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1951-11-30 第12回国会 参議院 本会議 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月三十日(金曜日)    午後二時二十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十五号   昭和二十六年十一月三十日    午前十時開議  第一 国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 軍事裁判受刑者釈放に関する請願委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 諸般の報告朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) これより本日の会議を開きます。  過日の堀木鎌三君の質問に対する答弁のため建設大臣から、カニエ邦彦君の質問に対する答弁のため電気通信政務次官から、それぞれ発言を求められました。この際、順次発言を許します。野田建設大臣。    〔国務大臣野田卯一登壇拍手
  4. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 堀木議員より、物価騰貴の情勢に照らし、既定公共事業予算の中では当初予定した事業量ができないのではないかという御質問があつたと承わつております。この点につきましては、当局といたしましては、できるだけ工事を重点的に行い、或いは又能率増進或いは請負契約を適正にいたしまして、できるだけ既定予算範囲内におきまして予定された事業量を果すように最善努力をいたす考えであります。(拍手
  5. 三木治朗

  6. 加藤隆太郎

    政府委員加藤隆太郎君) 去る二十七日、本院におきまして、カニエ邦彦君より、国費の濫費と官紀粛正に関する緊急御質問の御内容に関連しまして、電気通信大臣に代りまして、私からこの際一応お答え申上げたいと思います。  当省の所管でありまする電気通信研究所におきまして汚職事件の発生を見ましたにとは、誠に遺憾に存ずる次第でございます。当事件関連者といたしまして、当研究所会計課長が、二十五年度中におきまして委託研究費の中から百万円を横領し、且つ他人名義で株券を購入したという疑いによりまして、ほかに同会計課の主査二名が共謀いたしまして、未拂金並びに旅費の中から二百二十万円、又他の一名は業者から約八十五万円を收受いたしたという疑いによりまして、共に去る十月起訴せられまして、目下司直の手によりまして取調中でございます。又この事件に関連いたしまして、当時研究所長でありました吉田施設局長も(「簡單簡單」と呼ぶ者あり)逮捕せられまして、業者から相当額を收受したという点のお疑い大森警察に留置せられまして、目不取調中にあるのであります。この汚職事件国民に與える影響その他を考えますときに、御質問は全く御尤もでありまして、私どもは今後一層官紀粛正最善努力をいたすと共に、今後こうしたことの絶無を期する決意でございますので、御了承を頂きたいと存ずる次第でございます。(拍手)      ——————————
  7. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) この際、日程第一をあとに廻すことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 御異議ないと認めます。  日程第二、軍事裁判受刑者釈放に関する請願議題といたします。先ず委員長報告を求めます。法務委員長小野義夫君。    〔小野義夫登壇拍手
  9. 小野義夫

    小野義夫君 只今上程せられました請願に関しまして、委員会における審査経過並びに結果について御報告申上げます。  本委員会における紹介議員須藤五郎君の説明によりますと、本請願趣旨は、講和條約締結後、占領が終了した際、昭和二十五年十月政令第三百二十五号違反事件等によつて刑の執行を受けている者又は取調中の者に対して、同情ある格段の処置を講じてもらいたいというのであります。  本件に関しましては、政府の所見を聞き、愼重審査の結果、その趣旨はおおむね妥当と認め、これを採択し、院議に付して内閣に送付すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告申上げます。
  10. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。本請願委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  11. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて請願全会一致を以て採釈し、内閣に送付することに決定いたしました。      ——————————
  12. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 参事報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  人事委員会請願審査報告書第二号同  特別報告第二号  人事委員会陳情審査報告書第二号同  特別報告第二号      ——————————
  13. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) この再、日程に追加して、只今参事朗読いたしました人事委員長報告にかかる医師たる公務員待遇改善に関する請願ほか百十九件の請願及び靜岡県原町の地域給に関する陳情ほか一件の陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。人事委員長吉田法晴君。    〔吉田法晴登壇拍手
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 只今議題となりました人事委員会付託請願百二十件及び陳情二件に関しまして、人事委員会における審議の結果を御報告申上げます。  先ず請願第四百九十六号ほか百七件並びに陳情第百四十四号は公務員勤務地手当に関するものでありまして、この種の請願陳情は今回までに全国の各市町村より非常に熱心に数多く提出せられて参つておるのでありまして、本委員会として、その各号について審議を行い、検討を加えましたところ、いずれもその趣旨はおおむね妥当と認められるものであり、又先に本委員会の席上において人事院より、勤務地手当支給地域区分に関しては近く修正勧告を行う旨の言明もありましたので、この際これらの請願百八件及び陳情一件は一括してこれを採択して、議院会議に付すると共に、修正勧告の立案に当り、人事院をして再検討せしめる意味においても、これを内閣に送付すべきものと決定いたしました。  請願第八号は、医師たる公務員待遇改善に関する請願でございまして、その趣旨は妥当なものと認められるのであり、これを議院会議に付し、内閣に送付すべきものと決定いたしました。  次に公務員給與ベース改訂に関する請願第六百五十五号ほか五件及び陳情第二百六十六号は、いずれも公務員給與ベースにそれぞれ所要改訂を行われたいとの趣旨であり、本件取扱に関しては若干の議論が行われたのでありますが、その詳細は会議録に讓り、委員会としては、一般的に請願陳情取扱については議院においてなお根本的に検討を要するものであるが、この際は一応従来の取扱の慣例に従い、これらの請願を採択して、議院会議に付し、内閣に送付すべきものと決定したものであります。  弐に請願第五百四十二号、第六百十一号、第九百四十四号、第九百四十五号、第千百五十九号は、それぞれ寒冷地手当石炭手当支給に関する請願寒冷地石炭手当免税処置に関する請願でありまして、寒冷地手当に関しては実情に即した級地引上げをその趣旨とするものであり、石炭手当に関しては北海道と同じ條件にある青森県の公務員にも支給せられるよう要望するものであり、寒冷地石炭手当免税処置に関する請願趣旨は、同法の本質に鑑み、同手当支給額についての所得税課税を除かれるよう立法処置をとられたいと要望せるものでありまして、その趣旨はいずれも妥当と認められるものであり、いずれも議院会議に付し、内閣に送付すべきものと決定いたしました。特に石炭手当に関する請願につきましては、願意は十分認められるものでありまして、この請願青森公務員よりなされておるものでありますが、この問題はただに青森県下のみの問題ではなくして、東北地方等、各地区にも関連する問題であり、科学的調査に待つことを希望し、この請願を採択いたした次第であります。  以上御報告申上げます。(拍手
  16. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情は、委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  17. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。      ——————————
  18. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 参事報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案修正議決報告書      ——————————
  19. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) この際、日程に追加して、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。    〔河井彌八君登壇拍手
  21. 河井彌八

    河井彌八君 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会審査経過並びに結果を御報告申上げます。  この法律案は、内閣で提出いたしました原案に対しまして、衆議院で一部修正をいたしたものであります。これが本院における原案であります。  先ず政府の提出いたしました法律案提案理由を申上げます。戰時から戰後に引続き複雑厖大となりました行政簡素化いたし、現下の我が国力にふさわしい行政体制を樹立すべきであるという考えの下に、政府はすでに一昨年相当規模行政整理実施いたしたのであります。今日におきましても行政機関職員定員法定員だけでもなお八十九万人を超えておりまして、戰前に比較いたしますると非常な膨脹であり、殊に、平和條約の実施を控えまして経済上の自立を達成するためには、でき得る限り行政費節約すると共に、行政事務簡素化を図るということが必要でありまするから、各省庁事務実情に応じて人員を大幅に縮減すべきであるというのがこの提案理由であります。この法律案は、右の趣旨に基いて、各行政機関職員定員を約九万人削減すると共に、この人員整理を円滑に行うために必要な措置を講じようというのであります。順序といたしまして次に七つの点を御報告申上げます。  第一には、各行政機関における休職者取扱についてでありまするが、行政機関職員定員法によつて規定される職員の数の中には、この休職者を含まないことを規定いたしたのであります。かような措置によりまして、従来ややもすれば長期病気欠勤者等整理の対象とされるのでありまするが、その弊を除去しようというのであります。  第二には、各行政機関における職員の総定員につきましては、政府原案によりますると、現在の八十九万六百五十五人、これから八十万二千七百四十人に減縮して、差引八万七千九百千五人を減少するということになつてつたのであります。ところがこの数字衆議院修正によつて異同を生じたのであります。即ち政府原案によりますると、食糧庁、運輸省、労働者人員につきまして、米、麦の統制解除を前提として相当大幅な整理が織り込まれておつたのでありまして、この統制解除が明年四月一日までに実施せられるに至らなかつた場合には、予算の定める範囲内において政令によつて食糧庁職員定員増加し得ることを附則の中に規定してあつたのでありまするが、米の統制撤廃が明年四月一日に実施せられる見込がなくなつたために、衆議院修正によつて九千百四十人の整理定員の緩和があつたのであります。    〔副議長退席議長着席〕  その結果、定員整理数は七万八千七百七十五人となつておるのであります。この定員の削減の内容について総括的に申しますると、各種行政事務簡素化合理化に伴いまして、且つ各省庁事務の実態に応じて整理を行うこととし、占領の終結に伴つて不要となる事務経済統制撤廃によつて減縮し得る事務、その他不念或いは不要となつ事務については、大幅に人員を縮減することとなつておるのであります。これに比較いたしまして、他方治安関係職員、造幣、印刷、電気通信事業郵政事業等に従事する現業職員登記事務職業安定事務等窓口事務に従事する職員、及び国立病院国立療養所並びに各種試験研究機関等職員につきましては、その業務の特殊性を考慮いたしまして、軽微な整理にとどめようというのであります。かような整理方針でありまするから、いわゆる一律な天引整理ではないということであります。  第三には、終戰処理事業費特殊財産処理附帶事務費等の支弁にかかる職員につきましては、その数を現行法の三千五十五人から二千七百四十人に縮減しようというのであります。  第四には、国家地方警察警察官で、管区警察学校及び警察学校に在学する者につきましては、現在五千人に限つてこれを定員外に置くことができるとなつておりまするが、この数をば二千六百人に削減しようというのであります。  第五には、整理の時期につきましては、原則として六カ月の猶予期間を設けて、昭和二十七年一月一日から六月三十日までは新定員を超える員数の職員をば定員外に置くということができるようにしてあるのであります。併しながら、農林省の職員国営競馬事務に従事する者、通商産業省の職員で米国対日援助物資等処理特別会計及び貿易特別会計事務に従事する者並びにアルコール專売事業現業に従事する者につきましては、これらの事務及び事業整理の都合上、九月末或いは十二月末まで整理の時期を延期することといたしているのであります。  第六には、今回の定員減少に伴つて整理される者につきましては、今年十月一日に自治警察から国家地方警察に編入された警察職員及び地方自治法附則第八條に規定する職員整理される者をも含めまして、一昨年の行政整理の際におけると同様に、国家公務員法の規定する審査請求制度適用しないことといたしているのであります。これは、多数の人員整理の場合におきましては、この制度適用することが実情に即しないという理由であります。  第七には、国立大学の教官及び労働基準監督官で今回整理される者につきましても、その整理を円滑に行うがために、それぞれの罷免等につきまして、教育公務員特例法及び労働基準法等に規定する複雑な事前手続の規定の適用を排除するということになつているのであります。  なお、この際、附加えて申上げますが、国会、裁判所、会計検査院、人事院、その他、日本專売公社並びに日本国有鉄道等政府機関人員整理につきましては、この定員法改正適用外でありますが、これらの諸機関人員整理は今回の補正予算において減員が見込まれておりますので、各機関がそれぞれ自主的に行うことになつておるというのであります。これが本改正案の主要な内容であります。  内閣委員会は、予備審査を含めまして委員会を開くこと十一回、又人事委員会との連合委員会を四回、農林大蔵委員会との連合委員会労働経済安定各委員会との連合委員会農林委員会との連合委員会農林水産委員会との連合委員会大蔵委員会との連合委員会をそれぞれ一回ずつ開催いたしまして、本法律案につき熱心且つ周到な質疑応答を交わしたのであります。そうして他方公聽会を一回開きまして、これに対する各方面の有力な意見を聽取いたして参考に資したのであります。大蔵、文部、厚生、農林水産通商産業、運輸、郵政、電通、労働建設経済安定、人事地方行政の各常任委員会におきましては、本法案について種々審査を重ねられました結果、本法案に対する修正の要望が内閣委員長に提出せられたのでありまするが、その詳細の数字は省略させて頂きます。  内閣委員会及び先に申上げました各連合委員会においてなされた審議中心点は、次の事項に帰着いたします。  第一に、今回の整理におきましては、人員整理を先にして機構改革を後にするのは不合理ではないかという点であります。第二には、米、石油競馬事務につきまして、これらを規定しておるところの実体法改廃がないにもかかわらず、将来の改廃を見越してこれらの事務に従事しておる職員定員整理を行うことは不合理ではないかという点であります。第三には、今回の人員整理は、結局、管理事務は三割或いは二割五分減、現業事務は五分減といういわゆる一律の天引的整理に帰着するのではないかという点。第四には、今回の人員整理においては国家公務員法の規定しておるところの審査請求制度を認めておらないのは、国家公務員の身分上の基本権を無視することになるのではないかという点、第五には、内閣委員会におきましては、各府省庁の各部門に亘つて、今回の整理減に対してどの程度事務整理が可能かということについて詳細の検討を行なつたのであります。その結果、事務量増加或いは新たに法律制定伴つて新規実施を要する事務にして、所要職員を欠くものがあるではないかという一点も指摘せられたのであります。第六は、今回の人員整理によつてどのくらい経費節約ができるであろうかという点であります。  大体これらの諸点について審議が集中せられたのでありまするが、これに対して政府説明によつて明らかになつた点は次のごとくであります。即ち、今回の行政整理においては、機構改革は行わず、人員整理のみにとどまるのであつて、それは事務簡素化能率化によつて事務整理が行われるのであつて、これに伴つて不要となつ人員整理するというのが今回の行政整理の狙いであるから、天引整理ではないのである。而して整理は、主として庶務会計人事のごとき管理事務について行われるのであつて庶務会計事務会計法規改廃等による事務簡素化により、又人事事務については人事院規則等改廃等による事務簡素化伴つて人員整理が行われるのである、なお又、人員整理後においては、執務方法改善等事務能率増進によりまして、支障なきを期することができるという説明でありました。又将来の行政機構改革につきましては、人員の異動を主としては行わない。但し機構改革を行うに伴つて生ずるところの当然の人員整理は出て来るのであるが、一般的の人員整理はもうないと申したのであります。  次に、今回の人員整理を円滑に実施するため次のごとき措置がとられるということでありました。即ち整理者に対する退職金については、三月末日までの退職者一般退職者が受ける退職金の八割増を、又四月から六月末日までの退職者については同じく四割増を支給されることとなつており、而してこれらの退職金につきましては課税が特に軽減せられるということでありました。又人員整理についてはできるだけ強制的の整理を避けて、自発的退職者を募るということとし、退職者については各主管の官庁当局においてできる限り転職の便宜を図るつもりであるということでありました。なお、国家公務員法の規定するところの審査請求制度を認めておらない理由一つも、実は訴願権を操り上げることとなると、整理基準を設ける必要が生じ、そうして、この整理基準を設けることとなると、勢い退職者が優秀でない人であるという印象を一般に與える結果となつて、この点においても、今回の人員整理が全く行政事務能率化国民負担軽減を図るところの政府政策に基いて止むを得ず行われるところの人員整理であるという趣意と反することになるという説明でありました。  更に又、今回の人員整理に伴うところの経費節約額は、政府原案によりますると、昭和二十六年度においては、人件費及び物件費節約額よりも、退官、退職手当支給額が多くなる関係から、却つて四十三億円の経費増加となるが、昭和二十七年度においては約百九十三億円の節約となり、又、平年度においては約二百七億円の節約になるということであつたのであります。  かように質疑応答を重ねまして、いろいろな点において委員諸君が結論を得て参つたのでありまするが、結果におきましては、御手許に差上げてありまするところの行政機関職員定員法の一部を改正する法律案に対する修正案が、委員三名の諸君から提出せられたのであります。この修正案そのものば朗読はいたしませんが、概要を申上げます。  それは、この修正によつて、各省庁定員を通じて、原案修正して復活せしむるところの人員の総数をば一万八千六百四十八人とするのであります。而してその振り分けはここにある案そのものに出ておるのであります。これを概括的に申上げますると、二つの事柄に分れる。その一つは、政策の変更に伴うて当然修正を要すべきものと認められるもの、即ち米穀の統制撤廃中止のために、食糧管理労務加配船用米配給等事務に従事せしむべき所要人員復活、及び石油統制撤廃国営競馬民営移管等、まだ実体法制定を見ざる行政事務に従事する職員整理復活せしむるもの等、すべてこれらは当然の修正でありまして、修正として認むべき修正ではないというような修正、その復活人員が一万六百五十人であります。第二の点は、整理の不均衡を是正したもの、例えば特別調達庁、国税庁、林野庁等整理を若干軽減したもの、この中には、少数ではありますけれども、労働省及び厚生省における渉外事務を他の各省と同様、外務省に統合せしむることとして、逆に削減したものもあるのであります。次には原案整理の無理な点を是正したものであります。例えば総理府の電波監理委員会のごときものであります。それは電波監理委員会の九十一名の復活郵政省の復活電気通信省電信電話架設工事関係人員復活建設木省人員復活等であります。次には国立学校教職員国立病院及び療養所職員の最少限度必要とする人員の確保のための復活、次には科学技術尊重の見地から、試験研究検査等に従事する職員必要限度の充実、次には行財政監査機能保持のため大蔵省及び経済調査庁人員整理を若干緩和した点等でありまして、これらを合せまして約八千名を復活せしめることとなつたのであります。従いまして、第一に申しました通り、当然修正せられるべき一万六百五十人と、この約八千人が復活させられるというのでありまして、正確に申しますれば一万八千六百四十八名というものを復活させる内容であるのであります。  これに対しまして討論に入りましたところが、成瀬委員カニエ委員からは、本案に対して、元来、行政整理そのものには、定員減少するということそのものには、決して反対するものではないが、併し機構改革の伴わないもの、或いは根拠法改廃等のないにもかかわらず人員整理しようとするもの、それから又国民負担軽減を図ると言うけれども、こういうような程度においてすることは、国民負担軽減を図るということが却つて無意味ではないかというような点、その他各種の点を挙げまして、これらは畢竟天引の無理な整理である。合理的整理によるところの人員減少等は決してこれを拒むべきものでない。又更に、かように定員整理いたしましても、失業対策の適切なものがないではないかというようなこと等を挙げまして、本案に対する反対の意向を表示せられたのであります。三好委員からは、この法案については、なお、不満な点があるけれども、併し行政整理ということの必要な原則からこれを承認すると言うて賛成意見を述べられたのであります。  而して採決に入りまして、只今申述べました修正案について採決をいたしましたところが、多数を以てこれを可決すべきものと議決いたしました。更に原案の残りの部分につきまして採決をいたしましたところが、これ又多数を以て可決すべきものと決定いたしたのであります。  委員長は、この委員会を通じまして、委員諸君の熱心な質疑応答を傾聽いたしました。その間に現われて来た最も重要な点を、委員会意見と認むべき点を総合して、結論的に申上ぐべきことが二三あるのであります。  第一には、第十三回国会には行政組織全般的改正を断行し、現在の府、省、委員会、庁等に拘泥することなく、新設でも、統合でも、廃止でもこれを行うべきこと、而してその結果人員に異同があることもこれを免れないということ。第二には、二カ月以内の期間を定めて雇用される者につきましては、いわゆる常勤的非常勤職員と申しますか、これは認めない。正直に二カ月以内の期間を定めて雇用されるという者は、これは必要であるから認めるが、いわゆる常勤的非常勤職員はこれを認めないこと。而してその雇用者に対する給與額は一般の雇用者並みにすること。第三には、綱紀粛正、執務改善については、強力に実現を期すべきであること。例えば経済調査庁のごときは、その通りの組織を置くということはとにかくといたしまして、かような組織をば有力に活用させる必要があるということ。これらのことは委員会において最も委員諸君の熱心に希望した事項として現われておるのであります。而して更に国会、裁判所、会計検査院、人事院整理につきましても、やはりこれと同様に、これに準じて行うことが必要であるということを、委員会を通じて認めたのであります。  これを以て私の報告を終ります。(拍手
  22. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。山花秀雄君。    〔山花秀雄君登壇拍手
  23. 山花秀雄

