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政府委員(
瀧本忠男君) それでは
人事院が去る八月二十日に
勧告いたしました
給与水準改訂の
内容並びに極く最近それを法制化するためにはどういうふうな
法律案にして頂いたらよろしいかということにつきまして、
意見の
申出を
行つたのであります。その御
説明を申上げたいと思います。
本年の一月一日から
給与ペースの
改訂がございまして、それは昨年の五月の
水準によるものでありまして、即ち随分時期が遅れて実現がされたわけでありますが、その昨年の五月以降におきまして、
経済事情は大変変動いたしたのであります。そういう
事情が
はつきり消費材にも現われて参
つたというので、昨年も年末に押して
迫つてでございますが、その後
人事院はいろいろ検討して見ました結果、やはり
給与水準の
改訂が必要であるということで、本年の五月の
水準に基きまして
給与改訂をしてもらいたいと、こういう
意見の
申出をしたわけであります。即ち
人事院は本年の五月の
状況に基きまして、
給与ベースの
改訂をしてもらいたいということを申上げるのでありまして、昨年の五月から
一般物価がどれくらい上
つておるかというようなこと、或いはそのときを
基準にしまして、
生計費が何割上
つておるかということで、今回の
ベース・アツプというものをそれに
従つて何割上げて頂きたいと、こういうことを申上げるのではない。飽くまで本年の五月の
事情を
基礎としまして、そのときの
民間の
給与水準は一体どういうふうであ
つたか、又我々が
給与ベース算定の
一つの
基礎にしておりまする
標準生計費というものは、そのときにおいてはどういうものであるかということを
基礎にいたしまして、そういう事実に基きまして
俸給表というものを作り、こういう渣給表にして頂きたい、こういうことを
申出ておるのであります。即ち我々が
給与ベース改訂の際に、二大根幹といたしておりまする
標準生計費について見まするならば、本年の五月におきまして
単身成年者は、この
勤務地手当の
支給のない
地域につきまして四千二百円要る、こういう
事情が明らかになりました。この四千二百円というものは、これは税込の額であります。従いましてこの四千二百円がどういうふうに算出されたかということを簡単に御
説明申上げる必要もあるというふうに思うのであります。
経済安定本部が作成いたしました一九五一年の
食糧のバランス・シートによりますると、
国民は一人一日
当り平均千九百三十七
カロリー、こういう
カロリーを取り得ることにな
つておるのであります。この千九百三十七
カロリーというものは、昨年の我々が
給与水準を
計算いたしましたときの千八百六十
カロリーに比べますと増しております。昨年は千八百六十
カロリーというものを
基礎にいたしまして、いわゆる
マーケツト・バスケツトというものを
作つたのでありますが、今回はこの
国民一人
当りの
カロリーが殖えておるのでありまするが、その殖えました千九百三十七
カロリーというものを
基礎にいたしまして、
マーケツト・バスケツトというものを作り、そうしてそれから
金額を
計算するということにしたわけであります。従いまして我々が
計算いたしました
標準生計費は、昨年に比べまして
物価の値上りということがございまするから、そのために
金額が上
つている部分があります。併しながら
カロリーが殖えているのでありまするから、当然そのために値段が上
つて来るということもあるのであります。この
国民一人
当りの
カロリー、即ち千九百三十七
カロリーというものを、これを昨年の
単身男子に直して見ますると、二千三百三十六
カロリー、こういうことになるのであります。軽
労働に従事いたしまする
単身成年者が一日に所要いたしまする
カロリーは二千四百
カロリーだというふうに言われております。これは二千五百
カロリーが適当であるというふうに変えておられまするが、従来
一般に信じられておりました軽
労働に従事いたしまする場合に、
単身男子一日の
所要カロリーは二千四百
カロリーでありまするから、今回の
勧告におきましては、それにもう大分近付いたということが言い得るであろうというふうに思うのであります。ちなみに昨年度はこの
カロリー数は二千三百十一
カロリーであ
つたわけであります。即ち二十六
カロリー殖えている、こういうことになります。これを
基礎といたしまして、いわゆる
マーケツト・バスケツトというものは
