運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-11-22 第12回国会 参議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十二日(木曜 日)    午後一時十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            小林 政夫君            藤野 繁雄君            佐多 忠隆君            櫻内 義雄君            東   隆君            岩間 正男君    委員            泉山 三六君            石原幹市郎君            岩沢 忠恭君            小野 義夫君            加納 金助君            九鬼紋十郎君            古池 信三君            白波瀬米吉君            一松 政二君            深水 六郎君            高良 とみ君            西郷吉之助君            新谷寅三郎君            荒木正三郎君            内村 清次君            小林 孝平君            小酒井義男君            松浦 清一君            山下 義信君            山田 節男君            岩木 哲夫君            西田 隆男君            深川タマヱ君            矢嶋 三義君   国務大臣    法 務 総 裁 大橋 武夫君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君    農 林 大 臣 根本龍太郎君    建 設 大 臣 野田 卯一君    国 務 大 臣 岡野 清豪君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    経理局長    窪谷 直光君    地方財政委員会   事務局財務部長  武岡 憲一君    特別調達庁長官 根道 廣吉君    特別調達庁財務    部長      川田 三郎君    特別調達庁管理    部長      長岡 伊八君    地方自治政務次    官       小野  哲君    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    文部大臣官房会    計課長     寺中 作雄君    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    農林大臣官房長 塩見友之助君    食糧庁長官   安孫子藤吉君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員の選任の件 ○昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を開会いたします。  先ず小委員の選定を行います。去る十九日の委員会で決定いたしました通り委員長において指名いたします。  政府出資及び投資に関する小委員     平岡 市三君 小野 義夫君     古池 信三君 佐多 忠隆君     山田 節男君 伊藤  修君     小林 政夫君 結城 安次君     西田 隆男君 櫻内 義雄君     堀木 鎌三君  農林に関する小委員    池田宇右衞門君 九鬼紋十郎君     白波瀬米吉君 小林 孝平君     波多野 鼎君 藤野 繁雄君     飯島連次郎君 鈴木 強平君     東   隆君  地方財政平衡交付金に関する小委員     石坂 豊一君 泉山 三六君     石原幹市郎君 加納 金助君     荒木正三郎君 内村 清次君     松浦 清一君 西郷吉之助君     高良 とみ君 岩木 哲夫君     木村禧八郎君 岩間 正男君  物価給与引上社会保障及び減税等に関する小委員     岩沢 忠恭君 一松 政二君     平井 太郎君 深水 六郎君     小酒井義男君 山下 義信君     楠見 義男君 前田  穰君     新谷寅三郎君 宮城タマヨ君     深川タマヱ君 矢嶋 三義君   —————————————
  3. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは前回に引続き質疑を続行いたします。
  4. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ず建設大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、この間南九州、山口県等々の各地を襲いましたルース台風による災害に関して政府がどういうふうな措置をとられたか、とろうとしておられるのか、その点をお聞きしたいのでありますが、先ず政府損害額としてどれくらいのものをお見込になつているのか、特に公共事業費関係についてはどういうふうに調べがついているのか、その点から先ずお尋ねいたしたいと思います。
  5. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) ルース台風被害公共事業関係の金額は各県から集つて来ております報告によりますと七百数十億円になつております。この七百数十億円の報告に対しまして、実際今現地建設省の出先の者、建設省の者と大蔵省の者とが共同して損害査定をいたしております。その結果七百数十億の被害額が何ほどになるかということはまだはつきりいたさないわけであります。
  6. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その査定額はつきりなるのは時期的にいつ頃をお見込なのですか。建設大臣現地におかれて現地会議をおやりになつたときに、この際は非常に急いですぐ取まとめて措置するというふうな言明をなされているはずでございますが。
  7. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 只今の取調べておる数字は十二月の中頃には明瞭になるかと思います。それからその数字補正予算提出等の場合において必要になり、又実際予算を配付する場合に必要になるのでありますが、それを待つておりますと現地復旧事業に支障を来しますので、政府としては取りあえずの措置として今までに繋ぎ資金を十二億数千万円出して、これで一応の対処をいたしておる次第でございます。
  8. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 十二月半ばに査定額が大体きまるというお話でありますが、そうだとすれば、その今の大体の御見当で、八月以前にすでに相当な災害も発生しておりますので、それらのものとひつくるめて大体どれくらいのものを災害総額としてお考えになつているのか、從つてそれらに対して災害復旧対策を立てるとすれば資金的にどれくらいのものが必要であるかというような見当をおつけになつているのか、その点を詳しく御説明願いたいのでございます。
  9. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) ルース台風以前の本年度災害につきましては、過般四十五億の金を出すことに決定いたしまして、今この金を出しております。御承知のように本年度災害に対する予備的な経費総額八十億円、八十億円の中からルース台風以前の災害に対しまして四十五億円、これは確定いたしております。そういたしましてそのほかに現在ここで御審議願つております補正予算におきましてこの八十億円の中から約五億円近くのものを割きまして治山及び砂防のために経費を取つております。合計いたしますとまあ五十億になる。それだけ使つてしまつたと言いますか、査定はつきりついてしまつて残額が三十億、この三十億のうち、今後本年中に起る災害に対しまして五億程度予備費が必要じやないかと思います。取つて置く必要があるのじやないかと思います。そういたしますと残りが二十五億ということに相成ります。この二十五億が現在の予算におきましてはルース台風出し得る金だと、こういうことに相成ります。ところが災害実情から申しますと、二十五億の程度経費では到底本年度内に措置すべき復旧をいたすことができません。そこで当然に補正予算の必要が生ずるのでありますが、補正予算をこの機会に出すことは政府としては不可能の状態であり、從つて我々は今までの考え方は、来るべき通常議会ルース台風に対する追加予算を計上する考えであつたのであります。今後もその考えで進むつもりでおりますが、それがどうしても困難である場合には止むなく二十七年度予算に二十六年度に出すべかりし金はそれだけこぶつきとして二十七年度予算に計上するということに相成るかと思うのであります。そういたしますとその間予算と裏付けする金が出ないということになりますので、取りあえず繋ぎ資金的な、要するに資金的措置を講じまして、地方における災害復旧事業を進めて行きたい、こういうふうに思つておるのであります。然らばどのくらいの金が要るかということにつきましては只今計算中でありまして、まだ確定した数字は出ておりません。追加予算として若し出すとすればどれくらいの金が要るかということ、又その他金融措置をするとすればどのくらいの金が要るかということを今算出をしておる最中であります。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先日事務当局にお聞きした場合には、災害予備費が今年度分八十億あるが、そのうちに今おつしやつたように三十五億程度つて……二十五億残りがあるという今の大臣お話に対しては、すでにその二十五億のうちの二十億はもうきまつているので、八月以前のものにきまつているので、残つているものはその点から言えば五億しかないのだというようなお話もあつたようでございますが、そうしますと、今の大臣お話と非常に食い違つて参るので、その辺はどういうふうな事情になつておりますか。
  11. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 只今佐多委員の御質問は非常に御尤なことでありまして、今お話になりました二十億という金は、これは昭和二十五年度以前の災害にそれだけのものをこの予備費から出そうということを一度計画したのであります。これは御承知のように過年度災害につきまして予算を編成する当時におきましては、二十六年度予算を編成する当時におきましては予算上は三分の二の国庫補助をいたすという考えであつたのです。ところがその後出しました法律によりまして補助率が変つて参りまして、大体平均いたしますと四分の三ぐらいの補助をする必要になつておる。これは法律の結果であります。そこで四分の三に補助率が上つて参りましたので資金的に足りなくなつたのでありますから、本当なればその当時に措置すべきでありましたけれども、まあ当時はその点を留保いたしまして、他日補正予算を出す場合にはそれを考慮しようということを当時の建設大臣言つておられたようであります。そういうような経緯がありますので、それを本年はルースの起る前におきましては幸いに災害が少なかつたから、当然八十億は一部分余るだろう、余るだろうからその数字は十八億、大体まあ二十億、それくらいを出そうというつもりで進んでおつたところが、その問題につきまして閣議におきましては二十億出すということに決定して、司令部に持つてつたところが司令部は二十億は多過ぎるんだし、又本年度中に災害が起るかも知れんから、十五億だけ認めようということになつたのであります。ところが十五億だけ認めようと言つたその直後ルース台風が起りましたために、十五億出すことを許可されなかつた從つてそれは使えない、先ほどの二十億となるわけでありますが、それは使えないということになつて從つてそれがルース台風経費に廻わすようになつた、こういう関係でございます。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますとルース台風には二十五億、本年度分すでにそれだけはあるわけでありますが、あと不足の分が相当出て、それに対して今建設大臣お話では、通常国会が開かれたときに補正として出したいというようなお話があるようでございますが、昨今の新聞によると、或いはそれが不可能になるんじやないかというような話も聞いておりますので、これらの経緯がどういうふうになつているか、その点をもう少し詳しく建設大臣或いは大蔵大臣にお示しを頂きたい。
  13. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 只今の御質問でありますが、同じことを繰返すようになるかと思います。我々といたしましてはこの次の通常国会予算を、追加予算を出すつもりでありますが、それが不可能なときはどうしても二十七年度にそれだけこぶつきで出す。二十七年度予算に計上する以外はないかと思うのであります。佐多君の言われる問題は、若しそうなつたときに資金的にどうするんだというふうに私は取りましてお答えするのでありますが、そのときには今までの応急のつなぎ資金というものは十二億数千万円しか出ておらない、これでは足りないので、それよりもつとずつと殖やした大幅なつなぎ資金至急出しまして、災害復旧を進めて行く、こういう方向に進めたいと考えております。
  14. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、つなぎ資金措置の問題は後ほど更にお尋ねしようと思うのですが、建設大臣はそういうふうに成るべく通常国会補正の、第二の補正といいますか、で取ろうとお考えになつているにかかわらず、なおどうもそれが不可能な場合にはということを言われて、どうもそれが実現しませんような予感を匂わしておられるのですが、どういう意味でそれが不可能なのか、その点をもう少し詳しく御説明願いたいと思います。不可能じやないかとお考えになるのか。
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ルース台風復旧につきましては補正予算で行くのが非常にいいと考えます。併し財源その他の関係補正補正ということにつきまして難色が予想されるのであります。たとえ財源がありましても、やはり関係方面補正予算について折衝する関係がありますので、我々は補正予算でいたしたいというので努力しておりまするが、はつきり補正予算で行くとも申上げられない段階にあるのであります。從いまして災害復旧ということは急務でございますから、資金的に補正予算出したと同じような恰好で一時金を出して、その出した金は昭和二十七年度予算におきまして別途に普通の公共事業費に加えて取ろう、こういう考えでございます。
  16. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関係当局等折衝の問題があるのでなかなかむずかしいことが考えられるんだというお話でありますが、それらの事情はわからないのでもないのですが、併し本当に今度の災害実情をお考えになり、更にそれが至急対策が立てられなければならないものであるとすれば、今お話のような理由で或いは補正補正を出すのはちよつと体裁が惡いとか工合が惡いとかいうようなことで問題を片付けられる問題でもないと思う。更には財源の問題にしましても、本当に政府がその必要性を痛感し、そしてそれを是非実現しなければならないという御熱意がおありになるならば、財源のごときはそうむずかしくなく捻出できるのではないか、今のような態度であれば、そういう点において何ら政府熱意がないのじやないかという感じを受けるのであります。その点について大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 熱意につきましては佐多君に負けないつもりでやつておるわけであります。從いましてできるだけ早く金を出し復旧を急ごうといたしまして、そのためには私は今補正予算云々をするよりも、早く金を出し復旧を図るほうがいいのではないか、こういう考えであります。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、それはこの実をとるという意味において、つなぎ資金を早急に出して頂くことも必要でありますが、同時にこれは名実共にがつちりしたもので出して頂くことが絶対に必要であると思います。特に形式的な補正補正はしないのだというようなことは理由にならないでしようし、台風その他がそういう予測を許さない形において生じたものである、不時災害であるとすれば、それとして措置をしなければならないし、更に財源措置の問題になれば、昨日もちよつと問題に出たのでありますが、大蔵大臣のお示しによれば二十五年度予算剰余金は二百何億、たしか二百五、六十億、と思いますが、その半分は今年度に使えるはずだし、大蔵大臣の御答弁でも使えないことはない、けれども今まで余り使つていなかつたからというので出し澁るような、或いは難色をお示しになるような態度でございますけれども、この点を仮に前例がなくても、出すに値するような不時災害であるのみならず、すでに前例もあることでありますからそういうものも百三十億なら百三十億出すという決意と熱意をお示しになりさえすれば関係当局との折衝のごときはそうむずかしくなく了解が得られるはずじやないか、そういうことをなぜ努力をされないか。
  19. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何も補正予算は絶対に組みませんと言つておるわけではないので、私は補正予算の問題はもつと検討し折衝して見たいと、こう言つておるのであります。私は前年度剰余金を使うということは原則的にいたしたくないということは昨日も申上げた通りであります。それよりも災害額を早く決定いたしまして、そうして資金的にこれを出す。そうして補正予算の問題は来年になりまして一つ組むか組まんかを最後的に決定いたしたいと、こう考えております。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それなら補正予算を更に出すように少くとも通常国会劈頭に出すようにあらゆる努力をするのだというふうに了承をいたしまして、次につなぎ資金の問題に入りますが、つなぎ資金はその名の示す通りに非常に緊急を要するものであるはずであります。今までにお出しになつたのは、今の建設大臣お話では十二億五千万円だけを差当り出したというようなお答えでございますが、すでに予算としても二十五億のものを使えるような形になつておるのならば、その予算を早急に出して頂くことも必要でしようが、若しいろいろな手続上それができないのであれば、それを見合いにとつてつなぎ資金をもう少し早く、もう少し積極的にお出し願えるのじやないか、その時期的な問題を大至急に急ぐべきであるにかかわらず、今までなぜこういうふうに放つたらかされているのか、あの災害が起きて現地会議をおやりになつたときに、すでに建設大臣或いは大蔵大臣は、二十五億出すとか三十億出すとかというようなことを言明しておられたのじやないふと思いますが、それにもかかわらず今に至るまでまだそれが実現していないというのはなぜなのか、更につなぎ資金としては今後どれくらいお出しになるつもりか、今の残つている二十五億の予算と新たに次の補正さるべき予算等々を勘案されて相当多額のものを至急にお出し願つていいのじやないか、殊に年末を控えて罹災者諸君は住宅の問題その他について非常な不便をいたしておりますので、その点を時の問題を至急に御考慮願いたい。それらをば建設大臣はどういうふうにお考えになつているか。
  21. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 私はつなぎ資金は一刻も早く出すべきものだと思いまして努力いたしておるのでございます。数字の問題は只今申しましたように、昨日から今日にかけて盛んに整理しておりまして、もう大体数字のめどがつきましたので、本日午後でも関係閣僚集りまして決定をいたしたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 じやつなぎ資金を早急におきめ願うように希望を申述べて、この問題を一応打切つて次の問題に入ります。  今度のお示し予算で、大蔵大臣はこの予算によつてインフレを防止するのだというふうにお答えになつているのでありますが、政府のほうからお示しなつ資金総合需給計画によりますと、政府資金だけの需給は二百六十二億の引揚げ超過になつているわけでありますが、この点から見る限りは政府財政としてほむしろデフレ財政であると言つていいんじやないか、にもかかわらず非常にインフレであるとか或いは物価騰貴が行われているというのはどういうことに基いていると大蔵臣大臣はお考えになつているのか、殊に大蔵大臣物価対策としては、財政の問題と為替の問題と、金融の問題で措置をすると言つておられるが、その場合に若しそうだとすれば、大蔵大臣は現在の物価騰貴原因を貨幣の側に、資金の側にあるというふうにお考えになつていると思うが、それは、今の政府財政だけを見ればむしろ揚超デフレになつておるにもかかわらず、そういうふうな物価騰貴なりインフレの危険があると言われるのは、どういうところにあると大蔵大臣はお考えになつておるか。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先日来申上げましたように為替関係、殊に金融関係にその原因があると思います。金融関係のその原因たる資金が効率的に動いていないのであります。設備資金のほうへ行き過ぎるのじやないか、こういうようなところがその原因をなしておると考えております。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 為替の問題或いは金融のほうに原因があるのだというお話でございますが、その点でやはり政府がお示しなつ資金需給計画によりますと、年度末をとつてみると、一年間の間に六百八十七億の通貨の増発は止むを得ないということになるという数字をお示しになつておるのでありますが、この点について当初の予算を審議いたしましたときも、一体政府資金総合計画をどういうふうにお考えになつておるかという点が問題になつたときに、政府では、政府財政のほうでは二十二億程度揚超で、而も資金全体としては百二十億或いは百五十億程度増加で済むのだ、それだけに通貨を抑えなければいけないのだということをやかましく述べられたと思う。そのときに我々は、いや、そうでなくて現在のような物価騰貴の趨勢で行き、或いは生産増加を考慮に入れるならば、通貨はもう少し殖えなければならないはずじやないかということをやかましく申述べたのでありますが、そのときに大蔵大臣はそういう必要はないのだということで飼くまでも突つぱつておられましたが、その後数カ月経た今日においては、大蔵大臣通貨発行高六百八十七億の増加を認めなければならないというような状況になつておるのですが、これは一体政府が当初企図された政策を誤つたためにこういう結果になつて、この尻拭いだけはやらなければならないという意味でこういうふうな計画をお立てになつたのか、或いは又当初の見込違つて、今はむしろこれだけ殖やすことが適正だというようなお考えでこういう計画を立てておられるのか、その点の御説明を願いたい。
  25. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 佐多君に申上げますが、建設大臣に対する御質問、もう終りですか。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 はあ。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済は生きものでございまして、本年度の当初予算説明のときに、昨年の十一月頃を土台にして作つた予算であると説明をしたわけです。その後急激なる生産の増強と物価の上昇があつた場合の措置とはおのずから変つて来る場合がございます。我々は予算を作りますときに現状において説明し、そうしてその後のことは見通しで申上げておりまするが、何分にも昨年の十一月頃、昨年の十月、十一月頃日本生産がかくも殖えようとは、実は安本長官を初め大蔵大臣も思つていなかつた、急激に国民の努力生産増強したのと、或いは又外国の物価高の影響をこうむりまして日本物価高を来した、こういうことでありますので、資金計画というものはそういう現状によつて常に変えて行かなければならんのでございます。当初こういう資金計画を作つたから、経済動きが如何にあろうともこれで行かなければならん、こういうふうに釘附けにすべきものじやない、計画経済を唱えられる佐多さんもやはりそのときどきの経済動きによつて資金計画を変えるべきだということに異論はないと思います。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 経済実情に応じて計画を変えなければならないことはおつしやる通りであるのでございますが、その場合に、当初から見越されたことであつて、当初すでにそういうことが問題になつていた、それにもかかわらずその考え方なりその意見を容れないで、そうして成るべくそれに合わすようにいろいろ無理な政策をやられたが、それがうまく行かないでこういうふうな数字の結果になつたんだと私たちは考えるので、そういう点から言えば、むしろ政府のお見通し、お見込の外れたこと、從つて又政策が間違つていたことを意味するじやないか、それを大蔵大臣としてはどういうふうに責任を考えておられるのかという問題をお聞きしたい。ということは、更にそれに関連しまして一体大蔵大臣は六百八十七億の通貨増発をここに計画をしておられますが、これに対しては或る一方からはこういうふうな通貨の増発、或いはそれは更に日本銀行の信用供与の増加の問題にもなるでしよう。市中銀行のオーバー・ローンにもなるでありましようが、そういうようなことをやつておるから、いわゆる信用インフレという形でインフレになるのだという議論も行われております。片一方には、いやそうではなくて、現在の物価騰貴或いは生産増加の上昇を考えるならば、この程度通貨ではなお足りないので、もつとむしろ適正通貨を正確に算出して、その上で正確な計画を立て無理のない政策を遂行して行くべきだというような議論も行われておることは、大蔵大臣よく御承知通りだと思いますが、それらの中にあつて大蔵大臣はこれらの情勢をどう認識し、どういう政策で持つて行こうとしておられるのか、それをもう少し詳しく御説明願いたい。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 佐多君は今までの毎年の資金計画というものを過去数年間御存じだと思います。資金計画通りに行くものじやない、これは社会党内閣の頃資金計画が非常にはやりまして、我にはこういつた資金計画なんというものはその状態その状態の肚積りで行くべきだと私は考えるのであります。国会のほうでどうしても資金計画を出せというので安本のほうも出しておられるようであります。資金計画はそのときどきの経済事情に応じて変動をすると申しますか、彈力性のあるものでなければ私はいけないと思う。一応の資金計画というものは、こういう場合にはこうなるのだ、ああいう場合はこうなるのだといろいろ案があるべきはずなのであります。資金計画というものは一枚の紙に書き並べてこの通り動かせと言つても我々の考えておる自由経済の下におきましてはそんなことはできつこない、たとえ計画経済をやつておられる政党のかたが今のような時代に資金計画を作られても合いつこない。そのことは丁度六百八十億当初の資金計画より殖えておらるこれじや通貨が多過ぎるとか、適正通貨はもつと多くあるべきという議論があると同じように……そこで私はそういういろいろなぎ論を両方頭にいれながら、そのときどきの経済事情に応じて財政をやり金融政策を立てて行きたいと、こう考えておるのでおります。
  30. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは大蔵大臣がもう少しそういう総合的な計画数字的に計画的にはつきり立て、それに応じて運営をして行く、それが狂つた場合にはどういう意味においてそれが狂つたのかということを、仔細にまじめに、最も数字に堪能な大蔵大臣でありますからそれを仔細にまじめに丹念に追及されることによつて、初めて政策が科学的に間違いのないものに一歩々々近付いて行くのである。こいういうように思うにかかわらず、それをおやりにならないから見通しを誤り或いは政策が誤つて来るという結果になつておるのではないか。それが国民をして又通貨が多過ぎるとか或いは少過ぎるとか、帰するところのないような昏迷に陥れる原因であるのじやないか、こういうふうに思うのですが、これは意見になりますので別の機会に譲ります。  もう一つお尋ねしたいのは、政府のほうで二百六十二億の引揚超過をお考えになつておる。こういうふうな財政におけるデフレ的な政策をおとりになるから、これが尻に来て、金融のほうで貸出増加その他をもやらなければならない一つの因子になつておる。そうだとすれば、もう少しむしろ金融機関のオーバー・ローンその他を是正しようとお考えになるならば、政府の無理な引揚超過をば是正するということをお考えになる必要があるのではないか。その点を大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 佐多君と私は根本的にその考えが変つております。この資金計画というものは安本からお出しになつておるが、私はよく見ておりません。そういうものに対して来年の三月がどうなるだろうかくらいな気持は持つておりますが、二百六十億引揚超過にどうしてもなるのだというような気持ではないのです。全般的に考えまして二百六十億の引揚超過になつた場合においては日本銀行の貸出がどうなるか、通貨がどうなるかという一応の目安はあります。そういう資金計画に基いて今後の取り方、出し方を考えて行かなければならない、この通りやらなければならないというものではない。あなたは資金計画はこの通りやるということを前提にしてお考えになつておりますが、私は單なる一つ一の見方、或いは二つの見方、三つの見方がありますが、あなたの言われるのは一つの見方でありまして、私はそれには捉われておりません。時々刻々の情勢に応じて財政金融政策をやつて行きたいと思います。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはおかしいので、この収支計画、総合資金需給計画というような問題、見通しの問題は、單に経済安定本部の数字であるのみならず、大蔵省のほうでも形式は若干違いますけれども、二百六十二億揚超になるのだという数字は、ちやんと大蔵省のほうからもお出しになつておる。而も我々がインベントリー・フアイナンスその他の問題をいろいろ論議する、或いは見返資金の問題、更には資金運用部資金の運用の問題いろいろ論議すると、それは資金の総合的の需給の見合からこういう数字になつているのだから、これを殖やすということはできないのだというふうに、そういう場合にはその他資金需給の総合的な見通しなりバランスの問題を引合いに出し説明をしておられるにかかわらず、都合が惡くなればそれは与り知らんのだと言うに至つては、余りにも無責任であると私たちは思わざるを得ないのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 予算案とは違います。予算案は閣議で決定して出しておることです。併し資金計画というのは先ほど申上げておりますようにいろいろな計画が立つのであります。一つの計画として出していると思います。從いまして大蔵省としては資金計画には関知せずというところまで私は言つたのでありますが、併し從来の例があるから一応出したらと言うから、それなら出して見たらどうか、私はこれは殆んど……権威があるのではございません。そこで年末の通貨がどれくらいになつておりますか、それが相当動くのじやないか、一つの見通しとしてはそう言つております。併しその資金計画を立てて徐々にやつている間に変つて参ります。例えば資金計画の元をなします今月の租税収入は何ぼになるか、このことはう二十億か五十億かすぐ違うことがあるのでございます。そういうことでございまするから、一応の、一つの見方として出しもしましよう。又第二段の見方としても又それと変つた資金計画もできるのであります。そういう意味で一つお考え願いたいと思います。そこでたまたまその通りに行つた政府の引揚超過が、今年度二百六十億という数字が出ておるかどうか私よく知りませんが、そうした場合に日本銀行の金融のやり方は、あり方はどうであるか、こういうふうになるのじやないだろうかというぐらいのつもりであります。予算の根拠にはなつておりません。
  34. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもおかしいのです。が、その点はもう少し別な問題からお答え願いたいと思いますが、先ほど申しましたように、政府のほうでは、特に大蔵大臣財政のほうからもインフレの今のところは危険はないのだというふうに大体お考えだろうと思うのです。過去の実績或いは今申上げた収支の関係からそういうふうにお考えになつておるんだろうと思いますが、そうすると次の問題は為替の問題になると思うのですが、政府予算説明でお出しなつた三百億の外為のインベントリイの問題を拾つて参りますと、その大きな原因の一つは国際収支の見通しが違つたことと、もう一つは日銀の外貨貸付の残高の見込が違つたこと、この二点にあると思うのですが、その国際収支の問で題ありますが、国際収支がしばしば御説明になるように一億七千四百万ドルの受取超過になつておる、そのために円資金の不足が出て来る、こういうようなお話でございますが、この原因を成るほど或いは輸出が予想以上にふえたとか、或いは特需が予想以上にふえた等々の問題になるのでありますが、若しこのようなふうに受取超過が相当あつて而もそれがあるために却つて資金の不足を来す、こういうような状況であり、それが日本インフレの大きな一つの原因をなしておるということになるならば、もう少し受取超過を少くすると言いますか、ということはもう少し輸入を積極的に急ぐというようなことをおやりになることのほうが必要なんじやないか。それは各方面で言われておりますようにすでに在庫としても相当減少して来ておる、外貨は終りになる、而も今後の国際情勢を見れば物価は少くとも若干ずつではあるが上つて行くだろう。そういうふうなことを考えれば必要な原料資材というものはこの際やはり積極的に買入れるということをおやりになることが、このドル・インフレといいますか外貨インフレを防ぐ一つの対策になるんじやないか、それをお考えになつておるかどうか。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 見込違いだとおつしやいますが、日本の輸出貿易がどんどんふえて行ぐような見込違いは有難い見込違いだと思つております。而してその有難い見込違いのために外為会計へ繰入れることにいたしておるのであります。後段のお話のできるだけ輸入を急ぐということは尤もなお話でございまして、我々も輸出促進と同様に輸入の増大を計画いたして、できるだけ今の外為会計へ繰入れることの少いように、而も又ドルがたくさん溜るように、こういうことを考えております。