    ○山花秀雄君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、ここに政府より提案された、衆議院において修正議決を見、本院に送付されました行政機構職員定員法の一部を改正する法律案、及び参議院内閣委員会において修正議決されました即ち原案修正案の両案に反対するものであります。  私は、徒らに過剩人員を擁して国費を消費するような傾向に対しては反対であります。行政は飽くまで簡素化し、能率的に運営されなくてはなりません。若し行政機構を整備し、人員減を行う場合には、民間経済を向上し、生産力を高めて、十分なる受入体制を整えて、失業問題の憂いなき條件を作り出し行うところの強力なる政治、施設が必要であると存じておるものであります。この法案政府説明を聞きますと、去る本会議のこの壇上において吉田総理大臣は、その施政演説の一節に、行政整理及び人員減について次のように述べられたのであります。「この際、我が国の国力に適合すると共に、近代文化国家の運営に真に必要な簡素強力な行政内容を基礎として、これを能率的に運営するにふさわしい機構人員にいたしたいと考えておるのであります。」、こういうことを前提として十二万人ほど整理する方針が述べられ、退職者に対しては退職手当増加を考慮すると述べ、その失業対策としては、でき得る限りの又手段を盡す考えであるということを言われたのであります。又機構問題に関しましては、食糧統制撤廃に言及し、「食糧問題及び農林水産について。食糧事情は今や安定した状態となつたのに顧みて、政府は速かに現行の主食の管理統制制度撤廃する方針を決定いたしました。」、決定いたしましたと言明し、「よつて今後農林水産業の生産力の増強を図りたいと存ずるものであります。」と述べられたのであります。又橋本行政管理庁長官は、本案説明に関して、内閣委員会において、公企業を除き、このたびは八万七千九百十五人を減ずる説明を行い、且つ各省庁事務の実態を中心として整理を行うことにしたと、更に占領の終結に伴い不要となつ事務経済統制撤廃により縮小し得る事務、その他不急又は不要となつ事務については、大幅に人員軽減いたしますと説明されたのであります。更に、農林省の職員国営競馬に従事する者、或心はアルコール專売事業現業に従事する者については、これらの事務及び事業整理の都合上、九月末又は十二月末までに整理の時期を延期することにいたしますと、更に食糧庁人員は、米麦の統制解除を前提として相当大幅の整理を織り込んでおる旨を説明されたのであります。  本案は諸統制撤廃廃止を見込んで作成されたものであります。これらの諸統制撤廃廃止は、諸般の事情というよりも、政府の無定見の政策によつて、そのことごとくが破綻したのは、各位の御承知の通りであります。このように、定員減の根抵をなす事項は、即ち今日ではなくなつてしまつたのであります。政府はよろしく自己の無定見を深く詫びて、本案の提出を見合せるべきが至当と考えるものであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)而も吉田総理大臣は、失業の対策を考慮すると、この席上で言明されましたが、橋本長官の説明その他政府委員説明を聞きましても、失業問題については後顧の憂いないような対策の説明政府一つとしてしなかつたのであります。言い換えれば、只今の社会経済事情は、各位の御承知のように、大変失業の度合いが深く、一たび失業いたしますと再び就業のできないような実情は御存じの通りであります。特に公務員関係におきましては、日常の経済的待遇は、一般民間の生産その他の業務に従事しておる者に比べますと平均三割乃至四割くらいの低額なる金銭によつて賄われておることは、御承知の通りであります。生活の余裕は全然ございません。そうしてこの大量な失業群のいるさなかに、長年の間、低額收入でも公務員という一つの神聖なる業務に魂を打込んで働いて参りました者が、無慈悲に失業街頭に追い出されるというような、このような苛酷なことを政府は今行おうとしておるのであります。(「希望者がある」と呼ぶ者あり)我々は失業対策を何ら考えないかような苛酷な行政整理に対しては、心から憤りを感ずると同時に、絶対反対を叫ぶものであります。(拍手)  特に、事務の実態、事務の実態と、橋本長官はたびたび委員会において説明をされたのであります。併し果して事務の実態が人員を削減し得るような実態であるかどうかという点であります。一々例を引きますと、長い時間しやべつてもしやべり切れないほど例はございますが、私は、一、二の例を引いて、これが事務の実態によつて整理したものであるかどうかということを、一つ皆さんの御判断、御検討に任したいと思うのであります。(「判断はできた」と呼ぶ者あり)  ここに持つております冊子は、これは郵政省で発行した冊子であります。労働組合関係でない……。各公務員労働組合を作つておりますし、いろいろこの問題を審議しております内閣委員陳情に参つておりますが、併しながら労働組合からの陳情は、私どもが冷靜に考えて若干穏当を欠く面もあることは否めないことであります。(「それは本心か」と呼ぶ者あり)併しながら、この役所の出したこの冊子には、これは一つの例でございます、郵政省の冊子でございますが、先だつて郵政省の政府委員に、これは郵政省で出した冊子がどうかと確かめましたときに、確かに郵政省の責任の下において出した冊子であると答えられたのであります。従つて私はこの役所の冊子を信用して事務の実態を一つ検討してみたいと思うのであります。「郵政省の要員について」ということで、昭和二十六年の八月、本年八月にこの冊子を発行されておるのであります。この冊子の第十七頁には次の点が明記されておるのであります。「職員の勤労が民主主義国家にふさわしい形で行われるようになると云い得るのである。即ちすでに述べたように常勤者によるか非常勤者によるかは別として、実質的に増員補充を要する人員は主要なものだけを取上げても次のごとくである」。イ、ロ、ハ、ニ、となつておりまして、年次休暇を正規に付與するため五千八百二十五人、四十四時間制実施に伴う不足要員の充足四千百十七人、長期欠勤者の後補充の不足分の充足三千四百人、二十六年度事業増進所要要員三千六百九十八人、合計一万七千四十二人。これは事務の実態で、絶対増加しなければ郵政省としての国民各位に対するサービスの仕事は円満にできないということを、役所みずからがこの冊子によつて報告をしておられるのであります。特に翌月の九月「郵便の現状」で、如何に業務が殖えて来ておるかということを、やはり冊子で現わしておりますが、この冊子の三十六頁に、昭和二十三年度においては年間配達郵便の数が二十二億六千五百八十三万、こういうように述べておるのであります。然るにそれが昭和二十五年度になりますと三十一億八千九百九十万、従業者のほうは、業務はうんと殖えておりますが、何回も何回もの行政整理によつて、外勤従事員数は、昭和二十三年度は五万五千六百五十七人から、昭和二十五年度に至つては四万八千二百八十三人、仕事の量はうんと殖えて、能率的な内容、設備の改善をも中止になつておりますが、とにかく整理によつて人員が約八千人から減つておるのであります。そうして、仮に、一人当りの業務量をここにはつきり報告をしておりますが、一人平均年間処理数は、二十三年度は四万七百十一、二十五年度は六万六千六十七、二十五年は二十三年に比べて約五割増の仕事の量を負担せしめられて、過重労働に悩んでおるというのが、これは郵政省の郵便事業に従事しておる従業員の実態であります。労働組合から発表しておるのじやございません。これは郵政省という役所からこの実態をはつきり説明をしておるのであります。  このような実態が委員会において政府委員内閣委員の間に、しばしばこの問答の中に、郵政省だけでなくして、運輸省にいたしましても、通産省にいたしましても、特に農林省にいたしましても、こういうような事実が次から次へと政府答弁に現われて来たのであります。はつきり申上げますと、橋本長官の行政整理を行う立場の政府の立場と各関係省の政府委員との間には、ことごとく矛盾をしておるというような状態が委員会において暴露されたのであります。(「見解の相違」と呼ぶ者あり)これはどういうことかと申しますと、結局この案に無理がある。特に事務量々々々と言つておりますが、おおむね一遍公約したという公約にとらわれて、事務量も実態も無視した、言い換えれば無定見極まる天引整理案を発表した(拍手)結果にほかならぬと私どもは考えておるのであります。  特にこの案の審議の過程におきまして、政府與党である自由党方面から、参議院内閣委員会審議がなかなかむずかしいというようなところから、政策変更に伴うと言つて四千二百人ほどの人員減をやめる修正意見が我々の委員会に伝わつて来たのであります。それから、審議をしております過程において、更にこの四千二百名からぐつと人員が殖えまして、九千二百七十五人という修正案が出て来る。更に審議しておりますと一万四千六百六十九人、まあ、ざつくばらんに申上げますと、夜店の叩き売りのような形で、(拍手)おいそれ、おいそれと人員数が殖えて参つたのであります。最後に自由党諸君のイニシアテイブによりまして、形は三派提案というような修正になつておりますが、一万八千六百四十八人という修正案が上程されました。このように日を稼ぐにつれて次から次へと人員が殖えて来るということは、橋本行政管理庁長官が最初言明されました、事務量を通じてこの整理案を出した、(「時間が参りました」と呼ぶ者あり)それに、若し確信があり、間違いがない案であつたとするならば、この修正案は、言い換えればこれは事務量というよりも、やはり天引をやつていたという点が大体明らかになると思うのであります。いずれをも私は探ろうとも考えておりません。原案自体が大体無理である。事務量検討するためには、行政機構整理を行なつて整理統合の結果生ずる事務量によつて人員整理を若し妥当な線で出されるならば、社会党といたしましては賛成するにやぶさかではございません。然るに行政機構整理を行わず、單なる見込によつて、而もおのおのの政策の重大なる破綻を来たしておるのにもかかわらず、図々しくかかる整理案を本院に提案せんとするがごときことは、言語道断と考えておるのであります。  よつて社会党第二控室の私どもは、この案に絶対反対すると同時に、修正案に対しても反対の意向を表明する次第であります。(拍手
  24. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 三好始君。    〔三好始君登壇拍手
  25. 三好始

    ○三好始君 私は民主党を代表して、修正議決された行政機関職員定員法の一部を改正する法律案に対し、その態度を明らかにせんとするものであります。  私は、原則的には、行政事務能率化し、それに見合う合理的定員を決定することは、当然のこととして是認さるべきだと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しながら、この原則が具体化される場合には、少くとも次の二つの前提條件の上に立たねばならないと思います。即ち、先ず第一には、行政事務能率的体系を実現し、同時にこれに即応する機構の整備が行われる必要があります。第二には被整理者国民経済への参加に十分なる対策を持たなければなりません。行政整理は、官庁要員を民間の産業的或いは文化的活動に移行させることにより、全体としての国民生活の安定向上を実現し得る場合にのみ合理的根拠を有するものと考えられます。それは国民経済的には雇用の増大とならなければなりません。その見通しと対策を持たずして失業の増加を招来下るがごとき行政整理は、社会不安を増大する結果に陷らざるを得ないと思うのであります。少くとも以上の前提が充たされる限り、行政整理は全国民により是認され支持さるべきだと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は以上の立場に立つて今回の法律案検討いたしました結果、政案案には遺憾ながら次のごとき欠陷のあつたことを率直に認めなければなりません。  先ず第一に、今回の行政整理実体法改廃が不確定な状態の下で人員整理が行われんとしているのであります。その最大の問題が主食の統制撤廃問題であることは余りにも有名であります。政府は遂に原案附則第三項のごとき実に前代未聞にして東西を通じて認めることのできない不可解な規定を設ける誤まりを侵しました。昭和二十七年四月一日までに米穀についての統制が廃止されるに至らなかつた場合においては人員をどういうふうにする、こういうふうな規定は、政府みずから決定すべき政策問題を自然現象としての天気予報か何かと取り違えてしまつているとしか考えられないのであります。(拍手衆議院自由党の手でみずからこれを撤回し、更に本院内閣委員会においてこれに類する部分が全面的に修正されるに至つたことは、極めて当然のことと言わねばなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)ただ、ここに一言指摘しておかなければならないのは、政府は麦の統制撤廃食糧管理法第九條或いは第三條を根拠として行わんとするがごとき態度が見られ、この問題が内閣委員会において取上げられたことであります。この問題は、私が委員会において指摘したごとく、食管法の解釈上違法の疑いがあるだけでなく、本院の決議にも関する問題でありますので、政府の反省をここに要求いたしたいのであります。  本法律案の第二の欠点は、行政事務能率的体系化が実現され、その結果人員減少が可能になつたと認められる具体的な事実が殆んど示されなかつたことであります。これは機構改革があと廻しにされたことと相待つて、橋本行政管理庁長官の説明にもかかわらず、事実上は天引的整理の色彩の強いことを否定できません。即ち人員整理の合理的基礎が薄弱であつたことを指摘しなければならないのであります。(拍手)特に教育、科学、技術方面にさえ機械的整理が行われんとしたことは、我々が委員会において特に批判を加えたところでありました。(拍手修正によつてこれが是正されるに至つたことは、教育、科学、技術を守るために適切なる措置だつたと言わなければなりません。  第三の問題として、政府並びに自由党の発表して来た基礎数字が不正確なものであつたことを指摘しなければならないのであります。例えば政府案による整理節約される国家経費は平年度二百余億円と発表されているのでありますが、この中には、国民経済的には純粹の節約額ではないと認められる食管特別会計に属する人員整理が含まれているのであり、最密に言えば二百余億円は水増しされた誤まれる数字と言わざるを得ないのであります。更に、一般に我が国の公務員が世界に比べて著しく多いかのごとき説が行われているのでありますが、行政管理庁の提出資料によりますと、最近の数字で、国民総入口一〇〇に対し公務員の数は、米国四・一、英国四・九、日本三・五となつております。歳出予算のうちに占める人件費は、米国一六・二%に対し日本は八%となつているのであります。私は冒頭に述べました通り合理的な行政整理を肯定するものでありますが、判底の基礎に誤まりがあることは是正さるべきだと思うのであります。  このように、本法律案には幾多の欠格が認められることは政府並びに與党も是認せざるを得ないところであり、今回の修正が実現せんとしているのは極めて当然と言わなければなりません。君は内閣委員の同志諸君と協同歩調をとつて、不合理な部分の修正に今日まで全精力を傾けて参りました。ここにやや不満な点を残しながらも、我我の企図した修正に近い修正が成立することを理由として、且つ今国会においてこれを修正可決すべしとの政治的判断に基き、本委員会において決定された修正議決案に賛成せんとするものであります。  私は、大自由党乃至その政府が我々の強硬態度の前に本案修正議決までに数回の讓歩をされ、政党政治の上に新記録を作つた謙讓なる態度に対し、(笑声、拍手)敬意を表するものであります。  私は本修正議決案に賛成するに当り、更に次の希望を申しておくことの必要を痛感いたします。第一に、事実上常勤である非常勤務職員は速かに是正の方法を講じ、公務員としての正当なる地位を保障することであります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)第二に、自由党は年中行事のごとく行政整理を企図して来たのでありまして、これは私が内閣委員としてすでに三回現内閣行政整理案を審議して来たことでもわかるのであります。これは公務員をして落著いて任務を遂行することを不可能ならしめ、行政事務能率化を阻害し、公務員の健全なる気風をいよいよ稀薄ならしめることを恐れるのであります。第三に、今後におきましても科学技術教育尊重の立場に立つて定員の問題を考慮する必要を痛感いたすのであります。第四に、各省庁内部における事務分量の実情に基いて、各省庁内の合理的な人員の配置を考慮されたいのであります。私は内閣委員会審議の際に、このような諸点を是非とも考慮さるべきものとして考えた次第であります。  最後に、本修正議決案の賛成の言葉を結ぶに当りまして、終始同志として本修正案の成立に不眠不休の活動を私たちと共にされた楠見委員、更に本委員会でこのような決定をまとめる上に涙ぐましい努力を拂われた河井内閣委員長に敬意を表しまして、私の意思表示を終るものであります。(拍手
  26. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 上條愛一君。    〔上條愛一君登壇拍手
  27. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は日本社会党第三控室を代表いたしまして、本修正案に反対の意見を述べたいと存じます。  我々は行政整理を行い、財政の節約をなして国民負担軽減を図ることは、あえて反対するものではありません。併し行政整理は、科学的検討を経た行政機構改革並びに事務簡素化に伴う合理的な妥当性のあるものでなければなりません。然るに今回政府の行わんとしています行政整理案は、行政機構改革によるものではありません。又業務の実情をよく調べて、余剰の人員があるかどうかを検討を加えた結果でもありません。内閣委員会審議を通じて明白となりましたことは、今回の行政整理現業部門五%、管理部門においては一〇%から三〇%の標準を以て画一的の人員整理を行わんとする天引整理の案であるということであります。これが今回の政府改正案に私どもの反対する根本的の態度であります。  第一に、政府は今回の人員整理事務実情に応じた整理であると申しておりまするが、実際には天引整理を行なつて、あとで付けた理由にすぎません。若しさような方針だといたしまするならば、冗員のある部門は、これを整理することは当然でありまするが、一方、事務内容と量によりましては、人員の増強を行なつて、国務の完遂を期し、国民の預託に答えねばならないのであります。  今これを二、三の事例について申述べたいと存じます。  先ず大蔵関係の財務局の千五百名、国税庁の一万余名、印刷庁における六百三十六名の人員整理がその一例であります。申すまでもなく今日の税務行政は国家の予算歳入の大部分を占めておりまして、最近の納税者数の増加、調査事事の増加と困難、申告納税制度実施に伴う事務の複雑化等がありまして、その実務は容易ならざるものがあるのであります。而して現在約一千億円に達する税滯納を生じつつある有様であります。税金は国民の負担能力に応じて課することは勿論でありますが、又その徴税に当りましては、よくその実情を調べて、国民の納得と理解によることが肝要であります。然るに近来国民の間には警察署よりもむしろ税務署を恐るる傾向を強めつつあります。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も人員は不足しておりまして、過重労働に基因いたします一カ月以上の長期欠勤者の数は、昭和二十五年十月の調べによりますると千七百三十四名で、全員の三・〇一%に達しまして、そのうち結核患者は七六・七%の千三百三十名を占めておりまして、各省間における最高位を示しております。この実情から見ますれば、税務行政定員のごときは、減員するよりもむしろ増員して、国民に十分なるサービスを與える方途を講ずる必要は何人も首肯するところと存じます。(「違う違う」と呼ぶ者あり)又印刷庁のごときは、臨時国会が頻繁に開かれまする今日、仕事の量は日を逐うて増大しております。單に国会を中心とする業務について見ましても、議事録のごときも十数日を経過しなければ我々議員の手許に配布せられないのであります。現にこの定員法の改正案に関しましても、衆議院におきましてはすでに去る十一月十二日に内閣委員会の最終討議を終えたのでありまするが、その議事録は二週間余を経過いたしました今月まだ私どもの手許に届かない状態であります。(拍手)御承知のごとく、多くの国際会議におきましては、会議の速記録は当日会議終了後間もなく紀付せられる実情であります。私は日本の国情に照らして、かようなことを要望するものではありませんが、少くも一両日若しくは数日後に各種委員会の速記録が配付せられまするならば、国会審議の上に至大の利便が得られるものと信ずるのであります。(拍手)然るに政府はこの現状を無視しまして、六百三十六名の減員を断行しようとしておるのであります。  又衆議院修正案によりますると、労働省内の職業安定関係におきましては三・三%、労働基準監督関係におきましては一四%の千百九十二名の首切りを行うことにいたしております。政府は、一方において、定員法の改正によりまして数万の失業者を出して職業安定業務の増大の因を作りつつ、他方において職安関係定員を減員せんとするがごときは、明らかに矛盾撞着であるばかりでなく、(拍手)今日においてすら職安関係事務人員不足を生じまして、求職者の取扱に万全を期し得ないのでありまして、先般、布施職安事件、松坂職安事件等を惹起いたしまして、殊に布施職安八尾分室事件のごときは、求職者のために職員一名が刺殺せられるに至つております。家庭争議の大部分が家庭生活の窮乏に基因しておりますがごとく、一日々々の就労によつて辛うじてその生活を支えておりますところの自由労働者若しくは失業者にとりましては、些細のことにも殺気を生ずる危險があります。従つて、かかる職安の業務に対しましては、人員を充実して、求職者に対し親切に温情を以て遇し得るの方途を講ぜねばならぬことは言うまでもありません。然るに金融の行き詰りその他によりまして、中小企業は破綻して、失業者は続出せんとしております。政府はこの実情に如何に対処せんとするのでありましようか。私どもの了解に苦しむところであります。  又戰後日本の民主化と、労働保護の基本立法といたしまして労働基準法が制定せられ、その励行実施のために基準監督官が設置せられているのであります。そしてこの基準法に限定せられておりまする労働條件は最低の基準であると同法第一條に明記せられております。然るに中小企業の経営者には未だ封建的思想が残存いたしておりまして、基準法は無視せられておりまするが、監督官の不足にてこれを十分に監督をし得ない現状であります。その結果、中小企業の多くの労働者は一日十時間若しくは十二時間の長労働に従事して、而も極めて低賃金によつて窮乏の生活のままに放置せられております。日本の戰後の産業復興はこれら多くの勤労者の犠牲によつて支えられていることを忘れてはならないのであります。のみならず、纎維産業を中心としまして、我が国産業は海外輸出に待たなければなりません。然るに英国を初め欧米諸国は、戰後の我が国の産業の再建は再び戰前のごとくチープレーバー、ソシアル・ダンピングによつて国際不当競争が行われるのではないかという警戒の念を強めつつあります。現に先般のILOの会議におきまして、英国の代表は、日本の政府代表に対しまして、最近日本においては基準法を初め労働三法の改正を企図せられていると伝えられているが、実情如何との質問が発せられております。これは明らかに日本の低賃金によるソシアル・ダンピングを恐れたからであると思われるのであります。従つて我が国産業の国際進出のためには、少くとも基準法の完全実施を行いまして、我が国の産業はチープレーバーにあらざることを実証することが急務であると信ずるのであります。(拍手)特に現在各地方の労働基準審議会より監督行政の強化を中央当局に申請しつつある実情であります。然るに吉田内閣は、経営者側の要望を重んじまして、基準監督関係職員一四%の人員整理を行わんとするがごときは、全く国策を誤まるものと断ぜざる得ないのであります。(拍手)なお、このほか電信電話などの業務に従事せられる電通関係及び郵便通信に従事せられる郵政関係のごとき、急激にその事業量増加しつつある現状でありまして、数千の非常勤の職員を以て辛うじてその業務を処理しつつあるのであります。若し今日この無謀なる多数の人員整理を断行するにおいては、来たるべき通常国会におきまして、直ちに定員法の改正を行わねばならんことは必然と存じます。  以上は二、三の例証に過ぎませんが、政府が若しかかる不合理なる人員整理をあえて強行いたしまするならば、今後業務遂行の必要から、定員外の非常勤職員を雇用せざるを得ないことは明らかであります。(「そんな必要はない」と呼ぶ者あり)そうでなければ、超過勤務その他の労働強化によりまして、公務員をして更に犠牲の重荷を負わしむることは必然と言わなければなりません。  第二に、政府農林省の統計調査部及び統計調査事務所の六千五百二十人を初めといたしまして、総理府、労働、通産、厚生等各省の統計調査を軽視いたしまして、多くの職員の減員を試みたことであります。申すまでもなく、今後の国策は正確なる統計に基礎を置いた具体的のものでなければなりません。而も平和條約の発効後、独立国家として国際諸機関に加盟し、若しくは国際諸協定が締結せられるにおきましては、各種の調査統計の緊要なことは勿論であります。而して統計調査のごときは、国家が公正な立場に立ちまして、総合的にこれを行うべきものでありまして、而も永続的に行うて初めてその意義を有するものと言わなければなりません。従つて政府は現存の調査統計はこれを統一し、更に人員機構を拡充して、国策樹立に必要なものは迅速正確に実施することが肝要と存じます。然るに政府却つて現存の調査統計の縮小を意図するがごとき今回の人員整理は、私どもの到底納得し得ないところでありまして、国家百年の大計を誤まるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第三に、政府は、今回の行政整理は、財政の節約国民負担軽減を図るにありと国民に宣伝いたしておりまするが、今回の整理人員は十二万一千名でありまして、そのうち現在の欠員二万八千名を差引きますと九万二千名となりまして、更に食糧管理撤廃の中止によりまする復活人員九千名を差引きますと、結局約八万余名の人員整理となります。そうしてこの監理の方法は、六カ月の猶予期間を置きまして、明年六月末までに完了せんとするものであります。然るに人事院調査によりますと、昭和二十四年十月から二十五年の九月までの一カ年間における公務員の自然退職者の数は六万を算しておるのであります。この調査に準じますと、明年六月までに三万の自然退職者が生じ、明年末までには六万の自然退職者が出ることとなるのであります。然るに昭和二十六年度の予算を見ますると、退職手当金は四十七億七千万円、退職による基本給不用額は四億一千万円でありまして、差引四十三億六千万円が国費負担となるのであります。而も八万の人員整理を無理に強行いたしますと、現業その他必要部門は、必ず従来のごとく非常勤その他の名目によつて、これに代る職員を雇用するに至ることは必然と言わなければなりません。かく観じ来たりますると、行政機構改廃簡素化を伴わない今回の吉田内閣行政整理は、公務員に対し徒らに不安動搖を與えまして、強いて理由なき公務員を失業の巷に追出しましたのみでありまして、実際には大した国費節約にはならないのでありまして、泰山鳴動して鼠一匹の行政整理なりとの感なきを得ないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、拍手)  最後に、私は時間がありませんから簡單に申述べますが、政府は社会保障制度実施その他失業対策に対しまして確固たる方策を有しておりませんのみならず、今回の人員整理に当りましても、その整理せられる公務員諸君の失業後の生活保障につき、退職手当の増額以外に何らの特別なる考慮が拂われていない点を甚だ遺憾とするものであります。内閣委員会におきまして、この問題に対する究明において政府当局答弁は、転職斡旋、職業補導という従来の形式論を一歩も出でなかつたのであります。併し今日の失業問題は、かかる形式的の対策を以て解決し得るがごとき容易なるものではないのであります。私は、政府当局が、今後真劍に、具体的に、今回整理せられるところの公務員諸君の離職後における生活保障に万全を期せられることを切望するものであります。(「大丈夫」と呼ぶ者あり)  以上の見地に立ちまして、私は本修正案に反対することを声明するものであります。(拍手
  28. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 千葉信君。    〔千葉信君登壇拍手〕    〔「公務員より国民のほうが如何に重大であるか気を付けろ」「默れ」「発言々々」と呼ぶ者あり〕
  29. 千葉信

