○
大野幸一君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
総理大臣に対しそ
施政演説に関し若干の質疑をいたしたいと思うものであります。このたびの
講和で、
国民は
講和後に
日本の
民主主義が一体どうなるかということについて多大の
心配を有しておるものがあります。そこで、
講和によ
つて、
講和の後において
日本の
民主主義が後退するならば、これほど不幸なことはないのであります。これは重要な問題であるから、さぞや
首相は
施政方針において述べらるるものと私は信じておりましたが、一言も言及されていなかつたことは誠に遺憾の極みでございます。そこで、先ず第一に
首相に、
首相は
講和後
日本の
民主政治をどんなふうにして助長発展させて行く覚悟があるか、こういうことをお伺いしたいのであります。今や
国民の多数は再び
日本が旧
日本に逆戻りするのではないかという
心配を持
つております。然る時、
特高秘密警察は再び復活されんとし、
警察国家はその芽を出し、その
憲法における
基本的人権の
保障をも侵されようと
考えらるる
政策が、
政府みずからの手によ
つて行われようとしている事実であります。(〔そうだ」と呼ぶ者あり)例えば
団体等規正令、
公職追放令を統合整備した
一つの法律をこしらえようとしておる。元来これらのものは
ポツダム宣言又は
連合国最高司令官の覚書に基くものであ
つたのである。
占領下においてのみ
国民は止むなく甘受して来たものであります。
占領下であつたらばこそ、
憲法以上のものとして、
憲法以上のものとして甘受して来たのであります。(
笑声、「そうだ」と呼ぶ者あり)然るに自主権を回復した
独立日本の今後においても、なお、これらの偉大なる権利を
政府の手によ
つて握ろうとしているのであります。けれども、数日来
言論界の猛然たる
非難攻撃に
会つてか、或いは又
国会に対する考慮からか、幾分修正の態度を示しているようでありますが、我々はかかる
民主政治の破壞の制度に対しては、大衆と共に
民主政治を死守する覚悟であります。(
拍手)断乎として
反対をいたすことをあらかじめ表明しておきます。
文政府は、一方において
治安省とか
保安省とかを設置して、元来独立していてこそ初めて
民主主義を守り得るような機構にな
つているところの
国家警察とか、
自治体警察の大半、
特審局、
警察予備隊、海上保安庁、これらなどを統一して、一人の
行政大臣の権能に握ろうとされております。かくのごとき構想が実現されたならば、あなたは旧
日本の
軍部大臣になろうと
考えておるのでありましようか。その結果は
如何になるか御承知でありましよう。(「そうだ」「うまいものだ」と呼ぶ者あり、拍)これら一連の
政府の
政策は、
曾つての特高警察又は
警察国家再建の徴候でこそあれ、
民主主義政治のるべき
政策ではないのに、
政府みずからかくのごとき
政策立案を堂々と発表していることは極めて遺憾であります。これが
ポツダム宣言に要求されているところの責任ある
民主政府でありましようが。
政府みずからの手によ
つて民主政治は破壞されはしないかと
却つて国民のほうが
心配している今日であります。(
拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)これより受ける
国民の印象は、賢明の者はこれを憂え、一部の者はこれを機会に
民主主義の破壞又は逆行さえ意図している者がないと誰が断言できるでしようか。よ
つて総理大臣は、この点に関し
如何なる
考え、
如何なる方法で
講和後の
日本の
民主化を維持し発展させて行こうとお
考えにな
つているか。この御
見解を承わりたいと思うもりであります。これに関連して思い出しますことは
東條内閣の暴政であります。或る日、
曾つて一人の憲兵、警察官が私の所へ参りました。そうして今や
日本には
ペタン元帥の一味がある。
戰争の終結を図ろうとておる者がある。そういう者があ
つては我々は
戰争がやりにくい。私です。あなたには某元老の所に出入りされておるからこういうところの情報がありませんか。大物を
一つ挙げて見せしめにしなければいけないと言いました。私は、そういう人も国のために憂えておる人であるかもわからない、そういうことをしてはよくないではないかと言いました。答えて曰く、私たぢはそういう偉い人でも引つくくる権利はある、併しその人と対等に話すだけの地位ではないと言いました。けだし至言であつたと
