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1952-06-06 第13回国会 衆議院 外務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月六日(金曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 足立 篤郎君 理事 佐々木盛雄君    理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    大村 清一君       菊池 義郎君    小川原政信君       北澤 直吉君    金原 舜二君       栗山長次郎君    黒澤富次郎君       飛嶋  繁君    水田三喜男君       守島 伍郎君    山本 利壽君       林  百郎君    勝間田清一君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法務事務官         (矯正保護局         長)      古橋浦四郎君         中央更生保護委         員会事務局長  齋藤 三郎君         外務政務次官  石原幹市郎君         参  事  官         (外務大臣官房         審議室勤務)  三宅喜二郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 六月四日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  水田三喜男君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として今野  武雄君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員近藤鶴代君、中山マサ君及び今野武雄君辞  任につき、その補欠として金原舜二君、黒澤富  次郎君及び林百郎君が議長指名委員に選任  された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際連合特権及び免除に関する国際連合と日  本国との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一一号)  千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴで署  名された経済統計に関する国際条約議定書及  び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日に  ジユネーヴで署名された経済統計に関する国際  条約を改正する議定書及び附属書締結につい  て承認を求めるの件(条約第一二号)  中華民国との平和条約締結について承認を求  めるの件(条約第一三号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件、千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴで署名された経済統計に関する国際条約議定書及び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日にジュネーヴで署名された経済統計に関する国際条約を改正する議定書及び附属書締結について承認を求めるの件及び中華民国との平和条約締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。各件に関する質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 賠償問題について岡崎外務大臣に質問いたします。中華民国との賠償問題は有利に展開いたしましたけれどもフィリピン、濠州、インドインドシナとの間の賠償の問題は、どのように解決される見通しでございますか、その辺のところをお伺いしておきたいと思います。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 フィリピンの方は、御承知のように本年の一月から二月にかけまして話合いをいたしました。しかし結論が出て参りません。それでさらに今度は東京で話合いをするということになつておりますが、まだその日取り等決定しておらないので、未解決であります。濠州からはいまだ何も意思表示はないのであります。インドシナの中でヴェトナムとカンボジアからは、昨年の桑港会議の際に、賠償を要求する意思があるということを言つておりましたけれども、その後まだ何も具体的な申入れはありません。インドにつきましては、昨年の八月に、ネール首相が議会におきまして、インドは対日賠償の要求をする意思がないということを言明しておられましたが、その後もこの態度は一貫しておるようであります。ビルマはやはりまだ何らの意思表示がありません。インドネシアにつきましては、御承知のように今度はこちらから行つて五月ごろに話をさらにするということに、中間協定ではいたしておりましたが、この中間協定インドネシア国会で認められず、従つて政府としてこれを確認できませんものですから、いまだにそのままになつております。
  5. 並木芳雄

    並木委員 なおこの点に関連して、最近アメリカが今まで日本に貸与しておつた援助金――ガリオアとかイロア資金でしようか、ああいうものがなお貸したのであつて、これは日本返済すべきものであるというふうに伝えられております。この点はかつて岡崎さんも返す意思があるということを表明されておりますが、いよいよそういうことが表面化して参つたものでございましようかどうですか。そういたしますと、政府といたしましてこれの返済方法はどういうふうに計画をされておりますか、お伺いしておきたい。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 対日援助の金はわれわれとしてはこれは日本の債務である、こう考えております。しかしながらこれの返済につきましては、日本返済能力というものに限度がありまして、これに対しては賠償もありましようし、あるいは在外の日本公債支払いという問題もありましよう、またただいまのガリオア支払いというような問題もありまして、いろいろの点がきまらないと決定はいたしかねるわけであります。いずれにしましてもアメリカ側としては、日本経済の再建の妨げになるような措置はとらないつもりでおるようでありますから、今後この点は話合いの問題にはむろんなりますが、ただいまのところどうということは特にないのであります。また最近何か新しい事態ができたかというとそうでもないのであります。従来からの態度をただ同じようにかえずに持つておるというだけであります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 新木大使はこの点で積極的に日本側から何か申入れをする予定でありますかどうか。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 新木大使日本経済状態等につきましては、むろんこれはアメリカ当局等十分説明をいたす準備は持つておりますが、特にこの問題について何か積極的に話合いをするというような訓令は受けておりませんし、またこれは今申したように総合的に考えるべき問題でありますから、特に新木大使にその使命は負わされておりません。
  9. 並木芳雄

    並木委員 次に戦犯の問題についてお尋ねをしておきたいと思います。この前中国との関係において戦犯問題が解決したけれども、これはやがで濠州、フィリピンなどにもこのように適用されることを政府としては望んでおる、期待しておる、こういう答弁を得ておるのでございます。そこで戦犯釈放減刑、特に死刑囚減刑などにつきまして、政府としては講和条約が発効したる後、どのような懇請と申しますか、申入れ各国にいたしておられますかどうか、それを詳しく承知しておきたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは平和条約の第十一条に規定がありまして、この規定に基いて政府としては適当に措置を講ずるわけであります。ただこの規定趣旨からいたしますと、たとえば個々人々につきまして過去における服役の状態がどうであるか、あるいはその人の年齢がどうであるか、健康状態がどうであるか、それからその人の考え方はどういうふうになつておるか、いろいろの状況を個人々々について勘案しまして、個人々々についてこのくらいのこれは減刑をするのが適当であろう、あるいはこの人は病身であるから刑はそのままとしても、帰宅してうちで療養させる、あるいは日本の病院に入れるのが適当である、あるいはもうこの人はうちへ返す、つまりパロールといいますか、うちへ返してさしつかえないものである、あるいは一思いに赦免してもいいものかという個人々々の実情に沿いまして事件ごとに勘案いたしまして、これで各国政府勧告をする、その勧告関係国政府の多数によつて受入れられる場合には実行できる、こういう趣旨であります。それからもちろん関係国ごとにやつておりますものは各国ごとにそういう措置をとるわけであります。なおそれ以外に特殊の緊急を要するものがありますれば、これは引出して特にその人について交渉をする。たとえば非常に病気が重いとかいうような場合もありましようし、いろいろな点があると思います。  それからなおフィリピン関係、マヌス島関係でも海外にまだ留置せられておりますものは、政府希望としてはまず国内にこれを引取つて日本政府の手で刑の実施を引続き行い、その実績を見てさらに考慮する、こういうことにいたしたいと思つて、それぞれ適当な方法相手国にもその意向を伝え、希望をいれるように話をいたしておりますが、まだその辺には先方からはつきりした意思表示があつたわけではないのであります。  それからこれは中華民国との平和条約関係にもなるのでありますが、中華民国軍事法廷で刑の宣告を受けた人々につきましては、この条約が双方で批准せられて発効いたしますれば、日本の裁量にまかされるということになつております。大体以上の状況であります。
  11. 並木芳雄

    並木委員 死刑囚の点についてお答えがございませんでしたが、これは関係者は昨日も石原政務次官答弁でたいへん喜んでおられる。もちろん次官でございますから政府を代表しての答弁で、これは重ねてお伺いするのはどうかと思いますが、そういう関係者の方々から見れば、重ねて岡崎外務大臣に尋ねておいていただきたい、そうして再確認してほしいという声が出て来ておりますが、これはごもつともです。そこで幸いここに御列席でありますから、昨日石原政務次官答弁せられたように、死刑囚というものも全部その刑を免れるということをここで言明していただけば非常にけつこうだと思いますが、お尋ねいたします。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはおそらくフイリピン等人々のことだと思うのでありますが、おそらく次官もこれは大丈夫だとはつきり言明されたわけじやないと思います。多分大丈夫であろう、こういう意味だと思いますが、私もその程度には考えております。しかしこれは法律的には別に証文をとつたわけでもないのでありますから、そう政府としてよその国の政府が自分の考えでやるべきことを、こちらからそう強く何かはつきり申し上げるわけに行かないのであります。またそういうことを日本政府が言うということは、私は出過ぎになると思いますが、希望としてはむろんそう思つております。また多分そうなるのではないかという期待もかなり強く持つている、その程度で御満足願います。
  13. 並木芳雄

    並木委員 よくわかりました。そこで多分大丈夫であろうという期待を持つているということを裏づける何かを大臣から示していただきたいと思う。何かこの裏づけとなる今までのいきさつというものがあろうかと思いますから、明らかにしていただきたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは関係者からいいますれば、そういうものを非常に聞きたがろうと思いますけれども、何分にもフィリピン国民感情というものは、決して非常に改善されたというわけになつておりません。またフイリピンでは近く選挙も行われる状況になつております。いろいろのいきさつもありますけれども、これをここでいろいろ申しますと、かえつて逆効果を起すおそれもなきにしもあらずと考えますので、今のところはそういう政府期待に御満足願つた方が、向うにいる人人に対してもよろしいのじやないかと私は思います。政府としても、多少期待している以上は――期待し得るだけの多少の根拠と申しますか、そういうものは持つておりますけれども、内部の話であります。その点は言明を差控えた方がよろしいと思います。
  15. 並木芳雄

    並木委員 よくわかりました。私どももその念願を持つておるものでございますから、どうかこの点についてはひとつ政府として特段の御努力をしてもらいたい、これは特に要望しておきます。  そこで先ほど個々人々について調査を進めておるということでございますけれども、これはそういう調査の進め方ではたいへん手間がとれるのじやないかと思います。そうでなく、講和条約も発効したのだから、ひとつ恩赦の精神、ああいうようなものに基いて、一括しで減免刑処置釈放、こういうような申入れはできないのですかどうか、国際慣例もございますでしようが、その点私どもよくわからないのです。個々調査に基いて申入れまたは勧告をするというのでなく、包括的に懇請申入れ勧告をすることばできないのですかどうか、この点をお尋ねいたします。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この平和条約の第十一条は、極東軍事裁判所なりその他の軍事法廷判決を、日本政府としては受諾したことになつております。従つて日本政府としてはこれらの判決は正しいものとして受諾しておるのでありまして、従つて個々のケースにつきまして、これは赦免が適当であるとか、これは減刑が適当であるとか、あるいはこれは仮出所をさせるのが適当であるとかいうことについて、調査をして勧告をするのが、誠意のあるやり方でありまして、ただ調査もせずに一括赦免とか減刑とかいうことは、私は国際的の観念にも合いませんし、またそういう申出は、関係国の過半数の承諾を得るということも困難ではないかと思います。やはりまじめに調査しまして、これこれの程度には減刑が値するのだとか、釈放が値するのだとかいうしつかりした根拠があつたものにつきまして、各国勧告をする、これが私は早道でもあり、また正当の処置であろうと考えております。
  17. 並木芳雄

    並木委員 それではちようど法務府から斎藤中央更生保護委員会事務局長が見えましたから、現在その調査の進行の度合いについて、どういうふうになつておりますか、御報告を願いたいと思います。
  18. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 この調査事務は、法務府の外局になつております中央更生保護委員会がこれに当り、そしてそれを審議決定をして勧告を是とするということになれば、これを外務省に御連絡を申し上げまして外交折衝に移る、こういうことが戦犯者に関する法律で規定されております。さような関係で、中央委員会がこの事務をいたしております。私どもといたしましては、すみやかにこの調査を終らしたいと思いまして、極力努力をいたしております。講和条約の発効前は、先方管理下にございましたために、直接在所者について事情を聴取するということが不可能でございましたので、四月二十九日から連日調査をいたしておりまして、まず仮出所ということが比較的通りやすい道でございますから、これについでまず最初にその方を調査をいたすことにいたしました。四月二十九日から今日までに仮出所の申請をいたしている人について、仮出所に必要ないろいろな資料を調査いたしましほぼ全部それが完了いたしてございます。二百四十一名のうち中国関係の方、それから病気でずつと調べることのできないという人を除ぎまして、二百三名について一応調査を完了いたしております。今後は赦免減刑等について十分調査をいたし、適切たる手を十分尽したい、かように考えまして、引続きその他の人についても調査を続けて参る所存でございます。
  19. 仲内憲治

    仲内委員長 大分時間も過ぎましたから、どうぞ簡単に願います。
  20. 並木芳雄

    並木委員 岡崎外務大臣お尋ねをしておきますが、ただいまも触れられました通り中国関係戦犯ですが、これは中華民国の手ではどうにもならない節があるようでございます。この前中共戦犯がおるという報告を聞いておりますが、中共地区戦犯がおるとするならば、これは抑留者の問題でしたか、その点はつきり記憶がないのです。抑留者の問題と一緒お答えを願つてよいのですが、この解決は今後どういうふうにやつて行かれるつもりでございますか、お尋ねいたします。
  21. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 戦争犯罪人中国に関する限りにおいては、これは中華風国政府中国本土を支配しておりました当時に、軍事法廷判決をいたして刑をきめたものだけでありまして、その後は私はないと思います。従つて中共関係戦犯というのがその後に起れば別でありますが、今までのところはないと考えております。従つて現在いるのは抑留者ばかりであります。これについては何べんもお話しております通り、いろいろの手はあると思いますが、今後事態に応じまして適当な手を打つて、できるだけ早く帰還させたい、こういうつもりでやつております。
  22. 並木芳雄