  36. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一つの問題となるのは、先ほどの日銀外貨貸付の残高の減少見込みによる円不足の問題でありますが、これはここの説明にもありますように、貸付制度をお変えになつたために非常に大きな円資金の需要が出て来る、こういろふうな政策の結果としてこういう予想しないような大きな円不足を来し、そのために一般会計から繰入れるというような考え方なりやり方は非常に歓迎しないやり方じやないか。もう少しこの点をお考えになつて、こういうふうに急遽こういうふうな大きな円不足を生ずるような変更なり何なりはやらないで、もう少しこれらの問題を計画的に、それから順次直して行くというようなことで円の収支をお考えになるべきなんじやないか。その点をお考えにならないでなぜ簡單にこういうものを変え、而もその円不定による資金を一般会計から三百億も簡單に出してしまうというような政策をおやりになるのか。若しそういうことをおやりになるならば輸入に対する努力が足りない、或いはただ單に外貨の制度をばきれいにするために、その政策から生じて来ているところの犠牲といいますか、円不足はすべてこれを国民の血税を以てあがなうというように金融の、或いは為替の制度のためにそういうように非常に大事な資金を直ぐそつちに廻してしまう、そういうイージーな考え方が許されていないのかどうか、その点を大蔵大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今年の四月からドルによる保証を一〇〇%から五〇%にいたしましたことは一つの改善でございます。で私は他の機会に申しておりますように、今の外国為替特別会計の制度は余り感心したものでないという考えを以ちまして、今後におきまする為替関係につきましてはできるだけ市中銀行をして自分の計算において外国為替取引をやらすように持つて行こうといたしているのであります。こういう関係から今年の四月からああいうふうに一〇〇%を五〇%にしたのは私はだんだん移り変る一つの方法としてやつたのでございまして、外国為替を正常な姿に持つて行く一つのステップとしてとつたのであります。そのために一般会計から繰入れることが多くなつた、これは今後輸入を促進いたしまして、今年度におきましては御承知通り当初五百億と、今度国際通貨基金でドルを持ちますのでその二百億を加えますと千億円のあれになつているのでございますが、来年度におきましてはこうまでは行かんだろうと考えております。要は為替金融というものを一般金融機関に移してしまう、こういう方針で徐々に変えて行く、そうして片方では輸入をできるだけ促進しよう。御承知通り昨年の十一月、十二月から今年の三、四月までに相当思い切つて輸入いたしまして、その輸入もたれがしている場合もあるのであります。業者のほうではこの一—三月に非常に輸入し過ぎて金融で困つている。こういうことで非常に今輸入が振いませんが、政府といたしましては極力輸入を促進するように指導いたしております。
  38. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 輸入の促進の問題でございますが、今ここでドルが予想外に多くなつたのは、さつきおつしやつたように輸出が相当ふえたこともありますが、最も大きな原因はやはり特需なり貿易外のドル収入が相当ふえたということであると思いますが、そうするとこの特需のために、或いに貿易外の受取のためにはそれに応じてそれだけの資材、原材料その他のものが消費されていると思うんですが從つてそれらを補充し、更にそれよりも余計なものを輸入するような積極的な努力がなされなければ、折角ドルを稼いでいながらドルを稼ぐために消費したものの補充がつかないのみならず、ドルだけが溜つてさつき言つたようなドル、インフレの結果になつてしまつているというようなことになつていると思いますが、政府は成るほど十三億の輸入から十八億の輸入に増しておられるのでそれらの点もお考えなつたかと思いますが、もつと特殊的ら特需なり貿易外のドルを受取るために消費したそれらの消費物資の補填というようなことを具体的に考えて、それによつて特需があるにかかわらず、民需なり或いは日本経済復興のための障害は起きていないのだというようなことを、具体的に積極的にやつておられるのかどうか。その点をこれは安本長官にお尋ねしたいと思います。
  39. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 甚だ失礼ですがちよつとほかのものを読んでおりまして御質問に当つてないかと思いますが、そのときはもう一度お答えいたします。今のお尋ねは特需が相当に出るのでその補いをつけるために、輸入についてどういう処置をとつておるかということのお尋ねであつたと思います。これにつきましては、政府におきましてもこの十—十二の外貨予算の編成の場合におきましても、当然それらに対する原材料の不足に対しましては大幅に今度も外貨予算を組んでおりますので、詳しい数字はちよつと確実に覚えておりませんが大体五億五千万ドルぐらいに当るものを輸入計画を立て、それぞれそれらに対する処置を進めておるような次第でありまして、この前七—九の予算はすこし少うございましたけれども十—十二におきましては、約五億五、六千万ドルの外貨を組んで、それぞれ原材料の輸入に努力いたしておる次第でございます。
  40. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外為のために先ほど大蔵大臣お話のように当初五百億のインベントリーを考えていて更に又三百億、合計して八百億というような非常に多額なインベントリーをやる結果になるのであつて、これが蔵相の繰返し述べておられる、非常に財源は乏しいので財源見当がつかないから非常に緊切な支出でもできないのだということを言つておられる。そういう状態に置かれている日本財政であるにかかわらず、ただ外為のためにのみ八百億というような巨額なものをインベントリーとして割いておられるので、これの非常に不当であるということを私たちは考えるのですが、これは早急に来年度あたりからは全額消してしまうというふうな努力をされるのかどうか。その点を詳しく、来年度はどういうふうにお考えになつておるか、これは更に来年度の国際収支その他をどうお考えになりておるかということとも関連いたすと思いますが、それを御説明願いたい。  それからもう一つは先ほどから言つておりますように、非常に資金は乏しいにもかかわらず外為のごときには予備として百十六億に上る資金をとつておられるやこういうふうにこの辺には非常なゆとりを持たしておりながら、例えば給与ベースを上げるための百二十何億というようなものは無慈悲に切つてしまうというような態度をとつておられるのだが、その辺の矛盾をどういうふうにお考えになつており或いは御説明になるのか。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 来年度の外為への繰入の数字は、来年度の国際収支の検討を只今いたしておりますのでどれだけ繰入れになるかお答えするような結論に到達いたしておりません。併し政府は飽くまでインフレを防止するというような建前をとつております関係上又今後もとりますので、来年度或る程度の外為への繰入は予想しなければならんと思います。而して今年度補正予算で百十六億円でしたか予備費を取つておるのでありますが、当初予算におきましても多分七十億程度予備費を取つてつたのであります。併しお話のように非常に輸出入がふえ殊に輸出がふえまして、いい見込違いをしたためにこの七十億の予備金でも実は足りなくて五百億円の借入金を日本銀行からいたしまして、なお足らずにかなり無理な非常手段をとつたことに鑑みまして、私は今後もいい意味見込違いが起つた場合のやりくりといたしまして、百十六億円の予備費は当然取つておかなきやならんと考えた次第であります。
  42. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私が聞きたいのは、非常にいい見込違いをしていてドルをうんと稼いでいるにかかわらず、そのドルが多いために円資金の不足が生じてそれがインフレの危険をもたらすというような矛盾したことになつているので、この点については特に我々が輸出を増進する当面の問題は、インフレを招来するために輸出を促進しているのじやなくて逆にむしろインフレを防止するために、我々は我々の生活を守り日本経済を復興するために輸出を増進しているにかかわらず、その結果がドル、インフレというようなば形になつてむしろインフレの大きな原因になりつつあるということは、どうしても我々が納得できない問題であり、大きく政策の矛盾なり破綻がここに現われているのじやないか、こういうふうに思うのですが、大蔵大臣はそれをどうお考えになりますか。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御心配のような点がありますので輸出入ともに増進させ、そうして輸出インフレにならないように外為会計を置いてやつておるのであります。何千億円の収支がありますので百億円程度の予備金的のものは当然な数字と私は考えております。
  44. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、それは給与ベースの百二十何億その他が賄われている場合には、何千億のうちの百何億だからといつて涼しい顔をしておれると思うのでありますが、そういうことを何ら手当してないでそういうものをおとりになつておるということに我々は非常な不満を持つておるわけですが、この点は意見になりますから別にいたします。
  45. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 佐多君にちよつと御注意申上げますが、もうあと十分です。
  46. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじや一つ食管会計についてお尋ねしたいのですが、食管会計でも同じようにインベントリーとして百億一般会計から出せというお話でございますが、このときに一体国内の米穀の買上高は、当初の計画補正予算においてどういうふうにお変えになつておるか。それから輸入食糧はどういうふうにお変えになつておるか、その点を先ず。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外為会計の分でも実は数千億と申しましたが出入りを申しますと一兆何千億でございます。で百億というのは二、三日分の取引の額に当るのでございます。決して多くはございません。それから食管会計のほうは私の一部所管でございますが、農林大臣のほうから答えて頂きます。
  48. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。食糧特別会計にインベントリー百億を入れましたのは、御承知のように米麦の生産者価格を引上げまして、それと相関連しまして消費者価格の一八でございますかこれだけ上げたのでございますが、これは本年末までにおきましては現金収入のバランスがとれないのであります。来年の七月頃までに現在の政府手持食糧を売渡すことによつて現金バランスがとれますので、その間の差額百億がインベントリーとして入つた次第でございます。  それからなおお尋ねになりました外国食糧がどの程度つて来ておるか、從来の計画とどう違つているかということでありますが、米はタイ、ビルマ、エジプト等が主たる給源国でございまして、從来九十万トンを計画しておりましたが、今度の補正では更に少し殖やしまして、百五万トン程度には殖やさなければならんのではないかと考えております。この価格は從来予算価格で百四十ドル程度のところを百五十七ドルとしてこれは算定している次第であります。それから小麦についてはアメリカ、オーストラリア、カナダが主たる給源国でございまして、これは從来百七十万トンのところ今度は百九十万トンに殖やしておる次第であります。この価格は從来九十ドルのところを九十五ドルとして算定いたしてあります。それから大麦はアメリカ、オーストラリア、イラク、こういうところが主たるところでありまして、從来六十万トンのところを九十万トンに殖やしておるわけであります。価格につきましては七十ドルが八十九ドル程度に算定しておる次第でございます。合計いたしまして從来三百二十万トンの計画のところ三百八十五万トンになつておる次第でございます。なお補給金につきましては、二百二十五億のところ二百八十億に増加いたしたのであります。これが大体のところであります。
  49. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 三百二十万トン当初予定しておつたのが三百八十五万トンにお変えになつたということは、この間の御説明によりますと、主食の統制を撤廃することが考えられる、從つて四月一日以降に相当な政府の手持の食糧を必要とするので三百八十五万トンに殖やしたのだというお話でありましたが、そうだとすると、あれが少くとも十月までは延期されたわけでありますから、三百二十万トンを三百八十五万トンに殖やすという必要がなくなつたし、当初の計画にお戻しになればいいと思いますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  50. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。この三百二十万トンが三百八十五万トン程度になりました多くの原因は、実は本年度の作柄が最初予定したよりは非常に惡くなつておるのであります。最初我々は平年作によりまして六千五百万石程度の収穫があるものと、こういうふうな算定でおつたのでありますが、先般の予想収穫高においては六千六十六万石になつております。更に現地の知事各位からの要請では、これでも少し高く評価しておるのだ、こういうことがありますが、いずれにしても約二百万石以上の減収になるものと算定しておるのであります。それからもう一つは人口増、これが約百二十万乃至百三十万の人口増があるのでございます。なお又常日頃各方面から要請されておるのは、食糧については或る程度まで余裕を持つべきだ、こういう強い要請がありますので、我々としましては三百二十万トンを三百八十五万トン程度にすることが最も安定した食糧関係になるのではないか、かように考えておる次第でありまして、これは特に統制を撤廃するという前提だけでこういうふうに多くなつたのではなくして、主たる原因はやはり本年の減収と、更には人口増ということが主たる原因でございます。
  51. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常に説明違つて来るので、少くも主食統制の問題が未決の頃には、三百二十万トンを何も変える必要はないのじやないかと、我々が言つたときに、いやそうではなくて、主食の統制の撤廃等々を見込まなければならないから三百八十五万トンに殖やしたのだということで、専らそういうふうに説明をしておられた。ところが今それが駄目だということがきまると、今度は理由はそれであつたのじやなくてほかにあるのだ、こういうふうに理由をすり違えておる。そうとすればこの輸入計画その他は全くいい加減なでたらめであつて、ただあとから説明を便宜付けておられるに過ぎないということになるのじやないか、その点が私納得できない第一の点であります。  もう一つは、それでは三百八十五万トンにして、六十五万トンお殖やしになつたとすれば、外貨の手当をどれくらいこれに充てておられるのか、更には船着の問題で現実にこれが入つて来るとお考えになるのかどうか。どうも我々が外貨その他のお話を聞いたときには、この外貨の手当はできておらない。それから輸送の問題をいろいろ調べて見ますと、どうも四月までにはこれは入る予定は全然ない、三百二十万トンすら完全に入つて来るかどうかも今のところは見通しが付かんというような状態じやないかと思うのですが、そうなればこれは当然にお削りになつて從つてここから出て来るところの五十五億の増加された価格差補給金も、或いは又これを買入れるための円資金も本必要になると思いますので、それを一般会計のほうに返すということが正確な会計の仕方じやないかと思うのでありますが、農林大臣はどいいうふうにお考えになりますか。
  52. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 外貨が足らないではないかということでありまするが、これは我々は大蔵大臣安本長官共に出し得るという見当の下にやつておりますので、外貨の割当の状況については安本長官からお答えがあるそうであります。  なお又六十五万トン程度増加する場合において入手が非常に困難ではないかというようなお話でありまするが、今まで我々のほうで供給国と大体折衝、大体見通しを持つておるところにおいてはさように困難ではない、問題は外貨さえあれば大体できる。船の関係も最近は割合に順調になつておりますので、佐多さんが御心配になるようなさような心配はないものと、こう思つておる次第であります。
  53. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ちよつとその前に私からお答えしておきたいことは、特別に統制撤廃にからんで輸入の数量を増加したかというようなお尋ねがあつたようでありまするが、今日は御承知のように過去三カ年くらいの間におきまして、最近は常に年度当初の持越し数量が、三百二十万トンの輸入をいたしておりまして大体千九百万石から二千万石近くの持越し食糧を持つておるわけであります。このことはやはり今後においても必要でありましようと思つておりますので、そこで今度の状態におきまして、大体平年作六千二、三百万石を目当にして三百二十万トンくらいあればいいわけでありましたが、先ほど農林大臣からお話のように非常に減収いたして、最近の統計によりますと、六千六十万石というようなことになつておりますので、一々そういうことも睨み合せまして輸入数量が殖えておるわけであります。この点は御了承を頂きたいと思います。  それから増加した部分について外貨資金があるかということでありまするが、これは大体三百二十万トン基本の数字から見ましていろいろ価格の上りましたものを見ましても、増加輸入数量は大体七、八千ドルと思つております。このくらいの増加につきましては、これは外貨資金上差支えないと私どもは考えております。
  54. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その外貨の手当ができなかつたから、或いは船着きの見込みができなかつたから統制撤廃は了承されなかつた、了解が得られなかつたという筋のものであつたのじやないのですか。
  55. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これはいろいろ御想像でありまするが、私どもはそう考えておりませんので、やはり年度の丁度途中でございますので、食糧の年度といたしまして四月が……、そういうところからもう少し慎重に一応、考えるということにいたしただけであります。
  56. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、八千万ドル程度のものが外貨が要るというお話ですが、その八千万ドル程度の外貨が要るとすれば、国際収支の中の支出の分に八千万ドルを更に追加計上しなければならんということになるので、それじやその点から外為関係のほうでそれだけの外貨が少くなり、從つて資金が要らなくなるということになる勘定だと思いますが、その点は勘定は合してあるかどうか。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 勘定は合しております。御承知通り第三・四半一期は五、六億ドルのあれでございまして、六、七千万ドル、七千万ドル前後の分はほかのものと調整いたしまして、外貨予算を合せて考えております。
  58. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは併し今のお話では、十八億ドルに輸入をおきめになつて、これでもまだ足りないと思うので更にもう少し積極的に殖やす努力をするというふうにお答えになつている。それに米の輸入が殖えるとなれば、この十八億ドルの中で差し繰りができる問題ではなくて、それに八千万ドルをプラスなさつて、更に又それ以外の輸入促進策をおやりになるということにしかならないのじやないですか。そんなに得手勝手に差し繰りするというふうに言われたんじや困るのです。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは輸出をほつといて輸入だけ殖やすというわけじやございません。輸出も殖やし、輸入も殖やして而し、輸入の十八億ドルのうちに外米、外麦を急に殖やさなければならんのでありますから、或る程度外貨予算のうちでやりくりして調整をすることにいたしております。それはできると考えております。
  60. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、今お話のは、一億七千四百万ドルも受取超過があつて、外貨にはちやんと手持があるのだから、それを割けばいいのだから外貨の手当はできるのだ、それが了承されたかどうかは問題がありますけれども、これは問わないとして、そこから割くのだというお話つたと思う。それならば十八億ドルに追加なさつて從つて資金はそれだけ要らないことになるから、そから円資金出してこれで、何億になりますか、財源が出て来るという勘定になると思うのですが、そこらをごまかさないように一つ正確にお答え願いたい。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ごまかしてはおりません。一応の輸出入の計画を付けて、米が急に殖えたからその分だけ豊富に出すというのじやないのでほかと調整いたしまして外貨予算を作る、こういうことでございます。
  62. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 関連して。私たちは、いずれの国におきましても、主食の輸入が殖えますと工業原料の輸入の余地が少くなりますので、喜ばしい現象でないと思うておりましたけれども、佐多さんの御質問で、どうも輸出が殖えまして、ドル・インフレのために国内物価が上つて生活難を来たすほどの事情なら、むしろこの際主食の輸入を殖やしてもらつたほうがいいと思います。それは私たちの同性の婦人の仲間では、今米に換算いたしまして二合七勺ではやはり闇米も相当買つておりますので、生活費は膨脹いたしておりますので、輸入主食に対します価格差補給金はむしろ撤廃してもらつて、幾らか高くなつてもいいから配給の分量をふやしてもらいたい、そういたしますと、大分主食のほうはよほど軽減されるという声が強いのでございますけれども、この問題どうでございますか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 主食の輸入の多いことは財政的に或いは日本経済から言つたら好ましくはないのでございまするが、併しお腹が空いては働けませんから、どうしても輸入をしなければなりません。そこで輸入を少くするということは、やはり国内の食糧を増産することが第一でございます。それに全力を使いまするが、足りないところはどうしても輸入しなければならないのであります。從いまして本年は農林大臣お答えなつたように、例年よりも予想以上の減収でございますので、国民の食糧が足りなくなつてはいかんからというので、緊急輸入で三百八十五万トンを計画いたしておるわけでございます。そうすれば持越も相当確保でき、二合七勺の配給は十分できるのであります。
  64. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 増配にはなりませんわね、それではやはり。
  65. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは大蔵大臣からか、特調長官からですか、この間問題になりました横田の基地の事件でございますが、これでいろいろ論議がありましたが、特に横田基地の所属の進駐軍に直接雇われておる労働者、消防手が現場に急行して消火中、而もそれは進駐軍の命令によつて強制的に出されて行つて消火中に、列の飛行機搭載の爆彈が破裂して作業中に六名も死んだ、三名が重傷しておる、四十数名の負傷者を出しているというようなことになつておるそうでありますが、その附近の民家に対する補償等々の問題もありますが、この直接の進駐軍要員労働者に対しては日本政府自身としても特別な配慮をしておられるかどうか、而もそれに対しては早急に、今までは何かうやむやに問題が片付けられていたというふうに私たちは聞き及んでおるのですが、どういうふうに早急に手当せられようとしているのか、この点……。
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般岩間委員の御質問に答えたのでありまするが、誠にお気の毒な状態でありますので、政府はできるだけの見舞金を出しますことは勿論でございますが、進駐軍に対しましても相当以上の一つ見舞を出してもらうように話を進めております。
  67. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 佐多君を以ちまして各党の代表質問は終りました。これから一般質問に移りますが委員長理事の打合会の決定に基きまして、通告順によりまして順次質疑を許します。念のために申上げておきますが、大体一人の持時間は一時間ということになつておりますので、御了承の上発言して頂きたいと思います。
  68. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 成るべく重複を避けてお尋ねしたいと思いますが、或いは誤まつて重複いたす場合は、もう一度念を押したいという意味に御了解を願いたいと思います。  先ず池田大蔵大臣にお伺いいたしたいことは、大蔵大臣は両條約の批准発効と申しますか、の時期はいつ頃と推定されておるのでありますか。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) なかなかむずかしい問題で、外務大臣にお聞き下すつたがいいと思いまするが、私は成るべく早く両條約の効力が発生することを望んでおります。何月とは申上げる材料を持つておりません。
  70. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私がお尋ねしたわけは、外務大臣にお聞きする意味でなくして、大蔵大臣にお聞きした意味は、今回の補正予算は或いは十八ヶ月予算と解釈されるし、又政府説明においても講和調印後の批准発効に処してこれに臨んで思いを深くし、幅を広くして今回の予算を編成したというゆえんを説いております。從つて今回の補正予算の性格を先ず判断し、その目途とするところをお質しするについては、やはり講和批准発効というものに目安を大蔵大臣はどのように置いて、そうしてその見解の下に補正予算を組んだのかどうかということをお尋ねしたいのであります。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 相当早い機会と思つております。それは数多い十四ヶ国のうち七ヶ国でございますので、その七ヶ国の国会の開催時期等を見まして、或いは一、二月にはできるのじやないかという希望を持つておるわけであります。
  72. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 大蔵大臣は相当早い、或いは一、二月頃に発効するのではないかということでありますが、今回の補正予算を編成されるについては、発効が一、二月だと言われておる。そうすると今回の、特に安保條約の中核をなす行政協定というものは、議会における政府当局の説明は、まだ具体的な交渉には入つておらないのだ、從つて行政協定の結果から生ずる経済関係財政関係については或いは予測しない問題が起つて来るかもわからん、ところが政府は今回相当のいろいろの含みでリザーヴ資金的なものの温存、予備措置をとつておることが窺われるのであります。そこでこの行政協定というものの全然全貌と見通しがわからんのであるが、一方には極めて慎重にこういうリザーヴ資金的な措置をとつておる、こういつた問題は行政協定の内容、見通しをどのように見ておるか、そしてこれらの経済委員会と申しますか、日米両委員会の中にでき上ると予想される経済委員会の構成及びこれらの見通し等が考えられて組んだのではないか、かように思つておるのですが、この辺は如何ですか。
  73. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 防衛協定の内容を考え補正予算は私組んでおりません。平和條約がいつ成立するかということが主たる問題でございます。
  74. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 防衛協定の問題を考慮して予算は組んでおらないと言つておるのでありますが、これは今回の警察予備隊の予算措置におきましても、これは言葉は如何ように説明されても、いわゆる防衛協定の予想される防衛力の強化の一端として現われておることがすでに予算措置として現われておる。而もいろいろ私たちが計算すると二千億以上に及ぶリザーヴ的な予算措置、こうしたものが将来の点に多大に含まれておることは否むことができない事実であります。であるから、もとより平和條約を立体としての構造にあるということはわかりますが、併せてこうした方面にも思いが深く及ばれておるということは私否定はできないと思いますが、重ねてお尋ねいたします。
  75. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今お答えいたした通りで、防衛協定の内容を考えて組んだ予算ではございません。
  76. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それではその点はもう重ねて申しませんが、防衛協定の内容は考えておらないと言われるのでありますが、行政協定の結果においては…それでは今回組まれた予算というものは、例えば大臣の御見解のごとく、一、二月だというならばこの予算案が仮に通過して、その実効を現わしておるのは年度末を含んでのことであります。そこで防衛協定が来年度予算において現われることが多分にあるであろうということはわかりますが、併しながら防衛協定を含んでおればこそ、こうしたたくさんの予備温存的措置をとつておるのでありますから、行政協定のうちの経済関係に、或いは財政関係に属する問題については、およそ大臣においても想像がつき、或いは今日まで司令部折衝した経緯があることと私は思うのであります。だからこそいろいろ含まれたことがたくさんあるのでありますが、この辺をもう一つ明らかにして頂きたい。
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお話申上げております通りに、防衛協定の内容は私は全然知つておりませんし、又防衛協定の内容につきまして話合いがあつたということも聞いておりません。從いまして今回の予算はそういうことを考えずに予算を編成いたしたのであります。
  78. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは次にお尋ねいたしますが、講和條約が批准発効後における日本の自主性と申しますか、政治、経済を通ずる自主性というものは確立されるであろうということは、これは政府当局の声明せるところであるし、又そうなくてはならんはずであります。そこで今回の補正予算というものが決定いたしました後に、いわゆる日本の政治、経済の自主性というものがここに又新たに生れて来る。そこで大蔵大臣にお尋ねいたしたいことは、現在の補正予算が実際に活用されるまでは、講和條約批准後の、たとえ一カ月でも二カ月でも遂行されるという場合が起るのでありますが、從つて今回の補正予算は、日本の自立をも含んだ政治、経済を通じての自主性を獲得した後の予算とも解釈される、こういつた問題に対する司令部のいろいろの了解を得なければならんという問題については、多少国民としては疑義を持つておるのでありますが、こうしたことについて大臣はどうお考えになりますか。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはつきりいたしませんが、只今は占領下で、予算を編成いたしましたらそれにつきまして向うの承認を得ることになつておるのであります。從いまして形式的には、形式的という言葉はどうかと思いますが、今までと補正予算編成については変りはございません。
