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1952-06-04 第13回国会 衆議院 外務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月四日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君       大村 清一君    小川原政信君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       栗山長次郎君    近藤 鶴代君       中山 マサ君    宮原幸三郎君       守島 伍郎君    小川 半次君       中曽根康弘君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    林  百郎君       黒田 寿男君    小平  忠君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         統計委員会常任         委員      美濃部亮吉君         外務政務次官  石原幹市郎君         参  事  官         (外務大臣官房         審議室勤務)  三宅喜二郎君         外務事務官         (入国管理庁審         判調査部長)  鈴木 政勝君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 六月三日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として今野  武雄君が議長の指名委員に選任された。 同月四日  委員水田三喜男君及び今野武雄辞任につき、  その補欠として宮原幸三郎君及び林百郎君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月三十一日  行政協定に伴う基地供与地域及び施設の一部除  外に関する請願宮原幸三郎紹介)(第三二  七九号)  佐世保市名切谷地区の接収土地返還に関する請  願(北村徳太郎紹介)(第三三〇三号)  引揚謝恩使節団の派遣に関する請願小平久雄  君紹介)(第三三一四号) 六月二日  小牧飛行場拡張に関する請願(多武良哲三君紹  介)(第三四二二号) の審査を本委員会に付託された。 同月三日  久住高原を演習地として接収反対に関する陳情  書  (第二一〇九号)  同外二件  (第二一一〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  国際連合特権及び免除に関する国際連合と日  本国との間の協定締結について承認を求める  の件(條約第一一号)  千九百二十八年十二月十四日にジュネーブで署  名された経済統計に関する国際條約、議定書及  び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日に  ジユネーブで署名された経済統計に関する国際  條約を改正する議定書及び附属書締結につい  て承認を求めるの件(條約第一二号)  中華民国との平和條約の締結について承認を求  めるの件(條約第一三号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際連合特権及び免除に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件、千九百二十八年十二月十四日にジユネーブで署名された経済統計に関する国際條約、議定書及び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日にジュネーブで署名された経済統計に関する国際條約を改正する議定書及び附属書締結について承認を求めるの件、及び中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 私は経済統計に関して政府お尋ねをしておきたいと思います。それは今までこの経済統計についてのこういう会議政府から委員を送つたようなことがあるかと聞いているのですが、どういうふうな関係に置かれておつたかということ。それからその会議においてどういうような論議がなされて来ておるか。そういう体験から見て、今後日本がこの経済統計に加入することによつて、具体的にどんな利益がもたらされるか。これに対する協力政府としてはどういうふうに立案されているか。これらの点について説明していただきたいと思います。
  4. 美濃部亮吉

    美濃部政府委員 ただいまのお尋ねの、会議に出席したというふうなことは戦前のことでございましようか、戦後のことでございましようか。
  5. 並木芳雄

    並木委員 戦後と私聞いているのですが、戦後のことです。
  6. 美濃部亮吉

    美濃部政府委員 戦後につきましては、正式なこういう会議に出ましたことはあまりございません。一つ統計に関するものといたしましては、インターナシヨナル・スタティスティカル・インステイチユートと申します、これは民間統計団体で最も有力なものでございます。そうしてこれの元来の性格は、民間のものでございますが、現在においては国際連合と密接な関係を持つておりまして、大体国際連合のプリンシプルに従つて、その普及宣伝的な役目を担当しております。これは民間団体でございますし、戦後、ただちに戦前会員が正式の会員として継続して認められておりますので、第二十六回の総会が一九四九年のスイスのベルンで開かれまして、これには日本から大内統計委員会委員長と私とそれから森田統計局長とが出席いたしました。それから第二十七回の総会が昨年の十二月インドのニューデリーとカルカツタで開かれまして、これには私とそれから増山という数理統計専門家と、それからニューデリー在外事務所の人が一人と三人出席いたしました。  それから統計会議といたしましてはECAFEの——これはあとで問題になるかと思いますけれども、貿易商品分類に関する会議が二回、もつとたくさん開かれているのでございますけれども、日本からは二回出席しております。  それから私たちの方と別ではつきり存じませんけれども、ILOあるいはFAOの会には一度か二度、農林省及び労働省の人が出席していると思います。  統計の面におきます国際的な問題といたしましては、それ以外にこれはまだ開かれませんが、ごとしの八月にWHOのトレーニング・コースが日本で開かれることになつております。しかしこういう会議を通じましてもごの経済統計に関します議定書の問題はかつて一度も出ておりません。ことしの二月に国際連合統計部部長をしておりますレナードさんという方が日本に参られましたときにこの議定書の話を大分いたしました。その結果は、この議定書によつて各国統計作成に関する法律的な義務——法律的と申しますか義務を課するものでもないし、またそうとも思つていない、ただこの議定書統計国際比較を可能ならしめるような基準を立てた場合に、その道徳的なサポートをしてもらうということを主たる目的にしているというふうな話でございました。そこで一方、今度は国際連合の実質的な活動といたしましては、統計国際的な比較ということを非常に重視いたしまして、統計国際的に比較できるような基準を立てるための非常な努力をしております。国際連合を中心といたします国際的比較基準といたしましては、この議定書の調印かいなかを問わず、すでに日本にも多くの面において呼びかけを行つております。その一つは今申し上げました貿易統計における商品分類基準設定でございまして、商品別貿易統計各国比較というものは従来まつたく不可能であつたわけです。と申しますのは、各国がそれぞれ違つた商品分類をとつておりますので、たとえば綿織物といつてもその綿織物の定義が違いますから比較ができなかつた。それを国際連合が、一定の基準を立てまして、各国ともにその基準によつて貿易統計を作成してもらいたいという呼びかけを行いました。それで日本も、これはアメリカのスキヤツプのサゼスチョンが非常に強かつたわけでありますが、昨年の四月から日本は従来の貿易統計に使つておりました商品分類をかえまして、この国際連合のきめましたSITCと申しておりますスタンダード・インターナシヨナル・トレード、クラシフイケーシヨンを採用しております。日本以外にも現在までに七、八箇国この基準を採用している国があるそうでございます。それからそうない国もすべて自分の国の貿易統計をこのSITC編成がえをして国際連合に報告をしております。そうしてその結果に基いて、国際連合商品別各国統計という今までかつてなかつた統計表をすでに二冊出しておりまして、最近のものは一九五一年度の一月ないし九月の、約二十箇国だと思いますが、主要なる国々の統計を発表しております。これがこういう面における最大の国際連合の功績でございます。  そのほか今日までにまだ結論まで達しておりませんけれども、たとえば人口の動態統計各国最低基準をきめたい、それについて日本側意見を求める文書も来ております。あるいはまた物価指数生産指数というふうなものを各国の共通な基準でつくつて、そうして各国のを比較できるようにしたい、そういう点についての意見も求められております。あるいはまた一昨一九五〇年の、各国一斉に行われました国勢調査につきましては、その国勢調査のミニマム・リストをきめまして、できるだけそれに準拠してもらいたいという申出も受けております。これらはいずれもそれに従わなければならないという法律的な義務を伴わないサゼスチョンでありますけれども、日本政府といたしましては、日本の諸統計外国の諸統計比較し得る形においてつくられ、それを通じて日本経済世界経済のうちにおける地位を統計上はつきりさせたいという意向のもとに、でき得るものはその基準によるようにいたしておりますし、またでき得ないものは一応日本特殊事情を考慮して、日本の特殊的な基準に基いておりますが、でき得る限りそれを国際連合の定めました基準編成がえして、そして向うに報告しております。大体そういう状況であります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 その点よくわかりました。なかなかむずかしい仕事のようでございます。そこでこれに応ずる要員などについては十分準備ができておりますかどうか。予算なども相当かかるのじやないかと思いますが、要員予算などについて御説明願いたいと思います。
  8. 美濃部亮吉

    美濃部政府委員 もちろんそういう仕事はなかなかむずかしいので、要員が十分であるとは申せませんけれども、しかし状態は、この議定書に調印したからといつて、ただちにかわるものではございませんので、従来やつておりました方針通りに継続することで十分だと思います。足らないがちではありますけれども、合理的な運用によつて国際連合の要求を満たして行くことができるだろうと思つております。
  9. 並木芳雄

    並木委員 よろしゆうございます。
  10. 仲内憲治

  11. 宮原幸三郎

    宮原委員 近く締結の予想せられております正式な国連との行政協定に関連いたしまして、外務当局お尋ねいたしたいと思います。  国連軍米軍と異なりまして、その駐留または残留いたしまする法的根拠が、平和條約第五條または吉田アチソン交換公文等で一応処理せられるということも考えられないわけ容はありませんけれども、しかしそれは七月二十六日までの九十日間の、現在の空白状態に対処する一つの方法としてこの根拠を援用なされつつある、これはわかるのであります。もし七月二十六日以降正式に行政協定のできない場合のことを考えますと、法的根拠について的確なる、御自信ある御答弁をこの際得ておきたい、こう思うのであります。一部には、もし正式な行政協定駐留猶予期間後においても成立いたさなかつた場合には、憲法違反ではないかという疑いも持たれておるのであります。もちろん政府当局は、七月二十六日までには正式行政協定締結なさる御自信があると思うのでありまして、いささか杞憂の余りにこの点について第一に御所見を伺つてみたいと思います。
  12. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまのお尋ねは、九十日過ぎた後の駐留といいますかいこちらにおります法的根拠というお尋ねであつたと思うのでありますが、これはやはりただいま御引例になりました吉田アチソン交換公文によりまして、国連軍日本におることを許し、かつ容易にするということをとりきめておるのでありまして、しかもこれは議会の御承認も得ておる、こういうことになつておりますので、九十日を過ぎて後の根拠といえば、これと、それから国連協力——平和條約第五條というか、この根本精神、この二点から論じらるべきものと思つております。
  13. 宮原幸三郎

    宮原委員 一応疑義を感じないことはございませんが、政府の御解釈として承つておきます。  次に国連軍残留期間の問題であります。朝鮮動乱が安定するものと判定できます時期が、早晩到来するものと想定いたしたいのでありますが、この朝鮮動乱が安定すると判定できます時期には、自動的に国連軍というものは日本残留する根拠がなくなるものではないかと思うのであります。正式に行政協定等締結せられる場合には、行政協定條章の中に明文を設定せられるならば、その点がなお明確になると思うのであります。外務当局はこの点についていかなる方針をもつて折衝なさらんとするのでありますか、あるいはなされつつあるのでありますか、この点について伺いたいと思います。
  14. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国連軍との折衝の内容については、まだここで申し上げることはできないと思うのでありますが、ただいまお話の、動乱も安定いたしまして、そういう必要が全然認められないということになりましたならば、当然駐留といいますか、おります根拠を失つて来るもの、かように私は考えております。
  15. 宮原幸三郎

    宮原委員 日本の国内に外国軍隊残留するがごときことは、見方によれば独立日本としてはまことに希望し得ない。決して攘夷的のことを申すのではありませんが、米軍が直接わが国土防衛の使命を持つて駐留せられる以外においては、たといそれがわが日本防衛に間接的には寄与があるとしても、一日も早く撤退を期待することは国民の全部の気持であろうと思うのであります。従いまして残留期間については行政協定締結せられる際に、明確に明示せられますことを私は特に御希望をいたさざるを得ないのであります。  次に国連軍待遇の問題でありますが、国連軍のうち、英連邦が実は大部分を占めているのであります。この英連邦は、伝えられるところによりますと、日米行政協定米軍に与えられていると同様の待遇が与えられるべきものである、というふうな主張をなしておるかのごとく察せられるのであります。しかし間接寄与と直接防衛との間には、われわれ日本人側から見るだけでなく、国際的に見て、その間に大幅の差別があることは当然であろうと思うのであります。従いましてこの待遇上のことにつきましては、米軍には相当の特権を与えても、国連軍の側については米軍と同様の待遇または特権が付与せられるがごとき、行政協定締結をなさるべきものではないと考えるのでありますが、その点について政府の御見解を伺いたいと思います。
  16. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは外務大臣もしばしば言つておられますように、日本の安全を守るためにおります駐留軍と、それから単なる国連軍との間につきましては、若干の差異があることはこれは当然でないかと思います。それでこの前もたしかここで申されたと思いますが、いわゆる駐留軍であり、かつまた一面国連軍の形になつておりますアメリカ軍隊、それから部隊として行動をとつております英濠軍のような形のもの、また単なる休養その他でちよつと帰つて来るようなギリシャであるとかその他の軍隊、こういうふうにいろいろ違う面があると思うのであります。そういう配慮のもとに一応ただいまいろいろ折衝が行われている、こういう段階であります。
  17. 宮原幸三郎

