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1951-10-17 第12回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月十七日(水曜日)    午前十時十一分会議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和二十六年十月十七日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第四日)
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。(第四日)昨日に引続き、これより順次質疑を許します。大野幸一君。    〔大野幸一君登壇、拍手
  4. 大野幸一

    大野幸一君 私は日本社会党を代表いたしまして、総理大臣に対しそ施政演説に関し若干の質疑をいたしたいと思うものであります。このたびの講和で、国民講和後に日本民主主義が一体どうなるかということについて多大の心配を有しておるものがあります。そこで、講和によつて講和の後において日本民主主義が後退するならば、これほど不幸なことはないのであります。これは重要な問題であるから、さぞや首相施政方針において述べらるるものと私は信じておりましたが、一言も言及されていなかつたことは誠に遺憾の極みでございます。そこで、先ず第一に首相に、首相講和日本民主政治をどんなふうにして助長発展させて行く覚悟があるか、こういうことをお伺いしたいのであります。今や国民の多数は再び日本が旧日本に逆戻りするのではないかという心配を持つております。然る時、特高秘密警察は再び復活されんとし、警察国家はその芽を出し、その憲法における基本的人権保障をも侵されようと考えらるる政策が、政府みずからの手によつて行われようとしている事実であります。(〔そうだ」と呼ぶ者あり)例えば団体等規正令公職追放令を統合整備した一つの法律をこしらえようとしておる。元来これらのものはポツダム宣言又は連合国最高司令官の覚書に基くものであつたのである。占領下においてのみ国民は止むなく甘受して来たものであります。占領下であつたらばこそ、憲法以上のものとして、憲法以上のものとして甘受して来たのであります。(笑声、「そうだ」と呼ぶ者あり)然るに自主権を回復した独立日本の今後においても、なお、これらの偉大なる権利を政府の手によつて握ろうとしているのであります。けれども、数日来言論界の猛然たる非難攻撃会つてか、或いは又国会に対する考慮からか、幾分修正の態度を示しているようでありますが、我々はかかる民主政治の破壞の制度に対しては、大衆と共に民主政治を死守する覚悟であります。(拍手)断乎として反対をいたすことをあらかじめ表明しておきます。文政府は、一方において治安省とか保安省とかを設置して、元来独立していてこそ初めて民主主義を守り得るような機構になつているところの国家警察とか、自治体警察の大半、特審局警察予備隊、海上保安庁、これらなどを統一して、一人の行政大臣の権能に握ろうとされております。かくのごとき構想が実現されたならば、あなたは旧日本軍部大臣になろうと考えておるのでありましようか。その結果は如何になるか御承知でありましよう。(「そうだ」「うまいものだ」と呼ぶ者あり、拍)これら一連の政府政策は、曾つての特高警察又は警察国家再建の徴候でこそあれ、民主主義政治のるべき政策ではないのに、政府みずからかくのごとき政策立案を堂々と発表していることは極めて遺憾であります。これがポツダム宣言に要求されているところの責任ある民主政府でありましようが。政府みずからの手によつて民主政治は破壞されはしないかと却つて国民のほうが心配している今日であります。(拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)これより受ける国民の印象は、賢明の者はこれを憂え、一部の者はこれを機会に民主主義の破壞又は逆行さえ意図している者がないと誰が断言できるでしようか。よつて総理大臣は、この点に関し如何なる考え如何なる方法で講和後の日本民主化を維持し発展させて行こうとお考えになつているか。この御見解を承わりたいと思うもりであります。これに関連して思い出しますことは東條内閣の暴政であります。或る日、曾つて一人の憲兵、警察官が私の所へ参りました。そうして今や日本にはペタン元帥の一味がある。戰争の終結を図ろうとておる者がある。そういう者があつては我々は戰争がやりにくい。私です。あなたには某元老の所に出入りされておるからこういうところの情報がありませんか。大物を一つ挙げて見せしめにしなければいけないと言いました。私は、そういう人も国のために憂えておる人であるかもわからない、そういうことをしてはよくないではないかと言いました。答えて曰く、私たぢはそういう偉い人でも引つくくる権利はある、併しその人と対等に話すだけの地位ではないと言いました。けだし至言であつたと考えたのが当時でありました。暫らくいたしまして、一週間の後に、外務大臣をしておいでなつ吉田茂という人が検挙されたということを聞きまりした。(笑声「残念だ」と呼ぶ者あり)これは現在の吉田首相であつたのであります。曾つて吉田首相もこの警察国家の犠牲となられたかたであるのであります。我々社会党に議席を持つておる議員は、多かれ少なかれみんなこの犠牲を受けたのであります。私は吉田首相が自分の経験から再び東條大将のような道をたどられる人とは私は信じません。併しながら閣僚の中には頭がよ過ぎて、賢明過ぎてややもすれば首相をこの道に誘い込もうとするところの手引きをしておる人を私は指しております。(拍手)これに対してどうか吉田首相自己の経験からして、この警戒を怠らないようにして頂きたいと私は思うのであります。又トルーマン大統領もこの間サンフランシスコ会議におきまして、事、この問題に触れて演説をされております。開会の演説にこういうことを言つておられます。「今日の日本は六年前の日本とは全く違つた国になつておる。旧来の軍国主義は一掃された。これは單なる占領軍の布告によつて行われたものではなく、圧倒的多数の日本国民自身意思によるものであつた。旧日本政府の利用した秘密警察及び警察国家方式も又廃棄された。新日本憲法はすべて国民の人権を保障し、真に国民意思を代表する政府を確立した。」こういうように述べられております。これは何を意味いたしましまうか。トルーマン大統領講和に先立つて五十一カ国を前に置いて、日本民主政府が樹立したということを保面されたのであります。又日本に対してはかくあるべきであるということを警告されたものと思うのであります。四十八カ国はこれに信頼を置きまして、とにかく調印して帰りました。この期待を吉田内閣によつてどうか裏切らなやようにしで頂きたいと思うものであります。ということを申上げつつ、これに関連いたしまするところの又警察予備隊に関して、若干質問を試みたいと思うものであります。首相は、再軍備は差当りできない、そのため増税すると言つて国民は納得しないであろうと、去る十日の記者団会見言つておられます。我々も又その点全く同意見であります。ところが現に警察予備隊は、写真でも明らかでありますように、我々と約束したところの小銃以上の装備、軍隊的の重火器、迫撃砲ロケツト砲さえ持つております。その組織は軍隊そのままの編成でやつているではありませんか。この装備の点は予備隊の性格上どうしても行き過ぎていると思いますが、如何考えなさるでしようか。入的方面に至りましても、佐官級現役軍人追放解除その他予備隊幹部の採用の意図は、明らかに人的に軍隊編成に着手したものと一般から認められても止むを得ないじやありませんか。又安保條約中の行政取極において、日本侵略を受けた場合は、日本政府の要求に基き、米軍戰鬪配置につき、必要に応じて予備隊及び国警の一部隊を米軍指揮下に編入するということを取極めるとか取極められたとかいうことを、まことしやかに伝えられておりますが、そういう場合も予想されるでありましようか。若しそのようなことが実現すれば、これは国家主権の移譲であり、昔で言う統帥権の移譲である、憲法違反であると我々は考えておりまするから、この点、特に政府に警告しておきたいと思うのであります。又政府予備隊装備一体憲法第九條第二項の陸海軍その他の戰力との限界をどう考えおいでになるでありましようか。或いは近頃憲法解釈を変更されましたようでありまするけれども、憲法ができた当時の解釈は、自衛権があるとないとにかかわらず、結果においては日本陸海軍の戦力は持つことができないという解釈が根底としてあるはずであります。時勢によつて憲法解釈が任意に解されるときこそ、国は危いものであるということは、過去の歴史に徴して明らかではありませんでしようか。又予備隊の予算も莫大なものである。明年度の予算に至つては、警察予備隊要求費は六百億円とも伝えられている。こんな財政負担は、国土荒廃地方財政の破綻、重税、赤字インフレ国民は全く困窮しているときに、こんな冗費を使うようなことがあつては、却つて国内から社会不安を引き起すことになりはしないか。日本経済の現状において、これらの負担増加国民生活水準との向上を図るにどんなふうに調整し処理して行かれるか。一体、政府は今後の国民生活水準をどこに持つて行くか、又どこで抑えるかという確信がございますでありましようか。これもついでにお伺いしておきたいと思うのであります。  第三は特に首相に対して、首相労働対策について、その根本的観念一つつておきたいと思うのであります。元来、首相ほど労働者に対して理解を欠く政治家は稀であると私は考えます。(「その通り」」と呼ぶ者あり、拍手)私は、曾つて首相労働者を、その労働者が、たとい一部の人であるといえども、不逞の輩と呼ばれたというようなことを聞いている。併し今日はもう大分経験を得られたでありましようから、そのお気持は変つているものと信じておりました。(笑声)ところが首相施政方針について一言この問題に触れておるところを聞きまして、私の期待は完全に裏切られてしまつた。首相演説中、首相はこういうことを言つておられます。「我が国労働條件についても、トルーマン大統領及びダレス代表がその演説で強調された通り占領下に断行された改革により、世界最高水準を行く労働法制を整備しておるのであります。余りに理想に過ぎて、全然我が国情に適合せずとまで考えられるほど、前例の少い高度の労働基準を設定しておるのであります。」こう申されております。この文章、実にあいまいでありますけれども、どう考えて見ましても、我が国労働條件について、トルーマン大統領ダレス代表が若七サンフランシスコ会議で強調された演説とするならば、占領治下において改革を断行して、日本労働者に対しては世界最高水準を行くような労働法制を整備してやつたと、こういうことを申されたのでありましよう。これは何を意味しますか。占領政策の有終の美を最高司令官はなしたものであるという、占領政策世界に誇示されたものである。或いは又日本労働者に対する一つの祝福の言葉であつたと解さざるを得ないのであります。そう解釈するのが素直であるのであります。ところが首相は、それを、その考えを、「余りに理想に過ぎて全然我が国情に適合せずとまで考えられるほど」云々と、こう言われております。これらは、トルーマン大統領の祝辞の言葉を、却つて以日本労働者に対するこれから冷たい政策をやろうという理由に付けられているのであります。尤も首相は肚の中ではこういうことを言いたかつたのでありましよう。日本労働條件を不当となすは、全く現状を見ずして徒らに既往の記憶に囚われるものというべきものであると、こう、あなたは言いたかつたのである。ところがそれは消されておるようであります。