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1952-03-31 第13回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月三十一日(月曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 並木 芳雄君       植原悦二郎君    小川原政信君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       田中  元君    飛嶋  繁君       中山 マサ君    福田 篤泰君       小川 半次君    戸叶 里子君       林  百郎君    黒田 寿男君  出席政府委員         法務府事務官         (法制意見第四局          長)     野木 新一君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     高野 藤吉君         外務事務官         (條約局長)  西村 熊雄君  委員外出席者         外務事務官   原 富士夫君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 三月三十一日  委員新井京太君、澁谷雄太郎君及び西村久之君  辞任につき、その補欠として田中元君、水田三  喜男君及び福田篤泰君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 三月二十九日  国際連合への加盟について承認を求めるの件(  條約第四号)  国際計数センターの設立に関する  條約の締結について承認を求めるの件(條約第  五号)  の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  在外公館の名称及び位置を定める法律案内閣  提出第九三号)  在外公館に勤務する外務公務員  の給與に関する法律案内閣提出第一三六号)  千九百二十七年九月二十六日にジュネーヴで署  名された外国仲裁判断執行に関する條約の締  結について承認を求めるの件(條約第三号)     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  千九百二十七年九月二十六日にジュネーヴ署名された外国仲裁判断執行に関する條約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。まず本件についての説明を聽取することといたします。西村條局長
  3. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 この條約の締結経緯内容、その他なぜ日本がこの條約の成立当時に加入しないでいて、しかも今日になつて加入手続をとるに至つたかという理由、その他につきましては、お手元に差上げてございます説明書に簡明に書いておきました。私からの説明にかえまして、この説明書を係官から朗読していただきまして大体の御理解を得たいと思います。
  4. 原富士夫

    原説明員 外国仲裁判断執行に関する條約の説明書、目次を省略いたします。ただちに本文へ入ります。  一、序説  仲裁判断とは、当事者間の仲裁契約に基いて仲裁人仲裁手続により当事者間の民事上の紛争について行つた判断をいい、わが国では民事訴訟法第八編にこれに関する規定がある。  仲裁判断については、第四回国際連盟総会承認を得て千九百二十三年にジユネーヴで「仲裁條項に関する議定書」(以下議定書という。)が締結された。わが国も千九百二十八年六月四日に議定書批准書国際連盟事務総長寄託して締約国となり「昭和三年條約第三号」として公布した。  議定書締約国なつたのは、わが国外アルバニアドイツスペインエストニアフインランドフランス連合王国ルクセンブルグスウエーデンスイスシヤム、ベルギー、ブラジル、デンマーク、ダンチツヒ自由市、オーストリアチエツコスロヴアキアギリシヤインドイタリア、モナコ、ノールウエー、ニユー・ジーランドオランダ、ポーランド、ポルトガル及びルーマニアの二十七国である。  議定書は、第一に仲裁に付託することを定める民事商事に関する約定効力国際的に承認し、第二に自国領域内で行われた仲裁判断執行する締約国義務について規定しているが、仲裁判断国際的効力を保障することについてはなんら規定していない。  そこで議定書のこの欠かんを補足して仲裁判断国際的効力を保障するために、締約国一定の場合に外国で行われた仲裁判断執行する義務を負うことについて規定する国際約定締結が要望され、国際連盟経済委員会に属する法律家委員会の起草にかかるこの條約が千九百二十七年九月二十六日に第八回連盟総会の採択を得て、直ちに議定書署名国署名のために開放された。この條約は、ニユー・ジーランド及びデンマーク批准を得て千九百二十九年七月二十五日から効力を生じた。締約国は、ドイツスペインエストニアフインランドフランス連合王国ルクセンブルグスウエーデンスイスシヤムベルギ—、デンマーク、ダンチツヒ自由市、オーストリアチエツコスロヴアキアギリシヤインドイタリアニユー・ジーランドオランダポルトガル及びルーマニアの二十二国で、議定書当事国の大部分を含んでいる。  わが国は、当時、議定書署名国であつたにかかわらず、仲裁判断に関しては、各国主義及び法制が相違しているためこの條約によつて多くの効果を期待することはできないという見解によつて、この條約の締約国とはならなかつた。  しかしながら、仲裁は、当事者間に敵対感情を多くもたらすことなく紛争に対し簡易、迅速に、時宜に適した解決を與えることを特色とし、特に当事者間の国籍を異にし、物の場所的移動を伴う国際取引上の紛争に関しては、準拠法裁判管轄等幾多の難問を伴う訴訟制度に比して多くの利点をもつている。更に、わが国としても、戦争仲裁制度は著しい発達を遂げ、仲裁判断執行について国際的協力を行うことが望ましい段階に達しているので、今般この條約に加入する意義は極めて深いといわなければならない。  二、條約の説明  この條約は、前文、本文十一箇條及び末文から成つている。本文の第一條から第六條までは実体規定であり、第七條以下は加入又は適用手続及び効力に関する手続規定である。以下にこの條約の概略を説明する。  (一) 国際的効力を付與される仲裁判断(第一條)    第一條は、外国における仲裁判断でどのようなものが、この條約の適用される締約国領域効力を認められ、且つ、執行力を有するかということ、すなわちいかなる仲裁判断についてこの條約を適用し、その国際的効力を保障するかを規定する。これによれば、このような仲裁判断は次のようなものでなければならず(第一項)、且つ、更に第二項(a)から(e)に掲げる要件を具備することを必要とする。   (1) 議定書規定されている仲裁付託に従つてされたものであること。   (2) この條約が適用される締約国の一の領域でされたものであること。   (3) この條約の締約国の一の裁判権に服する者の間にされたものであること。  (二) 仲裁判断承認又は執行の拒否(第二條、第三條)    第二條第一項は、前記の仲裁判断承認及び執行がいかなる場合に拒否されるかを規定する。これには三の場合がある。  すなわち   (a) 仲裁判断が、その判断がされた国で取消又は無効の裁判によつて無効にされた場合   (b) 仲裁手続において当事者が防ぎよをすることができる充分な期間内にその通告を受けなかつたこと又は無能力者であつて正当に代理されていなかつた場合   (c) 仲裁判断が、仲裁條項の予見する紛争又はその範囲内にある紛争に関しないものである場合 がこれである。   第二項は、いかなる判断につきその承認又は執行を延期し、又は條件付承認を與え又はその執行の許可ができるかを規定している。判断仲裁裁判所に付託されたすべての問題を含まない場合がこれである。   第三條は、当事者の証明によつて判断承認若しくは執行を拒否し、又はこれらについての審理を中止することができる場合について規定する。   この場合、当事者は、その判断が與えられた国の仲裁手続適用される法令規定によれば、第一條(a)及び(c)並びに第二條(b)及び(c)に示される理由以外の理由でその国の司法裁判所において判断効力を争うことができる理由があることを証明しなければならない。  (三) 仲裁判断承認又は執行を請求するための手続(第四條)   第四條第一項は、仲裁判断承認又は執行を請求する当事者が、判断の援用される国の裁判所等提出すべき書類及び証拠について定めている。   第二項は、仲裁判断及び第一項に掲げる書類について判断が援用される国の公用語への翻訳を請求することができること等を定めている。  (四) この條約と他の法令又は條約との関係(第五條)   第五條は、仲裁判断が援用される国の法令又は他の條約において、この條約第一條から第四條までの規定と異る規定によつて仲裁判断を利用することができることを定めている場合には、この條約第一條から第四條までの規定にかかわらず、当該法令又は條約の認める方法及び限度で仲裁判断を利用することができることを定めている。  (五) この條約が適用される仲裁判断の時期的範囲(第六條)    第六條は、この條約が議定書効力発生の後にされた仲裁判断に対してのみ適用されることを定めている。議定書は、千九百二十四年七月二十八日から効力を生じた。  (六) 効力及び手続規定   (1) 署名及び批准(第七條)    第七條は、署名批准及び批准書寄託に関する規定である。    この條約は、国際連盟連盟国であるかどうかを問わず議定書署名した国のみがこれに署名することができ、また議定書批准した国のみが、この條約を批准することができる。    わが国は、議定書締約国であるから、この條約に署名し及びこれを批准してこの條約の締約国となることができる。わが国は千九百五十二年二月四日にこの條約にまず署名した。締約国となるためには、なお批准書寄託を行うことを要する。條約の規定によれば、批准書国際連盟事務総長寄託することとなつているが、千九百四十六年の国際連合第一回総会の決議に基き、現在では国際連合事務総長寄託することとなつている。   (2) 効力発生(第八條)    第八條は、前段でこの條約自体効力発生に関して定め、また後段で右の効力発生以後締約国となつた国についての効力発生に関して規定している。わが国の場合には、批准書寄託の時から三箇月後に効力を生ずる。   (3) 廃棄(第九條)     第九條は、それぞれの締約国に関し、この條約の廃棄手続について規定している。締約国は、この條約をいつでも廃棄することができる。締約国議定書をその廃棄手続に従つて廃棄した場合には、この條約も廃棄されたこととなる。   (4) 地域的適用(第十條)     第十條は、この條約の植民地等の非自治地域への適用及び廃棄について規定している。   (5) 認証謄本(第十一條)     第十一條は、認証謄本に関する規定である。  以上であります。
  5. 仲内憲治

    仲内委員長 それではこれより質疑を許します。並木芳雄君。
  6. 並木芳雄

    並木委員 説明を聞いたばかりでまだ十分検討してありませんから、詳しい質問はまたこの次にいたしますが、大きいところの質問を二、三しておきたいと思います。  仲裁裁判所に提訴中のもので、現在係争中になつておるものは、どんなものがあるかということを参考までに説明していただきたいのであります。
  7. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御答弁申し上げます。この仲裁判断と申しますものは、民事または商事契約につきまして、その契約について紛争が起りましたときに、裁判所に提訴しないで、当事者間が選定する仲裁人裁定によつて紛争解決するという趣旨の約束に基いて行われる手続でございます。従いまして仲裁裁判所と申してもよろしゆうございますが、そういうふうな契約に基いて紛争が起つて、その紛争について、契約條項従つて私人紛争解決当事者となる場合でございますので、現在日本におきましてどれだけの件数が、そういう手続目下仲裁人判断手続にかかつているかという統計は作成してございませんので、正確な数字を申し上げかねます。ただ御参考までに申し上げますれば、仲裁契約と申しますか、そういう契約が非常に必要であり、有効な役割を果すのは、主として対外取引関係する契約紛争の場合でございます。この種類契約につきましては、契約当事者国籍を異にいたしておりますし、または契約地が国外にありますとか、契約目的物が第三国にある、こういうふうな事情がありますので、一一裁判所にかけて裁判をしようとする場合には、どの裁判にかくべきか、またはどの法律適用して裁判すべきかというような困難な法律問題がありますし、また国際間の紛争でございますので、訴訟費用がかかる。また裁判手続にも数年を要するというような結果になつてしまいます。そういうような不便を除去するために、国際取引契約につきましては、その契約についての紛争を、当事者選定する仲裁人または仲裁機関にかけて解決する、こういう條項が入るのが大体常道でございます。従いまして今日問題になつております海外貿易上のクレームの問題と関連しまして、クレームの問題でいろいろ困難な事態が生じております。そのクレーム問題を解決するには、この仲裁契約という方式でやれば、一番実際的な、費用のかからない、また敏速な解決ができるということになつております。今日までわれわれが持つております統計は、貿易関係クレームがどれほどあるかという数字は持つておりますが、そのクレームのうち、どれだけが仲裁手続にかけられておるかという点まで調査しておりませんので、その点また実態的の数字をお答え申せませんのは残念に存じます。
  8. 並木芳雄