    宮原委員 次に現在国連軍の中の英連邦軍への施設提供ぶりを実地に調査いたしますと、まことに放漫なる使用をいたしているという、われわれ国民として看過できない現実に直面ずるのであります。呉地区の例をとりますれば、英連邦軍部隊のほとんど全部は朝鮮に移動いたしておつて、まことに少数の部隊残留しているにとどまるのでありますが、その使用施設の区域は百万坪に達しているのでありまして、これに対しましては、この際行政協定交渉政府において国連軍になさるのでありますから、この提供施設の縮減、圧縮というような点について、政府において特に具体的の案を準備して、単に国連軍から提示せられました案を偏重して、従前同様の放漫なろ施設使用ということの弊に陥らないように、御努力相なるべきものと思惟するのでありますが、この点について政府の御見解伺つておきます。
  18. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは朝鮮動乱の模様にも若干よることではありますが、ただいま御指摘がありましたように、できるだけ早く圧縮といいますか、不要なものは返還してもらうようにただいま交渉中でございます。
  19. 宮原幸三郎

    宮原委員 そこで第五点として、この英連邦軍労務問題について、看過できないところの処理をいたしている問題を取上げなければならぬのであります。もとよりすでに残留を決定せられた以上は、地元においても日本国民全体においても、できる限り友好と信義とをもつて英連邦軍に対さなければならぬのでありますが、それと同様に英連邦軍においても、この労務の問題については、他の問題についてと同様に相当の対価を払い、みずから米軍と同等の待遇を主張するならば、米軍同様の條件労務者使用すべきものであろうと思うのでありますが、現実においては四月二十八日の独立機会にして、日本政府から労務提供を打切る申入れをいたしたのを転機といたしまして、英連邦軍呉地区における労務條件は大幅なる改悪、引下げをこうむつて、今や一万の労務者はその挙措に迷つて不安動揺を続けているのが実情であります。その労働條件の問題もありますが、現に四月の二十九日、三十日の四月分の給料は五月十日に支払いをなさるべきものであるにかかわらず、なお今日未払いに相なつている。また五月分の給料もこの六月十日に支払いをなさるべきであるが、この支払い見通しがついておりません。こういう状態に相なつているのであります。まことに遺憾しごくであります。このよつて来るところは、もとより英連邦側責任があるのでありますが、労務提供の打切りということがその動機をなしているのでありますから、政府においても相当因果関係責任があると思うのであります。  ついては地元要望としてわれわれが調査いたしております資料によりますれば、米駐留軍同様に政府雇用間接雇用といたされたい。労働三法初め関係ある日本の法律はすべて適用せられるとともに、合法的組合による団体交渉を認めること。第三、従来通りかつ米軍労務者同様に家族手当退職手当を給与する。すなわち一人当り月収一万三千二百円から、三千八百円の減収となるのを防止すること。このため呉約一万人の労務者は年間三億八千万円の減収となる杞憂があるのであります。市民経済にも重大なる打撃を与えるものであるから、これを防止しなければならぬ。第四に、従来通り米軍労務者同様身分保障的措置を講ぜられたい。かかる要望地元労務者の強い力ある声となつて政府及び国会に対しまして要請をせられておるのであります。このために呉市長ブリツジフオードにこの要請についての懇談を申し込みましたが、ブリツジフオード将軍は何だか面会を回避しておるかのような情報を聞いて、まことに遺憾とするのでありますので、政府においてもこの点を特にお取上げ願つて、ただいま折衝中とは思うのでありますが、この点についてただいままでの折衝の経過と将来の見通しについて、結論だけでもお伺いいたしておきたいのであります。
  20. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国連軍との費用分担といいますか、経費関係の問題につきましては、ただいま先方といろいろ話合いをしておるわけであります。日本といたしましては、当然国連軍が負担すべきではないかということを主張しております。先方はそれに対して若干の希望といいますか、意見があるようでありまして、最終決定を見ていないのでございます。それでただいま引例になりました呉市の労務者の問題は、これはたびたび陳情等も承つておりまして、なかなか大きな問題であると思つております。しかしこれは今日の事態になりましては、英濠軍一般労務者との労務契約労働契約の問題になるのではないかと考えられるのでございまして、ただいま労働省あたりともよく連絡をとり、できるだけあつせんの労をとりたい、こういう腹づもりで対処しておるのでございますが、最後的見通し等につきましては、まだここで確たることを申し上げる段階でありませんことを、まことに遺憾に思つておる次第であります。
  21. 仲内憲治

    仲内委員長 宮原君に申し上げますが、時間が大分たちまして、あとの都合もありますので、あなたの御質問はこの辺で打切つていただき、また別の機会にお願いいたしたいと思います。——菊池君。
  22. 菊池義郎

    菊池委員 小笠原島の問題であります。今まで十数回にわたつて小笠原島民の帰還をお願いしておるのでありますが、まだ外務省の態度がはつきりしないので困つております。まずお伺いしたい第一点は、昭和二十一年の四月に、日本の国籍を持つております米英系の一部の人を、小笠原島民といいますか、これは日本国民とまつたく同じなのでありますが、百三十五人向うへ返しておる。返しておきながら同じ日本人六千余名を返さないというその法的根拠はどこにあるのであるか。日本政府は何ゆえにこういう不平等なへんぱな措置をとられたのであるか。これからまず私はお伺いしたいと思うのであります。
  23. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は菊池委員からたびたびお話がございまして、われわれもまことにごもつともなお話と思いまして、最高司令部時代から司令部に対しましても、いろいろ書簡をもつてまで申入れをしておるわけでございます。ただこの小笠原所管関係が、たしか向うの海軍の勢力範囲といいますか、所掌しておるところとなつておりまして、まだ確たる最後的回答を得ていないのでございますが、どういう理由でこういう措置をとつておるか、われわれもまことにわからないのであります。この点は同様残念に思い、今後ともあらゆる機会をとらえまして、要望を伝えまするように努力を続けたいと思つておる次第であります。
  24. 菊池義郎

    菊池委員 何ゆえ日本政府は百三十五名にこういう差別待遇を施したのであるか、この点どなたからでもよろしうございますから御答弁願いたいと思います。
  25. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはいろいろ内部でも話合いをし、研究もしたのでございますが、結局小笠原島に関する限り、ただいま先方が全責任を持つておるのであります。いかなる理由でこれを返してくれないかということにつきましては、われわれまつたくその理由がわからないのであります。いろいろ申入れもし、連絡もするのでありますが、まだ確たる返事を得られないのであります。
  26. 菊池義郎

    菊池委員 そうではなくて、百三十五名を返したことについてです。
  27. 三宅喜二郎

    三宅政府委員 その点につきましては、英米人を返しましたのは終戦のすぐ翌年の四月であつたのでありましでその当時におきましては、アメリカとしては日本国民に同様の取扱いをすることは適当でないと考えたと察せら必るのであります。
  28. 菊池義郎

    菊池委員 それは日本の方から要請して、この百三十五名だけ返したのか、向うの方から希望して返したのですか。
  29. 三宅喜二郎

    三宅政府委員 それは当時アメリカ司令部の一方的措置として返したものと了解しております。
  30. 菊池義郎

    菊池委員 最近小笠原引揚連盟から、民間でもつて司令部折衝いたしました結果書簡が来ておる。外務省に行くべき書簡民間団体に来ておるのですが、その書簡の中にも、今日独立後においては、諸君は日本外務省を通じて折衝すべきであるという親切な手紙が来ておるのです。そうして日本外務省からさつぱり折衝がないということが、この書簡によつても明らかにされておるのですが、日本外務省がわれわれに折衝するならば、われわれはそれをアメリカ本国に取次いで骨折るだけの用意は持つておるということを、向う書簡に書いておる。それにもかかわらず、日本外務省は実に怠慢きわまる態度である、六千人を放置しておるということは、これは遺憾しごくであると思うのでありますが、一体いつになつたら本格的な折衝をしてくださるものやら、われわれはそれをはつきりとお伺いしたいと思うのであります。
  31. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま外務省が何らの折衝もしていないというお話でございますが、それは全然違つておると思います。先ほどから申し上げておりますように、書簡でも申し入れておりますし、口頭でもしばしばこのことは話をし、まだ占領時代におきましても、ダレス氏が見えたとき、あるいはシーボルド氏を通じまして、これはたびたび連絡をとり、申し入れておることであります。それから今回新木大使が赴任されるにつきましても、この小笠原島の帰還問題は一つ日本の大きな関心を持つておる問題として、向う申入れしてもらうよう、十分これも連絡をとつておるわけであります。ただいまお話になりましたことは、窓口は外務省であるということをその書簡に書いておるのではないかと思います。ちよつと申しましたように、所管がたしか海軍関係になつておるというようなことで、なかなか思うようにすらすらと話が進んでいないのじやないかと思うのでありまして、これもただわれわれの感じだけで、いかなる理由でこれを取上げないのかどうかということは全然わからないのでありまして、まことに残念に思つております。
  32. 仲内憲治

    仲内委員長 菊池君、簡単にお願いします。
  33. 菊池義郎

    菊池委員 とにかく同じ信託統治地域でありながら、沖縄その他の住民は返しておりながら、小笠原の六千人だけ返さぬということは、これは奇怪きわまることで、その理由は一体どこにあるか、それを外務省で突きとめてもらいたいということを、再三申し上げておりますが、それを何ゆえ外務省は突きとめることをしないのでありますか。その理由がわかつておりますかどうですか。
  34. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほどから申し上げておりますように、小笠原島の全権を全部向うが持つております。しかも向うの国内事情の問題で何かあるようでありまして、それら内部にわたつてのことは言えないということでございまして、まことに繰返すようでございますが残念に思つておるのであります。しかしごの問題は、新木大使が赴任して、向うでもいろいろお話を願う、こちらではさらにマーフイー大使等を通じまして、今後ともいろいろ申入れをし、折衝もして行きたいつもりでありまして、菊池委員が心配されておると同様、外務省関係者も常に念頭に置きまして心配しておる問題であるということを、ここで申し上げておきたいと思います。
  35. 仲内憲治

  36. 並木芳雄

    並木委員 牛場通商局長お尋ねしたいと思います。北京で調印された中共との貿易の品目についてお尋ねいたします。これは新聞に具体的に品目が出ておりますから、それについてお聞きするのですが輸入の点では輸入品目については制限はないと思いますけれども、この点どうなつているか。それから輸出品目のうち甲類、乙類、丙類と三つにわかれておりますが、甲類中の許可品目はどれであるか、それから、今は許可になつておらなくても、これから解除になる見込みのものはどうか、以下乙類中のもの、丙類中のもの、それについて具体的に御答弁願いたいと思います。
  37. 牛場信彦

    牛場政府委員 輸入の方は、御指摘の通り、制限ありません。輸出の方ですが、これは現状を申しますと、甲類のものは全部だめなわけで、乙類では高級インキはいいことになつていると思います。丙類では農業機械、これは手でやる程度のものでしたちよろしゆうございます。それから自転車、タイプライター、それから人絹、綿糸、綿布こんぶ、これくらいのものじやないかと思います。それから将来解除する見込みというお話がございましたが、これは今その見込みはちよつと申し上げられないのですが、ブリキでありますとか、あるいは紡績機械というようなものにつきましては、できたら調整をはかつて行きたいというふうに考えております。
  38. 並木芳雄

