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1952-05-28 第13回国会 衆議院 外務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十八日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    大村 清一君       菊池 義郎君    栗山長次郎君       飛嶋  繁君    中山 マサ君       守島 伍郎君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         検     事         (検務局長)  岡原 昌男君         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君  委員外出席者         外務事務官         (経済局第二課         長)      東郷 文彦君         大蔵事務官         (理財局総務課         長)      宮川新一郎君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月二十四日  委員近藤鶴代辞任につき、その補欠として佐  々木秀世君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員佐々木秀世辞任につき、その補欠として  近藤鶴代君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十七日  北太平洋公海漁業に関する国際條約及び北太  平洋公海漁業に関する国際條附属議定書の  締結について承認を求めるの件(條約第一四  号)  千九百四十八年の海上における人命の安全のた  めの国際條約の受諾について承認を求めるの件  (條約第一五号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十三日  千島列島帰属に関する陳情書  (第一九四一号)  奄美群島日本への完全復帰に関する陳情書  (第一九  四二号)  大矢の原を演習地として接收反対に関する陳情  書(第二〇二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  外国領事官に交付する認可状認証に関する  法律案内閣提出第二二四号)  国際植物防疫條約締結について承認を求める  の件(條約第七号)  千九百二十三年十一月三日にジユネーヴ署名  された税関手続簡易化に関する国際條約及び  署名議定書締結について承認を求めるの件(  條約第八号)  国際復興開発銀行協定への加入について承認を  求めるの件(條約第九号)  国際通貨基金協定への加入について承認を求め  るの件(條約第一〇号)  中華民国との平和條約の締結について承認を求  めるの件(條約第二二号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際植物防疫條約締結について承認を求めるの件、千九百二十三年十一月三日にジユネーヴ署名された税関手続簡易化に関する国際條約及び署名議定書締結について承認を求めるの件、国際復興開発銀行協定への加入について承認を求めるの件、国際通貨基金協定への加入について承認を求めるの件、中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件、及び外国領事官に交付する認可状認証に関する法律案、以上六件を一括議題といたします。  質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 日華條約の質問を継続する前に、きよう質疑を打切るとのことですから開発銀行通貨基金の点で一点確かめておきたいと思います。今まで明らかになつておらないのですが、日本政府としては、通貨基金から外貨の買取りをどういうふうに計画をされておるか、それから開発銀行からどういうふうな借入れをする計画であるか、そういう計画をやはり承つておかないと、これに対して承認を與えることは困ると思うのです。開発銀行協定の第五條第九項に「代理事務所又は支事務所を設けることができる。」とございます。これは日本に設けられるのかどうか。それから通貨基金及び開発銀行に対して加盟見通しがついたということでありますけれども、いつごろ正式に加盟できるかどうか。あわせて、政府ガツトヘの加入申入れ準備中であると聞いておりますが、ガツト加入準備はどのように進められておりますか、以上の点についてただしておきたいと思います。
  4. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 通貨基金からの通貨買入れあるいはまた開発銀行からの資金の借入れの問題でありますが、ただいまのところ、どれだけ買い入れ、あるいは銀行からどれだけ借り入れるかというような具体的計画は持つておりません。ただ通貨基金からは、不足した場合にはそれを買い入れることができるという建前になつております。その状況々々に応じて、加入が認められました際にこれが動いて行くということになるのではないかと思つております。  それから事務所の問題でありますが、これは現在パリにあるだけでありまして、将来日本に設けられるかどうか、そういうところはまだよくわからないようであります。それから加入は、大体八月十五日ころまでにはその手続ができるのではないか、こういうふうに考えております。  ガツト加入情勢につきましては、説明員から一応現在の情勢を申し上げたいと思います。
  5. 東郷文彦

    東郷説明員 ガツトの点でございますが、これは一日も早く加入することを希望するわけでございますが、従来まではガツト契約国団会議というのがありまして、そこの措置をまたなければ新加盟国加盟する運びにならなかつたわけでありますが、昨年のガツトの総会において新しい手続ができまして、それによれば、日本の方から加入の申請を持ち出すことができるようになつたわけであります。それで日本ガツト加入を目的として関税交渉を行いたいという申入れをする道が開かれたわけであります。そこで、いつそれを実際に申請するかという時期については今検討中であります。いずれ加入に先だつて、多数国と関税交渉をしなければならぬわけでありますので、そちらの方の準備はぼつぼつ始めております。しかしいつ実際に申請するかは、いまだ検討中であります。
  6. 並木芳雄

    並木委員 ガツト加入條件として、何かむずかしい点があるかどうか。
  7. 東郷文彦

    東郷説明員 ガツト加入に先だちまして、まず加盟国日本の申出に応じて関税交渉に応ずる必要があるわけでありますが、交渉ができた上で、また加盟国の多数決を要するわけであります。その辺の見通しについてはへ今日申し入れればすぐ相手が全部応じて来るというほどの見通しはいまだ立つておりません。なおその余の問題は、関税交渉をどういうふうに行うかという点だけであります。
  8. 並木芳雄

    並木委員 通貨基金開発銀行への加盟によつて、現在ポンド過剰、ドル不足という日本外貨調節をはかる操作を行うことができるかどうか。
  9. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この基金加入並びに開発銀行加入の問題と、ただいま御指摘になりましたドル不足、ポンド過剰の問題とが、この加入によつて直接調節なり必要な関係が持てるかどうかということは、ここで今はつきりとは言えないと思うのであります。御承知のように、これはドルの不足した場合基金から買えるという一つの働きは持つわけでありますが、この加入によりまして、その問題がただちに非常にうまく調節ができるかということにつきましては、はつきりとは言えないであろうと思います。
  10. 並木芳雄

    並木委員 それでは日華問題の質問を続けます。台湾澎湖諸島に対する所有権についてお尋ねしておきたいと思います。これは現在国際法上どういう地位にあるか、どこの所有になつておるのかという点であります。私はこの所有は宙に迷つておるのではないかと思います。そこで、日本から台湾澎湖島を切り離しましたけれども、それは中国に引渡すことを前提としております。ところが中国に引渡されておらない。従つて平和條約の第二條で、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利権原及び請求権を放棄するとありますけれども、その効力が発生することができずにおります。こういう見地から、この平和條約の第二條そのもの締結はいたしましたけれども、効力の発生する余地がないのですから、無効ではないのかというような疑問を持つわけです。その点、政府のお考えを聞いてみたいと思います。
  11. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先般のこの委員会でもいろいろお話が出たのでありますが、たびたび申し上げますように、日本平和條約によりまして、台湾澎湖島に対するすべての権利権原を放棄しており、この台湾なり澎湖島がどこに帰属するかということは、連合国の間で決定することになつておることは、たびたび申し上げておる通りでございます。ただ今回の日華條約を結んだについての考え方の基礎は、台湾及び澎湖島に対しましては、中華民国国民政府がこれを現実支配しておる事実は、これらの国々承認しております国におきまして認められておるところでございます。すでに実行的に支配しておるという現実に基きまして、いろいろの交渉が行われておる、こういう事態であります。そこで、一刻も早く一日も早く善隣友好立場からいたしまして、この国と平和的段階に入り、交渉を開始したい、こういうことで日華條約が締結されるに至りました次第でございまして、領土最終的帰属はまだ決定を見ておりませんが、現実事態もとといたしまして、今回の條約が締結されることになつておるのであります。
  12. 並木芳雄

    並木委員 日本はこの條約を結ぶことによつて台湾及び澎湖諸島の領土権国府に属するということを承認することになるのですかどうか。それからただいま御説明のあつた国際連合国のうちで、国府承認している国々は、同時に台湾澎湖諸島の領土権国府に属するということを承認しておるものとみなされ得るのかどうか。
  13. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 最後的帰属決定連合国が行うことになるのでありまして、その決定をまだ見てないことは御承知通りでございます。そこで領土最後的決定を見ておりませんが、現実台湾澎湖島に対して国民政府支配を行つている事実をもととして、今回の條約が締結されることになつておるのでありまして、同じことを繰返すようでありますが、最後的決定は見ていないが、現実事態に立脚して今回の條約が取進められておる、こら申し上げるほかないのであります。
  14. 並木芳雄

    並木委員 どうもそこのところがむずかしいので、わかりにくいわけなのです。台湾澎湖諸島は、国際法上はどういう地位にあるのですか。無主物ではないでしよう。さればといつて国際連合が管理しているものでもないし、どういうふうに政府はこれを見ておりますか。
  15. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはいわゆる旧来の国際法的観念からいえば、あるいは非常な問題があるかもしれませんが、これは今回の大戰の結果によりまして、いろいろむずかしい問題がそこに出ておるわけでありまして、その一つの現われと見てもいいのではないか。日本平和條約によつて権原を放棄しておるが、最後帰属をきめるのは連合国でありて、最終的帰属決定されておりませんが、あるいは決定されれば、さかのぼつていろいろのことが律せられるようになるかもしれないのであります。それから現実的には国民政府台湾及び澎湖島支配しておる。この現案の事態は、これを認めておる国が相当あるのではないか。またカイロ宣言によりましては、大体その帰属方向一つの目標がきめられております。日本中国に対して降伏した。こういういろいろの前提となるべき事実があるのでありまして、領土最終的帰属決定を見てない、こういう段階であろうと思います。
  16. 並木芳雄

    並木委員 その点もう一つ、私の先ほどの質問にお答えになつていないのですが、台湾澎湖島日本が放棄するということは、カイロ宣言ポツダム宣言を通じて、中国に引渡されることが前提となつているわけです。それが今行われないならば、せつかく平和條約で第二條というものを設けましたけれどもこの効力が発生しないのじやないか、こういう疑問に対してはどういうふうに考えられますか。
  17. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 領土最終的帰属決定を見ていないが、現実事態もととして、国府友好交渉関係に入るということは、別段おかしなことでもない、こういう考え方から取進めておるわけであります。
  18. 並木芳雄

    並木委員 領土帰属について、そういういろいろな問題が起つて来るのは遺憾であると思います。  そこで一つそれに関連を持つているのですが、沖縄のことについて、ロイターの外電は現地米軍司令官言明を伝えております。これによりますと、米国は従来常に人民自決権利を神聖なものとして来た、諸君が今や新たに立法院議員を選出し、新政府を持つているという事実こそ、この原則りつぱな実を結んだ証拠である、沖縄人諸君は今や大ぴらにみずからの方向を進み、その運命を決することができる、と言つております。そうしてこれは目下東京で行われておる沖縄列島日本返還運動関連して述べられたというコメントがついておるのですが、この報道は考えようによると、将来沖縄というものは独立し得るものであるととれる点があるのです。現地司令官はそういう意味言つたのではないと思うのですけれども、信託統治になるかならないか、まだきまつておりませんが、いずれにしても日本主権があることははつきりしております。ですから、これが不要になれば、ただちにこれが日本に自動的に返されるものであると了解しておるのでありますけれども、こういう言明が行われて来るところを見ると、またそこに疑問が出て参るわけです。領土問題について疑問が起ることははなはだ遺憾でありますが、これに対して政府の見解を確かめておきたいと思います。
  19. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 沖縄の現在の法律的立場といいますか、扱いは、残存主権といいますか、それは日本にあるが、現実の立法、司法、行政の三権はただいまのところアメリカが行つておるわけであります。行く行くは信託統治の申出があつて、その形になるのではないかと思いますが、そのときにいかなる信託統治の形式が行われるかということが、きまつて来るわけであろうと思いますが、御承知のように日本といたしましては、この沖縄その他群島関係については、経済、文化、その他できるだけの関係におきまして、日本との結びつきを密にしておく、今回また近く沖縄一つ事務所も設定して、日本との連絡交通を十分にしておきたい、こういう考えで進んでおるのでございまして、将来信託統治になります際に、どういう形になつて行きますか主権日本に残つておるのでありますから、この問題は場合によりましては、結局日本からまだ完全に離れたものということではないと私は思うのであります。将来の問題といたしまして、沖縄というものが昔の形に帰ることを、日本国家国民としては熱望しておる、こう申し上げていいのじやないかと思います。
  20. 並木芳雄

    並木委員 ですから人民自決のやり方を尊重するとは言つていても、いかに人民自決の結果といえども、沖縄独立するということは考えられない、こういうふうに思いますけれども、その点いかがですか。
  21. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 並木委員独立という意味は、どういう意味かわかりませんが、われわれの考えでは、主権日本に残つておるという考え方になつておるのでありますから、沖縄独立ということはちよつと考えられないのじやないかと思います。つまり信託統治なり、現在の形が解除された場合には、これは日本にもどる、われわれはこういう考えをとつて行くべきではないかと思つております。
  22. 並木芳雄

    並木委員 政府としては、中国本土蒋介石国府政権によつて統一されることを希望しておられるかどうか。
  23. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは中国の国内の問題に関連することでありますので、日本政府として希望するとかしないとか、そういうことをここで表明する限りでないと私は思います。
  24. 並木芳雄

    並木委員 日華交渉の途上において、国民政府の方から本土反攻するということを表明されたことがあるかどうか、あるいはほのめかしたことがあるかどうか。これはこの前、例の「又は」「及び」という点で私が質問いたしましたときに、将来本土支配権が伸びたときに、台湾が分離されるのではないかという疑いを除くために、「又は」は「及び」というふうに了解されるものであるという答弁を得ましたので、そういう話があつたならば、国府としては本土反攻ということを真剣に考えておるのではないかと思います。ですから、そういう点について先方からどういう意思の表明があつたか、あるいは示唆があつたか、それを聞かせていただきたいと思います。
  25. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 私はそういう話があつたかどうかということは承知いたしておりません。ただこの條約のいろいろの條項、ことに第十一條のごときは将来大陸支配するに至りました際に、現実支配力が及んだところにこの條約の必要條項適用がある、こういう趣旨が取入れられてあるのでありまして、大陸反攻といいますか、大陸支配を何も希望したり、あるいは前提としたり、そういうことは全然ないのでございまして、大陸支配が及んだときに、そこに自然的にこの條約の適用範囲が広まつて行く、こういう形になつておるものと解釈いたします。
  26. 並木芳雄

    並木委員 今度の條約の第六條の(a)に、「日本国及び中華民国は、相互関係において、国際連合憲章二條原則指針とするものとする。」とあり、また(b)に「日本国及び中華民国は、国際連合憲章原則に従つて協力するものとし、特に、経済の分野における友好的協力によわその共通の福祉を増進するものとする。」とあります。もし国民政府本土作戦が起つたならば、これによつて日本はどういうような協力の義務を負うことになるのですか。
  27. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 第六條の関係国府本土作戦との場合の関係は、直接何ら関連はないと思います。国民政府本土にいろいろ作戰するとかどうとかいうようなことは国内問題でございまして、第六條とは直接の関連は持たないものと私は解釈しております。
  28. 仲内憲治

    仲内委員長 並木君に申し上げますが、相当時間がたつております。また午後も機会がありますから、適当のところで打切つて、ほかの方にお願いいたします。
  29. 並木芳雄

    並木委員 この第六條は、日本中華民国との間の安全保障條約の基本となるものではないのですか。つまり日本中華民国との間で地域的安全保障とりきめといろものが考えられているのではないかと思うのですが、その点どうなつておりますか。
  30. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この第六條は、サンフランシスコ條約で連合国国連憲章二條原則指針とするということを向うも約したのでありますが、今回の日華條約におきましても、双方の関係において同様のことを約した次第であります。それからまた善隣関係に基きまして、当然各種の部面における協力日華の間に予想されるわけでありまして、特に彼我両国の実情から見まして、当面の貿易の密接化、あるいは漁業の問題その他経済部面協力、そういうような点でいろいろ重点を置いて行こう、こういう意味のものでございまして、先ほど言われましたように、本土反攻とかどうとかいうようなことは、これは中国のいわゆる一つの国内問題でございまして、その際にこの第六條に基いて日本がどうこうしなければならぬという問題はないだろうと私は思います。
  31. 並木芳雄