考えたのが当時でありました。暫らくいたしまして、一週間の後に、
外務大臣をして
おいでに
なつた
吉田茂という人が検挙されたということを聞きまりした。(
笑声「残念だ」と呼ぶ者あり)これは現在の
吉田首相であ
つたのであります。
曾つては
吉田首相もこの
警察国家の犠牲となられたかたであるのであります。我々
社会党に議席を持
つておる議員は、多かれ少なかれみんなこの犠牲を受けたのであります。私は
吉田首相が自分の経験から再び
東條大将のような道をたどられる人とは私は信じません。併しながら閣僚の中には頭がよ過ぎて、賢明過ぎてややもすれば
首相をこの道に誘い込もうとするところの手引きをしておる人を私は指しております。(
拍手)これに対してどうか
吉田首相自己の経験からして、この警戒を怠らないようにして頂きたいと私は思うのであります。又
トルーマン大統領もこの間
サンフランシスコの
会議におきまして、事、この問題に触れて
演説をされております。開会の
演説にこういうことを
言つておられます。「今日の
日本は六年前の
日本とは全く
違つた国にな
つておる。旧来の
軍国主義は一掃された。これは單なる
占領軍の布告によ
つて行われたものではなく、圧倒的多数の
日本国民自身の
意思によるものであつた。旧
日本政府の利用した
秘密警察及び
警察国家方式も又廃棄された。新
日本憲法はすべて
国民の人権を
保障し、真に
国民の
意思を代表する
政府を確立した。」こういうように述べられております。これは何を
意味いたしましまうか。
トルーマン大統領は
講和に先立
つて五十一カ国を前に置いて、
日本は
民主政府が樹立したということを保面されたのであります。又
日本に対してはかくあるべきであるということを警告されたものと思うのであります。四十八カ国はこれに信頼を置きまして、とにかく調印して帰りました。この期待を
吉田内閣によ
つてどうか裏切らなやようにしで頂きたいと思うものであります。ということを申上げつつ、これに関連いたしまするところの又
警察予備隊に関して、若干質問を試みたいと思うものであります。
首相は、再軍備は差当りできない、そのため増税すると
言つても
国民は納得しないであろうと、去る十日の
記者団会見で
言つておられます。我々も又その点全く同
意見であります。ところが現に
警察予備隊は、写真でも明らかでありますように、我々と約束したところの小銃以上の
装備、軍隊的の重火器、
迫撃砲、
ロケツト砲さえ持
つております。その組織は軍隊そのままの編成でや
つているではありませんか。この
装備の点は
予備隊の性格上どうしても行き過ぎていると思いますが、
如何お
考えなさるでしようか。入的
方面に至りましても、
佐官級現役軍人追放解除その他
予備隊幹部の採用の意図は、明らかに人的に
軍隊編成に着手したものと一般から認められても止むを得ないじやありませんか。又
安保條約中の行政取極において、
日本が
侵略を受けた場合は、
日本政府の要求に基き、
米軍は
戰鬪配置につき、必要に応じて
予備隊及び国警の一部隊を
米軍の
指揮下に編入するということを取極めるとか取極められたとかいうことを、まことしやかに伝えられておりますが、そういう場合も予想されるでありましようか。若しそのようなことが実現すれば、これは
国家主権の移譲であり、昔で言う
統帥権の移譲である、
憲法違反であると我々は
考えておりまするから、この点、特に
政府に警告しておきたいと思うのであります。又
政府は
予備隊の
装備と
一体憲法第九條第二項の
陸海軍その他の戰力との限界をどう
考えて
おいでになるでありましようか。或いは
近頃憲法の
解釈を変更されましたようでありまするけれども、
憲法ができた当時の
解釈は、
自衛権があるとないとにかかわらず、結果においては
日本は
陸海軍の戦力は持つことができないという
解釈が根底としてあるはずであります。時勢によ
つて憲法の
解釈が任意に解されるときこそ、国は
危いものであるということは、過去の歴史に徴して明らかではありませんでしようか。又
予備隊の予算も莫大なものである。
明年度の予算に
至つては、
警察予備隊の
要求費は六百億円とも伝えられている。こんな