    並木委員 何か一つ、二つ目立つた問題で、仲裁判断執行に関する條約の効力として、なるほどこれは非常によかつたというものは最近ありませんか。
  9. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ただいま同僚諸君の持つておられる資料によりましても、今日までのところ、仲裁判断執行ということが現実に問題になつたことはないそうでございます。今後、今申し上げましたように、輸出入に関するクレームの問題の解決としては、最も合理的な、最も実際的な方法が、この仲裁契約によつて仲裁判断をしてもらうという方式であると思いますので、実例は、今後は生れて来るかと思いますが、今のところ御所望のような適当な事例がないようでございます。
  10. 並木芳雄

    並木委員 もう一つだけにしております。さつきの説明の中に、「仲裁判断に関しては、各国主義及び法制が相違しているため、この條約によつて多くの効果を期待することはできないという見解によつて、この條約の締約国とはならなかつた。」というのがあります。そこで各国主義及び法制の相違、これについてわが日本としてはどういう点に隘路があるか、その点を具体的に説明していただきたい。
  11. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 仲裁判断関係いたしております主要な国々の法制は調査してございますので、後刻並木委員に差上げたいと思います。それによつて御了承願いたいと思います。問題がありますに特殊な法律的な民事訴訟手続的な事柄ばかりでございますので簡単に御説明いたしかねますので、資料によつて御了承を願いたいと思います。もともとこの條約と一九二三年の議定書ができましたゆえんは、民事商事、ことに商事契約についての紛争は、裁判所にかければいたずらに時間を必要とするし、また費用がかさみ、しかも純粋に法規上の問題として取扱われるので、必ずしも実態に即した解決が得られない場合があります。それでそれらの欠陷を救うために、当事者の間で第三者仲裁に服するという契約條項を作成した場合には、その当事者間の契約を尊重して、さような契約についての紛争裁判に持つて来られた場合も、まず裁判をしないで契約條項に基く当事者によつて選定された第三者仲裁人仲裁判断解決させるという法制が生れて来た次第であります。そういうふうな思想で、大体の思想は一致いたしておりますが、何しろ事柄民事訴訟法手続関係事項でございますので、各国法制に出入りがございます。それが同時に、今申しましたこの仲裁手続というものが最も有効な役割を果す部面は、一国内における契約よりも、むしろ国と国と国籍を異にする当事者間の契約、または物の国際的移動を伴う種類契約についての紛争適用する場合に一番有効な手続であります。そういうふうなことでありますので、ずいぶん以前から、仲裁判断に関する各国民事訴訟法内容を統一すべきであるという運動が生れて来たわけであります。その問題が国際連盟時代に取上げられて、専門家会議によつて、條約によつてそれを解決しようといたしました。理想論といたしましては、各国民事訴訟法仲裁判断に関する規定を統一するということが、一番理想的でございますが、それは各国法制に長い伝統がありますので、とうてい実現不可能であるという結論になつて、一応できましたものが二三年の議定書であつて、それは、締約国領域において締約国裁判管轄権に服する者の間に締結された仲裁契約はお互いに効力を認める。それから、そういう契約従つて自国で行われた仲裁判断は、自国法令に従つて執行するという趣旨議定書ができて第一段階を発足したわけであります。しかし問題は、二三年の議定書解決しましたのは、判断が下された国で仲裁判断執行するというだけにとどまつておりまして、かような判断を他の締約国領域執行できるかどうかという問題を解決しておりませんでした。締約国の一においてなされた仲裁判断は、他の締約国領域内においても執行ができるというところまで行つて、初めて二三年の議定書目的が貫徹いたされますので、この二七年の條約ができた次第です。そういうふうなわけで、この條約は二三年の議定書の補足的なものであります。補足的なものでありますが、もともと二三年の議定書が作成されましたときから国際貿易に非常に大きな役割をいたしております国、たとえば合衆国のごときは、その当時国際連盟の外にありましたという政治的の理由もございましようし、また同国におきましては、商事民事関係事項は、合衆国の連邦の法律規定されないで、各ステートの法律によつて規定されておるという特殊の事態がございます。また第三には、合衆国といたしましては、かような法制を統一する、ないしは條約をつくるというよりも、むしろ民間団体民間において商事契約に関する仲裁普及発達をはかる、そうしてその運動国際的に進展させるためには、條約をつくるよりも、むしろ各国仲裁機関発達させて、その各国仲裁機関相互間の提携を強固にするという道が、近道であるという行き方を採用しておる関係上、二三年の議定書にも二七年の條約にも合衆国は参加しておりません。こういうふうないきさつがございます。直接御質問にお答えしない結果になつておりますが、御質問の点は資料によつて御了解願うことにいたしたいと思います。
  12. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  13. 林百郎

    ○林(百)委員 條約の第一條(c)に「判断が、仲裁付託に定める仲裁裁判所」とありますが、この「仲裁付託に定める仲裁裁判所」というものは、どういうものですか。
  14. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 仲裁裁判所という場合には二種の意味も持つております。広くとる場合と狭くとる場合でありますが、狭い意味では、紛争当事者の合意によりまして選任された仲裁人をもつて構成され、当事者から付託された事件裁定ないし判断する組織を仲裁裁判所と申します。それでこの條約にいう仲裁裁判所とは、今申した意味仲裁裁判所でございます。通俗的に言えば、一国の司法裁判所に対して私設裁判所とお考えくださればけつこうであります。広い意味仲裁裁判所という場合には、それ自体事件仲裁を担当するものではございませんで、仲裁を管理する機関仲裁機関意味する場合もあります。たとえばロンドン仲裁裁判所国際商業会議所仲裁裁判所というものがありますが、こういうものであります。仲裁は必ずしも専門仲裁機関の介在を必要とするものではございませんで、仲裁が公正適切かつ円滑に行われますためには、適当な仲裁人を得ること、それから仲裁の尺度であります。仲裁手続一定標準規則によることが適当であります。また判断及び判断の前提となります仲裁條項とか仲裁付託については、法律一定要件を必要とし、もしこの要件を欠く場合には判断の取消しの事由となりますので、こういう法律上の点についても注意をする必要があります。こういうふうないろいろの理由からして、あらかじめ仲裁人名簿を備えつけておきまして、適当な仲裁人をあつせんし、その他仲裁規則を訂正したり、関係者に必要な注意と指導を與える、また仲裁の運営についての便宜と施設を提供するというようなことを使命といたしますのが、今申しましたロンドン仲裁裁判所とか国際商業会議所仲裁裁判所とかいうようなものでございます。今日各国におきまして仲裁裁判制度が普及しておりますのは、こういう機関の努力に負うところが多うございます。最近日本商工会議所にもこういうふうな仲裁機関が設定されております。
  15. 林百郎

    ○林(百)委員 今、広汎な意味での、仲裁裁判のいろいろのあつせん、管轄をするロンドン仲裁裁判所があるというような御説明ですが、そのイギリスはこれを批准し、寄託しておるのですか。
  16. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 英国は二三年の議定書にも二七年の條約にも参加いたしております。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、狭義の意味仲裁裁判所に対する異議の申立て控訴上告というのは、これはどういう手続なんですか。仲裁裁判控訴上告の道が開かれておるわけですか。
  18. 野木新一

    野木政府委員 日本では、仲裁判断につきましては、民事訴訟法第八篇七百八十六條以下に規定してございまして、この仲裁判断外国でやつた仲裁判断を含むというのが通説になつておりまして、わが国法上は、仲裁判断に対して別に控訴上告という制度は認められておらないことになつております。
  19. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、わが国の場合には仲裁判裁——正確に言うと判断だと思いますが、仲裁判断がなされた場合には、わが方としては控訴上告の道がない。どこかの国で控訴上告の道があるとすると、その相手国控訴上告をしておる間は、判断執行力というものは出て来ないわけなんですか。
  20. 野木新一

    野木政府委員 さようでございます。
  21. 林百郎

    ○林(百)委員 それから、この仲裁人選定権ですが、これは今お聞きしますと——もし不正確であつたら直していただきたいと思いますが、仲裁人名簿というのがあつて、その名簿について、たとえば日本なら日本が、これこれの人を仲裁人として選定するという通告をどこへどういうようにするのか、その仲裁人選定手続と、それからわれわれの方でそうしておる場合に、相手国の方でそれに応ずるとか、あるいは相手国自体仲裁人選定について意思表示のない場合は、どういう救済方法があるのか。たとえば日本の国ですと一週間の間に同一の手続をなすべき旨を催告する。それで相手方がこの期間を徒過した場合には、一方の申立てによつて仲裁人選定するというようにわが国国内法ではなつておりますが、相手国国内法拘束力を持つた規定がないとすれば、こちらでは仲裁人選定について一生懸命しておるのに、相手国がそれに対して協力しない場合は、どういう救済方法があるのか。
  22. 野木新一

    野木政府委員 御質問仲裁人選定方法でございますが、この條約の適用になるような締約国間の仲裁判断に関するようなものにつきましては、まず第一に甲国の甲という人と乙国の国という人との間に仲裁契約が結ばれるわけでありますから、その仲裁契約において仲裁人をどういうように定めようということをまずきめるのが普通だろうと思います。それにきめなかつた場合にはどうなるかと申しますと、その仲裁契約はどこの法律に従つて結ぶかという、その仲裁契約が準拠した法律に従つて、特別の定めのなかつた場合には仲裁人をきめて行く、こういうことになろうかと思います。従いまして、そういう場合に日本法律に従つて仲裁契約を結ぶという場合には、日本の民訴の七百八十八條、七百八十九條あたりが適用になつて行く、そういう考えになるかと思います。
  23. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで日本仲裁判断に関する條約をここで批准しようとする場合に、一体日本としてはどういう仲裁契約をそれぞれの国と締結するかという案はあるのですか。あるなら見せていただきたいし、それから日本の国の民事訴訟法を準用するというような形で仲裁契約締結できるかどうか、その点も問題だと思いますが……。
  24. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 林委員に少し思い違いがあると思うのです。仲裁契約とか仲裁判断とか申すのは、個人の民事上または商事上の契約をいたしますときに、契約当事者間でその契約について起る紛争は、裁判所にかけないでお互いが選定する仲裁人判断にかけて解決しようという一つ契約條項でございます。でございますから、政府が介入する余地は全然ございませんので、純粋に個人同士の契約の約款でございます。
  25. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。私は何らか政府がそれに対して、たとえばこういう契約締結したらどうかというようなテイピカルなものをつくつておいて、それを業者が仲裁契約締結したい場合には示してやるという親切心くらいはあると実は思つたわけです。ですから、もしそういうものができておるならば示してもらいたい、それを参考にして、われわれはこの條約の審議をしたいと思つたわけですが、條約局長の言うようにそれは政府の関知したところではないかということであれば、それはまたそれで別です。
  26. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 林委員の御懸念の点はもつともだと思います。仲裁制度民事商事、ことに商事契約について普及いたすためには、日本の一般の業者、特に対外取引関係いたしております日本業者の間に仲裁契約のモデルというようなものをつくつておきまして、これを普及させて、なるべくならば各契約にそのモデルに順応した約款を設けさせることが望ましいことであります。それで先刻御説明申し上げました各国にありますいわゆる仲裁機関というものが、そういう必要を満たすために設定されて活動いたしております。ロンドンの仲裁裁判所、それからパリの国際商業会議所、仲裁裁判所、また最近日本商工会議所に設置されました国際商事仲裁委員会がこれであります。国際商事仲裁委員会は、今申しましたロンドンの仲裁裁判所国際商業会議所、仲裁裁判所やまた合衆国のそういう使命を持つております機関と連絡を保ちまして、仲裁契約のモデルを説明いたしますとか、その委員会内に仲裁人として指名されるに適当な人々の名簿をつくつておきまして、絶えず用に供しておるというような事業をいたしております。問題それ自身がいわゆる私契約事柄でありまして、個人の自治という色彩が強く出ておりますので、各国の政策は民事訴訟法的な法規の中にそういつた個人のイニシアチーヴによる紛争解決手続を有効と認め、それが運営されましてできまする判決にかわる仲裁判断なるものを執行する面を法制で定めていて、そういうからくりが広く民間に普及し、民間によつて利用されることは、商工会議所その他当該の活動に直接関係を持つておる民間の団体が中心になつて働いているというのが現状であります。
  27. 林百郎