    並木委員 その方法でございますけれどもサンフランシスコ条約の第六条によりますと、ポツダム宣言に基く引揚げ条項が引用されております。要するに引揚げは完了しなければいかぬという連合国のお約束でございますが、日本としてはなかなかむずかしい場合でも、この条項によつて連合国が積極的に中共あるいはソ連などと交渉して、その実現に責任を持つてもらえるものかどうか、その点をお尋ねいたします。
  23. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは条文にもあります通り連合国責任を持たせるということには行かないと思います。まあ道義的の意味では別としまして、法律的の責任は、この条文でも明らかな通り、ないと思いますが、こういうものを入れたというのは、要するにできるだけ尽力しようという趣旨でありますから、連合国はむろん尽力は借上まないと考えております。
  24. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、私どもどういうふうに了解してよろしゆうございますか。連合国にそういう責任はなく、道義的のものであるということになると、日本政府として抑留者引揚げとか抑留漁船の返還とか、そういう問題を解決して行かなければならないと思うのですけれども大臣としても大いに苦心しておるところはわれわれよくわかります。何かその糸口を探す手を示していただかないと、ちよつと安心できない、大臣はその点をどういうふうに考えておられますか。
  25. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは常識的にいえば、国内輿論なり国際的の輿論なりを反映して、中共政府がこれに対して反省をすることが原則でありますが、これに対して直接なり間接なりに話合いをする手もないこともないと思います。また将来事態の変化によつては、いろいろそういう機会もあると思いますが、今ここでこうやるんだ、ああやるんだということを申しても、相手のあることでありますし、また今のところ日本が直接話合いをすべき立場にもないものですから、ここで明言はできませんけれども、あらゆる方法を尽すということになるわけであります。もし並木君の方でいい考えがあれば、いつでもそれを採用して実行いたします。
  26. 並木芳雄

    並木委員 私ども一緒にこの点は真剣に考えておるわけなのです。たとえば中共貿易であります。また北京アジア平和会議が開かれておつて、これに参加希望者がある。その場合に旅券の発行なども政府としてはしてやつてみたらどうか。中共貿易ども許されておる範囲内では、政府協力を惜しまないような態度を示すことが、むしろ糸口をつくつて行くのではないだろうか。それからソ連の対日代表部の問題でございますけれども日本のこの間通告したことに対して、ソ連の方からしからばこれを通商代表部に切りかえたいというような申出があつた場合には、これを受入れてもいいのではないか。大臣降伏関係じやなくて休戦状態だと言われております。休戦状態で、ただ条約なき講和だと思えばいいのですから、そういうような場合には、対日ソ連代表部通商関係代表部に切りかえるということは、一つの糸口をつける道ではないかと考えておるのです。  以上三つの点について大臣所見をお伺いしたいと思います。
  27. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまの並木君の御所見は拝聴いたします。これはいろいろ意見もあることでありまして、政府としては通商代表部なんという話は全然聞いておりませんし、これはみな仮定の問題ですから、この問題で議論してもしかたがありませんが、かりに抑留者を返すからこうしてくれ、こういう話なら非常によくわかるのですが、こういうことをすれば何とか向うで考慮するだろうぐらいのあいまいなことでは、なかなかプリンシプルを曲げるわけには行かないという点は御了承願いたいと思います。  旅券の問題でも同じであります。抑留者を返すから旅券を出せというなら話は、非常にはつきりして判断ができますけれども、そんなことは何も関係なく旅券を出せということは、いわゆる平和攻勢の一環として日本にとられる場合には、これは別問題として考えなければならぬ。従つて抑留者の返還問題とは全然別の問題として考える場合には、私は旅券などを出すべきものでないと思うのであります。  また中国との貿易は、これはモスクワ会議でもイギリス政府から発表があつたのでありますが、一千万ポンドの契約ができたというが、あんなものはモスクワで話をしなくても、イギリスの制度のもとにやろうと思えばいつでもできることである。こういつておつたのであります。今度の問題もそうであつて日本輸出制限品目がありますが、その品目に触れないものなら中国との貿易をやつても一向さしつかえないのであります。何も北京まで行かなくても話合いはつくのであり、北京で話をつけても、輸出制限品目政府が緩和する意向がない限りは貿易はできない。従つて北京でやつたということは、私どもは別に何ら特殊の意味があるとは考えておらない、さよう御承知願いたいと思います。
  28. 仲内憲治

  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は国際連合軍日本に駐留することにつきまして確かめておきたいと思いますことは、先ごろから説明になつておりますが一昨日もその質問がありまして、七月二十六日以後国際連合軍日本に駐留する場合に、正式な協定ができなかつたときにはどういうふうに扱われるかということに対して、政務次官はたしか吉田アチソン交換公文によつてその問題は解決するというふうに御答弁なつたと思います。吉田アチソン交換公文というものは、結局日本国国際連合加盟国との間に別に合意される通りに負担されるとありますから、そうであるといたしましたならば、吉田アチソン交換公文によりましても、新しくそこに何らかの話合いを必要とするのであつて、その場合にはあくまでも政府側は在来の態度と同じように、日本の国がその費用などを分担しなくてもいい、という態度で臨まれると考えていいかどうかということを、もう一度確かめておきたいと思います。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際連合の行動に協力しておる軍隊が日本国内におるということにつきましては、吉田アチソン交換公文でこれを認めておりまして、国会承認を得たわけでありますから、国際連合軍の一部が日本に滞在することもさしつかえないわけであります。今お話の費用の点でありますが、われわれは国際連合にできるだけ協力するという建前で来ておりますから、これは将来いずれ話合いをしてきめなければなりません。先方意見もよく聞きまして、できるだけ協力のできるような建前話合いを進めるつもりでおります。しかしながら、その決定は四月二十八日の午後十時半にさかのぼつて実施されるわけであります。それまでは暫定的に支払うものは支払うということであつて、今は向うで主として金はみな持つて支払つて暮しておるわけであります。そのうちの、たとえば政府の持つて、おる建物を無償で提供するとか、あるいは安く提供するとかいろいろな問題があると思いますが、これは将来の合意に基くのですから、それまでは暫定的にやつているわけであります。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは協力のできる範囲内までするということの中には、あるいは場合によつてはある程度費用を分担しなければならないような場合も生ずるわけでしようか。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはそういう場合もあると思います。しかし一方にそういうものに支出する予算がなければ、これはまた予算の方で問題になつて来ます。しかし今のところ特に政府が金をもつて支払うべき必要があるかどうか、これはよく先方事情も聞いてみなければわかりませんが、そういう点は少いのではないかと思います。むしろ施設をどういうふうに提供するかというようなことが、おもなる点になるのではないかと考えております。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定案というのは、これは国際連合軍には適用されないで、シビリアンの場合、事務的な連絡の場合と私は了承するのですが、それでよろしゆうございましようか。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは全然別問題でありまして、朝鮮の事変がない場合に普通の国際連合の代表者が日本に来て事務所を持つたりするときの各国のやり方と同じものであります。朝鮮の事変がありまして国際連合軍が活動しておるときとはこれは全然別問題と御承知つてけつこうであります。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この協定案の第七条の中に「日本国指名する者一人」とございますが、これはたれがどういう人を指名し、またどういうところに事務所を置ごうとされておるか、何か計画があつたら承つておきたいと思います。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ別に考えはないのであります。日本国指名するものは、むろん政府指名するわけであります。で何か問題がありましたら、そのときにそういう人を選んでやるわけであります。おそらく国内における事務所、特権というか、そういう問題についてのことでありますから、話合い国内でやるだろうと思います。まだそういう紛争みたようなことは一つも起つておりませんから、別にただいまのところ考えておりません。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 政府指名する場合に、大体どういうふうな傾向の人をお選びになるのでしようか。たとえば外務畑の人とか、どういうふうな人をお選びになるのですか。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは紛争の中身が法律問題であれば、法律に精通した人でありますし、また実際の問題であれば、実際の、そういう問題に精通した人、こういうことになりまして、どれということはまだ全然きめておりません。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次に私は日華条約について少し伺つてみたいと思いますが、一昨日黒田委員がオア、アンドの問題でいろいろ御質疑になりました。私は政府答弁によつて、ここに中華民国の、支配する国、そしてまた今後入るというふうに書いてありますが、今支配している国、それからまたその次にあとからそれに加わつて来るものをも入れるというふうに政府が了解して、そうしてこのような条約に署名されたと思うのですけれども、そういうような場合に、日本政府ははたして将来この様な事態が起る、すなわち現在中華民国政府の支配下にあるところが、さらに拡大されて来るというふうな見通しで、この交換公文に同意されたのかどうかを承りたいと思います。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう見通しは、全然イエスでもノーでもないのであります。そういうことをあらかじめ予想するということは、中国の内政に干渉することになります。これは日本側の返事をごらんくだされば、一番よくわかるのでありまして、要するにこの意味は、この条約中華民国の支配下にあるすべての領域に適用がある、こういうことでありまして、減つても、ふえても一向さしつかえない。常に中華民国政府の支配下にあるすべての領域に適用がある。これは念のため議事録で明らかにいたしております。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこがやはり問題になると私は思うのです。今後入るという意味にとることができると了解するが、その通りであるかと言うと、その通りであると言つているのですから、やはり今後入るということを了承した上で同意したのだろうと思いますけれども、その点はいかがでしようか。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはつまり、こういう文字を使わないと、協定したそのとき現在支配している地域だけにしか、この条約は適用しないということになるおそれがあるので、オアという字を加えたのであります。その意味は、要するにこの条約中華民国政府の支配下にあるすべての領域に適用がある、いつでも、支配下にある領域には全部適用がある、こういう意味であります。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは違う面から伺いたいのですが、いつのことかわからないような予定に基いた条約締結というのは、今までの国際間にそういう例が私はないと思うのでありますが、そういう例があつたかどうかを承りたい。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはつまり一つの領土には一つの政府があるのが原則でありまして、ただいまは二つの政府が争つているという変態のことであります。従いまして、そういう場合には、いつでもこういうふうな表現をせざるを得ないと思います。例もあります。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 参考までに、その例をひとつ伺つておきたいと思います。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 例はあとで書面でもつて差上げます。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは次に伺いたいのですが、台湾の独立民主党が、独立を希望して国連に訴訟を起したということを聞いているのですが、そういう情報があつたかどうか。もしあつたとすると、それがどうなつているかということを伺いたいのです。それはなぜかといいますと、日本がこういうふうな情勢にあるところと日華条約を結んで、非常に窮地に陥るような結果になりはしないかということを私はおそれるわけです。この条約が発効するには、中華民国政府においても批准をし、日本においても批准をして、その批准書がとりかわされて初めて発効すると思うのですが、そういう状態にもしありといたしましたならば、はたして中華民国政府でスムーズに批准ができるかどうかということが、問題になりはしないかと思いますが、その点に対する見通しを伺いたいと思います。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそういう種類の団体の名前があることは承知しておりますが、実際の勢力はほとんど何もないのだと思つております。いずれにしましても、しかしながら、中華民国政府というものは、国連に代表を送つておりまして、各国の、相当の数の政府から承認を受けている政府でありますから、台湾の領土内におきまして、ほかの何かそういう団体があつたとしても、全然これは問題にならないものと考えております。
  49. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではもう一点お伺い、いたしますが、日本貿易の行き詰まりの打開に対して、政府もいろいろ苦慮せられております。五月十五日の衆議院の予算委員会で吉田総理大臣は、中共貿易がなくても、東南アジアとの貿易で、日本はその市場が確保されると主張しておりますし、またちようど同じ日に、マーフィー大使が、APの記者に対して、日本の実業家たちは、製品を売り、原料入手の市場として中国を失うことから、将来について非常に心配しているけれども、米国は心から日本を援助するつもりだし、日本中共貿易のかわりに東南アジア、インド、南アフリカに市場を見出し得るのではないかということを、期せずして同じ日に発表せられております。これは私は一朝一夕には非常にむずかしいと思いますけれども、何かその間に具体的なお話合いがあつたかどうか、伺いたいと思います。そうしてまた東南アジアの貿易というものに対して、どの程度中国で失つた貿易をカバーするだけの自信がおありになるか、またこういう場合に英国との調整をどういうふうになさるか、その点を伺いたいと思います。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田総理とマーフィー大使は、別に話合いをして、そういう話を相互に発表したわけではないのでありますが、おそらく国際情勢に精通しておられる人ならば、期せずして常識的に、そういうことを言うことに、結果としてなつたのだろうと思います。今戸叶さんは、中国貿易において失つたところと、こう言われましたが、失つたところということが、どういう意味か私ははつきりはしませんけれども、過去における中国貿易というのは、満州事変以来は、ことに満州における非常な特権を持つておりますし、満州事変以後における日本の対外取引のバランスは、ことごとくあげて満州に投資しておつたのであります。また中国においても、非常に大きな財産、紡績会社もあれば、船会社もあり、その他各種の商業上の拠点を持つておりまして、これまた治外法権的な特権を持つておつたのであります。そうして非常に大きな投資と特権と、それから満州国に対してはさらに大きな権力を持つておつた上に、各国との関係が悪くなつて、満州、中国貿易を集中せざるを得ないような状況になつて無理やりにやつた貿易であります。従つてこの実績をもつて、これを失つたからほかの方で取返さなければならぬとお考えになるのは、私は根本的に間違つておりはしないかと思うのであります。現に満州における特権の喪失、また中国本土における各種の特権の喪失、資本の喪失、これらを差引きますと、一体どの程度にできるのか、その失われたものというものは、どの程度であるかというと、私は常に中国貿易が最近は非常に誇張されて考えられておると思つております。従つてどの程度取返されるかという問題は、中国貿易の量がどのくらいになるかという問題に関連して来るのであります。要するに南方その他において、日本の外貨の収入はむしろ非常にふえて来て、輸入これに伴わないというような状況になつておる次第でありまして、われわれとしても中国貿易を、さつきも申した通り、とめておるのじやないので、制限品目以外のものならばやつてもさしつかえない。これは何も北京行つて交渉しなくても、いつでも国内でもできる話でありますが、それ以上のことはやれないという考えでやつておるわけであります。それはなるほどスターリング地域もありますし、支払協定などの問題もありますから、いろいろむずかしい点はありますけれども貿易というものは、何も一年や二年を考えておるのではなくして、長い目で見て貿易の発展を考えておるのでありますから、多少の不況も時によつてはあろうかと思いますが、しかし方向はそちらに向けて日本貿易の再建ということはできると確信しております。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 失われた面ということを先ほどおつしやいましたが、たとえば日本の国が鉄鉱石や粘結炭、大豆などを高い運賃を払つて、遠隔地から輸入して、また日本の国の製品の輸出が、総司令部の輸出禁止措置によつて、前は阻止されておりました。独立後にアメリカから経済的、軍事的な援助というようなものはなくなつて、高い材料を入れ、わが国の経済におけるマイナスの面というものは、概算して大体五億ドルに上るということを、私は聞いたのですけれども、それじやこういうことは、運賃あるいは遠いところから買う材料の面などで、そういう損失はないと岡崎さんはお認めになるわけですね。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は五億ドルというような勘定は知りませんけれども、たとえば石炭にしましても、中国炭とアメリカから輸入する石炭とは、むろん値段はたしか中国炭は十九ドルくらいで来るのではないかと思います。アメリカの方は二十二、三ドルじやないかと思います。数字ははつきりしませんが…。(「二十四ドルくらい」と呼ぶ者あり)そこで石炭の質等を比べますと、私の意見ではありませんで、これは業者の意見ですが、むしろ中国炭の方を入れた方が割高になるのではないかという観測を持つております。また塩につきましても、同じように結局中国の塩の方が現在では割高につくのではないか。もつとも大豆などはそうではないかもしれませんが、いずれにしても必ずしも距離が近いから安いのだという結論は出て来ないのであります。
  53. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 私は日華条約について本日は総括的に根本的な問題について質問したいと思うのであります。日本の国民は中華人民との友好を求めており、台湾との条約の問題については深い憂慮と関心を示しております。そこでこの条約の基本的な事項について、岡崎外務大臣責任ある答弁を求めたいのであります。  その第一はいわゆる蒋介石の主席であつた中華民国というのは、一九四九年の十月革命によつて現代の北京政権にかわつて、すでに滅びた国であります。蒋介石には合法的ないわゆる領土あるいは国民というものもないのでありまして、これはわずかにアメリカの第七艦隊によつて台湾が海上封鎖され、彼らの軍事費の三分の二がアメリカによつてまかなわれておるという、これは国民党の残存した分子であり、残存する叛徒にすぎないのでありまして、もしかりに亡命政権だというならば、亡命政権というのは外国の軍隊の力によつてその国の国土から追い出されたものである。ところが蒋介石というのは、革命によつてすでにその政治的な地位を追い払われておるものであるから、これは何ら合法的な政治権力を握つておるものでも何でもない。要するに国民党の残存する一分子にすぎない。このようなものと条約を結ぶことがどうして友好であるのか、まずこの点について私は質問したいと思うのであります。この条約の中にも明らかにあります通りに、「国土」という言葉あるいは「国民」という言葉はないのであります。これは幾度か自由党の佐々小委員からも質問があつたのでありますが、政府みずから蒋介石政権に国土めるいは国民があるということを認めばい、ただ支配下にある領土あるいは国民とみなすというような言葉が使わていることは、明らかに政府みずからが蒋介石の領土だとか、あるいは国民とかというものを認めておらないのであつて、さようなものは一つの政権として認めるわけには行かないのであります。これと条約を結ぶということは、私は明らかに無効の条約だと思いますが、この点について、岡崎外務大臣答弁をまずお聞きしておきたいと思います。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろの御意見でありますが、私は中華民国政府はりつぱな政府であると考えております。そうして国際連合にも堂々と代表を派遣して、投票権もちやんと持つておるのであります。こういう事態から見れば、あなたのおつしやることは筋が違うと思います。国際連合等に代表を派遣している政府条約を結ぶことは、何らおかしくないと私は確信しております。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると蒋介石の領土だとか、あるいは国民とか、要するに一つの主権として国土だとか、あるいは国民とかというものはどこにどうあるのですか。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中華民国政府は全体の政府であると主張しておりますし、また中国全体の国民を支配しておると主張しておるわけであります。われわれは、そういうふうな建前であろうけれども、現実の事態はまた現実の事態であるからというので、その趣旨を妥協してつくり上げたのがこの条約であります。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると蒋介石の政権の及ぶ領土は中国本土であり、人民は中国本土の四億五千万が蒋介石政権の国民である。それが原則だ。しかし現に支配が及んでおるのは台湾と澎湖島だという建前なのですか。だから蒋介石政権の領土は中国全体あるいは四億五千万の国民全部に及ぶという、こういう日本政府の御見解ですか。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中華民国政府はさように考えておるということを申し上げておるのであります。われわれは現実の事態を見て、その間の最も実質的な実際的な条約をつくり上げておる、こういう説明をしております。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、日本政府考えておる蒋介石の国土、あるいは国民というのはどことどこなのですか。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本政府は、中華民国政府が現在支配している地域に対しては、中華民国政府の支配下にある地域と考えております。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 支配下にある地域というのは国土という意味ですか、それから人民とみなすというのは国民ということですか。なぜ「みなす」とか、「支配下」という言葉が使つてあるのですか、国土と同じ意味に解釈してよいのですか。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 支配下にある地域は支配下にある地域です。
  64. 林百郎

