○木下源吾君 只今上程の
給與法ほか二件、私はこれに対して日本社会党を代表して反対いたします。
そうして、その理由を申上げて、保守党の諸君の一つ是非御賛成を得たいと思うのであります。従つて我々の態度をここに明確にしておく必要があるのでありますが、私どもはこの
給與のベースにつきましては、一万二千円が今日正当であるという主張を持つております。併しながら国家の機関である人事院の勧告が行われている今日、この勧告を当面我々は完全に実施すべきであるという当面の目標を以て進んでいるものであります。御承知の通りこの
給與のことについては、本年の一月一日からの政府のいわゆる千円アツプからは、人事院が科学的合理的に積み上げて行くところのいわゆる
給與水準というものが跡かたもなく崩れてしまいました。そういう関係もありますので、特に私どもは民主的な
給與体系を守る上においても、人事院勧告を是非一つ実現させたい、こういう念願を持つております。そして今提案されました政府の
給與法でありますが、これは人事院勧告からいたしますると、その八八%、即ち人事院勧告より一二%低いもの、そして、その体系も何ら理論的根拠がないと言つても差支えありません。で、私はこの際、人事院の勧告に対してすら私どもは賛成できがたいのでありますが、先ほど申上げたように、当面はこの機関を尊重するという建前で行つておるのであります。従つて、今、私は反対する理由を申上げる上においては、人事院勧告が如何に現状に即していないものであるかということを申上げれば、政府原案に対する反対は極めて明瞭であろうと思いますので、その合理的に作上げられたという人事院勧告に対して若干の批判をしてみたいと思うのであります。そうして、この
給與法に対する反対は、なお私どもは、このような
給與の
法律が実を申しますると我が国の経済を破壞するものである、こういうように考えておる。それから又、政府のようなこういう案は、全然人格を無視しておる、公務員という人格を無視しておるものである。商品扱いにしておるということ、まあこういうような主なる理由で政府案には反対するのでありますが、只今申上げたように、今、人事院の勧告について一つ申上げてみたいと思います。そうして、この人事院勧告が提案された、この経過も、一応諸君に一つこの機会に、考えの上に浮べて頂きたい。
もともとべースを
改訂しなければならない動機というのは、昨年の五月の朝鮮動乱の結果、経済変動によりまして著るしく公務員の生活を圧迫して参りました。そこで私どもは当時から公務員法に基いて人事院に対しまして速かにその当時その勧告するように執拗に要請したのであります。ところがなかなかこの人事院も、その当時でさえもてきぱきとやり得なかつた。そうして八千円ベースというやつを勧告しました。それが政府によつて七千九百八十一円というのが昨年の十二月の末になつた。その後又同じ條件の下に特に惡くなつたのは、朝鮮動乱がつまり破行的景気のために非常に俸給生活者を圧迫して参つた。それ故に、我々は又執拗にこれが
改訂をしなければならない、公務員法に基いて人事院は勧告すべきであるという要請をしておつた。八月の臨時国会におきまして、我々はこの八月の国会でお互いが審議する機会を持つということに非常な期待をかけておつた。公務員は又生活が苦しいものでありますから、これに非常に期待を持つた。ところが国会が済んでから人事院が勧告したといういきさつになつておる。これらは非常に私は遺憾だと思う。そこで、この勧告の出る前から大蔵省はどう言つておるかといえば、千五百円を引上げるのだ、まるで
給與のことに対しては人事院があるかなしかのような態度で、そういうように新聞に流布して、これは私は甚だどうも政府の内部におけるやり方が国民に不信を買うものだ、かように考えておつたのであります。こういう点について、特に又大蔵省は新聞で、地方公務員の場合などは
平衡交付金は増額しないというようなことを強く打ち出して、で、この
平衡交付金を増額しないということは、同時に国家公務員の
給與も引上げないということと関連するのであります。官房長官ここにおられますが、この前の七月ですか、この前に国家公務員だけならば何とか予算があるんだけれども、地方公務員がないのだからというように言つておるので、そうしまするというと、地方公務員には……