最初の草案にはそうあつた。こういうあなたの心の底に潜むところの労働者に対する冷たい考え、こういうことをどうかこれから転換して頂いて、(笑声日本労働者に対する温かい政治をやつて頂きたいということをお願いするのであります。(拍手)  何が故に私がこういうことを申上げるかおわかりでありましよう。(笑声)もう少し首相労働者に対して本当に理解が欲しいからであります。労働者は過去の戰争には忠実に働きました。戰後の復興にも大いに寄與したものが労働者であるのであります。併し今以て何も報いられない今日の状態であります。そこで今度の太平洋戦争日本労働者戰争の何ものであるかということを知つたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)或る者は朧気ながら、或る者ははつきりと知りました。国民大衆も又然りであるのであります。今回の日米安全保障條約に対しても、多くの、各労働組合は申すに及ばず、社会党を初め、勤労階級を代表する政党からは全部反対意見が表明されているではありませんか。これはそのうちの多くの理由は、多々ありましよう。或る者は時期が不適当である。占領下というようなときにこんな條約を締結して、何が対等の條約の効果が現われるか。こういうことを心配する者があるのでありましよう。或る者はこれは世界の信義に悖ると言う人もあるのでありましよう。或る者はこれこそ戰争の原因となると、こう憂える人があるでありましよう。更に或る者は、あれは米国の利益になればこそ、日本の利益にはならないと考える者もあるでありましよう。いや、植民地だ、奴隷化だと信ずる人もあるでありましようが、それはともかくといたしまして、その一つには、労働階級は再びこれが日本勤労階級負担になるのではないかという危惧があるのであります。私はあえて危惧という遠慮した言葉を硬つておきましよう。この反対理由に対しては、おのおの意見見解はあることでありましよう。それはともかくといたしまして、この條約に対する勤労階級反対現実の問題であります。現実の問題として勤労階級反対していますときに、この日米安全保障條約の実質上の成果について、かく勤労階級反対するという前提條件に立つて、この日米安全保障條約の実質上の成果を、一体、吉田総理大臣はどう考えておられますか。曾つて芦田さんは、社会党を含まないところの講和なんというものは意味はないと言われました。賢明な人でありましよう。それを憂えられた元の衆議院議長が又超党派外交を唱えられたのもそれでありましよう。最後にダレス特使も、どうか社会党にも全権に加わつてもらいたいということを示唆されたとか噂されているのも、又奈辺に意味があるでありましようか。御存じであるはずであります。私は、首相がこれら反対する勤労階級、いな、国民に対して、どうか理解してくれということを求める努力如何にしてなされたでありましようか。自由党だけの理解を得ればそれでよろしい、それは議会だけの話であります。條約は文書の交換や署名の交換であり、又それが国会の批准だけで、それで十分でありましようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)賢明なる首相判断に御一任しておきましよう。(笑声)繰返して申上げまするが、どうか、あなたの今までの冷たい労働政策から、私の言う温かい労働政策に転換される用意があるかどうかということを、ここでお知らせ願いたい。口で答弁されるよりは、今後の現実労働政策として回答を賜わる、こういうことにしておきたいと思います。どうかその点を御了解下さい。  次に国際問題に触れまするが、吉田首相内外情勢判断について国民は非常に疑問を持つております。従つて、私はこういうことをお聞きしたい。先ず吉田首相は、日本は現在国外からの侵略脅威があるとお考えになるかどうかということであります。この点に関し、首相は第十国会において、国内問題として、「我が国における共産主義者の跳梁は漸次影をおさあ、治安上何ら憂うべきものなきは御承知の通りであります。」と一月二十六日にこういう演説をされております。「国外の情勢は、今にも安全が脅やかされるかのように言やれるが、それこそ甘い考えである。」、翌日であります。多分、我が党の衆議院西村議員に対してあなたは、西村君こそ余りおびえ過ぎておるというような揶揄を、あなたは答弁されたように新聞で寿見したことがあるのでありまするが、そういう時代がありました。ところが、サンフランシスコ会議において、吉田首相は、日本周辺に対する共産主事勢力侵略脅威を、一つは朝鮮の方面から、もう一つは千島の方面から、相当差迫つたような表現を以てこれを強調しておられます。例えば、次のような言葉がある。「共産主義的勢力が公然たる侵略に打つて出でつつあるのであります。日本の間近に迫つております。」続いて、「今日我が国はまたもや同じ方面から」、これは千島列島とか北海道を指すのでありましよう、「共産主義脅威にさらされているのであります」。と、サンフランシスコでは強調されております。ところが、本国会では、この議場で何と言われました。ソ連も平和を欲しておるので戦争脅威はないというような意味に解される答弁をされました。私は速記録を正確に調べておりませんかち遠慮して申上げますが、そういう答弁をされております。国内治安心配もなく、外国からの侵略の危險もないのに、なぜ急いでこの安保條約に調印したのか。すべて内容をあと廻しにして、そうして国民の疑問にも答えないでおいて、どうして急いでこの調印をされたかということである。あなたの国際情勢判断の誤まつた考えから、この安保條約か成立していやしないかということを我々は憂えるのでありますが、何とぞ率直に一つその点をお答え下さい。どうしてこんなような国際判断に関する見解をだんだん変えて来られるようになつたかということであります。  これは再質問の形のようになりますが、中共ソ連との外交について重ねてお尋ねしたい。それというのは、首相は、この間、我が党の棚橋議員への答弁といたしまして、次のように答えられております。「中共ソ連に対する外交方針如何。これは共産主義国外交を調整するということは、これは日本の今日の状態からいつて見て、或いは日本の内地の状態からいつて見て、これはできないことであります。共産主義を捨てればとにかくでありますけれども、共産主義を以て、そしてこれと平和状態に入つた……」と、少し欠けておるようであります。(拍手)「日本において、共産主義の宣伝の中心を招き入れるというようなことは私はできないと考えるのであります。」こう答弁されております。私はこれを聞いて、今日は首相はどうかしていやしないか。(「いつでもどうかしている」と呼ぶ者あり)こんな失言をよくもやられたものであると思いました。見れば大変顔色も惡いようであると拜見いたしましたから、これはこの電報が外国に伝わつたらどういふ形になるかと心配しておりました。ところが平然と社会党を軽蔑するがごとく、あなたは答弁されていたのであります。ところが翌日になりました。民主党の前之園議員に対する答弁であります。いろいろロシアとの困難なる点を述べられたあとに、「けれども、日本としては、できるだけ早くソ連との間の関係においても講和の関係に入りたいと考えるのであります。」、こういうように変更されました。一体どちらが本当であつたのでありましう。(拍手、「トルーマン演説だよ」と呼ぶ者あり)それぞれ。時、丁度外電は、チヤーチルの呼びかけに応じて、トルーマン大統領国交調整のため対ソ話合いをやるとの報道を伝えたのであります。首相はこの外電に影響されて、ソ連に対する態度が変つたのではないかと国民は言い始めたのであります。(「丁度カメレオンだ」と呼ぶ者あり)全面講和向つたことは、我が党としてはよろしい。(「よろしい」と呼ぶ者あり)併し信念家と称せられる吉田首相が外電一本で変るのでは案外頼りないではありませんか。(「その通り」と呼ぶ者あり)いや、率直にそれは失言だとおつしやるならば、私は決して咎めません。(笑声)この議場においてあれは失言だとおつしやるほうが私は喜ぶのでありますが、(笑声)又こう考え吉田首相心理状態を解剖して来ますると、(笑声、「心理分析」と呼ぶ者あり)吉田首相答弁で、首相はこういうことを考えられた。世界から共産主義国が消滅してしまわなければ平和というものはないように考えられておる。(「自分の消滅が早い」と呼ぶ者あり、笑声)それではその吉田首相考える平和が来るまでには戦争は必ず起りますよ。(笑声共産主義国世界からなくしてしまうというようなことを考えたら、必ず戦争が起ります。その印象が国民に響いて、日本国民は、これは日本戰争に巻き込まれるのではないかというような心配をするのであります。首相は、トルーマン大統領チヤーチル氏にならつて、どうですか、ソ連とか中共との講和努力する意思はございませんか。チヤーチル氏はどうでありますか。スターリン会つてもよろしいと言う。保守党のチヤーチルでありまするけれども、国民のため、外交のためには、みずからスターリンに会うというのではありませんか。、(拍手、「古田を呼んで来い」と呼ぶ者あり)共産主義外交の対象になるソ連とか中共というものとでは別でありますけれども、あなたのお考えはいつも国内不安だと言つて、国内不安というのは、共産党の数が殖えることを言うのであつて我々はそうではありません。(「一人減つたよ」と呼ぶ者あり)ソ連が武力を以て侵入して来るかどうかというところに我々は思いをいたしておるのであります。(「同じことじや」と呼ぶ者あり)その点はわからないことでどうする。(笑声共産主義嫌い首相で、いやならば、これは止むを得ません。米国との講和ができたならば潔く辞職して、中共ソ連国民の望む中共ソ連との講和促進のため内閣を社会党にゆだねたらどうですか、ソ連中共との国交なら社会党のほうが自信があると私は考えます。(「まじめにやれ」「共産党の代弁だ」と呼ぶ者あり)  最後に、国民生活安定に関する今度の講和問題との関係について聞きたいと思います。首相は、平和條約に伴う国民負担国民生活水準に圧迫を加えることのないよう万全の努力を拂う所存でありますと、財政問題に触れておりますが、これだけでは全く抽象的であります。常に総理大臣施政演説というものは抽象的であつて、具体的なものが何もないじやないかというのが国民の声であります。、不満はここから来るのであります。そこで私は負担となる財政上の諸項目について、数字的にどのくらいのものであるか、見込みを国民が知りたがつているから、これを説明されたいと思うのであります。例えば賠償額については、池田蔵相は当初二十七年度予算案にたしか年一百億を見積られておりました。ところが突然自由党ではこれを三百億に今度はなつておるようであります。どうして変更されたのでありましようか。米国のほうで一百億では足りないと言つて来たのでありましようか。(笑声外債償還についても、イタリアでは未拂利子と元本をそつくり新らしくして低利債に借換えられているが、日本にもその可能性があるか、その努力をする意思があるかどうかということであります。第三には、対日援助費は、今まで、すでに二十一億ドルに達しておりますから、その返済は日本経済にとつて多大の負担であり、イタリアの場合は棒引きされたということを聞いておりますが、日本も棒引きを懇請される意思があるかということを聞きたいのであります。日米防衛分担費はまだわかつていない、こう言つておりますが、これは無責任な、国民に対して言われた義理じやありませんでしよう。防衛分担がどのくらいあるかわからないで安全保障に調印して帰つて来るという、そんな無責任なことを、誰が負担をするのでありましようか。国民大衆であることをいつの間にかお忘れになつております。これは我々の希望といたしましては、国民を代表いたしまして、全額米側負担にしてもらえないかどうかということをお聞きしたのであります。