    並木委員 アメリカ相互安全保障法に基いて、相当の中国援助の予算を立てております。これはおそらく中華民国に対する援助であると思いますが、こういう関係から特に第六條をこういうふうに設けたことは、将来国民政府と共同して安全保障に当るようになつて来るのではないか、その場合に、日本としても、アメリカ相互安全保障法によつて対外援助を受けることができるのではないかというふうにも考えるのでありますが、その点の関連性について政府の所見を伺つておきたいと思います。
  32. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 第六條の設けられました趣旨は、先ほど申し上げました通りでございまして、サンフランシスコ平和條約の第二條の精神を受継ぎまして、ここに掲げておる、こういう趣旨であります。
  33. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと関連して一問だけ石原次官にお尋ねいたしますが、国府一派が本国に反攻するというような問題が起きても、それは国内問題だ。要するに対立する二つ勢力の争いだという答弁つたのですが、そうすると逆に北京に政権が所在しておる中華人民共和国勢力台湾解放するというような問題が起きた場合も、これは国内問題と認定しますか。
  34. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 やはり一応同様な解釈をとつております。
  35. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、こういうことは考えられませんか。台湾澎湖島帰属が不明である。不明としてアメリカの第七艦隊が今あそこを事実上海上封鎖をしておるというような状態のもとに、台湾解放されるという問題が起きたとき、国連決定で新しい侵略をしたというようなことが国連決定されて、その台湾解放を妨害するようなアメリカの軍隊、あるいは国連の名においてそれを妨害するような事態が発生して、それに日本が、先ほどの平和條約の第六條に基いてこれに巻添えを食う。要するに、そうした中華人民共和国台湾解放の問題について、国連の名のもとにそれを阻止するというような場合が起きて、それに日本が介入するというような場合はあり得ないと政府考えておるわけですか。それは国内問題であつて、国が他国を侵略するというような事態とは別だという解釈日本政府はとつておるというふうに、はつきり承つておいていいわけですか。
  36. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 日本はこの平和條約等をもとといたしまして、国連協力をする、あらゆる援助をするということは、この條約に規定されておる通りでございまして、ただいま林君が仮定的の問題として述べられたのでありますが、国連におきまして、諸般の情勢判断の結果、もしも国連として一つ行動をとらねばならぬということに決定されました際には、日本平和條約その他に基きまして、国連に対する協力として、日本の許されたる範囲内において、いろいろの行動がとられねばならぬと思つておりますが、これは先ほど抽象的に質問されました問題とは、またそういう事態になれば別問題であろうと思います。
  37. 林百郎

    ○林(百)委員 現に台湾の海峡には中華人民共和国の空軍が空襲している、あるいは台湾空襲警報が出ている。これは抽象的な問題でなくて、現実の問題だと思うのであります。しかもそこにはアメリカの第七艦隊海上封鎖をしているというような場合に、もし台湾澎湖島帰属が不明で、中国帰属するということになれば、それは中国領土を、対立する二つ勢力がお互いに自分の支配権を確立することのために争うということで、これは外国が干渉する余地はないのでありますが、しかし台湾澎湖島帰属が不明だ、そして帰属の不明のために、アメリカ艦隊がこれを海上封鎖をしているというような事態アメリカ側が故意につくつて、そうして中華人民共和国の当然の権利である台湾澎湖島解放に対して、台湾澎湖島、すなわち帰属の不明な領土中華人民共和国侵略したのだという名目のもとに、米国政府が妨害するということがあり得ると思うのであります。ということは、アメリカソ連封じ込み政策が、フィリピン、台湾日本と、こうつながつている場合、台湾の一角がくずれるということは、アメリカの極東におけるソ連の封じ込み政策の致命的な打撃になるということで、何としてもアメリカ台湾を守らなければならぬという問題が出て来ると思うのであります。現にチヤーチルは、さきにアメリカに参りました際に、台湾侵略は許されぬということを言つておるのであります。そろすると結局台湾中華人民共和国解放するということは、将来英米の側からいえば、帰属の不明な領土侵略するという名のもとに、この解放を阻止する行動に出るかもしれない。そういう場合、日本が必然的に英米側の、中華人民共和国解放戰を妨害する側に加担せざるを得ない状態が起きて来ると思う。チヤーチルとかトルーマンの見解と、今の石原次官の見解とは違つておるのであります。私はむしろ石原政務次官の見解を支持したいと思うのであります。実はそれは、台湾澎湖島がどちらの政権帰属になろうと、これは中国の内部の問題だ、二つの対立している政権の国内における革命の問題であつて、外部が干渉すべき問題じやないという見解をとりたいと思いますが、不幸にしてアメリカ並びにチヤーチルによつて代表ざれるイギリスの政府は、そう考えていないようでありますが、そういう危険がないのかどうか。そして将来日本に駐屯しているアメリカの軍隊あるいは国連軍が、台湾まで派遣されるというような事態が起きないのか。あるいは日本の警察予備隊が、国連協力という名のもと台湾へ派遣されるような事態が、日華條約によつて発生しないかどうか。そういう点絶対心配ないなら、ないということをこの際言つていただかないと、この日華條約というのは、新しいアジアの侵略戰に日本が介入することになるという危険を多分に感ぜしあると思うので、はつきりその点の見解を聞いておきたいと思うわけです。
  38. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、国連に対する協力ということは、平和條約できまつておるととろでございますから平和條約の條項に基いて、国連決定、方針には従つて行かなければならぬと思います。ただ、今言われましたように、予備隊が台湾に行くとかどうとか、これはここで何回もしばしば話にありましたように、現在の憲法並びに予備隊関係の法令のもとにおいては、かようなことは断じてない、かように申し上げておきます。  それから先ほどの、中共が台湾に出て来る場合の問題を、一応私は向うの国内問題である、逆な場合も同じ国内問題である、こういうふうに申し上げましたが、中共の方が台湾澎湖島に出て来ます場合は、嚴格に申し上げましたならば、あるいは台湾の方が中共に出て行く場合と、若干そこに性質の相違があるかもしれないと私は思うのでありますが、一応中国の内部の問題であるというふうに私は申し上げたのでありまして、嚴格に、しさいに検討いたしましたならば、若干そこに相違はあるかもしれぬということを、保留いたしておきたいと思います。
  39. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどは国内問題だと言われましたが、しさいに検討すると若干違うということになり、大分チヤーチルの発言に影響されたところがあると思いますが、(笑声)若干違うという点はどういうように違うのでしようか。その点私は将来非常に危惧の念を抱かざるを得ないのでありまして、はつきりその点を説明していただきたい。あなたの、嚴密に吟味すると若干違うということはどういうことですか。結局あなたもやはりチヤーチルやトルーマンと同じような見解だというのですか。それとも日本の将来のことを考えると、これは中国国内の問題であつて、他国が干渉すべき問題じやないという、最初あなたが言われた正論を維持する気力はもうなくなつたのでしようか、どんなものでしようか、もう一度お聞きしておきたい。   〔「大体今まででわかつているよ。」と呼ぶ者あり〕
  40. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体皆さんおわかりのようでございますから……。(笑声)
  41. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  42. 黒田寿男

    ○黒田委員 午前中は、国際通貨基金協定国際復興開発銀行協定その他の議案につきまして質問してみたいと思います。実はこの問題につきましては、大蔵大臣の御出席を願いたかつたのでありますけれども、きようはどうしても御出席できない御事情がおありになるそうでありますので、外務当局あるいは大蔵当局の関係説明員の方に、御答弁を願いたいと思います。  第一は、国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定加盟いたしますについて、本年度の予算との関係であります。この両協定にわが国が加盟するということになつて参りますと、国家の出資並びに国家の債務負担を伴うものでありますから、当然憲法第八十五條及び第八十六條との関連、すなわち予算との関連を生じまして、予算上はたしてこの措置ができておるかどうかという問題が起る。むろんできておりますけれども、本年度予算に計上せられた額で足りるかどうかという問題であります。本二十七年度の予算では、国際通貨基金及び国際復興開発銀行の出資金、これを合計いたしまして二百億円の予算が決定せられておるのでありますが、はたしてこれで足りるというお見通しであるかどうか。もとより割当額及び出資額をきめますのはわが国ではなくて、基金の側でありますから、わが国がどう予定いたしましようとも、必ずしもその通りに行くものかどうかということにつきましては、もちろん問題はあると思います。しかし、大体のところ、政府が本年度予算において予定されました金額で両協定における割当額及び出資額が足りるかどうか。万一足りない場合は追加予算の作成が必要になると思うのでありますが、そういうことになるかもしれないというおそれがあるかどうか、その点につきましてまず御質問を申し上げておきたいと思います。
  43. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 国際通貨基金並びに国際復興開発銀行加入に伴いまして出資に要する費用といたしまして、御承知のように二百億円計上しておるわけであります。二百億円計上いたしました際は、全額アメリカで金を購入する目途のもとに計算いたしたのであります。当初二百億円を計上いたしました際は、割当額並びに金による拂込額が判明いたしませんでしたので、とりあえず、各国の例等を考えまして、一応五千万ドルと想定いたして、二百億円を計上いたした次第でございます。ところが今回内定いたされました金拂込額は、通貨基金関係で七千二百五十万ドルでございまして、これをもととして計算いたして参りますと、二百億円では足りなくなる次第でございます。つきましては、先般当委員会でも御説明いたしましたごとく、財政の現状にかんがみまして、これ以上補正予算を講ずるいとまがございませんので、別途提出いたしております通貨基金及び復興開発銀行加盟に伴う措置に関する法律をもちまして、一部日本銀行の保有金を買い上げてこれを埋めることといたしまして、現在計上いたしております二百億円の予算でまかなえることといたしておるのであります。
  44. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は前々回の委員会のときに、やむを得ない用事で地方へ出張いたしまして、出席いたしておりませんでしたふら、あるいは質問が重複するかもしれません。そういう場合にはそういうふうに御注意いただければけつこうであります。  その次にお尋ねいたしておきたいと思いますことは、出資の問題に関連してでありますが、拂込み金額中、金による拂込みを要する額について、二つの場合について選択が許されておるようてあります。「自国の割当額の二十五パーセント」これが一つと、それから他の方法は「自国の金及び合衆国ドルの公的純保有額の十パーセント」こういうことになつておりますが、わが国の場合はどちらを選ぶ御予定でありますか、それを聞きたい。
  45. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 割当額の二五%に相なります。
  46. 黒田寿男

    ○黒田委員 わかりました。それからちよつと続いてお聞きしたいと思いますが、今わが国において金の保有量がどのくらいであるか、承りたい。
  47. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 わが国の金保有高といたしましては、終戰後、金資金特別会計で買い上げました金、並びに終戰後連合国司令部によりまして接收されまして、講和発効と同時に返還されました金とございまして、そのうち金資金特別会計保有の金は、正確に申し上げますと資料を見なければわかりませんので、少しおそくなりますが、大よそ七トン程度であつたかと記憶しております。連合国に接收されまして返還を受けました金は、連合国より返還されました金に関連いたしましていただきましたリストによつて調査いたしたところによりますと、金が約百二トン、合金が二十六トンございます。
  48. 黒田寿男

    ○黒田委員 他の委員の御質問の都合で、私の質問を中絶してくれという御要求でありますので、ちよつと中絶いたします。
  49. 仲内憲治

  50. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 法務当局に時間の御都合があるようでありますから、一点だけ戰犯の問題に関して簡單に承つておきます。サンフランシスコ平和條約においては、すでに連合国側において決定した戰犯の判決に関しては、これを日本国において引継ぐことになつてつたのでありますが、今度の日華條約の議定書によりますと、これが除外されることになつております。従つて中華民国に関する限りにおきましては、中華民国の戰犯は当然日本側に引渡されるものと考えるわけであります。そこで日本側に引渡されますならば、これらの戰犯の身分というものはどうなるかという点でありますが、従来の国際法の慣行に従いましても、あるいは日本の国内的な法律によりましても、戰犯というようなものに対する特殊な規定はないように考えます。従つて中華民国から日本に引渡されると同時に、当然その身分というものは釈放されるものである、何ら身分を拘束する法的根拠はなくなるものだ、すなわち今度の日華條約の効力発生と同時に、中華民国に関する日本人戰犯というものは解消してしまう、日本政府においてもこれを拘束する権限はなくなる、こういうふうに私は考えるわけでありますが、引渡された戰犯というものをどういうふうにするお考えであるかという点を承つておきたい。
  51. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 実はその点に関しまして私の方の所管でございませんので、きようの委員会には林さんの御質問の点だけ連絡がございまして、佐々木さんの分がなかつたものですから、ほかの局長に連絡するのが遅れたといいますか、手続がなかつたのであります。いずれ主管局長に……。
  52. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは石原次官に……。
  53. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 中華民国の軍事法廷におきまして刑の宣告を受けまして、目下日本において拘禁中の戰争犯罪人の取扱いでありますが、これは国内法上引続きこれを拘禁しておく根拠がない限り、この條約実施後はすべて釈放する、こういう方針で進んでおります。
  54. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、国内法上これを取締る、あるいは適用すべき国内法というようなものは一体存在するでありましようか。
  55. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまのところ予想されるものは何もございません。
  56. 山本利壽

    ○山本(利)委員 関連して。ただいまの佐々木盛雄君の御意見にはまつたく同感でございまして、政府の方においてもその点御同意のようでありますが、この前の委員会において、私はそれに関連して、今度の條約が締結されると同時に、岡村大将以下八十八名の人が釈放されたということを、中華人民共和国の外相の周恩来が言及されておるということを申していたのでありますが、あの八十八名で全部であるのか、まだそのほかに中国関係のものが戰犯として残つておるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  57. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 中華民国軍事法廷によつて宣告を受けておるものは、今言われましたたしか八十八名でありますかが、全部であります。
  58. 山本利壽

    ○山本(利)委員 もう一度お聞きしますが、それでは中国関係の戰犯は、もうあとには残つていないわけですね。
  59. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 全部でございます。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 検務局長に抗議がてら質問したい点は、去る四月の末だと思いますが、日炭の高松労働組合の串田花王丸君外十四名の労働者代表が北京のメーデーに国賓として招待を受けまして、これに応じようということで九州に集まつたという嫌疑のもとに、十四名の労働者諸君が今逮捕を受けておるのであります。このことについて私ははつきり政府質問したいと思うのであります。中華人民共和国日本との間の友好的な関係、平和関係を結びたいということは今国民の輿論になつておりまして、ただ吉田内閣だけが自分の利害とアメリカ支配のために、これを妨害しているというのが現状だと思うのであります。こうして労働者がお互いに国際的に交友を結ぶということは、当然それによつて日本中国との間の友好関係を結ぶことであつて政府としてはむしろ積極的にこれに好意的な処置をしてやらなければならないのに、どうしてこれを逮捕監禁しているのか、それをはつきりさしたいと思うのであります。御承知通りに、朝鮮には船員を送つておるのでありまして、これは連合軍と日本との間の商業契約だということ、自由意思に基くものだといつて朝鮮に送り、すでに遺骸として日本に帰つて来た船員諸君がたくさんあるのであります。こうした平和的な関係、しかも中日両国の友好関係の大きなくさびとなるようなことを妨害しておることについて、私は国民の名において抗議すると同時に、実相を明らかにし、すでにメーデーは去つておりまして、渡航の目的などもなくなつた現在、ただちにこれは釈放すべきものだと思います。ということは、全国の労働者諸君がこれに対して非常に大きな憤激をもつて抗議をしておるのであります。このことも考慮して、政府はすみやかに全拘禁者を釈放すべきだと思いますが、この点をまずお聞きしておきたいと思うのであります。
  61. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 御質問通り、五月四日の夜下関海峡におきまして、船員が三名と、それから今お話の労組員その他合計十七名が逮捕されております。その被疑事実は、現地からの報告によりますと、出入国管理令違反でありまして、不正なる出国を企てたということにあるようであります。報告の概要は、要するにこの人たちが全国から集まりまして、下関である人の手を通じ密航船を探しておつた。ところがたまたま白山丸という船が向うに行くというようなことがわかつて、だんだんと手づるがつながつて、五月四日の夜いよいよ出航というような段取りになりました際に、事が発覚いたしまして逮捕に至つた、かようなことであるようであります。私どもといたしましては、現地の報告だけを見て考えておるので、実は詳しいことはわかりませんが、要するに犯罪事実に基いて逮捕したということでございまして、別に北京のメーデーに加わることを阻止するというふうな意図に出たのでないことは、検挙が五月四日の夜であるというようなことからも明らかであろうと思います。さような逮捕の被疑事実でございますので、目下身柄匂留の上調査中でありまして、数日中に起訴不起訴の決定段階に至るではないか、かように考えております。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 かつて明治時代に、日本は当然国を開いて外国と交友を開くべきだという世界情勢にあつたにもかかわらず、徳川幕府が鎖国の政策をとり……。
  63. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、簡單に願います。
  64. 林百郎