平衡交付金は増額しないというようなことは、同時に国家公務員もやらんということ、にもかかわらず、一面には千五百円アツプするど、辻褄の合わないことを放送しておる。無責任極まる。勧告の内容でありますが、一万一千二百六十三円の内容でありますが、この勧告はこのような点で我々は反対なんです。第一は非常に安い生活水準、いわゆる生活費を基準としておるのであります。そうして小規模の事業所の民間
給與によつて算出されておるということであります。第二には、従つて民間
給與より邊かに低いベースであるということです。第三には、上のほうには厚く下のほうには薄い、こういうような構成によつてできておる。第四には、扶養手当、勤務地手当は低額に抑えられておる。特別手当は又少くて、支給方法が不合理である。まあ大体このような点で、これは皆さんも肯かれると思うのであります。我々は反対するのであります。第一の場合には、民間
給與調査の対象が小規模の事業所が多過ぎる、この場合には。従来はかなり大きい所を対象に民間の事業所をとつておつた。八千円ベースのときには、この前の勧告のときには民間の百人以上の事業所を比較にとつておつたのであります。ところが今回の場合には五十人乃至九十九人、四十九人以下のそういうつまり小さい規模の事業所までとつております。申すまでもなく国は最大の雇用者です。それだけ申上げれば、この比較にとつておる事業所というものは如何に不合理であるかおわかりだと思う。特に申上げなければならんことは、今日までの中小企業、これらの小規模の事業所というものは非常に経営の内容が惡いということです。朝鮮動乱がありまして、そうして特需景気が出たというのも、これは大きな特殊的なもので、平和的な生産工場、中小企業というようなものは、おしなべて却つて煽りを食つて、そうして経営が非常に不振だということ、これは諸君も御経験或いは十分にお知りだと思うのであります。このような事業所に働いておる者は、遅配、欠配或いは不拂、こういうような所が多いのでありまして、そういう事業所を比較的多くウエートをとつておる。試みにそれをまあ申上げますと、建設業で八〇%とつておる、製造業で三七%、卸小売で五五%、金融保險業で五九%、運輸通信業で四三%、サービス業で七二%、こういうように小さい事業所のもののウエートを非常に多くとつておる。これを申上げただけで、如何に今回の人事院勧告のベースというものが民間
給與と比較して不合理なものであるか。従つて、これは民間の企業の相当な所のベースと皆さん御承知の通り比べてみたならば実に安い。非常に安い。特に銀行であるとか或いはデパートであるとか、そういう所を取上げるまでもなく、ほかのほうの金属でも炭鉱でも、それと今の公務員ベースと比べたら非常に安い。低い。
上に厚い、下に薄いということは、これ又六千三百七円ベースのときには、最低号俸の一号が二千四百円、最高が一万六千八百三十四円で、この率は七です。ところが今度の場合、今度の一万一千円ベースでは、最低の一号俸は三千七百円で最高が三万八千円、この率は一〇です。このように比率が上のほうが厚くなつて来ておる。こういうような実態であります。
扶養手当の低額だということは、これ又扶養手当は、今日のように最低生活も保証されないというような
給與の場合においては、やはり固定して置くべきものではないと考えるのは、どなたも一緒だと思うのです。六百円、四百円というようなものは、それをそのままにして置くということは、これは極めて不合理だということは、もう申上げるまでもありません。勤務地手当の場合、地域給の場合ですが、これは御案内の通り、一月から従来の既得権というものを皆平均に五分取つてしまつた。減らしたのであります。当時八千円べース勧告の際、人事院では、基本給の中へ、勤務地手当は五分減らすけれども本給の中にこれを繰入れておるのだからという説明でありました。地域差が少くなつた。ところが人事院勧告の八千円べースになればそういう合理性があるのですが、頭から千円アツプというやつには、そういうもう合理性はなくなつたのです。そこで残されたのは五分というものの天引だけが失われたということ、既得権がなくなつたということ、こういうようなことは皆さんも御承知でもありましようけれども、公務員にとつては非常に痛手なんです。従来三割、二割、一割のやつが、今度は二割五分で五段階になつた。これなども、今の時代はこの制度が設けられたときと違いまして自由経済になりましたので、よほど考えて、そうして平均、つまり公平にしてやらなければなりません。殊にこの地域給についてはです。既得権を侵すということは、何かなし実質の、つまり收入に直ちに影響して来るのであります。で、私どもは今回のこの人事院勧告は、すでに昨年の十二月から切替えられたこの
