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1952-01-30 第13回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年一月三十日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 小川原政信君 理事 近藤 鶴代君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君       菊池 義郎君    栗山長次郎君       中山 マサ君    守島 伍郎君       小川 半次君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         国 務 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         警察予備隊本部         次長      江口見登留君         法制意見長官  佐藤 達夫君         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第五         課長)     上田 常光君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君 昭和二十六年十二月十五日  委員伊藤郷一君及び今澄勇辞任につき、その  補欠として樋貝詮三君及び岡良一君が議長の指  名で委員に選任された。 昭和二十七年一月二十三日  委員岡良一辞任につき、その補欠として西村  榮一君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員高倉定助辞任につき、その補欠として羽  田野次郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  理事北澤直吉君、竹尾弌君及び西村榮一君の補  欠として小川原政信君、近藤鶴代君及び戸叶里  子君が理事に当選した。 同日  佐々木盛雄君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 昭和二十七年一月二十二日  ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する  件に基く賠償庁関係命令の措置に関する法律  案(内閣提出第一〇号) 同月二十六日  千九百十二年一月二十三日にへーグで、千九百  二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九  日及び千九百三十一年七月十三日にジユネーヴ  で、千九百三十一年十一月二十七日にバンコツ  クで並びに千九百三十六年六月二十六日にジユ  ネーヴで締結された麻薬に関する協定条約及  び議定書を改正する議定書並び附属書への加  入について承認を求めるの件(条約第一号) の審査を本委員会に付託された。 昭和二十六年十二月二十六日  在外同胞引揚完了に関する陳情書  (第一八号) 昭和二十七年一月二十九日  在外同胞引揚完了に関する陳情書外一件  (第一二二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まずお諮りいたしますが、理事北澤直吉君が都合によりまして理事辞任を申し出られましたので、この際これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければさように決定いたします。  次に理事補欠選挙についてお諮りいたします。
  4. 菊池義郎

    菊池委員 委員長に一任したいと思います。
  5. 仲内憲治

    仲内委員長 右菊池委員委員長一任に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 仲内憲治

    仲内委員長 なお当外務委員会におきましては、ただいまの北澤君の辞任のほか、委員異動等によりまして、理事が四名欠員となつております。それでこの際理事補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければさようにとりはからいます。それでは    小川原政信君  近藤 鶴代君    佐々木盛雄君  戸叶 里子君をそれぞれ理事指名いたします。(拍手)     —————————————
  8. 仲内憲治

    仲内委員長 次に国際情勢等に関する件を議題といたします。  ただちに質疑を行うことといたします。佐々木盛雄君。
  9. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私はこの際外務当局お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一には、近くモスクワで開かれるという経済会議に対する外務省当局見解を求めたいと思うわけであります。モスクワ経済会議につきましては、伝え聞くところによりますと、外務当局といたしましては、経済会議の結果として経済上の収穫がきわめて少いという理由や、あるいは政治的にソ連平和攻勢に利用される危険性があるというような点等からして、モスクワ経済会議に対しましては、きわめて消極的な態度をとつておるように見られるのであります。もとより米英圏とのかたい親善関係を結んでおりまする日本といたしましては、その経済的な収穫もきわめて限られておることは、おのずから当然であろうと思います。しかしながらつ考え方によつては、この際日本外交攻勢を展開するいいチャンスであるとも考えられないわけでもないのであります。いずれにいたしましても、こういう問題について、外務当局がどういうふうな見解を持つておるかという点と、またこれに対して日本からの代表派遣方について申出がすでにあるわけでありまするが、本日の新聞によりますると、乗船の船を回航するとか、あるいは身柄については一切これが安全を保障するというようなことまで、伝えておるようなわけであります。従つて日本代表出席されることに対して、政府としてはどういうふうな態度をとつておるかという点について、承つておきたりいと思います。
  10. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 御答弁申し上げます前にごあいさつ申し上げます。実は私昨年の暮れに草葉政務次官のあとを受けまして、政務次官を拝命したのでございます。まつたく未熟の者でございまして、何分これからいろいろと御指導、御鞭撻を仰ぎたいと存じます。  さてただいまの御質問でございまするが、モスクワ経済会議への招請は、御案内のように個人に対していたしておるものでありまして、まだ政府といたしましては公式に何らの交渉を受けていないわけでございますが、しかし政府意見を求めるということでありましたならば、ただいまもお話にあつたのでありまするが、この経済会議もやはりソ連平和攻勢一つではないか、あるいは現下諸般情勢等から勘案いたしまして、好ましいものではない、かように考えておるところであります。  それから渡航の問題につきましては、今後旅券申請等でもございましたときに、旅券法に照しまして、そのときの情勢によりまして判断をして行きたい、かように考えております。
  11. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 補足的に承つておきますが、それではもうすでに招請を受けておる人については、先般常識によつて承知であろうと思います。それらの招請を受けた人々が、モスクワ経済会議出席目的として、渡航申請をした場合においては、外務当局はこれに対してどういうふうな態度をおとりになるか。御意見を承つておきたいと思います。
  12. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはただいまお答え申し上げましたように、旅券法にいろいろの条項がございまして、先ほど佐々木委員からもいろいろお話がございましたが、相手国において保障があるかどうかとか、いろいろ問題がございます。こういう問題についてそのときの情勢によりまして、判断をいたして処理をして行きたい、かように考えております。
  13. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 何か渡航手続上難点というようなものがありますかどうか。特にこういう点が困難であるというような点があるかどうかということを……。
  14. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどお答え申し上げたところで御了承おきを願いたいと思います。
  15. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は、手続上の問題もそうでありますが、もう少し政府の根本的な態度として、代表が行くことそのことも好ましくないとか、政府としてはあまり好むところでないということに、先ほどの御趣旨からいうとなるのじやないかと思いますが、それらの点について、もう少し政府態度を明確にしていただきたいと思います。
  16. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほども申し上げましたように、この会議への招請個人として受けておられるのでありまして、政府はまだそれらの人々からの正式な折衝も受けておりませんので、この際はつきりしたことは申し上げかねるのでありまするが、しいて政府態度を言えということでありましたならば、先ほど申し上げましたように、現下諸般国際情勢並びにこの経済会議も、やはりソ連一つ平和攻勢の一端ではないかというふうにも考えられまするので、しいて意見を言えということでありますならば、好ましいものとは思つていない、かように申し上げる次第であります。
  17. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次に先般韓国政府大統領李承晩氏の宣言関連して、伺つておきたいと思うのでありまするが、李承晩大統領は、韓国の国防上の要請によるという理由から、韓国領海以外の公海の広大な水域に、国家主権を行使する旨を宣言いたしております。地理的に見ますると、東は島根県の竹島から、西は黄海の中央、南はマッカーサー・ラインよりさらに日本寄り水域にわたり、広汎な地域警戒線を設けまして、この水域内では船舶の自由航行は認めるけれども、資源の保護についての主権の行使というような声明をいたしました。これに対して外務省当局の談話を発表されまして、かかる宣言は海洋自由の原則を破壊するものである。のみならず国際漁業協力基本観念とも相いれないものである。国際社会の通念として認めることができないという声明をなさつております。するとこれに対してまた韓国外務当局宣言を出しまして、李承晩宣言というものは、恒久的なものである。韓国国家主権が外国に荒されるのを守るためのものであるといつて、わが外務省の反論を、逆に日本の侵略的な意図を示したものであると言つておるのであります。そこでさらにこの宣言先例というようなものについても、アメリカ大陸諸国にもあるというようなことを申しておるのでありますが、一体そういう先例があるのかどうかという点と、こういう独善排他的な宣言というものが、韓国側において一方的になされるものであるということになれば、同じ立場から、日本側からも同じようなことがなされるという結果にもなりはせぬかと思うわけであります。従つて日本にもそういつた宣言をする権利があるのかどうかという点、さらにこれらの問題について、外務当局が具体的にどういうふうにしてこういう問題を解決しようとするかという具体策について、承りたいと思います。
  18. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま李承晩ライン声明についてお尋ねがあつたのでありますが、これはお話にもありましたように、われわれが常識的に持つております公海自由の原則を、まつたく破壊するものでありまして、日本政府といたしましては、これは単なる一方的宣言としまして、これを取入れることはできない。しかも最近日米加漁業協定等におきましても、一応原則として公海の自由ということを確立し、また海洋資源は人類の福祉のために、各国平等の立場において開発、利用するという現代における漁業に関する国際協力基本観念から、いろいろの折衝をしておるのでありますが、そういう観念とも相いれないものでありまして、わが方としては絶対に承認し得ないということを、表明しておるのであります。このことは韓国政府に対しても明確に申し入れております。  それから先ほどこういう先例はどうかというお尋ねでございましたが、ごく例外的のものはあつたかどうか知りませんが、かような広汎な声明というものは、その先例をわれわれも知らないのでございます。この問題に対しましては、近く開始されます日韓会談において強調いたしまして、韓国側折衝し、反省を求めて行きたい、かように考えております。     〔「関連」と呼ぶ者あり〕
  19. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私いろいろありますから、連続してやつて行きます。  次に中国国民政府との国交回復の問題について承つておきたいと思います。政府全権団台湾に派遣して、中国国民政府との間に平和条約を締結しようとしておる旨のことが、伝えられておるわけでありまするが、まずそのことに関する事実について、どんな構想を持つて、どういうふうな目的でおやりになつておるかということを、承つておきたいと思います。
  20. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは大分大きな質問でございまして、私からお答えするのが適当かどうか知りませんが、御案内のごとくダレス氏あての吉田書簡によりまして、わが国といたしましては、台湾を中心とする国府から平和友好条約の申出がありました際は、これに折衝する用意があるという申入れをしておるのでありまして、この原則に基きまして、近くわが国代表を送りまして、平和修好条約折衝を開始したい、かような立場をとつておるわけであります。
  21. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 すでにそういつた人選についても選考中でありますか。
  22. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体選考中でありますが、まだ決定というところまでは至つておりません。
  23. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 憲法の第七十二条によりますと、内閣総理大臣は、内閣代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告しなければならぬという現状がございます。先般来も野党の諸君から問題にされておりまするが、私は野党とは質問する立場が違うわけでありますが、吉田首相ダレス氏に対する書簡を見ますると、先ほど説明中国国民政府国交回復のことが明確に規定されております。平和条約に関して二つの中国の選択というものは、日本自由意思にまかされておつたのでありますが、このダレス氏に対する吉田書簡によつてアジアにおける日本の進路は決定されてしまつたわけであります。従つてこのような重大な国策につきましては、これは当然新しい民主憲法の第七十二条の規定に基いても、これは国会に報告さるべき義務があることは当然のことであります。従つて政府といたしましては、いつどんな形式で国会にこのことを報告し、その承認を求めようとされておるかというようなことについて、承つておきたいと思います。
  24. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題については、吉田総理も本会議においてたびたび答えられておるのでありますが、どの政府折衝するかというようなことにつきましては、これは政府の責任において外交問題の処理としてやつておるのである、かように言われておるのであります。  第二点の国会関係の問題でございますが、このできまする条約につきましては、やはり憲法の条章に従いまして、国会の批准といいますか、承認を得て、そのときに十分御審議を願いたい、かような建前のように解釈しております。
  25. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 この憲法第七十三条の内閣の行う事務の中に「外交関係処理すること。」ということが規定されております。従つてしいて言えば、字句にとらわれて申しますと、外交関係処理することは内閣の行う行為であるかもわかりませんが、七十二条の規定等から考えまして、新しい民主憲法の本質から考えますと、政府外交事務を行う権能があるのであつて外交政策については当然国会に諮るべきものだと、私は考えるわけであります。しかしこれらにつきましても、ただそういう見解だけを述べたにとどめておきます。  そこで私は外務当局に承つておきますが、この吉田首相ダレス氏に対する書簡の中に、総理が明確にうたつておりまする中国国民政府との国交回復ということは、サンフランシスコ平和条約の第二十六条の規定に基いて、二国間の平和条約として締結しようという構想を持つておられるのかどうか。
  26. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは今後の国府とのいろいろの折衝によりまして、どういう形の条約になりますか、まだ予想はできないのでありまするが、われわれの解釈といたしましては、サンフランシスコ条約の二十六条に予想しておりまする二国間の全面的な平和条約とは、違つて来ると思うのであります。しかし国府現実に施政の権能を行使しておりまする地域におきまして、善隣友好立場から、この平和条約に示されました諸原則に従いまして、戦争状態を終結し、戦争に伴う未解決の問題を解決しようとするものでありまするから、さような意味におきまして、二十六条による限定的な平和条約、かように言い得るものとわれわれは解釈しております。
  27. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そうすると、国民政府というものを中国全体を代表する政府とは認めないで、台湾地域的な政府とし、暫定的に、臨時的にこれとの関係回復しようという意味でありまするかどうか。その点を承つておきます。
  28. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 暫定的とか一時的とかいうような性質のものではないと思います。
  29. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 ただいまおつしやつた限定的な国際関係の樹立だという意味のことは、どういうことなのでございましようか。
  30. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは御承知のように、国府現実支配権を行使しておりまするのは台湾及びその周辺で、これはもう現実の事実であろうと思います。かような意味におきまして、地域において大体限定されておりまするし、その現実をもととして、いろいろの諸般条約が結ばれることとなりまするから、かような意味におきまして私は限定的と申し上げたのであります。
  31. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 ただいまの御説明は、サンフランシスコ条約の第二十六条の規定従つた、全面的なものではないという御説明でございましたが、すると、今度の台湾との間に締結いたしまする条約というものとは別に、あらためて中国全体との間に、平和関係回復する条約を結ばなければならぬという結論になるのではございませんか。
  32. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ちよつと御質問と答えがそれるかもしれませんが、私が先ほど申し上げましたのは、今回国府折衝される条約につきましては、この二十六条に予想しておりまする二国間の全面的な平和条約とは違つて来ると思うということを申し上げたのでありまして、先ほど申し上げましたように、相手現実の事実を認めまして、善隣友好立場から、この平和条約の諸原則従つて平和条約を結んで行く、かような意味におきまして、やはり二十六条による限定的な平和条約、かように考え得るものと申しておるのであります。
  33. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そうすると法律的に申して、中国との戦争状態というものは、今度の条約によつて終結をするということになるのですか。
  34. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国府の支配しておりまする現実地域につきましては、戦争状態は一切終結する、かように考えております。
  35. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 最近新聞等で伝えておりますのは、今度の台湾にある中国国民政府との平和関係回復ということは、平和条約ではなくして、修好条約であるというようなことが、一般にいわれているわけでありますが、修好条約とか友好条約というものと、平和条約と一体どういう関係のものか。外務当局がただいま国民政府との間に締結しようという条約の種類は、一体そのいずれに属するのか。
  36. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これも先ほど申し上げましたように、サンフランシスコ条約の諸原則に従いまして内容を決定して行くものでありまして、さような意味におきまして私は平和条約である、かように解釈しております。
  37. 仲内憲治

