○羽仁五郎君 各
委員との質疑応答を伺
つておる間に非常に不安を感じた点があるので、簡單に
大蔵大臣なり安本長官に
政府のお
考えを伺
つておかなければならないと思うのですが、第一に、質疑応答の間にもいよいよ不安を感ずるのは、賠償というものの
原則について
政府はどういう理論を持
つておられるのか。何だか伺
つておるとだんだんお先真暗の
ような感じ、無
方針の
ような感じ、出たとこ勝負の
ような感じを受けるのですが、賠償の
原則についてどういうお
考えをお持ちであるか。どういう理論で賠償上の交渉を進めて行かれるおつもりであるか、いろいろ外交上のことだから余りここで
はつきり言えないとおつしやるのですが、なかなか現在の国際政情において、單に話をうまく持
つて行くなんという程度のことで行くことは、殊にその南方アジアの国々との間には到底行かないだろうと思う。私はこの点について或いは
政府が十分
考えておられるんだろうと思うのですけれども、先ず第一にお尋ねしたいのは、
日本がこの
平和條約で
承認するところの賠償というのは、言うまでもなく與えた損害に対する賠償ですけれども、與えた損害に対する賠償に対して、その與えた損害に対してどういう賠償を行われるかということについては二つの
考え方があろうと思う。一つ
はつまり懲罰的な、プユニテイヴというか、懲罰的な
考え方である。これで行けば、與えた損害というものの殆んどすべてを、
日本が破滅し
ようとどうし
ようと、それは賠償しなければならない。それからもう一つの
考え方というのは、
日本がこういう
ような損害を與えた
ような原因を除去して、民主主義的な国にな
つて行くということを前提として
考えられる賠償の問題があると思う。この場合には賠償も非常に苛酷であり、即ち第一次欧洲大戰のドイツに対する賠償問題の
ように、そのことはドイツ
国内の民主主義の成長を極めて困難にして、それで却
つてナチスなり何なり、侵略主義をドイツ
国内に誘発するということにな
つて来る。これを避け
ようとしている点が現在では非常に重要に
考えられるのではないか。だから、この第五章の現在の
平和條約の條文ができるについて、絶えずそれを貫いているものは、
日本が過去において與えた損害を賠償するのだけれども、併し同時にそこに、
日本が過去において各国に戰争によ
つて損害を與えた
ようなことを繰返さない、即ち侵略主義的な国家とならない、民主主義的な国家とな
つて行くという
考え方が強く主張されるものだと思う。この点の理論が
はつきりしていないと、この賠償の交渉においても
日本の立場というものが、何だか拂う
ような拂わない
ような、何とかすれば、まけてもらうという
ようなやり方でなくて、
日本が民主主義的な国家として、或いは、もつと
はつきり言えば福祉国家として成立して行くための諸條件というものが
はつきりして来ると思うのです。で、先ほどの質疑応答を伺
つている間に、その点についての
政府の御所見というものが甚だ明瞭でないのですが、その点については、
政府は果してそういう意味で、
日本が民主主義的な国家として、
従つて先ほど岡本
委員からも言われた
ように、社会不安というものが発生しない
ような福祉国家としてや
つて行く、そこに基凖を置いてこの賠償の問題を解決して行くという態度を、
はつきりとらるべきだと思うのですが、その点について
大蔵大臣なり安本長官なりはどういうふうにお
考えにな
つているか。これを先ず伺
つておきたい。で、これはその点に関連して総括
質問の際にも
質問したのでありますが、この
平和條約の前文に誓約されている
ような
日本の安定及び福祉の條件、その主なるものとしては、例えば社会福祉というものについて
大蔵大臣又安本長官はどれだけの積極的な意思を今日お示しになることができるのか。ところが先ほどから
政府の予算の編成その他を拜見しておりますと、むしろ社会不安が発生することを予定し、そうして、その社会不安に対する警察費の予算上の計上という
ようなことをや
つておられる。そうすると、できて来るものは、
日本は民主主義的な国家の方向に行くのじやなくて、警察国家的な方向に行く。
従つて侵略主義的な国家にな
つて行く。そうなれば
日本に侵略の危險が多大にあるということは、今日でも太平洋を
中心とするいろいろな安全保障條約が
締結される必要があるというくらいに認められておる。それがますます甚だしくな
つて来れば、そういう方向を防ぐために非常に嚴格な嚴重な賠償を取り立てるという要求が起
つて来るのじやないかと思うのです。この点で具体的に、この
日本のウエルフエア・ステートというか、福祉国家として、最低限これだけのものは是非とも実現しなければならないという社会保障というもののお
考えがあろうと思うのですが、それを伺わせて頂きたいと思うわけであります。
それから、その問題と関連しまして第二に伺
つておかなければならんと思うのは、先ほど永井
委員からの
質問に対する御
答弁の中に、この賠償に
関係する場合の企業の利潤というものは経済上の常識というものに従うというふうなことを
言つておられましたが、併しこれは池田
大蔵大臣はそういう点で、例えばこの占領後連合国から
日本に対して言われた、戰争というものは儲からないものであるということを
日本国民に教えなければならないというふうに言われた
ような
考え方に御賛成なのか御反対なのか。そうだとすれば、やはり或る意味において戰時における超過利潤を禁止する
ような立法的な措置というものと似た
ようなものが、この賠償に
関係して来る
事業において、客観的に見てこの利潤を制限する立法的な措置というものも決して不可能なことでないのみならず、或いは望ましいことであるかも知れません。戰争中軍需企業によ
つて儲けた人が、今度は又賠償で儲けて行くという
ような
考え方は許されるべきではないというふうに思うのですが、この二点についてお
考えを
はつきり伺
つておきたい。即ち存立可能ということには、
日本が社会福祉を実現する国家としての意味を含んでいるのであ
つて、
従つて社会福祉についてどれだけの、
政府としては一定の社会福祉を必ず保障して行くというお
考えがおありにならなければ、この賠償の問題を進歩的に解決して行くことはできないのじやないか。第二に、賠償についての利潤の制限の立法的な措置というものは、例えば戰時における暴利というか、その
利益を制限する立法的措置というものが認められて来てお
つたように、
考えられるべきではないかという、この二点についてお
考えを伺
つておきたいと思うのです。