○境野清雄君 去る十九日の池田
大蔵大臣の
財政演説に対しまして、私は
国民民主党を代表いたしまして
質問をいたしたいと思うのであります。
大蔵大臣の
補正予算及び
明年度予算方針に現われました
財政金融方策は、極めてお座なりで、楽観的に過ぎるという
ような感があるのでありまして、計画性を甚だしく欠いておると思われるのであります。占領下にありまして、米国の援助の下に運営されて参りましたところの丸抱え的な
財政金融から、講和締結による自立自前の
財政経済を確立せんといたしまするところの第一歩の施策といたしましては、深い考慮と十分な研究が欠けておるということは、どうしてもそういう
ように考えられるのであります。各項に関しまするところの細目の
質問は委員会に讓りまして、私は
財政方針の根本問題となるべき次の諸点に関しましてお尋ねしたいと思うのであります。
第一に、丸抱えの
経済から自立自前の
経済へ移行する必要な如何なる施策をとらんとしておられるのか。即ち私は、中央の
財政、地方の
財政及び会社その他個人の
財政を引つくるめまして
国民村政と呼んでよいと思うのでありますが、この
国民財政においては、ひとしく、中央、地方及び各個人の
財政、いずれもが、その所に
従つて調和を保ち、均衡を得る
ようにするのが、真の
意味における均衡
財政の名に値するものと思うのであります。然るに
補正予算等に現われましたところを見ますと、過去においてもそうであ
つたのでありまするが、中央即ち国家
財政に重点を置き過ぎている嫌いがあるのであります。即ち中央
財政の均衡を得るに努め過ぎました結果、地方
財政が均衡を失い、各個人の
財政は均衡を失して顧みられておらないのであります。地方
財政におきまして平衡交付金を百億円増額し、
年度総額千二百億とし、別に新規地方債百億が資金運用部資金によりまして引受けられると言われるのであります。併し、地方側の主張では交付金の
補正増三百七十億を必要としている
状態でありまして、百億の決定ではやがて地方税の増額が必至となる。このことは、まさしく地方
財政の不均衡を示すものでありまして、この点につき数字を挙げて説明して頂きたいと思うのであります。
日本経済が自立するには、
日本の産業、殊に
貿易部門を増進させねばならないことは申すまでもないのであります。然るに
我が国の
物価は
国際物価水準と比較いたしまして一五乃至二〇%くらいの割高とな
つておるのでありまして、これが輸出を阻害しておりますることは、最近のプラント輸出その他の輸出不振の原因より見ましても明らかなところであるのであります。
政府は、
貿易振興につきましてその筋の指令を受け、大本も決定しているのでありますが、その遂行のためには、
日本の
物価を
国際物価水準にまで
引下げることが根本であると思われるのであります。一方、国防の
分担金、
警察予備隊費、国家警察費、賠償、外債、外国人財産補償費、対日援助返済費等、非
生産的支出が現実の問題とな
つておりまするときに、
政府は近く鉄道、郵便、電信電話等の料金の値上げを民間
企業に先がけまして実施せんとしておるのでありますが、これは
物価の騰勢を招来し、インフレを助長することは必至の
情勢と考えられるのであります。この間の矛盾を
政府は如何に考えておるりでありますか。先に私が大臣の
演説を楽観的だと指摘したのも、こういう点にあるのであります。
基礎産業に関しましては補給金を出せという
ような要望もありますが、
大蔵大臣は、これに対して
反対しておられるやに聞いておるのでありまして、二重
価格制の採用の意図があるかないかをお伺いしたいのであります。
又、
日本の
物価を国際水準にまで鞘寄せせしむるところの最も重要な要素に産業
設備の
近代化の問題があることは申すまでもないのであります。昨
年度通産省よりの、この点に関しましての
予算要求は、大蔵省によ
つて一蹴されておるのであります。二十七
年度予算におきましても十億の要求を提出しておるということでありまするが、産業
設備近代化に対しまして
大蔵大臣並びに
通産大臣の所見を伺いたいと思うのであります。即ち
政府は法人税の
引上げを
企図しておるのであります。これは先般の
大蔵大臣の
財政演説によ
つて明らかなのでありまするが、この税金の法人税の
引上げ、従来の法人税はいわゆる事業税、住民税を合しまして総体が五二・二五であ