    仲内委員長 佐々木君、あともう五分くらいで……。
  38. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そうすると、吉田書簡によりますると、中国共産政権とは二国間条約を締結する意思を有しないということを明確にされておりまするが、これは前に、もし中国が希望するなれば、上海にも事務所を設置するというようなことを私はたまたま聞いたのでありまして、大分飛躍して来たわけであります。今度は中共政権というものは全然認めない、積極的にこれを否認するという態度に出られたわけでありまするが、すると今日中国本土日本との外交上の関係というものは、一体どういうようなことになるものでしようか。
  39. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 今回の吉田書簡その他の声明によりましても、別に新しく中共政権を否認するとかどうとかいう問題を、ここに新しく提起したわけではないと私は思うのであります。中共とのいろいろの取引といいまするか、折衝その他は事実上の外交関係の問題で処理される、かようになるのではないかと思います。
  40. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 もう一点だけ、繰返すようでありますが、承つておきます。ただいまの限定的な国交回復という話でありますると、このサンフランシスコ条約二十六条に基く全面的な平和条約というものが、将来またあらためて締結されるということになるのかどうか。
  41. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 たびたび申しましたように、国府現実に支配している地域を対象とするものでありますから、かような意味でわれわれは限定的ということを言つておるのでありまして、将来国府支配権が広くなるといいますか、そういう場合につきましては、これは将来の問題としてそのときに検討されることである、かように考えます。
  42. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 終りました。
  43. 仲内憲治

    仲内委員長 山本君に申し上げますが、あなたの質問順位は最後になつておりますけれども、先ほど関連で朝鮮問題だけを……。
  44. 山本利壽

    山本(利)委員 先ほど佐々木委員から、韓国大統領李承晩氏の、朝鮮半島周辺の海域に対する漁業権主張に関する宣言というものについての御質問があつたのでありますが、韓国の方では先ほど説明のような主張があり、わが国の方ではこれを反駁しておるわけであります。特に先ほども出ました日本海の竹島領土権の問題というようなものにも関連いたしますので、この点は前国会において、両条約特別委員会において私からも質問したのでありますが、その際には西村条約局長から、はつきりと竹島わが国領土であるということが言われたのであります。こういうことは非常な紛糾を来す問題と思うのでありますが、わが国の方の今回の条約に対するいろいろな問題については、総司令部の意向も十分に参酌されての条約であり、あるいは説明であつたと思うのであります。韓国政府も現在はアメリカを主としたる国際連合軍の指揮のもとにあると思うのでありますが、李承晩大統領がかような宣言を発するについては、やはりアメリカ側の了解を得ての結果であろうと私は考えるのでありますが、この点についての政府の御見解を承りたいと思います。
  45. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどお答えしましたように、李承晩声明につきましては、わが方といたしましても、かようなものは絶対に承認し得ないということを、韓国政府に対しても明確に申し入れておるのでありまして、その申入れの中にも、竹島日本領土であるということを強調して申し入れてございます。この問題は今後の日韓会談等におきまして、十分討議折衝されることと存じます。
  46. 山本利壽

    山本(利)委員 お答えがそれておるようでありますが、私の質問は、どちらの国も今アメリカを主とした連合国支配下にある。だからこういう問題については、李承晩氏も、重大な問題でありますから、アメリカ側の容認のもとにそういう宣言をしたのに違いあるまいと思う。その点を政府はお調べになつておるかどうかという問題を、お尋ねしておるわけであります。
  47. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この点はまだ正式には調べておりませんが、さようなはずはないと解釈しておるわけであります。
  48. 山本利壽

    山本(利)委員 この点はただちにお調べになる必要があると考えるのでありますが、さらにお伺いいたしたいことは、かような韓国側宣言がなされて、それに対してわが国の方から反駁的な主張をなされた。その場合に総司令部に御相談の結果、なされたのかどうかということを承りたいのであります。
  49. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 わが方が抗議文を出しておることにつきましては、総司令部にも申し入れまして、承認を得てやつておる次第であります。
  50. 山本利壽

    山本(利)委員 そうすると、こういう問題がさらに紛糾を来して、どちらもが自分の方の主張を譲らないという場合に、最後にこの問題の解決方法については、いかなる方法があるかということを承りたいのであります。
  51. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 平和条約第二条におきまして、「日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮に対するすべての」云々、かようにあるのでありまして、これらの条項の解釈について非常に紛議が起きました際には、この平和条約の定むるところによりまして、それぞれの裁定といいますか折衝が行われることになるだろう、かように思つております。
  52. 山本利壽

    山本(利)委員 この問題につきましては、さらに強力なる御処置を願いたいと考えるのであります。  先ほど佐々木君の質問のうちで、モスクワ経済会議について、これはソ連側の平和攻勢の一部と考えるから、日本政府としてはこれに参加することはあまり望ましくないというような、政務次官からの御答弁があつたと思うのでありますが、こういう問題についての招請状は個人に来たものであつて日本政府に来たものでないから、まだわれわれは知らない、こういつたような態度は、今後の外交上に非常な不利を来すものである。かりに外国から個人あてに来たものでも、その招請状を受取つた人について、詳しく政府調べておくべきではないかと考えるのであります。これを申しますのは、今回のモスクワ経済会議というものは、決してソ連の発意によるものではなくて、自由国家群というものが相談いたしまして、政治とか軍備とかいうことを一切抜きにして、世界の経済的な安定をはかるために、自由国家群が相寄つて、この世界中の資源その他について研究しようではないか。決して各国の代表を拘束するような決議をなすべき会議ではない、こういつたような申合せがあつて、それは非常に必要であるということが自由国家群において話合いがなされ、しかしこの場合に、ソ連圏がこれに参加しない場合には、非常に効果が薄い。この会議を自由国家群のある地点において開催する場合には、共産主義国家というものは参加しないであろうから、その場所をソ連に求めた方が有効ではあるまいかという結果、ソ連に申し入れたところが、ソ連モスクワにおいて開くことを受諾したということを、私は聞いておるのであります。決してソ連側から発意的に平和攻勢の一部としてなされたものではない。今後は使うかもしれないけれども、今度のモスクワ経済会議というものは、決してそういう発足のものではない。だから一つ経済的な研究機関と申しますか、会議としてこれに参加することは、わが国のごときは非常に有利ではないかと私は考えるのであります。こういうことを聞いておりますから、単なる共産主義の一宣伝とかなんとかいう問題でなしに、こういうような意図があるならば、それを日本政府当局者として先ほどのような答弁をなされるということは、私は不勉強であるように考えるのであります。そこでこのことが私の聞き及んでおるような筋のものであるか、あるいは真にソ連平和攻勢の一部としてこういう申入れがあつたものか。個人的に招請状を受けられた人その他について十分御研究の上、この次の会議において御報告を願いたいと考えます。一応これで終ります。
  53. 仲内憲治

    仲内委員長 菊池義郎君。
  54. 菊池義郎

    菊池委員 先ほど台湾政権相手平和条約でありますが、日本地域的の台湾政権を相手として平和条約を締結しようといたしましても、中国人は面子を重んずる国民でありますからして、とうていそれは承知しまいと思います。私はそう考えるのでありますが、地域的の政権として日本が扱おうとする場合、向うが承知しない場合において、どういう方法をもつて日本はこの交渉に当るつもりでありますか。その日本の心構え及び見通しについての御意見を伺いたいと思います。
  55. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは国府を単なる一地域政権として、一地方政権として扱うというような意味ではないのでありまして、国府現実に支配をしておりますのが台湾及びその周辺でありますから、この現実の事実をもとといたしまして、従来から国家として承認されておりまする国府相手として折衝する、こういうことになるのでありまして、今後日本政府代表が向う参りまして、その間のいろいろな事情等を勘案して折衝いたしましたならば、必ずや理解を得るものと考えておる次第でございます。
  56. 菊池義郎

    菊池委員 現実の占拠地域をもととしてというようなお話がありましたけれども、向うとしてはなお大陸反攻を宣言しておるようなわけでありまして、おそらくこの日本の出方には向うは応じない。私はかように考えておりますが、向うの方でそれに応じない、その主張を曲げない場合には、一体どういう出方があるか。これは外交上の機密であるかもしれませんが、漏らすことができるならばひとつお漏らし願いたい。
  57. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは外交上のいろいろの折衝の問題でございまして、私からここでお答えできる問題ではないと思います。
  58. 菊池義郎