給與の現行に対して人事院はそこから出発しているから、以前の五分を本給に入れたということはもうなくなつたものと、こういうように考えているでありましようが、これは私は如何に国会が現行ベースをきめたからと言いましても、やはり人事院としては合理的に以前からの分を延長して考えてやらなければならないのじやないか、こういうように我々は主張しているわけであります。こういうような不合理の内容を御披露申上げれば、皆さまは、もつとこの数字を私から申上げれば本当に納得して頂けると思うのであります。まあ、その時間もありませんです。又皆さんも御研究になつているだろうと思うのでありますから(「その通り」と呼ぶ者あり)省きます。
そこで、私どもはこの政府案を人事院勧告に基いて修正するために努力をいたしました。それは、今千葉君から言われた通りであります。併しこれも、いろいろな事情があろうとも、国会の皆さんが多数を以て賛成して行かれるならば、これは私は問題ではない。我々はそういう経験を持つているのです。遺憾ながら多数の諸君がこれに反対しておられる。これが承認されない私は唯一の原因だと考えて確信している。この前も修正案を持つて行つたら、現政府の予算にOKを與えているので、君たちの言うことは尤もだけれども、若しもそうしたいならば、多数党になつて政府を取ればいいじやないかという意味なんですけれども、そんなことは今すぐできません。(「国民が支持しない」と呼ぶ者あり)いや、ちよつと待つて下さい。できません。そこで、それならばこの法案を否決すればいいじやないか。そこで、この前の去年の場合、私は何とかしてここで否決をして、そうしてやろうと思つて実は頑張つたのであります。皆さんのお叱りをこうむつたけれども、やつてあげたいと思つて……そういう手続、順序で、できないという場合には、これは私は正しいことは少しぐらいは無理しても行なつたがいいと思つて実はやつたわけであります。いずれにいたしましても、多数の諸君が今日の
給與がこの程度でいいということなんであるならば、これは別でありますけれども、真に何とかして上げてやらなければいかん、こう考えられるならば、これはもう実現すると私はここで申上げることができる。いずれにいたしましても、この国会は、批准承認と、そうして一方においては
給與を改善するのが最大の眼目のように政府は宣伝しているのです。それだけに、今ここで私が討論しているこの問題がこの国会の中心問題だ。
給與改善がこれは目的だというくらいまで政府は言つているのであります。それですから、私どもは、これはやはり重要で真劍にやらなければいかん。ところがどうでありますか。今回この国会において補正予算が一千三百六十二億のうちで総理大臣以下の
給與改善費が僅かに二百六十六億円なんであります。これはどういうわけでありましようか。私はこれは現政府が
給與改善してやらなければならないというこの構想と矛盾しておるのではないか、かように考えるのであります。殊にこの千三百億の金があるということを一面にはつきりしておいて、政府は財源がない、こう言うておるんであります。財源がない……、この矛盾も私どもは考えなければいけません。財源がない……、そこで、この前にも皆さんがお聞きになつている通り、この前の前の人事院勧告の場合でも、大蔵大臣は、このベースを上げれば、民間労働者の賃金も上る、そうしてこれが物価が上る、インフレになる、こういうように強く言うたもんです。インフレになる……、だからこれはまあ一つ政策として均衡予算の建前から、そうしてインフレ抑制の財政方針からということで、皆さんは止むを得ないと考えられたかも知れない。ところが一体その際において私どもは……。(「時間々々」と呼ぶ者あり)まだまだたくさんある。その際、私どもは、
給與を上げてもインフレにはならない、こういうように私どもは主張した。いつでも物価が先に上つて圧迫されるから上げてくれと言う。ところが今日、今度の場合は、インフレになるというようなことを言わない、ただ財源がないと言う。我々は当時