食糧費等について作りまするから、そのほかの
被服費、
光熱費、
住居費というようなものにつきましては、これはいわゆるCPSから一人
当りの
金額を算出するのであります。そのようにいたしまして、東京におきまして、どれだけかかるかということをや
つてみますると、一月
当り四千四百九十円という
数字になるのであります。これを
勤務地手当の付かない
地域に換算いたしますると、三千五百九十二円ということになります。ところがこれだけの手取りがなく
つてはならない。我々が給料をもらいますると税金も差引かれまするし、そのほかいろいろな
共済組合の費用でありますとか、そのほかが差引かれますわけであります。これを全部加えて差引かれた残りが三千五百九十二円ということになりまするためには、どういうふうな
金額であ
つたらいいかという
計算をいたしてみますと、それが四千二百、こういうことになります。昨年はこれは三千三百四十円であ
つたわけであります。繰返して申上げますると、これで
カロリーが殖えておりますのと、それから価格が上
つている両ほうのために、こういうふうに
金額の違いが相当大幅に出て来ている、こういうことになります。この四千二百円というものを一体如何なる人に保障したらいいかということでありまするが、これは従来から満十八才の人に保障すべきである、こういうふうに考えられてお
つたのであります。満十八才をどこに押えるべきかということになるのでありますが、現在
公務員の
職務の
級別の
平均年令というものを出してみますると、この二級というところの
平均年令が十八・六才ということになるのであります。二級に号俸がずつとございまして、その中間は四号ということでございまするから、二級の四号というところは十八・六という
年令に該当する。こういうことになります。従いまして、十八・五というものはそれより幾分低いわけでありまするが、これは二級三号に抑えるのが適当である。こういう結論に達しまして、二級三号のところを四千二百円とする、こういうことを一応きめたわけであります。これは
標準生計費、一方
民間の
給与調査ということになるのでありますが、この
民間の
給与調査、
労働省で毎月
勤労統計というものがございます。この
統計によりますれば、
民間の
平均の
給与額は
幾らであるかということがわかります。併し我々が今求めたいというものはそういうような
平均ではございません。
公務の場合におきまして、
課長、まあいろいろ
課長にもありまするが、その
職務内容、責任の
度合というものが大体同じであるような
職務に従事しておりまする者の
給与は一体どういう
給与であるかというようなことを知る必要があるのであります。こういう
調査は今国がいろいろや
つておりまする
統計の中にございませんので、
人事院はみずから自分でこの
統計を作成しておる次第でございます。その
統計と言いますものは、即ち現在の
職務の級、一級に該当するような
職務内容の
民間の
給与事情はどうな
つておるか。又二級、三級、四級とずつとその
職務の
級別に、この
公務員の場合と同様の
職務内容を有する者の
給与の
平均はどうな
つておるかというようなことを仔細に
調査いたしまして、その
平均を求めて、大体
平均を繋いで、そうしてこの
職務の
給与別の
平均的な
給与はどういうふうであるかということを算出いたしたのであります。これは本年は特に三月分につきましてこの
調査を行な
つております。即ち、我々はこの昨年の
年末広におきまして、もはや
給与ペースを
引上げる必要があるのではないかというような
事情を感じてお
つたものでありますから、例年でありますれば、毎年五月に行ういまするこの
民間給与調査というものを特に繰上げまして、三月分についてこの
調査を行な
つたのであります。ところがその後いろいろ検討しておりました結果、新らしい
資料の入手というようなこともございまして、やはり五月の
水準においてこれを行うのが適当であるということから、三月に行いましたものを五月の
水準に直しまして、この
民間給与調査というものを引直しまして、それを
基礎にいたしまして
俸給表を作
つた。ただ先ほど申上げましたように、
標準生計費というものは、二級三号のところに保障いたしたいというのでありますから、
民間給与調査とこの
両者をうまく結合いたしまして、そうして
俸給表を作
つておる。こういうことになるのであります。そういうふうにして作りました
俸給表、それを現在の
国家公務員の