    菊池委員 それからこの台湾政権を利手として平和条約を締結するという子紙を出したことを、アメリカから先に発表されたということは、これは日本外交の下手ぎわを暴露したものであつて、われわれ自由党としても非常なマイナスなのであります。それを向うから慫慂されてその手紙を送つたにいたしましても、その手紙を送る前に日本においてもこれを公表した方がよかつた。公表したからといつて何らさしつかえない。これによつて台湾政権に対しても非常な好感を与える。アメリカの要請によつて、機械的に日本はそういう態度なつたんだというように思われては、日本台湾との将来の国交の上にも、平和条約折衝の上にも、非常におもしろくない印象を与えるという結果になる。これは非常な外交上の不手ぎわだと思う。なぜ外務省の諸君は、総理からもいろいろ相談を受けられたでありましようが、そのときにおいて敢然として自説を主張せられなかつたか、はなはだわれわれもこれを遺憾に思うのでありますが、その点の事情をひとつ聞かせてもらいたい。
  59. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはアメリカが先に発表して、それから日本が発表したというのではないのでありまして、この書簡は日米両国において同時に発表されたものであります。御案内のように一月の十五日に上院において平和条約の審議が要請されまして、二十一日から審議に入る、こういうことで、この条約の審議を促進するに便宜であろうという意味で、十六日に日米両国において同時に発表されたものでありまして、向うが先で日本があとでとかいうような問題ではないのであります。
  60. 菊池義郎

    菊池委員 同時に発表するということがすでにまずいのです。むしろ日本が先に公表して、国民に政府の意のあるところを示した方が、外交としては堂々たるやり方であつたと思うのです。その点どうぞひとつお含みおきを願いたい、かように思います。  それから賠償の問題について、最初の考え方として政府から発表されたことは、賠償を要求する各国に対して同一の基準を設けて折衝に当ろう、折衝に応じようというようなことであつて、個々別々の折衝には応じないという建前であつたはずなのであります。これが途中でもつて変更せられまして、インドネシアと個別の折衝をして、特殊の契約をつくられるようでありまするが、どういうわけで政府の最初の建前がこういうように変更せられたのであるか。私は政府の最初の建前が一番いいと思つたのでありますが、その事情をお伺いしたいと思います。
  61. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 菊池さんのおつしやる政府の最初の方針というのが、ちよつとわれわれにはわからないのであります。今回インドネシアを初めただいまフィリピンといろいろ始まつておるのでありますが、これは平和条約に定めてあります賠償の基本原則につきまして、いろいろ話合いを進めておるということでありまして、具体的な細目といいまするか、最終決定を見るまでには今後まだ相当の時日を要するものと、かように考えるのであります。基本原則折衝をそれぞれの国々とやつておる、こういうことでありまして、最初の方針を破つたとかどうとかいうことではないのではないかと考えます。
  62. 菊池義郎

    菊池委員 最初政府の意向として新聞に発表されたのは、各国同一の基準をつくるということであります。国別の要求には応じないということでありました。ところが今度はインドネシアとの間に、賠償の基準についての話合いが進められておるのでございまするが、そのインドネシアとの間にきめられるところの基準は、他の賠償要求国に対しても、それが適用されることになるものでありましようかどうでしようか。列国に対する同一基準ということになりまするか、あるいはまたインドネシアだけに対するところの、何か根本基準というものでありますかどうでしようか。
  63. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 平和条約に定めてありまする方針に従つての基本原則については、大体各国同じような線に沿うて行くようになるんじやないかと思いまするが、しかし相手方のそれぞれの国々によりまして、いろいろの事情もあることでありまするから、具体的の細目につきましては、国々によつて若干の相違は見ることと思いまするが、賠償の根本的考え方といいまするが、平和条約に定める基本原則についての解釈、とりきめ等については、大体同様な立場をとられるものであると思う次第であります。
  64. 菊池義郎

    菊池委員 それから私は賠償の一つとして、日本の移民を南方の賠償要求国に出しまして、農地を開発させる。日本人が農業に適しておるということは、向うでも認めておる。スカルノのごときは、二千万人来てもいいということを、戦時中酒に酔つぱらつておるときではあつたが言つております。そのくらいでありますからして、賠償に日本の移民をいろいろな条件を付しまして出すことを考えられては、どうかと思うのでありますが、そういうことについて政府はちつともお考えはございませんか、どうでしようか。
  65. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 賠償の一つ方法として、移民ということはどうかと思います。
  66. 菊池義郎

    菊池委員 労力です。
  67. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただ反面開墾の役務の提供ということだけでも、これは今菊池さんの言われました御趣旨にも沿わないように考えられます。これは一般移民の全体的問題として、研究しなければならぬと思うのでありまするが、なお御意見は御意見として承りまして、今後参考に供して行きたいと考えます。
  68. 仲内憲治

    仲内委員長 菊池君、大橋国務大臣が見えておりまして、大臣に対する質問が二、三人出ているのです。大臣の都合もありますので、先にまわして、あとまたひとつお願いします。——並木君。
  69. 並木芳雄

    ○並木委員 大橋国務大臣にまずお尋ねしますが、このたびの警察予備隊計画、これはどういう必要性から計画されておるのであるかということを、その配備の予定などとともにお知らせ願いたいと思います。
  70. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊につきましては、明年度におきましては現在の七万五千を二万五千増加いたしまして、十一万を定員とするというふうに、明年度予算においては計画をされているのであります。明年度中におきまする計画といたしまして、現在定まつているものはこれだけでございます。この必要性につきましては、内外の情勢にかんがみまして、国内治安を確保いたしまするためには、現在の予備隊を増強することが必要である、こういうふうに考えられた結果でございます。
  71. 並木芳雄

    ○並木委員 この増強によつて米国軍隊の駐留兵力を縮小して行こうというような考えがあるのかどうか。
  72. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 駐留兵力につきましては、日米安全保障条約によりまして、日本の平和と安全を守るに足る程度のものが、当然アメリカによつて提供される、こういうふうに考えているわけでございます。このアメリカの駐留兵力が、予備隊の増強ということによつて、増強した程度において減少されるかどうかということは、これは別個の問題であると考えております。
  73. 並木芳雄

    ○並木委員 ここで大臣にお尋ねしておきたいのですが、先般来の予算を見ますと、防衛分担金六百五十億円となつております。そういう数字から逆算をして参りますと、大体終戦処理費と同程度のものになる。両国が費用を折半するという建前から言うと同程度になりますので、私どもは、アメリカの軍隊は大体現在通りの兵力が駐留するのではないかということを、予想しているのですけれども、ただいまの大臣の答弁の中にも、内外の情勢を勘案してという言葉がありました通り、警察予備隊はアメリカの駐留軍の兵力とも、表裏一体となるものと思いますので、国務大臣としては、どの程度の米軍の駐留兵力が残されるか、大体現在通りと見てよろしいのではないかと思いますけれども、その見解をお示し願いたい。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 駐留兵力が講和発効後におきましてどの程度になるかということにつきましては、私まだ承知いたしておりません。
  75. 並木芳雄

    ○並木委員 この点私は前にも、国の治安の維持上、政府は保安省というようなものを考えているのではないかと、質問したことがございます。そのときには当時法務総裁であつた大橋さんは、まだ考えておらぬという答弁でございましたが、最近ダレス氏が日本に来たときに、ディフェンス・クオーターとでも申しますか、防衛本部というようなものをつくるという話があつたかに、これは間接に聞いているのです。つまり日本の警察予備隊と相並んで、米軍による防衛本部のようなものをつくつて、そういうものを統括して、一つの保安省というようなものができ上るのではないかと考えるのですけれども、今政府として国内治安の対策上これを強化するために、どういう中央の機構というものを考えておられるか。
  76. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国内におきます治安機構の問題、特に警察予備隊、海上保安庁等を中心として、将来いかなる行政機構をつくるかという問題につきましては、行政管理庁においてあるいは御検討になつているかもしれませんが、私といたしましては、ただいまその問題を特に研究いたしておりません。
  77. 並木芳雄

    ○並木委員 ちようど木村法務総裁が見えているようですから、木村法務総裁の方から、この保安省といつたものの構想について、見解を披瀝していただきたいと思います。
  78. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まだ構想はまとまつておりません。何とかこれを統一したものにしたいとは考えておりまするが、目下慎重に検討中であります。
  79. 並木芳雄

    ○並木委員 最近の情勢から、民間の方においてもぽつぽつ防空対策というようなものが、口に乗るようになつております。政府としては防空対策の準備は進められているのかどうか、この際明らかにしでいただきたいと思います。
  80. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 防空の問題につきましては、さしあたり政府としては特にどうこうという措置をとつておりません。ただ講和発効後におきまして、日本が自主的に内外の情勢判断し得るような段階になり、また現実にさようなものが必要であるというようなことに相なりますれば、これは当然国内治安の建前からも考究の要ありとは存じますが、ただいまにおきましては、さような段階に至つておらない次第でございます。
  81. 並木芳雄

    ○並木委員 条約発効後の将来のこういう対策は、どういう形で行われるようになつて行くか。将来の対策について……。
  82. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 将来の防空対策ですか。
  83. 並木芳雄

    ○並木委員 条約発効後、米軍駐留になつてからの……。
  84. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 条約発効後におきましては、政府といたしましては駐留軍と十分密接いたし、日本を中心といたしました平和と安全を保持するための必要なる情報は、みずからも、また米軍の援助によつても集めて行かなければならぬと思います。それらによつて判断せられました結果、現実にさような危険があるという判断に相なりますならば、当然それに対応する措置を考えて行かなければならぬと思いまするが、ただいまのところではまだその段階になつておりません。
  85. 並木芳雄