    ○林(百)委員 だから支配下にある地域というのと、国土というのと、同じなのか違うのかということを聞いておる。
  65. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 要するに、支配下にある地域があるから、われわれはその地域に関する住民との間に条約締結する必要があるから条約締結しておるのでありまして、中華民国政府は、国連においては中国を代表した政府として代表を出しておるのであります。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 支配下といいますが、そうすると軍隊と警察で暴力的に支配することが、すぐそこに領土権が生ずるということになりますか。御承知通り台湾はアメリカの第七艦隊が海上を封鎖して、そうして軍事費をほとんどアメリカが負担しておる。こうした外国の軍隊で取巻かれて警察の力でわずかに自分の生命の保障を得ておるということが、その国全地域にわたる主権を持ち、国民に対して支配力を持つということになるでしようか。私はその点は全然あなたと見解を異にしております。それは単に暴力によつて事実上そこを占拠しているだけであつて、これが一つの主権として国土権を持つ、あるいは国民に対する支配権を持つということと私は全然違うと思います。だからこそ政府も国土というような言葉あるいは国民という言葉を避けて、支配下にあるとか、あるいは住民とみなすというような言葉を使つたと私は思います。政府みずからが、やはり蒋介石が台湾、澎湖島に領土権を持つ、これを国土として持つ、あるいは台湾、澎湖島の住民を国民とするということは、認めておらない。それをあなたは口先だけでごまかしていると私はいわざるを得ないのであります。この点は大臣といくら問答していても、あなたは口先でごまかすことはうまいから、これ以上この問題について私はあなたに質問しない。  その次に、政府は蒋介石が国連に代表を送つておるから合法的な政権であるというように述べておりますけれども、一体中国の政権はどういう政権であるかということは、国連が決定するのか、あるいは中国の人民が決定するのか、その点を私ははつきりさせてもらいたい。一国の主権というものは国連が認める認めないの問題でなくして、その国の人民みずからが決定するものだと思う。私は明らかに今の中華人民共和国が、中国人民が支持している政権である、そして蒋介石は革命によつて台湾に追われたものだとすれば、中国の主権は、明らかに中国人民が支持している中華人民共和国だと思う。この中国の主権は決して国連が決定するものではなくして、中国人民が決定するものだ。この点について外務大臣答弁を求めます。ちようどこのことは、あたかもかつての近衛内閣が、汪兆銘をもつて合法政権だとみなして、中国相手にしないといつてつて来た日本の軍閥と同一である。中国の人民の意思を全然無視して、汪兆銘をもつて合法政権とみなして中国相手にしなかつたといいながら、実際の主権は蒋介石にあつたことは間違いないのだ。この愚を再び私は繰返すものと思われるのでありますが、一体国際法上からいいましても、その国の主権というのは、その国の人民自体が決定するものだ、国連に代表を送つておるからということでは、その国の主権が決定されないと私は思う。この点について、岡崎外務大臣答弁を求めます。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 暴力々々と言いますが、今の中共政府は、それでは暴力を用いずして中国を支配したのかどうか、これははなはだあぶなつかしいものであります。それは別問題として、要するに一国の政府をどういうふうに承認するかということは、各国の自由であつて、現に中共承認している政府もあれば、中華民国政府承認している政府もあるのであります。国際的には自分で適当と思う政府承認するのはこれはあたりまえな話で、別に主権とか主権でない乏いう問題とは関係がないのであります。
  68. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、時間が参りましたから簡潔に。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 私はその国の主権は、先ほどから言いましたように、外国がきめるのではなくして、その国の人民がきめるのだから、やはり事実上あなたも事実を率直に見られればわかりますが、中国の四億五千万の人民が、どの政権を自分の主権者として決定しているかということは、私は明白だと思うのです。こういう事実を無視して、あなたが日華条約を結ぶということは、これは明らかに中国四億五千万の人民を無視し、中華人民共和国に対する一つの挑戦的な行動だと思うからこそ私はこの質問をしているのであります。かつての近衛声明の愚を繰返さしたくないという私の誠意から、あなたに一応の警告を与えているのでありますから、あなたも誠意を持つてひとつ答弁をしてもらいたいと思う。そこで政府がどのように詭弁を弄しましても、蒋介石政権の将来というものは、大体国際的には決定されている。アメリカの有名な評論家であるウオルーター・リップマンも、アメリカは結局台湾を中華人民共和国に返さなければならないだろうとすでに述べている。この委員会の自由党の諸君もおそらく内心では、もう台湾の余命が幾ばくもないということは、賢明な諸君であれば知つておられると思います。ことに朝鮮の休戦会談の成立した日には、これは国連で正式に台湾帰属の問題が決定されると思うのであります。そうした場合に、もし蒋介石政権が消滅して、新しく中国の主権者は中華人民共和国であるということになつた場合に、一体政府はこのような条約をとりきめておつてどういう責任をとられるのか、これは国際的に蒋介石政権の将来というものはもう決定しているわけであります。国連の朝鮮の休戦会談の第五議題の政治協商としては、明らかに台湾、澎湖島の帰属問題が討議されている。この場合は明らかに私は各国の帰趨からいつて、台湾、澎湖島が中華人民共和国、北京政権に正式に帰属されることが決定される可能性が非常に強いと思う。こういう場合に、政府はこのようなとりきめをして、いかなる責任を持たれるつもりであるのか、私はこの点をお聞きしておきたい。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は将来の事態がどうなるか知りませんけれども政府責任を負うときは責任を負うだけの話であつて、それは林君に別に御心配をかけることはないと思います。なお将来こうなるときはどうだというような、朝鮮会談まで引いて御質問でありますが、これは一切仮定の問題でありますから、ただいまお答えするわけに行かないのであります。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 最後にお聞きしますが、この条約の結果は先ほど私が申しました通りに、すでに周恩来外相も声明しておるように日本が台湾と日華条約を結ぶことは、明らかに中華人民共和国に対する新しい挑戦行為だということをはつきり言つて、中華人民共和国としてはすでにこのようなとりきめをする吉田政府は、政治的なとり浄めをする相手と認めることができないということで、非常な憤激と怒りを買つておることは、これは否定し得ない事実であると思うのであります。そこで将来台湾の解放の問題あるいは中ソ同盟との関係、こういうような問題が起きて来た場合に、岡崎外務大臣としてはどういう責任をとられるのか、この点も国民がひとしく憂えておるのであります。ということは、外務省から配付になりました中華民国政府の治政現況を見ましても、これは台湾政府が明らかに本土反攻ということをその中心の政治目標にしておるのであります。上陸作戦あるいはパラシュート訓練の強化、反攻に必要なる物資の貯蔵、要するに反攻準備ということを呼号しておるのであります。また当初台湾の政権側からは、日本と地域的集団安全保障のとりきめをしようということが盛んに新聞に書かれ、このことが申し立てられておる。それからデューイも北太平洋同盟をつくらなければならないということを呼号しておる。チャーチルは台湾の侵略は許さないというようなことを言つておる。これらの一連の事実を考えてみますと、日本が将来台湾と地域的集団安全保障をとりきめる、あるいは実質的な集団安全保障のとりきめをする、そうして台湾の問題あるいは蒋介石政権の本土への反攻の問題、こういう問題にからんで、日本が新しい中華人民共和国に対する侵略戦争の片棒をかつぐというような危険を、多分にわれわれは感じおるのであります。この点について日華条約締結されたところの岡崎外務大臣は、国民に対してどういう保障をここでなさることができるか、はつきり私は聞いておきたいと思うのであります。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず周恩来さんが吉田内閣は相手にしないというなら、吉田内閣は現に国民の大多数によつて支持されておる内閣でありますから、近衛声明の愚を繰返さないように林君から御注意を願つた方がいいだろう。今後いろいろの条約等を結ぶときの責任はどうかという御質問でありますが、条約とは憲法の規定によつて国会承認を得て結ぶのでありますから、むしろ国会でそのときに十分御考慮をなさればよろしいのであります。
  73. 仲内憲治

