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1951-11-20 第12回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十日(火曜日)    午後一時三十五分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            小林 政夫君            藤野 繁雄君            佐多 忠隆君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            泉山 三六君            石原幹市郎君            小野 義夫君            加納 金助君            一松 政二君            深水 六郎君            高良 とみ君            結城 安次君            荒木正三郎君            内村 清次君            小林 孝平君            小酒井義男君            松浦 清一君            山下 義信君            岩木 哲夫君            西田 隆男君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君   国務大臣    法 務 総 裁 大橋 武夫君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    農 林 大 臣 根本龍太郎君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    国 務 大 臣 岡野 清豪君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    経理局長    窪谷 直光君    国家地方警察本    部総務部長   加藤 陽三君    地方財政委員会   事務局財務部長  武岡 憲一君    特別調達庁長官 根道 廣吉君    特別調達庁次長 堀井 啓治君    特別調達庁財務    部長      川田 三郎君    特別調達庁管理    部長      長岡 伊八君    地方自治政務次    官       小野  哲君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    文部大臣官房会    計課長     寺中 作雄君    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    食糧庁長官   安孫子藤吉君    通商産業大臣官    房長      永山 時雄君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出衆議院送  付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(第二号)(内閣提出衆議院  送付)   ―――――――――――――
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を開会いたします。  前回に引続きまして質疑を継続いたします。
  3. 岩間正男

    岩間正男君 先ず大蔵大臣に二、三の点について質したいと思うのであります。それでその質問に入ります前に、この前から問題になつておりました二十七年度の予算大綱の問題でありますが、これは昨年に比べましてこの大綱が未だに決定されていない。現在講和後の情勢なんかもからみまして、一つのいわば転換期でありますから、それについてその大綱を示されないということは、大体事情も考えられるのでありますが、併し補正予算との関連におきまして、殊に現在、昨日あたりからドツジ氏との間にいろいろな折衝が進められておるように新聞は報じておるのでありますが、こういう問題につきまして、現在はいろいろな情勢からその内容について具体的に示されない点もあるとは思います。あるとは思うのでありますが、政府一体どういう態度を以てこの折衝に臨んでおるか、こういう点が非常にやはり我々としては今後の予算審議建前から言いまして重要な問題ではないかと思うのであります。そういう点からお聞きするのでありますが、やはり何と言つても今度の予算との関連において、一番我々がここで政府態度をお聞きしたいのは、講和後の財政需要がいろいろ殖えると思うのでありますが、こういうものをどういう線で抑える決意を持つて政府は臨んでおられるのか。殊にその中で賠償或いは外債の支拂、特にその中で問題になりますのは国防分担金、これが警察予隊費用なんかも含めまして、今後の日本国防がどういうような形で具体的に展開されるかということは、非常にこれは行政協定なんかの今後の取極とも関連いたしまして、深い関心を持たなければならない問題であると思うのであります。政府としては現在のこの予備的な折衝が進められておるのに対しまして、どういう大体腹がまえを以て臨んでおられるのでありますか。無論新聞ではその片鱗が示されておるようでありますけれども、こういう点について私は先ず最初にお伺いしたいと思うのであります。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 來年度予算は、只今こちらのほうで検討を加えておるのであります。関係方面とのまだ折衝段階に至つておりません。昨日のドツジ氏と会いましたのは予算の問題ばかりでなしに、金融全般の問題につきまして、いわゆるフリー・トーキングをした程度でございます。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 最初段階ですから、その内容についてはもつとまとまつてから無論お伺いすべきでありますから、これに触れようとは思つていないのであります。併しいよいよそういうような折衝段階が始まつたのでありますから、そこで当然、政府曾つてこれは示されたような講和後の財政需要に対しまして、そういう線を堅持されて進むのであるか、どういう原案を以てこれは臨まれるのであるか、その点が伺いたいのです。殊にその中で問題になりますところの国防分担金につきましては、大体一千億にはならないだろうということは、これは八月のこの前の第十一国会の予算委員会において、蔵相はこの委員会で言明されたと思うのであります。その後情勢のいろいろな変化はあると思うのでありますが、この国防分担金について大体どれくらいの枠で臨まれるのであるか、その点伺いたいと思います。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ枠を持つておりません。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 枠はないというお話でありますが、大体この前話されたような一千億には達しないだろう、多分そう蔵相はこの前答弁されたと思うのであります。この線は堅持されるつもりでありますか、どうですか。この点伺いたい。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日米安全保障條約に基きまする国防分担金お話のような金額には上らないだろうと思います。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 この内容につきましては、いずれもつとこれは日を逐わなければ具体的にはならないと思うでありますが、ならないだろうと、こういう話でありますが、現在のあいろいろな情勢を総合しますというと、無論これは先に行つて行政協定というものがどういうような形で行われて、その中で米軍の駐屯が一体どれくらいの数になるのであるか、そういう問題と関連して來るわけであります。それからもう一つは、これと関連して当然考えられて來るのは、警察予備隊、この警察予備隊費用來年度はどういうふうになるのか、こういうような問題とも当然関連して、そういうものを引くるめまして、いわば日本国防上必要なそういう費用ということになると思うのでありますが、そういう点について政府としては、ならないだろうというようなお話でありますけれども、現在の情勢ではなかなかそういう線が堅持し得るか、或いは又そういう線がなかなか堅持し得ないような情勢にも立向つておるようにも我々としては推察される点があるのでありますけれども、最初蔵相がそう言明された線をどこまでもこれは堅持される意向でありますか、どうですか、この点を伺つておきたい。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の考えはつきり関係方面にも申出て、そうして自分考え通りにいたしたいと、こういうつもりでおります。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 自分考え通りにいたしたいというのは、そうすると日本政府でそういうことを決定、日本政府だけでできると、こういう意味なのですか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本政府責任においてやるのであります。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 これは來年予算予算編成自主権、こういう問題と深く関連するのでありますが、日本政府責任においてやる、こういう建前は何も今改まつてこれは表現されたことでないと思う。これは二、三年前からやはりいつでも予算編成責任は無論政府にあるのだと、こういう形でこれは答弁されて來たのであります。併しその内容はどうかと言いますと、やはり絶えず折衝段階において大きな変動が來る。最初蔵相がそういう言明をされましても、それがやはりGHQとの折衝においていろいろな点で変化を來たしておる、こういう点が今までの慣例であります。併し私のここでお伺いしたいのは、事は來年度予算であります。而も大体講和安保二條約が批准段階になつて政府としても現在におきましては、大体二月頃にこの條約の効力が発効するであろう、こういうようなことを政府自身言つておる段階におきまして、來年度予算編成ということについては、占領下事態大分これは様子が変つて來るのであります。無論技術的に言えば、それは現在占領下であるからしてそれの拘束を受けるという面はあるかと思うのでありますが、併し先ほども申しましたように、これは批准、発効後の内容を持つたところの予算を決定するのでありますから、今までとはこの態度が非常にこの折衝段階において私は違うのじやないか、こういうことを考えるのでありますが、これについて具体的にお聞きしたいのは、ドツジ氏の一体性格、これはどういうことになるのでありますか。ドツジ氏はどういうような一体権能を持つて日本に現在やつて來ておるのであるか。それからこのドツジ氏のそういうような、いわば総司令部経済顧問という格でありますか。或いは又トルーマンのそういう経済顧問として日本占領政策財政経済の面について、これは顧問的な資格で今まで來られたと思うのでありますが、こういうことが、講和調印並びに批准間近い、こういう段階においてドツジ氏の性格変更はないのでありますか。どうですか。この点が今の予算編成自主権という問題と深い関連があると思うのでありますが、この点はどういうふうに政府としては考えておられますか、承わりたいと思います。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ドツジ氏の今回來られた資格並びに任務は、今までと同じであると私は考えております。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 ドツジ氏の発言というものは日本政府に対して拘束力を持つのでありますか。拘束力がないのでありますか。その点はどうなのでしようか。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) リツジウエイ最高司令官顧問として來られておるのであります。而して予算の問題につきましては、日本政府で作成いたしました予算承認を受けるということになつております。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 それはどうなのですか。拘束力の点につきましては、これはどういうことになるか、今の御答弁は……。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 承認を受けとるいうところで御了承願いたいと思います。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 非常に漠然とした御答弁房で、どうもいろいろに解釈される。承認を受けるというようなことで……、併しそれはその言葉をもつと擴げて行きますと、やはり拘束力を持つ、こういうふうに考えられるわけであります。吉田首相答弁、これは十三日だと思いますが、この前社会党の内村君の質問に対しまして、ドツジは命令しない、政府専門家意見を聞いておるだけだと、こういうことを言われたのでありますが、併し実際の予算の推移を見ますというと必ずしもそうではないということが出て來ておると思う。又ドツジ自身も、現在は占領下であるから当然に自分発言というものは拘束力を持つのだ、こういうようなことを言われておるように聞いておるのでありますが、この点もつと今の予算編成自主性という問題と関連して、それから新たに起つて來た現段階との性格から考えまして、そういうところで変化がないのであるかどうか。その点もう一度はつきり承わつておきたい。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今お答えした通りで御了承願えると思いますが、理論的には、まだ占領治下でございますから今までと変りはございません。ただ講和が近いので日本が最近のうちに一人立ちするという立場からすれば、或る程度変つて來るのではないかということを想像しておりまするが、理論的には今までと何ら変りはありません。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 この点は現状を見ましても、やはり変更がないという形で政府は進んでおられるように見えるのであります。それは例えば米穀統制撤廃の経過を見ればわかることなのです。政府はあれだけの案を決定して、そうして総理がそれを本会議施政方針演説にまではつきり説明した態度は、その後の変化によりまして、それはドツジ氏との交渉過程において、米穀統制撤廃ということが事実上不可能になつた。こういう変化を見ますというと、これは日本国民は、予算編成のこういうような問題につきまして、やはり非常に多くそういうような拘束力というものがまだ強い、こういう事態を、これは講和の現段階関連して非常にこの問題を問題にしていると思うのであります。政府としてはこれはもつと日本政府自主性を持つべきだ。日本政府自主性言つても、それは政府の無論独断でなくて、現在の情勢におきまして日本国民がいろいろいわゆる過去のドツジ・ラインというものに対していろいろな希望を持つておる。又ドツジ・ラインの下にあつて労働者を初め、又最近におきましては、この民族資本家の面におきましても、こうい問題についていろいろな要求が起つておると思います。從いまして当然そういう点で政府努力すべきである。こういうふうに思うのでありますけれども、そういう努力はどういうふうにしてやられておるのでありますか。この点が私は承わつておきたいのであります。少くとも調印後においては日本自主性というものは相当大幅に認められるというようなことは、政府もこれは今まで宣伝し、又国民もそれを期待しておる。又アメリカ側においてもそういうことは局部的ではありますけれども、そういうことが出されておる。こういうふうに思うのでありますが、併し肝心のこの予算編成のような問題になりますというと、なかなかそう行かないというのが現在の実情じやないかと思うのであります。これは米穀統制一つ見れば明らかであります。こういう点から、日本政府一つ自主性の問題、そういう自主性を支えて行くためには国民のこの輿論、国民のこれに対する強い要望、こういうものをどういうふうにこの中に入つて直接相当者としての蔵相努力されるか。この決意というものを私は伺つておくことが非常に重要ではないか、こういうふうに思うのであります。この点如何でありましようか。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申上げましたように、だんだん我々の意見が十分採用され、言葉は惡いのですが自分の、私の考えはこの頃だんだんよくわかつてもらえるようになつておると思うのであります。米の、主食の問題にいたしましても、横浜に來られたときにはかなり強い反対のようでしたが、原則はこの前の政府声明のように認められたわけであります。こういうことは事実問題であります。それじや、どの点がどうというわけには参りませんが、やはり日本の本当の独立が近いのでございますから、今までとだんだん変つて來るということは私は期待し、又そういうふうに努力いたしております。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 米穀統制撤廃の問題については、蔵相政府声明の線で認められた。こういうことをまあ言われるのでありますが、これは大分農林大臣の表明された意向との間に食い違いがあつて、必ずしもこれは認められたというふうには考えられないと私は思うのでありますが、まあこの問題は今の質問の主題ではありませんから、私はそれを深く追究はしませんけれども、ああいう形で以てとにかく政府自主性というものが貫かれないことによつて、非常に現在いろいろな混乱が起つていると思います。これは單に米穀統制だけの問題ではなくて、今後いろいろな問題に直面して來る。当然減税の問題、こういうような問題も起つて來ると思う。この減税の問題というのは、先ほど私がお伺いしましたように、來年度講和後の財政需要、この枠をどの点にとるかということと非常に深い関連がある。殊にこの中で一番大きな問題を占めて來るのは、やはり国防分担費並びに警察予備隊費用、こういうような費用であろうと思うのであります。そういう点から、当然その枠のきめ方によつて財政來年度規模変りましようし、若し規模を変えないで、大体蔵相が大体ここで言明されましたように、八千億の枠、まあ八千億前後、こういうような枠内できめるということになりますというと、当然この講和後の財政需要が非常に多くて、殊に軍事的な非生産的な支出が多くなればなるほど、これは政策としては当然まあ民生安定のほうを大きく犠牲にして、そのほうにしわを寄せる、或いは又増税をしなければならない、こういうようなところに追い込まれるのは当然だと思う。そういう点について、ドツジ氏の意向というものも今までいろいろ表明されていると思うのでありますが、こういう段階の中で蔵相曾つて來年度の八百億程度減税というものが、これは減税になるかどうかということは、我々の立場からは税法上の減税考えるのでありますけれども、一応政府の言うところに從えば減税をやるのだ、増税のほうはとらない。こういうことを言つておられるのでありますが、これは現在の折衝とも関連して、どういうふうにこれを貫こうという考えを持つておられますか、この点承わつておきたいと思います。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 財政演説で申上げた通りも、何ら変化はございません。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 私は具体的にお聞きしているわけであります。つまり、恐らく財政需要というものが、非常に講和後の財政需要が大きくなるだろう、そういうことで、そういう要求は当然大きくなるだろう。そういう中で減税が非常に困難な状態に追い込まれるのじやないか。こういう情勢について考えて見るときに、果して蔵相が言われたその精神というものが貫かれるのであるかどうか、この点はやはりはつきりしてもらいたいと思うのであります。どうでしようか。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇君) 財政演説來年度も、今御審議願つている減税來年度もやるのだということを、はつきり申上げているのであります。何ら変りはございません。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 この精神は飽くまで貫くという、そうしてその貫くという意味は、現状においてはそうだ、併し先へ行つて折衝段階が起つて、どうもそれは貫くことはできないというようなことで、客観情勢変化なども言つて逃げないというはつきりした確信を以てそれを貫く、こういう意味でございましようか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先のことはわかりませんが、今はそのつもりでおります。(笑声)
  29. 岩間正男

    岩間正男君 それではつきりしたわけです。今はまあとにかく、取りあえずそれじや八百億の減税案で臨む、併しこれは先に行つてどうなるかわからん。わからないところの條件が非常に日本には今後多くなつて來るのじやないか。ドツジ自身もそういうような意向を表明されている。そうしてすでに米穀統制増税については、なかなか政府は甘いじやないか。その裏では、先ほど申しますように、講和後の財政需要というものが決して政府考えているような枠内ではとても収まらないのではないか、こういうことが裏付になつているというふうに思うのであります。そうしますと、これはどうも非常に期待して、來年減税が行われるのだろうというような期待を……尤も余り国民はこの内容については期待もしていないか知らんのですが、一応こういう政策というものは先に行つて見なければわからない、こういうことになるわけですね。そうすると、やはり私が先ほどから問題にしました予算編成自主性という問題が、又ここで問題になつて來ると思うのです。どうして一体……吉田総理の言を以てしますというと、ドツジ氏の拘束力はないのだ、命令はしない、ただ専門家意見を聞いているのだという意向。それから又池田蔵相なんかも、ドツジ氏は銀行家政治家じやないということも言われているようでありますが、そういう点から考えまして、政府の立てた減税案というものをどこまでも貫く、こういう決意を以て進まれないのでありますか。その点先行つてそれがどうなるかどうもわからないというようなことでは、非常に不安定でありますが、これは如何ですか。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申上げた通りで、情勢変化がない限り、財政演説で申上げたことは実現する決意を持つております。併し政治というものは生きものでございますから、而も占領治下にあります場合において、どうしてもこうやるのだという約束するわけには参りません。私の気持は財政演説で申上げたことを貫徹すべく努力をいたしておるものでございます。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 その次お聞きしますが、平衡交付金の問題であります。平衡交付金につきましては來年度はどうなるか。今年度の増額の問題もあるのでありますが、この増額の問題と関連して、來年度はこれは大体現状ぐらいの線が維持されるのでありますか。それともこれは減額せざるを得ないというところに行くのでありますか。これは十四日の衆議院地方行政委員会鈴木地方自治庁次長が、來年度平衡交付金減額が起るのじやないかというようなことを答えておるのでありますが、こういうものと関連しまして、これは平衡交付金はどういう一体傾向を迫るのでありますか。この点如何でありますか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ検討中でありまして、減るか殖えるかわかりません。又地方税制も再検討をしておられる状況でありますので、平衡交付金が殖えるか減るかはつきり申上げる段階に至つておりません。
  33. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岡野国務大臣がお見えになりました。
  34. 岩間正男