    ○並木委員 木村法務総裁にひとつお尋ねしておきます。警察予備隊、国家警察その他の増強というものは、並々ならぬものであつて、私どもは何かこれによつて、身近に危険というようなものを感じているのであります。この際日本の内外の危機に対する法務総裁の調査の結果あるいは所感、そういうものを明らかにしていただいて、実際国民がこういう治安対策をしなければならないのだという、納得の行く説明をお願いしたいと思います。
  86. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは二つの考え方があると思います。内地の治安の問題とそれから国防の問題であります。私は国防の関係では、日本国はどこまでも平和的に処理して行くものである。従つて現段階におきましては、ただいま大橋国務大臣に御質問があつたように、防空とかその他のようなことは、まだ考えるべき段階ではない、こう確信しております。ただ問題は、内地の治安確保の問題、これは御承知の通り、平和条約発効後の日本の状態を考えてみますると、相当今から対処して行かなければならぬものと考えております。申すまでもなく、暴力によつて治安を乱し、あるいは社会秩序を乱すような危険な団体が、相当活躍するんじやなかろうかと考えております。私はそれに対して相当考慮すべきものがあると考えておるのであります。その点についての処置をいかにするかというので、今せつかくこれを考慮中であります。しかしさほど心配するほどの段階でないと私は考えておりますが、何といたしましても、治安は確保しなくちやならぬのでありますから、十分に今からその対策を練つて行きたい、こう考えております。
  87. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は大橋国務大臣に承りたいと思います。ただいまの御説明によりますと、内外の情勢を考慮して、国内治安の維持、確保のためから警察予備隊の増強が必要である、こういうようなお話でございましたが、ただいま政府が掲げておりまする防衛力、自衛力漸増という政策の中に、警察予備隊、海上保安隊の増強ということが、主要なる要素をなしておるんじやないかと私は考えるわけであります。そこで防衛力漸増の一環としての警察予備隊、あるいは海上保安隊の増強ということをお考えになつておるのかどうか、こういうことを承りたいのであります。
  88. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 防衛力の漸増ということにつきましては、すでに昨年批准せられました日米安全保障条約におきましても、日本がみずからの防衛について漸増的に責任を負うことが、米国政府としては期待しておるところであるというふうにうたわれておるわけでございます。もとよりこの条項は、日本に対しまして防衛力漸増の義務を課したものではございませんので、日本といたしましては、講和発効後におきまして、日本の自主的な判断によりまして、漸増的にみずからの防衛を、みずから責任をとるような態勢を、準備いたして参るべきものでございます。この条約におきましても、防衛力の漸増ということは、直接並びに間接の共産主義の侵略に対するものであるというふうに、観念せられてあるわけでございまして、私どもは、警察予備隊の増強というものも、またこれからの直接間接の侵略に対しまして、国内治安を確保するための措置でございまするから、当然日本政府はみずから防衛について責任をとる措置の一環であると、観念をいたしております。
  89. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 もしかりにそういう脅威がある。仮定ばかりでなくて、現にあることは、日米安全保障条約におきましても、無責任な軍国主義はまだ世界から駆逐されていないというようなことを、はつきりとうたつておるわけであります。そこで、そういう外敵の侵略がもしあつた場合におきまして、防衛力の一環としての予備隊というものが、これと防衛戦争を戦うということに、実際になるのではなかろうかと思うのであります。そういうようなことが一体あり得るのかどうか。もしあるとするなれば、その場合における憲法第九条の交戦権放棄の規定との関係は、一体どんなふうになるものか。一切の交戦権を放棄したという規定との間に、諸種の問題が起きはせぬかと思うのでありますが、それについてはどういうふうなお考えを持つておられるか。
  90. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊の使命というものは、いかなる場合におきましても、国内の治安を実力によつて確保するという点にあるのでございまして、国内におきまする治安を害するところの他の実力が侵入いたして参りました場合においては、これを実力をもつて押えるというのが本来の使命でございます。それは当然国内法によつて、警察予備隊に課せられたる使命であると考えるわけでございます。これが憲法第九条との関連上、どういうことになるかということにつきましては、政府の法律顧問たる法務総裁にお聞きを願いたいと思います。
  91. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは法務総裁にお伺いいたします。
  92. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 憲法第九条の陸海空軍その他の戦力という、この意味いかんに私は帰着するのではなかろうかと考えております。そこで、戦力と申しまするのは、いわゆる戦争を遂行し得る有力なる兵力、こう解すべきだと思います。戦争遂行に適当なる兵力であります。そこで御承知の通り、近代戦においては、いわゆるジエツト機、ジエツト爆撃機あるいは原子兵器というようなものが整備されまして、これが戦争遂行の有力なる武器として使用されておるのであります。この際に日本がかような有効なる戦争遂行の能力を持つということになりますれば、これは憲法を改正せなければならぬと考えております。しかしながら、現在警察予備隊が装備されておる力というものは、きわめて微々たるものでありまして、戦争遂行の何らの能力なしと私は解するのであります。従つてかような装備は再軍備になるものではないので、憲法改正の必要はない、こう考えております。
  93. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 よくわかりました。それでは法務総裁に伺いますが、日米安全保障協定や国際連合憲章に従うと、日本は国際的な軍事協力をなす義務があるわけでありますが、具体的に、当面の問題としては、この軍事的協力ということは、予備隊を根幹としてこれに当るのかどうか。この点を承りたい。
  94. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 予備隊は、これは内地治安確保のためのものでありまして、今申しました通り兵力でも何でもないのであります。将来連合軍国家から援助を求められたらどうするかということでありまするが、その際には日本の国家としては、できるだけ兵力によらざる他の援助を供給して行つて、兵力を持つようなことのないような措置を講じたい、こう考えております。
  95. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 警察予備隊というのは、独立とともにポツダム政令から法律に当然切りかえられると思うのでありますが、そういう際に、私は先ほどの御説明も種々なる内外の情勢から、政府の考えておられることは了とするわけでありますが、ただいまのような祖国の防衛ということについては、単なる国内治安というような性格ばかりではなくして、やはり名誉ある祖国を防衛するのだという性格を多分に持つことが、私は必要ではなかろうかと思うわけであります。二年間勤務して六万円もらうというサラリーマン的な性質のものが、いつの間にか秘密のうちに軍事訓練を受けるというような、そういう暗い気持ではなくして、祖国の安全を双肩にになつてつておるのだという誇り、名誉を持たせることが当然必要ではなかろうかと思うわけであります。今度の警察予備隊の増強ということが、再軍備ではないとか、自衛力の増強であるとか、国内治安の確保とか、それは表現はどのようでありましようとも、日本の行くべき道というものは明確にきまつておるわけでありますから、私はむしろ適当な機会に憲法の改正等を行つて、祖国の防衛に勇躍してつくことができるような改正を行うべきではないかと、私は考えるわけであります。かつて西ドイツの政権を樹立するときにあたりまして、連合軍当局から、新憲法をつくることが慫慂されましたのに対して、戦勝国の占領下のもとにおいては、ドイツ人は自由な意思を持たないから、憲法をつくることができないというような立場から、臨時的な基本法をつくつて来たということを私は想起したいのであります。終戦後の虚脱した状態においてつくられた憲法というものは、なるほど文字の上では理想的なものであつたり、文化的なものであつたり、民主的なものであるかもわかりませんが、あの虚脱した状態において与えられた憲法というものは、決して自由な国民の意思を反映しておつたものとは思えないわけであります。内外の情勢を考えてみましても、ただいま日本の行くべき道はすでに明らかでありますから、私はむしろそういつた国土防衛の性格を織り込んだ自衛力というものを確立する、国防力というものを確立するという立場から、将来の問題でありましても、私は憲法の改正等を考えてもらわなければならぬだろうかとも思うのでありますが、それらの点につきましては、どんなふうにお考えになつておるか承りたいと思います。
  96. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊令はポツダム政令でございますから、独立を機会にいたしまして、これを法律に切りかえる必要があるわけでございます。この際におきまして、現行の予備隊令のうちで規定上の不備がございましたならば、当然これは補完するの措置を講じたいと考えております。しかしてその結果といたしまして、特に現在の予備隊の性格に根本的な変革を加えようということは、政府といたしましては考えておりません。国内治安の確保ということが予備隊の使命であり、そうしてこのことが当然また日本の自衛上の措置であるわけでございまして、このこと自体、見方によりましては祖国防衛の一端であるといわなければならぬと思うのでございます。かような予備隊本来の性格に立脚いたしまして、現行法の規定に欠けたるものがあるといたしますれば、これを補完してやつて行きたい、かように存じております。
  97. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 他に御質問の方もあるようでありますから、私はもう二点だけを承つて質問を打切ります。この際法務総裁に承つておきたいと思うのであります。日本が独立回復後は、占領下において発布されたポツダム政令や諸法令は、当然日本自由意思によつて改廃ができるものである、こういうふうに考えているわけでありますが、いかがでございましようか。
  98. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ポツダム勅令にかわるべき法律を制定いたそうと考えているのであります。
  99. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それに関連いたしまして、私は追放の問題と戦争犯罪の問題について承つておきたいと思います。簡単に結論だけを申し上げますが、今までの追放の根拠となつておつたのは、昭和二十一年の勅令第一号公職に関する就職禁止の政令と、団体等規正令であると思うわけでありますが、これはただいまの御説明によつて、当然新しい法律と切りかえられることとなると思うわけであります。そのときに独立後も追放制度というものは残つて平和条約を締結するまでの間に解除されなかつた者は、覚書該当者として残るのかどうかという点、これを言いかえますと、占領中の司令官の指令等はかえることはできないというように解釈しておられる方も、法務当局の中にはあるそうでありますが、その点について承つておきたいと思います。
  100. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ある種のものは残るだろうと思いますが、なるたけ大幅に解除されるような措置を講じたいと思つております。
  101. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 先ほど言いましたその次の戦犯の問題でありますが、これは平和条約第十一条によりまして、すでに判決を受けた者は日本側において引継ぐことに規定されておるわけであります。これも新しい法律にかわるであろうと思うわけでありますが、日本戦争犯罪人を管轄することになりますと、たとえば外国等に現に服役いたしております戦犯等につきましては、どういうふうになるのかという点を伺つておきたいと思います。
  102. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは結局外地で服役しておる戦犯者の送還の問題に関係して来るのだろうと思います。そこで今残つておるのはフィリピンと濠州のマヌマ島であります。マヌマ島で服役している人たちにつきましては、これは濠州政府の非常な好意あるとりはからいで、おそらく近き将来に内地へ送還され、内地で服役されることになるだろうと思います。ただフィリピンで現在服役中の人たちについては、これは今の段階においては、なかなか早急ということは申しかねますが、フィリピン政府と十分交渉いたしまして、好意あるとりはからいによつて内地へ送還されるべく、ただいま交渉中であります。さように御承知願いたいと思います。
  103. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 もう一点この際ついでに法務総裁に承つておきたいと思いますが、最近政局の不安から国会の解散等のことが、大分いろいろ話題に上つておるわけでありますが、私はこの前もこの委員会を通じて、ただいま問題になつておることについて、大橋法務総裁にも政府側の見解をただしたことがあるのであります。当時私の質問に対しての御答弁は、まだ不確定のようでございましたので、この際政局の切実化とともに私は承つておきたいと思います。それは衆議院の解散権というものは一体どこにあるかという点であります。この前の衆議院の解散の場合におきましては、憲法第六十九条、つまり信任案が否決された、ないし不信任案が可決された場合の条項と、並びに憲法第七条の、天皇の行う行為、内閣の助言と承認によつて、天皇は左の行為を行うという項目の中に、衆議院の解散があります。その第六十九条並びに第七条を併用して、解散が行われるものだと考えておるわけでありますが、一体政府当局といたしましては、この衆議院の解散権というものがどこにあるかとお考えになつておりますか。政府見解をひとつ明確に、政局の逼迫化とともに、しておきたいと思います。
  104. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今御指摘になりました解散の問題でありますが、これは御承知の通り二説あります。いわゆる六十九条、つまり国会において、内閣に対する不信任決議案が通過した場合、それから信任案が否決された場合、このときは内閣は総辞職する、もしくは衆議院を解散する。そうして第七条三号の規定は、その手続をきめた規定にすぎないのである。従つて第六十九条の場合のみが内閣において解散を決定し得るので、その他の場合には決定し得ないという議論と、もう一つは、七条三号の規定によつて内閣はその意思に基いて解散を決定し得るのだ。この両説があります。御承知の通りこの両説は、相当の根拠を持つておるのでありますが、政府といたしましては、統一的の見解を発表するに至らないのであります。この点については事重大でございますから、慎重に研究いたしたいと考えております。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 私は警察予備隊の性格について、先ほど佐々木委員質問がありましたが、どうしても政府の答弁で納得できないところがあります。国民だれ一人として、今の警察予備隊が、政府の答弁するような性格のものだとは考えていないと思います。そこでこの問題について、少しこまかく聞いてみたいと思います。まず大橋国務大臣にお聞きしますが、今年度の警察予備隊の経費は五百四十億であります。この警察予備隊経費の五百四十億の説明を見ますと、装備、施設等の充実ということがありますが、この装備、施設の充実というのは、具体的にどういうことをいうのですか。現在持つている、何と言うか、兵器と言つて悪いなら、武器と言つてもいいでしよう。火器でもいいでしよう。それがどんなもので、それをどういうように装備、施設を充実させるか、それをまずお聞きしたい。