    ○林(百)委員 できるならば次会までに日本商工会議所の方でどういう仲裁契約を考えておるか、またロンドンあるいはアメリカの方でどういう仲裁契約を業者が考えておるか、それを資料として出していただきたいと思います。  そこで私が聞きたいのは、先ほど條約局長はグレート・ブリテンは批准寄託しておると言われましたが、私どものもらつておる昭和三年七月十六日のこれにはグレート・ブリテンというのはないので、英領ギアナとホンデユラスというのがあるようですが、グレート・ブリテンの本国が加盟しておるかどうか、それからアメリカ合衆国、それからフランス——フランスはたしかあつたと思いますが、こういうような国々は正式に批准寄託しておりますか。
  28. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 説明書には、イギリスのことは連合王国——ユーナイデツド・キングダムと書いてありますので、英国は二三年の議定書、二七年のこの條約にも参加いたしてあります。フランスもまた参加いたしております。御指摘のアメリカは先刻御説明申し上げましたような事情で、議定書の方にも條約の方にも参加いたしておりません。
  29. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで私たちが考えますことは、かりに日本とイギリスとの業者の間で仲裁契約締結する場合に、これは力の関係からいつても、やはり現在の状態ではイギリスの方が相当国の力からいつても、業者の力からいつても強いように考えられる。またわれわれは東南アジアの方へ貿易をして、向うに買つてもらう立場にある。そういう場合の仲裁契約が、日本の業者の考えているような仲裁契約になるのか、あるいは実際の問題としてはイギリス側の業者の仲裁契約によつて契約締結される可能性があるのか。その点はむしろこの條約を批准して、イギリスの業者の仲裁契約日本の業者が縛られるような可能性が考えられるのではないかというふうにわれわれは思うのでございますが、その点はどうです。
  30. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 これは政治的な問題ではございませんで、純粋に商事契約、個人間の契約につきまして、その紛争裁判所にかけるかわりに当事者選定する仲裁人裁定判断にまかそうと、こういう趣旨の約款でございます。従いまして当事者間の力の相違が契約内容に入るというような性質の事柄ではないのでございます。いわゆる輸出入契約についての紛争仲裁をだれに頼むかということ、それにつきましても契約当事者間の合意できめます。かりにイギリスの大商事会社と、日本の小さな商事会社との契約におきましても、そういう経済力の大小がただちに紛争解決手続内容に反映するというようなことは考えられないことでございまして、そういうことがないためにこそ各国ともそういう商事契約についての仲裁人になるに適当なる人々を選定しておいて、当事者がどういう人がいいだろうかということについて判断に困る場合には、そういうところに行つて相談をして契約をいたす、こういうふうな仕組みになつております。ロンドンにもそういう機関がございますし、日本にも商工会議所の中にすでにそういう機関が設けられてございますので、私はイギリスの商人と日本の商人との間に仲裁契約をなす場合に、林委員の御懸念されるような事柄はなくて済むものと存じます。
  31. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、私はどうも西村條局長は條約局長ですから、この條約の面から純粋に法律的な面から、純粋法学的にそうおつしやつていますが、やはり法律の背後にはその国の相互の経済力だとか、国力が反映するのは当然で、たとえば仲裁人の忌避の問題だとか、あるいは仲裁判断の取消しの問題だとか、あるいは仲裁判断効力を争う問題だとか、こういう形で一方に不利な場合はいくらでも逃げられる道を講じておく、一方に有利な場合にはこれを日本へ押しつけようというような道は、法律でいくらでもあり得るわけなんですから、私は必ずしも西村條局長の言うように、純粋法学的に対等な立場で日本とイギリスの間になされるということは考えられないわけでありますが、この次は私はこの仲裁判断国内法との関係仲裁判断とそれぞれの司法裁判断所との関係、それから仲裁判断効力の失効の問題、こういうような点を少しお聞きしておきたいと思うのであります。今日は他の質疑者がありますからこれに譲りますが、できるなら次会にイギリスのロンドンの仲裁裁判所のあつせんをやつている機関が同仲裁契約のテイピカルなものを持つているが、また日本商工会議所でそういうものを持つているならば、次会までにひとつぜひ提出していただきたいと思います。
  32. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 できるだけ御希望に沿うように努力いたします。ただイギリスに関する資料などは早急に間に合わないかとも存じます。日本商工会議所における国際商事仲裁委員会に関する資料は、これは東京でございますから、すぐ手に入ると思います。手に入り次第その手に入ります範囲におきまして提出申し上げます。
  33. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君。
  34. 黒田寿男

    ○黒田委員 私もあとの方の御都合があるようでありますから、きようはごく簡単に質問いたしまして、なお爾余の点は次会に譲らしていただきたいと思います。ただいままでの他の委員の御質問を承つておりますと、多少誤解されておるところがあるのではなかろうかと懸念される点があるのであります。そこで念のために、私はわかつておるとは思いますけれども、政府の御説明を伺つておきたいと思います。それは、ただいま問題となつております千九百二十七年九月二十六日にジユネーヴで署名された外国仲裁判断執行に関する條約、それからその前に締結されました一九二三年ジユネーヴ仲裁條項に関する議定書というものと、一九〇七年の国際紛争平和的処理條約及び一九二八年国際紛争平和的処理に関する一般議定書、この両者の関係について一応政府の御説明を承つておきたいと思います。私にはわかつておるように思えるのでありますけれども、当事者の資格の問題とかあるいは仲裁判断に付する事項の性質というようなものにつきまして、この二組の條約並びに議定書の間には差異があると思いますけれども、先ほど質問された委員の御質問を承つておりますと、この点多少混同しておられるような点がありはしないかというふうに聞きとれましたので、念のために政府からこの点についてはつきり区別なり関係を御説明つておけばけつこうだと思います。
  35. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ただいま黒田委員の御指摘の通りでございます。一九〇七年のへーグ條約に基く仲裁裁判所ないし仲裁手続というのは、国家間の紛争仲裁裁判にかける趣旨のものでございまして、まつたく国家間の紛争仲裁による処理を規定しているものでございます。ここに申します仲裁判断ないし仲裁契約と申しますのは、わが国民事訴訟法第七百八十六條の「一名又ハ数名ノ仲裁人ヲシテ争ノ判断ヲ為サシムル合意ハ当事者カ係争物ニ付キ和解ヲ為ス権利アル場合ニ限リ其共効力ヲ有ス」という規定に対応するものでありまして、個人がその民事または商事契約について、その契約についての紛争裁判所に訴えるかわりに、契約当事者選定する第三者判断によつて解決するという趣旨契約でございます。その趣旨契約に基いて下された判断を、いかに外国執行するかという問題を解決いたしておる條約でございます。まつたく両者名前が同じなために、非常に混同されやすい事柄でございますが、まつたく別個のものでございます。
  36. 黒田寿男

    ○黒田委員 私もそのように考えておりましたし、また考えておつただけでなく、むろんその通りであります。ただ他の委員が多少誤解があるように思いましたので、念のために説明を願つてみたのであります。従つてこの両者の間には、当事者の資格に関する相違があるし、また仲裁判断に付すべき事項についても、はつきり相違がある。要するにわが国の国民に関する場合には、民事訴訟法第八編によつてやれるのであるが、外国に関する場合があるから、特にこの條約が必要だというだけのことであろうと私は考えます。  なお実はいろいろと、もう少してこまかいことについてお尋ねしたいと思いますけれども、他に今日中に上げなければならぬ法案があるそうでありますから、あとは次会に譲ります。
  37. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは両案に対する質疑は次会に譲ります。     —————————————
  38. 仲内憲治

    仲内委員長 次に在外公館の名称及び位置を定める法律案及び在外公館に勤務する外務公務員給與に関する法律案を一括議題といたします。両案につきましては、先日の委員会において提案理由説明を聴取いたしましたが、なお引続いて逐條説明を聴取することといたします。
  39. 大江晃