    岩間正男君 岡野国務相が見えておりますので、続けて鈴木次長衆議院來年度地方平衡交付金減額されるというようなことを言つておられる。これについて国務相はどういうふうにお考えですか。
  35. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。來年度地方平衡交付金減額するということは我々考えておりません。
  36. 岩間正男

    岩間正男君 これは尤も新聞記事でありますが、そういうような意向鈴木次長が申述べている。十四日、これはどうなんです。どういうことになるのですか。明年度平衡交付金減額になると思う、こういうことを述べているのです、衆議院地方行政委員会において……。
  37. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 私はそういうことを申した覚えはございませんし、又そういうことを考えておりません。
  38. 岩間正男

    岩間正男君 これは技術的な、鈴木次長の技術的な答弁なんですか。これはどうもそこのところの国務大臣との間に食い違いがあるのですが、これははつきり取消されますか。
  39. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) いや、私自身考えは私自身通り考えておりますから御了承願います。
  40. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますとなんですか、次長国務相意見が食い違つているということははつきり認められるわけなんですか、いいんですか。
  41. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。それをよく取調べまして次長意向一つ聴取いたして、それから御答弁申上げましよう。これのほうが妥当でございましよう。
  42. 岩間正男

    岩間正男君 これは当委員会としても次長意向はどの辺にあるのか、これは非常に重要だと思うのですが、こういうことを、あとの機会で又次長出席を求めて頂きたいと思います。それでそういうような一つ行政官庁意見が不統一である、そういうようなことではこれはいろいろと先に審議をして行く上に不明瞭な形になる。岡野国務相はこれは責任を持つて現状においては平衡交付金のそういう減額ということは起らない。來年度においてはこれは確認されるわけでありますか。
  43. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) はつきりお答え申上げます。來年度平衡交付金は減らしません。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 それではその言葉を確認しで進めたいと思います。もう一つ今年度の平衡交付金増額が地財委から勧告されて、両院において決議案が上げられ、これについて池田蔵相もこれに対して努力する、善処するというようなことを答弁され、吉田総理もこれを池田蔵相をして言わしめているのであります、本会議に。それで善処するということの内容、これはどういう、具体的にはどういうことを示すのでありますか。その内容についてどうなんですか。
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 衆議院参議院の本会議答弁いたしましたように、決議案の趣旨を尊重いたしまして、中央地方の財政状況を検討勘案し、善処する、こういうことでございます。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 善処するというのは何ですか。つまり善処するだけですか。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 両院の決議の趣旨を尊重し、中央地方の財政状況を検討勘案して善処するという趣旨であります。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 どうもむずかしいことになつたわけでありますが、増額をする努力をされるというのでありますか。あの決議案ははつきり増額要求しておるのです。それに対して、勘案し云々というのではどうも甚だぼやけてわからない。日本語が陰影に富んで明らかでない点があるのでありますが、もつと議会の用語でないやつではつきり答えてもらいたい。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 本会議答弁した通りです。何回お聞きになりましても、中央地方の事情を十分検討勘案し、そうして国会の決議の趣旨を尊重して善処する、こういうことでございます。減らすという意味は勿論ございません。殖やせという決議を尊重しておるのであります。
  50. 岩間正男

    岩間正男君 何だかどうも不明瞭で、時間の関係から、何遍も同じ答弁をするというのでありますから、これは打切りましよう。併しあの決議の精神というものは、これはこの前も述べましたように、今のような答弁では、私は本当に尊重するということにならないと思う。いやしくも両院が全員一致を以て決議している。そういうことを考えますときに、政府がこういうような問題について今のようなお茶をにごしたような程度答弁では、これは非常に満足できないのではないか、こういうことを思います。これに対して同じような答弁を重ねられるということをさつきから言うのでありますから、これについて一応その問題は打切ります。大体あと……。
  51. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 特別調達庁のなにが來ております。
  52. 岩間正男

    岩間正男君 それでは大体これで蔵相に対する質問は一応今日のところは終りにしておきまして、岡野国務相に対してお伺いしたいのでありますが、それは十一月七日に出されました閣議決定の通牒であります。この問題につきましては、結局地方公務員の給与改訂に伴つて国家公務員との比較において相当大幅に減額して、これで以て、そういうことを予算の基礎に組んで、財政的な措置をし、これを徹底せしむべきである、こういうような通牒を出されたわけです。この通牒が閣議決定の点を、これを周知させるのだから、差支えがない。こういうような自治庁は見解をとられているようでありますが、現在でもそうでありますか。
  53. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。お説の通りでございます。
  54. 岩間正男

    岩間正男君 閣議決定を周知するという、そういう技術的な問題は別としまして、あの通牒の与える意味というものについて自治庁として検討されたのでありますか。つまり現在の段階を言いますと、予算は最後的な決定をこれはしていないわけです。平衡交付金増額の問題に対しましては、これは、地財委の勧告もあり、又先ほど申上げましたように非常に下からの要求が起つて両院の決議案までこれは出されておる。そうして予算は御承知のように、現在参議院でこれは審議中である。而も十一月七日、あの日はこれはまだこの予算の進行状態は甚だ途中であります。こういうときにこれに対しまして地方自治庁としてあの閣議決定の線だからと言つて予算が決定しない以前におきましてああいうような通牒を出されて、教員においては三百七十五円、それから府県の吏員におきましては五百何十円でありましたか、それから市町村の議員におきましては六百何がし、こういうようなものを、これを減額する、そういう予算措置をしたというようなそういうような通牒を出されることによつて、それが非常に決定的な匂いを以て響く面が非常にあると思う。從つて地方の公務員に対しましては、この閣議決定の線の大蔵省の案に対しては、これは反対を表明している。單にそういうような方面が反対しているだけでなくて、知事会議も、又市町村会議におきましても、こういうような意向が表明されている。そういう段階において当然これは国会に対する要求が非常に起つて、その要求によつてこの審議が今後いろいろな審議の過程でこういう要求が通されるかということは、今後の問題だと思う。そういう途中の段階におきまして、あのような通牒を出されるということの意味ですね。この政治的な意味、こういうものについてこれは国会の審議権というものは非常に下から制約される、こういうふうに私は考えるのでありますが、こういう点について岡野国務相はどういうふうに考えておられるか。
  55. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。御承知の通りに中央の国家公務員と地方の公務員との間に給与の非常に凸凹がある、これは常識になつておるようであります。そこでこれが確たる、どのくらい違うということは、これは大量観察でありますし、又或る一部は抜き検査でありますからはつきりしたことはありません。それからはつきりしましても、一万有余の各地方団体におきましては個々別々に違つております。併しながら地方財政委員会といたしましても、自活庁といたしましても、まあ平衡交付金で給与の補いをつける立場におきますならば、やはり国家の公務員と地方の公務員とがおよそレベルがとれたほうがよろしいという考えから今度給与ベースを上げます場合、給与を上げます場合には、大体こういうような平衡交付金の算出と基礎を持ちまして平衡交付金を出すということになつております。こういうようなことを地方に知らしただけでございます。
  56. 岩間正男

    岩間正男君 まあ技術的なもののように解されておるようでありますが、併しこの点については非常にこれは反対意見が表明されております。現にこの反対意見の中には、地財委の意見はつきり出されているわけです。そうして殊に野村財政委員長のごときは、こういうような地方公務員の給与を減額してやる方法については了承できない、これを首肯することができない。從つて財政委員会としては、新たな勧告によつて増額要求しておるのだという意思を表明されている。これは御承知だと思うのであります。こういう点から考えて、最後的な決定に達してそういう段階で一応そういうような通牒を出されるのであつたならばこれは、一応私は首肯されると思うのでありますけれども、併しまだ予算の審議が途中である、最後的な決定に至つていないその途中の段階で、そういうような通牒を出されるのは、單なる技術的な措置というふうにこれは考えることができない。これは十一月七日という予算審議の途中において、こういうものを出された意図というものは、それは無論今表明されたような意図だというふうにあなたたちはお思いになるかも知れませんけれども、この客観的に持つているところの影響、こういうものはどうでありますか。理にこの通牒に対しましては、地方公務員の間からいろいろこれに対する不満の意が表明され、反対の意向が出ている。この一事を以てもわかりますけれども、こういうことは妥当とお考えになりますかどうですか。
  57. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 閣議で妥当とされまして、これを地方に通牒をするということに考えたのであります。無論私は妥当と思つて出しております。
  58. 岩間正男

    岩間正男君 技術的な面ではそれはどうか、妥当かどうか、この妥当かどうかという問題についても、これは意見があるわけでありますけれども、併しこれの与える影響というものについては十分に検討されたのでありますか。そうして私が先ほど申しましたように、国会が審議をやつておる最中にこういうような決定を地方に流す、それによつて国会の審議そのものがいろいろ制約を受けるのじやないのですか。而もこれに対するところの直接いろいろな適用を受けるところの公務員から、反対が下から起つておる。そういうときに、その現段階におきましてはこういう通牒が上のほうから流れればそれによつてそういうことが明らかになつて、それからのいろいろの交渉を受ける、そういう実情があるようであつて、そういう一つの影響力を持つような、こういう通牒が、審議のさなかに流されるということに私は非常に疑問を持つわけであります。つまり一つ予算審議の国会の権能というものが、そういう点でこういうような立場の通牒が流されることによつて拘束される。こういうふうに思うのでありますが、こういう点如何ですか。
  59. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。私はこう考えております。地方自治庁と申しますものは、地方団体を保護育成して自治の確立をさせるために存在する自治庁でございますから、できるだけ地方の公共団体が円満に且つ公正な行政ができるようにやつて頂いてもらうことを常に念願しておりまして、これが予算の審議中であろうがどうであろうが、そのときどきに応じて地方自治団体の善処を依頼するために、又その指示をするためにいろいろな勧告とか若しくは通牒を出しておりますから、私は我々が先ほど申上げました通り妥当だと感じますし、又地方自治団体もこうして行つたほうがいいだろう、財政の基礎を確立して行く上にもいいだろうというようなことがあれば、いつでもそういう通牒を出すことになつておるわけでございます。
  60. 岩間正男

    岩間正男君 私はその予算審議の過程において、まだはつきり最後的決定を見ない段階においてですよ、こういうようないわば閣議決定はどうあるか知りませんけれども、まるでその最後のそういうようなものが決定されない段階で、こういうものを流すことの可否を問うておるんです。どうなんですか、それの影響、それによつて国会の審議権というものが非常に制約をされるのじやないか。このことを問題にしているんですが、そう思いませんか。
  61. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 私は通牒が地方団体にいろいろなアドヴアイスすることは決して国会を無視するとか、国会の審議権を尊重しないというようには考えておりません。できるだけいいアドヴアイスならいつでもやつて行こうと、こう考えております。
  62. 岩間正男

    岩間正男君 そういうような口実の下に何ぼでも通牒を流すことができるということなんです、私の問題にしているのは。国会の最後的なそういう決定に至らないものを、そういうものを成るほど一方で閣議決定をしておるかも知れないけれども、時機があるだろうと思います。最後的決定に至つてこういうものを出されているなら、これは不問に付したいと思う。併しそうじやない。そうじやなくて、それが最後的にまだ決定されていない事項を、中途においてこういう事項を流すということは、やはり今後の審議において非常に大きな障害になる。現に与えておる。こういう事実があるのですから、こういうような通牒というものは非常に私はまずいと思う。それにもかかわらずこれは非常に大切なアドヴアイスだからこれは流すのだ、これはそういう名目の下に今後何ぼでもそういうことはやれる。過去においてもそういうことがあつたと思うのでありますが、こういうやり方について、これは国会の審議権との関連においてどうか、この点を質問しておるのであります。これは慎しむべきではないかと私は思うが、どうですか、これは。
  63. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。私はとにかく両院で平衡交付金を増してやれ、こういうような勧告案が出るほど皆様がたが地方の財政を重要視し、又平衡交付金を増してやろうという思召しでいらつしやいますから、現段階におきましてはそれ以下になりつこないことは無論のこと、それ以上になるかとも思つておりますが、併し現段階におきましては、そういうなことに実際になつておるからという閣議決定を通牒しただけでありますから、恐らく審議権には影響しないと思う。若し審議権に影響すれば、非常に地方の公務員が困つている、低く上げられそうだから、却つていい結果をあなたがたが御決定を下さるのじやないか、こう考えております。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 これは余り冗談めいたことを言わないほうがいいと思う。いい結果が出たかどうかということははつきりしておる。これを見て御覧なさい。この通牒を見ればはつきりしておる。今回の地方公務員の給与の改訂について国がすべき地方財源措置は地方公務員の給与と国家公務員の給与基準との間の不均衡の調整を期待し、これを前提として計算されたものである。右の趣旨を地方公共団体に徹底せしめる。こういうような文案になつております。そうしますとこれは單にアドヴアイスよりももつと強く響くところの拘束力さえ持つたところの通牒と見られる。それが予算審議の過程において流される。こういうことを今後しばしばとられるつもりであるか、これは私は非常に重要な問題だと思う。あなたがたはどう言われるか知りませんが、現実的にこの効果というのは実際現われて來ておる。もう仕方がない、こういうことが決定されて地方自治庁が流しておるからこれはもう恐らくきまる、本ぎまりになる、こういうことで以て地方の理事者なんかこういうことを非常に大きく公務員に押し付けて來るだろうと思うし、現に又公務員の中ではまあ仕方がないのだという考えを持つ人もなきにしもあらず。こういうことを考えるときに、国会の審議権において、少くともこういうものを出すとしても時期がまずいのではないか、決定した後に出すべきではないか、そう思いませんか。どうなんですか。
  65. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答えを申上げます。政府の理想を地方に流すことは私は時期にかかわらず出していいと考えております。又先ほど申上げましたように、これが国会の審議権を非常に阻害したとか何とかいうふうには私は考えておりません。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 まあこれは見解の相違になりますから、この辺はこれで打切りますけれども、現実的にどういう効果を持つたかということは明らかである。こういうものについて今後事態をもつとよく調べて慎まれんことを私は切望する。こんなことを許せば途中でどんどんどんどんこれはやることができる。下のほうから流して、そうして一つの不満、要求というものを押えることがこれはできるのでありまして、それを一つの單に通牒の問題だからと言つて、これは軽々しく看過することができない問題であります。
  67. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君に申上げますが、法務総裁はまだ來ませんが、石川特審局長が來ておりますから、それから特別調達庁からも來ております。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 それでは特調のかたにお伺いします。長官が見えているのですか、どなたですか。
  69. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 長官が來ております。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 それでは長官にお伺いしますが、ほかのことでありませんが、一昨日起りました横田の今度の爆破の問題ですね。あれによつて新聞の伝えるところによりますというと、日本の消防夫が五名も犠牲をこうむつた。それから附近の多くの住宅が破壊された。更にその附近の約千メートルぐらいのところのガラスまで破壊された。退所命令が出たり、非常に大きな被害があつたと思うのです。これについて大体特調としまして調査されたと思う。この事件の全貌を先ずどういうような調査の結果になつておりますか。この被害の実況について私は先ず報告して欲しいと思う。
  71. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 一昨日起りました事件につきまして、特別調達庁といたしましては横田の監督官事務所に命じまして至急関係の調査を進めました。被害の状況は焼失四戸、大破九戸、中破九戸、小破七戸というのが現在わかつている数でございます。なお死傷者につきましては総計二十二名、最初の報告中は死亡者五名とございましたが、只今受けました報告によりますと多分その後重傷の結果死亡に至つたと思いますが、合せまして六名ということに相成つております。從いまして十二名の負傷者がございます。その内訳は軽傷者が約十名のうち民間七名であります。死亡者及び重傷者及び軽傷者のうち三名、これは軍に働いているいわゆる進駐軍関係労務者でございます。なお家屋等の破壊されましたるものにつきましては、横田の監督官事務所において軍当局と十分の連絡をとりまして、軍の援助を受けまして、近所に二十坪の大きさの幕舎二棟を建設し、なお軍より三十人分の寝具を借りましてそこに収容いたしたとそういうことでございます。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 そこでお聞きしたいのでありますが、この被害に対する補償、当然補償の問題が起つて來ると思う。そこで最初にお聞きしたいのは、これは爆彈によりて起つたのでありまして、これは日本政府が補償するのであるか、それとも米軍が補償をするのでありますか。この点を先ず最初に明らかにして欲しいと思う。
  73. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 軍において使用されておりまするところの労務者等の死傷に対しましては、これは日本政府が雇傭者と相成つております。從いまして労働基準法及びその他労働協約等の規定に從いまして補償をいたします。又その他一般の民家の損害焼失等につきましては、これは從來日本政府よりは見舞金をやつております。なおこの点につきまして米軍に対してどうするかということでございますが、この点につきましては責任は一応軍側のものでございますので、そのほうよりも何かして頂きたいと考え折衝中のことと存じます。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 これは軍側で補償するべきものだとおつしやるのですが、そこで今折衝中だと……どういう点についてですか、今ちよつとはつきりしなかつたので、その点もう一度お願いします。
  75. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 起りましたことは一種の災厄でございます。勿論日本政府責任ではございません。軍の飛行機による被害でございますので、まあその間の事情を更に一層調査の上でなければ的確には申せませんが、その事態の起りましたことについて軍側と目下いろいろ折衝中であると思います。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 起りましたことは災害である。こういうお話ですけれども、一体これは爆彈というような現実的にこういう激しい被害を与えるような爆彈を一体どうなんですか、日本の現実、占領政策の中で、こういう爆彈を積むなどというようなことは、これは了承できるのですか。それから起つたこの被害を日本政府がこれは負わなくちやならないのですが、これは一体どういうふうな国際法的なあれがあるのですか。これは法務総裁が來てから私は伺つて見ますが、特調長官としてもこれに対する一つの見解を持つていられると思いますが、どうなんですか。
  77. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 特別調達庁の長官といたしましては、起りました事実を現在見ているわけであります。日本政府責任ではないと申上げましたけれども、とにかく日本国民が被害を受けたのであります。從いまして日本政府としてなすべき点については十分なさねばならんと存じまするが、同時にこれが調査の結果更に一層明確に軍側においての補償をすべきものであるというふうな結論に達しまするならば、米軍のほうにも十分に理解を求めて、見舞金、或いは補償等を私としては頂戴いたしたい心持でございます。
  78. 岩間正男

