本からも従来調査船が行つておることはございます。それからまた科学的な検討でございますから、長年の統計なり資料なりを出しまして、専門家、実際家、学者等がそれを中心に検討するということでありましたならば、これは、日本が直接日本としての独自の統計資料をかりに持つていなくても、お互いの学者、専門家の検討を基礎とするのでありますから、そういう点で日本側は非常に不利な立場に立つということはないと私は思います。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、米国、カナダは直接調査をしてあつて日本は、学者なり何なりが机上で一応研究をした、その結果をもつて交渉したということになるわけですか。
  98. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 今申し上げましたように、アメリカ、カナダ等、従来から委員会が設けられまして、非常に緻密な科学的研究を続けて来ておるのであります。それから、日本の方も、先ほど申し上げましように、これに匹敵するほどの研究調査を従来してをつたというわけでもありませんが、先ほど話しましたように、調査船等も日本からもやはり出ておることはあるのであります。そういう資料と向うから提示される資料等を専門家、学者等が検討いたしましたならば、ここにおのずと一つの結論が出るということはこれはやむを得ないことだと思います。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 その点に少しあぶなつかしいところがありはしないかと懸念いたしますけれども、そのことはその程度にいたしまして、ベーリング海の百七十五度以東の出漁を抑制して、オホーツク海への出漁が不可能な現在、さけ、ます、などの漁場は一体どこであり、そうしてまた現在の漁場における漁獲高はどのくらいであるかということを承らせていただきたいと思います。戦前と比べてみまして、大体どの程度漁獲高となるかということを伺いたいと思います。それと、時間がありませんからついでに伺いますが、この漁獲高がもし減少したとしま」たならば、それに対しての今後の対策も伺いたいと思います。
  100. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 これは、承知のように、終戦後マツカーサー・ラインその他によりましてずつと出漁していなかつたのでございますから、ただいまただちに比較する資料というものを持つていないのであります。ことに、そういう点になりますと、水産庁の側から説明してもらわないと、われわれといたしまして、もし間違つたことを申し上げてもいかぬと思いますので、水産庁から御聴取を願いたいと思います。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 今のことは、水産庁でお調べになつて、あとから資料ででも出していただきたいと思います。委員長からどうぞおとりはからい願います。  それから、この前の水産委員会との合同委員会でいろいろな意見を聞いておりますと、結論として一体どうなのだろうかということが、いいか悪いかということが私にはつきりわからないのです。それで、この條約によつて日本が受ける利益は一体何か、あるいは不利益は何か、そういう点を具体的に場お教え願いたいと思います。
  102. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 一応私からお答え申し上げますが、たびたびここでも申されましたように、公海自由の原則というものが一応これによつて確立されたことになると思います。それからさらに、漁業資源の保存について基本原則が確立されたことになるのでありましてかりにある国が何ら根拠のない主張を今後一方的にいたして参りましても、やはりこの條約が一つの先例というか、モデルになりまして、十分なる科学的検討がされた結果でないと、そういうことができないということになるかと思います。また、実績保存というようなことにつきましても、日本は二十五年間以来の実績もここに確保されるのでありまして、大体従来の日本の実績というものはこれでカバーされると思います。そういう点から考えましても、将来他の国といろいろの交渉が起る際におきましても、この條約が先例となつてむしろ日本の実績が確保されるのではないか、また魚族保護、漁業資源確保という上から行きましてもむしろもたらされる利益の方が非常に多いのではないかと思います。これは、私が外務省に関係しているからこういうことを申し上げるのではなく、率直に私もかように考えます。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 利益の方はわかりましたが、それでは不利益とお思いになる点は全然おありにならないのですか。
  104. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 日本が自然的ににしん、おひよう、さけの三種について漁獲を抑止することになつておりますので、形式的にはこれらをとりに行けないということになるのでありまして、不利益のように考えられるのでありますが、実際問題といたしましては、にしん、おひようについては、今回の抑止区域に日本が行つたことは従来全然ないのであります。ただ、さけにつきましては、試験船が行つたというよろなことが今までにございますが、これまた商業的漁獲の実績は全然ないのでありまして、事実上においては何ら制限を受けることはないと考えるのであります。なお、これらの地域におきましても、それらの以外のかに漁業であるとか、あるいは母船式トロール漁業であるとか、こういうものは何らの制限を受けないのでありますから、形式的には一応の制限を受けることになりますが、実質上の不利益というものはほとんどないと考えていいのじやないかと思います。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、日本が自発的に、にしん、さけなどをとることを抑止いたしますことによつて、この漁獲高が減るということはないわけなのですか。
  106. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 そうはならないと申し上げてさしつかえないと思います。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 これは国際的に非常に影響のある條約でございますから、よく考えなければならないと思いますが、私にはいろいろの点でどうもわからないことがあります。ただいまの外務政務次官の御答弁では非常に利益の点のみしか教えていただけませんでしたが、私の方から見ますと、どうも不利益の点がいろいろあるような気がいたしますので、なおよく研究いたしてみたいと思いますから、本日はこの程度で質疑を打切りたいと思います。
  108. 仲内憲治

    仲内委員長 林君に質疑をお許しする前にちよつと申し上げることがあります。先ほどの林君の御発言の中に「———」云々という言葉が数回出ましたが、これは不穏当であると思いますし、また懲罰の問題などが出てもまずいですから、お取消しになりませんか。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 懲罰になつてもけつこうです。私は自分では取消しません。
  110. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは、委員長において、あとで速記録を調べて適当に処理いたします。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 二点ほど聞きたいのです。人命の安全のための国際條約についてですが、これはソビエト社会主義共和国連邦、これは会議に参加はしたのですか。
  112. 松平直一

    ○松平政府委員 参加いたしましたが、署名はしておりません。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、ソビエトだけでなくて、東ヨーロツパ諸国もずつと署名しておらないのですが、こういう国々がどうして署名しなかつたのですか。
  114. 松平直一

    ○松平政府委員 私にはその理由はわかりかねます。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 そろすると、ソビエト並びに東ヨーロツパ、諸国が署名をしておらないということ認めますね。東ヨーロツパもずつとそうだつたのですね。それはいいですね。
  116. 松平直一

    ○松平政府委員 その通りであります。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 入国管理庁の方にお聞きしたいのですが、四月十八日から十九日に、台湾から劉才青という人国しておるかどうか。この人が宗慶張それから曽何とか、林何とかの三人を連れて羽田へ来ております。それからこの人の住居ですが、現在日本のどこに住所があるかおわかりですか。きよう答弁できなければ、あした調べて来てもらいます。
  118. 鈴木政勝

    ○鈴木(政)政府委員 ただいまのお尋ねの点は、ただいま資料を持つておりませんで、至急調べましてお答えいたします。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 住所もわかるでしよう。
  120. 鈴木政勝

    ○鈴木(政)政府委員 これは入国の際に申請をいたしますので、それに住所を書き入れることになつておりますので、その程度の住所はわかると思います。
  121. 仲内憲治

    仲内委員長 本日砥この程度にいたしまとて、次会は明十四日午前十時より開会することといたし、これにて敵会いたします。     午後零時五十三分散会