    並木委員 大体例のバトル法の線まで調整をはかる方針には、かわりありませんか。
  39. 牛場信彦

    牛場政府委員 バトル法といいますよりも、大体において今の民主陣営の国のやつている程度まで、調整して行きたいということは考えております。
  40. 並木芳雄

    並木委員 アメリカ側と英国側でその点違うということをこの前答弁を受けております。大体今の答弁では西欧側の線一まで調整して行く、こういうふうに了解しますが、その通りですか。
  41. 牛場信彦

    牛場政府委員 はつきり西欧側の線までということもどうかと思われますが、まあ日本と同じような了解があります国がやつておる程度——アメリカはこの前申し上げました通り、全然貿易しておりませんから、これは一番厳重なわけでありますが、カナダなんかも相当日本同じ程度にやつておりますから、そういう国がありますので、どの程度までということはなかなか申し上げにくいと思います。
  42. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、やはり中日貿易というものを助長して行くか、あるいは圧力を加えて行くかという点で、政府の手心もかわつて来るかと思いますけれども、通産省としてはやはり助長する線で動いて行くと思いますが、いかがですか。
  43. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは現在中共との貿易につきましては、一定の基準でやつておりますので、その基準通りつて行きたいと思つております。
  44. 並木芳雄

    並木委員 今度の伝えられる契約では、バーター取引になつているようでございます。バーターの取引ですと、別段そこに障害はないようにわれわれしろうと考えかもしれませんが思うのです。特に何か條件とか制限がついて参りますかどうか。バーターならば、つまり為替決済なんかの問題が起らないで、許される品目については順調に物々交換ができると思いますけれども、この点お尋ねいたします。
  45. 牛場信彦

    牛場政府委員 バーターにつきましては、第一に物と物ととりかえるというなら、やはり建値の問題が起りますので、健値の問題につきましては、これは初めはドル建だけを認めておつたのでありますが、ポンド建も認めて行こうということに今いたしております。それからこちらから物を買うだけの場合はポンドで支払うことも認める、それからバーターについて一番問題になりますのは、これははたしてこちらから物を出して向うから物が入つて来るかという点でございまして、従いまして方針としましては、輸入先行を原則とする、つまり向うからまず物を持つて来てもらつて、それが日本に到着したことが確認した上で、見返り物資を出すことを許すということにしております。ただこれにつきましても向う側におきまして、相当高い程度の保証をしてくれるならば、日本側からまず輸出することを認めようということも考えております。
  46. 並木芳雄

    並木委員 船舶関係について、特に中共貿易における障害になると思われる点はどういう点でありますか。それに対して政府は今後どういうふうな処置をもつて臨まれるつもりでございますか。
  47. 牛場信彦

    牛場政府委員 船舶につきましては、現在でもいくらか荷物は動いておるのでございまして、従来は主としてイギリスの船が行つてつたのでありますが、これは最近イギリスの船会社が中共には船を入れないということを申しておるようであります。そうなりますと、あと残るのはギリシヤの船とかポーランドの船くらいのものになると思います。パナマはやはりアメリカと同調して、中共地区には一切船を入れておりません。従いまして、船はほとんどないということになつております。本船を入れることは現状におきましては、全然業者のリスクにまかしたいと思つております。具体的の問題といたしましては、銀行保険会社等は当分本船を入れることには同意しないだろうと思いますので、本船を入れることは商売として成り立たないだろうと思います。
  48. 並木芳雄

    並木委員 それに対して政府として調整策を考いておられますかどうか。
  49. 牛場信彦

    牛場政府委員 それは考えておりません。
  50. 並木芳雄

    並木委員 近く北京でアジアの平和会議ですか、経済会議ですか、それが開かれるという報道ですが政府として何かこれに関知しておりますか。これに対して日本から行きたい人があればそれに対して政府はどういう態度をもつて臨まれるのでありますか。
  51. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 今までのところ何ら正式の報告といいますか、報道を聞いておりません。それからまた旅券関係の問題につきましては、大体この前のモスクワの経済会議に対してとりました措置と同様な考え方で行きたいと思つております。
  52. 並木芳雄

    並木委員 牛場政府委員にもう一点。この際中共貿易と並んでソ連との間の貿易状態について現在どういうふうになつているか、その状況を御報告願いたいと思うのです。在日ソ連代表部との間で話合いがあつたとかないとかいうことも報道されておりますし、対ソ連貿易についての現状並びにこれからの政府の態度を示していただきたいと思います。
  53. 牛場信彦

    牛場政府委員 ソ連との聞は占領中は一種のオープン・アカウントでやつてつたのでありますが、これ清算に入りまして、日本が幾らか債権を持つております。これは今後の商売で清算したいという向う希望でございます。それで現状におきましてはやはりバーター取引で行くという大体の行き方でございまして、向う側から石炭を送ろうというオフアーは今年の初めごろからですか、ございました。大体二十万トン程度でございます。それで今商社が向うの代表部と折衝しておる状況を承知しております。ただ見返り輸出の点が問題となりまして、もちろん戦略的物資は出せないわけでございますから、向う側の要求しております品物につきまして、われわれの方へも意見を聞きに来ておりますので、指示を与えておるわけでありますが、なかなか値段の点その他も問題になりまして進捗しないというふうに聞いております。ソ連からの積出しは、御承知の通り冬になるとできませんので、なかなか今年中にこれがうまく行くかどうか、ちよつと疑問になるような状態でございます。
  54. 並木芳雄

    並木委員 ソ連から日本に対して望んでいる品物には、たとえばどういうものがあるのですか。
  55. 牛場信彦

    牛場政府委員 綿糸布、人絹などももちろんございます。そのほかにやはり船舶でありますとか、鋼材のようなものもあつたと思いますが、そういうものはだめだということを申しまして、だんだん現在日本の出し得るような品物に話が移つて来ているようであります。船の修繕などという問題もございます。これらは単なる経済問題以外にいろいろ考慮しなければならない点もありますので、なるべくそういうものは避けて、現在出せるようになつているものでやれということを、商社が聞きに来たときには私ども言つている状況であります。
  56. 仲内憲治

    仲内委員長 大臣が来るまで局長に対する御質問を願います。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと今のに関連してお聞きしたいのですが、この中日貿易協定の甲類はだめだということはどういうことですか。甲類は別表第一ですから、通産省の承認によつてなし得るのであつて、初めからだめだという話はないと思うのですが、どういうわけですか。
  58. 牛場信彦

    牛場政府委員 御指摘の通りであります。要するに許可をしておらない状況であります。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 許可しておらないというのは、どういうわけで許可しないのでしようか。それは中共という地域だから許可しないのですか。それとも管理令の中にそういう規定があるというのですか。
  60. 牛場信彦

    牛場政府委員 管理令にはただ輸出許可にひつかかつているだけですから、方針として中共向けのものは許可しておらないわけであります。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで中共向けの輸出を許可しないということは、占領下にあつて占領軍からそういう指示のあつた場合は別として條約が締結されて、吉田政府に言わせれば、一応日本の国は独立したと称しておる。われわれとしては旦解は違いますが、もし吉田政府の言う通りだとすれば、日本政府の独自の見解で許可する、しないということはできると思いますが、この点について通産省はどう考えておりますか。
  62. 牛場信彦

    牛場政府委員 その通りと思います。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 その通りとすれば、甲類については許可していいじやありませんか、なぜ許可しないのですか。
  64. 牛場信彦

    牛場政府委員 それは許可しないという方針でやつておるわけです。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 その方針はどういうところから出て来るのですか。
  66. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは主としてやはり戦略物資というわけでありますが、それ以外に日本の内地の需給状況などももちろん勘案いたしますし、国連との協力という非常に強い線があろわけでありまして、その範囲内でそういう方針でやつておるわけであります。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 たとえばブリキなどは非常に生産が余つてつている。またブリキが戦略物資になるわけはないと思いますが、こういうものについてどうして許可しないのですか、薄板など……。
  68. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは解釈の問題でありますが、やはり戦略物資と認められないこともないと思います。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 ブリキがどういう戦略物資なんですか——。回答がないですか。
  70. 牛場信彦

    牛場政府委員 程度は軽いものでありますから、こういう品目について調整できたらしたいと思いでおりますが、現在はそういうことにしておりません。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうところがわからないのです。日本政府が調整しようと思えば、日本政府見解で調整できるはずなのですがそれをどうしてアメリカと相談しなければいけないのですか。(「それは政治だ」と呼ぶ者あり)それはどういう政治だか教えてもらいたいのだ。ブリキの輸出を日本の通産省が許可をするのに、アメリカと相談しなければいけないというのはどういうことなのです。(「それは秘中の秘だ」と呼ぶ者あり)秘中の秘ならば、なおさら国会で明らかにしなければならぬ。
  72. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはたびたび問題になりまして、外務大臣等からも御答弁があつたと思うのですが、要するに昨年の五月の国連の禁輸勧告に対して、日本としては協力するということを申しました。そのときに将来この問題については、各国と協議をしてやつて行くということを申しておるわけであります。しかもアメリカ側はどうしても協議をしてやつてくれということを、意思表示をしておるわけですから、従いまして、その協力の線から行けば、これは協議して行くべきことであろうと思います。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、禁輸機構に日本はまだ入つておらないのですが、禁輸機構へ入つたと同じ立場で、そういう問題をアメリカと相談しなければならないというのですか。
  74. 牛場信彦

    牛場政府委員 禁輸機構と申しましても、そういうものと別にきまつた機構があるわけではないと思いますから、要するに欧州各国もみなアメリカと相談してやつておる。日本もできれば全世界の民主国と相談すればいいのでありましようが、これはまだ時間もかかることでありますし、さしあたりアメリカが一番関係が深いわけでありますから、まずアメリカと相談する、こういうことでございます。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、アメリカと相談するといいますが、たとえばイギリスのごときは朝鮮で中共の軍隊と戦いをしながら、一方では中共を認めて貿易をしておるのであります。これに対してはアメリカは何らの制限も加えて来ておらない。日本ばかりがどうしてそんなに恐れをなしてアメリカと相談しなければいけないのですか。
  76. 牛場信彦

    牛場政府委員 イギリスもやはりアメリカと相談してやつておりますので、その点は日本とかわりはないわけであります。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 だから同じ相談をしている国で、イギリスの方がそういうことをするならば、日本だけお義理立てする必要はないじやないですか。一体何かアメリカの方で援助を打切つて日本が不利をこうむるのですか。何か困ることがあるのですか。そんなことではまるで植民地じやないですか。
  78. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 綿業関係での借款等もありますし、それからこれから電源開発、いろいろの外資導入関係等もたくさんあるだろうと思うのです。それから安保條約に基くいろいろな援助といいますか、協力、たくさんあるだろうと思います。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 それではその問題については、たとえば電源開発の外資導入、政治的な借款も今全然見込みがないといわれる。それから綿花の借款もまだどういう話になるかわからないという。アメリカ軍隊日本駐屯のごときは、これはむしろ日本アメリカ軍隊がいてもらわなくて、少しもわれわれとしては迷惑をこうむらない。そういうことのために、こういう平和的な産業の無制限に発展する中共貿易を禁止するということは、明らかに日本の国がアメリカの植民地になろ、みずから進んで植民地になることだ。もう少し日本の通産省は自主的にこういうものを許して行つたらいいと思う。現に中共貿易日本がやろことに積極的な態度を示して来たから、国際開発銀行の方から、それじや自分の方も考えよう、調査団を派遣しようということを言つて来ているじやありませんか。日本の方が腹をすえて中共貿易をすれば、アメリカの方だつて日本が中共側にだんだん接近することを避けるために、むしろアメリカ側がいろいろの媚態を呈するようになるのだから、こういう点について腹をすえて日本政府の自主的な判断から、中共貿易を発展するという方針をここで新たに覚悟するかどうか。覚悟を新たに持つかどうか、こういう点について、念のためにもう一度通商局長と次官に、はつきり聞いておきたい。
  80. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 よく聞き取れなかつたのでありますが、先ほど答えた通りでございまして、いろいろ御意見があつたようでありますが、その点はわれわれとまつた見解が違つておるのであります。
  81. 仲内憲治