    岩間正男君 これは日本国民が被害を受けたのであるから、日本政府が補償しなければならないのだ。こういうことを言われたのでありますが、これはどういうことになるのですか。どういう建前になるのですか。それを、被害を及ぼしたのは、これは米軍の爆彈でしよう。而もこれは占領政策の中に、そのような爆彈を、これは日本を基地として搭載し、或いは日本の空を飛ぶ、こういうようなことは規定がないと思う。これは或いは又日本政府ではこれを了承されているのでありますか。この点が甚だ不明瞭なんでありまして、こういう点に対してどういうことになつているのか。今まで從來も例があつたのじやないかと思う。尤も今度のような横田のあの爆発のような大きな被害については未だ聞かないのでありますけれども、併しこれと類似したようなもので、これは九州あたりでも起つておることを我々は聞いているのです。こういうときに、前例もあろうと思うのでありますが、どういうふうにこれは処置されて來たのでありますか。そうしてその処置をするに、それはそういうような米軍の爆彈によつた被害を、それを日本政府が補償しなければならない、そういう一つの根拠、どういう根拠によつてそういうことになるのであるか。日本政府はそういうような、つまり戰争的な行為というものについて、すでに了承し了解に達しておるということを前提としなければ今のようなことが出て來ないわけです。この点は如何ですか。
  79. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 先刻御答弁申上げましたときに、日本政府としてそういうものを補償しなければならんということを申上げたのではございません。日本国民がそういう被害を受けましたのに対しては何とかせなければならん、こういうことを申上げたのであります。日本政府としては從來そういう場合には気の毒であるが故に見舞金を多少ながら呈上しておる、こういうことであります。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 見舞金はこれは別問題ですね。当然見舞金ぐらいはこれはやらなくちやならないのは当り前ですけれども、補償の問題について私は伺つておる。見舞は補償じやありません。今聞きますというと、二十二名にも及ぶ尊い人命がこれらのこういうことによつて失われておる。而も附近の住宅が、これが住むことができないのが相当な数になつておる。相当大なり小なり附近の範囲においては被害を受けておる。又住民はこの衝撃というものは非常なものだと私は思う。望ましくないことでありますけれども、いつ併しそういうことが起らないとは言えない事態なんです。そういう危険が自分の近くにある、身近にあるということによつて与えたところの心理的影響というものは、とても測り知ることができないことです。こういうことについてもつと、こういう問題について当然これは單に物質的な補償だけの問題でなく、こういう不安を再び繰返さないというところの措置についても、これは当然考えなければならない。併し今はそういうような広汎な問題についてあなたにお伺いしておるのではなくて、軍に補償の面からどういうふうな、物質的補償で結構ですが、これをどういうふうにされるのか、軍に見舞金を出す、この程度でこれは終ろうとされるのですか。それであとの面についてはこれはな軍と交渉して、米軍がこの補償に任ずべきだというふうなことがきまれば、そのときは向うさんが補償をするのだということを言つておるのでありますけれども、どうなんですか、見通しは。
  81. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) これは單に一特調長官だけの問題ではないとは存じますが、特調の長官といたしましてお尋ねを受けますれば、これは軍に折衝して出してもらいたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 今まで例はどうです。こういうとき折衝して出してもらつた例がありますか。
  83. 根道廣吉

    政府委員根道廣吉君) 聞き及びますところでは、或る場合には事実上軍より見舞金が出たやの例があるようにも聞いておりますが、正式に補償として出された例はないように思います。
  84. 岩間正男

    岩間正男君 これは調べて……、一部でいいのです。全部でなくていいのです。今までの例を早速出して頂きたい。今のお話によりますと、見舞金というような形で出された。そうういう事態で糊塗される問題でありませんが、誰のこれは責任なんです。日本国民が何ら関知しないところの責任なんです。そうでしよう。今までは、例えばジープの事故とかそういうものがある。そうして全くこれについては補償というものは何らなされていない。轢かれ放し、殺され放しということになつている。こういう事態にこれは追込んでおくことは私はできないと思うのです。当然今度のやつは、而も爆彈というような戰争手段である武器によつて起つたところの被害なんです。こういう被害に対しまして日本政府はつきり腰が上げられるか。自分はつきり自立するために、殊に今度独立も間近いという立場に立つならば、日本民族を擁護する国民の本当の代表であるならば、この問題は私ははつきり米軍に交渉して、この補償に任ずるように努力すべきでないか。こういうふうに思うのでありますが、これは單に特調が見舞金を出したというようなことで糊塗される事態では絶対にない。これは池田大蔵大臣に伺いたいのでありますけれども、これはどうでありますか。これは総理が尤も出席されますれば総理に伺いたいのでありますが、蔵相が來ておられ、又そういうような面にも御関係がありますから、池田大蔵大臣としてはこれはどういうふうに処理されるか、この点伺つておきたいと思います。
  85. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私に質問がないと思つてほかの何を読んでおりましたが、強つてのあれでございますからお答え申上げます。今まで進駐軍の行動によりまして被害を受けた場合におきましては、先ほど特別調達庁長官がお答えになつたように見舞金を出しているのであります。私の記憶ではこういう損害に対しては連合軍はその賠償の責に任じないというふうな声明か何かがあつたのではないかと記憶しておりますが、そこで日本政府としてはお気の毒だというので見舞金を出すことにいたしているわけでございます。独立が間近いから損害賠償の請求をしろ、こういうお話でございますが、これはここでそういうことをやるということをはつきり申上げられません。今までの制度はそうなつております。又お話がありました九州の辺で障子屋がやられたという私は陳情を受けているのでありますが、その結果どういうふうになりましたか知つておりませんが、建前は今の特調のほうでお答えになつ通りでございます。
  86. 岩間正男

    岩間正男君 法務総裁に伺いたいのでありますが、今の蔵相の御答弁では、こういう場合にはこれは補償しないときまつていると言いますが、それは連合国が占領して、そうして戰闘行為とかそういうものがない場合だと思うのです。第一、連合軍が日本にこれは進駐している目的は何だ。この点から先ずはつきりしなければならない。それは日本の非武装化、これを徹底的にやるということが一つ、そうでしよう。日本の非武装化、これはポツダム宣言の命ずるところによれば日本の非武装化ということが一つ、それから日本の民主化を徹底的に確立する。この二つのもの以外に占領軍をいうものはこれは日本にないはずでしよう。然るにこれはどうです。これは殺戮を旨とするところの爆彈です。それを積んで、いる。こういう場合というのは場合が違います。爆彈という武器、殺戮行為を目的とするところのの武器を積んで、この武器によつて被害を受けた場合は、今までとは明らかに場合が違う。從いましてこういう事態に対しましては、日本政府としては私は元來占領政策の面から言えば、私はむしろ厳重に抗議するのが当り前だと思うのでありますが、その点は一応おくにいたしましても、この補償の問題について日本国民の利益の立場に立つならば、政府としましてはこれについてはつきりした態度をともかくとつてもらう。これが当り前だと思う。大橋法務総裁にお聞きしますけれども、先ほど池田蔵相答弁されたような、つまり補償の責に任じない、こういうようなことは少くとも爆彈の場合には適用できない、こういう問題だと私ははつきり了承するのでありますけれども、これはどういう見解でありますか。お伺いします。
  87. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 大蔵大臣のお答えの通りで差支えないと思います。
  88. 岩間正男

    岩間正男君 こういう場合の内容を明らかにしてもらいたい。こういう場合というのは、どういうことを指すのですか、どういう場合ですか。これはいつきまつたのですか。そういうような補償に任じないという規定があるはずでしよう、何月何日ですか、明示して下さい。そうしてこういう内容を今示して下さい。その中には爆彈を積んであるとか、戰闘行為ということについて言つているかどうか、この点を明らかにしてもらいたい。今のような答弁は欺瞞だと思う。欺瞞だ。そういうことで日本国民をごまかすことはできない。お伺いします。
  89. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何もごまかしてはいないのでありまして、私の記憶ではそういう声明か何かがあつたと思います。從いまして今のお話の点は飛行機が爆彈を持つていることは戰闘行為だ、こういうあれでございますが、それは我々は関知いたしません。それが戰闘行為か、或いは日本を占領している場合におきまして、爆彈その他の武器を持つて日本土空を飛ぶということは今までの例から言つて不当だ、こういう考えはどうかと思います。
  90. 岩間正男

    岩間正男君 実に恐るべき答弁だと思う。こういうような答弁をされるような大臣を持つている我々は危くて日本に住んでいられないと思う。あなたのような今のような爆彈を持つているかどうか、こういうことは関知しない。こういうような答弁は成立ちますか。今の答弁行つて御覧なさい。向うがどうしようともう頬被りして、全然関知しないのだ、実に国民の危険を脅やすようなそういうふうな問題が起つたならば、それは我々は知らないのだ。それには抗議もできない、だまつて口を箝している。これが国民の利益を守る政府と言えるか、どうなんですか。この重大な問題を私はお聞きしたい。大変な問題じやないですか。非常に危いですよ。今後飛行機の中に爆彈を積んでいるのか積んでおらないとか、そんなことを考えたら大変な神経衰弱に陥る。こういうことが政府自体で解決できないというそんな馬鹿げた政府がありますか。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あなたと見解を異にしているのでありまして、占領軍が爆彈を積んでいるか積んでいないか、持つていけないということを我々は言う権利はありません。
  92. 岩間正男

    岩間正男君 その権利がないのですか。どうして権利がないのですか。
  93. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほども申上げました通り言う権利はございません。
  94. 岩間正男

    岩間正男君 これは重大な問題だと思います。結局先ほど声明か何かというものの内容を我々検討する必要があります。委員長、これは非常に重大な問題ですから、早速その声明か何かを出して頂きたい。そうして日本国民のこれは今までの問題でもありましたが、これは少し立遅れの問題でありますけれども、この問題を明らかにしなければ、実際夜も眠れないということになる。そうしてそれは全然日本政府は抗議ができないのだ、こういうことになりますと、何のための占領政策であり、何のために一体こういうことになるのかわからないのです。こういう被害が内部から起つているじやありませんか。よく外部の侵略々々と言つて騒いで、そういう危険があるからということを宣伝している。それよりも内部からすでに驚くべきことが起つているじやないか。こういう問題についてあなたたちはだまつて我々の知らないことだ、そうして何か声明か何かがあるからそれによつてだ……、その内容を明らかに法務総裁示して頂きたい。これは国を法的に守る立場から、あなたはこれを全努力をされる必要があると思う。
  95. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうような被害があつたときには、先ほど特別調達庁長官からお答えになつたように、向うからも見舞金を出して、こちらから出すことは勿論でございますが、出してもらうように努力はするのであります。併し今のところ占領治下でございまして、向うの爆彈を積んだ飛行機が日本の上空を走るときにおきまして、そういう物を持つて走つちやいかんということをこつちから申出でてとめる何はないと思います。
  96. 岩間正男

    岩間正男君 安保條約を提唱して、安保條約をともかくこちらからお願いして結んだ政府としてはそうでありましよう。(笑声)そこにある安保條約の問題が……、なぜ一体こういうような国民の危険が起るような問題に対してそれを抗議することができないのか。或いは又実際被害が起つたあとに、それを單に見舞金などという……、而もその見舞金が涙金なんです。そういうもので事足りますか。これは余りに日本政府としては日本国民のこういうような一つの権益を守る、こういう点に非常に私はまるで無抵抗だと思うのです。これでいいのですか。こういうことで国民が納得すると思いますか。もう少しはつきりしなさいよ。日本政府でしよう。日本国民政府でしよう。もう小しはつきりしなさい。どこの政府なんです。外国の政府ですか。日本民族の政府でしよう。我々はそう思つているのですが、間違いありませんか。
  97. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) はつきり申上げております。はつきりしないのは、あなたの頭だけです。
  98. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことで国民が判断するでありましようか。大橋法務総裁、それをお聞きします。声明か何かの内容どうなつておりますか。これをお聞きします。
  99. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 占領軍の行動に対しまして、日本政府としてその責任を問うという道は許されておらないのであります。そうしてその占領軍の行動によりまして、そこに何らか国民に対しまして損失が生じましたる場合におきましては、もとよりこの損失というもは日本政府立場として、国民に対してできるだけ手厚くこれを解釈するということが、これは当然なことだと思います。從いまして政府といたしましては、当然そうした問題のありました場合においては、できるだけ手厚い解決方法を措置するということは、これは当然なことと考えるわけであります。併しこれは別に占領軍に対して国民なり政府の側から損害の補償を要求するという問題ではないのであります。政府立場というものの性質上さように存ずる次第であります。
  100. 岩間正男

    岩間正男君 私はは納得できません。先ほどから話しているように占領行為というものは、日本のポツダム宣言によつてこれはきまつているはずなのだ。それが途中でいろいろな情勢変化されたとか何とか言つておりますけれども、嚴としてその事実はあるはずだ。從いまして非常に危険を持つところの、戰闘行為以外には使わないところの爆彈を積んでおる、そういうことが占領行為の中に含んでおることかどうか。先ほどからの声明か何かの内容、これを具体的に私たちはお伺いするほかないのでありますが、この問題に対して大橋法務総裁は具体的に示しておられない。これは早速この委員会としては委員長から要求して頂きたい。そしてこれは、やはりこういう問題は今後更に日本の安保條約というものが今度発効するという形になりますというと、これは行政協定でもきまる問題だと思うのでありますが、非常にこれは日本人のやはり国内における一つの居住権、こういうものがこの安定に対して一つの脅威を与える前例になつては困るのであります。何のための一体安保條約かということが、ここで問題になつて來るわけであります。当然この行政協定そのものの中に、もつと日本国民の安全を守るという條項の要望が、国民の内部から起るはずであります。若しも今の政府考えを以て、そうして行政協定が結ばれるということになつた場合には、実にこれは重大な問題になる。こういう問題が起きまして犠牲者が出たのでありますが、この犠牲によつて我々は非常にやはり自分の現在置かれる立場というものを本当に反省して、自覚するにいい問題だと思いますので、是非この問題を、当委員会においても重要な問題としてこれは取上げて頂いて、この問題を明らかにされんことを委員長にお願いするのであります。
  101. 和田博雄

    委員長和田博雄君) そうすると私に要求されるのは……。
  102. 岩間正男

    岩間正男君 從いまして占領のそういう事項、声明か何かで出て、そういう場合には補償しないということを、必要がないのだということを、池田蔵相も、それから大橋法務総裁も言つておられるのでありますから、声明か何かなるものを具体的に我々検討することは、今日少くとも国民の代表としての義務である、こういうふうに考えますので、これは是非そういうものを明らかにして頂きたい。
  103. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 池田君の御答弁の中に、池田君のお記憶によれば何か声明が出ておるようでありましたが、私はそういう声明がありますならば、材料としてお出しを願つたほうが事態はつきりさせると思いますから、お調べ願つてあとでその声明を出すように一つ取計らつて頂きたいと思います。
  104. 山下義信