    ○千葉信君 私は只今上程に相成りました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案修正案に対して、労農党を代表して反対いたします。(「簡單に」と呼ぶ者あり)默れ。  反対いたしまする理由を申上げる前に、先ず第一に糾彈しなければならないのは、この法案を策定し上程するに当つて政府の不まじめ極まる態度についてであります。この政府が二十四年における行政整理に当つて、何と国民国会に対して陳弁したか。「このたびはいろいろな事情から十分なる用意をするいとまがございませんでしたために、止むなく天引整理をやらざるを得なかつたが、今後は十分に行政機構検討事務簡素化を計画して、然る後、御納得が頂けるような、(「まじめに、まじめに」と呼ぶ者あり)行政整理を行なうことにいたします」と答えているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)今度の提案で、果して政府がこの公約を実行したでありましようか。(「その通り」と呼ぶ者あり)今度の提案で、政府が非現業二割、現業五分の天引整理をやろうとしている事実は、委員会における橋本行政管理庁長官の巧言令色にもかかわらず、各委員の追及にまつて、すでに明白に暴露されておることは、その速記録によつてもこれを証明することができるのであります。行政機構検討改革はあと廻しにして、どの程度簡素化をやるかも五里霧中というのでは、いやというほど内閣委員会でこずき廻され、周章狼狽天下にその醜をさらす(「ちつとも狼狽しないよ」と呼ぶ者あり)大恥をかくのも、これ又当然なことであります。(「恥を知らないのだ」と呼ぶ者あり)新聞記事に責任は持てんと、いつでも嘯く政府だが、あれほど毎日じやんじやん定員法案審議の真相を報道されたのでは、殊に昨日今日のあの有様では、これはたとえ新聞記事に責任を持つても持たいでも、馬脚と尻尾の出たことは否定できないことで、ただ言えることは、この内閣は如何にも恥を知らないということであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)  而も街には、統計局の発表によつても、七十三万人という完全失業者が溢れ、夥しい数知れないその他の半失業者と共に政府の施設に対する怨嗟の声を挙げておる事実は、政府といえども、自由党の諸君といえども、知らないはずはない。そこへ又この首切りだ。そうして又民間産業の右へならえ、企業合理化だ。(「国民の声だ」と呼ぶ者あり)尤も、今回の行政整理も、いつものそれと同じように、一般産業に対する企業合理化、首切りの強要を含んでのことであり、その故にこそ、コストの切下げ、低賃金を、低賃金からダンピングを、これを称して自由党の諸君は公式論だとやじりたいでありましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり)公式通り運んでいるのは、一体誰ですか。自由党の内閣ではないか。(「そうだ」「国民の声を聞いて御覽」と呼ぶ者あり)  一体、政治の眼目とするところは何です。言わずと知れた、一人でも多く食えない国民をなくすることなんです。一人でも多く安んじて働き、一人でも多く国の興隆に役立てることではないか。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)民生の安定を忘れた政治は政治ではないはずだ。然るに政府は、失業者の充満する街頭へ、更に国鉄を含んで全体で十万の失業者を叩き出そうとしておりながら、失業対策については一体どうだ。(「何もない」と呼ぶ者あり)失業対策についてはこれから考えると保利労働大臣は放言しております。そうして、労働大臣は、内閣委員会における答弁で、転職のための職業補導教育を計画するという職業補導のための予算を来年度若干計上すると内閣委員会答弁されておる。若干と言つて、その予算額も言えないようなことに、一体期待が持てると思うか。(「持てない」と呼ぶ者あり)それどころか、労働大臣は、その職業補導に当る公務員すらこの定員法で減らそうとしているではないか。首切りをやるという場合、それの失業対策が先ず前提條件として考えられなければならない。いわんや、既存の失業者に対する対策もとよりであります。  又私の最も不快に思うことは、政府が今回の行政整理を巧妙に乘切るために、意識的に宣伝を盛んに行なつたということであります。第一は、公務員が多過ぎるという嘘、第二は、(「多過ぎる」と呼ぶ者あり)これによつて行政費節約し、減税できるという嘘であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)政府は、昭和七年頃の数を今の数字と比較してただ発表して、これだから首切りが必要だと言う。仕事の量がどれだけ殖え、一人当りの負担量がどれだけになつておるかという、国民の最も知ろうと欲し、又国会においても判断の材料になることは、一切頬被りで押通しております。勿論戰時統制による行政機構の膨脹はあつた。併しながら、敗戰後、物資の絶対量が足りないため、民主的な統制に切換えて国がやらなければならないところにも多くの問題があるし、又現業官庁等に例をとつても、設備の回復し切らない現状においては、なお且つ一人当りの負担量の過重に喘いでおる所が随所にあることは、委員会審議経過に徴しても如実に示されておるところであります。  そこで、一体、抽象的に多い多いと言われておる日本の公務員が、アメリカとの比較ではどうかと言えば、(「アメリカと比較してどうするのだ」と呼ぶ者あり)アメリカの人口は御承知の通り一億四千八百九十万二千人、日本の人口は八千三百十九万九千六百三十七人、これに対するアメリカの公務員数は、全体で五百三十四万六千人おる。日本の場合には国家及び地方公務員を含んで二百十九万二百四十一人、その比率が、アメリカの場合には三・五九%日本の場合には二・六三%(「国民の負担力が違う」と呼ぶ者あり)而もアメリカでは御承知の通り電気通信関係は民営でありまするから、日本のこの数字は十五万二千八百七十四人分だけ余計に計上しておるといつても、こういう状態であります。又日本では国民七・四人当りに一人の公務員と(「反対の理由にならん」と呼ぶ者あり)その家族を抱えておると宣伝しております。この地方公務員を含めた二百十九万二百四十一人の中には、税の負担によらない特別会計、独立採算制をとつておる郵政、電通、地方軌道、水道等、七十万人が含まれております。更に国、地方を通じて若い独身自活者約三八%を擁しているために、公務員の平均家族構成は二・六人であります。(「国民に聞いて御覽よ」と呼ぶ者あり)このことは、扶養家族手当の一人当りの原資が月八百円という予算で賄われている事実からも実証できます。そうすれば、家族を含めて三百九十九万九千人、総人口八千三百十九万九千人への対比は二十人に一人というのが正しい数字であつて、七・四人に一人ということを言うことはどこからも出て来ない数字であります。いわんや地方公務員を含む全体を国税による国の公務員であるかのごとき宣伝は、国民を愚弄する態度だと言わなければならないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)  次に問題となる点は、果して今度の首切りによつて大蔵大臣の言つたごとく二百四億の行政費節約が行い得るか、従つて減税を行い得るかと言えば、これまた大嘘であります。どうしてかと言えば、すでに御案内のごとく、一般職の職員には常勤者と常勤的非常勤者及び非常勤者とがございます。常勤が八十九万、その他が二十六年度平均五十四万人、このうち二十四万が常勤的非常勤者であります。何故にこのような珍妙な呼称があるかと言えば、全く常勤者と同じであるが定員法で縛られているために正式にできない。又定員法で二カ月以上の臨時者を置いてはならないという條文に縛られているために、これらの諸君は二カ月ごとに新らしく辞令を出しながら明らかな脱法行為で使役されているのであります。そこで、全くの非常勤者である農村関係の作物調査員二十一万一千人、作物報告員一万六百人、漁獲量調査員一千人等と区別するために、このような名称、別の名前で賃金要員等というものができたわけである。実情を見るに、これらの諸君の中には、大学を出たり、高等学校を出てから二年越し、三年越しというのがざらにおります。最も急激にこの人員増加したのは、無謀な二十四年度の首切り以後であることも注目されなければならないと思うのであります。特に私がこの問題を取上げましたのは、これらの諸君人件費で賄われるのではなく、多くが事業費、業務費で賄われておることでありまして、このことは本年十月二十五日衆議院における監察委員会の速記録にも明らかなところであります。従つて法案作成中の各省幹部の強腰にも似ず、国会におけるこれらの幹部諸君が全く内閣の方針に唯々諾々として従うがごとき態度だつたのは、まかり間違えばこの拔け道があるからであります。かかる実情から言えば、二百四億節約できるというのは、人件費として計上したものを節約して、その分を業務費、事業費に計上するということと同義語でございます。  以上申上げたごとき状態の下に、果して今度の天引首切りが合理的なものか否かは、皆様方の良識にその判断をお任せいたします。併し私は主張いたします。断じて今次行政整理は不当であるということ、更に一歩進んで、かくのごとき不合理、理不盡な暴挙をあえて行わなければならない羽目に追い込まれた自由党内閣自身の失政に対する憤懣でございます。アメリカの日本再軍備計画に協力するための日米経済協力から、いわゆるマーカツト書簡の要請に応ずる企業合理化、低賃金、従つて生活水準の切り下げ、更に又アメリカ防衛のための日本再軍備、一方的多数講和締結の不手際から厖大な防衛分担金、警察予備隊の急速なる軍隊化による事実上の軍事費、賠償或いは首をかしげる余地のある外人財産補償の問題、援助資金と呼ぶより貸與資金と呼べばよかつた見返資金の優先支拂い等、嚴しい歴史の審判の前に必ずその醜状をさらさずにはおかない多数講和の締結という失政から、今や、とことんまで民生の安定を犠牲にせざるを得ない段階にみずから追い込まれたその馬脚の現われがこの首切り定員法案、(拍手)我が労働者農民党は心からなる憤りをこめて本法案に反対するものであります。(拍手
  30. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 須藤五郎君。    〔須藤五郎君登壇拍手
  31. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して本法案に反対し、これの撤回を要求するものであります。政府は今回の人員整理を断行するに当つて、たびたび国民負担軽減を図ることがその主な目的であると言つておるのでありますが、私は、これほど国民を愚弄し、欺くも甚だしいものはないと思うのであります。事実が示しておる通り、警察予備隊を初め、海上保安庁、国警、特審局等、軍事彈圧機構は全く整理の対象外に置かれておるばかりでなく、却つてますます増員されつつある状態であります。例えば警察予備隊でありますが、すでに本国会において百五十億円の補正追加が行われ、来年度の予算には最低六百五十億の支出がもくろまれており、人員も二倍即ち十五万人への増員が計画されていることは否定できないところであります。従つて前述の警察予備隊の一例をとつて見ましても、いわゆる人員整理して平年度二百億円を浮かし、国民の負担を軽減するという政府の声明が如何に事実に反しているか、又如何に国民を欺瞞するものであるかは、全く明瞭であります。申すまでもなく、今次の人員整理は、国家公務員法によつて団体交渉権、ストライキ権を奪い去り、労働組合の活動を骨拔きにした上、更に官庁労働組合の反対を無視し、これを圧迫せんとするものであります。即ち、政府は強弁とごまかしによつてひた隠しに隠してはおりますが、日米安全保障條約の締結の結果必然的に外国帝国主義によつて押し付けられる再軍備費を捻出するために、国民の福祉、民生の安定に要する事務を犠牲にして、諸費用を大幅に削り取ることを企図したものであることは極めて明白であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)更に両條約発効後に対応する植民地的行政、フアツシヨ支配体制への道を開かんとする惡質な意図に貫かれていることも、これ又否定できないところであります。本法案は、一言にして言えば反労働者的、反民族的でありまして、我が日本共産党の到底許すことのできない反動的なものであります。(拍手)  例えば労働関係でありますが、労働基準監督署の監督官は現在どこでも一人につき約九百の事業場を受持つており、労政事務所のごときは労働者二、三十万の地区を僅か五、六人の職員が飛び廻つている実情でありますが、政府はこのような実情を承知しながら、あえてこれらの人々のうちから二割近くを整理しようとしているのであります。これは何と強弁しようとも、政府が国際労働憲章の、即ち「多数の人民に対する不正、困苦及び窮乏に伴う現今の労働状態は大なる不安をかもし出し、延いては世界の平和協調を危殆に陷れることを防止する」という條項の精神を活かすために制定された労働基準法を骨拔きにし、死文化しようと企図していることであり、又同時に、政府が予定し、準備しつつあるところの彼の労働三法の改惡を行政面からなし崩しに実施して、既成事実を作り上げようとするものであることは極めて明瞭であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)労働者を家畜のように酷使し、そうして敵視する吉田政府の反労働者的性格、同時に、再びソシアル・ダンピングを武器にして他国への進出と侵略を図ろうとする帝国主義的性格は、この人員整理案に最も端的に最も露骨に現われていると断言して憚からぬところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  更に、政府国家公務員八十九万九千三百八十名の過半数に及ぶ四十七万九千百二十名を非常勤職員として雇用しているのでありますが、これらの人々の多数は極めて低賃金で、而もすべて常勤職員と同様の職種に従事しているのであります。これらの人々なくしては正常な業務の遂行は不可能であることは、それぞれの所管当局がしばしば言明しているところであります。近来民間各企業においては臨時工制度が著しく強化されつつあり、これが低賃金、労働強化、首切りの拍車となつていることは否定できない事実であります。言うまでもなくこのような傾向は、政府が率先して範を示した非常勤職員雇用制度に負うところ大なるものがあり、民間企業はむしろ政府に倣つているのであると言つても決して過言ではないと思うのであります。それ故に、我々は政府が率直にその非を認め、更に業務の正常なる遂行を期するためにも、当然これらの非常勤職員予算定員に繰入れるよう要求するものであります。又政府は被整理者に対する十分な生活の保障も與えず、又職業補導一本槍で、他に何ら対策らしいものもなく、八万七千人に及ぶ人々を一千万に及ぶ失業地獄の中に投げ込もうとしている。これらの人々が政府の言う職業補導によつて再就職し、生活の安定を得ることは、全く絶望に近いと言わざるを得ません。このことはすでに政府資料自身が証明しているところであります。政府の無慈悲な仕打ち、非人道的態度はすでに定評のあるところでありますが、その中でも、今次の被整理者の不利益処分に対する審査請請求権を否認して、組合活動家やまじめな人々を追放しようとするのみか、法を無視し或いは蹂躪して憚らない吉田政府のフアツシヨ的性格を、これほどむき出しにしたものはないと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  低賃金、労働強化、低米価、不当供出、物価騰貴、重税等によつて国民の大多数はますます生活苦に喘ぎ、日に日に生命と肉体をすり減らしているのでありますが、政府は困窮者や罹病者がますます激増している事実を認めていながら、なお、国立病院療養所まで人員整理を断行しようとしているのであります。人員整理は直ちに病人に惡影響をもたらすものであります。病人を放置して顧みない。人命を尊重しない。併しながら軍事費、彈圧費には惜しみなく注ぎ込むという政府のこのような冷酷非道なやり方は、天人共に許さざるところであります。我我は、国民の保健衛生の諸施設を急速に完備することこそ現下の急務であり、従つて人員整理を停止することは勿論、軍事費、警察費の大削減を断行して、その費用をこれに振り向け、施設の拡充、人員の増員を図ることが至当であると思うのであります。  占領下に置かれた六年の間に我が国の被接收財産は、民有に限りましても土地約一万三千七百九十件、一億一千九十四万六千九百三十坪であり、建物は約三千件、百三十六万四百七十坪、動産二千五件、約七十万三千五百坪という厖大な量に達しているのでありまして、他に官公有を加えると驚くべき量になるのであります。それに又近頃は日米安全保障條約による軍事基地の拡大、陸海軍演習地の増大等、日を追うに従つて有形無形の財産接收がいよいよ増加する一方という状態であります。これらの接收財産をめぐる業務は、即ち不動産に対する借上料の支拂や、国の不法行為又は債務の不覆行に基く損害等に対する補償その他者種苦情の処理などの諸問題が山積し、多忙を極めているのでありまして、現行定員を以てしてもなお数ヵ年を要する実情にあるのであります。我々はもとより、衷心から、占領によつて被害をこうむつている国民の財産の接收解除及び補償等の処理が一日も早く完了することは勿論、占領軍又は駐留軍の撤退を大多数の国民と共に熱望しているのであります。併しながら三割に及ぶ今次の人員整理は当然これを不可能な状態に宿れ、従つて国民に対して多大の損失と迷惑を及ぼす結果を生むに至るのは必然であります。政府は先きに外国人の財産補償には逸早く年間百億円という巨額の支出を決定しながら、この整理案を見ても明かなように、国内の農漁民、市民の補償はできるだけ引き延ばし、サボろうと努めているのでありますが、この政府の態度は、まさに、彼の日本をドルに従属せしめ、そして————の基地にすると決定したサンフランシスコ講和條約を讃美し、あとになつて日本にとつて如何に有利な條約が他国から提案されても、これ以外のものは断じて結ぶ意思がないと断言して憚らぬ、全く日本人にあるまじき態度と共通するものでありまして、これほど露骨に吉田政府の売国性、反人民的性格をさらけ出したものはないと思うのであります。  近来、官庁の不正腐敗は目に余るものがあり、特にレツドパージ以後においては、まさに百鬼夜行の状態を呈しておるのであります。警察予備隊、海上保安庁の不正事件、文部省の学校給食汚職事件、或いは專売公社の不正等等、枚挙にいとまないほどでありまして、いずれも権利力をバツクにして腐敗官僚どもが不正を働いているのであります。蒋介石政権、李承晩政権を見るまでもなく、外国の植民地、従属国になればなるほど不正腐敗が激増することは、事実が明らかに教えているところであります。みずから求めてドルの従属国になろうとしている吉田政府も決して例外ではないのでありまして、その腐敗汚職振りはまさに先進植民地諸国と匹敵するものでありまして、いよいよ末期的現象を呈しているのであります。我々は、国民の血税を無慈悲に取立てては、これを湯水のように濫費し、不正に対しては不感症になつているこれらの不正官僚こそ、真つ先に容赦なく整理すべきであると考える。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そして、まじめに働いているすべての官吏諸君に対しては、十分な生活の保証を與え、同時に、労働組合による不正摘発はもとより、その他の組合活動を助長する措置を講じ、文字通り人民に奉仕する体制を確立することが何よりも急務であると思うのであります。  最後に一言いたします。各党各派による本法案修正案が出されているのでありますが、これは不合理にして且つ反動的な政府原案と比較して見ますと、疑いもなく数歩の前進を示してはおります。併しながら、それとても、いずれも再軍備のための整理を肯定しているものであり、いわば、より小なる惡に過ぎないのであります。我が党は飽くまで、政府原案はもとより、修正案に対しても絶対反対をするものであります。(拍手
  32. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 只今賛成討論の通告に接しましたから発言を許します。溝淵春次君。    〔「はつきりしたところを聞こうじやないか」「しつかりやれよ」「ゆつくりやれよ」と呼ぶ者あり〕    〔溝淵春次君登壇拍手
  33. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 私は自由党を代表いたしまして、本修正案に対し賛成の討論を行わんとするものでございます。(「原案はどうした」と呼ぶ者あり)  只今まで反対論者の御意見を拜聽いたしておりますると、行政整理趣旨には賛成であるが、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)行政機構改革をせずして整理を先行するということが、それが不徹底であるという意見が多いのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)併し、皆さん、これは本末顛倒の意見であります。そうして国民に対して、我我国会の議員が国民負担軽減を主として行政整理をやるということが、それが国民の輿論であるという前提に立ちまするならば、行政機構改革がやがて行われんとする前提の下に、先ず事務簡素化による行政整理によりまして国民負担軽減をすることこそ、(「そうだ」と呼ぶ者あり)現下の時局における我々議員の職責であると固く信ずるのであります。(拍手)この法案審議に当りまして、先ほどの(「うるさいぞ」と呼ぶ者あり)河井委員長及び民主党の三好君の討論意見に対し、私どもは敬意を表しますると共に、現在の我が国の行政制度機構が著しく複雑でありまして、公務員定員が国力に比して厖大に過ぎるということは、世論のひとしく認めるところでございます。このため国民の負担が重くなり、又国政の運営が非能率的となりまして、我が国の自立再建の上に障害となつておることは争うことのできない事実であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)ところが、行政整理は実際問題としては非常に困難なことでございまして、明治以来歴代の内閣が行わんとしてなかなか実行できなかつたことは、歴史の示す通りでございます。現内閣は、その成立以来、行政の徹底的簡素化を重要政策一つとして、すでに二十六万人に及ぶ行政整理を断行したのでありますが、(「それが自慢か」と呼ぶ者あり)今回、又更に、行政の徹底的簡素化の一環として、定員整理を断行せんとする意図に対しては、私ども議員として満腔の敬意を表するものであります。(拍手)今回提案になりました定員整理内容を見まするに、現在誰が見ても過剩と思われる部分の定員を相当徹底的に整理せんとするものでありまして、ただ退職者に対しましては、この歳末を控え、誠に気の毒に思われるのでございますから、退職者に対しては特別な優遇措置を講じ、整理の期間も十分の余裕をおくなど、整理される者に対する考慮がよく拂われているものでございまして、根本の構想においでは何人も異論のないところと固く信ずるものでございます。(拍手、「ノーノー」と呼ぶ者あり)ただ内容を詳しく検討いたしますると、統制事務の廃止、国営事業民営移管等事務整理が将来の問題に属しているものも、これを予定して定員整理せんとするものもあり、又、各機関整理率の均衡が必ずしも妥当でないと認められる点もあるのであります。これらの点に対しましては、将来の事務整理に伴うものは、そのときに改めて定員整理することが妥当であり、又整理率の不均衡なものは或る程度修正することが適当と信ずるのでございます。この意味において私は修正案に対して賛成をするものであります。事務整理を前提とするこのたびの(「原案はどうした」と呼ぶ者あり)定員整理については、その理由を十分是認するものであります。と共に、進んで機構簡素化による整理を徹底することを私は必要だと信ずるものであります。よつて政府は続いて速かに事務整理機構簡素化を断行され、その機構に副うべく人員整理を断行し、以て一層の経費の節減と行政能率の向上を図られんことを熱望いたしまして、本案に対して満腔の敬意を拂いつつ賛成するものであります。(拍手
  34. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。本案の表決は記名投票を以て行います。委員長報告の通り修正議決することに賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  35. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  36. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数二百二票。  白色票百三十八票。  青色票六十四票。  よつて本案議決せられました。      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名 百三十八名    山川 良一君   溝口 三郎君    前田  穰君   藤森 眞治君    藤野 繁雄君   波多野林一君    野田 俊作君   徳川 宗敬君    竹下 豐次君   高橋 道男君    高橋龍太郎君   高木 正夫君    田村 文吉君   鈴木 直人君    杉山 昌作君   新谷寅三郎君    西郷吉之助君   高良 とみ君    小林 政夫君   小宮山常吉君    木下 辰雄君   河井 彌八君    片柳 眞吉君   柏木 庫治君    加賀  操君   岡本 愛祐君    岡部  常君   小野  哲君    楠瀬 常猪君   玉柳  実君    青山 正一君   長島 銀藏君    木村 守江君   宮本 邦彦君    秋山俊一郎君   高橋進太郎君    仁田 竹一君   宮田 重文君    上原 正吉君   森田 豊壽君    草葉 隆圓君   石川 榮一君    大谷 瑩潤君   九鬼紋十郎君    深水 六郎君   加納 金助君    平沼彌太郎君   大矢半次郎君    城  義臣君   岡崎 真一君    西川甚五郎君   小野 義夫君    寺尾  豊君   黒田 英雄君    石坂 豊一君   岩沢 忠恭君    北村 一男君   中川 幸平君    一松 政二君   黒川 武雄君    横尾  龍君   徳川 頼貞君    中山 壽彦君   中川 以良君    飯島連次郎君   伊藤 保平君    井上なつゑ君   赤澤 與仁君    赤木 正雄君   松本  昇君    廣瀬與兵衞君   重宗 雄三君   大野木秀次郎君   加藤 武徳君    長谷山行毅君   松平 勇雄君    古池 信三君   杉原 荒太君    平井 太郎君   白波瀬米吉君    山縣 勝見君   安井  謙君    山本 米治君   岡田 信次君    愛知 揆一君   瀧井治三郎君    石村 幸作君   田方  進君    平林 太一君   溝淵 春次君    鈴木 恭一君   島津 忠彦君    石原幹市郎君   山崎  恒君    紅露 みつ君   深川タマヱ君    木内キヤウ君  池田宇右衞門君    大島 定吉君   郡  祐一君    川村 松助君   竹中 七郎君    谷口弥三郎君   有馬 英二君    油井賢太郎君   山田 佐一君    堀  末治君   團  伊能君    鈴木 強平君   櫻内 義雄君    三好  始君   西田 隆男君    大屋 晋三君   泉山 三六君    平岡 市三君   小林 英三君    栗栖 赳夫君   林屋亀次郎君    櫻内 辰郎君   一松 定吉君    鬼丸 義齊君  深川榮左エ門君    菊田 七平君   大隈 信幸君   前之園喜一郎君   岩木 哲夫君    岩男 仁藏君   駒井 藤平君    小川 久義君   木内 四郎君    稻垣平太郎君   岡村文四郎君    東   隆君   森 八三一君    三浦 辰雄君   堀木 鎌三君    松原 一彦君   館  哲二君     —————————————  反対者(青色票)氏名  六十四名    永井純一郎君   カニエ邦彦君    門田 定藏君   上條 愛一君    堂森 芳夫君   齋  武雄君    野溝  勝君   清澤 俊英君    加藤シヅエ君   山田 節男君    三橋八次郎君   若木 勝藏君    岩崎正三郎君   田中  一君    曾祢  益君   村尾 重雄君    島   清君   小酒井義男君    栗山 良夫君   大野 幸一君    松浦 清一君   相馬 助治君    小林 亦治君   森崎  隆君    吉田 法晴君   中村 正雄君    下條 恭兵君   山下 義信君    波多野 鼎君   伊藤  修君    棚橋 小虎君   吉川末次郎君    小泉 秀吉君   三木 治朗君    須藤 五郎君   岩間 正男君    兼岩 傳一君   千葉  信君    木村禧八郎君   堀  眞琴君    水橋 藤作君   成瀬 幡治君    重盛 壽治君   山花 秀雄君    梅津 錦一君   江田 三郎君    小林 孝平君   千田  正君    羽生 三七君   荒木正三郎君    内村 清次君   佐多 忠雄君    大山 郁夫君   藤原 道子君    河崎 ナツ君   高田なほ子君    木下 源吾君   矢嶋 三義君   小笠原二三男君   菊川 孝夫君    椿  繁夫君   岡田 宗治君    金子 洋文君   和田 博雄君      ——————————
  37. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 日程第一、国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出、衆議医送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。人事委員長吉田法晴君。    〔吉田法晴登壇拍手
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 只今議題となりました国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、人事委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  先ずその提案理由並びに内容の要点を申上げますと、今回の行政整理によつて退職する職員に対しましては、諸般の事情に鑑み、特に退職手当を増額する等の特例を設ける必要があるとして第一に、本年十月五日から明年三月三十一日までの間に退職する場合は、従来の行政整理の場合の支給額の八割増、明年四月一日から同年六月三十日までの間に退職する場合は四割増の退職手当支給し得ることとし、第二に、機構又は事務の廃止に基く退職者等で、残務整理等特別の事情で明年四月一日以降退職する者につきましては、同年三月三十一日以前の退職者と同様八割増の退職手当支給し得ることとし、第三に、明年一月一日以降の退職所得につきましては、所得税法の臨時特例に関する法律によつて所得税軽減されることとなつておりますが、今回の行政整理に伴う退職者につきましては、本年十二月三十一日以前に退職しても、明年一月一日以降に退職手当の支拂を受ける場合には、右の課税軽減措置適用を受け得ることにいたそうとするものであります。  本案は十一月十三日予備審査のため人事委員会に付託され、同十五日政府より提案理由説明を聞き、質疑に入り、本案適用範囲等に関し質疑応答が行われましたが、詳細は会議録に讓ります。かくて二十八日質疑を終了し、討論に入り、千葉委員及び木下委員より反対、團委員より賛成の意を表せられ、引続き採決に入りましたところ、本案は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  39. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  40. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。  議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。    午後四時五十三分休憩      ——————————    午後六時三十分開議