財政負担は、
国土荒廃、
地方財政の破綻、重税、
赤字インフレで
国民は全く困窮しているときに、こんな冗費を使うようなことがあ
つては、
却つて国内から社会不安を引き起すことになりはしないか。
日本経済の現状において、これらの
負担増加と
国民生活水準との向上を図るにどんなふうに調整し処理して行かれるか。一体、
政府は今後の
国民生活水準をどこに持
つて行くか、又どこで抑えるかという確信がございますでありましようか。これもついでにお伺いしておきたいと思うのであります。
第三は特に
首相に対して、
首相の
労働対策について、その
根本的観念を
一つ伺
つておきたいと思うのであります。元来、
首相ほど
労働者に対して
理解を欠く
政治家は稀であると私は
考えます。(「その
通り」」と呼ぶ者あり、
拍手)私は、
曾つては
首相も
労働者を、その
労働者が、たとい一部の人であるといえども、不逞の輩と呼ばれたというようなことを聞いている。併し今日はもう
大分経験を得られたでありましようから、そのお気持は変
つているものと信じておりました。(
笑声)ところが
首相が
施政方針について一言この問題に触れておるところを聞きまして、私の期待は完全に裏切られてしまつた。
首相の
演説中、
首相はこういうことを
言つておられます。「
我が国の
労働條件についても、
トルーマン大統領及び
ダレス代表がその
演説で強調された
通り、
占領下に断行された改革により、
世界の
最高水準を行く
労働法制を整備しておるのであります。余りに理想に過ぎて、全然
我が国情に適合せずとまで
考えられるほど、前例の少い高度の
労働基準を設定しておるのであります。」こう申されております。この文章、実にあいまいでありますけれども、どう
考えて見ましても、
我が国の
労働條件について、
トルーマン大統領や
ダレス代表が若七
サンフランシスコの
会議で強調された
演説とするならば、
占領治下において改革を断行して、
日本の
労働者に対しては
世界の
最高水準を行くような
労働法制を整備してやつたと、こういうことを申されたのでありましよう。これは何を
意味しますか。
占領政策の有終の美を
最高司令官はなしたものであるという、
占領政策を
世界に誇示されたものである。或いは又
日本の
労働者に対する
一つの祝福の
言葉であつたと解さざるを得ないのであります。そう
解釈するのが素直であるのであります。ところが
首相は、それを、その
考えを、「余りに理想に過ぎて全然
我が国情に適合せずとまで
考えられるほど」云々と、こう言われております。これらは、
トルーマン大統領の祝辞の
言葉を、
却つて以て
日本の
労働者に対するこれから冷たい
政策をやろうという
理由に付けられているのであります。尤も
首相は肚の中ではこういうことを言いたか
つたのでありましよう。
日本の
労働條件を不当となすは、全く現状を見ずして徒らに既往の記憶に囚われるものというべきものであると、こう、あなたは言いたか
つたのである。ところがそれは消されておるようであります。最初の草案にはそうあつた。こういうあなたの心の底に潜むところの
労働者に対する冷たい
考え、こういうことをどうかこれから転換して頂いて、(
笑声)
日本の
労働者に対する温かい
政治をや
つて頂きたいということをお願いするのであります。(
拍手)
何が故に私がこういうことを申上げるかおわかりでありましよう。(
笑声)もう少し
首相は
労働者に対して本当に
理解が欲しいからであります。
労働者は過去の
戰争には忠実に働きました。戰後の復興にも大いに寄與したものが
労働者であるのであります。併し今以て何も報いられない今日の
状態であります。そこで今度の太平洋
戦争で
日本の
労働者も
戰争の何ものであるかということを
知つたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)或る者は朧気ながら、或る者ははつきりと知りました。
国民大衆も又然りであるのであります。今回の
日米安全保障條約に対しても、多くの、各
労働組合は申すに及ばず、
社会党を初め、
勤労階級を代表する政党からは全部
反対の
意見が表明されているではありませんか。これはそのうちの多くの
理由は、多々ありましよう。或る者は時期が不適当である。
