○須藤五郎君 この問題の起つた原因は私たちどうも
政治的な含みがあつたように理解せざるを得ない。それは投票に先立
つて共産党と如何にもこの自治警との間に関係があつたごとく
新聞紙上にも窺われ、又吉橋部長もそういう意味のことを漏らしていらつしやる。そこに私は問題がある。又自治警廃止、国警に自治警を吸収するというあの警察法
改正の起つた当初にもいろいろ遡
つて考えなければいけないのじやないかと思うのです。自治警を地方交付金で金縛りにすることによ
つて、自治警を廃止せざるを得ないような状態に地方自治団体を追込んでしまつた、そこに問題があり、そうしてすべての自治警を国警に吸収しようという意図がその裏にあつたということが第一の問題であり、そうして島根県において特に安来町において共産党と自治警が関係があるごとく人民に思い込まして、そうして自治警廃止を有利にしたという意図がどうもあるように私たちは思うのです。そうしてそこに私は
我我のほうに入つた情報をまとめて見たのですが、それを参考に各
委員に聞いて頂きたいと思う。それは自治警廃止云々の問題が島根県安来町の町会で問題に
なつた当時におきましては、町会では自治警廃止
反対のほうが実は多かつたのです。十二対十三で自治警廃止
反対という採決がなされた。而も住民投票が九月二十二日に行われたということ、それから安来町の署長が自治警廃止
反対の態度を示した、これに対しまして山根国警署長が、立石松江地検
検事正等が上から示された廃止の線に沿
つて言
つておることがあるのです。山根署長のごときは七月中旬に開かれた国警部課長会議で自分の管内の自警は県内で最も先に廃止して見せるということを発言していらつしやる。これも
一つの問題だつた。ところがそういう発言があるにもかかわらず実情は山根国警署長の
意思と
反対の
傾向を示して同町町会議長、公安
委員は自警廃止
反対の意向を強く示したということも事実であります。そこで国警の署長は自警廃止
反対意見者に対していろいろな圧迫干渉を事前に加えているということが言われているのです。その一は公聴会におきまして民主化の逆行だと
反対した国鉄の渡辺という人の自宅にみずから乗込んで行
つて、あなたは公務員でありながら
政治活動をするとは何事だ、そういうことをしてはためになりませんぞ、というようなことを警察署長みずからが言
つている。その二は町会協議会で存置論を述べた某町会議員に電話をかけまして——あなたは国警を誹謗したそうですが、本当ですか、本当ならば国警で声明を出さねばならんが、というようなことも電話で申込んでおる。それから町会議員の宅を個別的に訪問しまして、余り
運動をするとためにならんから云々というような意味のことを言
つて廻
つている。その四は自警廃止
反対の立場をとつた田邊公安
委員に対しまして尾行を付けておる。そして同時にあなたは公安
委員でありながら一日四、五軒も歩いているのはけしからん、そういうようなことを言
つておるのです。同氏の場合は高橋圓三郎という人が町へ来て座談会を開くための純粋に個人的な用向で歩いておつたと言われておりますが、自分に尾行が付いておるということをあとで聞いて非常に憤慨したというような事実もある。それから五番目は住民投票日二日前の二十日には、遥か以前九月四日附で発行停止とな
つておるところの共産党の活動指針に対するガリ版刷の令状を持
つて松江地検立石
検事正、特審森田某等の指揮する国警警官二十名が町民宅、共産党員宅を一齊に捜査し、同町内を非常な恐怖の状態に陥れ、あたかもこういう古いものを持出して自警住民投票の前にその町に非常に恐怖的な観念を巻起したということが言われております。こういう状態で住民投票がなされた。こういうことが安来の町民に言われております。それで却
つて非常な町民の反感を受けて、町民大会で問題の所在を明らかにするか、参議院に申請して実情を見てもらうかというような
意見まで出たということを聞いておるのであります。それから第三の点は池田安来署長、奥村次席逮捕
事件の概要でありますが、今いろいろ
大橋法務総裁からその実情を伺つたのでありますが、私たちの聞いていまする点も申述べたいと思うのであります。池田署長逮捕は十月一日任意出頭の形で松江地検で取調べられた。そうして逮捕されたその
理由は立石
検事正談としまして十月三日島根
新聞に登載されております。その要旨はこういうことであります。公文書毀棄罪、毀損罪及び証拠湮滅ということにな
つているようであります。奥村次席の件は二十年八月主食
取締事件八件、価額金一万三千円を取調べ記録を作りながら、これを送付せずに着服横領した。更に同
検事正はこういうことを言
つております。池田署長が数次に亘り、この
事件を人権蹂躙だとか、臨時刑事訴訟法に訴えるとか、
検察を誹謗するがごとき
行動を
新聞紙上に発表したが
検察庁は
新聞紙上で論争することは、却
つて威信を傷けるものと認めるから相手にしない。今回の捜査活動によ
つて彼の抗議に答えたものであるというような、そういうことを言
つているそうであります。それから第二点はその公文書毀棄罪と言われておるその原因の内容は何かと申しますと、二十八日附池田署長談としまして発表されたものによりますと、九月二十七日地検より岸