つたのでありまするが、今度のものにつきましては、法人税におきまして七%の
引上げをし、併せてこれに附帯するところの住民税が六・三%に
引上げられておりますので、総計六〇・三%という
ようなものに相成
つておるのであります。即ち法人の担税率は八・〇五%加重されているのでありまして、つい最近におきます五割突破が騒がれてお
つたのでありまするが、ほとぼりのさめないうちに今度は実に六割突破になることにな
つているのであります。今日
企業収益が向上していると言われておるのでありますが、これは過小資本による表面上の高収益でありまして、換言すれば償却を犠牲にした見せかけの高收益であるのであります。又産業基盤の極めて脆弱な
我が国にありましては、景気、不景気の波が激しく、僅かの期間の高収益を基準にするがごときは当を得たものと言いがたいのであります。かかる方策を以ちまして、
政府は果して資本の蓄積が可能であり、産業意欲の増進がなされると考えておられるのかどうかということを伺いたいのであります。又投資信託が順調に行われていると申されるのでありますが、その取扱額の増勢も、仔細に検討いたしますると、今日の通貨発行額より見ますと遅々たるものがあるのであります。決してこれを以て満足すべきものと言い得ないのであります。今日の株式会社の資本構成は、或いは持ち合せ或いは拂込資金を貸して拂込みさせる等、真の資本暦の上に立脚したものではないのであります。
次に、
政府は外債の利拂いによりますところの国際
信用の回復と
国際通貨基金及び国際開発復興銀行への加入等により、
外資導入が可能と考えているのでありまし
ようか。冷たい戰争の最前線にありまして、
貿易の收支のバランスがとれておらない
我が国経済の現
段階では、民間の資金、而も長期の資金が容易に入
つて来るとはどうしても思われないのであります。一部技術
導入に伴う株式の取得その他少額のものは考えられるのでありまするが、多くを期待することにつきましては疑いなきを得ないのであります。
電力の
不足が今日
我が国産業発展の最大の癌であるにもかかわらず、
経済発展を図るという面に、何ら動力源
不足による
生産に及ぼす
影響を考慮に入れておらない
ように見受けられるのであります。
政府は電源開発のために、アメリカ
政府を通じまして、アメリカの開発銀行からの融資を懇請する意図を持
つているのでありまし
ようか。果して持
つておられまするならば、如何なる準備態勢の用意があるかをお伺いいたしたいのであります。又外国に依存するのみでなく、自力で真劍に電源の開発を考慮せねばならないわけでありまするが、先般発表されました電源開発公社案につきましては、
政府は真にこれを実行に移す用意があるかどうかということも伺いたいのであります。
政府は、開発銀行の出資を七十億増額し、又現行法を改正いたしまして
金融の疏通を図り、以て必要諸産業の資金供給を潤沢にせんとしているのでありまするが、民間資金の需要に応ずるために、
政府運用部資金を市中銀行に廻しましてそれを貸出さしめる意図ありや否やもお伺いしたいのであります。
政府は、一時
国民貯蓄を奨励し、
金融機関の資金供給を豊富にするために、貯蓄債券の発行を
企図しておられるとのことでありまするが、むしろこの際、思い切りまして、無記名預金制度を再開してはどうでありまし
ようか。実質的に見て貯蓄債券も無記名預金も大差はないものであります。
国民の間に慣熟しておりまするところの該制度を患い切
つて採用し、以て民間資金の還流を迅速ならしめる必要があると思うのであります。(
拍手)
次に、池田
大蔵大臣は、講和條約に伴う賠償支拂につき、
日本の
経済の許す範囲内で支拂うということを言明されましたが、これは至極当然のことであるのであります。併しこれは、言うは易く、実際問題といたしましては、支拂の
増加を来たし、困難を増すものなのであります。殊に
政府は、役務賠償ということを以て比較的楽観的に考えておるのでありまして、その現実に
国民生活に及ぼす
影響につきまして十分な考慮を拂
つておらない
ようでありまするが、この種に類似する過去の経験から推してみましても、役務賠償とて結局相当な
政府支拂を必要とするものでありまして、
国内的には物資
増加の裏付けのない通貨膨脹という結果を招来するに至ると考えられるのであります。この点に関しての思い切
つた施策が併せ行われないならば、
インフレーシヨン増進の