  74. 勝間田清一

    ○勝間田委員 岡崎外務大臣に、主として通商関係の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。なおこの問題はもちろん通産省に関係があるのでありますけれども、最近の状態は通商航海条約にいたしましても、貿易協定の改訂の問題にいたしましても、きわめて重大な外交上の問題でございますので、私はこの際に岡崎外務大臣にこの問題を質問させていただきたいと思うのであります。  まず第一に現在の外交上の問題といたしましては、日本の自立経済の一番の基礎である貿易の問題が、きわめて深刻な状態にあることは言うまでもありません。なおそれが現在の生産量に非常に大きな影響を与えておりまして、紡織機にいたしましても、あるいはその関連産業にいたしましても、また鉄鋼関係にいたしましても、重大な影響を実は持つておるわけであります。こういう国内状態に対しまして、最近の国際情勢は非常に憂うべき方向に実は進んでおる。スターリング地域おけるいろいろの輸出制限措置、また大幅な対日貿易の切下げという点が強行せられたことは言うまでもありません。なおアメリカ等においてさえ、すでに日本の商品に対する関税引上げ、あるいはそれを通じての輸入の制限という問題が起きて来ておる。またアジア大陸との貿易の問題にいたしましても、従来政府はこれを逃げるというだけで、ただ現在の許可されたものだけをやればやれるではないかという説明だけに実は終つておる。ここに日本の対外通商に対する政策は困難であると同時に、それに対する処置が、私は皆無とまでは言わないけれども、ほとんど手がつけられておらないという状態、あるいはそれが非常な停頓をしておるというような状態にあるかと思う。かかる貿易状態に対して、あるいはドル地域に対し、あるいはスターリング地域に対し、あるいはアジア地域に対して、外務大臣は一体どういう見解でこの難局を乗り切つて行こうと考えておられるか、私はまずその点をお尋ね申し上げてみたいと思う。
  75. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 各国の輸入制限とか、あるいは関税引上げとかいうことは、何も今だけの問題ではありません。これは今後もずつと起る問題と思つております。その間に処してできるだけ日本の商品の進出をはかるということが、要するに貿易の根本的の考えであります。これには戦後において物がなかつた時分に、今でもつくれば売れる、こういう状況があつたのでありますが、国内では統制を撤廃した結果、非常にその点が早く改善されておりますが、貿易においてはまだまだその点が、つくりさえすれば売れるという状況が一時続いたのであります。それがだんだん業界が安定し乗ると競争がはげしくなり、安くていいものでなければ売れない、こういう値段の問題も関連して来るのでありまして、われわれとしては、まず国内においては産業のいろいろの合理化をはかつて、安くいいものをつくる以外に方法はない、こう考えております。しかし応急のいろいろの措置としては、たとえば最近にもインドネシアにも人を派遣して話合いを進めることにいたしておりますが、その他インドに対しても、いろいろな話合いを進めておる。タイについても、いろいろな誓いを進めておる。また南米等についても、話合いを進めておる。アメリカにもむろん話合いを進めておるというように、いろいろの方面でできるだけ貿易の障害を打開することに努力はいたしております。いたしておりますが、同時に国内の産業の形態を合理的にして、そうして低廉でいいものをつくるということが、まず競争の一番大きな要素であります。しかしながらなかなかこれ髪際にむずかしい。たとえば労働賃金なども、低賃金にすればすぐダンピングというような問題になつて来ますから、これもできない。新しい機械を輸入するということには非常な金がかかるとか、いろいろなことで故障はありますけれども、しかし要するに根本方針はそういうところにあると私は確信しております。
  76. 勝間田清一

    ○勝間田委員 きわめて抽象的な答弁をいただいたわけでありますが、しかしそういう考えで、通産大臣でなくてむしろ外務大臣としてどういう形をとらなければならぬかというお考えはあろうかと思うのであります。そういう問題について若干お伺いしたいと思いますけれども、現在通商航海条約がまだ各国とも締結されていないという状態にあろうかと思うのであります。アメリカその他とのこれらの条約の進捗状態、それから現在停頓しておる状況、この状況はどこに問題があるのであるか、その点をお一話願いたいと思います。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカとはずつと交渉をいたしております。このいろいろの問題につきましては、ただいま話合いの途中でありますから、もう少し発表はいたしたくないと思つております。そのうちにはつきり申し上げて国会の批判も請うし、国会承認をいずれ得なければならぬ問題であります。その他につきましても、話合いを進めつつありますけれども、元来こういうものは、平和条約にも予見されておりますように、効力発生後四箇年間にやる、こういうことになつておるのでありまして、そう一朝一夕にできるというふうにわれわれは考えおりません。また拙速をたつとぶということは、この際禁物であろうとも思つております。つまり一つつくりますと、それが例になりますから、できるだけ慎重に各国状況考えまして、一番モデルになるような条約をまずつくりたいと思つてアメリカといろいろ話をいたしておるような実情であります。たとえば最恵国待遇にしても、内国民待遇にしても、いろいろ複雑な事情があるのであります。こういう点でまだ話合いは完成しておりませんけれども、今せつかく話合いを進めつつあり、両方の意見は大分接近しつつありますので、交渉はいい方に向つておる、こういうことは言えると思います。
  78. 勝間田清一

    ○勝間田委員 アメリカとの通商航海条約の点が順調に進んでおるということでありますが、大体いつごろこれの見通しがつくのであるかという見通しと、それからアメリカ以外に現在同様の交渉を進めておる国は、どういう国であるか、その順序は一体どういうようにやつて行かれるのか、あるいはアメリカをモデルにして、ほかに交渉を進めて行くというのであるか、あるいは現在聞くところによると、インド等においては、むしろその問題を中心として講和条約の問題が行われておるということでございますので、こういう問題について、この三点について御答弁を願いたいと思います。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 別にアメリカをモデルにするというつもりはありませんけれども、一番先にできたものが、結局そのモデルになりやすいということを申し上げておるのであります。通商航海条約につきましては、まず中立国の間には、原則としては従前の通商航海条約が生きて来ることと考えております。その他の国につきましては、いろいろその国の事情がありますので、話合いを非公式に始めておる程度であります。インドについても同様でありまして、別に通商航海条約が今度の平和条約の案の中心問題となつておるのじやなくて平和条約ができましてから、できるだけ早くそつちの方にもとりかかる、こういうことに私は了解しております。  そこでアメリカとの話合いはいつごろできるか、これはまだちよつと予測がつきませんが、この国会に提出するほど早くはできないということは、これは言えると思います。できるだけ早くつくりたいと思つて努力はいたしております。
  80. 勝間田清一

    ○勝間田委員 パキスタンとの間における貿易協定の改訂がすでにこの一月から行わるべきであつたと私は考えておりますが、現在なおつ四十万トンかの綿花の輸入の問題がベンディングになつておる、支障を来しておるという状況ではないかと私は思うのでありますが、こういう非常に憂うべき状態がたくさんいろいろの国に出おると考えるのであります。このパキスタンとの貿易協定の改訂という問題については、どういう見通しを持つておるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はこれはそう長くかからないでできるのじやないかと思いますが、今話合いの途中ですから、いつできるかということは、むろん言えません。もつともこの内容については、いろいろ彼此関連事項がありまして、これは私よりも通産大臣からお聞きになつた方が筋道であり、また実際上外務省としては内容についてはできるだけ通産省の意見をいれて、通産省ばかりではありません、安本その他の関係省の意見に基いて交渉をいたしておるのでありますが、こういう問題は時間がかかるのはやむを得ないのであります。しかしこれもそう長くはかからないで、もうそろくできるのじやないか、こう思つております。
  82. 勝間田清一

    ○勝間田委員 しかし昭和二十七年の一月から改訂されるべきであるのにもうすでに六月になつておる。しかも現在のパキスタンとの貿易状況は非常に悪い。そういう点から考えてみると、そう長くはというような考えでは、ある意味ではもう政治的責任が来ておるのじやないかと私は考える。それならば、インドネシアに代表を送つておりますが、インドネシアも同様の状況にあると思う。それから濠州に対しても――最近は濠州は三月何日でしたか、御存じのように二分の一に貿易を減らしておるという状況になつておる。最近の日本との関係から見れば、おそらく従前の半額にも低下するであろうということを言われておるのでありますが、濠州及びインドネシアに対するこれら協定の進捗状況をひとつお尋ね申したい。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 濠州についてもいろいろ話合いを進めておるようでありますが、なかなかこれも時間がかかるのじやないかと思います。インドネシアにつきましては、今度代表を向うへ出しまして、それによつて話合いをさらに進めて行くというつもりであります。これもどうしても日本の方が輸出超過の傾向にありますものですから、そのバランスをどういうふうにやるかという点でなかなかむずかしい点もあるようであります。しかし要するにこれは日本の利益ばかりじやなくて、お互いの利益の問題でありますから、何とかそこのところは妥結ができるであろうと期待しております。
  84. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ビルマとの問題がやはり同様だと私は思うのでありますが、日華条約締結がビルマとの講和に対して相当悪影響を与えたのではないか、こう実は考えております。そこで従来までインドインドネシア及びビルマ等が一応中立外交をとつて、ほとんど歩調を一にしておつたのでありますが、これらの中で特にインドネシアとビルマ、なかんずくビルマは今度の日華条約締結による影響というものが相当強いように実は考えておるのでありますが、このビルマとの講和及びインドネシアの批准、こういう問題についていかに考えられて処置されておりますか。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは勝間田君の方が現地に行つてごらんになつたのですから、私よりよく知つておられるかもしれませんが、私は必ずしもそうじやないと思つております。今言われたように、これらの国々は大体歩調を合せておられるように思うのです。現にインドはすでに平和条約の案文を送付して来ておりまして、早急に締結したいという考えも持つておるのであります。われわれもこれに呼応してできるだけ早く条約締結して、でき得るならばこの国会に提出したい考えで、今努力中であります。ビルマもすでに戦争終了宣言というものをやつております。インド日本との間の条約ができるということになりますれば、これによつてビルマと日本との間の条約関係も、私は好影響を受けるのじやないかと考えております。
  86. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これらのアジア地域における一般の大きな要望は、日本の技術支援という点が非常に期待されておる。私はかつてインドネール首相に会つたときにも、日本の技術のインドの開発計画に対する支援ということを強く希望しておられた。そこで私は日本国といたしましても、賠償以外にこれらの要請に対して、特別に考慮する必要があるのではないかと考えておる。アメリカその他が現在技術援助協定等の締結インドシナにもいたしておるようでありますが、それらの問題ともあわせて、一体現在の政府は、アジア諸国に対する技術の支援なりあるいは支持なりあるいは援助なりについてどう考えておられるか、この際見解を承つておきたいしへまたこの問題はきめて重要だと考えますので、私はしつかりした国策としてこの処置をお願いしたいと思う。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは政府としては、この前インドネシアのミツシヨンがここに見えまして賠償の交渉をしたときにも、賠償とは別に経済的の援助といいますか支援といいますか、この問題も話をしたのであります。そのときに政府としてはいろいろと考慮した結果、今勝間田君の言われましたように、これはたとい一時日本によけいな負担がかかつてもやるべきである、結局相手国が繁栄すればそれだけまた日本にはね返りも出て来る、一時の負担があつてもやるくらいに考えるべきである、むろん喜んであらゆる援助をいたすべきである、こういう話合いをいたしたのであります。その方針はほかの国々についても同様であります。でありますから、喜んで技術者も出せば、あるいはアドヴアイザーでもあるいは機械でも何でもやつて、東南アジア諸国の繁栄を促進するということについては、政府としてははつきりした考えを持つておるのであります。ただこの間に実際上の取扱いとして注意力しなければなりませんことは、あまりこちらから先に乗り出しますと、エコノミツク・インヴェーシヨンといいうか、また日本経済的にそこに侵略して来るんだというような印象を与えることは、これは極度に避けなければなりません。いつでもそういうことをできるだけするという態度はかえたことはありませんけれども、あまりこちらから積極的に援助はどうだくと言うよりも、むしろ先方から要求があつたならばそれに対して快く、そうしてできるだけりつぱな人を出し、またりつぱな機械を出す、それについては日本政府は多少の負担くらいは覚悟してやつて参る、こういうつもりでおります。
  88. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから外務大臣はこの前参議院の本会議におきまして、中共との貿易問題について、従来は日本のきびしい禁止の状況に外国の足並をそろえてもらいたい、自由諸国家群の足並を乱したくないから、また非常に朝鮮に近いからというような答弁を実れておつたのに対して、今度は世界の足並のそろつていないものを調整する必要があることは認める、こういう答弁にかわられておるように私は見受けたのであります。これはそうであれげ非常にけつこうだと実は考えておるわけでありますが、いわゆるきびしい日本に云々ということではなくて、国際間のアンバランス、従つて苛酷な日本の条件を緩和するということを含めた調整を行おうという意味に解釈してよろしゆうございましようか、その点々ひとつお尋ね申し上げたい。  それから時間も過ぎましたから、もう一つだけ申したいと思います。アジア地域について、特に中共などにおける抑留者という問題は、従来から重要問題になつておつたのでありますけれども、私はビルマあるいはその他の地域に残留者がまだ相当おると実は考えろのであります。これは従来時間的なずれから調査が十分に行われなかつたという面も私はあろうかと存じますが、最近これらの状態について調査したことがあるか、あるいはまたそれがなかつたらば、現にそれらについて調査してみる必要があるのではないかと思うが、これらの点について外務大臣はどう考えておるか、この二点について最後にお尋ねをして、私の質問を終りたいと思います。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろ私の言つたことが大きく取扱われておりますけれども、私は終始一貫、態度はかえていないのであります。それは、中共貿易を緩和する意向はない、政府としてもない、私もないというのが根本の方針であります。緩和しない範囲においてでこぼこを調整するということならあり得る、こういうことであります。また気持はどうかということを聞かれたから、むしろやるものなら強くやるべきであつて、よその国に対しても、日本政府の方が強ければ、それにならうくらいの気持は私は持つておるのだ、こういうことを申したのであります。要するに今の御質問に対するお答えとしては、私は緩和する考えはない、政府としてもそういうことは考えておらぬ、でこぼこの調整ならこれは別問題である、これは緩和ではないのだ、こういう意味であります。  それから各地に人々が残つておるか、残つておらぬか。これは実はフィリピンでも御承知のように、もういない、あるいは死んだと思つた人が生きておつたりしたのもあります。ほかの地域においてもそういうものがごく少数はあるかもしれません。またインドなんかにおきましても、これは抑留者というのでもなし、残留者でもない、戦前からいた人が依然として戦争中もおり、また今もおるという人がおります。ビルマにおいても、ああいう戦争があつて山の中に逃げ込んだ時代もありますから、そういう者があるかもしれません。これは調べてみなければほんとうのことはわかりませんので、調べつつあります。また各在外事務所なり、あるいは公使館、大使館にはスタンデイング・オーダーみたいなものが出ておりまして、そういう材料があつたら常に送るようにさせております。今のところははつきりした報道はまだありませんけれども、常時そういうものを出しておるわけであります。これは一ぺん出して、それで報告がなければおしまいというのではなくて、常に調べてずつとよこすようになつております。まだはつきりしたことはビルマ地域ではわかりませんが、これは注意しておりますから、何かそういうけはいなりうわさなりがあれば、当然報告して来ると思つております。
  90. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  91. 黒田寿男

