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重盛壽治君 私は社会党を代表して、
行政整理の一環として論議されつつあります定員法に関して
緊急質問をいたします。
国家財政の均衡を図り、減税をやるのに、労働者の首切りによ
つて財源を求むるがごとき
方法は、すでに過去の政治法則であります。而も戰前のごとく胃腸病患者や肺結核患者を続出せしめたる時代と、労働條件の異な
つて来ておることをお忘れにな
つておるようであります。常に法律を振り廻す
政府諸公が、労働法規だけ無視して、一握りの退職金さえ出せば解決付くものだというような、勤労階級をして奴隷扱いをなすがごときことは、断じておやめにな
つてもらわなければなりません。(「その
通りだ」と呼ぶ者あり、
拍手)
政府は常に講和調印ができれば
国民生活を安定せしめると言い、民主主義日本確立を目標として日本の
国民総力結集による協力を求めており、
国民も又講和條約が調印されれば
生活が安定し、みずからの與えられたる職務に忠実に努力し、民族全体がなごやかな気分で日本の再建に当るのだという希望を持
つておるのではないかと思うのであります。然るに
政府は條約の批准のための臨時
国会で、
国民の大多数が反対しておる米麦統制撤廃を強行しようとなし、又団体等規正法を作る用意をしたり、或いは労働組合法の改惡をしなければならないというようなことは、およそ時代逆行であり、何のためにこのようなことをしなければならぬか了解に苦しむものであります。特に社会保障
制度或いは失業対策も不完全、有名無実であり、機構改革も完成せざる段階において、定員法だけを作り、首切りをやり、農林省関係二万六千七百六十五名を初め、総計十三万五千三百四十六名を整理し、勤労階級を不安動搖せしめるがごときことは、今日の日本再建の原動力たる勤労意欲を抹殺し、あらゆる産業を麻痺せしめるところの恐るべき政策であります。そこで、この際少しは無理があ
つても現状を維持することが、
国民に心理的惡
影響を及ぼさず、特に目前日本の再建の方途は農、漁業、工業等を初め、あらゆる産業発展に待たねばならんとするならば、これらに従事するすべての人々の指導監督に当る官公吏に対して、喜んで協力できる体制を樹立することこそが、
政府の任務であり国家再建の基礎であろうと考えるものであります。
従つて現在の機構を机上拙速主義によ
つて改革することなく、講和推進との関連による十分なる研究と
国民の総意を聞いて事を処理すべきであると思うが、
政府は飽くまで定員法を強行する意思であるかどうかをお伺いいたしたい。先般
千葉議員の
質問に対して明確の答弁がなされておらなかつたが、
政府が機械的な天引人員整理をするので、各省各庁では閉口しており、止むなく数字を合せるための表面整理はやるが、実際にはなくてならぬ人員であり、特に特殊技能者等は絶対に減員できないのを無理にやるために、一方で整理をやりながら一方では直ちに臨時採用をしなければならぬ、これに該当する人件費がないので、事業費や物件費をこれに充てるという、かような結果は必然的に能率の低下を来たし、特に事業庁におきましてはお付合い整理をやる、このことのために事業上に一大支障を来たして来るのであるが、
政府はこの点どのように考えておられるか。御答弁をお伺いしたい。
次に教職員の一律整理も同断であります。六三制を
実施する最低線さえも維持されておらないのに、お付合いで五%を整理するということは、みずから六三制を否定することであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)かくのごとく
政府の無謀なる教員整理によ
つて最も迷惑をこうむるのは一体誰か。教員であると同時に日本の将来を双肩に担うところの子供
たちであることを銘記せなければならんのであります。(
拍手)去る十六日、組合との交渉に、岡野大臣は、金がないから首を切ると言つたそうであります。而も教職員を芸者扱いにして、この面倒を見るのには金が要る、この金は捻出するか節約することだが、捻出することができないから首を切るのだと放言したそうであるが、このような考え方であるとするならば、教育問題は一体どうなるのかお聞きしたいのであります。(「その
通りその
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)特に中央で示された五%の数字は窮迫した地方財政によい口実を與えます。教職員の多量の出血を見、再び一学級六十人、七十人を詰め込むところの鮨詰め教育が断行され、六三制を破壞に追い込むことになると思うが、関係大臣は何と考えておるか。答弁をお聞きしたい。(
拍手)
次に食糧庁関係に移りますが、定員法に関連してお聞きしておきたいことは、第一に、
政府は米麦統制撤廃に対して如何なる成算を持
つておるのか。第二に、
政府は米麦統制撤廃
法案を
国会に上程して
実施する予定であるか、それとも政令で出す考え方であるのか。第三に、