  80. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは明年度予算を今折衝中であるようでありますが、明年度予算というものは、これが発効するのはもとより来年の四月一日から。從つて日本の自主独立が実現されてからあとに一〇〇%この予算というものが実際に運用される、こういうことになるのでありますが、現在は占領治下であるけれども、現に両條約を批准……調印、議会で承認をいたした批准後の現在の段階において、なお司令部とそういう来年度予算について折衝しなければならんということにつきましては、政府日本の政治、経済の自主性があるというものとは多少そこに問題が生ずるのではないか。解釈の相違があるのではないかと、こう思いますが、大臣のお考えはどうですか。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今のところ解釈の相違はないと思います。
  82. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 明年度日本は完全に自主独立して、自立日本となつておるのであります。これを、独立日本になつてからのあらゆる国の予算を遂行運営するに当つては、現在は占領軍治下でありますから、或いは大臣の言われる通り占領軍と意見を交換して決定を見るということは、仮に解釈されましても、実際問題としては、自立後の日本予算運営でありまするから、これは從来の連合軍との話合いと違つた、つまり軽い意味での参考意見を求めるくらいな程度であつて、やはり来年度予算の編成の自主性というものは、日本政府が持たなければならんと考えまするが、如何でしよう。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御意見のほどは承わつておきますが、今の建前としましては、占領せられておりまするので、それが占領後に行われる予算にいたしましても、その予算につきましては今まで通りと私は考えております。ただ先方がどう出て来るかはわかりません。
  84. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは若し明年度予算が国に提案されて、例えば二月に講和條約が批准されて発効される。そうすると二月以降は完全なる、日本は独立国家となると解釈される二月以降におきまして、まだ予算というものが通過しておらない、議会で論議されて審議中であるといつた場合については、その日本の国が独立後の予算に対する国会の態度、現在であれば司令部にOKを得なければ修正もできなければ、実はできないんだが、二月以降においては自由な立場で自主日本予算審議ができると思いますが、この解釈は如何でしよう。
  85. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは国会のあなたがたの御判断にお任せするよりほかにしようがございません。私は、占領治下におきまして予算の承認を得て国会に出すのであります。それは修正のためのOKその他につきましては、国会のほうでお考え願いたいと思います。
  86. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 いや、私がお尋ねしているのは、占領治下を離れた自当本になつた段階後における予算審議におきます考え方はお説の通り国会の自主にあると思いますが、政府のお考えも同様でありますかどうか、お伺いしたい。
  87. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会に御審議を願いましたら、それは占領治下におきましても同様国会の御判断によるよりほかにないのであります。
  88. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 ちよつとそれでは話が又戻りますが、第二次補正予算というものは、昨日も私お尋ねしたのですが、念のためにもう一度承わつておきたいことは、一体第二次補正予算というものは組むおつもりですか、組まないつもりですか。
  89. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 組む考え只今検討いたしておるということは、先ほど佐多委員に答弁した通りでございます。併し占領治下でございますから、組みましてもその承認を得なければならんことになつておることは御承知通りであります。
  90. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 政府が第二補正予算を組もうという態度はわかりました。但し占領治下であつて向う様がどう出るか、それはわからんということは、それは言い方としては言えるかもわからんが、政府はそれでは第二補正予算を組もうという主たる目的につきましての問題点を挙げて頂きたい。それから現在の補正予算に組まれておらない分で、この点をこう考えたい、そういう政府考え方を一応承わつ七おきたい。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今ルース台風を第一義的に考えております。
  92. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 現在の補正予算は、地方平衡交付金の増額、社会保險費の補助の増額でありますとか、そのほかベース・アップ問題など、重要な問題が今回の補正予算政府の十分なる施策が現われておらない。從つてこうしたものが現在の補正予算で具現されなかつた場合には、当然補正予算において適切な措置を講じなければならんことは、ルース台風復旧費と並んで重要な問題であろうと思う。ところが今大蔵大臣は、これらの問題は組まない、ルース台風だけの問題だと言われておりまするが、現在最も重要問題となつておるこうした問題、殊に平衡交付金の問題では、両院で決議をされて、院議によつて決定されておる問題である。而もこれは政府与党も率先して賛成をいたしておる。この事実に対して大蔵大臣はどういうお考えを持つておりますか。
  93. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 平衡交付金の増額を組まぬとは言つておりません。第一義的にルース台風考えていると言つておるのであります。併し平衡交付金につきましては本会議で答弁した通りであります。
  94. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 まあ第一義的にルース台風ということはわかつたが、そのほかに考える点は、一応私は大蔵大臣としては、第二次補正予算を組むならばこういうことを考えているということはこの際明言されてもいいことだろうと思うのですが、何も秘密にすることもなければ何にもない。それは大蔵大臣の全国民に対する、或いは財政金融措置に対する賢明なる措置だと思うのでありますが、その他のことをも併せて一つ御考慮の点を御披瀝願いたい。
  95. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは本会議で披瀝した通りでございまして、両院の院議がございましたので、その院議を尊重して中央地方財政需要を検討勘案して善処すること、こう言つているのであります。而して結論が出ておりませんから、この問題については組むとも組まないとも言えないのが正直な言い方だと思います。
  96. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは若し第二次補正予算が向う様の御承認が得られないと組めないから、占領治下だから組めないといつた場合には二つの考え方があると思う。それは講和批准発効後、例えば二月にお説のように発効されるだろうという推定であるならば、二月以降、通常国会のまだ期日は一カ月余りもあるのでありまして、そういつた場合においても是非組もうという熱意があるのかどうか。どうしても向うが現在の段階においていけないと言うのなら、もうそれは、第二次補正予算は組めないから、こうした緊急な、重要な措置に対しては、どういう措置をとろうと考えられるのであるか、この点を承つておきたい。
  97. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は第二次補正予算が組めても組めなくても、ルース台風は放つておけませんので、財政措置をとろうといたしておるのであります。而して本臨時国会におきましては、向うさんがどう言いましようとも、私は組むだけの自信がございません。併し通常国会が始まりますまでに第二次補正予算を組むか組まないかをきめたいと思つております。而してそのときに組めなかつた場合は、平和條約が成立したときにどうするかということは、そのときの状況によつて考えたいと思います。
  98. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 まあこれはこの辺のところで一つあれして、終戰処理費は日本が講和條約批准後は半分くらいに減るだろうと大臣は推定されておつたのが、今回においても決してそのようなわけでなく、いろいろの補強的な措置が講ぜられておりまするが、一体この日本の防衛費として日本が将来負担する大臣のお見通し金額は初年度において、或いはどういう構造で日本の自主防衛費というものが、これは警察予備隊の費用なども含めて考えておられるのか承わつておきたい。
  99. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 終戰処理費は来庫度半分ではございません。今年の七月からこれは半分を向うが負担することになつておるのでございます。経過的の措置その他がありますので、実際今年度といたしましてはそういうふうにならなかつただけでございます。それから来年度において防衛費がどうなるか、警察予備隊費がどうなるかということは、行政協定によりましてアメリカの駐屯軍がどういうふうなあり方になるかということも関連する問題でございます。今私は日本の防衛費はどれだけになるかという見当は付けておりません。
  100. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 そうすると防衛協定がどうなるかによつてじやないとわからんと言われるのなら、明年度予算というものは、防衛協定が成立して大よそ明年度の防衛費或いは外債、或いはいろいろの債務負担の整理の問題等と睨合せて予算を編成すべきではないかと思うのです。防衛協定ができないと何もかもわからんというような事態にあるのに、それ以前に予算編成をせなければならんということは又補正予算が必要だ、のみならずここに非常な困難な問題も生れて来るのではないかと思いますが、防衛協定が決定してから後に明年度予算を編成されたら如何でしよう、お伺いします。
  101. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) やはり財政法上総予算を出すことになつておりますので、その予算の決定までには大体の輪郭はつけて行けると思います。で、私は、平和関係の費用を大体どのくらい見ることになるだろうという予想は一応は自分の腹積りは持つておりまするが、その全体のうちの平和関係の分もまだはつきりいたしません。從いましてその全体のうちの防衛分担金その他外債等につきましては、防衛分担金はどうだとか、警察予備隊はどうだとか、個々の分につきましては今申上げる段階にないのであります。それでは大体の分はどうかとお聞きになりますが、全体の分も只今私の腹積りがあつてもいろいろな関係で申上げないがいいと思います。
  102. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 或いは細目の点は、今それは大蔵大臣の口から言われるのは工合が惡い点があるかも知れませんが、私は先ほど来も指摘いたしておる通り、又他の議員からも指摘されておりまする通り、二千億以上のものが予備措置として貯えられておる。これについてはそれぞれ只今の食管法であるとか、国際通貨基金であるとか、貿易決済の必要上等からの考え方は一応ありまするが、これはやはり行政協定に関連して非常な変化の生ずるものである、そういつたようなものも多分に含まれておることなのであります。そういたしますとこの二千億以上のリザーヴ資金の温存という目途と、そうしてこの明年度予算というものは密接不可分の問題がある。その是非は別物にして密接不可分の問題があると思うのでありますが、こうした点について考えますと、明年度予算の編成というものは、よほど重大な意味を持つ要素を含んでおると思うのでありまして、当然行政協定の決定後が私は基本的な問題であらねばならん、こういうように深く思うのでありますが、そういたしますと、第二次補正予算を当然組んで、この間のいろいろな問題を調整しなければならんというような事態等も考えられますので、この辺の点をもう一度明らかにしてもらいたい。
  103. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申上げたところで御了承願いたいと思います。来年度予算の編成につきましては、從来より違つた平和回復後の日本の変つた姿が出て参りますので、相当困難でございます。非常な困難を私も感じておりまするが、併し予算案というものは困難であろうがどうであろうが、一応の目算は少くともつけて編成しなければならないので、いよいよ御審議願うまでには、相当の目算もついて御審議願えると私は考えておるのであります。
  104. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 行政協定の中に含まれる、或いは予想される経済委員会というようなものができ上ることは、政府自身もお認めになつておると思うのです。こうした経済関係のいろいろの部門ができる。この経済委員会の権限とうものは、或いは行政協定全般が憲法以下の立場にあるということは、両條約の委員会において政府は返答されておるようでありますが、この経済委員会のようなものができて、この委員会の権限というものが、現在の大蔵省或いは国会の予算審議というような問題等に関連して、どのような優劣があるのか、或いは権限があるのか、立場にあるのか、こういつたことは今からわからんというままでは、私は明年度予算編成の上においてもそうはいえないと思いますが、大臣のこの辺の御見解を承わりたい。
  105. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その問題につきましては、只今政府は検討中でございます。私からはつきり申上げる段階に至つておりません。
  106. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは次にこの在外資産につきましては、大体どのくらいな金額にあるものと大臣はお見込になりますか。
  107. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府並びに日本国民の在外財産の調査は、たびたび條約委員会のほうでお答え申上げましたように、終戰直後一応のラフな調査はいたしたことがあるのでございまするが、只今の貨幣価値でどれだけあるということを私から申上げるほどの数字を持つておりません。
  108. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 数字大蔵省その他で大体の目安はついていると私は思うのでありますが、それを発表されないのは遺憾であります。ところがこうした問題については、一体政府は返済といいますか、返還と申しますか、賠償或いは補償というようなことについてはどういう考えを持つておるか、承わつておきたいと思います。
  109. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これもたびたび條約委員会で申しましたのでありますが……。
  110. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 どうも失礼いたしました。
  111. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 在外財産の問題につきましても、それが連合国にある場合、中立国にある場合、憲法上いろいろな問題がございますし、又憲法上の問題が解決いたしましても政治的な問題もございますし、財政的に考えなければならん問題もございます。又戰争犠牲者との公平論からも考えなければなりませんし、只今政府は鋭意研究をしておるという状態でございます。
  112. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 これは国民各方面の非常な関心の焦点でありまして、これが取扱に対しましては相当議論も出ることだと思いますが、一応在外資産の内容も政府が発表されず、又その方法についても研究中とありまするから、只今のところこれは議論の外に置きまして、次にお尋ねいたしたいのは、今政府は賠償問題で各国と折衝しておる向きもあるだろうと思いますが、そこで賠償支拂能力の問題については、サンフランシスコで明示されておるのでありますが、大蔵大臣予算案提出の理由の中に、賠償問題に関しましては国民生活の安定を脅かすようなことがあつたら條約の精神に副わないのみならず、我が国の対外債務の支拂自体も困難であるということを表明されております。そこで賠償金額及び支拂方法などの問題はいろいろ論議されたことと思うのですが、私のお聞きしたい点は、国民生活の現在の段階は支拂能力があると見ておられるのか、現在の段階は支拂能力がないと見ておられるのか、この点を承わりたい。
  113. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 條約第十四條にある通りでございまして、日本経済を維持するとすれば資源は不足である。併し役務賠償等につきましては支拂うべきだと、こう考えるのであります。
  114. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私がお尋ねしておるのは、現在の国民生活の実態というものは支拂能力があるという水準に考えられておるのか、安本が昨年の予算の提出の場合に昭和九年から十一年の生活水準の九〇%ぐらいまでには漕ぎ付けたいといつたような方針で、国民生活の水準引上げに対する施策の表示がありました。政府もそれを目途とされておると思うのであります。現在なお九〇%に達しておらないことはわかつておるわけであります。ということは、現在の国民生活の水準というものは生活の安定基準を最小限度に確保しておるものと見ておるのかどうか、又これが賠償支拂の能力のある基準と見ておるのか、ない基準と見ておるのか、その点をお伺いしたい。
  115. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 安本の二十八年度ですか、二十九年度におきまして、戰前の生活水準の九〇%にいたしたいという希望的のあれは聞いておるのでありまするが、私はこの條約の十四條の日本に賠償の義務がある、現在の生活程度を維持しつつ、又できれば向上に持つて行きながらやつて行くのが和解と信頼の精神に副うことと考えております。
  116. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 現在の生活水準を維持しつつ賠償支拂をすると、こういうことに解釈されますが、そうしますと、日本の生活水準が安本の目途とされる昭和二十八年度九〇%に上昇したならば、上昇にスライドして、やはり賠償も変化しスライドして来るのかどうか、或いは大蔵大臣インフレ防止措置その他によつて生活水準、或いは物価基準その他が仮に下つたならば、現在きめられた賠償金がそれにスライドして低下するのか、このを点を承わりたい。
  117. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 原則の問題は、私が申上げた通りであります。そういう考えの下に賠償を一応きめるべきだと思います。スライド式にするかどうかということは、これは相手との話でございまするが、そういうことがいいか惡いか、又そういうことをするべきかどうかという問題は、別個の問題と思います。
  118. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 今フイリピンと賠償の問題に対して折衝されておる模様を承わりたい。それから併せて、先般フイリピンの選挙において反キリノ大統領派の絶対優勢の選挙結果におけるフイリピン政局から見る日本の賠償問題に対する硬化の模様が新聞に報ぜられおるが、どういう段階に今ありますかを承わりたい。
  119. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 賠償の交渉に私は当つておりません。まだ交渉を開始しておるとも聞いておりません。而して、フイリピンの上院の選挙でキリノ派とラウレル派が二十四名のうち十二対十二なつたということも聞いております。それが平和條約の批准にどういう影響があるかということは、政府の者としてここで言うことは差控えたいと思います。
  120. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 賠償問題でもう一点お尋ねしたいのは、現在あなたが賠償の最高責任者でないということはわかりましたが、併し何と言つても、大蔵大臣とそういう問題については併せて協議を進めなければならんと思いますが、現在賠償の問題について折衝しておる国々はどこどこであるか、それから向う様の要求されておる金額でありますか、役務でありますか、そういつた問題はどの程度でありますか、判明しておる内容だけを御公表願いたい。
  121. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今賠償の交渉を要求するであろうという国と、交渉の段階に入つていないと私は思つております。儀礼的においでになる場合はあつたかと聞いておりまするが、今交渉の段階に入つていないと思います。從いまして、どういう要求が出ているかも知りません。
  122. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは賠償の問題につきましては一応打切りまして、今後日本の自立経済と申しますか、経済復興の産業構造と言いますか、これに対して大臣金融操業措置で産業経済の実行の重要なキー・ポイントとして操作される意思をよく言われておりますが、その大蔵大臣の見られる日本の基礎産業、復興産業の基礎となるべきものは、どういう方法を以てどうしたものが基礎産業と考えられるか、どういうことをして日本の自立経済を持つて行こうということでありますか、輪郭を承わりたいと思う。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所管は安本のほうでございましようが、一応私の私見を申上げますると、やはり二、三年来、或いは十数年来と言つておりまするように、基礎産業の先ず擴充だと思います。殊に今困つているのは動力源でございまするから、やはり第一に水力、第二に石炭、こういう動力源を起し、そうして今ある設備を近代化して、殖えた動力を以て近代化した工場でフルに運転させ能率を上げるということであろうと思うのであります。從いまして、それによつて国内の産業を育成助長すると同時に、やはり外貨を相当要しますので、造船につきましても相当な力を入れて行かなければならん。で、これは今の考えでは、できるだげ不急不要の分をセーヴいたしまして、そういう只今申上げた方向に極力持つて行くということを考えております。
  124. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 日本の基礎産業は、電力、石炭、又それに船舶であるといつたようなことを深く考えられておる点はわかりますが、これ以外に相当現在の日本の基礎産業となるべきものは数あると思う。それらに対して今回の補正予算に対し十分な施策が行われておらないということは、日本の基礎産業を遂行するには、やはり一面日本の国内治安というものと大衆生活の確保という問題がこれ又重要な要素となつて来る。これは基礎産業として取上げるべきものでなくとも、基礎産業を培養する重要な要素になつておる。然るに農林大臣は、一般の給与生活者、或いは農林政策等に関しまして、今回の補正予算に対しまして極めて冷淡な措置をとつておられますが、これらはどういう釣合に考えておられるか、承わつておきたいと思う。
  125. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 補正予算でございますので、今までやつてつておることで辻褄の合いにくいところを先ず補正するのが第一でございます。勿論、給与の問題、減税の問題は、我々が常に考えておる重大政策でありますので、補正予算で実行いたしました。農林漁業方面につきましても、私は当初予算に負けない程度農林漁業金融の特別会計の出資並びに融資をいたしますとか、又国会できめられました單作地方金融措置もこの年度内において相当行われる程度予算を組んでおります。
  126. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 何度も触れまするごとく、たくさんの予備金を包蔵しておるものが、年度内に使われるかどうか、要るか要らんかわからないといつたものが極めて莫大な金額になつておる。ところが一面におきまして、緊急を要する、或いは零細な大衆生活、或いは社会治安を確保する生活安定の基礎経済政策は行われておらないということは、特に講和條約批准後、或いは講和條約批准に向う、これらを意味した補正予算としての性格においては、極めて国民の各層は不可解に思うております。こうした点については、今回の予算において当然こうした莫大な予備金を包蔵しておるような、棚上げしておるような措置によらずして、そのうちから幾分でも捻出し得る余裕はどの角度から見てもあると思う。これを論議しますと、長いし、又見解の相違になると思いますが、こうした問題に対して政府は今回の補正予算にもう一度基本的な問題を考え直してみるというような気持はないかどうかをお伺いします。
  127. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 考え直す気持は毛頭ございません。而して予備費予備費とおつしやいますが、これこそ私には不可解な言葉と考えております。
  128. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 見解の相違でありますから、次に進みますが大蔵大臣はアメリカからの援助及び救済資金が債務となつたということは、先般サンフランシスコに行かれた場合になつたように言われておるのでありますが、それまではこれらの援助資金、救済資金日本の債務になるという考えは知らなかつたのか、考えなかつたのかを承わりたい。
  129. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申しておりますように、先の国会、その先の国会、私が大蔵大臣になつてから、常にこの対日援助は債務と心得えておるということは数十回に亘つて申上げておるのです。サンフランシスコに行こうが行くまいが、そんな問題は総理が行つたからといつてきまる問題ではない。初めから私は債務と心得えておるということは数十回に亘つて明言しております。又マツカサー元帥の声明にもあるのです。
  130. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私はあなたが数十回、先の国会、その先の国会で明言しておるとは考えられない。(「その通り」と呼ぶ者あり)いつされたか、いつどのような場合に、誰に言われたかということを御指摘願いたいと思います。これは速記録を見たらわかる問題かも知れませんが、あなたはそういうことは言つておらない。どちらかわからんということを常に言つておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)これはそういうことを言つてもらつては困るのであります。そこで私がお尋ねいたしたいことは、この見返資金を各方面に融資したうちで、当然回收されなければならんものが相当あると思いますが、その回收がされなければならん融資総金額というものはどの程度ありますかを承わつておきたいと思います。
  131. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 速記をお調べ下されば私は債務と心得ておるということは、たびたび言つておりますから御御覧願いたいと思います。(「いやそれはどうも違う」と呼ぶ者あり)それはこう言つたことはございましよう。債務と心得ておる、併し平和條約確立後、アメリカはイタリアに対しましては、その請求権を放棄いたしました。こういうことを言つておる。今でもそう言つております。私は債務と心得ておる。この債務と心得ておるもの、即ちアメリカの請求権をアメリカが一方的にどうこうするということは、私の干渉するところではございません。私はこの対日援助は債務と心得ておる、こうはつきり言つておるのであります。而して私はこういうことを言うのも今までの国の政策からお考えになればわかることで、私が大蔵大臣になるまでは、アメリカの対日援助資金というものはどういうふうにして使われたか、あなたがたは御存じなかつたと思うのです。十九億ドルに達する援助費が昭和二十四年度予算を作るまでどうなつてつたか、行方はどうなつたか、ただ普通為替制度で輸入補給金とか、輸出補給金になつておるくらいのことは御承知つたと思いますが、そういうことぐらいしか御存じなかつたら、これではいかん、これではいけないというので、昭和二十四年度予算案から、この対日援助的の物資で来たものを換価して金を得たのであります。それが対日援助見返資金であります。私が大蔵大臣になりまして、溜めた金が八億六千万ドルになつております。この金ははつきり行方を私したのであります。こういうことをすることによつて昭和二十四年度予算案でも非常な議論があつた。私は今日あることを予定いたしまして、その金を別に溜めて、はつきり使つたのであります。八億六千万ドル、即ち二千数百億円の金は行方がはつきりしております。それは鉄道、通信にはこれは返済なしに、交付しきりの金も二、三百億ございます。そうして又今使わずに残つておる金も御承知通り八百億円ございます。そのほか一千数百億円もどこへ行つたはつきりいたしております。即ち開発銀行の出資に当てたり、或いは輸出銀行の出資に当てたり、或いは電力、石炭、又造船、鉄鋼その他化学産業に行つておる数字も、いつでも御覧に入れるようになつております。私は債務と心得ておるというのは、債務でありますから、成るだけはつきりしなければならないというのは、私大蔵大臣なつたときからの第一の政策にしたのでございます。
  132. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 この対日見返資金は今日の段階では国民の負債となつておる、これは国民の血税か何かわからんが、とにかく弁済しなければならん責任がある。そこであなたが大蔵大臣になられた以前はどうなつていたかわからんということは、これは片山内閣、芦田内閣の責任で、おれは知らないということを意味することになると思いますが、まあそういうことを私は特に尋ねているのではない、見返資金がもつと早く債務となつたという見通しがあなたは付いておつたならば、もう先の国会、その前の国会からしばしばこの点に対する国民の注意もあり、又はいろいろの点においても、財政経済策の点においても、相当もつと考えるべきやり方があつたのではないかということが、今更ながら我々は深く考えさせられるのであります。で、今あなたはイタリアは返済しなくともいいということになつたということでありますが、それはイタリアの例を引きますと、いろいろややこしい問題が起つて来る、或いは在外資産はイタリアに返すということの示唆を受けて返すことになつておる、或いは賠償金は日本が底なしと申しますか、際限のないような日本と賠償要求国との相対的な協定においてきめなければならんというような羽目に追い込まれておることに比して、イタリアは少額の賠償金がむしろ決定されて軽い意味になつておる、ですからイタリアの比較論ばかりに全部追い込みますと、ややこしくなるわけでありますが、そこで現在の見返資金のうち、返済を求めなければならん、或いは返済をすべき性格のもの、貸付けた総金額は幾らかということをお聞きしたいのと、それからこの見返資金を貸した場合にはいろいろのむずかしい契約書が取交されておるという。ことはわかつておるわけでありますが、若し返済されないそういう債務者に対してはどういうふうな措置をとるか、それは次の段階かも知れませんけれども、その辺を承わつておきたいと思います。
  133. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申上げた通りでございまして、私は債務と心得ておるということについて誤解があつてはいかんから、イタリアの例を言つたのでありますが、西ドイツに対しましては、アメリカは請求権を強力に主張いたしております。いろいろ例は違いますが、私が債務と心得ておるということをあなたは誤解されては困るから、イタリアは放棄したということによつて、国の債務と心得ておるということを帳消しになつてはいかんと思つたから言つたのであります。イタリアと何も比較論をいたしたわけじやございません。次に見返資金で回收し得る金はどれだけかという問題であります。これは回收し得る金は殆んど全部であります。ただ鉄道と通信のようなものは多分交付しきりになつております。渡しきりになつております。これも政府の機関でございますが、これも回收すれば回收し得られましよう。強いて回收し得ない金額を申しますれば、例の学校給食が殆んど全部今まではアメリカの援助になつてつたのであります。これが相当の金額だと思います。その他はほとんど全部回收し得るように行先がはつきりしております。それは見返資金特別会計を作つてから後のことでございます。
  134. 和田博雄