  106. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 火器につきましては、現在において米軍から借りております。従いまして、明年度におきましても同様の措置をとつて参りたいと存じますので、これについて特別の予算を計上いたしておりません。そこにあります装備と申しますのは、車両、通信等の施設、これらの装備を増加するということであります。現在借り受けております火器についての御質問でありますが、小銃、機関銃等を借り受けております。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 小銃、機関銃のほかに、バズーカ砲も借り受けておると聞きますが、これはどうですか。それからもう一つ、大橋国務大臣談として、本年度は大砲とそれから戦車も配備して行きたいということは、これは新聞にちやんと大橋国務大臣談として出ておるのでありますが、そうすると、車両と通信施設だけで五百四十億お使いになるのですか。それでその車両というのは、一体戦車も車両の中に入ると思いますが、どういう車両ですか。それをお聞きしたい。
  108. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まず五百四十億に、車両、通信施設等が入つているということを申しましたが、それが五百四十億の全部ではないのでありまして、そのほかに俸給、それから宿舎設備、演習場等も含めまして、五百四十億と積算したわけでございます。それからバズーカ砲が入つておるかどうかということでありますが、私しろうとで、バズーカ砲というのはどういうものか知りませんが、行つて見ますと、六尺ぐらいの筒でありまして、それから弾丸を発射するような装置があります。これはバズーカというのですか、バズーカ砲というのですか、あるいはロケツト弾発射装置というのですか、技術的な名称については、私ただいま確かめておりませんが、そういうものも若干装備として借り受けております。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 その装備の問題について、当該責任大臣である大橋国務大臣が、バズーカ砲を実際使つて、写真にまで出ているものを、まだお知りにならないということは、いかにも無責任であるし、ずうずうしいことこの上なしと私考えますが、そうすると、本年度の装備に大砲だとか戦車を配備しないのですか、するのですか。
  110. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいまのところ、具体的な計画はございません。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、その車両というのは何です。
  112. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 車両と申しますのは、運搬車でございます。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 器材費は二百十二億とありますが、普通の運搬車や通信施設だけで、二百十二億も国民の税金を使うことは、もしそんなものへ使うとするなら、これはあなたは責任をとらなければいかぬと思います。予算書にちやんと二百十二億と書いてある。そんな高いトラックがどこにありますか。その次に国民が心配しているのは、二年目で六万円もらつてやあられるというのですが、これは自由にやめられるのですか。やめた者に対しては、また予備役制とかいう制度をしくのですか。将来そういう半強制的に、また服務に復帰するような立法的な措置を講ずるのですか、どうですか。
  114. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在採用になつております隊員は、任意志願によつて入つた者でございます。やめるということは、これはできるわけであります。六万円の退職金を給しますのは、二年の勤務を終了いたした者に対して、一齊に支払いをいたします。その後引続き勤務するといなとにかかわらず、退職金は一応給与することに相なつております。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、やめる人にもやめない人にも、二年勤めた人には六万円やつて、それからやめる人は六万円もらつて自由にやめられますか。これは本人の意思に基いて、何らの強制的な、あるいは半強制的な措置はとらぬのですね。
  116. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その際に、不適当と認めた者は、強制的にやめさせることもあるかと思いますが、しかし強制的に居残らせるというのはございません。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 強制的に居残らせるという方法はないのですか。それから将来何らかの立法措置で、一旦訓練を受けた者、教育を受けた者を再編入するというような立法的な措置も、政府はとりませんね。
  118. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在おります者で、二年の期限が来ましてやめた者に対して、そういう方法は考えておりません。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 それから新しい募集を、大体三万五千人することになつておりますが、これの募集方法については、徴募制だとか、あるいは市町村への割当制だとか、そういうことがいわれておりますが、これは従来通り任意募集の方針ですか。
  120. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 市町村への割当制ということは、どういうことでありましたか、新聞等にも伝わつておりますが、私推測いたしまするに、自由に志願募集をする際に、その志願者が多数あると思いますから、そのうちで採用する人の人数を地方的にあんばいいたしたいという意味で、あるいは事務当局がそういうことを考えておるのではないかと思います。そのことは決して志願募集という根本原則を変更しようという何らの意図は持つておりません。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると市町村に割当てて市町村から推薦させるとか、あるいは一定の年齢の者については一定の検査をして徴募制、要するに昔の徴兵制というようなものをとる立法的な措置は講じないのですか。
  122. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 強制徴集ということは全然考えておりません。町村において推薦させるということになりますると、それはその町村における志願者中において、町村当局にその適否の意見をつけてもらう。これは募集をする側におきまして、調査上便宜でありまするから、そういう意味の推薦、これはやるかもしれませんが、しかしそれ以外に町村において強制的にある人員を供出せしめるというような意味では全然ございません。まつたく多数の志願者のうち、どれが適当であるかということを決定するにあたつて、町村長の意見を尊重するという以外の措置ではないと思います。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで警察予備隊の性格について、私はもう少し大橋国務大臣にお聞きしたいのですが、この安全保障条約の前文にある「日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則従つて平和と安全を増進すること以外に用いられるべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」この「国際連合憲章の目的及び原則従つて平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」これに基いて警察予備隊というものはつくられるわけですか。警察予備隊は、この安全保障条約の前文にある、自国の防衛のための漸増的に自ら責任を果すためにつくるというように解釈してよろしいかどうか。
  124. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この点は先ほど佐々木君の御質問に対してお答えいたしました通りで、安全保障条約においては、日本国が漸次自国の防衛について漸増的に責任をとることを、アメリカが期待すると書いてございます。しかしながら、そのことは日本政府に対して条約上の義務を課したものではないのでありまして、日本は自主的に自己の意思判断とによつて、自国防衛の責任を漸増的に負つて行くということなんでありまして、これは責任を履行するとか、義務を履行するという観念ではございません。ただ日本は、自主的に予備隊を増強する要ありと認め、これを明年度において実施いたしたいと考えておるわけであります。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから私の聞くのは、ここの安全保障条約の前文でいう自国の防衛のための漸増的責任を負う。警察予備隊というものは、こういう任務を持つたものであるかどうかということを聞いているわけです。
  126. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その点は佐々木君に申し上げた通りであります。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 だから佐々木君に申し上げた通りだが、そういう性格を持つたものと解釈していいかどうか。それをまず返事を聞きたいのです。そうでないと次の質問に移れない。
  128. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その点は佐々木君に申し上げた通りであります。速記録によつてごらんをいただきます。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 私に答えてもらえばいいのです。人をばかにして……。そうすると、あなたにお尋ねしますが、これは攻撃的な意図を持つた軍備ではないけれども、自国の防衛のための軍備を持つということを、これは当然意味しておると思いますが、この点はどうですか。あなたはそう思いませんか。
  130. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 軍備ではないのであすま。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 平和と安全を増進すること以外に用いられ得べき軍備を持つことを避けつつ、自国の防衛の責任を持つということは、これはそういう性格の軍備でない軍備を持つということじやないですか。
  132. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 それはあなたは論理をよく御存じない。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、私は木村法務総裁並びに大橋国務大臣にお聞きしたいのですが、これは自国の中の事態に備えてとありますが、この安全保障条約を見ますと、直接及び間接の侵略、要するに外部からの侵略に対しても、これは闘うことになつているのですから、外的勢力とも闘うということになれば、それは軍隊ではないですか。それはどうですか。私はその点を木村法務総裁と大橋国務大臣と両方にお聞きしたい。
  134. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊は、国内の治安を確保するために設けられておるものでございますから、国内の治安を害しますところの一切の原因に対して、必要なる措置をとるものであります。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 木村さんにお尋ねしたいのですが、直接及び間接の侵略ということを私が条約委員会で聞いた。そのときの政府側の答弁によると、間接の侵略というのは、国内の、たとえば共産主義者だとかなんとかいうことである。しかし直接侵略というのは、外部の勢力の侵略ということをはつきり言つているのです。これは政府の答弁です。そうすると直接侵略に対して闘う防衛力というのは、これは軍隊じやないですか。(「侵略に対しては国民だつて闘えるじやないか」と呼ぶ者あり)だから、そのために武器や兵器を持つていたら、それは軍隊じやないですか。(「予備隊だつて国民の一人じやないか」と呼ぶ者あり)あなたに聞いているのじやない。外部の侵略に対して闘うというのは、それは軍隊じやないか。それは国民とは違うのだ、戦車を持つ、バズーカ砲も持ち、小銃も持ち、機関銃も持つていたら、それは軍隊じやないですか。そんな警察がどこにあるのですか。(「ばかの一つ覚えだ。どうしても軍隊にしようとしている」と呼ぶ者あり)あなたの方がばかだ。わかつているものを……。はつきり軍隊だと言えばいいじやないか。
  136. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、どつちに聞いているのですか。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから木村法務総裁と大橋国務大臣です。あなた方法律家ならもう少し正直に、率直に言いなさい。ごまかさないで……。
  138. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は軍隊でないということを申し上げます。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると木村法務総裁は、先ほど、外部の勢力と闘うという性格を持つておらないから、これは軍隊でないと言つたわけです。ところかこの安全保障条約の前文によると、これは明らかに外部の勢力とも闘うのです。現に朝鮮戦線へは派遣されているということまで言われております。国連へはそういう報告は行つておりますが、そうすると、警察予備隊というものは、将来やはり外部の勢力とも闘うということを予想しておる。国内のどろぼうや、あるいはすりをつかまえるのに、バズーカ砲や戦車や大砲はいりつこはないですよ。そうしたら、それは明らかに軍隊じやないですか。そうでないと言われるなら、軍隊の定義を大先輩の木村法務総裁にもう一度よくお聞きしておきたい。むしろ率直に憲法をかえるならかえて、あなた方がやりたいなら堂々とやつたらどうですか。私たちは反対です。そんな口先だけでごまかすということは、国民を愚弄するということになるのです。どうでしようか、その点。
  140. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君から同じ関連質問が出ておりますから、黒田寿男君。
  141. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は大橋国務大臣、木村法務総裁に対しまして、実はもう少し詳しく御説を承りたいと思いますけれども、きようは時間がございませんので、ただお二人に簡単に希望を申し上げておきたいと思います。それからまにあとで私の順番が参りましたときに、外務当局に対しましても少し質問したいと思います。それでちよつと大橋国務大臣に対して申し上げたいと思いますけれども、私どもはこの委員会において、真剣な気持で国政を議しておるのでありま、先ほどもあなたの御答弁を聞いておりまして、私は非常に遺憾に思いました。なるほどあなたは軍事の専門家ではありませんけれども、警察予備隊の責任者であります。どんな装備が行われておるかということについて、もう少しまじめな御答弁を願いたいと思う。バズーカ砲というものはどんなものか知らないとおつしやつても、私どもでもそのくらいのことは知つております。警察予備隊の責任者が、そういうものについてはつきり知らないという、そういう国会を愚弄したような答弁は私はしていただきたくない。これは将来のために、まじめに申し上げるのである。車両とは何ぞや。運搬するものである。私どもが辞林を引けば、そういうことが書いてあるかもしれません。小学校の生徒が習う教科書の中に、車両という漢字が出たときに、先生はこれはものを運搬するものであるというふうに説明するかもしれません。小学校の生徒ならそれでよろしい。一体運搬しない車両というものがあるのか。もう少し私はまじめにお考え願いたいと思う。林君も国会議員として質問しておるのですから、どうかそのような——一言に申しますれば、官僚的態度をあなたは捨てていただかなければならぬ。これはまじめに申し上げる。決してあなたに悪口を言うつもりではありません。将来、国会において、今日のような態度で、予備隊の責任者として御答弁なされるということになりますと、私どもは考えなければなりません。こう申し上げたいのであります。
  142. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お答えいたします。
  143. 黒田寿男

