○河崎ナツ君 私は
只今社会保障制度推進に関します
決議が満堂各派の皆樣の御賛同によりまして可決され、又これに対しまして精進するという
政府の宣誓を得ましたことは心から喜びに堪えない次第でございます。それは言うまでもなく、
独立日本の目標は自立
経済の
確立と健全なる
社会の育成にあり、
従つて産業を
発展せしめると共に、
国民一
人々々の最低
生活が
確保されることがその
基本條件であり、
社会保障制度はここにかか
つていることにしおいて、今日の
決議は持に意義の深きを感ずるのでございます。それにいたしましても、私はここに二、三の疑点につきまして
政府の所信をお聞きいたしまして、一層はつきりと心から喜びたいと思うものでございます。
その第一点は、昨年の
勧告案には
戰争犠牲者、わけても働き手に死なれた妻と遺兒の問題が取り外されておりまして、多くの未亡人とその子供たちを淋しがらせていたのでございましたが、今度の
勧告案にも、又
推進の
決議にも、
戰争犠牲者の援護を進め、又
政府もすでに一億円を
計上いたしまして、その実態調査に当る気がまえを見せて下さいましたことは、何としても朗報の大いなるものでございます。元軍人、軍属の遺族、
家族、傷痍者たちへの相当な援護は当然のことでありまして、今日まで放置して参りました
責任は実に
政府に大いにあるものと思うものでございます。来たる二十七
年度には、これらのかたがたに対しまして、速かに
予算措置を講ぜられんことを望んでやみません。併し私はここに次の事実を述べまして
政府の考慮を促すものでございます。と申しますのは、
戰争犠牲者の三分の二近くは遺族未亡人とその子供でございます。又その三倍近くが遺族ならぬ引揚未亡人、戰災未亡人であり、一般未亡人とその子供らでございます。これら百七十余万人の未亡人と二百万に近い幼いその子供らとの
生活が、このたび遺族未亡人とその子供らの集団から取り残される驚きに、今
全国未亡人会の騒然たる声を私は耳をふさぐわけには行かないのでございます。一方はお国に召されての死であり、他方は戰災に会い、又病に死んだ相違はあ
つても、残された子供とその母は共に頼りの少い子供とその母親であります。皆、国を継で大切な子供であり、共にその養い手の母たちであります。ところで
日本ではその九五%までが
生活技能を持たされていない女性である未亡人の子供を抱えての
生活には、ややもすると今日二十万人に及ぶ集娼、散娼に繋がりやすく、東京では集娼の三分の二、名古屋では半分に及ぶ子供をかかえた売笑者を数えるということを宮城タマヨ氏の調査が
報告しております。又
全国旅館に働く二十七、八歳以上のお座敷女中の殆んどはこれらの未亡人で、その子供を細腕に養
つたり教育したりして、一縷の望みをその将来に繋いで、佗しい
生活を雄雄しく生き抜いております。これら雇用婦人は他の雇用婦人と共に実に七十万人に上るものでございますが、その
生活の逼迫は、その
生活を暗い日々に引落さないと誰が保証し得るでございましよう。聞くところによりますると、
政府はこのたび勅令第九号によりまして取締られておりましたところの売笑に関する処罰令を講和
締結と共に
法律化して、不法に強いた者は三年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処して取締る親心を見せようと準備しているとのことでございますが、これには自分の意思で就業する者はその限りでないと、言外にちやんと大きな抜け穴を掘
つてはあるにいたしましても、一応は
かく不法者を処罰して、強いられた女を守る親心があることは喜ばしいことでありますが、それならばなぜ百尺竿頭一歩を進めて、かかる途を選ばずとも生きて行けるように、未亡人たちをしてその
生活への支柱を、
社会保障制度の内容として一日も早く準備しようとしないのでありましようか。スウエーデンも
イギリスもニユージーランドも、すでに太くこの支柱を立てております。
日本と同じく戰いに敗れましたフインランドもドイツも、今やこの
生活の支柱の準備に努めております。
池田大蔵大臣は、全未亡人とその子供にまでその実態調査を拡める
ため、
予算の一億円を更に増すつもりはございませんでしようか。更に又近く組まれるであろう二十七
年度国家予算に、これら全未亡人とその遺兒の
ために、よしささやかなりとも、先ず一本の
生活支柱をお立てになる熱意はございませんでしようか。且つ又
関係厚生大臣はこれら未亡人とその子供への遺兒年金或いは母親年金について何かの企画をお持ちでありましようか。謹んで御所見を伺いたいと思うものでございます。
第二に、
社会保障制度推進と関連いたしまして現下の
日本では人口問題の解決を抜きにしてはできないことは言うまでもありません。第二次
勧告案にも指摘されております
日本の人口問題につきましては、アツカーマン博士も指示するごとく、その第一
