○
齋藤参考人 御
報告を申し上げます前に、本
委員会からいただきました
電報の前文はこれを
総会に
報告をいたし、また後半の私
どもに対しまするまことに行き届いたお
言葉に対しましては、この
機会に厚くお礼を申し上げたいと存じます。
御
承知のごとく一昨年の十二月十四日に
国連総会におきまして、第三
委員会から配付されました
決議案を審議いたしまして、
賛成四十三票、反対五票、棄権六票という多数の
賛成のもとに、
国連の中に
引揚げに関します特別の
委員会が任命されることと相な
つたのであります。この任命のいたし方は、
最初その
決議の中に
国際赤十字または
事務総長においてこれを任命するということに
なつておりましたので、
最初国際赤十字社に交渉をいたしましたところ、それが承諾を得られませんでしたために、これはその
決議の
通り事務総長において任命されることと相なりました。
この三名の
委員の
方々について、まず第一にどういう人がその
中心に
なつてお
つたかということを御
報告申し上げたいと存じます。
スエーデンの
エステル・ベルナドツト伯爵夫人、それから
エル・サルバドールルの
ホゼ・グスタヴオ・ゲレロ判事、
ビルマの
アウン・カイン判事、このお三方が任命されたわけであります。そうして昨年の七月三十日に
国連本部で第一回の
会合が開かれました。そして
ゲレロ博士が
委員長に選任をされました。この
委員会では、
引揚げ問題が第一
委員会で取上げられませんで第三
委員会において取上げられた、すなわち社会、
人道、
文化に関する
委員会で取上げられましたので、この問題はま
つたく次のような性質を帯びるものであると了承されたのであります。第一は、この
委員会は
司法機関でもなければ、また政治的の
調査機関でもない。第二に、この
委員会の
使命とするところは、純粋に
人道的な精神により、また全
関係諸国の
政府が受諾のできるような
引揚げ問題を
解決することにある。こういう結論に達してこの
委員会は発足いたしたのであります。次にこの
立場に基きまして
引揚げに関します
特別委員会は、
関係国の
協力を得ますために
委員会の
性格とその
使命を明らかにいたしまして、これを
関係各国に通知いたしました。そして八月の八日に至りまして、
国連の
加盟国と非
加盟国でありますとを問わず、全
関係国政府にその趣旨を述べた
書簡を発送いたしたのであります。今回のことを申し上げます前に、これしのことを御了承仰ぎたいと思うのであります。
そういたしまして、この
委員会は後に時と
方法をきめて
各国で必要の場合に
会合を召集するということに決定かいたしたのでありますが、それが今回の
会合が
ゼネヴアで催されるようにた
つた順序に相
なつておるのであります。
次にこの三人の
委員会の
構成をしております
方々がどういう方であるかということを、ごく簡略に申し上げたいと存じます。このうちの
委員長であられます
ゲレロ博士は
国際法に通じ、また
判事でもあられます
関係上、法律の
権威者であられます。その
位地から申しましても、かつて
外務大臣をされており、あるいはその他の要職にあられた人でありまして、この人の年令は七十六才であります。そうして
エル・サルバドールの
国連に対する
代表の
位地にあられる方であります。それから
ビルマの
アウンカイン判事は、これは五十一才の方でありまして、この方は学歴はカルカッタあるいは
ケンブリツジ等を出られて、そうして
高等裁判所の
判事に今現にあられる方でありますが、
ビルマを
代表して
国連に
出席をして
おいでになる方であります。特にその業績といたしましては、エリトレアとエチオピア問題の
解決に当られまして非常な手腕を示された方であります。こういうような人のほかにもう一人、これは
さきに申し上げました
ベルナドツト伯夫人が加わつております。この
夫人は御
承知のようにイスラ
エルの問題で暗殺されました
ベルナドツト伯の未亡人であります。
スエーデンの皇室と
関係のある方であります。こういう三人の方がこの
委員と
なつておられたのであります。
この
会合は一月の二十二日、
ゼネヴアの元の
国際連盟の
会館パレ・ド・ナシヨン、今
国連において使われておる建物でありますが、その場所において第一回の
総会が開かれたのであります。どういう
国々とどういう
人たちとがそこに
出席いたしましたかということを御
報告申し上げたいと存じます。オーストラリアの
代表は
シヨーという人でありまして、これはかつて対
日理事会に
英国側を
代表して
日本に来られた方であります。親しみのある方であります。その次はベルジアムの方でありまして、これは存じ上げない方であります。フランスの方は五人
代表が参つておられます。また
ドイツの方はトリツツラーという方を
首席代表といたしまして全部で五人、また
イタリアはメダーという人を加えまして四人の