    ○黒田委員 お答えなさらなくてもよろしい。きようは時間がありませんから、この次にゆつくり承ります。
  144. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今の質問にお答えします。
  145. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと、それから大橋国務大臣にお願いしますが、ひとつ警察予備隊の装備の状況を書類にして御提出願いたい。ここで口先の上でいろいろと話合つても、さつき林君とあなたとの質疑のように、わかつたようなわからないようなことになつてしまう。こんな方法で私は国政の審議を進めたくありません。うそを言わないで、隠し事をしないで、書類をもつて装備の状態を、できるだけ詳しく、この権威ある外務委員会に御提出願いたいと思います。  それから私はこの際提案したいと思いますが、警察予備隊の視察を、国政調査権利の行使といたしまして、本外務委員会がなすべきことを提案いたします。これはあとから委員長の方でおとりはからい願いたいと思います。大橋国務大臣には今申したような書類を御提出願うことをきようお願いします。私は大橋国務大臣にはこれ以上申し上げませんが、今後はひとつまじめな論議をしているのだという印象を与えるような、ものの言い方をしていただきたいと思います。  それから木村法務総裁に対しましては、私は、きよう時間がございませんから、この次にゆつくりお伺いしたいと思いますが、きようの木村総裁の軍隊、あるいは戦力に対する御説明は、私どもには納得が行かない。佐々木盛雄君はそれで満足したようなお話でありますけれども、総裁の御説明のようなことで、私どもは現在の予備隊の内容が憲法違反にならぬのだというふうに考えることはできません。しかし私はこれはこの次に詳しく私の見解お話申し上げまして、法務総裁の御意見を承りたいと思います。きようは私は両大臣に対しましてはこれだけ申し上げまして、あとはこの次にゆつくりお話申し上げたいと思います。  それから外務関係に対する質問がありますが、それはあとで私の時間が参りましたときにいたしますから、そういうふうに御了承願います。
  146. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 黒田君にお答え申し上げますが、私がしろうとで承知しないと言つたのは、技術的な名称は何と言うかはつきり承知しない、こういうことを申し上げたのです。バズーカ砲と言われましたが、これが砲の一種なりやいなやということについて私は存じておらない。これは部隊ではハズーカと言つております。その現物を私は承知いたしております。従つて先ほど申し上げました通り、約六尺くらいの筒であつて、それから一種の弾丸を発射する装置である。しかしそれを砲と言うかどうか、あるいはロケット弾発射装置と言うか、その点をしろうとであるから承知しない、こういうことを申したのでございまして、この点は私の申し上げ方が不十分なために、無責任なようなお答えをいたしたように、あるいはお聞きいただいたかもしれませんが、それは私の志とたいへん違つておるということを、ひとつ御了承願いたいと存じます。私は今までさような、知つておることを知らぬとか、あるいは無責任な答弁をいたしたことのないということは、黒田君が一番よく御承知つておると存じます。  それから次に予備隊の装備について、書類にして出してくれという御要求でございますが、この点はできるだけさようにとりはからいたいとは存じますが、しかし御承知のごとく、またさきにも申し上げました通り、予備隊において借り受けておりまする火器類は、これは米軍から借り受けておるものでございまして、従いまして米軍の日本において保有する武器の一部を、表にして示すということに相なりますので、はたして米軍がそれを許すかどうか。しかしこの点は御審議の御都合もありますから、できるだけ許可を得るように、私どもとしては努力をいたしたいと存じますが、しかしこの場所において、必ず出し得るであろうというお約束は、差控えさせていただきたいと存じます。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 この五百四十億という予算は実に厖大な予算でありまして、たとえば児童の給食費の四十八億をすら政府は出さない。警察予備隊のほんの一割の児童のための給食費すら出さない。その十倍にも当る五百四十億の警察予備隊の経費が、どの方面に使われておるか。その装備でも知りたいというと、その装備はアメリカから借りているから、国会説明ができないということは、いかにも植民地的な情ない状態だと私は思うわけなんです。そんなことは当然あなたの権限で国会へ発表する義務がある。またそんなことを米軍から許しを得られないような大橋国務大臣だつたら、日本の大臣ではありません。(「まだ占領下じやないか」と呼ぶ者あり)それは占領下だつて、われわれは税金を五百四十億も出すじやないか。それを考えてください。そうするとそんな装備をアメリカから借り受けておるということになると、この指揮権はどうなるのですか。直接、間接に指揮権はやはりアメリカの軍隊の指揮を受けるわけですか。指揮の系統あるいは訓練の系統をお聞きします。
  148. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊の最高司令官は内閣総理大臣でございまして、内閣総理大臣国会指名によつてできておるわけであります。従いまして、警察予備隊は内閣及び国会を通じまして、主権者たる国民が完全に掌握いたしておる次第でございます。
  149. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると先ほどの木村法務総裁のお答えですが、日本の国内の治安の維持以外に、警察予備隊が出動するような場合が考えられないものかどうかという問題、これは先ほど佐々木委員からも重大な質問があつたのですが、安保条約の第一条によりますと、日本に駐屯しておるアメリカ合衆国の軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与する。むろん国内における大規模な内乱及び騒擾鎮圧のためにも使いますが、極東の国際の平和と安全の維持に寄与するということになりますと、どの範囲が入るかといえば、たとえば朝鮮あるいはヴエトナムあるいはマレー、こういうところもやはり極東における国際の平和と安全に関係する地域だということは、これは政府の答弁によつて明らかだと思うのであります。従つて日本に駐屯しておるアメリカの軍隊が、将来マレーあるいはヴエトナム、朝鮮というようなところで、極東における国際の平和と安全の維持という名目のもとに、あるいは国連軍の名のもとに出動する場合が当然考えられるのであります。そこでもし朝鮮あるいはマレーあるいはヴエトナムに、日本に駐屯しておるアメリカの軍隊が軍事行動を起す場合、それが国連の名によつて行われる場合には、講和条約の第五条によりまして、国際連合憲章によつていかなる行動についてもあらゆる援助を与える。この援助の中には吉田、アチソン交換文書によつて、施設及び役務を提供しなければならないということになつておるのであります。従つてこの役務という中には単に労務者ばかりではなくて、将来の軍事的な協力ということは当然考えられると思うのであります。こういう経過からいいますと、将来極東の平和の維持という名目のもとに、アメリカの軍隊が国連軍の名のもとに極東で行動する場合には、当然これに対する役務の提供という形で、日本の警察予備隊が協力を求められることは、これは当然だと思うのですが、そういう場合に、あなたの言うように役務の部分だけは拒否するという権限がどこにありますか。その根拠をお知らせ願いたい。私は将来そういう要求をせられた場合は、協力せざるを得なくなるという見通しを持つております。
  150. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 このあらゆる援助というのは、日本憲法のもとに許された義務なんであります。そういう場合には、予備隊は決して他国へ向けて戦争に持つて行かれるような御心配はないと思つております。
  151. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると吉田・アチソン交換文書の中において「連合国最高司令官の承認を得て、日本国は、施設及び役務を国際連合加盟国でその軍隊が国際連合の行動に参加しているものの用に供するというこの役務というものは、将来軍事的な協力というものは入つておらないというふうにあなたは解釈されるのですか。
  152. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 役務は役務でありまして、軍事力ではないのであります。さようなことはないと考えております。
  153. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこの施設及び役務とありますが、この施設及び役務の中にはいわゆる軍事的な方面における人的な協力、軍隊の協力というものがないならば、どういう範囲のものと考えておりますか。
  154. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 役務はあるいは軍馬に使用すべきいわゆる役務でありまして、軍事力ではないのであります。ことに警察予備隊については、警察予備隊令において、内地の治安の確保に使用するということになつております。決して軍隊ではありませんから、この役務とは全然性質を異にしていると考えております。
  155. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると将来現行の憲法のままで、日本の軍隊が極東の平和の維持のために国際連合が軍事行動をする場合に、あなたは協力を求められるということは予想しなくていいというのですか。それが一つと、それからまた求められても、これに日本政府としては、責任をもつて拒否するという考えを持つておるかということが一つ、もう一つはそのために将来憲法を改正して、軍事的に協力する態勢をとるというお考えをお持ちになつておるか。その三つをはつきりお聞きしておきます。
  156. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 将来のことはわかりません。現段階におきましては、先刻申し上げました通り、日本憲法に許された範囲において協力するということでありまするから、予備隊は日本の治安確保のための警察の予備隊であります。このものを外国の軍隊と同様に、いわゆる外国の軍の役務につかせるというようなことは、毛頭あり得ないと確信しております。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、先ほど大橋国務大臣の言うバズーカ砲を持つとか、あるいはどういう運搬車を持つか知りませんが、二百何十億の予算で車両を整備する、兵器を整備する、そういうものを持たなければならないような、あるいはそういう装備を持つて警察予備隊が出動しなければならないというような日本の国内の治安状態は、どういうところにあるのか。ことしは三万五千も人員をふやし、昨年三百億だつたものをことしは五百何十億にふやした。それは、あなたはどういうことを想定して、何をやろうとしているのですか。
  158. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど申し上げましたる通り、内外の情勢から国内治安を確保するためには、かような拡充が必要だというふうに考えております。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど黒田さんも言つておるように、それは意味をなさないじやないか。三万五千名の人員をふやして、昨年三百億のものを五百億にする。あなたは怒るか知らぬが、バズーカ砲を使つておるというではないか。なぜそういう装備を強化し、人員をふやさなければならないような情勢が、国内の問題として考えられるかどうか、説明してもらいたいというのに対して、内外の情勢だけで説明つきますか。もう少し親切に、国内でこういう状態になつている。どうして三万五千の人員をふやさなければならないか。戦車、大砲を持たなければならないか。それに対して国内の治安の確保上というような説明である。国民の血税を五百何十億使うのに、そんな口先だけで使つていいかどうか。あなたは私が質問すると思うからからかうような答弁しているが、国民の五百何十億の血税は容易ならぬものだ。もう少し責任ある答弁をしたらどうか。
  160. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 内外の情勢から見まして、直接間接の侵略に対しまして、国内の治安を確保するために、かような措置が必要であるという判断をいたしたわけであります。
  161. 仲内憲治