給與を上げてもインフレにはならないという実証は今日ここで示されておる。インフレの危險は利潤インフレであることは、皆さんはもうすでにおわかりの通りである。一部の特需のために、特需景気のために利潤を挙げた者が、その利潤を以て大衆の生活必需物資を買占める。或いは贅沢品を買う。そうして、その後そういう経済情勢がいつまでも彼らにくみしないでどんどん物価が安くなる傾向になつて来たときに、どういう結果が今起きておるか。
給與を上げればインフレになるということは全然ないということは、もう実証された。今やそのような政策の下に現政府が育てておる連中が行なつておることは、国のために何らの利益をすることはないのであります。あの大ビルデイングが今どういうように賠償の問題に響いておるか。銀座のウインドウに、あのような、まぶしいような高い物、高価な物、贅沢品、これは勿論労働者や公務員が買えるものではありません。そういうものを消費する者があるから、あそこへ並べておるのでありましようが、それは一体日本の現状にどういう影響をしておるものであるか。(「簡單に願います」「まだ時間がある」と呼ぶ者あり)これは現政府は、当面において再生産の基礎であるところの
給與というものに対しての認識が全くなくて、逆にそういうような国力の実態に副わない、又自分たちの地位を考えないで行なつておる財政政策の結果であるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、笑声)我々は、
給與を上げる、公務員の
給與を上げるということは、常に叫んでおるように、公務員の
給與を上げるということは、同時に、これは中小企業の殷盛のために、購買力増大の呼び水を国家公務員からやつて行くことだと、こういうように主張しておる。現政府が十九世紀の資本主義的な日本の復興を考えておる。駄目なんだ。どうしてもこれは必要な時代に即した政策は、労働者の賃金を、先ず生活し得る賃金を確保しなければならん。それは購買力を増大するものである。それのみが諸君の背後にある中小企業のこれは又復活になる。(「簡単々々」と呼ぶ者あり)こういうような意味から私は冒頭に申上げたのです。この公務員というものを無視し、生活のできない賃金でこき使おうとするこの政策は、現在の日本の経済を破壞するものである。従つて経済自立を(「一時間だ一時間だ」「もうよろしい」と呼ぶ者あり)困難ならしめるものである。(「反対はよくわかつた」と呼ぶ者あり)諸君がそのようなことに気が付いたならば、(笑声)気が付いたならば、この
給與法には反対しなければならん。ただ諸君がこの指導者にごまかされておる点がないのではないかと考えるのは、(笑声)公務員というものは惡いことをするものだ、(「時間だ時間だ」と呼ぶ者あり)そうして公務員の給料を拂わなければ税金が安くなるのだ、こういうおかしな宣伝が出ておる。現に今日のこの
給與をやる公務員というのは、実際の現業で働いておる者、下級の者である。諸君の主張されておるのは権力に結び付いたいわゆる官僚、これらの者は今日多額の国費を濫費し、そして有力者と繋がつて、(「整理したほうがいいぞ」と呼ぶ者あり)そういう連中が勢力を持つて、日本の復興を如何に叫んで見ましてもです、それは到底できません。それらの考えることは、日本で搾取することができなければ(「時間だ」「議長、時間だ」と呼ぶ者あり)アメリカから金を借りて来てというようなことを考えるが落ちである。ところがドツジさんがどう言つておる。お前たちのような連中には金を貸さんと言われておる。(「降りろ降りろ」と呼ぶ者あり)━━━━━━━━━━
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━━━我々はこの
給與法というものは、單なる支配階級がですね、人間の人格を無視し、商品扱いにするというような、そういう考えでは絶対に解決するものではない。(「その通り」「わかつたよ、もう」と呼ぶ者あり)私どもは、国を憂え、日本の再建のためには、先ず(「心配無用だよ」と呼ぶ者あり)働く者の再生産が可能なものであるという
給與をやるということ、これは何も恩惠ではない。当然の権利として当り前のことなんだ。従つて、私は今ここで反対しております。反対いたしておりますが、今政府がやろうというものは当然の権利としてこれは取るんだ、こういう考えを公務員が持つておるのは当然だ。(「わかつたよ」「降りろ降りろ」と呼ぶ者あり)如何に諸君がわかつても(「時間々々」と呼ぶ者あり)行動に移さないものは贋物なんです。(笑声、拍手、「しつかりしつかり」と呼ぶ者あり)これは支配階級はそういうことでごまかす……。