まあ、そういう研究努力をして頂いてはどうか。聞くところによると、日米折半という噂も聞きますが、実際日米防衛アメリカ自身からの国防戰略上からも重要な意義があることを見逃がせません。一体、條約というものは相互の利益から初めて生れるものでありますから、この條約は日本だけの利益になるなんということを考えている必要はありませんでしようという点に鑑みまして、一つ米側が全部負担というようなことに努力して頂く覚悟があるかどうかということであります。  行政簡素化についても述べておられますが、数次に亘る定員法、首切、今度の労働三法改正といいますけれども、だれのために改正するのか、どういう階級のために改正するのか知りませんけれども、労働者にとつては改惡そのものであります一そういう結果が生じまするときに、退職金はできるだけ出すつもりだということでありますけれども、一体どのくらいの退職金を出されるか。今大蔵大臣おいでにならないでしようから、あとでもよろしいが、その予算額は幾らか。失業者に対しては失業対策をやるといつておる。失業対策をやるといつても、具体的構想は何であるか。すべて具体的に一つこれは所管大臣からでもよろしい。失業対策の具体的構想をこの本会議場で一つ述べて頂きたい。こう考えるのであります。  最後ではありまするが、とにかくこの講和会議に老躯長途出向かれました首相の御労苦に対しては謹んで謝意を表しつつ、(笑声)又私の再質問を留保しつつ、私の質問を一応終らせて頂きたいと思う次第であります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。民主政治の確立については、私の施政演説の中にも述べておきました通り、ますますこの点には努力をいたすつもりであります。詳細の点については所管大臣からお答えをいたします。  安全保障條約は取急ぎ急速こしらえたものではないのであることは昨日も申した通りであります。ダレス氏が見えて以来、この問題については互いに意見交換いたして、愼重熟慮の結果でき上つたのがこの條約であります。文中ソ関係については、日本としてでき得るだけ、成るべく平和関係に入ることを希望いたしますが、併しながら国にはおのずからその事情があり、我々は反共政策をとつておるのに、共産政策をとつておる国と如何にして平和條約をこしらえ上げるか。チヤーチル氏の今後のお手並みも拜見いたします。私の頭は決して狂つておりませんかち御安心を願いたい。(笑声)    〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手
  6. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 民主政治のあり方につきまして御質問があつたのでございまするが、只今総理大臣から申しましたる通り民主政治日本憲法の基本的精神でありますので、講和後におきましても勿論これをますます進めなければならないということは申すまでもないのでございまするが、民主政治におきましては、特に国政上、基本的人権については最高度の尊重を必要といたすものでございます。(「同感」と呼ぶ者あり)従いまして国家権力の行使に当りましては、基本的人権に対する制限というものが公共の福祉のために必要な最小限度にとどめらるべきものでございまして、このことは、権力についてのあらゆる国の法規におきましても、又これを運用いたしまするすべての国家機関の組織構成の上からいたしましても、十分確実なる保障が與えられるということが必要であると考えるわけであります。この民主政治を暴力主義的破壞から防衛いたしまするために現在団体等規正令が存しておるのでございまするが、これはポツダム政令でありまするから、当然将来において立法化を必要とするのであります。而してその基本的な考え方は、只今も述べましたるごとく、公共の福祉を守るための基本的人権に対する制限は嚴格に必要な最小限度にとどめられなければならないということでございます。治安関係の行政機構につきましては、相互の有機的な連絡ある活動を可能ならしめまするよう、その組織運営につきまして政府といたしましても常に工夫をめぐらしているのでございまするが、その根本も、やはり人権に対する制限を必要な最小限度にとどめながら、公共の福祉を破壞する活動に対しまして十分に擁護いたしまするには、機構及び運営を如何にすべきであるかという点にあるわけでございます。従いまして、政府の意図いたしておりまするところは、民主主義の思想に背馳いたしまする特高警察の復活であるとか(「ピストル警察の復活か」と呼ぶ者あり)或いは警察国家の再現であるとかいうこととは、およそ対蹠的なお考え方に基礎を置いているということを十分に御承知の上で、完全に御安心を願いたいと存じます。(笑声拍手)  次に憲法第九條に申しまする戰力というのは、陸海空軍、これに匹敵するような戰争途行手段としての力を意味するのでございます。その判定は、結局それが国際社会の通念に照らしまして現代職における有効な戰争遂行手段たる力を持つかどうかということによつて、きめられるべきでありまして、これを一概に論定することは困難であると存ずるのであります。警察予備隊は今日国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うことを任務といたし、(「嘘だ」と呼ぶ者あり)飽くまで国内の治安、秩序の維持を責務とするもので、その組織は軍隊のように戰争を目的とするものではないし、(「嘘だ」ど呼ぶ者あり)その装備陸海軍力に匹敵するような戰争遂行手段とは相去ること甚だ遠いのであります。(「しらじらしいぞ」と呼ぶ者あり)従いまして、警察予備隊が警察の任務遂行のために保有ずる装備を以ちまして、直ちに憲法にいう戰力に当ると即断する」とはできませんし、(「しらじらしいぞ」と呼ぶ者あり)その意味から、現在のロケツト砲装備のごときは、別段憲法第九條に違反するものではございません。(笑声)  なお、行政協定によりまして予備隊米軍に編入するかという御質問でございまするが、政府としてはそのような意図は全然持つておりません。(「フアツシヨ」「ロケツト砲憲法面白いね」と呼ぶ者あり、笑声拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇、拍手
  7. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。私どもは国民的勤労者という立場において(「しらじらしいぞ」と呼ぶ者あり)労働施策を進めておるわけでございまするが、今日の日本現状から申しまして、勤労者の真の努力と国家的協力なくして日本の経済再建が成り立たないことは、これは何人も異議のないところでございます。従つて、至国民的、全労働者的立場において、その生活の安定、福祉の向上々図ることが何よりも大切であるという、その基本的な考え方の土に立つて諸般の施策を進めておるわけであります。その一つの事例といたしましても、今回臨時国会に提案いたそうといたしております退職金の課税の問題のごとき、真に(「ゼネスト禁止」と呼ぶ者あり)勤労大衆が長い年月尊い職場に働かれて、而して老後の安定を求めようとする、その退職金に対する課税が今日までに相当苛酷であつたのを、今回財政上の非常な負担を伴つて大幅にこれを軽減して、勤労大衆の生活安定と(「やれるか」と呼ぶ者あり)そうして生産意慾の向上に資したいという考え方も、こういう上から立つているわけでございます。而して労働者の真の福祉の向上は、私どもはいわゆる労資協調の実が上り、企業の発展を得てこそ、初めて労働者の福祉の向上が得られるという観点において、いわゆる労働秩序の確保のために努力をいたしている次第でございます。  次に、日米安全保障條約に対して全労働者階級が反対であるというような御意見がございましたが、(「事実だ」と呼ぶ者あり)これは大野君御自身も御承知のように、決してそういうものではなくして、成るほど一部の労働組合の指導者の中には(「何を言つてる」と呼ぶ者あり)いわゆる平和三原則によつて強引に指導しようとせられる向きもありますが、労働大衆は、真に自己の職場に安心して、いそしむためには、いわゆる(「安心でない」と呼ぶ者あり)国家の安全が先ず第一の要件である、その国家の安全を保障する途が、今日、日米安全保障條約以外にないという(笑声拍手)いわゆる冷静な批判と判断で、今回までに行われておりまする各種の選挙や或いは調印後に行われております輿論調査の結果を御覧になりましても、私は労働大衆は嚴正に事態を把握せられておると思つております。政府は決して政治的に労働組合を惡意的に指導下るようなことはいたさない。労働組合運動は本来大衆の自主的自由に展開せらるべきものであるという考えに立つが故であります。  なお、行政整理の失業対策に対しましては、今回は今日の雇用情勢に鑑みまして退職者の離職後における生活安定を期するという建前から、従来の行政整理の退職金の八割乃至四割増という退職金を今回の予算に計上いたして提出をいたしております。なお、爾後の失業対策につきましては万全を期する所存でございまするが、このことは他の機会において詳しく(「具体的にここで」と呼ぶ者あり)申述べたいと存じます。(拍手
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大蔵大臣は渉外用務のため御出席できない趣きでありまして、答弁は後刻に留保せられました。    〔大野幸一君発言の許可を求む〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大野幸一君。
  10. 大野幸一

    大野幸一君 自席よりの発言をお許し下さい。  私は総理大臣の御答弁はいつも不明瞭で困るのであります。本日も又さようでございまして、よく聞き取れなかつたくらいであります。その他の大臣に対しても不満の意を表しておきますからして、いずれ詳しいことは委員会において質疑いたすことにいたしまして、私の質疑はこれを以て終了いたします。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小林政夫君。    〔小林政夫君登壇、拍手
  12. 小林政夫