占領下というようなときにこんな條約を締結して、何が対等の條約の効果が現われるか。こういうことを
心配する者があるのでありましよう。或る者はこれは
世界の信義に悖ると言う人もあるのでありましよう。或る者はこれこそ
戰争の原因となると、こう憂える人があるでありましよう。更に或る者は、あれは
米国の利益になればこそ、
日本の利益にはならないと
考える者もあるでありましよう。いや、
植民地だ、
奴隷化だと信ずる人もあるでありましようが、それはともかくといたしまして、その
一つには、
労働階級は再びこれが
日本の
勤労階級の
負担になるのではないかという危惧があるのであります。私はあえて危惧という遠慮した
言葉を硬
つておきましよう。この
反対の
理由に対しては、おのおの
意見や
見解はあることでありましよう。それはともかくといたしまして、この條約に対する
勤労階級の
反対は
現実の問題であります。
現実の問題として
勤労階級が
反対していますときに、この
日米安全保障條約の実質上の成果について、かく
勤労階級が
反対するという
前提條件に立
つて、この
日米安全保障條約の実質上の成果を、一体、
吉田総理大臣はどう
考えておられますか。
曾つて芦田さんは、
社会党を含まないところの
講和なんというものは
意味はないと言われました。賢明な人でありましよう。それを憂えられた元の
衆議院議長が又
超党派外交を唱えられたのもそれでありましよう。最後に
ダレス特使も、どうか
社会党にも全権に加わ
つてもらいたいということを示唆されたとか噂されているのも、又奈辺に
意味があるでありましようか。御存じであるはずであります。私は、
首相がこれら
反対する
勤労階級、いな、
国民に対して、どうか
理解してくれということを求める
努力が
如何にしてなされたでありましようか。
自由党だけの
理解を得ればそれでよろしい、それは議会だけの話であります。條約は文書の交換や署名の交換であり、又それが
国会の批准だけで、それで十分でありましようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)賢明なる
首相の
判断に御一任しておきましよう。(
笑声)繰返して申上げまするが、どうか、あなたの今までの冷たい
労働政策から、私の言う温かい
労働政策に転換される用意があるかどうかということを、ここでお知らせ願いたい。口で
答弁されるよりは、今後の
現実の
労働政策として回答を賜わる、こういうことにしておきたいと思います。どうかその点を御了解下さい。
次に国際問題に触れまするが、
吉田首相の
内外情勢の
判断について
国民は非常に疑問を持
つております。
従つて、私はこういうことをお聞きしたい。先ず
吉田首相は、
日本は現在国外からの
侵略の
脅威があるとお
考えになるかどうかということであります。この点に関し、
首相は第十
国会において、国内問題として、「
我が国における
共産主義者の跳梁は漸次影をおさあ、治安上何ら憂うべきものなきは御承知の
通りであります。」と一月二十六日にこういう
演説をされております。「国外の情勢は、今にも安全が脅やかされるかのように言やれるが、それこそ甘い
考えである。」、翌日であります。多分、我が党の
衆議院の
西村議員に対してあなたは、西村君こそ余りおびえ過ぎておるというような揶揄を、あなたは
答弁されたように新聞で寿見したことがあるのでありまするが、そういう時代がありました。ところが、
サンフランシスコ会議において、
吉田首相は、
日本周辺に対する
共産主事勢力の
侵略の
脅威を、
一つは朝鮮の
方面から、もう
一つは千島の
方面から、
相当差迫つたような表現を以てこれを強調しておられます。例えば、次のような
言葉がある。「
共産主義的勢力が公然たる
侵略に打
つて出でつつあるのであります。
日本の間近に迫
つております。」続いて、「今日
我が国はまたもや同じ
方面から」、これは
千島列島とか北海道を指すのでありましよう、「
共産主義の
脅威にさらされているのであります」。と、
サンフランシスコでは強調されております。ところが、本
国会では、この議場で何と言われました。
ソ連も平和を欲しておるので
戦争の
脅威はないというような
意味に解される
答弁をされました。私は
速記録を正確に調べておりませんかち遠慮して申上げますが、そういう
答弁をされております。