    委員長和田博雄君) あと時間が十分足らずでありますから……。
  135. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 まだたくさんあるのです。二、三大臣にお伺いしたいことがあるのですが、あの見返資金特別会計を作られる以前のものは回收されないのかどうか。それから或いはそのうちでも回收されるものはどういうものか、今大臣は見返資金特別会計を作つてからのものは殆んど全部、学校給食その他僅かなものを除いて殆んど回收されるということを言われておるが、その割合を承わりたい。ということは、そうしたことによつてこの援助資金やこうしたものが再び日本に、或いはその恵んで頂いたかという国民各層が非常に多いのであります。ところかこれが又国民の税金でどつこい返さなければならんというのだということについては、非常な又国民感情の上におきまして、日米協力の上におきまして問題点が発生すると思うのであります。そこで私は実際もう回收できるものがあるならば、もう国民の税負担でこれを賄う必要がないので、非常にこれは話のわかることだと、もう筋として非常によいのですが、回收のできないものがどれだけおよそある、それはやはり国民の血税として負担せなければいかんということは、この際明らかにしておくことが必要である、こう思うのです。
  136. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それが先ほど申上げました通りに、昭和二十四年度からこの三……、これは血税で溜めたのじやございませんよ。アメリカから来ました綿花とか、或いは小麦を国民に売りまして、その代価を溜めたのでございまして、これは税金から出しておりません。而してそういうことをやりましてからの分が十九億ドルのうちで八億六千万ドルあります。從いまして十億ドル余りは輸入補給金か輸出補給金か、とにかくその金の使途がはつきりしないのであります。これは誰がやつたとかという問題じやございません。そういうふうになつております。これじやいかんからというので、八億六千万ドルの分は対日援助見返資金特別会計を作つてつたのであります。それで八億六千万ドルのうち殆んど大部分、九割それ以上になりましようが、学校給食以外のものも少量ございましようが、殆んど八、九割というものは今の行き先がはつきりしております。その一、二割の分はこれは学校給食でございます。これは例えば教育図書館とか、それからこれは進駐軍の優良住宅が建つたとか、こういうふうに全部はつきりいたしております、八億六千万ドルの分に対しましては……。
  137. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 この問題については、私まだ議論があるのですが、時間がないようですから、これは又の機会にと申しますか省略したいと思いますが、それでもう一、二大蔵大臣に簡單なことでありますが、お伺いしたいのは、米の統制撤廃問題に対して池田農林大臣……(笑声)といつた感覚の下に極めて活躍されたことは内外周知の事実であります。そこで造詣の深い農林行政に対して大蔵大臣がドツジ氏と米の統制撤廃の問題についていろいろ協議された。ところがドツジ氏がどうしてもいかんと言われたのであります。言われたその反対された理由をこの際承わつておきたいと思います。
  138. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 原則的に反対されたことでないことは政府声明で御案内の通りであります。而して政府声明を出すに至りましたドツジ氏と私との間の会談内容は発表する自由を持つておりません。
  139. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それはまあ聞くのがやぼであつたかわかりませんから略しますが、そうすると原則として反対をしないということ、政府が十月の末までは配給を継続するということ等につきましてお尋ねしたいのでありますが、これは農林大臣にお聞きするのですが、農林大臣よりまだ偉そうでありますから、(笑声)池田大蔵大臣にお伺いしたいと思うのであります。そうすると、十月三十日以降はどういう御方針でありますか。
  140. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所管大臣農林大臣からお答えを願います。
  141. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それではその問題はまああとの問題にいたしまして、(「農林大臣がいる」と呼ぶ者あり、笑声)農林大臣おられるのですか、それでは農林大臣に……。
  142. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 明年度の十月末日までは配給統制を続けて行くということを明確にいたしまして、政府の方針は先ほど大蔵大臣から言われましたごとく、原則的には統制撤廃に関しては総司令部も了承したものと思います。その時期方法については目下検討中でございます。
  143. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それではついでになお農林大臣に伺いますが、十月三十日までは配給の統制を継続する。で、ドツジ氏は原則的において統制撤廃は了解した、賛成した、十月三十日以後の問題については研究中であるというのですが、これはもう統制を継続するか撤廃するか、この二つの途であります。これは現在の供出の成績をあげる上におきましても、いろいろ各方面におきましては、この問題は非常に注視しておるのでありますから、どつちをやらんとするのか、この点を明らかにしておいてもらいたい。供出成績を確保する上においても、これは政府がみずから大きな責任として考えなくちやならん問題でありますので明らかにしてもらいたい。
  144. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 明年の十一月から統制撤廃をするという政府の方針の下に検討いたしておる次第でございます。
  145. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それで明年の十一月一日から米の統制を撤廃するという政府の方針を決定しておるということを、この席上で農林大臣が言明されたことは、政府態度、意志を公表されたものと解釈いたします。そこでこれによつてお伺いしたいのですが、現在の需給事情及び十月三十日、つまり十一月一日の端境期、この段階において米の統制撤廃をしようということは、需給上その他の操作はどういう算段でされますか、ちよつとこの点重ねてお伺いしたい。やり方です。
  146. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。需給関係の見通しとも関連する問題だと思いますが、統制を撤廃する場合におきましては、端境期における相当程度の量を確保しておかねばならんということは当然のことでございまして、又例年における実績を見ましても、先ほど私並びに安本長官からお答えしたように、大体一千万石乃至一千五、六百万石程度の食糧を持つておりますれば大体可能でございます。なお国内の産麦、産米についても、平年作でございますならば、相当程度のこれは出廻りがあるのでございますが、その際における問題の点は、生産地と消費地における場所的な時間的な需給のバランスがとれないことが非常に心配になる、こう考えますので、農業協同組合その他の生産団体に対する集荷資金というものは当然政府考えてやつて計画販売ということができるようにいたしたい。なお又需要地におきましては、長年の統制が続いたために、卸売業者、小売業者とも資本を実は非常に持つていない、一般消費者の需要が現実にありましても、これを買入れる販売業者の資金がないために、それが確保できないという点が非常に難点になると思いますが、その点については十分に買取資金政府が面倒見る、こういうような方法が必要であると存じます。なお又この点はしばしば申上げたところでありますが、統制を撤廃いたしましても、完全にフリーにするとかいうことではなく、やはり価格並びに需給調整をやるという建前の下に我々は需給調整法を考えておる次第でございます。そうした総合的な措置によりまして、切替時におけるところの不安をなからしめるという、こういうのが我々の現在の構想でございます。
  147. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 先だつて米の統制撤廃を政府考えたときの四月一日現在の手持は千百八十万石であつたのであります。そういう需給数量を出しておる。そこでこれについて、これは併し深刻な、いわゆる政府が一〇〇%供出以後の手持ですら四月一日の現在が千百八十万石しかの推定しかない。ところが、十月三十日はいわゆる端境であつて政府の手持というものは仮にありましても、これは外国小麦或いは配給辞退の雑食と申しますか雑食が大部分であつて、米の手持というものは外米のほかは殆んどないと思われる。而も端境の手持は供出完了後のほやほやの四月一日ですら千百八十万石しかない。現在の需給状態において十月三十日現在に千五百万石の手持ができるというようなことは、どこを探してもこれは考えられないことなんです。あることはありますがあるものは今申上げたようなものでそういつたものじやない。そこでこの場合には本年度の作柄が非常な不作であるしそれまでにはたとえ農家その他に余裕があつても、食潰してしまう。而も明年度の米の作柄というものは未知数の問題豊作になるか平年作になるか、或いは凶作になるかわからない。そういつた点を考えずして今から十一月一日に統制撤廃するという言明は、この主食という問題は非常に社会治安の上におきましても日本の全般を通ずる国家政策の上においても重大な示唆を与えるものであるのでありますが、十月三十日現在で今農林大臣考えられるような需給操作が円満に行けると考えられるかどうか。或いは需給調整法その他によつて市場操作、価格、数量の調整をすると言つておりますが、これは外国食糧の豊凶自体にもかかることだし、明年度の外貨のやりくりの問題につきましても、或いは明年度予算がしばしば論議となつておるような工合に、行政協定後の日本の防衛力強化であるとか、或いは賠償の問題であるとか、外債支拂の問題であるとか随分支出面の多いこうした段階において、果して外国食糧の確保においても万全を期し得るかどうか、極めて疑問があると思う。そういつた点を又そのときにやり損うつもりならよいけれども、もう再びそういうことは自由党内閣にしても何度何度であつても、これ以上はこの問題でやり損うわけには行きませんが、それでもそんな自信があるのかどうか、それを承わつておきたい。
  148. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。先ほど申しましたように、政府としましては統制撤廃に関する基本方針は堅持しておりまするので、明年十一月一日を目途として検討しておるということを先ほど申した通りでございます。從いまして、その時期、方法については十分その準備のできたときにやるということを繰返して申した次第でございます。なお明年度十一月初め頃になつたならば政府のいわゆる内地米食糧というものは手持が非常に少くなつて来る、殆んどゼロに近いのじやないか、そうした場合において統制撤廃をするのは非常に危険じやないか、こういうような御意見でございまするが、御承知のように早場米は九月の中頃から、早いものはもつと前から出るのであります。從来全生産量のうち供出二千七百万石程度のときにおいても、常に一千万石程度は実は早場米の形におきまして十月末日までには全部出ている次第であります。從つて、その点の米は政府が持たなくても流通市場にずつと出て来るということは、当然考えられるのであります。なお又外国食糧については先ほどお話いたしましたように全面的にこれは政府で管理いたしておりまするので、相当の手持量があるのでございます。この点については全体の国内に存在するところの食糧の総量が問題だと思いますが、そういう点を考えまするならば諸般の條件が具備するならば量については心配がないから統制撤廃することも決して危険じやない、かように考えている次第でございます。
  149. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 この点はこんな簡單な時間で論議するのは軽率でありますが、早場管と言いましても、十月の末項までに消費者の所まで運ぶ輸送も完備するような早場米の移出府県というものは数県に過ぎない。或いは十県足らずの問題、それが約三十数県の内地米の足らないときに、一潟千里に配給操作ができるというようなことは、これはもう呉服屋さんならば考えられてもよいけれども、いやしくも農林大臣、食糧政策に通じておられる権威者としてはそういうことを言つてはいかん。これはもう大へんな誤り。それから絶対総量があればよいと言われますが、これはまあ前々から大蔵大臣の御明言のごとく麦でも何でも間に合わせばそういうことでありますが、やはり麦や或いは外国の小石混りの米ならばあるかも知れませんけれども、これで一カ月の消費生活が穏当に経過されるかどうかは極めて疑問である。この間に僅かのかすれの内地米の闇相場高というようなものが如何に社会不安を激化し、その後における統制撤廃にしようという需給操作に大きな暗影を投ずるか。食糧政策というものは、内地米というものを平準化した徹底した政策において、その絶対量を確保するという基盤は内地米操作に置かなければならん。ところが恐らく今十一月一日から統制撤廃するといたしますれば、もう八月の末あたりから殆んど内地米というものは枯渇状態で、実際三十余の消費府県に早場米が輸送されて配給されるのには一カ月から五十日かかる。この間の約二カ月余りのギヤツプというものが如何に重大化するかと思いますれば、そう軽々にはできないと考えあるのでありますが、いろいろ客観情勢が整つたらやると言つて言葉はやや訂正されましたから、この問題は今ちよつとあと廻しにいたしておきます。
  150. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう十分時間は超過いたしましたが。
  151. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 そうですが、それじや大蔵大臣にもう一点だけお伺いしたいのですが、現在の年末金融或いは年末だけじやない、来年の春においても大蔵大臣金融統制を強化しようという施策或いはオーバー・ローンの収拾につきましても各方面年末に際会して非常に心配しておるのでありますが、オーバー・ローンが出たから或いは金融が困つたから一々財政資金でどうのこうのできないという大蔵大臣としての立場はわかりますが、併しこのままこれを経過するということは、丁度あたかも條約批准で発効される前後に相当パニツク的な点なども考慮されないではない。殊に年末金融、越年資金の枯渇、全般的な家庭生活のこうしたような問題などに及ぶ年内金融操作対策はどのように考えられておるか、承わつておきたいのであります。
  152. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 毎年のことでございまして、特に今年特別の措置をとらなきやならんというほどのことは考えておりません。
  153. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それじや大蔵大臣質問を一応打切りまして、丁度特調の長官が来られておりますからちよつと承わりておきたい。
  154. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 前からの何でありますから特に許します。
  155. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 特調長官にお伺いいたしたいことは、進駐軍に強制接収されておる住宅は全国非常にたくさんあつてこれが非常に困つておる。住宅はビルやホテルのように貸す目的をもつて建てたのではない。自分の永住のねぐらとし子々孫々にその家柄を伝えるための人間生活の基盤である。この住宅は進駐軍に接収されて今回莫大な数字に及んでまだ返還されておらん。貸す目的でなかつたために而も接収されたときには泥靴で大抵の家が畳に乘り込んで、この額は動かしたらいかん、この置物も動かしてはいかん、この仏壇も動かしてはいかんという工合に、全部写真でとつて、一つも物を動かすことのできないような工合で、何時間以内に立退けというような強制接収をして今日に来ておるのであります。でこの中には非常にこれがために急に宿屋住いして、急にいろいろのそれがために喧嘩も起るような悲惨な状態が展開されて今日に及んでおるのに対して、これらに対する家賃は、いわゆる地代家賃統制令というものに引くくりをつけて、そうして火災保險にもかける殆んど余地のないような事態に追い込んでしまつて今日に来ておる。ところが不思議なことには、全国のうちで大分県の別府地区の極く少部分の家庭に、全国のこうした地代家賃の統制令以外のべらぼうな高値で特別に借家賃をきめておる。で全国の他のものは皆地代家賃統制令によつてきめ、低廉な価格で押し付けて借入れしておる。ところがこの大分県の別府の地区をよく見ますと、これは総理大臣の娘さんの婿さんである麻生太賀吉君の家などを中心とする少部分の家の家賃のみが一般全国の家賃の数倍乃至は最近においては十倍の家賃を拂つておる。それが今日昨年来やかましく言うもんですから全国の家賃を少しだけ上げた。少しだけ上げたが麻生太賀吉君などのおられるこの辺の地区はそのまま、高いままにおいてある。これは一体どういうわけか。この問題をお伺いしたい。
  156. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 進駐軍に接収されておりまするところの不動産所有者、人によりましては非常に御迷惑をこうむつておるかたがおることにつきましては、私どもとしまして非常にお気の毒に存ずる次第であります。さて只今お尋ねの麻生太賀吉氏のお宅の附近のことでございまするが、私ども承知をしておりますのに、大分県は特に別府は、その家賃を定めるに当りまして割高にきまつたように聞いてております。その大体において大分、九州の地で別府は全体的に家賃が割高なんです。そしてお湯が引いてあるということで普通の所と多少事情を異にしておるというようなお話であります。又当時その地代家賃等は知事の認可制によつたものであります。知事が地方委員の諮問を受けてそれの答申に基きまして認可したものであるのでありまして、その価格をその後特調が設置せられましてこれを引継いだのであります。いろいろ諸般の情報から大分は高過ぎる、從つて我々は大分並みにすれば満足するのだというような特に九州方面からの陳情もあつたようであります。その際におきましていろいろ検討、比較しますと、多少高い点がないわけでもありません。只今お話のごとく麻生太賀吉氏の家であるから高いというふうなことはおよそ私どもには想像もつかん次第でございます。又これは私の想像に過ぎませんが、恐らくその価格がきまつた当時は現在の総理大臣はまだ議会には出ておいでにならず、從つて総理大臣でもなかつたかと私は記憶するのであります。從いましてそういう関係においてものがきまつたということは、私どもといたしましてはどうも想像ができかねるのであります。併しながら事実といたしまして別府地区は特殊の事情にありましたので相当高かつた、これは事実であります。從いまして先般の家賃地代等の引上げに際しまして特にそのまま据置いて全体的の均衡に資したゆえんであります。
  157. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 その頃の家賃は知事がきめたと言いますが、それはそうじやないのです。或いはそれに諮問したかもわからないがこうした家賃は全部司令部に書類を出して一々許可を得なければならん。その後何回か改訂がありました場合にでも全部個別的に司令部に書類を出さなければならん。これは丁度一般の給料生活者が地域給の僅かなものでも司令部の承認を得なければならんといつた問題と同じでありまして、その当時政府がどういう工合でこうした別府地区だけの家賃を高くしたかにつきましては非常に不可解の問題がたくさんあつて、これがために福岡の特調の局長はやめられた、ちよつと工合が惡くなつたからやめられたそうであります。そういつた事態を含んでいるのでありまして、こうした地代家賃統制令によらざるそういうべらぼうな、一例を挙げますと麻生太賀吉君などのあの方面の家の坪数を全面の平均でしますと、例えば一万円余りの家賃のものが十一万円近いものを一カ月にとつている。余りにもこの差がひどいのが漸く九州地区で問題になつているのでありますが、これに対して政府は特調長官も言を左右にしてこれの是正を図ろうとしない。図ろうとして交渉するというと或いはこの特調長官が首になるから、叱られるからやられないのかどうか知りませんが、一体こうしたことは全部司令部の承認を得なければならんことはわかつて来たからですが、どういう許可を出して承認を得られたのか明らかにせられたい。
  158. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今のお尋ねでございますが、そのうちに局長が今の関係でやめられたということが言われましたがこういう事実はございません。現在の特調に多分一昨年の六月頃かと思いますが、特調の組織が現在の組織になりますときに勇退いたしたのであります。随分古いことであります。又私にいろいろお話があつたそうでございますが、言を左右にいたしたということも全くございません。若しそういう不均衡のものがあればいつでも是正しなければならんものであると考えましてその後いろいろ調査をした結果、現実の問題としてほかと比べますと多少高い点もあつたかも知れんと思いますけれども、この次の値上げのときには据置くことができるものならば据置くが適当である、こう考え措置したわけであります。なお又これに関しまして個々の家賃そのものにつきまして司令部に相談するとかどうとかいうことは、少くとも私のときになりましてからはないように記憶いたします。
  159. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩木君に申上げますが、大分もうあなたの持ち時間は超過いたしましたので、その辺で一つ、又のちに機会がありますれば発言の機会を与えますから、次に移りたいと思います。
  160. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 連日の審議で問題は出盡したようでございますが、私はこれから若干質問させて頂きます。岩本君が約二十五分間ルールを破つたようでございますが、私はできるだけルールを破らないと思つておりますので、万一破つた場合はお許し願いたいと思います。私の質問の順序は、大蔵大臣はお疲れでしようから暫ぐお休み頂いて、でき得べくんば通産大臣、文部大臣、自治庁長官、大蔵大臣、その間にちよつと農林大臣のも出ますがそういう順序でお願いいたしたいと考えております。  その前に先ず特別調達庁の長官がおられるようですからそれに関連する…大蔵大臣もちよつとおつてもらいたいのですが、特別調達庁の長官がおられるので四、五分ですからお伺いいたしたいと思うのです。  それは先般岩間君からも出ましたし、今日佐多君からも出た横田基地の問題でございますが、これについて新聞で拝見したところによりますというと、首相は岡崎官房長官に、前例を破つて特に心せよと言われたということは新聞で私拝見したのですが、それは先ほど大蔵大臣が申されたような内容を示すのかどうか。私ここで申したいことは、この横田の基地が東京に近い関係上、報道陣において非常に大きく報道される、從つてこれが大きく取上げられて、前例を破つて特別な取扱い云々ということが出て参りますが、これに類似した問題はしよつちゆう起つておるわけで、例えば御承知と思いますが、昨年の五月福岡の板付基地では、飛行機の不時着によりまして大きな醤油会社が一挙に潰れ、九人の家族が全滅し、その損害は一千数百万円と言われております。それに対しましてはほんの涙金しか出ない、で、これに対して、衆議院の地方行政委員会は出張した際に、福岡県当局に対して、血も涙もない政治じやないか、福岡県民がそういう災害に会たのにどうして金を出さないか、こうして福岡県当局を痛め付けております。ところが福岡県当局としては、そういう金を出すべき法規もないし、勿論予算もないし、こういう特別な基地によつて受ける損害というものは、これは一公共団体の補償に任して行くべきものじやなくして、国家的の立場において当然補償すべきだと思うのでございます。そういう福岡の場合はそのままになつておる、今度横田の場合には前例を破つて云にということは私了承できないと思うのであります。更には山口県の長府におきましても、これは補助タンクが落ちて数軒が全焼したというような例などあるわけでございまして、そこで私お伺いいたしたい点は、かくのごとき災害に対しては、地方公共団体の補償に任せずに、国家的立場で補償すべきじやないかという点が一点でございます。  それから次にお尋ねいたしたい点は今度の講和條約を結んで、在外資産、日本国民の私有財産については、弁償についは研究中だ、この池田大蔵大臣の言葉は諒といたします。併しポツダム宣言を受諾して後に進駐軍の作戰行動によつて損害を受けたところの、今例を挙げました例えば福岡の板付或いは長府とか、或いは今度の横田とか、こういうものは戰時中における国内或いは国外における日本人の私有財産の補償とは別個の特別立法によつて補償すできだと考えるのでありますが、この二点について先ず大蔵大臣の御答弁をお願いいたしたいのであります。
  161. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申しました通りに、政府としてはできるだけの見舞金を出そうと考えておるのであります。福岡県の醤油釀造業の家がB二九のために潰れたということも聞いております。陳情も受けております。併し今回のは爆彈等のことでございますので、只今佐多委員に申しましたように、政府としてできるだけの補償を、お見舞金を出すと共に、関係方面におきましても、お出しを願うように交渉いたしたいと思います。総理が岡崎官房長官にどう言われたということは、私は新聞でも見ておりませんし、聞いてもおりません。それから占領後、今までにおきましての補償の問題は、たびたび陳情を受けておるのであります。今後の問題として考えなければならん問題だと思つております。
  162. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これらと類似の問題で、更にお伺いいたしたい点は、福岡の板付基地は現在滑走路延長拡大強化を図つております。あの飛行場は、昭和十九年に日本空軍によつて建設されたものでございますが、占領後逐次拡大されて行つて、その近くに月隈小学校というのがありますが、それが主滑走路に当つてつて殆んど授業ができない、七月から八月までに不時着は数回、盲彈が落ちたのが十数回ある、爆音で授業ができないのみならず、万一の場合があつた場合には数百人の生徒の生命が危険である。それでこの小学校を移転しなければ授業はできないという段階に追い込まれておるのでありますが、併しながら飛行場を作るときに、すでに月隈小学校校というものは七十戸移転して祖先伝来の約百町歩の土地を提供した、そういうような立場において絶対自力では移転ができない、こういう特殊な問題につきましては、私は終戰処理費なり、或は文部省の予算においても特別な考慮を払わるべきものではないか、こういう問題は一公共団体の責任に任すべきではないのじやないか、こう考えるわけであります。更にこれは質問でありますが、これと類似した問題を挙げますと、例えば佐世保市あたりで、これは神奈川県にもあると思うのでありますが、占領軍が行動するために道路の修理を要する、その修理費は公共団体に任されておる。ひどい場合には、佐世保ではあのキヤバレーに進駐軍がおる間、非常に暗いから電気をつけろ、道が惡いから鋪装道路を作れ、その費用が数百万円かかる、それから性病が非常に繁殖するので、街の真中に洗滌所を作つて、———が病気にかからないようにする、そういう費用も八百万からかけて設置した。それらの費用は全く一市又は一町村の財政負担になつておる。これではとてもやり切れないという声も聞くわけで、又過去のこういう財政支出に対しては何らか考慮する余地がないのかどどうか、その点特別調達庁長官並びに大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  163. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 個々の問題につきましては聞いておりませんので、今お話のような点がありますれば、十分検討いたしたいと思います。  なお平和回復後今のような問題は行政協定できめるべき問題だということは、先だつて山下委員の御質問に対して答弁した通りであります。
  164. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 特別調達庁長官といたしましても、只今大蔵大臣の申されたこと以外に申上げることはないと思います。
  165. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 行政協定できめられるということはわかるのでございます。大臣としてはそういう補償というものは、そういう財政負担というものは一公共団体に任すべきものではなくして、大きく国家的立場において財政負担をすべきである、こういう見解でございますかどうか、念のために伺つておきます。
  166. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 進駐軍直接行為によります分は、今まででも補償いたしております。併し今お話のような案件が建前としては進駐軍の直接行動によるものか否かということは、事実を調べなければ私ははつきりいたしませんので、直接行動に基くものなりや否やということの判定の問題になるから、研究をいたしたいと申上げるのでございます。
  167. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 特別調達庁長官に対する関連質問はこれでよろしうございます。  次に通産大臣がおいでになつてつたら通産大臣にお願いいたします。
  168. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 通産大臣は見えておりませんが、文部大臣が……。
  169. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 じや文部大臣にお願いいたします。
  170. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それから農林大臣が見えておられます。
  171. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 我が国の民主化の現段階においては、私は文教の府にある文部大臣の言動というものは国民に対する指導性並びに影響性は極めて甚大だと考えます。我が国が民主主義発展を今期しつつあるわけでございますが、大臣の言動一つで或いはこれは逆転するかも知れない。それだけに大臣の言動は重大だと私は考えておりますので、予算的なものはあとにしまして、先ず大臣に天野文政の基本的な理念について若干お伺いいたしたいと思うのでございます。  私は、お互いは今度の講和條約を結んで、平和というものを具現して行きたいということについては全国民一致しておるわけでありますが、平和というものは飽くまでも民主主義というものが基盤でなければならない。それによつて培われるものである。その民主主義というものは憲法二十一條でいうところの言論とか出版の自由とか、こういうものが若しも剥奪されたならば、民主主義というものは育たない、民主主義ががつちりしなければ平和というものは決して維持できない。こういう私は見解を持つておるものでございますが、大臣は憲法二十一條によるところの言論並びに結社の自由、表現の自由というものは飽くまでも民主主義を守るという立場において堅持しなければならん基本的な理念であるということに同感であるかどうか、先ず承わりたいと思います。
  172. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 同感でございます。
  173. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 然らば大臣にお伺いいたしたいのでございますが、全国の労働組合或いは進歩的な識者が盛んに平和運動を叫んでおりますが、これをどうお考えになるか。まあその一つとしまして、先般東大の南原学長が十一月十日東大において両條約に反対である、こういう演説を学生諸君に説いたということを私は新聞で拝見いたしたのでありますが、衆議院において誠に不埓である、けしからんというような発言が委員からなされて、大臣はそれに答弁されたと聞いておりますが、果して大学において南原学長が両條約に対して反対であるということを学生諸君に話すことが、学長として行き過ぎだと考えられるかどうか大臣の所見を伺いたい。
  174. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私は新聞ではそういうことを見ましたけれども、南原さんが果してどういう演説をされたか、その内容をつまびらかにいたしておりませんから、從つてこれを批判することもできません。
  175. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では、仮に講和條約と平和條約、それは我が国の独立と自由平和を守る立場から自分は学者としてどうも賛成できない。その理由としてはかくかくだということを学生に演説したならば如何でしようか。
  176. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) そういうことは、ただそれだけではなかなか批判できないのではないか。それがどういう内容を持つてどういう学問的な根拠であるとかということが明らかでないと言えないのではなかろうか。大学は飽くまでも学問をやる所であつて、人間完成と言つてもすべて学問を媒介としてやらなければなりませんから、内容を知らない限り何とも批判しかねると思います。
  177. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣の言葉は私は諒といたしますが、我々は不満足でございます。これが小学校とか、幼稚園の生徒の教師がそういうことを話したとしたならば、彼らは心理的発展の過程から言つて問題もあるかと思いますが、いやしくも我が国の最高学府の判断力も批判力も相当に培われたところの大学の学生に対して、学長が自分は学者としてかくかく信ずるということを述べるということは、これは私は言論、結社、学問の自由というような立場から、当然許容さるべきである。こういう問題について、これは学長としてけしからんとか、不埓であるとかという発言をした者に同調するような文部大臣が言動をとるということは、これは由々しき問題であると思いますが、如何でありますか。
  178. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私はそれに同調するような発言をいたしたことはありません。
  179. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 更にこれとちよつと関連しますから、一点お伺いいたしますが、先般京都大学で学生のデモ事件が起つた。これは私聞いておる範囲内では先ず常軌を逸した私は遺憾な事柄と考えるのでありますが、この質問が曾つて委員会で出たときに、大臣は責任を感ずる、総理と相談して善処するというようなことを発言されたということを新聞で見たのでありますが、それが真実であるかどうか、若し真実であるならば、大臣は如何なる責任をとらんとするのか。  もう一つは、大臣はこれに関連して、これも新聞で見たのでありますが、自分は義務だけがあつて責任というものが、権限というものがない。從つて現在国会に提案してあるところの国立並びに公立の大学管理法案は撤回して、そうして学長の権限を強化するようなことを考えたいというようなことを発言したと、私は新聞で、又人を通じて聞いたのでありますが、それが事実であるかどうか。若し事実ならば、大臣が言うところの権限強化とは如何なることを意味するのであるかという点について伺いたい。
  180. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 文部大臣としてはその所轄内に起つたことについては責任を感ずるのが私は当然ではないかと思つております。併しそれに対してどういう責任をとるかということについては私は考慮中であります。なお議員のかたから、文部省は義務ばかりあつて何も権限がないから、目下提案中の法案を撤回する考えはないかという御質問でございましたから、それはよく研究して見る、こう言つただけであります。
  181. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではお伺いいたしますが、大臣は、大学の自治と管理法を撤回して更に提案するということとは関連があると思うのでありますが、現在国立、並びに公立の大学管理法案として提案されてあるあの内容に盛られたところの自治権を大学に与えるということが適当だと現在お考えになつておられるかどうか。それと今大臣が言われたところの責任とは、もう少し責任を掘り下げて答弁を願いたい。それによつて質問をいたします。
  182. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 大学の自治というものは大体において私はこれは守つて行かなければならないと思つております。責任ということは言葉が少し広いのでありますが、所轄に起つたことについては責任を感ずるということが当然であつて、それに対してはどういう責任をとるべきものかということを考慮をいたしているということであります。
  183. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これに対するところの追及はちよつとやめまして、方向を変えで伺います。それは私が先ほどから教育の重大性を説いたわけでありますが、終戰後の教育において、教育行政へ人民が参加した。教育を人民が決定するのだというところに私は非常に画期的なものがあると、こう考えているわけでございます。こういう角度からちよつと対蹠的に離れますが、最近教育委員会制度に対するところの政令諮問委員会答申というものは、教育委員の任命制というものを打ち出しているが、人民が教育行政に参加する、お互いの教育を人民が決定するのだ、国民が決定するのだ、こういう立場から大臣はこの点についてどういうふうに考えているか、これは大学の自治と関連するので伺いたい。
  184. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 教育委員会によつて国民が自分の手において教育をやるのだという意識が非常に高まつたということは、これは認めなければならないと思う。だからしてこれは原理的に言うならば、当然これは公選ということであるべきものだと思いますけれども、現在の教育委員会がそのままでいいかどうかというと、これはいろいろの問題があるのではないか、だから原理を守りつつ何かそれが弊害を伴わないようにする工夫はないものかということを私は研究してもらつているところでございます。