方法として妊娠調節を取上げることにあります。これは婦人の
生活に曾
つてないかかわりのあることでありまして、今日婦人は
政府のこれに対する施策を注目しております。一昨二十五
年度には二十六万人、昨二十六
年度には五十万人の妊娠中絶者のあ
つたことは、待ち切れずに踏み出した庶民
行動の別方面の一端であります。その最も多くが
経済的
理由であり、
従つて勤労階級の多くが、その
生活安定の
ために適切な指導を待ち抜いておることは今日の事実であります。厚生省は先に調節の薬の検定をされましたが、もはや今日はこれが
実行指導をなすべきのときではありますまいか。これに対する厚生大臣の御所見をお伺いいたします。若しこれが指導に進まれるとするならば、如何なる
方法を考えておいでになるでありましようか。一昨年の
国会の自由討議に、
日本医師会の一議員のかたは、
日本の若い助産婦四万人を各県の医師会がそれぞれ再教育して、各家庭で個々に指導をさせてはと語
つておいでになりました。又諸方の保健所ではすでに相談室を設けて、その相談に当
つている所もありました。アメリカでは薬局に別室を設けて、薬と器具を売るかたわら、良心的な指導をしておる
報告を受けております。それは主として西欧諸国にも見受けられたことでございました。一体
政府は如何なる施策を考えておられるでありましようか。私の恐れておりますのは、今日地方の各地に参りますと、薬屋がその宣伝班に自家の薬と
説明の幻燈機を担がせて、薬の効果九五%と吹聴し、やや良心を欠いた
方法、指導をして廻
つているのを至る所に見る事実でございます。如何に統制撤廃、自由放任好みの御時世とは言え、無
責任な
方法と薬で勤労庶民のふところと、女性の肉体とを荒し廻るに任せておいてよいものでありましようか。あえて諸事に経綸多き橋本厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
更に私は、
日本の今日
社会保障のすでに
推進して来たところの一角が危く崩れかけておる事実を指摘して、岡野
国務大臣の考慮を促したいと思うのでございます。
日本の
社会保障制度の面ですでに大きく
実施に踏み出しておりますのは、兒童
福祉事業であり、その保護施設でございます。ところでこの保護費が、ドツジ氏の示唆による地方平衡交付金に盛込まれていることによ
つて兒童の上に流されて来ず、
福祉施設の貧しい不幸な兒童と、これを養護しておる婦人
勤労者の三十余万人が一昨年このかた日々にますます干ぼしになりつつある事実でございます。このことは一昨年来私のしばしば指摘したるところでありまして、地方
財政のやり繰りの
ため、他に流用されることのないように平衡交付金の枠から取出して、
生活保護法による補助金のように、じかに兒童の
福祉に生かされるようにと、岡野
国務大臣にもたびたび申上げたのでありましたが、二十六
年度予算にもこの
措置がなされず、今や大臣の無関心が積り積
つて、この六月の調べでは、保護費の五カ月、六カ月未
拂い、又は支拂遅延の施設が何と三十県七十四カ所に及んでおります。又保護兒童を断わ
つたり、保護するのを避けるという事実が十七県二十三カ施設に見られます。又保護費の
徴收が不当に強か
つたり、さては費用の拂える富裕兒童に限定するとい
つた、施設の精神と逆行する事実が五県に六カ施設も現われてさえ来ておるのでございます。その他十八県に二十七
事件の逆行事実、併せて計百三十施設に起
つている非人道
事件のほかに、私立
経営者はこれが切抜けに私産を傾け盡してさえおります。
日本の
社会保障制度の哀れなる一事実でございます。昨年厚生
委員会で岡野
国務大臣は、善処を促した私に答えて、私も考えている、手許にも少しは事例があるが、もつと事例を示して欲しいと言われたのでありましたが、以上百三十六事例ではまだまだ不足でございましようか。(笑声、
拍手)それとも又これは不憫だと、二十七
年度からは平衡交付金の枠から取出して、じかに不幸な兒童たちを守り抜き、以て
日本の
社会保障制度を実あらしめることに努められるお考えはおありでありましようか。又一方施設の所管大臣であるところの橋本厚生大臣は、如上の事実に対して如何なる手を打たれたでございましようか、BCG接種待
つたを宣言したり(笑声、
拍手)公務員の首切りに忙しくて、それどころではないとでも言われるのでございましようか。(
拍手)大臣が十三万人の首切りに專念しておられる間に、一方には三十万人の施設の兒童と、その薄給なる養護勤労婦人とを文字
通りに干ぼしにしていることをお考にはなりませんか。橋本厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
以上を以ちまして、私の
社会保障制度施設
推進に関する質問とするところでございます。(
拍手)
〔
国務大臣橋本龍伍君
登壇〕