    ○小林政夫君 私は平和條約並びに安全保障條約について、すでに質疑応答の終つた問題を除き、又答弁はございましたが満足できなかつた問題について、多少今までの質問者よりも角度を変えて若干お尋ねしたいと思います。  第一に宇和條約調印に際し、米英両全権より北緯二十九度以南の南西諸島に対し日本の主権が残存することが認められたことは、誠に同慶の至りでありますが、それら信託統治地域と日本本土との人の交流、物の交流は自由となるのでありましようか。又、人の居住は、相互に自由に選択できるのでありましようか。住民の国籍は、昨日吉田首相日本の国籍が與えられると言われましたが、その教育は、本土と同樣な日本流にやれるのでありましようか。この点について吉田首相にお伺いいたします。  第二に、先般フイリピンの代表が講和会議の帰途立寄られて、池田大蔵大臣等と賠償問題について会談を行なつたところ、フイリピンの代表は大変満足の意を表したと英字新聞が伝えておるようであります。今日まで伝えられたところでは、フイリピンの八十億米ドルを筆頭に、インドネシア六十五億ドル、ビルマ二十五億ドル、ヴエトナム二十億ドル等があり、更に韓国、中国等も相当の要求をなすかに伝えられております。従つて若しも対日感情惡化を恐れるの余り、フイリピンの過大な要求を容れるようなことがあつたならば、他の諸国も又同樣の要求を強く押し付けて来るであろうことは間違いない。日本経済現状からいつて、又平和條約発効後に見込まれる財政需要の増大からいつても、それらの賠償要求国に十分な満足を與えるようなことは、方法の如何を問わず考えられないと思うのでありますが、フイリピン代表が頗る満足の意を表したということは如何なる話合いが行われたのであるか。池田大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  第三に、第十五條(a)項に記載してあるところの昭和二十六年七月十三日内閣決定の連合国財産補償法案は、平和條約と一体を成するものであるにかかおらず、平和條約と同時に国会に提案されないのはどのような理由によるのでございましようか。連合国の財産が日本で受けた損害には、大体三つの場合が考えられるわけであります。第一は敵産管理処置を受けたもの、第二は、無差別な戰時剥奪といいますか、例えば日本人であろうが、中立国人であろうが、無差別に、鉄を出せ、或いは金を出せ、ダイヤモンドを出せ、強制疎開をしろというようなことで、それによつて生じた損害、第三は無防備都市に対する無差別爆撃に対する損害であります。その甚しい例は、広島、長崎における原子爆彈による被害。この第一の敵産管理処置を受けたことによる損害は補償されなければならないのでありましよう。第二の、日本人であろうと、中立国人であろうと、或いは連合国人であろうと、そこは区別を設けずして、国内措置としてとつた事柄から損害が起きたというような、連合国人だからといつて特別に差別待遇をしたことでないことによる損害というものは、日本国民と同じ程度に補償されて然るべき性質のものではないか。万一日本人がそれに対して補償を受けておらない、無補償である場合には、無補償で済まされるべきではないか。第三の無差別爆撃、いわゆる連合国側の戰争行為によつて、戰略行為によつてつたところの損害に対しては、補償すべきものではないと私は思うのであります。補償すべき場合は、その補償の範囲はどうするのであるか。再取得価格或いは原状回復費を十分に補償するのであるか。イタリアの場合等におけるごとく何割か割引をして補償していいのであるか。又利益の損失といいますか、当然そのものがあつたならば得られたであろう、いわゆる得べかりし利益についてまで補償するのかどうか。この点について池田大蔵大臣の答弁をお願いします。  第四に、日本から分離する地域にある日本財産は、該地域の、その地域の住民が日本において有する財産と共に、その処分は日本と当該地域の施政権者との間の特別協定によることになつております。アメリカ軍は南鮮を占領したときに、一九四五年十二月六日命令第三十三号というのを出しまして、月本人の財産をアメリカ軍政庁に帰属しましたが、韓国独立後の一九四八年九月十一日の取極でこれを韓国政府に移転したのであります、この帰属、つまりアメリカ軍の財産処理の効力を日本は第四條(b)項によつて承認しなければならない。併しこのことば財産処理の効力を承記しただけであつて、その財産処理に関する請求権をこの條文で放棄したことにはならないのであります。まあまあという感じでありましたが、次々読んで行くと、結局十九條でその請求権をすべて放棄することになると思うのであります。韓国政府と特別取極をする余地はなく、従つて日本は朝鮮にあるところの財産を全部なくしてしまうことになると思うのでありますが、吉田首相見解如何でありますか。若しそうだといたしますと、そり反対の立場として、韓国人が日本において有する財産を政府はどう処分する心組みでおられるのか。在鮮日本財産を政府は時価幾らくらいと推算しておられるか。相当莫大な額となると思うのでありますが、報道によると、韓国が日清戰争以来の損害を通算して六十億ドルの賠償を要求するど言われておる。韓国のかかる意図は、在鮮日本人財産の無償没収を正当化するための要求であるのか。在鮮財産は無償没収して置きながら、更にかかる要求をしようとしておるとするならば、全く私は論外であると思うのでありますが、政府の所信は如何でありますか。  第五に戰争犯罪人に対る恩典の許可について。国内で拘禁をされておる者についての処理方法は條文で明らかに規定されておりますが、国外、即ち連合国で服役中の者についての規定がないので、あります。これはどのように処理されるのであるか。国内で拘禁されておる戰争犯罪人に対して恩典が授與される場合があるとすれば、同樣なようなことを考えられるように取計らわるべきではないか。首相のお考え如何でありましよう。  第六に通商航海関係については、修交自体から見れば全く双務的であつて、頗る結構のようでございますが、通商航海による外貨獲得を経済自立の最大の要件とする我が国にとつては、最恵国待遇或いは内国民待遇を相互に與え合おないことによりこうむる不利益は、日本のほうが大きい場合が多いように思われるのであります。形式的には双務的であるが、扱い方によつて実質上片務的となる慮れがあるのであります。シヨークロス英商相は、七月十三日下院で、「條約締結後も日本が最恵国待遇を受ける権利を與えない」と言明し、九月十九日ジユネーブにおける関税通商会議でも同趣旨のことを述べたようでございますが、これは英連邦内における日本の通商活動を制限する考えにほかならないと思うのであります。日本平和條約の前文で、「公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行に従う」意思を宣言しておる。而も労働條件世界最高水準を行くものであつて、戰前受けたところのソシヤル・ダンピングというごとき非難に値いするものは現在いささかもないのであります。従つて日本の対外通商活動が諸外国に不当な脅威を與えるものでない。これを危惧する向きがあるのは全く不思議に堪えないことであります。英連邦内の特恵関税その他最恵国待遇の除外例が設けられるようになつたことが第二次世界大戰の重要な原因の一つでもあつたこと、国際貿易憲章やガツトは、これをできるだけ制限しようと努力しておる事実に照らしても政府は積極的に公平な世界の輿論を喚起しで、日本の通商活動に加えらかる実質的制限の排除に努力すべきであると思いますが、政府の所信は如何であるか。  第七に、連合国のすべての占領軍講和條約発効後九十日以内に撤退しなければならないとなつておりますが、それはこれらの軍隊が右期間経過後は占領軍の資格を失うことを意味するのみならず、連合国の最高司令官、総司令部及び対日理事会も同じ期間内に廃止されることをも意味するものであると思います。最高司令官米国政府が任命することになつておるので、米国だけで廃止することができるが、極東委員会及び連合国対日理事会は、一九四五年十二月の米英ソ三国外会議で設置が決定されたので、ソ連の同意がなければ有効的に廃止することができないと思いますけれども、実際には最高司令官がいなくなれば、会議を開くことができないというようなことから、実際上は廃止されると同じということになるのでありましよう。その場合、対日理事会に対して派遣されておるところのソ連代表部はどうなるのであるか。平和條約を認めないソ連が素直にその代表部を引揚げるであろうか。引揚げないとするならば、日本はこれをどのように扱うつもりであるか。吉田首相の所信を伺いたい。  次に安全保障條約についてお伺いいたします。安全保障條約の実体を成すと考えられる行政協定の内容について各党代表こもごもの質問にもかかわらず、今日までその内容が明らかにされない。未だ交渉中であるというようなことで、首相から答弁が頂けないのであります。集団的防衛が世界的通念であることは一応認められるといたしましても、それの受入れ方は必ずしも一樣でない。例えば現在エジプトの英・エジプト條約廃棄が重大な問題となつておりますが、英国としては、英・エジプト條約を集団的防衛措置の一種と見ているかも知れないけれども、エジプト側は、英・エジプト條約をエジプトの主権侵害と見ているのである。このように集団的防衛が、一方からは全く善意で考慮されても、他方からは圧迫或いは独立を危くするものと解釈される場合が多いのであつて、そうした食い違いは主としてそれぞれの国の国際的立場の相違から来ると言えると思います。特に西欧諸国が軍事的にばかりでなく、政治的、経済的にも国境の不自由さを意識し、連合国家的な考え方に傾いているとき、アジアその他の後進植民地諸国は、なお独立の完成に最大の関心を持つており、日本やドイツのような敗戰国は、敗戰国であるために連合国との平等な立場を維持することに敏感な神経を使つているのである。我が国において、日米安全保障條約を原則的には承認しながらも、なお多少の不安を持つているのはそのためである。そこに吉田首相の言われるような世界的通念として簡單に片付け得ないものがあるのであつて、その点ば行政協定の取極に当つて我が国政府並びに米国側の理解ある態度が望まれるのであります。特に行政協定の内容は、できるなら全部を早く発表することが、我が国の不安ばかりでなく、外国の疑惑を解く鍵であり、それによつて日米安全保障條約は、国際通念として認められる集団的防衛の性質をはつきりさせ、その役割を果すことができるのでありましよう。首相は條約と憲法とは、どちらが優先すると思づておられるか。学説はどうあろうども、現実には、特に国際信義に生きねばならない日本といたしましては、條約が優先せざるを得ないと自分は思います。行政協定も安全保障條約の内容をなすものとして、日本憲法、法律に優先するとすれば、この行政協定こそは、よほど愼重に検討されなければならない。而も安保條約の実質的取極事項がこの行政協定にゆだれられておるので、我々としては、政府の意図と申しますか、米国吉田内閣の折衝によつてきめられるのであろうと予想される協定の内容をつまびらかにしなければならない。簡單には白紙委任状は差上げられないのであります。平和條約は、與えられる條約であつたけれども、安全保障條約は日本の安全のための独立国家間の條約である。日本の安全は、極東の安全に繋がり、更に世界の安全に繋がるものであるといたしましても、單に米国への対極東、対世界戰略基地提供に終るものであつてはならない。万一の場合に第二の朝鮮にならないためにも、我々は自主性を以て自己の立場を主張しなけらばならない。吉田内閣においても、かかる見地から、祖国の安全のために、行政協定は如何にあるへきかを十分に研究され、強い信念を持つておるべきであると思います。その確信ある結論を我々に示してもらえばいいのです。それが示されないようでは、安保條約も與えられる條約であるとの非難を免れないであろう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)首相の所信を伺いたい。次に、漁業協定が平和條約に署名した連合国との間に成立をいたしましても、戰争状態の継続する国との間には、むしろこれまで以上に困難な問題が残されることは想像にかたくありません。マツカーサー・ラインは日本の漁業にとつては大きい制限でありましたが、一方から見れば、又これが連合国最高司令官から発せられた命令であり、連合諸国もこの範囲内における日本の漁船活動を保障する効果もあつたのである。平和條約の効力発生によつてマツカーサー・ラインがなくなれば、戰争状態にある国による日本漁船の拿捕事件はこれまで以上に頻発する危險があると思います。而もこのような事件の起る可能性のある海域は、日本漁業にとつて非常に重要な北洋及び東支那海、黄海方面であることが予想される。この安全保障條約によつて、これら漁船の安全も期せられることになるのであるかどうか。関係政府当局の見解を伺いたい。  以上を以て平和、安保両條約についての質疑を終りますが、これと関連をいたしまして二つの事項について関係大臣の所信を伺いたい。  