  41. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、文化財保護委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。昨日内閣総理大臣から、文化財保護法第九條の規定により、内田祥三君を文化財保護委員会委員に任命するごとについて、本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  43. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件は同意を與えることに決しました。      ——————————
  44. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して、国会法第三十九條但書の規定による国会の議決に関する件(産業合理化審議委員)を議題とすることに御審議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。昨日内閣総理大臣から、産業合理化審議委員衆議院議員首藤新八君を任命することについて、本院の議決を求めて参りました。衆議院議員首藤新八君が産業合理化審議委員に就くことに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  46. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて首藤新八君は産業合理化審議委員に就くことができると決せられました。      ——————————
  47. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して、国会法第三十九條但書の規定による国会の議決に関する件(米価審議委員)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。昨日内閣総理大臣から、米価審議委員に、衆議院議員河野謙三君、同足立篤郎君、同坂田英一君、同笹山茂太郎君、同足鹿覺君、本院議員片柳眞吉君をそれぞれ任命することについて、本院の議決を求めて参りました。衆議院議員河野謙三君、同足立篤郎君、同坂田英一君、同笹山茂太郎君、同足鹿覺君、本院議員片柳眞吉君がそれぞれ米価審議委員に就くことに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  49. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて六君は米価審議委員に就くことができると決せられました。      ——————————
  50. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 参事報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)可決報告書  昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号)可決報告書  昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)可決報告書      ——————————
  51. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して、昭和二十六年度一般会計予算補正、(第一号)昭和二十六年度特別会計予算補正、(特第一号)昭和二十六年度政府関係機関予算補正、(機第二号)以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。予算委員長和田博雄君。    〔和田薄雄君登壇拍手
  53. 和田博雄

    ○和田博雄君 只今議題となりました昭和二十六年度一般会計予算補正、(第一号)同特別会計予算補正、(特第一号)同政府関係機関予算補正(機第二号)につきまして、予算委員会における審査経過並びに結果を御報告いたします。  先ず順序としまして右予算補正の内容を極く簡單に申上げます。  昭和二十六年度一般会計予算は、今回の補正によりまして、当初予算に比し、歳入歳出共に千三百六十二億円の増加となるのでありますが、その主なる点は大体次の通りであります。  先ず平和回復に関連する歳出の補正といたしまして、終戰処理費が八十三億円の減少を来たしておりますと同時に、平和回復善後処理費として百億円が新たに計上されております。  治安関係費といたしましては、警察予備隊経費増加百五十億円、国家地方警察費の増加三十六億円等が計上されております。  出資及び投資関係におきましては、外国為替資金特別会計への繰入三百億円並びに食糧管理特別会計への繰入百億円のいわゆるインベントリー・フアイナンスのほか、二百億円が、農林漁業資金融通特別会計、糸価安定特別会計、輸出信用保險特別会計への繰入並びに国民金融公庫、住宅金融公庫、日本輸出銀行、日本開発銀行への出資として計上されており、更にこの上に国際通貨基金及び国際復興開発銀行への出資二百億円を加えまして、政府出資及び投資の総額は八百億円となつております。  その他の歳出の主なるものは、公共事業費の増額四十一億円、地方財政平衡交付金の増額百億円等であります。なお後者に関連して別途地方起債の限度を百億円増加いたすことになつております。  次に歳入の主なるものは租税の自然増收でありまして、当初予算におきまして四千四百四十五億円を計上した租税及び印紙收入は、その三割五分に相当する千五百六十八億円の自然増收が見込まれ、專売益金その他の増加を加えますと、歳入は千七百六十七億円の増加が見込まれますので、これによつて前述の新たな歳出の増加を賄うと共に、四百五億円の減税を行うことといたしておるのであります。  大体以上のような補正の結果、昭和二十六年度一般会計予算は総額七千九百三十七億円となるのでございます。  次に特別会計並びに政府関係機関予算補正につきましては説明を省略しまして、ここには、一般会計、特別会計及び政府関係機関を通じまして予算編成の基礎となつておりまする給與改善、行政整理及び料金改訂等について一言するにとどめたいと思います。  公務員の給與は十月から月平均千五百円の増額を行うと共に、年末手当を〇・八ヵ月分とし、これに必要な経費として、一般会計、特別会計及び政府関係機関を通じまして、合計二百六十六億円を追加計上いたしております。  行政整理については、一般会計四万七千余人、特別会計四万六千余人、政府関係機関二万七千余人、合計十二万一千余人を縮減することとし、そのうち七万二千余人分を今回の補正に織り込んでおり、本年度においては退職手当支給関係上四十三億円の経費増となるが、二十七年度において百五十七億円、平年度においては二百七億円の経費節約となる計算となつております。  次に、予算積算の基礎となつている料金及び価格でありますが、鉄道運賃は、旅客二五%、貨物三〇%の引上げ、郵便料金は平均四〇%の引上げ、電信電話料金は平均二七%の引上げをいずれも十一月一日から見込んでおり、又食糧の消費者価格は八月一日から実施の新価格により、生産者価格については農業パリテイの五月末を二三八とし、九月末を二五〇と想定しております。以上が今回の予算補正の大要であります。  さて本案審議に当りましては、去る十月二十五日、池田大蔵大臣より提案理由説明を聞いた後、予備審査を開始し、衆議院よりの送付を待つて十一月十三日より本審査に入つたのであります。この間、委員会を開催すること二十二回、別に十一月一、二日の両日には公聽会を開き、又十一月二十六日より五日間に亘つて政府出資及び投資に関する小委員会農林に関する小委員会、物価給與引上げ、社会保障及び減税等に関する小委員会並びに地方財政平衡交付金に関する小委員会の四つの小委員会を開催する等、本案の重要性に鑑みまして、あらゆる角度から精細な検討を加えたのであります。  委員会における論議は極めて広汎多岐に亘つたのでありますが、ここでは、委員会における質疑応答を通じて明らかにせられたいろいろな問題のうちで、特に基本的に重要と思われまする諸問題、即ち一、講和に伴う財政負担と経済自立の見通し、二、財政金融政策、三、物価対策、四、国民生活水準、五、地方財政平衡交付金、以上五つの問題を重点的に取上げて御報告いたすにとどめ、残余の問題につきましての質疑応答は速記録に讓りたいと思います。  先ず第一は講和に伴う財政負担と経済自立の見通しに関する問題でございます。  「政府は、平和條約等に基く新たな財政負担を考慮しても、明年度財政の規模は補正後の本年度予算と大差のない程度にとどめ得る見込であるといつておるが、賠償、対日援助費の返済、防衛分担金等、講和に関連する重大な経済條項は條約の規定によつて明らかになつているものではなく、すべて今後の折衡に委ねられた未確定の要素ではないか。今後の我が国の経済のあり方に決定的な影響を與える講和関係経費の見通しはどうか」との質疑に対し、池田大蔵大臣より「賠償を考える場合、存立可能な経済ということを條件としなければならないのでありますが、その大きさがどのくらいになるかはもとより見通し困難であるばかりでなく、来年度当初予算に賠償の一部として賠償額を確定して提出することも困難ではないかと思う。対日援助費は、見返資金特別会計で経理するようになつた以後の分は勿論、それ以前のものも、やはり債務として考えるべき性質のものであるから、総額は大体二十億ドルである。対日援助費の返済が賠償に優先するかどうかについては議論のあるところで、アメリカでは優先説が多いようであるが、我が国としては、賠償、対日援助費或いは外債等一連の関係を総合的に考えて相手方と折衝を進めるつもりである。防衛分担金については、アメリカ政府が日本進駐軍のために支拂つている軍費を基準として考える方法と、日本が終戰処理費で負担している進駐軍の土地、建物の借料、日本人労務者の給與並びに鉄道、電信電話の使用料等に対する費用を目安にする方法と、二つあるが、前者は大変なことになるので、後者の方法によつて日本側の役務に対する費用の何割ということにしてもらわなければならんと思う」旨の答弁がございました。  警察予備隊の経費については、大橋法務総裁より、「目下一応の大蔵省に対する要求額としては来年度六百二十五億円を要求している。而して現在警察予備陰で使用中の数千億円に上る武器については、講和後も現在と同じような形で引続きアメリカから貸與を受けたいと考えている」旨の答弁がありました。  なお、再軍備に関する質疑に対し、吉田内閣総理大臣より、「政府としては今日国力が許さないと思うので、再軍備は当分いたさない」との明確な答弁がありました。  次に、「講和後において我が国経済の自立を達成する上に、東南アジアの開発、国内の電源開発並びに国際收支、この三つの問題が特に重要なキイ・ポイントをなすものと思われるが、政府はこれらについてどのような計画と見通しとを持つているか。東南アジア開発は中共貿易杜絶の代償として殊更にこれを過大に評価しているのではないか。外資導入の期待が外れた電源開発を今後どのような形でやつて行くのか。又次第に惡化して行くドル收支をどういうふうに合せて行くのか」等の質疑に対し、政府側より、「東南アジアの開発については、品目別に成る種の話合いが進められている。資金についてはアメリカの特殊な銀行等からの援助もあるようだし、アメリカの経済協力局資金の支出も期待される。そして我が国から技術、労務、機械等を提供し、開発されたものは日本の工場で製品化し、それを再び輸出するというような形に持つて行くことが望ましいと思う。いずれにしても東南アジアの開発には相当の期待が持てると思うし、又東南アジアの開発は、單に中国貿易の代替として重要であるというように考うべきものではない。国内の電力開発は、第一期、第二期に分つて推進する計画である。第一期は、来年、再来年に着手し、昭和三十一年頃までに完成される地区と、同時期内に着手し昭和三十三年頃までに完成される地区とに分れる。資金については一期約四千億円見当で、政府の資金と民間の資金と大体半々くらいというふうに考えているが、具体的な計画はまだ決定していない。国際收支については、貿易が今のままの形で進むと、ドル地域は支拂超過、スターリング地域は受取超過となり、両方を合せた收支は二十七年度において受取超過になると思うが、ドル不足を調整するために、でき得る限りドル地域からの輸入をポンド地域に切換え、そうしてできるだけドル地域への輸出を増進する必要がある。非常に極端な場合には、スターリング地域への輸出をものによつて抑えるというような措置をとる必要が起るかも知れない」、等の答弁がございました。  次に、第二は財政金融政策に関する問題であります。「政府は大体直接的な物の統制を行わず、財政金融等の資金面から経済全体の運営調整を図るというのであるが、その具体的な方法はどのようなものか。又政府はインフレ抑制のために総合的な対策をとらないで、ただ財政金融政策のみに頼つているが、このようなインフレ対策は現在の段階ではすでに限界に達しているのではないか」との質疑に対し、池田大蔵大臣より、「財政金融政策の具体的方法として先ず第一に、緊縮財政、均衡財政方針をとり、今回の補正予算でもわかる通り、物価が上つたからといつて、すぐ予算を補正することなしに政府事業を縮小した。又外国為替特別会計に対するインベントリー・フアイナンスのごときものは明年度も引続き行うつもりである。次には、為替管理を強化し、外国市場等を十分検討して、有効にドル及びポンドを使用するようにし、又日銀ユーザンスについても十一月から乙種段階を貿易手形に切替えた。第三には、金融を適正化して不要不急な方面への融資を極力抑える。併し金融政策の基本方針としては、自主的規制を主とし、且つそれを前提としながら、不十分なところを法的規制で補おうという考え方で、銀行法の改正等の措置も目下研究中である。政府としては、以上の財政收支の均衡、為替管理の強化、金融の適正化という、この三大方針に基く具体的な施策を進めて行けば、物資の直接統制というようなことをやるよりも、もつと能率的にインフレを抑制し、経済の安定と発展とをもたらすことができると考えている」との答弁がありました。  次に、第三は、物価対策に関する問題であります。  「朝鮮動乱を契機とする我が国の物価騰貴率は、米英各国のそれを遙かに上廻つたが、更に中共貿易停止措置や講和関係経費などのインフレ要因を考慮すると、これまでのような無計画な自由経済政策では到底今後の物価高を抑えて行くことはできない。殊に日米経済協力の本格化に備え、輸出の促進と物価の抑制が特に要請せられている現在、どのような物価対策を持つているか」との質疑に対し、政府側より、「物価対策としては、前に述べたような財政金融政策のほか、生産財にしろ、消費財にしろ、必要物資の量的確保を第一とし、第二には、生産設備の合理化によるコストの切下げ、第三には、食糧のごとき生活必需物資に対する輸入補給金、第四には、稀少物資等に対する使用制限或いは輸出許可制等の諸施策を実施しておるが、まだ飽くまでも自由経済原則とする建前から、物資の直接統制はできるだけ避ける方針であり、又、米や石油などの既存の統制もできるだけ速かに撤廃したいと考えておる」との答弁がありました。  又これに関連して、「政府は四月一日からの米の統制撤廃を一旦決定しながら、突如としてそれを打切つたために一層無用の混乱と摩擦を惹起したが、一体如何なるいきさつで撤廃を打切らざるを得なくなつたのか。又如何なる條件が整つていなかつたために撤廃ができなかつたのか」との質疑に対し、政府側より、「米の統制撤廃の時期及び條件等について総司令部との間に意見の食い違いがあつたことは事実であるが、統制撤廃原則は認められたと確信しておる。而して将来統制撤廃実施できる條件としては、二千五百五十万石の供出が完了し、三百七八十万トンの外国食糧の輸入が確保されるという二大前提條件の上に、更に統制撤廃後における需給調整、価格暴騰等に対する措置に遺憾がなければ統制撤廃ができると思う。目下のところ来年の十一月一日を目途として準備を進めておる」との答弁がありました。なお、麦の統制は来年一月一日以降、成るべく速かに撤廃する方針であるとの答弁がございました。  次に、第四は国民生活水準に関する問題であります。  「本年度当初予算審議の際、政府は、国民生活水準はこれを維持し、且つ徐徐に向上せしめるということをしばしば言明したが、実際には国民の生活水準はその後低下しておる。即ち朝鮮動乱前の四月に七八%まで上つた生活水準が本年八月には六五%に下つておる、生産や貿易の規模が拡大し、国民所得が増大しておるにもかかわらず、逆に生活水準のみが低下した原因はどこにあるか。又今後講和に関連する財政負担の大幅増大が予想される際、これ以上生活水準の低下を来たさしめないということが如何にして可能であるか」との質疑に対し、周東経済安定本部長官より、「自立経済三カ年計画では、二十八年度において戰前の八九%の生活水準を維持しつつ、鉱工業生産指数を一三一にまで持つて行きたいと考えていた次第であるが、その後、生産指数はそれを上廻る程度に上昇したが、物価騰貴の影響を受けて実質賃金の増加率が非常に低かつたため生活水準の低下を来たした。講和後においていろいろな財政負担を担いつつ、国民生活水準を維持し、且つ向上さして行くということについては、やはり或る種の経済計画が必要であるということを考え、安本で目下その作業を進めている」との答弁がありました。  「政府は、口には国民生活の安定を唱えながら、今回の補正予算において社会保障関係経費物価騰貴に伴う補正すら行なつていない。生活の保護を受けるような人たちは物価騰貴で最も困つているにかかわらず、僅かに主食の値上りを予算の枠内で操作したに過ぎない。資材の値上りによつて公共事業費の実質的な事業量が甚だしく減少したのに、失業応急事業費は相変らず当初の七十八億円に過ぎない。租税の自然増收千五百六十八億円は大部分物価騰貴に基く名目的なものであるから、それ自体却つて国民生活を圧迫しており、四百億円くらいの減税では何ら実質的な国民負担軽減にはならない。公務員の給與改善についても人事院の勧告を無視し、公務員の生活を確保していない。政府の民生安定政策はこのように貧困であり、ここに施政の根本的な欠陷があるのではないか。又来年度予算では民生安定関係経費はどういうふうにするつもりか」との質疑に対し、池田大蔵大臣より、「二十六年度当初予算においては相当社会保障的な経費を計上したのであるが、補正予算には財源の関係その他で増額することができなかつた。而して来年度の予算においては講和関係経費が嵩むが、減税は続けて行かなければならないし、民生安定の費用もないがしろにするわけに行かないので、講和関係費と公共事業費及び社会保障費等はできるだけ調印のとれたものにして行きたいと考えておる」との答弁がありました。  「平和條約の発効を控えて日本国民が現在最も心配しておる点は、日本の民主化の問題、経済民主化の問題である。労働法規の改惡とか、ゼネスト禁止法案或いは団体等規正法案とか、独占禁止法の緩和、事業者団体法の廃止等々、かかる一連の改革は民主化を逆転せしめる以外の何ものでもない。講和後において日本の民主化は逆転する危險はないか」との質疑に対し、吉田内閣総理大臣より、「現行の労働法規には幾多の行き過ぎの点もあるので、その行き過ぎの点は研究して改正するのは当然である。政府としてはこれまで日本の民主化の確立に努力して来たが、今後も日本の民主化は断じて後退せしめない」旨の答弁がありました。  最後に、第五は地方財政平衡交付金に関する問題であります。「この問題につきましては、衆参両院において全会一致を以て地方財政平衡交付金等の増額に関する決議がなされておるのであるが、これに対して政府は具体的にどのような予算措置を行うつもりであるか」との質疑に対し、池田大蔵大臣より、「本会議において申述べた通り、決議の趣旨を尊重して、中央地方の財政状況を検討勘案し、善処いたしたい」との答弁がありました。  以上のような質疑応答の間におきまして、十一月二十一日、人事委員長吉田法晴君より、人事委員会を代表して、人事院勧告通りの国家公務員給與改訂が行われるため、今次補正予算に対して、一般会計、特別会計を含め、更に百七十八億円の増額修正がなされるよう特に配慮を願いたい旨の申入れがあり、又十一月二十四日、内閣委員長河井彌八君より、内閣委員会を代表して、定員法改正案の修正が確定した場合、予算執行上支障を来たさないよう取計らい方願いたい旨の申入れがありました。本委員会といたしましても、これらの案件に関しましては、もとより愼重に審議を重ねまして、公務員の給與引上げは人事院の勧告の線を妥当と認めるとの「物価、給與引上げ、社会保障及び減税等に関する小委員会」の結論を承認し、又後者については、大蔵大臣及び政府委員に対して質疑を行い、定員法案修正が行われても予算の執行上支障はないとの大蔵大臣の確答を得た次第であります。  各小委員長報告は昨二十九日午後と本日午前中に逐次行われたのでありますが、その詳細は省略いたしまして、只今申上げました物価、給與引上げ等に関する小委員会の結論のほか、地方財政平衡交付金に関する小委員会の結論が、過般の本院決議の趣旨を再確認し、政府は速かに地方財政の運用に支障なからしむるよう措置を講ずベきであるということであつたことだけを申上げておきます。  各小委員長報告委員会において異議なく承認せられました。よつて委員長は、本委員会審議経過に徴し、特に緊要と認めた一つの事項について政府に対し質疑をいたしました。即ち「地方財政平衡交付金及び起債の増額について、大蔵大臣は、両院決議の趣旨を尊重して善処すると言い、又本委員会において、差当りの金融措置としての短期融資を行う旨言明しているのでありますが、政府はこの短期融資をどのように行うつもりか。又その総額はどれくらいの見込か」ということでございます。これに対して池田大蔵大臣より、「短期融資の総額がどれくらいになるかは地方財政の実情検討した上でないとわからないが、政府としては個々の地方団体の実情に即して具体的な措置をとることによつて、誠意と責任とを以て善処する」旨の答弁がありました。  かくて質疑を終局し、討論に入りました。先ず内村委員より日本社会党第二控室を代表して反対、石坂委員より自由党を代表して賛成、波多野委員より日本社会党第三控室を代表して反対、小林委員より緑風会を代表して賛成、岩木委員より国民民主党を代表して反対、東委員より第一クラブを代表して反対、木村委員より労働者農民党を代表して反対、岩間委員より日本共産党を代表して反対の旨を述べられました。かくて討論を終局し、採択の結果、本委員会に付託せられました昭和二十六年度予算補正の三つの案は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  54. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。佐多忠隆君。    〔佐多忠隆君登壇拍手
  55. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ここに上程されました昭和二十六年度補正予算に対し、私は日本社会党を代表して反対の意思を表明し、根本的な組替を要求いたします。その理由とするところは次の通りであります。  第一に、政府予算編成の基礎をなす総合国力の判断を誤まつているからであります。本年度当初予算審議に際しまして、私たちは公務員給與ベース引上げ、地方財政平衡交付金の増額を強く要求いたしましたが、政府は財源がない、ない袖は振れないの一点張りで拒否いたしました。当時、私たちは、今後の日本経済の変化、物価騰貴などを適正に勘案するならば、その財源の捻出は可能でもあり、必要でもあるゆえんを力説したのでありますが、政府は自己の見通しの正しいことを頑強に主張し続けたのであります。その結果は果してどうだつたでしようか。諸君の目の前に示されておりますように、大幅な補正をやらざるを得ないこととなつたのであります。而も政府は、国民所得が当初予算当時の三兆八千億円から四兆五千億円に見積り換えされ、租税の増收が千五百六十八億に及ぶ点を捉えて、我が国経済の伸張に伴う国民所得の増加によつて租税收入等の著しい増加が見込まれると吹聽いたしております。然るに、予算審議を通じて明らかになつたところによりますと、国民所得の増加は、鉱工業生産の増加に基く部分はほんの僅かで、増加の大部分はむしろ物価騰貴に基くものであります。増加は名目的なものに過ぎません。成るほど最近の法人の業績は、池田大蔵大臣が誇りやかに述べまするように素晴らしいものであります。政府の発表によりますれば、会社の償却前の利益は、昨年二千七百億円であつたものが、本年は六千億円を超えることとなつております。その限りにおいては、確かに日本経済は非常な繁栄に向いつつあると言えましよう。併しその半面において、厖大な数に上る中小企業が破産し、沒落し、農家の経営が赤字に悩み、労働者やサラリーマンが、殊に公務員諸君が生活水準の切下げに喘ぎ苦しみつつある現状を見逃すわけには参りません。これら勤労大衆の收奪の上に大企業がその繁栄を壽いでおるのであります。(拍手政府は勤労者に対して三百億円の減税をしたと申しますが、それでもなお当初予算に比べると二百八十億円も負担を殖しております。政府に言わせれば五百八十億円の自然増收があるからだと言うでありましよう。併しこの増收たるや、物価騰貴のあとから遅れ馳せながら若干引上げられた收入増加の結果でありまして、これは生計費の値上りに全く吸收されてしまつて、なお足らざるものであります。これを税收にとり上げるごときは以てのほかと言わざるを得ません。  反対の第二の理由は、この補正予算では緊急不可欠な経費が何ら補正されていない点であります。  その一つは申上げるまでもなく公務員給與ベースの引上げであります。人事院はすでに早くから勧告を出して、独身の成年男子の職員の生活費を月額四千二百円と見積り、おおむね一万一千二百六十三円の平均給與を八月一日に遡つて支給するように、従つて約二千八百円のベース・アツプをするように主張しています。政府はこれを何ら顧みないで一千五百円の引上げにとどめ、而も十月以降の実施にしております。公務員諸君がその低い給與のために如何に生活を脅かされ、如何に苦しみ悩んでいるかは、政府自身が我我よりも、もつと身近かに見聞しておるはずであります。それを全然無視して、何らの根拠もない一千五百円引上げを固執しておることは全く了解に苦しむと言わざるを得ません。(拍手平和條約の前文に謳つております国民の安定と福祉の條件を充たし、従つて国民のより高い生活水準を確保することを政府がまじめに考えるならば、公務員の給與を少くとも人事院勧告程度に引上げると共に、減税の利益を何ら受けない最下層の人々に対しては、生活保護費の引上げその他の社会保障経費を増すべきであります。殊に戰歿者遺族や戰傷病者等の援護は直ちに実施すべきであるにかかわらず、準備調査費を僅かに一億円計上したに過ぎません。政府はこれらの生活救護に対しては一顧だに與えない無慈悲さを最も露骨に示しております。  緊急不可欠の経費の第二は、申上げるまでもなく地方財政平衡交付金の増額であります。地方財政の危機が如何に深刻であるかは、全国知事会、都道府県議会議長会を初め全国市長会、市議会議長会、全国町村長会、町村議会議長会等の代表者の切実な陳情を待つまでもなく、諸君自身が身を以て体験されておるところであります。さればこそ、この問題に対しては、珍しくも衆参両院とも全会一致を以て超党派的に交付金の増額を決議いたしました。我々は予算委員会において政府に対して再三再四これを要求しましたが、何らの確答を與えません。あまつさえ、地方財政委員会、地方自治庁、大蔵省の間には意見の非常な食い違いさえ生じております。我々は全国民の名において、少くとも地方財政平衡交付金百億円、地方起債五十億円を強く要求いたすものであります。  緊急不可欠の経費には更にルース台風の災害復旧費があります。この災害が最近における我が国の台風被害中最大のものであり、緊急に復旧を要するものであることは野田建設大臣自身がここに言明をいたしております。にもかかわらず、政府はこれに対する予算措置を講じようとしないで、僅かな繋ぎ融資で事態を糊塗しようとしております。  反対の理由の第三は、この補正予算には緊急不可欠の経費が殆んど計上されておらないのに、その半面において不要不急の経費が多額に支出されて財源が各所に留保されている点であります。その最たるものがいわゆるインベントリー・フアイナンスであります。外国為替資金特別会計への今度の追加繰入三百億円を当初の五百億円と合せると実に八百億円に達します。この会計の円資金不足は、政府が適時に適切な輸入をやり、為替金融を適正にやるならば、これほど多額に上るはずがありません。又若干の不足が出ましても、それこそ金融的に操作すればいいのであつて、何も一般会計から繰入れる必要のないものであります。このように、政府の貿易、為替政策の失敗を国民の血税によつて補償することに対しては、我々は断乎反対せざるを得ません。(拍手食糧管理特別会計に対する百億円の繰入についても同様なことが言えます。合せて四百億円の財源となります。政府は又国際通貨基金と国際復興開発銀行への出資二百億円を計上しております。