級別、
号別の人員という分布があるわけでありまするが、そういう人に適用いたしましたならば、一体
幾らになるであろうかと逆
計算してみます。一人
平均どういうふうになるであろうかということを
計算いたして見ますると、それが本年の八月一日におきましては一万一千二百六十三円、こういう
数字になる。こういうことを
人事院は申しておるのであります。従いまして
人事院が言いたいところは、この
俸給表自体の問題でございまして、一万一千二百六十三円という
数字ではない。これは
計算してみればそういうふうになる。我々が
勧告したいところの
俸給表はたくさんございまして、
級号別にいろいろ
数字がございます。それを一口に申上げるのはなかなか困難でございまするから、仮にそういう
俸給表を全員に適用して、そうして一人
平均の額を算出してみればどうなるかということをや
つてみますと、八月一日では一万一千二百六十三円、こういう
数字になる。これを申上げておるのであります。ところで現在の
給与法というものによりますると、先ず
俸給表というものがある。それから又
昇給昇格の
基準というようなものがそれに附随していろいろ規則できめてございます。で、現在の
給与法を適用しておりましても、この
昇給昇格の
基準等がございまするので、これは
給与水準がおおむねいつでも一定の場所に固定されておるということはないのでありまして、おおむね四半期経過いたしますると、一人
平均七十円
程度上がるというような
状況にな
つております。
従つて我々は五月の
水準で
計算したのでございますが、この
計算の
基礎に、その当時におきまして確定してお
つた米価の
改訂ということは見込んであるのでありますが、これを八月一日から適用して欲しいということを
申出ておるわけであります。
従つて、八月一日においてこの
平均はどうな
つておるかというと一万一千二百六十三円、こういう
数字にな
つておる。こういうことを
人事院は申しておる。こういう
ペースを適用して欲しいという、こういうことを申上げておる次第であります。
給与水準につきましては、単に只今
概略申上げたようでありますが、今回は特にこの電通、
郵政等の
独立採算制によ
つておられまする
企業官庁につきましては、その事業に適用いたしましたような
俵給表を作
つてもらいたいということを
申出たのであります。即ちそういう新らしい
俸給表を
一つ作つてもらいたいということを
申出ております。又こういう
職員につきましては、特に能率を挙げる必要上
奨励手当の
制度を設けてもらいたい。こういうことを
申出ております。又従来年末
手当法というものによ
つて支給されておりまする年末
手当は〇・五カ月でございまするが、我々が
民間の
事情を調べてみました結果は、
平均的に申しますると、毎月きま
つて支給されまする
給与のほかに、
年間を通じまして、これは多いところも少いところもいろいろありまするが、
平均を
とつてみますると、おおむね一・四カ月分ぐらいのいわゆる賞与的な臨時の
給与というものが出ておるのであります。日本におきましては、年末でありまするとか、或いはお盆というようなときには、特に出費のある
国民慣習というものもあるわけでありまして、こういうことが
公務員にだけ許されないというのもおかしなものであります。
国民全体にあるところの
慣習というものは、
公務員も当然そういう
慣習に即応するような
給与の支払いがなされて然るべきではなかろうかというようなことを考えておる次第であります。昨年の
勧告におきましても、
人事院は十三回払いということを申上げまして、その一回分を年末に
支給してもらいたいということを
申出たのでありますが、これは〇・五カ月分の年末
手当とな
つております。
民間の
状況を調べてみましても、
平均的には一・四カ月分出ておるというような
事情もありまするし、昨年は一カ月分の年末
手当を出して欲しいということを
申出たこともありまするので、今回はまあ取りあえず
年間を通じまして、一カ月分の特別な
手当を出してもらいたい。その中で〇・八カ月分を年末に
支給してもらいたい。〇・二カ月分を六月に
支給してもらいたい。この
支給につきましては、これはおおむね生活給的なものではありまするが、併しやはりそこに
幾らかメリツト的なものを加味してもいいのではないかと思いまして、或る
程度成績を吟味する余地を残した。こういうことが今回
人事院が
勧告いたし、又極く最近
法律案の
意見を
申出た
内容の
概略でございます。