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曾祢益君 これは大きな特需に関しては通産大臣も御経験があるのだろうと思いますが、小さなものはなかなか当局に訴えないのであります。実はそこら辺に対しては十分
政府が眼をみは
つて、そして自由競争と自由契約という一応の建前に立
つて、それでうまく行
つておるというふうにお考えになると、決してそうでない。これは
日本人の心理
状態が、結局は
占領軍なんだから仕方がないとい
つたような諦めと、いわゆるカツト・スロートの非常な激烈過ぎるようなコンペテイシヨンがあるために、実は非常な劣惡な惡條件、それを転嫁する先は、これは労働者にきま
つておる。さような問題は決して、大体うまく行
つているであろうというような考えでなくて、実情をもう少し十分に御認識
願つて、これに対する、それでは
如何なる
態度がいいか、これはなかなかむずかしい点もございます。併しそうだからとい
つて、そのままでいいということには行かない。これらの点もむしろP・D時代のほうがよか
つた。労働者についても一応プリヴエーリング・ウエージという枠があるから、余り経営者に対しても、
アメリカ側は露骨に言
つて安い値段で叩けないという限界があ
つたのに、P・D工場から特需工場になると、そうい
つたようなウエージの天井がないとい
つたようなところから、非常に自由契約の原則にからんで非常な劣惡な條件で押し付けられるきらいがあるのです。ですから、これはいよいよ独立後のことを考えたならば、かような
状態に放置して置くことは、ただ單に中小企業の保護のためにのみならず、いま
一つは非常に大きな政治的な怨恨、不満の種を作ることになるから、この点は絶対に放置してはならないと私はかように考えるのでございます。実情についての御認識を
願つて、もつとはつきりとした対策を至急
一つ作
つて頂きたいと考える次第であります。
更にこの点に関連して大蔵大臣に伺いたいのは、ほかの
委員会でも問題があ
つたかと思いまするが、最近やはり行政協定を前にいたしまして、国有財産、これは賠償工場等が多いと思いまするが、一応これが
占領軍の許可を得まして民需に転換しておる工場がありまするが、特に横須賀地区におきまして、一部は横浜地区でありまするが、これはいろいろな
国際情勢、
朝鮮動乱等の
関係もありましようが、一たび民需工場に転換を許された工場が、軍事的な必要のためにこれを明渡しを要求されておる。かような事例が而も大量に行なわれておるのであります。若し
政府がこの行政協定ができてからだというよう
なつもりで、今のところは占領下にあるのだから徴用は免がれない、殊に国有財産であるし、財産そのものはまだ国有財産から解除されておらない、売渡しをしておらないから仕方がない、それじや徴用されるのも仕方がないというような
態度で行くならば、これは非常に過渡期で、転換期であればこそ、非常に厄介な地方々々の労働問題、或いは社会不安の問題であるのみならず、非常に大きな怨恨の的にならんとしつつあるのであります。
従つてかような問題に対して、先ず財産の見地から言うならば、大蔵大臣が所管当局であると思うのですが、大蔵大臣としてはどうか。殊に池田大蔵大臣は一般的に、日米
安全保障條約の調印者ではなか
つたけれ
ども、むしろ
平和條約の
関係から言うならば、軍の
施設が解除されるほうについては、條約を調印しておられる全権
委員の
吉田さんの次に名前を出しておられるかたでありますから、さような一般的な
平和條約の実施に関連する
責任から言
つても、ただ單に国有財産の保管者であるという以外に、大きな政治的
責任を負わなければならないと思うので、今の御方針と今後のやり方についての御抱負を伺いたいと存じます。