○小西(英)
委員 そうするとやはり大蔵
当局が切つたものとわれわれは推測いたします。大蔵
当局は一社に対して何十億、商社に対して多いところは百億から貸し付けておる。これは一般の金融業者でありますが、更生資金というものは零細な資金であ
つて、外地から帰
つて来、あるいは戦沒された人の未亡人等の零細な資金で、民生安定の上からきわめて必要な資金であるにかかわらず、更生資金と生業資金とをごつちやにして考えて、大蔵大臣等の予算
委員会における説明等をわれわれ聞きましても、はつきりわか
つていないのじやないかという点があるので、両資金の相違について、性格の上においては一緒であるが、実際の内容のかわ
つておることを知
つておられるかどうか。生業資金は
国民金融公庫法に基きまして、一般の市中銀行から融資を受けられない、いわば信用力の稀薄な企業に対して貸し付けられ、あるいは純粋の事業資金であります。それに反しまして更生資金は、
建前は生業資金同様事業資金ということにはな
つておりますが、創設せられた当時は、主として
引揚者に更生の機会を與えるという目的であ
つたのでありまして、内職業職、就職の準備等に要する立上り資金であります。また生業資金は国が
国民金融公庫に対する直接の出資として支出されております。更生資金も同じく財政支出ではあるが、
厚生省がその運営を公庫に委託し、事務的には都道府県が公庫に委託するという形をと
つておる。貸付
條件についても相当内容が違
つております。生業資金は、純粋の事業資金であるという性格に基き、コマーシャル・ベースに立つ金融であるから、融資の対象となる企業は一般市中銀行から貸付を受けられない企業であ
つて、左の
條件を具備しなければならないことにな
つております。過去における事業の実績を有し、あくまで償還確実なものでなければならない。事業の資金計画が適切でなければならない。更生資金もいわゆる生活資金でなく、
建前としては事業資金であるが、その貸付は、何らかの手がかりが得られ、自立更生が可能であり、かつ回收の見込みが十分であることが
條件であ
つて、民生
委員及び市町村長の証明が必要とされております。
従つて更生資金は社会政策的な意味を多分に含んでおります。さらに貸付の手続の相違点として、生業資金の貸付は、
国民金融公庫の嚴重なる机上
並びに実地
調査によ
つて決定されるのでありますが、更生資金の方は主として民生
委員、市町村長の証明が必要であり、それに基き公庫の
調査によ
つて貸付が決定せられるが、大口連帯の貸付の場合は都道府県更生資金運営
委員会によ
つて決定されます。さらに更生資金の利用者の変化という点から見ますと、更生資金は
最初引揚者更生に重点的に利用されましたが、最近におきましてはその五〇%ないし六〇%が遺族、未亡人、
留守家族、身体障害者あるいは戦災者等に貸し付けられるに至り、しかもその需要は現在年間二十億に上
つておりますが、これに対応する貸付は事実上きわめて限定されております。次に地方自治体の更生資金に対する監視とその利用の点より見ますならば、更生資金はまた風水害、大火等の災害によ
つてこれが復興の応急的資金として優先的に利用され、地方自治団体は民生安定の重要な
一つの制度であることの認識を深めております。さらに一歩進めて地方自治体においては、国による更生資金とは別途に、都道府県民の要望にこたえて、都道府県費をも
つてこれと類似の資金制度を創設し、生業資金と称しておるようなところが多いのでありまして、庶民の自立更生に資しておりまする北海道あるいは宮城、
東京、神奈川、長野、京都、兵庫、山口等それであります。こういうふうにこの更生資金の制度が各地に徹底して参りまして、一息ついて更生の明るい見通しがある際に、今回は
厚生省の予算の中にゼロにな
つておるので、非常に心配いたしております。更生資金そのものに対する需要は年間二十億円を上まわる現状でありましてしかもその対象者は当初のころとはだんだん違
つて参りまして、その六〇%以上は、先ほど申し上げましたように、遺族あるいは未亡人、戰災者、戰傷者、未
帰還者、
留守家族等が占めておる最近の
実情であります。ことに講和発効後のわが国の経済
事情を考えると、
国民生活もにわかに好転することが考えられないので、諸般の情勢からこれを考え合わせると、ますます更生資金の需要は増大する一途にあると思うのでありますが、政府はかかる現実を忘却いたしまして、昭和二十七年度の予算においては新規
引揚者の見通しがつかないという理由によ
つて、更生資金を計上しておりません。新規財政支出を打切
つたのみならず、これが運営のための事務の指導費、あるいは府県に対する補助金すらも打切るに至つたことは、どうも
引揚者といたしまして、あるいはこの
委員会としても納得ができないのであります。遺族対策が
留守家族に十分に実施し得ない現下の財政
事情からい
つても、これを補足する意味からい
つても、この際政府は更生資金制度をもつと強化してもらいたい。戰争犠牲者を初め、生活に困窮しておる
国民大衆の自立更生を
促進したいという考えを持
つておるのでありますが、これについて今のうちなら何とかなるのではないかと思いますが、政府はこの二十七年度にこれを入れる意思があるかどうか、大蔵
当局にお尋ねしたいのであります。