○
政府委員(郡
祐一君)
物価の
状況について概要を申上げます。
朝鮮動乱の勃発以来
物価は全般的に
上昇傾向を辿
つて参りましたが、本年の三—四月以降、いわゆる景気の中だるみが現われて参りまして、
物価はおおむね横這いの傾向を続けて参
つたのであります。お配りいたしました表につきましては後刻御
説明を申上げる点は別に申上げることにいたしまして、これらの傾向について大要申上げたいと思います。
かように
物価の動きが緩慢になりました原因はいろいろ事情があろうと思いますが、その事情を考えて見ますると、第一に国際
物価が全般的に頭打ちの傾向を示しまして、特にこれまで異常な騰貴を示しておりましたゴム、錫、綿花等の原材料物資についての急激な価格の下落が現われて参りましたこと、第二には我が国の輸出市場におきまして従来の高値に追随できませず、買疲れの傾向が現われて参りまして、その結果繊維、鉄鋼等の輸出価格が低落するに至りましたこと、第三には緊急輸入促進が効を奏して参りまして、原料輸入確保の
見通しがつき、今日ゴム、皮革のごときはむしろ一時的には過剰在庫を抱えるような
状態に相成り、綿糸布につきましては内需向けの供給
増加の措置を講じたことが効を奏したと申しましようか、従来の思惑的相場を一応鎭靜せしむるに至つたこと等が理由であります。このような理由から一部の物資の市場価格は三、四月頃から反落に転じたのでございますが、この間におきましても値上り要因は依然として続いておりましたため、一部の物資の価格は引続き強調でありました。即ち昨年暮以来国際価格も
上昇し、又海上運賃も大幅に騰貴いたしましたので、輸入原材料の価格が騰貴いたしましたことは、漸次我が国の鉄鋼、ソーダ、石油等の製品の原価高を招きました。これが更に高次製品の価格に波及して来ましたこと及び石炭、コークス、肥料、セメント等一部の物資につきましては、その
需給関係を反映いたしまして価格が強調を続けて来たことが指摘いたされるのであります。
次の最近の、十月中旬とお考え頂いていいと思うのでありますが、最近の主要物資の価格を今年三月当時の価格と対比いたしまして眺めますれば、
相当の数の主要物資について値下りいたしておるものがあるのであります。即ち繊維のうち綿糸が本年三月当時の価格と対比いたしまして六〇%に相成り、綿布が五九%に相成ります。尤もこれは三月当時の闇価格と対比いたしたのでありますが、人絹糸は六三%に相成り、ゴムは六五%、油脂が七九%、鋼材の棒鋼が七八%、非鉄金属のうち錫は六四%、銅が九二%、鉛八四%、亜鉛八四%という工合に相成
つております。併しながら他方では物資によりましては三月以降値上りをいたしておるものがありまして、石炭では三月当時の価格に比べて一二四%、硫安が一一六%、セメントが一三二%、かような
状態に相成
つております。
以上のような情勢から最近の
物価指標を眺めることといたしますると、卸売
物価指数につきましても消費者
物価指数につきましても、本年四—五月以降やや低落の傾向を辿りまして、そうして八月に至
つて反騰の気配を示しております。即ち卸売
物価指数で二十五年の四月乃至六月を一〇〇といたしますると、本年の四月には卸売
物価指数の総平均が一五三・五でありましたものが、八月には一五二・九となり、九月には一五四・八と相成りまして、五、六、七と漸次下
つて参りましたが、八月に至
つてちよつと反騰し、九月に至りまして四月を僅かに凌いでいる
状況に相成
つております。そのうち
生産財について見ますと、四月は一七七・五でございましたが、これも各月漸次下
つて参りまして、八月に一七三・四となり、九月には一七六となり、四月に比べてまだ低位ではありまするが、これに近く相成
つております。消費財について見ますると、四月は一二八でありましたものが八月には一三〇・九となり、九月には一三二・一と上
つておるのであります。
物価の全般的情勢は以上のようでありますが、この間主食及び塩の価格、電気料金を八月から改訂いたしましたし、更に御承知のように運賃、通信料金、ガス料金につきましてそれぞれ価格の改訂を行うことが必要に
なつて参りました。これらの価格改訂は
経済の全般に対しましても国民生活に対しましても、その直接、間接に及ぼす影響は極めて広汎でありまするし、又その影響の
程度も少なからんものがあると認められまするので、その取扱については努めて愼重な考慮を払
つて参
つたのであります。
これらの価格や料金のうち主要なものにつきまして公定価格改訂の理由を申述べることにしてみまするが、これらはすでに御承知のところでありますので、極めて簡単に申しますならば、主食については本年一月消費者価格を改訂しました際に
本年度のパリテイ