政府はドツジ氏の来られたことによ
つて米麦統制撤廃の既定
方針を変更するかどうか。この三点をお聞きしたい。今日、米麦統制の撤廃が
決定せざるにもかかわらず、食糧管理者を六〇%、検査官を五〇%の大量首切りをやろうという乱暴なことが発表されておるが、かくのごとき無謀なことは明らかに
政府の行き過ぎであると断ぜざるを得ないのであります。仮に統制が撤廃されたとしても、現在一人三役を勤めて漸く管理しておるところの人員を、半数以下にしてや
つて行けるとお考えにな
つておるのかどうか。又明確に統制撤廃の原則に立
つて首切りを主張しておきながら、改正定員
法案の附則のほうに、統制が撤廃されなければ七千九百六十一名は政令によ
つて増員できると示されておるが、行政機関の定員は法律にて定められるべきものであ
つて、政令によることは
国会の審議権を無視しておるものと考えるが、この点、
政府は何と考えておられるか。明確なる御答弁をお伺いする。又統制撤廃を理由に人員整理をしようとするとき、できない場合の附則を附するということは
趣旨が一貫しないと思う。この場合、検査や統計は首の切りつ放しにするつもりかどうか。はつきりと説明をしてもらいたい。更に検査であるが、検査業務は農産物検査法の制定の
趣旨より見ても、統制とは別に考えなければならず、統制が撤廃されても農産物検査法が改正されない限り、米麦はすべて強制検査であり、検査数量には変りなく、自由になることにより検査も複雑化して来る。商取引には権威ある検査がなされなければならず、首切り等とは全く反対に増員しなければならぬであろうと考えるが、
政府は何と考えておるか承わりたい。次に統計調査の関係であるが、これも今日我が国重要産業にすべて関係を持つものであ
つて、ただに食糧統計のみでなく農業計画、林業、漁業、殊に従来の漁獲高等の数字はかなり誤算されておつたと聞いておる。被害発生等にも、食糧増産に対しても、はつきりした統計によらなければすべての政策断行に困難であり、これらの人々を中央で整理したとしても、地方ではすぐに採用しなければならん。国家経済においては何ら変らないのであるから、この面の人員整理等は断じてなすべきでないと考えるが、
政府の答弁を求めます。更に又現在日本の再建に重要なものとして、林野、畜産、水産、農地、農政、輸出、又輸出の根幹をなすところの蚕糸行政等は、天引整理は絶対にやめなければならんと考えるが、関係大臣の御答弁をお願いします。
次に、地方平衡交付金の増額を図ることなく、地方自治体を拘束するがごとき地方自治体の機構の改革並びに人員整理等、新聞に報道せられたのであるが、この点に対して、一、二
質問いたします。地方自治体の行政機構の改革、事務整理縮小並びに人員整理案の具体的進捗
状況は如何にな
つておるか。又昨日新聞に発表されたる地方行政簡素化本部案が事実であるかどうか、関係大臣にお伺いいたしたい。更に先般地方自治庁より各都道府県宛通牒した
基準職員数算定
方法についてお伺いをしたい。この法律は、地方の特殊性、自主性を全く無視し、一律整理の公算が大になると思うが、この点の見解をお聞きしたい。なお、
基準職員数算定
方法は、人口、面積、
基準財政需要、
予算定員をフアクターとし、補正計数による補正を行な
つておるが、真に
基準職員数を算定しようとするならば、右算定
方法は不十分である。産業経済の
状況、交通の便否等を十分に考えねばならないにもかかわらず、ただ單に人口、面積及び
基準財政需要額を以て職員数を算定することは、地方の実情が全く無視されたものであると言わなければなりません。この
基準職員数は現在の職員総数を再配分しようとするもので、これは一応、人口、面積等の簡單な数字で機械的に各府県のでこぼこをならし、一律整理の準備をなすものであり、なお、標準団体の想定が平均数以下のところにおかれると考えるが、この点はどうな
つておるのかお伺いをしたい。
最後に、地方行政簡素化本部において、昨日新聞紙上に発表され、地方
公務員十二万を整理すると報道されておるが、若しあの発表されたる数字が事実とすれば、地方の実情を全く知らざるものと言わざるを得ません。その一例は、教職員は中央発表が五%であり、地方行政簡素化本部案が一〇%であり、いずれを中心となすのか。この一点を以てしても、如何に今回の定員法が粗雑極まるものであるかを指摘しなければなりません。(
拍手)加うるに、
政府に
勧告する権限を與え、地方自治体首長よりは、それに基く
実施計画を提出する義務を課するがごとき法律は、地方自治の侵害であると思うが、これに対する見解をお伺いしたい。
終りに私は、首切りをして失業者を出すよりは、賃金の引上げをして
生活の安定を図り、全勤労階級の協力を求むることこそが、日本再建の根本
方針であろうと存じますので、この際、定員法を今
国会に提出することを延期せられんことを希望し、各項目に亘
つて関係大臣の詳細なる御答弁を求めて、私の
質問を終ります。(
拍手)
〔国務大臣橋本龍伍君
登壇、
拍手〕