その一つは、平和條約調印に続いて今後賠償交渉、條約締結、国交調整等、国際場裡における日本外交は全く多事多難でございます。我が国の長年月に亘る外交の空白は、この困難な外交を担任する人材を乏しくしたのではないかと憂うるものでありますが、外交官に人材を得るに遺憾なきや。外務大臣の所信を伺いたい。  次に、日本は国際信義に生き、国際間の愛顧をかち得て、その繁栄を期さねばならないのでありますが、そのためには、国民の一人々々が国際的友情と敬愛をかち得る人間にならなければならない。たとえ衣食住は貧弱であつても、人間的値打ちにおいて、その思想行為において、他国人の敬愛に値いする国際人にならなければならない。学校教育、社会教育もこの点に重点を置くべきものと思う。平和條約の批准を機会に右のごとき自党を振い起す一大国民運動を展開すべきではないかと思いますが、首相、文相の所信は如何でございますか。金融政策について大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、時間がございませんので別の機会に護ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。南西諸島の信託統治等は、先ず国連との間に米国政府が交渉し、その結果を待たなければならないのでありますが、サンフランシスコにおける米英両国の代表は、主権は明らかに日本に残るということを言明しております。従つて住民の国籍は日本に残るものと言い得ると私は思います。  又、行政協定についてのお尋ねでありますが、これは昨日も申した通り今後の交渉に残るわけであります。そうして、その交渉が仮にできたとして、これはいずれ予算とか或いは法律の形で国会の協賛を経るべきものでありますから、そのときに十分御協議をいたす考えであります。  又、ソヴイエト代表部の平和條約効力発地後における地位如何というお尋ねでありますが、これは当然対日理事会等はなくなることでもありましようし、又ソ連代表部はどうなるかということは、これは日本政府との間の交渉の内容をなすものでありますから、今日は答弁を差控えます。外交官の養成については御尤もであります。派遣の外交官の人選については十分注意をいたすつもりであり、又養成についても十分注意をいたすために、現に研修所等を設けて素質の向上に努めております。相当の成績を得るものと考えます。  その他の問題については主管大臣からお答えをいたさせます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手
  14. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問の途中、席を外しておりましたので、ぴつたり合うか合わないかわかりませんが、要旨を書いてありますので、それによつてお答えいたします。  フイリピン代表と私との会見の内容についての御質問のようでございましたが、この会見におきましては、賠償の金額には一切触れておりません。現物賠償の意義につきまして話合つたのであります。例えば丁度その際に湯呑がございましたが、フイリピンにおいては陶器が要るんだ。で、賠償に陶器をもらうというふうな場合はどう考えるか。粘土を持つて来てもらいたい。石炭を持つて来てもらいたい。併し粘土はない、それでは現物賠償の意義にも入りにくい。こういうことの話をいたしたのであります。まとまつた話ではございませんが、お互いに十四條についての解釈についての意見を申述べた状態であります。  次に連合国財産の補償につきまして、平和條約と一体を成すのであるから、当然すべきではないかという御質問でございます。今週中には御審議願う運びに相成ると思いま士。而して連合国人財産の補償につきまして、敵産管理を受けた場合、或いは無防備の都市である場合、このような場合についていろいろな差等がございますが、我々といたしましてはできるだけ少くて済むような考え方で話を進めておるのであります。いずれ法案が出ましてから御審議願いたいと思います。  次に南朝鮮におきまする日本人財産が米軍の措置によりまして処分される、従つてこれに対しての請求権はなくなるのではないかという御質問でございますが、私は、処分は平和條約の第三條によつて認めておりまするが、その処分の結果に基きまする日本人の請求権につきましては、今後韓国政府と話合いができるものと考えております。  次に韓国は六十億ドルの賠償の要求をしているが政府の所見如何。韓国は平和條約の調印国ではございません。従いまして平和條約の規定によつて我々は賠償義務はないと考えております。  それから米国人から所得税は徴収し得ないであろうが、間接税は徴収すべきである、こういう御質問でございまするが、只今でも米国人に対しまして所得税をかけることにいたしております。ただ二年間の猶予があつたのでありますが、平和條約後は当然米国人も所得税或いは間接税もかけることになるのであります。併し駐留軍に対しましての所得税或いは間接税の課税につきましては、只今研究を重ねておるのであります。     —————————————  この機会に大野氏の御質問に対しましてお答え申上げたいと思います。賠償はどのくらいになるかというお話でございまするが、我々はどのくらいになるか、まだ話を進めておりませんので、お答えできません。外債の償還をイタリーのごとくすつかり書き換えて三分の利子をやるような方法は如何。こういう御質問でございまするが、外債の償還につきましては、私はイタリーの方法は余りいい方法ではないのじやないかというふうな考えで研究をいたしております。どういう支拂の仕方をするかということは、債権者と話合つて両方満足の行くような支拂方法をきめたいと思います。それから対日援助資金は、イタリーは棒引にしたが日本はどうか——我々は財政の許す限りできるだけ拂いたいという考えで進んでおるのであります。  防衛費の負担は只今のところ話ができておりませんので、幾ら負担するかきまつておりません。お話のように全部アメリカが見てくれればこれに越したことはありますまいが、我々として適当な額を負担することは、独立国の体面として或る程度負担することも考えなければならんと考えております。  行政整理に伴う退職金は幾らか——今年度一般会計、特別会計、政府機関を通じまして四十七億円、来年度三十五億円の退職金を見込んでおります。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇、拍手
  15. 根本龍太郎

    国務大臣(根本龍太郎君) マツカーサー・ラインが解消した後における漁業の保護についての問題でありまするが、この問題はソ連並びに中共平和條約に調印いたしておりませんために、問題は当然残ると考えております。併しこの不法拿捕を我が国が積極的にこれを力を以て保護するということが現在困難でありまするので、これは国際輿論に支持されまして善処いたしたいと思います。なお又この不安なる状況に対しましては、監視船並びに集団航行というような重点的措置を講ずることによりまして、未然にその拿捕を防ぐようにいたしたいと考えておる次第であります。なお日米安全保障條約の行政協定においてこの問題が取上げられるかどうかということにつきましては、総理からしばしば御説明がありますように、これはまだはつきりいたしておらないことと存じます。(拍手)     —————————————
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 深川タマヱ君。    〔深川タマヱ君登壇、拍手
  17. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 占領の夜はまさに明けんといたしております。併し日本の行く手は余りにも大きい苦悩と憂慮に閉ざされて、お先真つ暗であるというのが、僞わらない今日の国民心理であろうかと存じます。満洲事変から中日事変を経て太平洋戰争に至るまでの間は、国民が悔ゆるとも取返しの付かないほど大きく国民の運命が左右された大事件でありながら、国民にその真実が知らされないで、国民は自己の判断によつて自己の運命を決定する自由を奪われていたということであります。年遷り日変りてここに六星霜、再び日本の独立は復活いたしましたが、これを完成のものにいたしますためには更に一段の努力を要することと存じます。にもかかわらず国民には再び事実が知らされておりませんので、国民如何に心がまえをいたしてよいか宙に迷つておる姿であります。国民が知りたいであろうと思われておる点を総合いたしましてお尋ね申上げますが、どうぞ御懇切な御答弁が頂きとう存じます。  第一問は、朝鮮戰線に日本軍隊として出動する義務はないものと解釈するが如何かということであります。私どもは講和会議に全権を送りました。そうして署名して帰られました。講和條約の第五條によりますと、国連が国連憲章第二條に基いて行動を起すときには、日本人はその如何なる場合にも援助する義務を背負うという項目がございます。私どもは、日本に今軍備がないのでございますから、たとえ朝鮮動乱が熾烈になりましても、軍隊として出動いたして国連を援助する義務はないものと思つておりますけれども、国民の多くのうち、殊に婦人団体では、その問題に非常に危惧の念を持つのでございますが、改めてこの席から総理から御回答を頂くことができますならば仕合せと存じます。  第二問は義勇軍のことでございますが、将来国連が義勇軍を募集することがあるかも知れません。又日本人の中にはこれに応募したい希望が出るかも知れません。西ドイツのアデナウアー元帥は、欧洲統合軍に西ドイツ軍に参加させよと要請されましたときに、その前提條件として、先ず西ドイツが独立軍を組織することを要請いたして、気骨のあるところを示しております。日本が軍備がないにかかわらず、将来国民が一人々々ばらばらに外国の指揮の下に傭兵のような形で従軍するということは、国民の自負心から申してもよくないことと存じますので、そのときには一つ総理はどういう態度をおとりになりますか。ここではつきりさせて頂きとう存じます。  第三間は賠償の問題でございますけれども、政府はこの役務賠償まで漕ぎ付けたことは成功だと言われておりますけれども、私どもの解釈は、役務賠償と申しましても、労務者の賃金を政府が支拂うといたしますと、現金賠償と大した違いはないのではないかと考えるわけであります。総理大臣は、近代戰におきまして敗戰国は賠償の能力がないのを普通とするものだけれども、アジアの親善を取返すために日本はできるだけの賠償をしようと思うと言われております。私は日本総理大臣のその外交センスを高く買うものであります。併しながら、それにいたしましても、最小の労費を以て最大の効果を挙げることができますならば、勿論これに越したことはございません。フイリピンのロムロ全権の話によりましても、賠償は形式よりもその精神を重んずると言われております。私は今日のフイリピンは、事によると日本人の心理状態に対して相当認識不足の点があるのではないかと考えるわけであります。論より証拠、過日サンフランシスコにおける講和会議の席で、フイリピン全権のロムロさんの演説をラジオで聞きましたところが、日本人諸君は誠に我々に対して忌わしい侮辱を與えてくれた、けれども、運命は再び日本人と隣人として、而も平和裡に暮さなければならなくなつた。東洋には四海同胞という諺があるけれども、兄弟となるにはその前提條件として先ず心が清純でなければならない。将来日本人諸君が深い悔悟と著るしい更生の兆がはつきりと見えたならば、改めて防衛協定その他の條約に応じようと言われております。、この前太平洋戰争におきましても、日本人は一部誤まつた軍人の指導の下に踊らされておりますので、軍人と一般国民との間には相当心理状態に開きがあると存じます。