    ○山下義信君 今の問題に関連しまして、ちよつと岩間君も今最後に言つたようでありますが、この際私も政府に聞いておきたいのですが、将來安保條約が成立しまして、駐留軍が日本に駐在しておりまする期間に、只今問題にありましたような事例が起きました場合の損害等につきまして、行政協定のこれからの御協議になります一つの題目になさるお考えがありますかどうかということを、政府に承わつておきたいと思います。
  105. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 行政協定の題目になると考えます。
  106. 山下義信

    ○山下義信君 了承いたしました。
  107. 岩間正男

    岩間正男君 文部大臣は見えておりませんか。
  108. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 文部大臣は見えておりません。
  109. 岩間正男

    岩間正男君 それでは大橋法務総裁にお聞きしたい。先ず第一にお聞きしたいのは、この警察予備隊の問題であります。警察予備隊の中でやはり一番今問題になると思う点は、これはこの予備隊を通じて又軍国主義が復活するのじやないか、こういう点であります。つまり軍国主義の復活が世界の疑惑を集めていることはくどくは申上げませんが、そういう情勢にあると思います。そういう最中にあつて追放軍人をこの予備隊の中に幹部として大分採用されておる、こういう事態が起つておるのでありますが、なぜこういうような方法をこういう疑惑の中でおとりになる必要があるのか、吉田総理も大橋法務総裁も警察予備隊は軍隊でないと、たびたびこれは声明されておるのであります。それにもかかわらずこういうような旧軍人がこの中に幹部として相当な数を採用されておる、こういうことは我々避くべきだ。若しも警察予備隊が本当にこれは国内の治安、それを第一の建前としてやつて行くのであるならその必要を認めることができない。ましてこの火中の栗を拾うようなやり方を避けるべきである。こういうふうに思うのでありますけれども、なぜこういうようなことを今日とられたか。その点をお伺いいたしたい。
  110. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 軍国主義の復活を避けるべきである、この点は私どもも全く同感でございまして、警察予備隊の管理に当りましていやしくも軍国主義の復活の懸念のあるような事柄は、これは厳重に避ける方針でやつておるわけであります。この旧軍人を幹部として採用いたしたという点は、これは内部の性質上旧軍人を採用することが、警察予備隊の能率を高める上から必要欠くべからざる手段である、こう考えたが故でありまして、この際におきまして、旧軍人を予備隊の中に入れることによつて、予備隊を通じて軍国主義の復活ということを避ける必要は、これは十分に考えなければならん点でございます。私どもはこの旧軍人の採用に当りましても、この点については特に注意をいたしておる次第でございます。
  111. 岩間正男

    岩間正男君 軍隊復活の疑惑を持たれているときになぜ旧軍人を入れなくちやならないのですか。旧軍人を入れなければなぜ警察予備隊を強化できなかつたか、その理由、そういうところをお聞きしておるんです。この点如何ですか。
  112. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊は、これは部隊組織を持つておるのでありまするし、又その装備におきましても相当の火器を持つておるわけであります。從いましてこの部隊として行動をいたしまする際におきまして、部隊としての行動ということは、これは一つの技術でございまして、又火器の使用ということも又一つの技術であります。これらを総合いたしまして予備隊の能率を上げるという上におきまして、旧軍人の持つておりますところのこの方面の技術というものが必要である、かように評価された結果であります。
  113. 岩間正男

    岩間正男君 技術をこれに使用したい、こういうお話なんですが、これは議論に亘りますから長く申しませんが、技術だけを使用する、そういうことを、その面の技術だけを抜き離して採用するなどということは、これは不可能だと思うのです。当然そこに旧軍人が入つて來れば、旧軍人の者の考え方、それからいろいろそういうようなものが当然これが入つて來ることは間違いのないことなんです。どうもこの点は今の御説明だけでは私は了承することはできません。警察予備隊が真に民衆の治安を守るために、そうして警察予備隊としてその任務を遂行するのであつたならばわざわざこういう世界的疑惑の中で追放軍人を採用する必要は私はないと思うのです。而も今度の募集の中に我々はその例を見たのでありますが、募集文の中にこういうふうな一項を見て実は愕然としたわけであります。それは旧青年将校のところに手紙が、予備隊の募集文が参つたのであります。この募集文の中に、若しあなたがまだ追放が解除されていなければいつでも追放解除の処置はこれは当方でやれる、だからあなたの希望があれば私は警察予備隊に採用する、こういうような募集文が來ているのです。これはどうですか、明らかに本末転倒と思うのですけれども、追放解除された軍人からそれを採るのなら話は聞えるのですが、まだ追放解除になつていないところの青年将校のところに、追放がまだ解除されていなければ、あなたがそれでは予備隊に來る希望があればこれは当然追放解除をされるでしよう。これでは追放解除というものが手段化されているのです。これはどうですか、こういうことが実際あるのですかどうですか。
  114. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊に採用いたしまする旧軍人は、これはすでに追放解除せられた者を採用するのがその建前でありまして、解除せられない者を採用するということは全然考えていなかつたことであります。只今御指摘の募集文は私はつきり記憶いたしておりませんが、この解除をいたしました際におきまして、解除は非常に多数の人が解除されることになり、そうしてその解除が決定いたしました後におきましても、その通知が本人に到達いたしまするには相当時間を要する向きもあつたと存じまするし、又予備隊のほうの側と、それから解除の手続を運んでおりましたところの当局の側とは、おのおの別個でございますので、多数の解除者の中にはその居所等も必ずしもはつきりしないために、正当な解除の通知書が本人に到達することが非常に遅れるというものも想像ができたわけでありまして、その解除の後に発せられました勧誘状にありまする趣旨は、これはたとえ解除の通知が現実に到達しておらなくともあなたは解除することに決定しておるから、解除の問題については心配なく応募の希望があれば応募して欲しい、こういう意味を言い現わしているにほかならない次第であります。
  115. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君に申上げておきますが、文部大臣も農林大臣も参つておられますから。
  116. 岩間正男

    岩間正男君 今のは何だか答弁としては少し苦しいのじやなかつたかと思うのでありますが、解除された人をはつきり選んで、そこから手続をすればいいと思うのでありますが、今のはそういうことについては御承知ないと言つておりますが、増原長官ははつきり認めておられる、この前私は増原長官にお聞きしたのです。そこで大橋法務総裁は御存じかどうかと思つてお聞きしたのですが、御存じないようであります。ところが増原長官の独断でやつておられたようですが、どうもこういうやり方は不明瞭だと思う。解除されてそれからなら……、それでもさつきから問題があるということは言つておるのですが、ところがまだ解除されないで、若しもあなたが希望すれば解除の手続がとられるだろうということで行くと、これは本末転倒だと思う。こういうことは非常に私は予備隊の性格という問題については世界の疑惑を深める原因になると思う、まずいと思うのです、非常に……。  その次にお聞きしたいのは装備の点でありますが、この装備につきましても一年前私は大橋法務総裁にお聞きしたと思う、カービン銃を持たしたことについて。このカービン銃は一体日本の憲法なんかでも銃を持たせるということは武装的になつて來る、從つて日本の憲法との関連において、一体これは日本政府が要請して米軍が武器を貸与したのであるか、或いは米軍のほうからこの武器を持たせることになつたのであるかどうか、この点をお聞きしたのです。ところが、これについて大橋法務総裁はいつの間にか両方のどつちからともなしに、そうしてカービン銃はキャンプに運ばれたということを御答弁なつた。これは速記にはつきり出ておるわけです。現在見ますと、カービン銃なんかの段階はもうとつくに通り過ぎまして、ロケツト砲、迫撃砲、こういうことになつておるんですが、この限度は一体どうなんです。若しもこれは戰闘部隊でない、これは飽くまでも国内の治安だけのものであつたならば、一体こういう必要があるのかどうか。更にこの限度はどこまで……それからこういうような武器は現在は貸与されておると思うのでありますが、これは講和後もいつまでも武器貸与という形で借りるのか、さつきカービン銃の例で話しましたが、日本政府は貸される、借りるという段階になつて來るのでありますか、この点が不明瞭であります。なお又こういうものを日本政府が持つとすれば、どれくらいの予算を必要とするのであるか、こういう点についてお伺いしたい。
  117. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 先ほどの解除者の問題について補足をいたしておきまするが、成るほどあの勧誘状を出しました当時におきましては、解除が逐次行われておる際でありまするから、なお解除前の者に対しましても通知を出した事実はございます。それでその際には、あなたが解除せられた場合には解除されたということを前提として応募してくれ、こういう趣旨を勧誘状に示したはずでございます。その意味は、不幸にして解除されなかつた場合においては当然採用は不可能であるが、解除されるという前提の下に応募するかしないか、その態度を明らかにして、願わくば応募してもらいたい、こういう趣旨を申したものであります。    〔委員長退席、理事平岡市三君委員長席に着く〕  それから武器につきましては、これは日本政府の要請に応じましてアメリカが貸与をしてくれているわけでございます。講和後におきましても引続き貸与はあるものと考えております。
  118. 岩間正男

    岩間正男君 その募集文なりでも示して頂けばはつきりすると思うのでありますが、その点はそういうものを示して頂きたいと思います。それから武器の点ですが、これはどうなんでありますが。今後どうなんですか。講和後の問題についてどうなるか、この点如何ですか。
  119. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 講和後におきましても引続き貸与を受けたいと思つております。これは現在においては貸与されておりまする関係上、又その貸与されることを前提にしておりまする関係上、特に金を拂つて買うとしたならばどのくらいかかるかということを正確に計算したことはございませんが、一方面隊につきまして少くとも一千億以上の経費を必要とするのではないか。全体として数千億に達するものだろうと思う。現在一応借りており、又講和後においても引続き借りたいと思つております。
  120. 岩間正男

    岩間正男君 この貸与の條件というようなものは、これは安保條約に伴う行政協定によつて今後明らかになるんですか、現在どういう條件になるんですか。現在の條件とそれから講和後の條件、單に何らの條件なしに武器を貸与するということはあり得ないと私は考えます。この前もお聞きしたんですけれども、これはどういうことになりますか。
  121. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在におきましては事実上貸与を受けておるわけでございまして、それ以外に何ら條件というものは附いておりません。
  122. 岩間正男

    岩間正男君 その点はどうですか、講和後は。講和後は当然條件変つて來ると思うのですが、それはどういう條件ですか。
  123. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 講和後におきましては今のところどうなるかわかりませんが、私どもといたしましては、引続き現在と同じような形で借りられるならば、これが一番望ましいと思つております。まだその辺については何ら話合いをいたしてはおりません。
  124. 岩間正男

    岩間正男君 次にお聞きしますが、來年度の大体予算に対して、予備隊としてはどれくらいの額を要求されておりますか、希望を持つておりますか、二十七年度予算は。
  125. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 予備隊といたしましては大蔵省に只今要求をいたしておるのでございまするが、併しまだこれについて大蔵省からのお返事も伺つておりませんし、今年の当初予算並びに補正予算の総額よりは相当上廻つた金額を要求としてはいたしております。
  126. 岩間正男

    岩間正男君 來年度三百十億というのは補正と関連の当初予算との合計でありますが、大体これよりも上廻る、これは我々も聞いておるのでありますが、六百億程度要求と聞いておりますが、來年それほどの予算を、約二倍くらいを増強しなければならないという理由はどういうことなんですか。
  127. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 実は現在この警察予備隊の宿舎の施設が非常に不完全でございます。これを恒久的な施設といたしまして使用を続けまするためには相当改善しなければならん点がございまするし、又この訓練のために必要な練習場の点につきましても、現在極めて不十分な状況でありまするから、これにつきましても完全なものをできるだけ速かな機会に獲得いたしたいと思つております。それから幹部並びに特殊な技術を要しまする隊員につきましての訓練教育の機関を充実しなければならない、又衛生関係の施設等も充実をしなければならん、こうした点におきまして相当の経費を要しまするほか、なお通信並びに運輸の施設におきまして一段と充実を図る必要があるのでございまして、これらの臨時的な費用を合計いたしますると、本年度の経費より相当上廻つた経費を要求しなければならないという状況にある次第でございます。
  128. 岩間正男

    岩間正男君 法務総裁にまだまだあるのでありますけれども、文部大臣が見えておりますし、時間の関係からこれをこの次に譲りまして、文部大臣に今度はお伺いしたいと思うのであります。
  129. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 法務総裁が帰られる前にちよつと聞いて置きたいのですが、今の今年当初追加三百十億に比べて相当多額な増額になるというお話、而もそれは施設改修或いは装備充実等々に必要なんだというお話でありますが、そうしますと、我々今補正で審議いたしておりまするところの百五十億は、これを内訳で言うと、装備充実に約四億、施設改修に四十億という数字が取つてありますが、これは相当長期に亘つて、二、三年に亘つてこの充実なり改修が完了する、その頭だけというふうに考えておけばいいのかどうか、その辺の関係をもう少しはつきりさせて頂きたいと思います。
  130. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) お答え申上げます。現在の補正予算において要求をいたしておりまする経費は、警察予備隊の施設並びに装備の充実の第一次的な分が入つておるわけでございます。來年度においてなお引続き第二次的な施設を行いたい、こういう考え方であります。その後におきましては、大体私どもの希望通り予算來年度において獲得できまするならば、先ほど申上げましたような点につきましては、一応の計画はこれで終るというふうに考えております。
  131. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 第一次、第二次両度に亘つての擴充であるとすれば、今百五十億取つておられると同じ程度の百五十億のものが装備充実に、或いは施設改良に考えられればいいのであつて、更に警察予備隊はそう増額する必要はないのではないかというふうな計算になると思いますが、そうでなくて、遥かに今年の追加予算を含めたものよりも多くなる、更に第一次のものがほんの頭だけで、あとは相当尻ふとりになるのだというように考えられるか、或いは別途の、ほかのもつと計画があるのか、或いは人員の増その他の問題が加味されておるのか。そこらをはつきりお聞きしたいと思います。
  132. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 大体來年度におきまして一応必要ではなかろうかと考えて大蔵省にお願をいたしておりまする金額は約六百億程度でございます。それでそのうちには経常的な費用も入つております。施設の総額は、只今追加予算としてお願いをいたしておりまする金額と、來年度において要求をいたしておりまするその合計と、この両方ができまするならば、現在の物価を基準といたしまして、予備隊といたしまして必要な通信、輸送、宿舎、教育等の機関は先ず完成するというふうに見ております。併し今年度の約百五十億の補正に盛られた金額というものは、そのうちの極く一部でございます。これは経費の関係上第一次として半分を盛り込むということができなかつたということが一つ、もう一つは通信機材或いは輸送設備等の国内におきまする製造能力、又建築の能力等から考えまして、今年及び來年両会計に亘つて完成したいと思う全体の計画の半ばを本年度において実行するということは、そうした能力の点からいつても不可能と考えられます。
  133. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじや最後にそういうふうな計画になつておるのならば、この警察予備隊経費の増加の問題は、そういう完全な計画全体に対してどれだけ要るか、まるくしてどれだけ要るか、而もその初年度はこれだけで、あとはどういうふうに調達して行くかという区分をはつきりわかる資料を至急に御提出願いたいと思います。
  134. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 実はこの全体の計画につきましては、現在一応要求として六百億と申上げておりまするが、これも物価の状況、それから新しいものを作ることも必要とするのでありまして、これはまだ正確には單価の計算ができないものもありますが、そのようなことで全体の金額ということについての見通しを現在正確なる資料に基いて申上げる段階になつておりません。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 併し頭の出ていないものはいいが、頭の出ているものだけは是非それの完全な計画をば一つお出し願いたい。  それから物価その他の問題は現在の單価であればどれだけだか、更に幾らぐらい増が見込まれるか、そういう点は適当に斟酌して頂けばいい。
  136. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) それは一応警察予備隊といたしまして考えておりまする装備の全体の計画につきまして、できるだけこれは資料を作りまして、できる範囲で至急御提出を申上げたいと思います。  但し單価等につきましては将來のことでありますので、なお増加するかも知れないということをあらかじめお含み願つておきます。
  137. 岩間正男