  185. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣が大学の自治というものは尊重さるべきである。更に地方教育に対して教育委員会の立法方針から教育委員は公選制が原則でなければならない。その点私諒といたします。併し私はここで大臣に申上げたい点は、大臣がこういう委員会でああいう京大事件について責任をとるというようなことを言うことは私は軽卒だと思うのです。その責任という範囲は非常に広いと思う。併し現在の我が国の国民の大体の傾向からいつて、ああいう記事が新聞に出るというと、大臣はやめるのじやないか、こういうように国民に私は響くと思うのです。そう響くということは、日本の私は民主化というものを、民主主義というものを阻害することになる。大臣はああいう問題について決して私は責任をとつてやめるべきものじやない。或る意味における責任はありましよう。それは極めて軽いものであり、そういう責任をこういう所で公言するということは、私はもう少し慎重を期して頂きたい、こういうように私は考えているものです。そういうわけは、大臣の常に天皇に対するところの国民の考え方に対する指導というものは、むしろ私は主権在民という立場から大臣は少し行過ぎているのじやないかというぐらいに指導なさつておる。その指導の下に大学教育を行われておつて、ああいう事件が起つた場合には、この結果というものは極く不埓な行過ぎの問題でありますが、大臣が先ず先に責任をとつて総理と相談して云々ということは私は適当でない、こういうふうに考えるものでございます。これから更に私はこの質問をもう少し、重大な問題でございますので、本質的に質問申上げたいのでありますが、私は若し大臣に責任がありとするならば、如何なる責任があるかというと、大臣が或いは天皇は道徳的中心であるとか、或いは国民実践要領を出すとか、或いは、惡いわけではありませんが、国歌とか、或いは国旗とかいうものを非常に大きくクローズ・アップする、そういうまあ大臣の本質とは反するのでありますが、国民には非常に時代逆行的な、反動的な影響性を持つ。それに対するところの学生のこれは反動と申上げますか、反撥というものが一部にはあつたのじやないか。そういう反撥を若い者に持たすような言動を大臣が平素からされたということに、その点について責任があるならば私はあると言える、こういうふうに私は考えておるものです。ここで私は大臣にお伺いいたしたい点は、大臣は国民実践要領、これについてはもう文部委員会で議論されましたから申しませんが、これを出すに当つて大臣は、日本国民がどこの国民であるかということをわからなくなつているということをよく言われますけれども、そういうことは私は断じてないと思う。むしろ超国家主義的な主張というものは、そこに滔々として流れておるということを私は大臣にしつかりと把握して頂きたいと思うのです。地方に行つて平和條約、或いは安保條約あたりを取上げて国民の傾倒しているところの超国家主義的な、軍国主義的な、全体主義的な考え方を燃え上らせるということは極めて簡單なことなんです。その程度しか民主化、民主主義というものは理念においても、実践においても徹底していないということを大臣に知つて頂きたい。私は今大臣が最もこういう問題についてなさるべき問題は、天皇は国家の象徴である、こういう意味を徹底させるように大臣努力されるということが一番大事なことではないか、こう考えるのであります。これは私の質問になるわけでございますが、と申しますのは、京都大学の学生が空車に対してデモをやつた、そうして直訴文書を持つてつた。これなんかは最高学府の学生としては、納得できないと思う。現に国会においては民族、国家の運命を決するような二條約の審議をやつている。そのときに天皇陛下は政治の中心でない、権力の中心でない、ただ單に国家の象徴であるが故に近畿地方なんかに行幸なさつておる。そういう事実を学生に教えなくちやならん。何も政治的中心じやない、権力はないのだということを徹底させることが私は天皇のためにもなるし、日本の主権在民の新憲法を育てて行くに当つて最も適当じやないか。もうちよつと申上げますならば、私は天皇制否定論者ではありません。天皇には親愛を感じておるものでありますが、国会の開会式を見ましても、私は頭を垂れてお言葉を賜わつている。これは全く神格化された天皇にやはり接しているような感じじやないか、これは本当に国家の象徴としての、我らの親愛の中心であるところの天皇であるならば、私たちはおいでになるときには会釈をする、そうして正面からお顔を拜す、そうして拍手ぐらいでもして送迎をするというくらいが、私は本当に新日本における天皇の国民の中にあるあり方ではないか、それが本当に親愛というものを現わして行くのじやないか、こういうふうに私は考えているわけなんであります。更にもう一つ申上げるならば、大臣に私は教育をして頂くために申上げるのですが、今度の近畿地方の行幸に当りましても、二條約の批准が、承認が国会でやられているときに同僚のうち、私惡いとは申上げません。同僚のうちにはその二條約の賛否の投票をしないで、自分の選挙区に帰つて陛下をお迎えしている、その親愛の情には敬意を表します。新らしい憲法下におけるところの国会議員はいずれをとるべきかということについては、人によつて批判があると思うのであります。お互いでもそういう程度でございます。從つて私はこの際に大臣は或いは実践要領、この言葉の中には、長い歴史を通じて天皇があつたところに我が国の特徴があるという万世一系を謳うてあります現在の天皇、曾つての天皇というものは新憲法によつて違つていると思うのであります。そういうような所が大臣の実践要領というものの中にあります。「父母に孝に兄弟に友に夫婦相和し」というのがあります。いずれも間違つてはおりません。併しそういう口調を出したわけであります。そういう口調ですね、更に道徳的中心とか、いうことような大臣の言動というものは、私はやはり我が国の新憲法を守り、民主主義というものを推進して行く立場においては、ややもすすれば滔々とした復古調、反動の主張のある現段階においては、よほど文教の最高責任にあるところの大臣の言動というものは、注意されなければならないのじやないか、その最も適当な方法は、天皇は国家の象徴であるという意味を、学生にも国民にも徹底するような私は責任が大臣にあるのじやないか、それが一番適当じやないか、こう考えるのでありますが、これに対する大臣の見解を承わりたい。
  186. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 御意見につきましては私も非常に同感な点もございます。なおいろいろの点につきましては、虚心坦懐に一つ御意見を十分に反省考慮いたして見たいと思つております。
  187. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間がありませんので、その点については実践要領のこともございますので、大臣の熟慮と再考をお願いするといたしまして、次の質問をします。  次に私質問申上げたい点は、スポーツのことでございますが、敗戰後お互いが打ちのめされて、何ら慰安、娯楽というものがないときにスポーツが非常に興隆して、そうして国民に明るい感じを与え、更には古橋あたりが外国に行つて好い記録を作つたとか、世界新記録を作つたとか、小さい事柄でございますが、国民に与えたところの影響は極めて大きかつたと思うのでございます。併し私は、そういう過程を辿つて成長して来たところの戰後のスポーツというものは、学校体育の面においても、社会体育の面においても、余りにも手放しではないか、こういうふうに私は考えておりますが、大臣はどういうようにお考えになつていらつしやるか、スポーツ行政についてどういう見解を持たれておるか、先ず承わりたいと思います。
  188. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) スポーツというようなものを通じて若い者にフエアな精神と申しますか、公明正大な精神を教え込むということは非常にいいことだと思います。併しどんないいことでも行過ぎては又非常に惡い結果になりますから、文部省ではそういう点については行過ぎないように今いろいろ制限を加えております。
  189. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 制限という言葉を承わりましたが、これは又過ぎると困るのでございますけれども、こういう点は大臣はどうお考えになつておりますか。新制高等学校、それから新制中学校、こういう野球選手というものは、有名校になると殆んど、殆んどというと語弊がありますが、年中三割くらいは授業をしないで全国を股に試合をやつて歩いている。而も学生スポーツで百円から百五十円の入場料を取つてつておる。まあそういうこと以外に、更に警察あたりで青少年不良化防止対策として警察主催で新制中学校とか小学校の野球大会をやつておる。こういう問題については大臣はどういうふうにお考えになつておるか、どういう指導をなされようとしておるか。
  190. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私が制限と申したのは、そういうことについてでございます。例えば中学校の生徒が全国大会をやるとか、そういうことは私は行過ぎではないかと思つております。だから中学校の生徒ならばその県内の試合に限り、そういうような意味でこれを適当に指導して行くことが必要だと思つております。
  191. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この点については文部省からは一律的に制限することは好ましくないのでございますが、指導要領というような形のものを私は出して頂きたいと思う。その指導要領を汲み取るか、汲み取らないかということは地方教育委員会、或いは、学校当事者の随意でございますが、そういうものが、指導要領がちよつとないと、結局スポーツの非常に強いころの学校というものは、学校の外郭団体が非常な力を持つてつて、学校長或いは教師が相当のこれに教育的な見解を持つていても、そういう外郭団体の勢力によつて曲げられるということで弊害を随分起しておると思うので、その点を私は要望しておきたいと思うのでございます。  それから健康管理についてはどの程度考え、どういう予算化をなされておるのか。と申上げますのは、最近スポーツが振興したのは非常によろしいのですが、近くは中央大学でバツトを振つて死んだのがあるし、新宿高校でも槍投で死んだのがある。京都ではストレートで死んでいるし、それから九州ではデツトボールで死んだとか、或いは福井あたりでは野球を少年に三十五回もやらせてへとへとになつたとか、或いは全国的に有名な杉村選手が過労のためにああいう結果になつたとか、そういうことを考えると、我が国の学校体育、社会体育において健康管理というものが全くなされていないで手放しになつているのではないかと思いますが、これに対する見解並びに対策を承わりたいと思います。
  192. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 運動のほうの指導要領ですねスポーツの、それは文部省で出しております。健康につきましては絶えず健康診断をして、若し異常のある子供はやらせないというようなことを措置いたしております。又私はスポーツについては確かにそういう惡い面もありますが、仮にスポーツがなかつたとしたらどうであるか、野球なんか非常に弊害もありますけれども、野球がなかつたらどうかということを考えますと、子供が絶えず映画館に行くとか、さまざまな私は弊害が起るのではないか。若い人は何か発散する道を考えてやらなければならないから、いいことも過ぎてはいけませんから、それは適当に指導いたしますけれども、全体としてはやはりよいのではないかという考えを持つております。
  193. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点私は諒といたします。私もスポーツは好きでスポーツ礼讃者でございますが、現在の我が国のスポーツ界を見ておりますと、当局の指導理念というものが確立していないのじやないか、徹底を欠いているのではないかという感が余りにも深いから申上げておるのであります。一つ例を申上げますと、先般日米陸上競技大会というのがありました。大臣は名誉総裁の役員であります。大臣の部下の局長以下はずらりと役員になつておりまして、これは神宮競技場でやられたのでありますが、日米親善を期したような大会をむちやに高い入場料をとつて国民大衆は中に入つて見たくてしようがないが、ふところと相談すると入れない。あの競技場には三割くらいしか入つていない。そうして事もあろうに警視庁巡査が物凄く出動しておるのです。正面スタデイアムの向う側を見るとがら空きになつておる。そこに行つて見たところが警官招待席といつて何百も空けてある。こういうような事態を私は見て、果して名誉総裁に大臣はなつておりますが、社会教育局長あたりで指導されておりますが、一体どういうような指導をされているのか。更に入場料の徴収あたりについて警視庁の巡査あたりが果して出動するというような任務があるのかどうか、非常に怪訝に感じましたのであえてこれをお尋ねするわけです。  もう一つこれに関連してお伺いしたい点は、今度の補正予算は第六回冬季オリンピック大会への旅費として四百二十五万円計上されておりますが、一体役員は何人で選手は何人か、そうしてこの費用は選手一人当りの負担、自弁というものはどの程度になるのかそれを承わりたい。
  194. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 今の二点につきましては私は事情をよく存じておりませんので、政府委員のほうから答えさせて頂きます。ただ社会教育局長が参つておりませんから、他の機会にお答えすることを許して頂きたいと思います。
  195. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の何もわからんのですか。補正予算にある冬季オリンピックの四百二十五万円、これは政府委員にはわかつているでしよう。
  196. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) その事柄は存じておりますが、何人行つてどうだということは……。
  197. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 政府委員で結構です。
  198. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 今度の補正予算の選手派遣費の中には十五人の派遣費が入つておるのでございますが、そのうち役員はたしか一人であつたと記憶いたしております。
  199. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 選手の自弁額はどのくらい……これでは行けないでしよう。選手は一人当りどのくらい出すのですか。
  200. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 選手の派遣費は半額を政府で負担するということになつておるのでありまして、一人の派遣費はたしか三十万円くらいであつたと思います。
  201. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はこういう国際競技大会というものはやはり国民外交の使命を果す点において非常に高く評価されていいのじやないかと思う。いつかの新聞に出ておりましたが、オスローのオリンピック大会に行くために選手が街頭で花を売つて、それによつて行くというような記事を見て、私は非常に気の毒に感じたわけでございますが、これは冬季の分でございますが、次のヘルシンキの分もあるわけでございます。こういう海外に選手が遠征するに当つては、これが国家予算の八千億円と比較すれば、極めて僅かなもので、国民に及ぼす影響と他国人に対する国民外交という点から考えても、私は国家として随分効果的な投資だと思うのですが、大臣はその見解、どういうふうにお考えになつているか。先般衆議院の委員会でも問題になつたように新聞で見ましたが、オスローへの派遣予算の獲得について、大蔵大臣は割合消極的なようでありますが、文部大臣としてはどういう努力をされる覚悟か、又大蔵大臣はこれにどの程度の理解を持たれ、同情ある予算を組まれる予定であるか、質問申上げたいと思います。
  202. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私もこのオリンピックの派遣については、單なる運動競技のことだけではなくして、国際的な非常に重要な意味を持つていると思つております。それは最近インドに行つたあの競技が証明いたしておると思つております。けれどもやはり今の日本としてどれだけが適当か、不適当かということもあろうと考えております。あとは大蔵大臣からお答えいたします。
  203. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。文部大臣と同じ考えで、できるだけこういう国際競技大会には出したいと思いますが、何分にもお金の問題でございます。而も又、非常に不自由いたしておる外貨の問題、こういう面がありますので、できるだけ努力はいたしておりますが、今の現状程度でございます。今の状態で我慢して頂かなければならんと思います。先だつても柔道の人がフランスに行かれるので、私は個人としては大いに賛成だということでやつたわけでございますが、やり繰りいたしまして或る程度柔道のほうにも外貨でやりました。
  204. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この点については大蔵大臣の御善処をお願いいたしまして、次の質問に移ります。  天野文部大臣にお伺いするのでございますが、今度政令諮問委員会のほうから教育改革について答申案が出たようでありまして、これは次の通常国会で問題になると極めて重大だと思いますので、私一、二の点についてお伺いいたしますが、先ずこの政令諮問委員会の答申というものは、当然これは政府は鵜呑みにするものではないということははつきりいたしておるのでありますが、審議機関をどういうふうにして設けるかということが一つ、この中で最も大事な問題について一、二お尋ねするのですが、大臣は政令諮問委員会の答申であるから審議会に諮つて云々ということを言われるかも知れませんが、現在天野さん個人としてどういうふうにお考えになつておるかという点を私参考に承わつておきたいのであります。そこであの答申案の中の教育専修大学というものをどうお考えになるか。それからもう一つは学校体系の例外を設けておる。新学制が六三三四と一本の体系になつたのが特徴であつたわけでありますが、あの答申の中には、学校体系の例外というものを設けておる。これに対してどうお考えになるか。それから最後にお伺いいたしたい点は、総合高等学校の分解、原則として学制を廃止すると、この点について文部大臣天野さん個人として現在どう考えられておるか、それの答弁をお願いします。
  205. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 政令諮問委員会の答申はまだ私は正式に受取つておりませんが、只今お尋ねの点につきましては、私は六三三四というこの線はもう動かしてはいけないけれども、ただ六三と次の三を合せた六年の学校を作る、六三三四なんですが、その六年の学校を作るとか、そういうことはできると思うのであります。それを一緒に集めることができますけれども、原理的にはどこまでも六三三四になるということです。もう一つのお尋ねは学制の点だと思います。この学制というものは、原理的には非常にいいことだと思いますけれども、日本現状には或いは適しないということもあり得るのではないか、いろいろこれについては批判もありますから、十分検討をしたいと考えるのです。
  206. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総合高校は……。
  207. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 総合高校についても同じことでございます。原理的に言うならば、総合高校もいいですけれども、これは非常に問題があると思います。これは学制よりも、もつと大きな問題があるというふうに考えて、両方とも原理的にはよいけれども、実情という点から研究を要するものがあると考えております。
  208. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この点について要望しておきたい点は、審議機関を作るに当つては、結論を予想して、その立場から審議機関の委員を構成するようなことのないように、これは国家百年の文化政策の大転換期に立つておりますので、特に要望いたしておきます。  次に簡單にお尋ねいたしますが、給食の問題については打切ると閣議できまつたというような大蔵大臣からの答弁になつております。これらについてお伺いいたしたい点は、給食の問題は再三、再四の閣議決定によつて、文部省が教育委員会を指導し、そうしてPTAの積極的な協力の下に、全国のPTAは約百億円の金を投じて給食を本日までやつて参りました。で、これはこの段階において政府はこれを打切る態度をきめた。天野文部大臣は何らかの方法でやりたいといいますけれども、父兄の懐工合からいうならば、月に百五十円を超えたならば絶対に給食は行えない、やつてもらいたくない、これは圧倒的な声であります。現在ですらこの貧困児童の給食費が出ないために、PTAが若干持つ、そこにPTAが非常な発言権を持つて、公共団体立の学校であるか、PTA立の学校であるかわからん形になつて、PTAが発言権を持ち、学校におけるところの教育の自主性というものは逐次破壊されつつあるという段階であります。こういう段階において、天野文部大臣が言われるように、農林省或いは厚生省と連絡をとつて何らかやつて行きたいというようなことは、仕事の上においても、形の上においても到底不可能であると考えておるのでありますが、それはともかくも、閣議で数回も決定をし、そうして地方を指導してやらせて、百数十億の金を国民は出して協力しておいて、この段階にやめる、同じ吉田内閣でやめる、この政治的責任は如何なる形において誰がとられるのか、天野文部大臣に答弁を求めます。なおこれに対する大蔵大臣財政的な立場からの責任ある答弁を求めます。
  209. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私は、元来、給食が教育にとつて非常に重要な意味を持つておるということを考えておるものですから、来年度においてもできるだけやりたいのですけれども、併しやはり国家財政ということから、それができないということであればいたし方ないと思います。併し今までできるような見込を立てて、その下に指導したということは、誰の責任かと言われると、私の責任であるというよりほかございません。
  210. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大蔵大臣、何かございませんでしようか。
  211. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 誤まつて伝えられては困るのでありますが、閣議で数回決定をしたとおつしやいまするが、私は閣議では二回だつたと思います。まあ二回も数回に入るかもわかりませんが、(笑声)そこで最近の閣議の決定につきましては、これは新聞にも出たと思いますが、対日援助資金のある限りにおいては、対日援助資金から出る限りにおいては給食を続ける、こうなつておるのであります。これは今年の五月の二十何日だと思います。昨年の十月頃の決定も実はありまして、これもやはり対日援助資金で賄つて今までやつておるのであります。それを前提といたしまして、今年の五月は、そういうふうに対日援助資金のある間はと、こうなつておるのでありますが、対日援助資金による給食はこの十一月からもう五億円だけ……、ただ新聞で御覧になるように十八億円対日援助費が今年度はある。一般会計から十五億円でいいということになつたのです。然るところ十八億円も駄目になりまして、四、五億円になりましたので、十五億円が二十四億円になつたのです。このやり方は、あなたは専門家であるからおわかりでございましようが、文部省のほうでは或いは財政資金も、いろいろなことがあるから、来年度におきましては相当減額しておるのであります。で、今の文部省と大蔵事務当局の分は、来年は十八億に。プラスの運転資金が八億ということになつておるのでありますが、十八億ということになると、牛乳代だけでも月二百五十円の父兄の負担になる。これで堪まりましようか。三人も小学校に行つてつたら牛乳代だけで七百五十円要るということになります。而もこれが千百万人の児童の中で五百五十万人の牛乳の支給になります。そこでそのとき子供一人で二百五十円の負担のときにおいて、政府が三十円負担するという案でございます。こういう案では実際行われるか行われぬか、私には自信がつきせん。いろいろ陳情を受けまして、実際を話しますと、そうかと言つて帰られる陳情人が多いのであります。そこで給食ということは文部大臣の言われる通り、教育上いいことである。そのこと自体には反対いたしませんが、これを一千百万人の中の五百五十万人で我慢すべきか、或いは牛乳のほうに三十円出して、パンのほうは一つも出さずでいいか。こういう根本的な点を十分父兄その他でお考えになつて、今私は給食に反対するものではないが、財政的にこれを援助することは困難である。給食をおやりになることは何ら差支えない。そこで父兄の負担或いは国の負担、こういうことを考え、而も国が負担するとき都会地の児童だけに政府が多額の補助をして、農村の児童に出さんというわけにも行きません。そういう点で給食自体はいいことでありますが、これをどうやつて行くかということは大問題だからというので、私研究いたしておるのであります。而して只今のところでは、給食について閣議決定はどうこういたしておりませんが、給食のための財政負担は御免をこうむると、こういう一応の内定をいたしております。
  212. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間がないので急ぎます。さつきルース台風に対しましては佐多委員から質問があつたわけでありますが、それで私もダブつて質疑いたしませんが、私はあの大臣の言葉の中で了解できないことは、大臣財源があつても今度の国会で補正予算を組むことはむずかしいと言われましたが、曾つて池田さんは災害復旧は全額国庫負担しなければならんということを言つたことがありますので、私は、大臣に本当の熱があれば至急にできやしないかと思うのでありますが、この点について御答弁をお願いするわけであります。と申しますのは、私はキジア台風のときにも大阪に視察に参りまして、今度のルース台風にも参りましたが、私の見た範囲ではキジアとルース被害状況というものは比較になりません。殊に山口県の錦川沿岸の被害は父祖伝来の土地を捨てようかというような惨澹たる状況でございます。これが大阪からずつと西になりますと、やはり中央への宣伝というものが徹底いたしませんので、案外東京におられるところのかたがたは、被害は軽かつたのではないかというくらいにお考えになつておるところがあるのではないかと思います。曾つて全額国庫負担で復旧はやるべきだという指導をなさつておる池田さんであれば、災害があつてもむずかしいということは、私は大臣の意欲というか、そういう点に疑問を持つておるのですが、その答弁が一つと、それからこれを視察して復元復旧では駄目であつて、改良復旧をやらなければ、国家の金は有効に使えないということをよく本会議で代表から報告されたところでありますが、恐らく建設大臣から大蔵大臣に進言があつたと思いますが、そういう覚悟で大蔵大臣が行かれるつもりであるかどうかという点、それからもう一点、これは農林大臣に対する質問でありますが、干拓事業を見てみますと、これも全国がそうでありますが、災害がなくても、大きな台風が来なくてもそうであります。非常に予算を細分化する関係上もう一息ででき上るというものが、ちよつとした雨或いは台風によつて壊れる。又やつて又壊れる。賽の河原みたいなことを繰返しておるのでありますが、これは国家の予算を最も効率的に使うという立場から、これらの地元からは猛烈な運動があるかとも思いますけれども、国家的立場に立つた場合には、これを重点的に片付けて、甲を片付けて次に乙というような積極的な予算の使用の仕方というものはないものかどうか。そういう点について農林大臣はどういうふうにお考えになつておるか。所管事務でありますので御答弁を願います。
  213. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) シヤウプ勧告には災害復旧は全額国庫負担ということがありまして、一年度だけはやりましたが、昭和二十六年度からはその原則はやめまして、一部地方負担ということになつておるのであります。更に災害復旧のための負担ということと、補正予算を組む組まんということとは別個の問題であります。而して先ほど佐多君にも申上げましたように、第二次補正予算を組みたいということで、只今検討を続けておるのでありますが、結論は申上げられん、こう言つておるのです。  次に災害復旧に対しまして、復旧という度を超えて改良という点も加味したらどうか、御説誠に御尤もでありますが、私のところには余り金がございませんので、又できるだけ国民の負担を少くしようという方針で進んで行つておりますので、立派な復旧改良をいたしたいのでございますが、なかなかそこまでむずかしいのであります。こういうところに来ますと、又こういうところでなくとも大蔵省におりますと、金を出せくという陳情ばかりでありまして、なかなかやりきれない状況であるので、気持はわかりますけれども、どれだけ金が出せるかということは今検討いたしておるのであります。
  214. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。干拓事業において、予算の集中的支出がないというために、年々賽の河原のような状況にあるという御指摘の点は我々も非常に憂えておる点でございます。できるだけ集中的に実施いたしたいと思います。併しそれについては、大きな干拓事業でありますと、一年に一挙にということはちよつとなし得ません。或る場合には三年、四年計画になります。その間に災害を受けるということは、誠に残念ながら止むを得ないことでございますが、御指摘のように重点的にできるだけ効率的な使用をいたしたいと考えております。
  215. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大蔵大臣に次にお伺いいたしたいのでありますが、随分本委員会において平和、安保両條約成立後における国民生活、国家経済というものについて論じられて来ましたが、私もそうでありますが、国民は何となく不安を持つておるわけなんです。今日私は更に不安を増した点は、一つは今まで予算委員会或いは本会議で防衛費は幾らになるかとか、来年度予算の枠というものは大体どのくらいになるかという、こういう質問に対して、相当大臣は自信を持つて防衛関係の費用というものは今までの終戰処理費程度で済むと思う。或いは総額八千億円程度で行けるだろうと、こう申しておつた大臣が、今日の他の委員の答弁では殆んどこれを全部避けて、一切わからないという意味の答弁をなされておりますが、新らしい事態が起つたのかどうか。本当に大臣の言うのは、君ら心配せんでおれに任しておけと言われるのかも知れませんが、相当に見通しを立てて、そうして財政金融を取扱つて行かれておるのかどうか。自信のほどを安心するように答弁をしてもらいたい。
  216. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 財政演説で申上げたことと何ら変つておりません。やはり八千億円台で来年は過したいという固い決意をいたしております。ただ平和回復後の分担金、或いは警察予備隊等の費用、或いは賠償その他の分は私には肚ずもりはありまするが、只今ここで申上げられぬ、こう言つておるだけでありまして、新らしい事も何も起つておりません。財政演説で申上げた通りであります。
  217. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう時間が余りありません。
  218. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 はい、もうすぐ終ります。私は大臣に次にお伺いいたしたい点は、くどいとお考えになるかも知れませんが、私どうしてもこれだけ聞かないとやはり気が納まらないのですが、それは対日援助資金でございますが、簡單にお答え願えればいいと思うのです。大臣が債務だということを申されたのも、私数回耳にした覚えがあります。併し吉田総理が曾つて外務委員会でこの対日援助資金はどうなるかという質問に対して、吉田総理が、これは私の單なる推察でございますが、私はアメリカは極めてこれに好意的に臨んでくれて、まあフイリピンが賠償要求を八十億ドルと、そういうふうにする場合は、対日援助資金というものは先ず優先的に日本が賠償せねばならん金額だ、それをアメリカが二十億ドルぐらい取れば、もう取るところはないじやないか、そういうフイリピンの八十億ドルというような高額の賠償要求に対しては、それを宥めてくれるのではないかというように私は好意的に考えておると、こういうことをまあ吉田総理が述べられたのを私は耳に新たにしておるのでありますが、盛んに大蔵大臣は債務だ債務だと言われておりますが、まあそれだけに先般新聞でアメリカの某議員が非常に池田大蔵大臣を褒めたように書いておりましたが、債務だ債務だと言つておりましたら、そういうような恵みがあるような含みで、そういうような見通しを持たれているのが、全然これは駄目なのか、そこのところを私は答弁のできる範囲で承わりたい。
  219. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は債務だと心得ております。
  220. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はまあ答弁はそれで満足しますが、私はやはり希望を繋いでいるんです。大臣はそう言わざるを得ないかと思いますが、更に先般の委員会でこの警察予備隊に貸与されている武器、これは條約成立後も貸与は続くだろう、こういうように大臣が答弁された。これは私この席上にいないで、新聞で見たわけですが、確かに現在の警察予備隊の武器というものは全部貸与されておる。アメリカのものである。で日本の隊員はこれを大事に使つておるわけですが、これはほんまにこれを支拂うとなつたら、厖大なものだと思うのですが、そういうところにもやはり不安が出て来るわけでございます。そこで大臣にお伺いいたしたいのは、今度警察予備隊百五十億増加したと、これはまあ通信機械とか或いは施設の費用に充てると言つておりますが、今の警察予備隊の装備でも、私は内乱を鎮圧するには随分優秀な施設で、相手とするところの共産党はよほど頑張らなければ勝負にならんと私は共産党あたりをひやかしたわけですが、まあこれ以上新らしい武器を借りるのか、それから今借りておるところの武器は、確かにこれは貸与品としてその金を支拂わねばならんのか、何らか私は話があるんじやないかと思うのですが、答弁のできる範囲でお願いしたい。
  221. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 警察予備隊の使用しておりまする武器と申しまするか、小銃、機関銃その他向うから借りておるのであります。これは借りておるのでありまするから、貸さんということになればそれを返すだけのことで、金でどうこうということは大蔵大臣は今考えておりません。
  222. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もうあと僅かしか時間がありません。
  223. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もうすぐ済むと思いますから……。まあ平たい言い方でございますが、この賠償の問題とか対日援助資金とか、或いは警察予備隊の武器とか、こういうものを考えますと、個人関係で言えば、貸借関係があつて、まあ私がその借りた人ならば、貸してくれた人に常に礼儀を盡して心していないというと、あれを返せと、こういふうに出て来られるのではないかと、更にこちらが一生懸命働いて、そうしてここに経済力が強化されて来るならば、それに比例して取つて行かれるのじやないか。こういうようなことを考えると、むしろ幾ら賠償を拂う、返済は幾らだというようにはつきりきまつてつたほうが明日の希望を抱いて生きて行かれるんじやないか。こう考えるというと、不安があると同時に、経済的には全く私は半独立と申しますか、そういう感じがしてならないわけなんでございますが、これは大蔵大臣にお伺いしても、私が希望するような答弁がないかも知らんが、答弁を求めたいと思うのです。  もう一つお伺いしたい点は、賠償の問題或いはこれからの問題でありますが、対日援助資金も拂う、武器貸与されたものもこれも返却する、それからさつき問題になりました中立国にあつたところの日本国及び日本国民の財産も、日本においでになつてつた捕虜のおかたと、その遺族を慰める意味で、この際赤十字委員会のほうで処理して処分すると、こういうふうになつているわけでありますが、そこでまあ私はこれは生意気なことを言うかも知れませんが、和解と信頼という立場から考えるというと、私はどうしても次のようなことを大臣にあえてお尋ねし、お伺いいたしたい。というのは、大臣はこれからまあ賠償あたりについてもまあ善処されて行かれるでありましようし、又ドツジさんあたりとも経済政策について交渉されて行かれると思いますので、あえて私はお伺いするのですが、この戰争で確かに日本が暴虐をやつたかも知れません。それに対してはまあ戰犯で処分もされております。それからそのやつたところの破壊した行動に対しては、国内にあろうと、国外にあろうと賠償して行こうと、こういうわけですね。而も和解と信頼の立場において講和が結ばれた、こうなれば、中立国にあつたところの財産まで支拂つて行こうと、こうなれば、和解と信頼という立場から言うならば、私は長崎で原子爆彈を受けた者でございますが、長崎とか広島とかああいう非戰闘員に対して投下された原子爆彈によつて死傷し、或いは遺族として、孤児として残つたそういうかたがたのためにも、和解と信頼の立場からならば、何らか考えられて然るべきものじやないか。そういうことを併せ考えるときには、日本の復興に非常に役立つたところの対日援助資金というものは、イタリアの條約と同じように帳消しにして頂けるんじやないか。総理とか大蔵大臣あたりから、この国家財政、国民経済というものを十分お話しすれば、和解と信頼の対等の立場に立つたところのこの両條約においては、そういうことは成し遂げられるんじやないか。そうすることによつてお互いは一日も早く立直れるんじやないか。こういうことを常々考えておりまして、どうしてもこれをお伺いしないと気が済まないので、あえてお伺いするわけですが、御答弁を願います。
  224. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御意見は御意見として承わつておきまするが、私は繰返して申上げますように、債務と心得まして、できるだけ拂いたい、こういう気持でおるのであります。
  225. 和田博雄

