○カニエ邦彦君 私は
国民の名におきまして、国費の濫費と官紀粛正について
質問いたすのであります。(「徹底的にやれ」と呼ぶ者あり)
去る第十
国会におきまして、
綱紀粛正に関する
緊急質問を行い、これに対する
政府の善処を強く要望しておきましたが、その後の状況を見まするに、官紀の紊乱と国費の濫費は日を逐いまして激増し、この事実を伝えております報道が一日として新聞に載らない日はないのであります。(
拍手)さながら亡国前夜の姿を現わしておると言
つて過言でないと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)古くから官吏の腐敗堕落を以て知られております中国には、「仕官三年坐食三代」ということが言われておるのであります。官吏を三年やれば三代遊んで暮せるという言葉であります。誠に鰐政権崩壊の原因も官吏の腐敗によることが定説とな
つていますが、
日本の現状もこれと揆を一にする末期的亡国症状と言わねばならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)
すでに御
承知のごとく、会計検査院が
国会に
報告しておりますところのあの批難事項でありますが、
昭和二十一
年度が百七十五件であります。
昭和二十二
年度が三百八十六件、二十三
年度が六百二十六件、
只今我々が審議をいたしております二十四
年度の分は実に七百五十件の大きに達して、逐年増加の状況にあり、この金額というものは八百十九億七千七百十万五千四百六円と相成
つておるのであります。子のうち国に損害を與えたものは約五十億円余に上るのでありまして、而も八百十九億余万円の不当金額は、現在の会計検査院が手不足のために全部に亘
つて検査をいたしたものではございません。二十四
年度の検査は大体三分の一に過ぎないのであります。又この七百五十件といえ
ども、これは会計検査院がふるいにふるい落した数であるのであります。このほかに
大蔵省が会計法第四十六條の規定に基きまして検査の結果、水増し計算等をなし、不当に受領いたしました等の不正
報告が、二十五
年度におきまして二十九件、五千七百余万円あり、又経済
調査庁が、僅かな人員を以て過去一年間に直接間接に国費の節減に寄與した金額は百七十億九千余万円に達しておるのであります。かように二、三の
報告書を一瞥いたしましただけでも、
国民の血と汗の固まりである国費が如何に不当不正に濫費されておるかが窺われるのであります。これらの点から考えてみますならば、一カ年間におけるところの実際上の批難金額は二千億円を超えるので片ないかと思われるのであります。若これらの事実を
国民が詳細に知り得Aならば、恐らく
国民の納税観念に大きな動揺を来たす震れのあることを私肝心痛するのであります。(
拍手)
只今衆議院の行政監察特別
委員会等で
調査をいたしております公共事業費
関係の天狗橋事件、佐賀県土木部事件、東北地方建設局事件等々は一応除外するといたしましても、最近起りました事件の中から目ぼしいものだけを拾
つて見ても、次のようなものがあるのであります。第十
国会で
指摘しておきましたところの海上保安庁の汚職事件は、山崎運輸
大臣から善処方の御答弁がございましたが、その後如何に善処されたのか。中途半端でこれが打切られたような印象を受けるのでありますが、この事件に関しましては、その後どう扱われておるのでありますか。次に文部省
関係でありますが、給食大豆加工をめぐる不正事件、元次官、局長までが
関係しておるとのことでありますが、事いやしくも純真なる学童の教育行政を掌る役所から、かかる破廉恥な事件が暴露されたということは、教育上由々しい事件ではないと思うのであります。(
拍手)天野文部
大臣は、
国民道徳実践要領なるいわゆる天野勅語を近く制定されると聞いておりますが、(笑声)正義と道徳の範を示すべきところのみずからの役所から醜悪極まる汚職の火の手が上るということは、一体何たる矛盾撞着でありましよう。これでは百の道徳実践要領をお出しにな
つても、恐らく一つの
成果をも期待し得ないのではないでしようか。それはあたかも、かの石川五右衛門が人の道を説教するのと同じようなものであります。(
拍手)一代の道徳者と言われる天野文部
大臣の御所見を伺いたい。
次に電通省電気通信研究所の五千万円を超えるという横領收賄の事件でありますが、この事件では施設局長の吉田某までが検挙されましたが、国費で妾を囲
つて料理屋まで開業させておるという醜状は一体何と見られるのでしようか。今晩の糧にまで苦しみながら血税に喘いでおるところの勤労者、
農民、或いは
中小企業者の悲惨な状態と比べ考えてみまするときに、正直な
国民ならば、義憤の激発を抑え得る者は一人もないのであります。(
拍手)この点電気通信
大臣の御答弁を伺いたいのであります。