傾向は強められると言わざるを得ないのであります。
政府は、外債に関しましては、これが返還を言明しておられるのでありまするが、私も全く同感なのであります。現在外債といたしましては、米貨債が六千七百万
ドル、英国債が六千一百万
ポンド、仏国債が五億七千八百万フラン、これを
ドルに換算いたしまするならば二億五千八百万
ドルという厖大なものに相成
つておるのであります。なお、償還期限を経過しておりますものが元利におきまして六千三百万
ドル、この延滯利子と申しますか、未拂利子が一億四千万
ドル、合せて二億三百万
ドルというものが現在あるのであります。そういたしまして、外債の換算は、一
ドルが当時におきましては二円九厘、
ポンドが九円七十六銭三厘、一円が二フラン十五サンチームという
ような計算になるのでありまして、
ドルをと
つて見ましても、その為替差損は三百五十八円弱となるのであります。この差を一体誰が
負担するのか。結局国家が
負担することになるのでありまし
ようが、この
負担だけでも大変なものと思うのであります。現在の外貨支拂能力は三千万
ドル乃至四千万
ドルと推定されているのでありますが、如何なる
措置によりまして、これが支拂に当られるお考えか。この点についてお伺いいたしたいのであります。
大蔵大臣はイタリア式の借換方式によらず、
日本の国力により対々の借換をすると言明しておられるのでありますが、その点、私も至極賛成でありまするが、
日本の
現状において果して相当多額の借換が可能であると思われますか。
日本の国情は、自立
経済への第一歩を踏み出しはしましたが、これが外債の借換の域に達するまでの
経済安定には未だ至
つておらないのであります。この
段階に到達するためには、種々なる準備、即ち前述のごとき諸施策の実行が要請せられるゆえんなのであります。
次に、條約締結に伴いまして、今日まで米国より得ましたところの二十億
ドルの援助資金を返還しなければならないわけでありまするが、これは勿論
日本の
経済力の許す範囲内で忠実にその支拂を実行すべきものであり、たとえ多年に亘る分割拂いの方式によるといたしましても、これが
日本の自立
経済回復及び健全
財政維持への道程をかなり鈍化させるものと考えられるのであります。この点につきまして
政府は、前述の外債支拂、役務賠償と睨み合せて、愼重な対策を樹立せねばならぬにもかかわらず、
予算案を見まするのに、か
ような考慮は拂われでおらない
ように見受けられるのであります。或いは自然増收が今後も長く続くことを軽々に予測し、或いは今
年度国際収支一億二百万
ドルの黒字を以てその前途を楽観する等、全く安易な
態度に終始しておるという
ように考えられるのであります。これでは
日本経済自立の難関を乘り切
つて我が国を安泰の安きに置くことは不可能と思われるのでありまするが、如何なものでありまし
ようか。
次に
大蔵大臣は銀行法の改正を意図しておられるのであります。それは銀行法を全般的に改正すること、即ち講和後の
日本経済の自立に即応する民主的
金融制度を確立するという
意味であろうと存ずるのであります。
日本の
金融制度はこの際全般的な見直しが要求せられておるのであります。即ち全般的な見地に立
つて、日銀、開発銀行、輸出銀行、市中銀行の問題等を一樣に考究せねばならんのであります。従来、
政府は、この全般的な見地を等閑に付し、東銀債、貯蓄債券、開発銀行の開設等に手を著けたのでありますが、これは全体を忘れておるために、
金融機構の完全なる運営というものに多くの盲点を残しておると考えられるのであります。(
拍手)若し銀行法を改正せんとするならば、従来の
態度を改められまして、民間の意向を強く取入れ、真に
経済復興に資し、(
拍手)平和
日本の
金融機構として恥かしくない
ような民主的機構を作
つて欲しいと要望するのでありまするが、この点につき大臣の
方針を示して頂きたいと存ずるのであります。
次に、
手持外貨及び外貨債券保有高は九月末現在におきまして六億七千百万
ドルでありまして、国際収支の好調を誇示せられておるのでありまするが、何故にこの
手持外貨を有効に使用するの方途を明示せられないのでありまするか。(
拍手)二十五
年度の朝鮮事変前において外貨保有高は五億
ドル近くあ
つたのであります。当時廉価な原資材を入手できたにもかかわらず、事変発生後、あわてて
輸入促進策をと
つたために、二倍程度
騰貴した