検事が町警察署を訪れ、立石
検事正の命令で来たと申しまして
昭和二十四年、五年、六年と三カ年に亘る当署の出張命令簿の借用を申入れた。その
理由はわからないが、使いに来たと、押問答の末、提出せんと疑われてために悪いぞと言つた。その日の朝に某地区署長より電話で署長さん今度はあなたのあら捜しを始めたから気を付けなければいけませんよというような注意があつたということも言われております。記事の前後の事情から見ますと、この出張命令簿に絡ることが直接の
理由とな
つて遂に逮捕の結果と
なつたと見られるのであります。又国警の余りのやり方に自警の存廃の両側から町民の非難の声が威嚇に動員された国警警官に向けられたというような状態に
なつた。このような町民の声に対して警官は次のように答えておるのであります。警官の或る者は、私たちはこんなことで追廻されるのは本当にいやですが、上司の命令のままに動かねばならん自分が情けなくなりますというようなことを言
つておる。又私たちはこれで二重の監視を受けているのですからとも言い、中には松喰虫
事件のような大きな不正に手を着けずに三年前の鼻くそほどのことを洗い立てているのは理解できない。そういうことを言
つているのであります。先ほども
大橋総裁はいろいろな起訴状の内容を申されましたが、
伊藤さんが申されたようにその
一つ一つを挙げて見ると大したことは何もない。それが本当の犯罪、起訴までされるようなことであつたかどうか、と、いうことは非常に小さいものがたくさん集ま
つていると思うのですが、私が今まで我々の知るところを申しました点でも随分小さいことばかりだと思うのです。然るにその松喰虫
事件のような大きな問題をそのままに隠しておいて、殊更にそういうちつぽけな取るに足らないような
事件を取上げて来て起訴したという点に問題があるのだと思うのです。ここ、私は松喰虫
事件を皆さんに聞いて頂きたいと思うのです。松喰虫
事件というのはどんなことかと申しますと、昨年の六月能義村長高橋氏は山本郵便局長の持ち山に松喰虫が発生したとの
理由で県から約二百万円の補助金を取り、病気にかかつた木を焼いたというのでありますが、事実は能義村中
学校校舎建築材にそれを充てておるわけであります。地方の遅れた
考え方を巧みに利用いたしましてごまかしたと言われておる
事件であります。即ち焼いてしまつたと言
つておきながら、その木を切
つて中
学校の校舎建築にそれを充てている。即ち二百万円の補助金をうまく着服しているというような
事件であります。高橋は本年四月には県会の選挙に出馬して
運動費を湯水のように使つたが落選したと言われ、家屋も新築しておる。この
事件に対して自警奥村、松井、櫻内の五名が
調査に当
つていたと申されておりますが、この松喰虫
事件を
調査いたした三名は首を切られているのであります。こういうことがその裏にあるということをよく考えて頂きたいそうして而もこういうことを伏せておきながら、あたかも自警と共産党と関係があつたことくその事前に流布して住民を威嚇してそうして住民投票をやられた。その結果今日のような状態にな
つておるわけでありますが、私は共産党のために言うのではありませんが、むしろ自警のために申述べたいと思うのでありますが、決して共産党が自警を抱込んだというようなことは絶対ないわけであります。最初共産党のこの島根県の方針は、安来町の共産党細胞のとつた態度というものがこつちへ来ておりますが、それは自警廃止に
賛成の態度をとつたそうであります。最初はそれはどういう立場かといいますと、安来町の自警そのものも町の非常に負担になるし、そこへ又人民の弾圧の機関にな
つていたという点で、そういう人民を苦しめるような警察なら廃止すべしという考えで自警廃止の態度をとつた。ところがその後いろいろ考えて見ると、自警を廃止して次に国警に
なつた場合
国民の負担がなお大きくなる、自警のままであるほうが
国民の経済的な負担も非常に軽いのだと、そういうことがわかり、又国警に
なつた場合果して自警よりいい警察ができるかどうかというような問題も考えられまして、あとで自警廃止に
反対の態度をとつた。ですから何も最初から自治警察を共産党がうまく抱込んで、共産党の意のごとく動かすというような、そういう計画の下にやられたことでもありませんし、又池田署長初め自治警察も決して安来町の共産党の思うままに動いたのではないということは、決して我々としてもそんな自惚も持ちませんし、又そういうことは考えられないことなんです。それがこういうふうに喧伝されたというところに私は非常な
政治的な何か暗さを
感じるわけです。そして私は自分たちのほうに挙りました情報を参考までに皆さんに申しましたのですが、こういう状態でやられたことが決してどうも正しい明るい
検察当局の
行動のように私は考えられないのです。何か暗いものを
感じる。その点で今
伊藤さんがいろいろ御
質問なさつたことに対しまして私も同感の意を表しておるのですが、総裁も私が申述べましたようなことを耳にしていらつしやるのでしようか。若しもこういうことがあつた場合総裁はどういうように考えられるのか、御
意見を伺
つておきたいと思います。