加入も未だきまらず、出資額も未定であり、拂込の金額も明らかでなく、拂込の時期は来年度になることが殆んど確定的なこの経費を、本年度補正予算に急ぎ計上する必要は少しもありません。百億円の平和回復善後処理費のごときは、その使途すら殆んど説明のできない純然たる予備費とも言うべきものであります。合せて三百億円の財源がここにも留保されております。政府は更に警察予備隊の経費百五十億円、国警の経費三十六億円を増額いたしております。政府が真に国民生活の安定を図るならば、このような治安機構の拡充強化の必要は全然ありません。むしろ何よりも先にこれらの機構簡素化することによつて、その経費を大幅に削減すべきものであります。然るに政府は全く逆な方向に走り、団体等規正法、集会デモ取締法、ゼネスト禁止法などを準備しつつ、警察国家の形成に全力を注いでおります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)かかる傾向に対しては我々は全く反対であります。(拍手)  以上に挙げました不要不急の経費を合せれば、公務員給與ベースの引上げ、社会保障費や、地方財政平衡交付金の増額、ルース台風の災害の復旧費の計上等は何らむずかしいことではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊に平衡交付金の増額等百億何がしかの経費の財源のごときは、政府さえ熱意を以て決意すれば易々たるものとすら言えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手昭和二十五年度決算には二百六十億円を超える剩余金があり、その半額の百三十億円は本年度の財源に見積つて何ら差支えないからであります。政府はこれを隠してそれに触れようといたしません。これも来年度の講和関係費に保留したいからであります。  補正予算に反対する第四の理由は、この予算においては、財政と金融の間に適正な調整がとれていないからであります。予算審議の過程において明らかになつたのでありますが、この予算では一般会計と特別会計とを総合した政府資金対民間收支が二百六十億円の引揚超過になつております。一般会計のごときは千六百億円を超える揚超であります。従つて財政だけの收支から見る限り、むしろデフレ財政と言わざるを得ません。このように財政において非常に無理な引揚超過を強行するために、その「しわ」が金融のほうに及びます。そこで市中銀行のいわゆるオーバー・ローンとなり、日本銀行の非常な信用膨脹となり、ここからインフレが発生しております。日本銀行の信用供與は本年度を通じて九百億円に及ぶと予想されます。このような事態においては、先ず一般会計における非常に無理な揚超の政策をやめ、特別会計における混乱を是正し、財政における收支を適正にしなければならないのに、政府はこれをやろうといたしません。いな、かかる事態の正確な認識すらもないのじやないかと疑わざるを得ません。(「池田どうした」と呼ぶ者あり)同時に金融に対しては、非常に高度な統制がなさるべきであるにかかわらず、政府は金融機関の抵抗に押されて策の施しようがない状態であります。尤も池田大蔵大臣も、事態の客観的な推移によつて、設備資金の融資については、電力、石炭、鉄綱、船舶など、真に緊要なものだけに限り、それ以外に対しては融資の抑制を図らざるを得なくなりつつあります。ただ、その自由経済のイデオロギーを固執するために、事態を正確に認識することができず、従つて政策に自信が伴わず、政策が適切な実効を挙げておりません。(「池田逃げたよ」「大蔵大臣どうした」と呼ぶ者あり)  補正予算に対する反対の理由の第五は、政府が我が国経済財政の将来に対して正確な見通しを立てず、従つて適切な政策を持つていない点であります、我々は補正予算審議に際して、繰返し繰返し今後の経済財政の見通しを追及しましたが、政府は確たる答弁を與えません。恐らく正確な見通しを立てていないからでありましよう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)とすれば、この大事な転換期における予算の編成に際して、余りにも無準備であり怠慢であると言わざるを得ません。(拍手)或いは、政府には一応の見通しはあるが、関係当局との折衝を終えていないので、口を噤んで語らないのかも知れません。とすれば、それこそ大事な問題を、先ず国民と共に、従つて国会において十分に審議し、然る上にその結果を携えて関係当局と折衝する民主的にして独立を願う国家の態度をとらなければならないのに、それを忘れて徒らに他に追随する最も唾棄すべき態度をとつております。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)我々が、我が国経済、財政、金融の現状を正確に認識し、将来を明確に見通すならば、ドツジ氏に指摘されるまでもなく、事態は財政金融に対して高度な計画と統制を必要とするのみならず、更に稀少物資は勿論、電気、石炭、鉄鋼などの基礎物資と主食だけは、精密な計画と民主的な統制を要求され、総合的にして計画的な経済政策への転換が強く要望されておることは、余りにも明白であります。然るに自由党政府は、その自由経済のイデオロギーにとらわれて、この必要な政策転換を決意できず、時代の推移に逆行するために、事態をますます混乱に陷れつつあります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)池田大蔵大臣は、この補正予算を日本の黎明予算であると誇つておりますが、むしろ、お先真つ暗なたそがれ予算と言わざるを得ません。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)この点こそ我々が根本的に反対するところであります。  私は補正予算に対する数々の反対理由を挙げて参りましたが、要するにこの補正予算は、物価騰貴を通じて国民大衆から仮借なく收奪し、それを講和関係費や治安維持費に振向け、国民生活を犠牲にして、我が国を警察国家、隷属国家へ導くものと言わざるを得ません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)さればこそ我々は、この補正予算に断乎反対をいたし、根本的な組替えを要求するものであります。(拍手
  56. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 石原幹市郎君。    〔石原幹市郎君登壇拍手
  57. 石原幹市郎

    ○石原幹市郎君 私は只今議題となつておりまする予算補正の三案に対し、自由党を代表して賛成の意を表せんとするものであります。  国民待望の平和條約も去る九月その調印を終え、更に先般圧倒的多数を以て衆参両院の承認を得、批准の手続を了し、いよいよ我が国がその主権を回復して、再び国際社会に復帰することのできる日の間近となりましたことは、我々の心から喜びとするところであります。(「嘘だ」「とんでもないことを言うなあ」「默つて聞け」と呼ぶ者あり)本補正予算はこの平和條約締結後の新情勢に対処し、飽くまで健全な経済を営みつつ、経済基盤の充実と国民生活の安定を図ることを目的として、明二十七年度予算と一体的構想の下に、緊急止むを得ざるものを重点的に取上げ、編成せられたものでありまして、(「嘘です」「默つて聞け」と呼ぶ者あり)従つて先ず第一に、講和に伴う諸般の措置を講ずると共に、本年当初予算において堅持いたしました財政收支の均衡、国民負担の調整軽減、産業の育成合理化のための政府資金の活用等の方針を、更に着実に、更に堅実に貫徹せんとするものでありまして、(「みんな嘘」と呼ぶ者あり)現内閣の財政経済施策の不動の信念を示すものと確信するものであります。(拍手)  先ず第一に、講和に伴う諸般の措置といたしましては、終戰処理費は去る七月一日以降所要経費のほぼ半ばを米国が負担することとなつたため、百七十五億円の減少が見込まれるのでありますが、一方、連合軍に提供する物資、役務等の調達のため設けられた特別調達資金に七十五億を繰入れることとしてあることであります。更に平和回復善後処理費として百億円を計上して諸事態の発生に備え、又国際経済参加の準備のために国際通貨基金及び国際復興開発銀行に対する出資二百億円を予定計上しております。又独立回復に関連いたしまして、国内治安確保に関する経費として(「再軍備だ」と呼ぶ者あり)警察予備隊の裝備充実等のため百五十億を、国家地方警察の増員及び給與改善等のため三十六億円を計上して、講和受入体制に万遺漏なきを期しているのであります。更に今回の補正予算において、遺家族等援護調査費として一億円を計上し、今後遺家族、傷痍軍人、留守家族等、戰争被害者のかたがたに対し国家として援護の手を伸ばさんとする準備措置が講ぜられておりますことは、これ又、我が国の平和回復に伴うものであり、終戰後長らく不遇に置かれましたこれらの人々の身上を思い、御同慶に堪えざるところでありまして、衷心より賛意を表すると共に、明二十七年度においては一層の善処を要望するものであります。  次に、財政收支の均衡、国民負担の調整軽減の面より本予算検討いたしまするに、財政の規模が当初予算より一千三百六十二億円増加して総額八千億近くになりましたが、国民所得の増加により租税收入等が著しく増加いたしましたため、これによつて右の歳出増加を賄うことができたのでありまして、(「増税ですね」と呼ぶ者あり)財政收支の均衡は嚴然として維持されておるのみならず、(「減税でなくて増税だよ」と呼ぶ者あり)更に進んで税制において我が党の公約せる減税を実行しておるのであります。(「嘘だ嘘だ」「その通り」と呼ぶ者あり)即ち所得税におきましては、基礎控除額及び扶養控除額の引上げ、税率の調整を行なつて国民負担軽減し、更に退職所得について大幅に軽減合理化して、勤労意欲の向上と国民生活の安定を図つております。又法人税については、最近の法人企業の情勢に鑑み、税率を若干引上げる一方、徴收猶予の制度退職手当積立金の損金算入、特別償却制度合理化等、社内保留の助成策を講じ、適切なる資本蓄積策を図ると共に歳入の増加を期しておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)かくして本年度の減税額は四百五億円となりまするが、これを明年度について平年計算いたしますると、所得税は約一千億円の減税となり、法人税の増徴を差引いても八百億円程度の減税となるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)政府は昨年来二回に亘つて租税の軽減を実行して来たのでありまするが、最近における物価事情等に鑑み、今回更にその合理的軽減調整を断行いたしましたことは、現内閣の数多き功績のうち(笑声、拍手)特筆すべきものの一つと言うべく、心から賛意を表するところであります。  更に、産業育成合理化の面についてこれを見るに、政府の出資及び投資等一連の金融施策により、現内閣の基本政策であるインフレーシヨンの抑制に特段の配意を加えつつ、而も産業の発展に必要なる資金を確保し、産業及び貿易の拡大を図り、我が国経済の健全なる発展と国民生活水準の維持向上を期することを主眼としておることが極めて明確に示されておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)即ち、一般会計においては、国民金融公庫、農林漁業資金融通、糸価安定等、庶民、中小企業、農林漁業に対して百二十億円、積雪寒冷單作地帶対策、未開発森林資源開発等のために約三十億、更に又日本輸出銀行に対し二十億、又日本開発銀行に対し七十億を出資し、輸出産業及び経済開発資金、特に電源開発等への積極的拡充を図つておるのであります。その他、住宅金融公庫に対しても一般会計並びに資金運用部より合計六十億円を融資し、庶民の住宅確保に資しております。これらはいずれも適切緊要なるものでありまして、資金を最も効率的に活用せるものと言うべく、賛意を表するところでありまするが、(「平衡交付金はどうだ」と呼ぶ者あり)政府は更に最近の電力事情等に鑑み、電源開発に対しては一段の考慮を拂われたく、又食糧増産確保の見地より、積雪寒冷地帶対策、その他食糧増産施策に一段の善処を要望するものであります。  更に又、貿易規模の拡大等による円資金の不足に対処するため、外国為替資金特別会計への繰入を三百億増加し、食糧管理特別会計へ百億の繰入を行なつて、食糧価格の改訂等に伴う運転資金の不足額を補填しておりまするが、これらはいずれもインフレ抑止の安全弁としてのインベントリー・フアイナンスを当初予算に引続き実行せんとする現政府の不動の方針を示すものでありまして、これ又賛意を表するところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その他、地方財政の調整につきましても平衡交付金百億円を増加計上し、別に資金運用部資金による起債の枠百億円を増額するの措置が講ぜられ、地方財政に対し多分の考慮が拂われておるのではありまするが、更に国会並びに地方自治団体の要望するところに従い、地方財政の現状に一段と検討を加え、国の財政状態と睨み合せつつ適切なる措置を講ずる旨の所信開陳がありましたので、今後の善処を要望いたしまして賛意を表するものであります。(「何もやらないぞ」と呼ぶ者あり)  次に、一般会計、特別会計及び政府関係機関を通じて行わんとする公務員の給與改善の問題でありまするが、これ又最近の生計費の上昇に対応いたしましてその引上げの必要あることを認め、本年十月に遡つて月額平均一千五百円の引上げを実行するためそれぞれその所要経費を追加計上いたしております。本措置は、財源問題とも見合せ、所得税軽減措置等をも考慮に加え、人事院の勧告の趣旨をでき得る限り尊重しての措置でありまして、これ又賛意を表するところであります。特に公務員の年末手当についても補正増額するの機宜の措置が講ぜられておりますことは、理解ある適切なるものと考えるものであります。もとより公務員の給與はこれを以て足れりとするものではありませんが、現下の財政事情においては許す限りの最大引上げが行われたものと考え、現段階においては一応納得すべきものと信ずるものであります。  更に、一方、現在の行政事務実情に即しましてその簡素化を図ると同時に、国民負担軽減に資するため行政整理を行うことになりましたことは、時代の要求するところであると思うのであります。これによつて平年度におきましては相当額の国費が節約されるわけであります。(「計算してみたらどうです」と呼ぶ者あり)併し整理されるかたがたに対しましては今後退職金支給及び就職の斡旋等に万遺漏なきように政府に要望する次第であります。  以上を要するに、本補正予算は、占領下において昭和二十四年度以来一貫して踏襲して参りました財政経済政策を基調として編成せられた当初予算に対し、平和條約の調印批准という待望の事態に当面し、講和受入れの態勢を整備せんとすることを基本とし、これに付随する一連の緊急止むを得ざる施策が盛り込まれたものでありまして、本補正予算趣旨は当然明昭和二十七年度予算に引継がるべきものでありまして、その効果は昭和二十七年以降に期待し得られるものと信ずるのであります。以上の観点より私は本補正予算三案に対しましては全面的に賛意を表するもので、本予算案を実効あらしむるためには、国民各位の協力こそ第一に要望さるべきものと確信し、議員各位の御賛同を希望する次第であります。(「お先棒演説」「千葉君わかつたか」「わからないな、お先棒演説だよ」と呼ぶ者あり)
  58. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 松浦清一君。    〔松浦清一君登壇拍手
  59. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は只今上程されました昭和二十六年度神正予算に対し、日本社会党を代表いたしまして、以下述べる理由により、一括反対の意を表明すると共に、これが組替えを要求するものであります。(拍手)  我が党の本予算に対する態度につきましては、先に池田大蔵大臣の財政演説に対する質疑におきまして、又本日の予算委員会における討論の過程において、同僚波多野委員から極めて詳細に表明せられており、時間の関係等もございまするので、努めてその要点のみを簡潔に申述べることにいたします。  先ず本補正予算に反対しなければならない第一の理由は、政府の信奉いたしまする自由主義政策の欠陷が極めて明瞭に現われておるという点であります。その事実を最も端的に指摘できるものといたしましては、この米麦の統制撤廃の問題がございます。政府統制を廃止することによりまして農業生産を増加し、消費者に対しては合理的な食生活を保証し、国民経済発展の基礎となるということを理由といたしておりますが、事実そのような見通しと確乎たる裏付けについて国民の納得ができていたといたしまするならば、ドツジ氏によつて表明されました強硬な反対意見によつてあえなく腰碎けするというようなことはなかつたと思うのであります。(拍手)又、統制が廃止されることによりまして国民生活の不安が増大し、結果的には生産者も消費者も商業資本の餌食になるだけであるということで、全国的に澎湃たる反対の狼火は上らなかつたはずであります。ここに現在の経済情勢に即応しない自由主義政策の破綻欠陷の実相がまざまざと窺われるのであります。(拍手政府国民の真摯な且つ常識的な反撃に抗し切れずして、一応主食統制撤廃強行論の鋒先を收めはしましたが、自由販売を前提とした本補正予算における財政面の修正につきましては、何らの措置も講じない、頬かむりのまま放置しているのが実情であつて、この点、納得ができないのであります。いま一つ顯著な問題として、池田大蔵大臣は、本補正予算の編成に当り四百億の減税を図つて国民生活の安定のために努力をしたと申しておりますが、それは外面だけでありまして、その中身は誠にお粗末な内容でございます。而もその財源としては自然増收を見込んでという高い代償を国民のふところから吸い上げようとしていることは御了承の通りであります。従つて四百億の減税というものは、実質的には水増し課税によるいわゆる数字いじりの税法上の減税であつて、名目にしか過ぎないのであります。政治は現実であります。国民の台所に直結した実相が、率直に政治に反映されることが真の民主政治の姿であることは、言うまでもございません。然るに池田蔵相の言われている法人税及び源泉徴收による所得税の自然増收によつて得られると見込んでおられまする千五百億の内容も、つぶさに検討をいたしてみますると、これは一般物価の五〇%値上り、電気料金、ガス料金、郵便料金、運賃その他生活必需物資の値上げによつて必然的に起つて来た大衆の負担増による自然増收なのであります。(拍手、「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)池田蔵相は減税々々と申しますが、この生活費の増嵩によつて減税の効果を受け得ない広汎な国民大衆のあることをお忘れになつておるのであります。(拍手)これらの人たちにとつては、電気料金とか、ガス料金等の公課の値上りによつて、生活の実態は却つて負担増となつておるのであります。高額所得者には減税の恩惠はありましても、少額所得者の一般勤労大衆、貧困者、失業者等には実質的な増税が図られているのであつて、何ら公課引上げによる負担が緩和されていないというのが実態であります。(拍手)この公課の負担増につきましては、国民の大半を占める農家経済について見ましても、それが農地改革前の小作料とほぼ匹敵する高さにまで上つておるのであります。肥料、農機具、農家必需物資の値上げ等の事実から見ましても、農家経済の安定など絶対にあり得ないと言つても過言ではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)以上申述べましたように、今日の我が国経済情勢に決して順応していない自由主義政策の隘路が極めて如実に現わておるのが反対の第一点であります。  第二は、公務員の給與改訂についてであります。公務員の給與改訂費について見ますると、政府人事院の勧告、即ち一万一千二百六十三円ベースの勧告を無視いたしまして、僅かに千五百円のベース・アツプで頬被りをいたしております。これでは、公務員から何のために罷業権まで奪い、その生活保障をするための機関として人事院を設けたのか。現状においてはその存在意義というものが全然否定されていると言つても過言ではありません。少くとも人事院のような民主的な機関を設けた以上、その勧告というものは飽くまでも尊重されるべきであり、民主政治の本姿もそこに初めて見受けられると思うのであります。待遇に関しましては、ただ参考のために聞き置く程度機関であり、役人の能力試験をするための機関であるとするならば、わざわざこのような機関を設置する必要もなかつたのであります。公務員の罷業権を奪い、団体交渉権すら認めないで、その苦情を処理し、文句がないようにいたし、一意、国の公僕として働けるようにするためには、公的な機関として設けられた人事院制度は、最も尊重せられなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)それが公務員をして国民の公僕として一意精励せしめるただ一つの道であります。この公務員のベース・アツプに関する補正が、我々の最低線において妥当と認められる人事院の勧告を無視いたしておることが反対の第二点であります。又国鉄、專売等の裁定につきましても当初より尊重する態度を示さなかつたのは、民主的にして平和的解決処理を図る公的機関を無税した反動性の現われであつて、断じて承服のできないところであります。(拍手)  第三には、ドツジ均衡財政を信奉するということを全面的に私どもは否定はいたしませんが、この予算全体を通じて流れている思想は、国民所得の中から最大苛酷な租税を吸收いたしまして、これを日本経済の発展に寄與する産業資金に充当して行くならばまだしもでありますが、政府は極く僅かな資金の放出にさえ極めて臆病であります。自立経済の基幹としての産業の育成発展に対する積極性が欠如いたしております。その一例として現下の電力危機打開の方策として見返資金百億円を案出いたしましたことは九牛の一毛に値いするといたしましても、第七次後期造船に対する融資のごときは見返資金僅かに三十五億。池田蔵相は一万田日銀総裁と共謀いたしまして市中銀行融資を極度に抑制をいたし、当初二十万トン建造の計画は破れ、十五万トンもすでに夢となり、蔵相数回の言明から推して、なお一歩も前進しないとすれば、十万トンの建造も困難となりつつあるのが現状であります。日本経済自立の必須要件たる商船隊の拡充こそは焦眉の急であります。この焦眉の急たることを十分認識しながら、資金がないから船を造れないと言われるのであります。果してその資金がないのでありましようか。(「ないことはない」と呼ぶ者あり)予算書を調べてみますると、見返資金の中にはちやんと再建及び安定費として五百一億円が計上せられております。而もその金が古い国債の買入に四百九十億使われるようになつている事実を見ましても、政府は我が国の産業の再建、自立経済の達成の方途について大きな見当違いをされていることがわかるのであります。(拍手)これが反対の第三点であります。  第四に、本予算は地方自治体の財政を破綻に陷れるものであるという点であります。我が国民主政治の基盤ともいうべき地方自治体の財政確立につきましては、その平衡交付金の増額につき、曾つて全国知事会議が五百七十億の財源措置は当然国がなすべきだとして要求を出しているごとく、政府も地方財政の窮乏を率直に認め、平衡交付金は百億、地方債百億の増額を決定いたしましたが、未措置分の増額補正という強い要望が国家財政の現状から実現されないという段階においては、少くとも地財委の要請程度の増額は絶対に必要であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)地方自治法の施行により国家事務が次々と地方自治体に委讓された今日におきましては、国家が必要経費を見てやるということは当然であります。事務は地方に委讓し必要経費を與えないために、今日の地方自治体はその財政窮乏の極に達して、みずから崩壞の一歩手前にあるのであります。このことは自治体警察の返上、国家警察への集中拡大への傾向の中に容易に看取できるのであります。警察国家再現の兆が極めて顯著であると言い得るのでございます。平衡交付金の百億の枠内で解決しなければならない地方公務員のベース・アツプの問題、六三制の問題、その他、公共事業費等は全く画餅に帰せざるを得なくなり、ここに地方財政瓦解の起因が存するのであります。  第五には、政府の失政の跡始末の予算であるという点であります。外国為替資金三百億の出資理由を究めて参りますと、昨年改訂した日英通商協定の不手際な結果がはつきりと現われておるのであります。我が国外国為替貿易の基本性格は、輸入はドル地域から、輸出はポンド地域へという性格を持つているのであります。従つて貿易を増大するためには、輸出代金たるポンドをドルに振替える措置が是非とも肝要であります。このことは何人も認めざるを得ない点であります。それ故に、従来の日英協定では、ドル條項なるものを入れて、この振替可能の道を開いてあつたのであります。ところが昨年の通商協定改訂に当り、英国側に圧迫されて、このドル條項廃棄を余儀なくされましたが、このことは我が国が英国の為替政策の犠牲となつたということであります。その結果、手持のポンドのみが多くなり、原料輸入、食糧輸入に必要なドル不足の状態を来たして参つたのであります。(「アメリカから買わんでもいいじやないか」と呼ぶ者あり)蔵相は国際收支が非常に改善されたと、そのことを誇つておりますが、現状は外国貿易がだんだん萎縮の傾向を辿りつつあることには目を蔽い隠すことはできないのであります。昨年の日英通商協定は、日本が独立国扱いを受けて、独自の立場で英国と交渉をしてできた協定であり、この協定の失敗がここに補正予算に現われて、国民の血税三百億円を投ぜざるを得ない羽目に陷つたのであります。この三百億の外国為替資金は、政府の失政の尻拭い予算であることが明白であります。(拍手)  第六点といたしまして、これで最後の反対理由とするわけでありますが、この予算は全体を通じて国民生活の不安を増大する予算であるということであります。本国会において、講和、安保の両條約が可決承認せられ、我が国の独立がいよいよ明日の彼岸に控えておりますことを考えますとき、先ず第一に検討しなければならない問題は、如何にして民生の安定を確保するかということであります。ところが冒頭でも申述べましたように、本予算は時代錯誤も甚だしい自由経済の思想で貫かれ、国際的にも、国内的にも、現在の窮迫した経済情勢打開の方途、計画性が欠けておるのでありまして、そこには不安と焦慮こそあれ、蔵相が意図したような経済基礎の充実と国民生活の安定など図られていないのである。(拍手、「アメリカの軍事基地だ、きまつている」と呼ぶ者あり)歳出の面で、国内自衛の軍事的強化と見られる警察予備隊費として百五十億が計上されておりますが、(「再軍備だ」と呼ぶ者あり)このことは何を物語るかと言えば、社会不安の起り得る要因が国の内外に多分に看取されるということを証明する以外の何ものでもないのであります。他面、勤労大衆の生活実態に触れて見まするならば、その收入において朝鮮動乱以来僅かに一八%の増加に過ぎないにもかかわらず、一般物価の値上りは五〇%に達しております。賃金は物価に比例せず、労働は強化せられ、又電気料金その他公課の引上げに、その生活は非常な重圧を受けておるのが現状であります。これらの生活に喘いでおる人々に対しては、社会保障費の増額によつて、その生活の安定を図らなければならないにもかかわらず、本補正予算では、僅かに社会保險費の一億八千、結核対策費の三億五千、生活保護費のごときは全くゼロでありまして、警察予備隊費、国警費、海上保安庁費の合計百九億と比較して、全く問題にならないのであります。国民生活の安定ということで、いま一つ大事な問題は、戰歿軍人軍属の遺家族並びに戰傷病者等の援護の問題であります。本補正予算中には調査を行う費用として一億計上しておるだけであります。終戰以来六年を迎えた今日において、調査費くらいではいささか了解に苦しむものであります。今回の補正予算にはすでに具体的な数字が現われて来ておらねばならないものであり、このような方策が速かにとられなければならなかつたにもかかわらず、さながら等閑視されておるかの感が深いのは、警察費的なものを増大しても、一方、戰争犠牲者に対する生活擁護の面に考慮がなされておらない証拠であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この予算は、ますます警察国家的な傾向に移行せざるを得ない要素を多分に盛つた予算であります。  以上六つの点について申述べましたように、本補正三予算は、国民をして政府の冷酷な政治的態度に戰慄を感ぜしむるものであり、(「その通り」と呼ぶ者あり)人間性を沒却した、大衆の怒りの前に粉碎せらるべき予算であります。(拍手)それ故に、私は本予算に対し全面的な組替えを要求し、断乎反対するものであります。(拍手