講和会議じやなく、終戰以後におきましても、日本人は六年の間総懺悔をいたしまして、民主的に精神革命をいたしたわけであります。けれども終戰後六年の間、フイリピンとの間に交通が杜絶いたしていたのも原因でございましようけれども、今日のフイリピン人は、相変らず、あの当時フイリピンで暴虐をいたした一部日本の軍人と今日ある日本人全体とは同じ心理状態であるがごとく解釈しているのではないかと存じます。この点の認識を深めますならば、あれは懲罰に匹敵するような賠償問題はよほど軽減されるのではないかと存じますので、この点、今後とも政府の御努力を願いたいところでございます。第四問は安保條約のことについてでございますけれども、総理は勇敢に全責任を一身に帶びて署名されてお帰りになりました。衆議院の勢力分野から考えましても、この批准は当然通過するものと考えなければならないと存じます。併したとえ自由党だけで通過いたしましても、他の政党が全部反対するというようなことが若しありといたしますならば、国民は大変この問題に危惧の念を抱くだろうと思います。それは、予算を初めといたしまして、治外法権その他、国民権利義務を大きく制限するような問題がたくさん含まれておりますので、当然この問題は国会で議決すべき性質のものを、普通の法律の施行細則と同じように行政取極に移されておる点が、すでに大きい憲法違反ではないかというような疑惑も伴うことでございますので、(拍手)今後政府は、御面倒であろうとも、謙讓に各政党にお諮りになりまして、相成るべくは各党派なり、仕方がなければできるだけ政府と近い、まあ妥協の余地があるとお見込みの他の政党の代表者だけでも、一つ一緒にアメリカ側と折衝に当るようにお諮りになることが、政府のためにも、国民のためにもよいのではないかと存じます。(「全体として惡いのだ」と呼ぶ者あり)  更にその次は、この行政取極の内容について若干希望條件を申述べますが、日米合同委員会の組織についてであります。伝え聞くところによりますと、向う側とこちら側とはどうやら委員の数が同じようで、場合によりますと、委員長は先方が占めるやに聞いておりますけれども、これだけ見ましても、この合同委員会の機能はアメリカの意思通り動くということはわかり切つたことであります。この際、私たちが特に考えておかなければなりませんことは、日本国民の中にも講和会議以後に外国軍隊に駐屯してもらうということには非常に反対する国民が相当多いことであります。而もその中には本当に愛国心から出た意見もあるようでございます。私たちもその人たちと同じ血を分けた国民でございます。講和会議以後になつて、なお且つ外国軍隊に踏みとどまつて保護をしてもらわなければならないということは返すがえすも残念でございます。併し事態如何ともいたしがたき事情もございますので、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)暫定的にこれに応ずる恰好になつておりますけれども、その代り(「ちよつとおかしいぞ」と呼ぶ者あり)行政取極を承知いたして、この国会で批准を通過するとなりますと、この席に席を連ねております議員は、重大な責務といたしまして、後に日本国民はこの日米安保條約を廃棄いたしたいという意思が出ましたときには、何者の制肘も受げないで、日本人だけの意思でこの條約が廃棄できるような條件にしておくということは、後世国民に対する重大な責任であろうかと存じます。(「初めから断わつたらいいじやないか」と呼ぶ者あり)  それから、その次に補正予算のことについてでございますが、(「成るほど勝手なものだ」と呼ぶ者あり)今回出されました補正予算を拜見いたしまして一番に私の感じますことは、一家の主婦が、(発言る者多し、「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)こういう世帶の持ち方をしたならば、必ずその世帶は繁昌しないであろうということを感じたわけであります。なぜならば、昨年六月朝鮮動乱以来一年有半に亘るところの特需景気に基く臨時收入が千六百七十八億円の厖大に達しております。一家のうちでございましたならば、臨時收入がありましたときに、これをどう使うかによつて、家が繁昌するかしないかとの分れ目であろうと思います。或る主婦は、ふだん切り詰めた生活をしておるのだから、この際一つ暫らくは皆で御馳走を食べよう、或いは父親の背広も作ろう、母親の毛皮の外套もというように、必ず出さなければならないときまつていないような冗費支出に精魂を凝らすでございましようけれども、賢明なる主婦はこの態度をとりません。長いこと苦労はしたけれども、今この金を使つてしまうと元も子もなくなつてしまいます。もつと将来本当に安心して使うことができるように、この金を暫らく貯蓄にするとか、或いは安全なる方面に投資しようということにするだろうと思います。(「戦争するためにへそくりを作るのですか」と呼ぶ者あり)その代りそこから上る利潤によつて生活するようなことになるだろうと思います。今日、日本で一番大切なることは、基礎産業でありますところの電源開発、それから造船の問題、鉱工業に対する生産意欲に対することだろうと思います。私たちの聞く範囲では、電力の現有は六百万キロですか、更にこれに半分の三百万キロを加えますと、日本の産業様相が一変されると聞いております。即ち鉄道は電気になりますと高い石炭をインドやアメリカから輸入することが少くなるのでありましよう。合成繊維が増産されますと羊毛や綿花の輸入が少くて済むことになります。更に化学肥料の増産になりますと、輸出が増加いたしまして、将来は国民の自然増収から税金も大幅に引下げられることになるだろうと存じます。特にこの方面の生産支出のほうに、もつと多くを割くよう御努力賜わりたいと存じますが、大蔵大臣の御答弁が願いたいところであります。(「軍需産業ですよ」と呼ぶ者あり)  更に最後総理大臣に伺いたいことは、(「ゆつくりやれ」と呼ぶ者あり)日米でなく、米国ソ連との対立を話合いによつて解決付けるべく、総理大臣の一段の努力を願いたいという点であります。今回の講和によりまして、日本民主主義陣営に加担いたしますことによりまして、世界の二大勢力の対立が激化いたしまして、戦争の危險を孕むからいけないと言われております。併し私たちは、最近の世界戦争は、二大陣営の対立から起るのではなくして、一方の陣営は緊張していたけれども、一方の陣営はその反対に油断をしていたのが原因で、その油断に乘ぜられて侵略せられる。それが原因で小戰争が繰返されるのだろうと存じますので、今回その油断をしていた一方の陣営が立ち上りまして、共同防衛の恰好で相均衡いたしますと、暫らくはこれで平和が保たれるだろうと思います。併し然らば永久にこの態度でよいかと思いますと、そうではないと思います。この行き方は間違つていると存じます。ひどい軍備の競争になりますと、相手に対する疑惑の念が因になりまして、簡單なる問題で世界戦争にならないとも限らないと存じます。昔でございましたならば、外国戦争は対岸の火災視してもいられましたが、安保條約で日本が国連を援助する契約もいたしておりますし、第一、日本にはアメリカ軍隊が駐屯するということになりますと、世界戦争は早速日本の禍いの種になりますので、何をさておきましても、今後世界を平和に行くということを図る政策は一番大切だろうと考えるわけであります。私たちの聞くところによりますと、欧洲の北大西洋條約参加国の現有兵力は未だ大したものではないようであります。又小国は軍備競争のための財政負担に悲鳴を揚げているようであります。民主主義国の強みと申しましたならば、原子爆彈の現有勢力が多いことにあるので、ございましようけれども、これも使つたときは優勢かも知れませんけれども、これを使えば必ず復讐が来るということを考えますとなかなか簡單には使わないだろう。そういたしますと案外、宝の持ち腐れになりまして、原子爆彈以外の軍備によつて勝敗を決することになるかも知れないと思いますと、ソ連の陸軍侮りがたしと聞いておりますので、楽観は許されないだろうと思います。ところがソ連側にも又弱点があるようであります。最近ソ連側には民族主義が抬頭いたしますし、なお、国内におきましては余りにも粛清が度を過ごしまして、重要な地位に新人が就きましたために運転が困難で(実際は内政が忙しくて外に手を伸ばす余裕がないとさえ聞いております。かてて加えてスターリンの年まさに七十有余歳でございますか、スターリンほどの人は、たとえ戦つたら勝つ見込があるかも知れないと思うときでも、ここまで成功いたしたこの革命を瓦解するようなことがあつてはなりませんので、両虎鬪えば共に傷つきますことを考えますと、なかなかそういう冒險をおかすほどの思慮の浅い人間でないだろうと存じます。そういうことを勘案いたしますと、すでに氏神の出るときではないかと思います。併し幾ら頑張りましても、たかだか日本とインドぐらいが如何に高邁な理想を述べましても、背後に強い軍備がございませんので、所詮は蟷螂の斧のように非常に弱いと存じます。それで考えますには、ソ連の言うことも満更筋の通らないことばかりではないと思います。例えば最近軍縮の問題も提唱いたしておりますし、それから原子爆彈に対する有効なる国際管理も言つておりますし、朝鮮戰線におきましても北鮮並びに中共軍隊は責任を以て引かすから、その代りに日本中共とが貿易をすることを許してくれ、或いは中共を国連に参加さしてくれというような條件を考えているらしうございますけれども、半身不随になつている今日の国連に今更中共が参加したとて大した問題にもなりませんし、日本中共とが貿易をいたしましても、日本の戦略物資を輸出いたすことを厳重に取締りますならば、大して禍いの種にもならないだろうと思います。この程度の條件で朝鮮の動乱が收まるならば私は望外の仕合せではないかと存じます。そこで、第二次世界大戦の末期にヤルタに会合いたしましたアメリカの大統領とチヤーチルソ連スターリンと三人は、今後世界の問題は三人の話合いによつて解決付けようということになりまして、一夜に三回も乾杯をしたほど、なこやかな空気が保たれたようでありますが、再びこういうチヤンスを作りたいと私たちは考えるわけであります。幸いにいたしまして日本の国の総理大臣は多年外交畑で鍛えられた優秀なるお腕をお持合せであります上に、外交センスを豊富にお持合せでありますので、晩年を世界平和のために役立てるお覚悟で、アメリカのよき相談相手、顧問或いは内助の功、そういう意味で、相成るべくはソ連とアメリカとが静かに話合いによつて世界のもろもろの摩擦を解決するように努力して下さいますことをお願いいたしまして、私の質問を終ろうと存じます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。朝鮮戦線に軍塚の出動の義務ありや——これは義務はないと、私は、はつきりお答えをいたします。又義勇隊問題でありまするが、これは現に問題とはなつておりませんが、政府としては若しありとしても許す考えはないのであります。  又フイリピンに対する賠償問題については、賠償の義務は認めましたが、同時にその限界は、はつきり規定しております。ロムロ外務大臣の議論については私は批評を差控えます。  行政取極の問題についてはしばしば申しておりますが、これは全然只今のところは今後の話合いに属するのであります。合同委員会等の話合い等は全然今のところは話はございません。将来の問題であります。  安全保障條約の終了の問題は、終了については第四條に規定がございます。この條約はすでに成り立つた以上は一方的に破棄することはできないのであります。  ソ連との間の国交調整の御議論がありましたが、希望としては結構でありますが、併しながらまだ日本の独立も成立いたしておらない今日、私においては如何ともできない問題であります。お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手