    ○林(百)委員 このとき吉田松陰が外国船に乘り込んで、あえてこの幕府の鎖国政策に抗議をし、これに反抗したことが、現在考えればかえつて愛国的行動であつた。あなたは罪になると言うけれども、大局的な目から見ると、中日友好関係というものはむしろ愛国的な行動であつて、これを取締るものこそかつての幕府と同じ運命に立ち至るものといわざるを得ないのであります。従つて検務局長にしてもし賢明であるならば、ただちに釈放しておいた方があなたのためにもなるのではないかと私は思いますが、この点はひとつ真劍に考慮しまして、こういう国民が当然要求していることを妨害するためにそういう事態が起るのであつて、自然の流れを妨げることから、自然の抵抗としてそういうことが起るので奉りますから、ただちに釈放すべきかと思うのであります。現に現地からの報告を見ますと、弁護士と面会をさせなかつたり、いろいろ人権蹂躙の事態が起きて、細迫兼光氏あたりも非常に奔走しておるようでありますが、現地では人権蹂躙の問題もからんで抗議が巻き起つているようでありますから、十分人権蹂躙のないように、事態が明瞭になつたならば、すでに目的が不能なことでありますから、すみやかに、釈放するように要求しておきます。  第二の問題としまして、政府は明治四十三年来の関税定率法という法律に基いて、中国あるいはソビエトとのお互いの書籍類の交換を、公安または風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品ということでこれの輸入を禁じ、中国あるいはソビエト等の間で公然と出版されている出版物の交換すら最近は差押えをし、交流を禁止するような措置をとつておると聞いておるのでありますが、このような事実があるかどうか。これこそ独立した日本の恥辱だと思います。占領下占領軍によつてなされていたなら別として、独立した日本として一日も早く他国と善隣友好関係を結ぶべきなのに、公然と出版されている出版物、書籍の交流すら禁止するということは不届ききわまることだと思いますが、この点についてこういう措置をしようとしているか、あるいは現にしているか、第二問としてそれを聞いておきたいと思うのであります。
  65. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 中日友好まことにけつこうでございまして、特にこれを阻止するとかそういう意味ではございませんので、先ほど申し上げました通り、犯罪の嫌疑があつて調べておる次第でございますから、事実明瞭となりました上は、また身柄を釈放すべき段階に至りましたら、もちろん釈放することに相なろうと思います。ただ、おそらく当初黙秘権行使その他で調べが進展しなかつたために、身柄の更新が続いたというふうなことじやないかと考えられます。従つて、先ほども申した通り、数日内に事件の処理があるはずでございます。それを待つていただくほかないと思います。なお第二の問題につきましては、関税定率法の関係は、私ただいま初耳でございまして、おそらくあるとすれば、税関関係その他の実際に陸揚げする際の処置じやないかと思います。私どもの所管じやありません。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの所管でないならば所管の人に聞きたいと思いますが、これは罰則がついておるので、これに基く中国、ソビエトとの書籍の交換について処罰された例を知つているかどうか、それをお聞きしておくのが一つ。それから第三問としましては、こうして友好的な関係を阻害しておる一方、われわれの聞いておるところによりますと、最近蒋介石一派から組織的な暗殺団が日本に派遣されておる、これは現に大津で、居留民団の諸君が旧朝連の幹部の人たちを白晝刀劔をもつて頭を刺し殺したという例が大津に起きておる。それから最近は蒋介石一派から警視庁に刑務所を調査するという名目で公然と暗殺団の一派——かつて南京で日本の総領事などを毒殺した人たちの背後関係にあると思われる人が、これは名前は劉才青という名前だそうですが、これが警視庁へ公然と来ている。そしてかつてそういう暗殺団の経験を持つている諸君が、公然と日本へ入つているという話を聞いておるのでありますが、こういう事実があるかどうか。ことに大津の事件のごとき、居留民団が白晝公然と自分と政治的な立場を異にしている朝鮮の諸君に対して、短刀をもつて突き殺すというようなことが起きておるのでありますが、こういう事実があるかどうか。あるとすればこれを嚴重に取締らなければならないと思いますが、その事実をあわせて聞いておきたいと思います。
  67. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 関税定率法に基く罰則を適用した案件は、報告は参つておりませんので承知しておりません。おそらくないものと思います。なお次に民団の幹部宅に侵入してこれを襲撃したというふうな事件は、単に大津のみならず各所においてたくさんございます。これは主として朝鮮人同士の政治的な争いのように拜見いたされます。これはほとんど全国おも立つた箇所でも七、八箇所以上でございますが、紛争を重ねておるようでございます。これらの点につきましては、実はただいま民団の方が襲撃されたというふうな例を申し上げましたが、両方で行つたり来たり、やつたりやられたりというふうな、この前の川崎の市内で行われました五、六回にわたり両方が押し返したり押し寄せたりしたあの事件のような形をとつております。なお南京で暗躍しました暗殺団が最近東京に潜入したという情報につきましては、私承知いたしておりません。
  68. 仲内憲治

    仲内委員長 林君簡單にひとつ……。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 これで終ります。そうすると南京の問題についてもう少し具体的にいいますと、名前を劉才青といいます。これは南京の毒殺事件の背後の指揮をした人、これが日本の刑務所の調査という名目で警視庁に来ておるということを聞いております。なお私の方ももつと正確に調べようと思います。ただ両万でやりとりしているといいますが、蒋介石だとか李承晩というのは、これはアメリカの手先であつて、民族的にもまつたく残存グループであつて、アジア共通の憎まれものになつているわけです。日本としても将来の朝鮮、中国と友好関係を結ぶというならば、やはり実質的に朝鮮、中国の人民の支持を受けている人たちを守つて行くことこそが、将来の日中、日朝の友好関係を結ぶことになるので、そういう憎まれもの世にはばかるようなものを嚴重に取締るべきだということを私は言つておきます。これは明らかに蒋介石並びに李承晩の手先どもこそがまつたく憎まれものであつて、こういうものは嚴重にひとつ取締るべきものだと考えるのであります。なお正確に詳しく私の方でも資料をもつてこの次にもう一度警視総監にお聞きしますが、ただ善良なる華僑の諸君や朝鮮人の諸君が、このために非常に不安に陷つているのでありますから、将来の日中、日朝の友好関係のためにも、このくさびとなるような諸君が安心して日本に住むことのできるような処置を、十分政府としても講ずべきだと思いますから、そういう立場から、私はお聞きしたのであります。今後なお十分な資料に基いて再び質問をしますが、あなたの方もひとつ調査しておいてもらいたい、こういうように思います。
  70. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 私でもといたしましては、主として国内治安を乱す者に対して捜査をいたし、そうして起訴するという建前をとつておりますので、それがどちらの政治的な力によつて犯罪を犯されたにいたしましても、平等に処罰して行こう、こういう考えでおる次第であります。御了承願います。
  71. 黒田寿男

    ○黒田委員 先ほどの大蔵省関係政府委員の御答弁の中で、特別会計で買い入れた金の量は正確にはわからぬというようなお話でございましたが、これはなるべく早い機会に資料として御提出願いたいと思います。これをお願いいたしておきます。  それから私ども知識が不十分で事情がよくわからないのでありますけれども^国際通貨基金及び国際復興開発銀行の業務は、現実には必ずしも好成績を上げていないというふうに聞いておるのであります。そこでどの程度政府におわかりになつておりますか、私どもこの協定を審議するにあたりまして参考にしたいと思いますので、現状をおわかりになる程度においてお聞かせ願いたいと思います。たとえば基金の資金の利用状況の現状はどうであるか、どこの国についてどういう利用状況が今現われておるか、それから国際開発銀行関連いたしましても、その業務運営の現状はどうか、たとえば資金及び便宜はいかに利用されておるか、開発計画及び復興計画に対する資金の利用状況は、どの国に対してどういうように行われておるか、また戰災国に対する貸付條件はどういうように現実には決定されておるか、こういういろいろの問題につきまして現状をお聞かせ願いたいと思います。しかしこれは少し複雑な事柄でありますから、ただちに御答弁願うということは無理かもわかりません。もしそうでありましたら、この次でもよろしゆうございますから書面にでもしまして、政府がおわかりになる程度においてお聞かせ願いたいと思います。そうしますれば、日本加入した場合にはたしてどの程度の効果があるものかということを、過去の実例からして将来を推定することができると思うのでありますから、それをお願いしたいと思います。無理かもしれませんが、できますればお話願いたいと思います。
  72. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 金の資料につきましてはざつそく調製いたしまして配付いたします。あとの通貨基金の現状並びに開発銀行の現状につきましては、先般北澤委員からの御要求がございまして、一応配付をいたしてございます。ただいま申されましたように、各国別の運営状況でありますとか、復興開発銀行の融資條件等は実は書いておりません。非常に複雑になつておりまして、各国の運営状況を詳細に出すことは、相当時間がかかりますとともに、不明な点もあるのではないかと考えます。ただ貸付條件等につきましては、ある程度わかるのではないかと考えますので、別途配付いたしております資料によりまして御質問の点をお答えするというふうにお取運び願えれば幸いかと思います。
  73. 黒田寿男

    ○黒田委員 私も北澤委員の御要求によりまして、政府の方から御提出になりました資料を拜見いたしましたけれども、もう少し詳しい資料をいただきたいと思います。  それから実は、なおこの両協定につきましては、外資の導入問題等の重要な問題がありまして、こういうものが、日本としましても加入する上におきましても、ねらいになつていると思いますが、これは私は実は大蔵大臣から直接にお聞かせを願う方が適当ではないかと思います。それから為替の平価の決定等の問題等もまた両協定の問題と関係しておりますので、こういう問題に関しましての将来の見通しというような問題もお聞きしてみたいと思いますけれども、これもやはり大蔵大臣の方がよろしいのではないかと思い・ますので、あまり時間をとりませんから、この次にでも大蔵大臣に質問する機会をおつくり願いたいと思います。国際通貨基金及び国際開発銀行協定に関する質問は、きようはこの程度にいたします。  それから次に外国領事官に交付する認可状認証に関する法律案について外務当局に御質問申し上げたいと思いますが、元来領事官の設定は、普通は通商航海條約の締結に伴うものであるように考えます。必ずしもそれに限つたことはないと思いますけれども、普通はそうではないかと思います。領事の仕事の関係から申しましても、こういう條約ができていなければ、十分に仕事を遂行することができないというような関係があるのではなかろうかと思います。しかしまだ今日まで、たとえばアメリカとの間にも通商航海條約は締結せられるに至つておりません。こういう條約の締結見通しというようなものは今どのようになつているのでありますか、大体のところをお聞かせ願いたいと思います。
  74. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 通商航海條約につきましては、今日本アメリカとの間でいろいろ基本的の折衝が継続して行われておりまして、おそらく七月か八月のころに本格的の折衝が始まると思うのであります。この日米通商航海條約ができましたならば、大体これがひな型といいますか、基準となりまして、爾余の通商航海條約は比較的早急に締結される、こういうことになるのではないかと考えます。
  75. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、大体ことしの秋から冬にかけまして、主要な国との間の通商航海條約が、今のところできるというお見込みでありますか。そう解釈してよろしゆうございますれば、それでその点は質問いたしません。  それからなお多少質問してみたいと思いますが、外国領事官に交付する認可状認証は、外国領事官外国政府が委任状を出した場合と、それから元首が委任状を出した場合があると考えるのでありますが、外国領事官認可状認証いたしますのは、相手国の元首の委任状を提出した領事官の場合に限るのでありますか、それとも政府が出しました場合にも、やはり日本の天皇の認証を要することになつておりますか、その点をちよつと伺いたい。
  76. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは外国の元首の名において下付された委任状に対してだけ、こちらが認可状を出す。政府で出しておりますのは、外務大臣限りで行う、こういう建前になつております。
  77. 黒田寿男

    ○黒田委員 それから一般的に認証効力の問題でありますが、この際念のためにお聞きしておきたいと思います。これは前に外務公務員法の審議のときにも、日本領事官の委任状に対する認証の問題が條文の中に織り込まれておりまして、私も意見を述べたのでありますが、そのときに聞き漏らしておりましたので、念のためにお聞きしてみたいと思います。この認証というものは、委任状を出したというその行為の効力の発生條件になるのでありますか、軍にその行為を天皇の認証という形式を添えることによつて重からしめるというにすぎないものでありますか、これはかつて議論のあつたと、ろでありまして、現在なお議論があると思います。政府としましては、今はどういうようにお考えになつておりますか、その点をちよつとお聞きしてみたいと思います。
  78. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは提案理由の際にも申し上げてあるのでありますが、相手国の元首の委任状を提出した領事官に対する認可状に対しましては、天皇の認証を必要とすることが慣例となつておるのでありまして、そこで天皇が認証いたしますについては、憲法によりまして法律の定めるところによりということになつております関係上、ここにこの法律案を出したわけであります。一つの慣例、儀礼を前提として、この認証というものが行われるものと、かように解釈しておるのであります。
  79. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、相手国の政府の出しました委任状については認証しない、それから元首の出した委任状については認証するのであつて、しかもその認証日本としてその領事官を設定する効力の発生の條件になるのだ、そういうように承りましたが、それでよろしいのですね——これは多少議論があるところだと思いますけれども、きようは政府の御意見だけ聞いておきます。それからついでに、私は外交のことはまつたくしろうとでございますのでお聞かせ願いたいと思いますが、大使及び公使を接受する、これが天皇の国事の一つに、憲法上数えられております。一体この接受というのは、どういうことをすることであるか。新憲法ができまして、今回日本がサンフランシスコ講和條約の発効によりまして、初めてここで外国の大公使を接受するということになるのでありますが、実際には接受というのはどういう行為であるか、そのことが私にはよくわかもないのであります。いろいろと書籍を調べてみましたけれども、どういうことかわからない。通常これは儀礼的なものであるということを書いておる書物はありましたけれども、実際にはどういうことをするかどいうことが、よくわからない。これをひとつ教えていただきたい。
  80. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは信任状の捧呈を受けるといろ、一つの儀礼的のものと解していいのではないかと思います。
  81. 黒田寿男

    ○黒田委員 儀礼的なものであるといたしますならば、接受をするということは、外国の大使、公使を日本が受けるということについての、何と申しますか、その行為の効力の発生要件にはならない、單に儀礼的に捧呈式をやるにすぎないとおつしやつた、ただそれだけのことでございますか。
  82. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体さように思つております。
  83. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、要するに信任状が内閣に対して提出せられましたときに、いわゆるアグレマンを與えるかどうかということは、これはまつたく内閣の権限で、天皇の接受というものは、これはただ飾りものにすぎない、私どもも実はそう考えておるのでありますけれども、念のためにお聞きしておきたい。
  84. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ちよつと質問を聞いておりませんでしたので。失礼いたしました。
  85. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは領事官の問題と関連があるからお聞きしてみたのですが、外国の大使並びに公使の信任状は、内閣に対して提出せられるものであつて、天皇に対して提出せられるものではない。従つてまたアグレマンを與えるかどうかということも、内閣の責任において決定せられるものであつて、天皇には何も関係がない。従つて天皇の接受という行為は、まつたく形式的な儀礼的なものにすぎない、こう私どもは解釈しておりますが、それでよろしいか、こういう質問であります。
  86. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 信任状捧呈の接受という儀礼的なものは、天皇がこれを接受してやると、こういう形になつておるのであります。
  87. 黒田寿男

    ○黒田委員 しかしその接受の行為が行われるといなとにかかわらず、内閣としてその責任でアグレマンを與える、言いかえれば、アグレマンを與えるということは内閣の責任においてやる。そして内閣がアグレマンを與えた以上は、よし接受の儀礼がなくても、その大使、公使を日本は正式に受けたということになるのではないかということです。
  88. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 アグレマンは、御承知のように、実質的に内閣でやるのでありますが、この接受の儀礼は天皇が行いまして、普通の慣例といますか、実際の取扱いは、その接受がありましたときから、いわゆる大公使としての正式の活動が始まる。こういうふうに取扱いといいますか、慣例がなつておるように聞いております。
  89. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、やはり接受の行為がなければ、外国の大使、公使は、よし内閣がアグレマンを與えて後でも、接受といういま一つの行為の段階を経なければ、日本において正式に大使及び公使としての活動をすることはできない、そうなのでありましようか。私はそこまでのものではないと思うのです。念のために、しつこいようでありますけれども、お聞きしておきます。
  90. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体接受があつてからその実際的活動が始まるというのが普通の慣例でありまして、これは法律的にいろいろ論議すれば、アグレマンがすでに出ておるのでありまして、それをその後において、いけない、拒否するというようなことは、これはあり得ないのであります。純粹な法律論のみからいえば、あるいは黒田委員のおつしやるようなことにも相なるかもしれませんが、実際の慣例といいますか、今までのしきたりは、ただいま申しましたように、天皇の接受によつて実際の活動が始まつておると、こういうことになるわけであります。
  91. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうすると、かりに外国の大使あるいは公使が、日本政府のアグレマンを得た上で日本に参りまして、しかし天皇には信任状を捧呈しない、かりにこういう行動をとる大使あるいは公使があつたとしますならば、そのときにはその大使及び公使は、正式に大使及び公使としての行動日本において行うことができないということになりますか。それとも接受は單なる儀礼行為であるから、よし接受の行為を受けることを好まないような大使、公使がありましても、アグレマンが出ておる以上は、大使、公使としての活動はできると、こういうようになるのでありましようか。その点を、これは仮定論でありますが、ちよつとお聞きしておきたい。
  92. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 そういう前例も今までないようでありますし、それから大公使を互いに派遣するという段階にまで至りまして、一応の慣例、儀礼になつております捧呈をしないとかどうとかいうことは、おそらく観念的の議論としては、あるいは論議することはいいかもしれませんが、実際上の問題としてはあり得ないことであると考えております。
  93. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君に申し上げますが、大蔵大臣が見えましたので、先に、あなたと並木君と二人通告しておりますので、大蔵大臣に対する質問をお願いいたします。
  94. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつとただいまの問題がすぐ済みますので、ついでに……。
  95. 仲内憲治

