○黒田
委員 私はきようもまた
憲法との
関係において、本案に
憲法違反ではないかと思われる点が
一つありますので、これをお尋ねしてみたいと思います。
それは、この
外務公務員法第九條は、
憲法第
七條第五号に違反するものではないか、こういう問題であります。私はその理由をこれから申し上げてみたいと思います。
外務公務員法第九條によりますれば、「
領事官の委任状は、天皇がこれを認証する。」こうな
つておりまして、私はこの点が
憲法第
七條第五号に違反すると思うのでありますが、どうでありますか。思うかどうかというよりは、私は思うと断定することができると思うのであります。
領事官とはどういうものであるかと申しますと、
外務公務員法第六條によりますれば、
総領事、
領事、副
領事、
領事官補、これであると思いますが、これは第六條によりますれば
外務職員であります。
外務職員である以上は、第二條には特命全権
大使、特命全権
公使、全権
委員とは別個に
外務職員というものが、
外務公務員として列挙されているところを見ますと、この
外務職員が大
公使、全権
委員と違うものであることは明らかであると
考えます。ところで
憲法第
七條第五号によりますと、この号で天皇の認証を要する書類と定められてあるものは三通りあると思います。もとより天皇の認証を要する書類は第五号の場合だけではありません。たとえば第八号の場合でも天皇の認証を要する文書はあるのであります。しかし他の項のことをここで問題にする必要はないと思うのであります。私はこの第五号の場合における天皇の認証を要する文書の中には、
領事官の委任状は含まれていない。そこで
領事官の委任状問題について重大な疑問を持つものでありまして、この点に関する原案は私は
憲法違反ではないかと思うのであります。
憲法第
七條第五号を見ますと、天皇の認証を要する書類は三通りあると思います。第一は国務大臣及び
法律で定めるその他の官吏の
任免状について天皇の認証を要する。第二は委任状でありますが、この委任状は全権に対して出す委任状であると私は解釈するのであります。それから第三が信任状でありまして、これは
大使、
公使に対し出されました信任状であります。第五号によりますとこの三つの書類に天皇は認証を要するということにな
つております。私はそう解釈しておるのであります。そのうちで官吏の
任免状という部分につきましては「国務大臣及び
法律の定めるその他の官吏」ということにな
つておりますので、
法律をも
つてその他の官吏を定めさえすれば、いわゆる認証官の範囲は拡大され得る道が開かれているのでありまして、
従つて任免状の認証の範囲の拡大される余地がそこに設けられているのであります。ところが信任状及び委任状の認証につきましては、私は
憲法第
七條の第五号によりまして限定されておると思う。委任状ならば全権、信任状ならば
大使及び
公使こういうように限定せられてしま
つておると思うのでありまして、この点では
法律をも
つて委任状及び信任状の認証の範囲を拡大することは、私は封ぜられておると思います。しかるに
外務公務員法第九條によりますと、
領事官の委任状までも天皇が認証するということにな
つている。これは
外務公務員法という
法律によりまして、委任状の認証の範囲を拡大することになるのでありまして、私はこれは
憲法違反であると
考えます。
憲法第
七條第五号には、
領事の委任状に天皇が認証するなぞということは書いてありません。一体
領事とは何であるか。先ほど申しますように
総領事もあります。
領事もある。副
領事もある。
領事官補というようなものまでも
領事官に含まれるということは、
外務公務員法によ
つてはつきりと示されておるのであります。他の重要な官吏に比較してみて、
総領事の委任状まで天皇の認証を要することにすることは私はどうかと思うのでありますが、いわんや
領事官補に対する委任状まで天皇の認証を要するというに至りましては、單に
憲法上の点からだけでなく、事実問題といたしましても、はなはだ権衡を失する
規定だ、はなはだ妥当を失する処置であると
考えるのであります。
そこで
政府に御考慮をお願いしたいと思います。私はこの間も
政府みずからが御訂正に
なつたらどうかと思う他の点を指摘いたしましたけれども、私の
考えからすれば、第九條の
領事官の委任状を天皇が認証するという点も、御訂正に
なつたらどうかと思います。私はこれは
憲法違反になると思いますが、いかがでありましようか。