    ○黒田委員 私の先日の質問の続きといたしまして、日華条約締結の根本問題に関し、どうしても疑問の解け切れない点がありますので、その点につきまして質問を続行してみたいと思います。  第一に私が疑問と思いますのは、一体この日華条約サンフランシスコ条約第二十六条にいわゆる二国間条約であるかどうか。私にはこれについて根本的な疑問があるのであります。そこで私はこれだけ御質問申し上げまして、すぐ政府の御答弁を求めます前に、多少私がそういう疑問を持つております理由を申し上げてみたいと思います。  理由は私は大体二つあると思います。第一は、第一号交換公文によりますと、この条約条項中華民国に関しては中華民国政府の支配下に現にある地域に適用がある、こういうように表示してありまして、この地域が中国本土は含まないということは明らかであると私は考えます。次に交換公文には、この条約条項が「又は今後入るすべての領域に適用がある」と書いてありますが、予想される今後の支配地域と申しますのは、中国本土のことであると見なければならぬと思います。実は私はこういうように考えるがどうかという質問を先日いたしましたら、大臣ははつきりとお答えをなさらなかつたと思います。しかし私どもはこう解釈するのほかはないと思いますから、私の議論はこの解釈を前提とするのであります。  そこで中国本土はいわゆる中華民国政府の支配下に入るだろうか、どうだろうかということを実際問題として考えてみますと、常識上から申しますならば、その見込みはない、その実現の可能性はないという見通しを私どもは立てないわけに行きません。けれどもかりにそこまではつきり見通しを立てないといたしましても、今後台湾、澎湖島のほかに中華民国政府の支配下に入る地域がはたしてあるかどうかということはまつたく未定の事柄であります。将来の不定の事柄であります。従つてこの条約は、現在といたしましては台湾及び澎湖島に適用せられる条約であつて中国本土に適用せられる条約ではないというよりほかに、私ども現実の問題といたしまして解釈の仕方がないのであります。かりに中国本土に適用せられると言つてみたところが、事実上それを支配してないのでありますから、適用は不可能のことであります。そうであるから私は交換公文のようなものができたのだろうと思います。第一号のごとき交換公文が交換せられるということになつたのだと思います。そしてまた外務省の御説明用のパンフレットによりましても、現に中華民国政府の支配下にある領域としては台湾、澎湖諸島があるというようになつておるのであります。そこで、この条約は台湾、澎湖島に適用せられるものである、これが私どもの解釈でありまして、一国間の条約ではないとする見方の第一の理由であります。  それから第二の理由を私は申し上げてみたいと思います。一体中国とは何か。これは明らかであります。中国大陸をその領土といたしまして、その大陸の住民を国民としている国家であるということにつきましては、これはどんな政治的見解を持つております者も異論はないことだと考えます。     〔委員長退席、佐々木(盛)委員長代理着席〕 問題がありますのは、それを代表する政府北京政府であるか、それとも蒋介石政府であるかということにすぎないのであります。中国という国がどういう国であるかということについては議論はない。そこで日本国中国との間に平和条約を結ぶとすれば、その条約締結にあたつて中国を代表すると称する政府がどのような政府でありましようとも、条約条項中国本土中国本土の住民に適用せられる条約でなければならぬと私は考えます。それでなければ中国との平和条約ということはできぬと私は考えます。しかるに今回の日華条約は台湾及び澎湖諸島にさしあたり適用せられるものにすぎないのであります。それ以外の地域についてはまつたく将来の不定の事実に属するのであります。そこでこれは中国本土に適用せられない条約であると見なければなりません。そうするとこれは二国間の条約ではないというように判断せざるを得ない。これを第二の理由と考えたいのであります。  私はこういう二つの理由によりまして、この日華条約なるものがサンフランシスコ平和条約第二十六条にいうところの普通の意味での日華の条約である、平和条約であるというようには解釈できないのであります。一昨日申しましたように、この条約の私どもから見ての問題点は、条約の本文にあるのではなくて、むしろ議定書、あるいは交換公文の中に重要な問題がある。そう申しまして、私は交換公文の内容を前回の委員会のとき問題にしたのであります。この点に私は疑点を持つております。しかしこれは条約に関する解釈が違うので結論が違うということになるかもしれませんが、私はそういう疑問があるのです。私の疑問に対して政府はどうお考えになりますか、一応お聞きしてみたいと思います。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 平和条約第二十六条は要するに、この平和条約と同じような、または実質的に同じような条約を結ぶ場合には、この条約よりもよけいな利益をその相手国に与えていかぬとは言わぬけれども、与えた場合には、やはり条約当事国にも及ぼさなければいかぬのだ、こういう規定であります。つまり日本が将来他国にもつと多くの利益を与えた場合には、この条約の当事国にも同様の利益を与うべきであるというのが第二十六条の規定であります。逆にいえば、日本がほかの国との間に条約を結んで、この条約よりもよけいな利益を日本が得たところでさしつかえないわけです。中華民国政府との今度の条約は、サンフランシスコ条約よりも日本にとつて有利な条件があるのでありまして、従つて、これは第二十六条によつて締結したものではないと言えると思います。同様のことが、これはまだ確定はいたしておりませんが、おそらくインドとの条約においても行われると思います。そこでただいまのいろいろのお話ですが、要するに交換公文では、中華民国政府の支配している地域はこれくだということは言つておらないのであつて、現に中華民国政府には、中共政府との間に支配権を争つている地域もあると私は了解しておりますし、また中国なるものは非常に広いのでありますから、たとえば金門島はどうだ、舟山列島はどうだというふうに議論して来ればこれまたあい番いなところがずいぶんあると思います。要するに、この条約を適用した場合に、まだこの地域にも適用がある、こう中華民国政府の方から言いましても、実際そこが適用されるような状態になつておればやはりそれは支配した地域と認めるのでありまして、常識的には中国本土といいますけれども中国本土つていろいろ解釈があつて、辺境の地域に行けばなかなか国境等もわからない場合もあると思います。要するに、私はこれだけの地域だということを言つておるのではなくして、現に支配している地域、中華民国政府の方で、今これこれが支配している地域だということを明らかにしてくれれば、実際それに条約が適用されればいいのであろうと考えております。そこで御質問の趣旨が非常に深遠微妙で私にはよくわかりませんが、こういう条約を結ぶのがおかしいという御議論のように思います。これは意見の相違になると思いますが、私は別におかしいとも考えておりませんし、違法であるとも考えておらないのであります。
  93. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの大臣お答えうち、最初の部分は実は私の質問とは別個の問題であります。私の質問はその問題には触れないで、要するに一九四二年一月一日の連合国宣言に署名しもしくは加入しており、かつ日本国に対して戦争状態にある国であつて、しかもサンフランシスコ条約の署名国でない国との間に今後条約を結ぶという意味で、私は二国間の条約と申し上げたのでありまして、大臣の御答弁の前半の部分についても問題がありますけれども、それについては今日は質問いたしません。私の質問に対してお答えなつた部分につきましては、どうも納得が行きません。この条約は、われわれが普通考える二国間の条約ではない。中国という国を相手としての平和条約ではない、そういうように解釈することは私にはできない、そう申し上げたのであります。  そこでこの点に関する議論はこのくらいにしておきまして、次にお尋ねしてみたいと思いますことは、これも議論になるかもわかりませんが、この条約条項は、現在といたしましては台湾、澎湖島に適用があるにすぎないと思います。外務大臣は、多少例外的な地域を指摘されまして、必ずしも大陸という概念は明確でないと仰せられましたけれども、私どもはそのような枝葉末節的なことを問題にしているのではないのであります。常識上中国大陸と考える地域に対しましては、将来それが支配下に入つたならば、それがこの条約の適用せられる領域になる、こういうことになつておると解釈いたします。現在としましては台湾、澎湖島に適用があるにすぎない、こういうように解釈せざるを得ないのであります。事実それ以外の地域に適用する方法はないと考えます。ところが私の質問してみたいと思いますことは、この条約条項の中には、本来の中国本土関係のある事項が規定してあります。たとえば第四条に「条約、協約及び協定は、戦争の結果として無効となつた」ということが承認されておりますけれども、これらの条約、協約及び協定は、いずれも中国本土関係のあつた条約、協約及び協定であると考えます。     〔佐々木(盛)委員長代理退席、委員長着席〕 それから第五条の、「すべての特殊の権利及び利益を放棄」するというこのすべての特殊の権利及び利益は、台湾にあつたものでも澎湖島にあつたものでもなく、中国本土において日本が不平等条約によつて獲得した一種の権利及び利益であると考えます。それから第十一条であります。それは非常に重要な問題でありますが、これは議定書の一と関係がありますので、それをあわせて申し上げてみたいと思います。第十一条及びこれに関連いたしております議定書を見ますと、中華民国は、日本に対する役務賠償の請求権を放棄するというようなことが書いてあります。現在台湾だけを支配しております中華民国政府がこういうことが言えるのであるか。こういう賠償の放棄問題は中国本土の人民に非常に関係のあることでありまして、台湾及び澎湖島人にはこの意味における日本に対する賠償請求権というものはない、私はこのように考えておりますので、中国本土関係の事項を、中国本土には適用しない条約の中で規定するというのは、矛旧ではないかと私には考えられます。将来中国本土もあるいは国民党政府の支配下に入るようになるかもわからないとしましても、それでは条約中の重安な条文の効果が、将来不特定の時期に発生することを期待しておるというしすぎないことになつて来ると思えますし、これは条約規定としましては、例のない不可解な規定であると私には考えられる。これはどういうように説明したらよろしいのでありましようどうも私には、交換公文第一号のこの条約の適用範囲をきめた事項と、それから条約の本文の中にある事項との間に、今申したように矛盾があるように思われるのであります。これにつきまして疑問を解いていただきたいと思います。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは逆にお考えなつたら御理解が行くかと思います。もしこの条約の中に中国本土関係の事項が全然ないならば、適用範囲規定する交換公文等は必要がなくなるのであります。中国関係の事項が入つておりますから、そこでこの条約の適用範囲はこうであるということを特に明らかにする意味があるのであります。さよう御了解願いたいと思います。
  95. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君、もう時間が過ぎておりますので、ひとつ結論を急いでください。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 まだ少し残つております。ただいまのお答えにつきましては、私は異論がありますけれどもこれはいたしません。  さらに次の疑問として、私はこういう疑問を持つております。やはり私の考え方の前提に立つのでありますけれども、一体中華民国国民政府というものは、台湾及び澎湖諸島に適用せられる条約締結する権限があるかどうかという問題であります。中国本土に関することは別といたしまして、現実に支配しておる台湾、澎湖島等についてこの条約の適用があるということになつておるのでありますけれども、台湾及び澎湖諸島は、これはすでにこの委員会の冒頭から問題になりましたように、中国の領土であるということにはまだ確定はしていないのであります。日本から分離せられたというにすぎないのであります。国際法上中華民国政府が代表しておると称しまする中華民国に、台湾及び膨湖島の帰属権を確定的に与えたということにはなつていないのであります。そこで中華民国国民政府が現に台湾及び膨湖島を支配しておると申しましても、これは中国国内の対内的な意味におきましては、あるいはこれら地域を代表する政府と、主張し得る理由があると国民党政府は言うかもわかりませんが、対外的には私は台湾及び膨湖島を代表する政府であるということは言えないと思います。これは、大韓民国の場合と比較してみるとはつきりすると思うのであります。李承晩政府に対してはいろいろと政治的には批評もありますけれども、とにかく李承晩は大統領に選挙という方法を通じで選ばれて、事実上は三十八度線以南の地域の代表政府として政治を行つておるのであります。だから、こういう大韓民国に適用せられる条約を大韓民国政府がつくるというのでありますならば、その政府に対する政治的批判は別といたしまして、私どもは、一応はそのりくつがわかる。ところが私は、国民党政府には台湾及び膨湖島を代表して国際的に条約を結ぶ権限はないと思われるのであります。これも議論になるかもわかりませんが、どうも私にはそういうように思えるのであります。これを政府はどういうようにお考えになつておりますか。
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ポツダム宣言の中には、カイロ宣言の条項は守らるべしということが書いてあります。そして台湾、膨湖島等が中国に帰属すべきことはもう明瞭であります。日本としては、ただいまのところこれを放棄しただけでありますけれども中国に返るべきことはまあ世界の大国がみな約束違反をすれば別ですが、しからざる限り中国に帰属することは当然であります。  他方中華民国政府国際連合にも代表を送つておりまして、中国全体の政府という建前をとつておるのであります。ただ実際においては支配地域が限定せられておりますから、そこでこういうような特別の交換公文等をいたしまして、実際の適用範囲を定めておるのでありますが、中華民国政府建前からいいますならば、条約を結ぶ権能は当然あるのであります。また中国を代表して国際連合で投票する権能も持つており、これも国際的に認められて、おるものであります。
  98. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君、時間が過ぎておりますからごく簡潔に。
  99. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はこれだけのことを言うことが私の説明のために便宜であると思つて申し上げておるので、この点お含み願いたいと思います。  そこで岡崎国務大臣はカイロ宣言によりまして台湾、膨湖島は中国に返還されることになつておるど言われましたが、私はその中国というのはいわゆる中華民国国民政府の支配しておる中国というような内容であつたわけではないと思う。中国本土を支配する政府がどのように変化しましようとも、中国本土を領土としておりますその国家に台湾及び膨湖島は帰属するという意味でありまして、決して国民党政府の支配する国家に帰属するとい、意味ではないと思う。しかして中国における政治情勢は変化しておるのでありますから、そこで私どもは今申しましたようないろいろな疑問を提起せざるを得ないようなことにもなりますし、またこの条約におきまして、他の条約においては見ることのできないような、交換公文による条約適用範囲の表示というような妙なものも現われて来るのだと考えるのであります。むろん中華民国国民政府国際連合に代表を出してその議席を持つておりますけれども、これはせみの脱けがらのようなもので、実際は中国の代表とは認められません。率直に申しましてこれはアメリカが横車を押しておる、無理押しをしておるからにすぎないので、イギリスのごときは北京政府承認しておるのであります。ここまで論じて来ると政治論になります。そこで私はここで少し最後に政治論をしてみたいと思います。私は今まではなるべく政治論は避けて来たのであります。私は中華民国国民政府中国を支配する実績がない、ただ無形的に中国を支配するという観念をまだ維持しておるという政府にすぎないと思います。従つて私はこういう政府条約を結ぶということは、どうしても二国間の正常なる平和条約と解釈することができません。そして事実上の支配力のない本土に対して、支配力のない中華民国国民政府条約締結して、かりに本土に適用されるような問題を取扱つてみたところで、実際上はこの条約の施行は不可能ではないか、私はそう考えざるを得ないのであります。要するに、私にはこの日華条約というものは国と国との間の条約ではなくて一蒋介石グループと条約という名前で何らかの契約を結んだものだというふうにしか解釈できません。しかしこれは議論になりますから、これについてはお答えいただかなくともけつこであります。この点からもこの日華条約はどうも不可能であります。時間を急ぐとのことですから、私はこれで質問を終ります。
  100. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて以上三件に関する質疑を終了することといたします。  それではこれよりただいまの三件につきまして順次討論採決身、行うことにいたします。  まず国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件を討論に付します。討論は通告順にこれを許します。佐々木盛雄君。
  101. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は自由党を代表いたしまして本案に賛成の意を表明するものであります。
  102. 仲内憲治