  162. 戸叶里子

    戸叶委員 きようは岡崎国務相がお見えになりませんので、大橋国務大臣にお尋ねいたしたいと思います。今警察予備隊を、政府は国内の治安を確保するという名のもとに、拡充をはかろうとしていられますけれども、今日のままの状態での拡充であつては、何ら国内の治安を保てないと私は憂えるものでございます。それはなぜかと申しますと、今の状態では旧内務警察官僚と、そうしてまた旧軍部の復活によるヘゲモニーの争奪戦であつたり、あるいはまた予備隊員の人たちが、少しも自分たちの務めということを意識して働いておらないということを、私は各地において見ているからでございます。それは多くの警察予備隊員の人たちからの話を総合いたしまして、ここにまとめてみましたが、その人たちの嘆いている点はこんなことでございます。警察予備隊員は精神的な支柱となる大精神がないという。あるいはまた感激とか感動とかいうものが何もなくて、デカダンスとニヒリズム、それに刹那主義的な考え方が隊員を強く支配している。あるいはまた訓練の面から見ても非常にシンプルで飽きやすく、非実践的で、討論も机上の空論やしろうとの幼稚な想像に終つている。あるいは満足すべき教官がいない。教官がいたとしても、内容は非常に外国の人か指導しておるために、理解困難で、日本人のセンスに合わない。あるいはまた信頼と尊敬に値する幹部が非常に少い。単なる思いつきで不公平きわまるでたらめな階級決定をしておる。従つてここに働いておるときには、もうサイレンス・イズ・マネーというような気持でいるよりほかしかたがないというような、非常に恐るべき気持を持つた隊員の人たちが多いと思う。こういうことを考えてみましたときに、一体このままの形で隊員を幾らふやしても、そうして予備隊の拡充をはかろうとしても、それは何にも日本のためにならないという結果になることをおそれるのです。そこでこのことに責任をお持ちになつていらつしやるところの大橋国務大臣は、抜本的な改革をなさらなければ、私はこの目的とせられるところと反対の方向に行くのではないかと思いますが、それに対するお考え、しこうしてまたもう一つは、そういつた隊員の人たちの不平、あるいはその人々の寄るべきところがないというような、そういう悩みというものを、はたしてどれだけ御存じであるか、将来どういうふうにして行こうとなされるかということについて、伺いたいと思います。
  163. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊の現状に対しまする御批判をいただいたわけでございまするが、御承知の通り一昨年八月、急に七万五千という大きな募集をいたし、実は幹部等もできないうちに、先に一般隊員が募集されて、そのうちから、逐次幹部を養成して行くというような状況ででき上つたわけでございます。従いまして、今日まで訓練等につきましても、予備隊幹部で十分なる指導をなし得る状態になかつたわけでございます。米人の顧問団のいろいろな援助によりまして、ともかくもここまで参つたわけでございます。当初二箇年をもちまして、一応の任期として募集をいたしておつたのでございますが、今年半ばにはその二箇年になるわけでございます。この間、もとより予備隊といたしまして、御指摘のような点につきましては、つとに適切な措置が必要であるということを認めまして、鋭意努力をして参つたのでございまするが、特に今回の拡充を機会といたしまして、御指摘の数々の点につきましては、根本的な改革を考えまして、真に国民の信頼に値するような内容を持たせなければならぬ、かように考えておるわけでございます。私といたしましても、昨年末法務総裁を免ぜられまして、もつぱらこの予備隊関係の執務に専念いたすことになりました。今後十分に内情を調査いたしまして、できる限りの努力をいたしまして、御期待に沿い得るように努めたいと存じます。
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまできるだけ根本的な改革をしたいというようなお話でございましたが、その根本的な改革をどんなふうになさるか、具体的に教えていただけば幸いだと思います。
  165. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まず幹部の教育ということにつきましては、何分にも部隊の組織でございますから、幹部がその中核となるべきものでございまして、この幹部に、真に国内の治安を守り、国土を防衛するためにふさわしい心構え、またその実力を養成いたして参らなければならぬと存じます。さような点から、幹部の再教育につきましては、特に注意をいたさなければならぬと存じます。  それからこの点も先の御質問中に御指摘になつたところでございますが、人事の適正ということにつきましては、部隊全体の能率を上げる上からいつて最も必要なことと存じますので、人事につきまして一段と注意をいたし、考課表その他科学的な基礎に基きまして、人事を行つて行くというふうにいたしたいと存じまして、ただいま事務当局に対しましても、考課表による幹部の序列であるとか、あるいは昇任についての一定の基準であるとか、こういうことにつきまして調査を命じておるような次第でございます。  なお訓練等につきましても、今まで訓練場の不足等がございましたので、十分な訓練ができかねておつた点もございますが、今年度におきましては、かような点につきましても施設の拡張をはかつて参りたい、こう考えておるわけであります。
  166. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点伺いたいと思います。隊員の人たちが精神的なよりどころというようなものを非常に求めておる。ただ幹部の人たちが来て、お前たちの責任は非常に重大だというような話をしただけでは、何が重大なんだかさつぱりわからない。どういうふうな方向に向つていいかというようなことを、はつきりつかんでいないと思うのですが、そういうような精神的なよりどころといいますか、精神の指導といいますか、そういう面にはどういうお考えをお持ちになつておりますか。
  167. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 昔の軍隊におきましては、たとえば軍人の五割であるとかいろいろなものがありまして、それが当時指導精神としてあげられておつたと思います。警察予備隊につきましては、現在の段階におきましてはまださようなものができ上つておりません。これは今後の警察予備隊の訓練を通じて、警察予備隊自体がつくり上げて行かなければならぬものであると思うのでございます。しかしながら政府といたしましては、一般的な指導方針がおのずからなければならないわけでございます。その点について予備隊の本部といたしましては、かつてのごとき偏狭な愛国心というようなものではなく、もう少し広い基盤に立ちましたヒユーマニズムというものを基調といたしまして、隊員は祖国並びに民族というものに対する高い愛情をもつ。その祖国及び民族に対するゆとりのある、幅の広い愛情というものが、予備隊の精神的な基調でなければならない、かように考えております。
  168. 仲内憲治

  169. 山本利壽

    山本(利)委員 先ほど賠償問題に関連して、移民を送るように努力されたらどうかという発言がございましたが、まことに適当な問題だと考えるのであります。たとえていいますと、開墾を必要とする地方に日本の移民を送つて、数千町歩を開墾したのちにその半分を移民にわけていただいて、その半分はその国家に返すといつたような、いろいろな方法が考えられると思うのでありますが、ちようどそういう際にあたりまして、二十八日のワシントンAP特約では、米国の上院の司法委員会が、移民法の改正案を可決したということを報じておるのであります。これはわが国にとつてまことに朗報でありますが、この点に関しまして、日本政府の方に入電があつたかどうか。それをまずお伺いいたしたいと考えます。
  170. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまのところでは、正式に何らの報告も入手しておりません。
  171. 山本利壽

    山本(利)委員 その電報によりますと、司法委員会が可決したとありますが、米国の上院においては、この委員会以外にも移民法をかけなければならぬ委員会があるのかどうか。その点については御研究済みだと考えますので、御答弁を承りたい。
  172. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまのところほかにはないのであろうということでありまするが、これは一応正確に調べまして後刻答弁いたしたいと思います。
  173. 山本利壽

    山本(利)委員 わが国の人口問題から申しましても、この移民問題というものは非常に重大であり、しかも米国の下院においては三年前に可決している問題であつて、われわれも本会議及び委員会において、再三この問題に触れたのでありますが、アメリカにおける手続の方法等についても御研究済みでないということは、私ども政府の怠慢を責めなければならぬのであります。しかし今回米国で移民法が改正されたあかつきには、わが国としてはどの程度の移民を北米に送り得るか、その点を承りたいと考えます。
  174. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 かりに、ただいまお話の移民法が通りましても、一年間の割当は大体百八十名前後ではないか、こういうことでございます。
  175. 山本利壽

    山本(利)委員 その数については、先ほど韓国漁業権の問題と同様に、次会に詳しい正確な数字をお調べ願いたいと思うのであります。これが米国の場合は、その数が非常に僅少でありましても、世界的に見て影響はすこぶる大なるものであると考えるのであります。この移民法の米国上院の小委員会可決ということは、二十八日のことでありますから、政府当局にはつきりした入電がないとすれば、もう少し前の問題で、二十一日サンパウロ発の電報でありますが、すでにブラジルにおいては日本の移民を受入れることにきまつて、その配置場所までも新聞は報道しておるのであります。先般来五千家族をブラジルに入国せしめるといつたような報道が、たびたびあつたのでありますが、このブラジルに関するわが国の移民の問題について、御答弁をいただきたいと考えます。
  176. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ブラジルの問題につきましては御案内と思うのでありますが、上塚司氏その他の非常な御努力によりまして、大体お話のような、五千家族を入れるという方針の決定はあつたようでありまするが、しかしながらこの移民の問題につきましては、移民が向うへ参りまする渡航費の問題等につきまして、これは一人十万円あるいはそれ以上の金を要するというようなこともございまして、この渡航費をどういうふうにするか、あるいはまた向うの営農資金、着農資金等の問題、こういう問題がまだ具体的に決定していないのでありまして、政府としても、外務省におきましても、いろいろ折衝は受けておるのでありまするが、まだ問題をいかに処理するかという最終段階にまで至つていないのであります。できるだけの努力をいたしまして、こういう希望に沿い得るようにいたしたいと思つておる次第でございます。
  177. 山本利壽

    山本(利)委員 ただいま次官の御答弁になりました点について、私は特にお尋ねをいたしたかつたのでありますけれども、わが国が四割五分からの領土を失つて、非常に多くの人口を持つている。この人口問題を解決するために、産児制限その他も叫ばれているけれども、移民もまた非常に重大であるということは、特に国民全体が承知しているところであるから、これについては、政府はよくよくの努力をされなければならぬ。そうすると、先ほどお話の上塚氏等は、単に個人的に、自分かつてにああいう問題をやつておられるのであるか、あるいは裏面においては、政府がこの運動をバツク・アツプしながら推進しておられるのか、その点についての御答弁を承りたいと思います。
  178. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは政府といたしまして、ブラジル在外事務所等を通じ、常に連絡はとつておるのでありまするが、まだ政府の公の機関として、ブラジル政府と直接に折衝しておるというところではないようであります。
  179. 山本利壽

    山本(利)委員 それでは、今後こういう問題がどんどん進展して来ると思ううのでありますが、先ほど渡航費用の問題、及びそれに関する教養といいますか、準備といいますか、戰前におきましては、神戸あたりに移民収容所というような相当の機関が設置されておつた。今後そういつたような機関を設置して、経済的にもあるいは知識的にも十分その移民に対して、日本移民が海外に出た場合に歓迎され、活動し得るような計画をお立てになりつつあるかどうか。政府の所信を承りたいと思います。
  180. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 移民宿泊所と申しまするか、神戸などにはまだあるのでありまするが、これの再開等につきましても、予算折衝においていろいろ準備をしかけたのでありまするが、遺憾ながらまだ予算がとれなかつたという状況でございまして、今後渡航費用を補助の形で出すか、あるいは長期の貸付を行うかとか、いろいろ研究の方法はあると思います。そういう問題とあわせ考えまして、今後移民の問題につきましても、これを慎重に研究して行きたい、かように考えております。
  181. 山本利壽

    山本(利)委員 政府においても、この移民問題については助力する意向であるということを承つたのでありますが、それでは、本年度の予算に対して——結果においては大蔵省において削られたかもわからぬけれども、外務省としては、この移民問題に対してどのくらいの予算を要求されたのでありますか。
  182. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ここに参つておりますものの範囲では、ちよつときようは数字を用意しておりませんので、これまた御希望であれば、後刻の機会に御答弁いたしたいと思います。
  183. 山本利壽

    山本(利)委員 まことに、今日のところでは、政府の御答弁は不満足であるといわなければならぬと思いますが、次会にこれについての十分な御研究の上で、御答弁を願いたい。  さらに私は、日比賠償問題についてお伺いしたいのでありますが、本日はすでに時間も大分過ぎておりますから、この次に時間をいただいて、その問題について質問いたすことにして、今日は私はこれで終ります。
  184. 中山マサ

    ○中山委員 今回、朝鮮の捕虜収容所に現われました私どもの同胞は、終戦後中共におりまして、転々としておる間に、義勇軍として朝鮮戦線に出て来、国連軍の方に捕われたのでありまして、宮崎県の人でありますが、ただいまゼネヴアにおきましても、私どもが参りましてお願いいたしました三人委員会が活躍をし、日本からも三人の人が要請されて向うに行つておるような現在でありますから、私はこの二つの問題をにらみ合せまして、せつかくここに現われて来た同胞が、捕虜交換のときに、あるいはまた元へ送り返されるのではないかというようなおそれを持つのでございますが、たとい一人でも、こういう事態になりましたならば——これが中共から正式に軍隊として送り出されたものならば、あるいは手が届かないかもしれませんけれども、いわゆる義勇軍という名前で出て来ておる一人でございますから、何とか国連軍の方で適当な処置をとつていただけないものか。この人はもうすでに戦死の報まで入つて、家族では七年忌まで済ましたというような報さえ伝わつておりますけれども、せつかくここに出て来ておる一人を、私はむざむざ中共に送り返したくない。国連軍の位置もGHQとわかつておるのでありますから、外務省の引揚課におきましては、ここに行つて何とか交渉をしていただきましたのでございましようかどうか、伺いたいと思うのでございます。ぜひひとつ、こういう人を返してもらいたい。この間鳥居博士と一緒に帰つて来ました静岡の一婦人に、私は面会をいたしたのでありますが、中共にはまだ多数わが同胞がいる。そうして向うの実情を聞きますと、たとい言葉の末にでも日本へ帰りたいというようなことを言うと、これは逃亡罪というもの——これは最も重い罪だそうでございますが、これにされて、もうどうにもこうにもならないので、帰りたい同胞が帰るということは言えない。そうなつて参りますと、せつかく国連の三人委員会が活動を続けましても、なかなか手が延びないのではないかと私はおそれますが、一人でも何とかして中共へ帰さないで、国連の収容所におるこの人を国へ連れもどす。せつかく自分たちの入りたいという国連の中におるのですから、ぜひひとつ外務省において何とかしていただきたい。これについて同か手を打つていただいたかどうか、私は伺いたいと思います。
  185. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ごもつともなお話でございまして、復員当局とも十分協議を遂げまして、必要な筋に申し入れをしてみたい、かように考えております。今までのところまだ具体的な措置はしていないようでありますが、お話によりまして十分善処して行きたいと思います。
  186. 中山マサ