    仲内委員長 もう時間も相当経過しておりますから……。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうもはつきりしないのであります。むろん私も仮定論だと申しましたので、現実にそういうことが起るかどうかはわかりませんけれども、しかしやはり理論といたしましては、接受行為がはたして大使、公使の正式な活動の開始に必要であるかどうかということについては、やはり私ははつきりとした考え方を持つていなければならぬと思います。実はこのことは、領事に出された委任状に日本の天皇が認証する必要があるときめることも、私は実はどうかと思う。そういう疑問を持つておるのであります。大公使として接受の行為が正式活動開始の條件にならぬのであるならば、何も領事官に天皇の認証なんか必要ないのではないか、こう私は思う。そこで、多少しつこいようでありますけれども、ただいまのような質問をいたしたのでありますが、今までの質問応答を繰返すだけでは時間の浪費になりますので、これはまた後日にでもよろしゆうございますが、私はそこをひとつはつきりさしておいていただきたい。その上で領事の問題に関するこの法律案の討議をいたしたい、こういうふうに考えておりますので、実はお聞きしてみたのであります。
  97. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 簡單に一言だけ申し上げておきます。信任状の捧呈というのは、やはり大公使がこれから仕事を始めるという先方の一つの意思表示ともとれるのでありまして、これから仕事を始めようというための一つの儀礼、儀式でありますので、来た大公使がそういうことをしないというようなことも、これはあり得ないことだと思います。国際儀礼、慣倒の上で一応の接受があつてから仕事を始めるという建前になつておりますので、先ほど来お答え申し上げたところで、一応の御了承を願いたいと思います。
  98. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうもはつきりしませんけれども、この問題はこれで打切つておきます。
  99. 仲内憲治

  100. 並木芳雄

    並木委員 私の質問はすこぶる簡單です。この通貨基金開発銀行加盟承認に関して、大臣から直接聞いておきたいと思つたことを一点だけお伺いいたします。具体的の問題でございますが、外貨の買取りの方針をどういうところに置かれるか。通貨基金から外貨をどういうふうに買い取る方針であるかというその方針についてお聞きしておきたいと思います。特にボンド過剩、ドル不足の状態でもありますから、この基金を中心としてこの不調和を是正して行く道が講ぜられるかどうか。もし講ぜられないならば、大臣としては別途ポンド過剩、ドル不足の解決策として、どういうことを考えておられるか、まずこれをお聞きいたします。
  101. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御質問の点が私にはつきり来ないのでございますが、国際通貨基金加入に対しましては、規約によりまして一定額の割当があればそれについて拂込みをしなければならないので、加入についての御審議を願つておるのであります。国際通貨基金加入いたしますと国際開発銀行との関係もできまして、日本の開発について借入れ申込みができる、こういうことであるのであります。御質問の点は、ポンド過剩、ドル不足というお話でございますが、今特異な事情によりましてポンドの過剩と申しますか、とにかく一年余りの間に八、九千万ポンドもたまつた、ということは相当たまつたということが言えるのであります。ポンド過剩ということでなしに、ポンド地域の輸出が輸入に及ばなかつた、こういう表現の方が適切かと思います。それからドル不足とおつしやいますが、ドルもこれはお金でございますから、あり余るということはございません。昨年中におきまして世界中で一番ドルのふえた国を順別に申しますと、日本が二番目でございます。二億数千万ドル年次にふえました。こういうところから申しますと、ドルは必ずしも不足ではございません。しかしこのドルのふえたということが、特異の事情によつておりますから、もし日本の置かれた地位が正常な国際情勢もとにあつたならば、相当ドル地域からの輸入を要しますから、その際はドルが不足して来るだろう。今では先ほど申しましたように、日本は非常にドルをかせいでいる国であります。世界で二番目と思います。将来の問題を考えますと、安心はできないからドルをかせぐ態勢を整えよう、こういうのでございます。今ポンド、ドルあるいはオーブン勘定のものを合せますと十億ドル余りになつておるのであります。これが直接に国際開発銀行との関係はございません。われわれが今国際開発銀行あるいは国際通貨基金に入つてから、もし借入れを申し込むとすれば、もちろんドル借入れを申し込む、こういう考えであるのであります。
  102. 並木芳雄

    並木委員 開発銀行からの借入れの場合に、政府としては政府借入れに重点を置きますか、それとも民間の借入れの方に重きを置きますか。政府としての借入れとしてさしあたり特に具体的に何か予定されておるものがないかどうか。それから民間が借入れる場合に、政府としては所定の銀行に対して保証をすることを大いに奨励して、借入れの道がどしどし開かれるようにして行く方針であるかどうか、そういう点について……。
  103. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国際開発銀行の貸出先を見ますと、ほとんど全部政府相手でございます。ごくレア・ケースに半官半民の場合がないこともありません。私の記憶では一、二件ではないかと思います。その他におきましては、政府かあるいは地方公共団体を主にいたしておるのでございます。そこで借入れる場合におきましては、政府借入れるということが普通の常識だと考えております。民間が今言つたような状態で借入れることはごくレア・ケースであります。民間同士の借款あるいはアメリカの輸出入銀行からの借入れ等は、民間で相当ございます。こういう場合の保証につきましては、今回御審議を願いました日本開発銀行、輸出入銀行等が保証の衝に当り得る法律案の改正をいたしましたので、おおむねこういうところが入るのではないか。しかし何も日本開発銀行とか日本輸出入銀行ばかりでなしに、民間の銀行その他の保証もあり得ると考えております。
  104. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君。
  105. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと外資導入の問題につきまして、お聞きしてみたいと思います。この両協定、特に国際復興開発銀行は、外貨資金を日本に導入するということに関係するものでありまして、またわが国がこれに加入するにつきましては、そこにねらいの一つがあるのであります。一般的に外資導入の問題は、吉田総理が本国会の施政演説におきましてお述べになりましたように、現内閣の経済財政政策の大きな支柱の一つになつておる、ところがそれであるにかかわらず、実際は外資導入の見通しは非常に悲観的だと思います。これは巷間のうわさでありますから、はたして真実であるかどうかわかりませんし、また政府もとより否認せられるであろうと思いますけれども、私ども巷間伝わるうわさを聞きますと、こういうことが言われておる、吉田総理はダレス氏に書簡を送りまして、講和の相手としての中国を、蒋介石政府において選ぶ、そうなれば日本の対中国関係の貿易が非常に悪化する、日本はそのために経済的に打撃を受けるに違いない、そこでそれを救うために、言いかえれば日華條約を締結させる交換條件として、外資の導入を約束したとかしないとか、あるいは日本から要求したとかしないとかというようなうわさも飛んでおるのであります。これはしかし私ども別にそういうことがあつたかどうかということについての真実性を確信するものではありませんが、とにかくそういううわささえある、いずれにしましても外資の導入が、吉田内閣の政策の大きな目標の一つになつておるということを私は考えます。しかし私どもの考えでは、今のような吉田内閣の政策で、言いかえれば日本が軍備のために財政支出を大きく計上するというようなことをやり、また国際情勢の中で、現在のように日本が対立の渦中に引込まれるというような状態になつて、はたして外国の資本家で、日本に投資なんかするような計策の立たぬ人があるかと思う。日本をこういう内政状態に置きまして、またこういう国際情勢の中に置いて、それで日本に長期資金を貸してくれるような外国政府や資本家を求めることは無理だ、私はこう考えるのが常識だと思います。軍事的なものにつきましては何かやつてくれるかもしれません。しかしながら真実の意味における復興開発というようなことに関し、私はとうてい望みがないと思う。現内閣のような政策では外資導入の望みはない。それにもかかわらず、吉田首相はそれを非常に大きく期待されておるようであります。私は一般的な問題はお尋ねしません。この協定の問題だけについてお尋ねしますが、開発銀行に出資することによりまして、わが国が一体どのくらい復興開発のために必要な外貨資金が借りられる見込みがあるか。また銀行の保証を受けて民間の産業に外資を導入するというようなことが、銀行への加盟によつてどれだけ期待できるかということについて、この範囲に限つて大蔵大臣のお見通しを聞かしていただきたい。
  106. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外資の導入の問題につきましては、われわれが最も努力いたしておるところであります。お話の通り、これは吉田内閣の重要政策一つでございます。しかしこれは国際関係におきましても、国内関係と同様、あるいはそれ以上に、金を借りようと思えば、借りるだけの信用も得なければなりませんし、またつながりも持たなければなりません。信用を持つということは、とにかく日本経済がよくなるということが前提でございます。そしてまた特殊の事情といたしまして、今までの外債を拂う方法を講じなければならぬ。こういうことも前提でございます。また国際通貨基金というような国際的の信用機関に加入するコネクシヨンを持つということも必要であるのであります。従いましてわれわれは外資導入、ことに政府並びに政府関係企業が外資を入れようという場合の前提條件といたしましては、外債の支拂いとか、国際通貨基金への加入をまず急がなければならぬ、こういうので御審議を願つておる状況であるのであります。従いまして、入つてからの状況で借りる金も考えなければなりません。多いに越したことはございますまい。しかしこれは不必要な金を一度に持つて来られてもたいへんなのでございますから、これは日本経済の歩みを見ながら、適当な金額の申出をいたしたいと考えております。今ここで幾ら幾ら申し込むということを私から申し上げるわけには参りません。  それから外資の問題は、政府借款並びに政府関係機関のみならず、アメリカの輸出入銀行、あるいはアメリカの一般民間の金融機関、投資家との関係もあります。これにいたしましても、先ほど申し上げましたような信用を高めることと、コネクシヨンを持つことでございますので、取急いで通貨基金への加入、あるいは外債処理の方法を講じようというのであります。これを講じませんと、なかなかむずかしい。われわれはこれを講じまして、そしてわれわれが掲げておりますように、相当の外資を入れて、日本の産業復興の原動力にしたいという気持を持つておるのであります。今のは政府関係並びに政府の問題でございますが、民間の方におきましては、衆議院あるいは参議院で御審議願つております外資法の改正によりまして、今後相当入つて来ることを期待いたしております。またアメリカ政府関係機関である輸出入銀行からは、御承知通り先般四千万ドルのクレジツトが来まして、そして四千万ドルの綿花借款といので借りておる状況であるのであります。相当今まででも民間並びにアメリカ政府機関から外資が来ておる。今後はそれ以上に、民間も政府もこぞつて必要な資金を入れようという態勢を整備しつつあるのでありますから、あなた方のおつしやるように、外資は望みなしというふうにきめてかかる必要はない。われわれは、外資が来るまでに経済力を発達させ、そうして信用を高めて、これにいわゆる油を注ぐように速度を早めよう、こういうのでやつておるのであります。外資導入は一つの重要政策でありますので、この点に向つて極力努力いたしております。そうしてわれわれの努力によつて、これが成功することを確信いたしておるのであります。
  107. 黒田寿男

    ○黒田委員 政府の御意見はわかりました。今具体的に何ら数字上の計画はない。ただこれに加盟することによつて日本の国際的信用を高め、国際的地位を向上させ、将来外資導入をなす場合における一つの有利な條件をつくり上げるのだ、現在としてはそれ以上に具体的な計数上のものはまだ考えていない、こうおつしやつたようであります。そうおつしやいますれば、私はそれ以上にはお聞きしてもむだであると思いますので、お聞きいたしません。そうすると、きわめて一般的に、抽象的に期待できるというだけであつて、具体的にどうなるかということの問題は、何も期待を私ども持つことができない、こういうことだろうと思う。そこで外資の問題につきましては、きようはそれ以上の質問はいたしません。私は、要するに現内閣は日本を国際的に危險な状態に陷れる政策をとつておりますから、そういう国に外国政府並びに資本家が何を好んで資本を投ずるかという根本的な疑問を持つております。日本がもつと平和主義の方向へ進むという努力、日本へ資本を投入しても、むだにはならぬという確信を與えるような政策に切りかえて行かなければ、根本的に申しまして外資の導入はむずかしいのではないか、こう私どもは考えておるのであります。  次にお尋ねしてみたいと思いますのは、現在のような為替レートの関係でこのまま国際通貨基金加盟いたしまして、わが国の為替レートの決定と変更に関する自主権が、これは絶対的に喪失されるとは言えませんけれども、非常に大幅に喪失されるというように見なければなりません。そうしますと、現在のような国際情勢もとで、また現在のようなレートでそのまま参加して、将来に問題はないかどいう懸念があるのでありまして、私はアメリカの景気といえども決して楽観できないと思う。世界の現在の状況から見まして、相当に波瀾のある状態が近く現出されるのではなかろうかという懸念がありますときに、為替政策は非常に重要な問題であつて、自由自在に国際経済状態の変転に対して日本が対処して行かなければならない場合に、少し拘束され過ぎるようなことになるのではなかろうかという心配があるのであります。私は財政問題につきましてはきわめてしろうとでありまして、十分な知識は持つておりませんが、そういう根本的な疑いを持つている。この点につきまして大蔵大臣のお見通しを聞かしていただきたい。私はきようはこれだけにして打切ります。
  108. 池田勇人

    ○池田国務大臣 前の質問で、具体的に大蔵大臣が答えないからというお話でございますが、今大蔵大臣として具体的には答えられない。これは一家の家庭にしましても、非常に借金もある、これらうんと働いて行かなければならない、子供もふえて来た、今こういう商売をしているが、材料をどれだげ買い入れて、そうして製品にして売ろう、しかしそれだけでは、子供がふえるから、もつと商売をふやさなければいかぬ、そして工場も建増ししよう、今の在庫品を売つて金がどれだけ入るか、それからその売れようによつてどれだけの工場の建て増しをやるか、こういうことは常に考えて行かなければならぬ。そこで私はこれだけ借りたいのだといつても、それだけの在庫品の問題、あるいは新規計画を立ててやつて、そうして見通しがついて、みんなが競争して借りるのでございますから、その時と額と見通しをつけなければならぬ。今軽々しくこういうようなところにこういう金を借りたいというようなことは、大蔵大臣としては言うときではないのであります。それは電源開発、その他いろいろな計画もございますが、それを言えとおつしやることは私は無理だと思います。また言わない方がいい。しかもまた今言つたように、日本は今、特殊な事情ではありますが、非常にドルをかせいでおるときなのであります。先ほど申し上げましたように、とにかく非常な国際的な信用を博しつつある。あなたは日本が平和的でないから外資は来ないというようなことをおつしやいますが、だんだん毎年来るのがふえて来ている。四千万ドルの輸出入銀行の綿花借款のごときは、これは信用を博しているからでございます。あなた方の議論は実際と少し遊離しているのではないかという気がいたします。  それから今の御質問の、国際通貨基金に入ることは日本の為替相場を拘束されるのではないか、こういう話がございました。まず三百六十円のレートをかえる必要があるかどうかという問題について、いろいろの議論があるようでありますが、私は昨日も、あるアメリカの相当な役人と会いましたが、今アメリカを除いて一番為替関係で強いのは、しこうしてまた一番国際收支で信用のあるのは、第一カナダ、第二スイツツアランド、第三日本、ベルギーはその下じやないか、こういうことまで言つておるのであります。これはもう信用がございます。日本のこのような躍進は——これは私が言うのではありません。きのう会つた相当の日本通が言つておるのでございます。そういう状態でありまして、決して御心配になる必要はないし、それから他の委員会でも、もし国際通貨基金に入る場合には、一ドル三百六十円でなしに、一ドル四百円くらいになるのではないかという変な質問がありましたが、これはとんでもないことであつて、一ドル三百六十円というのは、加入する国の大蔵大臣が決定するのであります。向ろから何ら拘束を受けません。拘束を受ける筋はない。しかもまたドル三百六十円というのは適正で、ほかの国にもあまり見ないほどの、いわゆるやみ相場も少いし、りつぱな地位を保つておるのであります。もちろん国際通貨基金に入りますと、かつてに為替レートを上げ下げすることは困るという思想はございまして、多分規定にも二割を越える場合につきましては、加盟国の了解を得るとかいう規定もあつたと思います。しかしこれにいたしましても、経済というものは生きもので、実態に沿うのが必要なのでございますから、一昨年の秋、イギリスは二割余りの引下げをやつたと思うのであります。一応の考え方といたしましては、国際通貨基金に入りますと、為替レートの大幅な変更については承認を得るというふうな規定がございますが、われわれは今申し上げましたように、一ドル三百六十円というのは強い相場であります。フラン上かポンドとは違うのでございますから、あなたの御心配のような点はないことを私はここで断言いたします。
  109. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 実は今外務委員会日華條約が審議されておりまして、中日貿易についてどの大臣に聞きましても核心をついた答弁が得られないので、隔靴掻痒の感があるので、経済閣僚として池田大蔵大臣の責任ある答弁をお聞きしたいのであります。第一バトル法と日本の貿易管理令の問題でありますが、日本の輸出貿易管理令の別表第一というのが、バトル法のA表以上に嚴格な制限を受けておるのでありますから、日本は別にバトル法の制限を受けるはずはないと思いますが、この点についてまず大蔵大臣はどう考えられておるのか。要約しますと、バトル法以上の厳重な制限をもつて貿易を管理している日本が、バトル法のことを心配する必要はないので、少くとも輸出貿易管理令の別表第一以外のもの等については自由に貿易してもいいと思いますが、その点についてまずお聞きしておきたい。
  111. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大蔵省の所管でございませんので、所管大臣からお聞き願うことが一番適当かと思います。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 ところが、なかなか所管大臣が出て来ないので、あなたから聞こうと思つたのですが、そこでもしバトル法が適用された場合に、日本に対する経済的な援助が中止されるというようなことを懸念しておる人もあるのでありますが、具体的にバトル法が適用される場合、経済的な援助がさしとめられると考えられるような要素がありますか。
  113. 池田勇人