    仲内委員長 北澤直吉君。
  82. 北澤直吉

    ○北澤委員 今回の日華條約は、日本の対中国政策、ひいては日本の対アジア政策の根本に触れるものでありますので、二、三の重要な問題につきまして、外務大臣の所見をお伺い申し上げたいと思うのであります。  第一点は、日本の外交方針の根本でございますが、日本は講和條約の発効によりまして、完全な主権を回復し、外交についても自主権を回復したわけでございますが、日本の置かれておる立場にかんがみまして、日本は外交についても自主的の立場からアメリカと緊密に連絡して、でき得る限り米国と歩調を合せて行くべきものであると、こう私は思うのであります。こう申しましたからと申しまして、何も日本が向米一辺倒というのでなくして、日米が相互に平等の立場においで緊密に協力をして外交を進めて行くという意味であります。と申しますのは、日米両国は、日米安全保障條約によりまして、共同防衛の立場にありまして、たとえて申しますと、日米は同盟関係にある、こう申して過言でないのであります。従いまして、日米両国は、単に軍事的の面ばかりでなく、外交、経済面におきましても、緊密な連繋をとりまして、そうして歩調を合せて行くべきものである、こういうふうに私は思うのであります。こういう点がはつきりしますれば、日本の中国大陸政策というようなものも、それに対する日本方針もはつきりして来ると思うのであります。そういうふうに今後の日本が自主的な外交をする場合におきましても、日本は日米共同防衛という見地から、経済の面あるいは外交の面におきましても、日米両国が緊密に協力し合つて行ける、こう私は思うのでありますが、これについて大臣のお考えを伺つておきます。
  83. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまの北澤君の御説は、まことにその通りでありまして、日米安全保障條約の結果、日本アメリカは、普通の同盟関係ではありませんので、実質的にはお話のようなところに来ておると考えるのであります。従来日英同盟時代におきましても、日本はあらゆる面について、英国とは特に緊密な連絡のもとに外交方針等を定めて来たのであります。ただいまの状況は、やはり今北澤君のおつしやつた通りの筋で行くべきだと考えております。ただそう申しましたからといつて、たとえば自由国家群のうちの有力なイギリスであるとか濠州であるとか、その他いろいろの国は放棄して、アメリカとだけ一緒にやつて行くという趣旨ではむろんないのであります。アメリカとしては、また自由国家群の足並をそろえて、同じ歩調で世界の平和維持を念願しておるのでありますが、アメリカと緊密な連絡をとるということは、とりもなおさず自由国家群全部と非常な緊密な連絡をとるということにはむろんなりますけれども、特に経済の問題につきましても、アメリカ日本との関係は、非常な緊密なものでありますので、お話のような線でできるだけ密接な連絡のもとに進めて行きたい、こう考えております。
  84. 北澤直吉

    ○北澤委員 そこで次にお尋ねしたいのはそういうふうに日米両国が外交経済の面についても、緊密に連絡をしなければいかぬ。従つて中国に対する政策につきましても、日米の間に緊密な協調がなければならない、こういうふうに考えるのであります。そこで伺いたいのでありますが、アメリカの中国に対する政策でございますが、戦争以来のアメリカの中国政策を見ておりますと、最初は蒋介石総統の国民政府というものを中心にしてアメリカは中国政策を考えておつた、ところがだんだん国民政府の力が弱くなつて、中国国民国民政府に対する支持がだんだん弱つて来ると、アメリカは今度は国民政府と中共政府との妥協によつて、この中国に民主的な政府をつくろうということで、たとえばマーシヤル元帥を支那に派遣しましてこの国共の妥協をはかつた、ところがこの国共の妥協がうまく行かない、だんだん元に返りまして、現在ではやはり国民政府というものを助けて、中国に対する政策を進めて行こう、こういうふうにアメリカの対中国政策というものは三べんかわつておるというように私は思うのであります。一九四九年に国務省の出しました支那問題の中国白書、これによりましても結局アメリカは、将来は中共以外のものを目標として進んで行く、こういうことになつております。この中国白書に関するアチソン国務長官の大統領に対する伝達書の最後にも、この偉大な中国国民の大部分は、外国帝国主義の利益を守る一党派によつていかに冷酷に搾取せられようとも、最後は中国の深遠なる文明と民主的な個性主義とが再びみずからを主張し、そうして中国は外国の桎梏を破棄するであろうと述べ結局アメリカの対中国政策から申しますと、中国が共産党の支配から脱しまして、中国自身の民主主義的な政府ができることを期待するようになつておるのでありますが、こういふ戦争以来三べんかわつたアメリカの中国政策というものは、今後このまま進むのか、あるいは現在アメリカ政府が中共に対して考えている考えが、今後ともそのままで行くのか、あるいは朝鮮動乱の結果いかんによつて、そういう方面に多少の変化があるのか、こういう問題について、これは非常にむずかしい問題でございますが、アメリカの中国に対する政策の基本につきまして、大臣の見通しをお伺いいたしたいと思います。
  85. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはどうも私にもなかなかどうだということは申し上げられないことと思います。ただいまお話のようないろいろの点がありますが、私は、アメリカの中国に対する政策は、ただいまお話のような点を要約しますと、二つになるのじやないかと思つております。第一は、できるだけ中国でも、朝鮮でも同じことでありますが、戦乱のないようにしたい。できるだけ平和的に事態が推移することを希望しておる。もう一つは、しかしながら、そうかといつて国民の意思を踏みにじつて、力をもつてある外国政府の意図を受けているような政権の樹立には反対であるという二つの点だと思います。たとえば中共と国民政府との間の妥協をはかるというような点は、中国の戦乱を避けようとする努力であつたろうと思いますし、ただいまとつておりますアメリカの態度は、この中国の国民の意思に関係なく、力をもつて政権を維持し、かつ力をもつて専制を行つておるという事態に対しては、おもしろくないという態度を表明しておるものと思います。それ以上には、アメリカ自身はこれに対して、力をもつてどうかするとか、あるいは内政に干渉しようというような意思はないのであつて、ただアメリカとしての立場を明らかにして、将来に備えておるということだろうと思います。今後どうなるかはわかりませんけれども、やはりこの二つの原則が支配しまして、そのときどきの事態に応じて適当な措置を講じられるだろう、こう私は考えております。
  86. 仲内憲治

    仲内委員長 ちよつと申し上げますが、大臣はきよう十二時半ごろにどうしても所用があるそうで、一人十分くらいしか時間がありませんから、簡単に。
  87. 北澤直吉

    ○北澤委員 それで次にお伺いしたい点は、今回の日華條約は、いわゆる吉田・ダレス書簡の趣旨によつて結ばれるものと思うのでありますが、吉田・ダレス書簡によりますと、究極においては日本政府は中国全体との間に善隣友好関係を樹立したい。しかしながら、さしあたつて状態においては、それができないから、まずもつて国民政府と国交を回復する、こういうふうになつておりまして、従つて中国大陸の問題はオープンにして将来の問題に残しておく、こういうふうにわれわれは思うのであります。ところがこの吉田総理のダレス氏にあてた手紙によりますと、「日本政府が中国の共産政権と二国間條約を締結する意図を有しないことを確言することができます。」こういうふうになつておるのでありますが、これはさしあたりは、現在はしないが、この中国大陸の問題は将来の情勢によつてこれを考える、こういう意味でありますかどうか。この点をひとつ伺つておきたいと思います。
  88. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは書簡の末節のことを指摘しておられるのだと思いますが、ここにもあります通り、たとえば中ソ同盟條約は日本に向けられている軍事同盟であるとか、あるいは中国の政権は日本の政党なり政府を力をもつて転覆せんとする企図を支援しつつある、こういうようないろいろな理由がありますので、「これらの考慮から」とこうなつております。従つてこういう考慮をする必要がなくなればまた別でありますが、こういう事態が続く限りはやはりこの吉田書簡のように、日本としては中国の共産政権とおつき合いは困難である。こういう事態がずつと続くものとわれわれは考えております。
  89. 北澤直吉

    ○北澤委員 今回の日華條約の締結につきましては、いろいろの反響があると思うのでありますが、私が特にこの際大臣にお伺いしたいことは、御承知のように、日本と東南アジアとの貿易は非常に大事である。ところが東南アジアにおきましては、中国の華僑が東南アジアの経済において非常に大きな役割を持つておるのでありますが、東南アジアの中国の華僑が、今回の日華條約の締結についてどういう動きをしておるか。これが日本の東南アジアの貿易に相当大きな影響があるだろうと思うのでありますが、今回の日華條約の締結について、東南アジアの華僑の態度はどういうふうになつておりますか、この点を一つ伺つておきます。
  90. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私どももこの点は調査というほどではありませんけれども、いろいろ華僑の反響等がわかる限りにおきましては、調べておつたのでありますが、非常に漠然たる言いまわしでありますけれども、今われわれの持つております材料によりますれば、遺憾ながら華僑が全面的にこれを支持しておるというわけには行きません。大体ごく常識的な言いまわしでありますが、華僑の中の三分の一程度は中共政権を支援しておるし、他の三分の一程度は台湾の中華民国政府を支援しておる。残りの三分の一程度は中立といいますか、どちらでも、そういうものに関心がない、こういうような状況にあるようであります。従いましてこの條約に対する反響としては、やはり三種類の色わけがそれぞれ反映をいたしておるということで、つまり三分の一は反対、三分の一は賛成、三分の一はそれらに別に関係なく中立的に、ただ商売なら商売をやる、こういうつもりでおるようであります。
  91. 北澤直吉

    ○北澤委員 東南アジアとの貿易あるいは中国との貿易というような関係で、香港が非常に重要な地域にあるのであります。そこで私はそういうふうな状態を考えて、なるべくすみやかに香港に日本の総領事館でも置いて、日本の中国あるいは東南アジアに対する政策を進める上になるべく役立たしたらどうか、こう思うのでありますが、香港に総領事館を置く問題については、一体どういうふうになつておりますか。
  92. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もさよう考えておりまして、これは香港ばかりじやありませんが、香港、シンガポール等の重要な地域につきましては、できるだけすみやかに先方話合いを進めて総領事館を置きたい、またその他の地域にはできれば大使館なり公使館を置きたい、こう思つて今準備を進めております。
  93. 北澤直吉