    ○大江政府委員 最初に、在外公館の名称及び位置を定める法律案の提案理由を、前の委員会におきまして御説明申し上げました際に、「従いまして日本国との平和條約の最初の効力発生の日においては、そのときに同條約を批准している六箇国に置かれる在外公館のみがとりあえず設置され、」というふうに申し上げましたが、これは誤りでございます。批准をしている国に置かれる在外公館のみがとりあえず設置される、こういうふうに御訂正を願いたいと思います。  次に在外公館に勤務する外務公務員給與に関する法律案の御説明を申し上げます。在外公館に勤務する公務員の給與に関する法律案の第一條は、この法律目的を定めております規定でございまして、この法律は、在外公館に勤務する外務公務員給與につきまして特別職たる大公使であると、一般職の外務公務員であるとを問わず、在外公館に勤務する外務公務員であれば、そのすべてが受ける給與について定めたものでございます。またこれからの説明におきまして、在外公館に勤務する外務公務員ということを、在外職員という言葉で申し上げますから、さように御了承願いたいと思います。  第二條は、在外職員に支給する給與につきましての、総括的の規定でございまして、本條は在外職員に対して支給するすべての給與種類を定め、大使及び公使の俸給は、特別職の職員の給與に関する法律に基いて支給する。その他の在外職員の俸給及び扶養手当は、一般職の職員の給與に関する法律に基いて支給する。年末手当は、国家公務員に対する年末手当の支給に関する法律に基いて、支給するということを定めましたほかに、大使、公使は在勤俸及び加俸を、その他の在外職員には在勤俸、加俸及び特殊語学手当を、この法律によつて支給いたしますことを規定いたしたのであります。また在外職員には超過勤務手当は支給しない。また一般職の職員の給與に関する法律規定せられました俸給の減額は、行わないということにいたしております。  第三條は給與の支拂いの規定でございまして、在外職員は扶養家族を本邦に置いておく場合もございますし、また生活の本拠を全部外国に移すということもございますので、給與のうち、俸給、扶養手当及び年末手当は、当該在外職員の指定する者に支拂うことができるという、支拂いの規定でございます。  第四條は給與の支給方法でございまして、これは外国におります関係上、国内におります一般職のように、月に二回といたさずに、月に一回月末に拂う。これは手続が非常に煩瑣でありますし、また為替手数料その他の問題もありますから、一回にするということにいたしたわけでございます。  第五條は在勤俸を定めたものでございまして在勤俸の額は、あまり多くてもいけませんけれども、在外公館に勤務いたす者は、国家を代表して参りますから、その生活と体面を維持するという意味において、適切な額を支給しなければならない。そこで在外公館の所在地におきます物価とか、為替相場、生活水準等を勘案いたしまして、これを定めることを規定いたしたものでございます。  第六條は在勤俸の支給額の規定でございまして、別表にありまするものによつてごらんを願いたいと思つております。  第七條は調査報告でございまして、在勤俸は為替相場の変動、その他経済の動きによりまして、いろいろ変動する。これを在外公館長は毎年定期的に調査報告書を外務大臣に提出しなければならぬ、また外務大臣がこれを外務人事審議会に提出するということにいたしております。これは次の第八條におきまして、外務人事審議会が、在勤俸の改訂を外務大臣に勧告し得ることを定めておることに関連がございます。  第八條、第九條では、在勤俸の改訂の規定をきめてあるわけでございます。  次に第十條は、在外職員に対しまして、在勤俸を支給する場合の支給期間規定でございまして、これは在動地に到着しました日の翌日から、今度は出発をする前日までというようにきめております。これは在勤地に到着しました日、あるいは出発する日は、旅費の方で日当が支給せられておりますので、これを重複しないように規定いたしたものでございます。その他在勤俸の支給の場合を、こまかいことを規定しておりますが、これは省略いたします。  第十一條は、戦争等特別の事態発生の場合に、在外公館所在地がかわつた場合に、在勤俸の支給をいかにするかというようなことが規定してございます。一時現在の在勤地以外の地に移る場合に、そこに在外公館があります場合はよろしいのでございますが、全然在外公館がない場合に、新たにその土地に駐在するというような場合、いかにするかということを規定してございます。  第十二條は加俸の種類を定めた規定でございまして加俸には三つの種類がありますが、まず第一に配偶者加俸、これは在外職員が在動地に配偶者を伴う場合につけるもの、また館長代理の加俸、これは御承知のように、公館長に事故がある、あるいはまた一時これが欠けている場合に代理をする、また第三には兼勤加俸というものがございますが、これは在外職員がその在勤地以外の点に兼職を命ぜられた場合に支給をいたすものでございます。  第十三條におきましては、配偶者加俸の支給額を定める、すなわち加俸は百分の四十ということにいたしておりますし、また第十四條におきましては、支給期間のいろいろな場合を予想いたしまして、支給期間規定いたしております。  第十五條は、配偶者加俸を受ける在外職員の扶養手当について規定いたしております。  また第十六條におきましては、館長代理加俸の支給額をきめておりまして、これは百分の二十ということになつております。  第十七條は、館長代理加俸の場合の支給期間規定でございます。その代理の時期がきわめて短かい場合、十五日未満の場合は、こういうものはやらないというようなことを規定してございます。  第十八條、第十九條が兼勤加俸の規定でございまして、これは読んだ通りで。ございます。  第二十條に特殊語学の手当というものを定めてございますが、御承知のように英、仏、独、あるいはスペインポルトガル、ロシヤ語というような主要な外国語につきましては、在外公館の所在地におきまして修得する便利は比較的多いのでございますけれども、特殊の語学、たとえばペルシヤ語である、インドネシヤ語である、こういう語学につきましては、そういう土地におきましても、必ずしも修得が容易でないというために、特にまた奨励の意味を含めまして、こう、う土地におります在外職員に特殊語学の研修をさせるために、在勤俸の百分の二十を越えない範囲で、特殊語学の手当を支給することをきめたものでございます。  第二十一條は、給與の端数計算、技術的のことを定めたものでございますから省略いたします。  第二十二條は罰則の規定でございまして、一般職の職員の給與に関する法律規定されておる罰則にならいまして同じ罰則を適用するということを書いております。  第二十三條は、国外犯罪につきまして定めたものでございまして、在外職員の給與は、国外において支給する場合もありますから、罰則の規定を国外犯罪について適用されるように規定しておく必要がありますので、国外でこれに関する罪を犯した者にも適用するということでございます。  次に附則の説明でございますが、この法律の施行期日、これは日本との平和條約の最初の効力発生の日にということに定めてございますが、四月一日までに効力発生しないときは、平和條約の効力発生を待たず、四月一日から施行するということにいたしたいのでございます。これはすでに現在各地に置かれております三十に上る在外事務所が、権限が拡大されておりましてほぼ正式の大公使館、領事館に近いような活動も行つておりますので、できますればごの四月一日から新給與によつて行きたいというふうな考えでございます。  附則の第三項は、ただいま申し上げましたように、講和條約の効力発生の場合におきましても、一、二の場合におきまして、在外事務所として残るような場合がある、その場合在外事務所にもこれが適用できるということを書いたものでございます。  以上が在外公館に勤務する公務員の給與に関する法律案説明でございますが、いろいろ技術的の面もございますので、きわめて簡略に御説明申し上げました。詳細は御質問に対してお答えしたいと考えております。
  40. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは両案について質疑を許します。並木委員
  41. 並木芳雄

    並木委員 給與の基準をどこに置いたかということをお聞きしたいと思います。それで事柄を簡単にするために、アメリカと英国の大使について、戦前の数字と今度の数字を比較していただきたい。その数字はCPSとかいろいろ基礎になる昭和九年、十年、十一年ごろの数字でけつこうです。あれにスライドさせて今度どのくらい上げたのか、あるいは現地の事情に基いてそれに即した給與にしたのか、おしなべて何倍になつたか、そういう点をここに説明願いたいと思います。
  42. 高野藤吉

    ○高野(藤)政府委員 御説明申し上げます。まず第一点の御質問の、在勤俸の算定の基礎いかんという点でございますが、大体現在国内の公務員の五級職程度の公務員が、アメリカにおきまして衣食住に事欠かない最小限度の生活をする場合に、どのくらいいるかということをまず出しまして、それが約二百三十ドル要すると見たわけであります。これはアメリカ人の収入から見まして、大体中の下ないしは下の上という見当になつておるわけであります。これを年額二千七百五十ドルといたしまして、それを表にあります在勤俸の十号といたしまして、これを国内の公務員の給與ベースによりまして係数をかけて行きまして算出いたしました。但し大使、公使につきましては、その国における事務の煩雑ないしは重要度と申しますか、そういう点を勘案いたしまして、また別の観点から算定いたしました。それから各国別の横の比率は、アメリカを一〇〇といたしまして各国の物価指数を算定いたしまして、それに係数をかけまして、但し、アメリカ以上の場合にはこれをすべて一〇〇に押える、そういう計算の方法でございます。  それから第二点の御質問の、戦前の在勤俸との比較はどうであるかという点でございますが、戦前は、アメリカにおきましては、大使は年四万五千円支給しておりました。戦前のドルと円の換算率にプラス、現在のアメリカにおけるその当時からの物価騰貴の率が大体七〇%ということにいたしますと、三万八千百三十六ドルになつております。このたび提出いたしました額の約二倍くらいに当るわけでございます。同じような計算の方法で参りますと、戦前のイギリス大使は四万円、これを先ほどの計算でいたしますと、三万三千八百九十八ドルになるわけでございますが、今回提出いたしました額は、一万八千三百ドルというふうになつております。全体が大体そういうふうな比率になつております。
  43. 並木芳雄

    並木委員 大体半分に相当する額しか給與されないのでございますけれども、これで戦前の程度の大使、公使の活動ができるかどうか。
  44. 大江晃

    ○大江政府委員 戦前と同じようなというお話でありますが、やはりいろいろな情勢の変化もございますので、いわゆる大使の給與がそれだけ開きがあつて、同じような活動をいたすことは非常にむずかしいだろうと思います。但し、御承知のように、このほかに報償費とか宴会費というようなものも支給されますので、これをもつて補う。また館員は、戦前のワシントンにおりましたものよりも多少上まわつて派遣するということになりますから、そういうふうな面でもこれを補つて行きたいと考えております。
  45. 並木芳雄

    並木委員 文字通り貨幣価値の下つた大使、公使では困ると思う。今度はずいぶん大勢出すのですから、せめてこの貧乏国の弱みを見せずに、景気よく、虚勢を張つてもかまわないから、やはり十分活動できるようにしなければいけないと思うのです。大使の数は大分ふえたのですから、これで貨幣価値が文字通り下つて一笑に付されるようでは、せつかくの国際友好の目的を達せられないと思いますから、その点はさらに再考をしていただきたいと思います。  それから在外公館の点ですけれども、條約発効と同時に、批准をした国々の在外事務所というものは、自動的に大使館、公使館に切りかえられるのですかどうか。
  46. 大江晃

    ○大江政府委員 批准を終えた国は、自動的というより、やはり大使館、公使館を置くということを、はつきり公文なり覚書の交換をしたいということを申し出ておる国もございます。国によつて多少違つておりますが、今研究中でございます。おそらく公文の交換で、はつきり大使館を置くことをきめることになるのではないかと考えております。
  47. 並木芳雄

    並木委員 今のお話ですと、條約が発効して大使、公使の任命が間に合わない場合もあるのではないかと思います。その場合に、在外事務所長を、とりあえず大使の代理というのですか、公使の代理というのですか、そういうものに任命する計画がおありになるかどうか。
  48. 大江晃

    ○大江政府委員 大公使の正式の任命が間に合わないときには、ただいまお述べになつたような措置をとらざるを得ないと考えております。
  49. 並木芳雄

    並木委員 その点、井口外務次官が、條約発効とともに、駐米大使である私の辞令が出されるであろうと語り、同時に岡崎外務大臣も専任として任命されるであろうということを語つておりますけれども、條約発効とともに辞令が出るように準備をされているのですかどうか。
  50. 大江晃

    ○大江政府委員 新聞の発表につきましては、私は何ら承知しておりません。事務当局といたしましては、正式の大使、公使が任命にならない場合の、先ほどのお話の在外事務所長を代理させるという準備をやつております。
  51. 並木芳雄

    並木委員 井口次官が、時のワンマン吉田外務大臣を向うにまわして、こういうことをぽつぽと言い出すことは、ある意味では痛快だと思うのですが、この点はあとで岡崎国務大臣を呼び出して直接聞いてみることにいたします。  それからただいま進行中の日華條約が、平和條約発効前にでき上らないときには、台北の在外事務所の地位はどうなるのでしようか。同時に中国の代表として日本に来ている中国代表部の地位はどうなりますか。
  52. 大江晃