  60. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 藤野繁雄君。    〔藤野繁雄君登壇拍手
  61. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 私は、只今上程せられました三補正予算案は、すでに予算委員会においても十分指摘せられましたごとく、不満足の点も少くないのでありますが、(「反対しなさい」と呼ぶ者あり)国家公務員のベース・アツプその他緊急を要する案件を含んでおりますので、次に若干の要望を附して賛成するものであります。(拍手)  先ず第一の要望は綱紀の粛正であります。戰後一般的に道義の頽廃したことは遺憾でありますが、分けても国の行政を預つておる者において綱紀の頽廃紊乱の甚だしきを見るに至つては、誠に慨歎に堪えないのであります。(「吉田政府の功績だ」と呼ぶ者あり)講和條約の締結を機として独立国家としての苦難の道を歩まなければならない我が国にとつては、国民道義高揚は自立経済の達成と共に最も基本的にして重要な課題であります。而して国民道義の高揚には先ず公務員の綱紀粛正がその根本とならねばなりません。政府がこの際先ず綱紀の粛正政策の根本に掲げ、徹底的に粛正の実を挙げるならば、おのずから経費節約となり、人員も淘汰せられる結果となります。これは又、大多数の国民の切なる要望に応えるゆえんでもあります。そこで、先ず、この綱紀の粛正を徹底すると共に、不正行為の防止することができるような予算措置を講じ、次いで行政機構の整備と事務簡素化に進むべきであると思われます。政府の善処を切望してやみません。(「取替えたほうがいいよ」と呼ぶ者あり)  第二の要望は、国の政策決定に当りましては、飽くまでも愼重に、且つ一貫性を保持してもらいたいということであります。(「然り然り」と呼ぶ者あり)即ち、政府は臨時的な顧問或いは諮問委員会等を設けて重要施策の決定にあずからしめておられるようでありますが、民間の衆智を集め、これを活用されるごとについては賛成を表するものでありますが、併しながらその選定は飽くまでも愼重且つ偏することなく、あまねく人材を網羅して万全を期することが必要であると思います。と同時に、これら委員会等を一方に作るかと思えば他方に廃し、而もそのたびごとに政策が左右されることは、最も戒めねばならぬところであります。そこで、人選及び運営に当つては一段の愼重を期せられたいと思うのであります。  第三は主食の統制撤廃問題であります。(「しつかり」と呼ぶ者あり)政府の無準備な主食の統制撤廃がドツジ氏の警告等によつて一時棚上げになつたことは、誠に当然の帰結と言うべきでありましよう。併しながらこのたび政府の失態により無用の混乱と不安を招き、ために農家の供出意欲は停滯し、消費者も又動搖を来たした現実に対しては、政府は率直にその政治的責任を反省し、これに対する善後措置及び将来の対策については万遺憾なきを期せねばなりません。(「取替えろ」と呼ぶ者あり)来年度予算編成に当り、政府は主食統制撤廃を期して進んでいられるようでありますが、愼重且つ具体的な善後措置検討したる後、一方的に政令等によつて強行することなく、万人の納得する法的措置について国会審議を待つべきものであります。又一日も早く統制撤廃の時期と方法とを明確にし、公正なる国民の世論に応えるよう政府の反省と善処を望んでやみません。  第四は、国民生活の安定と産業の維持振興についてであります。(「無理ですよ」と呼ぶ者あり)政府は今回の税制改革により四百七億円の減税を実施すると強調しておりますが、これはいわゆる税法上の減税であつて、特筆するに値いしないものと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)而も一方において、生活必需品たる主食、電力、ガス、水道料金を初め、交通、通信費その他、著しい物価の上昇のため、生活費の高騰を見つつある現状においては、実質的には單に物価上昇に対する税制の追随に過ぎず、実質的な減税の効果は期待できぬ現状であります。そこで政府は、先ず国民生活安定の基盤として、物価の安定と物資の確保について拔本塞源的な対策を講ずることがこの際必要であると思いますと同時に、税負担がその限界に達している実情に鑑み、今後の減税の実質的確保に努力せられると共に、減税の恩典に浴することができない多数の人々のための社会福祉施設(「それもできません」と呼ぶ者あり)及び戰争犠牲者施設を(「それもできません」「默れ」「靜かにしろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)講ぜられることを望んでやみません。(「できませんよ」と呼ぶ者あり)而して来年度予算においては講和関係費が相当多額に上ることが予想せられるのでありますが、これがため他の国内諸経費を不当に削減することともなれば、我が国の産業の振興或いは民生安定に支障を来たすこととなる次第でありますから、政府としてはさようのことのないように(「不可能だ」「うるさいぞ」「やつてみなさい」と呼ぶ者あり)十分考慮せられたいのであります。  第五に、今回の予算委員会においても最も論義の焦点となり、特に小委員会まで設けて検討した地方財政平衡交付金の問題であります。我々は地方財政委員会の勧告を至当と認めた衆参両院の決議に基き、百億円の増額について最後まで修正努力をいたしたのでありますが、遂に関係当局の了解を得るに至らなかつたことは誠に遺憾に堪えません。勿論地方財政の現状にも批判さるべき点が少くないことは我々も又これを認めるに吝かではあかませんが、併しながら当面破綻に瀕しておる地方財政をこのまま放置することは到底許されないところであります。(「どうしますか」と呼ぶ者あり)従来、地方団体の財政上、経済上の現金不足については、国の財政資金としては短期融資の制度がありますが、これは見合いとなる確定收入の存在を前提とするものであり、現在問題となつておる純然たる赤字に対する緊急融資とは性質を異にするものでありますから、この差異あることによつて、その実現性については大いに心配するものでありますが、当の責任者である池田大蔵大臣より、この点については個々の地方団体の財政收支の状況により必ず適当に善処する旨の確約を得たので、本問題も一応の解決を得たものと考えられますが、政府は地方財政の現況を的確に把握せられると共に、将来の地方税制改革、その他、地方自治の基本たる地方財政確立に遺憾なきを期せられたいのであります。(「当てにならんぞ、無理だ」と呼ぶ者あり)  最後に、今回のルース台風による被害額は六百億円強に達し、これに対する手当として、政府においては、当初予算八十億円の残り二十五億円全額をこれに充て、更に五十億円の融資を決定せられたとのことでありますが、政府は十一月十四日の本院の決議を体し、速かに適切な予算措置を講じ、罹災地の迅速な復旧を図ると共に、更に進んで恒久的な災害の防除復旧対策を樹立されたいのであります。  以上、要望の主なる点を指摘したのでありますが、(「反対」と呼ぶ者あり)これらに関する政府の善処を期待し、三補正予算賛成いたすものであります。(拍手
  62. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 櫻内義雄君。    〔櫻内義雄君登壇拍手
  63. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 私は国民民主党を代表いたしまして、只今議題となつております昭和二十六年度予算補正の三案に対し反対の意を表明いたします。(拍手)  平和條約の発効後の我が国の財政は各種の困難な問題が予想せられ、新たに幾多の負担が加重せられることは当然覚悟しなければなりません。大蔵大臣もこのことは指摘せられておるのでありますが、予算審議を通じましてはそれとは全く反対の楽観論に立ち、而も重要施策の面で馬脚を現わしておるのであります。その最も顯著なる問題は、本国会において野党が挙げて痛論いたしました米穀統制撤廃についての失敗であります。本年度の作柄不良にもかかわらず不用意に統制撤廃を強行せんといたしましたが、ドツジ氏との折衝において、司令部をも国民をも納得せしむる根抵のなきことを暴露いたしたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これがため、供出割当二千五百五十万石の遂行が危ぶまれ、他面、輸入食糧については、東南アジア方面よりの輸入については同地方の政情不安のため多くを期待することはできず、加州米の輸入については、値段の高いため多額の補給金を要し、或いはアメリカの海運統制の強化によつて阻まれることを知らなければなりません。これらの事情は今や食糧不安を釀し、又統制中止の波及するところは、定員法改正案に見られるような無定見振りを発揮し、且つ食糧関係を初めとする引続き在職する政府職員の給與については、退職金その他を流用するの不手際を余儀なくするがごとく、政府施策について国民各層は大きな不信感を抱くに至つたのであります。(拍手、「その通り」「総辞職を要求する」と呼ぶ者あり)  政府は米国を初めとして友好諸国との経済協力乃至は東南アジア地域の開発への参加等を通じまして、我が国経済を発展せしめ得る機会が開けておると言われておりますが、(「空念仏だ」と呼ぶ者あり)果してそうでありましようか。米国よりの対日援助はすでに打切りとなり、又外資導入については、サンフランシスコより帰られた大蔵大臣も、或いは日銀総裁も、受入態勢が整わざる限り見込なきことを痛感せられたのであります。又最近においては日英通商協定の締結の際にドル條項が廃止されるという失敗をなし、その結果ポンド過剩に悩み、輸入が予期のごとく進捗いたしませんので、補正予算において外為会計へ三百億円の繰入れを行なつておるのであります。東南アジア地域の開発については、通産大臣がはつきり言われたごとく、ゴアの鉄鉱についての契約ができた以上には何ものもないのが現状であります。中共貿易の困難性については、今更申上げるまでもなく、本年の一月から九月までの間に僅か六百二十四万ドルの輸出ができただけであります。  講和後の負担増加につき検討を加えますならば、外債は本年三月末現在に四億四千八百万ドル余となつており、差迫つて返済を要するものは邦貨で八百八十億円あります。賠償についてはフイリピンの八十億ドルの要求を中心として莫大なる額が予想せられ、援助資金二十億ドルの返済や連合国財産の補償等の合計は、年額少くとも一千億円を予定されております。一方、国内的の経費増加としては、戰争犠牲者の援護費や在外資産に対する補償は、その合計額は二百億円程度を必要とし、防衛分担金は、予備隊費、海上保安庁費を合計いたしますと、仮に防衛分担金は現在までの終戰処理費と見合うものといたしますならば、本年度と同額を見積りましても一千百五十億円になるのでありますが、昨今伝えられるところによれば二千億円は必要であると言われております。  曾つては竹馬経済でありました我が国の経済は、内外とも負担の増加を来たすのでありまして、これらの裏付けなき支出を要することは、その実態は、さながら両足を切断した、いざり経済の様相を呈しているのであります。かく申上げて参りますならば、あらゆる点から見まして何ら楽観するべき点は見出せないのでありまして、(拍手)本来ならば今こそ独立日本の第一歩を緊張裡に踏み出さねばならんと存じます。大蔵大臣は、今国会の劈頭、国際的な視野において経済全体の問題を考え、祖国再建のために更に一段の努力をいたすと誓われたのでありますが、(「空念仏」と呼ぶ者あり)この誓約は一カ月半で全く空虚なものであることを暴露いたしたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)かかる見地から本予算案については反対せざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  先ず最初に歳入面を中心として検討いたしますと、本年度当初予算の提出に際しては、財政規模の縮小と減税を誇示せられたのでありますが、本予算補正に際しては、当初予算額六千五百七十四億円は一躍七千九百三十七億円とはね上り、千三百六十二億円の財政規模は拡大せられ、戰後最大の予算となつたのであります。租税及び印紙收入の自然増收は千五百六十八億円に及び、そのうち所得税は五百二十五億円、法人税は八百五十四億円の自然増收となつております。一方、所得税法の改正により四百七億円の減税とはなりますが、その実態は如何でありましようか。国民所得の増加は、安定本部の計算によれば、年初予算補正予算の間で一割五分余の増加と推定せられるのに対しまして、法人税は当初予算に対し一三五%の増加であり、源泉所得税は五五%の増加となつており、この自然増收は当初税收入の三五%に及ぶのであります。而も八月以降電気三割、米二割、食塩一・九割、十一月より運賃が旅客二割五分、貨物運賃三割、郵便葉書、水道料金、ガス料金の各二割の値上りを考えますならば、一千五百六十八億円の自然増收は明らかに物価騰貴の結果でありまして、実質的に国民所得が増大した結果とは断じて言えないのであります。(拍手、「その通り」「やれやれ」と呼ぶ者あり)財政規模の縮小と物価が騰貴せざる場合に初めて実質的の減税となるのであつて、今回のごとく自然増收に対して二割六分の減税を行なつたのでは意味をなさないのであります。更に減税の効果を受け得ない広汎な庶民階級があります。即ち大蔵省の推定による国民総所得は四兆五千四十億であり、このうちで納税者以外の総所得は二兆四百三十九億円となつております。これらの所得の人たちにとりましては公課類の引上げが負担増加となつて現われるのでありまして、少額所得者、貧困者、失業者にとつては事実上の増税と言わねばなりません。減税の美名の下に惑わす現内閣のごとき大衆無視の政治は断乎排撃せねばなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)法人税の引上げについては中小企業者に対する影響を恐れるものであります。即ち税率二五%から四二%への引上げは、地方税を損金に落して合計をしてみまするに、四六・六五%の従来の税率は五二・九%への引上げになるのであります。朝鮮動乱による一時的好況によつて一部惠まれたる会社を対象として、現在稼行中の二十三万八千余の会社全般に及ぶ法人税の引上げは考えるべきでありまして、少くも業種別引上げの特例を行う程度にすべきであると思うのであります。(拍手)  次に歳出面についてその欠陷を指摘し、我が党の立場を明らかにいたしたいと思います。  第一には、外為特別会計への繰入三百億円及び食糧管理特別会計への繰入百億円は、いわゆるインベントリー・フアイナンスの継続であつて、当初予算と合計するならば実に九百億円に及ぶものであります。本来これらの繰入は資金運用上の問題であつて国民の租税收入によつて補填すべきや否やは嚴に批判されるべきであります。(拍手)本予算補正には、更に同性質の国際通貨基金及び国際開発銀行への出資金二百億円、特別調達資金へ七十五億円の繰入等がありまして、その総額は補正予算に計上されるだけでも六百七十五億円に及ぶのであります。特に国際通貨基金及び国際開発銀行への出資は、本年度中に必要ありや否やは全く未確定の歳出であります。  第二は、平和回復善後処理費でありますが、審議に際してこれが使途は未確定であることが明らかでありまして、来年度へ多額の繰越があるものと認められるのでありますから、五十億円程度は他の緊急な面に使用せらるべきであると考えます。  第三には、地方財政の現状を検討して参りますときに、国会挙げて要望し決議いたしました平衡交付金の増額は当然容れらるべきであります。司令部の関係もありまして、財源難との理由の下に百億円の増加にとどまることは、何と言つても忍びがたき点であります。全国一万余の自治体を如何に育成し、民主主義の基盤である地方自治を徹底的に守るべきかは、講和独立後に備える我らの当然の任務であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手政府は今回の審議に際してしばしば露呈いたしました大蔵省と地方財政委員会の相剋対立については、地方自治に対する暗影として嚴に戒愼すべきことを申し添えます。第四には遺家族等の援護費でありますが、今回の予算面では僅か調査費一億円を計上したに過ぎないことは遺憾千万なことであります。総理大臣は本予算審議の際にその必要性を痛感せられたのでありますが、占領下特殊事情のために止むを得ないとの態度であられましたが、平和條約批准後の現在において、特にこの歳末を控えまして、一日も早く援護費を計上し、(「そうだ」と呼ぶ者あり)戰傷病者、遺族に対しては温かい手を差し伸べるべきであつたと痛感するものであります。(拍手)  第五には給與改訂の問題でありますが、人事院の勧告一万一千二百六十三円のベースは棚上げとなり、僅か千五百円のベース引上げで終らんとしております。我々は人事院の勧告を尊重するものでありまして、財源難に藉口されてしばしば勧告の無視せられることは遺憾に堪えないところであります。更に申上げるならば、高額所得者のベースは加減しても、低額所得者時に多数の扶養家族を有する者に対しては、一層の考慮が拂われるべきであると考えるものであります。(「いいとこあるぞ」と呼ぶ者あり)  第六には警察予備隊の費用でありますが、当初予算百六十億円に対して百五十億内という追加予算を組んだのでありますが、その内容は主として物品費百四億円の増加と施設費四十億円の増加となつておりますが、申上げるまでもなく人員増加によるものではなく、且つ兵器は米軍から貸與せられておるのでありまして、この方面の費用は必要がないのであります。審議の際、明らかにせられたのは、通信機械、測量用具、施設工事用具、車両、衛生材料、演習用品等でありまして、物品費が僅かな期間に百四億円の増加を必要とするがごときは当初予算編成の際の重大なる手落ちと言わねばなりません。(「そうだ」「再軍備だ」と呼ぶ者あり、拍手)  第七には、ルース台風の災害復旧費には総額四百億円乃至五百億円を必要とし、建設省並びに大蔵省で検討中であると言われておるのでありますが、かくのごとき復旧費は速かに予算措置を講ずべきであるにもかかわらず、伝えられるところでは、資金運用部より五十億円の融資を決定した程度でありまして、災害地のかたがたに申訳ないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)災害復旧は取りも直さず食糧の増産に最も密接な関係のあるものでありますから、機動性を発揮して、今回の補正予算に或る程度は当然間に合わすべきであつたのであります。この災害復旧費に関連して考えさせられますのは、農林漁業特別会計の六十億円の増加は更に増額すべきだということであります。審議に当り五十億円は不足することが明らかになつておりますし、台風による九州、中国の農漁村の受けた損害の甚大であることを考えますときに、一層の考慮が望ましいのであります。  最後に申上げたいことは、我が国民民主党は、今回の予算補正に際して少くとも歳入面において、平和回復善後処理費より五十億円、国際通貨基金及び国際復興開発銀行出資より五十億円を削り、外国為替資金特別会計繰入減により百三十億円、食糧管理特別会計予備費より五十四億円、法人税引上げ中止により二億円を、合計二百八十六億円を財源として、新たに歳出として地方平衡交付金の増額百億円、食糧増産のために土地改良費の増額二十億円、ルース台風の災害復旧緊急費三十億円、国民健康保險補助費二十五億円、戰争犠牲者援護費五十億円、給與改善費六十一億円の合計二百八十六億円の組替えを要求するものであり、以上最も重要なる点のみを指摘いたしまして、本予算補正三案に対し反対をするものであります。(拍手
  64. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 矢嶋三義君。    〔矢嶋三義君登壇拍手
  65. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は只今上程されておりまする予算補正の三案に対しまして、第一クラブを代表いたしまして一括反対の意思を表明せんとするものであります。(拍手)  平和條約並びに日米安全保障條約発効後の明年度予算については、全国民ひとしく重大なる関心を寄せるところでありまして、焦点は警察予備隊経費と安保分担金を主柱とするところの講和関係費がどの程度に落ち着くかにあるのであります。明年度の予算案は現在政府において検討されておりまするが、伝えられるところでは、政府は歳入の限度額を約八千五百億円程度とし、歳出をこの枠内に圧縮して、国内関係費は補正後の予算内容程度に抑え、警察予備隊経費を含む防衛費を主柱とする講和関係費を二千億円程度にて処理したいと当初考えられたように架せられまするが、その後相次ぐ米国高官の訪日以来、警察予備隊並びに海上保安庁経費を含む防衛費は、政府の予想額を遙かに超えるやに伝えられているのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)再生産過程に入つて来ないところの消費的支出である賠償、外債支拂、連合国財産補償、対日援助費の返済、安保分担金、治安経費等が増加すれば、必然的に、国内関係費、特に公共事業費、文教費、産業費が真先に圧縮されてこれがインフレ要因となり、国民生活水準の切下げは必至であります。吉田首相並びに池田大蔵大臣は、たびたび賠償額並びに安保協定による分担金の支出は、我が国の経済自立を損わない範囲内において、更に国民生活水準を切下げない條件下に行われるものであると述べられて参りましたが、果してその公約が履行されるかどうかは極めて危ぶまれるところであります。最近ドツジ氏と折衝されて以来の池田大蔵大臣のお顏に窺える歴然たる苦悩の色は何を物語るものでありましようか。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)隷属的窮乏予算とならなければ讃辞を呈したいと存じます。講和態勢への過渡的性格を持つ本補正予算案は、池田大蔵大臣の申される安定と能率と発展とをもたらす黎明予算でもなければ、公約実現予算でもなく、明年度予想される軍事予算的性格の匂いふんぷんたる隷属的窮乏予算の第一版とも申すべきものであります。(拍手)これが私の反対の意を表明するゆえんでありまして、以下内容的に申上げたいと存じます。  当初予算額六千五百七十四億円を財政規模の縮小を実現したと大蔵大臣は大言壯語されたのでありましたが、補正後の額は実に七千九百三十七億円に達し、二十五年度に比し一九・四%増しとなつておるのであります。その補正率は二十五年度の〇・四七%に比し実に一七・一%の高率を示しております。その財源を法人税と源泉徴收の所得税の自然増收一千五百六十八億円に求め、日銀の金融操作により処理すべき外国為替特別会計国民の血税から三百億円を、更に食糧管理特別会計へ百億円を繰入れ、急がずもがなの未確定要素である国際通貨基金及び国際後興開発銀行への出資金二百億円を支出する等、多額の国民の血税を吸い上げ、明年の巨額な歳出財源に備え、更に警察予備隊の経費百五十億円、国家地方警察費三十六億四千万円、海上保安庁経費三億二千万円等、治安関係費に実に百八十九億六千万円を支出し、これに対し、社会保障的な経費約二十億円、教育文化費約五十五億円を計上するにとどまつていることで明瞭なように、(「おかしいぞ」と呼ぶ者あり)本予算案の執行は、多額の資金の政府吸い上げによつて、特に中小企業界の民間経済活動を阻害すると共に、社会保障政策を実質的に後退させ、教育文化の水準を低下、破壞に導き、国民勤労大衆の生活水準の低下を招来することは必定であります。国土開発、災害復旧、教育振興、民生安定のために早急に支出さるべき要求が山積しているにもかかわらず、国民の血税が真に建設的な方面に使用されていないことは、国民を窮乏に導くものでありまして、断乎反対せざるを得ないゆえんであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)我が国の経済基盤を固めるために最も重要緊急な電源開発の問題も、外資導入の甘い希望観測の下に、御承知のように国会審議権を無視して、強引な方途で電力再編成を敢行したが、期待は外れ、その後、計画的な何らの施策もなさず、貿易振興のための海運計画にも、石炭の増産の障害となつている鉱害対策に対しても、緊急的積極性を見出し得ないことは、誠に遺憾であります。  又政府国民生活の安定のために減税の公約実現をなしたと申しておりますが、法人税の七%引上げは、府県税と市町村民税とを加算すると、法人の担税率は実に六〇・三%に引上げられ、更に源泉所得税は年度内に約三百七億円軽減されるものの、他方、今年度自然増收が約五百七十九億円と見込まれているので、差引二百七十二億円の増收となり、全く税法上の減税に過ぎません。他方政府は、八月以降、電気、主食を初め、更に十一月以降、鉄道、郵便、電信、電話、ガス、水道等あらゆる公債引上げをなしたのでありますが、政府は減税を以て価格引上げを吸收できると申しておりますけれども、国民誰一人信ずる者はないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)更に給與引上げを平均千五百円なしたと申しまするが、その引上額は、その消極的な人事院の勧告一万一千二百六十三円に隔たること遠く、更に実施時期を勧告の八月から二カ月ずらして十月以降とし、人事院勧告の特別手当一カ月を無視した、公務員の家族生活を動物的生存水準に陷れる無慈悲不当極まるものであることは、一昨日、本議場において、公務員の理解者である同僚諸君から鋭く批判されたことは諸君の御承知の通りであります。物価庁提出による資料によりますと、昨年四月乃至六月の実質生計費を一〇〇とする本年八月の実質生計費指数は、全都市において九四・二、東京都において八七・二となつておりますが、これは全国製造工業平均賃金において、名目賃金は、昨年四月乃至六月を一〇〇とするときの本年八月一三六・八の指数を示すごとく、名目賃金の増加を示しておるにもかかわらず、国民の生活水準の低下を如実に示しているのでありまして、政府委員も認めるところであります。政府は当然人事院勧告を容れるべきであつたのであります。  以上申述べましたように、政府が宣伝するがごとき国民の生活水準の向上をもたらすがごとき減税の公約履行でもないのに、減税々々と声大きく国民を欺瞞することに努めた結果というものは、逆に、将来我が国の最重要の経済交流地域であり多額の賠償を求めている東南アジア諸国に惡印象を與えたようであります。(「そうではない」と呼ぶ者あり)政府は深く良心に恥じ猛省すべきであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この点については、参議院において與党自由党の深き理解者である緑風会を代表して小林君によつて委員会において警告されたところであります。具体的に更に申しますと、例えば扶養家族三人月收一万五千円の標準世帶を例にとれば、減税額七百円に対し公債料金の値上り分約七百円でほぼ相殺されることは認められますが、他の角度から考察しまするならば、輸出入物価の低落傾向にもかかわらず、国内物価は七月を底に反騰しつつありまして、八月初旬に対する十月末の物価の反騰率を見ますと、食糧、燃料、纎維等消費財の値上率は約八%となつておりまして、主食、電力、通信、交通等の価格引上げによる他物価への影響は吊り上げ上昇しつつあります。電力不足による生産低下傾向等を思えば、減税では価格引上げによる家計への圧迫を吸收できないことは明白で、国民の生活実態が一層苦しくなることは必至であります。特に所得税の減額の恩典に浴さない全国民の約三五%に当る約三千万人の国民は、諸公債引上げにより生活苦の重圧はいよいよ激しくなり、要生活保護者も漸増することは必定であるにかかわらず、何ら社会保障の見地から対策を立てないことは遺憾の極みであります。更に本予算案には社会保障的な補正が殆んどなされていないのでありまして、戰歿遺家族、戰争傷病者等の援護に対しては準備調査費僅かに一億円の計上にとどまり、政府は緊急なるものだけの補正にとどめたと答弁しておりまするが、本年度の予算構成を来年度において踏襲するにおいては、社会保障政策の後退は火を見るよりも明らかであります。政府に対し格段の考慮を要望するものであります。  次に地方財政の問題についてでありますが、民主主義の基礎にして地方自治の真の根抵たる市町村自治は、極度の財政窮迫のため、災害復旧、失業対策、老朽校舎の改築、給與ベース改訂等、実施不能の段階にあり、都道府県知事会議は府県のみでも五百七十七億の財源不足を推算し、政府に強力なる財政措置を要望し、一方、地方財政委員会からは地方財源不足額を四百三十八億三千万円と推定し、補正予算案に盛られたる平衡交付金百億円、地方債百億円の増額のほかに、更に平衡交付金百億円、地方債五十億円の増額の財源措置を速急になすべき必要ある旨、意見書が提出されたことは、御承知の通りであります。全国民からは熱烈なる平衡交付金の増額要望があり、又国会におきましても、両院において全会一致で平衡交付金の増額を決議したことは、各位の十分御承知の通りであります。