  103. 並木芳雄

    並木委員 改進党を代表して賛成いたします。
  104. 仲内憲治

  105. 戸叶里子

    ○戸叶委員 社会党を代表いたしまして賛成いたします。
  106. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 共産党を代表して反対するものであります。  本協定日本事務所を置く国連朝鮮統一復興委員会及び国連朝鮮再建局の二つの機関に対して、交通、通信、課税上の特権を与えんとするものであります。これらの特権は、行政協定による米軍の特権に比べるならば、はるかに小さくまた制限されている。しかしながら元来この二つの機関は、一九五〇年の十月マッカーサーが三十八度線の突破を命じた後、全朝鮮の政府を予想して設けられた侵略のための補助機関であります。しかるに現在アメリカの侵略計画はまつたく失敗に帰して、中国、朝鮮人民軍の英雄的な抗戦によつて、休戦か撤兵を余儀なくされたのであります。この状態のもとで、朝鮮の復興とか再建のための特権をこの二つの機関に付与することは、まつたくばかばかしいことでありまして、この二つの機関は、ただ日本を侵略に協力させるために利用している拠点にすぎないのであります。日本の平和と安全のためにこのような機関は即時撤廃粉砕されるべきものであります。いかなる特権をもこれに付与させることには絶対反対であります。
  108. 仲内憲治

  109. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は日本社会党二十三控室を代表いたしまして本案に反対をいたします。
  110. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  111. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は労働者農民党の立場からこれに反対をいたします。  実は私はこの案につきましても質問したいと思つておつたのでありますけれども、結局質問する機会がなくてすぐ採決をしなければならなくなりましたことを非常に遺憾に思います。時間の関係もありますので反対理由は申し上げません。とにかく反対いたします。
  112. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。  国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求め間す。     〔賛成者起立〕
  113. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本外は承認すべきものと決しました。  次に千九百二十八年十二月十四日にジュネーヅで署名された経済統計に関する国際条約議定書及び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日にジュネーヴで署名され経済統計に関する国際条約を改正する議定書及び附属書締結について承認を求めるの件を討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。佐々木盛雄君。
  114. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は自由党を代表いたしまして本案に賛成いたします。
  115. 仲内憲治

  116. 並木芳雄

    並木委員 私も改進党を代表いたしまして賛成いたします。
  117. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 私は日本共産党を代表して本条約に反対するものであります。本条約国際連合に対して経済統計報告の義務を負うものでありますが、現在の国連がアメリカの戦争の道具に転落しておつて国際間の平和的な経済協力にまつたく役立つておらない。このような機関に報告をしたところで、何らの利益がないのみか、かえつてこの戦争政策に利用される危険を持つておるのであります。しかも統計は従来の例に見ても明らかなことく、まつたく政策的なでたらめなものであつて、戦争政策による失業者の増大や国民の窮乏をことさらにごまかしているのみか、未復員者の統計のように、世界の物笑いになるようなうそで固めた統計を報告して、ことさらに国際的な紛糾の種をつくろうとしておるのであります。かかる政策的に用いられたる虚偽の報告をするような義務を負うこの条約ついては、われわれとしては断じて反対するものであります。
  119. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。  千九百二十八年十二月十四日にジュネーヴで署名された経済統計に関する国際条約議定書及び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日にジュネーブで署名された経済統計に関する国際条約を改正する議定書及び附属書締結について承認を求めるの件について、採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決しました。  次に中華民国との平和条約締結について承認を求めるの件を討論に付します。討論は通告順にこれを許します。佐々木盛雄君。
  121. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は自由党を代表いたしまして、日華平和条約承認を与えることに賛成の見解を表明せんとするものであります。  中華民国日本と交戦した連合国四大国の一つでありましたが、現在は台湾、澎湖島に施政を行う中華民国政府と大陸を支配する中華人民共和国政府との二つの政権が一つの主権を争つておるのであります。そして中華民国政府に対しましては、アメリカ初め自由主義国家陣営、その他を合せまして四十箇国近い国々が承認を与えておりますのに対し、中共政権を承認するものは、ソ連並びにその共産主義陣営を初め、イギリスインドその他等を合せまして二十六箇国というきわめて複雑微妙なる国際関係の実情にかんがみまして、サンフランシスコにおける対日平和条約会議には中国代表の招請を見なかつたのであります。そして二つの中国のいずれを選んで講和条約締結するかは、もつぱら日本の自主的決定にゆだねられたのであります。しからばこの二つの中国のいずれを選択するかの問題でありますが、私は今ここに中共政権との講和がいかに実現困難なものであるかを少しく申し述べておきたいと思うのであります。  今日いずれの共産主義国家といえどもソ連への絶対的従属関係なしには存在し得ないことは共産主義の鉄則であります。この鉄則に立つて中共もまたソ連との間に日本を仮想敵国として中ソ軍事同盟を締結し、日本への侵略に虎視たんたんたる現状であります。満州事変以来二十箇年間の久しきにわたり、日本軍は大陸を完膚なきまでに蹂躙し、その間日本中国国民に対して莫大なる損害を与えたのにもかかわらず、戦い終つた蒋介石主席は暴に報いるに暴をもつてせず、徳をもつてともに手を握らんとの好意あふれる態度をもつてわれに臨んだのに対し、一方中共政権は今もつて幾数万の日本人同胞を不法にも抑留しております実情は、遺家族や留守家族たちとともに、われわれ国民のひとしく痛憤を禁じ得ないところであります。これらの点のみより見ましても、中共には日本に対する敵意こそあれ、友情の一片だにすら発見することはできないのであります。  一部左翼政党並びに国民の間には、中共貿易の必要性をことさらに過大評価ないし宣伝し、従つて中共政権との講和締結を主張する者があります。しかし中共との講和締結が今日の国際関係におきましてほとんど不可能でありますことは、ただいま申し述べた通りであります。かりに百歩を譲つて中共との講和が現状のもとにおいて実現したと仮定いたしましても、はたしてかれらの希望するごとき貿易通商が期待されるかどうかはまつたく疑いなきを得ないのであります。  一九三六年すなわち満州事変前における当時の満州国をも含めた大陸全域とわが国との貿易比率は、日本の輸出入総額に対して、輸出におきまして二四・四%また輸入においてわずか一四・三%にしかすぎないのでありまして、しかもこの割合は、ただいま申しましたことく日本の実質的支配下にあり、そしてまた大陸貿易の大部分を占めていた満州国をも含めたものでありまして、それでいてなおかつ当時の東南アジア地域との貿易比率には、はるかに及ばながつたのであります。  この事実によつて見まするも、今日中共政権の支配下にある大陸地域とわが国との貿易は、かりに何らの障害なく再開し得たといたしましても、それがわが国の対外貿易総額において占める割合は、きわめて少きものであることは言うまでもないのであります。しかも一面には、すでに申し述べましたことく、中ソ軍事同盟あり、そして日本が彼らの仮想敵国である限りにおいては、日本側希望するごとき貿易の実現を期し得ないことはもちろんであり、他面におきましてはバトル法あり、自由主義国家陣営の一員たる日本が果すべき役割を考えますならば、手放しの中共貿易楽観論のごときは、まつたく痴人の白日夢か、しからざれば謀略宣伝以外の何ものでもないのであります。  特に私は、この際、イギリスが過十二百年の長きにわたる対華商権と一毒ポンドの権益を放棄して、中共地域へらの総引揚げを余儀なくされた事実も指摘しなければなりません。共産主覇国家との経済提携が、現下の国際情報のもとにおいていかに困難なものでもり、利害矛盾するものであるかにつふましては、イギリス国内においても拾い反対論があつたのにもかかわらず、三年前、当時の労働党政府はあえて中共政権の承認を強行いたしたのであります。しかし在華権益を擁護せんとして中共承認の媚態をあえて送つたイギリスが、その反対給付として中共政権からもたらされたものは、在華商権に対する仮借なき圧迫であり、遂には全面的引揚げをすら行わざるを得ぬ破局に追い込まれたのであります。この英国労働党が味わつた中共政策失敗の苦き経験は、昨今わが国における共産主義に対する甘い見方から、中共貿易論や対ソ経済接近論にうき身をやつしております社会主義者やその同調者たちに対して、まことにとうとき生きた強訓といわなければなりません。  しかも、中共政権は国際連合によつて侵略国として非難をされておる。この結果国際連合は、すでに中共に対してある種の経済的制裁の措置をとつておるのであります。日本はサンフランシスコ平和条約第五条において、「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと。」を確約いたしておるのでありますから、この平和条約並びに国際連合憲章の規定がら費えましても、中共が今日のごとき侵略行為を放棄して、真の平和愛好国とならざる限りにおいて、日本との経済提携の樹立が不可能なことはいうまでもないのであります。  それのみならず、吉田首相がダレス大使に送つた書簡におきまして明らかにいたしておりますごとく、日本の憲法制度や議会政治を暴力をもつて転覆せんとする日本共産党の陰謀を、中共政府が援助しつつあると信ずべき幾多の理由が歴然たる今日、日本国民にしてもし一片の愛国心だにあるなれば、中共政権との平和条約締結意思なきことは、もとより当然といわなければなりません。  もとより、日本は究極におきましては、われらの善隣中国との間に全面的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであることはもちろんではありますが、しかし不幸にも二つの中国政府が互いに一つの主権を争つている今日の段階におきましては、現に国際連合において中国の議席、発言権及び投票権を持ち、そして国連加盟国の大部分の国と外交関係を維持しておる中華民国政府日本との間に、平和条約を実現することこそが可能であり、かつまた最も賢明なる措置であると信ずるのであります。  今回の日華平和条約におきましては、中華民国はみずから進んで戦争犯罪人釈放承認し、役務賠償の要求権を放棄し、また通商経済関係におきましては、双務主義の上に立つものでありまして、サンフランシスコ平和条約以上に和解と信頼の理念に徹したものであることは、日華両国政府並びに両国民が、その歴史的、地理的善隣関係の特殊性を認識し、過去の一切の悪夢を清算して、ここに新しき協力関係を永遠の将来に築かんとする、清新かつ真摯なる心構えの現われでありまして、まことに喜びにたえないところであります。  私は、この平和条約が自由主義国家群を結ぶ親善友好の鎖にさらにたくましき一環を加えるものとして、アジアひいて世界の安定と平和と繁栄のために、多大の貢献をもたらすべきものであることを確信して私の賛成討論を終る次第であります。
  122. 仲内憲治

