○林(百)
委員 私は
日本共産党を代表して、この日華
条約に反対するものであります。
今
吉田内閣の外交政策を批判しますと、われわれの前には二つの外交があるように思われるのであります。一つは
吉田の外交であり、一つは
日本の国民自身の外交であります。
吉田政府の外交政策というのは、一体何であろうか。一言にしていえば、
吉田政府にはみずからの外交はないということで、ります。あるのは
アメリカの外交でる。マーフイーの召使の外交である、
アメリカ侵略戦争の下請外交以外りものでもないのであります。これに対してわれわれ国民の望む政策は、
ソ連盟、
中国をも含めて、世界の平和的諸勢力と相提携する外交であります。
吉田の外交がこのまま続くならば、これは奴隷の外交となり、亡国の外交となる。われわれの望む全面
講和の外交は、これこそ真の
日本の国の独立と繁栄の外交である。その間にはすでに中立の道はあり得ないという
状態であります。
一例を申しますと、本年の四月、
アメリカ側が一九四五年の
モスクワ会議の
決定を無視して、非法にも対日
理事会の解消を声明すると、
吉田政府はにわかに降伏文書も
ポツダム宣言ももう無効だ、
ソ連は
降伏関係はないのだ、駐
日ソ連代表部の存在理由は消滅したと開き直つた。これは明らかに
アメリカのけしかけによる
吉田政府のソ同盟に対する新しい復讐戦の通告にもひとしい
態度であつたのであります。このような戦争挑発と奴隷的な外交が、
吉田外交の本性であります。本来
アメリカは対日
理事会の問題におきましても、
議長である限り、
ソ連代表部の問題は、
連合国が一致してみずから解決すべき問題であります。しかるに
アメリカは自己の非法な主張を
吉田政府の
責任において処理せしめ、あえて火中のくりを拾わしたところに、
アメリカ反動の卑劣な
態度が見られるのであります。この
アメリカ帝国主義者の
態度に対して、愚かな忠実な手先である
吉田政府は、この御主人の命令を忠実に実行するために、諸君も御
承知の
通りに、スエーデン、スイスの手を借りようとして、みごとに断られた。あげくの果ては、おずおずと、おびえるもののことく、みずから直接にこの通告を行わざるを得ないようなはめに追い込まれたのであります。これは
吉田政府が
アメリカ帝国主義の奴隷となり下り、
国際情勢判断の能力すらすでに喪失しておることの醜態を、天下に示すもの以外の何ものでもないと思うのであります。
対
中国政策においてもしかりであります。ダレスは
吉田政府をして、台湾の国民党残存グループといわゆる日華
条約を
締結させた。しかし皆さん、一体蒋介石とは何でありましようか。
中国人民から民族を売る敵として追放せられて、台湾に逃げ込み、辛うじて
アメリカの第七艦隊によ
つて守られ、この軍事
予算の三分の二は
アメリカによ
つてまかな
つてもら
つている、これは文字
通りアメリカの飼犬であります。しからば日華
条約は一体何を
意味しているのか。これこそ
アメリカの帝国主義者が、自分の手で育てた二人の手先を
一緒にさせて、連結して、これによ
つて中華人民共和国に対して軍事的な脅威を企てたものであります。そのためにこそ、岡村寧次を含む
日本戦犯八十八名は、ただちに
釈放されたのであります。これは明らかに
中国四億五千万の人民に対する新しい宣戦の布告であります。
中日
貿易についてもそうであります。
吉田政府は
講和条約が成立し、
貿易の自主権は完全に
日本政府の手にもどつたと称しておる。しかし事実はどうであるか。六百名の人員を配してか
つての総司令部と同様な機能を持つた
アメリカ大使館は、厳然として
日本曲府の上に君臨して、彼らの承諾なくしては、
貿易一つなし得ないのが事実であります。マーフイーの圧力を受けた
岡崎外務大臣は、
日本こそが自由国家群の先頭に立
つて、最も厳重に
中共貿易を禁止したいというドン・キホーテ的な恥知らずな暴言を吐いておるのであります。この奴隷的の外交、この屈辱的な外交、この新しい戦争挑発の外交こそが、トルーマンの召使である
吉田の外交なのであります。
一方世界の平和諸勢力、ソ同盟
中国を含めての友好の道を開いて行く人民の外交はどうでありましよう。本年初頭、スターリンは、
日本人民の苦しみを完全に理解し、深く同情する。ソ同盟の人民のことく、