国内治安の
心配もなく、外国からの
侵略の危險もないのに、なぜ急いでこの
安保條約に調印したのか。すべて内容を
あと廻しにして、そうして
国民の疑問にも答えないでおいて、どうして急いでこの調印をされたかということである。あなたの
国際情勢判断の誤まつた
考えから、この
安保條約か成立していやしないかということを我々は憂えるのでありますが、何とぞ率直に
一つその点をお答え下さい。どうしてこんなような
国際判断に関する
見解をだんだん変えて来られるように
なつたかということであります。
これは再質問の形のようになりますが、
中共、
ソ連との
外交について重ねてお尋ねしたい。それというのは、
首相は、この間、我が党の
棚橋議員への
答弁といたしまして、次のように答えられております。「
中共、
ソ連に対する
外交方針は
如何。これは
共産主義国と
外交を調整するということは、これは
日本の今日の
状態からい
つて見て、或いは
日本の内地の
状態からい
つて見て、これはできないことであります。
共産主義を捨てればとにかくでありますけれども、
共産主義を以て、そしてこれと
平和状態に入つた……」と、少し欠けておるようであります。(
拍手)「
日本において、
共産主義の宣伝の中心を招き入れるというようなことは私はできないと
考えるのであります。」こう
答弁されております。私はこれを聞いて、今日は
首相はどうかしていやしないか。(「いつでもどうかしている」と呼ぶ者あり)こんな
失言をよくもやられたものであると思いました。見れば
大変顔色も惡いようであると拜見いたしましたから、これはこの電報が外国に伝わつたらどういふ形になるかと
心配しておりました。ところが平然と
社会党を軽蔑するがごとく、あなたは
答弁されていたのであります。ところが翌日になりました。民主党の
前之園議員に対する
答弁であります。いろいろロシアとの困難なる点を述べられたあとに、「けれども、
日本としては、できるだけ早く
ソ連との間の関係においても
講和の関係に入りたいと
考えるのであります。」、こういうように変更されました。一体どちらが本当であ
つたのでありましう。(
拍手、「
トルーマンの
演説だよ」と呼ぶ者あり)それぞれ。時、丁度外電は、
チヤーチルの呼びかけに応じて、
トルーマン大統領が
国交調整のため
対ソ話合いをやるとの報道を伝えたのであります。
首相はこの外電に影響されて、
ソ連に対する態度が
変つたのではないかと
国民は言い始めたのであります。(「丁度カメレオンだ」と呼ぶ者あり)
全面講和に
向つたことは、我が党としてはよろしい。(「よろしい」と呼ぶ者あり)併し
信念家と称せられる
吉田首相が外電一本で変るのでは案外頼りないではありませんか。(「その
通り」と呼ぶ者あり)いや、率直にそれは
失言だとおつしやるならば、私は決して咎めません。(
笑声)この議場においてあれは
失言だとおつしやるほうが私は喜ぶのでありますが、(
笑声)又こう
考えて
吉田首相の
心理状態を解剖して来ますると、(
笑声、「
心理分析」と呼ぶ者あり)
吉田首相の
答弁で、
首相はこういうことを
考えられた。
世界から
共産主義国が消滅してしまわなければ平和というものはないように
考えられておる。(「自分の消滅が早い」と呼ぶ者あり、
笑声)それではその
吉田首相の
考える平和が来るまでには
戦争は必ず起りますよ。(
笑声)
共産主義国を
世界からなくしてしまうというようなことを
考えたら、必ず
戦争が起ります。その印象が
国民に響いて、
日本国民は、これは
日本は
戰争に巻き込まれるのではないかというような
心配をするのであります。
首相は、
トルーマン大統領や
チヤーチル氏になら
つて、どうですか、
ソ連とか
中共との
講和に
努力する
意思はございませんか。
チヤーチル氏はどうでありますか。
スターリンに
会つてもよろしいと言う。保守党の
チヤーチルでありまするけれども、
国民のため、
外交のためには、みずから
スターリンに会うというのではありませんか。、(
拍手、「古田を呼んで来い」と呼ぶ者あり)
共産主義の
外交の対象になる
ソ連とか
中共というものとでは別でありますけれども、あなたのお
考えはいつも国内不安だと
言つて、国内不安というのは、
共産党の数が殖えることを言うのであ
つて我々はそうではありません。(「一人減つたよ」と呼ぶ者あり)