    ○大江政府委員 講和條約発効後まだ日華條約ができない場合には、大体在外事務所のままで当分行くよりしようがないと思つております。但しこの場合両国間の話合いにおいて在外事務所に相当大幅の権限を與えて、実際上大使館、公使館に近い待遇をするというようなことは考えられます。  それから日本におきまする中国代表も当分の間は今までと同じ名称でございますが、それに話合いでもつてさらに権限を與える、あるいは待遇を與えるということは相互的にできるだろう、こういうふうに考えております。
  53. 並木芳雄

    並木委員 それは話合いですか、それとも何か正式の文書の交換でもやるのですか。
  54. 大江晃

    ○大江政府委員 これは正式の條約とか協定とかそういうやかましいのじやなく、交換公文でもメモランダム程度のものでもできると思います。
  55. 並木芳雄

    並木委員 その点なぜお伺いするかというと、ソ連との関係が問題になるからであります。そこで日本としてはソ連との国交回復ということは今全然考えておりませんかどうか。在外事務所というようなものを置く計画を持つておらないのか。條約発効後のソ連代表部の地位というものはどうなるか。ただいまのお話と関係が出て来るのでその点確かめたわけなんです。ソ連代表部の方はどういうふうにして行く考えですか。あるいは特権というものを否認をして、しかし強制退去はさせないというような考えを政府として持つておられるようでもありますけれども、そういう考えがおありか、どうか。また別のものに切りかえるかどうか。
  56. 大江晃

    ○大江政府委員 どうもこれは基本的の問題になりますので、私からお答えする筋の問題でないのじやないか、こう考えておりますが、ただソ連との関係は、多少先ほどの中国との関係と違つておるように考えておりますので、先ほどの中国について申し上げたようなことが、そのままソ連の場合に適用される、こういうふうには考えておりません。
  57. 並木芳雄

    並木委員 それで大体どういうふうにする考えですか。いいじやないですか、別に政治的のことでもなく、基本的のことでもなく、また基本的のことであつても、政治的のことであつても、大江官房長ともあれば答弁できるわけでしよう。どういうふうにして行くつもりですか。
  58. 大江晃

    ○大江政府委員 これは別に政治的とか基本的じやないとおつしやいますが、やはり相当政治的の問題であろうと思うのでございます。事務当局といたしましては、こういう基本的の問題に答弁を差控えた方がよいと思います。
  59. 並木芳雄

    並木委員 それではその点も岡崎国務大臣に質問することにいたします。大韓民国ですけれども、大韓民国は平和條約発効とともに別途のとりきめをしないですぐ大使を送る予定ですか。動乱のいかんにかかわらず、また日韓会談の進捗状態いかんにかかわらず、平和條約発効とともに大使を送る予定であるかどうか。
  60. 大江晃

    ○大江政府委員 日韓会談によりまして、何か基本的のとりきめができませんと、やはり大使を送るという段階に立ち至らぬと考えております。
  61. 並木芳雄

    並木委員 ポツダム宣言の解消についてでありますけれども、私どもはポツダム宣言は平和條約が発効いたしますと、自動的にその効力を失うとばかり考えておつたのです。従来の政府の答弁もそのようではなかつたかと記憶しております。ところが何かポツダム宣言の効力の解消について、連合国との間で意思表示をとりかわす必要があるのではないかという説があるのですけれども、この点をお確かめしたいと思います。
  62. 大江晃

    ○大江政府委員 ただいまの御質問は、新聞記事か何かに出ておつたことじやないかと思うのでございますが、ポツダム宣言の解消と申しますか、日本との平和條約に調印しました国の間におきましては、平和條約によつてこれが置きかえられるということになりまして、ポツダム宣言というものが日本を拘束しないということは言えるのではないか、こういうふうに考えております。
  63. 並木芳雄

    並木委員 つまり何もあらためて了解を求めるとか、文書の交換をするとか、意思表示の交換をする必要なくして、自動的にポツダム宣言は廃棄されるものと考えておりますけれども、その通りだ、こういうことでございますね。
  64. 大江晃

    ○大江政府委員 私どうも條約があまりわからないのでありますが、廃棄されるというような言葉でなく、自然に目的が達せられて効力を失う、こういうふうに考えております。
  65. 仲内憲治

    仲内委員長 北澤君。
  66. 北澤直吉

    ○北澤委員 在外公館の名称及び位置を定める法律案によりますと、新たにビルマ、インド、ユーゴスラビア、ヴアチカン等に日本大使館ないしは公使館を置くようになつております。新聞によりますとインドは講和條約の発効と同時に戦争状態を終結する宣言をするというふうなことになつておりますので、大体そういうように運んで行くものと思いますが、ビルマとユーゴスラビアとの関係はどうなつております。この点をちよつと伺いたい。
  67. 大江晃

    ○大江政府委員 ビルマにつきましては、大体インドと同じような行き方をしたいということを、先般島参事官が東南アジアを旅行しました際に話合いをいたしまして、先方も大体これに応じるということになつておりますから大体インドと同じような行き方で行かれると思つております。ユーゴスラビアにつきましては在ワシントンの在外事務所とワシントンにありますユーゴの大使館との間におきましてすでに一月二十五日に交換公文の交換を終つております。これによつて平和條約発効の日から効力発生することになつております。
  68. 北澤直吉

    ○北澤委員 ヴアチカンに日本の公使館を置くようになつております。これは戦争前もあつたものですが、そうしますと日本においてヴアチカンの公使館を置くといわれておりますが、今の法皇庁代表そのままの形で置くのですか、その点をひとつ伺いたい。
  69. 大江晃

    ○大江政府委員 ヴアチカンにつきましても、一月二十三日に公使交換の交換公文が済んでおります。
  70. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に私は在外公館に勤務する外務公務員給與に関する法律案、これについて質問したいのですが、この在外公館に勤務する外務公務員給與に関する法律案の別表によりますと、たとえばアメリカにおきましては、日本の大使は在勤俸が年に一万八千八百ドル、月に千五百ドルでありますが、そうしますと、大使は大使の俸給あるいは配遇者の加俸、それから在勤俸、こういうものを全部ひつくるめて月にどのくらいになりますか、これを伺いたいと思います。
  71. 大江晃

    ○大江政府委員 本俸大体百七十ドル、在勤俸千五百ドル、配遇者加俸六百ドルといたしまして、二千二百七十ドルというような見当であります。
  72. 北澤直吉

    ○北澤委員 もちろん日本の財政状態もあるのでありますが、われわれ見ておりますと、これは非常に少な過ぎると思うのであります。戦争前には日本の大使は大体月に二千ドルです。これをよそのワシントンにおる大使と比較しますと、一等国である日本の大使がトルコ大使より低いのであります。従つて斎藤大使のころは月に相当借金をしました。なくなつたときには五万円ぐらいの借金を残した。結局政府の出す金が少いので、在米大使というものは何かよそから金を持つて来ないと、十分な活動ができないというようなことになるわけであります。もちろん敗戦国でありまして、日本の財政が十分でないのでありますから、やむを得ませんが、どうも月に二千二百七十ドルなどということでは、二、三ぺん行き帰りしたら、金がなくなつてしまうということでありまして、やはりりつぱな人をアメリカの大使に送る以上は、十分の活動ができますように、よほどこの在勤俸あるいは交際費かわかりませんが、そういう面でもつと考慮してやらぬと、せつかく人を置いても活動ができないということになると私は思うのであります。従来の戦争前のずつと長い歴史を見ましても、どうもアメリカにおります日本の外交官は待遇が悪いために、思うような活動ができないかつたといううらみが多分にあつたのでありますから、むしろ私はよその国の方は多少削つても、アメリカにおります外交官につきましては、十分の活動ができるように、もつと在勤俸などをふやした方がいいのじやないかと思うのであります。というのは、いろいろな国がありますが、この対米外交というものは、ほかの国に比べれば非常な重要性を持つております。アメリカの大使館におる大使は、職員の在勤俸についてもよその大使館におる大使よりも比べものにならぬほど低いのでありまして、そういう意味では、在米外交官が十分な活動をするためにはもつともつとふやさなければならぬ、せつかく置いても十分の働きができないというふうに思うのであります。その点について政府のお考えを伺いたいと思うのであります。
  73. 大江晃

    ○大江政府委員 アメリカの大使館の在勤俸が大使以下少いじやないかというお説でございますが、われわれといたしましては、本年度の在勤俸の予算の許された範囲内において、できる限りの高い在勤俸になりますよういろいろ折衝いたしまして、ここに御提出した数字が出て参るのであります。またアメリカの大使館につきましても、ただいまもお話のありましたように他の大使館、公使館と比較いたしまして、重点的に増すようにいたしたつもりなのでございまして、これ以上の重点的の増加ということをいたしますと、他の公館におきましては実際の生活その他が脅かされるというような結果にも相なりまして、来年度與えられました在勤俸の予算のわく内におきましては、いかんともいたし方がないのでありますが、将来はやはり今後の実際の経過と、これから大使館が再開いたしました後のいろいろな状況も勘案いたしまして、必要ならば在勤俸の改訂ということをいたしたい、こういうふうに考えております。
  74. 北澤直吉

    ○北澤委員 戦争前の例で申し上げるのでありますが、国によつて大使なり公使なりの活動状況が非常に違うのであります。たとえばヨーロツパあるいは南米の小さな国へ行つている公使などは貯金ができる、ところがアメリカへ行つている連中はみな借金ができるということでありまして、どうも在勤俸、そういう面における不合理がある。やはりその土地々々によつて活動するのに非常に金がかかるところにおきましては、政府の方でもそれ相当の考慮を拂つてやらぬと、せつかくいい人を置いても仕事ができぬし、またそういうことではなかなかいい人が行かないのであります。政府の方では今度外交再開に備えて、民間の方からも有能な人を大使、公使に採用したいということでやつておるようでありますが、何分にも待遇が悪いのでみなならない。外交再開後の日本の重要な外交をやるためには、りつぱな人を大使、公使に出すためには、やはり待遇面においても考えてやらないと、いい人が行かないということを私は心配するわけであります。もちろん予算の範囲でこの案をつくつたと思うのでありますが、昭和二十八年度以降においては、外務省においても大いに政治力を発揮されまして、この在勤俸の点についてもつと改善するように御盡力をお願いしまして私の質問を終ります。
  75. 仲内憲治

  76. 戸叶里子

    戸叶委員 私一、二点御質問申し上げたいと思いますが、第五條の中に「在勤俸は、在外職員が」と書いてありまして、それからずつと終りの方に「在外公館の所在地における物価、為替相場及び生活水準を勘案して定めなければならない。」そうして第六條に「在勤俸の支給額は、別表に定めるところに従い、在外公館の所在国又は所在地及び号の別によつて定める。」と書いてあります。そうして別表に号別がございますが、この在外公館に勤務している人たち、すなわちいろいろな人があると思います。参事官だとか一等書記官、二等書記官、そういう方たちがここのどの号に入つているかというようなことがこの法案になくて、外務省令できめるということになつておりますけれども、外務省令にはどの号にどのくらいの人が行くということが書いてあるのでしようか。
  77. 大江晃