代表が参つております。
日本からは
さきに
お話のございました私
ども二人と、それから
外務省からお二人の方、ことに
在外事務所長であります田村氏がこれに加わられたのであります。それからこちらから行かれました
山川事務官にいろいろの
お世話をしていただいたのでございます。その次は
ルクセンブルグから一人、これはベルンにおられるところの公使でありますが、スツルム氏という人が
出席しております。それからオランダ、それから
英国の
代表、それから
北米合衆国の
代表が三名、これは
国会議員であらせられますマンスフイールド氏という方と、それから
ジユネーヴの常駐の
委員であらせられるブレースデル氏という方、それから一昨年の私
どものこの問題に対しまして非常に
お世話を
願つて、おりましたミセス・アリス・コレルというこの御三方であります。こういうような
構成のもとにどういうふうに
会議が運ばれたかと申しますると、
最初の一月二十二日には
公開の
会合がございました。それから
最後の二月の九日にまた
公開の
会合がございました。その間におきまして
各国の
代表者とこの
委員方は毎日のように
非公開の
会合を催されたのであります。この
非公開の
会合におきましては、
委員とそれから私
ども代表の者と
国連の
事務当局の者とだけの
会合でありました。ここではすべてのことをざつくばらんに話し合う
会合でございます。この
会合は私
どもにとりましては二回ございました。二度いろいろこまかいことについての
お話ができたのであります。また
委員会におきましては、ただ
各国の
代表者にそれぞれ
協議をいたしたばかりでなく、いろいろの
団体がございますが、
文化団体、
宗教団体、いろいろの
団体の
人々とも
話合いをされました。これは御
承知のごとく
国連の中に非
国家機関、ノン・ガヴアメンタル・オーガニゼーシヨン、NGOと申しておりますが、その
団体と一々
話合いをされたようであります。たとえば
赤十字社あるいは
宗教団体というようなものでございまして、そういう細心な
注意のもとに
委員会は
活動をされたのであります。わが方におきましてはこの
会合におきまして、
公開の席におきましてはいまだ帰らざるところの
同胞のことを述べまして、そうして今回のこの
会合が
三つの点において非常に私
どもの
注意を喚起しておることをまず述べました。すなわちこれは政治問題でなく
人道上の問題であるという点、第二は、この問題の取扱い方はただ單に一箇国の問題としてでなく
国際協力のもとにすべきであるという点、第三は、
捕虜という
言葉の解釈でありまして、これは現在において
捕虜という
名前がついておらないでも、第二次
世界大戦後にかつて
捕虜であり、そして
捕虜といわれてお
つたところの者をもその中に含む、こういう
三つの新しい、あるいはそういう建前で開かれました
会合であるということを非常に喜ぶ旨を述べまして、そうして待ちわびておられるところの
家族の
状態、これは特に後に
非公開の席におきましては
上島さんから
お話がございましたので、
上島さんに
お話を願いたいと思いますが、そういうような問題を申しまして、
最後に
委員会がぜひ
わが国を訪問されて、そうしてこの
実情を
はつきりと見てもらいたい、ことに三十何万という大勢の人の
名前、その
はつきりしたところのカード、こういうものを見ていただきたい、あるいはまた
家族の
人々の
状態をも見ていただきたい、決してこれは架空の数ではない、事実に即しておるものであるという点を力説いたしまして、
委員の来朝を希望いたしたのであります。こういうことの後の二回の
非公開の席でいたしましたことは、どういうふうな
方法でその数字がわか
つたか、あるいはどういうふうな
事柄があるかというような詳細にわたる
委員たちの質問があり、また私
どもは、準備いたして参りました小冊子あるいはいろいろの地図、
統計等を示しまして、これに関して
話合いをいたした次第であります。
また
最後の日におきましてのわが方の
公開の席におけるステートメントの中におきましては、まずこの会に対して
感謝の意を述べまして、そうして特に
言葉づかいその他の態度に細心の
注意をして、この問題の
解決に当るところの熱心さというようなものにつきまして心からなる
敬意を表しました。その次に、今日ここに
委員長をして
おいでになりまする
小平久雄先生の
名前を申し上げまして、こういう
電報が参つておるということをごひろう申し上げました。そうしてそれは
ちようど今回はどうもお受けできない、おたずねすることができないと
委員長から述べられた後でありますので、
おいでができないことはまことに残念である、しかしながらこれは
愼重にお
考えにな
つた後のことであると存じますが、
家族の
人々は
皆様の熱意のあるこの御支援に対して非常に