指数を一九五と予定いたしておりましたが、そのパリテイ
指数が急激に
上昇しました結果、この消費者価格をそのまま据置くものといたしますれば
食糧管理特別会計に
相当の赤字を生ずることに相成りますので、このような事態に対処いたしまして消費者価格の改訂については
生産者側の事情をも十分考慮いたしまして、更に
一般会計より
食糧管理特別会計に対する繰入れを実施することによりまして主食の消費者価格が急激に高騰しないように努めたのであります。その結果御承知の通り主食の消費者価格は八月一日から平均一八・四六%の
引上げに相成
つております。次に電気料金の改訂についてはこれ又御承知のように再評価による償却費の
増加を織込むと共に火力用炭についても
相当量の
増加を
見込み、且つ動乱後の
物価騰貴に基きます物件費、人件費の
増加を織込んだのでありまして、全国平均では三〇・一%の値上げと相成
つております。国鉄運賃の改訂については別途審議されておるところでありますが、最近におきまする諸資材費の値上り、給與ベースの改訂等の理由によりまして、旅客運賃につきましては平均二五%、貨物運賃については三〇%の
引上げを必要とするものと認められるのであります。
以上述べました主食、電気料金、国鉄運賃のほか、差当り公定価格の改訂が予想されるものを総合いたしまして、これが生計費に及ぼす影響について一言いたします。これらの価格の改訂に当りましては、極力値上りを抑えるように努力しておること勿論でありますが、価格改訂の生計費に対する影響を緩和するため、
所得税の軽減がどのように作用しているかということを申述べてみたいと思います。一々の
数字は煩わしいと思いますので、一例で申しまするならば、夫婦、子二人の家計の場合におきまして、月収一万五千円でありまするならば、現行の
所得税額を差引きまして家計消費に向けられます
金額は一万三千五百八十三円と相成るのであります。家計費に向けられます一万三千五百八十三円に対しまして、すでに述べました各種の価格改訂によりまする生計費の
増加額は総計五百二十七円と相成るのでありまするが、他方今回の
所得税の改正案によりますれば七百一円の減税と相成りますので、差引百七十四円だけ生計費の負担が軽減されるのであります。従いましてこの改正案によりまするときは、少くとも今回の価格改訂による直接の影響については家計負担の
増加を来たさないということが言えるのであります。
次に国際
物価との
関係について一言いたしますると、我が国の
物価が国際的に見て割高であるということはしばしば指摘されるところであります。その原因を考えて見ますると、貿易面に基く諸事情によるところが極めて大きいのであります。商品類別に
上昇度を見てみますると、化学製品とか食糧品とか、主として国内市場を対象といたしておりまする商品の値上りが遅れております半面に、繊維、金属及び金属製品、建築材料のごとく貿易及び特需と関連の深い商品の値上りが顯著でありましたことは、今日までの横這いの
状態についてみますると、そのような商品類別の結果が出ておりますということは、この間の事情を示したものということができると思うのであります。
冒頭に述べました通り中だるみの影響は、全般的に見て輸出価格の下落として国際
物価との調整が行われておるところであります。輸出の
状況につきましては私からこの際申上げることをいたしませんが、特に我が国の輸出の中心となるべき二、三のものについて
ちよつと事情を見てみますると、繊維類などにつきましては従来の市場
関係等によりまして現状
程度の価格によりましても、今後も
相当の輸出の
増加が期待されると考えられるのであります。機械、造船、車両等につきましては一部のものは輸出可能であり、現に輸出が行われておりますが、他の一部のものにつきましては輸出市場の開拓が日なお浅いこと並びに原材料側の事情もありまして、その輸出は必らずしも容易ではないのであります。併しながら輸出の確保につきましては、単に価格のみの問題ではないのでありますから、これらの物資につきましても今後において市場の開拓に意を用い、設備の近代化、経営の合理化等の企業努力と
政府の施策とによりまして価格の安定を図ることが極めて必要であると考えておるのであります。今後の
物価の
見通しといたしましては、最近までの
状況に徴しますると、若干強含みの傾向があるように思われるのでありますけれども、財政金融面からする施策と併せて考えてみまする場合に、国際
物価の動きと遊離いたしまして、我が国の
物価がひとり激しく変動するということは予想されない
状況であります。
お配りいたしましたその
資料につきまして必要な
説明は他の
政府委員からいたします。