    ○池田国務大臣 外務大臣の方へお聞き願つた方がいいと思います。バトル法の解釈につきましても私はよく知りませんし、貿易管理令につきましても、閣僚の一人として署名いたしましたが、專門でないので、その方からお聞き願いたい、
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 さざえのつぼの中に入つたようにちつとも答弁が出て来ないのでありますが、最近アメリカ側が関税の引上げ、あるいは非常に日本品に対する輸入制限等の政策がとられ、たとえば具体的にはまぐろのカン詰の問題もありますし、そのほか、ミシン、自転車等の関税の引上げの問題等があるのでありますが、これに対抗する貿易の方法としては、やはり中日貿易というものが一つの重大な打開の方法だと思いますが、この点について大蔵大臣はどう考えておるか。
  115. 池田勇人

    ○池田国務大臣 アメリカの関税引上げ、輸入制限等の機運はあるように新聞では見ております。アメリカ政府におきましてもそれについて善処しておると思いますが、日本政府といたしましても、十分これが対策を講じなければならぬことは、何人も認めるところでございますので、私は外務大臣その他関係大臣に、国務大臣の一人として強い対策を要望しておるのであります。アメリカがそうなつた場合、すぐ中共に向つてつてこれを補いするという考え方は、一つ考え方でしようが、一方ではとめてしまつているときに、そこに行こうといつてもなかなか行けないから、われわれはアメリカの関税政策その他にかかわらず、日本の活路を見出すために、アメリカに向つてよいものを安く売ると同時に、南米、東南アジアの方にも出て行く準備をし、また着々そういたしておるのであります。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 どうも大蔵大臣では、私の中日貿易の問題について答弁を得られないと思いますから、ぜひ通産大臣を委員長の権限で呼んでいただいて、もう少し詳しく聞きたいと思いますので、その機会を與えてください。
  117. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 大蔵大臣がお見えになつていらつしやいますから、一点だけ伺いたいと思います。  この前の委員会で、木内外国為替管理委員長が、外為委員会の性質というか、その仕事について五つの原則を述べられ、その中で、ある程度その委員会は政治から超越したものであるということをおつしやいました。この点を大蔵大臣もお認めになるか、それをお聞きいたします。理由は、この国際通貨基金加入に際しまして、外国為替管理委員会というものを設立してそうしてこの加盟を促進して行つたと思うのでありますが、今ここで外国為替管理委員会というものを、機構改革か何か知りませんが、なくするといたしましたならば、そういうものをつくつて加盟を促進して行つたのにかかわらず、ここでなくするということは、国際的にも信用をある程度失うことになりはしないかと思うのですが、その点の大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  119. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大分事柄が曲げられて言われたり、伝えられたりいたしておるようであります。大体外国為替管理委員会の発生の理由はいずれにありやということから御検討願いたいと思うのであります。これは御承知通り、敗戰後進駐軍が日本外貨の收支その他を全部自分の勘定でやつておつた。そこで国内的に何もつながりがないと困るというのであれを置かれた。そうして昨年の春ごろから外貨の管理が日本政府に渡された。ここで当然大蔵大臣のもとに渡るべきものなのであります。そこで司令部の方では、日本政府でいずれかにきめられたらいいだろうというので審議いたしましたところ、まず大蔵大臣のもとに日銀、外為委員会を置いて外貨の管理をやつて行く、こういうので今まで来たのであります。今回行政機構の簡素強力な責任体制の確立の意味におきまして、大蔵省にこれを置こうとしておるのであります。どういう国を見ましても、外貨の管理を中立的な機関が責任を持つてつている国がありましよう。アメリカは為替管理をしておりませんんから別でございますが、占領治下の西ドイツにおいてやつておるだけで、為替管理をやつているイギリス、フランス、ベルギーあるいはカナダ、全部大蔵大臣のもと委員会を置いてやつているのじやありませんか。国際通貨の問題、国内通貨の信用の問題はだれが責任を負うか。これは民主政治から申しまして、いずれの国でも大蔵大臣が責任を持つてやるのが当然のことです。いろいろな議論を吐く人がおりますが、よく世界の情勢、国内の情勢をお考えになれば、ああいう無用の長物は占領後の特殊の状態——西ドイツにはまだあります——特殊な状態のもので、かつてな議論でやるべきではない。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 大蔵大臣のそういう自信に満ち満ちたお答えは、私もそういうふうにお答えになるだろうと想像しておりましたが、木内委員長との間に食い違いがあると思うのです。その辺の調整をよくしていただきませんと、いろいろ知つた国民はどれを信じていいか非常に迷うと思うのです。その点が一点。それから私が伺いたいと思いますのは、為替管理委員会があつて、それが木内委員長の言われるように、政治から超越したものであつて、そういうものがあるという條件でこの通貨基金加盟を促進して行つたというふうに了承しておりましたので、今ここでそういうものを廃止することが国際的信用を失わないかどうかということであります。
  121. 池田勇人

    ○池田国務大臣 為替管理は政治でございます。経済問題でございますが、政治問題であります。そこで政治を担当する国務大臣がその責任を持つてやるのが当然であります。総理大臣のもとに身分を保障せられた、政治責任を負わないような人がやつてはいけない。通貨の問題、為替の問題は、それは民間へ移す方がいいでしよう、アメリカはそうしております。為替管理の必要がなくなつたならば、大蔵大臣は為替管理をやろうとはいたしません。今は為替管理の必要がありますので、為替管理法を置いてある。それは一つの政治でございますから、内閣が責任を持つべきであります。身分保障を受けた人なんかがやるべき問題でない。これはなぜそういうことになつたかといいますと、終戰後ドル資金、外貨というものを全部進駐軍が持つて、政治より離されておつたから、政治から離れた、身分保障を持つた人がやつておつた。そこで第二の問題として、外為委員会があつたから国際通貨基金に入れるようになつた、これはとんでもない話で、日本独立し、また日本経済が先ほど来申し上げたような状態になつたから入れるようになつたので、一機関があるとかないとかいう、そんな問題ではございません。経済とかあるいは国の信用というものはそういう問題ではない。やはり民主政治の内閣が全部責任を持つべきものだ。この問題につきましては十分検討いたしまして、私と木内君の間のみならず、総理からも木内君によく話をしておられるのであります。これは木内君の意見ばかりお聞きにならず、各方面に意見をお聞きになつていただきたい。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 だから私はきよう伺つたわけでございます。そうむきになつて説明にならなくても、私も大体わかりましたから、もう少しにこやかだお答えしていただきたいと思います。  次にこれは事務的のことでございますから、大蔵大臣でなくてけつこうでございますが、この通貨基金加入の問題で第六條の第一項に「加盟国は、巨額な又は持続的な資本の流出に応ずるために、純計して基金の資金を利用することとなつてはならない。」と書いてありますが、これはどういう意味のことをおりしやられたのでございましようか、その意味が私にはちよつとわからないのであります。
  123. 東郷文彦

    東郷説明員 通貨基金の利用の点は、協定の原則から行きまして、正常取引のために、必要なものを短期に買うということになつております。六條一項(a)の規定は、たとえば相当長期にわたつて国際收支が弱小を継続する、その理由が、たとえば為替相場のきめ方にあるとう場合には、それの補てんのために基金の資金を長期にわたつて濫用してはいかぬ、こういう趣旨だと思うのであります。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは「純計」というのは、原文ですと「ネツト・ユース」と書いてありますが、その意味はもつぱらそれに使うという意味なのでしようか。
  125. 東郷文彦

    東郷説明員 すべての国際收支を通算してその結果そうなつた。その原因はいろいろあるわけですが、結局そういう結果そういう状態が生じた場合という意味だと思います。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 法律というものは、それを読んでわかるようにしていただいて、そうして守つて行くものだと思うのですが、私はこの文章がどうしても読んだだけではわからなかつたのです。私が頭が悪いのかもしれませんが、そういう意味から、もう少しわかりやすくこれを書いていただけたら非常に都合がいいと思うのです。これだけ読んで通ずるでしようか、どうでしよう。これは私一人に通じないのかもしれませんが、これは私は意味がわかりません。
  127. 東郷文彦

    東郷説明員 この基金協定は特に非常に專門的なものでありまして、また原文が外国語でありますから、われわれとしては極力わかりよく書いたつもりなのでございますが、ある程度はどうもやむを得ないと思います。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう御事情はわかりますけれども、なるべくそういう点、わかるようにしていただいたらいいと思います。  次に理事の問題ですが、理事に十二人選ぶことになつておりまして、その理事に選ばれる規定を見ますと、「各加盟国は、二百五十票の外、自国の割当額の十万合衆国ドル相当額ごとに各一票の票数を有する。」日本は二億五千万ドルの割当額で、十万ドルに一票といたしますと、二千七百五十票になると思いますが、この票でもつて理事になり得る可能性があるかどうかを承りたい。
  129. 東郷文彦

    東郷説明員 その点については、日本の場合二千七百五十票だけでは理事に選任されるわけには参りません。と申しますのは、平均約四千票くらいいるわけなのでございます。そこで理事国の数は限られておりまして、日本と同じような票数あるいはそれ以下の票数を持つた国がたくさんあるわけでございます。結局選挙によつてきまるわけでございますから、日本加盟した上で措置よろしきを得れば理事に選任される可能性はあるわけでございます。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一つ伺いたいことは、先ほど、加入いたしまして六千二百五十万ドルの金を日本から拂う。日本の予算面では二百億しか計上しておらないので、足りない分は日銀の持つている金で支拂うというふうなお話がござましたが、その場合の金の一匁の価格を大体どのくらいに見ていらつしやるのでしようか。現在の市場相場と同じかどうか、ちよつと参考までに伺わせていただきたい。
  131. 宮川新一郎

    ○宮川説明員 現在の政府の買入れ価格は四百一円であります。日銀の帳簿価格は」グラム三円四十五銭でございます。
  132. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて暫時休憩いたします。午二時より再開することといたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  133. 仲内憲治

    仲内委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。栗山長次郎君。
  134. 栗山長次郎

    ○栗山委員 日華條約の政治的効果並びに経済的効果について大臣及び係の方のお答えを願いたいと思います。日華條約の政治的効果については、われわれはむろんプラスであると考えておるのでありますが、ときにはプラスを上まわるマイナスであるという御意見もあります。今の国際情勢下において、また近き将来の日本と隣邦中国との関係等を考慮した場合において、まず政治的な効果とでも申すべき点について御所見を承りたいと思います。
  135. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政治的の効果とは、つくつた方でこういう効果があるどか、ああいう効果があるとかいうのはおかしな話であつて、実は御批判にまつよりしかたがないと思います。ただわれわれの考えておりますことは、言葉は変でありますが、善隣友好といいますか、でき得る限り可能な範囲で、どこの国とも友好関係を結びたい、こう思つて、できるところからどしどしやつて行く。これによつて、結局においては世界の全部の国とまつたくの友好関係に入りたいと思つておりまして、その意味中華民国政府とも條約を結んだわけであります。この方針はまだほかにもどんどん進め得る範囲では進めて行くわけでございます。それから逆に言いますと、この條約がなければどういう点が困るか、これは日本の方針として、できるところと條約を結ばないというのは方針にはずれるのでありますが。それを除いて具体的にどういう点で困るかといえば、海底電線の問題もありますれば、漁業の問題もあります。また種々のクレームといいますか、財産権の問題もありますし、特に日本の国内におります台湾出身の人人は、従来日本の国籍を持つてつたのでありますが、平和條約によりまして日本の国籍を喪失するわけであります。ところが台湾における中華民国政府との條約がなければ、これらの人はいわば無国籍人になつてしまうという非常な不便もあるわけでありまして、それやこれやから、われわれは條約をすみやかに締結した方がよろしい、こう考えて、可能な範囲でいろいろの條項をとりきめたわけであります。大体私どもはさように考えております。
  136. 栗山長次郎

    ○栗山委員 次に先ほど申しました経済的効果と申しますか、経済的価値と申しますか、そういう点についてでありますが、多くの人は中共の支配する地域とのことを考えれば、あの小さな地域を目標にして、かような條約を締結することは経済的にマイナスである、そういう批評をする人が多いのでありますが、台湾アメリカ援助等もあつて、いわば現在ドル地域にあるか、それとも将来あるか、準ドル地域的なものであるように私どもには思われるのであります。そういう観点から、ポンド圏との取引が、日本のポンドが過剩になつて必ずしも有利でない。ドル圏であれば、それが少しウエートが低くても、貿易的な価値があるだろうというようなことも考えられますし、また南方の華僑の諸君が、中共支配地域よりも、台湾を何となく故郷のように考えて、そこを日本人との連絡の中継基地にするというようなことも想像されるのでありますが、それらのことを背景としてお聞きしたいことは——それについても御所見を承りたいのだが、もつと特定の問題としては、現在台湾との貿易取引はどういうものがどのくらいになつておるか、将来どんな見通しがあるかという点についてお答えを願いたいと存じます。
  137. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 台湾の貿易も、年によつて多少の変更はむろんありますが、たとえば昨年の状況を申し上げますと、日本からの輸出が四千七百万ドル台湾から日本への輸入が約五千百万ドル、総計としまして、ごく大ざつぱに、こまかい数字を除けば、約一億ドルの輸出入があつて、多少日本への輸入が超過しておりますが、大体バランスが合つておるというところであります。輸入品としては、砂糖とか、米などがおもなるもので、多少のバナナがあります。おそらく将来はしようのうなんというものも入つて来ることと思います。こちらから出すものは、おもに機械類であるとか、化学肥料であるとか、あるいは繊維品であるとか、そういうもののほかに、ごく少額のパルプであるとか、油脂であるとかいうものがあるわけであります。日本としましては、米につきましても、まだ将来話合いによつてはもつと輸入できる可能性があると考えております。砂糖などもむろんのことでありますが、さらに塩においても、値段等の点で折合えば、相当の輸入量があると思います。現に話をしつつあるようなわけでありますが、この額はむろん人口に限りがありますから、そうどこまでも飛躍をするというわけにも行きませんけれども、その程度よりはもつと多いところで安定するのじやないかと考えております。従つてわれわれの方の貿易の点から申しましても、台湾は人口に比べるとなかなか重要なところでありますので、この條約ができ上りますれば、一層こういう点が自由になりますし、また日本の商社が向うにも行かれますから一貿易は一層併進されるものとわれわれは期待いたしております。
  138. 栗山長次郎

    ○栗山委員 先ほど申しましたドル圏内とかなんとかいう考え方ですね、具体的にアメリカのあそこに対するエイド、あれは何か数字がございますか。
  139. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はその数字は的確に知つておりません。また非常にはつきり発表されておらないようでありまうが、相当の額がいろいろの援助の名目で出ておると思います。日本の場合は台湾との貿易は差額だけがドル決済ということになりますけれども、その差額がごく少額でありますので、大体バランスがとれております。やはり一種のオープン・アカウント式のようなかつこうになつております。ドル建ですべて取引いたしております。将来ともアメリカ援助もむろんあると思いますし、それから元の中国本土の相当の金持ちなども入つて来ておりますから、いろいろな点で、ただ人口だけで見るよりはゆたかな地域であるということは言えると思います。
  140. 栗山長次郎

    ○栗山委員 南方における華僑の経済力というものは相当のもののようでありますが、その華僑との関係、中共支配地域よりもよかろうと想像するのですが、日本と南方との取引をしたり、南方とともに経済的な計画をする上に、華僑というものは度外視すべからざる一つのフアクターだと思いますが、そういう意味台湾をそのつなぎにするというようなことは、事実問題としてでき得ましようか、また想像されましようか。
  141. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 華僑の重要性はむろんでありますが、日本がいろいろする前に、もう台湾における中華民国政府がいろいろな方法で華僑にも働きかけているようであります。同時に中共政府の方も華僑に働きかけております。今どういうふうになつておるか、私も的確なことは知りませんけれども。大ざつぱにいうと、中共側に立つもの、国民政府側に立つもの、それから中立でどつちにもつかぬというようなものと、自然三種類にわかれるわけであります。むろん大陸という大きな地域と、台湾とを比べますれば、華僑としても大陸に親族縁者のあるものが多いことは自然でありますが、しかしその割合よりははるかに多く台湾との間に関係を持つているようにも思われます。従つてわれわれとしても、華僑の動向等も十分考えて、台湾との貿易もやる、また南方地域の華僑との関係も改善して行くつもりでおりまして、そういうふうに考えております。
  142. 仲内憲治