    岩間正男君 天野文部大臣に伺いたいと思うのでありますが、御承知のように両條約が批准される、そういう段階になりまして、この講和後の財政需要というものは非常に大巾に増大される、こういうことになりますと、殊にその中でも賠償、外債、更に国防分担金、或いは又伝えるところによりますと日本の再軍備も間近じやないか、文芸春秋の漫画なんかを見ますと、サンタクロースが再軍備のお土産を持つて來る絵があります。そういう状況に日本はあるのでありまして、こういうことが当然教育或いは民主安定、こういうところに大きく響いて來る、しわ寄せされて來る、こういうふうに考えられる。從つてこういうふうな日本の今おかれている態勢から考えまして、両條約締結後の日本の教育というものは、当然に相当な決意を持たなければこれを守ることができないのだ。  私の申上げたいことは、これを守るために精神的ないろいろな装備を、或いは修身科の復活であるとか或いは又国歌を復活するとか、或いは又現在問題になつておりますところの国民実践要綱というような、そういう観念的なもので守る、こういうことは、今まで戰争前の教育行政の中ではそういうところに傾けられて來たのでありますが、併し問題はそういうところにあらず、やはりこれを実際的に守るには教育財政はつきり確立する。この点に楔を打込むことができなかつたならば、絶対に日本の教育というのは守り得ない、私は戰時前の教育が逆立ちしたというのはこういうところにあつたと思う。教育財政というものを国家財政の中にはつきり確立するという努力、そうしてこれを組織の面、経済の面からはつきり教育を守り抜く、具体的に言いますと、校舎の設備或いはいろいろな教育の設備並びに教育の量、質、生活を確立して、はつきりこういうものを充実するということがなければ、絶対にこれは守り得ないと、こういうふうに思うのであります。そういう点で現在おかれている文部行政というものは決して生やさしいものではない、こういうふうに考えるのでありますが、これに対して教育を守るという、民族の教育を本当に確立するという立場から、天野文相は新しい情勢に対してどういう決意を持つておられますか、この点先ず伺いたいと思います。
  138. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 今岩間さんの言われたことは御尤もなことであつて、單に観念的なことだけで決して教育が守れるとは私も思つておりません。でありますから教育財政の確立ということが一番重要と考えまして、新しい国庫負担制度というものを研究して、諸方面と今連絡しているところであります。
  139. 岩間正男

    岩間正男君 その新らしい教育平衡交付金とか何とか言われている問題については、まあここでは論議しませんけれども、それでは具体的にいろいろ一つ一つお聞きしたいのでありますが、六・三制の例えば校舎建築の問題、六・三制は堅持されるということになつたのでありますけれど、今年度の補正におきまして政府は約六十億ぐらいの要求をされた、これが今年度補正では殆ど認められなかつた。僅かに單価の値上りという恰好で九億五千万程度のものがここ皆認められたに過ぎない。当然これは問題は來年に持ち越されるということになるのでありますが、來年度はこれは今から推測しがたいのでありますが、どういう覚悟を以てこういう六・三制の建築予算というものを最低限度でも、少くとも今度補正で要求されたぐらいの額を獲得される御努力をしておられますか、この点伺いたい。
  140. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 來年度におきましては、一体〇・七坪というものは決して完全というのではございませんけれども、併し今の事情止むを得ませんからして、私は〇・七坪を完成いたしたいという考えでございます。それで約四十万坪をそのために是非要る。從つて五十七億を要求いたしております。又老朽校舎の改築費として四十五万坪を三年計画でやる計画を立てまして、二十七年度では二十一億要求をいたしております。
  141. 岩間正男

    岩間正男君 私は大蔵大臣に続いて伺いたいのでありますが、大体まあ今年の補正でそういう要求が文部省から出されて、これが実現できなかつた。併し緊急性からいいますと相当これは緊急性があつた、それをしもそういうことにならなかつたのでありますが、これは來年度どうですか、天野文相がおつしやられているような、そういう構想が実現する見通しがありますか、これはどうですか。
  142. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全体の枠からいつてすぐ何と申上げかねます。
  143. 岩間正男

    岩間正男君 天野文相、今のような答弁ですが、どうですか。大蔵大臣は今のような答弁ですが、何とも申上げかねるというわけですが、どうもこういうことになるとどうですか。
  144. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 大蔵大臣には大蔵大臣立場があると思いますが、私には私の立場がありますから、できるだけ大蔵大臣にお願いをしたいと考えております。
  145. 岩間正男

    岩間正男君 今まで天野文相は大蔵省には日本で秀れたエキスパートがいるので、大蔵省で立てた案には全幅の信頼をしている、こういうことを言れている。実に池田蔵相に対する信頼は深いようでありますが、そうすると何ともわからないというようなことになつて來ますと、これでも信頼されますか。
  146. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今文部省の新建築或いは他の予算案、こういうものを考えなければなりませんし、先ほど來るお話のありましたいろいろな設備が來年は相当嵩んで参りますので、今〇・七坪確保の要求と、そうして老朽の分の三年計画の建て替えの二十億円というのは、只今ここで聞いたような状態でありまして、これをどれだけ認めるかということにつきましては、今申上げられんのが本当なんであります。これから研究しなければならん。ただ補正予算におきましてもこの文教のほうにつきましては他の公共事業費よりも特に考えて、はかの公共事業費の物価引上げによりまする補正をいたしておりますが、学校校舎の分は御承知の通り九億何千万円を認めているのであります。他よりも特別の考え方を文教のほうに私はいたしているということは、これを以ておわかりだと思います。
  147. 岩間正男

    岩間正男君 六・三制の校舎建築に対する要求がどういうものであるかということについては私はくどくどと申上げる気はございません。  次にお聞きしたいのは、これは給食の問題でありますけれども、給食がまあ來年から打切られる、こういうことになるのです。併し一体これは、この前も私は伺つたのでありますけれども、これは文部行政として非常にこれは責任のないことになるのじやないか。例を挙げますと、私はこのたび九州を九月頃視察に参つたのであります。そうしますと、文部省では曾つてこの給食を完全に実施するためにあらゆる努力をしろという指令を出しておる。そこでこれに対して地方では財政が非常に不如意なので反対もあつた。併し地方の理事者なんかは反対を何とか説得して、そうしてこの文部省の方針に努力をして來た。歩調を合せてそうしてなけなしの金を出して給食の設備なんかをやつておる。これは長く継続されるということを前提としておるからそういうことをされる。ところが來年度からこれは打切りになるということになりますと、文部省が折角ああいうのを進めておつて、而もそれが実現不可能ということになりますというと、これは文部省は非常にこういう点で私は責任を感じておられるだろうと思うのであります。一体こういう形で打切られる、こういうなんと言いますか、実に朝令暮改的なやり方に対してどういうふうにお考えになつておりますか。
  148. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) その点につきましては、私ども苦慮いたしておりますけれども、來年において事実上どういう形かでこの給食ということが、成り立つように今研究中でございます。
  149. 岩間正男

    岩間正男君 どういう形かということで成り立つと言つても、私の問題にしておるのはやはり国庫からの補助を持つところのそういうような給食について言つておるのです。それはどういう形かで、父兄がなけなしのところを、非常に苦しいところを工面して局部的に給食が継続される、こういうことはあり得るでありましよう。併しながら問題はそういうことでなく政策として今まで遂行されたところの給食がここで打切られる。そこでそのために責任問題が非常に下から発生して來る。そうしますと、文部省はそういう点で自分で進めておいたものを途中で駄目になるようなことを、みずから切つて、そうしてその結果が地方の理事者なんかに、この関係者に非常に大きな迷惑をかけておる。曾つて六・三制のためにほうぼうの村長や町長がやめたり、或いは自殺した人が出たのでありますけれども、それと同じような責任問題のところまでこれは問題を追い落しておる。これでは私は非常に済まないのじやないかと、こういうふうに思うのでありますが、これは單にその程度でありますか。これは大蔵省の見解ではこれはどうしてもできないのだというようなことでああいうふうな打切りの線になつたのですが、こういう実情について知つていられますか。こういう一つの何といいますか、決定された問題が朝令暮改でどんどん変つて行く。何らそこに継続性がない。そういうようなところから起こるいろいろな政治的な問題、或いは道義的な問題こういう点で文部省なんかは非常に道義の関係ということを天野文部大臣は常々言われておるのでありますけれども、そういう点からこの政治的な一つの破綻というほど大きな各方面の道義の問題を惹き起すことはないと思うのです。こういう点は如何でありましようか。この点お伺いいたします。
  150. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) その点につきましては私も非常に打切るということは困ることだというのでいろいろお話合いをいたしたのでありますけれども、財政上どうしてもそれはできないということなんですからして、又国家がそれに対して何にもしないというのじやなくして、国のほうでも手伝つてここに何か新しい工夫はないかということを考えておるのであります。
  151. 岩間正男

    岩間正男君 国のほうで手伝つてというのはやはり財政的なことを指すのだと思いますけれども、そうでなければこれは意味をなさない。精神的に手伝うとかなんとかいうことは意味をなさない。これに対して蔵相何か方策があるのですか。裏付があるのですか。
  152. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 国で手伝うというのは、例えば操作なり何か工夫はないか、そういう意味も含めて又いろいろ研究したならば適当な方法はないかといつて、今研究しておるところであります。
  153. 岩間正男

    岩間正男君 池田蔵相のこれに対する見解を伺いたい。
  154. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 非常に大きな問題でございまして、私は各国の給食制度の実態、或いはその出発のときの事情等からいろいろの研究をいたしてみました。なお又來年度におきまする文部省の考え方も一応は聞いておるのであります。でもともとこれはアメリカの援助がある間という前提で行なつておつたのであります。然るところ援助がなくなりまして、どうするかという問題になつて非常に議論を捲き起したのでありますけれども、只今のところ政府は今年度は続けるが、來年度財政的に面倒は見ないという一応の申合せをいたしております。御承知の通り千百万の児童のうち、牛乳のほうは当初八百万をやつておりましたが、だんだん減らして五百五十万の児童に牛乳を出そうというのであります。昨年の十一月、十二月からだんだん減つて参りまして三月には五百五十万となり、全児童の半分にしようと、こういう案でございます。パンにつきましては一週一回でございますか、パンを出さんときもあるのであります。そこで私の考えとしては全国児童の半分にだけ政府が特別の補助をするということは全体的に見て如何なものか。で、設備その他を変でおやりになる所は父兄の負担においておやりになるのが本当ではないかと、こういう考えが私の出発点であります。又いろいろな案も私自身として検討いたしておりまするが、原則的に財政資金で尻を見るということは私としては困る。併し今年度は一応出そうと、こういうので、御承知の通り初めは政府の負担は十五億円だつた。あと十八億円はやはり見返資金から出るということになつておつた。それが十八億円も出なくて五億円しか出ない。それだから当初の十五億円が二十四億円の予算なつたような状況であるのであります。今後の問題として検討を続けまするが、只今のところ内閣といたしましては來年度におきましては財政上の負担は原則としてしない。こういう一応の決定をいたしております。
  155. 岩間正男

    岩間正男君 問題は小さいようでありますけれども、影響するところは非常に大きい。ものの考え方の問題だと思うのです。例えば義務教育無償というようなことを憲法に謳つておきながら実際はその無償の義務教育費の何百分の一を、例えば教科書を一年生に読み方と算数二冊与えるというような形で実行しておる国のことでありますから、これについてはまあ多く触れ得ないのでありますけれども、私は少くともこの学童給食の問題、こういうものはやはり一つの義務教育の中で非常に重要な一つ政策として、教育行政というものが今のようなこの講和後のいろいろなしわ寄せがここに來ないならば、当然これは堅持されるべきものだというふうに考えるのであります。僅か二十五億か三十億の予算が、そうして而も広範な全く一千万にも近い学童の将來と健康に影響を持つものがこれが切り捨てられてしまう、こういうことが一体どういう意味を持つか、こういうことについて私はこれは問題にしたいと思うのです。又文相の決意が單にそういうようなもう一つの大蔵省の考えの下でそういうものだけで、実際そういうものを先行させるというようなやり方では私は感心できない。もう少し現実を見て頂きたい。主としてどういう要求が起つておるか。六・三制にしても、給食にしても私はそういう例を、最近起つたところの全くこれは一つのそういうような財政のしわ寄せがそういう文化教育というものに來たところのまざまざとした姿だというふうに私考えるのです。そのほかにいろいろなことが起こつて來ておると思うのです。例えば今度の教員のベース・アツプについてもそうなんです。これは先ほども問題にしたのでありますけれども、地方公務員というような形でこの教員の俸給が切り下げられておる。併し文相は常々教員の待遇については、やはり一般よりも高くなければならない。そうして高くなくちやならないというその理由の中には、それは教員が当然いろいろな面で研究もなければならない、修養もしなければならない。そういうような研究費というようなものが必要であり、そういうことはこれは非常に一般の父兄なんかも勿論望んでおる。又これは曾つて日教組と文相が紛争を起したときに中労委の末弘会長がこういう教員の特殊的な待遇、こういうものについてははつきりこれは裁定の中で認められていると思う。ところが今日すでにそういうような教員の既得権といいますか、優遇しようという方向というものはどんどん切下げられて來ておる。御承知のように今度の措置によりましては、地方公務員のこれは教員の給与が三百七十五円切られるという形でこれは行われておる。これについていろいろ文部省には対策があると思うのでありますけれども、併しそういう彌縫的な対策を私は申上げておるのではなくて、やはり教育をどのように優先するか。教育を守るということは同時にこれは平和を守ることであり、そうして日本のこの一つの憲法の精神を貫くのだというそういう固い決意が今日一体文相はあるのかどうか。こういう点が私は大きく問題になつて來ると思うのです。こういう決意から生まれて來れば、勿論文相の一つの教育財政の確立、そういう一つの個々の問題に対して戰つて行く立場というものがはつきり出て來ると思うのでありますけれども、どうもそういう点が閣議なんかの文相の立場を見られますというと、非常に微弱にきまつてしまう。この教員の首切りの問題にしてもそうだと思うのであります。果して一体現在国家公務員の教員、大学の先生或いは事務官あたりに非常に多く來ておりますところの今度の定員法による首切り、こういうものが行われて果して一体教育が完全に運営されるとこうお考えになつておられるかどうか。こういう点も文相の決意がどの辺に一体あるのかどうか。殊に大学の今度の事務官なんかの定員、今度のこの首切りの問題なんか見ますというと、これは大学が非常に殖えておる。数が非常に殖えておる。学生においては三倍ぐらいに数が殖えておる。御承知のように新制大学が七十も殖えておる。そういうことができておる。ところが事務員のごときは僅かに二倍にしかなつていない。これだのに同じようなお附合の形で以て約五%というような恰好で、これは同じような形でこの教育職員も切つて行く、こういう形をとられておるのでありますけれども、果して今度の馘首によりまして、整理によりまして教育が守られるかどうか。或いは又今度の平衡交付金のやり方によりまして、本当に教員の待遇というものは維持されるかどうか、どういうふうにこの二点考えておられますか。この点伺いたい。    〔理事平岡市三君退席、委員長着席〕
  156. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私は教員の待遇というものは普通の公務員の待遇よりよくなければならないということを申しておつて、現在よいと思つております、けれどもこれに決して満足するものじやなくて、教育公務員の給与については是非別表を作りたいという考えを持つておることは以前にも述べたところでございます。又定員の整理というようなことも、これは非常に困ることでございますが、併し決して教育に妨げのないように転換配置とかいろいろなことをして工夫をいたしたい考えでございます。
  157. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君、あなたの時間はもう切れていますけれども……。
  158. 岩間正男