    ○北澤委員 この委員会におけるだんだんの論議を見ましても、日本と中共との貿易は期待できない。政府におかれましても、中共に対する貿易は緩和しない、こういうふうに大臣は言われるのでありますが、そうしますと、結局日本の将来の経済自立達成のためには、中共貿易に期待しない。そのほかの面において日本経済の自立を達成すべきだこういうふうになろのであります。ところが政府が中共を除いた部面の日本経済問題にはつきりした政策を示さないために、どうも国内におきましてはソ連圏との貿易、あるいは中共貿易というものについて、非常なあこがれを持つておるのでありますが、私は政府が中共貿易はそう期待できない、こう言うのならば、そのほかの部面において日本経済自立のできるような政策をはつきり示されて、国民に対して方向を示すようにしてもちいたいと思うのでありますが、この点について大臣のはつきりした御所見を伺つて、私の質問を終ります。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もそう考えておりまして、ただいま通産省、安本等とも協議いたしまして、できるだけそういう点を明確にいたしたい。現に話をいたしつつあるようなわけであります。
  95. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 北澤さんは非常に範囲の大きな問題についてお尋ねになりましたが、私は小さい範囲で條約の解釈に関するものに限定いたしまして、若干お尋ねしてみたいと思います。この日華條約はサンフランシスコ平和條約に示された諸原則に従つて締結されておりまして、個々の條文もサンフランシスコ條約の條文中の当該事項を取扱つた條項にならつて作成されてありますので、さきにサンフランシスコ條約の審謹に当りましたわれわれといたしましては、本條約の個々の條文につきましては、賛否は別といたしまして、特に研究を要するというようなものは比較的少いのであります。具体的に申しますれば、第一條から第九條まで、それから第十二條等は今あらためて研究を要するような題目ではありません。第十三條及び第十四條は、これも議論しなければならぬというほどの條文ではないと思います。ただ第十條で取扱つております国籍問題が、サンフランシスコ條約には全然規定がなかつたと思います。これが新しい問題といえば新しい問題であると思います。そこで問題は、むしろ本文の中よりも議事録あるいは交換公文の中に含まれておる事項にあると私は思います。もつと根本的には、このような條約を締結することの政治的、経済的意義ということにあると思うのでありますけれども、政治論は私はきようはいたしません。そこでサンフランシスコ條約と共通性を持つような問題は研究題目にしないで、特にこの條約の特質と申しますか、特異点と申しますか、特に異なつた特徴として現われておると思われる問題につきまして、質問をしてみたいと思います。それは今申しましたように、本文の中よりかむしろ交換公文とか議事録の中にあるのであります。  私が第一にお尋ねしてみたいと思いますのは、この條約の條項の適用範囲の問題であります。本條約は吉田首相のダレス氏に対する書簡から出発したものと考えられておりますが、その書簡の中において私どもの注意を特に引きましたものは、この條約の條項の適用の範囲に関する問題であります。そしてそのことが交換公文第一号にも示されておるのであります。このようなことはサンフランシスコ條約にはありません。たとえば日本との條約の相手国になつておりますアメリカが、この條約の條項はアメリカの支配しておる領域に適用するんなどということは書いてないのであります。そんなことは書く必要がないからであります。イギリスについてもフランスについても同様であります。しかるに何ゆえに日華條約についてのみ、交換公文によりまして、本條約の適用区域の明示があるか、私はそこに何かサンフランシスコ條約に比して、この條約に特別な性質があるからこのようなことになつておるのだ、こう考えるのであります。そこでわかり切つたようなことでありますけれども、一応念のためにお尋ねしたいと思いますのは、吉田書簡及び交換公文の第一号にあります「中華民国政府の支配下に現にあり、」というのは、中国本土ではないと思うがどうか。それからついでにそのあとに書いてあります「今後入るすべての領域」というのは、中国本土のことを予想しておると思いますが、どうでありますか。なぜ私がこのような質問をするかというと、もし中華民国政府が中国本土に所在しておりまして、中国本土を事実上支配しておる政府と客観的にも見られるようなことでありますならば、サンフランシスコ條約の條項の場合と同様に、條約で適用の区域を明示するという必要はないのであります。ところが中華民国政府と中国本土との関係が、普通の場合における国家とその代表者たる政府というような関係にないから、このような特異な條約條項適用地域の表示がなされたのではないかと私は思います。中国という国家が蒋介石政府の支配しておる国家であり、その領土が中国本土であり、この中国本土に適用せられる條約をつくるというのであるならば、この條約が中国本土に適用せられるというようなことを特に書く必要はない。特に現に支配しておる地域に適用があるということを書いたのは、台湾及び澎湖島がまだ国民政府国際法上の領土となつていないから、しかも事実上それを現実に支配しておるのであるから、特にこういう文句を入れたのだろう、こういうようにちよつと考えられるのであります。しかし、それならば「今後入るすべての領域に適用がある」ということを書いてあるのが無意味であると思われます。この表示がもし将来、一般的意味での領土の拡張があり、條約が、当然この新領域にも及ぶというようなことを意味するのでありますならば、これを表示する必要はないのであります。それは、書いてなくても当然そうなるからであります。そこで結局この條項適用領域の表示は、私が先ほど申しましたように、第一には、現に支配下にある領域というのは中国本土は含まない、第二に、将来入るべき地域というのは、それは中国本土を予想しておるのである、こう解釈するよりほかにないと思う。これはわかり切つたことのように思いますけれども、念のためにまずこれをお聞きしておきます。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは日本としては、今は台湾と澎湖島であつて、将来は中国だというようにいつておるのではないのでありまして、こういう文書におきましては、かりに将来どうなるかわからない状況にありますときに、現在支配しておるところだけに適用があるというふうに書くのがすでにおかしいのであります。従つて現在支配しておるところまたは今後入るべき領域というふうに書いてある。現在支配しておる領域が実際上台湾、澎湖島であればそれに適用がありますけれども、将来のことについてはわからないのでありまして、これをすぐ本土だというように言うことも正確でないのであります。要するに将来入つて来る地域があればそれにも適用がある、これをもつとわかりよくいえば、いつでも国民政府の支属下にある領域には適用があるのだ、こうお考えになればけつこうだと思います。
  98. 黒田寿男

    ○黒田委員 将来のことにつきましてもし外務大臣の御説のようなことを言うとするなら、私は先ほども申し上げましたが、そんなことは何もあらためて書いておく必要はない。それはナンセンスです。あまりにも常識に欠けたことであります。何日も論議を費して書き上げたというこの公文書の表示として、私どもの常識としてはこれをそういうふうには解釈できません。結局現在支配下にあるという地域には、少くとも中国本土は含まれない、将来含める領域になるかもわからないというのは中国本土のことをいうておるのだ、私どもは常識上こう解釈しなければならぬと思います。しかし、この問題についてはこの程度にしておきます。  その次に、これもわかり切つたことであると思いますけれどもお尋ねします。中華民国政府が現に支配しておる領域とは書いてありますけれども、それがどこであるかということは、本文にも議事録にも交換公文にもどこにも書いてないのであります。それを具体的にいえば、台湾、澎湖島のことであると思うがどうであるか、このことをひとつお尋ねしておきます。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 要するにこの條約を実際に適用した場合に、中華民国政府の意向によつてこのいろいろの條項が適用される地域は、全部支配されておるもの、こう考えてさしつかえないと思います。われわれの方では、そういう適用区域はその時その都度、中華民国政府の方でこれこれが適用される地域だというふうに示されると思つてもります。
  100. 黒田寿男

    ○黒田委員 現在は台湾及び澎湖島であるというように意味されておるのだと思いますが、いかがでしよう。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 台湾、澎湖島はむろん現在支配しておるのでありますが、その他にもあるかもしれませんのでありまして、現にいろいろ争つておる地域があるように私は聞いております。が、それらに適用があるかどうかは、中華民国政府において決定するところであります。
  102. 黒田寿男

    ○黒田委員 そこでついでに私は聞いておきたいと思うことがあります。それはやはり交換公文の第一号に関することでありますが、「又は」という字句がある。現に支配している地域、それから将来支配の中に入る地域、それをつなぐ言葉として「又は」という言葉があります。これについて「同意された議事録」の中には、私どもから見ると、ちよつとおかしいと思われるようなことが書いてあるのです。「同意された議事録」の一に、「本日交換された書簡の「又は今後入る」という表現は、「及び今後入る」という意味にとることができると了解する。その通りであるか。」という中国代表の質問に対して、日本の代表は「然り、その通りである。」こういうように答えておるのであります。しかし私はこのようなことがいやしくも国家と国家との間の契約において言えることかと非常にふしぎに思つておるのであります。「及び」ということと「又は」ということとは非常に意味が違います。私ども中学校で文法を習うたときでも、「及び」というのは連結の役目を果す言葉でおると教えられました。これは笑い事ではないと思う。それから「又は」というのは選択——二者のうち一を選ぶ意味を有するのであります。私どもはこう解釈する。だから時計と指輪とをやろうという場合と、酒がほしいかそうでなければビールがほしいかという場合とは明らかに違う。後者の場合はどつちか一つを選んだら他のものは捨てることになる。それに反してアンドの場合は両方を含むということになる。これは私は中学校で英文法を習うときに習うた。それから高等学校で多少私ども論理学を習うたが、そのときにやはりこのことを習うたのであります。すなわち甲は乙であるかまたは丙であるという場合において、乙であれば丙ではないのです。丙であれば乙ではない、また乙でなければ丙であり、丙でなければ乙である、これはわかり切つた論理であります。そこで今支配のものにあろ領域及び今後入る領域というのならば、これは台湾、澎湖島及び将来あるいは本土というものを予期しておるとしますれば、そういうものが中華民国の、いわばこの條約の適用範囲の領域であるというようになりますし、「又は」ということになると、台湾及び澎湖島に適用するのか、そうでなければ今後支配に入る地域に適用するのか、どちらか一つに適用すれば他の方には適用しないという二者択一の関係が現われておると思います。中華民国政府として「及び」としてくれということを欲するのは私はあたりまえだと思います。中華民国国民政府としては当然それを主張したでありましよう。私にもその気持はわかる。それを日本としておくまで「及び」としないで、「又は」とすることを主張されましたので、この問題の解決につきまして非常に時間が費されたのであります。ところが結局交換公文には「又は」と書いてあつて、「同意された議事録」の中には「又は」という表現は「及び」という表現と同じだ、こういうように害いてある。これは何のことやら私にはさつぱりわからぬ。もしいいかげんにだまくらかすとか、いいかげんに気休めの言葉をいうというのならば別でありますが、本心で「又は」というのではなくて、「及び」ということであると、日本代表が答えておるとするならば、なぜ交換公文にはつきりと「及び」と書かなかつたか、私はそう思います。これは決して単なる文法上とか論理上の問題ではなくて、政治的に非常に大きな意味を持つておる問題と考えます。どつちがほんとうであるか、元来議事録というものは、単に條約を解釈するものにすぎませんから、万一両者の相違について争いが起つた場合には、本文に書いてある通りに私どもは解釈するよりほかないと思います。だからこの点はやはり「又は」と解釈すべきものであつて、いくら議事録に気休めといいますか、何といいますか、不合理に「又は」と「及び」が同じだと書いてありましても、こんなものは権威のないことと思うが、一体政府はどういうようにお考えになつておるのでありますか。これは私どもまじめにこの條約を解釈しようと思います立場からこの疑問が起るのであります。大急ぎの口調で申しましたが、これは後に質問したいと思いますことにも関係がありますので、外務大臣のお答えを願いたいと思います。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今非常に文法や論理学その他を引用されて長くお話がありましたが、私の知つております英語は、黒田君の英語と多少違うのであります。オアという場合は、二者択一の場合と、それからエンド・オアといつて、まん中に棒を引いてやる意味の二つがあると私は考えております。そうしてこれはエンド・オアの意味であるということは当然であります。ただ吉田書簡の中にオアという字が書いてありましたから、そのまま條文の中には使つたのであります。ところがこれを中国語に訳しますと、今黒田君の言われましたような二者択一の意味しかないということであります。それでありますと、将来かりに中華民国政府がどこかの他の領域を支配したときには、台湾、澎湖島はなくなつてしまうのだ、こういうふうにばかげた解釈でありますが文章上とられては意味がないので、そこで念のためアグリード・ミニツツの中で、「又は」というのは「及び」という意味と同じである、要するに結論としては、中華民国政府の支配下にある領域には、すべて適用があるのだということを確認しておるのでありまして、今黒田君の言われましたように、議事録なんかは何でもないのだということは、條約を取扱う上からいうと、全然かような解釈は認められておらないと私は考えております。すべてアグリード・ミニッツにありますのは、主として條約解釈でありますが、條約本文の解釈がはつきりしない場合には、アグリード・ミニッツで問題をはつきりしておく。従つて交換公文なり同意された議事録は、本文と一括して考えらるべきものであると私はこう考えております。
  104. 黒田寿男