  226. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 通産大臣がおつたら五分間聞かせてもらいたいですが……。
  227. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 通産大臣はまだお見えになつておりませんから、今度おいでになつたときにお願いいたします。
  228. 山下義信

    山下義信君 私のあとで山田君に……。私は大蔵大臣に一つだけ伺いたいと思う。若し誠意ある御答弁を得ましたら、もうそれで満足であります。ほかでもございません、この戰争遺家族に対しまする対策でございます。大蔵大臣はどういうお考えを持つておいでになりましようか。承わりたいと思います。
  229. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 傷痍軍人並びに軍人遺家族のおかたに対しましては、財政上できる限りの扶助を差し向けたい、こういう考えを持つております。何分にも戰争犠牲者はいろんな種類がございまして、只今矢嶋さんのおつしやつたように、原子爆彈等で遺族になられたかたも、なかなかこれは気の毒な状態もあるのであります。我我といたしましては、できるだけ戰争犠牲を平等にしたい、こういう気持で進んでいる次第であります。
  230. 山下義信

    山下義信君 大臣のお心持ちわかるのでありますが、このたびの補正予算に一応の調査費を御計上になつたのであります。実は補正予算に何か遺家族援護に対しまする相当の額が計上せられるのではないかという一部の期待もあつたのでございますが、補正予算をお組みになりますときに、何かそういうことをお考えなつたことがあるのでございましようか、如何でしようか。
  231. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今までの経過でも御存じの通りに、当初は、こういう調査費を組むことも今年の七、八月頃まではなかつたのでありますが、何と申しましても、平和回復後におきましては、どうしてもこの問題を片付けなければならない、こういうので調査費を組んだわけでございます。從いましてこれは補正予算で一応組みましても、根本的な対策を立ててやらないと、二十七年度、二十八年度にも残る問題でございますので、これは慎重にやつて行かなければならない問題だと思います。我々は、この戰争犠牲者に対しましてできるだけの措置は講じなければなりませんが、賠償を要求しております連合国のこれ又戰争犠牲者のことも考えて行かなければならんのであります。而もその戰争犠牲者の問題がやはり賠償のいわゆる根本になるわけでございますから、自分のところの戰争犠牲者だけを考えて、ほかは知らないのだというのもこれはいかない問題でございます。  私どもの考えといたしましては、戰争犠牲者につきまして先ほどお答え申上げましたような、できるだけのことをいたしたい。併しこれが財政上に及ぼす影響、その他対外関係のことも私としては或る程度のことは考えなければなりませんので、十分な調査をし、確信を持つてから援助の手を伸ばしたい。こういう気持でいるのであります。
  232. 山下義信