日本の人民もまた必ず祖国の完全な独立と自由をなし遂げることを確信するとのメッセージを送り、次いで、大山郁夫氏に対するスターリン平和賞の授与、国賓としての招聘となりました。われわれはこれに対して、大山氏の
ソ連派遣の国民運動を展開し、さらには日ソ
貿易を促進し、あらゆる困難を克服して、
モスクワの世界
経済会議へ
日本の代表を派遣したのであります。このような外交、これこそが人民の平和の外交であると思うのであります。
中国関係についてもそうであります。本年の四月、周恩来は、
日本の人民に次のように呼びかけております。
日本の
吉田政府は、すでに
日本の人民を代表する資格はない。
中国人民は、
日本の人民と平和的に相処して行こう、団結し、互いに
貿易を行い、民族の独立と国家の主権を尊重することを願うと言
つておるのであります。
日本の人民はまたこれにこたえて、莫大な中日
貿易のとりきめをなし、
北京のメーデーに対しては、あらゆる弾圧に屈せず、代表を派遣し、今またアジア太平洋平和
会議へ
日本の代表を送るための大きな国民運動を展開しておるのであります。この中日両国の人民のお互いに融和的な提携こそが、国民の外交であります。この国民の外交は、今や
日本の国民の中にほうはいとしてその支持を高めつつあるのであります。
政府のあらゆる弾圧にもかかわらず、高良女史の
モスクワ行き、帆足、宮腰両氏の
北京行き、中日
貿易協定の成立のことく、明らかに国民外交の実践であります。今や自由党の議員の諸君の中においてすら、
国会において、隣国との国交回復のためには、イデオロギーの相違も越えて、
経済会議にでも、文化
会議にでも代表を派遣すべきであり、みずからもまた許してくれるならば、
モスクワにも出かけたいと、公然と国民外交を主張する人が出るに至つたのであります。労働者からは、
北京メーデー行きの弾圧に抗議して、どこへでも自由に旅行させろとの闘いが巻き起
つて来ました。業界では
貿易業界において
アメリカの関税引上げに厳重な抗議をし、また油脂工業界でも、
アメリカからの悪質な大豆のごときは、これを拒絶して損害
賠償を請求するとともに、
中国の大豆に切りかえるべきであるとの強硬な決議がなされるに至つたのであります。この国民外交を弾圧し阻止しようとする
吉田政府の反動政策に対する国民の憤激は、遂に五月一日のメーデー、五・三〇のデモによ
つて、民族的な怒りとな
つて爆発し、さらには明日から第三波ゼネストによ
つて、ますますこの憤激は、拡大され、深められようとしておるのであります。
このように、
岡崎外務大臣と
吉田の外交コースは、
日本の
国内においてはまつたく人民の反撃を受け、孤立化されるに至つたのであります。このことは
日本のみではなくして、
アメリカの外交政策とその手先による侵略政策が、アジアにおいてどのような惨敗を喫しておるかということを知
つていただきたいと思うのであります。朝鮮においてドッド准将が、朝鮮人の捕虜に捕虜とされ、これにわびを申し込んで、その結果捕虜
会議によ
つて釈放されるに至つた。この姿こそは
アメリカの侵略政策のアジアにおけるみじめな敗北の姿の象徴であります。李承晩のごときは、その
政府や
国会からすら完全に見放され、戒厳令下にわずかにおのれの身体の安全を保
つておるという惨状であります。ソ同盟、
中国を含む全面
講和の偉大な平和政策の勝利に比べて、侵略者のいかにみじめな敗北の姿でありましようか。
吉田政府のたどる運命もまたこの李承晩のそれであることは、もはや時期の問題であるということは諸君十分御
承知のところだと思うのであります。
吉田政府がいかに破防法をつくり、労働法を改悪し、
日本の人民を弾圧し、さては強制送還によ
つて朝鮮、
中国のアジアの同胞諸君をまで弾圧し、みずからの地位を維持しようとしても、米日反動に対する
日本人民の反抗は、ますます高まるのであります。しかもごの共通の敵
アメリカの侵略主義者をアジアかち追い出そうという民族の闘いは、全アジア人の
国際的な連帯のもとに展開されておるのであります。今やわれわれの進むべき進路が、みじめな敗北を喫しておるほんの一握りの
アメリカ帝国主義者
どもの政策への隷属ではなくして、ソ同盟、
中国を先頭とする世界の平和諸勢力との提携であることは明らかだと思うのであります。われわれはこのような
意味におきまして、この
アメリカ帝国主義者の強制に基く
日本と
中国の人民とを敵対
関係に置く日華
条約に対しては、断固反対するものであります。