    ○黒田委員 私もオアはまれな場合にアンドという意味に通ずることがないことはないというふうに教わつております。これは文法書にそういうことが書いてある。けれどもそれは極めてまれな場合であります。一般の日本語では、「又は」というのと「及び」というのは、はつきり区別しなければならぬ。そこで岡崎外務大臣のおつしやいますように、同意された議事録の表現が、双方の合意された表現の仕方であるといわれるならば、何を好んでわざわざ交換公文には「又は」と書いて、そうして議事録の中に「又は」ということは「及び」であるというように弁解する必要があるのでありましようか。はつきり交換公文の中に「及び」と書いておけばよろしい。それをしないでわざわざこういう煩雑なことをされておりますから私どもに疑問が起る。これは私どもに疑問が起るのがあたりまえだと思います。念のために尋ねますが、本文の中の「又は」というのは、実は「及び」という表現にした方が適当なものであるが、たまたま吉田書簡で「又は」という言葉を使うたから、単にそれを引継いで使用しておるにすぎない、真意は「又は」ということではなくて、日本語の正確な表現としてむしろ「及び」である、こういうふうに考えてさしつかえございませんか。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 おそらく黒田君は、もし吉田書簡にオアと書いてあつて、條約の本文にエンドと直してあるならば、吉田書簡にオアと書いてあるのを、なぜエンドと直したかと非常に追究されると思います。私は吉田書簡のオアというのは、英語におきましては当然のことであり、また日本語に書きましても、これは決して常識をはずした解釈ではないと信じておりますけれども、中国側でもつて中国語に直したときに、オアの意味は二者択一にはつきりなつて、ほかの意味にならないというから、それならばアグリード・ミニツツにその意味をはつきりさしておこう。日本語や英語は一向さしつかえないと思うが、ということでやつたのであつて、要するに吉田書簡の言葉はそのまま使つて一向さしつかえないのでありますが、中国語の特殊性から見まして、ここに念のため同意された議事録を残しておる、これだけであります。
  106. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君、質疑を打切つてください。あなたの時間二十分はたつております。
  107. 黒田寿男

    ○黒田委員 それではきようはこれでやめます。
  108. 仲内憲治

    仲内委員長 中曽根君一問だけ…。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今の外務大臣の御答弁は非常に重要な御答弁でありますので、一点だけお尋ねいたします。それはアンドとオアの問題でございますが、外務大臣の御答弁によりますと、台湾、膨湖島並びに中国本土というふうに牽連しておるように考えられる。ところが平和條約第二條によれば、日本は台湾及び膨湖島に対するすべての権利、権原、請求権を放棄するということだけきめたのであつて、中国にこれを返還するとはきめていない。しかも第二十六條によれば、この條約の署名国でないものと、この條約に定めると同一または実質的に同一の條件で、つまわこのサンフランシスコ條約と同一の條件で二国間の條約をきめるということになつております。そうすると、台湾でやつたことは同一の條件を逸脱していると考えなければならぬ。そうすると、この平和條約に違反するような憂いがあるのでありますが、この点はいかがでありましよう。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 中曽根君はきよう出て来られたので、先ほど数回にわたつてこの問題は繰返して説明しておりますから、速記録をひとつごらん願いたいと思います。
  111. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、吉田書簡の中にある、中ソ友好同盟が、日本と敵対関係にあるという問題に関して、質疑をしたいと思うのであります。  御承知の通り日本国民が、中ソとの間の友好関係を望んでおることは、これは輿論調査によつても明らかなのであります。ところが最近、先週の土曜日でありますが、岡崎外務大臣はソ連の代表部に、すでにソ連代表部が日本に存在する法律的な理由がないという通牒を直接お渡しになつたということを、われわれ新聞で見たのであります。そこでこの日ソの関係に関しまして、岡崎外務大臣と西村條約局長との間にいささか見解の相違がありますので、この際この問題をはつきりさしておきたいと思うのであります。私の方で速記録をいろいろと調査いたしましたところ、今までの岡崎外務大臣の答弁を総合しますと、第一に、多数国が対日平和條約に調印しておる。第二に、ソ連もサンフランシスコ会議に参加したのだから、降伏文書及びポツダム宣言による日本の降伏義務は履行されたものとみなす。従つて、降伏文書及びポツダム宣言はすでに無効である。ソ連との間には降伏関係ではなく、休戦関係が残るのみであるという見解のようであります。そこでこの見解について私が岡崎外務大臣お尋ねしたいのは、大臣の言う降伏文書、ポツダム宣言によつて規律されない休戦関係というのは一体どういうことをさすのか。日本の国は無條件降伏によつて戦闘行為が中止された、戦闘行為のない戦争状態にある。そして日本とソ連との間は降伏関係にあるということを、西村條約局長は従来衆議院で答弁しておつたのであります。ところがこれを否定するということになると思う。ソ連の側からいえば、あるいは日本の挑戦にもひとしい行為であるということに解釈されると思うのであります。従つて、この岡崎外務大臣の衆参両院における答弁の、降伏文書、ポツダム宣言によつて規律されない休戦関係というのはどういう関係をさすのか。従来西村條約局長の答弁しておつた降伏関係にある、しかしそれは戦闘状態にはないというのとどういうように相違するのか、答弁を願いたいと思うのであります。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 林君はいつソ連の公式解釈を知られたのか私は知りませんが、私はソ連がどういう解釈をしているか公式の意見は聞いておりません。が要するに、降伏関係におりました状況からつまり降伏文書が調印されたのであつて、その降伏文書の内容について一々見ますと、日本はすべてこれは実行済みである。従つて平和條約ができたのであります。そこで平和條約ができましたあとは、降伏文書の関係のうちで、実行されたものは実行されたのでありますから済んでしまつて、済まないものだけが残つておる。済まなものは何であるかといつて調べてみますと、一つは軍事行動をしないといういわゆる休戦関係の問題、それからもう一つ、これは降伏文書ではありませんが、ポツダム宣言等にありますうちで実行されていないのは、日本の捕虜等をすみやかに返して生業を営ませる。こういう二つの問題になると考えております。従つて、それらの問題は残るけれども、それ以外のものは実行してしまつてもう残りようがない、こういう意味であります。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、降伏文書とポツダム宣言はまだ全然効力を失つたというのではなくして、その中の日本側が要求したいという條件に関しては、まだ降伏文書とポツダム宣言が、日ソ両国間をコントロールする條件として残つておるという解釈なのですか。
  115. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本が要求したいとか要求しないとかいう問題ではなくして、実行のまだ済んでおらないものが残つておる、実行してしまつたものは残るわけがない、済んでしまつでおる。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 実行した、しないというのは日本側がこれを判断するのではなく、連合国並びに戦勝国側が判断するのであつて、無條件降伏をした日本側が、これはすでに済んでいるのだ、実行は終了したということを押しつけるわけには私は行かないと思うのであります。そこでその問題につきまして西村條約局長も、日本側の解釈としては降伏文書並びにポ宣言についではすでに効力を失つたものと解釈する、しかしこれをソ連側に強制することはできないと思う、というのが従来の衆議院における日ソ関係に対する答弁であつたと思うのであります。ところが岡崎外務大臣はこれを無視して、日本側の一方的な解釈、ポ宣言と降伏文書のうち、これとこれとはすでに履行が済んで御破算のものでありますということを、これをソ連側に押しつける根拠はどこにありましようか。こういう降伏文書、ポ宣言の効力問題については、すべて四大国一致の原則のもとで規制さるべきものであつて、降伏国たる日本が一方的にソ連に対してこういうことを通告する権限はないと思いますが、その根拠は一体どこにあると解釈しておりますか。
  117. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはサンフランシスコに集まりました五十一箇国——日本を除きました五十一箇国は、日本との平和條約を締結しようというつもりで来たのであります。そこで平和條約を締結するというのは、ポツダム宣言の末項にありますように、日本がこれこれのポツダム宣言にいう目的をすべて達して、そうして民主的な責任ある政府ができたときに連合軍は撤退する、すなわち平和條約ができる、こういうことになつておるので、この五十一箇国は全部、そういうことができたからいよいよ平和條約をつくろうといつてサンフランシスコに集まつた、ところが内容について異見があつて、そのうちの三箇国は調印をしなかつた、しかし四十八箇国は調印をした、こういう歴然たる事実があるのでありまして、これを四十八箇国の意向を無視して、まだ日本はポツダム宣言の條項は実行してないのだというのは、私は強弁だろうと思います。ただソ連がこういう解釈を受付けない場合に押しつける方法がないのは、これは西村條約局長の言つた通りであります。いくらわれわれが正当だと思いましても、これを無理やりに押しつけるということは、これはできないのはあたりまえであります。
  118. 仲内憲治