    山下義信君 大臣のお考えよくわかるのです。補正予算に一時的な考え対策を計上いたしますということもこれは急いでやつて見るということも考えられますが、併し根本的な計画を立ててやるということのお考えは私どもよくわかる。自然昭和二十七年度予算で御期待申上げるということに、遺憾ながらそういうことになりますわけで、まあ時期といい、当然来年度は相当のお考えをお持ちだろうと考えているのであります。  大臣は、この遺家族援護に要しまする経費をどの程度考えになつているかということを承わりたいのであります。これは或いは無理なお尋ねになるかとも思いますが、大体この遺家族援護関係の費用は、講和関係の費用とお考えになつておられるのですか、如何でございましようか。
  233. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の肚ずもりでは、講和関係費といううちには入れておりません。別のほうで考えております。
  234. 山下義信

    山下義信君 まあどのくらいの費用をこれに割いて頂けるかということはいういろいろな点と睨合わされて非常に苦慮されて下さることだろうと思うのでありますが、大体これは率直に申上げまして、私は二百億や三百億ではこれは遺家族援護の、まあ十分というわけに行きませんが、対策という程度にはなると私思うのでございまして、その点相当大蔵大臣としては覚悟願わなければならん。又お考え下さる肚があるのではないかと思いますが、その辺のところは、どういうお考えをお持もでございましようか、承わりたいと思います。
  235. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今のところ数字につきましてはお答えすることはできませんから御了承願いたいと思います。
  236. 山下義信

    山下義信君 大臣のお考えといたしましては、只今の御答弁で若干窺われたのでありますが、公平な見地からその対象者につきましては、できるだけ洩れのないように、單に局限されました軍人軍属だけでなく、これは昨日の当委員会におきましても厚生大臣との間の質疑をいたしましたのでございますが、更に大蔵大臣のお心持ちを伺いたいと思うのでありますが、広く公務又は公務に準ずる立場で直接的な戰闘の被害によりましたその犠牲者もこの際できるだけ包含したいというお考えがありますかどうか。この点を承わつておきたいと思うのであります。
  237. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) よく調査の結果を見まして、又片一方の財政の状況を考えまして善処いたしたいと思います。どういうふうなやり方にするかということは、実は私今全然白紙でおります。事務当局の調査並びに考え方はできているようでございますが、御承知通りに寸暇もない状態でございまして、それを聞ぐ暇も実はないというので、いずれ十分検討いたしまして、御納得行けるかどうかわかりませんが、御納得行けるような案にして出したいと思つております。
  238. 山下義信

    山下義信君 お心持はよくわかりましたのでありますが、これは実は急を要していると思うのであります。と申しますのはすでにもう十一月の末になつておりまして、明年度予算と申しましてもあと日数がないのでございますが、この遺家族援護の方法の政府の方針がきまりまして実際にその技術的にそのほうの関係の立法をいたしますにしましても、二、三カ月を要するのではないかと思うのであります。まだ政府の御方針がおきまりにならんというのでは、誠に不安に思うのでありますが、どういたしましてもこれは大蔵大臣のお考えが非常に影響いたします。政府部内におきましてはいろいろまあ御研究のようでございますが、聞くところではどれだけこれに振り向けて頂くことができるかということの、それの大体の金額が見通しがつかなければ支給方法もきまらん。又支給方法の対策がきまらなければ、あなたのほうでは勘定のしようがないということになりますと、これはいつまで経つても目鼻がつきかねるということになりまして、関係者はその間にさまざまな思いをいたすわけであります。政府のほうにおかれましては、至急に根本の方針をお立てになつて頂きたい。非常にお忙しいことであろうと思いますが、殊に昭和二十七年度予算の大綱につきまして御折衝が間近に迫つており、或いは折衝中でもあろうと思いますが、根本方針を至急にお立てを願いまし工相当関係者が期待しておりまするその期待にお副い願いたいと思うのでございますが、大蔵大臣はどうお考えでございましようか。
  239. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 早急に結論を出したいと努力いたしております。
  240. 山下義信

    山下義信君 もう一つまあそれに関連しまして、あなたのお心持を承わつておきたいと思うのであります。御承知のように恩給法のような考え方で一律平等な扶助金を今日のベースに直して支給しようというような考え方、又遺族の扶養者に対しまして生活保障的な考え方で行こうという考えがまああるわけであります。大蔵大臣といたしましては恩給法的な考え方で遺族扶助料にでも該当するようなものを出すがいいとお考えでございましようか。或いはその遺族に対しまして生活保障的な考え方でできるだけこの生活の立場を考えた支給方法をとつたらいいというようなお考えがありましようか、大体の考え方につきましては大臣はどういうふうなことがいいとお考えでございましようか、承わりたいと思います。
  241. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろんな問題点は聞いたり考えたりいたしておりまするが、私は今事務当局考えておるのをまだ一つも見ておりません。白紙で一ついろんな意見を聞いて、それから結論を出したいと思つております。今のお考えのように二通りもあります、まだ三通りぐらいもあるかとも思いますが、いま暫く御猶予を願いたいと思います。
  242. 山下義信

    山下義信君 それでは無理なお尋ねはいたしますまい。これから十分御検討を願わなければなりませんが、それでは本日のところではできるだけ対象者を広く網羅いたしまして、真に今次の戰争の犠牲者として軍人、軍属並びにその他徴用工、或いは義勇隊、学徒挺身隊等にありまして、真に戰闘的な立場に置かれまして犠牲者に相成りました者は、できるだけ包含するがいいということだけはお考えが頂けたものと、こう了承してよろございましようか。殊にこれは実はごこに大臣にお目にかけたいものがあつてスクラツプを持つてつておるのでありますが、これはあとでお目にかけますが、大臣の出身地方も非常に該当者が多いのでありまして、遺家族の実態調査がされるということが、報が一たび伝わりまして、広島県の呉市でありますが、呉市役所に多数の軍人、軍属或いは又工廠などに勤めておりました徴用工等々の遺家族が多数詰めかけておりまする写真等が掲載されてあるのでありまして、そういう対象者がどの程度考えられるであろうかということは、至大な関心を持つて見ておるのであります。できるだけ大蔵大臣としては公平な見地から、この対象者はよく考えて、落ちのないようにするという考えがありますかどうかということだけ確めておきたいと思います。
  243. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは財源その他にも関係がありますので、今対象者をどういうふうにするかという問題も留保いたしたいと思います。十分軍人遺家族の調査を見まして、一応の調査もできておるのでありまするが、なおこの上ともそういうお考えを入れて調査を完璧にして結論を出したいと思います。
  244. 山下義信

    山下義信君 只今大蔵大臣がそういう考えを入れて調査して完璧を期したいという御答えで、私はこの場合は了承いたしておきます。  只今の問題に関連いたしまして文部大臣に伺うのでございますが、学徒動員或いは女子挺身隊等に徴発をせられまして、当時強制せられて軍の作業に從事いたしましたそれらの犠牲者に対しまして、この際何らか文部大臣としてお考えになりますることがあるかどうか承わつておきたいと思います。
  245. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) その点につきましては私は全く御同感でございまして、早くからこのことは厚生大臣にも申上げ、文大蔵大臣も私の考えを御承知でございます。で、今事務当局にその数を、厚生省の事務当局と相談をしてもらうと同時に、わかつておるのが一万一千人でございますが、そのほかに恐らく実数はその数倍に上るのではないか……、それを大学とか地方の教育委員会のほうでも調べてもらうように手配をいたしております。
  246. 山下義信

    山下義信君 大臣の御答弁を諒といたします。この点は文部大臣極力一つ御盡力願います。私どもも努力いたしたいと存ずるのであります。その際お忘れ下さらんようにお願いいたしたいと思いますのは、当時少年義勇隊と申しますか、というような組織をされまして、満洲の開拓等に送られまして、非常に無残な非業な死を遂げております幾多の少年などもあるわけであります。どうか漏れのないように、この際戰争犠牲者の援護対策に対しましては十分御盡力を願いたいと存ずるのであります。  文部大臣がおいでになりまする機会に私ついでに承わつておきたいと思うのでありますが、学校給食のことが先ほどからいろいろ御議論が出ておるのでありますが、これはまあ大蔵大臣もその御意見じやなかつたかと思うのでありますが、これは私も先般都内で集団中毒事件が起きましたとき大臣に伺つたこともありまして、こういうことを学校でやらせておりますというと、業者との間に忌しいことが起きたりいろいろな煩わしいことが起きる虞れもあるのじやないかということを当時から心配しておりましたが、今文部省の本省のほうで何かそういうようなスキヤンダルが見えたが、新聞に載つておりましたのですが、遺憾でございますが、これはそれこそ御心配であろうと思いますが、私いつそ厚生省でこれを学童のウエルフエアとして、教育の問題もありましようけれども、この学童の福祉の問題として一つ今日おやりになるにいたしましても、いろいろ全国的に見渡しましてお考えがあろうかと、若しこれがそういう児童の福祉の仕事として考えて今日継続してやるにいたしましても、考え方を変えてやるということになりますると、これは私は又やり方があるのではないかと思う。その点文部大臣はどうお考えになりますか、無理にですな、いろいろ無理にこれを飽くまでも強行して、從来の形態でやらなければならんというお考え方でなしに、多少考え方を新たな観点に立たれておやりになりましたらばどうかという気持がするのでございますが、その点大臣どうお考えになりましようか。
  247. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 学校給食につきまして省内に非常に申訳ない事件が起つておるということについては、私も誠に相済まないと思つております。この問題は、私元来は教育の問題として考えておるのでございますが、教育の問題として非常にこれは重要性を持つと思つておりますが、併し今のような社会福祉という面から考えるということもこれも一つの考え方と思いますので、よくそういう点を虚心坦懐、よく考慮をいたしてみようと思います。
  248. 山下義信

    山下義信君 その点若しこれをですね、ウエルフエアという面から、まあ厚生省でなくとも文部省でよろしうございますが、そういう観点に立つてやろうということになりますと、私は又意義があるという気持がするのでありますが、大蔵大臣はどうお考えになりましようか。
  249. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 文部大臣と同様な考えを持つております。教育問題でもありますし、福祉問題でもあるので……。
  250. 山下義信

    山下義信君 それは教育上の問題でもありますが、福祉の面として新しい構想で以てやるということになりますと、これは先般大蔵大臣が各国の児童給食が社会保障制度の一環として行われておるということをお述べになりまして、私は非常に御研究の深いのに敬服したのでありますが、そういう考え方でやるということになりますと、将来学校給食も形を変えて、そういう性格のものならば大臣も或る程度は御賛成になるというお考えがありましようかどうか、承わつておきたい。
  251. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 父兄のかたがたでおやりになることは賛成でございますが、国の負担において特殊の地域の児童のみということにつきましては、全般的によほど考慮しなければならん問題だと思います。
  252. 山下義信

    山下義信君 特殊の地域だけではないと思います。ウエルフエアの問題になりますと、やはりいろいろ家庭事情の問題でありますとか身体の虚弱児でありますとか、そういうふうな福祉の措置を必要とする児童を対象ということになりますれば、大蔵省も成る程度はこの仕事について御理解にやぶさかではないのではないかと考えるのでありますが、この点如何でございましようか。
  253. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私も先ほど申上げましたように千百万の児童のうちで五百五十万の児童のために特に相当の財政支出をするということはどうかということを申上げたのであります。今の全体の考え方で、生活保護法的に極く貧困な家の児童に、他の児童がPTAその他でやるというときに、極く貧困な児童のために或る程度補助をするということは私は研究の余地があると思います。而もそれが千百万のうちの三百万とか四百万の場合におきまして、どの程度つたならば公益観念に反しないか、こういう問題が起つて来ると思うのであります。私は今の財政的支出をしないという一応原則で、今度の給食を継続するのにどうやつたらいいかということを文部大臣に御研究願つておるのであります。そこで全然しないということではないが、原則としてしないということに私は考えておるのであります。特定の地域でありましても、皆の、全国民の納得の行くようなことであれば私は考える余地はあると思うのであります。
  254. 山下義信

    山下義信君 大変こう明るい希望のある御答弁を頂きまして、是非そういう方向で政府はお考えを願いたい。私は児童福祉の点から切にお願いいたしておきます。  文部大臣に私一つたびたび失礼でございますが伺つておきたいと思います。PTAの例の会費のことにつきまして東京都がこれを寄附と取扱い許可を要する云々ということが出ております。これは非常に重大なことであろうと思いますが、やはりPTAに集めました金の使い途によりましては、寄附行為というような考え方で相当の制約をする必要があるとお考えになりましようか、このPTAの会費というものについて寄附というような考え方が妥当であるかどうか、文部大臣の御所見を承わつておきたいと思います。
  255. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 一体ならばPTAが寄附をするというようなことはこれは非常に望しくないことですけれども、日本現状として誠に止むを得ないものがありますから、これは今のところいたしかたがないと思つております。けれどもそれが適正に使われるということが非常に重なことでございます。これは教育委員会のほうでやつておることでございますが、文部省としてもそういうことについては相談に与り、すべて適正にやつて行きたいと考えております。
  256. 山下義信

    山下義信君 若し寄附ということになりますと、やはり都道府県の認可を要するとお考えになりませうか、教育委員会の監督上にありますれば、都道府県知事の許可を求めなくてもいいのじやないかと思いますが、解釈は寄附と解釈されて、一々都道府県知事の許可がやはり必要であるとお考えになりましようか、如何でしようか。
  257. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) これは教育委員会が一般に指導しておることでございますが、寄附のことはすべて府県知事が許可しておるというのじやなくて、そういう場合もあるということであると思います。併し詳しいことは事務当局はつきりしておりますから、事務当局から答えさして頂きます。
  258. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 自発的な寄附は一般的に法令で禁止されておるわけでございませんで、各県におきまして條例等によりましてそういつたものについて県知事の認可を要する或いは許可を要するということになつておる府県はあるようでございます。全般的に法令的にそういうふうになつておるのじやないと私は承知しております。
  259. 山下義信

    山下義信君 寄附に対しましては都道府県知事の許可を要する法規があるのでございます。これは具体的に申しますというと社会福祉事業法の規定がございまして、條例ではない、法律にあるのです。ですからこれは寄附であるということになりますと、都道府県知事に届出なければ金を集めることはできんことになります。ですから若しPTAの会費がこれは寄附の性質であると認定された部分については許可を受けなければならんことになりましようが、そうすると教育委員会との関係がこれは混線して来る虞れもあるわけで、PTAの会費に関しては多少それが何か学校の備品の買入れその他のことに使われたような寄附的な性格が若干あるにいたしましても、これは他の一般の寄附行為とはおのずから性格が違うので、寄附とは認めないとか、これは多少の臨時会費というような性格があつても飽くまでも会費であると、こう見まするか、やはり寄附という形があれば法律從つて許可を受けなければならんかということをはつきりいたして置きませんというと、全国のPTAのそういつた同種のものが非常に混乱を生ずるようになりはしないかと思いますので、ここではつきりPTAの会費は寄附行為ではないのだ、飽くまでも会費だとお考えになりまするか。その使途によつては寄附的な性格が、臭いがするときにはやはり法律從つて許可が要るのだ、こういうことにおきめになりますか、これを御決定を願つておきたいと思うのであります。如何でございましようか。
  260. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) これは確かにおつしやるように問題だと思つております。ただの会費と考えるか或いはこれを寄附と考えるか、私個人としては会費と考えでいいのじやないかと思いますが、併しこれははつきりさせることが必要ですから、研究して又お答えいたすことにいたします。
  261. 山下義信

    山下義信君 私も同様に考えるのであります。御研究下さつてよろしいのでありますが、一応今日のところでは寄附でない、会費である、かように大臣考えであると了承してよろしうございましようか。
  262. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私も大体そう考えております。併しこのはつきりしたことは一応研究することをお許し頂きたい。
  263. 山下義信

    山下義信君 岡野国務大臣お待たせいたしまして恐縮でございますが、伺いたいと思うのでございますが、かねてまあ從来御心配をかけておりますのですが、児童福祉の措置費の平衡交付金から抜いて頂きたいという問題でございます。本会議その他におきましても非常に御同情のある心持を伺つておるのでございますが、今回の補正予算にも組替ができないようなことでございます。これはどういうふうなことになつておりましようか。補助費にこの組替が将来頂けましようかどうか、丁度大蔵当局もおいででございますので、予算委員会で承わりますれば好都合かと思いまして伺いますが……。
  264. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。この問題は、この前の国会に河崎委員からも御質問がございました児童福祉ということが、この国家の現状といたしまして非常に大事なことであるから、何とかこれを確保するようにしなければならんという立場からいろいろ研究を進めておりました。まだ厚生省との間で十分なる検討並びに結論を出しておりませんが、先般本会議で厚生大臣が河崎議員の御質問お答え申上げましたように、厚生省としては、これを何とか交付金のほうから抜きたいというようなお考えでございました。併し一面におきまして、これは平衡交付金を作りますときに、相当問題になつた事項でございまして、これを平衡交付金から抜きましで独立させるということについては、平衡交付金の跡始末とか、又これを国家が補助金として出しますについて、どういうふうにして行くか、重大な問題でございますから、それで急に決定が付きませんで、まだ延び延びになつておりますが、研究は持続して盡しておるわけでございます。
  265. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 山下君に御注意申し上げますが、あと二十五分であります。
  266. 山下義信

    山下義信君 もう五分で終ります。これは只今の御答弁で非常に失望いたしたのでございますが、併し交付金から抜きますことは、非常に各方面から理解を頂いて、岡野国務相も御賛成で御盡力下さるので、まあ大蔵省のほうも大体御異論がない。ただ問題は地財委の、率直に申しますと、地財委の事務当局等におきまして、いろいろ難色があつて、そういうことになつておる。厚生省は頻りにお願いをして努力しておるのだ、大体上のかたは賛成して、ただ技術的にどう抜くかということだけが難点になつておるので、これは是非昭和二十七年度にはそういうふうな実現し得られる可能性があるのだと厚生大臣はしばしば答弁をしておるのでありますが、只今の御答弁によりますと、これは非常に危なつかしいようなお話でございますが、これはお見込みはどうでございますか。駄目なのでございますか、どうでございましようか。
  267. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。見込みは駄目とは申しません。併し又直ぐ成功するとも思つておりません。
  268. 山下義信

    山下義信君 わかりました。なかなかこれは見込みがありません。そうすると、関係者はこれはもうあなたのその本会議の答弁を聞いて、御希望に副うようにします、昭和二十七年度からは実現し得られるようにいたしますと厚生大臣は言い、そうして関係者は、この二十五億の児童福祉の措置補助費に変つて、これが末端まで滯りなく行くことは日ならずしてできると確信しておりましたことが、非常にこれは危なつかしいことであるということがはつきりいたしました。大蔵大臣もここにお出でになりますので、この問題につきましては、大臣はどういうふうにお考えでしようか、承わりたいと思います。
  269. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 余り詳しいことは存じませんが、私はこの平衡交付金ができまする場合において、生活保護費はどうするかというので、生活保護費が平衡交付金のほうへ入つてつたものですから、児童福祉費もそれで行つたと記憶いたしております。而して私は児童福祉費を平衡交付金から除くという場合において、生活保護費をどうするかという問題が噛み合つて来ると思います。これからは大蔵大臣ではございませんで、個人の意見として申上げますると、生活保護費のうち八割は国費が負担し、一割は府県、市町村が一割、こうなつております。私はこの制度について再検討を要するじやないかと思います。私の私見といたしましては、この生活保護費でございますが、五割を国が負担し、一割二割を府県が負担し、三割四割を市町村が負担する、こういつたやり方で行つたほうがいいじやないか、これは市町村が一割しか負担せずに、あとの八割が国、一割が府県ということになつておりまする関係上、生活保護費をもらつておるかたと、もらつてないかたと不権衡が相当にあるのであります。生活保護費を出す場合に濫りに流れてはいかないというので、いろいろ手を盡しておりまするが、市町村が一割ということになりますると、濫りに流れやすい。実際面で私も地方で研究しておりまするが、生活保護費を与えるか与えんか、その範囲内ぐらいの人が市町村によつてもらつておる人もあるし、もらわん人もある。これは極端な例でございまするが、生活保護費をもらつておるかたが朝風呂に一番先に行つて、そうしてのんびりしておられる。それで生活保護費をもらう人もある。なかなか生活が苦しいのでありますが、生活保護費をもらわずにやつておられるかたもある。これは結局市町村の考え方によりまして非常に不権衡がある。それは私は金を節約する意味から申しまして、市町村に三、四割を持たし、府県に一割を持たす、そうして国が五割を負担するということになると、そのときに選定の仕方が非常に合理的になり、よく行くじやないか、併も財政的に見まするというと、市町村が一割負担しておるのを三割四割にすると市町村が困りますから、その分は別途の方法で行つたらいい、いわゆる一般の平衡交付金として行つたらいいじやないか、こういう考え方を持つておるのであります。これは生活保護費を合理的にして、保護費をもらつておる人が、まあそれは生活困窮者でございますから、私は合理化する上におきましては、実際に当つておる市町村がよく厳選するような制度にして行くべきじやないかと思つておるのであります。これは決して市町村を困らすという意味ではありません。私は金を倹約するという意味でなしに、合理化する、これは或る地方によりましては、生活保護費をもらつておる人でまだ働ける人につきましては、或る程度加減しておる市町村があるやに聞いております。五人家族で六千何百円出しておるのでありまするが、これが近所に賃働きに行つたりなんかする人は成る程度減らしてやろうかという議論が市町村の間にあるのであります。こういうことを考えますると、生活保護費の全体を倹約しようとは思いませんが、合理化する上に驚きまして、市町村が相当考えてやるような制度に、そうして余つた金は平衡交付金全体に入れたらどうかというふうに私は考えております。これは大蔵大臣としてでなく、池田個人としての生活保護費に対しての考えでございます。そういう関係でございますので、今生活保護費をそのままにして置いて、児童福祉の分だけをとるか、とらんかとう問題がありまするが、私は今の態勢といたしましては、六、七割は生活保護費を厚生省に持つて来るという説のほうが有力のようでありますが、平衡交付金で置いておくというのは少し議論が弱いようでございますが、私は大蔵大臣として(山下義信君「児童福祉ですね」と述ぶ)児童福祉。大蔵大臣としては状況を見守つておりまして、関係当局と意見が合いますれば、それに從つて行きたいと思います。
  270. 山下義信