  19. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 朝鮮動乱によつて千六百億円を儲けた、これを貯蓄して行くべきではないかというお話でございます。朝鮮動乱勃発以来、朝鮮関係或いは他の関係、いわゆる特需関係で大体四億ドル入つて参りました。併しこの四億ドルの千四百四十億円が今年度の自然増收千五百六十億円になつたのではないのであります。これは成る程度の原因は朝鮮動乱に基くものもありまするが、国民努力によりまして生産が殖えた結果千六百億ばかりの自然増收があつたのであります。而してこの自然増収を使います上におきまして、私は大体四百億円程度の所得税の軽減をするのが今の負担の状況から言つて適当ではないかというので、四百億円を所得税の減税に充てました。残り千二百億円のうちで、出資並びに投資、即ち貯蓄に当るものを八百億円見込んでおるのであります。又このほかに貯蓄に当りまする食管会計の百億円の繰入れ等、大部分を貯蓄に充てまして、必要欠くべからざる極く少い経費を支出に充てておる状態であるのであります。いずれ予算の説明のときに申上げまするが、折角の御質問でございますので、とにかくお話の通りに貯蓄を第一にいたしまして、而して貯蓄された金が、電力、造船、石炭の重点産業向くように心がけておるのであります。(拍手)     —————————————
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 柏木庫治君。    〔柏木庫治君登壇、拍手
  21. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 講和後の平和という問題で総理大臣にお尋ねいたします。  この頃、平和々々という声が、何だか生気味の惡く感ずるような意味の平和という声もあります。平和の声を大にして日本民族をどこかの国に渡すのじやないかというような意味に感ずる平和の声もありますが、私の申上げる声はそういう平和ではなくして本来の正しい平和であります。マツカーサー元帥が声明をされまして、日本の占領を完結いたしましたときに、一兵も損せず、一滴の血も流さず、日本の占領を無事に完了した、かくのごときは曾つて世界の歴史になく、史上曾つて行われたことのないアメリカの大成業だという言葉がありました。成るほど世界の者が、日本人は戰争を好み、人を殺すことをそう大して思うてないように世界は誤解をいたしておつたのであります。元来、戰争は勝ち戰さの後始末はしよい、負け戰さの後始末こそ人類最もひどい困難でありますが、その困難に処して一兵も損せず、一滴の血も流さずに終戰を無事完了いたしましたことは、これ又世界の歴史になく、史上曾つて行われたことのない、すばらしき日本の終戰振りでありまして、このことこそ、平和を好み、殺人を嫌う日本人本来の姿があそこに現われたのだと存ずるのであります。それから敗戰後の姿として、一応人心は混迷し、都市は廃墟でありましたが、あの廃墟の中から今日の日本憲法をかち得まして、世界の文明国が戰争を放棄し武備を撤廃することは人類の理想として念願しておりましたのに、何びとも何国もなし得なかつたことを日本だけが完全に憲法の上になし得たのであります。ここにも又本来の日本民族の姿が躍如として躍つております。(「憲法を守らにやだめですよ」と呼ぶ者あり)占領下にあつたので、アメリカの世話好きによるのだと言う人もありますが、成るほど産婆の役目はアメリカが或いはいたしたか存じませんが、あの憲法を生んだのは全く日本民族であります。(「憲法だけでも守らにやだめですよ」と呼ぶ者あり)ところが今度の講和によりまして、私は吉田全権に緑風会からねぎらいと感謝の電報を打ちますときに、お見事という一句を初めに加えよと提案いたしたのでありますが、柏木の気持もよくわかるが、まあ事務的にというので、平凡な言葉なつたと思うのであります。ともかく(「何が見事だ」と呼ぶ者あり)あの講和の中を見ますと、千島や樺太が或いは日本の手から離れるかと思うことは甚だ不満でありますが、ともかく敗戰国であれだけの内容を持つ平和條約を締結できましたことは、連合国、特に力を入れて下さつたアメリカに向つて私は心からなる感謝を捧げてよいと信じております。(拍手)特に又あそこまで持つて参りました吉田首相の並々ならない御苦心に対しても心からなる敬意を惜しむものではありません。(拍手)  そこで私ども申上げたいことは、如何日本があの憲法を守ろうと思いましても、武器を以て他国に押し寄せて来る連中のある間は、或いは再軍備の止むなきに至るかと存ずるのでありますが、吉田首相にお願いいたしたいことは、たとえ再軍備の時が参りましても、それは仮にであつて、本来の日本憲法を飽くまでも時来たれば成長さじて、而もその日本憲法の持つ内容が世界各国に伝播するよう御努力を願いたい。それを日本の国是といたしたいと考えておりますので、(拍手首相の所見を承わりたいのであります。  もう一つは人口問題とも関連がありますが、アメリカの実業家が竹本に参りまして、日本は雨を八割ほど粗末にし、あの資源を活かすことを怠つておると許されたのでありますが、私は雨の資源という言葉にひどひど打たれまして、今度の電気の問題で一しお感を強くいたしました。この雨が資源ということを世界的視野で拡げて見ますと、成るほど人間の一番の資源は太陽である。それから雨、水である。土である。風である。でありますから、世界恒久の平和を、国と国、人と人とが約束し、相談をすると同時に、この天が人類に與えた資源を人類において完全に活かして、この資源が全人類を潤おして行くというところに本当な意味世界恒久の平和があると信ずるものであります。して見ますと、地球上には、千古斧鉞を入れず、年々歳々これらの資源をことごとく無駄にしておる地域のあることは誰もが知つておるのであります。併しそれはみんな囲いが結われておりまして、どこの国、どこの国とレツテルが貼られております。併し千年も五百年もこの資源に手が着かないのは、その国の持つておる人口ではできないのではないか。して見ますと、この憲法を生み、あの終戰時に一滴の血も流さず、一人も殺さず、アメリカも日本もやり得たような、この平和な日本人をして、而も勤勉にして困難に堪え得る日本人をして、私は地下資源とまでは申しませんが、少くとも平和を布求する世界人はこれを開放して、この資源の開発をさせ、所有者は所有者としての利得を得、開発者には開発者としての利得を得せしめ、その生産品を世界各国に求めるままに流して参りますならば、人類の幸福「世界の平和の大きな部面がこの中にあると信ずるのであります。幸いにして吉田首相のごとき、私はいろいろ大臣の答弁を聞きますが、或る大臣は言いのがればかりに忠実なものがありますし、頭がよ過ぎて言いくるめることばかりをやつておるものがありますが、そこに参りますと、首相は少しも肚に邪心がなく、いやなものはいや、いいものはいい、何かそこに非常に信頼が置けるのでありますが、これはひとり日本人だけではなくて、世界の人が吉田首相の人柄をこのたびは特に目のあたりに見、味われたと思うのでありますが、(拍手首相のような人であつてこそ、この問題について世界と語り合い、今その時でないならば、今、私は求めるものでありませんが、これも日本の念願しておる一つとして、私は世界に率直に訴えて頂きたいと、吉田首相にお願いをいたしたいのであります。  それから文部大臣にお尋ねいたしますが、今度非常に卑近な問題でありますが、一昨日中山君から、道徳実践の要領について、一片の空文云々という言葉がありましたが、文相はそれに対して、決して一片の空文であるのではないというお話も承わつたのでありますが、私の知人が、アメリカの大学を出たアメリカの中尉と仲よしでありまして、二人がいろいろお国自慢する結果、東大のあの宏壯な、日本にもこんな学校があるよと、宏壮な構えを見せに、東大を見てくれと連れて行つたのであります。それから暫らくあちらこちらを廻つておりまして、二人が別れるときに、あんな汚れたきたない学校はアメリカには一つもないよ、君が今度来るときに案内するから、アメリカの学校の隅から隅まで見てみよ、あり大きな国であんなきたない学校は一つもないと、惡い意味でなく語つて帰られたのでありますが、私は天野文相は、大学に何十年かお暮しになつたのだろうと思うのでありますが、そういうきたないところに安閑としてみんたがおることを眺めておつたかという問題であります。これは掃除の問題を言うのではなくて、道徳実践の要領をお話になるのならば、美しいことを好む、きたない所におることは堪えられないというような、美しいことを好む、美しい心に国民が進んで行くところに、私は道徳の実践要領があると存ずるのであります。名古屋から大阪のほうに参りまする電車は、修学旅行の期になりますと、学校の先生が、貸切りではない普通の電車を一つ待ちまして、次に待もましたときに、全部の席を学校の生徒が占領いたします。お年寄が中に入りましても、而も八十の爺さんがぶら下つて腰を曲げておりましても、先生も席を讓らせない、生徒も讓ろうとは決していたしません。かくのごときは、人をいたわる、人を幸いするという美しい心のない証左であります。これは今でも皆さんが旅行なさつたら、名古屋でいつでも見られる姿であります。文相にお願いいたすことは、決して空文に終らないよう、ところどころには本当の姿を書いて頂いて、少くとも一外国の青年から、こんなきたない所によく日本人はおれるんだと軽蔑せられないよろな最高学府でありたい。そう申しますと、予算がないからとか……そういうことであつてはならないと私は思うのであります。私は美しい心の問題を話しておるのであります。  根本農相にお尋ねいたしますが、私はお尋ねよりも、むしろ希望なんでありますが、根本農政は、私は昨年ここで緊急質問として、作物の病虫害を駆除することを提案いたしました。本年は、香川県、新潟県は先手々々を打ちまして、香川県は十万石虫で失うところを、先手を打つたために取りとめた。これを輸入食糧にいたしますと十四億でありますが、費用は一億一千万円であつたそうであります。新潟県は昨年の二十一万石虫に食わせ病気で倒したのに懲りまして、本年は先手を打つたために被害がなかつた。聞くところによりますと、長崎、熊本は随分広い範囲であつたそうでありますが、若き根本農相にお願いすることは、病虫害なき根本農政を進めて行く熱意ありや否や。一県に一カ所、今、日本全国に十カ所だそうですが、一県に一つだけこの防疫準備をいたしたならば、相互の助けによりまして先手々々と行くことができると思うのであります。幸いに金の計算においては当代政治家のチヤンピオンであります池田さんが控えておりますから、どうぞ一つよく相談なすつて、折角作られたものを病虫害によつて失うような、従来の後手々々に廻る愚かな農政から若き根本農政は脱して、画期的な、一つ病虫害なぎ農村を作つて頂きたいと存ずるのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  憲法第九條の戰争放棄の規定は、当時大分議論があつたのであります。又当時は終戰間もない頃であつて世界において戰争気分がまだ漲つてつたときに、戰争放棄の規定を憲法に入れたことは、非常な決心を持ち、非常な希望を持つてこれを規定いたしたのであります。その精神を今日においてかるがるしく変更することは、我々の希望せざるところであり、又国民も許さないところであり、この精神を推し拡めて、世界に推し拡めるということができれば、これは誠に結構なことであり、そうありたいと考えるものであります。お話の趣旨は、私において毛頭異存はないのみならず、賛成することを躊躇いたさないものであります。  又天然資源についてのお話がありましたが、御尤もであります。日本が今日、未開の土地と申しても大したことはないのでありますが、ひとり水力電源だけについては豊富な資源があるのであります。この資源を開発するということは、日本国としてまさに努むべきことであり、今日においては、電力はひとり日本において欠乏いたしておるのみならず、米国のような資源の富んだ国においても、なお且つ不足いたしておるのであります。日本の電力資源が十分に開発ができて、そして生産力がますます増大いたすということになれば、これがやがて世界の繁栄を助けることであり、日本だけの問題といたしても、電力資源は速かにその開発に努力をいたさなければならんことと確信いたします。故に政府としましても、この電源の開発については十分に力を盡すつもりであります。お答えします。(拍手)    〔国務大臣橋本龍伍君登壇、拍手