    岩間正男君 時間が余りありませんので、いろいろ詳しいことをお聞きしたいことがあつたのでありますが、以上申しましたように、このほかにも大学の研究費の問題とか、育英資金の問題、この大学の、例えば京大事件が起りますと、文相はこういう問題はやはり生活の問題でもあるから何とか育英資金の充足でこういうものを生徒児童の思想善導について考えたいということを洩らされておるのでありますけれども、とにかく現在教育は問題が山積みだと思います。その一番大きな問題はどこにあるかというと私は財政上の問題にあると思う。ここのところに深く楔を打込んで、教育財政を確立して、そうしてはつきり教育をそういう経済の面から守る。こういうことの決意なしには私は実際日本の教育はこれは守り切れないと思う。戰争前の教育はそうでありましした。やはり戰時費の、軍費の負担によつて教育は圧迫を受けた。併し今日の我々と比べるというと、戰争前といえども今日よりはこの教育費のパーセンテージは高かつたのじやないかと思う。今日は非常に大きなしわがここに寄せられて來ております。それを本当に果すことができない。足もとの問題が本当に解決されない。そうしていて先ほど申しましたように観念的な精神的な問題を論議して行く。こういう形では私は教育は守り切れない。これをもつと徹底して言いますというと、むしろそういう問題が解決できない、土台の問題が解決できないでそれを何とか覆うために、むしろそれをごまかすために、むしろ精神的な、精神主義を以てそれに臨んで行く、こういう形になつておるのではないか。私は今日必要な問題は今申しましたところの教育財政の貧困によつてつておるもろもろの破壊、混乱、こういうものに対して深く楔を打込むところに文相の本当に努力すべき中心目標があるのだと私は考える。ところがそちらのほうは余り文相は御熱心じやない。いや御熱心なのでありましようが、まあお得意じやない。或いはそういうほうに余り努力の結果も見えない。こういう形で進まれるということは本末顛倒じやないか。天皇の問題が起りますと、京大事件で……。そうしますと、文相はそれに責任を感じておられると言う。併しながら例えば六・三制のために非常に多くのこれは地方の人たちが泣いておる。或いはそのための責任を負つて自殺したところの町村長もある。或いはその関係者の中で多くの人が犠牲にさらされておる。この責任一体どうするのか。天皇の空車を大学の学生が包囲した。そうして何か青春の声を挙げた。こういうことについては戰々兢々として国会に先ず求められざるに先立つて來て釈明されるところの文相は、何故に私今が言つたような教育財政の貧困によつてつておるところのいろいろなもろもろの犠牲に対してこの責任を負うというそういう態度をとられないのであるか。私は本末顛倒であると思う。今度の給食問題を取上げてもそうであります。又大学の学生の生活の現状を見ましても、もう食えないという現状から今日アルバイトに追い込まれておる。不良化の傾向が起り、いろいろな問題が起つておる。こういう方向の面についてはどういう一体文相は責任を感じておられるか。單に天皇に対する責任というようなことを話され、それだけで済むのであるか。この点が非常に私は大きいと思うのであります。而も又このたびの実践要綱というようなものをこれは出されようとしておる。いろいろ当委員会でも問題になつたのでありますけれども、こういうようなことが一体どういうようなあなた自身の主観的意図は別として、客観的にはどういうような、日本の現実に対してどういうような意義を持つかということ、こういうことに対して十分検討されたのであるかどうか、こういう点を私は本当にこれは率直に伺いたいと思う。私はこの前天皇を道徳の中心にする、道徳的中心にするという問題につきまして、文部委員会で天皇に一体この点を相談されたか。或いは又天皇の許可を受けたかということについて私は文相にお伺いした。ところが文相はこれに対して相談もしなかつたし、許可も受けられなかつたという、併しこれは本当に笑い事ではないのであります。その後どうされたか知りませんが、というのは今度の憲法の観念におきまして天皇はやはり一つの人格だ。それは象徴という形でそういう形にはなつておりますけれども、やはり一個の人格だ。そうすればこの天皇の人格を勝手に独断で天皇にも相談しないで以て、いつの間にか道徳の中心に押し上げるやいうことは、これは殷鑑遠からずなんです。戰争前にも天皇を中心にして天皇を担いで、そうしてあの太平洋戰争に捲き込んだ。天皇は知らなかつた。詔書を出してもこれについては余り責任を感じていられないという形で、あたりの取巻きが利用し、軍部が利用し、財閥がこれを利用し、天皇を担ぎ上げて、そうしていわば戰犯的な地位にまでこれを落した。この事例を考えて見ますときに、今日この実践綱領というようなものの中で又再び天皇に無断で以てそういうようなことをなされようとしておる。少くとも一人格として天皇を認めるなら、本当の憲法の精神というものを、徹底的に、民主的なこの精神を文相が把握しておられるならば、少くとも一人格としての天皇に無断で以て、この問題を解決することはできない。天皇自身承諾するかどうかということは、道徳的中心になるかどうかの大切な一つの要素ではありますけれども、全部の要素ではない。この問題は、むしろ国民大衆がきめるべき問題である。道徳の中心は、はつきり日本国憲法によれば、私は国民の中にある、民主的な国民の中にあるのだ。これが民主憲法の私は精神だと思うのであります。いつの間にか文相はそれを独断的に天皇を道徳の中心に祭り上げ、そうしてそれは一つの人格というものをこれによつて壟断するという結果になるのだ、天皇を尊重するように見せかけて実は天皇を利用するという結果になる。これは文相自身の個人的な、主観的な意図から、言われるということは、ここでは問題ではない。客観的に日本の置かれておる現実の中でどういう役割を果すかということに問題があるのであります。とういう点について一体文相は真剣に考えられたことがあるのかどうか。少くとも文部省や大学というものは、私は日本の憲法というものの精神というものを徹底的に、これは正しく解釈して、これを本当に人民に徹底させるところの責任を有するものだと思う。その責任の中心だとさえ考えられるわけであります。然るに、例えば京大に天皇が今度行かれるのだということになりますと、私はあの問題を起した事務官から聞いたのでありますけれども、平素の気持で以て、当方前の気持で、すなおな気持で天皇をお迎えする気持を大学の職員諸君はとることができたかどうか、或いはしやちほこばつて何か改まつて、そうして戰々兢々として迎えたか。大学の中でこの二通り考えがあつたそうでありますけれども、結局事なかれ主義であるから、ものものしくここに装いをして迎えたところのかたがた……、京都のほうは相当多くの費用を使いまして、こういうような形で以て迎えられて、そうして必要以上の緊張をして天皇を迎えた。そういう事態が、学生の、やはり民主的な精神から見ますときに、やはり反感を買うのであります。その反感がああいうような形にも、一つの表現されたところの理由になる。文相がはしなくも責任をとりまして、自分から何か責任を感じておられるのでありますけれども、私は先ず国民に対しますところの責任を先にすべきである。天皇に対する責任は、いつでも、とられるということが考えられますけれども、これは旧憲法時代の観念じやないか。そういう観念に支配されておるものが残存するから、文相はいつでもそういう方向をとられるのである。むしろ先ほどから申しましたように、これは文部行政の不完全によつて行われておるところの、いろいろなそういう責任というものを、先ず国民の前に率直に文相は披瀝さるべきである、とられるべきだ。本末顛倒も私は甚だしいと思う。それでそういうような緊張感が、先ほどから申しましたように、結局京大事件のような問題を生み、そうして責任にならないような責任を、文相は感じておられる。憲法からいつて責任に余りならないような責任を感じておられる。その考え方にこそ、私は文相の責任を追及しなければならないものがあると思う。その考え方そのものはどうなんでありますか。憲法との関連におきまして、私は天皇の位置並びにこの実践道徳要領なるものに対して、文相はどういう見解をとられるか。ここではつきり承わつておきたいと思うのであります。
  159. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 私は教育について、教育財政が非常に重要だということは勿論強く感じております。又育英資金というようなものも、これは増額しなければならないと思いましたからして、もと、十億だつたものを十五億にし、十五億だつたものを今度は二十四億にいたし、來年度においては四十億の要求をいたそうと思つております。そういう点にも、勿論私はできるだけの努力をいたしておる考えで、それの十分でないということにつきましては、勿論責任を感じております。文部大臣という地位におる間は、文部大臣の関係する事柄については、すべて責任を持つてものをやつておる。ただ責任をとるといつたところで、その責任のとり方にはいろいろあるのでありますから、適当にすべて考えて行くという考え方であります。
  160. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 佐多君に申しまするが、あなたの要求の大臣は、大蔵、農林、通産の三大臣が來られております。
  161. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私安本長官に出て頂くようにお願いをして、先ず安本長官と農林大臣と双方に質問をやりたいと思つていたのでございますが。安本長官の御出席は……。
  162. 和田博雄