    山下義信君 それでは児童福祉問題は若干望みなきにしもあらずとして、岡野さんに御盡力をなお願わなければならん。これで私は質疑を山田君に譲りますが、なお厚生大臣並びに法務総裁に対しまする質疑は留保させて頂きます。大蔵大臣に対しまする質疑も若干留保させて願きます。只今個人池田としてお述べになりましたのでありますが、大蔵大臣としてそういう御意見を若しお述べになるお考えを持つておいでになるということになりますと、委員長、これは実に重大な問題であると私は思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)池田さんの個人だけのお考えもそれは御尤もと思われる点がありますが、これは一つ若し大蔵大臣として多少そういうお考があるとしますというと、これは大いに一つデイスカツシヨンして見なければならんと思うのでありまして、これは委員長、相当重大な問題でありまして、他日に留保をして置きたいと存じます。私の今日の質疑はこれで終ります。
  271. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は山下さんが九割国庫負担という非常に強い御意見を持つておられるということを実は聞いておりますので、個人池田として問題を起したわけであります。私も十分これは重大問題でございまするから研究いたしたいと思います。
  272. 山下義信

    山下義信君 私も九割の国庫負担ということは、費用の負担区分につきましては、この生活保護ということは国の責任においてする、公的扶助という性格を持つか、或いは地方の隣保相扶という考え方地方の福祉の仕事をするという点に、アイデアの分れ方で負担区分ということも考えて行かなければならん。ただこの適用が円滑に行われるかどうかという問題だけでは軽々には考えられない。そこで生活困窮者を救助するということは、世界各国とも公的扶助をするという性格を強く打出して行くという考え方もあるわけですが、併し池田さんのような考え方もなきにしもあらずでありますが、そういう意味で国の負担を殆んど全額国庫でやつてもいいのじやないかという考え方でありますが、一応申上げておきます。これは他日に一つ研究することにいたします。
  273. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 山下君の残りの時間は僅かに十二分であります。
  274. 山田節男

    山田節男君 大変時間が短かくつまつておるようでありますので、極めて要約して御質問いたします。先ず私の質問は終戰処理費に関する問題でありますが、今日もこの問題については佐多委員岩木委員矢嶋委員からいろいろ質問がありまして、なお大蔵大臣並びに特調の関係のかたから明らかにして頂きましたが、質問いたしたいと思います。御承知のようにこの終戰以来、終戰処理費によつていろいろなことを日本政府に義務付けられておるのでありますが、私は労務問題に限定して質問いたしたいと思います。御承知のように今年五月の二十六旧の司令部の覚書によりまして、七月一日から米軍の労務関係の労務者の労務費を全額負担するということになりましたので、七月一日から実施されたわけでありまするが、この労務者にとりましては、そうすると、七月一日即ち六月三十一日までの終戰以来ずつと勤めておつた者の退職手当というものはどういうふうになるのか、これはそう制度が変つたのでありまするが、当然これも政府が支拂うべきものである。かように考えられるべきであり、又かく信ずるのでありますが、これに対して政府はどういうふうに考えられるのか、この点を一つ明らかにして頂きたい。
  275. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今のお尋ねでございますが、まさに七月一日より新らしい形によつて日本政府による労務の提供が行われることになりました。併しこの労務の提供をいたしまするにつきましては、米側の契約機関と日本側の特調との間にそれぞれの政府を代表いたして契約が取交わされておりますが、この契約の取交わされるに当りましても、基本的な考え方は、これは日本政府が労務者を提供して軍がこれを使用するという形においてはいささかも変りはない。日本政府が雇用者であり、軍が使用者であるということにおいてはいささかも変らない。又同時に日本政府が雇用主の立場において労務者側といろいろな労働協約その他の約束をしておる、及び法規関係において適用せらるべき一切の状態というものはこれは一つも変更がないのであります。從つて雇用主たる日本政府といわゆる進駐軍労務者であるところの労務者との関係は何ら変りがない、こういうような関係の下に立つておるのでありまして、ただその中味といたしましては、日本政府がそういうようにして雇つて米軍の使用いたしまするところの労務者について支拂いましたる経費は、一切米側により償還を受けるという日本政府と米側との間の約束が、その契約の実体である。こういうふうに考えておるわけでございます。
  276. 山田節男

    山田節男君 今ちよつと根道長官の私の質問に対する回答は少しピントを外れておると思います。問題はこの七月一日からこういつた米軍が全額負担をする。いわゆる労働者の地位と申しますか、形式は成るほど日本政府の特別調達庁がこれを提供してやる。賃金は米軍がドルで拂うというのですが、今私の質問いたしたのは、そうすると、ずつと終戰以来勤めた者が七月一日以来ドルで拂われ、その六月三十日までの退職手当はこれは当然これは権利付けられておる。それを政府として当然拂うべきものと認めておるかどうかということを聞いておるのです。
  277. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今御答弁申上げました通り、身分條件その他雇用の関係一切において変更がない。從つて從前通りの雇用の継続であるという建前におきまして退職手当の支拂ということを考えなかつたわけであります。
  278. 山田節男

    山田節男君 そうしますと、七月一日以後、いわゆるレーバー・サービス・オーダーのLSOの労務者の地位は変つて来たわけでありますが、そうしますと、例えば七月以前、ずつと前から連続してやつてつて、そして七月一日以降、例えば十一月か十二月の初めに退職或いは解雇をするという場合に、そうすると退職手当というものは、例えば終戰直後から十月五日まで継続しておつたという者に対してはその通算をして退職手当を出さなければならんと思うが、それを予算的にはどういうような工合に政府当局、殊に大蔵省ではどういうふうにするのか、これを一つはつきりしてもらいたい。
  279. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) それは雇用は当然継続しておりますので、最初のときからその解雇、退職に至るまでの年限を通算いたします。
  280. 山田節男

    山田節男君 そうすると、七月以降の労務者の賃金は米軍が拂う。そうしてその方法として七十五億の回転資金が特別調達資金として出ておるということになるのであります。そうして退職金というものはそのうちから拂い得る見込だ、どういうことをおつしやつておるが、そういうことになつておるかどうか、この点を明らかにして頂きたい。
  281. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) それは拂い得ると考えております。
  282. 山田節男

    山田節男君 大蔵大臣にお伺いしますが、七月一日以降はもう賃金はいわゆる立替と申しますか、アメリカがドルで七十五億のいわゆる特別調達資金の回転資金に拂込む。そういたしますと、今根道長官が言われるように、七月以降ずつと前から存続しておる者については、その継続した合計の年数で退職金を拂うというのですが、そういたしますと、七月以降米軍がドルで拂う金と、それから日本政府が六月三十日まで日本政府の責任においてやつてつた退職にならその退職手当という金は、これは予算上から申しますと、どういうふうにそれを区分されますか。技術的にその点を伺いたい。
  283. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の進駐軍は米軍並びに連合軍がおりますが、米軍の場合にのみ労務者の賃金はドルで拂うということになつておるのであります。從いましてお話のように十一月の末に若しやめられたとすれば、勤務年限の中で退職金を計算いたしまして、七月以前の分と七月以後の分を按分して負担することになつておるのであります。
  284. 山田節男

    山田節男君 按分してやるとおつしやいますが、そうしますと、これは又今度の七月一日以降は、アメリカが負担する労働者に対しては一人について一カ月に三千三百七十九円拂う、で、これは私は賃金以外にパーフエクトに一人について三千三百七十九円ですが、この金をアメリカが拂うというのですね、ドルで……。そうするとその金は今おつしやつたような御説明によると、退職金もあるだろう、或いは社会保險、從つてそれに含まつた一切のものが三千三百七十九円と、一人についてそういう金をドルによつて拂うということですが、そういうようなことになつて来ると、果して技術上において例えば退職金を支拂うというような問題のときに、予算上今大臣がおつしやつたようなことが技術的にできるかどうか、実際にできるかどうかということをお聞きしたい。
  285. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 拂戻しの比例につきましては、今後の退職率というようなものを考えまして、その一人当りの金額をきめておるわけであります。從いまして今まで六月三十日までのものにつきましては、日本政府がその割掛けと申しますか、按分してそれまでの退職金については負担することになつております。そういつたような事情考えまして、七十五億という資金を入れてそれを留保して置く、こういう恰好になつておるわけであります。
  286. 山田節男

    山田節男君 そうしますと、今の、先ほど申上げましたように、日本で米軍が雇う労務者一人について、賃金よりほかに三千三百七十九円ですか、これに退職金とか、或いは社会保險、そういうものが含まれておるように私は了解しておのですが、今おつしやつたような按分で行くということになると、この三千三百七十九円というものを進駐軍の労務者に対しては特にそれだけパーフエートに拂うということになると、その内容は一体どういうようなのか、この点を一つはつきり聞かせて頂きたい。
  287. 河野一之

    政府委員(河野一之君) この三千三百七十九円というものは、固定的なものと御了承を願われては困るのでありまして、六十日前の予告で以てこれを変えることができるわけであります。今までの実績に基きまして、特別に健康保險でありますとか、或いは退職金でありまするとか、そういうものをパーフエクトに計算いたしまして、今のところ三千三百七十九円、今後又その状況が変つて来ますると、これも又変つて来る、こういうのであります。
  288. 山田節男

    山田節男君 そうしますと、退職手当というものは、年数が長くなれば、これは幾何級数的とはいえないかも知れないが、少くとも算術級数的に殖えるものですね。そうすると、六月三十一日、いわゆる七月一日以後に半年一年、或いは一年半ということになれば、少くとも算術級数的には退職手当は殖えて来る。そういうふうになると、三千三百七十九円というもので、果して賄え得るかどうか。今おつしやつたように、それは情勢によつて変更できるということを言うておられるが、そういうことが簡單にできるかどうか。今までの問題から見て私はこれはなかなかむずかしいんじやないかと思う。そこで現在、変更までの三千三百七十九円というものは、退職手当というものにはこういうように見積つてある、或いは社会保險、つまり健康保險には、或いは他の社会保險にはこういうふうに見積つておるという、こういう一つの内容がどうなつておるかということを御説明願いたいと思います。
  289. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 今七十五億円ということを申上げたのでありますが、この七十五億円というのは、回転資金でございます。そうしまして、これはそのうちの三千三百七十九円というもの、それとは直接の関係はございません。これは支拂資金でございます。若し或る時に解雇が相当余計に起りまして、その回転資金を給料の支拂等に充てる必要がなくなりますれば、その分はすぐ留保した金額というように相成るわけでございます。  又三千三百七十九円と申す金額についても、最初は割掛けでありますところの退職金に相当するものは、それはだんだんと将来に積み立てて行かるべき性質のものである。今のところ日本政府による雇傭が終止されるということがありましても、退職金に直接に事欠くようなことはなかろうかと予想しておる次第であります。
  290. 山田節男

    山田節男君 今大蔵大臣から並びに根道長官からのお話で退職金はずつと合算して拂う、併し今年の六月三十日までの進駐軍の労務者が勤めておつたものの退職手当というものは、これは合計いたしますと、数十億の金であると思う。六十億か七十億の金じやないかと思いますが、そういう金を調達資金で以て賄う。併しこれが国際情勢の変化によりまして、万一これを大量に解雇しなければならんということになつて、数十億の金が要るという場合、僅か七十億円の調達資金で以て賄えないという場合には、大蔵大臣としてはどういう工合にしてこれを拂われるか、拂うという御気持なのか、この点は如何でございましよう。
  291. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は七十五億あれば大丈夫と考えております。お話のような点か起れば、そのときに考えればいいことでございます。大体計算の根拠はあるのでございます。詳しくは主計局長から御説明いたします。
  292. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 七十五億円という金額は、大体二カ月……、翌月に清算いたしますので、二カ月くらいの労務の所要資金ということで一応考えております。そういつた六月までの退職したものの分に対する退職手当積立金と申しますか、そういうものを予想いたしまして七十五億の金額をきめてあるのでございます。從いましておつしやるような事態は私は起るまいと考えております。
  293. 山田節男

    山田節男君 そういう建前であるとすれば、米軍がドルで全額負担をするということになりまして以来、すでに全国で三十万近い進駐軍労務者の中で、どんどん整理されまして、今日においては二割も三割も整理されておる。そういう忽ち起つて来る退職手当というものは、そういたしますと、今の大蔵大臣の御説明によると、この特別調達資金から拂うということになる。  それから最近の情報によりますと、英濠軍がこれが從来政府直傭であつたものを、これを直接今度向うで雇うというようなことになつて、身分の切替ということになる。こういう場合についてその退職手当とせられておるのは、ことごとくやはり調達資金から拂うという建前になるのかどうか、この点を一つ明らかにして頂きたい。
  294. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 例えばメードなんかの身分が切替わりましたときには、終戰処理費からすでに退職手当を出しております。  それから英濠軍関係につきましては、これは講和発効まで全部日本政府の負担でありますので、終戰処理費で以て出しております。
  295. 山田節男

    山田節男君 そういう政府の建前が一応わかつたわけですが、今の大蔵大臣の御説明によると、まあ大量に特別調達資金で賄えないほどの退職は出さない、出ないだろう。こういう仮定での御答弁だろう。又そうあれば非常に結構なのでありますが、そうしますとこの特別調達資金から退職手当を支拂う場合に、六月三十日前の期間に対する日本政府の支拂負担分と、それから七月以後アメリカがするいわゆるドル契約、アメリカから雇つた人間に対して定額の償還を受ける経費、その区分はそうしますと国家の予算上からはどういうふうに計算されるのか、この点一つお聞きしたい。
  296. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申上げた通りに按分で行くのでございますから、十一月の末におやめになる人の分を計算いたしまして、七月までの分は即ち六月三十日以前の分は終戰処理費で出します。その後は七十五億円のほうから出すのであります。
  297. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ちよつと山田君、答えが違つたそうです。訂正するそうです。
  298. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 今申上げましたように、六月三十日までの分の退職手当に相当する金額を七十五億円で留保しておるわけであります。從つてそれまで七月以後にやめられた人の分は七十五億円を食うという恰好に相成ります。その以後の分を三千三百七十九円のほうから拂う、来年度分から、そういうふうに相成ります。
  299. 山田節男

    山田節男君 そういたしますと、七月以降の新らしい組織になつて来て、例えば十二月の初め頃になつていわゆるよく進駐軍でやりまする不当解雇或いは自分で退職した、何かの理由で退職したという場合に、不当解雇の場合なんかは退職金をもらえない。併しながら六月三十日までのものは当然労働者だからいわば債権のようなもので一つの権利であります。そういうものに対して支拂うのは当然でありますが、こういうものに対して政府として支拂についてどういう処置をとられるのか、この点を一つはつきりさせて頂きたいと思います。
  300. 河野一之

    政府委員(河野一之君) それは労務者といたしましては日本政府の労務者でありまするから、負担区分はどちらになりましようとも、退職手当が拂えないような事態でやめられた者につきましては、どうあろうとも六月以前の者についても拂うという理由に私はならんと思います。
  301. 山田節男

    山田節男君 これは非常におかしい私見解だと思うのです。今申上げたように、七月一日から新らしいことになり、そうして今度やはり進駐軍の労務政策というものは独特の立場でやられると思うのですが、それで不当解雇になつて、例えば六年間おつてもあとの五年七カ月というものを無事に勤めておつて、そうして軍の主観的な判断によつて不当解雇をされた場合に、六月二十日までの二年、三年、四年の退職金までも全然それはしようがないというようなことでは、これは非常な、余りにこれは純一方的なやり方だと思うのですが、これは特別調達庁長官は、どういうことになつておるのかこの点をはつきりして下さい。
  302. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 結論としまして申上げますと、只今に至りまして六月三十日以前からおつた者が不当な解雇を受けたという場合どうするかというお尋ねであります。その場合の、故なくして軍のほうから不当解雇を受けたというようなこと、從つてそのために退職金を拂うのがいいのか惡いのかという御題は、特別調達庁として判断をして、從いまして日本政府として特別調達庁が拂うべきものと思えば当然に拂う、こう了解いたしております。
  303. 山田節男

    山田節男君 当然拂うべきものと思えば拂うという、その当然というのはどういうことなんですか。
  304. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 退職手当の規定の中に、不都合な事故があつた場合これは退職手当は拂わないことになりております。又労働組合もそれを了承いたしておると存じます。例えば涜職とか或いは公金拐帯等のごときものというふうなものがあれば、これが解雇されるというような場合には、日本政府として当然拂うわけに参らんのでありまして、この点は労働組合においても了承しておることと存じます。單に一時間休んだとか、二時間特別な理由があつて職場を離れたとかいうくらいの軽徴な理由によつて、軍の主観の解雇退職というふうな問題が起つて参りますならばそれは誠に不幸であります。そういうときには日本政府として退職手当を与えるべきものと認めた場合には拂う、こういうわけでございます。
  305. 山田節男

    山田節男君 大変恐縮ですが、簡單にもう二つだけです。それからどうも進駐軍の労務者はこれは一般職じやない、特別職であつて一般公務員に準じてやるという部面がありますので、いろいろな国内的の政策にとかく取残されるのですが、例えばこの退職金の、問題これは政府が今の現行の政府の職員に対する退職手当の臨時措置、これも又来年の三月一ぱいで効力がなくなる、そこで本式の恒久的な法律を作るということになつているのでありますが、その場合連合軍関係の使用人の、退職手当の支給率が、それにやはり一般公務員に準じて変つた場合に、そういう場合には六月三十日以前の勤務期間に対する退職手当の、日本政府が当然負担すべき部分はこれは新らしい規定で拂うのか、或いは今の現行の退職手当の臨時措置法で拂うのか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  306. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 只今のところ現在の退職手当の率等を変える、より惡くするという意向は、特別調達庁の長官としては持つておりません。
  307. 山田節男

    山田節男君 惡くしないという言明でありますから、それで先ず以て了承しておきます。それからもう一つは今補正予算でも問題になつておりまするベース・アツプの問題であります。このベース・アップは十月一日に遡つて拂うという建前になつておりますが、今回の新らしい日米労務契約、基本契約によりますと、これは向うさんと日本政府とが契約してやるわけであります。そうするとその契約ができたときできないと、以後でないとその効力を発しないということに了解できるのですが、そういつたような場合にその何と申しますか、日本の公務員は十月一日に遡つてやる。進駐軍の者はそういつた特殊の関係上、例えば十二月に、これが十二月一日以後でなければベース・アツプしないということになるのですが、こういうような場合には、日本政府は、一般公務員に準ずるのでありますから、やはり十月一日に遡つて拂うということになるのかどうか、この点を一つお伺いします。
  308. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 從来の扱いといたしまして、一般公務員の給与ベースの上る場合には、進駐軍関係労務者も同様割合を持つての昇給を図つて来たわけであります。このたびのことにつきましても、同様に扱うように考えております。又この点について日本政府が上げたいと思つても、アメリカ側で承知しなければ契約上どうもならんのではないかというお話でございますが、この点につきましては、給与の改訂が予想されることができるようになりました、その当時九月頃より私より向うの関係官と何回も連絡いたしております。ただ的確にこれを向うから償還を受けるということを交渉いたしますためには、国会において給与法案が通過したあとでなければ、形式的には申入れる、向うも了承するわけには行かんだろうと思います。現在私より折衝中でございます。但しその折衝と申しますのは、米側より償還を受ける契約を添えて遡つて向うより償還を受けるということについての交渉であります。
  309. 山田節男

    山田節男君 最後にまだいろいろありますが、小委員会等でも質問申上げるとしまして、最後にこれは大蔵大臣も特に御認識願いたいのですが、この進駐軍に働いている日本人が過去六年間非常に苦労して、言葉が違い、習慣が違い、或いは相手が軍人さんである、今日こそ気分が非常に変りましたけれども、終戰直後以来数年間というものは誠に私らが見ておつても苦しい、それから日本の労働基準法或いは労働組合法というような労働立法によつて当然保護されるべきものを保護されないということで今日までやつて参りました。私自身も特別調達庁もこれを如何んとも防ぐことができない。私が政府の代弁なり、組合の代弁なりということで苦情処理機関のようなことになつておりまして、その間の事情は特別調達庁でもよく御存じだろうと思います。又政府大蔵大臣も今日までいろいろこの点については問題になつておるだろうと思いますが、かような一種特殊な勤務條件、労働條件の下で過去六年、五年、四年も働いて来たものが三十万近くもあるわけであります。いよいよ講和、安保両條約の批准も近きに迎えまして、そうして今度は安保條約の建前から全然新らしく独立国家として日本が進むのであります。少くとも過去五年乃至六年間をこういう特殊な、非常に地位の不安に堪え忍んでやつて来たものに対して、大蔵大臣としては非常に緊縮財政をとつておられる建前はわかりますが、こういつたような極めて目に立たんけれども、日本の一面から言えば無條件降服した国民の代表というような形でこの苦しい中を忍んで来たのでありますが、こういうものに対して何か一つの特別手当といいますか、平和独立記念手当というむのでも出してもらうようなことが我々は当然だというふうに考えるのでありますが、これは巾着をしめられる大蔵大臣としての見当はほぼわかりますけれども、併しこれは是非何らか一つの方法を講じて頂きたいと思いますが、これに対して大蔵大臣及び特別調達庁長官はこの点にまで行つておられるかどうか、この点を一つお伺いしたい。
  310. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点は十分了承いたしておりまするが、今後行政協定その他によりまして今進駐軍関係の労務者がどうなるか、又今の数字がどうなるか、或いは地域的にどうなるか、いろいろな点がございますので、御意見の点は十分私ども考慮いたしたいと考えております。
  311. 山田節男

    山田節男君 特別調達庁長官はどうですか。
  312. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 直接に進駐軍関係労務者の問題を扱つておりまする私といたしまして、進駐軍関係労務者がいろいろな点に非常な苦労をしておるという状況はつぶさに承知しております。從いましてできるだけのことはして上げたいとは思いまするが、これはいろいろ問題を伴つておりますので、只今何とも申上げかねる次第であります。
  313. 山田節男

    山田節男君 それで今五月二十六日の覚書によりまして特別調達庁というものは、新たに契約に基いて進駐軍へ物及び役務を提供するための特別調達庁への権利の授権ということがあるわけであります。その内容は、飽くまで日本政府はアメリカ政府と双務関係の上に立つて、自由の意思の下に対等の上で契約をやる、労務提供にしてもそういうことになると思うのでありますが、そういう場合に申上げたように労働関係というものが非常に一方的になつて、不当行為が盛んに行われているけれども、日本政府としては無條件降服をした下でありますからして、文句が言えなかつた。併し独立国となつて双務関係の上に立つて対等にやるという場合に、特別調達庁或いは日本政府がこの点については独立国家としてそういうことが起らないように十分一つ気を付けて頂きたいということを要望して私の質問を打切ります。
  314. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 本日はこれにて散会いたします。土曜日は午前十時から開会いたします。    午後六時二十五分散会