    ○大江政府委員 ただいまの御質問にお答えいたしますが、一号、二号以下、参事官その他がどれに該当するかということは、大体の目安と申しますか、たとえば参事官にも現在の号俸で申しまして十三級、十二級とございますが、これによりまして、あるいは一号あるいは二号というふうにやるというくらいのことは言えるのでございますが、外務省令で定めようといたしております基準は、在館年限で行つております。たとえば第一号は在館二十一年以上、第二号は十七年以上、第三号は十三年以上、こういう在勤年数を基準といたして適用することを現在は考えております。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、大体は参事官ならば、第何号に属するというその基準をきめられた上で、また在館年数によつてきめられるわけですか。
  79. 大江晃

    ○大江政府委員 これは大体そういうことになりますが、たとえば在館が二十何年あつても、場合によりますと参事官になつておらない、あるいはそれ以下の場合もあるのでございますが、今回の基準といたしましては、在館年数をもつてこれに当てたい。こういうふうに考えております。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことを外務省令でおきめになつて、どうしてこの法律案の中にお入れにならなかつたか、何かそこに根拠がおありになるかどうか。
  81. 大江晃

    ○大江政府委員 この法令の中に入れなかつたのは、特別の理由もないのでございますが、実施細目というような性質のものだと思いましてこれを政令に譲つたわけでございます。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 この在勤俸に対する税金の問題ですけれども、これは免税所得ですか、課税所得になるのですか、それとも税法上の特例があるのでしようか、その辺のことを伺いたい。
  83. 高野藤吉

    ○高野(藤)政府委員 これは戦前からの例、また各国の例によつても、在勤俸には、日本政府もまた相手国も税金をかけない。従つて免税所得になります。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 免税所得となりますと、ここにこの法案の名前が外務公務員給與に関する法律案となつていますけれども、そういう点はかまわないのでしようか。
  85. 高野藤吉

    ○高野(藤)政府委員 本件は大蔵省と了解済みでございます。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 これはどういうふうな了解済みなのでしようか。
  87. 高野藤吉

    ○高野(藤)政府委員 在外における所得として免税の措置を考えております。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると特例的なものとして考えていいわけですか。
  89. 高野藤吉

    ○高野(藤)政府委員 広い意味では特例的な意味と解釈できると思います。というのは勤務地も生活の根拠も在外なのでありますから。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、第十條の第五項に有給休暇があるわけですから、この間にもしも日本へ帰つて来るような場合には、その旅費がたしか支給されると思うのですが、その旅費支給の何か根拠法というようなものがあるのでしようか。この中にも書いてないように思いますし、また外務公務員法の中にもなかつたように思いますけれども、それはどういう法律によるものか。それからもう一つ、そういうときにもし家族を伴う場合にはその家族にもたしか支拂われるというふうにこの前伺いましたけれども、その辺のことをもう一度はつきり伺いたい。
  91. 高野藤吉

    ○高野(藤)政府委員 別の旅費の支給法によりましてこの点また国会に御審議を願うことになつておりますが、配遇者及び家族には旅費が出ることになつております。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは別の法律できめられるわけですね。わかりました。  それから先ほど北澤委員からアメリカの在勤俸が非常に少いからもつとふやせ、ほかの方はどうでもいいからというお話でしたが、私はやはりこれから新しく東南アジアなどを開発して行かなくちやなりませんので、東南アジアの方に行く人のためにも大いに考えていただかなくてはならないと思います。特に東南アジアの方も物価は非常に高いということを聞いておりますし、それから住宅なんかも非常に少いと聞いておりますが、何かアメリカ、イギリスと東南アジアとの間の比率といいますか、たとえば欧米のときに一としたときにはそれから何パーセント減らして東南アジアにするとかいうふうにして戦前おきめになつてつたか、それともあくまでその地方々々の物価なり、それからその地方のいろいろなことを勘案しておきめになつていらつしやるかどうか、その辺のことをちよつと伺いたいと思います。
  93. 高野藤吉

    ○高野(藤)政府委員 単なる地方の物価水準を基礎といたしまして、アメリカを一〇〇と見た場合にそれを基礎といたしまして各種の在勤俸をきめております。
  94. 仲内憲治

    仲内委員長 林君。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 三点ほどお聞きしたいのですが、在外公館の名称及び位置を定める法律案に関して、まだ国際的に統一した政権と認められないような国とすでに外交関係を進めて行くということは、第一にはその国の統一した政権を樹立することに対する大きな妨害にもなりますし、一方日本の国の立場を一方的な立場に追いやることで非常に危険だと思うのであります。一例を申しますと、たとえば在大韓民国日本国大使館、この大韓民国に大使館を置くというようなこと、それからドイツのボンに大使館を置くというようなこと、それから台北にたしか大使館を置くというようなことをこの前の政府の答弁で聞いているのでありますが、この大韓民国あるいはドイツのボン、それから台北、こういうところへ大使館を置こうとする政府の意図をお聞きしておきたいと思います。
  96. 大江晃

    ○大江政府委員 林委員のお立場と違ふとわれわれは思うのでありまするが、われわれは世界の一般の情勢から判断いたしまして、御承知のようにサンフランシスコの平和條約を締結いたしましたわけでございまして、そういう一般情勢から見まして、また日本との関係を考えまして必要であるというところにこういう大使館を置くということは当然だろう、こういうふうに考えている次第でございます。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 まあ在外事務所ならまだ事務を取扱うというようなことでよくわかるのですが、まだ講和の締結も交渉もないところへすでに大使館を置くというようなことを、日本法律の中に定めるということは、われわれ納得できないのであります。たとえば中国との将来の交渉を考えるときに、一体台北にある国府の亡命政権——とわれわれは考えるのでありますが、国府政権に対しては、これには表はないのですが、どういうものを設けるのですか。
  98. 大江晃

    ○大江政府委員 これもただいま台湾におきます交渉の結果、必要でありますれば、台北に将来大使館を置くというようなことも考えております。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、大韓民国についても同じですか。目下交渉中なんですが、一方にはすでに大韓民国に大使館を置くということがこの法律できめられており、それから台湾に関する限りは、まだこの法律規定しなくて、今後の交渉に待つというのはどういうように違うわけですか。
  100. 大江晃

    ○大江政府委員 特に台湾を落した理由は、この法律の準備をいたします時期におきまして、まだ台湾との交渉の見通しがあまり立つておらない。従いまして、将来必要な場合には政令で置くことができますので、一応落しておいただけでございます。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 一応落しておいたのだそうでありますが、ではその後どういう交渉の経過になつて、現在はどういう位置にあるか、その後の進捗状態を参考までにお聞きしておきたいと思います。  それからこの法案を準備するころ、大韓民国にはすでに大使館を置いていいと法律規定することのできるような状態であつたというのは、台北の交渉と比べてどの程度進捗し、どの程度の見通しがあつたからこの法律でこういうものを書いたのですか。
  102. 大江晃

    ○大江政府委員 現在の台湾の交渉がどのくらい進んでおるか、またそれにつきまして大使館設置の話がどのくらい進んでおるかという点につきましては、まだ私から申し上げる段階に達していないというふうに考えております。  またそれならば、この法律を準備したときに、大韓民国に大使館を置くことがどの程度基礎があつたかという御質問でございますが、これは台湾の問題に比べまして、日本と韓国との間に大使を交換するという見通しがさらに強かつたということは言えるじやないか、こう考えております。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 強かつたというのは向う側の希望が強かつたのですか、こちら側の希望が強かつたのですか。そして特に大韓民国をこの法律で明記しなければならないような事情にあつたかということを聞きたい。ところがドイツの方はまだ全然條約の交渉もなされておらないと思うのでありますが、台北はすでに交渉を続けておる。ドイツは全然交渉をしていないのに、法律を見ると大使館を置くということが明記されている。これはわれわれ納得できないのでありまして、ドイツと台北と韓国の問題についてはわれわれはどうしても理解に苦しむのでありますが、どういう事情だかということと、それから——これであまり時間をとるのは何ですし、大江官房長では少し微妙な立場もあつて答弁ができないと思いますから、次会に岡崎国務大臣に聞きたいと思いますが、もし朝鮮で統一の政府ができる、あるいはドイツで統一した政府ができるというようなことになると、この大使館というのはどうなるわけですか。
  104. 大江晃

    ○大江政府委員 最初の点につきまして、大韓民国との関係におきましては、御承知のように平和條約の中ではつきり独立を承認されておりますし、台湾につきましては、まだその間いろいろな問題もあつたように存じますので、大韓民国の大使館の問題が先に出て参つたわけでございます。西ドイツ関係につきましては、実は通商上その他の関係から見まして、いわゆる在外事務所のステータスのようなものをやるという話が大分前からあつたわけでございまして、在外事務所としてすでに発足いたしておるのでありまして、これを将来大使館に持つて行くというふうにわれわれは考えておるのでございます。  また第二の御質問といたしまして、これらの国々に統一政権ができた場合にどうするかということでございますが、それは将来のそういう情勢を見きわめまして、これに対処するという以外にお答えするあれがないわけでございます。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 通商上の必要から在外事務所がすでに設けられておつてそれを大使館に切りかえるということならば、台北にもすでに在外事務所は設置されているわけですから、それは私は理由にならないと思うのです。私は台北を大使館と書けというのではなくして、むしろこういうところは書かない方がよいだろうという立場から質問しているのでありますから、その点は誤解がないようにしてもらいたいと思うのであります。台湾にしましても朝鮮にしましても、朝鮮の民族や台湾の民族が統一した政権を心から欲しているときに、相手方の日本が一方で外交関係をつくり、既成事実をつくるということは、朝鮮の人たちあるいは台湾の人たちの希望を妨害することにもなるし、日本が将来抜け道のないような立場に追い込められる危険があるということで私は質問しているのであります。この大韓民国と西ドイツに大使館を置くということは、ドイツ民族あるいは朝鮮民族の立場からいつても、統一政府をつくることを妨げる既成事実を日本がつくることになり、内政にむしろ干渉することになるのではないかというふうにすらわれわれ考えるので、この点は納得できないのであります。(「ソ連がやつているではないか」と呼ぶ者あり)  その次に、今ソ連の話が出たのですが、先ほど並木君からの話で、講和條約が成立すればソ連の代表部はないというのでありますが、日米の単独講和について承認を與えていないソ連としては、まだ日本との間は戦闘状態のない戦争状態が継続するという形で、これについては占領軍としての地位にあるとわれわれは考えるのであります。従つて日本からソ連の駐日の一切の権限を拒否するというようなことは、考えられないことであるとわれわれは考えているのでありますが、その点についてはどうお考えになつておりますか。
  106. 大江晃