    仲内委員長 大村清一君。
  143. 大村清一

    ○大村委員 この際簡單に、最近の新聞の報ずることにつきましてお尋ねをしてみたいと思うのであります。クラーク司令官言明によりますと、私が国連司令官就任後得た情報によると、ソ連は極東での軍事力を増強しているということであります。また最近ワシントン電報の報ずるところによりますと、米国の国務省は、同省が十日前に、朝鮮に派兵しておりますところの国連十六箇国に対しまして、極東における共産軍侵略の新たな危險性について警告を発したと報じておるのであります。なおまた同国務省は、リツジウエイ大将も上院軍事委員会の秘密会において証言の際に、この侵略の可能性を予告したと指摘しておるのであります。またフィリピンのキリノ大統領は、米国務省のこの警告に基きまして、本月二十日に政府首脳部及び地方長官の合同会議を開催したということを報じておるのであります。これらの報道は、極東の平和、特に日本の安全にも重大な関係があることと思われるのであります。私どもといたしまして、この報道には多大の関心を拂わざるを得ないのであります。つきましては、これに関する諸情勢につきまして、外務大臣の見解をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  144. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは二つの問題のようであります。つまり休戰会談をめぐりまして、その背後における兵力の増強という問題と、それから休戰会談が済まないうちにそういうことがあるかどうかわかりませんが、よその方面に対する新たなる紛争という二つの問題と思います。北鮮側と申しますか、中共側と申しますか、これが非常に増強されつつあるということは事実のようでありまして、また空軍力なども相当に拡充されておるというふうに聞いております。しかしながらこれが朝鮮における国連軍に対する非常な脅威になつておるかどうかという点では、それほど心配はないのじやないか、こう私は考えております。それから他地域の問題等につきましても、これはすでに仏印でもああいう状況にありますし、ビルマの方面につきましても、あるいはチベツト等におきましても、いろいろ実際の行動があり、またうわさに基く報道もあるのでありますが、われわれといたしましては、日米安全保障條約の趣旨からいいましても、アメリカ側と終始とれについて忌憚ない意見の交換をするというつもりでおりますし、先方もそのつもりでおるようであります。ただいまのところ、私どもの聞いている範囲では、現実の脅威がすぐ現われつつあるか、あるいは現われんとする兆候があるという程度でもないようであります。しかしこういうものは、何か起つてからあわてても間に合わないものでありますから、十分の注意をする必要はある、またこれに対してでき得る限りの準備考える必要はむろんあると考えます。すぐにどうということはないのじやないか、こういうふうに考えております。
  145. 仲内憲治

  146. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はただいま議題になつております日華條約につきまして、実は逐條的に大臣の所見を求めたいと思つたわけでありますが、時間の関係等もありますので、特に二、三の点だけに限定をいたしまして政府の見解を明らかにいたしておきたいと思います。  まず第一條におきまして、この條約の効力発生の日を規定いたしておりますし、さらに第十三條におきまして、効力発生の日を批准書の交換の日ということを規定いたしておるわけであります。大体今日のところ、いつごろに批准書の交換ができて効力が発生になるという見通しのものかという点をまず承つておきたいと思います。
  147. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは中華民国側におきましては、立法院の承認を得るものと考えておりますが、われわれとしてはむしろ国会側に伺いたいのでありまして、衆参両院がいつこの條約を承認されるかという点に非常に問題はかかつていると思います。これは相手国のあることでありますから、ここではつきりどうということは申し上げられませんが、おそらく両院でこの條約が承認されたならば、それからはあまりおそからざる時期——あまりというのはあいまいかもしれませんが、かなり早い時期に批准交換の運びに至ると考えております。むしろ問題は、日本の国会における承認という問題に非常にかかつていると考えております。
  148. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に第二條のいわゆる台湾澎湖島並びに新南群島及び西沙群島に対する権利権原及び請求権の問題であります。台湾澎湖島領土権の問題につきましては後ほど伺うことにいたしまして、新南群島及び西沙群島に対する領土権の問題について承つておきたいと思います。新南群島は、台湾の高雄市の中に編入されておつた、南支那海の群島であることは申すまでもありません。これにつきましては日本政府とフランス政府との間について交渉が行われておつたけれども、その最後的な決定がなかつた群島であります。さらに西沙群島につきましては、インドシナ半島の東北洋上にある群島で、フランスと中華民国政府との間に領有問題が起つておつたが、この島に対しては日本が領有権を主張したことはないと思いますが、この新南群島と西沙群島とはいささか性質を異にすると思います。すなわち新曲群島につきましては、台湾の高雄市の管轄に置かれておつたものであることは明らかであります。また西沙群島につきましては、中華民国政府とフランス政府との間で領有権をめぐつて論争の対象に上つておつたもので、日本とは関係のないことでありますが、特に第二條においてこれらの新南群島及び西沙群島の問題をここで持ち出したという事情はどういうことであるか、また今後これらの島々はどういうふうになるのかという点について承りたいと思います。
  149. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは御承知のように、新南群島の方は、今おつしやつたように、日本としては台湾の管轄の中に入れておつたわけであります。それから西沙群島の方は中華民国とフランスの間に争いがあつた、日本領土権というものは主張していなかつた。今度平和條約で新南群島も西沙群島権利権原等を放棄しておるのであります。ほかのいろいろの島々に対しても、権利権原等を放棄はいたしておりますけれども、要するに中国関連あるものは、台湾澎湖諸島、新南群島、西沙群島等でありますから、そこでこの関係でこれだけのものを出して来た。それでどこの所属になるかということは別問題であるけれども、中国との関係においては、日本はこういうものに対して権利権原等を放棄したという平和條約の規定から、中国関係あるものだけを抜き出したわけてあります。
  150. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 新南群島につきましては、かつての高雄市の管轄下にあつたのであります。従つて日本の領有権のもとにあつたわけであります。これを日本が放棄するということは、今度の條約の建前からいつてふしぎはないわけでありますが、日本の全然関係のない、しかも日本がいまだかつて領有権について争つたことのないところの西沙群島に対する一切の権利権原を放棄するというようなことを、この條約において何ゆえに規定する必要があつたかという点であります。
  151. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私は外務省へ入つて以来かなり長い間西沙群島の問題の係をしておりましたので、よく覚えておりますが、ずつと燐鉱石に関する利益——日本の船が入つちやいかぬとか、入つていいとかいうことで始終問題が起つておりまして、ずつと議論を続けておつたのであります。従つて日本としては領土権というものを特に主張したことはございませんけれども、いろいろな意味で、ある場合には交渉の都合上これは事実こつちのものであるというようなことも言つたこともないことはない、要するに何かしら常に日本は燐鉱の採集の権利があるのだ、そこに非常な利益を持つておるという主張でずつと来たのであります。従つて今度平和條約と同様に、ここにおいてこれらの問題については、包括的にもう権利権原請求権というものはないのだ、日本としては主張しないということを明らかにしました関係上、これが中国とフランスの間の係争の島でありますものですから、この條約の中で平和條約と同様の規定を入れたわけであります。
  152. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は新南群島に関しましては、台湾澎湖諸島に対する日本権利権原放棄と同じ性格の範鷹に属するのではなかろうかと思うわけでありますが、西沙群島につきましては、台湾澎湖諸島並びに新南群島とはややその性格を異にいたしております。従つてただいまの御説明からいたしますと、西沙群島領土権の問題というものは、将来中華民国とフランス政府当局との間において解決を見るべきものである、こういうふうに解釈できると思うのであります。今度の條約は日本が一方的に西沙群島に対する請求権を放棄いたしましたけれども、そのことは決して西沙群島中華民国の領有権下に置くべきものであるということを意味するものではない、こういうふうに考えるわけでありますが、いかがなものでしようか。
  153. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 はつきり申せばその通りでありまして、要するに日本としてはそういうものに対する権利を放棄したのであります。あとの問題はこれは日本関係することでないわけであります。もし係争になつておれば係争になつておる国の間で話をする、係争になつてなければ自然ある一国に行くでありましようが、要するに日本としてはこういうものにも権利等は要求しないのだということを、平和條約と同じ文句でここに表わしておるだけであります。
  154. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 大体それでわかりました。次に先ほど保留しておきました台湾及び澎湖諸島の領土権の問題であります。私は他の委員とは見解をやや異にいたしておりまして、台湾澎湖諸島に関する限りは、中華民国の領有権のもとにあるものであるという前提に立つておるわけであります。そこで承るわけでありますが、この日華條約の交換公文並びに議定書を見ますと、中国政府側におきましては、この日華條約の適用されるべき範囲というものを、現に中華民国政府支配しまた将来支配する領域に関して適用される、こう規定いたしております。ところがふしぎでならないことは、先般来の政府委員との質疑応答におきまして、領土と領域というものを区別して御答弁なさつておるわけでございますが、日本の活字に現われております「領域」と同じものが中国語におきましては「領土」となつております。しかも国際法上の建前から考えましても、領土と領域というものは同意語であろうと思います。皆さんはそれぞれ国際法の大家でございますが、一体領域というものは、私は国家主権が及ぶ空間的な限界であろうと考えます。しこうしてその主権の及ぶ室間的な限界の中で、土地に関するものが領土であつて、水域、海に関するものが領海である、空に広がるものが領空である、こう考えるのが私は普通一般の常識通念ではなかろうかと考えるわけであります。そういう立場からいたしますと、領土というものと領域というものは同じものである。さらに特に区別するというならば、領域の中に領土がありへ領海があり、領空があるというふうに私は考えるべきものではなかろうかと考えるわけであります。そういう観点からいたしますと、少くとも中国側におきましては、台湾澎湖島に関する限り、中華民国政府が領有権を持つておるものであると解釈をいたしておるのでありますが、これに対して日本側はいかように解釈されておるか。
  155. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私にもむずかしい問題でありまして、あるいは私の考えは法律家に訂正されるかもしれませんが、一般に領土とか領域とかいいますときに、佐々木君のように、たとえば水の方とか空の方とかをわけて、土地の方だけが領土だという場合もあると思いますが、国際法などで使つておりますときは、領土というのは沿海も空の上もまぜて使っておるのが多いようであります。しかし非常に正確に、領土とはこういうものだというふうに書いてあるものは少いように思いますが、それは別としまして、私の考えでは水も含み空も含むものが一つ領土であるとしますと、それと領域という字がどこが出違うかといわれますと、私は領域の方が多少領土より広いじやないかと思つております。しかし日本語では二つ使つておりますが、英語ではテリトリーといいます字そのものが領域である場合もあり、領土である場合もあるように使われておるようであります。この観念は、一々領域というのは何であるというように定義でもつけなければはつきりしないと思います。それじや領域というのはどういうものを含むかといえば、ごく普通の一例をあげますと、国際連盟当時の委任統治地域というようなものではなかろうか。行政権を及ぼしておりますが、領土権は持つておらない。領土と領域というと、多少領域の方が広いというように考えておるわけであります。
  156. 仲内憲治

    仲内委員長 佐々木君に申し上げますが、時間が限られておりますから区切りのいいところで……。
  157. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは領域といい、領土といい、今の御説明によりますと、多少領域の方が広義のものであるというふうな御答弁であつたと思いますが、これは学者の説によりまして領土と領域を区別しない学者もたくさんあるわけですから、どちらでもけつこうであります。しからば台湾澎湖島の領有権、あるいは領域権と申してもいいのでありますが、これを俗語で申せば領土権でありましようが、その領有権あるいは領域権と申しますか、そういうものがはたしてどこにあるか。大臣の前回の当委員会における答弁におきましては——私があのとき指摘した通り、速記録を調べましたところ私の耳は間違つておりませんでしたが——大臣はこう答えております。それは黒田委員が、中華民国政府を亡命政権ではないかというようなことを申されたのに対して大臣が答えられた中で「私は中華民国政府が亡命政権だと言つた覚えは全然ない。ロンドンにある亡命政権が條約を結んだことがある、それは国民領土もない場合もあつたのだ、こういうことを申し上げておるのであります。国民政府は現に領有している地域があつて、あなたのお考えでは、台湾澎湖島とおつしやいますが、それ以外にも今争つておる地域はあるのであります。」こう明確に答弁なさつております。従つてあなたは台湾澎湖島に関しましては、少くとも国民政府の領有権というものを認めた前提に立つて、それ以上にさらに進んで中華民国政府領土権を主張し、争つておる地域があるのだということをおつしやつておる。この答弁がもし間違つていなかつた、正しかつたと前提いたしますと、台湾澎湖島に対するところの領有権——領土権でも領域権と申してもけつこうでありましようが、一般俗語に考えますならば領土権という言葉によつて代表されるような、土地に対するところの権利主権中華民国にあるということを私は認めざるを得ないと思うのでありますが、これに対する御見解はいかがでありますか。
  158. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま佐々木君も領土や領域についての意味について必ずしも一定しておらないと言われましたように、領有という字も実はいろいろの意味があると思います。領土権を持つておるものが領有であるという定義にも必ずしもならないと思うのであります。要するに私の申したのは最も常識的に、台湾をただいま支配しておるというのでありまして、法律的に領土権があるから領有と言つたというわけでもないのであります。実際に支配を及ぼしておる。私の言つた言葉でもおわかりだと思いますが、かりに領有という言葉が領土権だというならば、現に争つておる地域がある。これを力でもつてとれば領土になるのだということにはならないのであります。中国の場合は別とすれば、一定の支配した地域がありまして、国民がありまして、政府があつて、よその国がこれを認めた場合に、それが一つの国としての政府が認められるわけであります。ただ力でとつたりとられたりして、領土があつちへ行つたりこつちへ行つたりするということでないのであります。従つて現に争つておる地域があるというくらいに言つておるのは、要するに支配を拡大しようと思つて両方で争つておる。従つて支配をしておる地域、こう常識的にひとつ考えを願いたいと思うのでありまして、私の言葉だけで、領有というのは領土意味するということにもならないと私は考えております。実はそういう、支配するという趣旨で私は言葉を使つたので、もしその言葉が適当でなければ改めてもけつこうでありますが、そういう意味と御了解願いたい。
  159. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは結論だけを聞くことにいたしますが、しからば台湾澎湖島に対しては、中華民国政府は領有権あるいは領土権を持たない、こういうふうに日本政府考えておるのでしようか。
  160. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは非常にむずかしい問題でありまして、理解を得るようにお話できないかもしれませんが、要するにこういうことなのであります。日本政府としては台湾澎湖島に対する権利権原、利益等を放棄した。これは確かにその通りであります。そこでこれがどこに帰属するかは連合国できめるものというふうに初めからなつておるわけであります。もつともカイロ宣言によれば、これは中国帰属することになつておりますが、要するに日本としては放棄するのだというわけであります。そこで放棄した地域がかりに中国帰属するといたしましても、中国領土は概念的にはこの前も申したように、一定のものがありますが、不幸にしてそれの支配権二つ政府が争つておるという状況でありますから、そこで、ほんとうにかりに一つ政府があつて、列国がみなこれを認めているという場合に、日本が放棄すればすぐそつちに行つてしまうということも考えられましようけれども、今のととろは事実がそうなつておりませんからして、日本としては、はつきりこの條約で平和條約と同じように権利権原等を放棄するということを書きまして、先方ではこれをもつ三台湾等は中国領土に入り、これを支配するのは中華民国政府である、こういうふうに主張もされるかとも思うのでありますけれども、現実事態においては、ここに書いてありますように、その支配の及ぶ範囲においてこの條約は適用がある、こういう非常にむずかしい解釈になるわけであります。   〔「わからないな」と呼ぶ者あり〕
  161. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 少くとも今度の條約を締結するに際しまして、中華民国側が終始堅持した態度は、台湾澎湖島中国の領有するところであるという前提に立つておつたと私は考えます。そのゆえにこそ交換公文やあるいは議定書等におきましても明らかに「領土」という文字を使つております。そこでしかも今度の條約締結にあたりましては、この條約にも書いてありますように第六條におきまして「日本及び中華民国は、相互関係において、国際連合憲章二條原則指針とするものとする。」ということが書いてある。しからば国際連合憲章二條の根本精神というものは、主権の平等をお互いが尊重し合つたことであります。今話を承つておりますと、主権の存在が明らかでない、地域的な面においてはあまり明らかでないというようなふうにも考えられるわけであります。日本中華民国政府との友好善隣の関係を結ぼうというときに、中国側の主張しておるところのこの領土権、領有権とい方ものをあいまいにして、中国側の考え日本側の考えがまつたぐ食い違つておるというような前提に立つて、今度の條約は私は結ばるべき性質のものではないと考えます。なぜならば、今度の條約というものは、善隣友好関係に立つて、国家百年の大計を規律すべきものであると私は考えます。国際信義の立場から申しましても、まことに私は中華民国に対して不信義きわまる態度ではなかろうかと考えるわけであります。しからば一体何がゆえに日本中国側が主張しておるところの台湾澎湖島の領有権というものを、特にこれを否定しなければならぬ、特にこれを認めないという根拠が、一体どこにあるのかという点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  162. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは決して中華民国政府がどこの領土権を持つておるとか、持つてないとかいうことを言つておるわけじやないのです。従つて台湾澎湖島についても、これが中国領土でないと主張しておるわけでもないのです。ただわれわれとしては、台湾澎湖島に対する権利権原は放棄したけれども、これはどこの領土であるということを規定する立場にない。従つてわれわれとしては放棄しただけである。これは連合国がきめる問題になるわけであります。たとえばわれわれとしては、話はまるで違いますけれども、ヤルタ協定というものはない、われわれの目から言えばないものだということは言つておりますけれども、樺太なり千島——これは定義はきまつておりませんが、千島というものの権利権原は放棄しておる。それがどこに帰属するかということについては、これは連合国がきめる問題だ。こういうわれわれは立場をとつておるわけであります。従つてこの條約においては、日本側としてはこれをどこの領土であるというふうにきめる立場にないから、われわれの方は先方はこれをただけだということで、先方はこれをどう考えようとも、それは先方の立場だということで、要するにわれわれがそこまで踏み込んできめる立場にないのだという点を御了承願いたいと思います。
  163. 仲内憲治