    ○中山委員 ぜひひとつその話の経過を、この次までにお知らせを願いたいと思います。向うへ帰つたら、逃亡罪ということで再び日本に帰れないのじやないかということを、非常におそれておりますから、特にお願いいたします。
  187. 並木芳雄

    ○並木委員 今日は中国政府について先ほど議論が出ておつたのですけれども、途中から警察予備隊の方に話題が転向して、私ども最も知りたかつた中国政府のことに対しては、まだ釈然としないままに残つておるのです。私のどうしても知りたい多くの点がまだ残つておりますが、要点だけを簡単にお尋ねしておきたいと思います。さつきからいろいろ政府の答弁を聞いておつたのですが、結局つかめないところか多い。端的にお聞きしますが、今度国府日本政府とが結ぼうとしておる条約というものは、平和条約第二十六条のいわゆる二国間条約であるのかどうか。これをはつきりしていただきたいと思います。
  188. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほど佐々木委員の御質問にお答えしたのでありまするが、厳格な意味ではなかなか解釈がむずかしいと思うのであります。これは二十六条に予想しておりまする二国間の全面的な平和条約というものとは、若干違つて来ると思うのでありますが、しかしながら、やはりこの平和条約に示されました諸原則に従いまして戦争関係を終結しよう、こういうような意味台湾当局折衝するものでありまして、さような意味では、やはり二十六条による限定的な平和条約、かように解し得るものと思つております。
  189. 並木芳雄

    ○並木委員 それがどうしても答弁がぐるぐるまわつて来て、パチンコの玉の勢いではありませんけれども、わからなくなつてしまう。だからどつちなりですか。イエスかノーかで答えていただけばいいのです。それによつてあと聞きたいことがわかつて来る。二国間の平和条約であるかどうかです。
  190. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 二十六条による限定的な平和条約、かように解しております。
  191. 並木芳雄

    ○並木委員 限定的なということは二十六条にはないのです。限定的な条約を結ぶという項目はございません。どこから出て来ますか。
  192. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、二十六条に予想しておりまする、この全面的な平和条約とは違つて来るのでありますけれども、また何回も繰返すようでありまするが、国府現実に施政の権能を行使しておりまする地域におきまして、善隣友好立場から、平和条約の諸原則に従いまして折衝をしようというのでありまするから、さような意味で三十六条による限定的な平和条約、こういうふうに解釈しておるものでございます。
  193. 並木芳雄

    ○並木委員 そういう限定的の平和条約を結んでも、私は効力において非常に疑問があると思うのです。この二十六条は限定的な条約などというものを一つも予想しておるものじやない。はつり書いてある通り、同一の、または実質的に同一の条件で二国間の平和条約を締結するという文字が使つてあるのですから、それで私はさつきからここで、私生児的な条約だと言つておるのです。私生児のような条約を結んだつて、この平和条約に加盟しておる他の国に対する効力はないだろう。今度の効力について政府はどういうような見解を持つておられるか、お示し願いたい。
  194. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 条約は二国間を申すまでもなく拘束するものでありまして、二国間が正当な手続によりまして条約を結ぼうというのでございますから、別に私生児的とか、条約の効力がどうとかという問題はないのではないかと考えます。
  195. 並木芳雄

    ○並木委員 しかし、結んだ条約に他の諸国がやはり拘束されないのであるならば、これは平和条約にならないわけです。単なる、別の何かの条約かもしれませんけれども、さつき二十六条にいう二国間の平和条約を結ぶのだ、こういう答弁をしておるのですから、それならば、平和条約に加わつておる他の国を拘束しないならば、効力というものはないわけです。
  196. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ちよつと並木委員の御質問は、私にわかりかねるのでありまするが、先ほど申し上げましたように、二国間が正当な手続によりまして条約を結ばうというのでありますから、この二国間を拘束することにおいては、何ら問題はないと私は思います。ただ、さらに若干つけ加えますれば、限定された地域を対象とすることになりますので、従つて、今後どういうものができるかわかりませんが、あるいは条約の内容等におきましても、若干限定されたようなものがいろいろ出て来るかもしれないと思うのでありまして、かような意味において、二十六条による限定的な平和条約、かように申し上げたのでありまして、条約の効力というものにつきましては、正当な手続によつて締結する限り、別段問題はないのではないかと考えております。
  197. 並木芳雄

    ○並木委員 言い方をかえてお尋ねしますけれども、これによつて平和条約の加盟国となるかどうか、国府中国代表して平和条約の加盟国となるかどうか。つまり中国代表してのものになるかどうかということです。
  198. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはいわゆる二国間の条約でありまして、平和条約の加盟国とかどうとかいう問題はないのではないかと思います。
  199. 並木芳雄

    ○並木委員 そこで、限定という言葉を使われておりますけれども、この限定というのは当然だんだん拡大されて、完全なものになつて行くということを前提にしているわけです。限定ということは、どういうふうな形でその制限というものが解けて、完全なものになることを政府は予想しておるのか。
  200. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 たびたび申し上げますように、国府というものは、台湾並びにその周辺現実の支配力を持つておる。この現実の事実をもとといたしまして、善隣友好立場から国府平和条約を結ぼうということであるのでありまして、さような意味において限定的、またそれを前提といたしまして、いろいろ二国間の条約の内容についても、一般平和条約とは若干異なつたものが、あるいはできるかもしれないと思うのでありまして、さような意味で限定的ということを申したのであります。
  201. 並木芳雄

    ○並木委員 さつき佐々木委員質問に答えて、国府承認することになるが、これは必ずしも中共を否定するものではないという答弁でした。そうすると、今中共政府との間でこういう二国条約が結ばれないという原因が除去された場合には、中共とも二国条約というものを結ぶことが考えられるかどうか。吉田首相は、中共との間ではこれこれの理由だから条約が結べない、修好関係に入れなついという答弁をしているでしよう。たとえば朝鮮動乱において云々とか、あるいは中ソニ箇国同盟条約を結んで云々というようなことを言つて理由にあげている。そういうような中共との間の修好関係回復できない原因がなくなつたら、政府中共との間でもこういう限定条約を結ぶ用意があるかどうかという質問であります。
  202. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は結局将来の問題でありまして、そのときに諸般情勢がまたどういうふうになつて来るか、もちろんわからないのでありまして、これはよく総理が言われまするように、仮定の問題に対しまして、ここでいろいろお答えを申上げるということは、将来にもいろいろ影響があるかと思うのでありまして、差控えておきたいと思います。
  203. 並木芳雄

    ○並木委員 私が限定ということを取上げて特に聞いたのは、政府として国府承認し、国府と修好関係に入つたならば、国府中国全土を支配するような形において、これが完全になつて行くということを望んでいるのかどうか、そういうことを聞きたいのです。それとも国府国府で今の地域を守り、中共中共で今の地域を守つて、そうして中共との間に修好関係が結べないようないろいろな原因が除去されることを、政府は望んでいるかどうか、どつちですか。
  204. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 とにかく今回国府平和条約を結ぼうという考えは、たびたび申しまるように、国府台湾及びその周辺を支配しておるというこの現実の事実に基きまして、条約を締結しようとしておるのでございまして、その他のことにつきましては、やはり将来の問題でございまして、ここでお答えをしておくということは適当でないと存じます。
  205. 仲内憲治

    仲内委員長 どうですか、並木さん。
  206. 並木芳雄

    ○並木委員 もうちよつと……。そういうところがはなはだ国民の間でも不安なんです。ということは、やはり国際情勢と非常に関係して来ますからして、この前の国会において吉田首相初め政府の答弁にあつたように、この中国政府選択の問題というのは慎重を期し、情勢をながめることができなかつたのであろうかという疑問が多いのです。だからダレス氏が来て何か言われたから、それに吉田さんが動かされて、苦しいながらもああいう書簡を送つたのだろうというような声が出て来る。どういうわけで待てなかつたのか。吉田書簡によると、今まで国会などにおける答弁でもいろいろの誤解があつたようであるから、この際その誤解を解くというようなことを前置きとして書簡に書いてあります。そうだとすれば、政府は初めから国府というものを相手とするという腹をきめていたのかどうかという問題も起つて来る。もしそうだとすれば、この問題は重大だから慎重に考慮して、情勢を見てからきめるというこの前の国会における政府の答弁は欺瞞であつた、そういう重大な疑問があるのです。どういうわけでこの問題は、今あわてて意思を表明しないで、将来に残すことができなかつたのか、こういう点を解明していただきたい。
  207. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは総理といたしましても、慎重を期して諸般情勢をよくながめまして、今回こういう措置をとることが適当であるという政府判断のもとに、この措置を決定したものと思つております。
  208. 並木芳雄

    ○並木委員 もう一点だけお尋ねしておきます。石原さんも就任早々でまだ無理だ思うし、われわれは岡崎国務相に来てもらいたかつた。しかしいやしくも政務次官たるものは、国務大臣にかわつて答弁できるものと思つておりましたから、今まで聞いておつたのです。この点は単なる論争のための論争でなく、これから準ずるいろいろの重要な問題が多いのです。この次もまた質問を続けますから、十分準備をしておいていただきたいと思います。  そこで最後に行政協定について、私は一言だけお伺いしておきたいと思います。今行われている行政協定の内容は、聞いてもきようはちよつと答えられないと思いますからこの次にしますが、アチソン・吉田交換文書によつて国連軍の日本駐留の問題が覚書となつております。今行われておる行政協定というものは、安全保障条約に基いてアメリカ軍が日本に駐留することについての行政協定である。ところがこのアチソン・吉田交換文書によりますと、アメリカ軍のほかに国連軍というものがある。これはしさいに読みます。と、たとえばこんなことがある。行政協定によつてきめられた限度を越す施設とか労務の供給などについては、国連側で全額を負担するという文字が入つております。こういうことから解釈すると、国連軍というものは、アメリカ軍の駐留とは全然別個のものであつて、必要においては行政協定などで定められるアメリカ軍の駐留兵力よりも、よけいなものを日本に駐留できる。またアメリカのみならず、一または二国——二つ以上を書いてありますから、他国の軍隊も駐留できるように解釈できるのです。そういうことを考えますと、国際連合軍に関する別個の行政協定というものに相当するものが必要じやないか。政府としてはそういうことを予定しておるかどうか。この交換文書はあまりに抽象的であり、かつ包括的で、これ一本で何でもできるようになるおそれがあるのです。従つてその心配を除くために、ちようど今やつておる行政協定と同じように、この交換文書に基く国連軍との関係を規律する別途の行政協定に相当するものをつくる用意があるかどうか。
  209. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 お尋ねの点でありまするが、国連軍については駐留というようなことはないのであろうと思つております。ただ国連軍がいろいろの作戦の都合その他で、通過するとかどうとかいう場合に、いろいろな点で協力する、こういう建前ではないかと思います。それからその際のいろいろの費用等の問題につきましては、現在通りで行くか、あるいはまたさらに国連軍との間にいろいろのとりきめをするか、そういうことが今後残されておる問題ではないかと思うのであります。
  210. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは本日はこの程度といたしまして、これにて散会いたします。     午後一時散会