にもかかわりませず、その意向が現実に盛られていないこの予算案は、地方自治を圧殺し、中央集権化を招来するもので、国民の名において断乎反対せざるを得ないのであります。物件費の値上り、更にそれに伴う諸経費の上昇を無視し、公共事業費を僅かに三%増額、六三制を含み四十二億の増額程度では、事業量の縮減は既定の事実であり、過年度災害復旧、更に先般西日本地区を襲つた戰後最大のルース台風の異常災害に対しても、災害復旧費の追加補正を、被災地区住民の必死の懇望にもかかわらず、僅かに災害復旧事業費から二十五億円の補助と五十億円の預金部資金の融資措置にとどまつたこと等を併せ考えるときには、国破れて山河ありの感深く、平和條約の承認寄託を終了して、独立と自由の花園の入口に立つている者の姿として是認されるものか、我らはとくと考えなければならないと存ずるものであります。(「簡單々々」と呼ぶ者あり)地方公務員の給與引上げに要する国の財源措置としては、大蔵当局が少数の特定人につき拔取り審査の結果、国家公務員に対する地方公務員の給與が、都道府県一般職員では四百六十二円、教育職員三百七十二円、市町村一般職員五百七十六円高額であると立論し、これについては都道府県知事からその資料の不的確を糾彈されたるにもかかわらず、地方自治庁、地財委、文部省等がこの大蔵省の資料に同調し、更に、地方公務員給與は、地方公務員法の定めるところにより、地方公共団体が自主的に條例によつて定められるべきにかかわらず、政府は地方自治庁次長名によつて、各都道府県知事に対し、地方公務員の給與改訂について平衡交付金の使途を拘束し、地方公務員の給與改訂予算面から制約統一するがごとき通牒を出したるために、地方公共団体は公務員の給與引上げに苦慮いたし、地方では重大政治問題を惹起しつつあります。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)更に野村地方財委委員長国会において次のごとく答えられております。「地方公務員国家公務員よりも給與がいいからこれを調整する必要があるという建前で財源措置を講ぜられたために、地方財政委員会としては甚だ困るから、もう百億増加して頂きたい、こういう考えを以て国会へ平衡交付金二百億円の増額を意見書として提出したのであります。」と述べられているのであります。本員は政府に対し深く遺憾の意を表明すると共に、今後の善処を強く要望するものであります。(「終り、終り」「單身要求しなさい」と呼ぶ者あり)  次に、政府は、不可能な米、石油統制撤廃を企図し、或いは事務整理機構改革、(「簡單々々」と呼ぶ者あり)、或いは事務処理方式の簡素化等を具体的に検討実施することなく、(「もうたくさんだよ」と呼ぶ者あり)杜撰なる天引行政整理の構想を内蔵するこの予算案に賛成することは、政治的良心が許さないのであります。(「たまには変つたことを聞かせるものだ」と呼ぶ者あり)主食の統制撤廃は、撤廃後の需給関係、価格の動き、農民、消費者への影響等、基本的実態調査を十分なし、善後対策を十分検討して統制撤廃政策決定をなすべきにかかわらず、吉田内閣の認識の不足と感覚のズレは、善後対策をあと廻しにして、(「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)十分の準備と確信もなく、急遽統制撤廃の方針を決定して、国民を不定と動搖の中に投入し、ドツジ氏の一言の下にその政策決定を粉碎されたものでありまするが、その政治責任は極めて重大であります。(「アメリカの内閣だからだよ」と呼ぶ者あり)政府の收穫予想額は六千二百八十八万石から六千六十七万石に減額したのにかかわらず、供出目標は逆に二千五百五十万石に増加し、供出意欲の低下した今日極めて危ぶまれるところであります。更に外米輸入三百八十万トン計画も、ドル不足の現在、国際收支上から困難と考えられるのに、政府が極めて楽観していることに対しては警告しておくものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)又行政整理にいたしましても、政府與党は、法案国会に提出して以来、その整理人員を実に五たび変更したそのざまは、鉢巻を締めたバナナ売りの叩き売りの姿そのものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)先刻定員法の討論で自由党の代表溝淵君は、五たび変えた修正案に満腔の敬意を表されましたが、敬意を表された六万に余る公務員諸君とその家族の心情は如何でございましよう。(「そうだ」「そんなのバナナの叩き売りだよ」と呼ぶ者あり)その科学性と信念に欠けた醜態が本国会審議の過程において遺憾なく露呈されたことは、諸君先刻御承知の通りであります。如何なる議員といえども、この予算案に賛成しては、政治家的良心を以つて郷土の人々の前に立つことはできないでありましよう。(「然り然り」と呼ぶ者あり)政府與党は、退職金の八割増しと退職所得税の税率軽減を一月以降実施することで、公務員を釣り、退職希望者があるからそれだけは退職さしてやりたいと述べているが、これは停年に近い一部高級官僚の身上を考えて、多数の下級公務員の身上と行政を軽視した、如何にも官僚政治家の独善さが感ぜられるのであります。かくのごとき感覚で行政整理に臨まれては、国民公務員もたまつたものではなく、笑止の沙汰であります。  次に学校給食の問題について申述べます。本予算案においては学校給食継続所要額の二十四億円を計上してありまするが、これは明年度四月以降、学校給食に対する補助打切りをなし、廃止することを條件としたものであります。我が国における学校給食の起りは明治三十三年であり、当初欠食兒童対策でありましたが、その後、教育的学校給食に発展し、昭和十四年には給食実施学校数九千校余り、給食実施人員約二百十四万人、国庫補助額三十三万円であつたのであります。戰時中にも全国約二千校は惡條件下に学校給食を細々ながら続けたのでありまして、終戰後始まつたものではないのであります。学校給食は新教育の施設として欠くことのできないものであると認識され、その効果も逐次顯著となり、学校給食に対する国民の輿論は、国立世論調査所によれば七八%の絶対支持率を示し、父兄生徒からその継続に対する熱烈なる要望があることは、諸君御承知の通りであります。政府は、昨年十月と本年五月の二回に亘りその推進方を閣議決定し、それに基き強力なる実施指導をなし、この指導に従つて給食施設に投じたる地方公共団体並びに父兄の支出額は約百億円と算定されるのであります。池田大蔵大臣は、この閣議決定は対日援助資金の続く範囲内においてということであると申されまするが、文部省はかく解釈せずに積極的に地方を指導したのでありまして、閣内解釈の不統一は極めて重大でありまして、国民のこうむる迷惑は絶大だと申さねばなりません。政府は、学校給食実施経費の一部を従来通り国庫負担とし、継続実施すべきにもかかわらず、平和條約発効により我が国の独立と時を同じうして学校給食を取りやめることは、講和成立を喜ぶ全国数百万の生徒兒童に対して何たる無慈悲なる贈り物でありましよう。ここにも吉田内閣の性格が浮彫りされているのであります。政府はすべからく強く反省再考すべきことを全国の兒童生徒に代つて要望するものであります。金が不足するがために諸施策ができないのであるならば諦らめもするが、さにあらず、出せば出せる金があるにかかわらず、冒頭に申したように、多額の血税を吸い上げて温存し、資金運用部資金と見返資金だけを考えても約八百億円の金額を大蔵大臣はポケツトに入れて、條約発効後の防衛費その他に(「再軍備」「簡單々々」と呼ぶ者あり)備えているではありませんか。平和、安保二條約発効後の苦悩はすでにこの予算案執行から始められるのであります。與党自由党代表のかたは、委員会の討論で、再軍備の時が来るからそれに備える意味の耐乏論をされていますが、吉田総理が再軍備はしないと如何に詭弁を弄しようとも、與党、政府の馬脚は逐次露呈されて参りつつあります。一九四五年東京湾口ミズーリ号上で銃器とペンとを取替えた我が国民が、薫り高き文化国家への道を閉ざされようとしている現状に、理想に生きる純粹な若き学徒はひとしく慟哭し、更に、民主主義下において最も尊重さるべき言論、結社、思想の自由という基本人権を蹂躪するがごとき団体等規正法を初めとする諸反動立法に現われる吉田内閣の反動性と低賃金政策に現われる反勤労者的性格に激怒し、月余に亘り全労働者がその組織を挙げて抗議していますが、政府は嚴粛に反省するところがあるべきであります。(「退陣々々」と呼ぶ者あり)  私は、吉田内閣政策とその裏付けをなす本予算案に断乎反対の意思を表明すると共に、與党、政府の主要公約である主食の統制撤廃に失敗し、行政整理を骨拔きにされ、二枚舌を使つた再軍備も漸くその馬脚を現わして来、更に公務員の吏道は弛緩の極に達した現政情に思いをいたすとき、私は民主主義日本再建のため、吉田内閣の退陣を勧告して、討論を終ります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手
  66. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  67. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして、今上程中の二十六年度予算補正に関する三案に対しまして反対をいたすものであります。  反対の論拠を要約すれば三つに帰着せしめることができます。第一の論点は歳出面であります。歳出面の問題は二つあると思うのでありますが、その第一はこの補正予算が一体何を補正するかという点であります。第二の点は、この補正予算が何を補正しなかつたか、こういう点であると思うのであります。言うまでもなく、二十六年度の予算の補正について最も重要な点は、当初予算を編成した後における物価騰貴、これが著しかつたので、この物価補正を行うということが二十六年度予算補正においては最も重要な点であつたはずであります。ところが政府は、今度の補正予算を編成するに当りましては、原則として物価補正は行わないという建前をとつたのであります。その結果として一体どういうことが現われたか。私は、物価補正を行わなかつたために、この補正後の二十六年度予算が実質的にどういうふうになつたかを試算してみたのであります。即ち当初予算を編成した後における物価騰貴予算に影響を與える物価騰貴率を大体二割とみなしまして、そうして予算補正後のいわゆる実質的な予算を試算してみたのであります。勿論、物価の騰貴率は予算の各項目については皆同じではありません。公共事業関係においては建設機械などは倍以上も騰貴しておりますが、人件費その他を平均いたしまして、総合して、大体予算に対して物価に二割影響を與えたと仮定いたしまして、その下に一応試算をしてみました。そうしますと、補正後の二十六年度のいわゆる実質的な予算はどういうふうになつておるかと申しますと、教育文化費においては十億円の実質的減少になる。社会及び労働費におきましては実質的に九十八億の減少になる。保健衛生費につきましては実質的に二十一億の減少であります。年金恩給費につきましては九億の減少、公共事業費におきましては八十四億の実質的な減少、地方財政費につきましては、政府は百億の補正を行いましたにもかかわらず、物価騰貴考えれば実質的には百四十五億の減少、こういう状態を呈しているのであります。即ちこういう費目については物価補正を行わなかつた。この物価補正を行わなかつたということは、教育文化、社会労働、保健衛生、年金恩給、公共事業、地方財政に対する予算を実質的に削減したという結果が明瞭に現われているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)他方において、それでは何を補正したか、何を補正したかと言えば警察予備隊費、これは実質的には八十八億の増加になつております。又産業経済費は二百四十億の実質的増加、出資及び投資は二百三十二億の実質的増加です。平和回復費は百億でありますけれども、物価騰貴率を加えれば、これは当初子算当時の購買力に換算すれば八十億の増加であります。予算全体としましては二百二十五億の実質的な減少になつておる。こういう結果が現われているのであります。これによつて明らかなごとく、これまでの各派の反対論者が申述べた結論が只今申上げました一つの表に集約的に現われているわけであります。教育文化、社会労働、保健衛生、公共事業、地方財政という、その財源、その費用を実質的に削減しておる。その犠牲の上に立つて、警対予備隊、或いは産業経済、出資及び投資、平和回復、こういうものを、これは補正ではなく、実質的に新たなる支出増加を行なつているのであります。これが二十六年度補正予算の本質であります。  このような補正後におけるところの二十六年度予算の変化というものは、殆んど單なる量的な変化では私はないと思います。これはもう質的な変化である。即ち教育文化とか、社会労働、保健衛生等々の文化的な支出を削減して、警察予備隊その他等々の支出を実質的に増加するという予算は、これが文化国家、平和国家としての財政を、警察国家或いは軍事国家的な予算にこれを編成替えするものである。(拍手、「ノーノー」と呼ぶ者あり)この補正を通じて編成替えするものだ。反対するかたは、数字的にその内容を御検討になればこれは明らかであります。これは、賛成されるかたも、反対されるかたも、この事実には私は反対することはできないと思います。  言うまでもなく我が国の経済は、終戰以来三つの大きな変化を経過して来ております。その第一段階は、いわゆるドツジ・ライン、第二段階は、朝鮮動乱以後、第三段階として、今度は講和後における日本の経済、これが非常に大きな変化を生ずるわけであります。その講和後における日本経済の変化は、この補正後の二十六年度予算の中にはつきりと現われておるわけであります。即ち民生費を犠牲にして、そうして警察予備隊或いは軍事的な支出、或いは又出資及び投資といいますけれども、これはやがては日米経済協力を通じてアメリカの軍需品を生産するところの設備投資、そういうものに向けられるものであります。こういうような、文化国家或いは平和国家の財政を軍事国家或いは警察的な国家としての財政にこれを転換せしめようとする補正予算には、私はどうしても賛成することができないのであります。これが反対理由の第一であります。  第二の論点は歳入面であります。今申述べましたような歳出面における極めて非民主的な、又非文化的な、非平和的な予算補正を、これをどういう方面の財源によつて賄おうとしておるか。その第一は、池田大蔵大臣の言うところのいわゆる自然増收であります。この自然増收が名目的な国民所得の増加に基くところのいわゆる自然増收であるということは、もう各位の指摘した通りであります。私は、この前、所得税の(「もう聞きました」と呼ぶ者あり)改正法案に対する反対討論の際に、この点については詳細に申述べましたから、私は省略いたします。(「簡單」と呼ぶ者あり)要するに、名目的には四兆五千四十億といわれる国民所得は、実質的には、安本で大体まあ試算してもらつたところによりましても三兆六千三百六十八億であつて、二十五年度に比して名目的には九千八百三十億の増加でありますが、実質的には千百五十八億の増加に過ぎない。名目的には二割七分の増加であるけれども、実質的には三%の増加である。大蔵大臣はこの国民所得の大部分は生産が殖えたり輸出が殖えたりしたために生じた、いわゆる実質的な国民所得の増加に基く自然増收であると言つておりますけれども、具体的にその実質的な国民所得の増加を彈いて見れば、はつきりとその大部分が名目的な国民所得の増加であるということがわかるわけです。私は予算委員会において、これは正確ではありませんけれども、大体の推定の数字を示して、大蔵大臣に、若し反対であるならば具体的に数字的にこれを反駁してもらいたいと言つたのですが、大蔵大臣は未だに何ら具体的に数字的にその反対の論拠を論証しておりませんので、大蔵大臣も私の考えにこれは同意されたものと私はみなしているのであります。(「ノーノー」「独善的解釈」「回答がつかんのだ」「うるさいぞ」「回答の要なし」と呼ぶ者あり、笑声)こういうようないわゆる自然的な増税、インフレを通ずるところの自動的な増税を通じて、そうして警察国家的或いは軍事国家的な歳出を、文教或いは衛生、保健、労働費、そういうものの犠牲においてこれを編成している。第二の財源は、本日も非常に揉みました公務員行政整理であります。六万人以上に上るところの公務員の首を切つて失業させて、そうして、それによつて浮くところの財源において、来年度は約百五十億ですか、再来年度は二百億の財源を浮かそうとしているのです。こういうことを前提としてこの予算を組んだ、勿論この補正だけにおいては退職資金が多いのでありますから、支拂超過になりましよう。来年度においては百五十億、再来年度二百億、これで財源を求めようとしておる。(「よくわかりました」と呼ぶ者あり)第三の財源は、人件費について物価補正を行わない。即ち人事院が一万一千二百六十三円の勧告をいたしたのに対して、政府は、政府の公訴一万六十二円に引上げたに過ぎない。併しこれは実質的に九千五百三十円の引上げに過ぎないことは、我が党の千葉議員が指摘した通りであります。こういうようないわゆる自然増税、インフレを通ずるところの、貨幣錯覚を通ずるところの自動的増税、公務員の首切り、人件費に対する物価補正を行わないということ、こういうことを以てこの財源に充てている。この歳出の裏付けとしている。これが私はこの補正予算に対して賛成できない第二点であります。(「元気を出せ」と呼ぶ者あり)  反対の第三点は、すでに各位からこれを指摘されましたが、又予算委員長報告されましたが、この補正予算がいわゆる自由経済方式というものを基礎にして編成されておるということであります。(「本当に自由経済はわからんのだ」と呼ぶ者あり)私は予算委員会において、池田大蔵大臣或いは周東安本長官に、政府は如何なる物価政策をお持ちになつておるかを私は質問したのであります。(「わからん」と呼ぶ者あり)併しながら物価政策については何らこれを示すところがなかつた。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は郡物価庁女官に対しまして、一体、政府は今後この物価を引上げる方向に持つて行くのか、或いは現在の物価水準を維持するような物価政策をとるのか、或いは更にこれを現水準を引下げるのか、どういう物価政策の方向を構想しておられるのかを質問したのであります。(「無為無策だ」と呼ぶ者あり)郡物価庁次官は、目下そういう構想については何にもない、こういう御答弁であつたので、私は唖然としたのであります。物価庁は何のためにあるのか了解に苦しむのです。(「簡單」「時間々々」「物価庁は皆切つてしまえ」と呼ぶ者あり、笑声)こういうような殆んど構想のない、何ら構想のないところの物価政策の基礎の上に立つて、財政金融経済政策を推し進めて行こうとしているのであります。これはまさに驚くべきことであります。(拍手)今後日本の経済は(「あなたにはわからないのだ」と呼ぶ者あり)講和後において非常な困難を予想されているときに、財政金融経済政策の一番基本になる物価政策に対して何らの構想を持つておらない。これは自由経済というよりむしろ無能経済、無計画経済と言わざるを得ないのです。これでは国民がたまりません。(拍手)どういう政策の具体的現われとして、この米麦の統制撤廃補正予算の前提としているということであります。この米麦統制撤廃後においては主食の騰貴が当然予想されておるのであります。この主食の騰貴によつて影響を受けるのは誰であるか。これは一般国民の生活が苦しくなることを意味することは明らかであります。このような、物価政策において何ら構想のない無能無計画の政策をとるということは、結局は、これは煎じ詰めれば、物価対策としてはインフレ的な、野放し的な対策をとるということを意味するのであつて、米麦の統制撤廃はこれを裏書きしておるのです。結局、物価はだんだん騰貴して行くのに任せる、こういうことに帰着すると思うのです。この自由党のいわゆる自由経済政策が破綻しておる一番の集約点は、これは電力不足、電力飢饉に現われておる。今度の電力飢饉が渇水によるところもありますけれども、その根本の原因が、最初電力の需給計画において本年度は前年度に比して七%増加する計画であつた。それが特需の増大、特需の増加による電力需要の増加、輸出の増大による電力需要の増加によつて、本年の四—六月においてすでに一六%増加してしまつた。こういうことに対して無計画的にどんどん電力を供給してしまつたのです。(「そうだ」「誰が使つておるか」「簡單々々」と呼ぶ者あり)そうして又石炭については六百三十万トンの火力用炭を用意するという計画であつたのです。ところが特需が出て来たために無計画的にどんどんこれを野放しにそつちへ供給してしまつた。そうして家庭用電力は五%これを減らしておる。これは政府の電力の需給計画における無計画性をはつきりと示しておるのです。これこそが自由党の政策の破綻を最もよく集約的に現わしておると思うのであります。(拍手)こういうような経済政策の基礎に立つて、どうして日本の経済の発展と安定、能率と発展を期することができるでありましようか。  大体私は以上の三点を以て本案に反対するものでありますが、講和を前提として二十七年度の巨額の講和関係費負担を考慮に入れて編成したという、池田大蔵大臣の言うところのいわゆる補正予算の実体というものは、かくのごときものであります。即ち民生費の犠牲において警察費や軍事的支出が賄われるところの予算である。(「簡單簡単」「何遍言うんだよ」と呼ぶ者あり)すでに指摘した通りであります。(「耳が痛いのか」「もうたくさんだよ」と呼ぶ者あり)政府は、平和條約及び日米安全保障條約の批准が済む前においては、講和が成立しても日本の経済は心配ないということを国民に放送し宣伝して参りました。(「その通り」と呼ぶ者あり)講和後の経済においては楽観論を放送して来ました。ところがどうでありますか。ところがどうでしよう。條約の批准が済んでしまつてから予算委員会におきまして吉田総理大臣は、(「首相どうした」と呼ぶ者あり)講和後の日本経済はイギリスと同じようにこれは大変である。国民は耐乏生活をしなければならないということを放送するに至つているのです。池田大蔵大臣も最初は楽観論を言つていましたが、講和批准後において、日本経済はこれは重大である、こういうことを言い出している。(「だましておる」と呼ぶ者あり)そうしてドツジさんが訪日し、ラスクさんが参り、或いは又バークレー副大領が来朝し、そうしてダレスさんもやがて参る。そのたびに、これまで行われた楽観論がだんだんに覆えされておる。(「結論を言え」「誰も聞いていないよ」と呼ぶ者あり)特に我々(「耳が痛いからだろう」と呼ぶ者あり)憂慮に堪えないことは(「時間がある」と呼ぶ者あり)ラスク次官補が日本に来られた目的の中心はリツジウエイ司令官と会見することである。そうして一般的に言うと、国務省は日本にできる限り広汎な独立を與えようとしておるが、国防省は米軍が占領という権限の下に現在享受しておる多くの軍事利権を放棄することに対してそれほど乗り気ではなく、その理由として、特に日本が朝鮮戰乱遂行上米軍にとつて重要な基地となつておる点、又日米安全保障條約による日本防衛の責任は主として米国に課せられておる点等を指摘しておる。こういうふうに報ぜられております。(「まだやるのか」「簡單」「持ち時間まで黙つて聞いておれ」と呼ぶ者あり)我々は、平和條約、日米安全保障條約が批准された後において、どの程度の独立を日本に許すかということが検討されておることは、了解に苦しむところであります。元来、平和條約が極めて軍事的なものであり極めて戰略的なものであるということは、サンフランシスコ会議におけるアメリカ大統領の演説に徴しても明らかであります。(「誰も聞いてないよ」「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)従つて、この軍事的、戰略的な條約に日本が調印し批准した以上、極めて軍事的な或いは戰時的な経済が要請されて来るということは当然であります。火を見るよりも明らかである。それが二十六年度補正予算にも出て来ておるのであります。政府国民に対してごまかして来ておる。何か今度の平和條約を結ぶと日本に平和経済が訪れるごとく錯覚を與えておる。(「その通り」「嘘を言え」と呼ぶ者あり)名前は平和でありますけれども、極めて戰略的、軍事的な條約であり、従つてそれによつてもたらされる経済は極めて軍事的或いは警察的な経済であるということは、この補正予算が如実に物語つておるところであります。(「眼鏡を外して」と呼ぶ者あり)文化国家、平和国家としての財政を、警察国家、軍事国家としての財政にこれを転換せしめんとするような(「何遍言うんだ」「何遍言つてもわからんからだよ」と呼ぶ者あり、笑声)この補正予算に対しては、少くとも健全な常識を持つ者としては、賛成しようとしても、その良心が許さないのであります。今、私の討論に対してやじられた人のごとく不健全なる常識を持つ者にして、初めてよくこれに賛成し得るのであると、私は信ずるのであります。(拍手)  これを以て私の討論を終ります。(拍手