価格で入手せざるを得ない事態に立ち至り、且つ適品の
輸入は全く不手際であ
つたのであります。この
ような責任は一体誰がとるべきものでありまし
ようか。現在は国際
情勢の変化から
物価の低落を伴い、近く又徐々に騰勢に向わんとする
傾向にあるのでありまして、
輸入促進を図る最もよい時期であると存ぜられるのでありますが、このときに当りまして、六億七千百万
ドルの
手持外貨があるとして得々としておられることなく、これが有効な使用につきまして愼重なる御配慮を切望してやまないものであります。
次に
中小企業の振興について特に強く一言申上げたいと思うのであります。
日本経済自立の中核体は
中小企業であることは今更申上げるまでもないことなのであります。
生産の六五%を占め、
国民企業の九三%を占めておりまする
中小企業の比重は極めて大きく、これが振興は最も重要であるにかかわらず、今回の施策において、
国民金融公庫への三十億出資増以外、何ら見るべきものがないことは、甚だ遺憾に存ぜられるのであります。
中小企業に対する
金融措置に関しましては、大蔵省は全く冷淡であると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)今日、
中小企業に対する
金融が再び昔日の問屋
金融制度に頼るという惨めな姿に転落しつつあるのであります。本年三月末日におきまするところの
中小企業融資残高は総額四千七百三十八億三千八百万円とな
つておるのであります。これが百分率は、銀行におきまして六九%、即ち三千二百七十二億八千七百万円というものを銀行が受持
つておるのであります。続きまして無蓋会社が一八・八%、
信用協同組合が六・八%、商工中金が二・五%、
国民金融公庫が一・三%、復興
金融金庫が一・二%、見返資金の貸付が〇・四%、こういう
ような
状態に相成
つておるのであります。この百分率を見ましても、
政府の
中小企業專門機関と銘を打
つておりまするものの比率が全く低位にあることは首肯し得ないのであります。勿論、対策の基本
方針といたしまして
合理化の促進、組織化、
信用保証、
信用保険等、
中小企業側の
金融受入のための諸問題の解決に対しましては、通産省としての一大努力を要望するのであります。と同時に、大蔵省といたしまして、一般市中銀行の融資促進
中小企業の專門
金融機関の強化拡充、特殊資金源の
導入等に対しまして、格段の協力なくいたしましては、到底根本問題は解決しがたいと考えるのであります。この
ような観点よりいたしまして、大蔵省といたしまして、農林漁業資
金融通法と全く同型の
中小企業資
金融通法の制定、或いは商工組合中央金庫への飛躍的
政府資金の出資等に関して、如何なる
構想を持
つておるのか、お伺いしたいのであります。大蔵省は
中小企業は大
企業に従属すべきものとの観点で
金融措置を講ぜられておるのでありまするか。或いは
中小企業は
中小企業として独立的に考えておられるのか。承わりたいと思うのであります。若し
中小企業を独立的なものとして考えられるなら、過般の
大蔵大臣の安定、能率、発展の三原則は、即不安定、非能率であり、阻害である(
拍手)ということが、
中小企業の面からはどうしても考えられるのであります。又
日米経済協力問題に関しまして、
日本の
経済余力という点を明らかにしておりますることは、
中小企業にと
つては大きな悩みの種なのであります。大
企業の
経済余力の算定は容易にできるのでありまするが、
中小企業のそれは全く困難なのであります。これが盲点となりまして、新
特需の恩恵に
中小企業はあずかり得ないという
ような事態惹起の懸念さえあるのでありまして、この点に関しまして通産省は如何なる具体的
方針を用意せられておるのでありまし
ようか。詳細なる御意見を
通産大臣に承わりたいのであります。又
日米経済協力につきまして、カナダにその例を見るごとき、アメリカの動員計画局のカナダ・セクシヨンに対応する委員会設置による協力受入態勢の完備に類する機構整備の用意を
日本政府としていたしておるのか、いたしておらないのか。この点に対しましても伺いたいのであります。
以上の各点に対しまして所管大臣の責任ある
答弁を要求いたしまして、私の
質問を終了いたしたいと思うのであります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