    仲内委員長 佐々木君に申し上げますが、きようは大臣に三時半にほかの会議に出るので、そこできようは日華條約以外の條約はこれを質疑打切りをやる予定になつておりますので、その議案に集中していただきたい。日華條約についてはこれから十分機会があると思いますから、どうぞそのつもりで……。
  164. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は簡單に二点ばかり承つて終りたいと思います。ただいまの御意見はもとよりのことでありまして、私は今度の日華條約というものが、台湾澎湖島領土がどこに属するかということを決定する性質のものでないことは、御指摘をまつまでもなく了承いたしております。ただこの條約を結ぶにあたつて日本政府はどういう考えに立つて條約を結んだか、しかもその領土に関して日本側はどういうふうに考えておるかという、日本政府領土問題に対する見解を承つておるので、この條約の背景をなす日本政府の見解を聞いておるわけなのであります。ただいまの御説明によりますと、それでこういうふうに解釈してよろしゆうございますか、台湾澎湖島に対する領有権の問題は、今日中華民国政府と中共政権との二つが争つておる。互いに領有権を主張し合つておる。従つてこれはやがて連合国側において決定すべきものである。日本としては台湾澎湖島に対する中華民国政府の領有権というものは、ただいまのところ認めてはおらぬ、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  165. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは法律的の問題と事実上の問題と二つありますが、日本としては、台湾澎湖島権利権原は放棄しておる、それからポツダム宣言等を受諾しておりまして、カイロ宣言條項は遵守するということになつておりますから、カイロ宣言によりますと、こういう島々は中国に行く、こういうことになつております。そこでわれわれとしては中国に行くべきものであると考えてこれを放棄したのであります。しかしながら法律的にいいますと、中国に所属するという最終的の帰属は、連合国がきめるのであつて、今御指摘のように、中国全体に対する支配権の問題で、まだ意見が一致しておらない。そこでこの最終的の帰属は、いずれ中国に行くにきまつておりますけれども、法律的にはまだきまつてない、そこでわれわれの方ではとりあえず権利権原を放棄しておる、こういうことになると御了解を願いたい。
  166. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 大臣はきようは非常にお急ぎのようですから私の質問は留保いたしまして、次の機会にもう少しこの問題について論究してみたいと思います。  別の根本的な問題について承りますが、今度のこの日華條約並びに吉田首相のダレスにあてた書簡等から考えまして、日本といたしましては将来とも——将来といつたところが無限の将来ではございませんが、考えられる将来におきまして、中共政権というものとの国交回復というようなものをはかる意思に立つたものではない。今争う二つ中国の中で、あくまでも日本といたしましては、中華民国政府と外交関係を回復し、そしてこの関係を大きくして行つて、全中国に及ぼそうという前提に立つたものと秋は考えるわけでありますが、一面また政府当局の、私に言わせますならば、きわめてあいまいなる答弁から考えますと、早い話が領土権の問題等に考えましても、きわめてあいまいなる態度から考えますと、もし中共政権というものが、この一、二年の間に非常に大きく考え方を直して、連合国諸国とともに手を握つて連合国陣営の中に入つて来るというようなことでもかりにあるならば、中共政府日本とがお互いが提携し、これとの国交関係を回復して行つて、この條約において規定したことはこれをほごにするというふうなこともあり得るのかどうか。私はもう少し日本の行くべきルートというものは明らかになつておると考える。少くとも昨年九月八日のサンフランシスコの二つの條約に調印した瞬間において、アジアにおける日本の外交路線というものはきまつておると思うのでありますが、そういう疑念がありますから、中共政権を今度の條約によつて相手としないということを私は明確にしたものであると考えるが、将来中共政権連合国側に立つというようなことがあるならば、既存の條約とは別に中共政権日本との間に国交関係の回復をしようという意図でもあるのかどうか、またそういう可能性があるのかどうかという点を承つておきます。
  167. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは前から申しましたように、われわれのシンパシーは台湾における中華民国政府にある。その結果その事実を表わしたのが吉田書簡であります。今までもわれわれの態度がそうであつたのが、たまたま文字に表わしたというのが例の書簡であります。従つてわれわれの同情はこちらの方にある、これは明らかであります。それから中共政府との間には、ただいまのようなありさまではとうていおつき合いが困難であるということも、これも明らかであります。しかし将来どうなるか。今非常なこれはとつぴな仮定と私は考えますが、佐々木君のおつしやるような、すつかり今までの態度を改めて、自由国家群と手を握るとかというようなことになつたら——これは非常な仮定であります。そういう仮定のもとに議論を進めるのはどうかと思いますが、かりにそういう万一の場合があつたとすれば、要するにそのときは、今の台湾における中華民国政府と北京における政府が一緒になるという意味になると思います。そうすると、この條約もその中に含まれる、こういうようなことになるかもしれません。これは仮定の問題で、全然わかりません。私の申し上げ得ることは、われわれの同情は中華民国政府、つまり台湾における中華民国政府にある、そうしてそのためにこの條約を結んだのである、中共との間には、現在の状況ではとうていおつき合いは困難である、これ以上のことは想像といいますか、仮定といいますか、そういう点があるので、いろいろ申しても、今のところはただ抽象的の議論にしかすぎないと考えております。
  168. 仲内憲治

  169. 並木芳雄

    並木委員 政府はおそかれ早かれ連合国国府を認めるであろう、台湾澎湖島の所属について、国府であるという決定を下すであろうという見通しを持つて、今度の日華條約を調印したものと思わざるを得ません。そうでないと、連合国ですらきめにくいのに、何で日本が、いくら独立をしたやさきであるとは言いながらも、火中のくりを拾う必要があるか、その見通しがなければ、日本の外交というものは、将来ひつ込みのつかないところに追い込まれるおそれも出て来るわけであります。ですから政府としては、連合国台湾澎湖島帰属国府であるという決定をするであろうという十分の確信があつてやつたことであろうと思いますけれども、いかがですか。
  170. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれはそういうことについて何ら考えをきめておりません。要するに今申した通り。最終的の帰属というものは未定であるというのが法律的の見解と思つております。連合国がどういう態度をとるか、これはわれわれは別に考えてもおりません。われわれの言い得ることは、できるだけ多くの国と平常関係に入ろうという努力でありまして、たまたま台湾澎湖島その他多少の地域を支配しております中華民国政府は、われわれとの間に平常関係をつくり上げようという気持があるのでありますから、これとの間に條約を結ぶ、それでこういう平常関係に入ろう、こういう考えだけであります。
  171. 並木芳雄

    並木委員 これはもしですけれども、もしかりに国府でなく中共であるというふうな決定が将来なされるような場合には、日本立場が非常に苦しくなると思うのです。その点について、英国の中共承認の問題でありますけれども、今まで政府答弁を聞いておりますと、自由主義国家群に属して国際連合加盟して、朝鮮の動乱などに兵を送つておる英国としては、むしろ今日の段階において中共承認を継続して行くことが不自然のようにも、私どもには率直に感じられるのです。この点大臣としては、英国が中共承認を取消すような場合があり得るとお考えになりますかどうか、見解を披瀝していただきたいと思います。
  172. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外国の、まだ決定も何にもしていない、また傾向も現われていない英国がどうするかということを、私がここでお答えすることは、これはとてもできないことであります。これは並木君のお考えはお考えでありましようが、私としては現在の状況を見て現在の状況を判断する以外に方法はないのであります。英国政府の将来の方針を私が明言するというのは、はなはだおかしなことであります。これはお許しを願いたいと思います。
  173. 並木芳雄

    並木委員 そういう点が要するに政府としてどこまでつつ込んで考えておられるかわからないので、この條約審議のときにもわれわれが迷つて来るわけなのであります。たとえばそういうお考えを持つておられるならば、中共政権といえども、大臣があげられているもろもろの障害が取除かれて、條件を満たすようなことがあり、先方で希望して来るならば、国府と同じような関係における條約の締結考えられるかどうか、こういう疑問が出て来るわけであります。その点いかがですか。
  174. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは今佐々木君にお答えした通りでありまして、まつたく仮定の問題でありますから言つても益のないことと思いますけれども、そういう場合には中国一つ政府になるであろう、こう考えます。
  175. 並木芳雄

    並木委員 最近の極東情勢でございますが、雲行きを見ていると、必ずしも楽観を許さないところがあるようでございます。さつきも大村委員からこの点質問がありました。最近のアメリカの報道によつても、国務省では米国相互安全保障法によつて日本は必すしも援助を受けられないことはないということがいわれておるのであります。そうして特に中国一般という項目の中に含まれておる援助に対しても、場合によつて日本がこれに均霑することがあり得るような報道でもあるわけなのです。そこでこの第六條の国連協力の線というものを考えますときに、私は日本アメリカ相互安全保障法というものを日本政府として申入れをしたか、あるいは話合いをしたことがあるのではないかという感じを受けたのですが、特に国務省の方でああいう言明がされるについて、日本政府として相互安全保障法による援助などについて話合いを進められておりますかどうか、その点についてひとつお尋ねをしておきます。
  176. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう話は今までのところいたしておりません。第六條の関係は、そういうむずかしいことではなくして、国連憲章の第二條指針とする、これを指針として行くのだということだけでありまして、第二條のおもなる点は、お互いに平等の原則に立つて、そうして国際紛争を平和的に解決しよう、こういう趣旨でありまして、そういうことを指針として行こう、こういうごく一般的のことであります。
  177. 並木芳雄

    並木委員 それではあと石原次官質問しますから……。
  178. 仲内憲治

  179. 戸叶里子

    戸叶委員 いろいろ大臣に伺いたいことがありますが、時間がないので一点だけ、先ほどの栗山委員質問関連してお伺いしたいと思います。  先ほど栗山委員が、日華條約によつて経済的な効果は何かということで、台湾との貿易の点をお聞きになりましたのに対して、年により多少の変化があるけれども、昨年度で約一億ドルの輸出入があつたとおつしやいました。今後はさらにこれよりも増すというお見通しであるかどうかを伺いたいと思います。
  180. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 貿易は、全体人口にもよりますし、工業の状況にもよりますから、そう飛躍的に増すということはないと思いますが、まだまだこれはふえる余地もある。現に先ほども申したように、しようのうというようなものも非常に大きな台湾の産物でありますし、塩も来るという見込みもあります。米ももつと来るという見込みもありますが、それのみならず、たとえば漁業の問題というような点でも、今後協定ができますれば、ますますこれはよくなると考えております。これは見込みでありますから、わかりませんが、本年度のごときは、輸出入とも大体七千万ドルくらい、つまり両方合せれば一億四千万ドル程度というくらいに考えております。ある程度というか、相当程度ふえる見込みであります。
  181. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこういうことを聞いたのですが、台湾の方へ中共の方からたくさんの人が行つている。そしてそれにまた台湾に住んでいる省民の人たちがいる。それらの人々を養つて行くだけにもお米がだんだんに不足して来て、前のようには思うように日本に輸入できないのではないか。あるいはまたお砂糖の生産高も四分の一に減つている。そういう面で、貿易が今後ますます盛んになるとは考えられないというようなことを伺つておりますが、その点はいかがでございましようか。
  182. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の聞いたところでは、食糧などは、台湾は非常に豊富だということであります。また今お砂糖のことを言われましたが、お砂糖もまだまだふえる余地はある。これも條約ができますと、日本関係者との共同の仕事もふえて来るかと思います。いろいろの関係で、事業は台湾においてもなかなか盛んに行われるであろうと考えております。従つて、非常に飛躍的にふえるということはないにしましても、相当程度はふえつつまだしばらくは行くとこう考えております。
  183. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、戰前日本中国と取引をしておりました貿易の、約どの程度を台湾の貿易で占められるとお考えになつておりますか。
  184. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 中国でというお話は、おそらくこれは戰前のことをおつしやつておるのだと思いますが、戰前のことを考えて、それを台湾で補うといろ意味には私どもは考えておりません。またかりに、中共との貿易ができましても、戰前のような貿易はとうてい望まれないと私は考えております。というのは、前にも申しましたが、中国に対しましては、戰前といえども満州については、ある時期からは非常に大きな権利を持つておりましたし、また投資を非常に大きくしておりました。中国本土につきましても、一種の治外法権的な特権を持つておりまして、これに基いていろいろの商権が拡充されて来ておりました。そしてことに投資は、天津におきましても上海におきましても、大きなものがありましたのが、みんななくなつておる。そうして特権もなくなつておる。他方相手方は計画経済で進んでおる。こういう状況においては、戰前のことを考えて、あのくらいはいつでもできるのだと思うと、これはもう非常な間違いである、こう思つております。が、それは別としまして、中国の貿易の一部を取返すために台湾と大いにやろう、こういう意味ではなくして、これはもう單純に台湾との間にもできるだけ彼我の融通を考えまして、貿易量を増大して行く、ただこれだけの單純な考えで、あとう限りやつて行くというつもりでおるのであります。さよう御承知を願います。
  185. 戸叶里子

    戸叶委員 各委員会委員質問に対するお答えを見ておりますと、政府は中共貿易に対しましては、望ましいというようなお答えやら、あるいは望ましくないようなお答えやら、いろいろあるように私は了承したのですが、政府の腹は、中共貿易に対しては、望ましくないというのが腹であるか、それともできればしたいという腹であるか、ちよつと伺わせていただきたい。
  186. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは両方の面から答弁が食い連つたようにお考えになるかもしれませんが、何もほかの條件を全然考えないで、ただ中国との貿易、中共との貿易とおつしやれば、これは貿易はどこの国とでもよけいにやつた方がいいのであります。ただ現実事態は、国際連合において中共に対して一種の経済措置を講じておる。また朝鮮においては戰闘が行われておる。この戰闘の帰趨は日本の国の安全にも非常な関係のある問題である。従つて日本としては国連軍にあらゆる援助をして、その地位を強固にするような努力をいたすべき立場にあると考えております。従つてほかの国以上に、日本は中共地区に対しての貿易は、制限をすべきであるという建前をとつているのでありまして、望ましいとか、望ましくないとかいう問題ではなくして、自由国家群の足並を日本が先頭に立つて固めて行きたい、そうして国連軍の力を十分に発揮させたい、もしかりに国連軍が非常な打撃をこうむるということになれば、おそらく日本の国内の人心にも大きな影響を與える。現に朝鮮事変の初めのころに、国連軍が釜山近ぐまで後退して来たときに、九州地方、山口県地方の人心の動揺ははなはだしいものがあつた。われわれはそういう意味からして日本の治安に直接関係のある行為である、こう考えておりますから、人がこのくらいにするのだから自分の方はもう少し緩和してもよかろうというような考えは持つておりませんで、むしろ日本が先だちになつて自由国家群の足並を固めて、そうして国連軍の措置が効果のあるようにいたしたい、こういうつもりでおりますから、いつも申しますように経済的な措置を緩和するつもりはない、こう私は言つておるのであります。
  187. 仲内憲治