  123. 並木芳雄

    並木委員 改進党を代表して賛成の意を表明いたします。  ただいま佐々木委員の討論を聞いておりまして感じたのでありますが、ああいう割切れた討論ができることを私どもも望んでいるのであります。しかしながら割切れない。割切れない原因をいろいろ考えて見ますと、私ども連合国側にその責任の一端があるのではないかと思うのです。連合国の方できまらないものを、日本に自由にまかせろというところに無理があるのではないか。その点について政府としてどれだけの日本外交の自主性というものを発揮したかについては、私ども疑問なきを得ないのであります。不幸にしてアメリカと英国とが、中共政権と蒋介石政権とをめぐつて意見の対立を来しております。それに対して独立した日本政府としては、その問題を解決することが先決ではないかという強い自主性の発揮があつてよかつたのではないかと思うのです。もしこれが私どもの杞憂であるならば幸いであります。従つてこの条約締結に伴つて、私どもが心配いたしますのは、これがただアメリカの極東政策の一環として、日本がそのアメリカに同調をする付属的の産物にすぎないものであつてはならない、こういうことなのです。そうでなければけつこうです。  私どもはすでにサンフランシスコ条約において賛成の意思を表明しております。このサンフランシスコ条約は、たといは悪いかもしれませんけれども、内縁の夫婦関係のようなものであろうと思う。一刻も早く全面講和に持つて行つて、完全な夫婦関係になることをわれわれは念願しております。今度の日華条約にいたしましても、その内縁関係から生れたような子供であろうと思う。ところがその子供のほかに、まだ子供があるのだというような疑いを抱かせる連合国聞の足並がそろつておらないということは残念であります。ですからこの点においては、今日この条約締結する以上は、日本の行くべき方向というものがぐらつかないように、連合国の方で足並を合してもらいたい、そういうことを私ども政府に強く主張していただきたいのであります。  こういう点から申しまして、今度の日華条約によつて、私どもはいやしくも二大陣営の対立というものが激化されないように、政府に要望してやまないのであります。持つて行きようによりますと、これこそ二大陣営の対立を激化せしめて、まかり聞違えば、中ソ友好同盟条約の発動に口実を与えるようなことになりかねない心配もあるのでございます。どうかそういう点については、政府は十分注意をしていただいて――独立をした日本なのです。われわれはこの条約を正々堂々と結ぶことによつて、そうしてこれが全面講和への一里塚である。全面講和への熱意を忘れないようにしていただきたい。そのことがひいて二大陣営対立の緩和を来すゆえんのものであろうと信ずるのであります。その方法については、先日来岡崎外務大臣初め政府に対して、私どもは具体的にいかなる政策を持つておられるかということに対しては、口がすつぱくなるほど質問を重ねて参つたのでございます。いずれも抽象的に、政府としては何とかして打解の道を講じたい、アジア諸国との国交調整について円満に解決の方策を求めたいという答弁でありますけれども、その抽象的な答弁を今後一つ一つ具体化していただいて、そうしてこの条約を結ぶことによつて、デッド・ロックに打当ることなく、かえつてこの条約糸口となつて全面講和への道が開かれるように、そうしてもろもろの懸案を解決するように努力を要望してやまないのでございます。その他いろいろ申し上げたいことがありますけれども、詳しくはいずれこの承認を求める案が本会議に上程されましたときに、私の同僚山本利壽委員から十分の討論をいたすことになつておりますので、それによつてども意思を十分察知していただきたいと思います。  これをもつて私の討論を終ります。
  124. 仲内憲治

  125. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はただいま上程された日華条約に社会党を代表して反対するものであります。以下その理由を申し述べたいと思います。  わが国はサンフランシスコ平和条約第二条におきまして、台湾及び澎湖島に対するすべての権利、権原及び荘求権を放棄したのであります。しかしながらその後、台湾及び澎湖島の帰属はいまだ明確に決定づけられておりません。ただはつきりしていることは、この地域を国民政府が現実的に支配しているという事実でありますが、その国民政府は、かつてのことく、名実ともに中華民国全体を支配している主権者でなく、中国の本土は人民共和政府が支配するところとなつております。従つて今日中国においては、現実的に所属の明確化されていない台湾、澎湖島を支配している中華民国国民政府中共政府との二つの政府が存在しているわけであります。吉田首相は十二月二十四日ダレス氏に書簡を送り、わが国は中共政権と二国間条約締結する意思ないことをはつきり述べております。もちろん今日の場合、台湾、澎湖島の支配者と現実的調整を行うことは、あるいは必要とされるでありましようが、しかしながらそれだからといつて政府締結した日華平和条約のような形で国際条約を結ぶことが妥当であるとは信じられません。日華条約締結したことよりも、日華条約締結によつてもたらされた悪影響の方が多いという事実を考えるとき、私どもはこの条約に反対せざるを得ないのであります。  まず第一に、条約を結んだ相手方なる国民政府に対する政府の認識が、きわめてあいまい模糊としているのであります。委員会において、政府は戦争中に英国政府が亡命政権と条約を結んだ例があると言つてこれを弁護し、遂にこれを失言なりとして取消し、そして国民政府の憤激を買つた事実さえあるのであります。岡崎外相は、この条約はダレス氏にあてた吉田書簡の趣旨によつてつくられたものであり、中華民国国民政府は国連に代表者を出しており、一般に認められた政府であるから、その意味条約文を作成したと主張しておられます。しかし、はたして中華民国国民政府中国の正統政府として世界各国が認めているかどうかを調べてみますに、本年一月十七日の朝日新聞によつてもわかりますように、国民政府承認している国は十八箇国であり、承認しているが代表を引揚げてそのままになつている国は十一箇国、中共承認の国が二十六箇国となつておりまして、中共承認の国の方がはるかに多いのであります。このことは、中共承認の方がよいとか悪いとかの問題ではなく、その国々の立場から検討して適当と思われる方法をとつていることを示しております。  昨年六月、米英会談においては、日本中国におけるいずれの政権を選ぶべきかについては日本にまかすことになりました。従つてわが国におきましては、あらゆる角度から検討した上で、中国全体と友好関係を結ぶよう慎重な態度努力を払うことが必要であります。それにもかかわらず、吉田書簡において中共を誹謗し、将来中共との国交調整をわざわざむずかしくするような書き方をしておるのでありますが、かかる行為は、その意図が那辺にあるかを了解に苦しむものであります。  岡崎外務大臣は、外交の基本原則の一つに、善隣友好の原則を述べられましたが、この論理を進めて行きますならば、当然政府は人民共和政府との間にも、これと並行して条約締結されなければならないと思うのであります。戦時中ならば、他国から侵略されて国土を失つた亡命政権との条約ということも考えられますが、台湾の国民政府は、いわゆる亡命政権でないにしても、かつての領土の支配権を喪失し、現実的には単に所属未決定の台湾、澎湖島のみの支配を行つている際に、これと日華条約締結することは、旧華条約の本質的価値を捨て去り、あたかも亡命政権的性格を持つた政府条約締結をしたかのような感を一般に抱かせております。これでは日華条約そのものの真の意味における権威を失うことになると思うのであります。政府が種々考慮の上、この条約を作成されたという条約条文が、いたずらに政府の苦慮と煩悶がその中ににじみ出ておるのにすぎません。何人といえどもすなおにこれを了解しがたい条約となつていることが、この条約の一大欠点であります。  第二に吉田首相は、日華条約に対して善隣友好の趣旨のもとに、「日本政府は、究極において日本国の隣邦である中国との間に、全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります。」とダレス書簡においてすら述べておりますが、この日華条約によつて中国との間に、全面的な、政治的平和及び通商関係を樹立するとは何人も考えられないのであります。中国問題の取扱いの困難さは、米英両国の会談におきましても、人民共和政府と国民政府と、そのいずれを選ぶべきかの問題で議論が対立し、中国の二つの政府のいずれを選ぶべきかに対してはその選択権を日本政府にゆだねたほどであります。しかるに吉田首相は国会にこれを相談し、輿論にこれを諮ることなく、独断で国民政府を選び、あまつさえ、ダレス書簡においては中共政府を誹謗しております。この態度は明らかに中国における国民政府のみに加担し、中共を敵視したことを意味しております。少くとも一国における主権の確立は、その国における人民の帰趨によつて定むべきであります。日本が放棄した台湾、澎湖島の帰属のごときは、台湾人民の自由にして公正なる人民投票によつてその所属を決定するなり、あるいはその人民の意思によつて独立を敢行するなりすべきであつて、外来政権が人為的にこれを支配し、ゆがむべきではないと思うのであります。しかるに日本政府が従来の行きがかりを理由として、一方的な独善的選択によつてこの条約を結んだことは、軽卒のそしりを免れないでありましよう。  第三に、日本が外交を通じて国際的地位を確立するとともに、努力を払わなければならないのは、自立経済の確立であります。日華条約といいながらも、この条約は台湾及び澎湖島の支配者との条約にすぎませんが、それによつて通商その他においていかなる利益を収めることができるか、きわめて疑問であります。戦前日本と台湾との取引においては、米、砂糖がそのおもなるものでありましたが、その生産は減じ、大陸よりの大量亡命者の移住によつて日本期待するごとき米の輸入は困難であり、砂糖のごときもコストの面からいつて、他国との競争に耐えられないでありましよう。現在のところ、日華条約締結によつて日本経済利益を促進させるための材料は、ほとんど見当らないのであります。これと比較して中共との貿易を打開するようにとの声は、全国民の輿論となつているのであります。日本産業の復興の上に、中共貿易は万難を排して進められなければならないときに、吉田内閣は中共貿易は楽観を許さずとか、またはこれを期待してはならないというような態度で、中共貿易の打開に熱意を示していないのでありますが、このようなやり方では、日本の自立経済の確立はきわめて困難であるといわざるを得ないのであります。  以上述べましたように、中国本土全体を含まない条約は、日本中国との関係の善隣友好を阻害し、かつ経済的提携の促進を阻止するものとして反対せざるを得ないのであります。また将来かかる軽卒な外交的処置が、日本外交の基調なりとの海外からの侮蔑をも防ぐ意味におきまして、民族百年の計に根ざし、民衆の輿論を背景に、真の国民外交を樹立するため、かかるあいまい不明瞭な秘密外交の生んだ崎型児、日華条約に、私は反対せざるを得ないのであります。
  126. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 私は日本共産党を代表して、この日華条約に反対するものであります。  今吉田内閣の外交政策を批判しますと、われわれの前には二つの外交があるように思われるのであります。一つは吉田の外交であり、一つは日本の国民自身の外交であります。吉田政府の外交政策というのは、一体何であろうか。一言にしていえば、吉田政府にはみずからの外交はないということで、ります。あるのはアメリカの外交でる。マーフイーの召使の外交である、アメリカ侵略戦争の下請外交以外りものでもないのであります。これに対してわれわれ国民の望む政策は、ソ連盟、中国をも含めて、世界の平和的諸勢力と相提携する外交であります。吉田の外交がこのまま続くならば、これは奴隷の外交となり、亡国の外交となる。われわれの望む全面講和の外交は、これこそ真の日本の国の独立と繁栄の外交である。その間にはすでに中立の道はあり得ないという状態であります。  一例を申しますと、本年の四月、アメリカ側が一九四五年のモスクワ会議決定を無視して、非法にも対日理事会の解消を声明すると、吉田政府はにわかに降伏文書もポツダム宣言ももう無効だ、ソ連降伏関係はないのだ、駐日ソ連代表部の存在理由は消滅したと開き直つた。これは明らかにアメリカのけしかけによる吉田政府のソ同盟に対する新しい復讐戦の通告にもひとしい態度であつたのであります。このような戦争挑発と奴隷的な外交が、吉田外交の本性であります。本来アメリカは対日理事会の問題におきましても、議長である限り、ソ連代表部の問題は、連合国が一致してみずから解決すべき問題であります。しかるにアメリカは自己の非法な主張を吉田政府責任において処理せしめ、あえて火中のくりを拾わしたところに、アメリカ反動の卑劣な態度が見られるのであります。このアメリカ帝国主義者の態度に対して、愚かな忠実な手先である吉田政府は、この御主人の命令を忠実に実行するために、諸君も御承知通りに、スエーデン、スイスの手を借りようとして、みごとに断られた。あげくの果ては、おずおずと、おびえるもののことく、みずから直接にこの通告を行わざるを得ないようなはめに追い込まれたのであります。これは吉田政府アメリカ帝国主義の奴隷となり下り、国際情勢判断の能力すらすでに喪失しておることの醜態を、天下に示すもの以外の何ものでもないと思うのであります。  対中国政策においてもしかりであります。ダレスは吉田政府をして、台湾の国民党残存グループといわゆる日華条約締結させた。しかし皆さん、一体蒋介石とは何でありましようか。中国人民から民族を売る敵として追放せられて、台湾に逃げ込み、辛うじてアメリカの第七艦隊によつて守られ、この軍事予算の三分の二はアメリカによつてまかなつてもらつている、これは文字通りアメリカの飼犬であります。しからば日華条約は一体何を意味しているのか。これこそアメリカの帝国主義者が、自分の手で育てた二人の手先を一緒にさせて、連結して、これによつて中華人民共和国に対して軍事的な脅威を企てたものであります。そのためにこそ、岡村寧次を含む日本戦犯八十八名は、ただちに釈放されたのであります。これは明らかに中国四億五千万の人民に対する新しい宣戦の布告であります。  中日貿易についてもそうであります。吉田政府講和条約が成立し、貿易の自主権は完全に日本政府の手にもどつたと称しておる。しかし事実はどうであるか。六百名の人員を配してかつての総司令部と同様な機能を持つたアメリカ大使館は、厳然として日本曲府の上に君臨して、彼らの承諾なくしては、貿易一つなし得ないのが事実であります。マーフイーの圧力を受けた岡崎外務大臣は、日本こそが自由国家群の先頭に立つて、最も厳重に中共貿易を禁止したいというドン・キホーテ的な恥知らずな暴言を吐いておるのであります。この奴隷的の外交、この屈辱的な外交、この新しい戦争挑発の外交こそが、トルーマンの召使である吉田の外交なのであります。  一方世界の平和諸勢力、ソ同盟中国を含めての友好の道を開いて行く人民の外交はどうでありましよう。本年初頭、スターリンは、日本人民の苦しみを完全に理解し、深く同情する。ソ同盟の人民のことく、日本の人民もまた必ず祖国の完全な独立と自由をなし遂げることを確信するとのメッセージを送り、次いで、大山郁夫氏に対するスターリン平和賞の授与、国賓としての招聘となりました。われわれはこれに対して、大山氏のソ連派遣の国民運動を展開し、さらには日ソ貿易を促進し、あらゆる困難を克服して、モスクワの世界経済会議日本の代表を派遣したのであります。このような外交、これこそが人民の平和の外交であると思うのであります。  中国関係についてもそうであります。本年の四月、周恩来は、日本の人民に次のように呼びかけております。日本吉田政府は、すでに日本の人民を代表する資格はない。中国人民は、日本の人民と平和的に相処して行こう、団結し、互いに貿易を行い、民族の独立と国家の主権を尊重することを願うと言つておるのであります。日本の人民はまたこれにこたえて、莫大な中日貿易のとりきめをなし、北京のメーデーに対しては、あらゆる弾圧に屈せず、代表を派遣し、今またアジア太平洋平和会議日本の代表を送るための大きな国民運動を展開しておるのであります。この中日両国の人民のお互いに融和的な提携こそが、国民の外交であります。この国民の外交は、今や日本の国民の中にほうはいとしてその支持を高めつつあるのであります。政府のあらゆる弾圧にもかかわらず、高良女史のモスクワ行き、帆足、宮腰両氏の北京行き、中日貿易協定の成立のことく、明らかに国民外交の実践であります。今や自由党の議員の諸君の中においてすら、国会において、隣国との国交回復のためには、イデオロギーの相違も越えて、経済会議にでも、文化会議にでも代表を派遣すべきであり、みずからもまた許してくれるならば、モスクワにも出かけたいと、公然と国民外交を主張する人が出るに至つたのであります。労働者からは、北京メーデー行きの弾圧に抗議して、どこへでも自由に旅行させろとの闘いが巻き起つて来ました。業界では貿易業界においてアメリカの関税引上げに厳重な抗議をし、また油脂工業界でも、アメリカからの悪質な大豆のごときは、これを拒絶して損害賠償を請求するとともに、中国の大豆に切りかえるべきであるとの強硬な決議がなされるに至つたのであります。この国民外交を弾圧し阻止しようとする吉田政府の反動政策に対する国民の憤激は、遂に五月一日のメーデー、五・三〇のデモによつて、民族的な怒りとなつて爆発し、さらには明日から第三波ゼネストによつて、ますますこの憤激は、拡大され、深められようとしておるのであります。  このように、岡崎外務大臣吉田の外交コースは、日本国内においてはまつたく人民の反撃を受け、孤立化されるに至つたのであります。このことは日本のみではなくして、アメリカの外交政策とその手先による侵略政策が、アジアにおいてどのような惨敗を喫しておるかということを知つていただきたいと思うのであります。朝鮮においてドッド准将が、朝鮮人の捕虜に捕虜とされ、これにわびを申し込んで、その結果捕虜会議によつて釈放されるに至つた。この姿こそはアメリカの侵略政策のアジアにおけるみじめな敗北の姿の象徴であります。李承晩のごときは、その政府国会からすら完全に見放され、戒厳令下にわずかにおのれの身体の安全を保つておるという惨状であります。ソ同盟、中国を含む全面講和の偉大な平和政策の勝利に比べて、侵略者のいかにみじめな敗北の姿でありましようか。吉田政府のたどる運命もまたこの李承晩のそれであることは、もはや時期の問題であるということは諸君十分御承知のところだと思うのであります。  吉田政府がいかに破防法をつくり、労働法を改悪し、日本の人民を弾圧し、さては強制送還によつて朝鮮、中国のアジアの同胞諸君をまで弾圧し、みずからの地位を維持しようとしても、米日反動に対する日本人民の反抗は、ますます高まるのであります。しかもごの共通の敵アメリカの侵略主義者をアジアかち追い出そうという民族の闘いは、全アジア人の国際的な連帯のもとに展開されておるのであります。今やわれわれの進むべき進路が、みじめな敗北を喫しておるほんの一握りのアメリカ帝国主義者どもの政策への隷属ではなくして、ソ同盟、中国を先頭とする世界の平和諸勢力との提携であることは明らかだと思うのであります。われわれはこのような意味におきまして、このアメリカ帝国主義者の強制に基く日本中国の人民とを敵対関係に置く日華条約に対しては、断固反対するものであります。
  128. 仲内憲治