    仲内委員長 林君に申し上げますが、御質問はきようの議題と直接関係もないようですし、大臣も時間が限られて、あともう三人あるのですから、また次の機会に……。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 あと二間だけ簡単に。  そうしますと、その五十何箇国が講和條約を締結したのだから、これは当然ソビエトもこの関係を認むべきだということこそ、私は非常に強弁だと思います。このことは明らかに四大国一致の原則を無視されておる。サンフランシスコ会議では、ポツダム宣言が十分に満たされていないという点から、ソ連がこれを拒否した場合には、ソ連と日本関係はサンフンシスコの條約によつて規制されないものだというふうに解釈するのが正当だろうと思います。むしろ私は岡崎外務大臣の方が強弁だと思います。  そこでこの通告をソ連の代表部に手渡したのでありますが、この手渡したことに対しては岡崎外務大臣としては、このソ連の代表部をいかなる資格のあるものとして通告を渡されたのでありますか。すでにあなたの答弁によりますと、対日理事会においてソ連の代表部は解消されたということを連合国最高司令官から通知を受けており、これはすでに存在の理由がないと言われておつたのでありますが、これに対して直接通告をされたというのは、ソ連の代表部がどういう資格があるものと認定されてこれを通告されたのでありますか。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは日本政府もあるいは四十八箇国もしくは五十一箇国、ソ連も含む国々が、サンフランシスコに集まつて平和條約をつくろうといつたのは、ポ宣言の、いわゆる各種の責任條項が果されたと考えたから、みな集まつて平和條約に調印しようとしたのであります。これを日本人である林君が、まだ日本責任を果していないのだという議論をされることがどうもおかしい気がいたします。が、それは別といたしまして、ソ連代表部に対しまして、資格がないということは、もうたびたび申している通り。そこでここに代表部の人がおるのでありますから、あなたは資格がないのですよという事実を通告しただけであります。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは資格のない代表部に資格がないということを通告したということなのですか、では何も権限のないものに渡したのだから、それは無効のものと解釈していいのですか、何も代表部としての資格がないということであつたら、それはソ連に対する通告にならないと思います。その点が一つ。  それからソ連側がこの日本側の通告をもちろん認めることは私はないと思う。従来の外交関係からしてこれは常識的に考えられると思います。従つてソ連側から何らの回答のない場合、日本側としては日本側の解釈をあくまで強行するつもりなのかどうか、あるいは中ソ両国に対して友好的な関係を打開し、ひいては全面講和の方向へ新しい努力を向けられる意思があるのかどうか、この点を念のために聞いておきたい。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 では例をもつてしますと、たとえばこの国会の中へ記章のない人が入つて来た。ところが、この記章のない者は国会に入る権能がない、資格はない。資格はないけれども、衛視はやはり、お前は資格がないのですよと言つて出すわけなのであります。といつて、何も言うことができないで、国会の中を自由に歩かれてはお互いに困るのです。資格のない者が国内におるのだから、あなたは資格がないのですよということを言うことは当然なことであります。またソ連が返事をするかしないか、これはわかりません。それは向うの考えでありましよう。われわれの方では、ただわれわれの解釈が正しいと思つておりますから、その解釈に従つて将来行動する、こういうわけであります。
  123. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 吉田首相はたびたび台湾政府ということを言われましたが、実際ここへ提出されましたのはトリーテイ・オブ・ピース・ビツウィーン・ジヤパン・アンド・ザ・リパブリツク・オブ・チヤイナとなつております。そこで国民がはつきり知りたいのは、台湾政府を中国の正統政府として認めていいか、それとも吉田首相がかつて言われたように、台湾政府と言われたのは一定交戦団体として限定承認するという含みで締結されたのか、そういう点を知りたがつておると思います。中国本土のことに対しまして、先ほど外務大臣は黒田委員に、いつでも国民政府の支配下にあるものと考えていいけれども、将来のことは領土の問題でわからないというようなお答えをしていらつしやいました。そうすると現在は、吉田首相がかつて言われたように、台湾政府と條約を締結したと見ていいのか、あるいは最初そういう気持で吉田首相が臨んだのに、交渉の結果、中国政府の方に本土まで含むということを言われて、事の重大なのに驚いたともとれますが、この辺のことを一応聞かせていただきたいと思います。
  125. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 台湾政府というのは要するにフィリピン政府とかあるいはワシントン政府とかいうのと同じことで、通称であります。正式の名前は中華民国政府。それから交戦団体承認というのは、国際法上一定の型がありまして、これははつきりしておるのであります。限定承認という言葉はよく使われますが、私は国際法上の正当な言葉でないと思います。  そこで中華民国政府との間の條約というものは、中華民国側はむろん、自分は全般の中国を代表しておる政府で、中国本土に対しても主権を持つておるという建前をとつております。従つて中国を代表して、国連にも代表を参加させておる、こういう建前をとつておりますが、現実の事態としては。中共政府がありまして、中国の大部分を支配しているのは争えない事実でありますから、そこであとう限り中華民国政府との間に友好関係をつくり出すべく、この平和條約をつくつたのでありまして、ただその現案の事態を無視することはできませんから、現実の事態をはつきりするために適用範囲を特別に設けたのであります。元来、普通の場合には一つの国に一つ政府があるというのが当然のことでありますから、それと事態がかわりますと、そのかわつたに従いまして、條約の点もちよつと普通の観念で律せられないことがありますけれども、これは現実の事態上やむを得ないことと思います。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもから見ますと、中華民国政府の考えている点と日本政府の考えている点との間は、食い違いがあるように思いますけれども、そういう点を中華民国政府は了承しているのかどうか承りたい。
  127. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは国々によりまして立場はおのずから違いますから、こういう問題については、お互いに相手の立場をよく理解しまして、誤解ないようにすれば、その間に適当な調節はできるのであります。この條約はその間を調節したものであります。中華民国政府の方でもこの條約のできたことについては、非常に喜んであると了承をしております。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 次にもう一点承りたいことは、岡崎外務大臣は先ごろ、中共といつても、日本人の抑留者の問題とか、あるいは中ソ條約が日本を仮想敵国としている点だとか、漁船漁夫の抑留問題等を解決してくれれば、善隣友好の建前から、イデオロギーにとらわれることなく、国交調整をはかるということを言われました。しかしかりに中華人民共和国政府と国交調整をするにいたしましても、人民共和国政府に対して、吉田首相はダレス氏にあてた書簡において、中ソ友好條約を攻撃しておりますが、その同じ論法で、逆に中共側から日米安全保障條約あるいは日本の再軍備方向に向いつつあることを非難されたときに、これに対してどういうふうに答えることができるかを伺いたいと思います。率直に申しまして、中ソ友好條約というものも、そうしてまた日米安全保障條約も、極東の不安を増大しておる條約としての性格を持ち、日本と中国が真に善隣友好関係を結ぼうとするならば、中華人民共和国政府は中ソ友好同盟條約を破棄し、日本は日米安全保障條約を清算すべきであると思いますが、極東の平和をもたらすために、こういうような抜本的な外交構想というようなものを、岡崎外務大臣はお持ちになつていらつしやらないかどうかを伺います。
  129. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは理想としては非常にけつこうでありまして、私も賛成であります。しかし現実の事態としては、どうも中ソ同盟條約を破棄するという意向は一度も聞いておりません。もつとも日米安全保障條約には、世界にはまだ無責任な軍国主義があるから、それでこういうものを結ばざるを得ないのだということをはつきりいたしておりまして、無責任な軍国主義が跡を絶ちますれば、こういうものは不必要になるだろうと思います。そういう希望は非常によいのでございますが、現実の事態はどうもそうではないようであります。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 理想がそうであるならば、それに向つて努力をして行かなければならないと思いますが、そういうような努力を今後払わられるかどうかということが一点と、もう一点、時間がありませんから一緒に伺いたいことは、吉田ダレス書簡におきまして、首相は、「日本政府は、究極において、日本の隣邦である中国との間に全国的な政治的平和及び通商関係を樹立することを希望するものであります」。と述べております。この中国とはいわゆる中国本土をも含めた全体であると思いますが、この日華條約で一体全面的な政治的平和及び通商関係を樹立するとは、だれも考えられないと思いますけれども、書簡でこう述べられた点と日華條約との関係について伺いたいと思います。
  131. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私も理想はけつこうでありますから、無責任な軍国主義が世界からなくなるように今後とも努力するつもりでございます。なお吉田書簡にある中国と申しますのは、要するに中国国民との間には、日本はずつと昔から非常な友好関係にありまして、文化の交流等も現にずつと行われて来ておるのでありますから、すみやかに中国全体と全面的な平和関係に入りたいという希望は持つておるのでございます。しかしながら今申し上げたように、現実の事態は、中共政府が各種の行動をもつて日本をして中共とつき合いができないようなはめに陥らしているのでありますから、これが直らない間はおつき合いはとうてい困難である、こういうことになります。
  132. 仲内憲治

  133. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は時間の関係から、委員長要請関係から、委員長要請に従いまして、岡崎外務大臣に対する質問は一点だけにいたしておきます。あと政府委員から御答弁を願います。吉田首相がダレス大使にあてた書簡の中で、吉田首相は、「事実、中国の共産政権は、日本の憲法制度及び現在の政府を、強力をもつて転覆せんとの日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由が多分にあります。」と述べております。これに関連いたしまして、私は岡崎外務大臣見解を明らかにいたしておきたいと思うのでありますが、この吉田首相が申し述べられたことに対しましては、私も同感であります。これに関連いたしまして、さらにもう一党承つておきたいことは、それではソ連のスターリン政権というものが中国の共産党政権と同様に、日本の憲法制度及び現在の政府を強力をもつて転覆せんとする日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由をたくさんわれわれは持つているわけでありますが、外務大臣はどのようにお考えになつているかを承つておきたい。それは今日共産主義というものの本質から考えましても、その他現実に行われている各種の事実から考えましても、ソ連政府日本共産党を支援しつつあるということ——これと無関係であるという根拠と理論は、どこからも出て来ないと考えます。今日共産主義並びに共産党というものが、国際的な関連のもとに動いていることは世人周知のところであります。しかりとするならば、ソ連政府日本共産党との間に関係なしとは、何人も言うことはできません。従つてその見地から考えますれば、ソ連政権が日本の共産党をバツクしつつある、支援しつつあるということは、きわめて明らかなところであろうと考えますが、外務大臣はどのようにお考えになつているかという一党だけを承つておきたいと思います。
  134. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 たとえば対日理事会におけるソ連代表の従来の発言とか、あるいは国際連合等におきますソ連代表の発言を見ますと、ソ連政府日本共産党に対して多大の同情を持つているようであります。しかしながら私としては、日本の合法的な政府を打倒すために、ソ連政府日本共産党を支援しているという的確なる証拠は、ただいまのところ持つておりません。しかしながら各種の発言等から見まして、あるいはいわゆるコミンフオルムの極東における活動等にかんがみまして、また最近ときどき聞える自由放送とか称するもの、これははつきりわかりませんが、電波の関係から見ますと、ウラジオ方面から来ておるようでありますが、これらの放送は北京からの放送と同様に、種々日本の国内の憲法上の制度を破壊することを支援するがごとき言動をいたしております。しかしながらこれも、放送が一体どこで行われているか、またいかなる機関で行われているかということについては、われわれには的確なる資料がございませんので、正確なる資料がございませんので、正確には申し上げることはできません。要するに証拠はないけれども、多分にそういう感じは受けている、こう私は申し得ると思います。
  135. 仲内憲治

  136. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと政府お尋ねしておきたいのですが富士山麓の演習地のことでございます。実は山梨県の天野知事が見えて、地元でたいへん問題になつているから、ぜひ当局の権威ある答弁を聞きたいとのことでございます。富士山麓の演習地は、元の陸軍の演習地が現在使われているのでございますが、その後PDが出て接収が広がつているのでございます。しかし現実には、広げられた接収地では、演習もなければ使われておらないということでございます。ところが最近これをもつと拡張して、本栖湖の方に演習地を持ちたいという計画があるのではないかということで、地元の方がたいへん心配しているわけです。現在でも、もうこれを演習地に利用されますと、たまなんかが流れて来たり、危険でしようがない、ですからすでに接収がされているところもやめてもらいたい、今現実に使われている元の陸軍の演習場だけに限定してやつてもらいたいという熱意でございます。そこでこの問題はどういうふうに両国の間で話合いが進められておりますか、その現状と、これからの見通しについて、権威ある答弁をしておいていただきたいと思う。
  137. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 演習地とかこういういろいろの施設、区域等につきましては、御案内のごとく合同委員会でいろいろ検討されておるわけでありまして合同委員会には、向うからもいろいろほしいところの希望が出る。こちらからもそれに対していろいろ意見あるいは要望を出して、そこで論議されるわけでありますが、富士山麓の問題につきましては、ただいまのところではまだそういう正式の向う希望というか、要望のようなものは、何ら出ておりません。わが方といたしましても、ああいう地帯がむやみに接収されるなどということにつきましては、もちろん反対といいますか、簡単に論議される問題ではないと思つております。
  138. 並木芳雄

    並木委員 それならばけつこうなわけです。そうすると、地元で今騒いでおるということは根拠がないということでございますか。もしそういうことを憂慮されておるとすれば、根拠がないということになりますか。
  139. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、何ら合同委員会における正式の話題になつておるものではございません。ただもしそういうことがあるとすれば、何か一部の人がこういうところはいいなとかどうとかいうようなことを言つたことがもとになつて、いろいろ話題が話題を生んで行つたのではないか、これは私の推測でありますけれども、合同委員会の正式の問題には何らなつておらぬということは、先ほどから申し上げた通りであります。
  140. 並木芳雄