    ○大江政府委員 講和條約の発効によりまして、占領管理というものは終るというふうにわれわれは考えております。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 占領管理は終るといいましても、ポツダム宣言あるいはヤルタ、モスクワ会談によつても明らかなごとく、これは大国が一致して共同管理をし、日本との今後の交渉は一切大国一致の原則に基くということになつているのであります。ところが日本とアメリカとの間に講和が成立したからといつて、かつて日本との交戦国であつたソ連の立場が、アメリカと日本との関係によつて解消されるということは、私たち考えられないのであります。やはり戦争状態は、具体的な戦闘はないとしても、今もつて継続している。従つて占領管理という立場で日本に管理権を持つていることは、国際法上からいつても当然だ。日本とアメリカと講和を締結したからといつて、これを承認しないソ連の権限で解消したという、そんな乱暴な根拠は絶対にあり得ないと思うのであります。どこまでもそういうことでやられるのかどうか。また一方ポツダム宣言についてもそうだと思うのであります。明らかにポツダム宣言はあそこで署名されている国、並びにソ連をも含めての大国の一致した意思表示としてなされているものである。それが日本とアメリカとの話合いだけで、ポツダム宣言の効力を失わせるなんというのは実に乱暴きわまる話で、日本の国会の中では通るかもしれないが、国際的にはまつたく一笑に付されるべき理論と思うのであります。日本の外務省ではそんなことを本気で考えられているのかどうか、もう一度念のために聞いておきたいと思う。これは日本の外務省の名誉のためにも、いくら吉田氏が反共ワンマンだからといつて、まるで国際的な慣習も、国際的なとりきめも無視して、日本とアメリカとさえ話合いがつけば、一切他の国際関係解決するというような乱暴なことを——まさかあなた方本気で考えているとはわれわれ考えられないのでありますが、念のためにあなた方の真意を聞いておきたい。もし吉田総理に遠慮をなさるというならばこれは別ですが、もしほんとうにお考えになつているならば、これは国際的に重要な問題になると思いますから、われわれも国際的にこれを訴えなければならないと思います。あなたのほんとうの考えを聞きたい。
  108. 大江晃

    ○大江政府委員 私は條約はあまりわかりませんが、先ほどもお話のように、法律的な意味におきます戦争状態というものは残るかと思いますが、連合国の占領による管理というものは、講和條約の成立によりまして終り、ことに一国の占領管理というようなものはあり得ないと考えております。
  109. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、ひとつ簡単にお願いします。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、法律上戦争状態にあるというならば、事実上もその法律的な効果を実現するための必要な措置をとることは当然あり得ると思う。そういうことは考えられます。従つて法律的に戦争状態が継続されている限り、その降伏條項としてのポツダム宣言の実行をソ連としては日本に要求する権限はまだある、これは当然考えられる。この点は非常に重要な問題でありますから、もし大江官房長が責任上答弁ができないというならば、私は次会にやはり並木君と同じに、岡崎国務大臣に明確に聞いておきたいと思います。法律上そういう関係にあるならば、その法律上の関係を実効あらしめるための必要な権限をとる必要はあると思う。法律上はそうだが、事実上それは無視するということはあり得ないと思う。かりに一歩を譲つてあなたの言うように共同管理という立場はないとしても、ソ連としては戦争状態を継続している限り、法律上の効果を実現するための措置、または降伏條項としてのポツダム宣言の実行を日本に要求する権利は私は当然にあると思うが、この点はどうですか。もしあなたには無理だというならば、無理にあなたの答弁を求めません。
  111. 大江晃

    ○大江政府委員 実際上の戦争状態というものを法律的に何かする必要があるのじやないかというお話でありますが、私は、連合国の占領管理というものが終つたのであるから、もし実際戦争状態というものを何らかの話合いで何とかしたいということになれば、これはむしろ戦争状態を終結するという点についての話合いから始まつて行くものじやないか、こういうふうに考えております。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 戦争状態を終結するためには、ソ連の要求するような事態日本に具体的に実現されねばならない。戦争状態を終結させるか、させないかの自由はソ連にあるわけなのですから、ソ連は必ず日本に対して戦争状態を終結させるためには、これとこれとこういう條件をというように、日本にその実現を求める。またそういうことを求める権限は当然戦勝国としてあると思うのであります。だからそういう権限があるかどうかということをあなたに聞いているわけなのですが、あなたにお聞きしても無理ならば、私は岡崎国務大臣にお聞きしたいと思います。戦争状態を終了させるかさせないか、そういう意思表示をするかしないかの自由はソ連側にあるのであつて、ソ連側が、日本と戦争状態を終結させるためにはこういう條件、たとえばポツダム宣言のこの條件のもつと徹底的な実現を要求するというような権限は当然あると思う。ソ連としては、このポツダム宣言の完全な実施を見て、初めて戦争状態を終結させるという意思表示をなし得るのである。私は、このことは当然ソ連側にそのイニシアがあるというふうに解釈している。日本が、アメリカとだけ話合いをして、ソ連の方の権限まで御破算にするという、そんな乱暴なことはあり得ないと思う。(「四十八箇国あるじやないか」と呼ぶ者あり)それならばアジアの大国はどうだ、中国も、ソ連も、インドも、インドネシアも、ビルマも、一つも賛成していないじやないか。聞いたこともないグアテイマラとか、そんな小さいところを入れて四十八箇国あつたつて、それはだめだ。アジアのほとんど圧倒的な多数の国は反対しているじやないですか。この点はどうですか。
  113. 大江晃

    ○大江政府委員 事実上の話合いというようなことはわかりますが、法的にそういうことを要求する権利はないと思います。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 どうしてないのですか、それではこれでやめますが、法律的には日本とソ連との間に戦争状態がある。ソ連は戦勝国で日本は敗戦国という立場に法律的にはある。それならば、戦勝国として無條件降伏の條件を実現させ、その実現を見てソ連側のイニシアによつて戦争状態を終了させるかさせないかをきめる。その権限をソ連側が握つている、これは当然じやありませんか。法律上は戦争状態にありながら、その戦争状態を終結させるための諸條項を、実現することを日本に要求する権限がソ連にないということは、どこから出て来ますか。
  115. 大江晃

    ○大江政府委員 その措置としてどういうことをお考えか知りませんが、たとえば先ほどのお話のように、日本の占領管理の面に関してこうするとかああするとかいう権利は、講和條約の発効と同時になくなると私は考えております。
  116. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  117. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はちよつと簡単に一つだけお尋ねいたします。  在外公館の名称及び位置を定める法律案の中に「在外公館の名称及び位置は、左のとおりとする。」として、各国の大使館、公使館、総領事館、領事館の名称及び所在地が相当たくさん列記されておりますが、この、どこの国には大使館を置き、どこの国には公使館を置くという区別の標準は何か。単に、大使が派遣せられるのだから大使館、公使が派遣せられるのだから公使館というような意味の区別でなく、そこに日本国との関係において、相手国の重要さの程度に差があるというようにも解釈せられる。そうした見方が私どもの常識上できると思いますけれども、その点、何か標準がありますか。ありますならばもう少し詳しくお聞きしておきたいと思います。どこの国には大使館を置く、どこの国には公使館でいいというような標準ですね。私どもが常識的に考えているほかに、何か特に標準があるのかどうか、念のためにお聞きしておきたいと思います。
  118. 大江晃

    ○大江政府委員 どこの国に大使を置き、どこの国に公使を置くかということで何か基準があるかというお話でございますが、昔は大使、公使の間に格の相違が判然としておりまして、重要な大国に大使を派遣し、比較的重要ならざるところに公使館というようなことも考えられておつたのでございますが、最近の一般の情勢といたしまして、大使、公使というものの実際上の差がだんだんなくなつて参りました。もちろん国際慣例といたしまして、大使が公使の上席であるということはあるのでございますが、それだけに新興国家などには大使館を方々に開設することを希望いたしまして、相手も大体これを了承して受けております関係上、大使館の数が非常にふえて参つておるような状態で、大使館をどこに置き、公使館をそれより重要でない所に置こうというような、そういう基準というものがだんだんなくなつてきておるのであります。今回の提出いたしました法案の中におきましても、先方の申出によつてこれを受けて、戦前は公使館であつたものが大使館になるというものもたくさんございますので、はつきりした基準というようなものは私はないと考えております。
  119. 黒田寿男

    ○黒田委員 外務公務員法の中にも大使、公使という名称が出て参りまして、一応名称の差が現われておりましたけれども、その大使並びに公使の職務とか特権とかというものには別に差はないように、あの法律案を審議いたしました場合に理解して参りました。そうすると、ただ従来の名称上の慣行でも残つておるという以外に、全然意味はないものでございましようか。それから何も大使館、公使館というものを別に区別する必要もないように思います。これは、私ども外交に関してしろうとでありまして何もわかりませんので、この際お伺いしておきます。
  120. 大江晃

    ○大江政府委員 先ほどもちよつとお話申し上げましたように、国際慣行上、大使と公使の席次の上におきましては、大使の方が上席であるという点は、まだ残つております。但し大使と公使の特権あるいは権限の点につきましては、もうほとんど差別もないのであります。まあしいて申しますれば、やはり比較的小国の中で、自分の方は公使館しか出さない、先方からは大使を受けても公使館しか出さぬという、スイスであるとかいうような例もございますから、その点やはり財政的あるいは国の大小と申しますか、そういう点から見て、小さな国には公使館を置くというようなことも、常識的にある程度考えられると思いますけれども、どうも大使、公使というものは、将来ますますその差がなくなつて行く趨勢にある、こういうふうに考えております。
  121. 黒田寿男

    ○黒田委員 わが国としては、大体ただいま御説明のように、大使と公使との間に外交関係事項の処理ないし運営上からは差はないと思います。日本から使節が派遣されますそれらの諸外国におきましても、大体ただいま大江政府委員のおつしやいましたと同じような傾向に現在あるのでございますか、それらを念のためにお聞きしておきます。
  122. 大江晃

    ○大江政府委員 これは特殊の国、たとえばスイスのごときは、先ほど申した通り、自分の方からは大使は出さないという建前をとつておりますが、そういう例外を除きましては、大体同じように大使と公使の差がなくなつて行くというふうになつております。
  123. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、わが国である国に大使を派遣しよう、公使館でなくて大使館にしようと思うときに、相手の国が何か向うの事情で大使館を設置してもらつては困る、日本は公使館にしてくれというふうなことを言われるようなこと、そういう場合があるかどうか、日本で大使館を設置しようと思えば、こちらが設置しようと思うその国も大使館として受けてくれる、そうなつて来ると外交官の席次の問題が考えられる。かりに日本よりは実力の強い国が——これは仮定論でありますから、はたしてそういう事例があるかどうかわかりませんが、かりに日本よりも客観的に見て実力の強いと思われますような国が、ある国に公使館を設置して公使が派遣されておる。ところがそれよりも実力の弱い日本が、大使館を設置して大使を派遣するというようなことになつて参りますと、席順がその国の持つ実力と反するというようなことにもなるおそれがあると思います。そういう場合にはたして実際上どうなるか、私どももちろん実例をよく存じません。要するに日本が大使館を設置しようと思えば、どこの国もそれを受けてくれる、そういうような状態にあるのでございましようか、それとも何か文句を言われるような情勢があるのでありましようか、それをお伺いしておきます。
  124. 大江晃

    ○大江政府委員 この大使、公使の派遣は、やはり相互主義と申しますか、大体お互いの相談でやつておりますから、いろいろな情勢から考えて、日本の立場から大使館にした方がよかろうという所に、大使館に昇格したいがということを申し出ました場合に、私は今後の情勢から見ると、おそらくそういう点で断られるというようなことはないじやないか。また日本の場合で、受ける場合におきましても、一つの国から大使館にしたいというような申出がありました場合に、これを、お前の国はどうだからといつて断る理由も、現在の情勢からいいますとございませんので、御心配のような点は少いじやないか、こう考えております。
  125. 黒田寿男

