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滿尾委員 政府においては、行政機構改革案が目下進行中だそうであります。私ども仄聞するところによりますと、運輸省に従来ありました観光部を廃止いたしまして、観光主任官というものを置くというような原案で進行している由に伺
つておるのでありますが、講和発効後のわが国の態勢といたしまして、観光事業は最も今後力を入れて行かなければならぬ性格のものであろうと考える次第でございます。その
意味は、外客を積極的にわが国に誘致いたしまして、わが国民との密接な接触をはかり、そうすることによ
つてわが国情を世界の各国民に十分理解徹底せしめ、お互いに相互の認識と理解を深めることが今後の国際社会を建設して行く上におきまして、世界の平和を維持して参る建前におきまして最も緊要なことであり、わが国民外交の本筋でにあろうと考えられます。またこの方策によりまして、貿易外の収支というものが非常に改善せられる。その実績を見ますると、昭和二十六年度におきましてさえも来訪の客は五万六千人、その国内における推定消費額は千五百万ドルで、
日本の金に換算しますと五十三億円に達しておるのであります。今後の講和発効後のわが国の態勢といたしましては、これはますます増加する建前にございますので、わが財政事情に寄與するところも非常に大きなものがあります。かような
意味におきまして、観光国策と申すものが、独立後の
日本の重要国策の
一つであらねばならぬと私は信ずるものであります。またこの観光の仕事というものは、国内において主としてめんどうを見る部署がなければ、その仕事はうまく行かない。なぜかと申しますると、この観光の事務は、その接触面が非常に多いのであります。もとより主として交通機関、船舶であるとか、鉄道、飛行機、自動車というような面が、これに密接につなが
つております。道路もつなる。またいろいろな観光資源の
関係から、国立公園その他の面も非常につなが
つておる。また多客誘致のホテルの政策の面からいたしまして、衛生保健というような問題も深く入り組んでおるわけであります。またこれらの仕事を円満に途行いたしますために、財政的な面からこの観光事業をバツクしてやることが非常に必要でございますから、この複雑多岐な観光設備というものを対象といたしまする行政は、どうしてもここに強力なる
一つの部局を持ちまして、その責めを
とつて推進して行くよりほかないのであります。それが今回の行政機構によりますると、主任官というようなぐあいに、ほとんどあるかなきかに圧縮いたしますことは、前述して参りましたところの観光国策に照しまして、きわめておかしなことである。でありますから、これは單なる行政改革の一部局を節約するとか何とかいうような事務的な見解でなしに、ほんとうに講和発効後のわが国の政治的な大所高所からの
考え方といたしまして、私は運輸省に観光局を一局として設置して、これらの事務を総合企画せしむることがぜひ必要であろうと考えるのであります。また最近の情勢として伺いますところによりますると、国際的な観光事業の活動というものがあ
つて。各国の観光機関の連盟がある。その中にわが国もすでに参加を許されてお
つて、いよいよ来年の四月にはアジア
地区においてその
会議が催される。しかもわが国がその
会議の主導者として予定されて外国の期待を受けておるそうであります。かような際にあた
つて、わざわざ
日本政府が従来ありました観光部をあべこべに縮小するがごときことは、国際的な動きに照し、その期待に対してこたえるゆえんでもございませんので、どの角度から見ましても、今日の政府の行政機構改革のうち、観光部に対する措置はいささか逆転のきらいがある。従
つて当運輸
委員会といたしましては、ぜひ運輸省に観光局を設置する決議をこの際いたし、政府の反省と再考を求めたいと考えるのでございますが、さような
意味において動議を提出する次第であります。案文をひとり読んでみます。
運輸省に観光局設置に関する決議案
平和条約発効後国際社会に復帰するわが国としては、この際外客を積極的に誘致し、わが国情を諸外国民に周知せしめ、諸国
民間相互の認識と理解とを一層深くすることが、わが外交国策上最も緊要とするところであり、又右に伴う外貨建得による貿易外収支の改善を図ることが国家財政の上からも極めて緊要である。
かかる大局的見地より観光行政機構を整備強化するため、政府はこの際運輸省に観光局を設置すべきである。
右決議する。