    並木委員 それではもしそういう話が出て参りましたならば、政府としては地元の県庁なり県議会なり住民なりの意思を十分くんで、本件を処理して行かれたいと思いますけれども、そのようにしていただけるかどうか。
  141. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは当初から申し述べておりますように、施設、区域の決定にあたりましては、先方駐留目的というものから論議して行くのが一つ。それからわが方といたしましては、日本経済、生業、ことに農耕地その他民生にできるだけ影響を与えないようにこういう立場で行つておるのでありまして、地方民なりあるいは県会なり、県の要望等があれば十分参酌して、かりに問題となりました場合でも十分参酌して折衝される、こういうふうに考えております。
  142. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は外務大臣に時間の関係しただし得なかつた点につきまして、外務当局、またできますれば具体的な点は入国管理庁の方々に承つておきたいと思います。今日まで東京にありましたソ連代表部が、講和條約の発効と同時にその存在の法的根拠を失つた従つて今後はこれらの代表部のソ連人に対して、従来の外交特権というものを与えるものではないという政府見解は、再三表明されたところであります。  そこで私は承りたいわけでありますが、そういたしますと、この前の岡崎外務大臣の答弁にもありましたように、すでに法的根拠は講和條約の発効と同時に失つたけれども、しかしながら外交礼譲の立場もあるから、しばらくの間余裕の期間を置いて、一定の期間が過ぎたならば一般の外国人並の取扱いをするという趣旨の答弁でございました。そういたしますと、今まで代表部におりましたソ連人というものの身分は、早晩一般外国人並の待遇を受けて、先般成立いたしました出入国管理令やあるいは外国人登録法の適用を受けるものであると考えます。そういたしますと、その登録の証明書を下付しなければなりません。必要な場合においては登録の証明書の呈示を求めることも、出入国管理令や外国人登録法等によつて規定されておるのであります。早晩は政府においてはソ連の官吏に対して、外国人登録法や出入国管理令を適用して登録証明書を下付する、一般外国人並の適用をするというふうなお考えをお持ちになつているものかどうかということをまず承つておきたいと思います。
  143. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ごの問題は、ただいま佐々木委員が大体原則的問題について言われた通りでありますが、要するに法律論だけからは割切れない国際慣例と申しますか、国際儀礼等からも考えて行かなければならぬ問題でありまして、ソ連代表部はわが国に対して派遣された外交機関ではないのでありますが、四月二十八日まではやはり一つの公的機関として存在しておつたものでございます。その後存在の理由とか、公約地位は失つてはおりますが、二十八日までは一つの公約機関として存在しておつたものであります。そこで国に駐在する外国の外交機関がその地位を失つたような場合、これは必ずしもただちに退去しなければならないというのではなく、退表に必要な相当の期間は滞在が許されるというのが一つ国際慣例でもあり、一つ国際礼譲でもあろうと思うのであります。そこで今言われましたような問題は、つまりソ連代表部構成員等に対する管理令であるとか登録法等の適用の問題につきましては、将来適当の時期にさらに考慮をして行きたい、こういう考え方で現在おるわけであります。
  144. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 将来適当な時期に考慮するということは適当な時期が来れば一般並の待遇をするという外務大臣の答弁であつたのでありまして、そのときにあらためて適用するかどうかということを考慮するというのでは、大分話がかわつて来たようでありますが、いかがでありますか。
  145. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 つまり登録法あろいは管理令等の適用の問題について考えるというわけでありまして、ただいま申し上げましたように、われわれが考えておる相当の期間が過ぎましたならば、当然そのときにこれが問題として上つて来る、こういうことになると思います。
  146. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 問題として上つて来るということは、当然その適用を受けるというふうにわれわれは考える。しからざれば一体いかなる根拠によつて日本に滞在することになるのか、その法的根拠を明らかにしておいてもらいたい。
  147. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 それはつまり在留が許可されるかどうかということは、そのときの問題でありますが、一般としてこれらの法律の適用をそのときに受けるということは当然なことであります。
  148. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 よく了承いたしました。それではこれに関連して承つておきたいと思いますが、ただいま日本に在留しておりますソ連国籍人の数はどれほどあるか、またそのうちで従来代表部に属しておつたソ連国籍を有する人々は何人くらいあるか、正確な数字がお持合せなければ、概略でもけつこうであるから承りたいと思います。
  149. 鈴木政勝

    ○鈴木(政)政府委員 現在日本に在留いたしておりますソ連人、これは大体二通りの種類と申しますか、二通りにわけられるのでございます。一つはただいまお話のソ連代表部に勤務すると申しますか、代表部の構成員である者と、それから第二の種類の者は占領時代に一般の外国人として総司令官の許可を受けて入つて来た者と、この二通りあるわけでございますつこれが現在何人おるかという点につきましては、第一のソ連代表部に勤務するという者は、今日まで日本政府が何ら関与いたしておりませんので、正確な数字はわかりかねます。次に第二の者は、これもただいま正確な数字は持ち合せておりませんが、もし御要望でしたら、また帰りまして正確な数字は追つてお手元に資料として差上げることにいたしますけれども、これはきわめて少数であるという程度のことしか、ただいま申し上げかねます。
  150. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先ほど岡崎外務大臣の答弁におきまして、ソ連政府日本の共産党を支援しつつあるという的確な証拠は持合せがないけれども、しかしながら日本共産党に同情を持ちこれを援助しつつあるように思われる節もあるという意味の答弁がございました。そういたしますと、この何箇月間か一定の期間が過ぎて、日本におりますかつての代表部の職員をも含めたすべてのソ連国籍人に対して、外国人登録法や出入国管理令が適用される段階なつたときにおきましては——将来のことを申しているわけでありますが、その場合におきましては、当然出入国管理令の規定の適用を受けめわけでありますが、管理令の第二十四條の在留の條件の中におきましては、たとえば「他の外国人が不法に本邦に入り、又は上陸することをあおり、そそのかし、又は助けた者」、あるいはまた「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入している者」、あるいは「左に掲げる政党その他の団体を結成し、若しくは加入し、又はこれと密接な関係を有する者」といたしまして、たとえば「公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党その他の団体」、具体的に申しますと、この政党や団体が何であるかということは、良識ある国民の知つておるところであります。かりにソ連の国籍を有する在留民が、これと密接な関係を持つておりますような場合におきましては、これは法律に相する違反の調査のため出頭を求めることもできますし、また取調べを行うこともできます。ないしは臨検、捜査及び押収を行うこともできます。さらにまた調書をつくる、それから収容、つまり逮捕、留置、審査等を日本の法律に従つて行うことができることになつております。従いまして今日の共産主義並びに世界の共産党の持つております性格から申しまして、これは国際的な関連性がないと考えられません。何人も良識ある人々は、今日の共産主義者どもが国際的な関連のもとに動いておることは認めておるところでございます。さうよな見地から考えますと、ソ連政府のかつての代表者であつた人々が、日本の暴力行為を行う団体関係のあることは当然と考えられるわけであります。従いまして、もしもそういう時期が参りましたときに、ソ連の国籍を有する人々が、日本の共産党あるいはまたそういう暴力団体関係があるということが明らかになつた場合におきましては、以上申し述べたような登録証の提出を求めるとか、出頭を求めるとか、あるいは書類を押収するとか、あるいは強制収容するとか、ないしは強制送還をする、こういうことができると思いますが、いかがなものでございましようか。
  151. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 どうも国際関係微妙なときにあたりまして、仮定の前提のもとでいろいろの議論にお答えするということはどうかと思いますので、一応ただいま申し上げたところで御了承願いたいと思います。
  152. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は入国管理庁の政府委員の方に伺いたいと思います。それではソ連代表部の人々と関係のない問題として承りますが、出入国管理令を見ますと、ただいま申し上げました通り、たとえば「公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党その他の団体」これに少しでも関係のある者は強制送還をすることができると規定されております。そういたしますと、少くとも日本の今日の共産党に関係のある人々、すなわち共産党員というだけの理由でもつて、強制送還がはたしてできるものかどうか、その党をお尋ねいたします。     〔林(百)委員共産党はそれに該当しないということを政府は答弁しているじやないか。うその質問をするな。委員長、関連々々。」と呼ぶ〕
  153. 仲内憲治

    仲内委員長 許していません。
  154. 鈴木政勝

    ○鈴木(政)政府委員 ただいまの出入国管理令第二十四條の適用の問題でございますが、これはあえてソ連人ということに限らず、一般の外国人であつて、ただいまお尋ねのような第二十四條の條文にはたして該当するかどうか、こういう問題でございますが、入国管理庁におきまして、これに該当するという認定があれば、もちろんこの法律に照しまして強制退去を命ずるわけであります。ただ問題は、共産党に関係のあるものがこれに該当するかどうかというお尋ねでございますが、これはやはり具体的な事案につきまして見なければ、ただ抽象的にどうこうということは、ただいま判断いたしかねる、かように考えております。
  155. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると第二十四條のワの(2)項の、ただいま申し述べました「公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党その他の団体」として、共産党はこれに当てはまらないというふうにお考えでございましようか。
  156. 鈴木政勝

    ○鈴木(政)政府委員 将来の問題は別といたしまして、現在の状態においては、まださような解釈はいたしておりません。ただ将来ことはこれは何とも問題はまた別でございます。
  157. 仲内憲治

    仲内委員長 佐々木君、次官は参議院の本会議に出席しなければなりませんから、簡単に……。
  158. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 簡単にやります。それでは、従来大使館や公使館にありましたいわゆる公館や信書の不可侵等の外交特権をかりに濫用して、ソ連代表部が日本の法律に違反するような行為を行つた場合が明らかになりますれば、当然これらに対しましては、日本の国法をもつて対処すべきであると考えます。すなわち前に申し述べましたような捜査であるとかあるいは逮捕というようなことも可能であると考えますが、いかがですか。
  159. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほどお話しましたように、一般外国人としていわゆる出入国管理令であるとかあるいは登録法等の対象となりましたときには、これはもうソ連とかどうとかに限りませず、一般外国人に対して適用のあるのが出入国管理令の條章であります。一般外国人になりました際にはそれによつて法の運用で処遇されて行く、こういうことになると思います。
  160. 仲内憲治

    仲内委員長 山本利壽君。簡単にお願いいたします。
  161. 山本利壽

    ○山本(利)委員 簡単にいたします。駐留軍演習地の問題については、先ほど並木委員から富士山麓の演習地の問題あるいは先般日本海における竹島の問題について、私からも御質問申し上げたのでありますが、今日までのこの接収土地の問題がまだ円滑に行われていないために、非常に困窮しておる人々も多いのでありますが、その一例を申し上げて、そういう場合における政府の態度について御答弁を承りたいいと思うのであります。例は佐世保市の名切谷一帯は佐世保市の中央にあつて、市の繁華街でありましたが、戦災によつて家屋は焼失し、地主の多くは疎開しておつたのでありますが、帰つて見ると家は灰燼に帰して、土地は進駐軍用に徴用されておつたのであります。その後住宅難に苦しみながらも、講和條約の発効するのを千秋の思いで待つたのでありますけれども、今日までその返還を見ないのであります。これでは私有財産を持つておりましても、それの不可侵の大原則というものが侵されておることでありまして、自分の財産を金融の対象にして生活することもできず、またそういう使用不能の土地の買手もなく、非常に困つておるわけでありますから、その土地の人人はすみやかに土地が返還されることと、あるいはどうしても返還が不可能な場合には財産権の行使不能に対して妥当な補償を与えられて、政府にその買収を願いたいと言つておるのであります。こういう例はまだ他にもあることと存じますが、大体の実情と、こういうものに対する政府の御処置等について御答弁を承りたいと思います。
  162. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただ、いま山本委員お話になりました点につきまして、私まだ具体的な事案の内容はよく聞いてないのでございますが、御案内のごとく、相当各地でいろいろ問題がございまして、合同委員会等の議題になりますものは、もちろんそこで日本の立場を十分申しまして、善処できるようにやつております。それからそこまで参らないで、何といいますか、跡始末的な問題につきましては、調達庁等が中心となつてやる、あるいはまた従来向うの在外公館等で使用されておつたような点については、そこといろいろ折衝する、こういう建前を通じまして、いろいろやつておるのであります。お話の点はよく国際協力局の方へ通じまして適当に善処さしたい、かように思います。
  163. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまのお言葉、了承いたします。私が例に引きました佐世保の名切谷の問題につきましては、請願書も出ておると思いますが、特にこの土地に関しての政府見解と申しますか、処置がいかになるかということを、委員会の席上でなくてもけつこうでございますから、係の方から私までひとつお知らせ願いたいと思います。これをお願いしておきます。
  164. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 よろしゆうございます。     —————————————
  165. 仲内憲治

    仲内委員長 次に連合審査会の件についてお諮りいたします。  ただいま当委員会に付託せられております北太平洋の公海漁業に関する国際條約及び北太平洋の公海漁業に関する国際條約附属議定書締結について承認を求めるの件につきまして、去る五月三十一日水産委員会より連合審本会開会の申入れがございました。それゆえ委員会といたしましては、この際この申入れを受諾いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。なおただいまの連合審査会につきましては、明後六月六日午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時十七分散会