    ○黒田委員 大体わかりました。それから私が尋ねてみようと思うことまで、ついでに大江政府委員がおつしやつてくださいました。外国のある国が大使を派遣したいというときに、お前の国は公使でもいいというようなことを日本で言えるものかどうかということをその次にお尋ねしてみたいと思いましたが、ただいま大江政府委員の方から、それをお話になりました。そうすると日本の方でも、外国が大使館を設置したいと言えば、大体常識上から諸般の事情と考えられるものを見た上で、一応その希望はいれてやるというようにやつて行くことになるのですか。
  126. 大江晃

    ○大江政府委員 そういうことでございます。
  127. 黒田寿男

    ○黒田委員 それから領事の派遣の場合は、私ども、普通は原則といたしまして通商航海條約というようなものができて、それに基いて領事が派遣されるというように考えておりましたが、そのほかに領事が派遣されます條約というようなものがあるのでありましようか。たとえば領事館に関する條約というようなものもありますけれども、これに日本加入しておるのでありますかどうですか、私はよく存じませんが、領事を派遣するにはどういう根拠に基くかということをお尋ねいたしてみたいと思います。
  128. 大江晃

    ○大江政府委員 通商航海條約ができなければ領事が派遣できないというより、むしろ領事を派遣いたします場合にも両国間の話合いでこれをきめまして、それからあと、通商航海條約というようなものをつくるということになるのでありまして、両国間の話合いで派遣ができるわけであります。
  129. 黒田寿男

    ○黒田委員 そのときに、何か話合いをするという漠然たることでなくして、その基準となるような條約でもありますか。またあれば、日本はそれに加盟しておるかどうかということをお伺いしておきます。
  130. 大江晃

    ○大江政府委員 そういう基準になる條約というようなものはございません。
  131. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、通商航海條約がなくても、いわゆる単純な話合いで派遣できる、そう解釈してよろしゆうございますか。
  132. 大江晃

    ○大江政府委員 国交が開かれますれば、そういうことでございます。
  133. 黒田寿男

    ○黒田委員 それからもう一点だけ。これは先ほど林君も触れられましたが、私どももそれが問題だと思いますのは、この原案によりますと、在外公館の設置されます国が相当多数列挙されておりますけれども、日本に一番近くて、経済上の関係も深い中国、それから地理的にも近い関係にありますし、引揚げの問題等につきましても相当に重大な関係があつて、すみやかに平和関係を回復しなければこの問題もなかなか解決がむずかしいのではなかろうかと考えますようなソ連というような国、それらの国に対しましては全然設置されない——近いうちに大使館、公使館、領事館等を設置する見通しも持つておいでにならないようであります。おそらくそうだろうと思います。それに関連してお聞きしたいのは、先ほど林君からもいろいろと御質問がありましたが、一体サンフランシスコ平和條約に参加いたしました国々のうち、成規の数の批准寄託ができまして、それらの国との間に平和條約が発効いたしました後に、政府は、ポツダム宣言はその効力を失してしまうのだというようなお話でありましたけれども、もしそうであるといたしますれば——私は効力を失するか失しないかという議論はここではいたしません。いたしませんが、もし政府のお考えになるように失してしまうといたしますときに、次のような問題はどうなるかということにつきまして、ちよつとお聞きしてみたいと思います。  それはポツダム宣言に書いてあります條項で、平和條約に取入れられてない條項があります。事の性質上、たとえば日本国内問題に関するだけの條項だから、平和條約で受継ぐ必要はないのだとか、あるいはその條項規定されておりますことがすでに実行せられて済んでしまつておるから必要でない、こういうような問題が平和條約の中に取入れられないということは当然であると思います。しかしそのような條項でなくて、わが国の将来に関係いたします問題で、ポツダム宣言の條項には受入れであるけれども、平和條約には取入れられてないというようなものもある。それは、政府の御所見のように、ポツダム宣言が効力を失することになると、日本の側及び相手国の側とも、いずれにおいてもポツダム宣言に書いてある條項について、今後それを実行する義務はなくなるのだと解釈してよろしいことになるのでありましようか。これは重要な問題があると思います。たとえば日本に関するものといたしますれば、ポツダム宣言によりますと、再軍備をするために必要な産業は、将来日本には許さないという條項があります。平和條約は再軍備の問題には全然触れておりません。イタリアの場合には、こういう問題について講和條約の中で触れている規定があつたのでありますが、日本の場合にはそれがありません。そうしますと、平和條約が発効してしまえば、このポツダム宣言第十一項の「日本に再軍備をなすためにするがごとき産業を許さない」という規定から日本は解放せられて、軍事産業を復活してもいいのだ、単に国内の問題として、日本国憲法の規定上、再軍備はできないのだから、従つて再軍備のためにする産業も日本には復活が許されないのだというだけでなくて、国際義務として、日本が軍事に関する産業を復活させようとすれば、ポツダム宣言の條項に従つてそれはできぬのだ、こういうような義務日本は将来とも負うものであるかどうか。ポツダム宣言は効果を失するということになつて参りますと、日本はそういう義務から解放せられて、憲法で制限を受けることは別といたしましても、外国から軍事産業復活に対しまして、かれこれと義務づけられた意味での干渉と申しますか、反対といいますか、を受けることはなくなるのだというように解釈しなければならぬようになつて参ります。こういう條項効力は一体どうなるのであるか。  それからなお問題がある。それはたとえば第九項です。共産党の立場からいえば、引揚げはもう全部終つてしまつた、残つておる者は一人もない。こう共産党は主張しておる。私どもはそうは主張しない。さりとて政府の言うように三十六万九千人もまだソ連に残つておるというような無責任なことをも言うことはできません。しかし、何人かまだ残つておるのではないかという疑いは私の頭から去らない。そういう場合に平和條約にはこの問題については、残存者のおる国があれば、その国はそれを返すと書いてありますから、ある意味におきましては、この條項が平和條約の中に取入れられておると言えますけれども、この平和條約にはソ連は参加していないのでありますから、ソ連としては平和條約に書いてあります残留日本兵、日本人を日本へ返さなければならない義務を、平和條約の條項によつて義務づけられない。しかし、ポツダム宣言のこの條項によつては、残存者があるとすれば、それを返すことが義務づけられると解釈しなければならない。ポツダム宣言が効力を失するということになると、かりにソ連に残存者があつても、ソ連はこの問題に対しては何ら国際的に義務を負わないのだというりくつも立てられないことはないと思う。そういう問題がありますので、簡単にポツダム宣言は効力を失するのだというだけのお話では、いろいろと疑問になることが起きて来る。これは一体、どうなるのでありましようか。これは重大な問題でありますから、もし政府委員としてお答えができないようでありますならば、時を改めまして岡崎国務大臣にでも、あるいは吉田総理大臣にでもお聞きしてみたいと思います。お答えできますならば、御所信を承りたいと思います。
  134. 大江晃

    ○大江政府委員 ポツダム宣言は平和條約によりまして一応効力を失う、従いましてポツダム宣言の中でいろいろきめられております義務その他において平和條約に書かれてないものは、私は一応法律的の義務としてはなくなるのではないかと考えております。
  135. 黒田寿男

    ○黒田委員 これ以上は議論になると思います。今後も政府と議論することはあるかもしれませんが、今日、政府委員に対する質問はこれで終ります。
  136. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて両案に対する質疑は終了することといたします。  この際暫時休憩いたします。     午後一時十八分休憩      ————◇—————     午後一時十九分開議
  137. 仲内憲治

    仲内委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置を定める法律案及び在外公館に勤務する外務公務員給與に関する法律案を一括議題といたします。  両案につきましては、質疑は終了しておりますので、ただちに討論に入ります。討論の通告がありますのでこれを許します。林百郎君。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、この両法案について共産党を代表して反対いたしたいと思います。というのは、私たちはもともと日米との間の単独講和は、日本国際的な地位を安定せしめないのみか、かえつて非常な危殆な地位に陥れる、中国、ソビエトを仮想敵とするような講和に反対であるという立場で、従来一貫した態度を貫いて来たのであります。その後政府は常にこの単独講和があたかも日本の問題を処理する当然の筋道であるかのごとく、国際的な諸とりきめあるいは国際的な諸決定に違反して、大国一致の原則を無視して、この単独講和を既成事実として次から次へいろいろの処置をとつて来たのであります。この二法案もまたこの単独講和を既成事実化する一つの手段としてなされておるものとわれわれは考えざるを得ないのであります。たとえば在外公館の名称及び位置を定める法律案の中におきましても、先ほど黒田委員からの話もございました通りに、将来われわれが当然外交関係を結ばなければならないところの中国あるいはソビエトに対する措置は全然考慮されてないのみか、朝鮮におきましてもまた台湾におきましても、統一政権を望み、現在の分裂した国内の情勢に対して非常に危惧を持つておる朝鮮、台湾の諸民族の意思を無規して、一方的な大韓民国あるいは国府政権、またはドイツにおきましては西ドイツの政権と一方的に大使館を設けることによつて外交交渉を進めようとしておるのであります。かくのごときは明らかにドイツ、朝鮮、台湾の諸民族の意思を蹂躙するものであり、日本をしてますます向米一辺倒の方向へ導くものとしてわれわれはここに反対する次第であります。  また在外公館に勤務する外務公務員給與に関する法律案につきましては、この給與の額の多少にかかわらず、こうした単独講和の方向を具体化するために、外務公務員が派遣される。そしてこの既成事実をますます固めるという意味においてわれわれは反対するのでありまして、将来日本が全面講和を締結しまして、ソ同盟、中国とも友好関係を結んで、日本の外交官が、または外務公務員が、極東の平和のために、世界の平和のために貢献するというようなことで、在外公館行つて努力される場合には、われわれはまたこの給與の点については十分にその努力に報いるように協力もしたいと思うのでありますが、今の立場におきましては、いかんともこれには賛成しがたいのであります。こういう意味で両法案にはわが党としては反対する次第であります。
  139. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  140. 黒田寿男

    ○黒田委員 私も両案に対しまして反対いたします。  その理由は、ただいま林君が申されましたことを私はそのまま援用してよろしいと思います。平和條約に関する根本的態度の差から、私どものこの両案に対する態度が出て参りますので、常識上は認めてもよろしいような性質の法案とも考えられますけれども、しかし、根本精神において、政府の外交方針、世界政策、平和政策、戦争政策というようなものと私ども根本的に所信を異にしておりますので、この法律案がそういう私どもの政策と根本的に違う政策の上に立つて立案せられたものだという、根本的な見地からして反対いたします。
  141. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。  それでは在外公館の名称及び位置を定める法律案について採決いたします。本案を原案通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  142. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  次に在外公館に勤務する外務公務員給與に関する法律案について採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  143. 仲内憲治

    仲内委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なおただいま採決いたしました両案に関する報告書の作成は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議なければ、さように決定いたします。  それでは本日はこれにて散会いたします。  次会は明後四月二日午前十一時より開会いたします。     午後一時二十五分散会