○荒木
政府委員 少し時間がかかりますけれ
ども、お許しを願います。使い古して新しいものにとりかえなければならない車両や施設が堆積していて、毎年四百億円前後の工事
予算では——ことしは先般
大臣が申し上げましたように、四百十六億
程度でございますが、毎年四百億円前後の工事
予算では、これを新しいものにとりかえて行く早さよりも、全体が古くな
つて行く早さの方が大きいような
状態であります。こうして国鉄は日ごとに食いつぶされて行くという
状態であります。これをさらに詳細に申し上げますと、国鉄の車両や施設を新しいものにとりかえるのは、工事経費によります。その工事経費の決算の
状態はどうであるか、その実績は第一図の表で示してございます。表はあとから至急取寄せましてお届けいたします。その第一図に書いてありますが、それによりまして明らかなように、国鉄が比較的順調な運営を行
つていたといわれる
昭和十一
年度の四百七十億円——これは当時の金としますれば、これより低いわけでありますが、物価指数から換算して四百七十億円になるわけであります。これから述べますのは、古いときの金は全部現在のレートに換算してございます。この四百七十億円に比べて、
昭和二十四
年度以降、それぞれ二百七十億円、三百二十億円、三百八十億円と、いずれもこれを下まわる
数字であ
つて、これは戦前に比べて、とりかえのための工事が十分に行われていないことを物語
つているわけでございます。
また
戦時中はもちろん
終戦後も、経済復興、民生安定、さらには進駐軍輸送と、やむを得ない情勢のために、もつぱら輸送力を増大するための工事を強制されて、古い車両や施設をとりかえるいとまがありませんでした。さらに鋼材、セメント等重要資材が不足したので、質的改善とはおよそ逆の方向に進むことを余儀なくされたのであります。そのため古い車両、施設ばかりでなく、新しいものでも
戦時設計のものとか、代用品製のバラツクとかは、大部分すでに今日腐朽しておる
状態であります。
昭和十一
年度以来の鋼材入れ不足は、これまた表に示してございます。
車両にしても、また線路、建物等の地上諸施設にしても、物にはすべて寿命というものがあります。その寿命は修繕の仕方その他の方法によ
つて、ある
程度延ばすこともできますが、これにはおのずから限度があり、その寿命を過ぎると、むやみに修繕費がかか
つて、かえ
つて不経済なものになるばかりでなく、重大事故の原因ともなります。
戦時戦後の粗悪なものはしばらくおくとしても、国鉄がいかに多くの老朽車両、老朽施設をかかえているかということをやはり図で、第三図から第十一図まで、その
状態を表示してあります。橋梁の寿命は四十年、よほど條件のよいものでも五十年がせいぜいでありますのに対して、第四図で示してございますが、国鉄橋梁の約三〇%が五十年以上
経過したものであり、約五〇%が四十年以上
経過したものであるのであります。
また蒸気機関車の、ただの寿命でなく、経済的寿命は二十年、経済を度外視しても四十年使うことは非常に無理でありますが、第五図に示してありますように、四十年以上
経過したものが約二百五十両、二十年以上
経過したものは全体の四四%に達しておるのであります。各種の車両、施設につきましても、ほぼ同様またはそれ以上の古さの分布を示しています。これら老朽車両、老朽施設の酷使に伴い、運転事故件数も、
昭和十一
年度に比較して、
昭和二十五
年度において、件数においては二万八千二百五十六件、百万キロ当り件数にして一〇一・五二件を示しておるのであります。
以上述べましたように、国鉄は莫大な老朽車両、老朽施設をかかえています。これらの古いものを新しいものにとりかえる場合、多少不経済でありますが、できるだけ修繕費をかけるなどの方法で寿命を引延ばして考えましても、最低一千八百六十八億円の金が必要だということになるのでございます。この復元をかりに五箇年間に行うものとすれば、それだけで平均三百七十三億円を要することになります。しかもその他に毎年新しく老朽の域に入
つて来るはずのものをとりかえて行くための経費がさらに必要であります。国鉄の保有する車両、諸施設等の財産額は、
昭和二十六
年度末推定復成価格にして九千二百二十億円、新品価格にすれば一兆七千五百十九億円でありますから、この経費は復成価格をとれば毎年二百八十億円、新品価格をとれば五百二十六億円を要することとなります。これらの模様は別の第一表で示しておるわけであります。従
つて国鉄を復興させるためには、工事経費として総額一千八百六十八億円の復元と、その他に毎年平均復成価格として考えまして二百八十億円、新品価格として考えますと五百二十六億円の減価償却を必要とすることになるわけでございます。従
つてこういう面からいたしまして、先般
大臣が申し上げましたように、工事
関係の経費は、現在の二倍半
程度が必要であるということを言われたわけでございます。
以上のように、毎年二百八十億円ないし五百二十六億円の経常的なとりかえを要するほかに、総額一千八百六十八億円のとりかえ不足をかかえた国鉄の工事経費が、新線建設とか電化その他の改良工事とかまでを含めて、わずかに四百億円前後の
予算支出が認められているにすぎない
現状では、明らかに経営上無理が生じて来ます。まして国内諸産業の復興とともに、逐年輸送要請が客貨ともに
増加しつつあるという事実は、とりもなおさず毎年国鉄に対して、疲労の累積が行われておるということでございますので、ぜひともこの工事経費を増額して、今までの疲労を取返すとともに、新しくつくつたものの疲労度の加わ
つて来るのを防ぐということをしなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。