又、創設以来公団と共に伏魔殿と言われて参りましたところの特別調達庁をめぐるところの最近の不正事件は、再三の本院の追及にもかかわらず、今なお絶え間がないというわけはどういうわけであるか。験視せんとして、黙視し得ないところであります。これにつき所管長官が如何なる
責任の所在を明らかにせんとしておられるのか、誠意ある答弁を伺いたいのであります。又更に、倒産続出の
中小企業者にと
つて唯一の頼みの綱である商工中金でも不正
融資を行な
つておる。これは元商工次官、某代議士も
関係していると言われている。東京通産局の物資拂下に関しての汚職事件、農林省の部長にまで波及しておる印旛、手賀沼干拓事務所の幽霊人夫で数千万円を横領しておるという事件、建設省関東地方建設局五十里ダムの不正事件等は、一体これはどうな
つておるのでしようか。それぞれの
関係大臣から納得の行く御答弁を伺いたいのであります。
更に
大蔵大臣には、専売の不正事件、合計法四十六條による不正事件につき、なお最近激増しつつある国費の濫費に対して、一体
大蔵大臣は如何なる所見を持
つておられるのか伺いたいのであります。
更に私が声を大にして追及いたしたいのは、警察予備隊の醜状であります。警察予備隊の贈收賄は、百万円や二百万円口はざらであると伝えられておりますが、ここでは曾
つてのあの軍閥華やかなりし頃の悪質軍人でさえも顔負けをする食欲振り、無節操振りを無反省に行な
つているのであります。特に予備隊の問題で注意を喚起いたしたいのは
予算の執行振りであります。二十五
年度末の十日間、而も主として三月三十日、三十一日の二日間に三十八億余万円という厖大な物資の買付を行な
つているような、大口だけ二、三見ましても、七億九千万円、五億五千万円という二口の貨物自動車の契約、九千万円の作業衣、六千万円の夏服、一億八千万円の石炭、一億円のブルトーザ等で、これらの巨額な買付がた
つた二日か、三日で行われているということ、たとえそれが帳簿上では合法的に処理されているとしても、かような乱暴非常識なる国費の使用振りは曾
つてその前例を見ないのであります。(
拍手)これでは不正が起るのも当然でありまして、予備隊は今や変じて收賄隊と
なつた観があるのであります。(
拍手)古来上の行うところ、これを傍うと言いますが、万一予備隊の出動を促すがごとき治安状況を招来した場合、かくのごとく腐敗堕落した幹部の指揮統率の下で、果して治安確保の使命を途行ずることができるでありましようか。今や
国民はこの点にまで疑惑を持
つているのであります。大橋法務総裁の
責任ある御答弁を要求いたします。
このように
指摘して参りますと、問題は実に無数であり、無限であります。誠に今日の状態は全身梅毒の第三期的症状に等しく、どこをつついても膿が出るという有様でありまして、今や
日本は内部から崩れつつありと私は叫ばずにいられないのであります。終戰以来国の内部がかくのごとく逐年加速度的に腐敗堕落して参りましたその根本原因は、一体奈辺にあるのでありましようか。この根源を突かずして、この問題の拔本塞源的解決は望み得ないのであります。
先ず第一に
指摘いたしたいことは、こうした問題に対する処分が極めて怠慢であり、特に
責任の地位に立つ者が、
責任のあるところをはつきりさせていないということであります。よほど問題が表面化し、縄付きを出した事件以外は単なる注意ぐらいでお茶を濁していることであります。いやしくも官紀を乱し、国費を濫費する行為を行
なつた場合は断乎たる処分を下すことは勿論であるが、これにも増して大切な眼目は、憲法政治が
責任政治である以上、所管
大臣なり、或いは総理
大臣みずからが何らかの
責任を
国民の前に明らかにすることであります。(
拍手)吉田
内閣が今日までかような事柄について
責任の所在を明らかにしたことが一体いつあ
つたでありましようか。(
拍手)恥を知り、名分を重んじ、
責任感の人一倍強いと言われる吉田総理とも思われないところであります。数日前の夕刊を見ますと、丸善書籍の販売課長伊藤某なる人が、四十万円という部下の使い込みに際して、みずから十万円は穴埋めしたが、
責任を痛感するの余り鉄道自殺をしたという記事がありましたが、
民間会社の一課長でさえ、これだけの
責任観念を持
つているのに、今や憂慮すべき段階にまで達した官紀紊乱、国費濫費につき、
政府は
国民に対して如何なる
責任を感じておられるのでありましようか。如何なる
責任をとらうとせられておるのでありましようか。(「その
通り」と呼ぶ者あり)議会政治、民主政治の生命は
責任政治という一点に私は帰すると思うのであります。(
拍手)私はこの見地から
最後に次の
質問をいたすものであります。
前
国会において本院に
報告されました二重煙突事件に関しましては、すでに一年を経過したる今日においても未だその是非が
国民の前に明確にされておりません。(「それを言いたか
つた」と呼ぶ者あり)大橋法務総裁に対する疑いは、偽証、脱税、政治
資金規正法違反等でありまして、東京地検馬場検事正の中間