  68. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は(「総理の退席が早過ぎるじやないか」「聞く必要なし」「同じことを言うじやないか」「もつと新らしいことを聞かせろよ」「大いに頑張れ」と呼ぶ者あり)日本共産党を代表して本補正予算三案に反対するものであります。(「それはわかつとる」と呼ぶ者あり)  反対の第一の理由は、先ず本補正予算が国連協力の名の下に、実際は全く自主性を喪失した奴隷予算だからであります。池田蔵相は初め四百五十億の枠をきめて渡米したのでありますが、サンフランシスコから帰るや否やこれが忽ち三倍以上にはね上つた。その原因について本会議での代表質問以来しばしば我が党の追及したところであります。然るに政府はこれに対しまして何ら筋の通つた答弁をすることなく今日に及んでおるのであります。(「答弁の必要はない」と呼ぶ者あり)それは一体何のためでありましようか。言うまでもなく予算編成権がまだアメリカに握られておることの何よりの証拠であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)本年七月、かのリツジウエイ声明以来、我が国の自主性は大幅に政府に譲渡されたことになつたはずであります。然るにそれは單に表面上のお体裁の、どうでもいいことだけに限られまして、一国の死命を制するほどの予算編成権のごときは完全にこれを握つて放そうとしないのであります。このことは、單にこの補正予算に限らず、来年度予算におきましても何ら変りはないのであります。果せるかな、ドツジ氏の来朝によりまして、講和関係費、特に国防分担金の枠がまだきまらず、ために二十七年度予算の大綱さえ国会に示し得ない現状ではありませんか。講和條約の発効は来年二月頃と伝えられており、従つて四月以後の財政経済を律するところの二十七年度予算につきましては、大幅に日本政府の主張が通らねばならぬはずであります。それにもかかわらず、全くその主導権がアメリカに握られておるのであります。一体ドツジ氏の資格は何であるか。吉田総理は委員会で、ドツジ氏は命令しない、政府は專門家の意見を聞いておるだけであると答えられておるのでありますが、これは全く実情をごまかした答弁であります。事実ドツジ氏は、我が国のさる銀行家に対しまして、私の勧告は講和発効後も或る期間は日本の財政経済について発言権を持つておると述べたと言われておるのであります。而も事実はどうか。これはこのたびの米の統制撤廃経過が何よりも雄弁にそれを物語つておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)即ち政府があれほど力んで見せた米穀統制撤廃の一大公約が、ドツジ氏との折衝によつて、あたかも春先きの霜のように消え去つたこの一事を見れば明らかであります。(「奴隷内閣だ」と呼ぶ者あり)このように全く自主性を失つた政府の態度に対しては、労農大衆はもとより、財界の各層からも種々不満の意が表明されているのである。現に経済同友会の某幹部のごときは、ドツジが予算編成の紐を握つて離さないのは━━━━━、我々は何のために調印したのかわからないと、憤りの声を揚げているのであります。ところで、アメリカがこのように我が国の財政経済の紐を握つて離さないところの原因は何であるか。それは言うまでもなく、両條約によつてアジアにおける反共━━の第一線基地として再編したこの日本のすべてを挙げて、アメリカ戰略のために奉仕させんがためにほかならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは、この本補正予算の三倍の膨脹の殆んどが国内治安に名をかりたいわゆる軍事的支出であり、並びに政府の出資、投資に名をかりた軍事的予備費であることを見れば、余りにも明らかであると言わなければなりません(「張り切ると危いぞ」と呼ぶ者あり)又、二十七年度の予算が防衛分担金並びに警察予備隊の枠の飛躍的増大により再軍備必至の情勢に追い込まれておることを見れば明瞭であります。これが和解と信頼の両條約締結後における日本の財政経済の誠に有難い実情であります。政府は一体このような奴隷的態度をどこで切り替え、いつ改めんとするのであろうか。(「その点だ」と呼ぶ者あり)かかる態度をこれ以上持続するならば、和解と信頼を盲信して折角両條約に賛成した国民層といえども絶対に我慢することができないのであります。(「あんた方に心配をかけないよ」と呼ぶ者あり)  反対理由の第二は、本補正予算が再軍備への橋渡し的予算であることであります。日本の再軍備につきましては、安保條約の條項精神から見ても早晩これが現実化するであろうことは想像にかたくないところであります。あたかもこれと符節を合せたように、最近バークレー副大統領、ラスク次官補等アメリカ要人の相次ぐ渡日があり、それに加えて来月の上旬にはダレス氏の四度目の訪日が伝えられておるのであります。ダレス来朝の目的が何であるかについては、今日もはやこれを知らない者はないのであります。又伝えられるところでは、政府はすでに再軍備の構想をワシントン筋から求められ、目下検討中とのことであります。あたかもこれに応えるかのように、二十五日附の朝日新聞は防衛力漸増計画なるものを発表しておるのであります。これによれば、吉田首相は去る二十二日外相官邸に軍事專門家を交えて重要会談を行い、席上、防衛力漸増計画とその予算措置に対する打合せがなされたと言われておるのであります。本補正予算における警察予備隊費百五十億の支出のごときも、かかる態勢強化への過渡的支出にほかならないのであります。而も予備隊はすでに迫撃砲、ロケツト砲を持ち、最近の訓練では渡河作戰、バリケード、トーチカ構築、敵陣の探索爆破などまで行われておることは、何を意味するでありましよう。表看板に再軍備を謳うかどうかは別としまして、警察予備隊の強化が実質的に国民負担を著しく増加せしめておることは既定の事実であり、現に池田蔵相もこれを認めておるのであります。即ち警察予備隊の費用は本年度の三百十億から来年度は数倍にはね上ろうとしております。第十国会以来、吉田首相は、再軍備はしないし、又できないとしばしば言明していますが、その理由とするところは国家経済がこれを許さないということであつたのであります。ところで、このように経済理由を楯としまして再軍備を否認し続けて来た政府が、一方に実質的に警察予備隊の名によつて著しく国民負担を増大せしめて憚からぬのであります。その結果、これらの軍事費に対するアメリカ側の要求は防衛分担金と合せて約二千億、これは政府の千二三百億円の線を遙かに突破しているのであります。これに賠償、外債支拂等を加えれば、来年度の講和関係費は三千億近くとなるのであります。その結果は、池田蔵相のいわゆる八千億内外の枠を拡大して増税を断行するか、或いは国内費にしわ寄せして超々均衡予算を組むよりほかに方法がないところに追い込まれていることは明らかであります。一方アジアにおいては朝鮮戰争がまさに休戰に入ろうとしています。こうした現段階において、なぜこのような軍事費が必要であるのか。日本の防衛といい、安全保障というのも、すべてがウオール街の戰争屋どもによつて昨年夏仕組まれた朝鮮戰争を理由として国内の不安を煽り立て、輿論を形成してのことではなかつたか。(「言葉を気を付けろ」と呼ぶ者あり)然るに今休戰が実現せんとするに、軍備はいよいよ強化され、国民負担はますます重くなろうとしているのであります。この矛盾の原因は一体何でありましようか。言うまでもなく、帝国主義者どもは、休戰によつても━━━━━をいささかも放棄しないのみか、むしろこれを機会に━━━━━━━━に廻す必要を生じ、そのあと釜として━━━━━━━当てこんでいるのであります。あたかもこれと符節を合せるかのように、二十五日のINS電は、韓国外務長官ピヨンヨンテの記者会見談を報じているのであります。即ち、これによりますれば、日本は共産軍との戰争を援助するため朝鮮に日本人部隊を派遣しようと提案したとのことであります。政府はこれを否定していますが、傀儡国とは言え、いやしくも一国の外交責任者が公開の席上で嘘をつくとは思われないのであります。(「それは共産党だ」と呼ぶ者あり)吉田首相は事ごとに、再軍備はしないし、又できないと言い、又朝鮮休戰は望ましいと言いながら、事実は全く逆のコースを歩んでおるのであります。  第三に、本補正予算は日米経済協力の名において国際収奪の強化を図らんとするものであります。本補正予算の枠の膨脹の原因が軍事的支出と政府の出費投資にあることはすでに指摘した通りであります。即ち、外為特別会計、食管特別会計への繰入四百億、国際通貨基金、国際開発銀行への出資分担金二百億、これこそ国際独占資本に日本経済を挙げて奉仕せんとすることにほかならないのであります。言うまでもなく、外国の大資本家どもは、過去六カ年の間日本の占領状態を利用しまして(「何だそれは」と呼ぶ者あり)見返資金に紐を付け、金融機関を初め、日本の基幹産業のすみずみまでその支配的実権を握つて来たのであります。又外貨割当の操作を通じまして、日本の対外貿易を全く左右し、日本が売りたい国に売れず、買いたい国から買えず、安い時に買えないで高い時に押付けられるという、こういうからくりが行われたのであります。これは皆さんの中にも非常に(「嘘を言うな」と呼ぶ者あり)胸に覚えのあるかたがいらつしやるだろうと思います。(「そうだ」「嘘だ」と呼ぶ者あり)こうして貧慾極まりない外国の大資本家どもは、国際物価の大きな変動を利用して、日本の貿易業者並びにメーカーの犠牲において大規模の収奪を繰返して来たのであります。而もこうした背後の操作の間に、日本全体がいつの間にか戰争謀略の網にがんじがらめにされているのであります(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)国際開発銀行、国際通貨基金の制度こそは、弱小資本主義諸国から、なけなしの金を巻き上げて、戰争商売人の祭壇に供せんりとするものであります。吉田内閣は、日米経済協力の名の下に、この━━━━━戰争屋ともの前にひざまずいてもその分け前にあずからんとしておるのであります。にもかかわらず、本年度内に国際通貨基金への加盟が許されるかどうかは未定であり、更に外為特別会計の繰入金も恐らく年度内に使うことはないものと考えられるのであります。そうだとしますと、この数百億に上る厖大な経費は、いわゆるリサーヴ・フアンドとして備蓄されることになるのであります。これだけの大金を遊ばせておきながら、一方、給與ベース改訂は、人事院の勧告を遙かに下廻つており、六三制の校舎建築は御破算の状態であります。又失業対策も、戰争犠牲者、遺家族の援護費も殆んど問題外である。特に平衡交付金の増額については、満場一致の決議案が両院を通過しており、我々はその実現を目ざして連日折衝したのにもかかわらず、政府は遂に財布の口を開けようとはしないのであります。池田大蔵大臣はこの小委員会の席上で、平衝交付金は国民の血税だから十分に検討しなければならないと漏らしているのでありますが、それなら、一方、数百億に上るところの政府出資投資は国民の血税ではないと言うのでありましようか。又最近の汚職事件で不正のために浪費された数十億円は日本国民の血税ではないと言うのでありましようか。アメリカ側の要求さえあれば、日本の経済には到底間尺の合わない厖大な支出さえやすやすと承認する政府も、一方、国民の血の出るような要求に基く僅か百億余りの支出を出し渋つているのであります。これでは、全国の知事会議、市町村長会議を初め、関係者全部が憤激するのも無理のないことであります。これをなだめるために、政府は一方繋ぎ資金を出し、糊塗的手段をとろうとしているのでありますが、これはすでに政治ではなくて、自由党の選挙対策以外の何ものでもないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)とにかく両院の満場一致の決議がこのように政府並びにその背後の力によつて拒否されることは、国会の機能の喪失であり、まさに奴隷国会への転落であります。これでは今から今後が思いやられるのである。我々は、両條約発効後の国会運営のためにも、ここで民族的決意を結集して、さような暴圧に最後まで闘わんとするものであります。(「どうぞ御自由に」と呼ぶ者あり)  第四に、本補正予算案は、国際收奪の一切のしわ寄せを国民の血税に求めんとするものであります。本補正予算に計上した経費は、いわゆる国内費たると講和関係費たるとを問わず、本質において国際收奪者への奉仕を第一とし、これに従属する国内の特定買弁資本に若干の従属的超過利潤を保証するものでありまして、この厖大な経費のしわ寄せは言うまでもなく国民の血税であります。そのからくりは簡單である。政府国民所得を昨年度より一兆一千億も水増と、これによつて差詰め一千五百六十億円の水増し増税をあて込んでおるのであります。この手品を国民の目から隠すために、政府は一方で四百五億の減税なる「おとり」を用いているのであります。併しそれが真の減税でないことは、減税がドツジ氏の来朝によつて非難されるや、自由党吉武政調会長は、減税でなく、税の調整だと言明したことでも明らかであります。(「財政論がわかるのか」「黙つて開け」と呼ぶ者あり)これは政府並びにその與党自由党が、国内的には 減税による公約実施なりと宣伝これ努めながら、国際的にはその正体を暴露せざるを得なかつたのであります。国内的には減税、国際的には増税という、自由党の発明したこの二枚舌にこそ、このたびの税制改革の正体がはつきり現われておるのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)政府が如何に收奪を強化しているかは、池田大蔵大臣が先に血税という言葉を自分から使つていることでも明らかである。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)ドツジ氏は、来年度の政府の減税政策を了承したというのも、かかる事実を認めたからにほかならないのでありましよう。  第五に、私の挙げたいことは、今度の予算審議を通じて最も遺憾に堪えないことは、米穀統制撤廃中止の責任を何ら明らかにしないということであります。吉田内閣の最も重要な政策であり、現にこの壇上を通じまして吉田総理によつて明らかにされた米の統制撤廃は、その後、労農階級を中心とする国民大多数の猛烈な反撃に会いまして、最初から動揺せざるを得なかつたのであります。而も最後の頼りの綱であるドツジ氏の了解が、別の意味から得られず、政府は来年四月からの実施を見合せねばならなかつたところに追い込まれたのであります。そうでありませんか。然るに、この責任を痛感し、国民の前にその不明を謝まるべきであるにもかかわらず、政府は一片の声明書を発表して事態を糊塗せんとしているのであります。池田蔵相のごときは、その責任を感ずるどころか、却つて威丈高になつて基本方針には何ら変更がないのだと力み返つているのであります。併し我々の聞かんとするところは、実現見込のない今後の方針などという、よく政府の使う仮定のことではないのであります。現実に四月一日から政策が実現されなかつたということについての責任であり、更にこれによつて惹き起されているところの国内の混乱であります。一体、政府はこれから供出をどう裁くのであるか。一度緩められた農民の供出意欲と不作を前にして、二千五百五十万石の供出に自信があるのであろうか。又その奨励金はどうするのか。更に地方では四月からの統制撤廃を見越して業者などが暗躍し、思惑買いの態勢が準備された事実もあり、而もこれは自由党と決して無関係ではないと思うのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)これらすべての條件が重なつて、今後吉田内閣の土台骨を足下から揺り動かす要因になることは必至であります。公党の政策が、こういう形で、何らその責任を明かにせず運営されるところに、日本政治の植民地的現実がはつきり現われておるのである。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これは国会の威信を傷け、内外の信用を損うものと言わざるを得ないのであります。よろしく政府はこれらの責任を負つて内閣を投げ出し、罪を天下に謝すべきであります。  更に見逃すことのできない問題に、横田基地の爆発被害事件があります。(「補正予算関係がない」と呼ぶ者あり)十一月十八日午後六時二十分、両條約が衆参両院を通過して、政府並びに自由党の諸君が盛んに乾盃を挙げておつた真最中であります。横田航空基地ではB二九爆破による惨事が起つたのであります。十二名の全搭乗員は無事であつたのに、これが救助に駈けつけた日本人が、爆弾の炸烈により或いは惨死し、或いは重傷を負い、又附近の多数家屋が非常な損害を受けたのであります。私はこの損害の補償について関係大臣の意見を徴したのでありますが、池田大蔵大臣は、こういう被害に対しては、声明か何かが出ており、占領軍はその責任を負わないようになつておるとのことであつたのであります。私はそこでこれに対する資料の提出を求めたのでありますが、政府は到頭この予算委員会の終るまで未だにこれを提出することなく、今日に及んでおるのであります。(「アメリカぼけだよ」と呼ぶ者あり)これは一体何のためであるか。今仮にそういう声明が事実であつたにしましても、それは占領政策に属する上のことである。言うまでもなく占領軍の目的は、ポツダム宣言によりまして日本の徹底的民主化と非武装化以外にはないはずであります。然るに、これはこの戰争目的の爆弾による被害であり、補償の責任は米軍にあるはずであります。然るに政府はこれを米軍当局に交渉することなく、特別調達庁や厚生省の費用を以て見舞金を賄つているのであります。曾つて日米が交戰状態にあつた昭和二十年四月といいますと今から六年半前のことでありますが、交換船阿波丸は米国潜水艦の不法攻撃によつて撃沈されたのであります。この事件に対して、米国政府はいさぎよくその責任を認め、日本政府の損害賠償請求権を承認したのであります。戰争下においてさえ不法行為はどこまでも不法行為であつたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)ましてやポツダム宣言に基く占領下にあつて、外国軍隊の作戰行動によつて引き起された損害の賠償請求権があることは当然のことであります。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり)然るに、政府はその権利を主張しないのみか、国民への税金によつて形ばかりの見舞金を支拂い、そりまま泣き寝入りしようとしているのであります。(「それが日本政府だ」と呼ぶ者あり)なお、この質疑におきまして、池田大蔵大臣は、外国の飛行機が何を積んで歩くかは日本政府の知つたことではない(「その通りだ」と呼ぶ者あり)と放言第何号かに属する言葉を放つておるのでありますが、(「それが日本の大蔵大臣だ」と呼ぶ者あり)こうした、どこの国の政府かわからない政府を戴いている限り、日本人は一刻も日本の国に安心して住めないということになるのであります。これが吉田内閣の国連協力政策の実体であり、安保條約調印後の日本の現実であります。(「ソヴイエトへ行け」と呼ぶ者あり)早晩行われる行政協定によつて(「お前がアメリカへ行け」と呼ぶ者あり)これらの條件がどうなるかについて不安の念を禁じ得ないのが、現在の日本の国民の立場であります。以上述べたように、このような立場に立つて組まれた今次補正予算であつてみれば、国民反撃は到る所から盛り上つて来るのは当然のことと言わねばならないのであります。米穀統制撤廃反対や地方財政平衡交付金増額運動が、全国知事会や市町村会は(「又蒸し直しか」と呼ぶ者あり)勿論のこと、広汎な関係者を網羅して今や全国民運動として盛り上つていることは、先に述べた通りであります。又学童給食打切りに対しては、教員、PTA、父兄たちがいち早く街頭に立つて反対運動を展開している。(「同じことばかりじやないか」と呼ぶ者あり)べース・アツプに対しては、官公庁の労働組合は、今や、やむにやまれぬ要求から、総蹶起大会、定時退庁を断行して、連日国会に押寄せているのであります。炭労、電産等の基幹産業労組のストは大きく政府の屋台骨を揺り動かしているのであります。又不合理極まる首切りに対しては首切り絶対反対の大衆行動が活発に展開され、そのために、各省の局長、部課長すらが、首を切るなら大臣みずからやつてくれと申出ている有様であります。更に社会保険医は労働組合と力を合せて、健康保険制度を守れと(「時間々々」と呼ぶ者あり)全国大会を開いているのであります。(「議長、時間」と呼ぶ者あり)  このように、政府の戰争協力財政はあらゆる面で国民の抵抗と反撃に出会つて、心底から動揺しているのである。而して政府はこれを鎮圧せずには戰争政策を遂行することができないのであります。だからこそ治安警察費を増額し、団体等規正法、ゼネスト禁止法を次期国会に上程せんと企らんでいるのであります。併しその結果は更に国民に負担と犠牲を強い、ますます抵抗と闘争を拡大するのであります。吉田内閣こそは、目下こうしたジレンマの真只中に動揺し、よろめき、蠢動しながら、末期的不正腐敗と堕落の渕に落ち込んでいるのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)而してこれらの売国政策は必ずや失敗せずにはいないでありましよう。すでに国際帝国主義者の戰争計画は、ヨーロツパにおいても、中東においても、アジアにおいても破綻しているのであります。朝鮮戰争は、新たに奮起した朝鮮や中国の人民たちが、戰争屋の暴威に屈することなく勇敢に闘い続け、ソ同盟を中心とする広汎な世界の平和愛好勢力の断乎たる威力によつて(笑声)まさに休戰が実現しようとしているのであります。(「議長、時間々々」と呼ぶ者あり)朝鮮で通日示されているこれらの人々の勇気ある行動は、平和のために闘わんとする全世界の人々に力強い教訓を與えているのであります。(「わかつたわかつた」と呼ぶ者あり)  すでに、講和、安保両條約に対し、かかる観点から反対し続け、平和と民族の独立のための全面講和を主張する我が日本共産党は、これら戰争準備のための橋渡しである本補正予算に対しまして断乎反対するものであります。(「よろしい」「御苦労様」「大変よかつた」と呼ぶ者あり、拍手
  70. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案の表決は記名投票を以て行います。三案に賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  71. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票をいたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  72. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百九十八票。  白色票(即ち三案を可とするもの)百十一票。(拍手)  青色票(即ち三案を否とするもの)八十七票。  よつて三案は可決せられました。(拍手)      ——————————    〔参照〕 賛成者(白色票)氏名  百十一名   結城 安次君  山川 良一君   山本 勇造君  山内 卓郎君   溝口 三郎君  前田  穰君   藤森 眞治君  藤野 繁雄君   早川 愼一君  波多野林一君   野田 俊作君  徳川 宗敬君   竹下 豐次君  高橋 道男君   高橋龍太郎君  高木 正夫君   田村 文吉君  鈴木 直人君   杉山 昌作君  新谷寅三郎君   島村 軍次君  西郷吉之助君   小林 政夫君  小宮山常吉君   楠見 義男君  木下 辰雄君   河井 彌八君  片柳 眞吉君   柏木 庫治君  加賀  操君   岡本 愛祐君  岡部  常君   小野  哲君  楠瀬 常猪君   玉柳  實君  青山 正一君   長島 銀藏君  木村 守江君   宮本 邦彦君  秋山俊一郎君   高橋進太郎君  仁田 竹一君   宮田 重文君  上原 正吉君   森田 豊壽君  草葉 隆圓君   石川 榮一君  大谷 瑩潤君   九鬼紋十郎君  深水 六郎君   加納 金助君  平沼彌太郎君   大矢半次郎君  城  義臣君   岡崎 真一君  西川甚五郎君   小野 義夫君  寺尾  豊君   黒田 英雄君  石坂 豊一君   岩沢 忠恭君  北村 一男君   中川 幸平君  一松 政二君   黒川 武雄君  横尾  龍君   徳川 頼貞君  中山 壽彦君   中川 以良君  飯島連次郎君   伊藤 保平君  井上なつゑ君   赤木 正雄君  松本  昇君   廣瀬與兵衞君  野田 卯一君   重宗 雄三君 大野木秀次郎君   加藤 武徳君  長谷山行毅君   松平 勇雄君  古池 信三君   杉原 荒太君  平井 太郎君   白波瀬米吉君  山縣 勝見君   安井  謙君  山本 米治君   岡田 信次君  愛知 揆一君   瀧井治三郎君  石村 幸作君   田方  進君  平林 太一君   溝淵 春次君  鈴木 恭一君   島津 忠彦君  石原幹市郎君  池田宇右衞門君  大島 定吉君   郡  祐一君  川村 松助君   山田 佐一君  西山 龜七君   堀  末治君  團  伊能君   大屋 晋三君  泉山 三六君   平岡 市三君  小林 英三君   館  哲二君     ————————————— 反対者(青色票)氏名  八十七名   山崎  恒君  紅露 みつ君   深川タマヱ君  木内キヤウ君   谷口弥三郎君  有馬 英二君   油井賢太郎君  鈴木 強平君   櫻内 義雄君  三好  始君   林屋亀次郎君  櫻内 辰郎君   一松 定吉君  鬼丸 義齊君   永井純一郎君  カニエ邦彦君   門田 定藏君  中田 吉雄君   上條 愛一君  堂森 芳夫君   松永 義雄君  齋  武雄君   清瀬 俊英君  加藤シヅエ君   山田 節男君  三橋八次郎君   若木 勝藏君  岩崎正三郎君   田中  一君  村尾 重雄君   小酒井義男君  深川榮左エ門   大野 幸一君  松浦 清一君   相馬 助治君  森崎  隆君   吉田 法晴君  大隈 信幸君  前之園喜一郎君  岩木 哲夫君   岩男 仁藏君  中村 正雄君   下條 恭兵君  山下 義信君   波多野 鼎君  小川 久義君   木内 四郎君  稻垣平太郎君   伊藤  修君  棚橋 小虎君   吉川末次郎君  小泉 秀吉君   三木 治朗君  須藤 五郎君   岩間 正男君  兼岩 傳一君   千葉  信君  木村禧八郎君   堀  眞琴君  水橋 藤作君   鈴木 清一君  成瀬 幡治君   山花 秀雄君  東   隆君   梅津 錦一君  江田 三郎君   小林 孝平君  千田  正君   石川 清一君  荒木正三郎君   内村 清次君  佐多 忠隆君   堀木 鎌三君  松原 一彦君   羽仁 五郎君  藤原 道子君   河崎 ナツ君  高田なほ子君   木下 源吾君  矢嶋 三義君   西園寺公一君  佐々木良作君   小笠原二三男  菊川 孝夫君   椿  繁夫君  金子 洋文君   和田 博雄君      ——————————
  73. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して、審査及び調査を閉会中もなお継続するの件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。  内閣委員長から、水産省設置法案水産省設置法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案審査行政機構の整備に関する調査。  人事委員長から、国家公務員の給與問題に関する調査及び公務員制度に関する一般調査。  地方行政委員長から、地方行政改革に関する調査。  法務委員長から、会社更生法案、破産法及び和議法の一部を改正する法律案審査、検察及び裁判の運営等に関する調査。大蔵委員長から、財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案審査。  文部委員長から、教育及び文化に関する一般調査。  厚生委員長から、社会保障制度に関する調査。  農林委員長から、農林政策に関する調査。  水産委員長から、小型機船底びき網漁業整理特別措置法案、真珠養殖事業法案審査水産物増産対策に関する調査。  通商産業委員長から、企業合理化促進法案審査。  運輸委員長から、一般運輸事情に関する調査。  郵政委員長から、郵政事業の運営実情に関する調査。  電気通信委員長から、電気通信事業運営状況に関する調査及び電波行政に関する調査。  労働委員長から、労働行政実情に関する調査及び労働関係法規改廃問題に関する調査。  建設委員長から、河川、道路、都市及び建築等各種事業並びに国土その地諸計画に関する調査。  経済安定委員長から、日本経済の安定と復興に関する調査。  決算委員長から、昭和二十三年度一般会計歳入歳出決算、同特別会計歳入歳出決算、昭和二十四年度一般会計歳入歳出決算、同特別会計歳入歳出決算、同政府関係機関収入支出決算の審査、特別会計政府関係機関及び終戰処理費の経理並びに国有財産の処理に関する調査。  議院運営委員長から、議院の運営に関する審査。  在外同胞引揚問題に関する特別委員長から、在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案審査、在外同胞引揚問題に関する調査。  電力問題に関する特別委員長から、電力問題に関する調査。公職選挙法改正に関する特別委員長から、公職選挙法改正に関する調査。以上三十六件の審査及び調査を閉会中もなお継続いたしたいとの要求書が提出されております。これら三十六件は各委員長要求の通り審査及び調査を閉会中もなお継続することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれら三十六件は審査及び調査を閉会中もなお継続することに決しました。      ——————————
  76. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) この際、お諮りいたします。本日、小林英三君から建設委員長を、山田佐一君から議院運営委員長をそれぞれ辞任いたしたいとの申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつていずれも許可することに決しました。      ——————————
  78. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) つきましては、この際、日程に追加して常任委員長の補欠選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  80. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 只今の常任委員長の補欠選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  81. 木村守江

    ○木村守江君 私は只今の菊川君の動議に賛成をいたします。
  82. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 菊川君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 佐藤尚武

    議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長は、建設委員長に廣瀬與兵衞君を、議院運営委員長に川村松助君をそれぞれ指名いたします。(拍手)  これにて散会いたします。    午後十時十六分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、堀木鎌三君及びカニエ邦彦君の緊急質問に対する答弁  一、日程第二 軍事裁判受刑者釈放に関する請願  一、医師たる公務員待遇改善に関する請願外百十九件の請願  一、静岡県原町の地域給に関する陳情外一件の陳情  一、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案  一、日程第一 国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案  一、文化財保護委員会委員の任命に関する件  一、国会法第三十九條但書の規定による国会の議決に関する件(産業合理化審議委員)  一、国会法第三十九條但書の規定による国会の議決に関する件(米価審議委員)  一、昭和二十六年度一般会計予算補正(第一号)  一、昭和二十六年度特別会計予算補正(特第一号)  一、昭和二十六年度政府関係機関予算(機第二号)  一、水産省設置法案審査を閉会中も継続するの件外三十五件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長の補欠選挙