    委員長和田博雄君) まだ見えておりませんですが。安本長官は病気で今日休んでおられます。明日は出席するように要求いたします。
  163. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじや安本長官のほうは差しおきまして、先ず大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、大蔵大臣は、昭和二十六年度当初予算の審議に当りまして、先ず第一に二十六年度予算の第一の特徴は、財政規模の縮小であるということを非常に強調をされ、それでお示しになつた説明によると、昭和二十四年度は七千四百億であり、二十五年度は六千六百億であつたものが、二十六年度は六千五百億に逐次減つて來たということを、非常に誇らかに述べられたのであります。そこでそのときに、私は成るほど二十四年度に比較すれば、相当減額になつておるかも知れませんけれども、二十五年度と二十六年度との金額はさして違つてないから、財政規模の縮小なんて誇らかに言われるほどのものじやないのじやないかという意見を述べましたけれども、それに対しては金額的にそうであるのみならず、もつと重要なことは、比率的に見て、財政国民経済に占める地位から見て、相当下つておるのだということでお示しになつたのが、国民所得との対比における財政規模であつたと思うのですが、そのときに、二十四年度には、財政国民所得に占める地位は、比率は、二十四年度に二六%、二十五年度には二〇%、二十六年度には一七・六%と逐次減少しておるので、これこそは財政規模の縮小なんだというお話であつたわけであります。そこで私は、いや現在のような物価騰貴の傾向その他を考えれば、この地位そのものも非常におかしいものになるじやないかというような議論をいたしたのでございますが、併しそのときは、これは後ほどお伺いいたしたいと思うのですが、物価騰貴はさしたることはないから、自分の見込みにはくるいはないということで突つぱねられたわけでございます。然るに昭和二十六年度補正予算を見ますと、そこの資料にもはつきり出ておりますように、金額として七千九百三十七億という非常に大きな数字になりまして、これは過去の、終戰後過去の最大の金額であつた二十四年度を相当上廻つておる状態になつております。更に比率から申しましても、新らしく算定された国民所得との対比から申しますと、二十四年度には二四%であつたものが、二十五年度には一九%に下つておりますが、二十六年度には一八%ということで、比率からいつても殆んど二十五年度と違わないという形になつておる。これも後ほどお聞きしたいと思うのですが、ルース台風その他の問題もありまして、更に再補正も止むを得ないのじやないかということ等々を考えると、この比率も決して下つてないで、むしろ同じであるか、多くなるという傾向になると思うのですが、こういう点を……、從つて蔵相が掲げられた二十六年度予算の特質であるところの財政規模の縮小というものは見通しの誤りによつて完全に破られたし、今後もこれが破られて行く、逆転する傾向にあるのじやないかという心配を持つわけですが、この点を蔵相はどういうふうにお考えになりますか。
  164. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今までの経過はお話通りであります。併し今度、日本独立後の状態を考えまして、平和確立への準備体制の予算を見ましても、当初の国民所得に対しまする一七・六%は動いていないと考えております。やはり実質的には、こういう画期的の平和を迎える準備をいたしましても、財政規模国民所得に対して殖やしていないと考えておるのであります。
  165. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大蔵大臣は、今の御説明でも、或いは予算演説においても、非常に国力が伸張したので、画期的な財政支出があるにかかわらず、なお且つそれほど大きな負担になつていないのだ。これは国力の伸張の賜ものであるということを非常に述べられたのでございますが、成るほど数字的に言えば、国民所得は昨年三兆五千ですか、それが四兆五千になつたということで、相当な増額になつておる。從つて又これを反映して税収入も或いは専売益金の収入も相当殖えておるということが考えられて、一見国力が非常に伸張したように考えられるのでありますが、併しこの国民所得の増加の内容を更に仔細に検討しますと、これは成るほど生産指数その他が若干上つた。例えば鉱工業の生産指数は、去年に比較して三〇%上つたとか、或いは産業活動指数は二三%上つたとかいうような問題もありますが、それにもかかわらず農林水産業の指数あたりは殆んど上つていないし、もつと大きな原因は、例えばCPIが上つたとか、或いは卸売物価指数が上つたとか、或いは雇用量は殆んど増加してないにかかわらず、賃金が物価の値上りにつれて上つたとかいうような、いわば物価騰貴に基くところの国民所得なり或いは自然増収であつて、その限りにおいては、或る意味においては名目的な架空的な増加であつて、むしろこれは国力の伸張というよりもそれだけ国民生活その他をば圧迫しておることになつておる。架空な意味での国力であり、ただ單に政府の物価政策その他における失敗がこういう数字になつて現われているに過ぎないのである。勿論その全部がそうであるとは言いませんが、その大部分、或いは相当な部分がそういうものに基いているのだというふうに私たちは考えるのでありますが、大蔵大臣はそれをどうお考えになりますか。
  166. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 見方の相違でありますが、あなたは国民所得が殖えたのは大部分が物価高のあれだというお話でございます。私は反対に、大部分が、或いは相当部分が生産増強になるものだと考えておるわけであります。
  167. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それはどつちが大部分かという問題になりますが、例えば先ほど申しましたように、鉱工業生産指数は三〇%上つております。併し鉱工業生産指数は御承知の通り日本の生産のうちに占める地位は全部ではないのであります。農業水産その他も相当な地位を占めるのであります。それは殆んど上つていない。ただ上つているのはさつきから言つたように、物価が、例えば卸売物価が四〇%上つたとか、或いは賃金が二三%上つたとか、等々の物価の値上りがむしろ相当な部分を占めているので、そういう事実を曲げて大部分が生産の増加だつたのだということは、余りにも国力の判定において国民を惑わすものじやないか。その点を更にどういうふうにお考えになるか。
  168. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私も物価高による国民所得の増加を否定するものではございません。併しそれと同時に、生産の増強も相当役立つておるのであります。
  169. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 まあそこはどういう比率に考えるかという問題の相違であると思いますが、少くともその大部分が生産の増強によるのだ、生産指数増によるのだというお考えたけは訂正されたと思いますので、更に問題を次に移して参りますが、そこでこれまでの経過においては、私が述べた通りであるが、今後は非常にたくさんの出費があるにかかわらず、その位置は大体において現状のところでとめて行くというようなお話であつたと思うのです。更に予算演説、或いその後のいろいろな御答弁によつても大体八千億台にとめるというようなことでお話をしておられますので、それをとつてそういう気持でおられると思うのですが、それならば大体八千億台でとめられるというふうにお考えになるときに、どういう態度予算編成されるのか、どういう方針で予算來年度編成しようとしておられるのか、その点をまだ確定はしてないからとこの間からも言つておられますが、確定をした、ちやんとはつきりしたものを私は聞こうとは思いませんが、大体においてどういう構想でどういうふうな気持でお組みになるか、それを先ずお伺いしたいと思います。
  170. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先だつても申上げましたように、どういうところに重点を置いてやるかということは、各省の要求その他を勘案いたしましてきめたいと思つておるのであります。御承知の通り、まだ來年度予算編成方針は閣議でもきまつておりませんし、まだ出す準備もいたしていない状況であります。いずれできるだけ早い機会に想を練りまして出す考えでございます。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今佐多君から、所得増加が佐多さんは大部分これは名目的なもの、大蔵大臣は大部分が実質的なものだ……。そういう議論が起ると思いまして、私は非常にラフでありますが、経済安定本部の人にこれは一応試算してもらつたのがあります。これを見ますと、勤労所得は二十五年度に比して一二九%になつておりますが、CPIでこれを割りますと、一〇六・九になるのであります。そうすると勤労所得も多少は殖えております。実質的には六・九%殖えている。併し名目的には二九%殖えております。それから、個人業種所得はこれは名目的に二三・八%殖えております。併しCPIでこれを割りますと、それから又生産のほうを生産財物価指数等を総合的に勘案すると、個人業種所得はむしろ九九になるのです。逆に九九になる。二十五年度より減ります。それから個人賃貸利子所得は、名目的には一三三・七で、三割三分七厘殖えますが、CPIで割りますと、一一〇・七で、一割七厘しかなりません。法人所得は名目的には一四二で、四割二分増加していますが、CPI、生産財物価、これで総合的に実収所得を換算すると、一〇七・七です。実質的には七・七しか殖えておりません。このようにこれは正確でないと思います。大体CPIとか生産財物価指数でこれを勘案するより仕方がないと思うのありますが、非常にラフでありますが統計的にはつきり出ています。どちらの率が多いかということははつきりしているのですから佐多さんの審議の途中で甚だ恐縮でしたが具体的に資料がございますから、大蔵大臣は今漠然とどつちが多いからといつても、感じじやいけないので、具体的な数字があるのでありますから、こういう数字があるのに、大蔵大臣はまだ否定されますかどうかです。その点をお伺いしておきたい。
  172. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど私が答弁いたしましたのも速記録をお調べ下されば、大部分、或いは相当部分と、こう言つているわけであります。私はまだあなたのように数字を十分勉強しておりませんから、一応取調べまして又お答えいたしまするが、大部分或いは相当部分と、ちよつと遠慮して言つております。
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の数字は明らかなのですから、大部分或いは相当な部分でいいかどうか、ここにはつきり数字が出ているのですから、大部分じやないのです。大部分が名目的で、勤労所得は六・九%しか実質的には殖えていない。法人所得だつてこれは九・九ですか、一割殖えていないのです。非常に名目的で、これはいうまでもなく物価は上つたけれども、賃金が、能率賃金がうんと下つた、能率賃金はうんと下つている。ここにあると思うのです。名目的に所得がぐんと殖えておる。賃金は別に多少上つておると言いますけれども、これは名目的に上つておるので、能率賃金はぐんと下つておる。逆に猛烈に下つておる。こういうところに所得の非常に大きく生ずる点が出ておる。この点は非常に重要ですから、大蔵大臣の税制改革が根本的に覆るのですから、この点明確に、数字的の明確的な今度御答弁を願いたい。今ここにはないでありましよう。後ほどでもよろしいですから、この点明確にお示し願いたい。参考資料として……。
  174. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 予算編成の方針に関する態度についてはまだ閣議で決定してないからというお話でございましたが、私たちから考えれば、あの講和條約を結ばれたときに、存立可能な経済を維持するとすれば、ということが先ず謳われて、而も講和條約の前文には、国連憲章の第五十五條を誠実に守る、それに努力するということが述べてあつて、国連憲章第五十五條には生活水準の一層の向上、完全雇傭の実現というものが一番に掲げられておる。そうだとすれば、予算編成方針の場合にお考えになることは、あの講和條約その他から当然に国民の生活水準を維持し、或いは更に向上させるということが先ず確保されなければならない。これが第一点。  次には、存立可能な経済を作るという問題は、今いろいろ問題になつている日本経済の基盤の擴充、或いは生産増加その他に対する、或いは生活水準の向上に対する隘路になつているところの基礎産業の擴充というような問題が取上げられなければならないし、これが第二点に考えられなければならない。そういうふうに先ず生活水準、或いは経済基盤の確立等の、国内の経済力の擴充という問題を先ず確保して、それから或いは講和関係の諸費用その他のものを逐次勘案をして行く。而も講和関係費を考える場合は、防衛分担金とか、或いは警察予備隊費用その他で、さつき申しましたように先ず生活の引上げ或いは経済の擴充を考えて、然る後にこれを考える。更に対外的な経費にしても考える。問題は今政府は先ず連合国人の財産補償の問題を先ずしよつぱなに解決する。或いは外債処理をやる。或いは対日援助の返済の問題を考えるというようなことを先にお考えになるか。それよりもむしろ善隣友好の関係、或いは米英みたよう富裕な国に対するいろいろな義理立ての問題よりももつと困つているところの近隣の諸国に対するところの賠償の問題をより優先的に考える。そしてそれが又アジアの、或いは日本の平和を確立する上においても絶対に必要條件である。そういうものを考えて、然る後になお余力があつた場合に、外債の処理の問題、或いは連合国人の財産の補償の問題対日援助の返済の問題等々を逐次考えることというような順序、順位において問題を考えて行かなければならないであろうし、そうするとおのずから來年度以降の予算編成の方針なり、態度は出て來ると思うのでありますが、今申上げたような点について大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  175. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) なかなか厄介な題議でございまするが、賠償を考えますときには、存立可能な経済ということを前提にしなければいけません。それから外債の問題につきましては、何も存立可能ということは條件になつていないのであります。併しどれを先にしてどれをあとにするということでなしに、大体日本経済を徐々に発展させ、又国民経済国民生活水準も下らないように、できれば徐々に上げて行くという前提の下に、賠償その他経済自立計画を立てて行きたい、こう考えておるのであります。出た金額につきまして、多い少ないはございましようが、考え方といたしましては、日本の自立達成ということを前提にして行かなければならないと思つております。
  176. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、來年度非常に大きな経済になるというお話がさつきちよつと出ましたが、講和関係費、特に防衛分担金、或いは更に予備隊の経費、そういうものが大きな柱になるかと思いますが、それらのものをどのくらいの程度にお考えになつているのか。今警察予備隊の経費は大体大橋法務総裁によれば、六百億程度だと言われるし、或いは六百五十億だというようなことも言われておるようでありますが、それらと関連して防衛分担金、その両者を引くるめて大体どのくらいとお考えになつていますか。
  177. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申上げますように、防衛分担金はまだきまつておりません。それから大橋法務総裁が今大蔵省へ要求しておる金額は、只今大蔵省へ要求しておる金額は六百億と言つたと思います。法務総裁に私は実は御注意申上げたのでありますが、そういうことに責任が持てますかというつもりで言つたのであります。そうしたらあとだんだん動いて來たようでございます。こういう問題はまだ軽々しく言う問題ではございません。経済の状況、これからの見通し、或いは国際関係が非常に厄介なときでございます。法務総裁の言われた六百億、大蔵省へ出ておるのは六百二十五億であります。併しこれより多くならんか、少くならんか、こういう問題は私はまだきめるべき問題ではなく、一応今のところ出しておるのはこうだという意味におとり願いたいと思います。
  178. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その問題になりますが、それでは警察予備隊の経費は、初年度には二百億であつて、そのとき二百億というのは多過ぎるじやないか、これは單に七万五千の国内の治安を確保するような警察予備隊に二百億も要らないじやないかということで、やかましく論議をしましたときにそのときには、いやこれには初年度の経費が必要なんだから、初年度はこういうふうに多額になるが、今後は少くなるはずだというようなことで、あのときは切り抜けて行かれた、それで二十六年度当初予算には百六十億なるものをお出しになつた。そこで我々は成るほど若干減つて來てまあこれで落ちつくのだなと思つていたら、二、三カ月するとすぐ今の百五十億を追加して來られた。そこで二十五年度にはこ百億であつたものが、二十六年度には三百十億になり、それから今のお話によると、來年度は六百二十五億、要求が六百二十五億になるし、併しどうも口ぶりによるとそれをうんと削減されるのか、今のところはそれだけだけれども、もつと殖えるんだというようなことになるのか、その辺がなかなか含みのある言葉で捕捉しがたいのですが、そういうように最初は二百億であつたものが三百十億になり、更には六百二十五億になる、それでもまだ足らないような、まるで雪だるま式に大きくなつて行く傾向にあるのですが、大蔵大臣として今までは、或いは警察予備隊占領治下にあつたので、我々の一存に行かなかつたかも知れませんが、今度ははつきり我々が独立国としてこれを適当なものに、治安の関係その他或いは駐留軍との関係において、或いは又国内の財政力の関連において、我々の独自の判断によつてこれを切り盛りすることができると思うのですが、そういう立場、そういう感じから大蔵大臣はどの程度にすべきだとお考えになつておりますか。
  179. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昨年度二百億というのは初年度調弁費というふうに説明したのですが、この初年度調弁費にはいろいろ種類があります。あの当時は洋服、靴等を主にやつておつたが、今度の分は通信費或いは宿舎費等があるのであります。今後の見通しといたしましては、これは厄介な問題でございまして、法務総裁が只今大蔵省へ要求しておるのはこれだけだと言つた、そのことについて私は或る程度疑問を持つておるのでありますが、なかなか厄介な問題で、日本の国力の状態、又国内治安状況等各般のことから考えて見なければならんものだと思います。從いまして來年度においてどうなるかということは、私は申上げられんように、再來年においてはどうなるかということはまだまだ申上げるわけには行かないのであります。
  180. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 まあ大蔵大臣としては、今年もわからんくらいだから來年度その後の長期の見通しはつかんというようなお話、御答弁があるのかと思いますが、我々が過去において軍事費の審議に当つて同じようなことで、頭だけ若干出しているものを頭だけ追つかけまわして歩いて、あとには非常に大きな尻肥りの問題になつて、のつぴきならんような軍事費になつたというような苦い経験を持つているので、この点についても今はわかりませんというような無責任なことではなくして、もつと少くともここ数年の二、三年、三、四年の見通しだけはつけて、そして日本経済力或いは生活水準との関連において、大きく削減しながら国民生活を守つて行くという方面に努力して頂きたい。これは希望を申上げて、一応この問題はおいておきます。次に防衛分担金の問題でありますが、これもまだわからないというお話でありますが、見当として或いは大体の考え方として、一体防衛分担金というのは伝えられるところによると、三百億だという人もある、五百億だという説もあり、或いは六百五十億だというような説もある、いや千億近いのだというような説もいろいろあつて、まあわかりませんが、考え方として、一体分担すべき防衛分担金は、日本に駐留するアメリカ軍の経費の一部分を持つのでしようか。今の終戰処理費千億のものを例えば分担して、その半分程度のものにとどまるのか、そうでなくて、今の終戰処理費はアメリカ占領軍の軍費の一部分に過ぎないので、その全部を考えて見たら、大きく日本の金に合わしてどれぐらいになるのか、その点も実は大蔵相のほうに至急に資料としてお出し願いたいということを言つておるのですが、まだ資料として出て参りませんが、そういう大きな駐留軍の軍費のうちの幾割かを持つというようなことになるのか、大きな考えかたなり、見当としてその辺の事情を大蔵大臣はどういうふうな見当を付けていらつしやるか。
  181. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) なかなかこれも厄介な問題でございまして、進駐軍費、防衛分担金と申しましても、いろいろな範囲がございます。アメリカの国庫において負担いたしまするこの日本防衛についての費用を負担するということになると大変なことになります。これは非公式に向うの陸軍省のものなんかと話をしておるのでありますが、この進駐軍費、我々の負担いたしておりまする終戰処理費というものは、アメリカの政府が進駐しておる部隊の俸給とか、食費とか、或いは武器、彈薬等から見ますると、ほんの微々たるものでございます。來年度の分が七百億ドル程度になつておりまするが、そのうちどのくらいになるかと申しますと、まあ申上げられませんが、そういうことを考えての分担金と、それから今まで我々が終戰処理費で負担しておりまする進駐軍の土地、建物の借料、それからそこに勤めておる日本人の労務者の給与、それから鉄道の使用料或いは電信電話の使用料、こういうものをいわゆる日本の役務に対するともかく費用の何割かという問題この二つありますが、私は前のアメリカ政府の支拂軍費として出す分の何割というものはとてもできないと思います。從いまして、日本で使つておる日本人の役務に対する費用のなんぼということにしてもらわなければならんと思います。
  182. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 大体考え方はわかりましたが、仮にそういう規模にするとした場合にも、或いはそれ以外にいろいろな外債処理その他の問題もありましようが、そういう問題は、今度の二十七年度の予算にすでに確定的な数字として上つて來るものである。特にその外債処理その他の問題も賠償の問題等々は上つて來るのか、それともそうじやなくて、これは未確定な経費として別途お考えになつておいて、一応二十七年度当初の予算は組まなければならんという状況になるのか、その辺の事情はどういうのですか。
  183. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これもなかなか厄介な問題でございまして、賠償の部分幾ら幾らとちよつと私は來年の一月の二十一日の本会議に賠償額をきめて出すわけに行かないのではないかと思います。案を仮にまとめまして出せるようになるかと思いますが、その点はなかなかむずかしいのじやないかと思います。  それから防衛分担金の問題にいたしましても、これは防衛分担金だけで考える問題じやなしに、やはり警察予備隊等との関連も持ちましたり、この辺が私は今最も苦慮している点であるのでありまするが、大体の腹ずもりは説明し得る程度にいたしたいという気持で今検討を続けております。
  184. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、それらの講和関係費は、不確定なものでも、そういう講和関係費が或いは二千億から二千五百億とか東京では噂されていますが、そういうものが出て來た場合に、從來の国内だけの財政支出……、それを除いた国内関係の財政支出、それの中といいますか、それの規模はどれくらいとお考えになつておるのか。或いは現在の程度は確守し得ることができるというふうにお考えになつておるのかどうか。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これもなかなか言われない問題でありまして、八千億円台にとどめたいというので行つております。而うしてこの平和関係以外の経費につきましても、私は日本経済自立、国民生活の安定という面につきましては、たとえ平和関係に相当な金が要りましても殖やすという気持でおるのであります。平和関係費が要るから何でもかんでも減らしてしまうという考え方は持つておりません。勿論來年度は公務員の整理によりまして相当減つて参りますし、又一般の投資につきましても今年度は補正予算で相当組みましたが、來年度は当初予算補正予算の合計額よりも殖やさなくても或いは減らしても賄いがつくものもありますので、いろいろな点を今勘案いたしておるのであります。
  186. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 国内関係費の現在の程度は少くとも割らないように、それより相当殖やすことも考えているというようなお話になりますと、先ほどから問題にしているところの八千億台の規模というものが確守されるかどうか、その懸念。更に歳入の面から見ての規模をどれくらいにお考えになつておるか。そのときに、先ほどの言明されたところと、或いは予算演説その他で言明されたところによると、現在やつているところの減税措置はそのまま継続して行くというようなお話でありますので、それで大体歳入の面からも賄いがつくというお考えなのかどうか。というのは、更にもつとお尋ねすれば、そういうことができなくなりかねないので、間接税を殖やせばいいじやないかというような議論があるわけでありますが、私たちは、意見としてはこれに対しては絶対に反対の意見を持つているし、或ははもつと枠を外してしまつて公債を出したらいいじやないかという意見まで出て、この点に対しても私たちは公債を出すべきじやないという意見を持つておりますが、それらの問題をどういうふうにお考えになつておりますか。