報告によると、会社側の社長田中平吉、事務高橋正吉の両名はすでに詐欺罪で起訴されました。然るに大橋法務総裁に対しては数項目の
質問書を発したが、未だにその回答を得ていないと言
つております。その
報告の中で検事正は、政治
資金規正法の分は本年一月を以て時効にかか
つている故起訴
條件にならない。その他はまだ大橋総裁から回答がないということであります。
従つて本院が
指摘をいたしました大橋氏に対する容疑事項は少しも潔白にな
つていない。むしろその容疑は一段と濃厚にな
つておるのであります。(
拍手)たとえ法的に問題が時効に
なつたといたしましても、その事実があ
つたということだけは嚴然とした事実でありまして、道義的
責任は今日といえ
ども私はなお免れ得ないと思うのであります。(「まだはつきりしないよ」と呼ぶ者あり、
拍手)この二重煙突事件は、
国民の血税から支拂われた巨額の金が不正手段によ
つて領得されたのでありまして、そうしてこれが犯罪事件とな
つておるのであります。(「きま
つてから言え」「黙
つて聞け」と呼ぶ者あり)その不浄の金の一部が顧問料という名目で大橋法務総裁の下に渡
つたことは事実に相違ないのであります。今日詐欺横領をや
つたかどで会社の
責任者が法の裁きを受けているのに、その会社の顧問として、顧問料をもら
つておられた大橋氏が、法務総裁という重要な地位に恬然として何らの
責任も感じていられないとは何たることでありましようか。又本件において大橋総裁が、そのもら
つておられた顧問料の税金を脱税しておられた容疑は、今や確定に近いほど濃二陣にな
つておると確聞いたしておるのであります。およそ
国民の先頭に立つ政治家、とりわけ
大臣の地位にある人、その中でも特に司直の府の長たる人は、(「議場しんとして声なし」と呼ぶ者あり)人格の高潔な、公人としては勿論、私人としても一点の疑惑も持たれない清廉潔白で
責任観念の強い人でなければならないことは議論の余地のないところでありますが、
国会において幾多の容疑事項を明らかにせられ、而も一年の久しきに亘
つて今なお深い疑惑に包まれておる人が何ら
責任のあるところを明らかにしないで、法務総裁の地位を汚しておられることは、果してかようなことで一国の官紀が粛正せられ、汚職、汚職事件の根絶が期し得られるのでありましようか。(
拍手)春秋の筆法を以てすれば、我が国今日のこのなげかわしい、且つ深憂禁じ得ない腐敗堕落は、大橋法務総裁が毫も
責任を明らかにせられないことがその最も大きな原因の一つであると申しても(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)あえて過言ではないと思うのであります。(
拍手)若しそれ法務総裁ほどの人が脱税行為をしておられたことが決定的にでもなれば、
国民の思想上或いは納税意欲の上に與えるところの
影響は如何でありましようか。私はこの場合法律上の
立場から法務総裁を追及しようとするものではありません。私は民主主義に立つ政治家の生命である政治的道義感、政治的
責任感の
立場から法務総裁の
責任を質しているのであります。(
拍手)大橋法務総裁は以上私が申述べましたような
立場に立
つておられながら、今後もなお法務総裁の地位に恬然としていられることが、重大化した今日の官紀紊乱、国費濫費、汚職続出という世相に何らの悪
影響も與えずとの信念を持
つておられるのかどうか、この点はつきりとお答え願いたいのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)もとより私は大橋法務総裁に対しては公私とも何らの恩怨もありません。(笑声)個人としての大橋氏にはお気の毒でありりまが、併し私は国内の現状を坐視するに忍びず、この現状を悲しみ、その将来を憂うるの余り、あえてかく
質問いたすのであります。以上の各項に対して大橋法務総裁の良心的な答弁を求める次第であります。
最後に吉田総理
大臣にお尋ねいたしますが、総理
大臣は私が今まで申述べて参りました官紀紊乱、国費濫費、汚職続出の問題をどういうふうに御覧にな
つていられるか。又どういうふうにお考えにな
つていられるのか、これをお伺いしたりいのであります。誠に今にして官紀粛正、汚職絶滅の根本政策を断行しなければ、我が国の道義は地に落ち、正義は影をひそめ、ひとり悪人と恥知らずだけが跳梁跋属するのみであります。そして国家は遂には内部崩壊の悲劇に見舞われるのであります。私は政治的理念や、政策、主義主張は別といたしましても、少くとも
綱紀粛正の問題だけは、吉田首相は何人よりも真劍に考えておられる人であると信じておるのでありますが、官紀の問題、国費の問題、汚職の問題を徹底的に根絶するため、果して吉田総理
大臣は如何なる御信念、如何なる御決意を持
つておられるのか、この際、はつきりとお伺いをいたしたいのであります。(
拍手、「
国民の声だぞ、今の演説は」「格
大臣の答弁」と呼ぶ者あり)
〔
国務大臣益谷秀次君
登壇、
拍手〕