感謝をしておることと思いまするし、またこの会において一歩前進することのできたことは非常に喜ばれることと思う、どうか
委員たちは
最後の一人の
帰還いたしまするまでお骨折りを願いたいというその願いを述べまして、終りになお
皆様に
おいでを願いたいというこの御
招待を申し上げる
気持はかわらぬのであるから、
皆様が御遠慮なく、また御躊躇の心なく
おいでのできることを、またそういうときのすみやかに来ることを望んでおるというようなことを申しまして話を
終つた次第であります。
この
機会にいささか
心配をいたしました
事柄について
皆様に御
報告を申し上げたいと思います。第一の
事柄は、多少
会議の技術的な方面でございまするが、御
承知のごとく二月の初旬まで
国連の
総会がパリで開かれておりまして、その終了のときが二月の四日であるというようなことを聞かされ、私
どもの
委員会は九日まで、これはどうも困
つたことである、もし
総会にこのたびの会の
様子がかけられて、それから発動をするというようなことであ
つたといたしますればこれは実は困
つたことだと、そのときに
考えたのであります。ところが幸いなことに、
さきにも
ちよつと触れて御
報告を申し上げましたように、今回のその
委員は、
赤十字社において
推薦をしてもらうか、
赤十字社が
推薦をしなか
つた場合は
事務総長これを任命するということが規定されておりましたために、この会の結果は
事務総長に
報告すれば
国連において適当なる
活動をすることができる、こういうことがわかりましたので、ほつと一安心いたした次第でございます。もう一つの
心配は、この
国連において任命されました
委員会は特別という
言葉がついておりますアド・ホック・コミツテイース・オブ・プリズナースというのが公の
名前であります。このアド・ホックというのは申すまでもなく一時の特別の
委員会でありまして、常設の
委員会ではございません。それでもしこの会が
引揚げの問題を打切つてしまう、あるいは今回の
委員会でもはや
活動してくれないというようなことにでも相なりまして、
日本の
平和条約の批准が済みまし
中共あるいはその他の
関係諸国との連絡のできなくな
つた場合にこれはどういう形になるであろうかという
心配を持
つたのであります。ところがこの
委員会はさらに継続いたしますばかりでなく、八月にこの次の
会合を
ジユネーヴにおいて開くことが決定されましたということは非常に喜ばしいことでございます。ことに
日本側の問題につきましあるいは
赤十字社の
看護婦で帰られない
人人であるとか、あるいはその他のいろいろの問題について大いに骨を折つてくれるというようなことも明らかになりましたために、初めの
心配に増しまして非常な力を得たような次第であります。以上で
委員会の成立いたしました
経過、また
委員がどういう人柄であるということ、また会の大体の
様子を申し上げた次第でございますが、それでは今後どういうことになるのかという
見通しについて一言申し上げたいと存じます。
それは、この
委員会はさらに具体的ないろいろの
資料を集める、たとえば来引揚者のうち、なくなられた方があるならばその
氏名、あるいはそういうことに関する詳細な
調査等々を引続いてやることにしよう、そして八月に再開するというようなことを聞きまして、一纔の
望みが與えられたように私
ども思つた次第であります。この間になお一言つけ加えることをお許しいただきますれば、私
ども二つの
公開の
会合、また
非公開の
会合のほかに、
各国の
代表の
人々とあらゆる
機会において
協議、相談をいたしました。これは、たとえば
ドイツのごときは未
帰還の人の数が百三十万という多数であります。そして
はつきりとわかつております数は八万三千、これは
書簡その他によつて明瞭に
なつておるものであります。その
氏名までも
はつきりしておるということを公に言つておられました。それから
イタリアのごときは六万、また
ルクセンブルグは千七百とい
つたようなことでありまして、
関係各国の
人々とよく打合せをいたし、また今後のことにつきましても国際的な
協力の事業であるということを
はつきりと
認識をいたして参りました次第であります。そのほかに、またあそこでは御
承知のごとく
国際赤十字社とそれから
ソ連の
赤十字社、
中共の
赤十字も含めておりますリーグというのがございます。リーグ・オブ・レッド・クロス・ソサイティー、
赤十字社同盟のようなものがございます。こういう
二つの
団体、また
宗教団体、
文化団体の
人人に今までのお骨折りあるいは
協力を
感謝いたし、さらにそれにつけ加えて今後一層
協力を仰ぐというようなことをお願いいたしました。今後この問題につきまして
委員会において一層のお骨折りを願えることと思いまして、非常な
望みを持つて帰つて来た次第であります。
はなはだ雑でございましたが、以上御
報告を申し上げた次第でございます。