○黒田
委員 私は実は一間一答式にやりたいと思いますけれども、時間がありませんから、一応
意見だけ一括的に申し述べさしていただいて、それに対し御答弁をお願いしたいと思います。
この
行政協定の内容の中には軍事基地設定
協定の内容が含まれているのではないかという疑問が私にはどうしても解けない。
行政協定の第
二條に「施設及び区域の
使用を許す」と明示してあるのでありますけれども、この区域というのは一体何であるか。私はこの区域の
使用を許すという
協定ができたということは、実質上軍事基地の設定
契約になるのではないか、こう思う。ある国が他の国に対して、軍事的目的のために一定の地域を
使用させることを同意する。そしてその
使用期間が相当長期に及ぶというような場合には、この
協定についてどういう名称が用いられましようとも、実質においてはこれは軍事基地設定を目的とする
協定の内容を持つのではなかろうか、こういうように
考えるのであります。それだけ申し上げましたのでは簡単に過ぎると思いますので、そこでこの
協定の内容それ自体を私は検討してみたいと思います。
この公式議事録の第三條を読んでみますと、ラスク氏の陳述といたしまして、「この
協定の目的を遂行するのに必要な限度において、特に、次のことを行う権利、権力及び権能を含む」ということにな
つておりまして、その次にaといたしまして「施設及び区域を構築(しゆんせつ及び埋立を含む。)」云々と表示してあります。それからcを見ますと、「港湾、水路、港門及び投錨地を改善し、及び深くすること並びにこれらの施設及び区域に出入するために必要な道路及び橋りようを構築し、又は維持すること」とあり、またeの頂を見ますと「
合衆国が
使用する路線に軍事上の目的で必要とされる有線及び無線の通信施設を構築すること。前記には、海底電線及び地中電線、導管並びに鉄道からの引込線を含む。」あるいはfとして「施設又は区域において、いずれの型態のものであるかを問わず、必要とされる又は適当な地上若しくは地下、空中又は水上若しくは水中の設備、兵器、
物資、装置、船舶又は
車輌を構築し、設備し、維持し、及び
使用すること。」云々、こういうように表示されております。そこでこの内容から見ると、いずれも相当の長年月にわたりまして利用せられるところの、地上並びに地下の築造物の構築であるということがわかります。
従つてこのような目的のために一定の地域を
使用するということにな
つて参りますと、私どもの常識から申しまして、
使用年限も相当に長期のものでなければならぬということが、当然に推定できるのであります。私はこの推定をいたします参考のために申し上げますが、たとえば
日本の
法律で、われわれが普通に家を建てるために土地を借りるような場合はどうであるか。借地法の第
二條を見ますと、堅固な建物の所有を目的とする
契約につきましては、六十年、その他の建物の所有を目的とする土地の貸借の場合におきましても、三十年というのが
原則であります。これは但し前者について三十年、後者について二十年以上の特約をすれば、その特約も有効であるということにな
つておりまして、
行政協定の場合と借地法との比較はどうかと思いますけれども、いやしくも私どもが個人的な
使用を目的といたしましての家屋建設のためにする、個人間の土地の
使用の
契約をいたします場合にさえ、三十年か六十年という年限が認められることにな
つております。いわんや私がただいま議事録の第三條に記載せられておりますところを読み上げたその内容からいたしますれば、常識上、区域の
使用は、相当長年月にわたるものであるということを、私ども予想しなければなりません。そうしてその
使用目的はもちろん軍事的であります。こうな
つて来ますとこういうものは軍事基地の設定
契約ではないか、こう私どもしろうとは疑問を起さざるを得ないのであります。なるほどこの
行政協定では米比軍事基地
協定のように九十九年という年限をきめましたり、特に一定の場所を最初から特定したりしてはおりません。しかしながらこの
協定におきまして第
二條を見ますと、両
政府の合意によりまして施設及び区域の
使用を
協定する。もしこの
協定の効力発生の日までに両
政府の合意がないときは、
合同委員会を通じて両
政府が締結するとな
つておりまして、ともかく特定の地域が確定せられるということは相違ないのであります。その上に重要なことは、第
二條の二項によりますと「新たに施設及び区域を提供することを合意することができる。」こういうようにもな
つておるのでありますから、私どもから
考えますと、米比軍事基地
協定の場合に比しまして、もつと範囲が拡大せられる可能性がある。地域といと概念がここでは固定的でなく、きわめて流動的であります。これを極端に申しますれば
——極端にと申しますと
岡崎さんのごきげんを損ずるかもしれませんが、理論からいたしまして、また常識から申しまして、極端に言えば、
日本国中が
使用せられるような可能性が発生し得る、そういう
協定だと私は
考えます。だから
日本の全体が軍事基地となる可能性があるのだというふうにも、私どもは解釈できると思います。だからこれは、ある一国の中のある特定の地点を限
つて軍事基地設定
契約を結ぶというのではなくて、国全体を軍事基地
使用目的のもとに置いて、ただ便宜上そのうちのある地点または他の地点というように、必要に応じて流動的に
選択することができる。しかもその個々の
選択された地域における
使用すら、私が
先ほど申しましたような構築物をこれに備えるのでありますから、相当長年月にわた
つて利用せられるものであるということになると解釈しなければならぬ。そうしますと私どもには、どうしても軍事基地設定
契約の内容を
——この
協定の全部がそれであるとは言いませんが
——この
協定は内包しておるというように解釈しなければならないのであります。最後に申し上げておきますが、私は、前国会のときに西村條約
局長に、どうも今回の安全保障條約は、これによ
つて日本の地域の常時の
使用ということもでき、米比相互防衛
協定と米比軍事基地
協定を混合したような性質を持つものになるのではなかろうかというような
質問をいたしましたところが、西村條約
局長は、断じてそういうものでない、軍事基地設定という内容は含まないというように答えられて、次のように答えられた。「要するに
日米安全保障條約のもとに
アメリカ軍が
日本に駐屯する
関係は、」中略いたしまして「
軍隊が駐屯する、
従つて駐屯地の国の
政府がその
軍隊に施設、役務を提供してこれに協力する、こういう
関係が生ずるにすぎないのであります。」こう言
つております。この西村條約
局長の答弁の中には、区域ということが抜けているのです。単に施設及び役務を提供する、これだけにすぎないというのでありますならば、私は軍事基地設定
契約であるという疑問を起しません。けれども、この今回の
行政協定には明らかに施設及び役務のほかに区域ということが書いてある。だから私は西村條約
局長の答弁は答弁にはな
つていないと思う。区域を含むものである以上は、軍事基地設定の
契約の内容を実質上持つのではないか、こういう疑問が起るのであります。これは別に
岡崎さんが御
心配になるような悪意の宣伝をするために言うのではありません。私ども国会議員の一人としてこういう疑問を起すことは当然だと思うのでありまして、これについて
政府の御見解を承りたいと思います。きようは私はこの一点だけお伺いいたします。