  23. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 委員会に出席をいたしておりましたので、或いは御質問の御趣旨と少し違うかも知れませんが、人口問題に関する御質問に対して答弁をいたします。  私の所管いたしまする部分とその他の部面とに分れまするが、大体、政府考えておるところを申上げたいと思います。  講和後の日本の人口問題に対する根本の方策といたしましては、何の変哲もないようではありまするが、国際貿易の振興に努めまして、国内産業を極力振興して、増加人口を収容維持するための経済力の拡充にあらゆる努力をいたすことが、何と申しましても根本の仕事だと考えております。移民の問題に関しましては今後いよいよ努力をするつもりでございます。併し相手国の意向もあることでございまして、又海上輸送力の一点だけを考えてみましても、移民の数は少くとも当分の間余り多くを望むことはできないであろうと考えておるのであります。なお、人口調節の問題についてでございまするが、これは本能的に言いましても、やはり普通の状態であるならば、子供を持つということはめでたいことでありまするので、本能的に余りこの問題を非常に大きく取上げることを好まない空気が国内にもあると思うのであります。勿論我が国が敗戰後與えられた経済力とバランスをとるために、人口を無理に減らして行くというような政策政府がとるといつたようなことは、これはよほど考えものであろうと思いまするが、ただ今日のいろいろな事情から言いまして、各個人の考えとして健康で文化的な生活の実現を期しまするために、各個人が受胎調節の方法によつて産児の調節をしたいという希望を持つている場合には、できるだけ衛生的で、且つ又経費もかからないで、これの実現のできるような方途をできるだけ政府として整備をする。つまり公衆衛生院その他の組織を通じまして、こうした方面についての知識とサービスを提供するということは必要であると考えまして、今日もいろいろ仕事をいたして参つておりまするが、今後なお具体的にもう少しこれの普及宣伝の方法を考えてみたいと思つておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手
  24. 天野禎祐

    国務大臣(天野禎祐君) 只今は、日本人が美しいことに対する感覚を持たなければならない、清潔ということに対してもつと鋭い感覚を持たなければならないというお話でございますが、私はお説は非常に御尤もだと思つております。今の学生などが、ややもすればそういう清潔ということに対する感覚を持たないということは残念なことでございまして、清潔に対する感知を持つということは、やがて又道徳的な正義などに対して鋭い感覚を持つということになりますので、お説のように美しいことに対する感覚ということを私は強調して参りたいと思つております。私が計画しております実践要領にも清浄ということをすでに入れておりますが、なお、よくそういう点について考えるつもりでございます。  それから又、私、先ほどここにおりません節に、小林政夫君から御質問が私に対してなされたそうでございますが、その趣旨は、日本人が本当に国際人となつて国際的な感覚を持ち、そうして他国から敬愛されるような人間にならなければならない。それに対して一大運動を起してはどうかという御趣旨と承わりました。これも誠に御尤もなことでございまして、私は、日本的とか国家の尊重とかいうことを申しますが、それは決して偏狹な意味の国家主義を唱えるのではなくして、日本的ということが本当の意味において世界的なんだ、よき日本人であることが本当によき世界人なんだ、そういう理想を以て教育を指導して行きたいという考えでございます。詳しいことは又委員会で述べたいと思いますが、そういう趣意で小林さんの御趣旨に全く賛成でございます。なお、そのために運動を起すかどうかということについては、なお考慮することを許されたいと思います。  これを以てお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇、拍手
  25. 根本龍太郎

    国務大臣(根本龍太郎君) 農作物に対する病虫害を未然に徹底的に防除せんと、こういうことでございまするが、誠にその通りでございます。この意味におきまして、政府はすでに本年におきましては、政府補助の下に農薬を各地に、これは府県單位でございまするが、備蓄をいたさせまして備えたのであります。幸いに、これによりまして相当程度本年の病虫害を防除したのでありまするが、手当が余り十分でない四国並びに九州に、「うんか」、二化螟虫が出まして、これは事後において手配するのやむなきに至つたことは残念でございます。明年度からは更に徹底的にこれを防除するために、備蓄の制度を更に強化し、以て病虫害による折角の農作物が損失されることを防ぎたいと考えている次第であります。(拍手
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣演説に対する質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  27. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 私はこの際、電力問題に関する調査のため三十名から成る特別委員会を、在外同胞引揚問題に関する調査のため二十名から成る特別委員会を、公職選挙法改正に関する調査のため二十五名から成る特別委員会を、それぞれ設置せられんことの動議を提出いたします。
  28. 木村守江

    ○木村守江君 私は只今の小笠原君の動議に賛成いたします。
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小笠原君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて電力問題に関する調査のため三十名から成る特別委員会を、在外同胞引揚問題に関する調査のため二十名から成る特別委員会を、公職選挙法改正に関する調査のため二十五名から成る特別委員会を、それぞれ設置することに決しました。  本院規則第三十條により、議長が指名いたしました特別委員の氏名を参事に朗読させます。    〔海保参事朗読〕  電力問題に関する特別委員    秋山俊一郎君  石坂 豊一君    石原幹市郎君  岡田 信次君    小野 義夫君  加藤 武徳君    古池 信三君  重宗 雄三君    高橋進太郎君  河崎 ナツ君    清澤 俊英君  栗山 良夫君    島   清君  椿  繁夫君    三輪 貞治君  山田 節男君    奥 むめお君  加賀  操君    高木 正夫君  田村 文吉君    山川 良一君  結城 安次君    稻垣平太郎君  小川 久義君    境野 清雄君  櫻内 義雄君    東   隆君  佐々木良作君    水橋 藤作君  須藤 五郎君  在外同胞引揚問題に関する特別委員    石川 榮一君  大谷 瑩潤君    木村 守江君  草葉 隆圓君    長島 銀藏君  安井  謙君    内村 清次君  片岡 文重君    小酒井義男君  成瀬 幡治君    森崎  隆君  飯島連次郎君    高良 とみ君  杉山 昌作君    鈴木 直人君  木内キヤウ君    紅露 みつ君  千田  正君    堀  眞琴君  岩間 正男君  公職選挙法改正に関する特別委員   池田宇右衞門君  石村 幸作君    上原 正吉君  川村 松助君    北村 一男君  楠瀬 常猪君    堀  末治君  安井  謙君    大野 幸一君 小笠原二三男君    重盛 壽治君  相馬 助治君    高田なほ子君  中田 吉雄君    赤澤 與仁君  岡本 愛祐君    柏木 庫治君  西郷吉之助君    鈴木 直人君  鬼丸 義齊君    菊田 七平君 前之園喜一郎君    松原 一彦君  千葉  信君    兼岩 傳一君      —————・—————
  31. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 私は、この際、内閣から予備審査のため送付された平和条約の締結について承認を求めるの件及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約の締結について承認を求めるの件を審査するため、三十五名から成る特別委員会を設置せられんことの動議を提出いたします。
  32. 木村守江

    ○木村守江君 私は只今の小笠原君の動議に賛成いたします。
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小笠原君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて平和条約の締結について承認を求めるの件及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約の締結について承認を求めるの件を審査するため、三十五名から成る特別委員会を設置することに決しました。  本院規則第三十條により、議長が指名いたしました特別委員の氏名を参事に朗読いたさせます。    〔海保参事朗読〕  平和条約及び日米安全保障条約特別委員    秋山俊一郎君  石川 榮一君    泉山 三六君  大屋 晋三君    川村 松助君  北村 一男君    楠瀬 常猪君  杉原 荒太君    徳川 頼貞君  一松 政二君    平林 太一君  岡田 宗司君    加藤シヅエ君  金子 洋文君    佐多 忠隆君  曾祢  益君    永井純一郎君  波多野 鼎君    吉川末次郎君  岡本 愛祐君    片柳 眞吉君  加藤 正人君    楠見 義男君  杉山 昌作君    高橋 道男君  伊達源一郎君    野田 俊作君  大隈 信幸君    木内 四郎君  櫻内 辰郎君    一松 定吉君  羽仁 五郎君    堀木 鎌三君  堀  眞琴君    兼岩 傳一君
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十四分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第四日)  一、電力問題に関する特別委員会、在外同胞引揚問題に関する特別委員会及び公職選挙法改正に関する特別委員会設置の件  一、平和条約及び日米安全保障条約特別委員会設置の件