  129. 勝間田清一

    ○勝間田委員 日本社会党二十三控室を代表いたしまして反対いたすものであります。  まず第一にその理由とするところは、言うまでもなく、この台湾との講和条約締結は、アジアの平和的な処理に関してきわめて障害となるという点でございます。今日アジアにおける危機が伝えられております。そのアジアにおける危機をいかに平和的に解決して行くかということが、日本の国民の安全と平和のために欠くべからざる案件であることは言うまでもありません。この問題に対する処置は、結局アジアにある根本的な社会、経済的な条件に、深くわれわれが心を使うと同時に、単なる武力による解決ではなくて、アジア独特の危機の根源をついた平和的な解決というものがはかられない限り、アジアの平和は結局確立を目ないということは明らかであると思うのであります。そうして真のアジアの統一と、アジアの平和を念願しておるアジアの諸民衆の声に、われわれが耳を傾けて参りますならば、われわれはその声にこそ今日傾聴すべきでありまして、遠く隔たつたアメリカの今日における軍事的な目的に従つてわれわれは行動すべきでないことは、明らかだと私は思います。  長いアジアの歴史の中で、過去数世紀にわたつてアジアを引きさき、アジアを分裂せしめ、アジアに平和のよみがえることを阻害しておつた力というものは、どういう力であつたかということもわれわれは考えてみなければなりません。われわれは長い目で見たアジアの平和の基礎というものは、真のアジアの友好の回復であると考えておるのであります。経済的に、政治的に、文化的に、あるいは外交的に、いかにアジアと和解し友好を結ぶかということが、日本国政府の外交の根本でなければならないと思います。しかるに今日における吉田内閣の外交は、これら一切のアジアの紛争を平和的に解決する方向には進まず、それをいよいよ深化せしめ、それに日本を介入せしめて行くという重大な問題を含んでおると考えます。この台湾との講和の問題にいたしましても、私は日本の歴史と今後の日本の将来とを考えた上において、私はこの講和に賛成することはできません。さらに私どもは、今日におけるアジの諸国家が、いかなる態度を台湾にとり、あるいは中共に対してとつておるかということも、われわれは現実の問題として注目をしなければならぬ事柄と思います。あるいは今日李承晩政権、あるいはバオダイ政権あるいは蒋政権を支持して行こうとする一部の勢力があることも、われわれは了承いたしております。しかしその勢力を結集するということが、はたしてアジアの平和を確立することになるかどうかという問題については、われわれは根本的に現政府とその意見を異にするものであります。しかも現在中立外交をとつておるインド、ビルマあるいはインドネシア等の諸国家が、今日この台湾蒋政権を日本が認めて、これに講和締結することは、きわめて憂うべき事態としてこれを考えておる点についても、われわれは注目をしなければなりません。そういう意味において、現在のアジアにおける諸情勢から、私はこの台湾政権を日本が認めて行くということに対しては、反対をしなければならぬものと思うのであります。  さらにわれわれが注目しなければならぬのは、今度のこの講和は言うまでもなく、アメリカの軍事的な目的だけに従つて、それ以外の地理的な文化的な、経済的な一切の条件を無視して行こうとする点であることであります。日本の国土をあるいは軍事基地にし、沖繩を信託統治にして軍事的な目的に役立たせ、さらに台湾をかかる状態に置いて講和締結し、あるいはこれに軍事的な提携を行つて日本とともに再軍備して行こうとする姿は、これはアメリカのアジアに対する戦略的意図であることは言うまでもありません。その戦略的意図に対して、われわれはここに自主を失つて、これ自身を選ばなければならぬという日本の現在の実情、自主性を失つた日本の現在の外交、これは私はきわめて憂うべきものであり、悲しむべきものであると考えておるのであります。元来この問題については、イギリスのモリソン外相あるいはその他との交渉の経緯から見てもわかる通り日本の自主性にまかされておることは明らかであります。その自主性において、日本自身の立場においてこれを選ぶということは、完全に自由であるべきはずだと思います。しかるに現在の民主主義陣営を見てもわかる通りに、中共承認しておる国家は、過半数を占めておるのでございまして、われわれはそういう状態から考えてみるならば、当然日本の現在のアジアにおける地位から見ますならば、蒋政権の承認ではなくて、中華人民共和国を現実としてこれを承認して行くのが当然であろうかと存じます。それをみずから行うことなくして、かかる講和締結しなければならぬ自主性を失つた日本の外交を私は悲しむものであります。さらにそれ以外に、経済的な理由あるいは台湾の現に支配しておる地域に対する国際的な法的な根拠等々を、われわれが考慮してみる場合に、さらにその感を潔くいたして参るのであります。  私は以上の、日本が今後アジアにおいていかに進むべきかという大本にかんがみまして、この吉田内閣の提案せられたる日華講和条約の草案に対して反対をいたすものであります。
  130. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  131. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は労働者農民党を代表いたしまして日華条約承認に反対をいたします。私の前に発言せられた委員諸君の反対論を私は援用いたしたいと思います。そして、それらの委員諸君の触れられなかつた点についてだけ簡単に私の反対理由をつけ加えてみたいと考えます。  反対理由の第一は、先ほども申しましたように、この日華条約は、中国という国との平和条約ではない、私はそう考えます。この条約中国との平和条約であるためには、中国本土を代表して日本条約を結ぶ政府が、いかなる性格の政府でありましようとも、その条約はただちに中国本土及び中国本土に住む人民に適用せられるものでなければならないと私は考えます。しかるに本条約はそうではありません。この点は先日来の政府に対する質問で、私の意見を明らかにしておきましたから重ねては申しませんが、単なる台湾、澎湖島という中国領土でない地域に適用されるのみでありますから、中国との平和条約ということはできないと私は考えます。  反対の第二の理由は、本条約条項は、台湾、澎湖諸島に適用せられるということになつておりますけれども中華民国国民政府は、中国の領土でないごの地域に適用せられる条約締結する権限はないと考えます。このことにつきましても、先日来の私の質問の中で、私の考えを詳細に申し述べておきましたので、ここでは省略いたします。  要するに、この条約日本が戦争いたしました中国という国との平和条約でもなく、また台湾、澎湖島に合法的に適用し得られる条約でもあり得ないと私は考えます。それでは何であるかといえば、単なる蒋介石グループという非近代的な軍閥的な政権、それも今は亡命政権となり下つておりますが、この政権との間の契約国家と国家との条約として国会承認を求めるには値しないところの、一種の契約であるにすぎない、こう私は考える。従つてこのようなものに対しまして、国会として承認を与えるということは、国会の権威の上からもできないというのが私の考えであります。  最後に私は、簡単に実際論及び政治論の立場から反対理由を申し述べてみたいと思います。私ども日本人は日本が戦争をした中国という国を、一体いかなる国と考えておるのでありましようか。日本が戦争で荒しまわり、その国に算定すべからざる物質的損害を与えましたその地域は、中国本土であります。日本の軍隊が無数に殺戮したたつとい生命は、中国本土に住んでおる中国人の生命であつたのでありまして、断じて台湾や澎湖島や、その住民であつたのではありません。私どもが好むと好まざるとにかかわらず、中国本土の人民を現実に支配しておる北京政権が、中国を代表するものとして平和条約を結ぶときに初めて、世界のいかなる国民も納得することのできる日本中国との平和条約締結と見てくれるだろうと考えます。日本と戦争状態になかつた、そして日本の旧領土であつた地方にのみ適用せられるような、本土についての適用は将来どうなるかわからないというような条約締結しまして、これを日華条約ということができるでありましようか。私ども日本人は、中国人に対し、日本が侵略戦争を行つたということに対して心からわびなければならぬ、頭を下げなければならぬと私は思う。その相手は、日本の現在の政府が好むと好まざるとにかかわらず、現在中国の本土人民が支持しておりますところの北京政府を代表者とする中国でなければならぬと私は思います。  それから第二に、私どもは平和という見地から問題を考えてみたいのであります。日本のフアッシヨ政治に基き日本の軍隊がアジアの各地を荒しまわりまして、しかもその日本自身は今日のような悲境に落された、そのわれわれ日本人の現在要望いたしておりますことは、アジアの他の諸民族の要望と同様に、アジアの平和ということでなければならないと私は思います。一体蒋介石政権を吉田内閣があえて条約相手として選びましたのは、これは先ほどから他の委員諸君も申されましたように、合衆国の世界政策への追随であると申す以外に、私どもには批評の仕方がないのであります。アメリカが蒋介石政権に期待しておりますのは、その持つております軍事力であろうと私は考える。その蒋介石の持つております軍事力と日本の人的資源とを結びつけようというのが、アメリカの政策であるということも間違いないことであります。これに対してあるいは賛成する者もあろうし、反対する者もありましようけれどもアメリカの現在の世界政策がそれをねらつておるという事実だけは、何人も認めなければなりません。残されておるのはそれに対する価値判断でありますけれども、私どもはそういうアメリカの政策に追随するということには、絶対に反対せざるを得ないのであります。私はアジアの平和を撹乱することにこれはなると考えます。私はアメリカ人といえども、心から蒋介石を支持しておるかどうかということになれば、そういう人は少いというよりか、おそらくないと思う。蒋介石は御承知のように、腐敗政治家の代表的人物でありまして、これはトルーマンの教書自身でもそれを認めておる。イギリスの労働党の長老であるコールのごときも、昨年でありましたか、朝鮮事変に関連いたしまして、彼の見解を発表したとき、なぜアメリカは李承晩あるいは蒋介石のような腐敗政治家を支持するのであろうかと、痛烈にアメリカの世界政策を労働党の平和主義の立場から非難をしております。アメリカの軍事的意図のもとに蒋介石をアメリカが援助し、かつ利用し、またそういう世界政策のもとで日本と蒋介石を結びつけて、本来平和条約を結ぶべき相手である中国本土の人民を無視するというような態度日本政府にとらせて、それが日本中国に対する戦争終結の方法、平和締結方法であるとはたして言い得られるか。私はかようなやり方に対しては、根本的に反対意見を持つものであります。これは戦争への道であります。私はアジアの平和及び日本の平和のために、このようなアメリカの軍事的方針に無批判に追随する吉田内閣の外交政策から生れ出た、しかも何のことやら内容がさつぱりわからないこのような条約に対しましては、断じて賛成することはできないのであります。  これで私の討論を終ります。
  132. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。  中華民国との平和条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本件は承認すべきものと決しました。  なお、ただいま採決いたしました右件についての報告書の作成は、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時十分散会