  187. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 來年度八千億円台というのは、私はかなり検討の上申上げておるのであります。租税収入につきましても今回御審議願つておりまする法人税の引上げ、所得税の引下げ、この考え方を來年度も続けて行きたいと思います。なお、間接税の増税につきましては、只今増税考えておりません。そうしなくてもやつて行けるという見通しでおるのであります。公債の発行は、普通に言われておる公債の発行は勿論やりませんが、ただ広い意味におきまして、私は電力開発等産業資金が相当要りますので、貯蓄債券、こういうものを国で発行いたしまして、零細な資金を集めて、そうして必要な電力方面に出したらどうか。こういう考え検討を続けております。
  188. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 物価の問題に関連して、予算の問題ですが、この点は或いは周東長官が見えてから周東長官に質問したほうがいいかと思いますが、直接予算関連する面だけ拾い出して二、三お尋ねしたいのですが、この当初予算を審議しますときに、まあ一番やつぱり問題になつたのは、物価騰貴がもつとひどくなつて補正予算は歳出の面からも歳入の面からも必至ではないか。それいらいに物価騰貴はひどいものじやないかということを我々がやかましく言つたときに、当時大蔵大臣は、物価騰貴その他も若干あるかも知れないけれども、これはそう心配するほどでもないし、いろいろな施策をやつているのでそういう心配は要らないだろうというようなことを繰返し主張して、まああの当初予算を強行されたわけですが、結果はそれが見通しが誤つてしまつて、物価騰貴が政府が当初予想されたよりも更にそれが幸か不幸か甚だしい歳入の増加等となつて、もう一遍補正予算を非常に大きく補正しなければならんというような状況になつたと思うのですが、その点を大蔵大臣はどういうふうにお考えでしようか。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先の国会で補正予算の問題がありまして、私はたびたび補正予算は組みませんと言つておつた。補正予算を組むことになつたのは、これは見通しが違つたとこうお叱りを受けても甘受いたします。これは私が大蔵大臣になりまして三回目の補正予算であります。いうこう情勢でありますので補正予算を作つたほうが国政の運用上いいと考え補正予算を御審議願うことになつたのであります。その当時におきましては、補正予算の理由は、先ず第一、今輸入主食が非常に上つているじやないか、先ず主食の輸入補給金から補正予算を組まざるを得んようになるのじやないか、こういう点が一番ひどい議論になつたのであります。併し幸いに最も問題になつた輸入補給金は補正予算に組まずに済みました。  それから次の問題は、一般公共事業費その他につき補正予算を組まざるを得んようになつた、こういうお話でありますが、私はインフレ対策といたしましてはできるだけ事業を少くして行くということ、こういう考え方を持つているのであります。物価が上つたから政府もすぐ事業分量を維持して追加予算を組むということは私は賛成しかねます。普通の状態のときならそういうことは原則としてやるべきですが、今年のような場合には、物価が上つたから、政府の事業分量は減らさずに予算を追加して行くという策は本年においてはとるべきじやないと思うので、公共事業費につきましても事業分量は減つて参りましようが、原則として補正を組まん。新規の問題につきましては今の單作地帯の問題で二十億、林道で七億五千万円。ただ例外は、先ほど申上げました六・三制校舎の問題につきましては、これは止むを得ないというので物価高の半分を組んでおります。この前の議会で問題になりました価格差補給金は組まずに済みます。或いは物価高の分は原則として組まん。こう言つておるのでありますから、今回の補正予算も我々といたしましては公共事業費等は含めていないのであります。
  190. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そのとき、物価騰貴の問題を当時議論したときに、特に今の価格差補給金の問題が問題になりましたが、今大蔵大臣お話では、そのためにそつちのほうも補正をする必要はなかつたというようにおつしやるのですが、我々が聞いたところでは、これは後ほど農林大臣その他にもう少し詳しく質問したいと思つている点ですが、我々が聞いたところによると、当初価格差補給金は二百二十五億であつたのをば、今度の予算では二百八十億に、從つて五十五億殖えておる。これで輸入食糧の価格の値上げその他の問題は差しくりがつく。而もこの五十五億は一般会計から組んでいないので、一般会計の補正は必要としていないけれども、価格差補給金そのものは前年度の繰越金等々で増額しておるのだと、いうようなお話があつたのですが、そういう意味では輸入食糧も非常に上つたと見なければならないのであります。
  191. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは見方でございまするが、私はこの前議論になりましたときに、昨年度の輸入は多分三百二十万トンと言つたと思います。それが実際は二百五十五万トンの輸入でとまつた。そこで二百五十五億円の金が余りそうだということが私の頭にあつたのであります。從いまして二百二十五億円組んでおれば、二十五年度の余り五十五億円を加えて二百八十億円になるから、議論はありましたが外国の主食の値上りによつた補給金は多分組まなくてもいいだろうという見込みが当つたのであります。ときに当らんこともたくさんございまするが、この分だけは当つたのでございます。
  192. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 当時物価騰貴の論議をした際に、大蔵大臣その他は、生産財は非常に上つているけれども消費財はそれほど上つていないので、給与ベースの引上げその他の問題は千円アツプでいいのだとこういうような、お話だつたと思うのですが、そのときに、我々は成るほど現在の状態としては、消費財は上つてないが、今後は消費財が相当上るんだというようなことを言つて、そこは非常に意見の相違になつていたと思うのですが、その後の実績によると、例えばこの東京の卸売物価指数を九月までとると、朝鮮動乱以來五三%上つておる、消費財は三二%上つておる。生産財に比べれば若干低位にはありますけれども、併し給与ベースを変える必要がないというような程度の、そういう軽度なものではなくて、相当高く上つておる。而も今後の見通しから考えれば、これまで四月以降五月、六月くらいは若干下つて参りましたが、最近二、三カ月は又物価一般が反騰の傾向にある。而も特にこの一、二カ月非常にひどいことは、消費財が、特に生活物資が、主食の騰貴を中心にして、野菜も鮮魚も卵も肉も非常な上り方をしておる。そして又今後も相当上がるだろうと思うのですが、こういう状態を、こういう点を、大蔵大臣はどういうふうに認識しておられるか。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは昨日も触れたと思うのでありまするが、朝鮮動乱の直前は、日本のこの消費物価は非常に下つておつたのであります。言い遅れましたが、昭和二十四年のあの為替相場をきめたときのCPIを一〇〇にいたしますと、朝鮮動乱のときは八七ぐらいであつたと思います。それから朝鮮動乱後急激に上がつて來たのでありまするが、昭和二十四年の四月、即も私が大臣に就任したときを一〇〇として、イギリス、アメリカと比べますると、日本のCPIは一一一でございます。アメリカも一一〇でございます。イギリスが一一四になつておつた。長い目で見て行けば、大体いい数字を出しているのでありまするが、私の緊縮政策によりまして昭和二十四年から二十五年の朝鮮動乱が始まる頃は、滯貨がたくさんあつて非常に物価が下つたときであります。その下つた時期から今を比べますと、よそに比べて相当上つておるようでありまするが、長い目で見れば、私は決して楽観はしておりませんけれども、まあ努力すればそう物価騰貴にならんのではないかと、こう考えております。それから今の具体的の問題、即ち八月から主食を上げました関係上、物価高に拍車をかけた、こういう問題はありまするが、やはりこれも財政の原則によりまして、主食が上つて行けば、それを消費者に負担してもらうことは止むを得ない。併し官吏の給料は釘付けになつておりまするから、これを八月までに実質的に遡るような方法を講ずる。そうして減税につきましても、八月まで遡るという原則を立てて、そうして生活水準の低下を防止しようといたしておるのであります。  それから最近におきまして、今の野菜その他が上るのも、やはり八月の影響を受けたと思うのでありまするが、これは例えば十二月に〇・八カ月を出すとか、或いは月給が上つて來るとかいうことになりまするというと、果物とか野菜というものは急激に上るものであります。昨年の暮なんか、りんごとかみかんが非常に上りましたが、ちよつとその月給の支拂いがよくなつて來ますと、ああいうものはすぐ上つて來ます。こういうところが我々の金融政策としてよほど考えなければならんところであります。併し今言つたように、まあ楽ではございませんが、できるだけ貯蓄してもらつて、消費物価が急激に上らんような方法として、実は貯蓄債券等も考えておる次第で、非常に微妙な点があるのでございまして、万般の注意はいたしております。で、この頃又金詰りの問題も起つておりまするが、私は物価政策その他から考えまして、金詰りの声におびえてどんどん金を出すということは成るべく避けたいという気持で進んでおります。
  194. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも驚くべきことを聞いたんですが、政府が給与をベース・アツプする気がまえにあるので、そういうものが上つたんだという認識なんですが、そこが我々の認識と完全に相反するところなんです。我々はそういうふうに上るから、給与をばそれに応じて少くとも上げなければならんじやないかという考え方なんですか。どうも大蔵大臣のそういうふうなお考え方であれば、上げちやいかんという成るほど結論が出るので、これはもう非常に大きな意見の相違だと思いますが、そこでその問題をもう少しお尋ねしたいと思うのですが、人事院は御承知の通りに、標準生計費を成年男子一人当り四千二百円、東京でいえば四千四百九十円という標準生計費を出して、そこから大体において平均して一万一千二百六十三円の給与を公務員に保障することがこの際絶対に必要であるということで、あの勧告を出したと思うのですが、それに対して、大蔵大臣はそういう今の人事院勧告の数字に対して、どういうふうにお考えなんですか。
  195. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いつもこれは議論になるところでありまするが、先ほども給食の問題で岩間君も言つておりましたが、今の給食制度を続けて行つて、千百万の児童に同じようにやつたとすれば、二百億近く要る。それから人事院の問題でも人事院の言われるように、一万一千なんぼにいたしますると、一般会計、特別会計或いは政府関係機関、中央政府の分だけで九百何十億負担しなければならん。こうなつて來ますと、人事院の勧告もさることながら、これを尊重しながらまあ大体四百億程度の増加で我慢してもらうというのが私の考えであるのであります。
  196. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その所要経費が幾らになるか、從つて財源調達をどうするかという問題は、後ほどもう少し詳しく議論したいと思いますが、九百億というような金でおどされて錯覚を起させられるから非常に妙なことになる。この点は後ほどもつと議論したいと思いますが、その前に、そつちの問題よりも、標準生計費四千二百円という生計費或いはベースの一万一千二百六十三円というこの金額を、公務員の生活との関連において大蔵大臣はどういうふうにお考になつておるか。
  197. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回の平均千五百円程度の引上でも十分ではないということは私はわかつております。併し財政当局といたしましては、国民の負担ということも考えなければなりませんので、年末手当の分は人事院の言われるように〇・八カ月にいたしたわけなのであります。人事院の一万一千二百何ぼは減税その他等を考えて織込んである数字でしようか、多分織込んでいないと思いますが、私は減税をいたしますので、この程度で我慢して頂こうという結論に到達いたしたのであります。
  198. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 年末手当〇・八カ月を支拂つているというお話ですが、人事院の勧告は一カ月ということじやないのですか、公務員は。
  199. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 人事院の勧告は、年末〇・八カ月、六月〇・二カ月、こうなつて、一年一カ月になつております。
  200. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこでまあ大蔵大臣も四千二百円の生計費或いは一万一千二百六十三円のベースでは如何に人間以下の生活しかやつておれないかということは、もうはつきりおわかりのことだと思う。特に日常あなたのためにいろいろ直接に仕事をしておられる周囲のことをお考になれば、それはもうおのずからはつきりしていて、如何にこれが足りないものかということがはつきりわかると思うのですが、それにもかかわらず、大蔵大臣は千五百円のアツプしか考えられなかつたというのはなぜなのか。人事院の勧告通りにすれば、一万一千二百六十三円の大体平均給与にすれば、人事院の計算によれば、これは大蔵省と若干違いますが、現在の給与が八千四百六十二円だから、二千八百円程度のものを上げなければならんという結論になると思うのですが、そういうふうな結論を出しているにかかわらず大蔵大臣は千百円アツプでいいんだというふうにお考になつているのはなぜなのか。
  201. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど來申上げます通りに、財政の状況等を考え経済の状況等を考えて、我慢して頂きたいという点に到達したのであります。これは私は減税をしなくてもいい、或いは増税をしても公務員の給与を上げろ、こういうことなら別でございますが、今の政府関係機関まで入れまして九百億余りになる、これを地方の公務員の分も右にならえで行つた場合において、国民の負担はどうなりましよう。そこで私は徐々に上げて行つて、そうして片一方では事務整理をして経費を浮かして出して行く、徐々にやつて行くよりほかにないと思います。
  202. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 国民の負担の問題も問題ですが、その問題はあとに論ずるとして、大蔵大臣としては生計費なり生活の必要経費としては、公務員諸君の生活を確保する上においては、一万一千二百六十三円は必要なんだけれども、財政上の問題からそれが遺憾ながら不可能なんだというふうなお考え考えていいですか。
  203. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公務員の生活を確保する意味においては、一万一千二百なんぼが絶対必要だと私は考えておりません。ただできるだけそれに近くはしたいのでありまするが、まあ一万六十なんぼで我慢して頂きたい、こういうわけでございます。
  204. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、人事院の勧告なるものを大蔵大臣は無視されるのかどうか。どうもこの予算説明によると、人事院の勧告を尊重したというふうに出ているのでありますが、その点はどうなんですか。
  205. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 人事院の勧告を尊重しまして、大体において似たところ、上げ方その他について似たところもある。ただ総体的の一人当りの金額とかはそこまで達しない。併し人事院が上げろという原則に副いまして上げているのであります。
  206. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この間の千円アツプのときには、金額が割合にくつついていたし、大体人事院通りになるとかならんとかいうことで議論をしたので、或いは大臣のそういう御答弁もまあなんとか切抜けることができたかとも思いますが、今度の場合は二千八百円、或いは三千円近くのものを上げろと言つているときに、千五百円で我慢しろということを言つておられるのじや、どうも人事院の勧告を尊重したとは絶対に言えないのであります。ただ人事院の勧告もさることながら、それは尊重するわけには行かなかつたのだ、財政上の理由その他だとおつしやるのならば、或いは又それはそれとして一つ意見になり得るかも知れない。その点どうも人事院の意見をちつとも尊重しておらないとしか考えられないのだが、改めて伺いたい。
  207. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど來申しておる通りでございまして、できるだけ人事院の勧告通りにしようと努力したのであります。細目の点につきましては人事院の勧告と一緒のところもある。ただ総体的の金額でできなかつたのであります。まあいろいろ物価高、財政状況、減税、こういうことから考えますると、やはりこの程度で我慢して頂かなければ、人事院の勧告通りにいたしますると、国鉄にしましても、郵政、電通のあの特別会計でも、今度引上げました分に又一割余り上げなければならん。こういうふうなことになりまして、これが日本財政上にどういう影響をするかということを私としては考えにやなりません。先ほど申上げましたように、賃金と物価の惡循環を起すということは絶対に私は避けなければならん問題でこれが私の頭にあるので、この程度で我慢して頂きたいと思つておるのであります。
  208. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも人事院の勧告を尊重したと言われますが、それじや更にお尋ねするのですが大蔵大臣は千五百円というのをばおきめになつたのは、もう当初予算が済んで、どうしても給与の問題は何とか考えなければならないといわれていたときに、すでに千五百円というのは構想にあつて、それをただ千五百円だけをつかみ金的に出して、あとはそれが人事院の勧告と合つているとか、或いは財政上どうだとかということを言つておるに過ぎないのである。地方選挙のときに、あなたは、或いは自由党は、給与ベースは千五百円上げるのだといつてすでに四月から宣伝してきめておる。そうして人事院の勧告が出たのは、八月の末であります。だから人事院の勧告とは無関係にあなたがただ千五百円のつかみ金を投げて与えておいて、あとはいろいろと説明をしているに過ぎないのじやないか。その点をどういうふうにお考えになるか。
  209. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回の千五百円の結論は、選挙の前に出ておるのじやございません。新聞その他で御覧になりましても、初めは八、九百円が千円になり、それから千二百円になり、千五百円がきまつたのはずつとおしまいでございます。私は千五百円ということを四月に言つた覚えはございません。自由党のほうはどう言つておられたか知りませんが、私の気特は八、九百円から千円になり千二百円になり千五百円になつた。こういう私は考え方の変遷を申上げていい材料を持つております。
  210. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点は我々はすでに四月から千五百円というのをば聞いていたのですが、それは蔵相自身がそれを言わなかつたとおつしやるのならば、それを信用する以外にないのですが、それではもう一つお聞きしますが、人事院の勧告通りにすれば、正確にいつて今お考えになつている千五百円アツプよりも更に追加経費として幾ら要るというふうな勘定を立てられたのか、それをお聞きしたい。
  211. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 多分これは平年度の計算で行きますと、四百五、六十億円の政府機関まで入れましてあつたのが、九百数十億というのになると思います。而も又地方公務員百四、五十万の人に対しまして右へならえをいたしますと、又これは相当の額に上ると思います。
  212. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 平年度でなくつて、そのうちで差当りこの補正予算に二千八百円なり三千円を組むとすれば、どれくらい増加を必要とするとお考えになるか。
  213. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 補正予算だけだと四百五、六十億円の半分ぐらい、二百数十億と思います。これはこの補正予算だけで考えられる問題でして、來年度予算におきましてずつと続けて行かなければならんものでございますので、補正予算だけでは考えられません。
  214. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもほかの厄介な講和関係費その他の問題のときには、來年度はわからない、差当り今年だけだというふうにおつしやるし、都合の惡い問題が出て來ると、長期計画的に考えなければならんであろうというふうな、得手勝手な議論をされて困るのですが、大蔵省のほうでお出し願つた資料によると、一般会計特別会計だと大体百六億程度の総額で、政府機関は別ですが、いいというふうな数字が出ているのでございますが、この点はこれでいいんですか。
  215. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国鉄、専売を除けば大体その数字になるかと思います。正確なところは主計局長から御答弁……私は單なる記憶だけでございます。  それから講和関係のほうはわからんと言つて逃げるし、この分は見通しをつける。講和関係費は相手があることで私だけできめられません。この給与引上げは人員から……算盤でぴしやつと出る問題でありますから申上げているのであります。
  216. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 一般会計、特別会計に繰入れまして百二十六億殖えます。先ほど百六億とおつしやつたようでありますが、これは国立病院とか、ほかの会計、いろいろ繰入れる関係がございますので、そういう関係がございますので、そういうものを入れまして百二十六億でございます。
  217. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると一般会計、特別会計では百二十六億程度殖やして行けば、仮に政府機関その他の問題を別にすれば出るということになると思うのですが、これは更に後ほど続けて御質問したいのですが、大蔵大臣が非常に得意になつて歳入が殖えたんだということをおつしやつているし、そのためにいろんな方面でリザーブ的な金をたくさんお持ちになつていると思うのです。或いは講和関係費は百億とか、或いはブレトン・ウツズ機構加入の金は二百億であるとか、或いはインペントリーは百億だとか、リザーブ的なものを各所にたくさんお取りになつているくらいに余裕のある問題、余裕のある財政的方法と思うのですが、そこで先ほど私が言いましたように、先ず存立可能な経済、特に国民の一般生活水準を引上げるということを一義的に考えたならば、何にもましてこの百二、三十億の経費を先に確保するということが絶対に必要なのであります。予算的にもそのことは現在の予算であれば可能であるというふうに考えるのですが、その点を大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  218. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何も要らない金を、リザーブとして取つておるわけではございません。皆要るので、そういうことも又給与の引上げと全体を見通して今御審議願つておるようなわけであります。
  219. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 何にも要らない金を取つておるとは言わないのですが、ただ緊急度その他から考えて、若しそういうものをリザーブに取るようなリザーブは、リザーブで今すぐ出すとか何とかいう問題でもないでしようから、少くとも若干のゆとりは、余裕はそういうときに先ず公務員諸君の生活を確保してやる、そのことが国民生活水準を下げない、或いは引上げるということの一歩じやないか。一番先にでもしなければならないことでであるにかかわらず、或いは又周囲の民間ではすでにそういうふうな方向になつているにかかわらず、それをなぜおやりにならないのか。
  220. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先はど來申したことで御了承願いたいと思います。
  221. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いろいろ意見になりますので、その問題はもう少しそれは後にいたします。
  222. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 農林大臣が來ておられますから、……。
  223. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 あと安本長官と両方に関連のある問題ですから……。
  224. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 委員のかたに御相談申上げますが、実は今日これで佐多君の代表質問が終りますので、佐多君の質問を終了してしまいたいと思つておつたのですが、佐多君の要求されている肝腎の安本長官が來ておられませんので、本日は大分時間も過ぎましたので、明日に廻して、明日やりたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは本日はこれで散会いたします。    午後五時八分散会