    仲内委員長 林君。
  188. 林百郎

    ○林(百)委員 今の問題で非常に重要な問題が出ました。  そこで私は外務大臣に聞きたいのですが、四月二十八日、司令部の方から日本の輸出貿易管理の別表第一、要するに要許可品目のきめ方については全面的に日本政府にその権限が委讓された、要するに日本の貿易管理令の要許可品目については、この取扱いについては日本の国に委讓されたというようなことが新聞には書かれておるのでありますが、実際はやはり嚴重に制限をするというような内々の話合いがあつたのですか。
  189. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう話は全然ありません。日本政府が独自の立場からきめる。
  190. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、輸出貿易管理令の別表、要許可品目を緩和する、しないということは、日本政府が独自で決定し得る権限を持つておるわけですか、もう一度念のために聞いておきます。
  191. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。
  192. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、本日の新聞に出ておりますマーフイー米大使の言明の中における、日本の場合、現在の禁輸品目を緩和するには、日本政府関係諸国との事前の協議が必要だと考えるということについては、日本政府は独自の見解でなし得るのであつて、必ずしも制限は受けない、協議の法律的な義務はないというように外務大臣はお考えになつておりますか、マーフイー氏のこの言明はどういうことなのですか。
  193. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは自由国家群の一員として日本政府が立つておるのであり、また先ほど申し上げたように、むしろ自由国家群の先頭に立つてこの足並を固めて行こうというのでありますから、法律上の義務のあるなしは別にして、あらゆる問題について関係各国と密接な相談をしてきめるのは当然であります。
  194. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、貿易の禁止品目を緩和するには、アメリカ側と協議をしなければできないという意味ですか。
  195. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 だから法律上の問題じやない、こう言つておる。協議をした方が最も望ましいから協議をするのであつて協議をしなければできないと言つているのではない。協議をするのがあたりまえの話であると言つておる。
  196. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで先ほど、日本が自由国家群の先頭に立つて足並を固めて行かなければならないというようなことを言われたのでありますが、御承知通りに自由国家群の一番大きな国であるところの英米を見ましても、イギリスのごときは、朝鮮では中共の義勇軍と対決をしていながらも、一方中共との貿易については依然としてこれを継続しております。しかしこれに対してバトル法の適用は別に受けておらない。アメリカ自体、やはり計算に合う場合には中共とどんどん貿易をしております。そうして自由国家群の大国は、そのときどきの採算によつて自由な貿易の処置をとつておるのに、日本だけがそういう諸国にお義理を立てて、日本経済界がいかにそれを希望しておろうと、そういう政治的な制限から経済的な要求を制限して行つて日本経済に非常に大きな不利を招いてもかまわないというお考えなのですか。バトル法バトル法と言いますが、一体英米ではバトル法がありながらも、中共と取引はしておるわけなのです。その点についてはどうお考えでありますか。
  197. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 イギリスやアメリカにおきましても、かつてに貿易のできる範囲でやつておるというわけではない。禁止品目等は明らかにありまして、それ以外の問題についてやつておる。その点は日本も同じことであります。
  198. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、日本の禁止品目が英米よりなお厳重だということについては、これを将来緩和するとか善処する意思は、外務大臣としては現在何ら持つておらないということですか。少くとも英米と足並をそろえるというならば、英米と同じ足並をそろえたらどうですか。日本の国の貿易管理令の別表第一というのは、バトル法のA表よりはずつと嚴格なのですよ。足並をそろえたらどうですか、あなたはよく足並をそろえるというのがすきだから……。
  199. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは、日本英米の足並をそろえさせようという考えです。
  200. 林百郎

    ○林(百)委員 実に驚き入つた答弁であります。英米のバトル法を日本と同様にさらに嚴重に強化させようと思う、こういう実に驚くべき答弁があつたのであります。日本の輸出入の管理令の別表を緩和する意思は絶対ない。むしろ英米側日本の管理令の別表と同じように嚴格な制限をとることを希望するというように岡崎外務大臣の答弁が聞えたのであります。  そこでその次に問題になりますのは、日本側が英米に対してそのように義理を立てて、政治的な條件からあらゆる経済的な制限をしているにもかかわらず、アメリカ側の方ではまぐろの関税を引上げるとか、あるいは、ミシン、自転車について関税を引上げて、輸入の制限をさらに強化している。
  201. 仲内憲治

    仲内委員長 林君簡單にお願いいたします。
  202. 林百郎

    ○林(百)委員 このために日本漁業界あるいはミシン業界、紡績業界、あるいは薄板などをつくつている鉄鋼業界などでは、貿易の面で非常な困難を来しておるのであります。そういう日本がお義理立てをしておるにもかかわらず、相手方は日本のそういう義理立てにかまわずどんどん輸入の制限をしておる。それにもかかわらず、なお日本はその義理立てを続けて行くつもりなのですか。あなたがそれほど血道を上げているにもかかわらず、向うは冷嚴な採算でもつてつているにもかかわらず、日本だけが政治的な條件から経済をそういうように苦境に陷れるということになると、これはゆゆしい責任問題になる。それにもかかわらず、あなたは今言つたような暴言をそのまま吐かれていいわけなのですか。
  203. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカはまだあなたの言われるような制限を実施しておるわけではない。(「まぐろの関税」と呼ぶ者あり)まぐろの関税も、まだ上院の本会議にかかつておりません。これに対しては、アメリカ政府はアチソン国務長官を通じまして、こういうことには反対であるということを強く申しておる。ただアメリカの法制上、行政府と立法府がそれぞれ独立しておりますから、あるいは国会を通るかもしれないけれども、アメリカ政府としては、あらゆる努力を拂つてかかる法律の通らぬように努めておるような次第であります。
  204. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。時間がありませんので、もし日華條約の点は次に讓れたら……。
  205. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういたしましよう。ただ一つだけお聞きしておきたい。日華條約につきましては、きようは時間がございませんから質問いたしません。  新聞の伝えるところによりますと、政府ソ連代表部に対しまして、日本にとどまる権限がなくなつたということの正式の通告をされるであろうということであります。新聞によりますと、昨日ごろにでもそれが行われるように報道しておるものもありましたが、ごく近い将来に政府はそのような通告をなさる御方針でありましようか、どうでしようか。そのことを承りたいと思います。それから私ども外務委員の一人といたしまして、政府がそのような御通告をなさいますならば、私どもその前にもう一度その問題について政府の御意見を承つてみたいと思うことがあるのであります。しかし外務委員のそういう要求を別に考慮に入れないで突然そういう申入れをなさるかもしれませんが、私どもの要求としましては、もう一度このことにつきまして外務委員会において質問する機会を設けていただきたいと思います。そのことを要求しておきまして、念のため、ごく最近のうちに、新聞に伝えられておりますように、ソ連代表部にソ連代表部の消滅の通告をされる御予定でありますかどうか、きようはそのことだけ伺つておきます。
  206. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 連合国最高司令官がなくなり、対日理事会がなくなつておる現状において、ソ連代表部が存在の理由を失つておるということは、当委員会においても私ほか政府委員からしばしば申し上げた通りであります。政府としてはそういう見解をとつております。これを通告するか、どういうふうにするか、この見解をどういう方法で明らかにするかということについてはまだ申し上げる時期に達しておりませんが、要するにそういう見解をとつていることだけは間違いないのであります。あとは技術的の方法であります。根本は見解いかんだということだと思います。それについてはその通りだと思います。
  207. 黒田寿男

    ○黒田委員 私も政府の御意向はよくわかつておるのであります。実はそのことについて私は政府と多少違つた考え方をしておりますので、私の考えを述べて、なお政府の御意見を承りたいと思いますけれども、その時間がございませんからきようはいたしません。ただ先ほど申しましたように、そのような通告をなさいます前に、ひとつ外務委員会でこの問題について論ずる時間の余裕を持ち得るようにおとりはからいを願いたいという希望を申し上げておきます。  それからなお私はいつも質問の順位を最後にまわされまして、日華條約はきようも時間がなくなつて質問できませんが、これは非常に重要な問題でありますので、この次にはひとつ午前午後をぶつ通しでゆつくり質問させていただきたい。佐々木君の御質問の点についてもひとつ思う存分同君に質問をさせてあげていただきたい。またわれわれも十分質問をしてみたいと思いますので、一度ゆつくりと時間をお與えいただけますよう特に外務大臣にお願い申し上げておきます。きようは時間がありませんから私はこれ以上申し上げません。
  208. 仲内憲治

    仲内委員長 できるだけ愼重審議いたしたいと思います。——それでは並木芳雄君。
  209. 並木芳雄

    並木委員 それでは政府委員に二、三質問してみたいと思います。  第一條ですけれども「日本国中華民国との間の戰争状態は、この條約が効力を生ずる日に終了する。」とありますけれども、戰争状態の始まつた時期については問題が残つております。と申しますのは、政府説明書を見ますと、「中華民国政府は、千九百四十一年十二月九日に日本国に対して戰争を宣言したが、わが国は、中華民国政府に対して正式に宣戰を布告したことはない。」と書いてあります。はつきり中華民国政府日本に宣戰を布告したのは一九四一年であります。従つて明らかに戰争状態というものは一九四一年十二月九日から開始されたと私どもは思います。ところが議事録の方を見ますと、議事録の第二に「千九百三十一年九月十八日のいわゆる「奉天事件」の結果として中国に設立された「満洲国」及び「汪精衛政権」のような協力政権日本国における財産、権利又は利益は、両当事国間の同意によりこの條約及びサン・フランシスコ條約の関係規定に従い、中華民国に移管されうるものであると了解する。」となつております。これは明らかに戰争開始の時期についての問題でありますけれども、私どもとしては了解に苦しみます。どういうわけでこういう議事録ができ上つたのであるか、それを説明していただきたいと思います。
  210. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 戰争状態の始まりましたいわゆる戰争の始期については、お話のありましたように、中華民国日本国に対して宣戰を布告したすなわち一九四一年十二月九日であるということについてはその通りでございます。
  211. 並木芳雄

    並木委員 それが日本国における財産、権利または利益のところへ来ると満州国や汪政権時代にさかのぼるということは、これは不都合ではないかということを私は聞いておるのです。戰争状態の終結ということは、戰争状態が開始になつてから戰争終了までのことをいうのであつて、それ以前にきかのぼるということは、これは日本政府が弱腰であつたからこういう結果になつたのだと私は思う。なぜこういう議事録が載つたか。次官の説明はなつておりません。
  212. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは條約には直接関係はないのでありますが、いわゆる戰前の懸案をこの際解決をしておこう、こういうことでここに議事録にこういうことが書いてあります。
  213. 並木芳雄

    並木委員 條約に関係ないということ、とんでもないことを言われては困る。條約と関係があるのが議事録であつて、それに「中華民国に移管されうるものであると了解する」という重要な文字が入つているのでありますから、それでは満州国及び汪精衞政権日本国における財産、権利または利益というものはどういうものが幾らくらいもるのでありますか。
  214. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げましたよりに、條約の條文には直接関係のないことでありますが、従来の懸案を解決するという意味でここに掲げられているのであります。
  215. 並木芳雄

    並木委員 こういうことがつまり矛盾となつて出て来るのです。さつきからも本質的に領土の問題などやつているときに矛盾した大きな條項として出て来るわけである。現実支配しているところを認めてやつているのならば、何も一九三一年までさかのぼつて満州国や汪精衞政権のことをここで持ち出さなくもいいじやないか。平和條約第二十六條の正式に二国間の條約を結ばなければならないとぎに、こういうことを持ち出せばいいと思う。しかるにこういうことを持ち出されたのはどういう考えか。これはこういうものが幾らくらいあるのですか、こういう調査はできているはずである。
  216. 倭島英二

    ○倭島政府委員 この議事録の関係のところには「両当事国間の同意により」ということが書いてありますが、この問題につきましては、将来両当事国がいろいろ話し合いまして、その同意したときにこういう解決に行くということを念のために議事録の中に双方の了解をとどめただけであります。
  217. 並木芳雄

    並木委員 向うのそういうことを申し出た理由、原因を話してください。
  218. 倭島英二

    ○倭島政府委員 向うはこういう関係の財産、権利または利益の処分ということについて希望をかねがね持つておりました。しかしながらそれは直接今度の條約の條文の中に書く問題ではない。これはさらに両国当事者の間でよぐ話し合つた上で、意見が合うように解決しましようという了解を書いただけであります。
  219. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、ほとんど問題にはならないというふうに了解していいのですか。それからさつきから私が聞いているようにどんなものが幾らくらいあるかというその調査はどうですか。
  220. 倭島英二

    ○倭島政府委員 それは問題にならないじやないので、問題になるだろうと思います。それからどういうものがその話合いの対象になるかということも、双方でこれから話し合つてみなければわからず、それから最終的にその処分の問題も、同意によつてそういうことの処分をするわけであります。
  221. 並木芳雄

    並木委員 第三條でひとつ聞いておきます。これは財産請求権の問題でありますけれども、財産の処理は「日本国政府中華民国政府との間の特別取極の主題とする。」というように書いてあります。そこでどういうふうな特別とりきめをする予定でありますかどうか。
  222. 倭島英二

    ○倭島政府委員 これもこれから中華民国政府とわが政府との間で双方の交渉によりましてはつきりするわけでありますが、従来のわが方の関係から申しますと、いろいろな不動産だとか諸般の財産を台湾に残しておりまして、それから戰後いろいろな処理をされておりますが、そういう財産について日本側の方から請求権はつきりさして交渉する。台湾と申しますか、中華民国政府の方では、また日本に対する諸般の請求権を持つておるということであります。これについてはまだ正式の通告を受けておりません。どういうものが出ておりますか、日本にある財産というようなものについていろいろな目録や何かも出て来ることと思いますが、これも将来交渉によつてはつきりして来るものと考えております。
  223. 並木芳雄

    並木委員 これは台湾及び澎湖諸島に関するものだけでありますけれども、中国本土における賦産についての問題はどういうふうになつていますか。條約では全然触れられていないように思つておりますが、……。
  224. 倭島英二

    ○倭島政府委員 現在第三條は、そこに書いてありますように、台湾並びに澎湖島関係でありますが、この條約の関係では適用範囲がきまつておりますので、範囲以外のことは何らまだここに規定しておりません。
  225. 並木芳雄

    並木委員 そういうところが、満洲国とか汪政権というものが定められておる点と、ちよつと符合しないような気がするのです。財産権の問題で、大韓民国に起つておると同じような問題が起らないかということです。つまりアメリカの軍政府によりまたはその指定によつて処理された財産ということが朝鮮の場合に問題になつております。台湾の場合は軍政府はないのですからないと思いますけれども、何か指定されて起つたとかいうことはありませんか。
  226. 倭島英二

    ○倭島政府委員 ないと心得ております。
  227. 並木芳雄

    並木委員 この際お聞きしておきますけれども、朝鮮の場合に、アメリカがとつておる解釈は非常にあいまいであつて、結局大韓民国と日本政府との間で話し合うべきだというふうに逃げておるように思います。しかし平和條約第四條(b)の解釈については、はつきりしていると思うのですけれども、その点その後どうなつたのですか。私はこの解釈そのものをアメリカが逃げてはいけないと思うのです。ところが外電では、あたかもその解釈そのものについても、大韓民国と日本政府との間できめるべき問題のように報道されておるのですけれども、どうなつておりますか。
  228. 倭島英二

    ○倭島政府委員 従来からその問題につきましても韓国と交渉しておりまして、現在に関する限り、この問題について今後も韓国と交渉してきめるべきものだと考えております。
  229. 並木芳雄

    並木委員 その解釈そのものはしつかりしているでしよう。つまりアメリカ軍が処理されただけを認めるのであつて、その所有権日本にあるという解釈はゆるぎないものと思うのですが、その解釈にもまだ問題があるのですか。
  230. 倭島英二

    ○倭島政府委員 われわれの関する限り問題はないと思つておりますが、韓国側の方ではまだ問題があるようなふうの意見を持つているようであります。従つて、ざらによく意を盡し交渉しなければならぬであろうと思つております。
  231. 並木芳雄

    並木委員 もう一つ、航空に関する第八條ですが、これによると、もし中華民国日本との間に協定が結ばれなければ、最大限今後四箇年は平和條約の規定によつて中華民国の航空権が日本に及ぶ、そういうような趣旨から第八條と交換公文第二号という関連が出て来るのですかどうか。つまり私が聞きたいのは、これは何か取つてつけたような條文であつて中華民国の航空権が一方的に承認されて不公平ではないか。日本としては中華民国に航空権を及ぼすような何か計画はないのかどうか。そういう点の話合いはどういうふうに進められて来たか、お伺いしたいと思います。
  232. 倭島英二

    ○倭島政府委員 大体今御指摘のような結果になるのでありますが、第八條の関係で、本格的な協定を締結するということを双方約束いたしまして、交換公文の第二号におきまして、そういう協定ができるまでサンフランシスコ條約の規定を適用するという了解に達したわけでありまして、サンフランシスコ條約の規定によりますと、四年間現在のまま、しかし政府の方の希望といたしましては、できるだけ早く本格的なものを締結したい、こう考えております。
  233. 並木芳雄

    並木委員 今国府としてはどういうふうに航空をやつておるのですか。日本として何か計画はありませんか。
  234. 倭島英二

    ○倭島政府委員 現在、平和條約の発効前に中華民国系の航空会社のCATがわが国に乗り入れており、そういう権利を持つているわけでありますが、航空に関する本格的な協定が結ばれるまでは、それを従来通り認めて行くということになると思いますが、わが国の方としても、早く向うの方へ航空計画を延ばしたい希望があります。そういう希望等も考慮に入れまして、できるだけ早く本格的な協定を結びたいと希望しているわけであります。
  235. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは本日の日程中、中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件を除き、その他の五件につきましてはそれぞれ質疑を終了することといたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十九分散会