ソ連が武力を以て侵入して来るかどうかというところに我々は思いをいたしておるのであります。(「同じことじや」と呼ぶ者あり)その点はわからないことでどうする。(
笑声)
共産主義嫌いの
首相で、いやならば、これは止むを得ません。
米国との
講和ができたならば潔く辞職して、
中共や
ソ連、
国民の望む
中共、
ソ連との
講和促進のため内閣を
社会党にゆだねたらどうですか、
ソ連や
中共との国交なら
社会党のほうが自信があると私は
考えます。(「まじめにやれ」「
共産党の代弁だ」と呼ぶ者あり)
最後に、
国民生活安定に関する今度の
講和問題との関係について聞きたいと思います。
首相は、
平和條約に伴う
国民負担が
国民生活水準に圧迫を加えることのないよう万全の
努力を拂う所存でありますと、財政問題に触れておりますが、これだけでは全く抽象的であります。常に
総理大臣の
施政演説というものは抽象的であ
つて、具体的なものが何もないじやないかというのが
国民の声であります。、不満はここから来るのであります。そこで私は
負担となる財政上の諸項目について、数字的にどのくらいのものであるか、見込みを
国民が知りたが
つているから、これを説明されたいと思うのであります。例えば
賠償額については、
池田蔵相は当初二十七年度
予算案にたしか年一百億を見積られておりました。ところが突然
自由党ではこれを三百億に今度はな
つておるようであります。どうして変更されたのでありましようか。
米国のほうで一百億では足りないと
言つて来たのでありましようか。(
笑声)
外債償還についても、
イタリアでは未拂利子と元本を
そつくり新らしくして
低利債に借換えられているが、
日本にもその
可能性があるか、その
努力をする
意思があるかどうかということであります。第三には、対
日援助費は、今まで、すでに二十一億ドルに達しておりますから、その返済は
日本経済にと
つて多大の
負担であり、
イタリアの場合は棒引きされたということを聞いておりますが、
日本も棒引きを懇請される
意思があるかということを聞きたいのであります。
日米防衛分担費はまだわか
つていない、こう
言つておりますが、これは無責任な、
国民に対して言われた義理じやありませんでしよう。
防衛分担がどのくらいあるかわからないで
安全保障に調印して帰
つて来るという、そんな無責任なことを、誰が
負担をするのでありましようか。
国民大衆であることをいつの間にかお忘れにな
つております。これは我々の希望といたしましては、
国民を代表いたしまして、
全額米側の
負担にしてもらえないかどうかということをお聞きしたのであります。まあ、そういう
研究努力をして頂いてはどうか。聞くところによると、
日米折半という噂も聞きますが、実際
日米防衛は
アメリカ自身からの
国防戰略上からも重要な意義があることを見逃がせません。一体、條約というものは相互の利益から初めて生れるものでありますから、この條約は
日本だけの利益になるなんということを
考えている必要はありませんでしようという点に鑑みまして、
一つ米側が全部
負担というようなことに
努力して頂く覚悟があるかどうかということであります。
行政簡素化についても述べておられますが、数次に亘る定員法、首切、今度の労働三法改正といいますけれども、だれのために改正するのか、どういう階級のために改正するのか知りませんけれども、
労働者にと
つては改惡そのものであります一そういう結果が生じまするときに、退職金はできるだけ出すつもりだということでありますけれども、一体どのくらいの退職金を出されるか。今大蔵大臣
おいでにならないでしようから、あとでもよろしいが、その予算額は幾らか。失業者に対しては失業対策をやるとい
つておる。失業対策をやるとい
つても、具体的構想は何であるか。すべて具体的に
一つこれは所管大臣からでもよろしい。失業対策の具体的構想をこの本
会議場で
一つ述べて頂きたい。こう
考えるのであります。
最後ではありまするが、とにかくこの
講和会議に老躯長途出向かれました
首相の御労苦に対しては謹んで謝意を表しつつ、(
笑声)又私の再質問を留保しつつ、私の質問を一応終らせて頂きたいと思う次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君登壇、
拍手〕